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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1385180
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-09 
確定日 2022-05-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6797124号発明「液晶ポリエステル組成物、成形体及びコネクター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6797124号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6797124号(請求項の数7。以下、「本件特許」という。)は、平成28年9月23日を国際出願日(パリ条約に基づく優先権主張 平成27年9月25日 日本国)とする特許出願(特願2017−540923号)に係るものであって、令和2年11月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年12月9日である。)。

その後、令和3年6月9日に、本件特許の請求項1〜7に係る特許に対して、特許異議申立人である森田弘潤(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものであり、審理対象外の請求項は存しない。

(1)特許異議申立以降の経緯
令和3年 6月 9日 特許異議申立書
同年 9月30日付け 取消理由通知書
同年11月26日 意見書
令和4年 1月11日付け 審尋(申立人あて)
*令和4年1月11日付け審尋に対する申立人からの回答はなかった。

(2)証拠方法
ア 申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

・甲第1号証:特開2010−168574号公報
・甲第2号証−1:本件特許に係る出願に対応する米国特許出願である出願第15/761,584号)の最後の拒絶理由通知、及び、その抄訳
・甲第2号証−2:本件特許に係る出願に対応する米国特許出願である出願第15/761,584号)の書誌情報、及び、その抄訳
・甲第3号証:甲第1号証に対応する米国特許出願公報である米国特許出願公開第2010/0163796号明細書
・甲第4号証:「YAMAGUCHI MICA CO.LTD。 MICA POWDER AB−25S」に関する製品情報、2010年6月14日
・甲第5号証:国際公開第01/40380号
・甲第6号証:特開2013−177491号公報
・甲第7号証:特開平10−219085号公報
・甲第8号証:特開2011−190461号公報
・甲第9号証:特開2015−147881号公報

イ 特許権者が令和3年11月26日付け意見書に添付して提出した証拠方法
特許権者が令和3年11月26日付け意見書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

・乙第1号証:実験依頼書及びその結果(依頼No.2095-17)、依頼書作成者:枌、実験主担当者:武藤、藤田、住友化学株式会社、依頼日:平成27年5月8日、写し

第2 本件発明
特許第6797124号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜7に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1〜7に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」〜「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含む液晶ポリエステル組成物であって、
前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含み、
前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃であり、
前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃であり、
前記板状無機フィラーは、その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるものであり、
前記板状無機フィラーの粒径D90が20〜140μmである、液晶ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記板状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部である、請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記板状無機フィラーがマイカである、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記板状無機フィラーの粒径D90が30〜80μmである、請求項1〜3のいずれか
一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)で表される繰返し単位と、下記一般式(2)で表される繰返し単位と、下記一般式(3)で表される繰返し単位とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
[式(1)〜(3)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、互いに独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基を表す。X及びYは、互いに独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の1個以上の水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜28のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基で置換されていてもよい。]
(4)−Ar4−Z−Ar5−
[式(4)中、Ar4及びAr5は、互いに独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は炭素数1〜28のアルキリデン基を表す。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなるコネクター。」


第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由A(進歩性
本件特許の請求項1〜7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明及び甲第6〜7号証に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件の請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1〜7に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1(明確性
本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜7の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件の請求項1〜7に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件発明1では、「前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃であり」、「前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃であり」とそれぞれの「液晶ポリエステル」の流動開始温度が規定されており、330〜370℃の間で重複しているところ、これらの関係について「流動開始温度が互いに異なる」と規定されているのみで、この温度帯の「液晶ポリエステル」について「液晶ポリエステル(A)」または「液晶ポリエステル(B)」のいずれに該当すると解釈するべきか、その指針となるような記載は本件明細書に存在せず、不明確である。

(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜7の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件の請求項1〜7に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。


理由2−1:本件発明1では、「前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃であり」、「前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃であり」と規定しているところ、本件明細書の実施例では、実施例3及び実施例4において「流動開始温度」が「360℃」の「液晶ポリエステル(A)(L4)」と、「流動開始温度」が「327℃」の極めて限定的な例しか記載されていないため、本件発明に規定する広範な流動開始温度の範囲全般にわたって本件発明の技術的課題が解決できることを理解できない。

理由2−2:本件発明1は、「前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含み」と規定し、また、本件明細書の段落【0045】の「前記液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)のいずれか一方又は両方を含む場合、これら以外のその他の液晶ポリエステルを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい」との記載からみて、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」以外の別の「液晶ポリエステル」を含有する態様を含み得るところ、このような場合の、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」以外の別の「液晶ポリエステル」を含有する配合割合や流動開始温度については全く規定がなく、例えば、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」の温度範囲を満たさない第三の液晶ポリエステルが主成分である場合に、本件発明の技術的課題が解決できることを理解できない。

理由2−3:本件発明1には、「板状無機フィラー」について、「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるものであり、前記板状無機フィラーの粒径D90が20〜140μmである」と特定されているところ、本件明細書の実施例3、4には、pHが8.0、8.7、粒径D90が38.2、74.0の例しか記載されておらず、一方、比較例では本件発明1の範囲を僅かに逸脱したのみで「ハンダ耐熱性」の評価が悪化していることからみて、本件発明1の「板状無機フィラー」のpH及び粒径D90の範囲を充足したところで、本件発明の技術的課題が解決できることを理解できない。

理由2−4:本件発明1には、「板状無機フィラー」の含有量について何ら規定されておらず、本件明細書の段落【0061】の「前記液晶ポリエステル組成物の前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部であることが好ましく、・・・。板状無機フィラーの前記含有量がこのような範囲であることで、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、耐ブリスター性がより高くなる」との記載からみて、本件発明の技術的課題の解決に重要であるところ、本件明細書の実施例3、4には、「板状無機フィラー」は「液晶ポリエステル」に対して「43重量部」である場合しか開示しておらず、実施例3、4の作用効果を本件発明1の範囲まで一般化・抽象化することができない。また、本件発明2には、「板状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部である」と規定しているものの、その範囲全般にわたって実施例3、4の作用効果を一般化・抽象化することができない。


(2)申立理由3(進歩性
本件特許の請求項1〜7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明及び甲第4〜9号証に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件の請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1〜7に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性や強度・剛性が高いことから、電気・電子部品を製造するための射出成形材料として好適に用いられており、例えば、コネクター等の製造に好適である。しかし、液晶ポリエステルは、成形時にその分子鎖が流動方向に配向し易いため、成形体に収縮率・膨張率や機械物性の異方性が生じ易いという問題点がある。このような問題点を解消すべく、液晶ポリエステルにマイカを配合して得られた液晶ポリエステル組成物を用いて、射出成形を行うことが検討されている(例えば特許文献1参照)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような液晶ポリエステルと、マイカ等の板状無機フィラーとを含む従来の液晶ポリエステル組成物は、異方性の発生が抑制された成形体を与えるものの、成形体をハンダ付け等で高温下に曝したときに、表面が膨れる、所謂ブリスターが発生し易いという問題点があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含み、高温条件下でブリスターが発生し難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物、及び前記液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体を提供することを課題とする。
・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含み、高温条件下でブリスターが発生し難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物、前記液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体、及び前記液晶ポリエステル組成物を成形してなるコネクターが提供される。
・・・
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0012】
<液晶ポリエステル組成物>
本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含む液晶ポリエステル組成物であって、前記板状無機フィラーは、その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるものであり、前記板状無機フィラーの粒径D90が20〜140μmのものである。
【0013】
本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、板状無機フィラーとして、上記のようなpH特性と粒径D90とを有するものを用いることで、高温条件下でブリスターが発生し難い(以下、「耐ブリスター性が高い」ということがある。)成形体とすることができる。本実施形態は、板状無機フィラーを用いて得られた成形体における、高温条件下でのブリスターの発生のし易さが、類似の大きさ及び組成を有する板状無機フィラーを用いた場合であっても変動すること、その変動の原因が板状無機フィラーの酸性度と粒径D90の相違に基づくことを見出したことにより、為されたものである。」

(本b)「【0014】
[液晶ポリエステル]
前記液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルである。前記液晶ポリエステルは、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
・・・
【0037】
液晶ポリエステルの以下で定義される流動開始温度は、270℃以上であることが好ましく、270〜400℃であることがより好ましく、280〜400℃であることがさらに好ましい。液晶ポリエステルは、流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いため、流動開始温度が270℃以上であることが好ましい。流動開始温度が400℃を超える場合等のようにあまり高いと、溶融させるために高温を要し、成形時に熱劣化し易くなったり、溶融時の粘度が高くなり、流動性が低下したりする。
【0038】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0039】
前記液晶ポリエステル組成物が含む液晶ポリエステルは、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0040】
前記液晶ポリエステル組成物が2種以上の液晶ポリエステルを含む場合には、流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含むことが好ましい。
【0041】
液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は、310〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましく、330〜400℃であることがさらに好ましい。流動開始温度が前記下限値以上であることで、液晶ポリエステル(A)の耐熱性がより高くなる。
【0042】
液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は、270〜370℃であることが好ましく、280〜370℃であることがより好ましく、300〜370℃であることがさらに好ましい。流動開始温度が前記下限値以上であることで、液晶ポリエステル(B)の耐熱性がより高くなる。
【0043】
液晶ポリエステル(A)の流動開始温度と液晶ポリエステル(B)の流動開始温度との差は、10〜60℃であることが好ましく、20〜60℃であることがより好ましく、25〜60℃であることがさらに好ましい。流動開始温度の差がこのような範囲であることで、前記液晶ポリエステル組成物の薄肉流動性がより高くなり、成形加工性もより良好となる。
【0044】
前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(B)の含有量は、液晶ポリエステル(A)の含有量100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましく、10〜120質量部であることがさらに好ましい。液晶ポリエステル(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、前記液晶ポリエステル組成物の薄肉流動性がより高くなり、成形加工性もより良好となる。
【0045】
前記液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)のいずれか一方又は両方を含む場合、これら以外のその他の液晶ポリエステルを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。液晶ポリエステル(A)又は液晶ポリエステル(B)以外の液晶ポリエステルは、含んでいないことがより好ましい。
【0046】
例えば、前記液晶ポリエステル組成物が、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)のいずれか一方又は両方を含む場合、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)は、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよい。そして、前記液晶ポリエステル組成物が含む、液晶ポリエステル(A)又は液晶ポリエステル(B)以外の液晶ポリエステルも、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。」

(本c)「【0047】
[板状無機フィラー]
前記板状無機フィラーは、その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液(前記板状無機フィラーの10質量%のイオン交換水分散液ともいう)の溶液部分のpH(以下、単に「水分散液のpH」ということがある。)が7.0〜9.0となるものである。板状無機フィラーが、前記水分散液のpHがこのような範囲になるような組成を有していることで、液晶ポリエステルの加水分解が抑制され、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、耐ブリスター性が高くなる。
液晶ポリエステルの加水分解は、例えば、後述する押し出しによってペレット化した前記液晶ポリエステル組成物を製造する場合、前記液晶ポリエステル組成物を成形して成形体を製造する場合等において、発生し易いが、本実施形態においては、これら加水分解が抑制される。
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「水分散液」との記載は、ここで説明している、溶液部分のpHが7.0〜9.0となる水分散液を意味するものとする。
【0048】
前記効果がより高くなる点から、板状無機フィラーの前記水分散液のpHは、7.3〜9.0であることが好ましく、7.6〜9.0であることがより好ましく、7.7〜9.0であることがさらに好ましく、7.8〜9.0であることが特に好ましい。
【0049】
板状無機フィラーの前記水分散液のpHは、前記水分散液の温度が18〜25℃であるの場合の測定値であることが好ましい。
【0050】
前記水分散液は、板状無機フィラーの全量とイオン交換水の全量とを混合した後、板状無機フィラーが均一に分散した状態にあるもの、又は板状無機フィラーが均一に分散した状態を経たものが好ましい。
【0051】
前記板状無機フィラー及びイオン交換水の混合方法は、これら成分が十分に混合される限り特に限定されず、例えば、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法や、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0052】
前記水分散液の溶液部分としては、例えば、前記水分散液を静置することで得られた上澄みや、前記水分散液をろ過することで得られたろ液等が挙げられる。
【0053】
本実施形態においては、前記板状無機フィラーとして、例えば、上述のpH条件を満たすものをそのまま用いてもよいし、上述のpH条件を満たさない板状無機フィラーに対して、pH調節処理を行うことで、上述のpH条件を満たすようになったものを用いてもよく、上述のpH条件を満たすものに対して、上述のpH条件を満たすようにpH調節処理を行って得られたものを用いてもよい。
【0054】
上述の板状無機フィラーに対して行うpH調節処理の例としては、板状無機フィラーをpHが7.0〜9.0の溶液で洗浄する処理、板状無機フィラーの水分散液(以下、この水分散液を、pHを規定する上述の水分散液と区別するために「pH調節用水分散液」ということがある。)を調製して、このpH調節用水分散液に酸又は塩基を添加してpHを7.0〜9.0とした後、板状無機フィラーを取り出す処理等が挙げられる。
【0055】
前記板状無機フィラーは、上述のpH条件を満たすのに加え、さらに、粒径D90が20〜140μmのものである。板状無機フィラーの粒径D90がこのような範囲であることで、液晶ポリエステルの加水分解が抑制され、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、耐ブリスター性が高くなる。板状無機フィラーの粒径D90が前記下限値以上である場合には、板状無機フィラーの比表面積が小さくなることで、液晶ポリエステルの加水分解が抑制される。
なお、本明細書において、「粒径D90」とは、レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した、板状無機フィラーの体積基準の累積粒径分布において、累積90%に相当する粒径である。
【0056】
前記効果がより高くなる点から、板状無機フィラーの粒径D90は、30〜80μmであることが好ましく、34〜77μmであることがより好ましい。
【0057】
前記板状無機フィラーの粒径D90は、例えば、フィラー原石を粉砕するときに、板状無機フィラーの粒径を調節する方法、フィラー原石を粉砕した後、分級によって、板状無機フィラーの粒径を調節する方法等で、調節できる。
【0058】
前記板状無機フィラーは、上述の条件を満たすものであれば特に限定されないが、その例としては、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム又は炭酸カルシウム等が挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0059】
前記板状無機フィラーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記の中でも、前記板状無機フィラーはマイカであることが好ましい。
【0061】
前記液晶ポリエステル組成物の前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部であることが好ましく、20〜200質量部であることがより好ましく、20〜150質量部であることがさらに好ましく、30〜100質量部であることが特に好ましい。板状無機フィラーの前記含有量がこのような範囲であることで、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、耐ブリスター性がより高くなる。
また、前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステル組成物の他の組成100質量部に対して、3〜250質量部であることが好ましい。」

