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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1385188
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-02 
確定日 2022-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6809594号発明「電気伝導度検出器及びイオンクロマトグラフ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6809594号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 特許第6809594号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6809594号の請求項1−4に係る特許についての出願は、平成29年2月20日に出願され、令和2年12月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年7月2日に特許異議申立人 日置 綾子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月30日付け(発送日:同年10月7日)で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年12月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和4年1月14日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容(下線は、訂正内容を示す。)
特許請求の範囲の請求項1に「前記セル部と前記検出回路とが、共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成されており、」と記載されているのを「前記セル部と前記検出回路とが、共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成されており、前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され、」に訂正する。
そして、請求項1の記載を引用する請求項2〜4も同様に訂正する。

なお、訂正前の請求項1〜4について、請求項2〜4はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、上記訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項1に係る訂正は、訂正前の「電気伝導度検出器」の「共通の筐体」について、「熱伝導性材料によって構成されることにより前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され」るものである旨の限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】には、「検出装置2の筐体6は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性材料によって構成されている。これにより、・・・(略)・・・カラムオーブン28内の熱を熱交換ブロック11、セル14及び検出回路基板18へ十分に伝えることができる。」と記載されていることから、該訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1−4に係る発明(以下「本件特許発明1−4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1−4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
液を流通させるセル及び前記セル中の液を流れる電流を測定するための一対の測定電極を有するセル部と、
前記測定電極と電気的に接続され、前記測定電極間を流れる電流値を検出し、その検出値に基づいた信号を出力するように構成された検出回路と、
前記検出回路から出力された信号を取り込んで信号処理を行なうように構成された処理部と、を少なくとも備え、
前記セル部と前記検出回路とが、共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成されており、前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され、
前記筐体内に配置された熱交換ブロックをさらに備え、前記熱交換ブロックの内部には前記セルの入口に通じる流路が設けられ、かつ、前記熱交換ブロックにヒータと温度センサとが取り付けられており、前記熱交換ブロックにおいて前記セルに導入される前の液を温度調整する、電気伝導度検出器。
【請求項2】
前記検出回路は、前記測定電極間を流れる電流の大きさを検出するアナログ回路を少なくとも含む請求項1に記載の電気伝導度検出器。
【請求項3】
前記検出回路は、前記アナログ回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号へ変換して前記処理部へ出力するように構成されたA/D変換回路を含む請求項2に記載の電気伝導度検出器。
【請求項4】
分析流路と、
前記分析流路において移動相を送液する送液装置と、
前記分析流路中に試料を注入する試料注入部と、
前記分析流路上における前記試料注入部よりも下流において、前記試料注入部により注入された試料を成分ごとに分離する分析カラムと、
前記分析流路上における前記分析カラムよりも下流において、前記分析カラムからの溶出液の電気伝導度を測定することにより前記分析カラムにより分離されたイオン性の試料成分を検出する、請求項1から3のいずれかに記載の電気伝導度検出器と、
前記分析カラムを内部に収容して前記分析カラムの温度を設定された温度に調節する前記カラムオーブンと、を備えているイオンクロマトグラフ。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1−4に係る特許に対して、当審が令和3年9月30日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1−4に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1−4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 引用文献の記載
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付した。)

