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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1385172
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-25 
確定日 2022-04-06 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6790295号発明「無糖炭酸飲料、無糖炭酸飲料の製造方法、及び無糖飲料の後切れ改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6790295号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜2〕、3について訂正することを認める。 特許第6790295号の請求項1〜2、3、4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6790295号の請求項1〜4に係る特許についての出願は、令和2年2月25日の出願であって、令和2年11月6日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年5月25日に特許異議申立人 笠原佳代子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
その後の経緯は次のとおりである。
令和3年 8月27日付け:取消理由通知
同年10月18日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年12月13日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知
令和4年 1月20日 :意見書の提出(申立人)

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年10月18日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1〜2、3、4は、それぞれ一群の請求項である。

訂正事項1:
特許請求の範囲の請求項1に、「乳化香料を含み、炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下であり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料。」と記載されているのを、「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を含み、炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下であり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。

訂正事項2:
特許請求の範囲の請求項3に、「乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法。」と記載されているのを、「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法。」に訂正する。

2 訂正の目的、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載される「乳化香料」を、「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」に訂正することにより技術的に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無について
本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(本件特許明細書等」ともいう。)には、
「【0022】
本実施形態の無糖炭酸飲料は、乳化香料を含む。乳化香料は、前述した通り、オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている状態にある香料である。なお、乳化香料は、オイルを乳化剤により水中油型(O/W型)することができれば、オイルと乳化剤以外の成分を含んでいてもよい。
【0023】
乳化香料を構成する乳化剤は、オイルを水中油型(O/W型)に乳化することができるものであればよく特に限定されるものではないが、例えば、親水基と親油基(疎水基)の両方を備えている物質を用いることができる。後切れがより改善されやすくなる観点から、乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム及びガティガムからなる群より選択される1種以上の乳化剤であることが好ましい。」(下線は当審による。)との記載があることから、訂正事項1は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記アで検討したように、特許請求の範囲を減縮したものであり、カテゴリーを変更したものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項3に記載される「乳化香料」を、「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」に訂正することにより技術的に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無について
本件特許明細書等には、
「【0022】
本実施形態の無糖炭酸飲料は、乳化香料を含む。乳化香料は、前述した通り、オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている状態にある香料である。なお、乳化香料は、オイルを乳化剤により水中油型(O/W型)することができれば、オイルと乳化剤以外の成分を含んでいてもよい。
【0023】
乳化香料を構成する乳化剤は、オイルを水中油型(O/W型)に乳化することができるものであればよく特に限定されるものではないが、例えば、親水基と親油基(疎水基)の両方を備えている物質を用いることができる。後切れがより改善されやすくなる観点から、乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム及びガティガムからなる群より選択される1種以上の乳化剤であることが好ましい。」(下線は当審による。)との記載があることから、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項2は、上記アで検討したように、特許請求の範囲を減縮したものであり、カテゴリーを変更したものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、令和3年10月18日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−2〕,3について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の請求項1〜4に係る発明
本件訂正により訂正された訂正後の請求項1〜4に係る発明(以下、請求項順に「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明4」ともいい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を含み、炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下であり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料。
【請求項2】
前記乳化香料を構成する乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム及びガティガムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の無糖炭酸飲料。
【請求項3】
オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、
炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法。
【請求項4】
乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖飲料における、前記乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法であって、
飲料中の炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下に調整することを含む、後切れ改善方法。」

第3 取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立理由の概要
1 取消理由通知に記載した取消理由通知の概要
令和3年8月27日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
「1(新規性欠如) 本件特許の請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

2(進歩性欠如) 本件特許の請求項1〜3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


引用文献1:特開2017−153460号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2017−12016号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2012−158559号公報(甲第3号証)
引用文献4:特開2018−90585号公報(甲第4号証)
引用文献5:「炭酸ガス吸収係数表(びん内圧力補正表)」(国税庁所定分析法に収載されている付表の第3表),https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/pdf/fl03.pdf[2021年4月9日検索,2021年4月9日印刷](甲第5号証)」

2 特許異議申立理由の概要
申立人は特許異議申立書において、以下の甲第1号証〜甲第6号証を提出し、次の理由A−1、理由A−2、理由B及び理由C−1を主張していると認める。
また、申立人は意見書において、訂正事項1及び訂正事項2により新たに生じる理由として、次の理由C−2を主張していると認める。
甲第1号証:特開2017−153460号公報
甲第2号証:特開2017−12016号公報
甲第3号証:特開2012−158559号公報
甲第4号証:特開2018−90585号公報
甲第5号証:「炭酸ガス吸収係数表(びん内圧力補正表)」(国税庁所定分析法に収載されている付表の第3表),https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/pdf/fl03.pdf[2021年4月9日検索,2021年4月9日印刷]
甲第6号証:古賀聡,“ゼロ系飲料のフレーバーリング技術”,月刊フードケミカル,Vol.27,No.3(2011年3月1日),pp.19-22
(以下、それぞれを略して「甲1」、「甲2」、……、「甲6」ともいう。)

・理由A−1(新規性欠如)
本件特許発明1〜4は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取消されるべきものである。

・理由A−2(新規性欠如)
本件特許発明1〜4は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取消されるべきものである。

・理由B(進歩性欠如)
本件特許発明1、3〜4は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1〜甲6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

・理由C−1(サポート要件違反)
(1)本件特許明細書等に記載された官能評価試験からでは、実施例での後切れの評価が「乳化剤由来の不快な呈味」の後切れを評価しているとはいえないので、本件特許発明により後切れが改善された無糖炭酸飲料を提供できることを当業者が理解できるとはいえず、(2)実施例では精油の種類や含有量によって風味に影響がある点は検証されておらず、柑橘精油オイル以外の任意の種類や量の精油による「乳化香料」を含有する飲料にまで拡張ないし一般化することはできないので、本件特許発明1に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

・理由C−2(サポート要件違反)
実施例には「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている」ことは記載されておらず、飲料中においても水中油型の状態で維持されていることも評価されておらず、乳化香料が飲料中においても水中油型の状態で維持される具体的な条件が記載されていないので、本件訂正発明1〜本件訂正発明3は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第3 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明
1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1の記載事項(下線は当審による。)
甲1には、次の事項が記載されている。
記載事項(1−1)
「【請求項1】
以下の一般式(1)のアミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料において、乳化成分を含有させたことを特徴とするアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【化1】


(上記式(1)中、R1は、末端がメチレンジオキシフェニル基で置換されていてもよい炭素数2〜20のポリエン基またはアルケニル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。)
【請求項2】
乳化成分が、乳化剤である請求項1に記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項3】
乳化成分が、ショ糖脂肪酸エステル、及び、グリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上の物質である請求項1又は2に記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項4】
ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、パルミチン酸、ステアリン酸、イソ酪酸及び酢酸からなる群から選択される1種又は、2種以上の物質の組合せであり、及び/又は、グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸からなる群から選択される1種又は、2種以上の物質の組合せである請求項3に記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項5】
ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸の50重量%以上が、パルミチン酸、ステアリン酸、イソ酪酸及び酢酸からなる群から選択される1種又は、2種以上の物質の組合せであり、及び/又は、グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の50重量%以上が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸から選択される1種又は、2種以上の物質の組合せである請求項3又は4に記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項6】
酸性炭酸飲料に含まれる乳化成分の合計濃度が、0.1〜1000ppmである請求項1〜5のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項7】
炭酸ガス非含有時のpHが、7以下である請求項1〜6のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項8】
アミド誘導体が、キク科スピランテス属(Spilanthes)、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)、及び、コショウ科コショウ属(Piper)からなる群から選択される属に属する植物から抽出可能な1種又は2種以上のアミド誘導体である請求項1〜7のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項9】
アミド誘導体が、スピラントール類、サンショオール類、ヒドロキシサンショオール類及びピペリン類からなる群から選択される1種又は2種以上の物質である請求項1〜8のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項10】
アミド誘導体が、スピラントールである請求項1〜9のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項11】
酸性炭酸飲料に含まれるアミド誘導体の合計濃度が、5ppb〜100ppm重量%である請求項1〜10のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項12】
ガス圧が、0.1MPa以上である請求項1〜11のいずれかに記載のアミド誘導体含有酸性炭酸飲料。
【請求項13】
以下の一般式(1)のアミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料の製造において、前記酸性炭酸飲料に乳化成分を含有させることを特徴とするアミド誘導体含有酸性炭酸飲料の製造方法。
【化2】


(上記式(1)中、R1は、末端がメチレンジオキシフェニル基で置換されていてもよい炭素数2〜20のポリエン基またはアルケニル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。)
【請求項14】
以下の一般式(1)のアミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料の製造において、前記酸性炭酸飲料に乳化成分を含有させることを特徴とする、アミド誘導体含有酸性炭酸飲料の辛味刺激の低減方法。
【化3】


(上記式(1)中、R1は、末端がメチレンジオキシフェニル基で置換されていてもよい炭素数2〜20のポリエン基またはアルケニル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい低級アルキル基を表し、R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。)」(特許請求の範囲)

記載事項(1−2)
「【0026】
一般式(1)のアミド誘導体には、スピラントール類、サンショオール類、ヒドロキシサンショオール類、ピペリン類等が含まれ、中でも、スピラントール類が好ましく、中でも、スピラントールがより好ましい。スピラントール類は、一般式(1)のアミド誘導体において、R1が炭素数9で、かつ、二重結合を3つ含むポリエン基であり、R2が水素原子であり、R3がイソブチル基である化合物であり、サンショオール類は、一般式(1)のアミド誘導体において、R1が炭素数11で、かつ、二重結合を4つ含むポリエン基であり、R2が水素原子であり、R3がイソブチル基である化合物であり、ヒドロキシサンショオール類は、一般式(1)のアミド誘導体において、R1が炭素数11で、かつ、二重結合を4つ含むポリエン基であり、R2が水素原子であり、R3がハイドロキシメチルプロピル基である化合物であり、ピペリン類は、一般式(1)のアミド誘導体において、R1が、末端がメチレンジオキシフェニル基で置換された炭素数4で、かつ、二重結合を2つ含むポリエン基であり、R2及びR3が環状化した化合物である。
……
【0029】
本発明の酸性炭酸飲料におけるアミド誘導体の濃度としては、特に制限されないが、炭酸感の増強と辛味刺激の抑制のバランスの観点から、アミド誘導体の合計濃度として5ppb〜100ppmが好ましく、50ppb〜30ppmがより好ましい。ただし、アミド誘導体の好ましい合計濃度は、アミド誘導体の種類や、酸性炭酸飲料のpHや、乳化成分の種類や濃度等にも左右されるため、一概に述べることは難しいが、当業者であれば、その酸性炭酸飲料におけるアミド誘導体の好ましい合計濃度を設定することができる。」(段落0026〜段落0029)