(本d)「【0062】
(他の成分)
前記液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステル及び板状無機フィラー以外に他の成分を含んでいてもよい。
前記他の成分の例としては、前記板状無機フィラー以外の無機フィラー、又は添加剤等が挙げられる。
・・・
【0066】
前記添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤又は着色剤等が挙げられる。
前記液晶ポリエステル組成物の前記添加剤の含有量は、液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0067】
前記液晶ポリエステル組成物は、例えば、前記液晶ポリエステル若しくは板状無機フィラー、又は必要に応じて前記他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより得られる。このときの混合方法は特に限定されないが、タンブラーミキサー、又はヘンシェルミキサー等の公知の攪拌装置を用いる混合方法が挙げられる。
【0068】
また、得られた前記混合物を、押出機等を用いて溶融混練し、混練物をストランド状に押し出して、ペレット化したものを前記液晶ポリエステル組成物としてもよい。
・・・
【0070】
<成形体>
本実施形態の成形体は、前記液晶ポリエステル組成物を成形してなるものである。
前記成形体の製造方法は、前記液晶ポリエステル組成物を成形する。前記液晶ポリエステル組成物を成形する方法としては、溶融成形法が好ましく、溶融成形法の例としては、射出成形法;Tダイ法若しくはインフレーション法等の押出成形法;圧縮成形法;ブロー成形法;真空成形法;又はプレス成形法等が挙げられる。これらの中でも、前記組成物の成形法は、射出成形法であることが好ましい。
・・・
【0074】
本実施形態の成形体で構成される製品、機器、部品又は部材の例としては、光ピックアップボビン、若しくはトランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、若しくはリレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、若しくはカードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、若しくはLEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、若しくはヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、若しくはプリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;電池部品;航空機部品;又は、半導体素子用封止部材、若しくはコイル用封止部材等の封止部材等が挙げられる。」

(本e)「【実施例】
【0080】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明の実施形態は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
下記実施例及び比較例で用いた板状無機フィラーを以下に示す。
(板状無機フィラー)
板状無機フィラー(F1):マイカ((株)セイシン企業製「CS−25」)。
板状無機フィラー(F2):マイカ((株)ヤマグチマイカ製「YM−25S」)。
板状無機フィラー(F3):マイカ(MICAMAFCO社製「MMC−325」)。
板状無機フィラー(F4):マイカ((株)セイシン企業製「CS−5」)。
板状無機フィラー(F5):マイカ((株)セイシン企業製「CS−35」)。
板状無機フィラー(F6):マイカ(レプコ(株)製「M−400」)。
板状無機フィラー(F7):マイカ((株)ヤマグチマイカ製「A−21S」)。
板状無機フィラー(F8):マイカ((株)キララ製「600W」)。
板状無機フィラー(F9):マイカ((株)キララ製「400W」)。
板状無機フィラー(F10):マイカ(霊寿県華晶雲母有限公司(HUAJING MICA)製「W300」)。
【0082】
板状無機フィラー(F1)〜(F10)の前記水分散液のpH及び粒径D90は、下記方法で測定した。
【0083】
<板状無機フィラーの水分散液のpHの測定>
pH7.0の90mLのイオン交換水に、10gの前記板状無機フィラーを加えて、24℃で1分間攪拌することで、非溶解物が均一に分散した水分散液とし、次いで、そのままの温度でこの水分散液を5分間静置した後、上澄み(溶液部分)のpHをpHメーターで測定した。
【0084】
<板状無機フィラーの粒径D90の測定>
レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製「LA−950V2」)を用いて測定した、板状無機フィラーの体積基準の累積粒径分布において、累積90%に相当する粒径を求めた。
【0085】
<液晶ポリエステルの製造>
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下で攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却し、固形物であるプレポリマーを得た。
次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(L1)を得た。得られた液晶ポリエステル(L1)の流動開始温度は、327℃であった。
【0086】
[製造例2]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下で攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却し、固形物であるプレポリマーを得た。
次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで30分かけて昇温し、240℃で10時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(L2)を得た。得られた液晶ポリエステル(L2)の流動開始温度は、286℃であった。
【0087】
[製造例3]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下で攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。
次いで、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却し、固形物であるプレポリマーを得た。
次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(L3)を得た。得られた液晶ポリエステル(L3)の流動開始温度は、327℃であった。
【0088】
[製造例4]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸358.8g(2.16モル)、イソフタル酸39.9g(0.24モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下で攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。
次いで、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却し、固形物であるプレポリマーを得た。
次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(L4)を得た。得られた液晶ポリエステル(L4)の流動開始温度は、360℃であった。
【0089】
<液晶ポリエステル組成物の製造>
[実施例1〜2、実施例5、比較例1〜5]
ヘンシェルミキサーを用いて、表1及び2に示す種類の液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを、表1及び2に示す割合で混合した後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製「PCM−30型」)を用いて、シリンダー温度を330℃として得られた混合物を造粒することで、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
【0090】
[実施例3〜4、比較例6〜7]
ヘンシェルミキサーを用いて、表1及び2に示す種類の液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを、表1及び2に示す割合で混合した後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製「PCM−30型」)を用いて、シリンダー温度を360℃として得られた混合物を造粒することで、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
【0091】
<成形体の製造及び評価>
上記の各実施例及び比較例で得られた液晶ポリエステル組成物から、下記方法で成形体を製造し、この成形体について、ハンダ耐熱性及び耐熱性を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0092】
(成形体のハンダ耐熱性の評価)
射出成形機(日精樹脂工業(株)「PS40E5ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度75mm/秒の条件で、液晶ポリエステル組成物から成形体として、JIS K7113(1/2)号ダンベル試験片(厚さ1.2mm)を製造した。
次いで、得られたダンベル試験片10個を、270℃に加熱したハンダ浴に60秒浸漬し、取出した後、これら10個の前記試験片の表面を目視観察し、表面にブリスターが見られるものの個数を確認して、その個数から前記試験片のハンダ耐熱性を評価した。
【0093】
(成形体の耐熱性の評価)
射出成形機(日精樹脂工業(株)「PS40E5ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度60mm/秒の条件で、液晶ポリエステル組成物から成形体として、幅6.4mm、長さ127mm、厚さ12.7mmの棒状試験片を製造した。
次いで、得られた棒状試験片について、ASTM D648に従って、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分で荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
【0094】
【表1】


【0095】
【表2】


【0096】
上記結果から明らかなように、実施例1〜5では、液晶ポリエステル組成物において、板状無機フィラーとして板状無機フィラー(F1)、(F2)又は(F10)を用いたことにより、得られた成形体は、ハンダ耐熱性が高く、高温条件下でのブリスターの発生が抑制されていた。また、これら成形体は耐熱性も高く、成形体として特に好ましい特性を有していた。
なお、液晶ポリエステル(L1)及び(L2)、並びに液晶ポリエステル(L3)及び(L4)は、どちらも上述の液晶ポリエステル(A)及び(B)の関係にあるが、液晶ポリエステル(L3)及び(L4)の方が、液晶ポリエステル(L1)及び(L2)よりも好ましい組み合わせであり、実施例3及び4の方が、実施例1及び2よりも成形体の耐熱性に優れていた。
【0097】
これに対して、比較例1〜7では、得られた成形体のハンダ耐熱性が低かった。より具体的には、以下のとおりである。
比較例1〜3では、液晶ポリエステル組成物において、実施例1及び2と同じ液晶ポリエステルを用いているにも関わらず、板状無機フィラーとして板状無機フィラー(F3)、(F4)又は(F5)を用いたことにより、得られた成形体はハンダ耐熱性が実施例1及び2よりも劣っていた。また、比較例1及び2では、実施例1及び2よりも、成形体の耐熱性も劣っていた。板状無機フィラー(F3)及び(F4)は粒径D90が小さ過ぎ、板状無機フィラー(F5)は粒径D90が大き過ぎたと推測される。
【0098】
比較例4及び5では、液晶ポリエステル組成物において、実施例1及び2と同じ液晶ポリエステルを用いているにも関わらず、板状無機フィラーとして板状無機フィラー(F6)又は(F7)を用いたことにより、得られた成形体はハンダ耐熱性が実施例1及び2よりも劣っていた。板状無機フィラー(F6)及び(F7)は、水分散液のpHが高過ぎたと推測される。
【0099】
比較例7では、液晶ポリエステル組成物において、実施例3及び4と同じ液晶ポリエステルを用いているにも関わらず、板状無機フィラーとして板状無機フィラー(F9)を用いたことにより、得られた成形体はハンダ耐熱性及び耐熱性が実施例3及び4よりも劣っていた。板状無機フィラー(F9)は、水分散液のpHが低過ぎたと推測される。
【0100】
比較例6では、液晶ポリエステル組成物において、実施例3及び4と同じ液晶ポリエステルを用いているにも関わらず、板状無機フィラーとして板状無機フィラー(F8)を用いたことにより、得られた成形体はハンダ耐熱性及び耐熱性が実施例3及び4よりも劣っていた。板状無機フィラー(F8)は、粒径D90が小さ過ぎ、水分散液のpHが低過ぎたと推測される。
【0101】
ただし、比較例6及び7では、比較例1〜5よりも成形体の耐熱性に優れており、これは、液晶ポリエステル(L1)及び(L2)ではなく、液晶ポリエステル(L3)及び(L4)の組み合わせを選択したことが原因であることを示唆している。
【0102】
<コネクターの製造>
[実施例5]
実施例1で得られた液晶ポリエステル組成物を120℃で12時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業(株)「PS40E5ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃の条件で射出成形することにより、図1に示すコネクターを製造した。このコネクターは、上述のDが6mm、LXが1.1mm、LYが0.8mm、T1が0.8mm、T2が0.5mm、T3が0.4mmのものである。得られたコネクターは、上記の実施例1〜5の成形体と同様に、ハンダ耐熱性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、電気・電子部品、特にコネクター等の、耐熱性が高いことが求められる成形体に利用可能である。」

2 各証拠に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヒドロキシカルボン酸を含む原料モノマーをイミダゾール化合物の存在下に重合させて得られた液晶性ポリエステルと、該液晶性ポリエステル100重量部に対して、白雲母からなり、体積平均粒径40μm以下且つ比表面積6m2/g以下のマイカ15〜100重量部とを含有することを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
・・・
【請求項5】
前記液晶性ポリエステルの流動開始温度が270〜400℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記液晶性ポリエステルが複数種の液晶性ポリエステルを含む液晶性ポリエステル混合物であり、該複数種の液晶性ポリエステルのうち、最も流動開始温度の高い第1の液晶性ポリエステルの流動開始温度が300〜400℃の範囲であり、最も流動開始温度の低い第2の液晶性ポリエステルの流動開始温度が260〜350℃の範囲であり、該第1の液晶性ポリエステル100重量部に対して、該第2の液晶性ポリエステル10〜150重量部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1の液晶性ポリエステルの流動開始温度から前記第2の液晶性ポリエステルの流動開始温度を引いた値が20〜60℃の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするコネクター。
【請求項9】
肉厚0.1mm以下の薄肉部を有することを特徴とする請求項8に記載のコネクター。
【請求項10】
芳香族ヒドロキシカルボン酸を含む原料モノマーをイミダゾール化合物の存在下に重合させて得られた液晶性ポリエステルと、該液晶性ポリエステル100重量部に対して、白雲母からなり、体積平均粒径40μm以下且つ比表面積6m2/g以下のマイカ15〜100重量部とを溶融混合することを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。」

(甲1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品製造用の成形材料として有用な液晶性ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いてなる電子部品、特にコネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステルは、優れた溶融流動性を有することから、薄肉部を有する成形体、特に薄肉部を有し、複雑な形状を有するコネクター等の電子部品を製造するための成形材料として使用されている。また、該電子部品の機械強度等の特性を向上させるために、液晶性ポリエステルに繊維状充填剤(ガラス繊維など)や板状充填剤(タルクなど)を配合してなる液晶性ポリエステル樹脂組成物も、電子部品製造用の成形材料として種々検討されている。
【0003】
ところで近年、電子部品の端子形成等に関わる表面実装技術の進展や、電子部品が使用されるモバイル機器の軽薄短小化の流れに伴って、該電子部品は、その肉厚をより薄くすること(薄肉化)が求められ、形状もより複雑になってきている。該電子部品の中でもコネクター、特に長尺状コネクターは、一層薄肉化の要求が高くなってきている。しかしながら、このような長尺状コネクターとして、肉厚が極めて薄い薄肉部を有するものを得ようとする場合や、寸法が小さいものを得ようとする場合、得られたコネクターの長尺方向に反りが発生しやすいという問題がある。かかる問題を解決するため、例えば特許文献1には、特定の触媒の存在下で製造された液晶性ポリエステルを含む樹脂組成物を成形して、コネクターを製造することが開示されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されている樹脂組成物は、複雑な形状のコネクターに成形するうえで十分な溶融流動性を有しつつ、その成形により、反りが小さいコネクターを与えることができる。しかしながら、益々薄肉化が進み、形状がより複雑化しているコネクターの製造においては、成形材料がさらに良好な溶融流動性を有し、得られるコネクターにおいて反りの発生をより一層抑制することが求められている。また、得られるコネクターの表面実装プロセスにおけるハンダ処理に対する耐熱性(耐ハンダ性)の一層の改良も求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、肉厚0.1mm以下という超薄肉部を有するコネクターに成形するうえでも十分な溶融流動性を有し、その成形により、十分な耐ハンダ性を有しつつ、反りの発生が十分抑制されたコネクターを与えうる液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供することにあり、そして、当該液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いて、反りの発生が十分抑制されたコネクターを提供することにある。
・・・
【発明の効果】
【0028】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、その成形により、十分な耐ハンダ性を有しつつ、反りの発生が十分抑制されたコネクター等の電子部品を与えることができる。また、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、超薄肉部を有していたり、形状が複雑であったりするコネクターに成形するうえでも、十分な溶融流動性を有する。したがって、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、今後益々薄肉化や形状複雑化が進む電子部品、特にコネクターを製造するための成形材料として特に有用であり、産業上の価値は極めて大きいものである。」