(引1a)「【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のイオンクロマトシステムの好ましい実施形態を図1を参照して説明する。本形態のイオンクロマトシステムは、移動相である溶離液10と、溶離液をカラムへ送液するためのポンプ11と、サンプルを導入するためのインジェクションバルブ12と、分離カラム13と、電気伝導度検出器14と、電気伝導度検出器に連結された測定装置15(データプロセッサ)とからなる。溶離液10はポンプ11に入る前にデガッサー16で脱気処理されることが好ましい。ポンプ11、インジェクションバルブ12、デガッサー16、および分離カラム13は、当業者に公知の多くの機種から適宜選択することができる。例えば、好ましいポンプとしては、脈動が極めて小さく、かつ定流量性を有するポンプであればよく、例えば東ソー株式会社製マルチポンプCCPM−IIやデュアルポンDP−8020等が挙げられる。分離カラムとしては、種々のイオン交換体が充填されたカラムが用いられる。イオン交換体の構造面からは表層被覆型、表層薄膜型、全多孔微粒子型があり、基材面からはポリスチレン系、ポリアクリレート系及びシリカ系がある。またカチオン交換体は表面にスルホン酸基を、アニオン交換体は表層にアミノ基を保有している。具体例としては、シリカ母材に陽イオン交換基を導入した充填材(昭和電工社製Shodex YF−421等)、ポリマー母材に陰イオン又は陽イオン交換基を導入した充填剤(東ソー社製TSKgel PW又はPWxl)などが挙げられる。インジェクションバルブとしては、レオダイン7725注入弁等が挙げられる。
【0019】
本発明において、電気伝導度検出器14は分離カラム13から溶出される溶出液の流路に配置される。図3は本発明の1つの実施形態に係る電気伝導度検出器の測定原理を模式的に表したものである。この電気伝導度検出器は、少なくとも2つの電極31aと31b、固定相32、交流電圧源33、抵抗34及び電流計35を含む。固定相32は電極間に充填されていても良いし、あるいは、電極表面の一部又は全部を被覆するように配置される。上記2つの電極は、炭素、白金、チタン、ステンレス鋼又は銅などあらゆる導電性の非腐食性材料を用いることができ、好ましくは、チタンである。また、交流電圧源33は直流電圧源であってもよい。分離カラム13から溶出された溶出液は、この電極間に配置された固定相32の隙間、又は表面と接触して流れる。この溶出液には、例えば、分析物イオンとしての塩素イオンCl−、その対イオンとしてのナトリウムイオンNa+、及び溶離液中の電解質イオンが含まれる。
【0020】
上記2つの電極31aと31bの間を流れる溶出液の電気伝導度は、溶出液中の陰イオンと陽イオンに基づく性質であり、電極間の電流を測定することにより検出できる。電気伝導度は、また導電率ともよばれ、単位はS/cmである。Sはジーメンスとよばれ、抵抗の逆数(Ω−1)である。イオンが運ぶ全電気量のうち特定のイオンが運ぶ割合を輸率という。また、イオンの移動度とは、単位電界(1V/cm)をかけた時のイオンの移動速度(cm/秒)をいい、単位はcm2/V・秒で表される。電極間のイオンの移動度は他のイオンや固定相との相互作用によって影響を受け、電気伝導度の検出に大きな影響を与えると考えられる。」

(引1b)「【図1】



(引1c)「



イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1b)より、「電気伝導度検出器14」は、「分離カラム13」とともに、「温調器17」内に収容されている点が見て取れる。また、上記(引1c)より、「2つの電極31aと31b」の間には、液を流通させるセルを有している点が見て取れる。

(イ)(ア)を踏まえると、上記(引1a)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が、記載されている。

「移動相である溶離液10と、
溶離液をカラムへ送液するためのポンプ11と、
サンプルを導入するためのインジェクションバルブ12と、
分離カラム13と、
電気伝導度検出器14と、
電気伝導度検出器に連結された測定装置15(データプロセッサ)とからなるイオンクロマトシステムにおいて、
電気伝導度検出器14は、
分離カラム13から溶出される溶出液の流路に配置され、
2つの電極31aと31b、固定相32、交流電圧源33、抵抗34及び電流計35を含み、
2つの電極31aと31bの間には液を流通させるセルを有し
電気伝導度検出器14は、分離カラム13とともに、温調器17内に収容され、
2つの電極31aと31bの間を流れる溶出液の電気伝導度は、溶出液中の陰イオンと陽イオンに基づく性質であり、電極間の電流を測定することにより検出できる
イオンクロマトシステム。」

(2)引用文献2及び3について
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオンクロマトグラフィ用恒温槽に関し、設定温度までのランニング時間の短縮および被測定液の温度を長時間一定温度に維持可能な恒温槽に関するものである。」

