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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08G 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1385222 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-14 |
確定日 | 2022-06-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6903427号発明「2液型プレミックス組成物、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム及び裏込め注入工法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6903427号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6903427号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成28年12月20日を出願日とする特願2016−246972号であって、令和3年6月25日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年7月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年1月14日に申立人 和栗 由莉菜(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)を行った。 第2 本件特許発明 特許第6903427号の請求項1ないし9の特許に係る発明は、それぞれ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」といい、これらをあわせて「本件特許発明」という。)。 「【請求項1】 トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞内に注入して硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う裏込め注入工法において、 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化前の配合組成物が、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含むB液との混合液を含み、 前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含み、 前記混合液のイソシアネート指数が160〜500である、裏込め注入工法。 【請求項2】 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームが、JIS A 9511:2006Rの燃焼性試験の測定方法Cに準拠して測定された酸素指数が23.0以上である、請求項1に記載の裏込め注入工法。 【請求項3】 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームが、JIS A 9511:2006Rに準拠して測定された圧縮強さが0.10MPa以上であり、かつ、JIS A 9511:2006Rに準拠して測定された曲げ強さが0.15MPa以上である、請求項1又は2に記載の裏込め注入工法。 【請求項4】 前記カルボン酸塩の配合量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して2〜30質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の裏込め注入工法。 【請求項5】 前記カルボン酸塩の配合量が、前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して0.5〜10質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の裏込め注入工法。 【請求項6】 前記カルボン酸塩が、蟻酸カリウム、酢酸カリウム、n−オクタン酸カリウム及び2−エチルヘキサン酸カリウムのうちから選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の裏込め注入工法。 【請求項7】 前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対してA液にアミン系触媒を0.2〜10質量部含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の裏込め注入工法。 【請求項8】 前記発泡剤が更に水を含み、 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームの密度が27〜33kg/m3となるように発泡硬化を行う、請求項1〜7に記載の裏込め注入工法。 【請求項9】 前記カルボン酸塩の配合量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して5〜20質量部である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の裏込め注入工法。」 