記載事項(1−3)
「【0036】
<乳化成分>
本明細書における「乳化成分」としては、アミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料に適量を添加した場合に、アミド誘導体による炭酸感の向上効果を保持しつつ、アミド誘導体の辛味刺激を低減する作用(以下、単に「アミド誘導体の辛味刺激低減作用」とも表示する。)を発揮し得る限り特に制限されず、例えば、公知の乳化剤を好ましく含んでいる。かかる乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)を含む)、グリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルを含む)、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アルキルグリコシドなどのノニオン系乳化剤、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸、N−アシル−L−グルタミン酸、脂肪酸、及びこれらの塩等のアニオン系乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、及びこれらの塩等のカチオン系界面活性剤、N−アシル−L−アルギニン、ベタイン等の両性乳化剤、レシチン、酵素分解レシチン等のリン脂質、サポニン、キラヤ抽出物、ユッカ抽出物、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アラビアガム、ガティガム等の天然乳化剤が挙げられる。これらの乳化剤のなかでも、風味、油溶性、工業的生産性の点から、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
……
【0040】
本発明に用いる乳化成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0041】
本発明の酸性炭酸飲料における乳化成分の濃度としては、特に制限されないが、辛味刺激を抑制することと、乳化成分自体の異味を回避することのバランスの観点から、乳化成分の合計濃度として0.1〜1000ppmが好ましく、0.1〜750ppmがより好ましく、1〜750ppmがさらに好ましい。ただし、乳化成分の好ましい合計濃度は、乳化成分の種類、アミド誘導体の種類や濃度、酸性炭酸飲料のpH等にも左右されるため、一概に述べることは難しいが、当業者であれば、その酸性炭酸飲料における乳化成分の好ましい合計濃度を設定することができる。」(段落0036〜段落0041)

記載事項(1−4)
「【0044】
<炭酸飲料の種類、炭酸ガス濃度>
本発明の炭酸飲料が酸性炭酸飲料であることは前述したとおりである。かかる炭酸飲料の種類としては、日本農林規格(昭和49年6月27日農林省告示第567号)に規定される「炭酸飲料」に限られず、炭酸ガスを含有する飲料を広く含み、例えば、20℃でのガス圧が0.05MPa以上、好ましくは0.07MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上の炭酸ガスを含有する飲料が広く含まれる。炭酸ガス濃度の上限としては、0.5MPaや0.4MPaなどが挙げられる。」(段落0044)

記載事項(1−5)
「【0047】
<任意成分>
本発明の酸性炭酸飲料は、一般式(1)のアミド誘導体、乳化成分、炭酸ガス及び水(以下、これら4種を合わせて「必須成分」とも表示する。)のみを含んでいてもよいが、酸性炭酸飲料の香味を損なわない範囲で、酸味成分、甘味成分、pH調整剤、着色成分、香料等の任意成分を含有させてもよい。」(段落0047)

記載事項(1−6)
「【0070】
(1)飲料の調製
以下の表4〜表6の処方にしたがい、各酸性炭酸飲料を調製した。これら各酸性炭酸飲料の調製方法は、飲料全量に対して3ppmのアミド誘導体と、0〜1000ppmの乳化剤を含有させ、かつ、炭酸ガス非含有時のpHが2.8となるようpHを調整し、0.3MPaのガス圧となるよう二酸化炭素を含有させること以外は、従来公知の炭酸水飲料の製造方法にしたがって製造した。なお、乳化成分として、表4ではショ糖パルミチン酸エステルを用い、表5ではグリセリンパルミチン酸エステルを用い、表6ではショ糖酢酸イソ酪酸エステルを用いた。
【0071】
【表4】


【0072】
【表5】


【0073】
【表6】

」(段落0070〜段落0073)

記載事項(1−7)
「【0012】
……、本発明者らは、乳化成分であるショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルが、スピラントール等のアミド誘導体による炭酸感の向上効果を保持しつつ、スピラントール等のアミド誘導体の辛味刺激を低減できることを見いだし、本発明を完成するに至った。」

記載事項(1−8)
「【0055】
<本発明の酸性炭酸飲料の製造方法>
本発明の酸性炭酸飲料は、上記一般式(1)のアミド誘導体と、乳化成分を含有させること以外は、従来公知の酸性炭酸飲料の製造方法にしたがって製造することができる。本発明の酸性炭酸飲料の製造方法としては、上記一般式(1)のアミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料の製造において、乳化成分を含有させる方法が挙げられ、より具体的には、上記一般式(1)のアミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料の製造に際して、……方法が挙げられる。あるいは、乳化成分を、アミド誘導体と同時に水等に含有させる方法や、乳化成分とアミド誘導体をあらかじめ混合した後、水等に含有させる方法も挙げられる。」

記載事項(1−9)
「【0080】
また、辛味刺激については、表4の官能評価の結果から分かるように、乳化成分であるショ糖パルミチン酸エステルを添加していない飲料6(コントロール)の酸性炭酸飲料では、スピラントールによる辛味刺激が強く、嗜好性が低かった(辛味刺激の評価は「×」)のに対し、ショ糖パルミチン酸エステルを添加した飲料7〜11の酸性炭酸飲料では、辛味刺激の評価は「△」又は「○」となり、辛味刺激が低減した。このことから、ショ糖パルミチン酸エステルの添加によって、酸性炭酸飲料におけるスピラントールによる辛味刺激を低減できることが示された。同様のことは、乳化成分がグリセリンパルミチン酸エステルである場合(表5)や、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルである場合(表6)においても示された。なお、乳化成分の添加量については、表4〜表6から分かるように、0.1ppmの場合よりも、1ppm以上である方が、辛味刺激の低減効果が高く、好ましいことも示された。また、ショ糖パルミチン酸エステルやグリセリンパルミチン酸エステルを用いた場合は、使用量が1000ppmを超えると、ショ糖パルミチン酸エステルやグリセリンパルミチン酸エステル自体の油っぽい香味が生じる場合があるため、使用量は1000ppm以下が好ましいことも示された。」

(2)甲1に記載された発明
記載事項(1−1)(特に、請求項1、請求項13、請求項14)に記載された一般式(1)のアミド誘導体について、記載事項(1−1)、記載事項(1−2)及び記載事項(1−6)にはその具体例として「スピラントール」が記載されている。
記載事項(1−1)(特に、請求項2)に記載された乳化剤について、記載事項(1−3)にはその具体例としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム、ガティガムが記載されている。
記載事項(1−6)に示された飲料の調製においては、0.3MPaのガス圧となるように炭酸ガスを含有させたことが記載されていることから、20℃での炭酸ガス圧を0.3Mpaとすることが示されている。
記載事項(1−1)に記載された「アミド誘導体含有酸性炭酸飲料」に含有させてもよい任意成分として、記載事項(1−5)に「甘味成分」との記載があるものの、これは任意成分である上に、この「甘味成分」が「糖」又は「高甘味度甘味料」であることを示す記載は甲1になく、記載事項(1−6)に示された具体的処方においても「糖」又は「高甘味度甘味料」は含有されていない。
したがって、記載事項(1−1)〜記載事項(1−6)から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムを含み、20℃での炭酸ガス圧が0.3MPaであり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料。」(以下、「甲1飲料発明」という。)、
及び
「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムを含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、
20℃での炭酸ガス圧を0.3MPaとして炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)

2 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
(1)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
記載事項(2−1)
「【請求項1】
リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、
ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、
を含む容器詰め炭酸飲料であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、
当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、前記リモネンの含有量、前記リナロールの含有量、前記ゲラニオールの含有量および前記シトラールの含有量の合計量が1ppm以上である、容器詰め炭酸飲料。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、オレイン酸とがエステル結合してなる化合物である、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、モノオレイン酸デカグリセリンである、請求項1または2に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項4】
前記乳化剤の含有量が、当該容器詰め炭酸飲料全量に対して、2×10−4質量%以上2×10−2質量%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項5】
前記香料が、柑橘系フレーバーである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項6】
炭酸ガスを、当該容器詰め炭酸飲料全量に対して、2.0vol%以上6.0vol%以下含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項7】
リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、を混合する工程を含み、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、かつ当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、前記リモネンの含有量、前記リナロールの含有量、前記ゲラニオールの含有量および前記シトラールの含有量の合計量が1ppm以上となる、容器詰め炭酸飲料の品質改善方法。
【請求項8】
前記香料が、柑橘系フレーバーである請求項7に記載の容器詰め炭酸飲料の品質改善方法。」(特許請求の範囲)

記載事項(2−2)
「【0020】
本発明における炭酸飲料中に含まれている炭酸ガス量は、好ましくは、2.0vol%以上6.0vol%以下であり、さらに好ましくは、2.3vol%以上5.0vol%以下である。こうすることで、より一層炭酸感に優れた容器詰め炭酸飲料を実現することが可能となる。」(段落0020)

記載事項(2−3)
「【0024】
<乳化剤>
本発明に係る乳化剤は、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含むものである。かかるポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノラウリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノステアリン酸デカグリセリン、モノオレイン酸デカグリセリン、モノオレイン酸ペンタグリセリン等が挙げられる。中でも、ポリグリセリンと、オレイン酸とがエステル結合してなる化合物であることが好ましく、モノオレイン酸デカグリセリンであるとさらに好ましい。こうすることで、ガス抜け抑制効果および泡立ち抑制効果をより一層良好なものとすることができる。
【0025】
本発明に係る炭酸飲料において、乳化剤の含有量は、乳化剤と香料との相乗効果をより一層顕著なものとする観点から、好ましくは、当該炭酸飲料全量に対して、2×10−4質量%以上2×10−2質量%以下であり、さらに好ましくは、当該炭酸飲料全量に対して、5×10−4質量%以上2×10−2質量%以下である。」(段落0024〜段落0025)

記載事項(2−4)
「【0027】
<香料>
本発明に係る香料は、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含むものである。上述した、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールは、いずれも、水に対して溶解しにくい成分(水との親和性が低い成分)、すなわち疎水性成分である。それ故、上述した各成分は、いずれも炭酸飲料中において、炭酸核として作用する可能性を有した成分であると考えられる。また、上述した、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールは、いずれも、柑橘系果実中に多く含まれている成分として知られている。そのため、本発明に係る香料としては、柑橘系フレーバーを用いることが好ましい。なお、柑橘系フレーバー中には、上述した成分の他に、オクタナール、デカナール、ノナナール等のアルデヒド成分や、β−ピネン等のテルペン成分等も、疎水性成分として含まれている。ここで、従来の炭酸飲料において、ガス抜けや泡立ちの促進に寄与する成分は、未だ解明されていない。そのため、ガス抜けや泡立ちの促進に、上記アルデヒド成分やテルペン成分等も関与している可能性はある。
【0028】
また、本発明に係る乳化剤と香料との相乗効果は、上述したリモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む柑橘系フレーバーに代えて、ヘキサナールやトランス−2−ヘキセナール等の疎水性成分を含むリンゴフレーバー、γ−デカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ドデカラクトン等の疎水性成分を含むピーチフレーバー、ヘキサノール、トランス−2−ヘキセノール等の疎水性成分を含むグレープフレーバー等のソフトフルーツ系フレーバーを用いた場合においても、同様の効果が得られるものと推測される。」(段落0027〜段落0028)

