• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1385163
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-12 
確定日 2022-04-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6798314号発明「水性液体飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6798314号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕について訂正することを認める。 特許第6798314号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6798314号の請求項1〜4に係る特許についての出願は、2015年11月26日(優先権主張 2014年11月27日、2014年12月25日、2015年3月31日 いずれも日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和2年11月24日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年5月12日に特許異議申立人松永健太郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月10日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年10月22日に意見書を提出し、訂正の請求を行った。当審は、申立人に対して、令和4年1月7日付けで訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者は、令和3年10月22日に訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。

[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項1から「ヘスペリジン、ナリンジン、」を削除する(請求項1の記載を引用する請求項2〜4も同様に訂正する)。

2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1〜4について、請求項2〜4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1〜4に対応する訂正後の請求項1〜4に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

3 願書に添付した特許請求の範囲の訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明がポリフェノールとして、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、ヘスペリジン、ナリンジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上」と規定していたところ、訂正後の請求項1においては「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上」と規定し、ポリフェノールの選択肢から「ヘスペリジン」と「ナリンジン」を削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明のポリフェノールの選択肢から、「ヘスペリジン」と「ナリンジン」を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)新規事項の追加について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明のポリフェノールの選択肢から、「ヘスペリジン」と「ナリンジン」を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜4について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜4に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
0.01質量%以上のLMペクチン、並びに
ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール
を含有する水性液体飲料。
【請求項2】
0.000005質量%以上のポリフェノールを含有する請求項1に記載の水性液体飲料。
【請求項3】
pHが2.0〜7.0である請求項1又は2に記載の水性液体飲料。
【請求項4】
飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性液体飲料。」
(以下、「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1〜3に係る特許に対して、当審が令和3年9月10日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

取消理由1−1:請求項1〜3に係る発明は、下記引用例5〜11を参照すると、下記引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

取消理由1−2:請求項1〜3に係る発明は、下記引用例6〜7を参照すると、引用例2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

取消理由2−1:請求項2〜3に係る発明は、下記引用例5〜11を参照すると、下記引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

取消理由2−2:請求項2〜3に係る発明は、下記引用例6〜7を参照すると、下記引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

2 引用例及びその記載

(1)引用例1:特開平10−179103号公報
(特許異議申立書で証拠方法とされた「甲第1号証」。)

記載(1a)
「【請求項1】ジェランガムとLMペクチンとを併用した分散安定化飲料。
【請求項2】ジェランガムの配合量が飲料溶液100重量部中0.02〜0.05重量部であり、LMペクチンの配合量が0.03〜0.5重量部であり、パルプ様物質を安定に分散する請求項1記載の飲料。
【請求項3】ジェランガムの配合量が飲料溶液100重量部中0.035〜0.05重量部であり、LMペクチンの配合量が0.03〜0.5重量部であり、パルプ様物質を安定に分散する請求項1記載の飲料。」(請求項1〜3)

記載(1b)
「【発明の属する技術分野】本発明は、分散安定化飲料に関する。詳細には、ジェランガムとLMペクチンとを併用することにより、ミカンの砂嚢その他の果実・果肉・果汁等を安定に分散させた飲料に関する。」(段落0001)

記載(1c)
「LMペクチンの配合量は、0.03〜0.5重量部であればよく、好ましくは0.1〜0.4重量部であればよい。0.03重量部未満では分散安定化効果が薄く、ジェランガムとの併用による効果がほとんど認められなくなるからであり、0.5重量部を超えると、次第に果肉食感とは異質の食感になるからである。」(段落0007)

記載(1d)
「実施例1
水50重量部にジェランガム0.035重量部、LMペクチン0.4重量部(いずれも三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、果糖ブドウ糖液糖20重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部をいれ、80℃で10分間撹拌して溶解させた後、ミカンの砂嚢10重量部、5倍濃縮の柑橘類混合果汁10重量部、香料、着色料を加えて全量を水で100重量部に調整後、容器に入れ密栓し90℃で殺菌処理して、ミカンの砂嚢が安定に分散した飲料を調製した。この飲料は、まるでミカンをまるごと粗く潰して飲み込むような食感であり、また、砂嚢の経時的な分散安定効果は、LMペクチンだけを除いて調製した場合に比べて、1.2倍長時間安定であった。」(段落0010)

記載(1e)
「実施例2
水50重量部にジェランガム0.04重量部、LMペクチン0.04重量部(いずれも三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、果糖ブドウ糖液糖20重量部、クエン酸(結晶)0.3重量部、乳酸カルシウム0.1重量部をいれ、80℃で10分間撹拌して溶解させた後、ミカンの砂嚢10重量部、5倍濃縮の柑橘類混合果汁10重量部、香料、着色料を加えて全量を水で100重量部に調整後、容器に入れ密栓し90℃で殺菌処理して、ミカンの砂嚢が安定に分散した飲料を調製した。この飲料は、実施例1で調製した飲料とは食感が異なり、のどごしのざらざら感が増加した感じであるが、まるでミカンをまるごと粗く潰して飲み込むような食感である点では同じであり、おいしい飲料であった。」(段落0011)

(2)引用例2:特開平3−277259号公報
(特許異議申立書で証拠方法とされた「甲第2号証」。)

記載(2a)
「(1)繊維状に成形したローメトキシルペクチンゼリーを配合してなることを特徴とする飲料。」(請求項1)

記載(2b)
「本発明は、繊維状に成形したローメトキシルペクンチンゼリーを配合してなることを特徴とする飲料を提供する。」(2頁右上欄17〜19行)

記載(2c)
「本発明におけるゼリーを配合すべき飲料自体は特に限定するものではなく、通常の清涼飲料、果汁飲料、ジュース、乳酸菌飲料、ガス入り飲料、乳飲料等いずれでもよい。」(2頁左下欄6〜9行)

記載(2d)
「本願発明においては、ゼリーを配合する飲料のpHが3.8以下と低い場合はローメトキシルペクチンとジェランガムを併用する。この際、ゼリー固形分全量中のジェランガム配合量は0.1〜0.8重量%か好ましく、また、ゼリー固形分全量中のローメトキシルペクチンとジェランガムの合計配合量は1.6〜3.1重量%が好ましい。・・・
また、ゼリーを配合する飲料のpHが3.8以上の場合はローメトキシペクチンを単独で用いればよく、ゼリー固形分全量に対するローメトキシルペクチンの配合量は1.5〜3.0重量%が好ましい。」(2頁右下欄1行〜3頁左上欄1行)