(引2b)「【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために本発明では、第1恒温槽と、この第1恒温槽内に配置された第2恒温槽と、この第2恒温槽内に配置された検出器と、前記第1恒温槽内を通って第2恒温槽内の検出器に被測定液を導入する配管と、記第1恒温槽内を加熱する第1ヒータと、前記第2恒温槽内を加熱する第2ヒータと、前記検出器を加熱する第3ヒータと、からなり、前記第1ヒータにより前記被測定液の測定温度付近まで急速加熱し、前記第2ヒータにより測定温度まで加熱するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】第1ヒータは第1恒温槽1内を被測定液の測定温度付近まで急速加熱する。第3ヒータは検出器を測定温度より僅かに低い温度まで急速加熱する。第2ヒータは被測定液と検出器を測定温度まで加熱する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下図面を用いて本発明を詳しく説明する。図1は本発明の実施の形態の一例を示す概略構成図である。図2(a)、(b)は第1、第2恒温槽内の第1、第2ヒータ5、6による温度変化を示し、図2(c)は検出器3の第3ヒータ7による温度変化を示している。なお、図1において、図4に示す従来例と同一要素には同一符号を付している。第1ヒータ5はパワーの大きなヒータであり、第1恒温槽1内と配管4内の被測定液を図2(a)に示すように設定(測定)温度付近まで急速に加熱してPID制御を行う。
【0009】なお、第1ヒータ5は第1恒温槽内に設けられたケース8に設けられ、このケース8内には配管4内の被測定液が十分に加熱されるように、コイル状に巻き回した状態で配置されている。
【0010】第2ヒータ6は第2恒温槽2内と検出器3の温度を図2(b)に示すようにPID制御を行う(この場合の温度制御は精密に行う)。第3ヒータ7は初期段階においては、検出器3の温度を設定温度付近(設定温度よりΔt低い温度)まで急速に加熱してスイッチ断となる。その後検出器3は第2ヒータ6により加熱されて設定温度まで加熱される。この検出器3の制御はオンオフにより行うが、図2(c)に示すように、異常時に温度が設定下限値以下まで下がったら通電し、設定温度まで上昇すると電源が断となり、その後は第2ヒータにより恒温化される。」

(引2c)「【図1】



イ 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(引3a)「【0013】
【実施例】図4は本発明が適用されるイオンクロマトグラフを概略的に表わしたものである。溶離液2を送液するために送液ポンプ4が設けられており、送液ポンプ4の下流の送液流路には試料を注入する試料注入器6が設けられている。測定部8内には溶離液とともに送られてきた試料を各試料成分イオンに分離する分離カラムと、その分離カラムからの溶出成分を検出する電気伝導度測定セルと、測定部8の温度を測定する温度センサとが設けられている。測定部8での電気伝導度セルの検出値と温度センサの検出温度がデータ処理部10にデータとして取り込まれ、保持時間による同定とピーク面積による定量とが行なわれる。データ処理部10の機能は図1に示され、動作は図3で示されたものである。
【0014】測定部8の具体的な例を図5に示す。図5で(A)は測定部全体を分解した状態を示し、(B)は測定部内の主要部を示したものである。金属製ケース30の内側に断熱材32が設けられ、断熱材32で取り囲まれた測定部内部には(B)に示される主要部が収容されている。主要部は送液部から送られてくる溶離液を測定部内の温度と平衡化させるための十分な熱容量をもつ金属ブロック34と、金属ブロック34に密着された分離カラム36と、分離カラム36の出口に接続された電気伝導度測定セル38と、分離カラム36と測定セル38の間の流路で分離カラム36からの流出液の温度を更に金属ブロック34の温度と平衡化させるとともに液温を検出するための熱交換部を兼ねた温度センサ40とが、それぞれ金属ブロック34に密着させられて設けられている。ケース30の外部から流路42がケース30及び断熱材32を経てカラム36の入口に導かれ、測定セル38からの排出流路44が断熱材32からケース30を経てドレインへ導かれている。測定セル38には電気伝導度を測定するための交流電源46と電流計48が接続されている。」

(引3b)「【図5】



ウ 周知技術について
(ア)引用文献2に記載された技術事項について
a 上記(引2a)及び(引2b)より、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
「イオンクロマトグラフィ用恒温槽は、
第1恒温槽と、
この第1恒温槽内に配置された第2恒温槽と、
この第2恒温槽内に配置された検出器と、前記第1恒温槽内を通って第2恒温槽内の検出器に被測定液を導入する配管と、
記第1恒温槽内を加熱する第1ヒータと、
前記第2恒温槽内を加熱する第2ヒータと、
前記検出器を加熱する第3ヒータと、からなり、
第1ヒータは第1恒温槽1内を被測定液の測定温度付近まで急速加熱し、
第2ヒータは被測定液と検出器を測定温度まで加熱し、
第1ヒータは、配管4内の被測定液を、設定(測定)温度付近まで急速に加熱してPID制御を行い、
第1ヒータは第1恒温槽内に設けられたケースに設けられ、
このケース内には配管内の被測定液が十分に加熱されるように、コイル状に巻き回した状態で配置され、
検出器は第2ヒータにより設定温度まで加熱される
イオンクロマトグラフィ。」

b 上記aにおいて、「イオンクロマトグラフィ」、「第1恒温槽」、「被測定液」及び「検出器」は、それぞれ、本件特許発明1の、「イオンクロマトグラフ」、「カラムオーブン」、「液」及び「検出装置」に相当し、上記aの「被測定液」は、通常「検出器」のセルに導入されるものである。そして、上記aの「第1ヒータ」及び「第2ヒータ」は、いずれも「検出器」とともに「第1恒温槽」内にあって、「検出器」のセルに導入される前の「被測定液」を温度調整しているといえるから、引用文献2には、カラムオーブン内に検出装置を収容したイオンクロマトグラフにおいて、セルに導入される前の液を温度調整する技術が記載されているといえる。