第3 申立理由の概要 1 特許異議申立理由の要旨 申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし9は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(サポート要件違反) 本件特許の請求項1ないし9についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。 ・甲第1号証:特開2016−74887号公報 ・甲第2号証:「化学工業日報」第8版 平成28年6月29日発行 第1ページ ・甲第3号証:特開2000−281742号公報 ・甲第4号証:「ニチアス技術時報」 2014年1号 No.364 ・甲第5号証:特開平8−302348号公報 ・甲第6号証:特開2005−325208号公報 ・甲第7号証:特開2014−210934号公報 ・甲第8号証:特開平9−208657号公報 ・甲第9号証: 「実用プラスチック事典」、実用プラスチック事典編集委員会編、株式会社産業調査会、1993年9月20日 初版第2刷 第264ページ なお、各甲号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。 第4 当審の判断 当審は、申立人がした申立ての理由によっては、本件特許発明1ないし9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について (1)証拠等の記載等 ア 甲1の記載事項等 (ア)甲1の記載事項 甲1には、「硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法」について、以下の記載がされている。 なお、下線については当審において付与したものである。以下、同様。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくともポリオール化合物、発泡剤、触媒、及び相溶化剤を含有し、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と混合して発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、 前記発泡剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含有し、 前記相溶化剤が、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、メトキシプロピルアセテート、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種以上を含有する、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。」 「【0006】 本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発泡剤としてHFO−1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬質ポリウレタンフォームの物性の低下を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。」 「【0013】 第3級アミノ基含有ポリオール化合物の開始剤である第1級ないしは第2級アミン開始剤としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン等の脂肪族第1級ないし第2級モノアミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン等の脂肪族第1級ないし第2級ポリアミン類、アニリン、ジフェニルアミン、トルエンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、N−メチルアニリン等の芳香族第1級ないし第2級モノないしポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類が例示される。第3級アミノ基含有ポリオール化合物の含有量は、ポリオール化合物中、10〜60重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましい。第3級アミノ基含有ポリオール化合物は反応性の上昇や、物性の発現に有効で、10重量%より少ないと反応性の上昇が見られず、60重量%を超えると反応が早くなりすぎて、フォームのやけやクラックの発生原因となる。」 「【0021】 〔発泡剤〕 前記発泡剤は、オゾン層破壊係数と地球温暖化係数が低く可燃性のないHFO−1233zdを含有する。 【0022】 前記発泡剤は、さらに水を含有することが好ましい。水の添加により、ポリオール組成物の蒸気圧を低下させることができる。水の含有量は、ポリオール化合物の合計100重量部に対して0.5〜5重量部であることが好ましい。 【0023】 前記発泡剤は、さらに硬質ポリウレタンフォーム用の公知の発泡剤を含有しても良い。 【0024】 前記発泡剤の含有量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましく、10〜40重量部であることが更に好ましい。」 「【0028】 〔その他の成分〕 前記ポリオール組成物は、硬質ポリウレタンフォーム用の公知の触媒、整泡剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤等を含有しても良い。 