記載事項(2−5)
「【0029】
<その他の成分>
本発明に係る炭酸飲料は、天然甘味料または合成甘味料を含んでいてもよい。こうすることで、炭酸飲料に対して甘味を付与することが可能であるため、より一層嗜好性に優れた飲料とすることができる。
【0030】
上述した天然甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、D−ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。他方、上述した合成甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料が挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合してもよい。」(段落0029〜段落0030)

記載事項(2−6)
「【0039】
<実施例1>
純水に対し、下記表1に示す配合比率となるように、レモンフレーバーと、モノオレイン酸デカグリセリンを含む乳化剤(太陽化学社製)を添加してから混合することにより、混合溶媒を作製した。さらに、炭酸ガス量が約4vol%となるように炭酸水(炭酸ガスを含有する純水)を上記混合溶媒と混合した後、500mLのPETボトルに充填・密封した。このようにして、実施例1の炭酸飲料を作製した。
【0040】
<実施例2>
純水に対し、下記表1に示す配合比率となるように、グレープフルーツフレーバーと、モノオレイン酸デカグリセリンを含む乳化剤(太陽化学社製)を添加してから混合することにより、混合溶媒を作製した。さらに、炭酸ガス量が約4vol%となるように炭酸水(炭酸ガスを含有する純水)を上記混合溶媒と混合した後、500mLのPETボトルに充填・密封した。このようにして、実施例2の炭酸飲料を作製した。」(段落0039〜段落0040)

記載事項(2−7)
「【0053】
【表1】

」(段落0053)

記載事項(2−8)
「【0009】
本発明者らは、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料を提供すべく、鋭意検討した。その結果、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用することが設計指針として有効であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明によれば、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、
ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、
を含む容器詰め炭酸飲料であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、
当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、前記リモネンの含有量、前記リナロールの含有量、前記ゲラニオールの含有量および前記シトラールの含有量の合計量が1ppm以上である容器詰め炭酸飲料が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、を混合する工程を含み、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、かつ当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、前記リモネンの含有量、前記リナロールの含有量、前記ゲラニオールの含有量および前記シトラールの含有量の合計量が1ppm以上となる、容器詰め炭酸飲料の品質改善方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料、およびその品質改善方法を提供することができる。」

記載事項(2−9)
「【0014】
<<容器詰め炭酸飲料>>
本発明の容器詰め炭酸飲料は、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、を含むものである。また、かかる容器詰め炭酸飲料において、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、かつ当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、リモネンの含有量、リナロールの含有量、ゲラニオールの含有量およびシトラールの含有量の合計量が1ppm以上である。こうすることで、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料を実現することができる。」

記載事項(2−10)
「【0017】
そこで、本発明者は、上述した不都合が生じることのない、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料を提供すべく、その設計指針について鋭意検討した。その結果、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用することが、設計指針として有効であることを見出した。具体的には、本発明者は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用することの相乗効果により、高度にガス抜けや泡立ちが抑制され、かつ呈味という面において品質の経時安定性に優れた炭酸飲料を実現できるとことを見出した。」

記載事項(2−11)
「【0060】
図1〜4は、実施例1〜2および比較例1〜4の炭酸飲料に関する官能評価結果を示す図である。
表1および図1〜図4に示すように、実施例1および2の炭酸飲料は、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れたものであった。一方、比較例の飲料は、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点における品質において、要求水準を満たすものではなかった。特に、比較例2の飲料については、開栓してから60分後において、もったり感および異味異臭という点において、乳化剤に由来する呈味が強調されていた。」

(2)甲2に記載された発明
記載事項(2−2)には「炭酸飲料中に含まれている炭酸ガス量は、……、さらに好ましくは、2.3vol%以上5.0vol%以下である。」と記載されており、記載事項(2−6)及び記載事項(2−7)に示された具体的処方における炭酸ガス量は4.03又は4.04volである。
記載事項(2−5)には、含んでいてもよい「その他の成分」の例として、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられているものの、これは任意成分である上に、記載事項(2−6)及び記載事項(2−7)に示された具体的処方においても「糖」又は「高甘味度甘味料」は含有されていない。
したがって、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)から、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤とを含み、炭酸ガスボリュームが4.03vol又は4.04volであり、高甘味度甘味料を含有しない容器詰め無糖炭酸飲料であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、
当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、前記リモネンの含有量、前記リナロールの含有量、前記ゲラニオールの含有量および前記シトラールの含有量の合計量が1ppm以上である、容器詰め無糖炭酸飲料。」(以下、「甲2飲料発明」という。)、及び
「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤とを含み、高甘味度甘味料を含有しない容器詰め無糖炭酸飲料の製造方法であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと、炭素数12以上18以下の脂肪酸とがエステル結合してなる化合物であり、
当該容器詰め炭酸飲料全量に対する、前記リモネンの含有量、前記リナロールの含有量、前記ゲラニオールの含有量および前記シトラールの含有量の合計量が1ppm以上であり、
炭酸ガスボリュームを4.03vol以上4.04vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法。」(以下、「甲2製法発明」という。)

3 甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
記載事項(3−1)
「【0034】
香料としては、……等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(……等)した香料、及び、……、スピラントール等の単品香料、更に、……等の調合香料、及び、……等の香料溶剤等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。……。」(段落0034)

4 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
記載事項(4−1)
「【0059】
香料として、たとえば……などの天然精油、……、スピラントールなどの上記天然精油中に含まれる香料成分、……などの香料成分などが挙げられる。」(段落0059)

5 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
記載事項(5−1)



記載事項(5−2)




6 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。
記載事項(6−1)
「2.3 乳化香料の応用
風味の改善やフレーバーリリースの補正など, 風味に関するフレーバーリング技術を見てきたが,次に乳化香料によるボディー感の付与,後切れの改善等,呈味改善技術について述べる。
一般的に,乳化香料は着香,着濁,着色を目的として使用される。
乳化香料を飲料に添加した場合,エッセンス香料に比べ,フレーバーの発現はマイルドであるが,ボディー感,ボリューム感のある香味を付与することが特徴である。その用途には果汁入り飲料,無果汁飲料,炭酸飲料,スポーツ飲料等,各種飲料がある。」

第5 取消理由及び申立理由についての判断
1 取消理由1(新規性欠如)のうち甲1飲料発明又は甲1製法発明による本件訂正発明1〜本件訂正発明3の新規性欠如、及び、申立理由A−1(甲1飲料発明又は甲1製法発明による本件訂正発明1〜本件訂正発明4の新規性欠如)について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲1飲料発明との対比
甲1飲料発明における「20℃での炭酸ガス圧0.3MPa」の炭酸ガスボリュームは、記載事項(5−1)及び記載事項(5−2)より3.477volであると認められる。
したがって、本件訂正発明1と甲1飲料発明とは、
(一致点)
炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下であり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料である点
で一致し、
(相違点(1−1))
本件訂正発明1では、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む一方、甲1飲料発明では、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む点
で、相違する。

イ 判断
甲1飲料発明における「スピラントール」は、記載事項(3−1)及び記載事項(4−1)にも示されるとおり、香料である。
しかし、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でも当該乳化香料の水中油型の乳化状態が維持されると認められる一方、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でもスピラントールと乳化剤は水中油型の乳化状態にはならないと認められるから、甲1飲料発明における「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」の飲料中での状態は、本件訂正発明1における「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」の飲料中での状態とは、技術的に異なるものであって、上記相違点(1−1)は実質的な相違点であると認められる。
したがって、本件訂正発明1は、甲1飲料発明ではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項すべてをその発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものであるから、本件訂正発明1が甲1飲料発明ではない以上、本件訂正発明2もまた甲1飲料発明ではない。

(3)本件訂正発明3
ア 本件訂正発明3と甲1製法発明との対比
甲1製法発明における「20℃での炭酸ガス圧0.3MPa」の炭酸ガスボリュームは、記載事項(5−1)及び記載事項(5−2)より3.477volであると認められる。
したがって、本件訂正発明3と甲1製法発明とは、
(一致点)
高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、
炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法である点
で一致し、
(相違点(1−3))
本件訂正発明3では、製造される飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む一方、甲1製法発明では、製造される飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む点
で、相違する。

イ 判断
甲1製法発明における「スピラントール」は、記載事項(3−1)及び記載事項(4−1)にも示されるとおり、香料である。
しかし、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む場合には、当該乳化香料は飲料中でも水中油型の乳化状態が維持されると技術常識に照らして認められる一方、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でもスピラントールと乳化剤は水中油型の乳化状態にはならないと認められるから、甲1製法発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項は、本件訂正発明3において「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項とは、技術的に異なる事項であって、上記相違点(1−3)は実質的な相違点であると認められる。
したがって、本件訂正発明3は、甲1製法発明ではない。

(4)本件訂正発明4
ア 本件訂正発明4と甲1製法発明との対比
甲1製法発明における「20℃での炭酸ガス圧0.3MPa」の炭酸ガスボリュームは、記載事項(5−1)及び記載事項(5−2)より3.477volであると認められる。
したがって、本件訂正発明4と甲1製法発明とは、
(一致点)
高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料に関する方法であって、
炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料に関する方法である点
で一致し、
(相違点(1−4−1))
本件訂正発明4では、対象となる飲料に「乳化香料」を含む一方、甲1製法発明では、対象となる飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む点、及び
(相違点(1−4−2))
本件訂正発明4では、「方法」が「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」である一方、甲1製法発明では、「方法」が「製造方法」である点
で、相違する。

イ 判断
事案に鑑み、相違点(1−4−2)から検討する。
甲1製法発明における飲料は「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含むものであって「乳化香料」を含むものではないので、甲1製法発明の「製造方法」は、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」とはなり得ない。
仮に、甲1製法発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項が、本件訂正発明4において飲料に「乳化香料」を含む事項と、技術的には実質的に相違しない事項であるとしても、甲1製法発明により、高甘味度甘味料を含有しない無糖飲料において、乳化剤の後切れ改善がされることは、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載には示されておらず、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載及び本件特許出願時の技術常識から当業者に明らかな事項であるとも認められない。
したがって、上記相違点(1−4−2)は実質的な相違点であると認められ、相違点(1−4−1)について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1製法発明ではない。

