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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1385196
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-02 
確定日 2022-05-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6823622号発明「生薬等含有医薬組成物(陸)」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6823622号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯及び証拠方法
1 手続の経緯
特許第6823622号(請求項の数6。以下「本件特許」という。)は、2013年(平成25年)4月24日に出願した国際出願(特願2014−522466号、優先権主張平成24年6月25日)の一部を、平成28年10月19日に新たな特許出願(特願2016−205044号)としたものの一部を、平成29年8月10日に新たな特許出願(特願2017−154923号)としたものの一部を、平成30年7月9日に新たな特許出願(特願2018−129618号)としたものであって、令和3年1月13日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年2月3日である。)。
その後、本件特許の請求項1〜6に係る特許に対して、令和3年8月2日に、特許異議申立人である野田澄子(以下「申立人A」という。)により、また、令和3年8月3日に、特許異議申立人である安藤宏(以下「申立人B」という。)により、更に、令和3年8月3日に、特許異議申立人であるジュネスプロパティーズ(以下「申立人C」という。)により、特許異議の申立て(以下、順に「申立A」、「申立B」、「申立C」といい、対応する特許異議申立書を、順に「申立書A」、「申立書B」、「申立書C」という。)がされた。

申立以降の手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 8月 2日 特許異議申立書(申立書A)の提出
(申立人A)
同年 8月 3日 特許異議申立書(申立書B)の提出
(申立人B)
同日 特許異議申立書(申立書C)の提出
(申立人C)
同年11月16日付け 取消理由通知書及び審尋
令和4年 1月21日 意見書及び回答書の提出(本件特許権者)
同年 2月17日 上申書(以下「上申書C」という。)の提出
(申立人C)
同年 2月21日 上申書(以下「上申書B」という。)の提出
(申立人B)

2 証拠方法
甲A1:最終報告書(不溶性異物試験 試験1、試験番号:2106040−1、株式会社ケー・エー・シー作成)
甲A2:特開2015−98469号公報
甲A3:最終報告書(不溶性異物試験 試験2、試験番号:2106040−2、株式会社ケー・エー・シー作成)
甲B1:医薬品インタビューフォーム「経皮吸収型鎮痛・抗炎症剤 ロキソニン(R)ゲル1%」、2010年10月改定(当審注:(R)は○で囲まれたRの文字を表す。以下同じ。)
甲B2:「OTCゼミナール 外用消炎鎮痛剤」、Nikkei Drug Information、2004.12、p.77〜81
甲B3:「第十六改正 日本薬局方」1.エキス剤 19
甲B4「OTC医薬品事典(一般用医薬品集第12版)2010〜’11」平成22年4月20日発行、株式会社じほう、p.404〜p.405、p.408〜p.411
甲B5:「医薬品添加物規格 2003」株式会社薬事日報社、平成15年8月8日発行、p.476
甲B6:特開平5−105628号公報
甲B7:「ロキソプロフェンナトリウム含有水性貼付剤(LX−A)の抗炎症、鎮痛作用」、臨床医薬、22巻3号(3月)、2006、p.179(21)〜p.186(28)
甲B8:特公昭60−44344号公報
甲B9:特開2003−95842号公報
甲B10:特開2011−74032号公報
甲B11:「ロキソプロフェンナトリウム含有テープ剤(LX−P)の抗炎症および鎮痛作用」、Progress in Medicine、Vol.28、No.4、2008.4、p.125(1007)〜p.130(1012)
甲B12:韓国10−2005−0078679号公報
甲B13:特開2008−163017号公報
甲B14:特開2013−18745号公報
甲B15:「分析・試験報告書 沈殿確認試験_試験その1」(受注番号:8773697)株式会社住化分析センター発行 2021年7月29日
甲B16:「分析・試験報告書 沈殿確認試験_試験その2」(受注番号:8773698)株式会社住化分析センター発行 2021年7月29日
甲B17:特開2001−199883号公報
甲B18:再公表特許WO2009/075324
甲B19:特開平11−199520号公報
甲C1:第十五改正日本薬局方解説書 生薬等、東京廣川書店、2006年、D−485〜487頁
甲C2:Cafer Turgut et.al.,Environ Sci & Pollut Res,11(1)、p.7−10,2004
甲C3:小菅貞良ら、蕃椒辛味成分に関する研究(第12報) 辛味成分の利用について、日本食品工業学会誌、第9巻第2号、1962年4月、69〜73頁
甲C4:農林水産省ホームページの「カプサイシンに関する詳細情報」、〈https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/capsaicin/syousai/>、更新日:2021年6月11日
甲C5::医薬品添加物規格2003、株式会社薬事日報社、平成15年8月8日、201頁
甲C6:β−カロテン標準品の安全データシート、富士フイルム和光純薬株式会社、2021年4月7日改訂
甲C7:新化粧品ハンドブック、日光ケミカルズ株式会社等、平成18年10月30日、377頁
甲C8:特表2008−521815号公報
甲C9:特開2010−142205号公報
甲C10:特開2003−195号公報
甲C11:特表2011−509984号公報
甲C12:改訂増補 トウガラシー辛味の科学、株式会社幸書房、2008年10月10日、32〜33頁
甲C13:医薬品添加物規格2003、株式会社薬事日報社、平成15年8月8日、476頁
甲C14:特開2004−331651号公報
甲C15:特開2001−288046号公報
甲C16:特開昭57−185215号公報
甲C17:特公昭60−44344号公報
甲C18:特開平5−208907号公報
甲C19:特開2003−95842号公報
甲C20:「チールA 外用消炎鎮痛液剤/塗り薬」の説明文書、株式会社トクホン、2005年9月改訂
甲C21:日薬連発第170号の「別添2 医薬品添加物記載名称の指針」の1頁、「別表 医薬品添加物成分の記載名称リスト(医薬品添加物事典収載成分)」の5頁、日本製薬団体連合会、ウェブサイト<http://www.fpmaj.gr.jp/jisyu/documents/nybl70.pdf〉からダウンロード、平成14年3月13日
甲C22:「サロンパス(R)ローション」の添付文章、久光製薬株式会社、ウェブサイト<https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/〉からダウンロード、2008年6月25日
甲C23:第十四改正日本薬局方、13〜14頁、ウェブサイト<https://jpdb.nihs.go.jp/jpl4/〉からダウンロード、2001年3月30日
甲C24:一般用医薬品 添付文書作成の手引き、株式会社じほう、平成24年1月10日、171〜173頁
甲C25:特願2014−211334の審査において通知された平成30年8月29日付の拒絶理由通知書
甲C26:株式会社ニコダームリサーチによる試験報告書(試験番号:NDR−0008781)、2021年7月28日
甲C27:株式会社ニコダームリサーチによる試験報告書(試験番号:NDR−0008782)、2021年7月28日
甲C28:JAPAN TESTING LABORATORIES株式会社による試験結果報告書(管理No.202106300019、試験1:不溶物確認試験)、2021年7月27日
甲C29:特開2018−30829号公報
甲C30:特開昭59−107149号公報
甲C31:JAPAN TESTING LABORATORIES株式会社による試験結果報告書(管理No.202106300019、試験2:沸点測定試験))、2021年7月27日
甲C32:塩川 優一、「非ステロイド性抗炎症剤」、Pharma Medica、Vol.6、No.1、1998年、56〜59頁
甲C33:浜本 哲和ら、「ロキソプロフェンナトリウム含有水性貼付剤(LX−A)の抗炎症、鎮痛作用」、臨床医薬、第22巻第3号、2006年3月、179〜186頁
甲C34:特開2016−108260号公報
乙1:試験報告書、2022年1月18日、興和株式会社
乙2:製品要覧、第93頁、1999年8月、日本粉末薬品株式会社
乙3:トウガラシエキスB試験成績書、2016年11月10日、日本粉末薬品株式会社

なお、異議申立人野田澄子、安藤宏、ジュネスプロパティーズ株式会社が、それぞれ提出した甲第●号証を、甲A●、甲B●、甲C●のように連続番号を付して記載した。
また、本件特許権者が提出した乙第●号証は、乙●のように連続番号を付して記載した。
いずれも「●」は証拠番号である。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」〜「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された、以下のとおりのものであると認められる。

「【請求項1】
ノナン酸バニリルアミドと、ロキソプロフェン又はその塩とを含有し、且つ含水組成物である医薬組成物。

【請求項2】
ロキソプロフェン又はその塩を、医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で0.5〜20質量%含有し、且つノナン酸バニリルアミドを、医薬組成物全質量に対して0.001〜0.5質量%含有する、請求項1に記載の医薬組成物。

【請求項3】
ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対して、ノナン酸バニリルアミドを0.001〜0.02質量部含有するものである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。

【請求項4】
非経口投与されるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【請求項5】
半固形又は液状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【請求項 6】
リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤又はパップ剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。」

第3 令和3年11月16日付け取消理由通知について
1 取消理由通知の概要
(1)取消理由1(サポート要件)の概要
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

上記取消理由は、申立人Aによる甲A1及び甲A3に基づく特許異議申立理由である特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)に係る理由(以下「申立理由A1」という。)、及び、申立人Cによる甲C1、甲C2、甲C5、甲C7に基づく特許異議申立理由である特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)に係る理由(以下「申立理由C1」という。)に相当する。

(2)取消理由2(実施可能要件)の概要
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

上記取消理由は、申立人Aによる甲A1及び甲A3に基づく特許異議申立理由である特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)に係る理由(以下「申立理由A2」という。)、及び、申立人Cによる甲C1、甲C2、甲C5、甲C7に基づく特許異議申立理由である特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)に係る理由(以下「申立理由C2」という。)に相当する。

(3)取消理由3(進歩性)の概要
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(甲B6)に記載された発明、下記の刊行物(甲B7)に記載された事項及び周知技術に基いて本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許の請求項1〜6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(甲B10)に記載された発明、下記の刊行物(甲B11)に記載された事項及び周知技術に基いて本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

上記取消理由は、申立人Bによる特許異議申立理由のうち、甲B6を主引例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に係る理由(以下「申立理由Bその2」という。)、及び、甲B10を主引例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に係る理由(以下「申立理由Bその3」という。)に相当する。

2 取消理由についての判断
(1)取消理由1(サポート要件)についての判断
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

ア 本件特許の発明の詳細な説明の記載
(ア)
「【0007】
本発明の課題は、保存安定性に優れた生薬等含有医薬組成物、並びに生薬等含有医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供することにある。」(【0007】)

(イ)
「【0008】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、オウバク、カンゾウ、サンショウ、セイヨウトチノキ種子及びトウガラシから選ばれる生薬やそれらの抽出物、あるいはグリチルレチン酸とともに、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、保存安定性に優れた医薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B)
(A)次の成分(A−1)〜(A−6)から選ばれる1種以上
(A−1)オウバク又はその抽出物
(A−2)カンゾウ又はその抽出物
(A−3)グリチルレチン酸又はその塩
(A−4)サンショウ又はその抽出物
(A−5)セイヨウトチノキ種子又はその抽出物
(A−6)トウガラシ又はその抽出物
(B)ロキソプロフェン又はその塩
を含有する医薬組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する、オウバク若しくはその抽出物、カンゾウ若しくはその抽出物、グリチルレチン酸若しくはその塩、サンショウ若しくはその抽出物、セイヨウトチノキ種子若しくはその抽出物、又はトウガラシ若しくはその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定化剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する、オウバク若しくはその抽出物、カンゾウ若しくはその抽出物、グリチルレチン酸若しくはその塩、サンショウ若しくはその抽出物、セイヨウトチノキ種子若しくはその抽出物、又はトウガラシ若しくはその抽出物を含有する医薬組成物の安定化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生薬等を含有しつつも保存安定性に優れた医薬組成物を提供することができる。」(【0008】〜【0012】)

(ウ)
「【0037】
<成分(A−6)>
「トウガラシ」(蕃椒)とは、第十六改正日本薬局方に記載のとおり、トウガラシ(Capsicum annuum Linne(Solanaceae))の果実を意味する。トウガラシは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、トウガラシを粉末とした「トウガラシ末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、トウガラシに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「トウガラシの抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「トウガラシの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、トウガラシを必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「トウガラシの抽出物」に包含される。
さらに、本発明において、トウガラシの抽出物としては、トウガラシの主成分である公知のカプサイシノイドを用いてもよい。当該カプサイシノイドとしては、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドが好ましい。
本発明において、トウガラシ又はその抽出物としては、トウガラシ軟エキス、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドや第十六改正日本薬局方に記載のトウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキが好ましく、トウガラシ軟エキスが特に好ましい。
【0038】
トウガラシの抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したオウバクの抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0039】
本発明において、トウガラシ又はその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、トウガラシエキスB、(局)トウガラシ末(以上、日本粉末薬品株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
本発明の医薬組成物におけるトウガラシ又はその抽出物の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよい。本発明においては、トウガラシ又はその抽出物を原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.01〜15質量%含有するものが好ましく、0.05〜10質量%含有するものがより好ましく、0.1〜8質量%含有するものが特に好ましい。また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、カプサイシノイドを医薬組成物全質量に対して0.0001〜1質量%含有するものが好ましく、0.0005〜0.5質量%含有するものがより好ましく、0.001〜0.1質量%含有するものがさらに好ましく、0.005〜0.02質量%含有するものが特に好ましい。
【0041】
また、本発明の医薬組成物に含まれるトウガラシ又はその抽出物と、ロキソプロフェン又はその塩との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、トウガラシ又はその抽出物を原生薬換算量で0.01〜15質量部含有するものが好ましく、0.05〜10質量部含有するものがより好ましく、0.1〜8質量部含有するものが特に好ましい。また、トウガラシ又はその抽出物としてカプサイシン、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合においては、ロキソプロフェン又はその塩をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、カプサイシノイドを0.0001〜1質量部含有するものが好ましく、0.0005〜0.5質量部含有するものがより好ましく、0.001〜0.1質量部含有するものがさらに好ましく、0.005〜0.02質量部含有するものが特に好ましい。
【0042】
<成分(B)>
本発明において、「ロキソプロフェン又はその塩」には、ロキソプロフェンそのもののほか、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらにはロキソプロフェンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名: Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
【0043】
本発明の医薬組成物におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は特に限定されず、保存安定性改善作用に応じて適宜検討して決定すればよいが、保存安定性の観点から、ロキソプロフェン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が更に好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により製造することができる。
また、剤形は、特に限定されるものではなく、固形状、半固形状、液状のいずれの形状であってもよく、その利用目的等に応じて医薬品において通常利用される形状とすることができる。例えば、経口投与する製剤(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等)、膣に適用する製剤(膣錠、膣用坐剤等)、皮膚等に適用する製剤(外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等)などの、第十六改正日本薬局方 製剤総則に記載の剤形とすることができる。これらの中でも、半固形状又は液状の製剤であるのが好ましく、特に、経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形であるのが好ましく、リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤及びパップ剤から選ばれる剤形であるのが特に好ましい。
【0045】
また、本発明の医薬組成物は、半固形状又は液状の組成物であるのが好ましく、含水組成物(水を含有する半固形状又は液状の組成物を意味し、より詳細には、組成物中に水を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10〜80質量%含有する組成物を意味する。)であるのがより好ましい。当該半固形状又は液状の組成物は、上記半固形状又は液状の製剤として製剤化できる。後記実施例に具体的に開示のとおり、ロキソプロフェン又はその塩が、溶液中における生薬等に起因する沈殿や不溶物生成、分離、あるいは着色を抑制することが確認され、生薬等を可溶化することが示唆されている。」(【0037】〜【0045】)