(イ)引用文献3に記載された技術事項について
a 上記(引3a)及び(引3b)より、引用文献3には、以下の技術事項が記載されている。
「溶離液2を送液するために送液ポンプ4が設けられ、
送液ポンプ4の下流の送液流路には試料を注入する試料注入器6が設けられ、
測定部8内には溶離液とともに送られてきた試料を各試料成分イオンに分離する分離カラムと、
その分離カラムからの溶出成分を検出する電気伝導度測定セルと、
測定部8の温度を測定する温度センサとが設けられ、
測定部8は、
金属製ケース30の内側に断熱材32が設けられ、
断熱材32で取り囲まれた測定部内部には、分離カラム36と測定セル38の間の流路で分離カラム36からの流出液の温度を金属ブロック34の温度と平衡化させるとともに液温を検出するための熱交換部を兼ねた温度センサ40が、設けられた
イオンクロマトグラフ。」

b 上記aにおいて、「分離カラム36からの流出液」、「測定セル38」及び「内側に断熱材32が設けられ」た「金属製ケース30」は、それぞれ、本件特許発明1の「液」、「セル」及び「カラムオーブン」に相当し、「分離カラム36と測定セル38の間の流路で分離カラム36からの流出液の温度」は、「熱交換部を兼ねた温度センサ40」により「金属ブロック34の温度と平衡化」しているから、引用文献3の「イオンクロマトグラフ」は、「熱交換部を兼ねた温度センサ40」により「測定セル38」に導入される前の「分離カラム36からの流出液」を温度調整しているといえる。
そうすると、引用文献3には、カラムオーブン内にセルを収容したイオンクロマトグラフにおいて、セルに導入される前の液を温度調整する技術が記載されているといえる。

(ウ)周知技術について
以上(ア)及び(イ)より、引用文献2及び3には、いずれも「カラムオーブン内にセルを収容したイオンクロマトグラフにおいて、セルに導入される前の液を温度調整する技術」が記載されているといえるから、該技術は周知技術であるといえる。

(3)引用文献4について
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(引4a)「【0011】
図1は、本発明の溶液分析計の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の溶液分析計は、試料の温度を一定にするための熱交換器1と、フローセル2を含む測定光学系3とを熱的に分離した状態で、具体的には非接触状態で備え、それらは断熱材4によって覆われ、且つ夫々断熱材4の内壁に接合されている。この断熱材4の外側から試料を導入し、断熱材4の外側に試料を送出する流路5は、熱交換器1から測定光学系3内のフローセル2を通過するように一連に形成されている。
【0012】
この流路5は、熱交換器1の図示上方から熱交換器1の内部に接続され、熱交換器1の内部で蛇行するように通過して当該熱交換器1の図示下方から突出する。そして、測定光学系3の図示下方から内部に接続され、フローセル2を通過して測定光学系3の図示上方から突出する。試料は、溶液分析計の内部で、この順序に流れる。なお、熱交換器1から測定光学系3までの間の流路5は保温チューブ19によって覆われており、内部を通過する試料と断熱材4の内部空間空気との間で生じる熱交換を最小限にしている。流路5の材質としては、試料のコンタミネーション(汚染)を防止する観点からPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを用いることが考えられる。」

(引4b)「【0014】
前記熱交換器1の材質としては、例えば熱伝導性のよいアルミニウムブロックを用いることが考えられる。この熱交換器1には、熱交換器用温調機構としての熱交換器用ペルチェ素子9が接合され、その熱交換器用ペルチェ素子9は熱交換器1が接合されている断熱材4の壁部に埋設されている。ペルチェ素子は、周知のように、印加する電流の向きに応じて、例えば本実施形態では熱交換器1が接合されている面を加熱したり冷却したりすることが可能な半導体素子で、熱電素子とも呼ばれる。そして、断熱材4の外壁面に露出している熱交換器用ペルチェ素子9の外側面には熱交換器用放熱フィン10が接合され、この熱交換器用放熱フィン10に対向して熱交換器用放熱ファン11が配置されている。
【0015】
熱交換器1には、熱交換器1自体の温度を検出するための熱交換器用温度センサ12が取付けられており、その出力は熱交換器用制御回路13に入力される。この熱交換器用温度センサ12としては、白金抵抗体、熱電対、サーミスタなどを用いることが考えられる。熱交換器用制御回路13では、熱交換器用温度センサ12で検出された熱交換器1の温度に基づいて、熱交換器用ペルチェ素子9への印加電流を制御すると共に、熱交換器用放熱ファン11の運転状態を制御し、熱交換器1の温度が予め設定された一定温度に保持されるようにする。その結果、流路5の熱交換器1からの出口で試料の温度を予め設定された一定温度又は一定温度領域に調節することが可能となる。」