(5)申立人の主張について
相違点(1−1)、相違点(1−3)に関して、申立人は、
「甲1発明に関して、甲第1号証には、スピラントール類が含まれる一般式(1)のアミド誘導体を含有する酸性炭酸飲料において、乳化成分を含有させたことの記載があり……、甲1発明において用いられているスピラントール類は、……、香料成分の一種であることが技術常識であると認められる。よって、甲第1号証において、甲1発明は乳化香料を含むことが記載されているに等しい。」(特許異議申立書23頁1〜10行、26頁12〜22行)、及び
「甲1飲料発明では、……、スピラントール 3ppmに対して、乳化剤を0.1ppmから1000ppmまで条件変更して配合させ、酸性炭酸飲料を調製している。当該酸性炭酸飲料中では、スピラントールに対して乳化剤が、その比率に応じて、少なくとも部分的に(条件によっては、全体的に)乳化作用を発揮しているものと認識されることが自然であり、炭酸水中にスピラントールと乳化剤が乳化状態で存在するため、水中油型であることは明らかである。……、別々に添加されるスピラントールと乳化剤は、乳化香料を製造するときのように高圧でホモジナイズされたことの記載はないが、乳化剤としての作用対象は、香料であるスピラントールであることが明らかであるため、当該酸性炭酸飲料中では、両成分が水中油型で乳化したうえで、分散しているものと理解される。
なお、この主張に関し、本件特許明細書の実施例の全体や【0054】においても、「乳化香料として、ポリグリセリン脂肪酸エステルでオイルを乳化した乳化香料」等と記載されているのみであり、高圧でホモジナイズされたことや、オイルが微粒子化されていることは示されていない。」(意見書3頁9〜24行)などと主張する。
しかし、申立人は、スピラントールと、乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムが、別々に添加された甲1飲料発明及び甲1製法発明の酸性炭酸飲料において、スピラントールと、乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムが、当該飲料中において水中油型の乳化状態になることの根拠を何ら示しておらず、技術常識に照らして、当該飲料中において、スピラントールと、乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムは、水中油型の乳化状態にはならないと認められる。
また、たとえ、願書に添付した明細書の段落0051〜0085に示される実施例についての記載において、用いられる乳化香料が、高圧でホモジナイズされたものであることや、オイルが微粒子化されているものであることが明記されていないとしても、そのことを根拠にして、乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムが、別々に添加された甲1飲料発明及び甲1製法発明の酸性炭酸飲料において、スピラントールと、乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムが、当該飲料中において水中油型の乳化状態になるといえるものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

また、相違点(1−4−2)に関して、申立人は、
「甲第1号証には、乳化成分(ショ糖パルミチン酸エステルやグリセリンパルミチン酸エステル)の添加量が多い場合に、油っぽい香味が生じる場合があることが記載されている。この記載に関して、本件特許明細書の段落0014には、「無糖の飲料(以下、「無糖飲料」ともいう)であると、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が残り続け、後切れが悪くなるという問題が生じることを知見した。なお、乳化剤由来の不快な呈味とは、例えば、苦味や油のような味である」との記載があり、油っぽい香味が生じないことは、後切れ改善に含まれる。」(特許異議申立書29頁23行〜30頁2行)、及び
「引用文献1の【0080】では、用いた乳化剤に関して、「使用量が1000ppmを超えると、ショ糖パルミチン酸エステルやグリセリンパルミチン酸エステル自体の油っぽい香味が生じる場合があるため、使用量は1000ppm以下が好ましいことも示された」との記載がある。……、特許権者が主張する「乳化剤の後切れ」とは、引用文献1における「乳化剤に由来する油のような味(油っぽい香味)」と同様の評価項自である。……、引用文献1においても、乳化剤の後切れ(乳化剤に由来する油のような味(油っぽい香味))を改善すべきことは認識されており、乳化剤の使用量が1000ppmを超えないように具体的に調整されている。……、寧ろ引用文献1には、本件訂正発明と同様の課題の記載と、当該課題を解決していることの具体的な記載がある。」(意見書5頁10〜25行)などと主張する。
しかし、申立人は、甲1製法発明における飲料に含まれる乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムは、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤」と技術的に異なるものではないことの根拠を何ら示しておらず、技術常識に照らして、甲1製法発明における飲料に含まれる乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガムは、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤」と技術的に異なるものと認められる。
また、願書に添付した明細書には「なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を指し、後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。」(段落0016)と記載されていることから、本件訂正発明4にいう「後切れ改善」とは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを意味すると解される一方、甲1には、記載事項(1−9)(すなわち、甲1の段落0080)を含めて、「飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく」ことを示す記載はなく、甲1製法発明により、高甘味度甘味料を含有しない無糖飲料において、乳化剤の後切れ改善がされることは、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載及び本件特許出願時の技術常識から当業者に明らかな事項であるとも認められない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上(1)〜(5)に記したとおり、本件訂正発明1〜4は、甲1に記載された発明ではない。

2 取消理由1(新規性欠如)のうち甲2飲料発明又は甲2製法発明による本件訂正発明1〜本件訂正発明3の新規性欠如、及び、申立理由A−2(甲2飲料発明又は甲2製法発明による本件訂正発明1〜本件訂正発明4の新規性欠如)について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲2飲料発明との対比
甲2飲料発明における「炭酸ガスボリュームが4.03vol又は4.04vol」の炭酸ガスボリュームは、記載事項(5−1)及び記載事項(5−2)より3.477vol以上4.344vol以下であると認められる。
したがって、本件訂正発明1と甲2飲料発明とは、
(一致点)
炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下であり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料である点
で一致し、
(相違点(2−1))
本件訂正発明1では、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む一方、甲2飲料発明では、飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む点
で、相違する。

イ 判断
甲2飲料発明における「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料」は、香料である。
しかし、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でも当該乳化香料の水中油型の乳化状態が維持されると認められる一方、飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でも当該香料と当該乳化剤は水中油型の乳化状態にはならないと認められるから、甲2飲料発明における「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」の飲料中での状態は、本件訂正発明1における「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」の飲料中での状態とは、技術的に異なるものであって、上記相違点(2−1)は実質的な相違点であると認められる。
したがって、本件訂正発明1は、甲2飲料発明ではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項すべてをその発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものであるから、本件訂正発明1が甲2飲料発明ではない以上、本件訂正発明2もまた甲2飲料発明ではない。

(3)本件訂正発明3
ア 本件訂正発明3と甲2製法発明との対比
甲2製法発明における「炭酸ガスボリュームが4.03vol又は4.04vol」の炭酸ガスボリュームは、記載事項(5−1)及び記載事項(5−2)より3.477vol以上4.344vol以下であると認められる。
したがって、本件訂正発明3と甲2製法発明とは、
(一致点)
高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、
炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法である点
で一致し、
(相違点(2−3))
本件訂正発明3では、製造される飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む一方、甲2製法発明では、飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む点
で、相違する。

イ 判断
飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でも当該乳化香料の水中油型の乳化状態が維持されると認められる一方、飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む場合には、技術常識に照らして、飲料中でも当該香料と当該乳化剤は水中油型の乳化状態にはならないと認められるから、甲2製法発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む事項は、本件訂正発明3において「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項とは、技術的に異なる事項であって、上記相違点(2−3)は実質的な相違点であると認められる。
したがって、本件訂正発明3は、甲2製法発明ではない。

(4)本件訂正発明4
ア 本件訂正発明4と甲2製法発明との対比
甲2製法発明における「炭酸ガスボリュームが4.03vol又は4.04vol」の炭酸ガスボリュームは、記載事項(5−1)及び記載事項(5−2)より3.477vol以上4.344vol以下であると認められる。
したがって、本件訂正発明4と甲2製法発明とは、
(一致点)
高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料に関する方法であって、
炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料に関する方法である点
で一致し、
(相違点(2−4−1))
本件訂正発明4では、対象となる飲料に「乳化香料」を含む一方、甲2製法発明では、対象となる飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む点、及び
(相違点(2−4−2))
本件訂正発明4では、「方法」が「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」である一方、甲2製法発明では、「方法」が「製造方法」である点
で、相違する。

イ 判断
事案に鑑み、相違点(2−4−2)から検討する。
甲2製法発明における飲料は「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含むものであって「乳化香料」を含むものではないので、甲2製法発明の「製造方法」は、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」とはなり得ない。
仮に、甲2製法発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と」を含む事項が、本件訂正発明4において飲料に「乳化香料」を含む事項と、技術的には実質的に相違しない事項であるとしても、甲2製法発明により、高甘味度甘味料を含有しない無糖飲料において、乳化剤の後切れ改善がされることは、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載には示されておらず、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載及び本件特許出願時の技術常識から当業者に明らかな事項であるとも認められない。
したがって、上記相違点(2−4−2)は実質的な相違点であると認められ、相違点(2−4−1)について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲2製法発明ではない。

(5)申立人の主張について
相違点(2−1)、相違点(2−3)に関して、申立人は、
「甲2発明に関して、甲第2号証の実施例1では、純水に対し、表1に示す配合比率となるように、レモンフレーバーと、モノオレイン酸デカグリセリンを含む乳化剤を添加してから混合することにより、混合溶媒を作製し、炭酸ガス量が約4vol%となるように炭酸水を上記混合溶媒と混合して、炭酸飲料を作成している(……)。当該実施例1では、高甘味度甘味料、及び、糖分は配合されていない(…)。」(特許異議申立書24頁7〜12行、27頁21〜27行)、及び
「甲2飲料発明では、……、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1種以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤を配合させ容器詰め無糖炭酸飲料を調製している。当該無糖炭酸飲料中では、香料に対して乳化剤が、少なくとも部分的に(条件によっては、全体的に)乳化作用を発揮しているものと認識されることが自然であり、炭酸水中に香料と乳化剤が乳化状態で存在するため、水中油型であることは明らかである。……、別々に添加される香料と乳化剤は、乳化香料を製造するときのように高圧でホモジナイズされたことの記載はないが、乳化剤としての作用対象は、香料であることが明らかであるため、当該無糖炭酸飲料中では、両成分が水中油型で乳化したうえで、分散しているものと理解される。
なお、この主張に関し、本件特許明細書の実施例の全体や【0054】においても、「乳化香料として、ポリグリセリン脂肪酸エステルでオイルを乳化した乳化香料」等と記載されているのみであり、高圧でホモジナイズされたことや、オイルが微粒子化されていることは示されていない。」(意見書6頁11行〜7頁4行)などと主張する。
しかし、申立人は、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1種以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤が、別々に添加された無糖炭酸飲料において、当該香料と当該乳化剤が、当該飲料中において水中油型の乳化状態になることの根拠を何ら示しておらず、技術常識に照らして、当該飲料中において、当該香料と当該乳化剤は、水中油型の乳化状態にはならないと認められる。
また、たとえ、願書に添付した明細書の段落0051〜0085に示される実施例についての記載において、用いられる乳化香料が、高圧でホモジナイズされたものであることや、オイルが微粒子化されているものであることが明記されていないとしても、そのことを根拠にして、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1種以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤が、別々に添加された無糖炭酸飲料において、当該香料と当該乳化剤が、当該飲料中において水中油型の乳化状態になるといえるものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