【0029】 前記触媒としては、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、DBU等の第3級アミン類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の金属系触媒がウレタン化反応触媒として例示できる。また、ポリウレタン分子の構造において難燃性向上に寄与するイソシアヌレート結合を形成する触媒の使用も好ましい。イソシアヌレート結合を形成する触媒としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムが例示できる。前記第3級アミン触媒の中にもイソシアヌレート結合の生成を促進するものがある。イソシアヌレート結合の生成を促進する触媒とウレタン結合の生成を促進する触媒を併用してもかまわない。金属系触媒、4級アンモニウム塩触媒、酸ブロック触媒、イミダゾール触媒も使用できる。 【0030】 前記整泡剤としては、硬質ポリウレタンフォーム用の公知の整泡剤が限定なく使用可能である。整泡剤としては、通常ポリジメチルシロキサン並びにポリジメチルシロキサンとポリアルキレンオキサイドのグラフト共重合体もしくはブロック共重合体が使用される。ポリアルキレンオキサイドとしては、平均分子量が5000〜8000のポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体ないしブロック共重合体が使用される。前記ポリジメチルシロキサン並びにポリジメチルシロキサンとポリアルキレンオキサイドのグラフト共重合体もしくはブロック共重合体の代わりに、又は前記ポリジメチルシロキサン並びにポリジメチルシロキサンとポリアルキレンオキサイドのグラフト共重合体もしくはブロック共重合体と共に、非シリコン系整泡剤を用いても良い。」 「【0033】 本実施形態のポリオール組成物は、スラブストックフォーム、サンドイッチパネル等の連続生産される硬質ポリウレタンフォーム、射出注入される硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネル、現場発泡硬質ウレタンフォームなどの製造に使用可能である。 【0034】 <硬質ポリウレタンフォームの製造方法> 本実施形態の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、イソシアネート成分と前記ポリオール組成物とを混合して発泡、硬化させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法である。」 「【0037】 前記硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール組成物とイソシアネート成分との混合におけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)は50〜500、より好ましくは110〜400である。 【0038】 係る構成により発泡硬化反応が促進され、硬質ポリウレタンフォームを構成する樹脂中にウレタン結合やウレア結合、イソシアヌレート結合が多く形成され、物性、特に圧縮強度や熱伝導率の物性がより一層向上した硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。」 「【実施例】 【0040】 以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。 【0041】 <評価方法> 〔ポリオール組成物の原液保存安定性〕 ポリオール組成物の触媒量を、ゲルタイムが30±10秒になるように調整し、23℃で1週間放置した後、分離と気泡の発生の状態を目視にて観察し、下記基準で判断した。なお、当該評価は反応性の劣化を表すものではない。 ・分離 ○:ポリオール組成物中に層分離の発生なし ×:ポリオール組成物中に層分離の発生あり ・気泡の発生 ○:ポリオール組成物中に気泡の発生なし ×:ポリオール組成物中に気泡の発生あり 【0042】 〔フォーム密度〕 フォーム密度についてはJIS K 7222に準拠し求めた。 【0043】 〔フリーフォームの圧縮強度〕 JIS A9511(発泡プラスチック保温材)に基づき、JIS K7220(硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方)に準拠して、圧縮強度を測定した。 【0044】 〔熱伝導率〕 JIS A9511(発泡プラスチック保温材)に基づき、JIS A1412−2(熱絶縁材の熱抵抗および熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法)(HFM法)に準拠して、熱伝導率を測定した。 【0045】 <実施例1〜8、比較例1〜6> 〔ポリオール組成物の調整〕 ポリオール組成物の構成材料を表1に示す。 【0046】 【表1】 【0047】 表1に示した構成材料を下記表2に記載した配合にて混合撹拌して実施例1〜8、比較例1〜6のポリオール組成物を調製した。 【0048】 〔硬質ポリウレタンフォームの製造〕 実施例1〜8、比較例1〜6のポリオール組成物を20℃に温度調整し、次いで20℃に温度調整したイソシアネート成分(住化バイエルウレタン社製粗製ジフェニルメタンジイソシアネート「スミジュール44V−20L」、NCO%:31%)とNCO/OH当量比が175又は350となる比率でラボ用撹拌機にて混合撹拌し、発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームを得た。