(エ)
「【0086】
[試験例6]トウガラシ又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性の検討
以下のサンプル6−A及び6−Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1日保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表6に示す。
【0087】
<サンプル6−A>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル6−Aを得た。
<サンプル6−B>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)20gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル6−Bを得た。
【0088】
【表6】

【0089】
表6記載の試験結果から明らかなとおり、トウガラシエキスのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル6−A)においては、保存開始直前から少量の不溶物の生成が見られ、80℃1日保存後において不溶物量の増加が見られたが、トウガラシエキスに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル6−B)においては、80℃1日保存後も沈殿の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、トウガラシ又はその抽出物を含有する含水組成物の沈殿生成を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてトウガラシ又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0090】
以上の試験結果から、トウガラシ又はその抽出物とともにロキソプロフェン又はその塩を含有する医薬組成物が優れた保存安定性を示すことが明らかとなった。」(【0086】〜【0090】)

イ 本件特許権者が令和2年3月16日に提出した手続補正書(方式)に添付した参考資料1「日本粉末薬品株式会社 製品要覧 93頁」(以下「参考資料1」という。)(当審注:乙2に同じ。)


」(93頁)

ウ 本件発明の課題について
上記ア(イ)の記載からみて、本件発明における「生薬」に該当する成分は「ノナン酸バニリルアミド」であるので、本件発明が解決すべき課題(以下「本件発明の課題」という。)は、上記ア(ア)の記載によれば、ノナン酸バニリルアミド及び水を含む組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供することであるといえる。

エ 本件発明の課題の解決手段について
「ノナン酸バニリルアミド」は、トウガラシの抽出物に含まれる成分であり(甲B9【0006】、甲C19【0006】)、本件発明では、上記課題を解決する手段として、トウガラシの抽出物に含まれるノナン酸バニリルアミドと、ロキソプロフェン又はその塩とを含有し、且つ含水組成物という構成を採用している(上記ア(イ)及びア(ウ))。
ここで、上記ア(エ)の試験例6では、不溶物の生成の程度を目視により評価していることから、上記課題における「保存安定性に優れた」とは、具体的には、不溶物の生成が抑制されることであるといえる。
また、上記ア(エ)の試験例6で用いられた「トウガラシエキスB」は、参考資料1によれば、トウガラシの80%エタノール抽出物であると認められるから、上記試験例6の結果は、トウガラシの水/エタノール混液抽出物の保存安定性が、ロキソプロフェンを添加することによって改善されることを示すものである。

なお、「ノナン酸バニリルアミド」は「ノニル酸ワニリルアミド」、「ノニル酸バニリルアミド」とも表記される(甲B5の476頁のタイトル、甲B6の【請求項1】、【0008】、【0026】、甲C13の476頁のタイトル)ものであるから、以下、「ノニル酸ワニリルアミド」及び「ノニル酸バニリルアミド」は、「ノナン酸バニリルアミド」と表記することがある。

(1−1)甲A1、甲A3に基づく取消理由1(「申立理由A1」に相当)
ア 甲号証等の記載について
甲A1、甲A3には、以下の事項が記載されている。

(ア)甲A1
A1a


」(3/8頁)

A1b


」(4/8頁)

A1c


」(7/8頁)

A1d


」(8/8頁)

摘記A1a及びA1bによれば、甲A1には、トウガラシエキス(アルプス薬品工業株式会社製:商品名 トウガラシエキス−Z、トウガラシの80%エタノール抽出物)0.5g(原生薬換算量 6.25g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(株式会社エーピーアイコーポレーション製:商品名 ロキソプロフェンナトリウム水和物)20gを精製水中で攪拌した調製液2(全量100g)と、トウガラシエキスのみを単独で精製水中で攪拌した調製液1(全量100g)を用いた試験において、調製液1及び調製液2ともに、調剤直後には不溶物が無い状態であったが、50℃8日間保存後では不溶物がある状態となったことを示す結果が記載されている。

(イ)甲A3
A3a


」(3/8頁)

A3b


」(4/8頁)

A3c


」(7/8頁の上段)

A3d


」(8/8頁の上段)

摘記A3a及びA3bによれば、甲A3には、ノナン酸バニリルアミド0.5g及びロキソプロフェンナトリウム水和物20gを精製水中で攪拌した調製液2(全量100g)と、ノナン酸バニリルアミドのみを単独で精製水中で攪拌した調製液1(全量100g)を用いた試験において、調製液1及び調製液2ともに、調剤直後においても50℃8日間保存後においても、不溶物がある状態であったことを示す結果が記載されている。

イ 当審の判断
(ア)請求項1について
上記ア(ア)及び(イ)で説示した甲A1及び甲A3に記載の試験は、50℃で8日間という保存条件で実施されたものであるのに対し、本件特許の発明の詳細な説明に記載された試験は、80℃で1日間という保存条件で実施されたものであることからみて、両者は異なる保存条件で実施されたものである。
一般に、保存条件が異なれば、試験結果も異なるものとなることは当業者に自明の技術的事項である一方、一般に温度が10℃上昇すると反応は2倍に加速されると言われており、異なる反応条件であっても同程度の結果と推定される場合があることも一般に知られている(本件特許の出願後に公開された甲C34の【0034】等。)。
しかしながら、甲C34の【0034】には、「一般に温度が10℃上昇すると反応は2倍に加速されると言われるので、・・・(ただし、いずれにしても長期保存および加速試験のデータは申請上必要であるため、別途試験する必要はある。)」とも記載されていることからすれば、甲A1及び甲A3に記載の試験による評価は、本件発明1の保存安定性の評価としては推定の域を出ないものである。

そして、本件特許権者が令和2年3月16日に提出した手続補正書(方式)に記載されているように、ノナン酸バニリルアミドは、カプサイシンと化学構造が極めて近似しているものであって、ノナン酸バニリルアミドの水に対する飽和溶解度もカプサイシンと同程度であると推認できること、本件特許の発明の詳細な説明には、保存条件を80℃で1日間としたときに、精製水とトウガラシエキスBとロキソプロフェンナトリウム水和物とからなるサンプル6−Bが、精製水とトウガラシエキスBとからなるサンプル6−Aよりも保存安定性が向上したことが記載されていること(上記(1)ア(エ))、及び、トウガラシエキスBにはカプサイシンが含まれていること(上記(1)ア(ウ))、を踏まえると、発明の詳細な説明には、保存安定性が優れたノナン酸バニリルアミド含有医薬組成物を提供するという本件発明の課題が解決できることが裏付けられているといえる。

仮に、保存条件が異なる甲A1及び甲A3に記載の試験による結果が、本件発明の保存安定性を評価したものといえるとしても、甲A1に記載の試験による結果は、ロキソプロフェンを添加した調整液2の外観からみて、調整液1よりもはっきりと背景が透けて見えており(摘記A1c及びA1d)、また、甲A3に記載の試験による結果は、ロキソプロフェンを添加した調整液2の外観からみて、調整液1よりも不溶物の量が少ない(摘記A3c及びA3d)ことから、トウガラシエキスのみ(甲A1の調整液1)、あるいはノナン酸バニリルアミドのみ(甲A3の調整液1)と比較して、ロキソプロフェンを更に含む甲A1の調整液2や甲A3の調整液2は、不溶物の生成が抑制されているといえることから、保存安定性が優れたノナン酸バニリルアミド含有医薬組成物を提供するという本件発明の課題が解決できることを裏付けるものであるといえる。

(イ)請求項2〜6について
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜6に係る本件発明2〜6は、本件発明1の成分の配合割合、投与方法、剤形等を特定するものであるが、上記(ア)で述べたことや、出願時の技術常識を踏まえれば、本件発明の課題(上記(1)ウ)を解決できることを当業者が認識できるといえる。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人Aの主張について
申立人Aは、申立書Aにおいて、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたサンプル6−Bを再現した甲A1及び甲A3の調整液2は、50℃8日間保存した後において不溶物がある状態であったから、本件発明は、ノナン酸バニリルアミドに起因する不溶物の生成という課題を、ロキソプロフェン又はその塩を用いることによって解決できるとは認識できない旨主張する(申立書A 5頁1行〜7頁最終行、9頁下から7行〜11頁11行)。
しかしながら、本件特許の解決すべき課題は、上記(1)ウ、エのとおりであるから、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、これを含有しない場合と比較して相対的に不溶物の生成が抑えられることによって達成できるものであることが理解できる程度の記載があれば十分である。
そして、上記イ(ア)で説示したように、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許の課題が解決できると当業者が認識できる程度に記載されているといえる。
したがって、申立人Aの上記主張は採用することができない。

(イ)申立人Cの主張について
申立人Cは、上申書Cにおいて、本件特許の発明の詳細な説明に記載された試験例6の試験条件にアレニウスの式を適用できなければ、当該試験例6は、80℃1日間という保存条件の場合においてのみ生じる事象を検証しているに過ぎないことになり、保存安定性を評価するための加速試験には該当せず、医薬分野で「保存安定性に優れた」ことを検証していないことになるから、保存条件が特定されていない本件発明は、課題を解決できない範囲が含まれることになる旨主張する(上申書C 3頁2行〜下から5行)。
しかしながら、上記イ(ア)で説示したように、甲A1及び甲A3に記載の試験による評価はともかく、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許の課題が解決できると当業者が認識できる程度に記載されているといえる。
したがって、申立人Cの上記主張は採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1〜6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1(1 理由1(サポート要件)(2)甲A1、甲A3に基づく理由1)により取り消すことはできない。

(1−2)甲C1、甲C2、甲C5、甲C7に基づく取消理由1 (「申立理由C1」に相当)
ア 甲号証等の記載について
甲C1、甲C2、甲C5、甲C7には、以下の事項が記載されている。
(ア)甲C1
甲C1には、以下の事項が記載されている。


」(D−485頁)



」(D−486頁)

そうすると、甲C1には、95vol%のエタノールでトウガラシを抽出した「トウガラシチンキ」の総カプサイシンは0.010w/v%であって、カプサイシンなどの辛味成分以外にカロチノイド色素が同時に抽出されてくることが記載されているといえる。

(イ)甲C2
甲C2には、200mgのカプサイシンと10mlの蒸留水を調合・攪拌し、未溶解のカプサイシンを沈殿させた上澄みを抽出して高速液体クロマトグラフ(HPLC)でカプサイシンの飽和溶解度を分析したこと(8頁左欄7〜19行)、HPLC分析の結果、カプサイシンの飽和溶解度は、60mg/lと同定されたこと(8頁左欄下から3行〜右欄6行)が記載されている。
そうすると、甲C2には、カプサイシンの水に対する飽和溶解度は、60mg/l程度であることが記載されているといえる。

(ウ)甲C5
甲C5には、以下の事項が記載されている。



」(201頁「性状」)

そうすると、甲C5には、β−カロテンは、エタノールに極めて溶けにくく、水にほとんど溶けないものであることが記載されているといえる。

(エ)甲C7
甲C7には、以下の事項が記載されている。



」(377頁)

そうすると、甲C7には、トウガラシをエタノールで抽出したトウガラシチンキには、カプサイシンのほか、β−カロチン(当審注:β−カロテンと同義)が含まれていることが記載されているといえる。

(オ)参考資料1
参考資料1には、上記2(1)イで示した事項が記載されている。
そうすると、参考資料1には、日局トウガラシチンキが(日局)トウガラシのエタノール製チンキであり、「原料:製品=0.1:1」の成分が含まれるものであること、及び、トウガラシエキス−Bが(日局)トウガラシの80%エタノール製エキスであり、「原料:製品=12.5:1」の成分が含まれるものであることが記載されているといえる。

イ 当審の判断
(ア)請求項1について
日局トウガラシチンキが(日局)トウガラシのエタノール製チンキであり、「原料:製品=0.1:1」の成分が含まれるものであること、及び、トウガラシエキス−Bが(日局)トウガラシの80%エタノール製エキスであり、「原料:製品=12.5:1」の成分が含まれるものであること(上記ア(オ))から、トウガラシエキス−Bは、トウガラシチンキの125倍の濃度の成分を含むものであるといえる。
そして、トウガラシをエタノールで抽出したトウガラシチンキには、カプサイシンが0.010w/v%以上含まれるものである(上記ア(ア))ことからみて、トウガラシエキス−Bには、1.25w/v%以上のカプサイシンを含むものであるといえる。
ここで、上記試験例6に記載されたサンプル6−A(上記(1)ア(エ))には、エタノール抽出物であるトウガラシエキスBを0.5重量%含んでいることからみて、1.25×0.5=6.25重量%、すなわち、62.5mg/L以上の濃度のカプサイシンが含まれるといえる。
一方、カプサイシンの水に対する飽和溶解度は、60mg/L程度であることは本願出願時の当業者に知られた技術的事項であったといえる(上記ア(イ))から、上記試験例6に記載されたサンプル6−Aに含まれるカプサイシン濃度(62.5mg/L以上)は、カプサイシンの水に対する飽和溶解度を超える濃度であるといえる。
そうすると、トウガラシエキスを精製水に溶解・懸濁して作成された上記サンプル6−Aには、カプサイシンが飽和溶解度を超える濃度で存在していることから、上記サンプル6−Aにおいて生じた沈殿は、カプサイシンの沈殿であると推認することができる。
一方、上記サンプル6−Aにロキソプロフェンナトリウム水和物を更に含むサンプル6−Bにおいては、沈殿は生じていないことから、カプサイシンが飽和溶解度を超える濃度で存在していたとしても、ロキソプロフェンナトリウム水和物によって、沈殿が抑制されることが示されているといえる。
ここで、本件特許権者が令和2年3月16日に提出した手続補正書(方式)に記載されているように、ノナン酸バニリルアミドは、カプサイシンと化学構造が極めて近似しているものであることが、本願出願時の当業者に知られていたことを踏まえると、ノナン酸バニリルアミドの水に対する飽和溶解度も、カプサイシンと同程度(60mg/L程度)であると推認することができる。
そうすると、当業者は、カプサイシンと同様に、ノナン酸バニリルアミドが飽和溶解度を超える濃度で存在していたとしても、ロキソプロフェンナトリウム水和物によって、沈殿が抑制されることを理解できるといえる。
したがって、上記試験例6に示された結果と技術常識を参酌すれば、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、ノナン酸バニリルアミド、ロキソプロフェンの塩及び水を含む組成物である本件発明1により、本件発明の課題(上記(1)ウ)を解決できることを認識できるといえる。