記載(2e)
「かくして得られたゼリーを常法に従って調製した前記のような飲料に、通常、1.0〜30.0重量%配合することにより本発明のゼリー入り飲料を製造することができる。」(3頁右上欄16〜19行)

記載(2f)
「実施例2
以下に示す処方に従って原料を水中に分散させ、撹拌しなから93℃で加熱溶解した後、冷却して65℃のゲル化性コロイド溶液を調製した。
成 分 配合量(kg)
ローメトキシルペクチン 0.7
ジェランガム 0.2
キサンタンガム 0.07
クエン酸 0.2
グレープフルーツ濃縮果汁 1.6
(1/5濃縮品)
着色料 0.12
香料 0.12
砂糖 5.0
水 残部
合計40.0kg
つぎに、以下に示す処方に従って原料を水中に分散させ、60℃で加熱溶解した後、冷却して30℃のカルシウム塩水溶液を調製した。
成 分 配合量(kg)
砂糖 9.5
乳酸カルシウム 1.2
水 残部
合計60.0kg
このカルシウム塩水溶液60kgを100l容のタンクに入れ、アンカー型の撹拌器により300rpmで撹拌しながらゲル化性コロイド溶液を内径1.8mmの孔を通して糸状に滴下して繊維状ゼリーを得た。その後、該ゼリーをシロップ部と共に缶密閉容器に移し、85℃で30分間殺菌し、繊維状ゼリーのシロップ漬を製造した。殺菌したゼリーは直径1.0〜1.8mm、長さ2〜5cmの繊維状に均一に成形されており、テクスチュアーもソフトで嗜好性豊かなものであった。また、ゼリーの糖度は17.6°、pHは3.94であった。
つぎに、以下に示す処方に従って原料を85℃で加熱分散させ、飲料用ガラス瓶に充填、密封した後、85℃で30分間加熱殺菌し、常温まで冷却してゼリー入り飲料を得た。
成 分 配合量(kg)
砂糖 7.5
ポリデキストロース 5.0
グレープフルーツ濃縮果汁 4.0
(1/5濃縮品)
クエン酸 0.2
着色料 0.1
香料 0.2
繊維状ゼリー 15.0
水 残部
合計100kg
得られたゼリー入り飲料のBX糖度は17.5°、pHは3.19であり、飲料中のゼリーは殺菌後も変形、溶出することなく安定に存在しており、40℃の恒温室において1ケ月間放置した後も初期と同様に全く安定であった。該ゼリー入り飲料は、視覚的にも繊維状ゼリーが均一に分散して繊維を飲むという感覚を有し、また、のどごしも非常に良好であり、ゼリーの食感を楽しめる嗜好性豊かなものであった。」(8頁左上欄16行〜右下欄14行)

(3)引用例5:近畿中国四国農業研究センター研究報告 第5号,pp.19−84
(特許異議申立書で証拠方法とされた「甲第5号証」。)

記載(5a)
「カンキツ類の機能成分として,フラボノイド,カロチノイド,クマリン,テルペン,リモノイドが知られている.このうち,フラボノイド類は多様であり,ルチンやケルセチン等野菜や果実一般にみられるもの,ヘスペリジン(HSP)やナリンギン(NRG)といったカンキツに特有のフラバノン類,ロイフォリン(RFN),ディオスミン(DSM)等のフラボン類、およびNOBやTNG等のPMFに分類できる.」(22頁左欄8〜16行)

記載(5b)(一部省略して訳文で示す)
「表II−10 カンキツ果実の砂嚢中のフラボノイド含有量
ナリンギン ヘスペリジン

7 レモン・ユーレカ 0.0 63.8

12 グレープフルーツマーシュ 1270 0.0

18 バレンシア 0.0 93.2

27 温州ミカン 0.0 8.7

各値は、4重測定を行った平均値である(mg/100g新鮮重量)
」(33頁、表II−10)

(4)引用例6:日本食品工業学会誌,32巻,12号,pp.864−869
(特許異議申立書で証拠方法とされた「甲第6号証」。)

記載(6a)(訳文にて示す)
「表3 各種柑橘類ジュース中のフラボノイド

ジュース ヘスペリジン ネオヘスペリジン ナリルチン ナリンジン

温州ミカン 73.5 ― 24.4 ―
グレープフルーツ ― 2.0 27.3 110.6
タンジエロ ― 2.4 5.4 44.4
ハッサク 9.1 35.3 33.2 98.5
甘夏 11.0 14.2 8.4 75.5

単位:mg/100ml
」(868頁、表3)

記載(6b)(訳文にて示す)
「表4 温州ミカンのフラボノイド

サンプル ヘスペリジン ナリルチン

1 皮 2174.3 237.7
果肉 50.3 9.1

2 皮 1341.0 368.1
果肉 73.2 25.4

3 皮 1357.2 342.8
果肉 53.4 18.4

単位:mg/100ml
」(868頁、表4)

(5)引用例7:Journal of Food Composition and Analysis,(2006),vol.19,pp.157−166
(特許異議申立書で証拠方法とされた「甲第7号証」。)

記載(7a)(訳文にて示す)
「解析した特定のフラボノイド群は、フラバノン類(ナリンジン、ナリルチン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ディディミン及びポンシリン)とフラボノール類(クエルセチン、ルチン)であった。オレンジジュース及びグレープフルーツジュースの典型的なクロマトグラムを図1及び2に示す。ヘスペリジンが、オレンジジュース中の主要なフラボノイドであることは、クロマトグラムから明らかである。しかし、グレープフルーツジュース中の最も優勢なフラボノイドはナリンジンであった。」(159頁左欄18〜25行)

記載(7b)(訳文にて示す)
「低温殺菌ストレート(NFC)オレンジジュースも、個々のフラボノイド含有量と総フラボノイド含有量との間に有意差(P≦0.05)を示した(表3)。ヘスペリジン、ナリルチン、ディディミン及び総フラボノイド濃度は、それぞれ18.0〜42.8、2.95〜5.41、1.16〜3.14及び23.5〜50.4mg/100mLの範囲内であった。」(159頁右欄2〜7行)

記載(7c)(訳文にて示す)
「グレープフルーツジュース中のナリンジン及びナリルチン含有量は、それぞれ23.5〜37.2及び9.1〜11.7mg/100mLの範囲内であった。」(159頁右欄下から3行〜下から1行)

引用例8:Am.J.Clin.Nutr.,(2015),vol.101,pp.931−938
(特許異議申立書で証拠方法とされた「甲第8号証」。)