(甲1c)「【0031】
本発明で使用する液晶性ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特徴を有する。そして、本発明で使用する液晶性ポリエステルは、イミダゾール化合物の存在下に原料モノマーを重合させて得られたものであり、その原料モノマーとして芳香族ヒドロキシカルボン酸を必須とする。このような芳香族ヒドロキシカルボン酸を原料モノマーとする液晶性ポリエステルの例としては、以下の(P1)〜(P3)が挙げられる。
・・・
【0073】
かくして得られる液晶性ポリエステルは、その流動開始温度が270〜400℃の範囲であることが好ましく、280〜380℃の範囲であることがより好ましい。該流動開始温度が、このような範囲である液晶性ポリエステルを使用すると、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形体(電子部品)の耐ハンダ性をより良好にすることができる。また、該液晶性ポリエステル樹脂組成物から成形体を得る際の溶融成形において、液晶性ポリエステルが熱劣化するという不都合を良好に回避することができる。
【0074】
なお、ここでいう流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において、4℃/分の昇温速度で液晶性ポリエステルの加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48,000ポイズ)を示す温度を意味するものであり、液晶性ポリエステルの分子量の目安として当業者には周知のものである(小出直之編,「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」,95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行)。
・・・
【0080】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性をさらに一層良好にして、得られる成形体、特に長尺状コネクターの反りを十分抑制できる点で、互いに異なる流動開始温度を有する液晶性ポリエステルを2種含有する液晶性ポリエステル混合物を使用することが好ましい。このような流動開始温度の異なる液晶性ポリエステルの組合せとしては、最も流動開始温度の高い第1の液晶性ポリエステルの流動開始温度が300〜400℃の範囲であり、最も流動開始温度の低い第2の液晶性ポリエステルの流動開始温度が260〜350℃の範囲である組合せが好ましい。該第1の液晶性ポリエステルの流動開始温度は310〜360℃の範囲であることがより好ましい。一方、該第2の液晶性ポリエステルの流動開始温度は270〜320℃の範囲であることがより好ましい。また、該液晶性ポリエステル混合物において、該第1の液晶性ポリエステル100重量部に対して、該第2の液晶性ポリエステルの含有量が10〜150重量部であることが好ましく、60〜100重量部であることがより好ましい。なお、流動開始温度の定義は上述したとおりである。
【0081】
前記第1の液晶性ポリエステルの流動開始温度があまり低いと、得られる成形体の耐ハンダ性が不十分となることがあり、あまり高いと、液晶性ポリエステル樹脂組成物を溶融成形する際、その効率が低下する傾向にあり、該液晶性ポリエステル樹脂組成物の成形加工が困難となることがある。前記第2の液晶性ポリエステルの流動開始温度があまり低いと、得られる成形体の耐ハンダ性が不十分となることがあり、あまり高いと、やはり溶融成形に係る成形加工が比較的困難になる傾向がある。
【0082】
また、前記第1の液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度から前記第2の液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度を引いた値は、20〜60℃の範囲であることが好ましい。この値(差)があまり小さいと、液晶性ポリエステル樹脂混合物自体の溶融流動性が低下し易くなり、結果として液晶性ポリエステル樹脂混合物の溶融流動性が不十分となるおそれがある。一方、この値(差)があまり大きいと、成形加工時に、該第2の液晶性ポリエステルが劣化しやすくなる。
・・・
【0086】
前記液晶性ポリエステル混合物は、上述の第1の液晶性ポリエステル及び第2の液晶性ポリエステルを含んでいればよく、その他の液晶性ポリエステルを含有することもできるが、実質的に第1の液晶性ポリエステル及び第2の液晶性ポリエステルからなる液晶性ポリエステル混合物が好適である。」

(甲1d)「【0087】
本発明で使用するマイカは、アルカリ金属を含有するアルミノ珪酸塩であり、白雲母からなるものであり、50重量%以上が白雲母であることが好ましく、80重量%以上が白雲母であることがより好ましく、実質的に白雲母のみからなることがさらに好ましい。また、本発明で使用するマイカの体積平均粒径は40μm以下であり、25μm以下であることが好ましい。ここでいう体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した値である。このような体積平均粒径を有するマイカは、液晶性ポリエステルとの混和性が良好になって、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性をさらに良好にすることができる。
【0088】
また、該マイカは、その比表面積が6m2/g以下である。この比表面積は、4m2/g以下であることがより好ましい。ここでいう比表面積は、BET比表面積測定により求められるものである。比表面積が6m2/gを超えるマイカを使用すると、液晶性ポリエステル樹脂組成物を比較的高温条件で溶融成形する際、液晶性ポリエステル樹脂組成物に含有されている液晶性ポリエステルの加水分解を助長するおそれがある。そして、このように液晶性ポリエステルの加水分解が生じた場合、得られる成形体の耐ハンダ性が低下し易いという不都合がある。一般に、マイカの体積平均粒径が大きくなるほど、マイカの比表面積が小さくなる傾向があるので、前記ような好適な比表面積を満たすように、好適な体積平均粒径のマイカが選択される。
【0089】
前記白雲母の化学式は、一般にK2O・3Al2O3・6SiO2・2H2Oとなる。本技術分野で使用されるマイカとしては、通常、金雲母又は白雲母からなるものが知られている。本発明者等は、金雲母からなるマイカを用いた場合、その体積平均粒径を40μm以下にし、その比表面積を6m2/g以下にしたとしても、これを含む液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して、例えば超薄肉部を有する長尺状コネクターを製造する場合、該長尺状コネクターの反りの発生が十分には抑制されにくいことを見出している。また、このような金雲母からなるマイカの使用は、該液晶性ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性を低下させやすいことも見出している。
【0090】
本発明に使用するマイカを上述の液晶性ポリエステルと溶融混合することで、前記液晶性ポリエステル樹脂組成物をペレット状で得る場合、この溶融混合する前のマイカの付着水は、0.3重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以下であることがより好ましい。ここでいうマイカの付着水は、加熱乾式水分計により測定される値である。該マイカの付着水があまり多いと、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物を、比較的高温条件で溶融混合してペレット状にする際、この付着水の影響によって、該液晶性ポリエステル樹脂組成物に含有されている液晶性ポリエステルの加水分解を助長するおそれがある。該マイカの比表面積を6m2/g以下にすることにより、付着水を低減することも可能となる。」

(甲1e)「【0091】
<その他の成分>
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物には、前記マイカ以外の充填剤や添加剤を含有させることもできる。得られる成形体の機械強度等を改善する点では、該充填剤としては繊維状充填剤が好ましく、無機材料からなる繊維状充填剤(繊維状無機充填剤)がよりに好ましい。
・・・
【0094】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物に含まれうる添加剤としては、例えば、液晶性ポリエステル以外の樹脂や当技術分野で周知の添加剤が挙げられる。液晶性ポリエステル以外の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。また、当技術分野で周知の添加剤としては、例えば、金属石鹸類等の離型改良剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤が挙げられる。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤も挙げられる。これらの添加剤も前記繊維状無機充填剤と同様に、本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物の優れた溶融流動性を極端に損なわないようにして、その種類及び使用量が決定される。
【0095】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、上述のように、液晶性ポリエステルにマイカを配合してなるものであり、前記液晶性ポリエステル100重量部に対して、前記マイカの配合量は、15〜100重量部であり、25〜80重量部であることが好ましい。前記マイカの配合量が15重量部以上であれば、得られる成形体、特に長尺状コネクターの反りの発生が十分抑制され、一方、前記マイカの配合量が100重量部以下であれば、溶融成形時の溶融流動性が良好となり、成形がより容易になる。また、前記液晶性ポリエステルに対する前記マイカの配合量がこのような範囲である液晶性ポリエステル樹脂組成物は、特に長尺状コネクターに成形しようとする場合、このコネクターの耐熱性を良好にすることができるので、実用的な耐ハンダ性の成形体を得る点でも有利である。なお、前記液晶性ポリエステルとして前記液晶性ポリエステル混合物を用いる場合、この液晶性ポリエステル混合物100重量部に対して、前記マイカを15〜100重量部、好ましくは25〜80重量部、配合すればよい。」

(甲1f)「【実施例】
【0098】
以下、本発明の実施例を示す。なお、マイカの物性は、以下の(1)〜(3)の方法により測定し、得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物は、以下の(4)〜(6)の方法により評価した。
【0099】
(1)体積平均粒径
マスターサイザー2000(シスメックス(株))にて測定した。
【0100】
(2)比表面積
Hmmodel−1208(Mountech)にて測定した。
【0101】
(3)付着水
加熱乾式水分計((株)エー・アンド・デイ)にて測定した。
【0102】
(4)薄肉流動長(溶融流動性)
液晶性ポリエステル樹脂組成物を、図2に示す金型(0.3mmt)を装着した射出成形機(日精樹脂工業(株)「PS10E1ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度60%で成形した。取り出した成形品の、4個のキャビティー部の長さを測定し、5個の成形品の測定値をもって薄肉流動長とした。
【0103】
(5)耐ハンダ性
液晶性ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)「PS40E1ASE」)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度60%で、JIS K7113(1/2)号ダンベル試験片(厚さ1.2mm)に成形した。得られた試験片10本を280℃に加熱したハンダ浴に60秒間浸漬し、取り出し後の試験片表面にブリスター(膨れ)が発生しているか否かを観察し、ブリスターが発生した試験片本数からブリスター発生確率を算出した。
【0104】
(6)反り量
液晶性ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)「ES400」)を用いて成形し、図1に示すようなコネクターを得た。射出成形条件は、シリンダー温度350℃、金型温度70℃、射出速度150mm/秒とした。得られたコネクターの底面に対し、長さ方向に0.2mmごと、幅方向に0.5mmごとに、平坦度測定モジュール((株)コアーズ)にて反り量を測定し、その平均値を算出して、リフロー前反り量とした。さらに、同コネクターを、50℃で40秒保持した後、270℃まで昇温し、次いで、同温度で1分間保持した後、50℃まで降温させ、前記と同様にして反り量を測定し、その平均値を算出して、リフロー後反り量とした。なお、前記コネクターは、長さ18mm、幅3.5mm、高さ1mmの、53pin(0.3mmピッチ)FPC用コネクターであり、最小肉厚部は0.1mmである。
【0105】
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応機に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応機内を十分に窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して30分間還流させた。その後、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、プレポリマーを取り出した。得られたプレポリマーを室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した。粉砕後のプレポリマーを、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することで、固相重合を行った。こうして得られた液晶性ポリエステルをLCP1とする。このLCP1は、流動開始温度が327℃であり、モル比率(C1)/(A1)が1/3であり、モル比率((B1)+(B2))/(C1)が1/1であり、モル比率(B2)/(B1)が1/3であった。
【0106】
製造例2
1−メチルイミダゾールを添加しなかったこと以外は、製造例1と同様にしてプレポリマーを得た。このプレポリマーを粗粉砕機で粉砕した後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することで、固相重合を行った。こうして得られた液晶性ポリエステルをLCP2とする。このLCP2は、流動開始温度が324℃であり、モル比率(C1)/(A1)が1/3であり、モル比率((B1)+(B2))/(C1)が1/1であり、モル比率(B2)/(B1)が1/3であった。
【0107】
製造例3
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応機に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応機内を十分に窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して30分間還流させた。その後、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、プレポリマーを取り出した。このプレポリマーを室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した。粉砕後のプレポリマーを窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持することで、固相重合を行った。こうして得られた液晶性ポリエステルをLCP3とする。このLCP3は、流動開始温度が286℃であり、モル比率(C1)/(A1)が1/3であり、モル比率((B1)+(B2))/(C1)が1/1であり、モル比率(B2)/(B1)が2/3であった。
【0108】
製造例4
1−メチルイミダゾールを添加しなかったこと以外は、製造例3と同様にしてプレポリマーを得た。このプレポリマーを粗粉砕機で粉砕した後、粉砕後のプレポリマーを窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から245℃まで0.5時間かけて昇温し、245℃で10時間保持することで、固相重合を行った。こうしてえら得た液晶性ポリエステルをLCP4とする。このLCP4は、流動開始温度が285℃であり、モル比率(C1)/(A1)が1/3であり、モル比率((B1)+(B2))/(C1)が1/1であり、モル比率(B2)/(B1)が2/3であった。
【0109】
マイカとして、以下のものを使用し、その種類及び前記(1)〜(3)の方法による物性測定結果を表1に示した。
(株)山口雲母工業所製「AB−25S」
(株)山口雲母工業所製「A61」
(株)山口雲母工業所製「A21」
クラレトレーディング(株)製「300W」
クラレトレーディング(株)製「325HK」
【0110】
実施例1〜4及び比較例1〜7
表2に示す種類の液晶性ポリエステル及びマイカ(ただし、比較例7では、マイカに代えて、タルク(体積平均粒径16μm、比表面積2.11m2/g、付着水0.13%)及びガラス繊維(比表面積0.38m2/g、付着水0.11%)を使用)を、表2に示す重量割合で混合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30HS」)と水封式真空ポンプ(神港精機(株)「SW−25」)を用いて、シリンダー温度340℃にて、真空ベントで脱気しながら造粒して、液晶性ポリエステル樹脂組成物をペレット状で得た。得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物の前記(4)〜(6)による評価結果を表2に示した。
【0111】
【表1】


【0112】
【表2】




(2)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「

」(第1頁上段〜中段)

(甲4b)


」(第1頁下段)

(甲4c)「

」(第2頁上段)