当該硬質ポリウレタンフォームの評価結果を表2に示す。 【0049】 【表2】 【0050】 表2の結果から、実施例1〜8に係るポリオール組成物は、発泡剤としてHFO−1233zdを含有していても分離抑制等の原液保存安定性に優れている事がわかる。また、表2の結果から、実施例1〜8に係るポリオール組成物を原料として製造された硬質ポリウレタンフォームは、発泡剤としてHFO−1233zdを用いていても物性の低下を抑制できることがわかる。」 (イ)甲1に記載された発明 甲1の記載について、特に実施例1(段落【0040】ないし【0050】)に着目して整理すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。 「ポリオールA(マンニッヒ系ポリエーテルポリオール(第一工業製薬(株)))50重量部、ポリオールB(エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)))20重量部、ポリオールC(TDA系ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)))30重量部、難燃剤(トリスモノクロロプロピルスルフォネート(第八化学工業(株)))15重量部、整泡剤(SH−193(シリコン系界面活性剤)(東レ・ダウコーニング(株)))2重量部、触媒A(オクチル酸カリウム(東栄化工(株)))4重量部、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(ハネウェル・ジャパン(株))40重量部、相溶化剤A(γ−ブチロラクトン(三菱化学(株)))5重量部を混合撹拌して調製したポリオール組成物を20℃に温度調整し、次いで20℃に温度調整したイソシアネート成分(住化バイエルウレタン社製粗製ジフェニルメタンジイソシアネート「スミジュール44V−20L」、NCO%:31%)とNCO/OH当量比が175となる比率でラボ用撹拌機にて混合撹拌し、硬質ポリウレタンフォームの発泡硬化を行う方法。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲2の記載事項 甲2には、以下の記載がされている。 「トンネル補修用ウレタン HFOでノンフロン発泡 日清紡ケミカル 安全と環境に配慮 日清紡ケミカルは、老朽トンネルの補修に用いられるトンネル裏込め注入用のウレタン製品で業界初となるノンフロン発泡剤を用いた「セットフォーム40L」を開発した。採用したのは、安全性にも優れるハイドロフルオロオレフィン(HFO)。今月から順次置き換えを始めており、主力のトンネル裏込め注入用は7月中、他の土木用原液も今秋までに全面切り替えを行う。地球環境を保全するため、オゾン破壊係数(ODP)、地球温暖化係数(GWP)ともに小さいHFOタイプを業界に先駆けて提供する。 裏込め注入用途では、大空洞注入時の内部発熱の抑制や発泡後の体積収縮を防止するため、これまで物理発泡剤であるハイドロフルオロカーボン(HFC)を使用してきた。しかし、HFCはODPは0だが、GWPが794または1030と極めて高い。 HFOを発泡剤に使用しても従来と同等の寸法安定性や内部発熱温度となる製品を開発した。HFOはODPは0、GWPも1と低いうえ、水を発泡剤としたノンフロン製品と比較して発熱量が低いため施工安全性に優れ、充填後の発泡体の体積収縮も防止できる。」 ウ 甲3の記載事項 甲3には、以下の記載がされている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリオールとヌレート化触媒と水を含有するA液と、イソシアネートを主成分とするB液とからなり、上記A液とB液の混合比が、重量比で、A液:B液=1:3〜1:7の範囲に設定され、かつ、上記水の配合量がA液とB液の合計量中0.8〜2.5重量%の範囲に設定されていることを特徴とする空洞充填用組成物。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、老朽化した既設トンネルの覆工コンクリート背面に存在する空洞等を充填するための空洞充填用組成物に関するものである。」 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記発泡コンクリートは、重量が重く、老朽化した覆工コンクリートに対して重量的な負荷が大きいという難点がある。一方、上記硬質発泡ウレタンは、軽量であるため、老朽化した覆工コンクリートに対して重量的な負荷が小さいという点では、上記発泡コンクリートに比べて優れている。しかしながら、上記硬質発泡ウレタンは、発泡倍率が30倍程度と小さいため、ウレタンが発泡する時の発泡圧が大きく、老朽化した覆工コンクリートに対して、発泡圧による負荷が大きいという難点がある。 【0004】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、軽量で、高発泡、かつ、圧縮強度0.05MPa以上の発泡体を得ることができる空洞充填用組成物の提供をその目的とする。」 「【0015】上記ポリオールとともに用いられるヌレート化触媒は、いわゆるイソシアネート三量化触媒であり、イソシアネートを三量化してハードセグメントを構成するために用いられる。