(6)記載(8a)(訳文にて示す)
「表1
介入製品の組成

介入
対照 オレンジジュース ヘスペリジン
サプリメント

飲料容量,mL 767 767 767
補充 ビタミンC セルロース ヘスペリジン補充
及びビタミンC
砂糖,1g 68.0 68.0 68.0
ヘスペリジン,2mg 0 320 320
ナリルチン,2mg 0 48 16
ビタミンC,2mg 439 439 439

1同一の砂糖組成:16.6gグルコース,18.0gフルクトース,及び33.4gスクロース(データは、フロリダ州政府柑橘局提供)
2HPLCを使用して研究機関内で測定した。
」(933頁、表1)

(7)引用例9:“キロロギストXの記録2008年10月”,[online],平成20年10月2日,[令和3年9月2日検索],インターネット,<URL:http://citrologist.blog94.fc2.com/blog−date−200810.html>
(技術常識を示す文献として、当審が職権で引用。)

記載(9a)
「「ミカン」とはミカン目ミカン科、ミカン亜科など極めて広範囲の植物群を指します。以前はミカンではなく「ヘンルーダ科」といって、ミカンの文字はありませんでしたが、戦後になって知名度からミカンが代表名となりました。また、時としてカンキツ属の一種であるウンシュウミカンを短縮してミカンと記述する場合があります。ウンシュウミカンは日本で生まれた、最大の消費果実なので、「ミカン」という語句は日本人に馴染み深い言葉となりました。」(9頁25〜35行)

(8)引用例10:“サントリーなるほどコール赤坂5丁目分室”,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,[online],平成21年12月24日,[令和3年9月2日検索],インターネット,<URL:https://web.archive.org/web/20091224171801/https://www.tbs.co.jp/radio/call/bk/20090103.html>
(技術常識を示す文献として、当審が職権で引用。)


記載(10a)
「みかんとよんでいるのは、ほとんどが温州(うんしゅう)みかんです。」(‘みかんとオレンジの違いは何ですか?’の項のA2の8行)

(9)引用例11:“ミカン(曖昧さ回避)”,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,[online],平成25年2月27日,[令和3年9月2日検索],インターネット,<URL:https://web.archive.org/web/20130227152127/https://ja.wikipedia.org/wiki/ミカン_(曖昧さ回避)>
(技術常識を示す文献として、当審が職権で引用。)

記載(11a)
「ミカン、みかん(蜜柑)
・ウンシュウミカン(温州蜜柑)。
・ミカン科ミカン亜科(ミカン属、キンカン属、カラタチ属など)に属する植物の総称。柑橘類。」(3〜5行)

3 引用例に記載された発明
(1)引用例1に記載された発明
引用例1には、ジェランガムとLMペクチンとを併用することにより、ミカンの砂嚢その他の果実・果肉・果汁を安定に分散させた分散安定化飲料であって、飲料溶液100重量部中LMペクチンが0.03〜0.5重量部であるものが記載されており(記載(1a)、(1b)及び(1c))、実施例1として、LMペクチン0.4重量%、ミカンの砂嚢10重量%、5倍濃縮の柑橘混合果汁10重量%、ジェランガム0.035重量%、果糖ブドウ糖液糖20重量%、クエン酸0.3重量部、香料、着色料及び水からなる飲料が記載されており(記載(1d))、実施例2として、LMペクチン0.04重量%、ミカンの砂嚢10重量%、5倍濃縮の柑橘類混合果汁10重量%、ジェランガム0.04重量%、果糖ブドウ糖液糖20重量%、クエン酸0.3重量%、乳酸カルシウム0.1重量%、香料、着色料及び水からなる飲料が記載されている(記載(1e))。
よって、引用例1には、
「LMペクチン0.4重量%、ミカンの砂嚢10重量%、5倍濃縮の柑橘類混合果汁10重量%、ジェランガム0.035重量%、果糖ブドウ糖液糖20重量%、クエン酸0.3重量%、香料、着色料及び水からなる分散安定化飲料。」の発明(以下、「引用発明1−1」という。)、及び
「LMペクチン0.04重量%、ミカンの砂嚢10重量%、5倍濃縮の柑橘類混合果汁10重量%、ジェランガム0.04重量%、果糖ブドウ糖液糖20重量%、クエン酸0.3重量%、乳酸カルシウム0.1重量%、香料、着色料及び水からなる分散安定化飲料。」の発明(以下、「引用発明1−2」という。)が記載されているといえる。

(2)引用例2に記載された発明
引用例2には、繊維状に成形したローメトキシルペクチンゼリーを配合してなる飲料が記載されており(記載(2a)及び(2b))、ゼリーを配合すべき飲料自体は、特に限定するものではなく、通常の清涼飲料、果汁飲料、ジュース、ガス入り飲料等いずれでも良いことが記載されており(記載(2c))、飲料のpHが3.8以下である場合は、ゼリー固形分全量中のローメトキシルペクチンとジェランガムの合計配合量は1.6〜3.1重量%であることが好ましく、飲料のpHが3.8以上の場合は、ゼリー固形分全量中のローメトキシルペクチンの配合量は1.6〜3.0重量%であることが好ましいことが記載されており(記載(2d))、ゼリーは飲料中に1.0〜30重量%配合することができることが記載されており(記載(2e))、実施例2として、ローメトキシルペクチン0.7kg、グレープフルーツ濃縮果汁1.6kg、ジェランガム0.2kg、キサンタンガム0.07kg、クエン酸0.2kg、着色料0.12kg、香料0.12kg、砂糖5.0kg及び水を用いて調製された40.0kgの液を、砂糖9,5kg、乳酸カルシウム1.2kg及び水により調製された60kgのカルシウム塩水溶液中に糸状に滴下して繊維状ゼリーのシロップ漬けを製造し、グレープフルーツ濃縮果汁(1/5濃縮品)4.0kg、該繊維状ゼリー15.0kg、砂糖7.5kg、ポリデキストロース5.0kg、クエン酸0.2kg、着色料0.1kg、香料0.2kg及び水を用いた合計100kgであって、pHが3.19のゼリー入り飲料を得たことが記載されている(記載(2f))。
また、ローメトキシルペクチンとは、LMペクチンのことである。
よって、引用例2には、
「LMペクチン、グレープフルーツ濃縮果汁(1/5濃縮品)、ジェランガム、キサンタンガム、クエン酸、着色料、香料、砂糖を含有する繊維状ゼリー15.0質量%と、グレープフルーツ濃縮果汁(1/5濃縮品)4.0質量%、砂糖7.5質量%、ポリデキストロース5.0質量%、クエン酸0.2質量%、着色料0.1質量%、香料0.2質量%及び水を含有し、pHが3.19である、繊維状ゼリーを配合してなる飲料。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