(3)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「請求の範囲
1.(A)溶融温度が300℃以上である合成樹脂に、
(B)以下の特性を有する板状無機充填材を含有させたことを特徴とする樹脂組成物。
水分散PH:5.5〜8.0。
溶出アル力リ量:Na:30ppm以下、K:40ppm。
最大径a:50μm以下。
厚さb:1.0μm以下。
アスペクト比(a/b):20以上。
2.板状無機充填材が鱗片状雲母であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
3.板状無機充填材の溶出アルカリ量が、さらにCa:10ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
4.(A)溶融温度が300℃以上である合成樹脂に、
(B)分散pHが5.5〜8.0であり、溶出アル力リ量が、Na:30ppm以下、K:40ppm以下である鱗片状無機充填材を含有させたことを特徴とする樹脂組成物。
5. 鱗片状無機充填材が、鱗片状チタン酸塩化合物、マイ力、セリサイト、イライト、タルク、 カオリナイト、モンモリロナイト、ベーマイト、α−アルミナ及びγ−アルミナからなる群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
6.鱗片状無機充填材が、無機酸または有機酸により溶出アルカリ除去処理された、及び/または 600〜1300℃で加熱処理された無機充填材であることを特徴とする請求項4または5に記載の樹脂組成物。
・・・
9.フレキシブルプリント配線板に用いられる耐熱性フィルム成形用の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
10.請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られた耐熱性フィルムを用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。」

(甲5b)「技術分野
本発明は、樹脂組成物及びフレキシブルプリント配線板に関する。詳しくは、機械的強度、耐熱性に優れ、しかも線膨張係数、異方性が低く、樹脂劣化が著しく少なく、樹脂組成物及びこれを用いたフレキシブルプリント配線板に関する。
・・・
熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂の機械的強度や耐熱性等を向上させたり、線膨張係数を低減するため、これらの樹脂に無機充填材を配合することが試みられている。無機充填材としては、例えば、マイ力、タルク、シリカ等の粉末状無機充填材、チタン酸カリウム繊維等の無機繊維等が提案されている。
しかしながら、これらの無機充填材を配合すると、フィルム自体が剛直になり、フレキシビリティーが低くなり、フィルムにすると非常に脆いものとなる。また、所定の線膨張係数が得られないという問題もあった。さらに、上述のように無機充填材から遊離するアルカリ成分などにより樹脂が加水分解され、この結果分子量低下が生じ、樹脂本来の優れた特性が低下したり、フィルムの引き取りができないなどの問題を生じた。
発明の開示
本発明の目的は、機械的強度、耐熱性に優れ かつ線膨張係数、異方性が小さく、樹脂劣化することが少ない、フレキシブルプリント配線板に用いる耐熱性フィルムなどとして適した樹脂組成物及びフレキシブルプリント配線板を提供することにある。」(第1頁第5行〜第3頁第20行)

(甲5c)「本発明において、水分散pHは、試料1gを100mlのビーカーに秤り取り、脱イオン水100mlを加えて10分間マグネチックスターラーで攪拌した後、pHメーターで測定したpH値を意味する。
また、溶出アル力リ量とは試料1gを水100mlに分散させ、室温で1時間攪拌した後、No.5C濾紙にて濾過し、濾液を原子吸光分析法により測定することにより求めたアル力リ量を意味する。
最大径、 厚さ及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡による観察で測定し、算出することができる。
本発明の樹脂組成物は、 例えば、フレキシブルプリント配線板に用いられる耐熱性フィルム成形用の樹脂組成物として好適なものである。
また、本発明のフレキシブルプリント配線板は、本発明の樹脂組成物を成形して得られた耐熱性フィルムを用いたことを特徴としている。
第1の局面における板状無機充填材の具体例としては、上記各物性値及び寸法の規定範囲を満足するものであれば、天然、合成を問わず、公知の板状無機物を使用することができる。例えば、鱗片状または薄片状の雲母、マイ力、セリサイト、イライト、タルク、カオリナイト、モン モリロナイト、スメクタイト、バーミキュライト、板状または薄片状の二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸リチウム、ベーマイト及びアルミナ等を挙げることができる。これらの中でも、 鱗片状または薄片状の雲母、マイ力、板状または薄片状の二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸リチウム、ベーマイト、γ−アルミナ及びα−アルミナ等が好ましく用いられる。
・・・
なお、上記各物性の少なくとも1種が規定範囲を満足しない板状無機物であっても、次に示す様な公知の方法によって、本発明で使用可能な板状無機物とすることができる。水分散pH及び 又は溶出アル力リ量を調整する方法としては、塩酸、硫酸、酢酸、燐酸、亜燐酸等の無機酸や有機酸等の酸で処理をする方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、ミキサ一又はタンブラ一で板状無機物と酸とを混合した後、該板状無機物を十分乾燥させる方法、板状無機物を酸水溶液に浸漬する方法等を挙げることができる。更に、酸処理後は十分に水洗してもよい。また、600℃〜1300℃で焼成処理する方法も有効な方法である。
また、規定の範囲の寸法にするためには、公知の粉砕方法に従って板状無機物を粉砕すればよい。例えば、板状無機物を、ジェットミルの様な気流衝突型粉砕機、ボールミル、アトマイザ一のような媒体攪拌型ミル、ドライマイクロス粉砕型粉砕機 (奈良機械製作所製)、ローラーミル、 アトマィザ一のような衝撃せん断型ミル、その他にナノマイザー(吉田機械興業製)等による粉砕が上げられる。特にジェットミル、媒体攪拌型ミル、ナノマイザーは最大径10μm以下の微粉砕を行う上で望ましい。」(第5頁第4行〜第7頁第7行)

(甲5d)「本発明における溶融温度が300℃以上である合成樹脂の具体例としては、例えば、 ポリアリルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、 液晶ポリマー、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドイミド等を挙げることができる。これらの中でも、ポリアリルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ホリアリレート、芳香族ポリサルフォン、液晶ポリマー、熱可塑 性ポリイミド等が好ましい。これらの合成樹脂は1種を単独で使用でき又は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物には、その好ましい特性を損なわない範囲で、熱安定剤、滑剤、離型剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、難燃剤、潤滑剤、充填剤、補強剤等の一般的な樹脂添加剤の1種または2種以上を配合することができる。これらの中でも、熱安定剤が好ましく用いられる。熱安定剤としては公知のものをいずれも使用することができるが、特に亜燐酸、ヒンダードフェノール、ホスフェイ ト等が好適に用いられる。」(第8頁第13行〜第9頁第1行)

(甲5e)「発明を実施するための最良の形態
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例及び比較例で用いた合成樹脂を以下に示す。
PEEK (ポリエ一テルエーテルケトン):商品名450G、ビクトレックス社製
PEI (ポリエーテルイミド):商品名ウルテム1000−1000、日本GEプラスチックス (株)製
TPI(熱可塑性ポリイミド):商品名オーラム450、三井化学(株)製
PAR(ポリアリレート):商品名U−10、ユニチカ(株)製
LCP (液晶ポリマー)商品名:C950、ポリプラスチックス(株) 製
PEN(ポリエーテルニトリル):商品名出光PEN;RF、出光石油化学(株)製
PAI (ポリアミドイミド):商品名トーロン4203L、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックス(株)製
PES (ポリエーテルサルフォン):商品名レーデルA−200A、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックス(株)製
PI (ポリイミド):商品名ユーピレックスR、宇部興産(株)製
実施例及び比較例において用いた板状無機充填材を以下に示す。
1(当審注:「1」を丸囲みの文字である。)合成雲母:合成雲母(商品名:PDM−9WA、トビー工業(株)製)を1000℃で焼成した後、 分級処理した。
2(当審注:「2」を丸囲みの文字である。)合成雲母:合成雲母(商品名:PDM−GUA、トビー工業(株)製)を1000℃で焼成した後、分級処理した。
3(当審注:「3」を丸囲みの文字である。)合成雲母:商品名:PDM−9WA、トビー工業(株)製。
4(当審注:「4」を丸囲みの文字である。)天然雲母:商品名:Z−20、(株)斐川工業製。
5(当審注:「5」を丸囲みの文字である。)天然雲母: 上記4(当審注:「4」を丸囲みの文字である。)の天然雲母を 0,1NのHNO3の5重量%スラリーにし、2時間攪拌後、濾過、水洗して中性化した。その後120℃で24時間乾燥し、さらに粉砕分級した。
6(当審注:「6」を丸囲みの文字である。)天然雲母:天然雲母(商品名:FSN、三信鉱工(株)製)を700℃で4時間焼成した後、0.1NのHNO3の5重量%スラリーにし、2時間攪拌後、濾過、水洗して中性化した。その後120℃で24時間乾燥し、さらに粉砕分級した。
7(当審注:「1」を丸囲みの文字である。)天然雲母:商品名:HD0313、日塩(株)製。
8(当審注:「8」を丸囲みの文字である。)天然雲母:商品名:A−11、(株) 山口雲母工業所製。
9(当審注:「1」を丸囲みの文字である。)ベーマイト(1):平均粒径0.5μmの水酸化アルミニウム7,8kg、水39kg、硝酸カルシウム1.6kg、水酸化ナトリウム0.4kg、水酸化カルシウム0.12kgを反応原料としてオートクレーブ内に充填し、170℃で7時間反応させた。反応後の生成物を水洗、濾過、乾燥してベーマイトを得た。これをさらに600℃で焼成し、γ−アルミナを得た。
上記1(当審注:「1」を丸囲みの文字である。)〜9(当審注:「9」を丸囲みの文字である。)の板状無機充填材の最大径a(μm)、厚さb(μm) 、アスペクト比a/b、水分散pH及び溶出アル力リ量(ppm)を表に示す。



上記板状無機充填材のうち、1〜3、5〜6及び9が本発明の規定の範囲に入るものであり、 4、7及び8(当審注:「1〜3、5〜6及び9」、「4、7及び8」はそれぞれの数字を丸囲みした文字である。)は比較のためのものである。
(実施例:1〜9及び比較例;1〜7)
表2に示す配合割合(重量部)で、上記の合成樹脂及び無機充填材を二軸混練機(商品名:KTX46、(株)神戸製作所製)に供給し、実施例及び比較例の樹脂組成物のペレットを製造した。得られた組成物について、溶融安定性の指標になる混練トルク、機械的強度の指標になる曲げ強さ及び曲げ弾性率、異方性の指標になる成形収縮率を測定した。結果を表3に示す。
・・・



表3に示すように、本発明に従う実施例の樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物に比べ、3分後と20分後の混練トルクにおける変化が小さく、溶融時に安定していることがわかる。また、機械的強度に優れ、寸法安定性及び耐熱性に優れていることがわかる。
(実施例10〜20及び比較例8〜10)
表4に示す配合割合(重量部)で各成分を配合する以外は、上記実施例と同様にして、樹脂組成物を製造し、その特性を評価した。結果を表5に示す。なお、比較例10は、PEEK単体を用いたものである。




表5から明らかなように、本発明に従う実施例は、比較例の樹脂組成物に比べ、3分後と20分後の混練トルクにおける変化が小さく、溶融時に安定していることがわかる。また、機械的強度に優れ、寸法安定性及び耐熱性に優れていることがわかる。
(実施例21〜31及び比較例11〜16)
表6に示す配合割合(重量部)で、各成分を混合し、上記実施例で用いた二軸混練機に供給しペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレット状の樹脂組成物をコートハンガーダイス押出機で厚み75μmのフィルムに押し出した。得られたフィルムを、以下の評価方法で評価した。
(1)フィルム押出加工性:Tダイより引き落とした溶融樹脂を巻き取り、フィルム加工出来るものを〇、引き取り可能であるが、外観不良か又は気泡発生大のものを△、引き取り不可のものを×とした。
(2)強靭性 (屈曲性):フィルムを180度折り曲げ、フィルムが脆性破断するかどうかを調べた。硝子様に割れるもの及び曲げ部分が一部ないし全部破断するものを×、割れや破断の生じないものを〇とした。
(3)Cuラミカール性:電解Cu箔35μmとフィルムを、210℃×30分、10kg/cm2の圧力下でプレス圧着し、得られたCuラミネ一トフィルムのカール性を測定した。曲率半径 200mm以上を〇、100〜200mmを△、100mm以下を×とした。
(4)引張強さ:JIS K 7311に準拠し、30mm/分の速度で引張試験を行い、引張強さを測定した。
(5)線膨張係数:セイコーインスツルメンツ(株)製、SSC5200Hディスクテーション、TMA120熱機械分析装置を使用し、20〜130℃の線膨張係数を測定した。フィルムの引き取り方向をMD、その直角方向をTDとした。
(6)TMA伸び:TMA120熱機械分析装置を使用し、6×25mmの短冊状試験片に50gの引張荷重下、20〜250℃、5℃/分の 昇温速度で伸び(%)を測定した。
(7)半田耐熱性:260℃ハンダ浴中に10秒間浸漬し、フィルムの 変形を調べた。変形が大のもの×、変形が中のもの△、変形が殆どないものを〇とした。
結果を表 7に示す。




表7に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例の樹脂組成物はフィルム成形性に優れており またこれを成形して得られたフィルムは機械的強度や耐熱性等において優れており、銅箔とのラミネートにおいてもカールし難いものであることがわかる。
(実施例 32〜45)
表8に示す配合割合(重量部)で、各成分を混合する以外は、上記実施例と同様にして本発明の樹脂組成物を製造し、厚み75μmのフィルムを製造してその特性を上記実施例と同様にして評価した。結果を表9に示す。なお、表9には、PI及びPEEK単体の評価結果を併せて示している。




表9に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例の樹脂組成物はフィルム成形性に優れており、またこれを成形して得られたフィルムは機械的強度や耐熱性等において優れており、 銅箔とのラミネートにおいてもカールし難いものであることがわかる。
また、 上記実施例において作製した銅箔とのラミネートフィルムを用いてフレキシブルプリント配線板を製造したところ、 回路信頼性の高いフレキシブルプリント配線板とすることができた。」(第10第11行〜第21頁最終行)

