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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 発明同一 A23L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1385164 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-05-12 |
確定日 | 2022-03-07 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第6816391号発明「表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6816391号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6816391号の請求項1〜14に係る特許についての出願は、平成28年6月30日に出願され、令和2年12月28日にその特許の設定登録がされ、令和3年1月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年5月12日に特許異議申立人 鈴木順子(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年7月19日に特許異議申立人 閑野一樹(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後、当審より、令和3年11月1日付けで取消理由が通知され、それに対して、特許権者は、令和3年12月28日に意見書を提出した。 第2 本件特許発明 特許第6816391号の請求項1〜14に係る特許に係る発明は、それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 大豆たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、 当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、 当該大豆たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、 ハンバーグ、ミートボール、つくね、メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品。 【請求項2】 成形挽肉加工食品原料における挽肉と大豆たん白との重量比(挽肉:大豆たん白)が、1:0.01〜1.5である、請求項1記載の成形挽肉加工食品。 【請求項3】 挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1又は2記載の成形挽肉加工食品。 【請求項4】 ハンバーグである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形挽肉加工食品。 【請求項5】 冷凍品である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形挽肉加工食品。 【請求項6】 平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、水分量が1〜20重量%である大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法であって、 成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、ミートボール、つくね、メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、製造方法。 【請求項7】 成形挽肉加工食品原料における挽肉と大豆たん白との重量比(挽肉:大豆たん白)が、1:0.01〜1.5である、請求項6記載の製造方法。 【請求項8】 挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項6又は7記載の製造方法。 【請求項9】 成形挽肉加工食品がハンバーグである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項10】 大豆たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱することを含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項11】 前記加熱後の成形物を冷凍することを含む、請求項10記載の製造方法。 【請求項12】 平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、水分量が1〜20重量%である大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法。 【請求項13】 大豆たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱することを含む、請求項12記載の方法。 【請求項14】 前記加熱後の成形物を冷凍することを含む、請求項13記載の方法。」 (以下、請求項順に、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、……、「本件特許発明14」ともいう。) 第3 取消理由及び特許異議申立理由の概要 1 取消理由の概要 当審において、令和3年11月1日付け取消理由通知に記載した取消理由は、次のとおりである。 「1.(明確性要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 記 請求項1には「当該大豆たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とあり、請求項6及び請求項12には「水分量が1〜20重量%である大豆たん白」とあるが、これらで規定される「水分量」が、「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の直前における「大豆たん白の水分量」であるのか、混合の後における「大豆たん白の水分量」であるのか、以下の(1)及び(2)に示すとおり明確でない。 (1)本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0023には「植物性たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際に75重量%以下であると、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物が柔らかくなり過ぎず、十分な成形性を有し得る。また、混合時に植物性たん白がつぶれ難いため、加熱調理後における表面の凹凸が増強され易い。」との記載があり、これは「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合された後の「植物性たん白の水分量」が重要であることを示すと解され得る記載であるといえる。 したがって、請求項1、6及び12で規定される「水分量」が、「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合される直前における「大豆たん白の水分量」であるのか、混合された後における「大豆たん白の水分量」であるのか、明確でない。 (2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0028には「本発明は成形挽肉加工食品原料として、水が用いられ得る。」(段落0028)の記載があって、水は「その他の成形挽肉加工食品原料」であることが示されるとともに、同段落0030には「植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合する方法は特に制限されず、……。混合の順序は特に制限されない……、植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料の1種又は2種以上の混合物に、植物性たん白を加えて混合した後、残りの成形挽肉加工食品原料を加えて混合してもよい。」との記載があって、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合を複数回に分けておこなってもよいことが示されている。 そうすると、上記(1)については、請求項1、6及び12で規定される「水分量」は、「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合される直前における「大豆たん白の水分量」であると解するとしても、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合を複数回に分けておこなう場合には、請求項1、6及び12で規定される「水分量」が、一回目の混合の直前における「大豆たん白の水分量」のみを規定したものであるのか、二回目以降の混合の直前における「大豆たん白の水分量」も規定したものであるのか、不明である。 なお、仮に、請求項1、6及び12で規定される「水分量」が、二回目以降の混合の直前における「大豆たん白の水分量」も規定したものであると解すると、例えば、一回目に、「大豆たん白」を水などの「その他の成形挽肉加工食品原料」の一部に混合し、二回目に、一回目の混合で得られた「その他の成形挽肉加工食品原料」の一部に混合した「大豆たん白」を「その他の成形挽肉加工食品原料」の残部に混合する場合には、二回目の混合の直前における「大豆たん白の水分量」は、一回目の混合の後における「大豆たん白の水分量」と同じものとなるから、その規定は、結局、「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の後における「大豆たん白の水分量」を規定したものと同じものになる。 したがって、請求項1、6及び12で規定される「水分量」が、「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の直前における「大豆たん白の水分量」であるのか、混合の後における「大豆たん白の水分量」であるのか、明確でない。 以上のとおりであるから、請求項1、6及び12に係る発明、並びにそれらの請求項を直接又は間接に引用する請求項2〜5、7〜11、13〜14に係る発明は、明確でない。」 2 特許異議申立理由の概要 (1)申立人Aの特許異議申立理由の概要 申立人Aの提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 [申立理由(A1−1)] 本件特許発明1、4、6、9、及び12は、下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1、4、6、9、及び12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(A1−2)] 本件特許発明1〜14は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1〜14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(A2)] 本件特許発明の課題は「加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品」の提供であり、凹凸は、成形挽肉加工食品の「表面」にあるものと理解されるが、「メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」については本件特許明細書が指摘する発明の課題は存在せず、それゆえ、挽肉の成形物の表面を凹凸を増強するとの技術手段がいかなる意義を持つものであるのか、本件特許明細書の記載からは理解できないから、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、請求項に係る発明の属する技術分野の理解又は課題及びその解決手段の理解をすることができないものであって、本件特許発明1〜14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(委任省令要件)を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 記 <申立人Aがその特許異議申立書に添付して提出した甲第1号証〜甲第3号証> 甲第1号証:崎田高史,“大豆タンパク質の製造と食品への利用”,油化学,第28巻,第10号(1979年),p.781−794(以下、「甲A1」という。) 甲第2号証:農林水産省,日本農林規格「植物性たん白」(JAS0838),2019年8月19日改正(以下、「甲A2」という。) 甲第3号証:独立行政法人 農林水産消費安全技術センター,“植物性たん白の日本農林規格に係る規格調査結果”,p.1−6、並びに別添1「品質実態調査の結果」p.1−3及び別添2「利用実態調査の結果」p.1−6(以下、「甲A3」という。) (2)申立人Bの特許異議申立理由の概要 申立人Bの提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 [申立理由(B1)] 本件特許発明1〜4、6〜10、12、13は、その優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた特許出願である甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、本件特許発明1〜4、6〜10、12、13に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 [申立理由(B2)] 本件特許発明1〜14は、下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1〜14に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B3−1)] 本件特許発明1〜3、6〜8、10、12、及び13は、下記の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1〜3、6〜8、10、12、及び13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B3−2)] 本件特許発明5、11、及び14は、下記の甲第3号証に記載された発明及び甲第16号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明5、11、及び14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B4−1)] 本件特許発明1〜3、6〜8、10、12、及び13は、下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1〜3、6〜8、10、12、及び13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B4−2)] 本件特許発明5、11、及び14は、下記の甲第4号証に記載された発明及び甲第17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明本件特許発明5、11、及び14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B5)] 本件特許発明1、3〜6、8〜14について、大豆たん白を「含有」することの規定があるが、その含量についての規定がなく、ごく少量の大豆たん白しか含まない態様であれば、「加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供すること」という発明の課題が解決できないことは明らかであるから、本件特許発明1、3〜6、8〜14は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、本件特許発明1、3〜6、8〜14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取消されるべきものである。 [申立理由(B6)] 本件特許発明1〜14について、大豆たん白が「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合される旨が規定されているが、この「その他の成形挽肉加工食品原料」の範囲が不明確であるから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件特許発明1〜14に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B7−1)] 本件特許発明1〜14について、「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合される際の大豆たん白の平均サイズ及び水分量が規定されており、本件特許明細書には、「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合され得る旨が記載されているが、平均サイズ及び水分量の規定は複数回に分けて混合される際のどの回において満たせばよいのか不明であるから、本件特許発明1〜14は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件特許発明1〜14に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由(B7−2)] 本件特許発明1〜14について、「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合される際の大豆たん白の平均サイズ及び水分量が規定されており、本件特許明細書には、「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合され得る旨が記載されているが、複数回に分けた場合の実施例は本件特許明細書に記載がなく、実際に課題を解決できるかどうか確認されていないから、本件特許発明1〜14は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、本件特許発明1〜14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 <申立人Bがその特許異議申立書に添付して提出した甲第1号証〜甲第18号証> 甲第1号証:特開2017−147952号公報(以下、「甲B1」という。) 甲第2号証:特開2003−235461号公報(以下、「甲B2」という。) 甲第3号証:特開2000−217518号公報(以下、「甲B3」という。) 甲第4号証:特開2004−329093号公報(以下、「甲B4」という。) 甲第5号証:第2章 日本食品標準成分表 PDF(日本語版),文部科学省,「4 豆類」の表のうち「鉄」の項から左側の抜粋,登録:平成27年12月,[online],[2021年7月15日出力],インターネット<https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm>(以下、「甲B5」という。) 甲第6号証:植物性たん白の日本農林規格 昭和五十一年九月十一日農林省告第八百三十八号,最終改正:平成二十四年七月十七日 農林水産省告示第一六八四号,農林水産省,[online],[2021年7月15日出力],インターネット<https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0001024.html>(以下、「甲B6」という。) 甲第7号証:粒状大豆たん白,昭和産業株式会社ホームページ,右端を除いた部分の抜粋[online],[2021年7月15日出力],インターネット<https://www.showa-sangyo.co.jp/pro/soybean/product01/>(以下、「甲B7」という。) 甲第8号証:“(70)フライパン”,株式会社エフシージー総合研究所,2014年9月5日,[online],[2021年7月15日出力],インターネット<https://www.fcg-r.co.jp/compare/foods_140905.html>(以下、「甲B8」という。) 甲第9号証:特開平11−276129号公報(以下、「甲B9」という。) 甲第10号証:特開2004−283116号公報(以下、「甲B10」という。) 甲第11号証:崎田高史,“大豆タンパク質の製造と食品への利用”,油化学,第28巻,第10号(1979年),p.781−794(「甲A1」と同じ。) 甲第12号証:特開平8−289742号公報(以下、「甲B12」という。) 甲第13号証:特開2000−157184号公報(以下、「甲B13」という。) 甲第14号証:特開2018−82670号公報(以下、「甲B14」という。) 甲第15号証:特開2014−97020号公報(以下、「甲B15」という。) 甲第16号証:牟田元気,“焼いた餃子の保存方法と賞味期限は?”,保存方法まとめ隊,2017年11月20日更新,[online],[2021年7月15日出力],インターネット<https://保存方法.com/%E7%84%BC%E3%81%84%E3%81%9F%E9%A4%83%E5...>(以下、「甲B16」という。) 甲第17号証:“揚げてから冷凍したフライの上手な温め直し方”,はるかぜキッチン,2012年,[online],[2021年7月15日出力],インターネット<https://www.harukaze-kitchen.com/atatame.html>(以下、「甲B17」という。) 甲第18号証:特願2016−130538号に係る令和2年4月28日提出の意見書(以下、「甲B18」という。) なお、特許権者は、令和3年12月28日提出の意見書に添付して、次の乙第1号証を提出した。 <特許権者の提出した乙第1号証> 乙第1号証:崎田高史,“大豆タンパク質の製造と食品への利用”,油化学,第28巻,第10号(1979年),p.781−794(「甲A1」と同じ。) 第4 当審の判断 当審は、本件特許発明1〜14に係る特許は、令和3年11月1日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由により取消すべきものではないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 令和3年11月1日付け取消理由通知に記載した取消理由及び申立理由(B7−1)について (1)請求項1には「当該大豆たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とあり、請求項6及び請求項12には「水分量が1〜20重量%である大豆たん白」とあることについて、「混合される際」とは、「混合された際」のような過去形を用いた表現ではなく、現在形を用いた表現であること、また、請求項1、請求項6及び請求項12において規定される「水分量」が、その他の成形挽肉加工食品原料との混合の後における「大豆たん白の水分量」であることを示す記載は請求項1、請求項6及び請求項12にはないことから、いずれも、混合直前の「大豆たん白の水分量」であると理解することに不自然な点はない。 そればかりか、請求項1、請求項6及び請求項12において規定される「水分量」が、仮に、その他の成形挽肉加工食品原料との混合の後における「大豆たん白の水分量」であると解すると、その規定を満たすか否かを確かめるためには、その他の成形挽肉加工食品原料と混合された「大豆たん白」を、混合の後に混合物から分離してその水分量を分析するという、ほとんど実現不可能な分析が必要となることから、混合の後における「大豆たん白の水分量」であると理解することはきわめて不自然である。 (2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0023の「植物性たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際に75重量%以下であると、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物が柔らかくなり過ぎず、十分な成形性を有し得る。また、混合時に植物性たん白がつぶれ難いため、加熱調理後における表面の凹凸が増強され易い。」との記載は、同じ段落に「植物性たん白の水分量は、植物性たん白に直接、水を加えること(所謂、水戻し)や、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で乾燥することによって適宜調整できる。」との記載があって、植物性たん白の水分量を調整する手法が示されていること、同段落0030に「成形挽肉加工食品原料に水が含まれる場合、当該水は植物性たん白と直接に混合せずに、それら以外の成形挽肉加工食品原料と混合し、得られた混合物を植物性たん白と混合することが好ましい。あるいは、水及び植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料を混合し、得られた混合物に水と植物性たん白を加え、直ぐに混合開始することが好ましい。」との記載があって、「その他の成形挽肉加工食品原料」に水が含まれる場合については、植物性たん白に水が含まれる場合とは別に記載されていること、及び、甲A1に「粉末状大豆タンパクに対する加水比は(魚肉すり身に対する加水は,のばし水といわれ,これとは区別される),……。」(789頁右欄36〜42行)と記載されるように、食品原料として用いられる水は、通常、大豆たん白のいわゆる「水戻し」に用いる水とは区別されていること、並びに、植物性たん白は、その水分量が低ければつぶれ難いことが技術常識であることから、植物性たん白がその他の成形挽肉加工食品原料と混合される直前の、植物性たん白の水分量について述べたものとして、明確に理解される。 (3)本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0028の「本発明は成形挽肉加工食品原料として、水が用いられ得る。」(段落0028)との記載があって、水は「その他の成形挽肉加工食品原料」であることが示されるとともに、同段落0030には「植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合する方法は特に制限されず、……。混合の順序は特に制限されない……、植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料の1種又は2種以上の混合物に、植物性たん白を加えて混合した後、残りの成形挽肉加工食品原料を加えて混合してもよい。」との記載があって、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合を複数回に分けておこなってもよいことが示されていることについても、段落0023に「植物性たん白の水分量は、植物性たん白に直接、水を加えること(所謂、水戻し)や、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で乾燥することによって適宜調整できる。」との記載があって、植物性たん白の水分量を調整する手法が示されていること、同段落0030に「成形挽肉加工食品原料に水が含まれる場合、当該水は植物性たん白と直接に混合せずに、それら以外の成形挽肉加工食品原料と混合し、得られた混合物を植物性たん白と混合することが好ましい。あるいは、水及び植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料を混合し、得られた混合物に水と植物性たん白を加え、直ぐに混合開始することが好ましい。」との記載があって、「その他の成形挽肉加工食品原料」に水が含まれる場合については、植物性たん白に水が含まれる場合とは別に記載されていること、及び、甲A1に「粉末状大豆タンパクに対する加水比は(魚肉すり身に対する加水は,のばし水といわれ,これとは区別される),……。」(789頁右欄36〜42行)と記載されるように、食品原料として用いられる水は、通常、大豆たん白のいわゆる「水戻し」に用いる水とは区別されていること、並びに、植物性たん白は、その水分量が低ければつぶれ難いことが技術常識であることから、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合を複数回に分けておこなう場合には、請求項1、6及び12で規定される「水分量」は、二回目以降の混合の直前における「大豆たん白の水分量」ではなく、一回目の混合の直前における「大豆たん白の水分量」のみを規定したものであると、明確に理解される。 (4)上記(1)〜(3)より、請求項1、6及び12で規定される「水分量」は、「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の直前における「大豆たん白の水分量」であることが、明確である。 以上のとおりであるから、令和3年11月1日付け取消理由通知に記載した取消理由及び申立理由(B7−1)によって、請求項1、6及び12に係る発明、並びにそれらの請求項を直接又は間接に引用する請求項2〜5、7〜11、13〜14に係る発明は、明確でないとすることはできない。 2 申立理由(A1−1)及び申立理由(A1−2)について (1)甲A1の記載事項及び甲A1に記載された発明 ア 甲A1の記載事項 甲A1には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲A1−1): 「 」(785頁表−5) 記載事項(甲A1−2): 「 」(785〜786頁表−6) 記載事項(甲A1−3): 「3 植物性タンパクの日本農林規格(JAS)及びその関連加工食品に対する使用基準 植物性タンパク(粉末状,ペースト状,粒状及び繊維状)にJASが定められ,JAS表示のあるソーセージ,チルドハンバーグなどの関連加工食品に使用する場合はJASの格付けされた植物性タンパクに限られる。 植物性タンパクのJASの概要を表-5に,また,これをJAS表示の関連加工食品に用いる場合の使用基準を表-6に示す。」(787頁左欄2〜10行) 記載事項(甲A1−4): 「5・3 ひき肉調理食品 ひき肉調理食品のひき肉増量材として,粒状乾燥大豆タンパクが主に用いられる。直接または約2倍の水でもどして使用する。粒状大豆タンパクは,ひき肉に比べて安価で安定供給されるほかに,(1)常温で長期間保存でき,5〜10minで水もどしができる,(2)肉じゅう,野菜じゅうの吸収及び(3)抱脂性による調理歩止まりの向上,(4)ひき肉に近い食感で,熱による収縮がない,(5)コレステロールを含まず,食品の脂肪分の調整にも利用できるなど,取り扱い作業及び機能上の特徴を持つ。粒状大豆タンパクに粉末状大豆タンパクを併用すると,これらの機能的性質はさらに改良される60)。 表-16 に,粒状植物性タンパクの市販ひき肉調理食品への利用調査を示すが,粒状植物性タンパクの表示率は,ハンバーグ96%,ぎょうざ89%,肉まんじゅう87%,しゅうまい67%及びミートパン50%で,いずれも大豆系が圧倒的に使用されている。」(792頁右欄5.3の項〜793頁左欄13行) イ 甲A1に記載された発明 上記アの示した記載事項(甲A1−1)〜記載事項(甲A1−4)より、甲A1には次の発明が記載されている。 「ひき肉増量材として粒状乾燥大豆タンパクを用いる、ハンバーグ、ぎょうざ、又はしゅうまいであるひき肉調理食品であって、粒状乾燥大豆タンパクは、粒度(%)が「350μm 10以下」、水分(%)が「乾燥品10以下」のものである、ひき肉調理食品」の発明(以下、「甲A1食品発明」という。)、及び 「ひき肉増量材として粒状乾燥大豆タンパクを用いる、ハンバーグ、ぎょうざ、肉まんじゅう、又はしゅうまいであるひき肉調理食品の製造方法であって、粒状乾燥大豆タンパクは、粒度(%)が「350μm 10以下」、水分(%)が「乾燥品10以下」のものである、ひき肉調理食品の製造方法」の発明(以下、「甲A1製法発明」という。) (2)甲A2〜甲A3の記載事項 ア 甲A2の記載事項 甲A2には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲A2): 「4.3.4 粒度 粒度は,乾燥したものにあっては乾燥状態において,冷凍したものにあっては解凍後の状態において,JIS Z 8801-1 に規定する目開き355μmの試験用ふるいを通過するものの重量の割合が10%以下とする。」 イ 甲A3の記載事項 甲A3には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲A3): 「 」 (3)対比・判断 ア 本件特許発明1〜5 (ア)まず、本件特許発明1と甲A1食品発明とを対比する。 甲A1食品発明における「粒状乾燥大豆タンパク」は本件特許発明1における「大豆たん白」に相当し、甲A1食品発明における「ハンバーグ、ぎょうざ、又はしゅうまいであるひき肉調理食品」は、本件特許発明1における「成形挽肉加工食品であって、……、ハンバーグ、…、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれか」に相当する。 また、甲A1食品発明における「ひき肉増量材として粒状乾燥大豆タンパクを用いる」とは、「粒状乾燥大豆タンパク」をその他のひき肉調理食品原料と混合することにより「粒状乾燥大豆タンパク」を含有する「ひき肉調理食品」とすることを意味することは明らかである。 したがって、本件特許発明1と甲A1食品発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、 ハンバーグ、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」である点で一致し、 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明1では、 「平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲A1食品発明では、 「粒度(%)が「350μm 10以下」」とされる点(以下、「相違点(甲A1−1)」という。)、及び 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明1では、 「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とされる一方、 甲A1食品発明では、 「水分(%)が「乾燥品10以下」」とされる点(以下、「相違点(甲A1−2)」という。) で相違する。 (イ)相違点(甲A1−1)について検討する。 記載事項(甲A2)及び記載事項(甲A3)を参酌すると、甲A1食品発明における「粒度(%)が「350μm 10以下」」とは、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を示すものと認められるものの、平均サイズを示すものとは認められず、また、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を有する「大豆たん白」であれば、その平均サイズが「0.5mm以上10mm未満」であることが、技術常識に照らして明らかであるとも認められない。 したがって、相違点(甲A1−1)は実質的な相違点であって、相違点(甲A1−2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1食品発明ではない。 (ウ)甲A1には、「大豆たん白」の平均サイズについての記載はなく、記載事項(甲A2)及び記載事項(甲A3)を参酌しても、「大豆たん白」の平均サイズについて着目していない甲A1食品発明における「大豆たん白」の平均サイズを、相違点(甲A1−1)に係る「平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であ」るものとする動機付けを見出すこともできない。 したがって、相違点(甲A1−2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1食品発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)以上より、本件特許発明1は、甲A1食品発明ではなく、甲A1食品発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 本件特許発明1が甲A1食品発明ではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明4もまた、甲A1食品発明ではない。 また、本件特許発明1が甲A1食品発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明2〜5もまた、甲A1食品発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明6〜11 (ア)まず、本件特許発明6と甲A1製法発明とを対比する。 甲A1製法発明における「粒状乾燥大豆タンパク」は本件特許発明6における「大豆たん白」に相当し、甲A1製法発明における「ハンバーグ、ぎょうざ、又はしゅうまいであるひき肉調理食品」は、本件特許発明6における「成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、…、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれか」に相当する。 また、甲A1製法発明における「ひき肉増量材として粒状乾燥大豆タンパクを用いる」とは、「粒状乾燥大豆タンパク」をその他のひき肉調理食品原料と混合することにより「粒状乾燥大豆タンパク」を含有する「ひき肉調理食品」とすることを意味することは明らかである。 したがって、本件特許発明6と甲A1製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法であって、 成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、製造方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明6では、 「平均サイズが、0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲A1製法発明では、 「粒度(%)が「350μm 10以下」」とされる点(以下、「相違点(甲A1−3)」という。)、及び 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明6では、 「水分量が、1〜20重量%であり、」とされる一方、 甲A1製法発明では、 「水分(%)が「乾燥品10以下」」とされる点(以下、「相違点(甲A1−4)」という。) で相違する。 (イ)相違点(甲A1−3)について検討する。 記載事項(甲A2)及び記載事項(甲A3)を参酌すると、甲1製法発明における「粒度(%)が「350μm 10以下」」とは、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を示すものと認められるものの、平均サイズを示すものとは認められず、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を有する「大豆たん白」であれば、その平均サイズが「0.5mm以上10mm未満」であることが、技術常識に照らして明らかであるとも認められない。 したがって、相違点(甲A1−3)は実質的な相違点であって、相違点(甲A1−4)について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A1製法発明ではない。 (ウ)甲A1には、「大豆たん白」の平均サイズについての記載はなく、記載事項(甲A2)及び記載事項(甲A3)を参酌しても、「大豆たん白」の平均サイズについて着目していない甲A1製法発明における「大豆たん白」の平均サイズを、相違点(甲A1−3)に係る「平均サイズが、0.5mm以上10mm未満であ」るものとする動機付けを見出すこともできない。 したがって、相違点(甲A1−4)について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)以上より、本件特許発明6は、甲A1製法発明ではなく、甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 本件特許発明6が甲A1製法発明ではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明9もまた、甲A1製法発明ではない。 また、本件特許発明6が甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明7〜11もまた、甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件特許発明12〜14 (ア)まず、本件特許発明12と甲A1製法発明とを対比する。 甲A1製法発明における「粒状乾燥大豆タンパク」は本件特許発明12における「大豆たん白」に相当し、甲A1製法発明における「ハンバーグ、ぎょうざ、又はしゅうまいであるひき肉調理食品」は、本件特許発明12における「成形挽肉加工食品」に相当する。 また、甲A1製法発明における「ひき肉増量材として粒状乾燥大豆タンパクを用いる」とは、「粒状乾燥大豆タンパク」をその他のひき肉調理食品原料と混合することにより「粒状乾燥大豆タンパク」を含有する「ひき肉調理食品」とすることを意味することは明らかである。 したがって、本件特許発明12と甲A1製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明12では、 「平均サイズが、0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲A1製法発明では、 「粒度(%)が「350μm 10以下」」とされる点(以下、「相違点(甲A1−5)」という。)、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明12では、 「水分量が、1〜20重量%である」とされる一方、 甲A1製法発明では、 「水分(%)が「乾燥品10以下」」とされる点(以下、「相違点(甲A1−6)」という。)、及び 「方法」について、 本件特許発明12では、 「加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法」とされる一方、 甲A1製法発明では、 「ひき肉調理食品の製造方法」とされる点(以下、「相違点(甲A1−7)という。) で相違する。 (イ)相違点(甲A1−5)について検討する。 記載事項(甲A2)及び記載事項(甲A3)を参酌すると、甲1製法発明における「粒度(%)が「350μm 10以下」」とは、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を示すものと認められるものの、平均サイズを示すものとは認められず、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を有する「大豆たん白」であれば、その平均サイズが「0.5mm以上10mm未満」であることが、技術常識に照らして明らかであるとも認められない。 したがって、相違点(甲A1−5)は実質的な相違点であって、相違点(甲A1−6)及び相違点(甲A1−7)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲A1製法発明ではない。 (ウ)甲A1には、「大豆たん白」の平均サイズについての記載はなく、記載事項(甲A2)及び記載事項(甲A3)を参酌しても、「大豆たん白」の平均サイズについて着目していない甲A1製法発明における「大豆たん白」の平均サイズを、相違点(甲A1−5)に係る「平均サイズが、0.5mm以上10mm未満であ」るものとする動機付けを見出すこともできない。 