(引4c)「【0020】
このように本実施形態の溶液分析計では、試料の熱交換を行う熱交換器1は熱交換器用温調機構である熱交換器用ペルチェ素子9によって一定温度とされ、フローセル2を含む測定光学系3は測定光学系用温調機構である測定光学系用ペルチェ素子14によって一定温度とされるので、試料の流量が大きい場合であっても試料の温度を一定にすることができ、もって測定対象試料の適正な分析が可能となる。」

(引4d)「【図1】



イ 引用文献4に記載された技術事項について
(ア)上記(引4a)〜(引4d)より、引用文献4には、以下の技術事項が記載されている。

「試料の温度を一定にするための熱交換器1と、
フローセル2を含む測定光学系3とを備え、
それらは断熱材4によって覆われ、
断熱材4の外側から試料を導入し、断熱材4の外側に試料を送出する流路5を、
熱交換器1から測定光学系3内のフローセル2を通過するように一連に形成した溶液分析計において、
流路5は、
熱交換器1の内部に接続され熱交換器1から突出し、
測定光学系3の内部に接続され、フローセル2を通過して測定光学系3から突出するものであって、
熱交換器1には、熱交換器用温調機構としての熱交換器用ペルチェ素子9が接合され、
熱交換器用ペルチェ素子9は熱交換器1が接合されている断熱材4の壁部に埋設され、
熱交換器用ペルチェ素子9は、印加する電流の向きに応じて、熱交換器1が接合されている面を加熱したり冷却したりすることが可能であり、
熱交換器1には、熱交換器1自体の温度を検出するための熱交換器用温度センサ12が取付けられ、
熱交換器1の温度が予め設定された一定温度に保持されるようにすることにより、
流路5の熱交換器1からの出口で試料の温度を予め設定された一定温度又は一定温度領域に調節する
溶液分析計。」

(イ)上記(ア)の「溶液分析計」は、「流路5の熱交換器1からの出口で試料の温度を予め設定された一定温度又は一定温度領域に調節する」技術事項として、以下の技術事項(以下、「技術事項4」という。)を含んでいる。

「断熱材4によって覆われた熱交換器1を備え、
熱交換器1から測定光学系3内のフローセル2を通過するように一連に形成された流路5は、
熱交換器1の内部に接続され熱交換器1から突出し、
測定光学系3の内部に接続され、フローセル2を通過し、
熱交換器1には、熱交換器用温調機構としての熱交換器用ペルチェ素子9が接合され、
熱交換器1には、熱交換器1自体の温度を検出するための熱交換器用温度センサ12が取付けられ、
流路5の熱交換器1からの出口で試料の温度を予め設定された一定温度又は一定温度領域に調節する」技術事項。

(4)引用文献5に記載された事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。

(引5a)「【0023】
検出器6は、A/D変換部(ADC)61とこれを駆動する駆動部62を含む。A/D変換部61はアナログ信号である検出信号を、所定のサンプリング周期でもってサンプリングし、サンプリングされたアナログ値をデジタル値に変換して検出データとしてデータ処理部9へと出力する。なお、検出器6は、例えば蛍光検出器、紫外可視吸光検出器、フォトダイオードアレイ検出器、示差屈折率検出器、電気伝導度検出器など、適宜の検出器とすることができる。即ち、溶出液中の成分の検出の方式は特にここでは限定しない。」

3 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「2つの電極31aと31b」は、本件特許発明1の「一対の測定電極」に相当し、引用発明の「2つの電極31aと31bの間に」有る「液を流通させるセル」は、本件特許発明1の「液を流通させるセル」に相当する。
そして、引用発明の「分離カラム13から溶出される溶出液の流路に配置され」た「電気伝導度検出器14」に含まれる「2つの電極31aと31b」は、「2つの電極31aと31bの間の液を流通させるセル」を流れる「分離カラム13から溶出される溶出液」を流れる電流を「電流計35」で測定するための電極であるから、引用発明の「分離カラム13から溶出される溶出液」を流れる電流を「電流計35」で測定する「2つの電極31aと31b」は、本件特許発明1の「前記セル中の液を流れる電流を測定するための一対の測定電極」に相当する。
そうすると、引用発明の「2つの電極31aと31bの間に」有る「液を流通させるセル」及び「2つの電極31aと31b」は、本件特許発明1の「液を流通させるセル及び前記セル中の液を流れる電流を測定するための一対の測定電極を有するセル部」に相当する。