(イ)請求項2〜6について
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜6に係る本件発明2〜6は、本件発明1の成分の配合割合、投与方法、剤形等を特定するものであるが、上記(ア)で述べたことや、出願時の技術常識を踏まえれば、本件発明の課題(上記(1)ウ)を解決できることを当業者が認識できるといえる。

ウ 申立人Cの主張について
申立人Cは、申立書Cにおいて、甲C1〜甲C7を提示して、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたサンプル6−Aは、カプサイシンは水への溶解度以下の濃度しか含まれていないから、サンプル6−Aを80℃で保存した後に生じている不溶物がカプサイシンに起因しているとまでは特定できず、一方、トウガラシエキスには水に難溶性であるβカロチン(当審注:βカロテンに同じ。)を含むものであるから、サンプル6−Aを80℃で保存した後に生じている不溶物はカプサイシン以外のβカロテンなどの水難溶性の成分に起因している可能性もあるから、トウガラシエキスと同じ課題が存在するノナン酸バニリルアミドについても、ロキソプロフェン又はその塩の配合によってその課題を解決できるとまでは認識できない旨主張する(申立書C 9頁13行〜11頁10行、上申書C 3頁下から4行〜5頁9行)。
しかしながら、上記イ(ア)で説示したように、本件特許の発明の詳細な説明の試験例6で使用されたトウガラシエキスBのカプサイシン含量が飽和溶解度を超えるものであって、当業者は、サンプル6−Aを80℃で保存した後に生じている不溶物がカプサイシンに起因していることを認識できるものであるから、乙1〜3の記載にかかわらず、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許の課題が解決できると当業者が認識できる程度に記載されているといえる。
したがって、申立人Cの上記主張は採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1〜6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1(1 理由1(サポート要件)(3)甲C1、甲C2、甲C5、甲C7に基づく理由1)により取り消すことはできない。

(1−3)まとめ
(1−1)及び(1−2)のとおり、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項1号に規定する要件(サポート要件)に適合しているといえる。

(2)取消理由2(実施可能要件)についての判断
ア 発明の詳細な説明の記載が、本件発明1〜6について実施可能要件を満たすというためには、本件特許の出願時の技術常識を参酌し、発明の詳細な説明の記載から、本件発明1〜6が医薬組成物として使用できることを、当業者が理解できることが必要である。
そして、発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明1〜6が医薬組成物として使用できるというためには、本件発明1〜6により、ノナン酸バニリルアミド及び水を含む組成物が、医薬組成物として使用できる程度の保存安定性を有することが必要である。

イ 上記(1−1)及び(1−2)で説示したように、本件特許出願時の技術常識を参酌すれば、発明の詳細な説明の記載から本件発明1〜6により、ノナン酸バニリルアミド及び水を含む組成物が、ノナン酸バニリルアミドの不溶物を生じずに、医薬組成物として使用できる程度の保存安定性を有することを当業者が理解できるといえる。
したがって、本件特許出願時の技術常識を参酌すれば、発明の詳細な説明の記載から、本件発明1〜6の医薬組成物を製造することができ、また、医薬として使用できることを当業者が理解できるといえる。

ウ 発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜6に関し、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)に適合しているといえる。

(3)取消理由3(進歩性)についての判断
(3−1)甲号証について
本件特許の出願前に公表された甲B1〜甲B12、甲B17〜甲B19、甲C13〜甲C28、甲C32、甲C33には、以下の記載がある(外国語で記載された文献についてはその翻訳文を示す。)。

ア 甲B1に記載された事項
B1a


」(表紙)

B1b
「III.有効成分に関する項目
1.物理化学的性質
(1)外観・性状
白色〜帯黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。
(2)溶解性
水又はメタノールに極めて溶けやすく、エタノール(95)に溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。」(3頁)

B1c
「IV.製剤に関する項目
1.剤形
(1)投与経路
経皮
(2)剤形の区別、規格及び性状
剤形:軟膏剤
規格:「IV.2.製剤の組成」参照
性状:無色〜微黄色透明のゼリー状の軟膏剤で、芳香を有する。
(3)製剤の物性
・・・
2.製剤の組成
(1)有効成分(活性成分)の含量
1g中にロキソプロフェンナトリウム水和物(日局)11.3mg(無水物として10mg)を含有する
(2)添加物
エタノール、1,3−ブチレングリコール、ヒプロメロース、カルボキシビニルポリマー、トリエタノールアミン」(5頁)

イ 甲B2に記載された事項
B2a
「外用消炎鎮痛剤は一般用医薬品製造承認基準が定める薬効群ではないため、効能や配合成分に特に決まりはないが、その多くは肩凝り、腰痛、筋肉痛、打撲、捻挫、関節痛、腱鞘炎などを効能としている。配合成分も、サリチル酸メチルやNSAIDsなどの抗炎症成分、ノニル酸ワニリルアミドなどの温感成分、l−メントールなどの冷感成分などが中心である。剤形は貼付剤(ブラスター剤、パップ剤)がメーンだが、ゲル、クリーム、ローション、スプレーなども用意されている。」(77頁左欄1〜13行)

ウ 甲B3に記載された事項
B3a
「11.6 ゲル剤
Gels
(1)ゲル剤は,皮膚に塗布するゲル状の製剤である.
本剤には,水性ゲル剤及び油性ゲル剤がある.
(2)本剤を製するには,通例,次の方法による.
(i)水性ゲル剤は,有効成分に高分子化合物,そのほかの添加剤及び精製水を加えて溶解又は懸濁させ,加温及び冷却,又はゲル化剤を加えることにより架橋させる.
(ii)油性ゲル剤は,有効成分にグリコール類,高級アルコールなどの液状の油性基剤及びそのほかの添加剤を加えて混和する.」(19頁左欄「11.6 ゲル剤)の項)

エ 甲B4に記載された事項
B4a


」(405頁左欄1段目)

B4b


」(408頁右欄1段目)

B4c


」(408頁右欄2段目)

B4d


」(409頁左欄2段目)

B4e


」(409頁右欄1段目)

B4f


」(409頁右欄2段目)

B4g


」(410頁右欄2段目)

B4h


」(411頁左欄1段目)

B4i



」(411頁中欄最下段〜右欄1段目)

オ 甲B5に記載された事項
B5a


」(476頁「タイトル」〜「性状」)


カ 甲B6に記載された事項及び甲B6に記載された発明
(ア)甲B6に記載された事項
B6a
「【請求項1】 インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤を0.1〜5.0重量%とカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを0.001〜0.1重量%含有することを特徴とする外用消炎鎮痛剤。」(請求項1)

B6b
「【0005】
【発明が解決するための課題】本発明は、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンからえらばれる少なくとも1種の成分の血液、筋肉及び関節液中への移行を促進することにより、これらの薬物の効果を改善した外用消炎鎮痛剤を提供するものである。」(【0005】)

B6c
「【0008】
【発明の実施態様】本発明に係る外用消炎鎮痛組成物は外用基剤にインドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも一種とカプサイシン及び/又はノニル酸バニリルアミドを配合してなるものである。この場合、ノニル酸バニリルアミドとしては合成品が用いられるが、カプサイシンとしては合成品、生薬抽出物を用いても、カプサイシンを含有する生薬末又は生薬エキス又は生薬チンキを用いてもよい。また、これらの配合量はノニル酸バニリルアミドの場合、0.001〜0.1重量%がこのましい。カプサイシンの場合は、合成品、生薬抽出物では0.001〜0.1重量%、カプサイシンを含有する生薬末では0.5〜10重量%、生薬エキスでは0.01〜1.0重量%、生薬チンキでは0.1〜10重量%が好ましい。この配合量以下の場合、カプサイシン及び/又はノニル酸バニリルアミドによる治療効果の改善が少なく、また、この配合量以上では、皮膚の発赤、かゆみ等の皮膚刺激が発生するため好ましくない。」(【0008】)

B6d
「【0009】本発明の外用消炎鎮痛組成物は、その剤形として、外用製剤であれば、いずれの剤形でも使用できるが、本発明をより効果的にするためには、液剤、軟膏剤、貼付剤の利用が好ましい。これらの剤形には、その剤形に応じて通常の基剤及び配合成分を含有させることができる。
【0010】例えば、液剤及び軟膏剤の場合、基剤としての溶媒、油成分、グリコール類、界面活性剤、水溶性高分子などが用いられるが、溶媒としては水、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンジルアルコールなどが、油成分としてはラノリン、硬化油、レシチン、プラスチベース、流動パラフィン、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ミツロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、セバチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、スクワラン、スクワレン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、シリコン油などが、グリコール類としてはグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが、界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテ、ポリオキシエチレンフィトステロール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが、水溶性高分子としてはカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸などが挙げられる。
【0011】また、貼付剤の場合、粘着性高分子、保湿剤、硬化剤、無機粉体、界面活性剤及び水などが用られるが、粘着性高分子としてはポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガムなどが、保湿剤としてはグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが、硬化剤としては硫酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、トリグリシジルイソシアネート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリグリセリンジグリシジルエーテルなどが、無機粉体としてはカオリン、無水ケイ酸、酸化亜鉛、酸化チタンなどが、界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテ、ポリオキシエチレンフィトステロール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
・・・
【0013】
【発明の効果】本発明にしたがうと、インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも一種の非ステロイド性抗炎症剤の皮膚からの吸収と皮膚深部への移行を高めることにより、治療効果が飛躍的に改善された外用消炎鎮痛剤が得られる。さらに本発明は、外用剤のあらゆる剤形に応用できる技術であり、液剤、軟膏剤、貼付剤などに広く利用されるものである。」(【0009】〜【0013】)

B6e
「【0014】
【実施例】
実施例1
インドメタシン、ケトプロフェン及びフルルビプロフェンから選ばれる少なくとも1種の非ステロイド性抗炎症剤とカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを配合した本発明品と本発明品よりカプサイシン及び/またはノニル酸バニリルアミドを除いた比較品を液剤配合組成(表1)、ゲル軟膏配合組成(表2)、貼付剤配合組成(表3)について抗炎症効果を比較した。」(【0014】)

B6f
「【0015】
【表1】


」【0015】

B6g
「【0018】実験方法は試験薬剤(液剤は0.2mlを塗布、軟膏は0.2gを塗布、パップ剤は3×3.5cmを貼付)をウィスター系ラット(日本チャールズ・リバー)雄、6週令の右足に投与し、1時間後に1%カラゲニン(LAMBA CARRAGEENIN,Minsei Rikagaku Co)溶液0.1mlを右足皮下に注射してから直ちに容積測定装置(Ugo Basile社)で測定した。2、4、6時間後にも同様の操作を行い、下記の式より浮腫率及び抑制率を算出した。なお、パップ剤の場合は、各時間毎に剥離して容積を測定する必要があり、同一薬剤を繰り返し使用することが困難なため、各時間毎に新しい薬剤に貼り変えた。
浮腫率 E(%)=(Vt−Vn)/Vn×100
Vt;カラゲニン注射t時間後の足蹠容積
Vn:カラゲニン注射直後の足蹠容積
抑制率 I(%)=(Ec−Et)/Ec×100
Et:試験薬剤群t時間後の浮腫率
Ec:対照群t時間後の浮腫率
【0019】評価結果は表4及び5に示した。表4及び5から明かなように、どの剤形においても、カプサイシン又はノニル酸バニリルアミドの配合により、インドメタシン、ケトプロフェン又はフルルビプロフェンの抗炎症効果が改善されていることが確認された。
【0020】
【表4】


【0021】
【表5】


」(【0018】〜【0021】)

B6h
「【0022】
【実施例2】上記実施例1の比較品1〜9と本発明品1〜9をヘアレスラット(埼玉実験動物、雄、7週令)の背部に投与(液剤は0.1mlを直径3cmの円内に塗布、軟膏は0.1gを直径3cmの円内に塗布、パップ剤は3×2cmを貼付)し、4時間後に全採血し、血清を分離後、HPLC法で各有効成分の血清中濃度を測定した。」(【0022】)

(イ)甲B6に記載された発明
甲B6には、摘記B6fに記載の実施例1の表1に記載された本発明品1から以下の発明が記載されていると認める。

「非ステロイド性抗炎症剤であるインドメタシン、l−メントール、ノニル酸バニリルアミド、アジピン酸ジイソプロピル、プロピレングリコール、ラウロマクグロール、精製水及びイソプロパノールからなる、液剤。」(以下「甲B6発明」という。)

キ 甲B7に記載された事項
B7a
「 非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)であるロキソプロフェンナトリウム(Sodium 2-[4-(2-oxocyclopentan-1-yl-methyl)phenyl]propionate dihydrate)は,生体内に取り込まれた後,5員環ケトンが還元されて,母体より強いシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を有するSRS配意のtrans-OH体に変換されて効力を発揮するプロドラッグ型薬物である1)2)。薬理学的な特徴は,強力な抗炎症,鎮痛および解熱作用を有し,特に鎮痛作用が著しく強く,NSAIDsの副作用のひとつである消化管障害が比較的弱いことである3)4)。」(180頁左欄1〜12行)

B7b
「1 被験物質及び対照物質
1)被験物質
被験物質はポリアクリル酸を主体とした水性基剤10g中にロキソプロフェンナトリウムを無水物として50mg,100mg,200mg及び400mgを含有する製剤(0.5%LX−A,1%LX−A,2%LX−A及び4%LX−A)で,各試験では2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした。
2)対照物質
対照物質は,被験物質からロキソプロフェンナトリウムを除いた基剤あるいは市販製剤のうちフルルビプロフェンを0.33%含有する製剤(以下FPと略す),ケトプロフェンを0.3%含有する製剤(以下KPと略す),フェルビナクを0.5%含有する製剤(以下FLと略す)及びインドメタシンを0.5%含有する製剤(以下IMと略す)で,被験物質と同様2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした。」(180頁左欄下から19〜3行)

B7c
「回復率では,1%LX−A群が最も高く70.5%であり,次いでFP群(40.2%),KP群(23.6%),FL群(8.9%),IM群(4.2%)であり,1%LX−A群はFL,KP及びIMに対して有意に高い値を示した(表5)」(184頁左欄下から1行〜185頁左欄最終行)

B7d
「表5 酵母懸濁液感染によって誘発される疼痛閾値に対するLX−A群及び他の湿布剤の鎮痛効果

群 動物数 回復率(%)
1%LX−A 8 70.5±7.0
FP 8 40.2±11.2
KP 8 23.6±9.1**
FL 8 8.9±4.0**
IM 8 4.2±4.2**

それぞれの値は8匹の動物の平均±標準誤差を表す
**;p<0.01:1%LX−A群から有意差がある。
(ダネットの多重比較検定)」(185頁 表5)