このようなヌレート化触媒としては、例えば、オクチル酸カリウム、酢酸カリウム、トリス−(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、ヌレート化率およびコストパフォーマンスの点で、オクチル酸カリウムを用いることが好適である。 【0016】上記ヌレート化触媒の配合量は、上記A液とB液の合計量中0.5〜4重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは1〜2重量%である。すなわち、上記ヌレート化触媒の配合量が0.5重量%未満であると、ハードセグメントを構成するイソシアネート三量体の割合が少なくなり、圧縮強度が低下するおそれがあり、逆に4重量%を超えると、ヌレート化率が高くなることにより脆性が増し、また反応速度が著しく速くなり、充填性、施工性が悪化するからである。 【0017】上記ポリオールおよびヌレート化触媒とともに用いられる水は、発泡剤として用いられる。上記水の配合量は、上記A液とB液の合計量中0.8〜2.5重量%の範囲に設定する必要があり、好ましくは1.0〜2.0重量%、特に好ましくは1.2〜1.6重量%である。すなわち、上記水の配合量が0.8重量%未満であると、所望の発泡倍率が得られず、発泡圧が大きくなり、逆に2.5重量%を超えると、発泡体(発泡ウレタン)が脆くなり、圧縮強度が低下するからである。 【0018】なお、上記A液には、アミン触媒を配合することが好ましい。このようにアミン触媒を用いると、ポリオールとイソシアネートの発熱反応を抑制し、発泡体(発泡ウレタン)の発熱温度を低減することができる。したがって、既設トンネルの覆工コンクリート背面に存在する空洞等に熱がたまり発火するのを防止することができる。このようなアミン触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルピペラジン、1−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。」 「【0026】また、本発明の空洞充填用組成物は、得られる発泡体(発泡ウレタン)の圧縮強度が0.05MPa以上であることが好ましく、特に好ましくは0.1MPa以上である。 【0027】さらに、本発明の空洞充填用組成物は、得られる発泡体(発泡ウレタン)の密度(見かけ密度)が40kg/m3以下であることが好ましく、特に好ましくは30kg/m3以下である。」 エ 甲4の記載事項 甲4には、以下の記載がされている。 (ア)「2.4 発泡剤の役割 硬質ウレタンフォームの発泡方法としては, 発泡剤を反応熱によって気化させる方法が主流であるが,これに使用する発泡剤はそのガスの熱伝導率が小さいことと常温付近に沸点があることが必須要件である。また,それ以外にもウレタンの原料に適度な溶解性をもっていること,化学的に安定で毒性がないこと,不燃性であることなど発泡剤が具備すべき特性には多くの要求がある。また発泡剤には,気化する際の蒸発潜熱によりウレタン原料の反応熱による硬質ウレタンフォーム生成時の内部の過剰な発熱を抑制する効果もある。 これらの要求を満たす発泡剤の選択肢は非常に少なく,従来クロロフルオロカーボン(CFC), ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC), ハイドロフルオロカーボン(HFC)のようなフルオロカーボン類が使用されてきた。」(第2ページ右欄第2〜19行) (イ)「 」(第2ページ表1) (ウ)「4. 新規発泡剤の開発動向 国際的規模での地球温暖化防止対策が議論されている中で,硬質ウレタンフォームの製造において待ち望まれていたオゾン層破壊と地球温暖化の2大問題を解決する新しい発泡剤が近年開発され,一部は商業生産がスタートした(表3) 。・・・ これらの発泡剤の特色として,炭素の主鎖に二重結合を含んでいることから大気中での寿命が短く,地球温暖化への影響が非常に小さいことと,ガスの熱伝導率が旧来のフロン類並みに低いため,これを用いた断熱材の断熱性能の向上が期待できる。」(第5ページ右欄第19行〜第6ページ左欄第6行) (エ)「 」(第6ページ表3) オ 甲5の記載事項 甲5には、以下の記載がされている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ケイ酸ナトリウム水溶液(A成分)とイソシアネート化合物(B成分)とを反応させて発泡硬化させるに際し、A成分中に多官能アルコールにプロピレンオキサイドを開環付加重合して成るポリヒドロキシ化合物、及びシリコン系界面活性剤を含む事を特徴とする地盤改良用発泡性薬液及びその樹脂組成物。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はトンネル、または地中構造物等と周囲地盤との空隙部に発泡性充填材を充填させる事により周囲地盤の崩落を防止する事、更に空隙発生の原因となる湧水を止水する事が出来る高発泡性薬液であると同時に、柔軟な或いは破砕された岩盤を堅固な岩盤に改良し更には埋立地等の軟弱地盤を改良する補強材としても使用する事が出来る地下水汚染の恐れが少ない発泡性薬液組成物及びその硬化体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、トンネル工事又は地中構造物と周囲地盤との空隙部を埋める空隙充填工法にはモルタル充填工法、膨張材混入モルタル充填工法、ベントナイトモルタル充填工法等が実施されている。しかるにこの様な工法は材料そのものの体積が大きい事、大がかりな設備が必要となり作業機械の搬入、設置その他諸準備に手間がかかり狭いスペースでの作業性が低下する事があった。