したがって、相違点(甲A1−6)及び相違点(甲A1−7)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)以上より、本件特許発明12は、甲A1製法発明ではなく、甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 本件特許発明12が甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明13〜14もまた、甲A1製法発明並びに甲A2及び甲A3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人Aの主張について 申立人Aは、その特許異議申立書において、概略、次の主張をしている。 「粒子の大きさにおける0.355mmと0.5mmの数字の近接性と、重量の90%が0.355mmのふるいを通らない大きさのであることを勘案すると、甲1の表−5の「粒状植物性たん白」には、その「平均サイズ」が少なくとも「0.5mm以上」に至る粒状物が含まれることは極めて自明である。 「粒状」とは「つぶのような形状」をいい、食品に混合添加して使用される材料という用途からすれば「粒状」の形態であるとは、その扱い易さなどから、その大きさが、数mm程度〜1cm(10mm)程度の範囲にあることは極めて一般的・常識的に理解される。 以上からすると、甲1に記載された要件(b)「当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.355mmより大である」とは、「当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上である」理解でき、さらに「当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、数mm程度〜1cm(10mm)程度の範囲にある」ものとして記載されていると理解される。」(申立人Aの特許異議申立書20頁7〜21行)、 「仮に、甲1において、要件(b)が「当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上である」または「数mm程度〜1cm(10mm)程度の範囲にある」との記載であるとは評価できないとしても、当業者をして、「0.355mmより大である」との甲1の表5−1の記載を、「0.5mm以上である」または「数mm程度〜1cm(10mm)程度の範囲にある」と理解することには、何ら困難性は認められない。」(申立人Aの特許異議申立書21頁2〜7行)、 「甲1発明と、本件発明1とは、その客観的な構成要件において一致し、発明の構成が同一であれば、その構成から得られる発明の効果も同じはずである。 つまり、甲1発明の成形挽肉加工食品、例えばハンバーグにおける表面状態は、本件発明1と同一になるはずである。その表面の凹凸が、植物性たん白を用いない場合に比較して強いものであったことは、何ら新たな技術思想の創作とはされず、単なる事実の発見、発明の効果の発見に過ぎず、発明ではない。 特に、甲1が植物性たん白について「(4)・・・熱による収縮がない」(…)との特徴も記載されていることからすると、本件特許明細書が述べる「挽肉とは異なる収縮率(収縮の程度)で収縮し、その結果、当該植物性たん白を含む成形挽肉加工食品は、加熱調理後に表面に増強された凹凸が生じる」(段落0020)とのメカニズムも、甲1にその示唆があるといえる。 よって、甲1に「加熱調理後の表面の凹凸が増強された」との記載がないことは、本件発明1の進歩性判断にあたり、何ら影響しない事項である。」(申立人Aの特許異議申立書21頁15行〜22頁2行) しかし、甲A1の表−5に示された「粒状植物性たん白」の「粒度(%)」の欄における「350μm 10以下」」との記載は、「粒状植物性たん白」が、目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度を示すものと認められ、たとえ、350μm(=0.350mm)と0.5mmとの違いの程度を考慮するとともに、「目開き350μmの試験用ふるいを通過するものの重量が10%以下である粒度」とは、粒子の重量の90以上%が目開き0.350mmのふるいを通過しない粒度であることを考慮したとしても、その「粒状植物性たん白」の平均サイズが0.5mm以上であるという根拠を見出すことはできないし、甲A1の表5−1の当該記載に接した当業者が、その記載内容を「0.5mm以上である」または「数mm程度〜1cm(10mm)程度の範囲にある」と容易に理解するという根拠を見出すこともできない。 甲A1の表−5に示された「粒状植物性たん白」の平均サイズが0.5mm以上1.0mm未満であるという根拠を見出せない以上、甲A1食品発明及び甲A1製法発明が、本件特許発明1〜14と同じ構成を有するものであるとすることはできず、本件特許発明1〜14と同じ効果を奏するということはできない。 したがって、申立人Aの上記主張は受け入れられない。 (5)小括 以上(1)〜(4)に示したとおり、申立理由(A1−1)及び申立理由(A1−2)には理由がない。 3 申立理由(A2)について (1)本件特許発明1〜14の課題 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、 「【0002】 ハンバーグ等の成形挽肉加工食品は、従来より消費者に人気の高い惣菜の一つであり、例えば、コンビニエンスストアや駅売店において販売される弁当類、ファミリーレストラン等をはじめとして、工業的に大量生産された成形挽肉加工食品が広く利用されている。 【0003】 工業的に生産された成形挽肉加工食品は、表面に起伏の少ないのっぺりとした外観のものが多いが、一般に成形挽肉加工食品は外観がゴツゴツとした手作り感のあるものの方が消費者に好まれる傾向があり、成形挽肉加工食品の表面の凹凸を増強できれば、商品価値、サービスの向上が期待できる。」、 「【0006】 本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供することにある。」、 「【0011】 本発明によれば、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供できる。 本発明は、成形挽肉加工食品や菓子類をはじめとする食品の素材として従来より利用されている植物性たん白を用いるものであるから、食品の安全性を損なうおそれがない。また植物性たん白は一般的に安価であるため、本発明は経済的見地からも意義が高いものである。」、 「【0093】 本発明によれば、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供できる。 本発明は、成形挽肉加工食品や菓子類をはじめとする食品の素材として従来より利用されている植物性たん白を用いるものであるから、食品の安全性を損なうおそれがない。また植物性たん白は一般的に安価であるため、本発明は経済的見地からも意義が高いものである。」 等の記載があることから、本件特許発明1〜14が解決しようとする課題は、 「加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供すること」であると認められる。 (2)判断 成形挽肉加工食品のうち、「メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」等、挽肉の成形物が「衣」あるいは「皮」で覆われる食品であっても、その外側からも当該成形物表面の凹凸が認識されるとともに、その食感が当該成形物表面の凹凸に影響されることも明らかである。 そして、その解決手段は本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0019〜段落0023に記載され、さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0047〜段落0092に実施例1〜実施例14として本件特許発明1〜14の具体例も記載されているから、当業者は、本件特許明細書及び出願時の技術常識に基づいて、本件特許発明1〜14の属する技術分野の理解又は課題及びその解決手段の理解をすることができる。 したがって、本件特許明細書には、本件特許発明1〜14が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が本件特許発明1〜14の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているといえる。 (3)申立人Aの主張について 申立人Aは、その特許異議申立書において、概略、次の主張をしている。 「本件特許明細書において、本件発明の課題は、……「加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品」(…)を提供することにあり、ここで、凹凸の存在場所は、成形挽肉加工食品の表面」と理解される。段落0032における「……」との記載からも、凹凸は成形挽肉加工食品の「表面」に存在すべきものと理解できる。 さらに、……、実施例の記載でも、凹凸の評価はあくまで成形挽肉加工食品の「表面」についてされており、さらにわざわざ「割れている部分は評価に入れなかった」として、割れてしまった箇所については、その内部は評価の対象にはしない、とすらしている。 一方で、請求項1には、成形挽肉加工食品として、「ハンバーグ、ミートボール、つくね、メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」が挙げられている。 「ハンバーグ、ミートボール、つくね」の前半3つは、その挽肉の成形物の表面が観察でき、上記した実施例の評価手法に則り、凹凸の程度を評価できるが、後半の4つ、すなわち「メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」については、挽肉の成形物が「衣」あるいは「皮」で覆われる食品である。そのため、挽肉の成形物の表面は外からは観察されない形態を取り、食品の商品価値評価において、挽肉の成形物の表面の凹凸は無関係となる。 つまり、「メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」には本件特許明細書が指摘する発明の課題は存在せず、それゆえ、肉の成形物の表面の凹凸を増強するとの技術手段がいかなる意義を持つものであるのか、本件特許明細書の記載からは理解できない。」(申立人Aの特許異議申立書26頁12行〜27頁19行) しかし、上記(2)に示したとおり、成形挽肉加工食品のうち、「メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」等、挽肉の成形物が「衣」あるいは「皮」で覆われる食品であっても、その外側からも当該成形物表面の凹凸が認識されるとともに、その食感が当該成形物表面の凹凸に影響されることも明らかであるから、「メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザ」には本件特許明細書が指摘する発明の課題は存在しないことを前提とする申立人Aの上記主張は受け入れられない。 (4)小括 以上(1)〜(3)に示したとおり、申立理由(A2)には理由がない。 4 申立理由(B1)〜申立理由(B4)について (1)甲B1に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲の記載事項及び甲B1に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明 ア 甲B1に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲の記載事項 甲B1に係る出願(特願2016−31800号)の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲B1−1): 「【請求項1】 食肉加工食品の製造方法であって、 畜肉のすり身と粒状の植物性タンパク質とピックル液とを減圧下で混合することで、前記すり身と前記植物性タンパク質の混合物を製造し、 前記混合物をミンチ肉に混合して生地を製造し、 前記生地を成型し、 成型した前記生地を加熱調理することを特徴とする、食肉加工食品の製造方法。」 記載事項(甲B1−2): 「【0013】 本発明における粒状の植物性タンパク質とは、ミンチ肉と同様の形状を有するものであって、直径3〜6mm程度のものをいう。なお、粉末状のものとは直径が1mm未満の極めて微小のものをいう。」 記載事項(甲B1−3): 「【0017】 畜肉のすり身と粒状の植物性タンパク質とピックル液とを混合する際には、減圧下で混合する。減圧下で混合することで、粒状の植物性タンパク質に含まれる気泡から脱気され、すり身の肉汁、すなわち動物性タンパク質を含む水分が、粒状の植物性タンパク質中の気泡に入り込みやすくなる。当該気泡に動物性タンパク質を含む水分が移行することで、粒状の植物性タンパク質が膨潤し、製造される食肉加工食品が一体化して、当該食品にミンチ肉の荒挽き感を付与することができる。また、ピックル液を使用することで、すり身が加水されて、動物性タンパク質を含む水分が粒状の植物性タンパク質中の気泡に入り込みやすくなる。」 記載事項(甲B1−4): 「【0040】 (実施例2)ハンバーグの製造 まず、原料肉として、3mmの牛ミンチ肉700g、及び、香辛料等で味付けをした大きさ3mmの豚ミンチ肉300gを準備した。 【0041】 次いで、チキンすり身125gと、粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)125gと、ピックル液(配合物:食塩10g、ナツメグ1.5g、水238.5g)250gとを、真空ロータリータンブラーの内部に投入し、減圧下、室温で約0.5時間マッサージを行った。これにより、チキンすり身中の水分が粒状の植物性タンパク質内に移行し、植物性タンパク質が膨潤して、チキンすり身と膨潤した植物性タンパク質が一体となった混合物500gが得られた。 【0042】 次に、牛ミンチ肉700g、豚ミンチ肉300g、前記混合物500g、ダイス玉ねぎ300g、全卵100g、及び赤パン粉100gをよく混ぜ合わせて、生地を製造した。得られた生地を成型機で成型した後、成型した生地をフライパンで焼いて、ハンバーグを得た。 …… 【0045】 (比較例6) 前記混合物を製造することなく、前記混合物500gの代りに、チキンすり身125g、前記粒状の植物性タンパク質125g、及び前記ピックル液250gをミンチ肉に直接添加して混ぜ合わせ、生地を製造したこと以外は、実施例2と同様にしてハンバーグを得た。 【0046】 実施例2及び比較例4〜6で得られたハンバークを真空包装して、その状態で90℃、30分間湯煎で加熱したものを食し、その風味及び荒挽き感を下記基準により評価した。」 結果を表2に示す。 【0047】 ○:従来品と遜色がなく良好 △:従来品よりもやや劣る ×:従来品よりも劣る 【0048】 【表2】 【0049】 具体的には各実施例及び比較例は以下のように評価された。 …… 【0053】 比較例6:植物性タンパク質に特有の匂いが強く、また、パサついており、粘着力のある植物性タンパク質独特の食感がある。」 イ 甲B1に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明 記載事項(甲B1−4)より、甲B1に係る出願(特願2016−31800号)の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲には、次の発明が記載されている。 「牛ミンチ肉700g及び豚ミンチ肉300gに、チキンすり身125g、粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)125g、及び前記ピックル液250gを直接添加して混ぜ合わせ、得られた生地を成型機で成型した後、成型した生地をフライパンで焼いて、得られたハンバーグ」(以下、「甲B1食品発明」という。)、及び 「牛ミンチ肉700g及び豚ミンチ肉300gに、チキンすり身125g、粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)125g、及び前記ピックル液250gを直接添加して混ぜ合わせ、得られた生地を成型機で成型した後、成型した生地をフライパンで焼いて、ハンバーグを得る方法」(以下、「甲B1製法発明」という。) (2)甲B2の記載事項及び甲B2に記載された発明 ア 甲B2の記載事項 甲B2には次の事項が記載されている。 記載事項(甲B2−1): 「【特許請求の範囲】 【請求項1】大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白。 【請求項2】該組織状蛋白原料中の大豆蛋白/カゼインの割合が98/2〜35/65(乾燥固形重量比)である請求項1の組織状蛋白。 【請求項3】澱粉類を用い、該組織状蛋白原料中の澱粉含量が60重量%以下(原料乾燥固形分中)である請求項1または請求項2の組織状蛋白。 【請求項4】該組織状蛋白の吸水能が5〜12重量倍である請求項1〜3のいずれかの組織状蛋白。 【請求項5】該組織状蛋白原料乾燥固形分中の油分が3重量%以下である請求項1〜4のいずれかの組織状蛋白。 【請求項6】請求項1〜請求項5のいずれかの組織状蛋白と加工食品原料を混合し成形し加熱調理した後凍結することを特徴とする加工食品の製造法。」 記載事項(甲B2−2): 「【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、大豆蛋白、カゼイン及び水を必須とし、必要により澱粉類を加熱加圧し大気中に押し出して膨化させて得た組織状蛋白を加工食品に用いることで、冷凍にて流通した後も、再加熱時に作り立てと同様のジューシー感を有する加工食品を提供出来ることを見出して本発明を完成したものである。 即ち、本発明は、大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白である。 該組織状蛋白原料中の大豆蛋白/カゼインの割合が98/2〜35/65(乾燥固形重量比)であることが好ましい。 澱粉類を用い、該組織状蛋白原料中の澱粉含量が60重量%以下(原料乾燥固形分中)が好ましい。 該組織状蛋白の吸水能が5〜12重量倍であることが好ましい。 該組織状蛋白原料乾燥固形分中の油分は3重量%以下が好ましい。 又、本発明は、上記記載の組織状蛋白と加工食品原料を混合し成形し加熱調理した後凍結することを特徴とする加工食品の製造法である。」 記載事項(甲B2−3): 「【0021】 以上のようにして得られた組織状蛋白は、カッターもしくは粉砕機等で適当な大きさに切断することが出来る。この組織状蛋白は、挽き肉を用いる加工食品、例えばハンバーグなどに用いる場合は、挽き肉の大きさに粒度を調整することが好ましい。この組織状蛋白は、乾燥して用いることができるが、この場合には、ドラム乾燥法、流動層乾燥法、棚式乾燥法、凍結乾燥法等を用いることが出来る。」 記載事項(甲B2−4): 「【0025】 次に、本発明の加工食品は、前述した組織状蛋白と加工食品原料を混合し成形し加熱調理した後凍結することにより製造される。 組織状蛋白は加工食品原料の水分が極めて多い場合は水戻しは必ずしも必要ではないが、通常吸水能以下の範囲で水戻しして用いることが適当である。水の代わりに調味液のような水性溶媒を用いることは妨げない。 混合は公知の装置を利用することができ、必要により混練することができる。成形は目的の加工食品により異なるが、公知の成形装置を利用することができる。加熱調理は目的の加工食品により適宜行うことができる。冷凍は公知の冷凍装置を用いることができ、緩慢凍結より急速凍結が好ましい。 【0026】 具体的に本発明の組織状蛋白を利用した加工食品について説明する。加工食品は、冷凍食品であって、解凍したときに冷凍前と同様のジューシー感を要求される食品であれば特に限定するものではない。本発明の組織状蛋白を含んで、その加工食品原料と混合或いは必要により混練して、成形し、好適には加熱調理し、冷凍した加工食品であれば動物性、植物性を問わない。 尚、組織状蛋白の加工食品への添加量は、加工食品の種類により異なるが、水で戻した組織状蛋白を加工食品の原料を用いて調製した生地に対して5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%が適当である。加工食品の種類にもよるが、水で戻した組織状蛋白の添加量が少ないと目的のジューシー感が発現しがたく、多過ぎると加工食品の特性が失われる。 …… 【0028】 動物性加工食品のより具体的な例として、挽き肉等を用い調製する惣菜があるが、これらの例としてはハンバーグ、ミートボール、餃子、しゅうまい、中華まん、チキンナゲット、ソーセージ等を挙げることができる。例えば、ハンバーグの製造法を例示する。あらかじめ吸水能以内の加水量で戻した組織状蛋白を挽き肉等と混合し使用することが可能である。組織状蛋白の加水については、水戻しも可能であるが、必要に応じて、醤油・酒類・食塩・香辛料・エキス類・糖類・油脂類・卵等を加えた着味液を用いても良い。又、組織状蛋白は吸水能に応じた加水量で戻して使用しても良いが、生地中の水分含量や加熱時の水分移行などを考慮し、吸水能以下の加水量で戻して使用しても良い。また、作業性を重視する場合などはそのまま組織状蛋白を乾燥状態で添加しても良い。まず、挽き肉をミキサー等で攪拌し、順に組織状蛋白、卵、生クリーム、調味料、野菜、澱粉、パン粉等を加え、混合し生地を作成する。その後、成形し、中心温度が80℃以上になるよう加熱処理を行う。加熱処理については、焼成、蒸煮、フライ等が可能である。加熱調理した加工食品は冷凍する。」 記載事項(甲B2−5): 「【0030】 【実施例】 以下、実施例により本発明の実施態様を説明するが、例示は当然単なる説明であって、発想思想の内包・外延とは直接関係の無いものである。なお、以降「重量%」は「%」と記載する。 