4 判断
(1)引用例1を主引例とした場合について
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 引用発明1−1について
本件発明1と引用発明1−1を対比すると、両者は、「0.01質量%以上のLMペクチンを含有する飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1−1−1:前者は「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有するのに対して、後者はLMペクチン0.4重量%、ミカンの砂嚢10重量%、5倍濃縮の柑橘混合果汁10重量%、ジェランガム0.035重量%、果糖ブドウ糖液糖20重量%、クエン酸0.3重量%、香料、着色料及び水を含有する点。
相違点1−1−2:前者は「水性液体飲料」であるのに対して、後者は「分散安定化飲料」である点。

b 引用発明1−2について
本件発明1と引用発明1−2を対比すると、両者は、「0.01質量%以上のLMペクチンを含有する飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1−2−1:前者は「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有するのに対して、後者はLMペクチン0.4重量%、ミカンの砂嚢10重量%、5倍濃縮の柑橘混合果汁10重量%、ジェランガム0.035重量%、果糖ブドウ糖液糖20重量%、クエン酸0.3重量%、香料、着色料及び水を含有する点。
相違点1−2−2:前者は「水性液体飲料」であるのに対して、後者は「分散安定化飲料」である点。

(イ)相違点の判断新規性
相違点1−1−1及び相違点1−2−1を検討すると、引用例1には、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有させることの記載も示唆もないから、相違点1−1−1及び相違点1−2−1は、実質的な相違点である。
よって、相違点1−1−2及び相違点1−2−2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用例1に記載された発明ではない。

イ 本件発明2〜3について
(ア)対比
a 引用発明1−1について
本件発明2と引用発明1−1を対比すると、上記相違点1−1−1〜2に加えて、以下の点で相違する。
相違点1−1−3:本件発明2は0.000005質量%以上のポリフェノールを含有することを特定しているのに対して、引用発明1−1は0.000005質量%以上のポリフェノールを含有することの記載がない点。
本件発明3と引用発明1−1を対比すると、上記相違点1−1−1〜3に加えて、以下の点で相違する。
相違点1−1−4:本件発明3はpHが2.0〜7.0であるのに対して、引用発明1−1はpHが特定されていない点。

b 引用発明1−2について
本件発明2と引用発明1−2を対比すると、上記相違点1−2−1〜2に加えて、以下の点で相違する。
相違点1−2−3:本件発明2は0.000005質量%以上のポリフェノールを含有することを特定しているのに対して、引用発明1−1は0.000005質量%以上のポリフェノールを含有することの記載がない点。
本件発明3と引用発明1−2を対比すると、上記相違点1−2−1〜3に加えて、以下の点で相違する。
相違点1−2−4:本件発明3はpHが2.0〜7.0であるのに対して、引用発明1−1はpHが特定されていない点。

(イ)相違点の判断新規性
相違点1−1−1及び相違点1−2−1は、上記ア(イ)に示したとおり、実質的な相違点である。
よって、相違点1−1−2〜4、相違点1−2−2〜4を検討するまでもなく、本件発明2〜3は、引用例1に記載された発明ではない。

(ウ)相違点の判断進歩性
相違点1−1−1及び相違点1−2−1を検討すると、引用例1には、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有させることの記載も示唆もないから、引用例1には、引用発明1−1又は引用発明1−2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けがない。
また、引用例5〜11の記載事項を見ても、引用発明1−1又は引用発明1−2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けは見当たらない。
よって、相違点1−1−2〜4、相違点1−2−2〜4を検討するまでもなく、本件発明2〜3は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用例2を主引用例とした場合について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2を対比すると、両者は、「LMペクチンを含有する飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2−1:本件発明1は「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有するのに対して、引用発明2はLMペクチン、グレープフルーツ濃縮果汁(1/5濃縮品)、ジェランガム、キサンタンガム、クエン酸、着色料、香料、砂糖を含有する繊維状ゼリー15.0質量%と、グレープフルーツ濃縮果汁(1/5濃縮品)4.0質量%、砂糖7.5質量%、ポリデキストロース5.0質量%、クエン酸0.2質量%、着色料0.1質量%、香料0.2質量%及び水を含有する点。
相違点2−2:本件発明1はLMペクチンの含有量が0.01質量%以上であるのに対して、引用発明2はLMペクチンの含有量が不明である点。
相違点2−3:本件発明1は「水性液体飲料」であるのに対して、引用発明2は「繊維状ゼリーを配合してなる飲料」である点。

(イ)相違点の判断新規性
相違点2−1について検討すると、引用例2には、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有させることの記載も示唆もないから、相違点2−1は、実質的な相違点である。
よって、相違点2−2〜3を検討するまでもなく、本件発明1は、引用例2に記載された発明ではない。

イ 本件発明2〜3について
(ア)対比
本件発明2と引用発明2を対比すると、上記相違点2−1〜3に加えて、以下の点で相違する。
相違点2−4:本件発明2は0.000005質量%以上のポリフェノールを含有することを特定しているのに対して、引用発明2はポリフェノールの含有量が特定されていない点。
本件発明3と引用発明2を対比すると、上記相違点2−1〜4以外に相違点はない。

(イ)相違点の判断新規性
相違点2−1は、上記ア(イ)に示したとおり、実質的な相違点である。
よって、相違点2−1〜4を検討するまでもなく、本件発明2〜3は、引用例2に記載された発明ではない。

(ウ)相違点の判断進歩性
相違点2−1を検討すると、引用例2には、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有させることの記載も示唆もないから、引用例2には、引用発明2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けがない。
また、引用例6〜7の記載事項を見ても、引用発明2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けは見当たらない。
よって、相違点2−2〜4を検討するまでもなく、本件発明2〜3は、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張の概要
申立人は、異議申立書において、証拠方法として次の2に示す甲号証を提出して、以下の、取消理由通知において採用しなかった申立ての理由を主張している。

申立ての理由1−1:請求項4に係る発明は、甲第5〜8号証の記載を参照すると、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由2−1:請求項1、4に係る発明は、甲第5〜8号証の記載を参照すると、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由1−2:請求項4に係る発明は、甲第5〜8号証の記載を参照すると、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由2−2:請求項1、4に係る発明は、甲第5〜8号証の記載を参照すると、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由1−3:請求項1〜4に係る発明は、甲第5〜8号証の記載を参照すると、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由2−3:請求項1〜4に係る発明は、甲第5〜8号証の記載を参照すると、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由1−4:請求項1〜4に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由2−4:請求項1〜4に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由3:請求項1〜4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。