また、相違点(2−4−2)に関して、申立人は、
「甲第2号証の実施例1の炭酸飲料に関し、官能評価の結果、もったり感を含む呈味について改善したことの記載がある。乳化香料を含まない比較例2では、もったり感および異味異臭という点において、乳化剤に由来する呈味が強調されていたことも記載されている(…)。」(特許異議申立書30頁20〜23行)、及び
「引用文献2の【0060】では、用いた乳化剤に関して、「比較例2の飲料については、開栓してから60分後において、もったり感および異味異臭という点において、乳化剤に由来する呈味が強調されていた」との記載がある。……、特許権者が主張する「乳化剤の後切れ」とは、引用文献2における「乳化剤に由来する呈味」と同様の評価項目である。……、引用文献2においても、乳化剤の後切れ(乳化剤に由来する油のような味(油っぽい香味))を改善すべきことは認識されている。」(意見書8頁16行〜9頁2行)などと主張する。
しかし、申立人は、甲2製法発明における飲料に含まれる、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤は、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤」と技術的に異なるものではないことの根拠を何ら示しておらず、技術常識に照らして、甲2製法発明における飲料に含まれる、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤は、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤」と技術的に異なるものと認められる。
また、願書に添付した明細書には「なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を指し、後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。」(段落0016)と記載されていることから、本件訂正発明4にいう「後切れ改善」とは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを意味すると解される一方、甲2には、記載事項(2−11)(すなわち、甲2の段落0060)を含めて、
「飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく」ことを示す記載はなく、甲2製法発明により、高甘味度甘味料を含有しない無糖飲料において、乳化剤の後切れ改善がされることは、記載事項(2−1)〜記載事項(2−11)を含む甲2の記載及び本件特許出願時の技術常識から当業者に明らかな事項であるとも認められない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上(1)〜(5)に記したとおり、本件訂正発明1〜4は、甲2に記載された発明ではない。

3 取消理由2(進歩性欠如)のうち甲1飲料発明又は甲1製法発明による本件訂正発明1〜本件訂正発明3の進歩性欠如、及び、申立理由Bのうち甲1飲料発明又は甲1製法発明による本件訂正発明1、本件訂正発明3〜本件訂正発明4の進歩性欠如について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲1飲料発明との対比
本件訂正発明1と甲1飲料発明とは、上記1(1)アに示したとおりの一致点及び相違点(1−1)を有する。

イ 判断
甲1飲料発明は、記載事項(1−7)〜記載事項(1−9)に示されるとおり、スピラントールによる炭酸感の向上効果を保持しつつ、スピラントールの辛味刺激を低減するために、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含むものである。
甲1飲料発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用する動機付けとなる記載は、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載、記載事項(3−1)を含む甲3の記載、記載事項(4−1)を含む甲4の記載、記載事項(5−1)を含む甲5の記載、及び記載事項(6−1)を含む甲6の記載を検討しても、見出すことはできないので、甲1飲料発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1飲料発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に相当し得たものではない。

そして、本件訂正発明1は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れが改善されるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明1は、甲1飲料発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項すべてをその発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものであるから、本件訂正発明1が、甲1飲料発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件訂正発明2もまた、甲1飲料発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲1製法発明とは、上記1(3)アに示したとおりの一致点及び相違点(1−3)を有する。

イ 判断
甲1製法発明は、記載事項(1−7)に示されるとおり、スピラントールによる炭酸感の向上効果を保持しつつ、スピラントールの辛味刺激を低減するために、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含むものである。
甲1製法発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用する動機付けとなる記載は、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載、記載事項(3−1)を含む甲3の記載、記載事項(4−1)を含む甲4の記載、記載事項(5−1)を含む甲5の記載、及び記載事項(6−1)を含む甲6の記載を検討しても、見出すことはできないので、甲1製法発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、本件訂正発明3は、甲1製法発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に相当し得たものではない。

そして、本件訂正発明3は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れが改善される飲料を製造ことができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明3は、甲1製法発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲1製法発明とは、上記1(4)アに示したとおりの一致点並びに相違点(1−4−1)及び相違点(1−4−2)を有する。

イ 判断
事案に鑑み、相違点(1−4−2)から検討する。
甲1製法発明は、記載事項(1−7)に示されるとおり、スピラントールによる炭酸感の向上効果を保持しつつ、スピラントールの辛味刺激を低減するために、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含むものであって「乳化香料」を含むものではないので、甲1製法発明の「製造方法」は、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」とはなり得ない。
仮に、甲1製法発明において飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項が、本件訂正発明4において飲料に「乳化香料」を含む事項と、技術的には実質的に相違しない事項であるとしても、甲1製法発明の「製造方法」を「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」にする動機付けとなる記載は、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載、記載事項(3−1)を含む甲3の記載、記載事項(4−1)を含む甲4の記載、記載事項(5−1)を含む甲5の記載、及び記載事項(6−1)を含む甲6の記載を検討しても、見出すことはできないので、甲1製法発明の「製造方法」を、「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」にすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、本件訂正発明4は、甲1製法発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に相当し得たものではない。

そして、本件訂正発明4は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れを改善するという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明4は、甲1製法発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立人の主張について
甲1飲料発明又は甲1製法発明による進歩性欠如について、申立人は、
「仮に、甲1発明において用いられた乳化香料成分(スピラントール類)が除かれた場合であっても、甲第6号証に記載の通り、炭酸飲料において、乳化香料は風味の向上を目的として好適に用いられるため、甲1発明において種々の乳化香料成分を用いることは当業者が容易に想到し得る。よって、本件特許発明1は少なくとも進歩性がない。
また、甲第1号証には、乳化成分(ショ糖パルミチン酸エステルやグリセリンパルミチン酸エステル)の添加量が多い場合に、油っぽい香味が生じる場合があることが記載されている。この記載に関して、本件特許明細書の段落0014には、「無糖の飲料(以下、「無糖飲料」ともいう)であると、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が残り続け、後切れが悪くなるという問題が生じることを知見した。なお、乳化剤由来の不快な呈味とは、例えば、苦味や油のような味である」との記載があり、油っぽい香味が生じないことは、後切れ改善に含まれる。
よって、甲第1号証には、本件特許発明1と同質の効果の記載がある。」(特許異議申立書23頁17行〜24頁2行)、
「本件特許発明では、その効果に関し、官能評価試験を実施しているが、6人のパネリストの個別の評点は明記されておらず、各評価項目における6人のパネリストの評価に係る詳細は不明である上、各パネリスト及び各評価項目で、加点又は減点が適正に行われることを担保するための評価基準及び評価手法や、評点が分散した場合の統計上の措置等も明らかでない。……、そもそも本件特許明細書記載の官能評価試験の結果をもって、本件特許発明1の奏する効果に基づく進歩性を評価するに足りる程度の客観性ないし信頼性を備えた実験結果であるとは認められない。」(特許異議申立書25頁9〜16行)、及び
「本件特許明細書の【0061】には、「「後切れ」の評価は、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味(油のような味や苦味)について、後切れを評価したものである。」と記載されているように、特許権者が主張する「乳化剤の後切れ」とは、引用文献1における「乳化剤に由来する油のような味(油っぽい香味)」と同様の評価項自である。
よって、引用文献1においても、乳化剤の後切れ(乳化剤に由来する油のような味(油っぽい香味))を改善すべきことは認識されており、乳化剤の使用量が1000ppmを超えないように具体的に調整されている。
以上より、……、寧ろ引用文献1には、本件訂正発明と同様の課題の記載と、当該課題を解決していることの具体的な記載がある。」(意見書5頁14〜25行)などと主張する。
しかし、甲6には、記載事項(6−1)において、乳化香料を飲料に添加した場合は、エッセンス香料を飲料に添加した場合に比べて、フレーバーの発現はマイルドであるが、ボディー感、ボリューム感のある香味を付与することが特徴である旨が示されているに過ぎず、記載事項(1−7)に示されるように、スピラントールによる炭酸感の向上効果を保持しつつ、スピラントールの辛味刺激を低減するために、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含むことを発明特定事項とした甲1飲料発明又は甲1製法発明において、飲料に「スピラントール及び乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム又はガティガム」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用する動機付けは、記載事項(6−1)を参酌しても、あるとは認められない。
また、願書に添付した明細書には「なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を指し、後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。」(段落0016)と記載されている一方、甲1には、記載事項(1−9)(すなわち、甲1の段落0080)を含めて、「飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく」ことを示す記載はなく、甲1飲料発明又は甲1製法発明が、本件訂正発明1〜本件訂正発明4と同質の効果を奏することが記載されているとは認められない。
さらに、願書に添付した明細書の段落0051〜段落0085に示された実施例・比較例についての評価はいずれも、パネリストの人数のみならず、評価項目、評価基準及び基準飲料が具体的に明らかにされていることから、その評価結果は妥当なものといえるものであって、本件訂正発明1〜本件訂正発明4は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れを改善するという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものであるといえる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上(1)〜(5)に記したとおり、本件訂正発明1〜4は、甲1に記載された発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 取消理由2(進歩性欠如)のうち甲2飲料発明又は甲2製法発明による本件訂正発明1〜本件訂正発明3の進歩性欠如、及び、申立理由Bのうち甲2飲料発明又は甲2製法発明による本件訂正発明1、本件訂正発明3〜本件訂正発明4の進歩性欠如について
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲2飲料発明との対比
本件訂正発明1と甲2飲料発明とは、上記2(1)アに示したとおりの一致点並びに相違点(2−1)を有する。

イ 判断
甲2飲料発明は、記載事項(2−8)〜記載事項(2−10)に示されるとおり、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料、およびその品質改善方法を提供するために、炭酸飲料に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用するものである。
甲2飲料発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用する動機付けとなる記載は、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載、記載事項(3−1)を含む甲3の記載、記載事項(4−1)を含む甲4の記載、記載事項(5−1)を含む甲5の記載、及び記載事項(6−1)を含む甲6の記載を検討しても、見出すことはできないので、甲2飲料発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、本件訂正発明1は、甲2飲料発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に相当し得たものではない。

そして、本件訂正発明1は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れが改善されるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明1は、甲2飲料発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項すべてをその発明特定事項とし、さらに技術的に限定したものであるから、本件訂正発明1が、甲2飲料発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件訂正発明2もまた、甲2飲料発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない

(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲2製法発明とは、上記2(3)アに示したとおりの一致点及び相違点(2−3)を有する。

イ 判断
甲2製法発明は、記載事項(2−8)〜記載事項(2−10)に示されるとおり、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料、およびその品質改善方法を提供するために、炭酸飲料に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用するものである。
甲2製法発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用する動機付けとなる記載は、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載、記載事項(3−1)を含む甲3の記載、記載事項(4−1)を含む甲4の記載、記載事項(5−1)を含む甲5の記載、及び記載事項(6−1)を含む甲6の記載を検討しても、見出すことはできないので、甲2製法発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、本件訂正発明3は、甲2製法発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に相当し得たものではない。

そして、本件訂正発明3は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れが改善される飲料を製造ことができるという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明3は、甲2製法発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲2製法発明とは、上記2(4)アに示したとおりの一致点並びに相違点(2−4−1)及び相違点(2−4−2)を有する。