【0031】(エクストルーダー原料説明) 本発明の実施例で用いた原料は、下記の通りである。 ・脱脂大豆粉は不二製油(株)製を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算55%、水分6%) ・粉末状大豆蛋白は不二製油社(株)製「フジプロ−R」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算91%、水分6%) ・カゼインNaはMURRAY GOULBURN FOOD社製「ソデイウムカゼイネート」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算95%、水分4%) ・MPCは、ミルコート社製「MPC-UF80」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算84%、水分4%) ・WPCはCALPRO社製「カルプロWPC8002」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算78.8%、水分4.4%) ・小麦グルテンはグリコ栄養食品(株)製「A−グルSS」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算77.5%、水分5%) ・澱粉は三和澱粉(株)製「コーンスターチ」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算 0%、水分13%) ・食用植物油脂は不二製油(株)製「大豆白絞油」を用いた。 (成分 蛋白質/無水換算 0%、水分0%) 【0032】(押出機による組織化物の作製) 組織化物を押出機で下記条件により作製した。 原料は、粉体攪拌器等で均一混合し、水と共に押出機(幸和工業製KEI45-25)の原料に供した。運転条件は下記表1の通りであった。 押出機から出てきた組織化物は、カッターで長さ10mm程度になる様に切断した後、粉砕機にて下記粒度となるよう粗粉砕した後、乾燥機にて水分10%まで乾燥させた。 【0033】 【表1】−押出機運転条件− …… 【0037】 −ハンバーグ生地の加熱調理条件− ハンバーグ生地は、1個100gとなるよう成形後、オーブンで200℃8分焼成を行いハンバーグを得た。生地の成形の際、成形性について作業者が評価を行い、成形しやすいものを10点、成形しにくいものほど点数を低くした。 【0038】 −ミートボール生地の加熱調理条件− ミートボール生地は、1個15gとなるよう成形後、175℃の油で30秒フライ後、85℃10分間蒸煮を行いミートボールを得た。生地の成形の際、成形性について作業者が評価を行い、成形しやすいものを10点、成形しにくいものほど点数を低くした。 【0039】 −餃子生地の加熱調理条件− 餃子生地は、1個20gとなるよう餃子の皮で包餡後、175℃の油で30秒フライ後、90℃10分間蒸煮を行い餃子を得た。生地の成形の際、成形性について作業者が評価を行い、成形しやすいものを10点、成形しにくいものほど点数を低くした。 【0040】 −ハンバーグ、ミートボール、餃子の評価方法− 得られた餃子は冷凍を行った後、フライパンを用いて加熱を行い、10名の専門パネラーにより10点法により、食感、風味について試食評価を行った。点数は10点が最も良好である。食感については、最もジューシー感があるものを10点とし、ジューシー感が少なくなりパサつきを強く感じられるほど点数を低くした。食感については、もっとも柔らかい(ソフト)ものを10点とし、硬く感じられるものほど、点数を低くした。風味については、肉の旨みがあるものを10点とし、他の味が強く感じられるほど低くした。」 記載事項(甲B2−6): 「【0047】実施例2 (実施例2−A) 表4の各原料配合を押出機に供し、各組織化物を得た。 得られた各組織化物について、「組織化物の単品での評価」を実施した。 【0048】 【表4】 【0049】 (実施例2−B) 豚挽き肉21.0g、牛ひき肉23.0g、豚脂3.5g、玉ねぎ20.0g、凍結全卵2.5g、生クリーム2.5g、赤パン粉5.0g、調味料2.0g及び香辛料0.5gに、実施例2−Aで得られた各組織化物と水を配合してハンバーグ生地100gを調製し、「組織化物の複合系(ハンバーグ)での評価」を実施した。 【0050】 【表5】 」 記載事項(甲B2−7): 「【0067】実施例6 牛挽き肉35.0g、豚ひき肉22.0g、豚脂12.0g、玉ねぎ12.0g、パン粉5.0g、馬鈴薯澱粉5.0g、凍結全卵5.0g、調味料3.0g及び香辛料1.0gに、実施例2−Aで得られた各組織化物A1、A2、A3、A4と水を表12の通り配合してミートボール生地100gを調製し、ミートボールの系で評価を実施した。 【0068】 【表12】 【0069】 ミートボールでも、ハンバーグ同様、加工食品M4(1)が風味も良く、冷凍再加熱後もソフトでかつジューシーな食感であり良好であった。これより、ミートボールのようにフライし蒸煮後、冷凍後再加熱を行っても同様の効果があることが判った。」(なお、「(1)は、原文では「○」中に「1」である。) 記載事項(甲B2−8): 「【0070】実施例7 豚ひき肉30.0g、豚脂10.0g、キャベツ37.0g、玉ねぎ14.0g、パン粉3.5g、ニラ1.0g、ごま油1.5g、調味料2.0g及び香辛料1.0gに、実施例2−Aで得られた各組織化物A1、A2、A3、A4と水を表13の通り配合して餃子生地100gを調製し、餃子の系で評価を実施した。 【0071】 【表13】 【0072】 餃子でも、ハンバーグ同様、加工食品G4(1)が風味も良く、冷凍再加熱後もソフトでかつジューシーな食感であり良好であった。これより、餃子のように包餡し蒸煮後、冷凍再加熱で焼成を行っても同様の効果があることが判った。」(なお、「(1)」は、原文では「○」中に「1」である。) イ 甲B2に記載された発明 記載事項(甲B2−1)〜記載事項(甲B2−8)より、甲B2には、次の発明が記載されている。 「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白と加工食品原料と混合し成形し、加熱調理した後凍結して、さらに再加熱して得られる、ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品」(以下、「甲B2食品発明」という。)、及び 「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白と加工食品原料と混合し成形し、加熱調理した後凍結して、さらに再加熱することによる、ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品の製造方法」(以下、「甲B2製法発明」という。) (3)甲B3の記載事項及び甲B3に記載された発明 ア 甲B3の記載事項 甲B3には次の事項が記載されている。 記載事項(甲B3−1): 「【0016】 【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 【0017】実施例1 主要な構成糖としてα−1,6グルコシド結合を主体とする分岐オリゴ糖から成る「イソマルト900P」、「パノックスA」(商品名、いずれも昭和産業製)を用いた。「イソマルト900P」は粉末状で水分3%、「パノックスA」は液状で水分24%である。」 記載事項(甲B3−2): 「【0025】実施例3 糖質無添加のものと、「パノックスA」を添加しもので餃子を調製した。餃子の具の基本原材料は、キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部、砂糖0.2重量部である。「パノックスA」はこれらの基本原材料に4.4重量部上乗せした。原材料を混合して餃子の皮で包み、180℃の鉄板で焼き色が着くまで熱し、その後水を加えて蒸し焼きにして、実施例1と同様の官能検査に供した。なお、餃子を調製する過程で、具材のまとまり感についても評価した。上記原材料100g中のタンパク質含有量は6.2g(四訂日本食品標準成分表に基づいて算出)であり、一方、「パノックスA」添加区のα−1,6グルコシド結合を1つ以上有する三糖類分岐オリゴ糖含有量は1.2gである。」 イ 甲B3に記載された発明 記載事項(甲B3−1)及び記載事項(甲B3−2)より、甲B3には、次の発明が記載されている。 「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部を混合して餃子の皮で包み、180℃の鉄板で焼き色が着くまで熱し、その後水を加えて蒸し焼きにして、得られる餃子」(以下、「甲B3食品発明」という。)、及び 「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部を混合して餃子の皮で包み、180℃の鉄板で焼き色が着くまで熱し、その後水を加えて蒸し焼きにすることによる、餃子の製造方法」(以下、「甲B3製法発明」という。) (4)甲B4の記載事項及び甲B4に記載された発明 ア 甲B4の記載事項 甲B4には次の事項が記載されている。 記載事項(甲B4−1): 「【特許請求の範囲】 【請求項1】実質的に粒子径が50μm以下の澱粉粒子からなる馬鈴薯澱粉を含有することを特徴とするフライ類用衣材。 【請求項2】馬鈴薯澱粉がエステル化又はエーテル化された化工澱粉である請求項1記載のフライ類用衣材。 【請求項3】馬鈴薯澱粉が架橋された化工澱粉である請求項1又は2記載のフライ類用衣材。 【請求項4】熱凝固性蛋白を含有する請求項1〜3の何れかに記載のフライ類用衣材。 【請求項5】請求項1〜4の何れかに記載のフライ類用衣材で衣付けして得られるフライ類。」 記載事項(甲B4−2): 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、フライ類において衣の透明感に優れ、かつサクサクとした良好な食感を提供する技術に関する。」 記載事項(甲B4−3): 「【0009】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、従来技術では困難であった、フライ類の衣の透明性が付与され、かつ良好な食感を付与できるフライ類用衣材およびそれを用いたフライ類を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、馬鈴薯澱粉の内、粒子径が50μm以上の澱粉粒子を除去した馬鈴薯澱粉を衣材に使用すると、透明性に優れた衣が得られ、かつ食感の良好なフライ類が提供できることを見出した。」 記載事項(甲B4−4): 「【0027】 【実施例】 以下、実施例により本発明を詳細に説明する。 〔製造例〕 (試料1) 市販の馬鈴薯澱粉(王子コーンスターチ(株)製)を篩分けして、20μm以下の粒子を除去し、20μm以上の澱粉粒子からなる馬鈴薯澱粉を調製した。この澱粉の平均粒子径は40μmであり、粒子径50μm以下の割合は45%であった。 (試料2) 市販のエーテル化馬鈴薯澱粉(王子コーンスターチ(株)製)を篩分けして、50μm以上の粒子を除去し、50μm以下の澱粉粒子からなるエーテル化馬鈴薯澱粉を調製した。この澱粉の平均粒子径は15μmであり、粒子径50μm以下の割合は100重量%であった。 (試料3) 市販のエーテル化架橋馬鈴薯澱粉(王子コーンスターチ(株)製)を篩分けして、50μm以上の粒子を除去し、50μm以下の澱粉粒子からなるエーテル化架橋馬鈴薯澱粉を調製した。この澱粉の平均粒子径は15μmであり、粒子径50μm以下の割合は100%であった。 (試料4) 市販の未化工の馬鈴薯澱粉を篩分けして、50μm以上の粒子を除去し、50μm以下の澱粉粒子からなる馬鈴薯澱粉を調製した。この澱粉の平均粒子径は15μmであり、粒子径50μm以下の割合は100%であった。 対照として用いる通常の馬鈴薯澱粉は、平均粒子径は30μm、粒子径50μm以下の割合は60重量%であった。」 記載事項(甲B4−5): 「【0031】 〔試験例2〕 豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部をミキサーにて均一になるようによく混合し、作成したメンチカツの中種生地を、ドラム式の成型機(日本キャリア工業(株)製)を用いて1個40gになるように成型した。この中種を90℃×8分で蒸煮加熱し冷却した後、1個に対して、バッター15g、パン粉15gを付け、175℃で4分間フライした。バッターは予め必要な粉体原料をプレミックスしたものを、5℃の冷水に分散させて調製した。衣材は試験例1と同様で、これら衣材100部に水を240部添加することによりバッターを調製した。通常の馬鈴薯澱粉を用いたものが比較例3、試料1が比較例2、試料2が実施例4、試料3が実施例5として表記した。 【0032】 【表2】メンチカツ衣官能結果 【0033】 試験例1同様に、50μmを超える粒子が存在する馬鈴薯澱粉(比較例1及び比較例2)では、鮮明な透明感が得られず衣の層がはっきり認識され易い。実施例4及び5では、透明感に優れ、食感もサクサクしており好ましいものであった。」 イ 甲B4に記載された発明 記載事項(甲B4−4)及び記載事項(甲B4−5)より、甲B4には、次の発明が記載されている。 「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部をミキサーにて均一になるようによく混合し、作成したメンチカツの中種生地を、ドラム式の成型機(日本キャリア工業(株)製)を用いて1個40gになるように成型し、この中種を90℃×8分で蒸煮加熱し冷却した後、1個に対して、バッター15g、パン粉15gを付け、175℃で4分間フライすることにより、得られるメンチカツ」(以下、「甲B4食品発明」という。)、及び 「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部をミキサーにて均一になるようによく混合し、作成したメンチカツの中種生地を、ドラム式の成型機(日本キャリア工業(株)製)を用いて1個40gになるように成型し、この中種を90℃×8分で蒸煮加熱し冷却した後、1個に対して、バッター15g、パン粉15gを付け、175℃で4分間フライすることによる、メンチカツの製造方法」(以下、「甲B4製法発明」という。) (5)甲B5〜甲B7の記載事項 ア 甲B5の記載事項 甲B5には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲B5): 「 」 イ 甲B6の記載事項 甲B6には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲B6): 「 」 ウ 甲B7の記載事項 甲B7には、次の事項が記載されている。 記載事項(甲B7): 「 」 (6)申立理由(B1)について ア 甲B1に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明 甲B1に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲には、上記(1)イに示したとおり、次の発明が記載されている。 「牛ミンチ肉700g及び豚ミンチ肉300gに、チキンすり身125g、粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)125g、及び前記ピックル液250gを直接添加して混ぜ合わせ、得られた生地を成型機で成型した後、成型した生地をフライパンで焼いて、得られたハンバーグ」(甲B1食品発明)、及び 「牛ミンチ肉700g及び豚ミンチ肉300gに、チキンすり身125g、粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)125g、及び前記ピックル液250gを直接添加して混ぜ合わせ、得られた生地を成型機で成型した後、成型した生地をフライパンで焼いて、ハンバーグを得る方法」(甲B1製法発明) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1〜4 (ア−1)まず、本件特許発明1と甲B1食品発明とを対比する。 甲B1食品発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」は本件特許発明1における「大豆たん白」及び「大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、」に相当し、甲B1食品発明における「ハンバーグ」は、本件特許発明1における「成形挽肉加工食品であって、……、ハンバーグ、……からなる群より選択されるいずれか」に相当する。 また、甲B1食品発明が、「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」を含有するハンバーグであることは明らかである。 したがって、本件特許発明1と甲B1食品発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、 当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、 ……、ハンバーグ、……からなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明1では、 「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とされる一方、 甲B1食品発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B1−1)」という。) で相違する。 (ア−2)相違点(甲B1−1)について検討する。 甲B1食品発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」について、記載事項(甲B1−1)〜記載事項(甲B1−4)を含む甲B1には、水分量について何ら記載されていない。 そればかりか、甲B1食品発明は、荒挽き感は「△:従来品よりもやや劣る」と評価されるものであることが記載事項(甲B1−4)に示されていて、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものであるとは認められない一方、本件特許発明1に含有される大豆たん白の水分量は、加熱調理後の表面の凹凸の増強に影響するものであることが本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024に記載されていることからも、甲B1食品発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」の水分量が、本件特許発明1に含有される大豆だん白の水分量が同一であるとは認められない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「乾燥粒状大豆たん白製品をそのまま使用するのであれば、少なくとも水分量が2.5〜10%の範囲に入ることとなり、……甲1発明では市販の粒状大豆タンパク質である「ニューフジニック52」を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書48頁27行〜50頁5行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B1食品発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」は、混合前の水分量が不明であり、日本食品標準成分表にいう「粒状植物性たん白」又は日本農林規格にいう「粒状植物性たん白」に該当するといえる根拠も、「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であ」るとする根拠も見出すことはできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B1食品発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」の水分量と、本件特許発明1に含有される大豆たん白の水分量が、同一であるとは認められない。 したがって、相違点(甲B1−1)は実質的な相違点であって、本件特許発明1は甲B1食品発明と同一ではない。 (ア−3)以上より、本件特許発明1は、甲B1食品発明と同一ではない。本件特許発明1が甲B1食品発明と同一ではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明2〜4もまた、甲B1食品発明と同一ではない。 (イ)本件特許発明6〜10 (イ−1)まず、本件特許発明6と甲B1製法発明とを対比する。 甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」は本件特許発明6における「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であ」る「大豆たん白」に相当し、甲B1製法発明における「ハンバーグ」は、本件特許発明6における「成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、……からなる群より選択されるいずれか」に相当する。 また、甲B1製法発明における「牛ミンチ肉700g」、「豚ミンチ肉300g」、「チキンすり身125g」、「ピックル液250g」は、本件特許発明6における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明6と甲B1製法発明とは、 両者とも、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満である大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法であって、 成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、……からなる群より選択されるいずれかである、製造方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明6では、 「水分量が1〜20重量%である」とされる一方、 甲B1製法発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B1−2)」という。) で相違する。 (イ−2)相違点(甲B1−2)について検討する。 甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」について、記載事項(甲B1−1)〜記載事項(甲B1−4)を含む甲B1には、水分量について何ら記載されていない。 そればかりか、甲B1製法発明により得られるハンバーグは、荒挽き感は「△:従来品よりもやや劣る」と評価されるものであることが記載事項(甲B1−4)に示されていて、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものであるとは認められない一方、本件特許発明6における大豆たん白の水分量は、加熱調理後の表面の凹凸の増強に影響するものであることが本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024に記載されていることからも、甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」の水分量が、本件特許発明6における大豆たん白の水分量が同一であるとは認められない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「乾燥粒状大豆たん白製品をそのまま使用するのであれば、少なくとも水分量が2.5〜10%の範囲に入ることとなり、……甲1発明では市販の粒状大豆タンパク質である「ニューフジニック52」を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書48頁27行〜50頁5行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」は、日本食品標準成分表にいう「粒状植物性たん白」又は日本農林規格にいう「粒状植物性たん白」に該当するといえる根拠も、「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であ」るとする根拠も見出すことはできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」の水分量と、本件特許発明6における大豆だん白の水分量が、同一であるとは認められない。 したがって、相違点(甲B1−2)は実質的な相違点であって、本件特許発明6は甲B1製法発明と同一ではない。 (イ−3)以上より、本件特許発明6は、甲B1製法発明と同一ではない。本件特許発明6が甲B1製法発明と同一ではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明7〜10もまた、甲B1製法発明と同一ではない。 (ウ)本件特許発明12〜14 (ウ−1)まず、本件特許発明12と甲B1製法発明とを対比する。 甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」は本件特許発明12における「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であ」る「大豆たん白」に相当し、甲B1製法発明における「ハンバーグ」は、本件特許発明12における「成形挽肉加工食品」に相当する。 また、甲B1製法発明における「牛ミンチ肉700g」、「豚ミンチ肉300g」、「チキンすり身125g」、「ピックル液250g」は、本件特許発明12における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明12と甲B1製法発明とは、 両者とも、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満である大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品に関する方法であって、 成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、……からなる群より選択されるいずれかである、方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明12では、 「水分量が1〜20重量%である」とされる一方、 甲B1製法発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B1−3)」という。)、及び 「方法」について 本件特許発明12では、 「加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法」とされる一方、 甲B1製法発明では、 「ハンバーグを得る方法」とされる点(以下、「相違点(甲B1−4)」という。) で相違する。 (ウ−2)相違点(甲B1−3)について検討する。 甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」について、記載事項(甲B1−1)〜記載事項(甲B1−4)を含む甲B1には、水分量について何ら記載されていない。 そればかりか、甲B1製法発明により得られるハンバーグは、荒挽き感は「△:従来品よりもやや劣る」と評価されるものであることが記載事項(甲B1−4)に示されていて、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものであるとは認められない一方、本件特許発明12における大豆たん白の水分量は、加熱調理後の表面の凹凸の増強に影響するものであることが本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024に記載されていることからも、甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」の水分量が、本件特許発明12における大豆たん白の水分量が同一であるとは認められない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「乾燥粒状大豆たん白製品をそのまま使用するのであれば、少なくとも水分量が2.5〜10%の範囲に入ることとなり、……甲1発明では市販の粒状大豆タンパク質である「ニューフジニック52」を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書48頁27行〜50頁5行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」は、日本食品標準成分表にいう「粒状植物性たん白」又は日本農林規格にいう「粒状植物性たん白」に該当するといえる根拠も、「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であ」るとする根拠も見出すことはできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B1製法発明における「粒状の植物性タンパク質(品名:ニューフジニック52、製造者:不二製油株式会社、主成分:脱脂大豆タンパク質、大きさ:約5mm程度のミンチ肉の形状)」の水分量と、本件特許発明12における大豆だん白の水分量が、同一であるとは認められない。 したがって、相違点(甲B1−3)は実質的な相違点であって、相違点(甲B1−4)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲B1製法発明と同一ではない。 (ウ−3)以上より、本件特許発明12は、甲B1製法発明と同一ではない。本件特許発明12が甲B1製法発明と同一ではない以上、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明13もまた、甲B1製法発明と同一ではない。 ウ 小括 以上ア〜イに示したとおり、申立理由(B1)には理由がない。 (7)申立理由(B2)について ア 甲B2に記載された発明 甲B2には、上記(2)イに示したとおり、次の発明が記載されている。 「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白と加工食品原料と混合し成形し、加熱調理した後凍結して、さらに再加熱して得られる、ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品」(甲B2食品発明)、及び 「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白と加工食品原料と混合し成形し、加熱調理した後凍結して、さらに再加熱することによる、ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品の製造方法」(甲B2製法発明) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1〜5 (ア−1)まず、本件特許発明1と甲B2食品発明とを対比する。 甲B2食品発明における「大豆蛋白」は本件特許発明1における「大豆たん白」に相当し、甲B2食品発明における「ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品」は本件特許発明1における「ハンバーグ、ミートボール、……及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」に相当し、甲B2食品発明における「加工食品原料」は本件特許発明1における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明1と甲B2食品発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を原料とする成形挽肉加工食品であって、 ハンバーグ、ミートボール、……及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」である点で一致し、 「大豆たん白」について、 本件特許発明1では、 その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際には「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」に加工されていない一方、 甲B2食品発明では、 その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際には「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」に加工されている点(以下、「相違点(甲B2−1)」という。)、及び 本件特許発明1では、 「当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、当該大豆たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とされている一方、 甲B2食品発明では、 「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量について何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B2−2)」という。) で相違する。 (ア−2)相違点(甲B2−1)について検討する。 甲B2食品発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」は、加熱加圧・膨化により変性していることが技術常識に照らして明らかであり、本件特許発明1における「大豆たん白」とは異なるものである。 申立人Bは、甲B2食品発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」が、加熱加圧・膨化により変性しているものではないことの根拠を何ら示しておらず、甲B2食品発明における「大豆蛋白」又は「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」が本件特許発明1における「大豆たん白」に相当するものであることの根拠も何ら示していない。 したがって、相違点(甲B2−1)は実質的な相違点である。 (ア−3)相違点(甲B2−2)について検討する。 記載事項(甲B2−5)には、押出機により作製された組織化物の粒度分布についての記載があり、記載事項(甲B2−4)及び記載事項(甲B2−5)には、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の水分についての記載があるものの、上記のとおり、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」は、本件特許発明1における「大豆たん白」とは異なるものであるし、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の粒度分布及び水分についての記載は、甲B2食品発明における「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量を示すものではなく、甲B2食品発明における「大豆蛋白」の平均サイズ及び水分量が、本件特許発明1における「大豆たん白」の平均サイズ及び水分量に該当するとすることはできない。 申立人Bは、甲B2食品発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の粒度分布及び水分についての記載が、甲B2食品発明における「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量を示すものであることの根拠を何ら示していない。 したがって、相違点(甲B2−2)は実質的な相違点である。 (ア−4)以上より、本件特許発明1は甲B2食品発明ではない。本件特許発明1が甲B2食品発明ではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明2〜5もまた、甲B2食品発明ではない。 (イ)本件特許発明6〜11 (イ−1)まず、本件特許発明6と甲B2製法発明とを対比する。 甲B2製法発明における「大豆蛋白」は本件特許発明6における「大豆たん白」に相当し、甲B2製法発明における「ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品」は本件特許発明6における「ハンバーグ、ミートボール、……及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」に相当し、甲B2食品発明における「加工食品原料」は本件特許発明6における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明6と甲B2製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白及びその他の成形挽肉加工食品原料を原料とする、成形挽肉加工食品の製造方法であって、 成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、ミートボール、……及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、製造方法」である点で一致し、 「大豆たん白」について、 本件特許発明6では、 その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際には「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」に加工されていない一方、 甲B2製法発明では、 その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際には「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」に加工されている点(以下、「相違点(甲B2−3)」という。)、及び 本件特許発明6では、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、水分量が1〜20重量%であり、」とされている一方、 甲B2製法発明では、 「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量について何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B2−4)」という。) で相違する。 (イ−2)相違点(甲B2−3)について検討する。 甲B2製法発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」は、加熱加圧・膨化により変性していることが技術常識に照らして明らかであり、本件特許発明6における「大豆たん白」とは異なるものである。 申立人Bは、甲B2製法発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」が、加熱加圧・膨化により変性しているものではないことの根拠を何ら示しておらず、甲B2製法発明における「大豆蛋白」又は「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」が本件特許発明6における「大豆たん白」に相当するものであることの根拠も何ら示していない。 したがって、相違点(甲B2−3)は実質的な相違点である。 (イ−3)相違点(甲B2−4)について検討する。 記載事項(甲B2−5)には、押出機により作製された組織化物の粒度分布についての記載があり、記載事項(甲B2−4)及び記載事項(甲B2−5)には、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の水分についての記載があるものの、上記のとおり、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」は、本件特許発明6における「大豆たん白」とは異なるものであるし、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の粒度分布及び水分についての記載は、甲B2製法発明における「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量を示すものではなく、甲B2製法発明における「大豆蛋白」の平均サイズ及び水分量が、本件特許発明6における「大豆たん白」の平均サイズ及び水分量に該当するとすることはできない。 申立人Bは、甲B2製法発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の粒度分布及び水分についての記載が、甲B2製法発明における「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量を示すものであることの根拠を何ら示していない。 したがって、相違点(甲B2−4)は実質的な相違点である。 (イ−4)以上より、本件特許発明6は甲B2製法発明ではない。本件特許発明6が甲B2製法発明と同一ではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明7〜11もまた、甲B2製法発明ではない。 (ウ)本件特許発明12〜14 (ウ−1)まず、本件特許発明12と甲B2製法発明とを対比する。 甲B2製法発明における「大豆蛋白」は本件特許発明12における「大豆たん白」に相当し、甲B2製法発明における「ハンバーグ、ミートボール又は餃子である加工食品」は本件特許発明12における「成形挽肉加工食品」に相当し、甲B2食品発明における「加工食品原料」は本件特許発明1における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明12と甲B2製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白及びその他の成形挽肉加工食品原料を原料とする、成形挽肉加工食品に関する方法」である点で一致し、 「大豆たん白」について、 本件特許発明12では、 その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際には「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」に加工されていない一方、 甲B2製法発明では、 その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際には「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」に加工されている点(以下、「相違点(甲B2−5)」という。)、 本件特許発明12では、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、水分量が1〜20重量%である」とされている一方、 甲B2製法発明では、 「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量について何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B2−6)」という。)、及び 「成形挽肉加工食品に関する方法」が、 本件特許発明12では、 「加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法」とされる一方、 甲B2製法発明では、 「製造方法」とされる点(以下、「相違点(甲B2−7)」という。) で相違する。 (ウ−2)相違点(甲B2−5)について検討する。 甲B2製法発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」は、加熱加圧・膨化により変性していることが技術常識に照らして明らかであり、本件特許発明12における「大豆たん白」とは異なるものである。 