2 甲号証とその記載

甲第1号証:特開平10−179103号公報
甲第2号証:特開平3−277259号公報
甲第3号証:特開平11−206351号公報
甲第4号証:Lebensm.−Wiss.u.−Technol.,1982年,Vol.15,pp.348−350
甲第4号証の2:申立人による甲第4号証の抄訳
甲第5号証:近畿中国四国農業研究センター研究報告,2005年,第5号,pp.19−84
甲第5号証の2:申立人による甲第5号証の抄訳
甲第6号証:日本食品工業学会誌,1985年12月,第32巻,第12号,pp.864−869
甲第6号証の2:申立人による甲第6号証の抄訳
甲第7号証:Journal of Food Composition and Analysis,2006年,Vol.19,pp.157−166
甲第7号証の2:申立人による甲第7号証の抄訳
甲第8号証:Am.J.Clin.Nutr.,2015年,Vol.101,pp.931−938
甲第8号証の2:申立人による甲第8号証の抄訳

(1)甲第1号証、甲第2号証、甲第5〜8号証の記載
甲第1号証、甲第2号証、甲第5〜8号証の記載については、上記第4 2と同様である。

(2)甲第3号証の記載

記載(3a)
「【発明の属する技術分野】本発明は朝食用としての適性に優れたゲル状飲料に関し、更に詳細には非常に柔らかいゲル乃至はゲルとゾルとの混在状態で飲むという感覚で喫食するためのゲル状飲料に関する。」(段落0001)

記載(3b)
「しかし、これら公知の技術により得られる食品はゼリーの製造方法に関するものであり、その喫食に当たってはスプーン等で掬うことを要した。即ち、咀嚼するという喫食タイプのもので、本発明の目的とする飲むというタイプのものではなかった。」(段落0005)

記載(3c)
「これらゲル化剤の使用量としては、ゲル状飲料の粘度を800〜3000mPa・sに調整することができる量であることが必要であり、ゲル状飲料の組成によって異なってくるが、例えば、LMペクチンの場合はゲル状飲料に対して0.5〜1.7重量%、好ましくは0.6〜1.0重量%の範囲で、また、アルギン酸ナトリウムの場合はゲル状飲料に対して0.2〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.6重量%の範囲で適宜決定すればよい。」(段落0012)

記載(3d)
「上記以外に必要に応じて野菜や果物の粉砕物、果汁、液糖等の糖類、着色料、香料等を適宜使用することができる。殊に、緑黄色野菜や食物繊維を使用することによって、カルシウムの強化に限らずビタミン類や食物繊維を簡単に摂取することができる、という点から好ましい。」(段落0018)

記載(3e)
「最終製品であるゲル状飲料のpHはゲル強度に影響を与え、本発明におけるゲル状飲料のpHとしては、ゲル化剤としてLMペクチンを使用する場合は、pH3.6〜5.2、好ましくは4.0〜4.6を例示することができる。このpHが低くなりすぎるとゲルを形成し難くなると共に酸味が強くなり過ぎることとなり、反対にこのpHが高くなりすぎると脱エステル反応が生じる恐れがあり、ゲルを形成し難くなる傾向にある。」(記載0019)

記載(3f)
「【実施例】
【実施例1】LMペクチン1.2重量部、クエン酸0.3重量部、クエン酸ナトリウム0.4重量部、グラニュー糖粉砕物4.0重量部を混合し70°Cの湯35重量部に溶解後、人参ペースト10.0重量部、オレンジ果汁6.0重量部、香料0.05重量部を添加・混合する。よって得られた混合物60gを150mm×70mmのプラスチック容器に充填・密封し、95°Cの熱水で15分間殺菌を行う。その後、当該プラスチック容器を開封後、牛乳120mlと混合してゲル状飲料を得た。よって得られたゲル状飲料の粘度は1300mPa・sで、pHは4.2であった。」(段落0023)

記載(3g)
「【発明の効果】本発明のゲル状飲料は、非常に柔らかいゲル状またはゲルとゾルとの混在状態であるために、従来のゼリー食品のように、スプーン等により掬って口中で咀嚼するということを要せずに飲むという感覚で喫食することができる。」(段落0025)

(3)甲第4号証の記載
訳文にて示す。

記載(4a)
「柑橘類のジュースの濁りは、これらの重要な食品の主要な品質基準の一つである。0.2%高メトキシペクチン(HMP)を含む透明系にヘスペリジンを添加すると濁りが生じ、時間と共に増加した。HMPを含むモデル系の曇りはヘスペリジンと共に増加した。ペクチン濃度の増加は曇りの強さに有意な影響を及ぼさなかった。しかし、モデル系で得られた曇りの安定性はペクチン濃度に依存することが分かった。0.2%HMP及び150ppmヘスペリジンのモデルにおいて、沈殿を伴わない最大安定性が見出された。スクロース、低メトキシペクチン又はポリガラクツロン酸のみを含む系へのヘスペリジンの添加はHMPを含む系よりも著しく濁りが少なく、その安定性は非常に限られていた。」(アブストラクト)

記載(4b)
「本研究の目的は、オレンジジュース製品におけるこの品質基準の発生と安定化をより良く理解するためのクラウドモデルシステムを開発することであった。」(348頁右欄1〜3行)

記載(4c)
「クラウドモデルシステムは、クエン酸(1%)、クエン酸三カリウム(0.67%)、ショ糖(10%)、安息香酸類(0.1%)の溶液(pH3.8)とペクチン基質を含む。」(348頁右欄16〜18行)

記載(4d)


図2 ヘスペリジン濃度が異なる炭水化物により生み出された濁りに及ぼす影響(6時間後)」(349頁右欄図2)

記載(4e)
「ショ糖(10%)、LMP(0.2%)又はPGA(0.2%)のみを含有するモデルにヘスペリジンを添加すると、0.2%HMPで発生したものよりも著しく濁っていない曇りが発生し、非常に高濃度のヘスペリジンを添加した場合にのみ、曇りの吸光度は1O.D.を超えた(図3)。」(349頁右欄7〜12行)

3 当審の判断
(1)申立ての理由1−1及び申立ての理由2−1について
ア 甲第1号証に記載された発明
上記第4 3(1)に示したとおり、甲第1号証には、「引用発明1−1」及び「引用発明1−2」が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1−1又は引用発明1−2との対比は、上記第4 4(1)ア(ア)に記載のとおりである。