(イ)上記(引1c)より、引用発明の「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」は、「2つの電極31aと31b」と電気的に接続され、「電流計35」は、「2つの電極31aと31b」間の電流値を検出するものである点が見て取れる。
また、引用発明の「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」は回路を構成しているといえる。
そして、引用発明の「電気伝導度検出器14」は、「測定装置15(データプロセッサ)」に連結されていることから、上記「電流計35」により検出された電流値は、この電流値に基づいた信号として出力されているといえる。
そうすると、引用発明の「2つの電極31aと31b」と電気的に接続され、「2つの電極31aと31b」間の電流値を検出する「電流計35」を有し、この検出された電流値に基づいた信号を出力するように構成された「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路は、本件特許発明1の「前記測定電極と電気的に接続され、前記測定電極間を流れる電流値を検出し、その検出値に基づいた信号を出力するように構成された検出回路」に相当する。

(ウ)引用発明の「測定装置15(データプロセッサ)」は、「電気伝導度検出器14」からの「電流計35」により検出された電流値に基づいた信号を取り込んで、信号処理を行うことは明らかであるから、引用発明の「電気伝導度検出器14」からの「電流計35」により検出された電流値に基づいた信号を取り込んで、信号処理を行う「測定装置15(データプロセッサ)」は、本件特許発明1の「前記検出回路から出力された信号を取り込んで信号処理を行なうように構成された処理部」に相当する。

(エ)上記(ア)〜(ウ)を踏まえると、引用発明の「2つの電極31aと31bの間に」有る「液を流通させるセル」及び「2つの電極31aと31b」、「2つの電極31aと31b」と電気的に接続され、「2つの電極31aと31b」間の電流値を検出する「電流計35」を有し、この検出された電流値に基づいた信号を出力するように構成された「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路及び「電気伝導度検出器14」からの「電流計35」により検出された電流値に基づいた信号を取り込んで、信号処理を行う「測定装置15(データプロセッサ)」とを備える構成は、本件特許発明1の「セル部」、「検出回路」及び「処理部」を備える「電気伝導度検出器」に相当する。

(オ)引用発明の「電気伝導度検出器14」は、「2つの電極31aと31b、固定相32、交流電圧源33、抵抗34及び電流計35を含み、2つの電極31aと31bの間には液を流通させるセルを有し」ていることから、引用発明の「液を流通させるセル」と「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路とは、「電気伝導度検出器14」として一体の検出装置をなしているといえる。
そうすると、引用発明の「電気伝導度検出器14」として一体の検出装置をなしており、「温調器17内に収容されている」ている「液を流通させるセル」と「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路と、本件特許発明1の「共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成されており、前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され」ている「前記セル部と前記検出回路と」は、「一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成されて」いる点で共通する。

(カ)上記(ア)〜(オ)より、本件特許発明1と引用発明とに間には、以下の一致点及び相違点が有る。

(一致点)「液を流通させるセル及び前記セル中の液を流れる電流を測定するための一対の測定電極を有するセル部と、
前記測定電極と電気的に接続され、前記測定電極間を流れる電流値を検出し、その検出値に基づいた信号を出力するように構成された検出回路と、
前記検出回路から出力された信号を取り込んで信号処理を行なうように構成された処理部と、を少なくとも備え、
前記セル部と前記検出回路とが、一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成される電気伝導度検出器。」

(相違点1)前記セル部と前記検出回路とが、本件特許発明1は、「共通の筐体内に収容され」、「前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され」ているのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点2)前記セル部と前記検出回路とからなる一体の検出装置が、本件特許発明1は、「前記筐体内に配置された熱交換ブロックをさらに備え、前記熱交換ブロックの内部には前記セルの入口に通じる流路が設けられ、かつ、前記熱交換ブロックにヒータと温度センサとが取り付けられており、前記熱交換ブロックにおいて前記セルに導入される前の液を温度調整する」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