申立人Bは、甲B2製法発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」が、加熱加圧・膨化により変性しているものではないことの根拠を何ら示しておらず、甲B2製法発明における「大豆蛋白」又は「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」が本件特許発明12における「大豆たん白」に相当するものであることの根拠も何ら示していない。 したがって、相違点(甲B2−5)は実質的な相違点である。 (ウ−3)相違点(甲B2−6)について検討する。 記載事項(甲B2−5)には、押出機により作製された組織化物の粒度分布についての記載があり、記載事項(甲B2−4)及び記載事項(甲B2−5)には、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の水分についての記載があるものの、上記のとおり、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の原料である「大豆蛋白」は、本件特許発明6における「大豆たん白」とは異なるものであるし、「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の粒度分布及び水分についての記載は、甲B2製法発明における「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量を示すものではなく、甲B2製法発明における「大豆蛋白」の平均サイズ及び水分量が、本件特許発明12における「大豆たん白」の平均サイズ及び水分量に該当するとすることはできない。 申立人Bは、甲B2製法発明における「大豆蛋白、カゼイン及び水を加熱加圧し大気中に押し出して膨化してなる組織状蛋白」の粒度分布及び水分についての記載が、甲B2製法発明における「大豆蛋白」自体の平均サイズ及び水分量を示すものであることの根拠を何ら示していない。 したがって、相違点(甲B2−6)は実質的な相違点である。 (ウ−4)以上より、相違点(甲B2−7)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲B2製法発明ではない。本件特許発明12が甲B2製法発明ではない以上、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明13〜14もまた、甲B2製法発明ではない。 ウ 小括 以上ア〜イに示したとおり、申立理由(B2)には理由がない。 (8)申立理由(B3−1)及び申立理由(B3−2)について ア 甲B3に記載された発明 甲B3には、上記(3)イに示したとおり、次の発明が記載されている。 「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部を混合して餃子の皮で包み、180℃の鉄板で焼き色が着くまで熱し、その後水を加えて蒸し焼きにして、得られる餃子」(甲B3食品発明)、及び 「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部を混合して餃子の皮で包み、180℃の鉄板で焼き色が着くまで熱し、その後水を加えて蒸し焼きにすることによる、餃子の製造方法」(甲B3製法発明) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1〜5 (ア−1)まず、本件特許発明1と甲B3食品発明とを対比する。 甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックK−13)」は本件特許発明1における「大豆たん白」に相当し、甲B3食品発明における「餃子」は本件特許発明1における「……及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」に相当し、甲B3食品発明における「キャベツ」、「豚挽き肉」、「玉ねぎ」、「鶏肉」、「豚脂」、「パン粉」、「にら」、「醤油」、「ごま油」、「酒」、「食塩」、「にんにく」、「旨味調味料」、「白胡椒」及び「砂糖」は本件特許発明1における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明1と甲B3食品発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、 ……肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明1では、 「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とされる一方、 甲B3食品発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B3−1)」という。)、及び 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明1では、 「平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲B3食品発明では、 「粒状」とされる点(以下、「相違点(甲B3−2)」という。) で相違する。 (ア−2)相違点(甲B3−1)について検討する。 甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」について、記載事項(甲B3−1)〜記載事項(甲B3−2)を含む甲B3には、水分量について何ら記載されていない。 記載事項(甲B7)には、昭和産業株式会社の販売する「粒状大豆たん白」が、乾燥した組織状の大豆たん白であり、「ミーテックスK−13」はその「粒状大豆たん白」の一銘柄であることが示されるとともに、「ミーテックスK−13」の包装にJASマークが付与されていることが示されている。 「ミーテックK−13」の包装にJASマークが付与されていることから、甲B7の情報が公衆に利用可能となった時点において「ミーテックスK−13」は日本農林規格に適合するものであったと認められ、日本農林規格では、粒状植物性たん白の水分について、乾燥したものにあっては10%以下とすると定められていることが記載事項(甲B6)に示されている。 しかし、たとえ、「ミーテックK−13」が日本農林規格で定められる「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当し、その水分量が10%以下のものであったとしても、日本農林規格では「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」の水分量の下限については定めておらず、甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 また、甲B3食品発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合されるまでに、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が変更されることはあり得ないとすることはできず、甲B3食品発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合される際に、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「粒状大豆たん白の市販品が通常であれば水分量2.5〜10%以下の範囲に入ることとなり、……甲3発明では市販の粒状大豆タンパク質であるミーテックK−13を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書65頁19〜26行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるという根拠を見出すことはできず、また、甲B3食品発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合されるまでに、「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が変更されることはあり得ないことであって、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合される際に、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとする根拠を見出すこともできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が、本件特許発明1における大豆たん白の水分量の範囲にあるとは認められない。 したがって、相違点(甲B3−1)は実質的な相違点であって、相違点(甲B3−2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B3食品発明ではない。 (ア−3)以上より、本件特許発明1は、甲B3食品発明ではない。本件特許発明1が甲B3食品発明ではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明2〜3もまた、甲B3食品発明ではない。 (ア−4)本件特許発明5は、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに「冷凍品」であるという発明特定事項を加えることにより技術的に限定したものである。 成形挽肉加工食品を冷凍品にすることは、当業界において広く行われていることであるから、甲B3食品発明を冷凍品にすることは当業者が容易に想到し得たことと認められるものの、甲B3食品発明を冷凍品にする際に、その原料である「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量を調整して「1〜20重量%」の範囲にする動機付けを見出すことはできない。 また、本件特許発明5は、本件特許明細書に記載されるとおり、成形挽肉加工食品の冷凍品であっても、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものが得られるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明5は、甲B3食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件特許発明6〜10 (イ−1)まず、本件特許発明6と甲B3製法発明とを対比する。 甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックK−13)」は本件特許発明6における「大豆たん白」に相当し、甲B3製法発明における「餃子」は本件特許発明6における「……及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかで−る、成形挽肉加工食品」に相当し、甲B3製法発明における「キャベツ」、「豚挽き肉」、「玉ねぎ」、「鶏肉」、「豚脂」、「パン粉」、「にら」、「醤油」、「ごま油」、「酒」、「食塩」、「にんにく」、「旨味調味料」、「白胡椒」及び「砂糖」は本件特許発明6における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明6と甲B3製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法であって、 成形挽肉加工食品が、……肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、製造方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明6では、 「水分量が1〜20重量%である」とされる一方、 甲B3製法発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B3−3)」という。)、及び 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明6では、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲B3製法発明では、 「粒状」とされる点(以下、「相違点(甲B3−4)」という。) で相違する。 (イ−2)相違点(甲B3−3)について検討する。 甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」について、記載事項(甲B3−1)〜記載事項(甲B3−2)を含む甲B3には、水分量について何ら記載されていない。 記載事項(甲B7)には、昭和産業株式会社の販売する「粒状大豆たん白」が、乾燥した組織状の大豆たん白であり、「ミーテックスK−13」はその「粒状大豆たん白」の一銘柄であることが示されるとともに、「ミーテックスK−13」の包装にJASマークが付与されていることが示されている。 「ミーテックK−13」の包装にJASマークが付与されていることから、甲B7の情報が公衆に利用可能となった時点において「ミーテックスK−13」は日本農林規格に適合するものであったと認められ、日本農林規格では、粒状植物性たん白の水分について、乾燥したものにあっては10%以下とすると定められていることが記載事項(甲B6)に示されている。 しかし、たとえ、「ミーテックK−13」が日本農林規格で定められる「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当し、その水分量が10%以下のものであったとしても、日本農林規格では「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」の水分量の下限については定めておらず、甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 また、甲B3製法発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合されるまでに、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が変更されることはあり得ないとすることはできず、甲B3製法発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合される際に、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「粒状大豆たん白の市販品が通常であれば水分量2.5〜10%以下の範囲に入ることとなり、……甲3発明では市販の粒状大豆タンパク質であるミーテックK−13を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書65頁19〜26行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるという根拠を見出すことはできず、また、甲B3製法発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合されるまでに、「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が変更されることはあり得ないことであって、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合される際に、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとする根拠を見出すこともできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が、本件特許発明6における大豆たん白の水分量の範囲にあるとは認められない。 したがって、相違点(甲B3−3)は実質的な相違点であって、相違点(甲B3−4)について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲B3製法発明ではない。 (イ−3)以上より、本件特許発明6は、甲B3製法発明ではない。本件特許発明6が甲B3製法発明ではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明7〜8、10もまた、甲B3製法発明ではない。 (イ−4)本件特許発明11は、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに「大豆たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱することを含む」及び「前記加熱後の成形物を冷凍することを含む」という発明特定事項を加えることにより技術的に限定したものである。 成形挽肉加工食品を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱すること、及び、加熱後の成形物を冷凍することは、当業界において広く行われていることであるから、甲B3製法発明についても、成形挽肉加工食品を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱するものすること、及び、加熱後の成形物を冷凍するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められるものの、加熱後の成形物を冷凍するものとする際の水分量に着目していない甲B3製法発明を、成形挽肉加工食品を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱するものすること、及び、加熱後の成形物を冷凍するものとする際に、その原料である「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量を調整して「1〜20重量%」の範囲にする動機付けを見出すことはできない。 また、本件特許発明11は、本件特許明細書に記載されるとおり、成形挽肉加工食品の冷凍品であっても、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものが得られるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明11は、甲B3製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件特許発明12〜14 (ウ−1)まず、本件特許発明12と甲B3製法発明とを対比する。 甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックK−13)」は本件特許発明12における「大豆たん白」に相当し、甲B3製法発明における「餃子」は本件特許発明12における「成形挽肉加工食品」に相当し、甲B3製法発明における「キャベツ」、「豚挽き肉」、「玉ねぎ」、「鶏肉」、「豚脂」、「パン粉」、「にら」、「醤油」、「ごま油」、「酒」、「食塩」、「にんにく」、「旨味調味料」、「白胡椒」及び「砂糖」は本件特許発明12における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明12と甲B3製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品に関する方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明12では、 「水分量が1〜20重量%である」とされる一方、 甲B3製法発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B3−5)」という。) 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明12では、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲B3製法発明では、 「粒状」とされる点(以下、「相違点(甲B3−6)」という。)、及び 「方法」について、 本件特許発明12では、 「加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法」とされる一方、 甲B3製法発明では、 「製造方法」とされる点(以下、「相違点(甲B3−7)」という。) で相違する。 (ウ−2)相違点(甲B3−5)について検討する。 甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」について、記載事項(甲B3−1)〜記載事項(甲B3−2)を含む甲B3には、水分量について何ら記載されていない。 記載事項(甲B7)には、昭和産業株式会社の販売する「粒状大豆たん白」が、乾燥した組織状の大豆たん白であり、「ミーテックスK−13」はその「粒状大豆たん白」の一銘柄であることが示されるとともに、「ミーテックスK−13」の包装にJASマークが付与されていることが示されている。 「ミーテックK−13」の包装にJASマークが付与されていることから、甲B7の情報が公衆に利用可能となった時点において「ミーテックスK−13」は日本農林規格に適合するものであったと認められ、日本農林規格では、粒状植物性たん白の水分について、乾燥したものにあっては10%以下とすると定められていることが記載事項(甲B6)に示されている。 