(イ)相違点の判断進歩性
相違点1−1−1及び相違点1−2−1を検討すると、甲第1号証には、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有させることの記載も示唆もないから、甲第1号証には、引用発明1−1又は引用発明1−2において、本件発明1に当該ポリフェノールを含有させる動機付けがない。
また、甲第5〜8号証の記載事項を見ても、引用発明1−1又は引用発明1−2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けは見当たらない。
よって、相違点1−1−2、相違点1−2−2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第5〜8号証を参照しても、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4について
(ア)対比
a 引用発明1−1について
本件発明4と引用発明1−1を対比すると、上記相違点1−1−1〜4以外に以下の点で相違する。
相違点1−1−5:本件発明4は、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することが特定されているのに対して、引用発明1−1は、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することの記載がない点。

b 引用発明1−2について
本件発明4と引用発明1−2を対比すると、上記相違点1−2−1〜4以外に以下の点で相違する。
相違点1−2−5:本件発明4は、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することが特定されているのに対して、引用発明1−2は、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することの記載がない点。

(イ)相違点の判断新規性
相違点1−1−1及び相違点1−2−1については、上記第4 4(1)ア(イ)で述べたとおり、実質的な相違点である。
したがって、相違点1−1−2〜5、相違点1−2−2〜5を検討するまでもなく、本件発明4は、甲第5〜8号証を参照しても、甲第1号証に記載された発明ではない。

(ウ)相違点の判断進歩性
相違点1−1−1及び相違点1−2−1については、上記イ(イ)で述べたとおりである。
よって、相違点1−1−2〜5、相違点1−2−2〜5を検討するまでもなく、本件発明4は、甲第5〜8号証を参照しても、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおり、申立ての理由1−1及び申立ての理由2−1には、理由がない。

(2)申立ての理由1−2及び申立ての理由2−2について
ア 甲第2号証に記載された発明
上記第4 3(2)に示したとおり、甲第2号証には、「引用発明2」が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2との対比は、上記第4 4(2)ア(ア)で述べたとおりである。

(イ)相違点の判断進歩性
相違点2−1を検討すると、甲第2号証には、「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有させることの記載も示唆もないから、甲第2号証には、引用発明2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けがない。
また、甲第5〜8号証の記載事項を見ても、引用発明2において、当該ポリフェノールを含有させる動機付けは見当たらない。
よって、相違点2−2〜3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第5〜8号証を参照しても、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と引用発明2を対比すると、上記相違点2−1〜4以外に以下の点で相違する。
相違点2−5:本件発明4は、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することが特定されているのに対して、引用発明2は、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することの記載がない点。

(イ)相違点の判断新規性
相違点2−1については、上記第4 4(2)ア(イ)で述べたとおり、実質的な相違点である。
よって、相違点2−2〜5を検討するまでもなく、本件発明4は、甲第5〜8号証を参照しても、引用例2に記載された発明ではない。

(ウ)相違点の判断進歩性
相違点2−1については、上記イ(イ)で述べたとおりである。
相違点2−5について検討する。
甲第2号証には、飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化する飲料とすることについて記載も示唆もないことから、引用発明2をかかる形態の飲料とする動機付けがない。
また、甲第5〜8号証の記載を見ても、引用発明2をかかる形態の飲料とする動機付けは見当たらない。
よって、相違点2−2〜4を検討するまでもなく、本件発明4は、甲第5〜8号証を参照しても、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおり、申立ての理由1−2及び申立ての理由2−2には、理由がない。


(3)申立ての理由1−3及び申立ての理由2−3について
ア 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、記載(3a)より、低メトキシルペクチンとカルシウムとの反応ゲル状物であるゲル状飲料が記載されており、記載(3b)、(3c)及び(3h)より、該ゲル状飲料は、非常に柔らかいゲル乃至はゲルとゾルとの混在状態で飲むタイプのものであることが記載されており、記載(3d)より、該ゲル状飲料におけるLMペクチン含有量は0.5〜1.7重量%であることが記載されており、記載(3e)より、該ゲル状飲料には、必要に応じて果物の粉砕物、果汁を適宜使用することができることが記載されており、記載(3f)より、該ゲル状飲料のpHは3.6〜5.2とすることができることが記載されている。そして、甲第3号証には、実施例として、LMペクチン1.2重量部、クエン酸0.3重量部、クエン酸ナトリウム0.4重量部、グラニュー糖粉砕物4.0重量部を混合し70℃の湯35重量部に溶解後、人参ペースト10.0重量部、オレンジ果汁6.0重量部、香料0.05重量部を添加・混合して得られた混合物60gを、牛乳120mlと混合して、pH4.2のゲル状飲料を得たことが記載されている。
ここで、低メトキシルペクチンとは、LMペクチンのことである。
よって、甲第3号証には、
「LMペクチン1.2重量部、クエン酸0.3重量部、クエン酸ナトリウム0.4重量部、グラニュー糖粉砕物4.0重量部を混合し70℃の湯35重量部に溶解後、人参ペースト10.0重量部、オレンジ果汁6.0重量部、香料0.05重量部を添加・混合して得られた混合物60gを、牛乳120mlと混合した、pH4.2のゲル状飲料。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、両者は「0.01質量%以上LMペクチンを含有する飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3−1:本件発明1は水性液体飲料であるのに対して、甲3発明はゲル状飲料である点。
相違点3−2:本件発明1は「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有するのに対して、甲3発明は、かかるポリフェノールを含むことが記載されていない点。

(イ)判断(新規性
上記相違点3−1について検討する。
願書に添付した明細書の段落0009には「飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化する」との記載があることからみて、本件発明1の「水性液体飲料」は、ゲル化される液体部分を含むものであって、全体としてゲル状の飲料を包含するものではないと認められる。よって、相違点3−1は実質的な相違点である。
上記相違点3−2について検討する。
甲3発明は、甲第5〜8号証の記載を参照しても、上記特定のポリフェノールを含んでいないことから、相違点3−2は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第5〜8号証を参照しても、甲第3号証に記載された発明ではない。