B7e
「鎮痛作用については,ラット足蹠イースト誘発疼痛モデルを用いて,・・・評価した。用量反応性の結果では,1%以上で有意な疼痛閾値の上昇を示し,基剤群に対して有意な鎮痛効果を示した。また比較試験では,1%LX−A群はFL,KP及びIM群に対して有意に鎮痛効果が高かったことから,1%LX−A群の鎮痛効果は市販製剤と同程度もしくはそれ以上であると示唆された。」(186頁左欄1〜11行)

B7f
「以上より,1%ロキソプロフェンナトリウム含有水性貼付剤は各種炎症モデルに対して十分な抗炎症および鎮痛作用を示し,既存製剤との比較試験においても同程度もしくはそれ以上の効果を示したことから,臨床においても十分な効果を発揮することが示唆された。」(186頁左欄「VI結語」の項)

ク 甲B8に記載された事項
B8a
「〔実施例3〕 外用消炎鎮痛剤
サリチル酸メチル 3.5g
サリチル酸グリコール 1.5g
l−メントール 5.0g
ノニル酸バニリルアミド 0.01g
カルボキシビニルポリマー〔ハイビスワコー105〕 0.25g
アルコール可溶性ナイロン〔ウルトラアミド1C〕 12.0g
溶剤(エタノール/水80/20 重比) 77.74g
溶剤にカルボキシビニルポリマーとアルコール可溶性ナイロンを加えて加熱溶解し、冷却後他の成分を加えて外用消炎鎮痛剤を得た。
本品は透明性に優れたゼリー剤となり、これを患部に塗布しても液剤のように流れ落ちることがなく、また乾燥造膜によつて薬物が保持され、薬効が持続した。また、本品は長期保存しても粘度が低下せず、ゲル状を保つた。」(10欄20〜38行)

ケ 甲B9に記載された事項
B9a
「【請求項1】 一般式(1):
【化1】

[式中、R1、R2及びR3は同一または異なって水素原子、ヒドロキシル基、もしくは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシル基を示すが、またはR1、R2及びR3のうち2個が一緒になってα−メチレンジオキシ基を形成してもよい。ただし、R1、R2及びR3が同時に水素原子になることはない。Xは−O−(R4)n−R5又は−NHCOR6を示す。n個のR4は同一または異なって−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、または−CH(CH3)CH2O−を示し、nは0〜3の整数を示す。R5は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。R6は炭素数6〜10の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す。]で表わされる成分の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0である化粧料。
【請求項2】 一般式(1)で示される成分が、バニリルアルコールアルキルエーテル、ノニル酸バニリルアミドから選ばれる1種または2種以上のものである請求項1記載の化粧料。」(請求項1、2)

B9b
「【0002】
【従来の技術】従来より、使用時に温感を与える目的で、唐辛子抽出物、ショウキョウ抽出物、カプサイシン、ノニル酸バニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、サリチル酸メチル、バニリルアルコールアルキルエーテル、l−メントール、カンファー等が化粧料に配合されている。例えば、バニリルアルコールアルキルエーテル、水溶性界面活性剤及び水を配合した化粧料(特開昭62−205007号公報)、温感剤、油性物質及び水を配合した化粧料(特開平10−291912号公報)、温感剤、水不溶性粉体、油性物質及び水を配合した化粧料(特開平10−291925号公報)、抗掻痒剤、多価アルコール系脂肪酸エステル、油分、低級アルコール及び水を配合した外用剤(特開2000−204046号公報)が知られている。これら公報は、水分を配合することを特徴とした発明である。しかしながら、温感剤は水存在下では経時で分解しやすく、温感効果が低減、最終的には消滅する恐れのあることを、本発明者らは確認した。
・・・
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定温感剤の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0に調整すれば、温感剤の経時安定性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。」(【0002】〜【0004】)

B9c
「【0018】実施例1〜10及び比較例1〜5
表1〜3に記載の組成にて常法により化粧料を調整した。また、各化粧料を次に示した試験方法にて「経時安定性」を評価し、その結果を表1〜3に合わせ示す。その結果、本発明の化粧料は、特定の温感剤の経時安定性に優れることが確認された。
【0019】〔試験方法〕各化粧料の調整直後と40℃&1ヶ月放置後で温感剤を定量する。次式に従って、評価基準を決める。
温感剤の残存率=(40℃&1ヶ月放置後の定量値/調整直後の定量値)*100
◎◎:95%以上
◎ :90%以上
○ :80%以上
● :70%以上
△ :60%以上
× :60%未満」(【0018】〜【0019】)

B9d
「【0029】
実施例17 育毛・養毛剤
成分 配合量(%)
ノニル酸バニリルアミド 0.003
3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン 0.3
エチルアルコール 60.0
ポリエチレングリコール 0.27
センブリエキス 0.03
塩酸ピリドキシン 0.2
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
クエン酸 適量
香料 0.05
精製水 残量
合計 100.00
(pH 6.5)
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、特定温感剤の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0に調整すれば、特定温感剤の経時安定性に優れた化粧料が提供できる。」(【0029】〜【0030】)

コ 甲B10に記載された事項及び甲B10に記載された発明
(ア)甲B10に記載された事項
B10a
「【請求項1】
ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩を0.5〜1.5重量%、清涼化剤を5〜15重量%の割合で含有することを特徴とする外用医薬組成物。
【請求項2】 さらに温感成分を含有することを特徴とする請求項1記載の外用医薬組成物。
・・・
【請求項5】
温感成分がノナン酸バニリルアミドであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載する外用医薬組成物。」(【請求項1】〜【請求項5】)

B10b
「【0002】
ジクロフェナク及びその薬学的に許容される塩は、非ステロイド系の優れた消炎鎮痛剤である。以前は、内服剤又は坐剤として使用されていたが、経口あるいは直腸に投与した場合、副作用として胃腸、腎臓または肝臓障害が生じる場合があり、特に胃腸に関してはしばしば重篤な副作用を呈することから、最近では外用剤としての適用が増えている。」(【0002】

B10c
「【0019】
本発明の外用医薬組成物100重量%中に含まれる(a)成分の割合は、0.5重量%未満であれば、組成物自体の鎮痛効果が弱くなり、また1.5重量%を超えると、(b)成分を配合することによる鎮痛効果の相乗的な向上がみられなくなることから、通常0.5〜1.5重量%である。好ましくは0.5〜1.2重量%であり、より好ましくは0.5〜1.0重量%である。」(【0019】)

B10d
「【0026】
本発明の外用医薬組成物100重量%中に含まれる(c)成分の割合は、外用医薬組成物に含まれる(a)成分や(b)成分の割合によって異なるものの、通常0.002〜0.2重量%の範囲になるように設定され、好ましくは0.003〜0.1重量%、より好ましくは0.003〜0.05重量%、さらに好ましくは0.005〜0.02重量%、とくに好ましくは0.01〜0.015重量%である。この範囲内であれば、特定量の(a)成分および(b)成分を含む外用医薬組成物において特に優れた鎮痛効果を発揮することができる。」(【0026】)

B10e
「【0027】
なお、当該(c)成分の割合は、外用医薬組成物中に含まれる上記(a)成分に対する割合を考慮して設定することもできる。具体的には、外用医薬組成物中に含まれる上記(a)成分1重量部に対して、(c)成分の割合が通常0.002〜0.2重量部の範囲になるように設定され、好ましくは0.003〜0.1重量部、より好ましくは0.003〜0.05重量部、さらに好ましくは0.005〜0.02重量部、とくに好ましくは0.01〜0.015重量部である。」(【0027】)

B10f
「【0031】
(e)形態および製造方法
本発明の外用医薬組成物は、その形態を特に制限するものではないが、(a)成分に(b)成分、またさらに(c)成分を組み合わせることによる鎮痛効果の相乗効果の点から、貼付剤ではなく、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、またはゲル剤などの塗布型の形態を有することが好ましい。より好ましくは液剤である。
【0032】
本発明の外用医薬組成物は、かかる製剤形態に応じて、定法に従って調製することができる。例えば、(a)ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩、および(b)清涼化剤、またはこれらの成分に加えて(c)温感成分を、下記に説明するような外用製剤に用いられる汎用の基剤を加えて溶解または分散させ、所望のpHに調整する方法を挙げることができる。なお、pHとしては皮膚に悪影響のない範囲であれば制限されず、通常pH3.5〜8.5、好ましくはpH4〜8、より好ましくは4〜7.5になるように調整される。」(【0031】〜【0032】)

B10g
「【0036】
本発明の外用医薬組成物中の(a)〜(c)成分以外の他成分の配合量は、製剤化が可能であるかぎり特に限定はないが、例えば、低級アルコールの配合割合は、外用医薬組成物100重量%中0〜90重量%、好ましくは25〜80重量%、より好ましくは50〜80重量%;グリコール類の配合割合は、外用医薬組成物100重量%中0〜30重量%、好ましくは5〜15重量%;水の配合割合は、外用医薬組成物100重量%中0〜75重量%、好ましくは5〜50重量%を挙げることができる。」(【0036】)

(イ)甲B10に記載された発明
甲B10には、摘記B10a、B10gの記載からみて、以下の発明が記載されていると認める。

「ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩を0.5〜1.5重量%、清涼化剤を5〜15重量%、温感成分であるノナン酸バニリルアミド及び水を含有する外用医薬組成物。」(以下「甲B10発明」という。)

サ 甲B11に記載された事項
B11a
「各種炎症モデル動物を用いて,ロキソプロフェンナトリウム水含有テープ剤(LX−P)の抗炎症および鎮痛作用について,既存の市販テープ剤(ケトプロフェン含有テープ剤(KTP),フルルプロフェン含有製剤(FBP),ジクロフェナクナトリウム含有製剤(DCL),およびインドメタシン含有製剤(IDM)との効力比較を検討し,以下の成績を得た.

○1(合議体注:「○1」は、原文では○の中に数字の1、以下○2、○3についても同じ。) ラット足蹠カラゲニン浮腫に対して,LX−P群は無処置群に対して有意な浮腫率の減少を示し,KTP群,DCL群およびIDM群に対しても有意に低い浮腫率を示した.
○2 ラットアジュバント関節炎に対して,LX−P群は薬剤投与4日より無処置群に対して有意な足腫脹抑制作用を示した.LX−P群と市販テープ剤との間では有意な差は認められなかった.
○3 ラット足蹠イースト誘発疼痛に対して,LX−P群は無処置群に対して有意な疼痛閾値の上昇が認められた.LX−P群と市販テープ剤との間では有意な差は認められなかった.
以上,LX−Pはラット急性・慢性炎症および疼痛モデル動物に対して有効性を示し,その抗炎症および鎮痛作用は市販テープ剤と同程度あるいはそれ以上であった.」(1007頁 要旨)

B11b
「1 実験材料
1)被験物質及び対照物質
被験物質は,ゴム系成分を主体とした非水系の基剤中にロキソプロフェンナトリウムを無水物として5%含有する製剤で,各試験では2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした.対照物質は,市販製剤のうちケトプロフェンを2%含有するテープ剤(以下,KTPと略す),フルルビプロフェンを2.4%含有するテープ剤(以下,FBPと略す),ジクロフェナクナトリウムを1%含有するテープ剤(以下,DCLと略す),およびインドメタシンを5%含有するテープ剤(以下,IDMと略す)で,被験物質と同様2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした.」(1007頁右欄下から5行〜1008頁左欄8行)

B11c
「抗炎症作用については,急性炎症の代表的なモデルであるラット足蹠カラゲニン浮腫モデルと,慢性炎症モデルであるラットアジュバント関節炎モデルを用いて評価を行った.・・・LX−P群は無処置群に対して有意な浮腫率の減少を示し,KTP群,DCL群およびIDM群に対しても有意に低い浮腫率を示したことから,LX−Pの抗炎症作用は市販テープ剤と比較して同程度もしくはそれ以上であることが示唆された.
・・・
鎮痛作用については,ラット足蹠イースト誘発疼痛モデルを用いて,・・・評価した.LX−P群は無処置群に対して有意な疼痛閾値の上昇を示し,市販テープ剤との間では有意な差は認められなかったことから,LX−Pの鎮痛作用は市販テープ剤と同程度であることが示唆された.
以上より,ロキソプロフェンナトリウム水含有テープ剤(LX−P)は,各種炎症モデルに対して十分な抗炎症および鎮痛作用を示し,市販テープ剤との比較において,同程度もしくはそれ以上の効果を示したことから,LX−Pの有用性が,薬理学的にも検証されたものと考える.」(1010頁右欄14行〜1011頁左欄20行)

シ 甲B12に記載された事項
B12a
「請求項1 ロキソプロフェン及びロキソプロフェンナトリウム塩を有効成分として含有する湿布剤(パップ剤)。
請求項2 第1項において、ロキソプロフェン塩湿布剤の総量に対する配合割合は、1ないし25重量%、望ましくは1.5ないし20重量%、さらに望ましくは2ないし15重量%であることを特徴とするロキソプロフェン塩含有湿布剤(パップ剤)。
請求項3 第1項において、水溶性高分子、保湿剤、水分、吸収促進剤、賦形剤、刺激緩和剤、薬効アジュバント及びpH調整剤によって構成される群の中から一つ以上選択されたものを、さらに含有することを特徴とする含有湿布剤(パップ剤)。
・・・
請求項8 第3項において、水分(精製水)は湿布剤(パップ剤)の総量に対して10ないし80重量%であることを特徴とするロキソプロフェン塩含有湿布剤(パップ剤)。」(請求項1〜8)

B12b
「上記した従来技術の問題点を解決するため、本発明の目的は、パップ剤の長所である多量の水分を含むことにより皮膚刺激を緩和させて、最適な薬物放出性及び経皮吸水性を有することにより、皮膚適用時、薬物が目的とする皮下組織まで効果的に到達することができるため、経口投与時と比較しても対等な鎮痛・消炎効果を示して、薬理学的に有用であり、経口投与の時に現われる全身性副作用及び胃腸管への刺激を軽減させるだけでなく、調剤が容易であり、展延の後に切断や包装をすることができる簡便な方法で製造することができるパップ剤を提供することである。」([0007])

B12c
「また、薬効アジュバントとしてL−メントール(mentol)、カンファー(camphor)、ユーカリオイル、唐辛子エキス、カプサイシン、ビタミンE、プラトニン、ロートエキス、黄柏粉末、西洋とちのきエキス、ベラドンナエキス、ノニル酸ワニリルアミド、テレビン油またはニコチン酸ベンジルなどを適度に配合することができる。・・・」([0026])