更に空隙部に水がある場合には充填材の硬化が遅くなり、施工に長時間要するだけでなくセメントペーストの急速な硬化が進まない事により施工性、止水性が低下するという問題があった。そのため近年、ウレタンフォームを空隙充填材として使用、上記問題点を解決しようとする方法が提案され、実施に供されている(特開平6−33697) 。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、ウレタンフォームを空隙充填材として使用する場合、空隙が大きい場合にはその大きさの発泡体を作る事になり、その時の反応熱はフォーム内部に蓄熱される事になる。通常この様に地盤中に充填して止水効果を発揮させる目的で用いる発泡体としては独立気泡の硬質フォームが使用されるが、独立気泡のフォームは同時に優れた断熱材でもあり、フォーム内部の高温状態は長時間持続され、その結果、フォームは熱劣化( 焼け) 現象を示すだけでなく極端な場合は自然発火の危険性もある。また地下水汚染防止、環境保護の観点からウレタンフォームを空隙充填材として用いる場合には、ハロゲン元素やリン元素等が含まれている難燃剤は使用できない事、地球環境への影響等の観点から発泡剤として水を主体に使用するのが望ましい事からフォーム内部温度は高くなる傾向になり、実際の施工現場においては内部発熱温度の厳重な管理が必要であった。」 カ 甲6の記載事項 甲6には、以下の記載がされている。 「【背景技術】 【0002】 ポリイソシアネート、ポリオール、触媒、整泡剤、難燃剤、その他の助剤、および発泡剤を混合することにより得られる硬質ポリウレタンフォームは、成形加工性に優れた材料として広く使用されている。硬質ポリウレタンフォームは発泡スチロールなどの嵌め込み式の材料と異なり、発泡中に面材等と自己接着することにより、複合的な構造材として強度が増す利点がある。また、硬質ポリウレタンフォームは、注入、吹き付けなど種々の発泡方法により成形することが可能で、特に大規模な設備を要することなく現場で発泡成形することができる。 【0003】 発泡剤として大量に使用されてきた1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)を使用した場合、その発泡条件は熱硬化性樹脂であるにもかかわらず比較的選択性が広く、屋外で行なわれる現場発泡、例えばスプレー工法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の材料として、屋外、または外気温と同様な条件下で発泡成形され、発泡時に直接接触する面は一般に加温することなく使用されてきた。 【0004】 しかし、HCFC−141bのようなハイドロクロロフルオロカーボンはオゾン層を破壊するため2003年末に製造中止となった。オゾン層を破壊することなく、環境特性上将来にわたり使用が可能と考えられるのは、イソシアネートと水の反応により発生する炭酸ガス、およびイソブタン、n−ペンタン、シクロペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、およびヘプタンのようなハイドロカーボン、または1,1,1,3,3,ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)のようなハイドロフルオロカーボンであるが、いずれもハイドロクロロフルオロカーボンに比し、種々の欠点を有している。 【0005】 一般にハイドロカーボンは消防法上の危険物で現場発泡には不向きであり、またハイドロフルオロカーボンは、従来のハイドロクロロフルオロカーボンに比し高価な選択である上、ハイドロフルオロカーボンのうち最も一般的なHFC−245faは沸点が15℃と低いため、現場発泡では使いにくい。また、HFC−365mfcのプレミックス原液は燃焼範囲があり消防法上の危険物である。これに対し、水発泡は熱伝導率悪化等の性能上の問題があるが、安価であり取り扱い上の問題がない。従って今後一般的な現場発泡では、環境に最も負荷をかけない100%水発泡が広く使用されていくと考えられる。 【0006】 しかし、処方中水の含有率が高い場合、イソシアネートと水の反応により尿素結合が多く生成するが、尿素結合は結合エネルギーが高くより多くの熱を必要とするため、硬質ポリウレタンフォーム発泡時の温度が低いと重合が十分に進まず、低分子量のもろいフォームとなりやすい。この状態をフライアビリティーがあると称しているが、フライアビリティーがあると硬質ポリウレタンフォームは、接着面に対し十分自己接着せず剥離や脱落等の不具合を生ずる。 【0007】 従来100%水発泡処方の場合、冬場屋外、または外気温と同様な発泡条件下では、接着不良などの重大な不都合が生じる恐れがあり、硬質ウレタンフォームが直接接触する面の温度を高くして発泡成形していたが、HCFC−141bの全廃に伴い、このような低温条件下においてもフライアビリティーによる接着不良が発生しない100%水発泡硬質ウレタンフォームが要望されるようになった。 【0008】 また、水とポリイソシアネートとの反応から生ずる炭酸ガスで発泡された100%水発泡硬質ポリウレタンフォームは、従来のHCFC−141bで発泡されたフォームに比べ、低密度のレベルでは寸法変化率が大きくなり寸法安定性が悪くなることが知られている。このようなフォームは常温下に放置しておくと、長期間にわたり徐々に収縮していき、最終的に外観異常となる可能性がある。この原因としては、フォームの気泡中の炭酸ガスがポリウレタン樹脂膜を透過し易いため、外部に放出され易いことと相関があることが知られている。