(ウ)判断(進歩性
上記相違点3−1について検討する。
甲第3号証には、ゲル状飲料を水性液体飲料とすることの記載も示唆もないことから、甲3発明において、水性液体飲料とすることの動機付けはない。
上記相違点3−2について検討する。
甲第3号証には、上記特定のポリフェノールを含有させることの記載も示唆もないから、甲3発明において、かかるポリフェノールを含有させる動機付けはない。
また、甲第5〜8号証の記載を見ても、甲3発明において、かかるポリフェノールを含有させる動機付けは見当たらない。
よって、本件発明1は、甲第5〜8号証を参照しても、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜4について
本件発明2〜4は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明2〜4と甲3発明を対比すると、上記相違点3−1及び相違点3−2が存在する。
相違点3−1及び相違点3−2については、上記イ(イ)及び上記イ(ウ)に示したとおりである。
したがって、本件発明2〜4は、甲第5〜8号証を参照しても、甲第3号証に記載された発明ではなく、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 申立人の主張について
申立人は異議申立書において、甲第3号証に記載された発明は水をベースとして調製されており、固体状ではなく、飲用できる飲料であるから、「水性液体飲料」に該当する旨主張しているが、甲第3号証に記載されたゲル状飲料が本件発明の「水性液体飲料」に該当しない点については、上記イ(イ)に示したとおりであるから、当該主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおり、申立ての理由1−3及び申立ての理由2−3には、理由がない。

(4)申立ての理由1−4及び申立ての理由2−4について
ア 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、柑橘類ジュースの濁りは、主要な品質基準の一つであること、オレンジジュース製品における品質基準の発生と安定化をより良く理解するためのクラウドモデルシステムを開発することを目的としていることが記載されており(記載(4a)、(4b))、クエン酸(1%)、クエン酸三カリウム(0.67%)、ショ糖(10%)、安息香酸類(0.1%)の溶液(pH3.8)に、LMP0.2%を含有するモデルに、ヘスペリジンを0〜3000ppmの範囲で添加したことが記載されている(記載(4c)、(4d)、(4e))。
ここで、LMPは、LMペクチンのことである。
よって、甲第4号証には、
「クエン酸1%、クエン酸三カリウム0.67%、ショ糖10%、安息香酸類0.1%、LMペクチン0.2%、及び0〜3000ppmの範囲のヘスペリジンを含むオレンジジュースの濁りの発生と安定化をより良く理解するためのクラウドモデルシステム。」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明を対比すると、両者は「0.01質量%以上のLMペクチンを含有する液体。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4−1:本件発明1は水性液体飲料であるのに対して、甲4発明はクラウドモデルシステムである点。
相違点4−2:本件発明1は「ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール」を含有するのに対して、甲4発明は、かかるポリフェノールを含むことが記載されていない点。

(イ)判断(新規性
事案に鑑み、上記相違点4−2から検討する。
甲4発明は上記特定のポリフェノールは含まないことから、相違点4−2は実質的な相違点である。
したがって、上記相違点4−1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明ではない。

(ウ)判断(進歩性
事案に鑑み、上記相違点4−2から検討する。
甲第4号証には、上記特定のポリフェノールを含ませることの記載も示唆もないことから、甲4発明において、かかるポリフェノールを含有させる動機付けはない。
また、甲第5〜8号証の記載を見ても、甲4発明において、かかるポリフェノールを含有される動機付けは見当たらない。
したがって、上記相違点4−1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜4について
本件発明2〜4は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明2〜4と甲3発明を対比すると、上記相違点4−1及び相違点4−2が存在する。
相違点4−2については、上記イ(イ)及び上記イ(ウ)に示したとおりである。
したがって、相違点4−1について検討するまでもなく、本件発明2〜4は、甲第4号証に記載された発明ではなく、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
以上のとおり、申立ての理由1−4及び申立ての理由2−4には、理由がない。

(5)申立ての理由3について
ア 願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の記載
本件明細書には以下の記載がある。

記載(A)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LMペクチンは健康産業上優れた性質を持っているにも関わらず、特有の不快な臭いや不快な味があり、かつ、経時的に不快な臭いが増強することもあるため飲用に適さないという問題があることがわかった。
【0007】
本発明の目的は、経時的に増強することもあるLMペクチンの不快な臭いや不快な味が抑制された水性液体飲料を提供することである。」

記載(B)
「【0012】
本発明のポリフェノールとは、分子内に複数のフェノール性水酸基をもつ成分のことであり、その構造の違いからフラボン、フラボノール(糖転移ルチンを含む)、フラバノン(ナリンジン、糖転移ヘスペリジンを含む)、イソフラボン、カルコン、アントシアニンなどに分類され、その他に没食子酸、クロロゲン酸、エラグ酸などもあり、更には比較的分子量が大きく分子内水酸基の多い縮合型又は加水分解型のタンニン等もこれに含まれ、プロアントシアニジンもこれに含まれる。なお、大豆イソフラボンはイソフラボンに含まれ、イソフラボンはフラボンに含まれる。
【0013】
なお、本発明のポリフェノールは合成品だけでなく植物の抽出物に含まれるポリフェノールも使用できる。本発明の植物の抽出物とは、一般的な抽出エキスの他、果汁も使用できる。抽出エキスは抽出溶媒を用いて、適当な温度(低温又は加熱)にて、植物から抽出する方法などにより行う。抽出溶媒は植物に応じて適宜選択できるが、一般的には、水、エタノール等の親水性溶媒及びこれらの混合溶媒が用いられる。なお、植物の抽出部位は根、葉、幹、樹皮、枝、果実、種子、花等のうちいずれの部位を用いてもよい。果汁は、果実を破砕して窄汁又は裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものの他、果実の窄汁を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁を清水などで希釈した還元果汁、窄汁を乾燥させた粉末果汁などが使用できる。このような植物の抽出物としてはタデ科、ツツジ科、スグリ科、アブラナ科、ヤシ科、イネ科、ミソハギ科、ブドウ科、シソ科、モクセイ科、セリ科、スイカズラ科に属する植物の抽出物が好ましく、そのような抽出物及び果汁由来のポリフェノールの主な代表例としては、タデ科のソバ(ルチンなどのフラボノール類を含む)や、ツツジ科のビルベリー、スグリ科のカシス、アブラナ科のマカ、ヤシ科のアサイー(シアニジンなどのアントシアニン類を含む)や、イネ科のコーンの雌しべの花柱であるコーンシルク(ゲニステインなどのフラボン類を含む)、クマザサ(プロアントシアニジン類を含む)や、ミソハギ科のザクロ(プニカラジンなどの加水分解型タンニン)や、ブドウ科のブドウ(レスベラトロールなどを含む)やブドウの種子(プロアントシアニジン類などを含む)、シソ科のアカシソやローズマリー(ロズマリン酸などを含む)、モクセイ科のオリーブ(ヒドロキシチロソールなどを含む)、セリ科のボタンボウフウ(ルチンなどのフラボノールやクロロゲン酸を含む)、スイカズラ科のエルダーベリー(シアニジングリコシドやデルフィニジングリコシドなどのアントシアニンを含む)などが挙げられる。また、飲食物からの抽出物の代表例としてはワインポリフェノール(プロアントシアニジン類や二量体レスベラトロール類などを含む)がある他、精製品として糖転移ヘスペリジン、クロロゲン酸などがある。」