しかし、たとえ、「ミーテックK−13」が日本農林規格で定められる「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当し、その水分量が10%以下のものであったとしても、日本農林規格では「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」の水分量の下限については定めておらず、甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 また、甲B3製法発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合されるまでに、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が変更されることはあり得ないとすることはできず、甲B3製法発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合される際に、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「粒状大豆たん白の市販品が通常であれば水分量2.5〜10%以下の範囲に入ることとなり、……甲3発明では市販の粒状大豆タンパク質であるミーテックK−13を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書65頁19〜26行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるという根拠を見出すことはできず、また、甲B3製法発明において、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合されるまでに、「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が変更されることはあり得ないことであって、「キャベツ41.4重量部、豚挽き肉17.2重量部、玉ねぎ10.3重量部、鶏肉6.9重量部、豚脂6.9重量部、パン粉3.4重量部、にら3.4重量部、粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)2.7重量部、醤油2.0重量部、ごま油1.7重量部、酒1.7重量部、食塩0.8重量部、にんにく0.7重量部、旨味調味料0.4重量部、白胡椒0.3重量部及び砂糖0.2重量部」が混合される際に、その「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとする根拠を見出すこともできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B3製法発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が、本件特許発明12における大豆たん白の水分量の範囲にあるとは認められない。 したがって、相違点(甲B3−5)は実質的な相違点であって、相違点(甲B3−6)及び相違点(甲B3−7)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲B3製法発明ではない。 (ウ−3)以上より、本件特許発明12は、甲B3製法発明ではない。本件特許発明12が甲B3製法発明ではない以上、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明13もまた、甲B3製法発明ではない。 (ウ−4)本件特許発明14は、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに「大豆たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱することを含む」及び「前記加熱後の成形物を冷凍することを含む」という発明特定事項を加えることにより技術的に限定したものである。 成形挽肉加工食品を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱すること、及び、加熱後の成形物を冷凍することは、当業界において広く行われていることであるから、甲B3製法発明についても、成形挽肉加工食品を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱するものすること、及び、加熱後の成形物を冷凍するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められるものの、甲B3製法発明を、成形挽肉加工食品を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱するものすること、及び、加熱後の成形物を冷凍するものとする際に、その原料である「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量を調整して「1〜20重量%」の範囲にする動機付けを見出すことはできない。 また、本件特許発明14は、本件特許明細書に記載されるとおり、成形挽肉加工食品の冷凍品であっても、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものが得られるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明14は、甲B3製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上ア〜イに示したとおり、申立理由(B3−1)及び申立理由(B3−2)には理由がない。 (9)申立理由(B4−1)及び申立理由(B4−2)について ア 甲B4に記載された発明 甲B4には、上記(4)イに示したとおり、次の発明が記載されている。 「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部をミキサーにて均一になるようによく混合し、作成したメンチカツの中種生地を、ドラム式の成型機(日本キャリア工業(株)製)を用いて1個40gになるように成型し、この中種を90℃×8分で蒸煮加熱し冷却した後、1個に対して、バッター15g、パン粉15gを付け、175℃で4分間フライすることにより、得られるメンチカツ」(甲B4食品発明)、及び 「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部をミキサーにて均一になるようによく混合し、作成したメンチカツの中種生地を、ドラム式の成型機(日本キャリア工業(株)製)を用いて1個40gになるように成型し、この中種を90℃×8分で蒸煮加熱し冷却した後、1個に対して、バッター15g、パン粉15gを付け、175℃で4分間フライすることによる、メンチカツの製造方法」(甲B4製法発明) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1〜3、本件特許発明5 まず、本件特許発明1と甲B4食品発明とを対比する。 甲B4食品発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」は本件特許発明1における「大豆たん白」に相当し、甲B4食品発明における「メンチカツ」は本件特許発明1における「……、メンチカツ、……からなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」に相当し、甲B4食品発明における「豚挽肉」、「鶏挽肉」、「チキンすり身」、「加水」、「みじん切りした玉ねぎ」、「パン粉」、「醤油」、「食塩」、「配合調味料」、及び「白胡椒」は本件特許発明1における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明1と甲B4食品発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、 ……、メンチカツ、……からなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明1では、 「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」とされる一方、 甲B4食品発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B4−1)」という。)、及び 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明1では、 「平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲B4食品発明では、 「粒状」とされる点(以下、「相違点(甲B4−2)」という。) で相違する。 (ア−2)相違点(甲B4−1)について検討する。 甲B4食品発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」について、記載事項(甲B4−4)〜記載事項(甲B4−5)を含む甲B4には、水分量について何ら記載されていない。 ここで、日本農林規格では、粒状植物性たん白の水分について、乾燥したものにあっては10%以下とすると定められていることが記載事項(甲B6)に示されているが、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」が日本農林規格にいう「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当するといえる根拠を見出すことはできず、たとえ、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」が日本農林規格で定められる「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当し、その水分量が10%以下のものであったとしても、日本農林規格では「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」の水分量の下限については定めておらず、甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 また、甲B4食品発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合されるまでに、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が変更されることはあり得ないとすることはできず、甲B4食品発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合される際に、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「粒状大豆たん白の市販品が通常であれば水分量2.5〜10%以下の範囲に入ることとなり、……市販の粒状大豆タンパク質であるニューフジニック51を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書72頁5〜12行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B4食品発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるという根拠を見出すことはできず、また、甲B4食品発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合されるまでに、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が変更されることはあり得ないことであって、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合される際に、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株)))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとする根拠を見出すこともできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B4食品発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51」の水分量が、本件特許発明1における大豆たん白の水分量の範囲にあるとは認められない。 したがって、相違点(甲B4−1)は実質的な相違点であって、相違点(甲B4−2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B4食品発明ではない。 (ア−3)以上より、本件特許発明1は、甲B4食品発明ではない。本件特許発明1が甲B4食品発明ではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明2〜3、本件特許発明5もまた、甲B4食品発明ではない。 (ア−4)甲B4食品発明は、記載事項(甲B4−1)〜記載事項(甲B4−3)に記載されるように、従来技術では困難であった、フライ類の衣の透明性が付与され、かつ良好な食感を付与できるフライ類用衣材およびそれを用いたフライ類を提供するために、馬鈴薯澱粉の内、粒子径が50μm以上の澱粉粒子を除去した馬鈴薯澱粉を衣材に使用するという技術的思想を有するものであって、その技術的思想とは関わりのない「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」に着目して、しかも、その水分量を、本件特許発明1における「水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、」に調整することの動機付けとなるものは見いだせない。 したがって、相違点(甲B4−1)に関して、甲B4食品発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量を、本件特許発明1における水分量にすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、相違点(甲B4−2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B4食品発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 しかも、本件特許発明1は、本件特許明細書に記載されるとおり、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものが得られるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲B4食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ア−5)以上より、本件特許発明1は、甲B4食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明1が甲B4食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明2〜3、本件特許発明5もまた、甲B4食品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件特許発明6〜8、本件特許発明10〜11 まず、本件特許発明6と甲B4製法発明とを対比する。 甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」は本件特許発明6における「大豆たん白」に相当し、甲B4製法発明における「メンチカツ」は本件特許発明6における「……、メンチカツ、……からなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品」に相当し、甲B4製法発明における「豚挽肉」、「鶏挽肉」、「チキンすり身」、「加水」、「みじん切りした玉ねぎ」、「パン粉」、「醤油」、「食塩」、「配合調味料」、及び「白胡椒」は本件特許発明6における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明6と甲B4製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法であって、 成形挽肉加工食品が、……、メンチカツ、……からなる群より選択されるいずれかである、製造方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明6では、 「水分量が1〜20重量%である」とされる一方、 甲B4製法発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B4−3)」という。)、及び 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明6では、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲B4製法発明では、 「粒状」とされる点(以下、「相違点(甲B4−4)」という。) で相違する。 (ア−2)相違点(甲B4−3)について検討する。 甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」について、記載事項(甲B4−4)〜記載事項(甲B4−5)を含む甲B4には、水分量について何ら記載されていない。 ここで、日本農林規格では、粒状植物性たん白の水分について、乾燥したものにあっては10%以下とすると定められていることが記載事項(甲B6)に示されているが、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」が日本農林規格にいう「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当するといえる根拠を見出すことはできず、たとえ、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」が日本農林規格で定められる「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当し、その水分量が10%以下のものであったとしても、日本農林規格では「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」の水分量の下限については定めておらず、甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 また、甲B4製法発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合されるまでに、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が変更されることはあり得ないとすることはできず、甲B4製法発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合される際に、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「粒状大豆たん白の市販品が通常であれば水分量2.5〜10%以下の範囲に入ることとなり、……市販の粒状大豆タンパク質であるニューフジニック51を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書72頁5〜12行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるという根拠を見出すことはできず、また、甲B4製法発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合されるまでに、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が変更されることはあり得ないことであって、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合される際に、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株)))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとする根拠を見出すこともできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51」の水分量が、本件特許発明6における大豆たん白の水分量の範囲にあるとは認められない。 したがって、相違点(甲B4−3)は実質的な相違点であって、相違点(甲B4−4)について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲B4製法発明ではない。 (ア−3)以上より、本件特許発明6は、甲B4製法発明ではない。本件特許発明6が甲B4製法発明ではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明7〜8、本件特許発明10〜11もまた、甲B4製法発明ではない。 (ア−4)甲B4製法発明は、記載事項(甲B4−1)〜記載事項(甲B4−3)に記載されるように、従来技術では困難であった、フライ類の衣の透明性が付与され、かつ良好な食感を付与できるフライ類用衣材およびそれを用いたフライ類を提供するために、馬鈴薯澱粉の内、粒子径が50μm以上の澱粉粒子を除去した馬鈴薯澱粉を衣材に使用するという技術的思想を有するものであって、その技術的思想とは関わりのない「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」に着目して、しかも、その水分量を、本件特許発明6における「水分量が1〜20重量%である」に調整することの動機付けとなるものは見いだせない。 したがって、相違点(甲B4−3)に関して、甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量を、本件特許発明6における水分量にすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、相違点(甲B4−4)について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲B4製法発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 しかも、本件特許発明6は、本件特許明細書に記載されるとおり、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものが得られることができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明6は、甲B4製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ア−5)以上より、本件特許発明6は、甲B4製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明6が甲B4製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明6の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明7〜8、本件特許発明10〜11もまた、甲B4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件特許発明12〜14 まず、本件特許発明12と甲B4製法発明とを対比する。 甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」は本件特許発明12における「大豆たん白」に相当し、甲B4製法発明における「メンチカツ」は本件特許発明12における「成形挽肉加工食品」に相当し、甲B4製法発明における「豚挽肉」、「鶏挽肉」、「チキンすり身」、「加水」、「みじん切りした玉ねぎ」、「パン粉」、「醤油」、「食塩」、「配合調味料」、及び「白胡椒」は本件特許発明12における「その他の成形挽肉加工食品原料」に相当する。 したがって、本件特許発明12と甲B4製法発明とは、 両者とも、 「大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品に関する方法であって、 成形挽肉加工食品が、……、メンチカツ、……からなる群より選択されるいずれかである、方法」である点で一致し、 「大豆たん白」の水分量について、 本件特許発明12では、 「水分量が1〜20重量%である」とされる一方、 甲B4製法発明では、 何ら特定されていない点(以下、「相違点(甲B4−5)」という。)、 「大豆たん白」の大きさについて、 本件特許発明12では、 「平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、」とされる一方、 甲B4製法発明では、 「粒状」とされる点(以下、「相違点(甲B4−6)」という。)、及び 「方法」について 「方法」について、 本件特許発明12では、 「加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法」とされる一方、 甲B4製法発明では、 「製造方法」とされる点(以下、「相違点(甲B4−7)という。) で相違する。 (ア−2)相違点(甲B4−5)について検討する。 甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」について、記載事項(甲B4−4)〜記載事項(甲B4−5)を含む甲B4には、水分量について何ら記載されていない。 ここで、日本農林規格では、粒状植物性たん白の水分について、乾燥したものにあっては10%以下とすると定められていることが記載事項(甲B6)に示されているが、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」が日本農林規格にいう「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当するといえる根拠を見出すことはできず、たとえ、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」が日本農林規格で定められる「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」に該当し、その水分量が10%以下のものであったとしても、日本農林規格では「粒状植物性たん白」の「乾燥したもの」の水分量の下限については定めておらず、甲B3食品発明における「粒状大豆たんぱく(昭和ミーテックスK−13)」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 また、甲B4製法発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合されるまでに、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が変更されることはあり得ないとすることはできず、甲B4製法発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合される際に、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとすることはできない。 申立人Bは、大豆たん白の水分量に関して、記載事項(甲B5)には、日本食品標準成分表において「粒状植物性たん白」について水分が可食部100g当たり7.8gと掲載されていることが記載され、記載事項(甲B6)には、植物性たん白の日本農林規格において「粒状植物性たん白」について水分が「乾燥したものにあつては10%以下であり、冷凍したものにあつては80%以下であること。」と掲載されていることが記載され、記載事項(甲B7)に示された昭和産業株式会社が販売する業務用商品の粒状大豆たん白のすべてにJAS規格を満たすことを示すマークが付与され、記載事項(甲B2−5)に示された押出機による組織化物の作製においては大豆たん白組織化物が水分10%まで乾燥されていることを挙げて、「粒状大豆たん白の市販品が通常であれば水分量2.5〜10%以下の範囲に入ることとなり、……市販の粒状大豆タンパク質であるニューフジニック51を、そのままその他の成形挽肉加工食品原料…と混合しているのであるから、混合時点で当該水分量を満たす。」と主張している(申立人Bの特許異議申立書72頁5〜12行)。 しかし、これらの記載を参酌しても、甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるという根拠を見出すことはできず、また、甲B4製法発明において、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合されるまでに、「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量が変更されることはあり得ないことであって、「豚挽肉30部、鶏挽肉20部、チキンすり身10部、粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))5部、加水10部、みじん切りした玉ねぎ15部、パン粉3部、醤油1部、食塩0.5部、配合調味料0.3部、白胡椒0.2部」が混合される際に、その「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株)))」の水分量が「1〜20重量%」の範囲にあるとする根拠を見出すこともできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51」の水分量が、本件特許発明12における大豆たん白の水分量の範囲にあるとは認められない。 したがって、相違点(甲B4−5)は実質的な相違点であって、相違点(甲B4−6)及び相違点(甲B4−7)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲B4製法発明ではない。 (ア−3)以上より、本件特許発明12は、甲B4製法発明ではない。本件特許発明12が甲B4製法発明ではない以上、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明13〜14もまた、甲B4製法発明ではない。 (ア−4)甲B4製法発明は、記載事項(甲B4−1)〜記載事項(甲B4−3)に記載されるように、従来技術では困難であった、フライ類の衣の透明性が付与され、かつ良好な食感を付与できるフライ類用衣材およびそれを用いたフライ類を提供するために、馬鈴薯澱粉の内、粒子径が50μm以上の澱粉粒子を除去した馬鈴薯澱粉を衣材に使用するという技術的思想を有するものであって、その技術的思想とは関わりのない「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」に着目して、しかも、その水分量を、本件特許発明12における「水分量が1〜20重量%である」に調整することの動機付けとなるものは見いだせない。 したがって、相違点(甲B4−5)に関して、甲B4製法発明における「粒状大豆たん白『ニューフジニック51』(不二製油(株))」の水分量を、本件特許発明12における水分量にすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、相違点(甲B4−6)〜相違点(甲B4−7)について検討するまでもなく、本件特許発明12は甲B4製法発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 しかも、本件特許発明12は、本件特許明細書に記載されるとおり、加熱調理後の表面の凹凸が増強されたものが得られるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明12は、甲B4製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ア−5)以上より、本件特許発明12は、甲B4製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明12が甲B4製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明12の発明特定事項すべてを発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものである本件特許発明13〜14もまた、甲B4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上ア〜イに示したとおり、申立理由(B4−1)及び申立理由(B4−2)には理由がない。 5 申立理由(B−5)について 本件特許発明1、本件特許発明3〜6、本件特許発明8〜14の課題は、請求項1、3〜6、8〜14の記載、並びに本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0006、段落0093などの記載から、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供することであると認められる。 その課題を解決するための手段は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0007〜0093に記載されており、特に、段落0047〜0092には、実施例としてその手段が具体的に記載されていることから、それらの記載により当業者は、本件特許発明1、本件特許発明3〜6、本件特許発明8〜14が、成形挽肉加工食品に特定の平均サイズ及び水分量を有する大豆たん白を含有することにより、それらの発明の課題を解決できることを認識できる。 本件特許発明1、本件特許発明3〜6、本件特許発明8〜14はいずれも、成形挽肉加工食品に特定の平均サイズ及び水分量を有する大豆たん白を含有するものであって、大豆たん白の含量は特定されていないが、たとえ大豆たん白の含量が少なくても、その含量に応じて成形挽肉加工食品の加熱調理後の表面の凹凸が増強されること、すなわち、当該発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。 申立人Bは、ごく少量の大豆たん白しか含まない態様であれば、表面の凹凸に影響せず、課題が解決できないことは明らかである旨を主張する(申立人Bの特許異議申立書77頁21〜26行)。 しかし、申立人Bは、成形挽肉加工食品に含有される大豆たん白がごく少量の場合には、表面の凹凸に影響しないことの根拠を何ら示していない。 そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0006〜0010に記載されるように、本件特許発明1、本件特許発明3〜6、本件特許発明8〜14は、成形挽肉加工食品に特定の平均サイズ及び水分量を有する大豆たん白を含有することにより、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品が得られることを技術的思想とするものであり、上記のとおり、本件特許発明1、本件特許発明3〜6、本件特許発明8〜14は、成形挽肉加工食品に特定の平均サイズ及び水分量を有する大豆たん白を含有することにより、たとえ大豆たん白の含量が少なくても、その含量に応じて成形挽肉加工食品の加熱調理後の表面の凹凸が増強されること、すなわち、当該発明の課題を解決できることを、当業者は認識できる。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、申立理由(B−5)には理由がない。 6 申立理由(B6)について 本件特許発明1〜14における「その他の成形挽肉加工食品原料」は、請求項1〜14の記載からみて、成形挽肉加工食品原料のうち、特定の平均サイズ及び水分含量を有する「大豆たん白」以外のものであると、当業者には理解できる。 申立人Bは、本件特許明細書の記載からは、「その他の成形挽肉加工食品原料」とは、植物性たん白、すなわち大豆たん白以外の広い範囲の原料を含むものであると理解できるが、本件特許権者は、本件特許の審査課程において、「その他の成形挽肉加工食品原料」からピックル液は除外され、牛ミンチ肉、豚ミンチ肉、ダイス玉ねぎ、全卵及び赤パン粉は「その他のハンバーグ原料」として、「その他の成形挽肉加工食品原料」に含まれるというような主張を行っており、「その他の成形挽肉加工食品原料」の外延が極めて不明確である旨を主張している(申立人Bの特許異議申立書78頁6行〜80頁23行)。 しかし、発明の詳細な説明には「本発明は成形挽肉加工食品原料として、水が用いられ得る。」(段落0028)及び「成形挽肉加工食品原料に水が含まれる場合、当該水は植物性たん白と直接に混合せずに、それら以外の成形挽肉加工食品原料と混合し、得られた混合物を植物性たん白と混合することが好ましい。あるいは、水及び植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料を混合し、得られた混合物に水と植物性たん白を加え、直ぐに混合開始することが好ましい。」(段落0030)とあって、ビックル液など水分を含むものであっても、「大豆たん白」を「その他の成形挽肉加工食品原料」と混合する前に、「大豆たん白」水分含量を調整するために「大豆たん白」に加えられる水分以外のものは、「その他の成形挽肉加工食品原料」に該当すると理解できるから、本件特許発明1〜14における「その他の成形挽肉加工食品原料」の範囲が明確でないとすることはできない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、申立理由(B6)には理由がない。 7 申立理由(B7−2)について 本件特許発明1〜14の課題は、請求項1〜14の記載、並びに本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0006、段落0093などの記載から、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供することであると認められる。 「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合される場合には、第1回の混合後の「大豆たん白」は混合物になって、「大豆たん白」には該当しないことから、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合される場合には、本件特許発明1〜14における「大豆たん白」の水分量は、第一回の「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の直前における「大豆たん白」の水分量であることが明らかであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には「植物性たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際に75重量%以下であると、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物が柔らかくなり過ぎず、十分な成形性を有し得る。また、混合時に植物性たん白がつぶれ難いため、加熱調理後における表面の凹凸が増強され易い。また本発明において用いられる植物性たん白は、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、混合後に吸水し成形挽肉加工食品に含有された際に違和感のない食感とするため、水分量が1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることが特に好ましい。」(段落0023)との記載があること、及び、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0047〜0092には実施例として、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」が混合される場合に本件特許発明1〜14により、その課題が解決できることが具体的に示されていることから、複数回に分けて混合される場合についても、「大豆たん白」の水分量が、第一回の「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の直前において、本件特許発明1〜14における「大豆たん白」の水分量の範囲にあれば、「加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供すること」という本件特許発明1〜14の課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。 申立人Bは、複数回に分けて混合される工程のいずれの工程で規定の平均サイズ及び水分量を満たせばよいのかが不明である。例えば、2回に分けて添加した態様を示す実施例は実施例8〜10であると思われるが、水を添加する段階では上記規定を満たすものの、続いて他の原料と混合する場合は水分量を満たしていない。このような実施例が本件特許発明に含まれるかどうか不明であり、そうであれば、本件特許発明1の規定を満たす、「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合される実施例は本件特許明細書に記載がない。そうであれば、「その他の成形挽肉加工食品原料」を複数回に分けた場合に本件発明の課題が解決できるかどうかを確認していないのであるから、本件特許発明1は本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件特許明細書に記載された発明ではない旨を主張する(申立人Bの特許異議申立書80頁26行〜81頁15行)。 しかし、上記のとおり、「大豆たん白」と「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合される場合には、本件特許発明1〜14における「大豆たん白」の水分量は、第一回の「その他の成形挽肉加工食品原料」との混合の直前における「大豆たん白」の水分量であることは明らかであるから、本件特許発明1の規定を満たす「その他の成形挽肉加工食品原料」が複数回に分けて混合される実施例は本件特許明細書に記載がないことを前提とする、申立人Bの主張は受け入れられない。 したがって、申立人Bの上記主張は受け入れられず、申立理由(B7−2)には理由がない。 8 まとめ 上記1〜7に示したとおり、 本件特許発明1〜14に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、 本件特許発明1〜4、6〜10、12、13に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではなく、 本件特許発明1〜14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件又は特許法第36条第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではないので、同法第113条第2号又は第4号の規定により取り消されるべきものではない。 第5 むすび 以上のとおり、令和3年11月1日付け取消理由通知に記載した取消理由、申立人Aの特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び申立人Bの特許異議申立書に記載された特許異議申立理由のいずれによっても、本件特許発明1〜本件特許発明14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1〜本件特許発明14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-02-24 |
出願番号 | P2016-130538 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(A23L)
P 1 651・ 161- Y (A23L) P 1 651・ 121- Y (A23L) P 1 651・ 537- Y (A23L) P 1 651・ 536- Y (A23L) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
村上 騎見高 冨永 みどり |
登録日 | 2020-12-28 |
登録番号 | 6816391 |
権利者 | 味の素株式会社 |
発明の名称 | 表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品 |
代理人 | 中 正道 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 鎌田 光宜 |