(4)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含み、
前記成分(B)の含有量(質量)が、前記成分(C)及び(D)の合計含有量(質量)よりも多いことを特徴とする液晶ポリエステル組成物。
(A)下記液晶ポリエステル(1)及び(2)のアロイ
(B)アルミナ微粒子
(C)電気絶縁性材料からなる板状フィラー
(D)電気絶縁性材料からなる繊維状フィラー
液晶ポリエステル(1):
p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位(I)と、
ヒドロキノン及び/又は4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位(II)と、
テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する繰返し単位(III)と、
を有し、
前記液晶ポリエステル(1)を構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記繰返し単位(I)を30〜80モル%有し、前記繰返し単位(II)を10〜35モル%有し、前記繰返し単位(III)を10〜35モル%有する。
液晶ポリエステル(2):
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位(I’)と、
ヒドロキノン及び/又は4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位(II’)と、
2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位(III’)と、
2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位(IV’)と、
を有し、
前記液晶ポリエステル(2)を構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記繰返し単位(I’)を40〜74.8モル%有し、前記繰返し単位(II’)を12.5〜30モル%有し、前記繰返し単位(III’)を12.5〜30モル%有し、前記繰返し単位(IV’)を0.2〜15モル%有し、前記繰返し単位(III’)及び(IV’)が[繰返し単位(III’)(モル)/{繰返し単位(III’)+繰返し単位(IV’)}(モル)]≧0.5の関係を満たす。
【請求項2】
前記成分(A)100質量部に対して、前記成分(B)、(C)及び(D)を合計で150質量部以上含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、前記液晶ポリエステル(1)100質量部に対して、前記液晶ポリエステル(2)が25〜70質量部配合されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記成分(B)が、レーザー回折散乱測定により求められた粒径分布が二峰性のアルミナ微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記成分(B)のレーザー回折散乱測定により求められた粒径分布が、
体積平均粒径1〜5μmの範囲内と、
体積平均粒径0.1〜1μmの範囲内と、
にそれぞれ極大値を有する二峰性であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記成分(C)がタルクであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項7】
前記タルクの長軸の体積平均粒径が15μm以上であることを特徴とする請求項6に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【請求項9】
電気・電子部品用であることを特徴とする請求項8に記載の成形体。
【請求項10】
前記電気・電子部品が、電子素子の封止材、インシュレータ、表示装置用反射板、電子素子収納用の筐体及び表面実装部品からなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項9に記載の成形体。」

(甲6b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性及び剛性に優れた成形体、及び該成形体を得るための液晶ポリエステル組成物に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示されている液晶ポリエステル組成物を用いて得られた成形体は、熱伝導性が依然不十分であり、さらに、剛性が低いという問題点があった。また、特許文献2で開示されている液晶ポリエステル組成物を用いて得られた成形体は、高熱伝導性を有するが、剛性が低いという問題点があった。このように成形体の剛性が低くなってしまうのは、高熱伝導率フィラーの充填の影響と考えられ、剛性が低い成形体は、実用に適さないものとなってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性及び剛性に優れた成形体、及び該成形体を得るための液晶ポリエステル組成物を提供することを課題とする。
・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱伝導性及び剛性に優れた成形体、及び該成形体を得るための液晶ポリエステル組成物が提供される。」

(甲6c)「【0013】
[成分(A)]
成分(A)は、液晶ポリエステル(1)と液晶ポリエステル(2)とのアロイである。
・・・
【0024】
液晶ポリエステル(1)は、耐熱性がより向上するという点から、その流動開始温度が280〜420℃であることが好ましく、耐熱性がより向上し且つ成形時の分解劣化がより抑制されるという点から、その流動開始温度が280℃〜390℃であることがより好ましい。
【0025】
液晶ポリエステル(2)は、耐熱性がより向上するという点から、その流動開始温度が300〜400℃であることが好ましく、耐熱性がより向上し且つ成形時の分解劣化がより抑制されるという点から、その流動開始温度が320〜380℃であることがより好ましく、330〜360℃であることがさらに好ましい。
【0026】
ここで流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度である。流動開始温度は、当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0027】
成分(A)において、液晶ポリエステル(1)及び(2)の配合比(質量比)は、好ましくは[液晶ポリエステル(1)]:[液晶ポリエステル(2)]=95:5〜10:90であり、より好ましくは[液晶ポリエステル(1)]:[液晶ポリエステル(2)]=90:10〜50:50である。このような範囲とすることで、得られる成形体は、熱伝導性により優れたものとなる。特に、液晶ポリエステル(1)100質量部に対して、液晶ポリエステル(2)が25〜70質量部配合されてなる成分(A)を用いることで、熱伝導性にさらに優れたものとなる。」

(甲6d)「【0030】
[成分(B)]
(B)アルミナ微粒子(成分(B))は、αアルミナからなる微粒子が好ましく、なかでも酸化アルミニウム(Al2O3)の含有量が95質量%以上であり、体積平均粒径が0.1〜50μmであるものがより好ましい。
・・・
【0035】
[成分(C)]
(C)板状フィラー(成分(C))は、電気絶縁性材料からなり、アスペクト比が5以上のフィラーである。
【0036】
ここで「アスペクト比」とは、フィラー研究会編、「フィラー活用辞典」の第10〜16頁及び第23〜30頁に記載されているとおりであり、板状フィラー1個を見たとき、その平面部の平均直径(D)と平均厚さ(T)との比(D/T)で求められるものである。本発明では、例えば、100個以上の板状フィラーの各々のD/Tを求め、それらを平均化することで求められる値を、前記アスペクト比とすることができる。図3は、板状フィラー1個を模式的に示す斜視図である。板状フィラーの平面部における平均直径(D)と平均厚さ(T)は、本図に示すとおりである(ただし、図3の寸法は見易さのために任意としている)。
(C)板状フィラーは、このアスペクト比が15以上であることが好ましい。
【0037】
(C)板状フィラーは、得られる成形体の電気絶縁性をより向上させるために、体積固有抵抗値が1×1010Ωm以上であることが好ましい。ここで、「体積固有抵抗値」とは、ASTM D257に準拠して測定した値である。
【0038】
(C)板状フィラーは、レーザー回折法により求められた長軸の体積平均粒径が、15μm以上であることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましく、15〜30μmであることがさらに好ましい。体積平均粒径が小さ過ぎると、(C)板状フィラーが成分(A)と混合し難くなる傾向があり、液晶ポリエステル組成物の製造が困難となったり、得られた成形体中で(C)板状フィラーが不均一に存在して、熱伝導性が低下することがある。一方、体積平均粒径が大き過ぎると、得られた成形体の機械特性が低下し易い傾向がある。なお、ここで(C)板状フィラーの「体積平均粒径」とは、マイクロトラック粒度分析計(例えば、日機装社製「SRA」など)を用いて測定されたものであり、具体的には、(C)板状フィラーをエタノールに添加し、超音波洗浄装置を用いて十分に分散させた後、レーザー光線を照射して、その回折(散乱)を測定して求めたものである。
【0039】
(C)板状フィラーの例としては、カオリナイト;タルク;マイカ、絹雲母(セリサイト)、白雲母(マスコバイト)、金雲母(フロゴパイト)等の雲母類;クロライト、モンモリロナイト、ハロサイト等の層状粘土鉱物;ガラスフレーク等が挙げられる。
(C)板状フィラー自体の電気絶縁性及び熱伝導性の点から、(C)板状フィラーは、タルクであることが好ましい。タルクは安価であるという利点も有する。
・・・
【0045】
[成分(D)]
(D)繊維状フィラー(成分(D))は、電気絶縁性材料からなり、無機フィラーであってもよいし、有機フィラーであってもよい。」

(甲6e)「【0049】
[他の成分]
液晶ポリエステル組成物は、前記成分(A)〜(D)以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて他の成分を1種以上含んでいてもよい。
前記他の成分の例としては、フッ素樹脂等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤等の通常の添加剤が挙げられる。
【0050】
液晶ポリエステル組成物の、前記他の成分の含有量は5質量%以下であることが好ましく、液晶ポリエステル組成物は、前記成分(A)〜(D)のみからなるものがより好ましい。
・・・
【0057】
前記成形体は、各種用途に適用できるが、特に熱伝導性及び剛性に優れる点から、電気・電子部品として好適である。なかでも、電子素子の封止材、インシュレータ、表示装置用反射板、電子素子収納用の筐体及び表面実装部品からなる群より選ばれる一種以上として好適である。また、前記表面実装部品としては、コネクターが好適である。」

(甲6f)「【実施例】
【0058】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度は、以下の方法で測定した。
【0059】
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0060】
本実施例で使用した(B)アルミナ微粒子、(C)板状フィラー及び(D)繊維状フィラーは、以下の通りである。また、(B)アルミナ微粒子の体積平均粒径は日機装社製「HRA」を、(C)板状フィラーの体積平均粒径は日機装社製「SRA」を、それぞれ用いて測定した。
【0061】
・(B)アルミナ微粒子
微粒低ソーダアルミナ「ALM−41−01」(住友化学社製):体積平均粒径が1.7μm(レーザー回折散乱測定により求められた粒径分布が、体積平均粒径1.0〜2.0μmの範囲内と、体積平均粒径0.2〜0.4μmの範囲内とに、それぞれ1つずつ極大値を有する二峰性であった。)であり、酸化アルミニウムの含有量が99.9質量%のαアルミナであった。
・(C)板状フィラー
タルク(「タルクX50」(日本タルク社製)):長軸の体積平均粒径が17.4μmであり、アスペクト比が21.2であった。なお、アスペクト比は、電子顕微鏡で厚さが確認できる(断面が確認できる)粒子を選び、その粒子径及び厚さを計測し、[アスペクト比])=[粒子径]/[厚さ]の式により算出した。
・(D)繊維状フィラー
ガラス繊維(「チョップドガラス繊維CS03JAPX−1」(旭ファイバーガラス社製)):数平均繊維径が10μm、数平均繊維長が3mmであった。なお、数平均繊維長及び数平均繊維径は、電子顕微鏡を用い、JIS R3420に準拠して測定した。
【0062】
<液晶ポリエステルの製造>
[製造例1]
(液晶ポリエステル(1)の製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で撹拌しながら30分かけて150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して1時間還流させた。
次いで、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了点としてプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合を行い、液晶ポリエステル(1)を得た。この液晶ポリエステル(1)をLCP1とする。LCP1の流動開始温度は、327℃であった。
【0063】
[製造例2]
(液晶ポリエステル(2)の製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル512.1g(2.75モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸497.2g(2.3モル)、テレフタル酸33.2g(0.2モル)、無水酢酸1179.1(11.5モル)及び触媒として1−メチルイミダゾール0.198gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、この温度(145℃)を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール5.94gをさらに添加した。
次いで、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、3時間30分かけて310℃まで昇温し、この温度(310℃)を2時間10分保持してプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から325℃まで10時間かけて昇温し、この温度(325℃)で12時間保持することにより、固相重合を行い、液晶ポリエステル(2)を得た。この液晶ポリエステル(2)をLCP2とする。LCP2の流動開始温度は、335℃であった。
【0064】
<液晶ポリエステル組成物及び成形体の製造>
[実施例1〜4、比較例1〜2]
(液晶ポリエステル組成物の製造)
製造例1で得られたLCP1、製造例2で得られたLCP2、(B)アルミナ微粒子、(C)板状フィラー及び(D)繊維状フィラーを表1に示す割合で、同方向2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30HS」)に供給し、330℃で溶融混練してペレット化することで、液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。
【0065】
(成形体の製造)
射出成形機(日精樹脂工業社製「UH−1000型」)を用いて、得られた前記ペレットを、シリンダー温度320℃(実施例1〜4、比較例1)又は340℃(比較例2)、金型温度120℃、射出率100cm3/sの条件で射出成形し、以下に示す形状の成形体(1)を得た。
また、射出成形機(日精樹脂工業社製「PS40E5ASE型」)を用いて、前記ペレットを、シリンダー温度320℃(実施例1〜2、比較例1)又は340℃(比較例2)、金型温度120℃、射出率30cm3/sの条件で射出成形し、以下に示す形状の成形体(2)及び(3)を得た。
成形体(1):64mm×64mm×1mm
成形体(2):ASTM4号ダンベル
成形体(3):126mm×12mm×6mm
【0066】
<成形体の評価>
上記各実施例及び比較例で得られた成形体について、下記方法により、熱伝導率、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定し、熱伝導率から熱伝導性を、曲げ弾性率から剛性を、それぞれ評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(熱伝導率の測定)
成形体(1)の厚さ方向について、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工社製「TC−7000」)を用いて、熱拡散率を測定した。また、DSC(PERKIN ELMER社製「DSC7」)を用いて、前記ペレットの比熱を測定した。成形体の比熱は、ペレットの比熱と同じであるため、以下に示す成形体の比熱として、このペレットの比熱を採用した。さらに、成形体(2)について、自動比重測定装置(関東メジャー社製「ASG−320K」)を用い、ASTM D792に準拠して、比重を測定した。そして、成形体の厚さ方向の熱伝導率を、熱拡散率、比熱及び比重の積から求めた([熱伝導率]=[熱拡散率]×[比熱]×[比重])。
【0068】
(曲げ強度及び曲げ弾性率の測定)
成形体(3)について、ASTM D790に準拠して測定した。
【0069】
【表1】


【0070】
上記結果から明らかなように、実施例1〜4の成形体は、熱伝導率が0.9W/m・K以上で、且つ曲げ弾性率が12.0GPa以上であり、熱伝導性及び剛性に優れていた。
これに対して、液晶ポリエステルとしてLCP1のみを用いた比較例1の成形体、及び液晶ポリエステルとしてLCP2のみを用いた比較例2の成形体は、いずれも曲げ弾性率が12.0GPa未満であり、剛性が低く、比較例2の成形体は、熱伝導率が0.9W/m・K未満で、熱伝導性も低かった。」