イ 判断
事案に鑑み、相違点(2−4−2)から検討する。
甲2製法発明は、記載事項(2−8)〜記載事項(2−10)に示されるとおり、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料、およびその品質改善方法を提供するために、炭酸飲料に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用するものであって「乳化香料」を含むものではないので、甲2製法発明の「製造方法」は、本件訂正発明4にいう「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」とはなり得ない。
仮に、甲2製法発明において飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤」を含む事項が、本件訂正発明4において飲料に「乳化香料」を含む事項と、技術的には実質的に相違しない事項であるとしても、甲2製法発明の「製造方法」を「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」にする動機付けとなる記載は、記載事項(1−1)〜記載事項(1−9)を含む甲1の記載、記載事項(2−1)〜記載事項(2−7)を含む甲2の記載、記載事項(3−1)を含む甲3の記載、記載事項(4−1)を含む甲4の記載、記載事項(5−1)を含む甲5の記載、及び記載事項(6−1)を含む甲6の記載を検討しても、見出すことはできないので、甲2製法発明の「製造方法」を、「乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法」にすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
したがって、本件訂正発明4は、甲2製法発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に相当し得たものではない。

そして、本件訂正発明4は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れを改善するという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明4は、甲2製法発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立人の主張について
甲2飲料発明又は甲2製法発明による進歩性欠如について、申立人は、
「仮に、甲2発明において用いられた乳化香料成分が除かれた場合であっても、甲第6号証に記載の通り、炭酸飲料において、乳化香料は風味の向上を目的として好適に用いられるため、甲2発明において種々の乳化香料成分を用いることは当業者が容易に想到し得る。よって、本件特許発明1は少なくとも進歩性がない。
甲第2号証の実施例1の炭酸飲料に関し、官能評価の結果、もったり感を含む呈味について改善したことの記載がある。乳化香料を含まない比較例2では、もったり感及び異味異臭という点において、乳化剤に由来する呈味が強調されていたことも記載されている(段落0060)。
よって、甲第2号証には、本件特許発明1と同質の効果の記載がある。」(特許異議申立書24頁14〜23行)、
「本件特許発明では、その効果に関し、官能評価試験を実施しているが、6人のパネリストの個別の評点は明記されておらず、各評価項目における6人のパネリストの評価に係る詳細は不明である上、各パネリスト及び各評価項目で、加点又は減点が適正に行われることを担保するための評価基準及び評価手法や、評点が分散した場合の統計上の措置等も明らかでない。……、そもそも本件特許明細書記載の官能評価試験の結果をもって、本件特許発明1の奏する効果に基づく進歩性を評価するに足りる程度の客観性ないし信頼性を備えた実験結果であるとは認められない。」(特許異議申立書25頁9〜16行)、及び
「本件特許明細書の【0061】には、「「後切れ」の評価は、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味(油のような味や苦味)について、後切れを評価したものである。」と記載されているように、特許権者が主張する「乳化剤の後切れ」とは、引用文献2における「乳化剤に由来する呈味」と同様の評価項自である。
よって、引用文献2においても、乳化剤の後切れ(乳化剤に由来する油のような味(油っぽい香味))を改善すべきことは認識されている。
以上より、……、寧ろ引用文献1には、本件訂正発明と同様の課題の記載と、当該課題を解決していることの具体的な記載がある。」(意見書8頁20行〜9頁6行(摘記中「引用文献1」は「引用文献2」の誤記と認める。))などと主張する。
しかし、記載事項(6−1)には、乳化香料を飲料に添加した場合は、エッセンス香料を飲料に添加した場合に比べて、フレーバーの発現はマイルドであるが、ボディー感、ボリューム感のある香味を付与することが特徴である旨が示されているに過ぎず、記載事項(2−8)〜記載事項(2−10)に示されるように、ガス抜け抑制、泡立ち抑制および呈味の経時安定性という観点において、品質の長期安定性に優れた容器詰め炭酸飲料、およびその品質改善方法を提供するために、炭酸飲料に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤と、特定の疎水性成分を含む香料とを併用することを発明特定事項とした甲2飲料発明又は甲2製法発明において、飲料に「リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールからなる群より選択される1以上の成分を含む香料と、ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含む事項に代えて、飲料に「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料」を含む事項を採用する動機付けは、記載事項(6−1)を参酌しても、あるとは認められない。
また、本件特許明細書には「なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を指し、後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。」(段落0016)と記載されている一方、甲2には、記載事項(2−11)(すなわち、甲2の段落0060)を含めて、「飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく」ことを示す記載はなく、甲2飲料発明又は甲2製法発明が、本件訂正発明1〜本件訂正発明4と同質の効果を奏することが記載されているとは認められない。
さらに、願書に添付した明細書の段落0051〜段落0085に示された実施例・比較例についての評価はいずれも、パネリストの人数のみならず、評価項目、評価基準及び基準飲料が具体的に明らかにされていることから、その評価結果は妥当なものといえるものであって、本件訂正発明1〜本件訂正発明4は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおり、乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料において、乳化香料に含まれる乳化剤の後切れを改善するという、当業者の予想し得ない顕著な効果を奏するものであるといえる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

(6)小括
以上(1)〜(5)に記したとおり、本件訂正発明1〜4は、甲2に記載された発明及び甲3〜甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 理由C−1(サポート要件違反)及び理由C−2(サポート要件違反)について
(1)判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきとされる。

(2)願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載
願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」ともいう。)の発明の詳細な説明には、以下の記載事項(本−1)〜記載事項(本−8)が記載されている。
記載事項(本−1)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、後切れが改善された無糖炭酸飲料を提供することを目的とする。」

記載事項(本−2)
「【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後切れが改善された無糖炭酸飲料を提供することができる。」

記載事項(本−3)
「【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明を完成するに至った経緯を説明する。
【0010】
本発明者は、飲料を開発するにあたり、香料の風味を増強することを検討した。
【0011】
飲料の風味を増強するため、柑橘精油等の不溶性の精油(以下、「オイル」という)の含有量を増加させることが考えられるが、その場合、風味が増強される一方で、オイルの含有量を所定量以上にしてしまうと、オイルに含まれる油性(疎水性)の香気成分が、飲料から分離してしまう。その結果、水面に油膜が浮かんだ状態になり、飲料としては適した形態とはならない。
【0012】
このような状況に鑑み、本発明者は、香料として乳化香料を用いることを検討した。なお、乳化香料は、オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている状態にある香料であり、乳化によってオイルを容易に飲料中に分散することができる。乳化香料は、例えば、水に添加したオイルと乳化剤を高圧でホモジナイズすることで製造することができる。ホモジナイズ処理が行われることで、オイルが微粒子化するとともに、その微粒子が乳化剤の膜で覆れ、オイルが水中油型(O/W型)に乳化される。
【0013】
本発明者は、香料として乳化香料を用い、飲料における香料の風味の増強を試みたところ、飲料中の香料の風味を増強することができ、また、香料の添加量を所定量以上にしても油膜が形成されないことを見出した。この結果に基づき、本発明者は、乳化香料を添加した飲料についてさらに検討を進めた。
【0014】
その検討の過程で、本発明者は、後述する評価1に示す通り、乳化香料を添加する対象が炭酸水などの無糖の飲料(以下、「無糖飲料」ともいう)であると、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が残り続け、後切れが悪くなるという問題が生じることを知見した。なお、乳化剤由来の不快な呈味とは、例えば、苦味や油のような味である。
【0015】
本発明者は、この問題を解決するため、鋭意検討したところ、無糖飲料に炭酸ガスを含有させるとともに、その炭酸ガスボリュームを所定値以上とすることで、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が速やかに消え、後切れが改善されることを見出した。本発明者は、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0016】
なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を指し、後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。」

記載事項(本−4)
「【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
なお、以下の実施例では、後切れが改善されたことを、後切れが良くなったとも呼び、その反対を、後切れが悪くなったとも呼ぶ。また、以下に示す評価1〜6では、官能評価を行っているが、評価結果に対する温度の影響を考慮して、官能評価に用いた飲料は全て4℃とした。」

記載事項(本−5)
「【0053】
[評価1(乳化香料の影響)]
ベース液として、糖(果糖ブドウ糖液糖)及び酸(クエン酸)を飲料水に含有させた糖酸液を用意した。糖酸液は、ブリックス値(Bx)が10°であり、酸度が0.1[g/100ml]であった。なお、ブリックス値は、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度であり、糖度計(ATAGO社製)を用いて測定した。また、酸度は、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定した。
【0054】
ベース液に含有させる乳化香料として、ポリグリセリン脂肪酸エステルでオイルを乳化した乳化香料(以下、「ポリグリ」ともいう)と、アラビアガムでオイルを乳化した乳化香料(以下、「アラビア」ともいう)と、ガティガムでオイルを乳化した乳化香料(以下、「ガティ」ともいう)を用意した。なお、いずれの乳化香料も、オイルは、柑橘精油であった。
【0055】
用意したベース液(糖酸液)を参考例1の飲料とした。また、用意したベース液(糖酸液)に対して、用意した3種の乳化香料をそれぞれ別々に添加し、参考例2〜4の飲料を得た。なお、ポリグリ及びガティは、飲料中の乳化香料の含有量が500ppmとなる量(飲料中の乳化剤の含有量が25ppmとなる量)で添加され、アラビアは、飲料中の乳化香料の含有量が100ppmとなる量(飲料中の乳化剤の含有量が25ppmとなる量)で添加された。
【0056】
また、ベース液として、飲料水を用意した。
【0057】
用意したベース液(飲料水)を参考例5の飲料とした。また、用意したベース液(飲料水)に対し、用意した3種の乳化香料をそれぞれ別々に添加し、参考例6〜8の飲料を得た。なお、ポリグリ及びガティは、飲料中の乳化香料の含有量が500ppmとなる量(飲料中の乳化剤の含有量が25ppmとなる量)で添加され、アラビアは、飲料中の乳化香料の含有量が100ppmとなる量(飲料中の乳化剤の含有量が25ppmとなる量)で添加された。
【0058】
まず、参考例1〜4の飲料を6人のパネリストが試飲し、後述する評価基準に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。なお、参考例1〜4の飲料の評価は、参考例1の飲料を基準(後述する評価基準の基準飲料)にして実施された。
【0059】
次に、参考例5〜8の飲料を6人のパネリストが試飲し、後述する評価基準に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。なお、参考例5〜8の飲料の評価は、参考例5の飲料を基準(後述する評価基準の基準飲料)にして実施された。
【0060】
<「おいしさ」の評価基準>
「おいしさ」は、1点から7点の7段階で評価し、4点から7点に近づくにつれて、よりおいしくなるものとし、4点から1点に近づくにつれて、よりまずくなるものとした。1点、4点及び7点の評価基準は、以下の通りである。
1点:基準飲料よりも、非常にまずい。
4点:基準飲料と同等。
7点:基準飲料よりも、非常においしい。
【0061】
<「後切れ」の評価基準>
「後切れ」は、1点から7点の7段階で評価し、4点から7点に近づくにつれて、後切れが良くなるものとし、4点から1点に近づくにつれて後切れが悪くなるものとした。1点、4点及び7点の評価基準は、以下の通りである。なお、「後切れ」の評価は、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味(油のような味や苦味)について、後切れを評価したものである。
1点:基準飲料よりも、非常に悪い。
4点:基準飲料と同等。
7点:基準飲料よりも、非常に良い。
【0062】
<「苦味」の評価基準>
「苦味」は、1点から7点の7段階で評価し、1点から7点に近づくにつれて、「苦味」をより感じられるものとした。1点、4点及び7点の評価基準は、以下の通りである。
1点:基準飲料よりも、非常に苦くない。
4点:基準飲料と同等。
7点:基準飲料よりも、非常に苦い。
【0063】
参考例1〜4の飲料の評価結果を表1aに示す。
[表1a]