ス 甲B17に記載された事項
B17a
「【0002】
【従来の技術】ロキソプロフェンナトリウムは式(1)
【化1】(当審注:化学構造式は省略した。)
で表されるフェニルプロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、経口投与により消化管よりすみやかに吸収されてすぐれた鎮痛・抗炎症効果を発揮するが、ナトリウム塩の形のままでは活性は弱く、生体内で作用の強い活性代謝物に変換されたのち作用を発揮するいわゆるプロドラッグである。この薬物は消化管傷害が比較的少ないという特性を有する経口投与を目的として開発されたものであるが、なお消化管に対して害作用を有するため、消化管潰瘍の既往歴のある患者または長期投与する時には慎重に投与することが必要である。係る副作用を軽減することを目的として、炎症部位での局所薬物濃度を高め全身性の副作用を回避する目的で経皮投与型の製剤が考えられるが、ロキソプロフェンナトリウムは経口投与を目的として開発されたものであるため、極めて水に溶けやすく、角質の透過性が悪く、そのため、通常の経皮投与型の製剤、例えば水性製剤、チンキ剤、ワセリン軟膏基剤や親水軟膏基剤を用いる軟膏剤として用いた場合、吸収効果は満足できるものではない。ロキソプロフェンナトリウムを配合する消炎鎮痛外用剤としては、以下のものがある。」(【0002】)

セ 甲B18に記載された事項
B18a
「【0002】
ロキソプロフェンは、フェニルプロピオン酸系の非ステロイド消炎鎮痛剤として優れた薬効を有しており、内服薬として幅広く使用されている。また、外用製剤もいくつか提案されており、例えば、特許文献1には、ロキソプロフェンを配合した貼付剤として、ロキソプロフェン及びクロタミトンを配合した貼付剤が開示されている。
【0003】
この貼付剤は、水性貼付剤基剤中にクロタミトンを配合することで、製剤中のロキソプロフェンの溶解性を高めるとともに、製剤の安定性が高く、皮膚刺激を低減したロキソプロフェン含有貼付剤を提供することを目指したものであるが、有効成分であるロキソプロフェンの経皮吸収性において、その効果は十分なものではない。
・・・
【0004】
したがって、ロキソプロフェンの製剤中における安定性に優れると共に、経皮吸収性に優れた、ロキソプロフェンを含有する外用貼付剤の更なる改良が求められているのが現状である。」(再公表特許の【0002】〜【0004】、国際公開の[0002]〜[0004])

ソ 甲B19に記載された事項
B19a
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カプシコシドとそれ以外のトウガラシ由来の温感付与物質とを併用することによって、皮膚に適用した際の皮膚刺激性が改善されると共に、適用時に十分な温感が付与されるのみならず、温感の持続性も向上されて、非ステロイド系抗炎症剤の経皮吸収性も向上された皮膚外用剤に関する。」(【0001】)

B19b
「【0007】以下、本発明をより詳細に説明すると、本発明の皮膚外用剤は、非ステロイド系抗炎症剤を含有し、その剤型は外用製剤であれば特に制限されず、例えば貼付剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤等として調製されるものである。ここで、非ステロイド系抗炎症剤としては、皮膚外用剤に配合し得るものであればその種類が特に制限されるものではなく、例えばアズレン、アセトアミノフェン、アセメタシン、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンピロキシカム、アンフェナク、イソキシカム、イソキセバク、イブフェナク、イブプロフェン、インドシン、インドプロフェン、インドメタシン、エトドラク、エモルファゾン、オキサプロジン、オキサブロフェン、オキシカム、オキセビナク、オルセノン、オルトフェナミン酸、カルプロフェン、クリダナク、クリプロフェン、ケトチフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、アスピリン,サリチル酸メチル,サリチル酸グリコール等のサリチル酸系薬剤、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、シクロプロフェン、ジドメタシン、ジフルニサル、硝酸イソソルビド、スドキシカム、スプロフェン、スリンダク、ゾメビラク、チアプロフェン、チオキサプロフェン、チオビナク、テニラック、テノキシカム、トラマドール、トルメチン、トルフェナム酸、ナプロキセン、ニフルミン酸、ビルプロフェン、ピロキシカム、フェニドン、フェノプロフェン、フェルビナク、フェンクロフェナク、フェンチアザク、フェンブフェン、ブクロキシ酸、ブフェキサマク、プラノプロフェン、フルプロフェン、フルフェナミン酸、フルフェニサル、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フロクタフェニン、プロチジン酸、フロフェナク、ベノキサプロフェン、ベノリレート、ベンダザク、ミロプロフェン、メクロフェナミン酸、メピリゾール、メフェナム酸、リシブフェン、ロキソプロフェン及びこれらの塩等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。本発明の場合、抗炎症作用、安全性などを考慮すると、これらの中でもフルルビプロフェン、フェルビナク、ブフェキサマク、スプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、インドメタシン、ザルトプロフェン、メフェナム酸等が好適であり、特にフルルビプロフェン、フェルビナク、ブフェキサマク、スプロフェン等を含有する場合に効果的である。
・・・
【0009】本発明の皮膚外用剤は、温感付与物質として、カプシコシドと他のトウガラシ由来の温感付与物質とを併用するものであり、カプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質としては、トウガラシから抽出、分離される成分であって、皮膚に適用した時に温感を感じさせる物質であればよく、このような物質として、例えばカプサイシノイド、カプサイシン、ジヒドロキシカプサイシン,カプサンチン等のカプサイシン類似体、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせてカプシコシドと併用できる。本発明の場合、これらの中でも特にトウガラシエキス、トウガラシ末、カプサイシン等が好適である。なお、カプサイシンの具体的成分としては、8−メチル−N−バニリル−6E−ノネンアミド,N−バニリルノナンアミド等、カプサイシノイドの具体的成分としては、N−バニリル−9−オクタデセンアミド等、カプサイシン類似体の具体的成分としては、N−バニリル−アルカジエンアミド,N−バニリル−アルカンジエンニル,N−バニリル−cis−モノ不飽和アルケンアミド等を挙げることができる。」(【0007】〜【0009】)

タ 甲C13に記載された事項
C13a


」(476頁「タイトル」〜「性状))

チ 甲C14に記載された事項
C14a
「【請求項1】
ノナン酸バニリルを有効成分とする外用血行促進剤。
【請求項2】
ノナン酸バニリルを有効成分とする外用脂肪分解促進剤。」(請求項1及び2)

C14b
「【0020】
外用組成物としては、具体的には上記の皮膚化粧料、頭皮化粧料、入浴剤(浴用剤)、外用医薬品、点眼剤等を挙げることができる。外用医薬品としては、例えば、本発明の目的及び効果を妨げないことを限度に、ノナン酸バニリル以外に他の薬効成分を含有してもよい各種軟膏、クリーム、ゲル、ローション、エアゾール剤、またはパップ剤等を挙げることができる。なお、軟膏剤とする場合には、油性基剤をベースとするもの、水中油型又は油中水型の乳化系基剤をベースとするもののいずれであっても良く、油性基剤としては、例えば、植物油、動物油、合成油、脂肪酸、エステル類、高級アルコール及び天然又は合成のグリセライド等が挙げられる。これらは製剤の形態に応じて常法に従って調製することができ、また常法に従って使用することができる。
【0021】
ここで薬効成分としては、特に制限はなく、例えば、鎮痛消炎剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤、収斂剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤、温感付与剤、冷感付与剤、保湿剤等を必要に応じて適宜使用することができる。」(【0020】〜【0021】)

C14c
「【0038】
試験例1(血行促進効果)
ノナン酸バニリルを皮膚に適用した場合の血行促進効果を、下記に記載するようにラットを用いて評価した。なお、被験サンプルは実施例として参考例1で調製したノナン酸バニリル(実施例1)を用い、比較例としてノニル酸ワニリルアミド(東洋ファルマー社製・99%以上)の0.1重量%溶液(比較例1)、コントロールとしてエタノール/水混合溶液(1:1(w/w)の等量混合液)(コントロール1)を用いた。ここでノニル酸ワニリルアミドは、皮膚に対する血行促進作用が知られた化合物であり、陽性コントロールとして用いた。上記においてノニル酸ワニリルアミドの0.1重量%溶液はエタノール/水の等量混合液(1:1(w/w))で調製した溶液である。」(【0038】)

ツ 甲C15に記載された事項
C15a
「【0051】
〔実施例8〕 ローション
配合成分 配合量(質量%)
95%エタノール 45.0
アデノシン5’−リン酸 1.0
カンタリスチンキ 1.0
カンフル 0.5
ノナン酸バニリルアミド 0.1
プロピレングリコール 1.0
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 0.3
コハク酸 適量
香料および色素 適量
精製水 残量

<製造方法>95%エタノールに、アデノシン5’−リン酸、カンタリスチンキ、カンフル、ノナン酸バニリルアミド、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油および香料を溶解させた(エタノール部)。次に、精製水に色素を溶解させ、これを、前記エタノール部に添加し、攪拌溶解することにより、透明液状のローションを得た。」(【0051】)

テ 甲C16に記載された事項
C16a
「2. 特許請求の範囲
1.低級アルコール及び水からなる液状基材にこの基材に対して難溶性もしくは不溶性の成分を配合すると共に、前記基材の粘度を10〜50センチボイズとする量においてキサンタンガムを配合してなることを特黴とする外用液剤。」(請求項1)

C16b
「本発明に係る外用液剤は、外用消炎鎮痛剤、にきび薬、止痒剤、殺菌消毒剤等として使用されるもので、低級アルコール及び水からなる液状基材にこの基材に対して難溶性もしくは不溶性の成分を配合すると共に、前記基材の粘度を10〜50センチポイズとする量においてキサンタンガムを配合してなることを特徴とするものである。
この場合、この場合、低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロバノール等が挙げられるが、エタノールが好ましい。エタノールとしては、合成のものでも醸造のものでもよく、また変性したものでも差支えない。本発明においてはこのようにエタノール等の低級アルコールを用いていることにより、使用時に冷感を生じ、また種々の有効成分などのある程度の可溶化が計られる」(2頁左下欄最終行〜右下欄14行)

C16c
「本発明においては、前記成分に加えて更に低級アルコール−水に可溶な有効成分、例えばクロルへキシジングルコネート、更には塩酸ジフエンヒドラミン、マレイン酸クロルフエニルアラニン、チモール、トウガラシチンキ、トウガラシエキス、ノニル酸バニリルアミド、ニコチン酸やそのエステルなどの可溶量が配合され得、またエチレングリコールやグリセリン等の多価アルコール0〜30重量%や他のガム類等を配合することもできる。」(4頁左上欄4〜12行)

ト 甲C17に記載された事項(当審注:甲B8に同じ)
C17a
「〔実施例3〕 外用消炎鎮痛剤
サリチル酸メチル 3.5g
サリチル酸グリコール 1.5g
l−メントール 5.0g
ノニル酸バニリルアミド 0.01g
カルボキシビニルポリマー〔ハイビスワコー105〕 0.25g
アルコール可溶性ナイロン〔ウルトラアミド1C〕 12.0g
溶剤(エタノール/水80/20 重比) 77.74g
溶剤にカルボキシビニルポリマーとアルコール可溶性ナイロンを加えて加熱溶解し、冷却後他の成分を加えて外用消炎鎮痛剤を得た。
本品は透明性に優れたゼリー剤となり、これを患部に塗布しても液剤のように流れ落ちることがなく、また乾燥造膜によつて薬物が保持され、薬効が持続した。また、本品は長期保存しても粘度が低下せず、ゲル状を保つた。」(10欄20〜38行)

ナ 甲C18に記載された事項
C18a
「【請求項1】支持体の片面に、薬物と粘着剤を含有する膏体層が設けられてなる貼付剤において、該薬物として、L−メントールが0.5〜7重量%、サリチル酸グリコールが1.0〜12重量%、ノニル酸ワニリルアミドが0.005〜0.5重量%およびグリチルレチン酸が0.1〜5.0重量%の膏体層中濃度で含有され、かつ該粘着剤がゴム系粘着剤であることを特徴とする消炎鎮痛貼付剤。」(請求項1)

C18b
「【0053】・・・薬物としてL−メントール、サリチル酸グリコール、ノニル酸ワニリルアミドおよびグリチルレチン酸を選択し、これらを所要割合で配合することによって、安定性がよく、低刺激で、さらにカンファーを除くことで低臭性の消炎鎮痛貼付剤を得ることができる。」(【0053】)

ニ 甲C19に記載された事項
C19a
「【請求項1】 一般式(1):
・・・で表わされる成分の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0である化粧料。
【請求項2】 一般式(1)で示される成分が、バニリルアルコールアルキルエーテル、ノニル酸バニリルアミドから選ばれる1種または2種以上のものである請求項1記載の化粧料。」(請求項1、2)

C19b
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、特定温感剤の経時安定性に優れた化粧料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定温感剤の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0に調整すれば、温感剤の経時安定性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
・・・
【0006】一般式(1)の成分のうち、バニリルアルコールアルキルエーテル、ノニル酸バニリルアミドが好ましい。また、バニリルアルコールアルキルエーテルのうち、バニリルアルコールプロピルエーテル、バニリルアルコールブチルエーテル、バニリルアルコールペンチルエーテル、バニリルアルコールヘキシルエーテルがより好ましく、バニリルアルコールn−ブチルエーテルが特に好ましい。また、一般式(1)の成分は、それを含有する植物エキスあるいはチンキの形態でも配合することができ、なかでもトウガラシエキスおよびトウガラシチンキなどが好適に用いられる。」(【0003】〜【0006】)

C19c
「【0029】
実施例17 育毛・養毛剤成分 配合量(%)
ノニル酸バニリルアミド 0.003
3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン 0.3
エチルアルコール 60.0
ポリエチレングリコール 0.27
センブリエキス 0.03
塩酸ピリドキシン 0.2
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
クエン酸 適量
香料 0.05
精製水 残量
合計 100.00
(pH 6.5)」(【0029】)

C19d
「【0030】
【発明の効果】本発明によれば、特定温感剤の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0に調整すれば、特定温感剤の経時安定性に優れた化粧料が提供できる。」(【0030】)

ヌ 甲C20に記載された事項
C20a


」(表紙)

C20b


」(【成分及び分量】)

ネ 甲C21に記載された事項
C21a


・・・

」(5頁)

ノ 甲C22に記載された事項
C22a


」(表紙)

C22b


」(【成分・分量】)

ハ 甲C23に記載された事項
C23a


」(13頁左欄)

C23b



」(13頁右欄〜14頁左欄)

ヒ 甲C24に記載された事項
C24a


」(タイトル)

フ 甲C25に記載された事項
C25a



」(「●理由3(サポート要件)について」の項)

ヘ 甲C26に記載された事項
C26a


」(「1.試験資料)の項)

ホ 甲C27に記載された事項
C27a


」(「1.試験資料)の項)

C27b


」(「4.結果」の項)

マ 甲C28に記載された事項
C28a


」(4.試験方法」の項)

C28b


」(5.試験結果」の項)

ミ 甲C32に記載された事項
C32a
「はじめに
非ステロイド性抗炎症剤(以下非ス剤は炎症を治療する目的で開発された薬剤である。日常臨床において,炎症は多くの疾患の原因となっており,これに対し抗炎症剤は重要な治療薬となっている(表1)。
非ス剤の薬理作用は抗炎症,解熱,鎮痛である。」(56頁左欄1〜7行)

C32b


」(57頁・表1)