イ 判断
相違点1について検討する。
引用文献1において、「電気伝導度検出器14」には、「2つの電極31aと31b、固定相32、交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」が含まれ「2つの電極31aと31bの間には液を流通させるセルを有し」ているものの、「液を流通させるセル」及び「2つの電極31aと31b」からなるセル部と、「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路との間の温度を同じにしなければならないといった課題は記載されていないから、引用発明において、「液を流通させるセル」及び「2つの電極31aと31b」からなるセル部と、「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路とを、熱伝導性材料によって構成された前記共通の筐体内に収容することにより、「温調器17」内の熱を「液を流通させるセル」及び「2つの電極31aと31b」からなるセル部と「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路とに伝えるように構成する動機付けがあるとはいえない。
そして、引用文献2〜5や、特許異議申立理由において引用された甲5、6、8及び9号証にも、「液を流通させるセル」及び「2つの電極31aと31b」からなるセル部と、「交流電圧源33、抵抗34及び電流計35」から構成される回路とを同じ温度に設定しなければならないといった示唆はなく、また、そのような課題は自明な課題であるともいえないから、引用文献2〜5や、甲5、6、8及び9号証に記載された事項を参酌したとしても、本件特許発明1は、引用発明から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2〜4について
本件特許発明2〜3は、本件特許発明1を引用した発明であって、引用発明と対比すると、いずれも、上記(相違点1)を相違点として有している。また、本件特許発明4は、本件特許発明1〜3の電気伝導度検出器を備えるイオンクロマトグラフであるから、引用発明と対比すると、本件発明1〜3と同様に、上記(相違点1)を相違点として有している。
そうすると、本件特許発明2〜4は、本件特許発明1と同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張について
令和4年1月14日に提出した意見書において申立人は、以下のように主張している。

「本件特許の請求項1において、訂正により生じた引用発明との相違点であると本件特許の特許権者が主張する「e)前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され」ている点ついては、参考資料1(特許第5729488号)及び引用文献2(甲第2号証:特開平11−201957号公報)の記載に基づき当業者が容易に想到できる技術です。
参考資料1の段落0007に記載されているように、分離カラムの温度制御を行うためのカラムオーブン内にサプレッサを配置することは、本件特許の出願前に公知です。
そして、参考資料1の請求項1、段落0009等に記載されているように、参考資料1に記載されたイオンクロマトグラフにおいて、導電率計とサプレッサとは共通の恒温槽内に収容されています。
したがって、参考資料1に基づけば、カラムオーブン内にサプレッサと共に導電率計を収容することは、当業者が容易に想到できることです。
また、参考資料1の段落0004に記載されているように、導電率計は温度に非常に敏感であり、セルに導入される液の温度や周囲の温度が僅かに変動した場合でも導電率信号が変化してしまうことは、本件特許の出願前に公知の課題です。
さらに、参考資料1の段落0007によれば、カラムオーブンと他の部材(サプレッサ)とを伝熱部材によって接触させることによって、カラムオーブンの熱を他の部材へ伝え、他の部材の温度を一定に保つという技術思想は、本件特許出願前に公知の技術思想です。
したがって、参考資料1に基づけば、上述したような導電率計の公知の問題点を解決するために、上述した公知の技術思想を採用して、伝熱部材を介してカラムオーブン内の熱を導電率計に伝えるように構成し、導電率計の温度を一定に保つようにすることは、当業者が容易に想到できることです。
また、参考資料1の段落0026には、「恒温槽30はヒートブロック18の外周面に密着して覆う例えばステンレスなどの熱伝導性ブロックで構成」されていることが記載されています。さらに、参考資料1の段落0023には、「分離カラム10、イオン交換ユニット13及び導電率計26は共通の恒温槽28内に収容されている。恒温槽28内も恒温槽30と同じ一定温度、例えば40℃で維持されるように温度制御部34によってフィードバック制御される」と記載されています。
このような参考資料1の記載に基づけば、導電率計が収容された恒温槽28を、恒温槽30と同様にステンレスなどの熱伝導性ブロックで構成することは、当業者が容易に想到できることです。
そして、本件特許権者も令和3年12月2日付意見書において認めているように、引用文献2の図1によれば、電気伝導度検出器のセル部と検出回路とが共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなす構成は、本件特許の出願前に公知の技術です。
参考資料1には、セル部と検出回路とが共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなす構成について明確には記載されていませんが、引用文献2を参照すれば、参考資料1に記載の導電率計は当該構成をなしている蓋然性が高いと言えます。
以上に示すように、カラムオーブン内に収容された導電率計の、セル部と検出回路とが収容された筐体を熱伝導性材料によって構成し、カラムオーブン内の熱が熱伝導性材料を介して導電率計に伝えられるようにして、上記e)の構成とすることは、参考資料1及び引用文献2に基づき当業者が容易に想到できたことです。
また、参考資料1の段落0008には、分離カラムからの溶出液のバックグラウンド導電率を安定させて高感度測定を安定的に行なうことができるようにすることを目的とすることが参考資料1の発明の課題として記載されています。
すなわち、参考資料1には、上記意見書において本件特許権者が述べた本件特許の課題と同一の課題が記載されており、これを解決し得る本件特許の請求項1に係る発明における上記e)の構成に想到し得る動機づけが存在します。
なお、上記意見書において本件特許権者が主張する、本件特許の請求項1に係る発明の他の構成(a)〜d)及びf))は、本件特許権者も認めているように、引用文献1〜5に基づき容易に想到できるものです。
したがって、本件特許の請求項1、及び、これを引用する請求項2〜4に係る発明は、引用文献1〜5及び参考資料1に基づき容易に想到できるものです。」