【0064】
参考例5〜8の飲料の評価結果を表1bに示す。
[表1b]


【0065】
表1aに示すように、ベース液を糖酸液とした参考例1〜4では、乳化香料が添加される場合のほうが、乳化香料が添加されていない場合と比較して後切れが良くなっており、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が残り続けるという問題が生じなかった。一方、表1bに示すように、ベース液を飲料水とした参考例5〜8では、乳化香料が添加されることで、乳化香料が添加されていない場合と比較して後切れが悪くなっており、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が残り続けるという問題が生じた。
【0066】
なお、ベース液として酸のみを含有させた飲料水を用いた場合にも、表1bに示す参考例5〜8の評価結果と同様に、乳化香料の添加によって後切れが悪くなったこの結果と表1bの結果から、飲料中に糖が含有される場合には、乳化剤由来の不快な呈味が残り続けるという問題が生じないことが理解できた。」

記載事項(本−6)
「【0067】
[評価2(炭酸ガス(二酸化炭素)の影響)]
評価1の参考例6と同様の方法で、ポリグリを含有する飲料水を取得し、これを比較例1の飲料(ベース液:飲料水)とした。また、評価1の参考例6と同様の方法で、ポリグリを含有する飲料水を調製し、この飲料水に対してポストミックス法により炭酸ガスを含有させて、炭酸ガスボリュームの異なる3種類の飲料(実施例1〜3)を得た。
【0068】
評価1の参考例7と同様の方法で、アラビアを含有する飲料水を調製し、これを比較例2の飲料(ベース液:飲料水)とした。また、評価1の参考例7と同様の方法で、アラビアを含有する飲料水を調製し、この飲料水に対してポストミックス法により炭酸ガスを含有させて、炭酸ガスボリュームの異なる3種類の飲料(実施例4〜6)を得た。
【0069】
評価1の参考例8と同様の方法で、ガティを含有する飲料水を調製し、これを比較例3の飲料(ベース液:飲料水)とした。また、評価1の参考例8と同様の方法で、ガティを含有する飲料水を調製し、この飲料水に対してポストミックス法により炭酸ガスを含有させて、炭酸ガスボリュームの異なる3種類の飲料(実施例7〜9)を得た。
【0070】
まず、比較例1及び実施例1〜3の飲料を6人のパネリストが試飲し、後述する評価基準(但し、比較例1を基準飲料とする)に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。次に、比較例2及び実施例4〜6の飲料を6人のパネリストが試飲し、後述する評価基準(但し、比較例2を基準飲料とする)に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。最後に、比較例3及び実施例7〜9の飲料を6人のパネリストが試飲し、後述する評価基準(但し、比較例3を基準飲料とする)に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。
【0071】
<「おいしさ」の評価基準>
「おいしさ」は、1点から7点の7段階で評価し、4点から7点に近づくにつれて、よりおいしくなるものとし、4点から1点に近づくにつれて、よりまずくなるものとした。1点、4点及び7点の評価基準は、以下の通りである。
1点:基準飲料よりも、非常にまずい。
4点:基準飲料と同等。
7点:基準飲料よりも、非常においしい。
【0072】
<「後切れ」の評価基準>
「後切れ」は、1点から7点の7段階で評価し、4点から7点に近づくにつれて、後切れが良くなるものとし、4点から1点に近づくにつれて後切れが悪くなるものとした。1点、4点及び7点の評価基準は、以下の通りである。なお、「後切れ」の評価は、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味(油のような味や苦味)について、後切れを評価したものである。
1点:基準飲料よりも、非常に後切れが悪い。
4点:基準飲料と同等の後切れ。
7点:基準飲料で使用したベース液と同等の後切れ。
【0073】
<「苦味」の評価基準>
「苦味」は、1点から7点の7段階で評価し、1点から7点に近づくにつれて、「苦味」をより感じられるものとした。1点、4点及び7点の評価基準は、以下の通りである。
1点:基準飲料で使用したベース液と同等の苦味。
4点:基準飲料と同等の苦味。
7点:基準飲料よりも、非常に苦い。
【0074】
比較例1及び実施例1〜3の飲料の評価結果を表2aに示す。
[表2a]


【0075】
比較例2及び実施例4〜6の飲料の評価結果を表2bに示す。
[表2b]


【0076】
比較例3及び実施例7〜9の飲料の評価結果を表2cに示す。
[表2c]


【0077】
表2a〜表2cに示すように、いずれの乳化香料を用いたときであっても、炭酸ガスボリュームを1.0vol以上とすることで、炭酸ガスを含有させていない場合と比較して後切れが良くなった。この結果から、無糖炭酸飲料の炭酸ガスボリュームを1.0vol以上とすることで、炭酸ガスを含有させていない場合と比較し、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が速やかに消えていき、後切れが改善されることが理解できた。」

記載事項(本−7)
「【0078】
[評価3(乳化剤の含有量の影響)]
アラビア(乳化香料)を飲料水(ベース液)に含有させ、アラビアの含有量が異なる5種類の飲料水を用意した。これらの飲料水に、ポストミックス法により、炭酸ガスボリュームが3.0volとなるように炭酸ガスを溶存させ、実施例10〜14の飲料を得た。また、実施例10〜14と同様方法で、アラビアの含有量が異なる5種類の飲料水を用意し、これらの飲料水を比較例4〜8の飲料とした。
【0079】
実施例10〜14と比較例4〜8の飲料を6人のパネリストが試飲し、評価2で示した評価基準に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。本評価は、実施例10〜14の飲料を、二酸化炭素が溶存していないこと以外は同じ構成の飲料(比較例4〜8)と比較して評価するものであり、評価基準の基準飲料には、実施例10〜14について、それぞれ比較例4〜8を用いた。
【0080】
結果を、表3に示す。
[表3]




【0081】
表3に示すように、乳化剤の含有量が5ppm〜1250ppmである実施例の無糖炭酸飲料は、炭酸ガスを含有させていない比較例と比較し、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が速やかに消えていき、後切れが改善された。特に、乳化剤の含有量が25ppm〜500ppmである場合、基準飲料と比較したときの後切れの改善幅(改善の程度)が、当該範囲外である場合よりも大きくなった。」

記載事項(本−8)
「【0082】
[評価4(酸の影響)]
ベース液として、酸(クエン酸)を飲料水に含有させた酸液(酸度:0.05[g/100ml])を用いたこと以外は、評価2の比較例2と同様の方法で、アラビアを含有する酸液を取得し、これを比較例9の飲料とした。また、比較例9と同様の方法で、アラビアを含有する酸液を取得し、得られた酸液に対してポストミックス法により炭酸ガスを含有させて、炭酸ガスボリュームの異なる3種類の炭酸飲料(実施例15〜17)を得た。
【0083】
比較例9及び実施例15〜17の飲料を6人のパネリストが試飲し、評価2で示した評価基準(比較例9を基準飲料とする)に基づき、「おいしさ」、「後切れ」、「苦味」の3項目について評価した。
【0084】
結果を、表4に示す。
[表4]


【0085】
表4に示すように、無糖炭酸飲料の酸度が0.05[g/100ml]である乳化香料を含有する無糖炭酸飲料において炭酸ガスボリュームを1.0vol以上とすることで、炭酸ガスを含有させていない場合と比較し、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が速やかに消えていき、後切れが改善された。」

(3)本件訂正発明1〜本件訂正発明3の課題
本件訂正発明1〜本件訂正発明3の課題は、本件訂正後の請求項1〜請求項3及び本件特許明細書の発明の詳細な説明(特に、記載事項(本−1)〜記載事項(本−3))の記載から、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく無糖炭酸飲料及びその製造方法を提供することと認める。

(4)判断
記載事項(本−3)には、
・飲料の風味を増強するために、柑橘精油等の不溶性の精油(オイル)の含有量を増加させると風味が増強される一方、オイルの含有量を所定量以上にすると、オイルに含まれる油性の香気成分が飲料から分離して水面に油膜が浮かんだ状態になること、
・香料として、オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている状態にある乳化香料を用いると、飲料中の香料の風味を増強することができ、香料の添加量を所定量以上にしても油膜が形成されないこと、及び、
・乳化香料を無糖飲料に添加すると、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が残り続け、後切れ(飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚)が悪くなるという問題が生じるが、無糖飲料に炭酸ガスを含有させるとともに、その炭酸ガスボリュームを所定値以上とすることで、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が速やかに消え、後切れが改善されること(飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくこと)、
が記載されている。
記載事項(本−5)には、飲料水、及び、酸のみを含有して糖を含有しない飲料水に対して、乳化香料を添加すると、乳化香料を添加していないものに比べて、後切れが悪いことが具体的に示されており、記載事項(本−6)及び記載事項(本−7)には、乳化香料を添加した飲料水に対して、含有させる炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下とすると、炭酸ガスを含有させないもの及び含有させる炭酸ガスボリュームを1.0volとしたものに比べて、後切れが良いことが具体的に示されており、これらはいずれも、記載事項(本−3)の記載内容を裏付けるものといえる。
これらのことから、乳化香料を添加した無糖飲料に、炭酸ガスを含有させて炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下とすることにより、炭酸ガスを含有させないものに比べて、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味がより速やかに消えていくことを、当業者は認識できる。
したがって、本件訂正発明1〜本件訂正発明3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく無糖炭酸飲料及びその製造方法を提供するという当該発明の課題を解決できることを、当業者が認識し得る範囲のものであるといえる。

(5)申立人の主張について
申立人は、理由C−1(サポート要件違反)について、
「(ア)官能評価試験の客観性について
……。
本件特許明細書には、「後切れ」等の効果の各評価項目における6人のパネリストの個別の評点は明記されておらず、各評価項目における6人のパネリストの評点に係る詳細は不明である上、各パネリスト及び各評価項目で、加点又は減点が適正に行われることを担保するための評価基準及び評価手法や、更には、評点が分散した場合の統計上の措置等も明らかでない。
パネリストに関して、本件特許明細書には、「6人のパネリスト」と記載されているだけであり、性別、年齢層、当分野の官能評価試験の訓練期間等の情報が一切開示されておらず、目標値となる飲料の風味をパネリスト間で共通化する等の手順も踏まれていない。
よって、本件特許明細書記載の官能評価試験からでは、客観性ないし信頼性を備えた実験結果であるとは認められず、本件特許発明により後切れが改善された 無糖炭酸飲料を提供できることを当業者が理解できるとは言えない。」と主張する(特許異議申立書31頁10行〜32頁8行)。
しかし、記載事項(本−5)〜記載事項(本−8)に示される評価はいずれも、パネリストの人数のみならず、評価項目、評価基準及び基準飲料が具体的に明らかにされており、パネリストの性別、年齢層、当分野の官能評価試験の訓練期間等の情報及び目標値となる飲料の風味をパネリスト間で共通化する等の手順が記載されていないとしても、その評価結果は妥当なものといえるものである。
したがって、申立人の上記主張は受け入れられない。