(5)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(甲7a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】下記に定義される流動温度が310℃〜400℃である液晶ポリエステル(A)と、下記に定義される流動温度が270℃〜370℃である液晶ポリエステル(B)とからなり、液晶ポリエステル(A)の流動温度と液晶ポリエステル(B)の流動温度との差が10〜60℃であり、液晶ポリエステル(A)100重量部に対し、液晶ポリエステル(B)10〜150重量部を配合してなる液晶ポリエステル樹脂組成物に液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)との総量100重量部に対し、繊維状および/または板状の無機充填材を15〜180重量部を配合してなる樹脂組成物。
流動温度:内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、100kg/cm2の荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度。
・・・
【請求項3】繊維状および/または板状の無機充填材が、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、タルクから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】請求項1、2または3に記載の樹脂組成物を用いて成形された成形体。
【請求項5】成形体がコネクターである請求項4記載の成形体。」

(甲7b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた薄肉流動特性を有し、かつ優れた耐熱性、低反り性を有する成形体を与える樹脂組成物、およびそれを用いた成形体に関する。
・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を解決して、薄肉流動性に優れ、かつ優れた耐熱性、低反り性を有する成形体を与える液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【発明を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の流動温度差のある液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)とを特定量配合した液晶ポリエステル樹脂組成物に繊維状および/または板状の無機充填材を特定量配合することにより上記目的が達成される樹脂組成物を得、該組成物を用いることにより優れた耐熱性、低反り性を有し、0.2mm以下の肉厚部を持つ超薄肉成形品を従来よりも容易に得ることができることを見出し本発明に至った。」

(甲7c)「【0006】
【発明の実施の形態】本発明で使用される液晶ポリエステルは、上記に定義される流動温度が310〜400℃である液晶ポリエステル(A)と、270〜370℃である液晶ポリエステル(B)とからなり、さらに、液晶ポリエステル(A)の流動温度と液晶ポリエステル(B)の流動温度との差が10〜60℃、好ましくは20〜60℃である。流動温度の差が10℃未満である場合、目的とする薄肉流動性の向上効果が不十分となり好ましくない。また、流動温度の差が60℃より大きい場合、液晶ポリエステル(B)の熱分解等により成形加工が困難となり良好な成形品を得ることができなくなるため好ましくない。本発明で使用される液晶ポリエステル(A)および(B)は、それぞれ前記の構造単位(I),(II),(III),(IV)からなり、II/Iのモル比率が0.2〜1.0、(III+IV)/IIのモル比率が0.9〜1.1、IV/IIIのモル比率が0〜1であるものが好ましい。これらの液晶ポリエステルについては、例えば特公昭47ー47870号公報に記載されている。また、本発明で使用される液晶ポリエステル(A)のIV/IIIのモル比率(α)と、液晶ポリエステル( B )のIV/IIIのモル比率(β)との比、モル比率(α)/モル比率(β)は、好ましくは0.1〜0.5、さらに好ましくは0.3〜0.5である。」

(甲7d)「【0008】本発明で用いられる繊維状の無機充填材とは、平均繊維径が5〜20μmであるものが好ましく、5〜15μmであるものがさらに好ましい。・・・
【0009】本発明で用いられる板状の無機充填材とは、化学結合によって平面層状の結晶構造を持ち、各層間は弱いファンデルワールス力で結合しているため、へき開が生じやすく、粉砕時に粒子が板状になる無機物である。本発明で使用される板状の無機充填材の平均粒径は、1〜20μm、好ましくは5〜20μmのものである。この例としては、タルク、マイカ、グラファイトなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。平均粒径が1μm以下の場合、目的とする流動性、低反り性、耐熱性の向上効果が不十分となり好ましくない。また、平均粒径が20μmより大きい場合、流動性、低反り性、耐熱性の向上効果は、20μm以下のものとさほど変わらないが、成形品の外観、成形品中での均一分散性などの面から好ましくない。これらのうち、ガラス繊維、炭素繊維、タルクであることが好ましい。これらは、単独で、または1種以上を同時に用いることができる。
【0010】本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、繊維状および/または板状の無機充填材の配合割合は、液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)との総量に対し、15〜180重量部であり、好ましくは20〜150重量部である。繊維状および/または板状の無機充填材の配合割合が15重量部未満の場合、薄肉流動性の改良効果はあるものの、低反り性と耐熱性の向上効果が不十分となり好ましくない。また、繊維状、および/または板状の無機充填材の配合割合が180重量部よりも多い場合は、薄肉流動性の改良効果が不十分となるうえ、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなるため好ましくない。なお、本発明で用いられる液晶ポリエステル樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲でホウ酸アルミニウムウィスカーなどの針状の補強材;ガラスビーズなどの無機充填材;フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。また、たとえば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを1種以上添加することも可能である。」

(甲7e)「【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の物性は次の方法で測定した。
・・・
【0014】実施例1〜3
液晶ポリエステル(A)にパラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシジフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸のモル比が60:20:15:5であり、前述の方法で定義された流動温度が320℃であるLCP1を、液晶ポリエステル(B)にパラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシジフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸のモル比が60:20:10:10であり、前述の方法で定義された流動温度が280℃であるLCP2を用い、これらとガラス繊維(旭ファイバーグラス(株)製、商品名CS03JAPx−1)とを表1に示す組成でヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度330℃で造粒し、樹脂組成物を得た。この場合、液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)との流動温度の差は、40℃である。これらの樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃でASTM4号引張ダンベル、棒状試験片、JIS K7113(1/2)号試験片、およびコネクターを成形した。これらの試験片を用い、引張強度、曲げ弾性率、TDUL、ハンダ耐熱性、および反り量の測定を行った。また、前述の方法でシリンダー温度を350℃、金型温度を130℃として、薄肉流動長の測定を行った。結果を表1に示す。
【0015】比較例1、2
同様にして、LCP2を含まない樹脂組成物(比較例1)、LCP2が233重量部である樹脂組成物(比較例2)について、同様の測定を行った。結果を表1に示す。LCP2含む組成物(実施例1〜3)は、LCP2を含まない組成物(比較例1)に比べ、薄肉流動性に優れ、LCP2を含まない場合と同様の優れた耐熱性、低反り性を有することがわかる。LCP2を含まない組成物(比較例1)では、コネクターの薄肉部の一部にショートショットが観測され、流動性が不十分であった。また、LCP2を233重量部含む液晶ポリエステル樹脂組成物(比較例2)は、機械物性の低下、耐熱性の低下が大きかった。
【0016】比較例3
LCP1とLCP2に、ガラス繊維を加えないこと以外は実施例1と同様な方法で実験を行った。結果を表1に示す。ガラス繊維を加えない場合、反り量が大きく、使用に耐えなかった。
【0017】比較例4
液晶ポリエステル(A)にパラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシジフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸のモル比が60:20:18:2であり、前述の方法で定義された流動温度が360℃であるLCP3を、液晶ポリエステル(B)にLCP2を用いる以外は実施例1と同様な方法で実験を行った。結果を表1に示す。この場合、液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)との流動温度の差は、80℃である。この場合、350℃では組成物が金型に十分流動せず、また、370℃では組成物の熱分解のため成形ができなかった。
【0018】実施例4〜5
LCP1とLCP2に、ガラス繊維とタルク(日本タルク(株)製、商品名X−50)を加える以外は実施例1と同様な方法で実験を行った。結果を表1に示す。LCP1、LCP2、ガラス繊維、およびタルクからなる樹脂組成物は、薄肉流動性に優れ、優れた耐熱性、低反り性を有することがわかる。
【0019】実施例6〜7、比較例5
液晶ポリエステル(A)にLCP3、液晶ポリエステル(B)にLCP1を用い、成形温度を370℃とする以外は、実施例1と同様な方法で実験を行った。結果を表1に示す。この場合、液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)との流動温度の差は、40℃である。LCP3、LCP1、およびガラス繊維からなる液晶ポリエステル樹脂組成物は、LCP3とガラス繊維のみからなる液晶ポリエステル樹脂組成物(比較例6)に比べ、薄肉流動性に優れ、LCP1を含まない場合と同様の優れた機械物性、耐熱性を有することがわかる。
【0020】
【表1】



(6)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、繊維状無機充填材を10〜100重量部および板状無機充填材を10〜100重量部を配合してなる、剪断速度が1000sec-1、かつ流動温度+40℃の温度における見かけの溶融粘度が10〜100Pa・secである液晶ポリエステル樹脂組成物であって、液晶ポリエステル樹脂が下記A1式で表される繰り返し構造単位を少なくとも30モル%含み、流動温度が270℃〜400℃であり、繊維状無機充填材の平均繊維径が0.1〜10μmかつ数平均繊維長が1〜100μmであり、板状無機充填材の平均粒径が5〜20μmであり、繊維状無機充填材の配合量(F)と板状無機充填材の配合量(P)との比(F/P)が、0<F/P<0.5または1.6<F/P<10であることを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。
・・・
【請求項2】
液晶ポリエステル樹脂が、液晶ポリエステル樹脂(A)100重量部および液晶ポリエステル樹脂(B)10〜150重量部からなり、液晶ポリエステル樹脂(A)の流動温度が310℃〜400℃であり、液晶ポリエステル樹脂(B)の流動温度が270℃〜370℃であり、かつ液晶ポリエステル樹脂(A)の流動温度は液晶ポリエステル樹脂(B)の流動温度より高く、その差が10〜60℃であることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
・・・
【請求項4】
繊維状無機充填材が、ガラス繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
板状無機充填材が、マイカ、タルクから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる最小肉厚が0.2mm以下である成形体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる最小肉厚が0.2mm以下であるコネクター。」

(甲8b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物、およびそれを用いた成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた耐熱性を維持したまま、薄肉流動特性に優れ、低反り性を有する成形体を製造し得る液晶ポリエステル樹脂組成物、およびそれを用いた成形体に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた耐熱性を維持したまま、薄肉流動性に優れ、低反り性を有する成形体を製造し得る液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記したような問題点がない液晶ポリエステル樹脂組成物を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の流動温度を有する液晶ポリエステル樹脂に、特定の繊維状および板状の無機充填材を、特定の重量比で配合してなる液晶ポリエステル樹脂組成物が、優れた耐熱性を維持したまま、薄肉流動性に優れ、低反り性を有する成形体を製造し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いることにより、耐熱性を維持したまま、薄肉流動性に優れ、低反り性を有する成形体を得ることが可能となる。よって、従来よりも容易に0.2mm以下の薄肉部を持つ超薄肉成形品、とりわけコネクターを効率よく製造することが可能となる。」

(甲8c)「【0010】
本発明で使用される液晶ポリエステル樹脂は、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、(1)1種または2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸からなるもの、(2)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールの組み合わせからなるもの、(4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させたもの、等が挙げられ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。
・・・
【0022】
本発明で使用される液晶ポリエステル樹脂は、流動温度が270〜400℃である液晶ポリエステル樹脂であり、流動温度が280〜380℃である液晶ポリエステル樹脂であることが好ましい。液晶ポリエステルの流動温度が270℃未満である場合、耐熱性が不十分となる。また、流動温度が400℃より大きい場合、液晶ポリエステルの熱分解等により成形加工が困難となり良好な成形品を得ることができない。
【0023】
また、本発明で使用される液晶ポリエステル樹脂は、流動温度が310℃〜400℃である液晶ポリエステル樹脂(A)と、流動温度が270℃〜370℃である液晶ポリエステル樹脂(B)との混合物であってもよい。この場合、液晶ポリエステル樹脂(A)の流動温度は液晶ポリエステル樹脂(B)の流動温度よりも高く、液晶ポリエステル樹脂(A)の流動温度と液晶ポリエステル樹脂(B)の流動温度との差が10〜60℃が好ましく、20〜60℃であることがより好ましい。流動温度の差が10℃未満である場合、目的とする低ソリ性、薄肉流動性などの改良効果が得られない傾向がある。また、流動温度の差が60℃より大きい場合、液晶ポリエステル樹脂(B)の熱分解等により成形加工が困難となり良好な成形品を得ることができなくなる傾向がある。
・・・
【0025】
上述の液晶ポリエステル樹脂(A)と液晶ポリエステル樹脂(B)とを混合して用いる場合、その配合比率は、液晶ポリエステル(A)100重量部に対し、液晶ポリエステル(B)10〜150重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜100重量部である。液晶ポリエステル(B)の配合比率が10重量部未満の場合、目的とする低ソリ性、薄肉流動性などの改良効果が得られない傾向があり、また、液晶ポリエステル(B)の配合比率が150重量部よりも大きい場合、耐熱性が低下したり、機械物性が低下する傾向がある。」

(甲8d)「【0026】
本発明で用いられる繊維状の無機充填材は、平均繊維径が0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜10μmである。平均繊維径が0.1μm未満である場合、目的とする低反り性と耐熱性の向上効果が不十分となる。また、平均繊維径が10μmより大きい場合、流動性と低反り性の向上効果が不十分となる。また、数平均繊維長は1〜100μmであり、好ましくは5〜90μmである。数平均繊維長が1μm未満である場合、目的とする耐熱性、力学的強度の向上効果が不十分となる。また、平均繊維長が100μmより大きい場合、低ソリ性の向上効果が低下し、成形品の外観、成形品中での均一分散性が悪くなる。
・・・
【0028】
本発明で用いられる板状の無機充填材とは、化学結合によって平面層状の結晶構造を持ち、各層間は弱いファンデルワールス力で結合しているため、へき開が生じやすく、粉砕時に粒子が板状になる無機物である。ここで、板状とは、長径と厚みとの比が2以上であることを意味する。
【0029】
本発明で使用される板状の無機充填材の平均粒径は、5〜20μmであり、好ましくは10〜20μmである。平均粒径が5μm未満の場合、目的とする低反り性、耐熱性の向上効果が不十分となる。また、平均粒径が20μmより大きい場合、成形品の外観、成形品中での均一分散性などの問題が生じる。
【0030】
板状の無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、カオリンクレー、ドロマイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、タルク、マイカが好ましく使用される。これらは、単独で用いても、2種以上を同時に使用してもよい。
【0031】
繊維状の無機充填材の配合割合は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、10〜100重量部であり、好ましくは10〜70重量部である。また、板状の無機充填材の配合割合は、液晶ポリエステル100重量部に対し、10〜100重量部であり、好ましくは10〜70重量部である。繊維状または板状の無機充填材の配合割合が10重量部未満の場合、薄肉流動性の改良効果はあるものの、低反り性と耐熱性の向上効果が不十分となる。また、繊維状または板状の無機充填材の配合割合が100重量部よりも多い場合は、薄肉流動性の改良効果が不十分となるうえ、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる。
【0032】
該繊維状無機充填材の配合量(F)と該板状無機充填材の配合量(P)との比(F/P)は0<F/P<0.5、もしくは1.6<F/P<10であり、好ましくは0.1<F/P<0.5、もしくは1.6<F/P<6である。該繊維状無機充填材の配合量(F)と該板状無機充填材の配合量(P)との比(F/P)が0.5≦F/P≦1.6である場合、およびF/P≧10である場合、低ソリ性と溶融粘度の安定性とのバランスが悪くなる。
・・・
【0034】
なお、本発明で用いられる液晶ポリエステル樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲でガラスビーズなどの無機充填材;フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を添加してもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを添加してもよい。」