C32c
「 ロキソプロフェン・ナトリウム(市販名ロキソニン)は我が国で開発された,数少ない抗炎症剤の一つである2)。薬理作用では,抗炎症作用とともに鎮痛作用が強い。」(57頁右欄下から6〜3行)

ム 甲C33に記載された事項(当審注:甲B7に同じ)
C33a
「 非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)であるロキソプロフェンナトリウム(Sodium 2-[4-(2-oxocyclopentan-1-yl-methyl)phenyl]propionate dihydrate)は,生体内に取り込まれた後,5員環ケトンが還元されて,母体より強いシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を有するSRS配意のtrans-OH体に変換されて効力を発揮するプロドラッグ型薬物である1)2)。薬理学的な特徴は,強力な抗炎症,鎮痛および解熱作用を有し,特に鎮痛作用が著しく強く,NSAIDsの副作用のひとつである消化管障害が比較的弱いことである3)4)。
」(180頁左欄1〜12行)

C33b
「1 被験物質及び対照物質
1)被験物質
被験物質はポリアクリル酸を主体とした水性基剤10g中にロキソプロフェンナトリウムを無水物として50mg,100mg,200mg及び400mgを含有する製剤(0.5%LX−A,1%LX−A,2%LX−A及び4%LX−A)で,各試験では2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした。
2)対照物質
対照物質は,被験物質からロキソプロフェンナトリウムを除いた基剤あるいは市販製剤のうちフルルビプロフェンを0.33%含有する製剤(以下FPと略す),ケトプロフェンを0.3%含有する製剤(以下KPと略す),フェルビナクを0.5%含有する製剤(以下FLと略す)及びインドメタシンを0.5%含有する製剤(以下IMと略す)で,被験物質と同様2cm×1.75cm四方に裁断して被験薬剤とした。」(180頁左欄下から19〜3行)

C33c
「回復率では,1%LX−A群が最も高く70.5%であり,次いでFP群(40.2%),KP群(23.6%),FL群(8.9%),IM群(4.2%)であり,1%LX−A群はFL,KP及びIMに対して有意に高い値を示した(表5)」(184頁左欄下から1行〜185頁左欄最終行)

C33d
「表5 酵母懸濁液感染によって誘発される疼痛閾値に対するLX−A群及び他の湿布剤の鎮痛効果

群 動物数 回復率(%)
1%LX−A 8 70.5±7.0
FP 8 40.2±11.2
KP 8 23.6±9.1**
FL 8 8.9±4.0**
IM 8 4.2±4.2**

それぞれの値は8匹の動物の平均±標準誤差を表す
**;p<0.01:1%LX−A群から有意差がある。
(ダネットの多重比較検定)」(185頁 表5)

C33e
「鎮痛作用については,ラット足蹠イースト誘発疼痛モデルを用いて,・・・評価した。用量反応性の結果では,1%以上で有意な疼痛閾値の上昇を示し,基剤群に対して有意な鎮痛効果を示した。また比較試験では,1%LX−A群はFL,KP及びIM群に対して有意に鎮痛効果が高かったことから,1%LX−A群の鎮痛効果は市販製剤と同程度もしくはそれ以上であると示唆された。」(186頁左欄1〜11行)

C33f
「以上より,1%ロキソプロフェンナトリウム含有水性貼付剤は各種炎症モデルに対して十分な抗炎症および鎮痛作用を示し,既存製剤との比較試験においても同程度もしくはそれ以上の効果を示したことから,臨床においても十分な効果を発揮することが視された。」(186頁左欄「VI結語」の項)

(3−2)甲B6を主引例とする取消理由3(進歩性)についての判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲B6発明とを対比する。
甲B6発明の「非ステロイド性抗炎症剤であるインドメタシン」と本件発明1の「ロキソプロフェン又はその塩」とは、本件特許の発明の詳細な説明【0004】の記載によれば、「非ステロイド性消炎鎮痛剤」の一種である点で一致する。
甲B6発明の「液剤」は、「精製水」を含むものであって、抗炎症効果を奏するもの(【0019】、【0020】の表4、【0021】の表5)であるから、本件発明1の「含水組成物である、医薬組成物」に相当する。
また、ノニル酸バニリルアミドの「ノニル酸」は、「ノナン酸」と表記することがあることは当業者に自明の技術的事項である(甲B5)。
そして、本件発明1は、下記(A)、(B)成分以外の成分の有無や種類を特定しないものであるから、甲B6発明が、l−メントール等の成分を含むことは、相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と甲B6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「(A)ノナン酸バニリルアミドと
(B)非ステロイド性消炎鎮痛剤とを含有し、
且つ含水組成物である医薬組成物。」

<相違点>
相違点1 非ステロイド性消炎鎮痛成分が、本件発明1においては、「ロキソプロフェン又はその塩」であるのに対し、甲B6発明においては、「非ステロイド性抗炎症剤であるインドメタシン」である点。

(イ)判断
a 相違点1について
甲B7には、LX−A(ロキソプロフェンナトリウム)を含む水性貼付剤が、各種炎症モデルに対して十分な抗炎症および鎮痛作用を示し、既存製剤との比較試験においても同程度もしくはそれ以上の効果を示したことが記載されている(摘記B7f)。
しかしながら、甲B7には、ノニル酸バニリルアミドの安定性向という本件発明が解決すべき課題は記載されていないから、本願優先日当時の当業者であっても、甲B6に記載されたノニル酸バニリルアミドと非ステロイド性消炎鎮痛剤とを含有する含水組成物である医薬組成物におけるノニル酸バニリルアミドの安定性を向上させるため、甲B7に記載されたロキソプロフェンナトリウムを採用することが動機づけられたとはいえない。
したがって、甲B6発明を相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得るとはいえない。

b 効果について
本件特許の発明の詳細な説明には、トウガラシエキスB(トウガラシ80%エタノール抽出物)は水の共存下で沈殿が生じたこと、当該沈殿はロキソプロフェンを添加することにより抑制されたことが具体的に示されており(上記2(1)ア(エ))、当該試験例からは、ロキソプロフェンを含有することにより、トウガラシエキスを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという優れた効果を奏するものと認められる。
ここで、本件特許の発明の詳細な説明には、トウガラシエキスを含むトウガラシ抽出物として、トウガラシの主成分である公知のカプサイシノイドを用いることができること、当該カプサイシノイドとしては、カプサイシンやノナン酸バニリルアミドが好ましいことが記載されている(上記2(1)ア(ウ))。
そして、ノナン酸バニリルアミドとカプサイシンの化学構造はそれぞれ知られたものであって(上記摘記B5a、上記摘記C13a、甲C2の8頁右欄中段のFig.1、甲C4の1頁「カプサイシンの一般情報」の項)、当業者は、両者の化学構造が近似していると理解できるものであり、化学構造が近似していれば水溶性等の物性も近似していることが当業者に理解できるものであるから、本件発明1は、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという優れた効果を奏することを当業者は理解することができるといえる。
したがって、本件発明1は、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという、甲B6及び甲B7の記載からは当業者が予測できない格別顕著な効果を奏するといえる。

c 小括
よって、本件発明1は、甲B6及び甲B7の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、いずれも、本件発明1の医薬組成物を、請求項2〜6に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、本件発明1について、上記アにおいて示したとおり、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1をさらに限定する本件発明2〜6についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。
したがって、本件発明2〜6は、甲B6発明及び甲B7に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について判断
(ア)申立人Bの主張について
申立人Bは、申立書Bにおいて、甲B7には、LX−A(ロキソプロフェンナトリウム)を含む水性貼付剤が、各種炎症モデルに対して十分な抗炎症および鎮痛作用を示し、ケトプロフェンなどの既存製剤との比較試験においても同程度もしくはそれ以上の効果を示したことが記載されており(摘記B7f)、その試験方法は甲B6発明における試験方法と同じであるから、外用消炎鎮痛剤の発明である甲B6発明において、消炎作用の増強を図るため、ケトプロフェンに代えてロキソプロフェンナトリウムを用いることは、当業者が容易になし得ることである旨主張する(申立書B 29頁8〜16行)。
しかしながら、甲B7には、ノニル酸バニリルアミドの安定性向上という本件発明が解決すべき課題は記載されていないことは、上記ア(イ)aにおいて説示したとおりである。そして、ノニル酸バニリルアミドの安定性向上のためにロキソプロフェンナトリウムを用いることは、いずれの甲号証にも記載されておらず、本件出願時の技術常識であったともいえない。
したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。

また、申立人Bは、申立書Bにおいて、甲B5には、ノナン酸バニリルアミドは水に難溶であるがエタノールには易溶であること(摘記5a)、甲B8には、実施例3としてノニル酸バニリルアミド(ノナン酸バニリルアミド)のエタノール水溶液からなる外用消炎鎮痛剤が透明性に優れたものであり、長期保存してもゲル状を保ったこと(摘記8a)、甲B9の実施例17には、ノニル酸バニリルアミド(ノナン酸バニリルアミド)のエタノール含有水溶液からなる育毛・養毛剤が経時安定性に優れたものであること(摘記B9d)が記載されており、甲15Bにおいて、ノナン酸バニリルアミドを含有する含水組成物はエタノールの存在下ではロキソプロフェンが存在していなくても、本件発明の実施例と同程度の保存安定性が得られることが示されていることからみて、甲B6発明に包含される「ケトプロフェン、ノナン酸バニリルアミド、水、エタノールを配合した外用液剤」は、本件発明の実施例と同程度の保存安定性が得られるため、ケトプロフェンに代えてロキソプロフェンナトリウムを用いても、本件発明1の保存安定性に優れるという効果は、当業者が当然に想定するものである旨主張する(申立書B 29頁17行〜30頁9行)。
しかしながら、甲B5、甲B8、甲B9及び甲B15には、ノナン酸バニリルアミドがエタノールを含む水溶液に易溶であることが記載されているものの、それらは、ノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性向上のためにエタノールを用いることを示しているに過ぎないものであって、これらの記載からノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性向上のためにロキソプロフェンを用いることを想起することはできないものであるから、甲B5、甲B8、甲B9及び甲B15並びに申立人Bが提示した甲号証に接した当業者であっても、甲B6発明において、非ステロイド性抗炎症剤として、特にロキソプロフェンを採用することによって、ノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性が向上するという効果を予測することができたとはいえない。
したがって、当該申立人Bの主張も採用することができない。

更に、申立人Bは、上申書Bにおいて、外用液剤である消炎鎮痛剤は有効成分の移行性が良いことは常に求められることであって、ロキソプロフェンにおいても有効成分の移行性は解決すべき課題である(摘記B17a、摘記B18a、摘記B19a)から、ロキソプロフェンの移行性を向上させるため、「皮膚からの吸収の悪さという問題」を解決する甲B6発明における薬剤をロキソプロフェンに置き換えよう等する動機付けが存在する旨主張する(令和4年2月21日付け上申書 2頁下から21行〜3頁7行)。
しかしながら、甲B17、甲B18及び甲B19には、ロキソプロフェンの移行性に課題があることが記載されているものの、甲B17はロキソプロフェンナトリウム消炎鎮痛外用剤にカルボキシビニルポリマーを配合することによって課題を解決しようとするものであり(甲B17【0008】)、甲B18はロキソプロフェン含有水性貼付剤の膏体としてトリアセチンを用いることによって課題を解決しようとするものであり(甲B18【0005】〜【0006】)、甲B19は非ステロイド系抗炎症剤とカプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質の少なくとも1種以上とを配合することによって課題を解決しようとするものである(甲B19【0004】〜【0006】)ものの、それらは、いずれもロキソプロフェンを含む非ステロイド性抗炎症剤の移行性向上という課題を解決しようとするものであって、ノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性を向上させるためのものではないから、甲B17、甲B18、甲B19及び甲B15に接した当業者であっても、甲B6発明において、非ステロイド性抗炎症剤として、特にロキソプロフェンを採用することによって、ノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性が向上するという効果を予測することができたとはいえない。
したがって、当該申立人Bの主張も採用することができない。

(イ)申立人Cの主張について
申立人Cは、上申書Cにおいて、一般に、請求項に係る発明とは別の課題を有する引用発明に基づき、主引用発明から出発して請求項に係る発明とは別の思考過程による論理付けを試みることもできるから、甲B6、甲B10及び他の文献に本件発明の課題が記載されていないことをもって進歩性が是認されることはなく、ロキソプロフェン又はその塩は経皮吸収性が低いという課題が周知である(摘記B17a)から、非ステロイド性抗炎症剤の経皮吸収性の向上を図る甲B6発明及び甲B10発明において、インドメタシン又はジクロフェナクをロキソプロフェン又はその塩に変更することは当然に動機づけられるものであって、本件発明の奏する効果についても、甲A1、甲A2、甲B15の試験が、保存条件が異なるため追試として不適切であるのであれば、保存条件が異なることに起因して本件発明の効果を再現できないことになり、また、本件発明はエタノールを含有する場合が排除されておらず、エタノールを濃度が一定以上高い場合にはそもそも不溶物が生成しないことから、本件発明は、格別の効果が明らかに奏されない範囲を含んでいるため、進歩性は否定されるべきものである旨主張する(上申書C 6頁2行〜8頁5行)。
しかしながら、保存条件やエタノールの濃度はともかく、上記ア(ア)で述べたとおり、そもそも、甲B6発明においては、ノニル酸バニリルアミドの安定性を向上させるため、甲B7に記載されたロキソプロフェンナトリウムを採用することが動機づけられたとはいえない。
そして、本件発明は、上記ア(イ)bで説示したように、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという、当業者が予測できない格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、申立人Cの上記主張は採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1〜6に係る特許は、取消理由通知書に記載した「甲B6を主引用発明とする取消理由3(進歩性)」により取り消すことはできない。

(3−3)甲B10を主引例とする取消理由3(進歩性)についての判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲B10発明とを対比する。
甲B10発明の「ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩」と本件発明1の「ロキソプロフェン又はその塩」とは、本件特許の発明の詳細な説明【0004】の記載及び摘記B10bによれば、いずれも「非ステロイド性消炎鎮痛剤」の一種である点で一致する。
甲B10発明の「外用医薬組成物」は、水を含むものであるから、本件発明1の「含水組成物である、医薬組成物」に相当する。
そして、本件発明1は、下記(A)、(B)成分以外の成分の有無や種類を特定しないものであるから、甲B10発明が、清涼化剤を含むことは、相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と甲B10発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「(A)ノナン酸バニリルアミドと
(B)非ステロイド性消炎鎮痛剤とを含有し、
且つ含水組成物である医薬組成物。」

<相違点>
相違点4 非ステロイド性消炎鎮痛成分が、本件発明1においては、「ロキソプロフェン又はその塩」であるのに対し、甲B10発明においては、「ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩」である点。