また、申立人は、理由C−1(サポート要件違反)について、
「(イ)官能評価試験の「後切れ」に関する評価方法について
……。
すなわち、本件特許発明の課題である「乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味」の後切れについて、4点が基準飲料と同等、7点が基準飲料よりも非常に良い、とある。
ここで、参考例1〜4の評価結果(段落0063)をみると、基準飲料である 参考例1を4点として、参考例2〜4は4点よりも高い点数となっている。しかし、参考例1の飲料には乳化香料が含まれていないので、乳化剤由来の不快な呈味はそもそも存在しないはずであり、この参考例1の飲料よりも高い点数がつくことは本来あり得ないはずである。
すなわち、本実施例で評価しているいう後切れは、「乳化剤由来の不快な呈味」の後切れを評価できているわけではないといえる。
……、本実施例の【表2a】以降についても、「後切れ」の評価が必ずしも「乳化剤由来の不快な呈味」の評価をしているとは言えず、単に炭酸ガスの刺激や他の成分による「後切れ」への影響を評価しているに過ぎないとも考えられる。
……、乳化香料に含まれる乳化剤のみが呈味に影響を与えるものではないことが知られている。……。
……、本件特許明細書の官能評価試験では、不快な呈味の原因が乳化剤由来であるかどうかはわからない(すなわち、精油のオイル由来の油っぽさや苦味が原因である可能性を否定できない)し、乳化剤由来の不快な呈味を切り分けて評価する手法も記載されていない。」とも主張する(特許異議申立書32頁9行〜33頁22行)。
しかし、記載事項(本−3)には、
「【0016】
なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を指し、後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。」と記載されている(下線は当審による)。
乳化香料が含まれていなければ、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味は感じられず、その消えていく感覚は当然感じられないから、乳化香料が含まれている参考例2〜4の飲料における「飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚」が、乳化香料が含まれていない参考例1の基準飲料における「飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚」よりも、より強く感じられることは当然のことであって、その評価結果が妥当なものでないことの根拠とはなり得ない。
また、乳化香料に含まれる乳化剤のみが呈味に影響を与えるものではなく、精油のオイル由来の油っぽさや苦みが呈味に影響を与えるとしても、上記(3)に示したとおり、本件訂正発明1〜本件訂正発明3の課題は、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく無糖炭酸飲料及びその製造方法を提供することと認められるから、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味が消えていく感覚を対象とする、記載事項(本−5)〜記載事項(本−8)に示される評価は、本件訂正発明1〜本件訂正発明3が、その発明の課題を解決できることを、当業者が認識し得る範囲のものであることを裏付ける評価として、妥当なものといえる。

また、申立人は、理由C−1(サポート要件違反)について、
「(ウ)任意の種類や量の精油による「乳化香料」を含有する飲料にまで拡張ないし一般化することはできない点について
本件特許発明に記載の無糖炭酸飲料、又は、無糖飲料では、任意の種類・量の「乳化香料」を無数に包含するが、実施例において試験がなされているのは、柑橘精油オイルを、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム、又は、ガティガムで乳化した乳化香料のみが用いられている。
なお、実施例において記載されている乳化剤の種類と含有量は、ポリグリセリン脂肪酸エステル25ppm、ガティガム25ppm、アラビアガム5ppm〜1250ppmppmだけである。
よって、精油オイルや乳化剤の任意の種類や含有量によって風味に影響がある点は検証されておらず、精油オイルや乳化剤について種類や量の限定がない「乳化香料」を含有する飲料にまで拡張ないし一般化することはできない。
……。
一般に、乳化香料に用いられる乳化剤としては、……種々の成分が周知である(…)。
また、一般に飲料用の乳化剤として多用されているポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、……、種々の組成、種々の加工がなされたポリグリセリン脂肪酸エステルが存在しており、これらの違いによって苦味や後味が異なることも当業者にとって周知である。
また、アラビアガムについても、……種々のアラビアガムが存在し、加工方法の異なる改質アラビアガムも存在することが周知である(……)。
したがって、詳細な組成や加工方法を何ら限定していないポリグリセリン脂肪酸エステルや、アラビアガム、ガディガムの全てにまで拡張ないし一般化することはできない。」とも主張する(特許異議申立書33頁23行〜35頁7行)。
しかし、上記(3)に示したとおり、本件訂正発明1〜本件訂正発明3の課題は、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく無糖炭酸飲料及びその製造方法を提供することと認められるところ、乳化香料を添加した無糖飲料に対して、炭酸ガスを含有させるとともに、その炭酸ガスボリュームを所定値以上とすることにより、乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が、炭酸ガスを含有させないものよりも、より速く消えていくと感じられるということは、記載事項(本−3)〜記載事項(本−8)の記載内容からみて、無糖飲料に添加された乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が消えていくと感じられる度合いが、無糖飲料に含有される炭酸ガスによって強められることによると認められる。
たとえ、乳化香料における精油オイルや乳化剤の任意の種類や含有量によって、風味に影響があるとしても、また、より速く消えていく度合いには差があるとしても、無糖飲料に添加された乳化香料に含まれる乳化剤由来の不快な呈味が消えていくと感じられる度合いが、無糖飲料に含有される炭酸ガスによって強められることはないとする根拠にはならず、本件訂正発明1〜本件訂正発明3が、その発明の課題を解決できることを、当業者が認識し得る範囲のものでないとすることはできない。

また、申立人は、理由C−2(サポート要件違反)について、
「上記の主張において、本件訂正発明の課題は、オイルに含まれる油性(疎水性)の香気成分に由来する油膜の形成が抑制された飲料を提供することにあり、オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を用いることで、飲料中においても水中油型の状態で維持され、油膜の形成が抑制されることを課題解決の手段としています。
本件特許明細書の実施例(…)においては、……、「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている」か否かは不明であり、これらが市販品を用いたものとの記載も無い。
さらに本件特許明細書の実施例(…)の全体を通して、「オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている」ことが記載されていない上、飲料中においても水中油型の状態で維持されていることも評価されていない。
用いた乳化香料が飲料中においても水中油型の状態で維持されると主張するためには、乳化香料中のオイルの種類や乳化剤の種類、それらの含有比率、乳化香料を製造するための攪拌方法等の乳化手法に加え、対象となる飲料における他の成分の種類や量等によって影響を受けるところ、具体的な条件の検討が必要であるところ、上記のとおり、本件特許明細書にはそのような記載が一切無い。
……、本件特許明細書の【0012】では、乳化香料の製造法の例示として、「乳化香料は、例えば、水に添加したオイルと乳化剤を高圧でホモジナイズすることで製造することができる。ホモジナイズ処理が行われることで、オイルが微粒子化するとともに、その微粒子が乳化剤の膜で覆れ、オイルが水中油型(O/W型)に乳化される。」とのみ例示的に記載されているに留まり、本件特許明細書の実施例(…)では、乳化香料が飲料中においても水中油型の状態で維持されるための条件や製法の検討は一切なされていない。
したがって、本件訂正発明1及びこれを引用する本件訂正発明2、並びに、本件訂正発明3についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」とも主張する(意見書10頁9行〜11頁18行)。
しかし、記載事項(本−3)には、
「【0012】
……。なお、乳化香料は、オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている状態にある香料であり、乳化によってオイルを容易に飲料中に分散することができる。乳化香料は、例えば、水に添加したオイルと乳化剤を高圧でホモジナイズすることで製造することができる。ホモジナイズ処理が行われることで、オイルが微粒子化するとともに、その微粒子が乳化剤の膜で覆れ、オイルが水中油型(O/W型)に乳化される。」と記載されており、本件特許明細書には「乳化香料」の定義とみなせる記載が他にないことから、記載事項(本−5〜記載事項(本−8)に記載される「乳化香料」とは、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料」であると認められる。
したがって、記載事項(本−5)〜記載事項(本−8)に示される評価はいずれも、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料」を用いたものと認められ、技術常識に照らして、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料」を飲料に添加すれば、飲料中においても水中油型の乳化状態が維持されることは明らかである。
申立人は、上記のとおり、「用いた乳化香料が飲料中においても水中油型の状態で維持されると主張するためには、乳化香料中のオイルの種類や乳化剤の種類、それらの含有比率、乳化香料を製造するための攪拌方法等の乳化手法に加え、対象となる飲料における他の成分の種類や量等によって影響を受けるところ、具体的な条件の検討が必要である…」などと主張するが、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料」を飲料に添加した場合に、飲料中において水中油型の乳化状態が維持されないとする根拠を何ら示していないし、仮に、記載事項(本−5)〜記載事項(本−8)に示される評価が、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料」を用いたものではなく、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されていない乳化香料」を用いたものであるとしても、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されていない乳化香料」を用いた場合に、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていく無糖炭酸飲料及びその製造方法を提供するという課題を解決できれば、当業者は、水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料における香料の状態を踏まえて、「オイルが乳化剤により水中油型(O/W型)に乳化されている乳化香料」を用いた場合にも当該課題を解決できることを認識できる。

以上のとおり、申立人の主張はいずれも受け入れられない。

(6)小括
以上(1)〜(5)により、本件訂正発明1〜本件訂正発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであると認められる。
よって、本件訂正発明1〜本件訂正発明3に係る特許を、理由C−1又は理由C−2によって、取消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を含み、炭酸ガスボリュームが3.0vol以上5.0vol以下であり、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料。
【請求項2】
前記乳化香料を構成する乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム及びガティガムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の無糖炭酸飲料。
【請求項3】
オイルが乳化剤により水中油型に乳化されている乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料の製造方法であって、
炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下として炭酸ガスを飲料に含有させることを含む、無糖炭酸飲料の製造方法。
【請求項4】
乳化香料を含み、高甘味度甘味料を含有しない無糖飲料における、前記乳化香料に含まれる乳化剤の後切れ改善方法であって、
飲料中の炭酸ガスボリュームを3.0vol以上5.0vol以下に調整することを含む、後切れ改善方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-25 
出願番号 P2020-029708
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 吉岡 沙織
村上 騎見高
登録日 2020-11-06 
登録番号 6790295
権利者 アサヒ飲料株式会社
発明の名称 無糖炭酸飲料、無糖炭酸飲料の製造方法、及び無糖飲料の後切れ改善方法  
代理人 網盛 俊  
代理人 井出 真  
代理人 網盛 俊  
代理人 久松 洋輔  
代理人 須澤 洋  
代理人 須澤 洋  
代理人 水野 勝文  
代理人 久松 洋輔  
代理人 水野 勝文  
代理人 井出 真  

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