上記主張について検討すると、甲2号証(引用文献2)には、「検出器3」を「第2恒温槽」内に収容している点は記載されているものの、検出回路については何ら特定されていないことから、甲2号証において、セル部と検出回路とを同じ温度に制御しなければならないという課題が示唆されているとはいえないから、「e)前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され」ている点を、甲2号証より当業者が容易に想到できるとはいえない。
また、参考文献1には、恒温槽30はヒートブロック18の外周面に密着して覆う例えばステンレスなどの熱伝導性ブロックで構成」されていることが記載されているものの、「恒温槽30」内には、「溶出液流路形成部材14a」及び「再生液流路形成部材14b」が収容されているものであって、「導電率計26」及び検出回路は収容されていないから、参考文献1においても、セル部と検出回路とを同じ温度に制御しなければならないという課題が示唆されているとはいえないから、「e)前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され」ている点は、参考文献1を参酌しても、当業者が容易に想到できるものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を流通させるセル及び前記セル中の液を流れる電流を測定するための一対の測定電極を有するセル部と、
前記測定電極と電気的に接続され、前記測定電極間を流れる電流値を検出し、その検出値に基づいた信号を出力するように構成された検出回路と、
前記検出回路から出力された信号を取り込んで信号処理を行なうように構成された処理部と、を少なくとも備え、
前記セル部と前記検出回路とが、共通の筐体内に収容されて一体の検出装置をなしており、イオンクロマトグラフの分析カラムの温度を調節するためのカラムオーブン内に収容されるように構成されており、前記共通の筐体が熱伝導性材料によって構成されることにより、前記カラムオーブン内の熱を前記セル部と前記検出回路とに伝えるように構成され、
前記筐体内に配置された熱交換ブロックをさらに備え、前記熱交換ブロックの内部には前記セルの入口に通じる流路が設けられ、かつ、前記熱交換ブロックにヒータと温度センサとが取り付けられており、前記熱交換ブロックにおいて前記セルに導入される前の液を温度調整する、電気伝導度検出器。
【請求項2】
前記検出回路は、前記測定電極間を流れる電流の大きさを検出するアナログ回路を少なくとも含む請求項1に記載の電気伝導度検出器。
【請求項3】
前記検出回路は、前記アナログ回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号へ変換して前記処理部へ出力するように構成されたA/D変換回路を含む請求項2に記載の電気伝導度検出器。
【請求項4】
分析流路と、
前記分析流路において移動相を送液する送液装置と、
前記分析流路中に試料を注入する試料注入部と、
前記分析流路上における前記試料注入部よりも下流において、前記試料注入部により注入された試料を成分ごとに分離する分析カラムと、
前記分析流路上における前記分析カラムよりも下流において、前記分析カラムからの溶出液の電気伝導度を測定することにより前記分析カラムにより分離されたイオン性の試料成分を検出する、請求項1から3のいずれかに記載の電気伝導度検出器と、
前記分析カラムを内部に収容して前記分析カラムの温度を設定された温度に調節する前記カラムオーブンと、を備えているイオンクロマトグラフ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-09 
出願番号 P2019-500144
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 福島 浩司
樋口 宗彦
登録日 2020-12-14 
登録番号 6809594
権利者 株式会社島津製作所
発明の名称 電気伝導度検出器及びイオンクロマトグラフ  
代理人 阿久津 好二  
代理人 江口 裕之  
代理人 岸本 雅之  
代理人 岸本 雅之  
代理人 妹尾 明展  
代理人 阿久津 好二  
代理人 江口 裕之  
代理人 妹尾 明展  
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