(イ)判断
a 相違点4について
ロキソプロフェンは、特に鎮痛作用が著しく強い抗炎症薬物で、ジクロフェナク等を含む既存の製剤と同程度もしくはそれ以上の効果を示すことが知られた薬剤である(摘記B11a、B11c、甲B11の1009頁「Table 2」)。
しかしながら、甲B10には、ノニル酸バニリルアミドの安定性向という本件発明が解決すべき課題は記載されていないから、本願優先日当時の当業者であっても、甲B10に記載されたノニル酸バニリルアミドと非ステロイド性消炎鎮痛剤とを含有する含水組成物である医薬組成物におけるノニル酸バニリルアミドの安定性を向上させるため、甲B11に記載されたロキソプロフェンナトリウムを採用することが動機づけられたとはいえない。
したがって、甲B10発明を相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得るとはいえない。

b 効果について
上記(3−2)ア(イ)bで説示したように、本件発明1が、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという優れた効果を奏することを、当業者は本件特許の発明の詳細な説明の記載から理解することができるといえる。
したがって、本件発明1は、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという、甲B10及び甲B11の記載からは当業者が予測できない格別顕著な効果を奏するといえる。

c 小括
よって、本件発明1は、甲B10及び甲B11の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、いずれも、本件発明1の医薬組成物を、請求項2〜6に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、本件発明1について、上記アにおいて示したとおり、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1をさらに限定する本件発明2〜6についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。
したがって、本件発明2〜6は、甲B10発明及び甲B11に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人Bの主張について
申立人Bは、申立書Bにおいて、甲B11には、ロキソプロフェンナトリウムが各種炎症モデルに対して、ジクロフェナクナトリウムなどの既存英剤との比較において、同程度もしくはそれ以上の抗炎症及び鎮痛効果を示すことが記載されている(摘記B11c)から、消炎鎮痛外用液剤の発明である甲10発明において、抗炎症及び鎮痛作用の増強を図るため、ジクロフェナクナトリウムに代えてロキソプロフェンナトリウムを用いることは、当業者が容易になし得ることである旨主張する(申立書B 31頁4〜11行)。
しかしながら、甲B10には、ノニル酸バニリルアミドの安定性向上という本件発明が解決すべき課題は記載されていないことは、上記ア(イ)aにおいて説示したとおりである。そして、ノニル酸バニリルアミドの安定性向上のためにロキソプロフェンナトリウムを用いることは、いずれの甲号証にも記載されておらず、本件出願時の技術常識であったともいえない。
したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。

また、申立人Bは、申立書Bにおいて、本件発明1の奏する効果について、甲B10発明の医薬組成物のpHは7であり(摘記B10f)、また、甲B9の実施例17に記載されたノニル酸バニリルアミド(ノナン酸バニリルアミド)、エタノール、水からなる育毛・養毛剤について、「その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0〜8.0に調整すれば、特定温感剤の経時安定性に優れた化粧料が提供できる(摘記B9d)ことが記載されており、また、甲15Bにおいて、ノナン酸バニリルアミドを含有する含水組成物はエタノールの存在下ではロキソプロフェンが存在していなくても、本件発明の実施例と同程度の保存安定性が得られることが示されていることからみて、甲B10に記載された「ジクロフェナクナトリウム、ノナン酸バニリルアミド、水、エタノールを配合したpH7の消炎鎮痛外用液剤」は、本件発明の実施例と同程度の保存安定性が得られるため、ジクロフェナクナトリウムに代えてロキソプロフェンナトリウムを用いても、本件発明1の保存安定性に優れるという効果は、当業者が当然に想定するものである旨主張する(申立書B 31頁12行〜下から2行)。
しかしながら、甲B9及び甲B15には、ノナン酸バニリルアミドがエタノールを含む水溶液に易溶であることが記載されているものの、それらは、ノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性向上のためにエタノールを用いることを示しているに過ぎないものであって、これらの記載からロキソプロフェンを想起することはできないものであるから、甲B9及び甲B15並びに申立人Bが提示した甲号証に接した当業者であっても、甲B10発明において、非ステロイド性抗炎症剤として、特にロキソプロフェンを採用することによって、ノニル酸バニリルアミドを含む含水組成物の安定性が向上するという効果を予測することができたとはいえない。
したがって、当該申立人Bの主張も採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件発明1〜6に係る特許は、取消理由通知書に記載した「甲B10を主引用発明とする取消理由3(進歩性)」により取り消すことはできない。

第4 取消理由で採用しなかった申立理由
1 申立人Aの申立理由について
(1)甲A2に基づく申立理由A1(サポート要件違反)
ア 申立書Aにおける申立理由A1(サポート要件違反)の概要
本件特許の出願後に公開された本件特許権を出願人とする公開特許公報である甲A2には、トウガラシエキスを含む含水エタノールにロキソプロフェンナトリウム水和物を配合しても保存後に不溶物の生成が認められることが記載されている(甲A2の【0077】の表2)から、含水エタノール溶媒中のノナン酸バニリルアミドに起因する不溶物の生成という課題をロキソプロフェン又はその塩を用いることによって解決できないことが示されている。
そして、本件発明では、含水エタノールを溶媒として使用する態様が排除されていないから、本件発明は、課題を解決できない範囲を包含するものである。
したがって、本件発明は、甲A2の記載に基づけば、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 当審の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載(【0008】、【0012】、【0037】)を総合すれば、本件発明の課題である「保存安定性に優れた」ものとは、ノナン酸バニリルアミドを含有する含水組成物を保存した場合に生じる不溶物の生成を抑制することであって、この課題をロキソプロフェン又はその塩を用いることで解決するものであるといえる。
そうすると、本件発明の「保存安定性に優れた」ものという課題は、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、これを含有しない場合と比較して相対的に不溶物の生成が抑えられることによって達成できるものであることが理解できる程度の記載があれば十分である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明には、ノニル酸バニリルアミドと構造が近似するカプサイシンを含むトウガラシエキスと精製水とからなるサンプル6−Aが、80℃1日保存した後において、不溶物が生成するのに対し、サンプル6−Aに更にロキソプロフェンナトリウム水和物を添加したサンプル6−Bが、80℃1日保存した後において、不溶物が無かったことが記載されている(上記第2 2(2)イ(ア))ことからみて、ロキソプロフェンナトリウム水和物を用いることによってノニル酸バニリルアミドの保存安定性が優れたものとなることが記載されているといえるから、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題が解決できたことが記載されているといえる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

ウ 小括
以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項1号に規定する要件(サポート要件)に適合しているといえるので、本件発明1〜6に係る特許は、申立人Aによる甲A2に基づく申立理由A1(サポート要件違反)により取り消すことはできない。

(2)甲A2に基づく申立理由A2(実施可能要件違反)
ア 申立書Aにおける申立理由A2(実施可能要件違反)の概要
本件特許の発明の詳細な説明に記載のサンプル6−Bの試験結果は再現できないものであり、甲A2にはトウガラシエキスを含む含水エタノールにロキソプロフェンナトリウム水和物を配合しても、保存後に不溶物の生成がみとめられることが報告されているから、本件特許の発明の詳細な説明には、ノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩を含み、保存安定性に優れた含水組成物からなる医薬組成物は、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

イ 当審の判断
上記第2 2(2)イ(ア)のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明に接した当業者は、ノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩を含み、保存安定性に優れた含水組成物からなる医薬組成物を製造でき、使用できることを理解できたといえる。
したがって、本件特許の発明詳細な説明は、本件発明の医薬組成物を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

ウ 申立書Aにおける申立人Aの主張について
申立人Aは申立書Aにおいて、本件特許は「エタノール」を含む態様を排除しておらず、「エタノール」を含む場合には課題を解決できないことがあるから、本件特許はサポート要件を満たさない旨主張している。
しかしながら、本件特許は、「エタノール」の有無はともかく、上記第2 2(2)イ(ア)で指摘したように、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題が解決できたことが記載されているといえる。
したがって、申立人Aの上記主張は、採用することができない。

エ 上申書C3における申立人Cの主張について
甲A2の段落0007には、「本発明の課題は、トウガラシやその抽出物を含有し、優れた保存安定性を有する医薬組成物、並びにトウガラシやその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供することにある。」と記載されており、本件発明と甲A2は技術分野及び課題が同一であるといえるから、甲A2の試験例1に記載されたサンプル2−Aは優れた保存安定性という課題を解決できていないという事実は、本件特許の発明の詳細な説明のサンプル6−Bでも同課題を解決できないことを示しているに他ならない旨主張する。
しかしながら、甲A2の試験例1の測定条件は、本件特許の発明の詳細な説明の試験例6の測定条件と緩衝液、溶媒等が異なるものであって、測定条件が異なれば保存安定性といった効果も異なるものとなることは当業者に自明の技術的事項であるから、本件発明と甲A2の技術分野及び課題が同一であったとしても、測定条件が異なる以上、甲A2において課題が解決できなかったことが記載されているとしても、本件発明が課題を解決できないものであるとはいえない。
よって、申立人Cの上記主張は採用することができない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許の発明詳細な説明は、特許法第36条第4項1号に規定する要件(実施可能要件)に適合しているといえるので、本件発明1〜6に係る特許は、申立人Aによる甲A2に基づく申立理由A2(実施可能要件違反)により取り消すことはできない。

2 申立人Bの申立理由について
(1)申立理由Bその1(甲B1を主引例とする進歩性欠如)
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲B1には、上記摘記B1a〜cの記載があるので、甲B1には、「ロキソプロフェンナトリウム水和物と、エタノール、1,3−ブチレングリコール、ヒプロメロース、カルボキシビニルポリマー、トリエタノールアミンとを含む軟膏剤」の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されていると認められる。
本件発明1と甲B1発明とを対比する。
一般に水和物とは、化学物質の分子と水分子とが会合したものであるから、化学物質が水和物であることをもって、これが含水組成物であるとはいえない。また、甲B1には、エタノール等の添加剤を含むことは記載されている(摘記B1c)ものの、水を含むことは記載されていない。そうすると、甲B1発明の軟膏剤は、含水組成物であるとはいえない。
したがって、本件発明1と甲B1発明は、「ロキソプロフェン又はその塩を含有する組成物である医薬組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B1−1>
本件発明1では、ノナン酸バニリルアミドを含有するのに対し、甲B1発明では、ノナン酸バニリルアミドを含有しない点。
<相違点B1−2>
医薬組成物について、本件発明1では含水組成物であるのに対し、甲B1発明では含水組成物ではない点。

(イ)判断
a 相違点B1−1について
甲B1発明は、市販薬であるロキソニンゲルについての医療用医薬品添付文書を補完するインタビューフォームに記載された発明であるから、甲B1に接した当業者は、甲B1に記載されない任意の添加剤等を用いることを動機づけられるとはいえない。仮に試験研究のために任意の添加剤等を用いることを動機づけられたとしても、甲B1にはノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるという課題が記載されていない以上、申立人Bが提示した甲B号証を参酌しても、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるためにノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえない。
申立人Bは、申立書Bにおいて、甲B2には、ノナン酸バニリルアミドは、非ステロイド性を含む外用消炎鎮痛剤において、温感成分として添加されることが記載され(摘記甲B2a)、また、数多くの市販の外用鎮痛消炎剤において有効成分と併用されている(摘記甲B4a〜i)から、甲B1発明において、ノナン酸バニリルアミドを配合してロキソプロフェンとノナン酸バニリルアミドの併用薬とすることは、当業者が容易になし得たことである旨主張する。
しかしながら、先に述べたとおり、甲B1に接した当業者は、甲B1に記載されない任意の添加剤等を用いることを動機づけられるとはいえないし、甲B1にはノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるという課題が記載されていない以上、申立人Bが提示した甲B号証を参酌しても、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるためにノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえない。
したがって、申立人Bの上記主張は、採用することができないものである。
よって、相違点B1−2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

b 効果について
第2 2(5)(5−2)ア(イ)bで説示したように、本件発明1は、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという、当業者が予測できない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、甲B1の記載及び申立人Bが提出した甲B号証並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、いずれも、本件発明1の医薬組成物を、請求項2〜6に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、本件発明1について、上記アにおいて示したとおり、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1をさらに限定する本件発明2〜6についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。

ウ 小括
よって、申立人Bの上記主張は採用することができず、本件発明1〜6は、甲B1発明、甲B1の記載及び申立人Bが提出した甲B号証の記載並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、申立人Bによる申立理由Bその1(甲B1を主引例とする進歩性欠如)により取り消すことはできない。

(2)申立理由Bその4(甲B12を主引例とする進歩性欠如)
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲B12には、摘記甲B12a〜cの記載があるので、甲B12には、「ロキソプロフェン及びロキソプロフェンナトリウム塩と水を含有し、更に、水溶性高分子、保湿剤、吸収促進剤、賦形剤、刺激緩和剤、薬効アジュバント、及びpH調整剤によって構成される群の中から1つ以上選択されたものを含む、パップ剤」の発明(以下「甲B12発明」という。)が記載されていると認められる。
本件発明1と甲B12発明とを対比する。
本件発明1は、下記ロキソプロフェン又はその塩、ノナン酸バニリルアミド、水以外の成分の有無や種類を特定しないものであるから、甲B12発明が、水溶性高分子等の成分を含むことは、相違点とはならない。
したがって、本件発明1と甲B12発明は、「ロキソプロフェン又はその塩を含有する含水組成物である医薬組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B12>
本件発明1では、ノナン酸バニリルアミドを含有するのに対し、甲B12発明では、ノナン酸バニリルアミドを含有しない点。

(イ)判断
a 相違点B12について
甲B12発明は、1回塗布時の適用量が一定しないといった塗布剤の課題を解決するため、水分を含むパップ剤としたものであり(摘記甲B12b)、パップ剤に添加される薬効アジュバントは経皮吸収を促進するためのものである(摘記甲B12b)ことは記載されているものの、甲B12には、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるという課題が記載されていないから、当業者は、申立人Bが提示した甲B号証を参酌しても、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるためにノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえない。
また、本件発明1は、発明特定事項としてエタノールを添加することが特定されているものではないから、エタノールが本件発明1の発明特定事項であることを前提とする申立人Bの上記主張は、採用することができないものである。
申立人Bは、申立書Bにおいて、甲B12には、薬効アジュバントとしてノニル酸ワニリルアミド(当審注:ノナン酸バニリルアミド)を用いることができることが記載されており(摘記甲B12c)、更に、甲B2には、ノナン酸バニリルアミドは、非ステロイド性を含む外用消炎鎮痛剤において、温感成分として添加されることが記載され(摘記甲B2a)、また、数多くの市販の外用鎮痛消炎剤において有効成分とエタノールとともに併用されており(摘記甲B4a〜i)、また、ノナン酸バニリルアミドはエタノールに極めて溶けやすく、水にはほとんど溶けないものである(摘記甲B5a)ことが技術常識であったことを勘案すれば、甲B12発明において、ロキソプロフェンに加えて、ノナン酸バニリルアミドとエタノールを併用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、エタノール含有のロキソプロフェンとノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物は、沈殿を生ずることがなく安定したものであることは、当業者が容易に予測できることであるから、本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、先に述べたとおり、甲B12には、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるという課題が記載されていないから、当業者は、申立人Bが提示した甲B号証を参酌しても、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるためにノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえない。
また、「エタノール」の有無は、ノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえないことを左右するものではない。
したがって、申立人Bの上記主張は、採用することができないものである。
よって、本件発明1は、甲B12発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

b 効果について
第2 2(5)(5−2)ア(イ)bで説示したように、本件発明1は、ロキソプロフェンを含有することにより、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物である医薬組成物の安定性を改善するという、当業者が予測できない格別顕著な効果を奏するといえる。
したがって、本件発明1は、甲B12の記載及び申立人Bが提出した甲B号証並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、いずれも、本件発明1の医薬組成物を、請求項2〜6に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、本件発明1について、上記アにおいて示したとおり、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1をさらに限定する本件発明2〜6についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。