記載(C)
「【0048】
実施例A1〜A14及び比較例A1
精製水にクエン酸水和物、安息香酸ナトリウム、ソバ抽出物を添加して溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。次いで、LMペクチンを溶解させ、該溶液にさらに精製水を加えて全量100mlとし、水酸化ナトリウムでpHを微調整した。各試験液をガラスビンに充填後殺菌し、実施例A1の水性液体飲料を得た。以下の実施例A2〜A14、比較例A1も実施例A1と同様に調製した。それぞれの処方を表7及び表8に示す。
【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
試験例(風味確認試験)
風味確認試験では、LMペクチン特有の不快な臭いと味について、比較例A1をコントロールとして各サンプルを相対的に評価した。なお、サンプルの評価は訓練された官能パネル3名で実施し、表9に示す評価基準に従い採点した。採点結果は評価項目ごとに平均点を算出し、表10に示した。
【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
表10から明らかなように、実施例A1〜A14ではLMペクチンの不快な臭いと味が大きく抑えられた。以上の結果から、LMペクチン特有の不快な臭いや味を特定のポリフェノールを配合することで改善することができた。」

記載(D)
「【0060】
実施例A18〜A33
精製水にクエン酸水和物、安息香酸ナトリウム、ヘスペリジンを添加して溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。次いで、LMペクチンを溶解させ、該溶液にさらに精製水を加えて全量100mlとし、水酸化ナトリウムでpHを微調整した。各試験液をガラスビンに充填後殺菌し、実施例A18の水性液体飲料を得た。以下の実施例A19?A33も実施例A18と同様に調製した。それぞれの処方を表13及び表14に示す。
【0061】
【表13】

【0062】
【表14】

【0063】
試験例(風味確認試験)
風味確認試験では、LMペクチン特有の不快な臭いと味について、比較例A1をコントロールとして各サンプルを相対的に評価した。なお、サンプルの評価は訓練された官能パネル3名で実施し、表9に示す評価基準に従い採点した。採点結果は評価項目ごとに平均点を算出し、表15及び表16に示した。
【0064】
【表15】

【0065】
【表16】

【0066】
表15及び表16から明らかなように、実施例A18〜A25及び実施例A26〜A33ではLMペクチンの不快な臭いと味が大きく抑えられた。以上の結果から、LMペクチン特有の不快な臭いや味を特定のポリフェノールを配合することで改善することができた。」

イ 本件発明の解決しようとする課題
本件発明は、特許請求の範囲、明細書の全体の記載事項(特に、記載(A))及び出願時の技術常識からみて、「経時的に増強することもあるLMペクチンの不快な臭いや不快な味が抑制された水性液体飲料」の提供を解決しようとする課題とするものであると認められる。

ウ 判断
本件明細書の記載(B)には、ポリフェノールには、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、クロロゲン酸などが含まれ、植物の抽出物に含まれるポリフェノールも使用できることが記載されており、ブドウ科のブドウの抽出物にはレスベラトロールが含まれることも記載されている。
そして、記載(C)及び記載(D)には、「特定のポリフェノール」として本件発明1のポリフェノールの選択肢として挙げられた特定のポリフェノール及び植物抽出物を用いた水性液体飲料である実施例が、ポリフェノールを含まないコントロールである比較例A1と比較して、LMペクチンの不快な臭いと味が大きく抑えられたことが記載されている。
してみると、本件発明1に記載されたポリフェノールを用いれば、経時的に増強することもあるLMペクチンの不快な臭いや不快な味が抑制された水性液体飲料とすることができることを、当業者が理解できる。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

エ 申立人の主張について
申立人は、異議申立書38頁6〜16行において、
「抽出物は、抽出に使用する溶媒の種類や抽出条件(温度、時間等)が異なれば、抽出される成分も異なるものになることは技術常識である。
ある特定の抽出物(例えば、ソバ抽出物)でLMペクチン特有の不快な臭いと味が抑制されるとしても、これとは異なる別の溶媒による抽出物や異なる抽出条件においても同様にLMペクチン特有の不快な臭いと味が抑制されるという技術常識はないし、本件明細書の発明の詳細な説明においても何ら説明もされておらず、全く不明である。
そうすると、本件発明1−4は、本件明細書の発明の詳細な説明から、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているので、サポート要件を満たしていない。」
と主張している。
しかしながら、本件発明は、ポリフェノールとして特定の抽出物を用いるものであるところ、記載(C)及び記載(D)では、本件発明1の抽出物である複数のポリフェノールや本件発明1のポリフェノールである糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、レスベラトロール、クロロゲン酸について、LMペクチンの不快な臭いや不快な味が抑制される効果が確認されていることから、抽出条件によらず、本件発明1のポリフェノールを含む抽出物であれば、LMペクチンの不快な臭いや不快な味が抑制される効果が得られることは、当業者が把握できるものであるから、上記主張は採用できない。

オ 小括
以上のとおり、申立ての理由3には、理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01質量%以上のLMペクチン、並びに
ソバ抽出物、ボタンボウフウ、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、大豆イソフラボン、ビルベリー抽出物、カシス抽出物、マカ抽出物、アサイー抽出物、エルダーベリー抽出物、レスベラトロール、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、コーンシルク抽出物、クマザサ抽出物、ザクロ抽出物、ブドウ抽出物、ワイン抽出物、アカシソ抽出物、及びオリーブ抽出物からなる群から選ばれる一種以上であるポリフェノール
を含有する水性液体飲料。
【請求項2】
0.000005質量%以上のポリフェノールを含有する請求項1に記載の水性液体飲料。
【請求項3】
pHが2.0〜7.0である請求項1又は2に記載の水性液体飲料。
【請求項4】
飲む前は通常の水性液体飲料であるが、飲んだ後に胃の中で胃酸と反応してゲル化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性液体飲料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2022-03-25 
出願番号 P2016-561939
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 吉岡 沙織
冨永 保
登録日 2020-11-24 
登録番号 6798314
権利者 大正製薬株式会社
発明の名称 水性液体飲料  
代理人 特許業務法人 津国  
代理人 弁理士法人 津国  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