(甲8e)「【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明が実施例により限定されるものではないことは言うまでもない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
・・・
【0047】
実施例1
液晶ポリエステル樹脂として、パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシジフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸のモル比が60:20:15:5であり、前述の方法で定義された流動温度が321℃であるLCP1と、パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシジフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸のモル比が60:20:12:8であり、前述の方法で定義された流動温度が290℃であるLCP2とを60/40の比率で混合したものを用い、これに、繊維状無機充填材として、GF1(ガラス繊維:セントラル硝子(株)製EFDE50−01、数平均繊維長50μm、数平均繊維径6μm)、板状無機充填材として、タルク1(タルク:日本タルク(株)製X−50、平均粒径14.5μm)とを表1に示す組成でヘンシェルミキサーで混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度330℃で造粒し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0048】
これらの液晶ポリエステル樹脂組成物を120℃で12時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃で64mm×64mm×3mm平板試験片、ASTM4号引張ダンベル、棒状試験片、JIS K7113(1/2)号試験片、およびコネクターを成形した。これらの試験片を用い、成形収縮率および異方性比、引張強度、曲げ弾性率、TDUL、およびソリ量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
比較例1、2
液晶ポリエステルとしてLCP1、繊維状無機充填材としてGF3(ガラス繊維:セントラル硝子(株)製EFH75−01、数平均繊維長75μm、数平均繊維径11μm)、また板状無機充填材を含まない樹脂組成物(比較例1)、および液晶ポリエステルとしてLCP1、板状無機充填材にタルク1、また繊維状無機充填材を含まない樹脂組成物(比較例2)を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
実施例2,3
繊維状無機充填材として、GF1に替えてウィスカ1(ホウ酸アルミニウムウィスカ:四国化成工業(株)製アルボレックスY、数平均繊維長20μm、数平均繊維径0.7μm)を用いたもの(実施例2)、繊維状無機充填材としてGF1に替えてGF2(ガラス繊維:セントラル硝子(株)製EFDE90−01、数平均繊維長90μm、数平均繊維径6μm)を用いたもの(実施例3)について、実施例1と同様にして試験片を作製し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
液晶ポリエステル樹脂としてLCP1、繊維状無機充填材としてGF2、板状無機充填材をタルク2(タルク:日本タルク(株)製Sタルク、平均粒径10μm)に代えた(繊維状無機充填材/板状無機充填材との比=1.5)以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、測定を行なった。結果を表1に示す。
【0052】
比較例4
繊維状無機充填材としてGF4(ガラス繊維:旭ガラスファイバー(株)製CS03JAPX−1、数平均繊維長3mm、数平均繊維径10μm)、板状無機充填材としてタルク1を用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、測定を行なった。結果を表1に示す。
【0053】
比較例5
液晶ポリエステル樹脂として、パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシジフェニル:ハイドロキノン:テレフタル酸:イソフタル酸のモル比が40:6.9:23.1:16.4:13.6であり、前述の方法で定義された流動温度が308℃であるLCP3を用い、繊維状無機充填材としてGF2、板状無機充填材としてタルク1を用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、測定を行なった。結果を表1に示す。
【0054】
実施例1は、比較例1と比較して、異方性が強い(異方性比が小さい)にもかかわらずソリ量が小さく、優れた力学特性、耐熱性を有することがわかる。一方、比較例1はソリ量が0.05mmとなり、実用に耐えない。また、比較例2は実施例1と同様、異方性を有するが、強度が低く、ソリ量測定のためのコネクターが成形できず、実用に耐えない。実施例2,3は、実施例1と同様、優れた低ソリ性、力学特性、耐熱性を有する。比較例3は、ソリ量が0.05mmとなり、実用に耐えない。比較例4は、ソリ量が0.06mmとなり、実用に耐えない。比較例5は、ソリ量が0.05mmとなり、実用に耐えない。
【0055】
【表1】




(7)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

(甲9a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルと、セラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料とを含み、前記複合材料は、その10質量倍の水と混合したとき、水相のpHが9.0以下である混合液を与える複合材料である液晶ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記セラミック粉が、珪素酸化物を主成分とするセラミック粉である請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記軟磁性金属粉が、鉄又は鉄合金を主成分とする軟磁性金属粉である請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記複合材料が、前記軟磁性金属粉を前記セラミック粉で被覆してなる複合材料である請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記複合材料の含有量が、前記液晶ポリエステル100重量部に対して、100〜450重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。」

(甲9b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルと磁性フィラーとを含む液晶ポリエステル組成物に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶ポリエステルと複合材料とを含む液晶ポリエステル組成物は、その成形時に取り扱い易いように、溶融造粒(液晶ポリエステルと複合材料とを溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、ペレット状に裁断すること)によりペレットの形態で製造することが好ましいが、その際、ストランド切れ(押し出された溶融状態のストランドが冷却前に切れること)が生じ易いと、生産性が低下する。特許文献2及び3には、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物が提案されており、具体的には、溶融温度330℃での溶融造粒の際、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物が記載されているが、粘度を下げて押出速度(生産性)を上げる場合等、より高温で溶融造粒する際でも、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物が求められる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、液晶ポリエステルと複合材料とを含み、高温で溶融造粒しても、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、液晶ポリエステルと、セラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料とを含み、前記複合材料は、その10質量倍の水と混合したとき、水相のpHが9.0以下である混合液を与える複合材料である液晶ポリエステル組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、高温で溶融造粒しても、ストランド切れが生じ難い。」

(甲9c)「【0008】
本発明の液晶ポリエステル組成物に含まれる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示すポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
・・・
【0026】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、通常270℃以上、好ましくは270〜400℃、より好ましくは280〜380℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や機械的特性が向上し易いが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0027】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。」

(甲9d)「【0028】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、磁性フィラーとして、セラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料を含む。
・・・
【0039】
液晶ポリエステル組成物は、複合材料以外の充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0040】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0041】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。添加剤の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜5質量部である。
・・・
【0045】
液晶ポリエステル組成物の成形体である製品・部品の例としては、ハウジング;光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;及び半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。」

(甲9e)「【実施例】
【0046】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0047】
〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。
【0048】
〔複合材料の水分散液の水相のpHの測定〕
イオン交換水(pH7.0)35gに複合材料3.5gを加え、30分振とう撹拌後、遠心分離した。得られた上澄液のpHを、pHメーター((株)堀場製作所の「ES−12」)を用いて、室温(25℃)で測定した。
【0049】
〔複合材料〕
複合材料として、次のものを用いた。
複合材料(1):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径23μm、前記pH8.3)
複合材料(2):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径23μm、前記pH8.1)
複合材料(3):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径22μm、前記pH9.5)
複合材料(4):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径26μm、前記pH9.3)
【0050】
実施例1、2、比較例1、2
液晶ポリエステル100質量部と複合材料150質量部とを、同方向2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30HS」)を用いて、340℃で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、裁断して、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。その際、ストランド切れの有無を目視で観察し、結果を表1に示した。
【0051】
【表1】




(8)乙第1号証に記載された事項
乙第1号証には、以下の事項が記載されている。

(乙1a)「

」(実験依頼書第1頁)

(乙1b)「

」(第3頁)


第5 当審の判断
当審は、取消理由A及び申立人がした申立理由1〜3によっては、いずれも、本件発明1〜7に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

取消理由Aと申立理由3は、いずれも甲第1号証を主引用例とする進歩性の理由であるから、以下「1 当審が通知した取消理由Aについて」において、併せて検討する。

1 当審が通知した取消理由Aについて
以下、取消理由Aについて検討を行う。

(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の上記摘記(甲1f)の段落【0112】の【表2】の実施例2に着目すると、
「液晶性ポリエステルであるLCP1 55重量部
液晶性ポリエステルであるLCP3 45重量部
マイカであるAB25S 33重量部
を混合した後、2軸押出機を用いて、シリンダー温度340℃にて、真空ベントで脱気しながら造粒して得た、ペレット状の液晶性ポリエステル樹脂組成物」
が記載されており、
「液晶性ポリエステルであるLCP1」について、段落【0105】に「・・・反応機に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応機内を十分に窒素ガスで置換した後、・・・留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、プレポリマーを取り出した。得られたプレポリマーを・・・、固相重合を行った。こうして得られた液晶性ポリエステルをLCP1とする。このLCP1は、流動開始温度が327℃であり、・・・」と記載され、
「液晶性ポリエステルであるLCP3」について、段落【0107】に「・・・反応機に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応機内を十分に窒素ガスで置換した後、・・・留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、プレポリマーを取り出した。このプレポリマーを・・・固相重合を行った。こうして得られた液晶性ポリエステルをLCP3とする。このLCP3は、流動開始温度が286℃であり・・・」と記載され、
「マイカであるAB25S」について、段落【0109】に「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」と記載されているから、甲第1号証には、実施例2として、
「パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)を重合して得た、流動開始温度が327℃の液晶性ポリエステルであるLCP1を55重量部、
パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)を重合して得た、流動開始温度が286℃の液晶性ポリエステルであるLCP3を45重量部、
(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカを33重量部
を混合した後、2軸押出機を用いて、シリンダー温度340℃にて、真空ベントで脱気しながら造粒して得た、ペレット状の液晶性ポリエステル樹脂組成物」(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

また、同様に、甲第1号証の(甲1f)の段落【0112】の【表2】の実施例3に着目すると、
「パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)を重合して得た、流動開始温度が327℃の液晶性ポリエステルであるLCP1を55重量部、
パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)を重合して得た、流動開始温度が286℃の液晶性ポリエステルであるLCP3を45重量部、
(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカを43重量部
を混合した後、2軸押出機を用いて、シリンダー温度340℃にて、真空ベントで脱気しながら造粒して得た、ペレット状の液晶性ポリエステル樹脂組成物」(以下「甲1発明C」という。)
が記載されているといえる。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明A、Cとを合わせて対比する。

甲1発明A、Cにおける「パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)を重合して得た、流動開始温度が327℃の液晶性ポリエステルであるLCP1」(以下「LCP1」という。)及び「パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)を重合して得た、流動開始温度が286℃の液晶性ポリエステルであるLCP3」(以下「LCP3」という。)は、本件発明1における「液晶ポリエステル」に相当する。
そして、甲1発明A、Cにおける「LCP1」及び「LCP3」とは、「流動開始温度」が異なっているから、甲1発明A,Cの「液晶性ポリエステル樹脂組成物」は、本件発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物」と同様に、「液晶ポリエステル」について「流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含」むものといえる。

甲1発明A、Cにおける「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」は、(本c)の段落【0060】の記載からみて、本件発明1における「板状無機フィラー」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明A、Cとは、
「液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含む液晶ポリエステル組成物であって、
前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含む、
液晶ポリエステル組成物。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」の「流動開始温度」について、本件発明1では、「液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃」であり、「液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃」であるのに対し、甲1発明A、Cでは、「LCP1」が「327℃」、「LCP3」が「286℃」である点。

相違点2:「無機フィラー」について、本件発明1では、「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」であり、「粒径D90が20〜140μm」であるのに対し、甲1発明A、Cでは、「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」は、これらの値が不明である点。

イ 判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討するが、その前提として、本件発明1の「板状無機フィラー」及び甲1発明A、Cの「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」について確認を行う。

(ア)本件発明1の「板状無機フィラー」について
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0005】の記載からみて、「液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含み、高温条件下でブリスターが発生し難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物、及び前記液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体を提供すること」であり、また、この課題の解決に関して、段落【0013】には、「本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、板状無機フィラーとして、上記のようなpH特性と粒径D90とを有するものを用いることで、高温条件下でブリスターが発生し難い(以下、「耐ブリスター性が高い」ということがある。)成形体とすることができる。本実施形態は、板状無機フィラーを用いて得られた成形体における、高温条件下でのブリスターの発生のし易さが、類似の大きさ及び組成を有する板状無機フィラーを用いた場合であっても変動すること、その変動の原因が板状無機フィラーの酸性度と粒径D90の相違に基づくことを見出したことにより、為されたものである」こと、すなわち、本件発明の「pH特性と粒径D90とを有する」「板状無機フィラー」を用いることで、「高温条件下でブリスターが発生し難い成形体」とすることができることが記載されている。
さらに、この点に関して、(本f)の実施例及び比較例では、本件発明の「pH特性と粒径D90とを有する」「板状無機フィラー」である段落【0081】の(F1)、(F2)、(F10)の「板状無機フィラー」を用いた実施例1〜5は、本件発明の「pH特性と粒径D90」の範囲外の(F3)〜(F9)の「板状無機フィラー」を用いた比較例1〜7」に比べて、「ハンダ耐熱性」が優れていることが示されている。
また、本件発明の「pH特性」、すなわち、本件発明1の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となる」ことについては、本件明細書の(本c)の段落【0047】及び実施例の(本f)の段落【0087】に記載されているほか、令和3年11月26日付け意見書においても、当該pHの測定方法について主張されている。