ウ 小括
よって、申立人Bの上記主張は採用することができず、本件発明1〜6は、甲B12発明、甲B12の記載及び申立人Bが提出した甲B号証の記載並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、
申立人Bによる申立理由Bその4(甲B12を主引例とする進歩性欠如)により取り消すことはできない。

(3)申立理由Bその5(サポート要件違反)
ア 申立書B 第2(エ)における申立理由Bその5(サポート要件違反)の概要
申立人Bは、申立書Bにおいて、本件発明は、発明特定事項として、ノナン酸バニリルアミドと、ロキソプロフェン又はその塩と、水以外の成分については、なんら限定を付していないから、本件発明は、ノナン酸バニリルアミドと、ロキソプロフェン又はその塩と、水に加えて、その他の医薬組成物として通常用いられる成分を適宜含むものと解されるものであって、乳酸は医薬組成物においてpH調整剤として汎用される酸であるから、本件発明は、ノナン酸バニリルアミドと、ロキソプロフェン又はその塩と、水に加えて、乳酸を含有する含水組成物である医薬組成物を含むものであるが、乳酸を含む場合には、ロキソプロフェンは分解されるものである(甲B13の【0064】、甲B14の【0004】、甲B16の「4.結果」)から、乳酸を含む場合を包含する本件発明は、保存安定性に優れた医薬組成物を提供するという課題を解決することができると認識できる範囲のものではない旨主張する(申立書B 34頁8行〜38頁18行)。
しかしながら、本件特許は、「乳酸」の有無はともかく、上記第2 2(2)イ(ア)で指摘したように、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題が解決できたことが記載されているといえる。
したがって、申立人Bの上記主張は、採用することができない。

(4)申立理由C1(サポート要件違反)及びC2(実施可能要件違反)
ア 申立書C 第2(エ)における申立理由C1(サポート要件違反)の概要
申立人Cは、申立書C 第2(エ)において、上記(3)で指摘した点に加えて、融点は65℃であるカプサイシン等のカプサイシノイドは温度依存的に水への溶解度が向上するものである(甲C3の69頁の第2表、甲C4の1頁の「カプサイシンの一般情報」の項)から、本件特許の発明の詳細な説明のサンプル6−Aをカプサイシンの融点以上の80℃で保存するとカプサイシン水への溶解度が著しく向上した状態になっているはずなので、本件特許明細書のサンプル6−Aを80℃で保存した後に生じる不溶物がカプサイシンに起因しているとは特定できないものであること、トウガラシに含まれる界面活性作用のあるサポニンによって溶解度が向上することが知られている(甲C8〜甲C11)から、本件特許の発明の詳細な説明のサンプル6−Aの溶液中には、トウガラシエキスに由来するカプサイシンとサポニンが共存しており、サポニンの界面活性作用によってカプサイシンが安定に可溶化され、カプサイシンに起因する不溶物は生じないようになっていることも想定されるため、サンプル6−Aで生じている不溶物がカプサイシンに起因するものではなく、トウガラシエキスに含まれる他の成分とカプサイシンとの相互作用によって生成されたものであるとしか想定できないこと、トウガラシのエタノール抽出物は、カプサイノシドだけでなく、βカロテンなどのカロテノイドも含まれている(甲C1のD−486頁、甲C7の377頁)から、トウガラシのエタノール抽出物を含む含水組成物で生じた不溶物は、カプサイシン等のカプサイノシドであるとは理解できないこと、からみて、トウガラシエキスを含む含水組成物で生じた不溶物の生成を抑制できたことをもって、カプサイシンに起因する不溶物の生成という課題を解決できたと評価することができない旨主張する(申立書C 9頁13行〜14頁3行)。
しかしながら、本件特許は、「サポニン」の有無はともかく、上記第2 2(2)イ(ア)で指摘したように、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題が解決できたことが記載されているといえる。
したがって、申立人Cの上記主張は、採用することができない。

イ 申立書C 第2(エ)における申立理由C1(サポート要件違反)の概要
申立人Cは、申立書C 第2(オ)〜(キ)において、甲C2、13〜28によれば、トウガラシエキスを含有する含水組成物がエタノールを含む場合には、カプサイシンやノナン酸バニリルアミドの不溶物は生じないものであり、仮にカプサイシンを含有するエタノール水溶液で不溶物が生じるとしても、甲C29によれば、ノナン酸バニリルアミドを含有するイソプロピルアルコール水溶液では不溶物は生じないものであるから、本件発明は、保存安定性に優れた医薬組成物を提供するという課題が存在しないものを包含するものであって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する(申立書C 14頁4行〜23頁2行)。
しかしながら、本件特許は、「エタノール」や「イソプロピルアルコール」の有無はともかく、上記第2 2(2)イ(ア)で指摘したように、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題が解決できたことが記載されているといえる。
したがって、申立人Cの上記主張は、採用することができない。

ウ 申立書C 第3における申立理由C2(実施可能要件違反)の概要
(ア)申立書C 第3(ア)における申立理由C2(実施可能要件違反)
申立人Cは、申立書Cにおいて、本件特許の発明の詳細な説明には、ノナン酸バニリルアミドを含む含水組成物を使用して保存による不溶物の生成の有無について一切検証しておらず、更に、トウガラシエキスに代えてノナン酸バニリルアミドを使用した場合にも、トウガラシエキスと同等の不溶物生成抑制作用が得られることについても一切実証されていないから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨主張する(申立書C 23頁下から3行〜24頁6行)。
しかしながら、上記第2 2(2)イ(ア)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、ロキソプロフェンナトリウム水和物を用いることによってノニル酸バニリルアミドの保存安定性が優れたものとなることが記載されているといえるから、本件特許の発明の詳細な説明に接した当業者は、ノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩を含み、保存安定性に優れた含水組成物からなる医薬組成物を製造でき、使用できることを理解できたといえる。
したがって、本件特許の発明詳細な説明は、本件発明の医薬組成物を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

(イ)申立書C 第3(イ)における申立理由C2(実施可能要件違反)
申立人Cは、申立書Cにおいて、本件特許の発明の詳細な説明の試験例6において実施された保存安定性の評価は、80℃で1日以上の保存条件が設定されているものの、80℃という極めて高い温度条件では、容器の破損、サンプルの容器外への漏出等が懸念されるため、試験を安全に遂行することができないものであり、公的機関においても80℃1日の保存条件では安全性の点から実施困難との見解が示されたことから、80℃で1日以上の保存条件での安定性試験は、当業者の通常の創作能力に基づいて遂行できるものではないから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨主張する(申立書C 24頁7〜17行)。
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明には、80℃1日の保存条件で保存安定性の試験を実施したことが記載されている(試験例6)ことからみて、当該保存条件が当業者であっても再現できないほどに安全性が欠如した条件であるとはいえないから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。このことは、80℃1日の保存条件では安全性の点から実施困難との見解を示す公的機関があったとしても、変わるものではない。
したがって、申立人Cの上記主張は、採用することができない。

また、申立人Cは、申立書Cにおいて、本件発明はエタノールを含む医薬組成物が排除されていない一方、エタノール水溶液の沸点は80℃未満となる場合があるため(甲C30の2頁左した欄1〜2行、甲C31の「5.試験結果」の項)、溶媒としてエタノール水溶液を使用したサンプルを80℃1日の保存条件で試験を行うと、長時間の沸騰により、通常の保存時では起きない組成上の化学変化が生じ得ることになり、また、このような沸騰した状態のサンプルを1日保存すると、容器が解放されていると当該溶媒は蒸散し、容器の気密性が保持されていると容器内が長期に亘り高圧になり容器が破損する虞があるため、当業者の通常の創作能力では、適切又は安全に保存安定性の評価行うことができないから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨主張する(申立書C 24頁18行〜25頁下から5行)。
しかしながら、本件特許は、「エタノール」の有無はともかく、上記第2 2(2)イ(ア)で指摘したように、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
したがって、申立人Cの上記主張は、採用することができない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項1号に規定する要件(サポート要件)に適合しているといえるので、本件発明1〜6に係る特許は、申立人Cによる申立理由C1(サポート要件違反)により取り消すことはできない。
また、以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項1号に規定する要件(実施可能要件)に適合しているといえるので、本件発明1〜6に係る特許は、申立人Cによる申立理由C2(実施可能要件違反)により取り消すことはできない。

(5)申立理由C3(甲C14を主引例とする進歩性欠如)
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲C14には、試験例1(血行促進効果)において、比較例である「エタノール/水の等量混合液(1:1(w/w))にノニル酸ワニリルアミド溶解させた、ノニル酸ワニリルアミドの0.1重量%溶液」を、陽性コントロールとしてラットに塗布したところ、血流量が、214.4%に上昇した(定常血流量100%)ことが記載されている(【0038】〜【0041】)ことからみて、「ノニル酸ワニリルアミドを含む血行促進効果を奏する溶液」の発明(以下「甲C14発明」という。)が記載されていると認められる。
本件発明1と甲C14発明とを対比する。
甲C14発明の溶液は、水を含んだ血行促進効果を有するものであることからみて、含水組成物である医薬組成物に相当する。
そうすると、本件発明1と甲C14発明は、「ノナン酸バニリルアミドを含有する含水組成物である医薬組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点C14>
本件発明1では、ロキソプロフェン又はその塩を含有するのに対し、甲C14発明では、ロキソプロフェン又はその塩を含有しない点。

(イ)判断
a 相違点C14について
甲C14発明は、甲C14の試験例1において陽性コントロールとして記載されているものであるから、甲C14に接した当業者は、甲C14に記載されない任意の添加剤等を用いることを動機づけられるとはいえない。仮に試験研究のために任意の添加剤等を用いることを動機づけられたとしても、甲C14にはノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるという課題が記載されていない以上、申立人Cが提示した甲C号証を参酌しても、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるためにノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえない。
申立人Cは、申立書Cにおいて、甲C14には、外用組成物に消炎鎮痛剤を配合できることも記載されており(【0021】)、甲C14発明は、甲C14の試験例1において陽性コントロールとして記載されているものであるから(【0041】)、甲C14発明においても、消炎鎮痛剤を配合することは当業者であれば当然に想到し得る事項であり、甲C32には、非ステロイド性抗炎症剤の薬理作用が抗炎症、解熱、鎮痛であって、ロキソプロフェンが非ステロイド性抗炎症剤の一種であり、抗炎症作用及び鎮痛作用が強いことが記載されており(56頁左欄7行、57頁の表1、57頁右欄下から6〜3行)、また、甲C33には、ロキソプロフェンナトリウムは、強力な抗炎症、鎮痛及び解熱作用を有し、特に鎮痛作用が著しく強く、非ステロイド性抗炎症剤の副作用の一つである消化管障害が比較的弱いことが記載されており(1180頁の緒言の欄8〜11行)、更に、外用剤として投与した場合には、外用消炎鎮痛剤の主薬として代表的な他の非ステロイド性抗炎症剤と比較して同程度若しくはそれ以上の抗炎症作用及び鎮痛作用を示すことが記載されている(186頁のVI結論の欄)から、甲C14の【0021】の記載に従って甲C14発明に消炎鎮痛剤を配合する場合、甲C32及び甲C33の記載に基づいて、代表的な消炎鎮痛剤の中でも有効性の高いロキソプロフェンナトリウムを選んで配合することは、当業者が容易になし得たことである旨主張する(申立書C 28頁2行〜29頁3行)。
しかしながら、先に述べたとおり、甲C14に接した当業者は、甲C14に記載されない任意の添加剤等を用いることを動機づけられるとはいえないし、甲C14にはノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるという課題が記載されていない以上、申立人Cが提示した甲C号証を参酌しても、ノナン酸バニリルアミドの安定性を向上させるためにノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを併用することを動機づけられたとはいえない。
よって、申立人Cの上記主張は、採用することができないものである。

b 効果について
上記第2 2(5)(5−2)ア(イ)bで説示したように、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の奏する効果が記載されており、この効果は、甲C14の記載、及び本件特許の優先権主張日当時の技術常識からは当業者が予測できない格別顕著なものと認められる。
申立人Cは、申立書Cにおいて、本件特許の発明の詳細な説明には、ノナン酸バニリルアミドとロキソプロフェン又はその塩とを含む含水組成物に関する実施例は記載されていないため、本件発明の効果を類推することはできないものであり、甲C14発明ではノナン酸バニリルアミドをエタノール/水の等量混合液に溶解させているため、保存後に不溶物が生じない特性を既に有しているから、保存後の不溶物の生成を抑制できるという効果は、甲C14発明が具備するものであって、当業者が予測できないものとはいえない旨主張する(申立書C 29頁4〜19行)。
しかしながら、エタノールの有無はともかく、先に述べたとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の奏する効果が記載されており、この効果は、甲C14の記載、及び本件特許の優先権主張日当時の技術常識からは当業者が予測できない格別顕著なものと認められる。
したがって、申立人Cの上記主張は採用することができないものである。
よって、本件発明1は、甲C14の記載及び申立人Cが提出した甲C号証並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、いずれも、本件発明1の医薬組成物を、請求項2〜6に規定する発明特定事項を備えてなるものにそれぞれ限定するものである。そして、本件発明1について、上記アにおいて示したとおり、当業者が容易に想到し得たものと認められない以上、本件発明1をさらに限定する本件発明2〜6についても同様の理由により当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。
したがって、本件発明2〜6は、甲C14の記載及び申立人Cが提出した甲C号証並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
よって、申立人Cの上記主張は採用することができず、本件発明1〜6は、甲C14発明、甲C14の記載及び申立人Cが提出した甲C号証の記載並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、申立人Cによる申立理由C3(甲C14を主引例とする進歩性欠如)により取り消すことはできない。

第5 むすび
本件特許の請求項1〜6に係る特許を、取消理由通知書に記載した取消理由1〜3及び特許異議申立書に記載したその他の申立理由によって取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-04-21 
出願番号 P2018-129618
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 前田 佳与子
特許庁審判官 原田 隆興
田中 耕一郎
登録日 2021-01-13 
登録番号 6823622
権利者 興和株式会社
発明の名称 生薬等含有医薬組成物(陸)  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
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