(イ)甲1発明A、Cの「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」について
甲1発明A、Cの「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」は、甲第4号証の(甲4b)の写真からみて、「板状」であるといえるし、また、(甲4c)の表のデータから、「粒径D90」は「41.94μm」、すなわち、「20〜140μm」の範囲内と解される。「pH」について、(甲4a)の表には「TYP」について「8.0」と記載されているが、その測定方法までは記載されていない。
一方、「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したとき」の「前記水分散液の溶液部分のpH」について、特許権者は、上記の意見書に添付して乙第1号証を提出し、本件発明1に特定される方法を採用した場合、具体的には、「200mlディスポカップにマイカ10gを計りとり、90mlの純水を加えマグネチックスターラーで拡販する。マグネットを取り出し、5min静置後、上澄み溶液を100ml容器に入れる。その上澄み溶液をpHメーターで測定」した場合には、pHが「6.74」になることを確認している。
そうすると、甲1発明A,Cの「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したとき」の「前記水分散液の溶液部分のpH」は、その測定方法が本件明細書の記載に従ったものと判断できる乙第1号証に示された「6.74」と解される。

(ウ)相違点2についての判断
甲1発明A、Cの「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」は、上記「(イ)甲1発明A、Cの「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」について」で検討したとおり、本件発明1の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」ではないから、相違点2は、実質的な相違点であるといえる。

次に、相違点2について、甲1発明A、C及び甲第5〜9号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたか否かを検討する。

甲第5号証の上記摘記の(甲5a)の請求項1には、「(A)溶融温度が300℃以上である合成樹脂」に「水分散pH:5.5〜8.0」であり「最大径a:50μm以下」である「板状無機充填材」を含有させることが記載されており、(甲5b)には、課題について「無機充填材から遊離するアルカリ成分などにより樹脂が加水分解され、この結果分子量低下が生じ、樹脂本来の優れた特性が低下したり、フィルムの引き取りができないなどの問題を生じた」こと、さらに、目的について「機械的強度、耐熱性に優れ かつ線膨張係数、異方性が小さく、樹脂劣化することが少ない、フレキシブルプリント配線板に用いる耐熱性フィルムなどとして適した樹脂組成物及びフレキシブルプリント配線板を提供すること」が記載され、(甲5d)には「溶融温度が300℃以上である合成樹脂」の具体例として「液晶ポリマー」が例示され、(甲5e)の実施例には、「2(当審注:「2」を丸囲みの文字である。)合成雲母:合成雲母(商品名:PDM−GUA、トビー工業(株)製)を1000℃で焼成した後、分級処理した」もの、「9(当審注:「9」を丸囲みの文字である。)ベーマイト(1):平均粒径0.5μmの水酸化アルミニウム7,8kg、水39kg、硝酸カルシウム1.6kg、水酸化ナトリウム0.4kg、水酸化カルシウム0.12kgを反応原料としてオートクレーブ内に充填し、170℃で7時間反応させた。反応後の生成物を水洗、濾過、乾燥してベーマイトを得た。これをさらに600℃で焼成し、γ−アルミナを得た)ものが、それぞれ「水分散pH」が「7.1」、「7.2」であったことが示され(表1を参照)、実施例10、43〜45として、「PEEK (ポリエ一テルエーテルケトン)」及び/又は「PEI (ポリエーテルイミド)」の合成樹脂とともに用いた例も示されている。
しかしながら、甲第5号証の「水分散pH:5.5〜8.0」である「板状無機充填材」の「pH」は、(甲5c)に記載の「水分散pHは、試料1gを100mlのビーカーに秤り取り、脱イオン水100mlを加えて10分間マグネチックスターラーで攪拌した後、pHメーターで測定したpH値を意味する」ものであり、本件発明1の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したとき」の「前記水分散液の溶液部分のpH」と測定条件が異なるものである。
そうすると、甲1発明A、Cにおいて、甲第5号証を参酌しても、「無機充填剤」として、「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」に代えて又は加えて、本件発明1の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」であり、かつ、「粒径D90が20〜140μm」のものを用いることを動機づけることはできない。

また、甲第6〜9号証の上記摘記には、液晶ポリエステルにタルクやマイカ等の「板状無機充填剤」を添加したコネクター等に用いる樹脂組成物が記載されているものの、甲1発明A、Cにおいて、「無機充填剤」として、「(株)山口雲母工業所製「AB−25S」のマイカ」に代えて又は加えて、本件発明1の「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」であり、かつ、「粒径D90が20〜140μm」のものを用いることを動機づける記載はない。

したがって、本件発明1の上記相違点2について、甲1発明A,C及び甲第4〜9号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4〜9号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記(2)イで示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第4〜9号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、取消理由A及び申立理由3は、理由がない。

2 特許異議申立書に記載された申立理由について
申立理由3(進歩性)は、上記「1 当審が通知した取消理由Aについて」において検討されたので、以下、申立理由1〜2について検討を行う。


(1)申立理由1(明確性)について
申立理由1の概要は、「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(1)申立理由1(明確性)」に記載したとおりであるが、以下のアに再掲する。

ア 申立理由1の概要
本件発明1では、「前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃であり」、「前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃であり」とそれぞれの「液晶ポリエステル」の流動開始温度が規定されており、330〜370℃の間で重複しているところ、これらの関係について「流動開始温度が互いに異なる」と規定されているのみで、この温度帯の「液晶ポリエステル」について「液晶ポリエステル(A)」または「液晶ポリエステル(B)」のいずれに該当すると解釈するべきか、その指針となるような記載は本件明細書に存在せず、不明確である。

イ 判断
(ア)特許法第36条第6項第2号の考え方について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するか否か、すなわち、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点で判断すべきものである(平成30年(行ケ)第10117号)。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)判断
本件発明1の「前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含み、前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃であり、前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃であり」との特定について、本件明細書の(本b)の段落【0038】には、「流動開始温度」の測定方法が記載されており、本件発明1の当該記特定を満たすことの判断については、この方法に従って「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」の「流動開始温度」を測定し、「液晶ポリエステル(A)」の「流動開始温度」と「液晶ポリエステル(B)」の「流動開始温度」とが異なること、また、一方の「液晶ポリエステル」の「流動開始温度」が「330〜400℃」の範囲であり、他方の「液晶ポリエステル」の「流動開始温度」が「300〜370℃」の範囲であることを確認すればよいといえる。
仮に両者の温度範囲に重複があったとしても、そのことにより、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明である本件発明2〜7についても同様である。

ウ まとめ
以上のとおり、申立理由1は、理由がない。

(2)申立理由2(サポート要件)について
申立理由2の概要は、「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(2)申立理由2(サポート要件)」に記載したとおりであるが、以下のアに再掲する。

ア 申立理由2の概要
理由2−1:本件発明1では、「前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は330〜400℃であり」、「前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は300〜370℃であり」と規定しているところ、本件明細書の実施例では、実施例3及び実施例4において「流動開始温度」が「360℃」の「液晶ポリエステル(A)(L4)」と、「流動開始温度」が「327℃」の極めて限定的な例しか記載されていないため、本件発明に規定する広範な流動開始温度の範囲全般にわたって本件発明の技術的課題が解決できることを理解できない。

理由2−2:本件発明1は、「前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が互いに異なる液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を少なくとも含み」と規定し、また、本件明細書の段落【0045】の「前記液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)のいずれか一方又は両方を含む場合、これら以外のその他の液晶ポリエステルを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい」との記載からみて、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」以外の別の「液晶ポリエステル」を含有する態様を含み得るところ、このような場合の、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」以外の別の「液晶ポリエステル」を含有する配合割合や流動開始温度については全く規定がなく、例えば、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」の温度範囲を満たさない第三の液晶ポリエステルが主成分である場合に、本件発明の技術的課題が解決できることを理解できない。

理由2−3:本件発明1には、「板状無機フィラー」について、「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるものであり、前記板状無機フィラーの粒径D90が20〜140μmである」と特定されているところ、本件明細書の実施例3、4には、pHが8.0、8.7、粒径D90が38.2、74.0の例しか記載されておらず、一方、比較例では本件発明1の範囲を僅かに逸脱したのみで「ハンダ耐熱性」の評価が悪化していることからみて、本件発明1の「板状無機フィラー」のpH及び粒径D90の範囲を充足したところで、本件発明の技術的課題が解決できることを理解できない。

理由2−4:本件発明1には、「板状無機フィラー」の含有量について何ら規定されておらず、本件明細書の段落【0061】の「前記液晶ポリエステル組成物の前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部であることが好ましく、・・・。板状無機フィラーの前記含有量がこのような範囲であることで、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、耐ブリスター性がより高くなる」との記載からみて、本件発明の技術的課題の解決に重要であるところ、本件明細書の実施例3、4には、「板状無機フィラー」は「液晶ポリエステル」に対して「43重量部」である場合しか開示しておらず、実施例3、4の作用効果を本件発明1の範囲まで一般化・抽象化することができない。また、本件発明2には、「板状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部である」と規定しているものの、その範囲全般にわたって実施例3、4の作用効果を一般化・抽象化することができない。

イ 判断
(ア)特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)本件発明の課題
本件発明の課題は、上記「1 当審が通知した取消理由Aについて」「(2)本件発明1について」「イ 判断」「(ア)本件発明1の「板状無機フィラー」について」でも述べたとおり、本件明細書の(本a)の段落【0005】の記載からみて、「液晶ポリエステル及び板状無機フィラーを含み、高温条件下でブリスターが発生し難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物、及び前記液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体を提供すること」であるといえる。

(ウ)判断
上記「1 当審が通知した取消理由Aについて」「(2)本件発明1について」「イ 判断」「(ア)本件発明1の「板状無機フィラー」について」でも述べたとおり、本件発明の上記課題の解決について、本件明細書の(本a)の段落【0013】の記載からみて、本件発明の「pH特性と粒径D90とを有する」「板状無機フィラー」を用いることで、「高温条件下でブリスターが発生し難い成形体」とすることができると解される。また、(本f)の実施例をみると、本件発明1の発明特定事項を満たす実施例は実施例3及び実施例4のみであるものの、【表1】〜【表2】の実施例1〜5及び比較例1〜7のデータを確認すると、本件発明の「pH特性と粒径D90とを有する」「板状無機フィラー」である段落【0081】の(F1)、(F2)、(F10)の「板状無機フィラー」を用いた実施例1〜5は、本件発明の「pH特性と粒径D90」の範囲外の(F3)〜(F9)の「板状無機フィラー」を用いた比較例1〜7に比べて、「ハンダ耐熱性」、具体的には、(本a)の段落【0004】及び(本f)の段落【0092】に記載される「表面にブリスター」の発生が抑えられることが具体的に示されている。
そうすると、本件発明1の特に「板状無機フィラー」について「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」であり、「粒径D90が20〜140μmである」ものを用いれば、本件発明の上記課題を解決できると当業者であれば認識できるといえる。

(エ)申立人の主張についての判断
申立人の主張する理由2−1及び理由2−2について、本件明細書の(本b)の段落【0014】には「前記液晶ポリエステルは、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい」と、段落【0037】には「液晶ポリエステルの以下で定義される流動開始温度は、270℃以上であることが好ましく、270〜400℃であることがより好ましく、280〜400℃であることがさらに好ましい」と、段落【0041】には「液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は、310〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましく、330〜400℃であることがさらに好ましい」と、段落【0042】には「液晶ポリエステル(B)の流動開始温度は、270〜370℃であることが好ましく、280〜370℃であることがより好ましく、300〜370℃であることがさらに好ましい」と記載されており、これらの記載の「液晶ポリエステル」の「流動開始温度」の範囲は、本件発明の課題である「高温条件下でブリスターが発生し難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物」の技術分野である「電気・電子部品」の分野で用いる「液晶ポリエステル」としては一般的なものであるといえる。
そして、上記(ウ)で述べたとおり、本件発明1の特に「板状無機フィラー」について「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」であり、「粒径D90が20〜140μmである」ものを用いれば、本件発明の上記課題を解決できると当業者であれば認識できるといえるから、本件発明1において特定される「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」の「流動開始温度範囲」内であれば、また、「液晶ポリエステル(A)」及び「液晶ポリエステル(B)」以外の別の「液晶ポリエステル」を含む場合であって上記本件明細書に記載の「流動開始温度」の温度範囲内のものであれば、本件発明の上記課題を解決できると当業者であれば認識できるといえる。
したがって、申立人の主張する理由2−1及び理由2−2を採用することはできない。

次に、申立人の主張する理由2−3及び理由2−4について、上記(3)でも述べたとおり、本件明細書の(本f)の実施例及び比較例の【表1】及び【表2】の結果をみると、「板状無機フィラー」として「その10gをpH7.0の90mLのイオン交換水と混合して水分散液を調製したときに、前記水分散液の溶液部分のpHが7.0〜9.0となるもの」を用いれば、本件発明の上記課題を解決できると当業者であれば理解できるといえる。
また、本件明細書の(本c)の段落【0061】には、「液晶ポリエステル組成物の前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステルの含有量100質量部に対して、10〜250質量部であることが好ましく、・・・。板状無機フィラーの前記含有量がこのような範囲であることで、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、耐ブリスター性がより高くなる」ことが記載され、この記載の「液晶ポリエステル組成物」中の「板状無機フィラー」の含有量は、本件発明の課題である「高温条件下でブリスターが発生し難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物」の技術分野である「電気・電子部品」の分野では特異なものではなく、また、本件発明1で特定される「板状無機フィラー」を含んでいれば、含まない場合に比べて、本件発明の課題である「高温条件下でブリスター」の発生が抑えられることは当業者であれば理解できるといえる。
そうすると、申立人の主張する理由2−3及び理由2−4も採用することはできない。

ウ まとめ
以上のとおり、申立人の主張する理由2−1〜理由2−4についても理由はない。


第6 むすび
以上のとおり、当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明1−7に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1−7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2022-05-12 
出願番号 P2017-540923
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C08L)
P 1 651・ 121- Y (C08L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 杉江 渉
橋本 栄和
登録日 2020-11-19 
登録番号 6797124
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 液晶ポリエステル組成物、成形体及びコネクター  
代理人 佐藤 彰雄  
代理人 加藤 広之  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 鈴木 慎吾  
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