従って、炭酸ガスのみを発泡剤とする100%水発泡は特にその傾向が著しく、寸法安定性の向上が求められている。」 キ 甲7の記載事項 甲7には、以下の記載がされている。 「【請求項1】 ハロゲン化オレフィンからなる1種以上の発泡剤および1種以上の式(I)のシロキサンを含む組成物を用いて、ポリウレタンフォームを製造する方法: 【化1】 (式中、 aは、各々の場合において独立して、0〜500であり、 bは、各々の場合において独立して、0〜60であり、 cは、各々の場合において独立して、0〜10であり、 dは、各々の場合において独立して、0〜10であり、 ただし、式(I)の1分子につき、1分子あたりのT単位の平均数ΣdおよびQ単位の平均数Σcは、50以下であり、1分子あたりのD単位の平均数Σaは、2000以下であり、1分子あたりのR1を有するシロキシ単位の平均数Σbは、100以下であり、 Rは、各々の場合において独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、環状、または分枝状、脂肪族または芳香族、飽和または不飽和の炭化水素部分の群由来の1種以上の部分であり、 R2は、各々の場合において独立して、R1またはRであり、 R1は、Rと異なり、各々の場合において独立して、 −CH2−CH2−CH2−O−(CH2−CH2O−)x−(CH2−CH(R’)O−)y−R’’ −CH2−CH2−O−(CH2−CH2O−)x−(CH2−CH(R’)O−)y−R’’ −CH2−RIV −CH2−CH2−(O)x’−RIV −CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH(OH)−CH2OH 【化2】 【化3】 −CH2−CH2−CH2−O−CH2−C(CH2OH)2−CH2−CH3の群から選択される有機部分および/または部分であり、ここで、 xは、0〜100であり、 x’は、0または1であり、 yは、0〜100であり、 zは、0〜100であり、 R’は、各々の場合において独立して、例えばアルキル部分、アリール部分、またはハロアルキル部分もしくはハロアリール部分で置換されてもよい、1〜12個の炭素原子のアルキル基またはアリール基であり、R1部分および/または式Iの分子内に互いに異なる置換基R’が存在してもよく、 R’’は、各々の場合において独立して、水素、1〜4個の炭素原子のアルキル基、−C(O)−R’’’基(R’’’=アルキル)、−CH2−O−R’基、アルキルアリール基、−C(O)NH−R’基であり、 RIVは、1〜50個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分枝状の、置換されていてもよい、炭化水素部分であり、 R4は、各々の場合において独立して、R、R1、および/または、ヘテロ原子で置換され、官能性であり、かつ、アルキル、アリール、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシプロピル、またはビニルの群から選択される有機飽和または不飽和部分であってもよく、 ただし、R1、R2および/またはR4の少なくとも1つの置換基は、R以外である)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0014】 いずれの代替物もPUフォームの製造において大幅な制限があることを示している。したがって、上記の欠点がなく、PUフォームの製造におけるシリコーン界面活性剤として有用なシロキサンが求められている。」 「【0038】 本発明の組成物は、2個以上のイソシアネート官能基を有する1種以上の有機イソシアネート、2個以上のイソシアネート反応性基を有する1種以上のポリオール、イソシアネート−ポリオールおよび/またはイソシアネート−水反応および/またはイソシアネート三量体形成用の触媒、水、任意選択による物理的発泡剤、任意選択による難燃剤(さらに添加剤を含んでもよいし含まなくてもよい)からなるポリウレタンフォームを製造するための通常の配合物中の気泡安定剤として有用である。 【0039】 本発明の目的のための好適なイソシアネートは、任意の多官能性有機イソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。特に好適なものは、MDIおよび「ポリメリック(polymeric)MDI」(粗MDI)として知られる2〜4個の範囲の平均官能基を有するより高度に濃縮された類似体の混合物、および純粋な形態または異性体混合物としての様々なTDI異性体である。 【0040】 本発明の目的のための好適なポリオールは、2個以上のイソシアネート反応性基を有する任意の有機材料およびその調製物である。ポリウレタンフォームの製造に通常使用されるポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールのいずれも、好ましいポリオールである。ポリエーテルポリオールは、多官能性アルコールまたはアミンとアルキレンオキシドとを反応することによって得ることができる。ポリエステルポリオールは、多塩基カルボン酸(これらは、アジピン酸などの場合のように脂肪族であってもよいし、あるいはフタル酸またはテレフタル酸などの場合のように芳香族であってもよい)と多価アルコール(通常はグリコール)とのエステルに基づく。 【0041】 配合の指数として、すなわち、イソシアネート基とイソシアネート反応性基(例えば、OH基、NH基)との化学量論の比に100を掛けたものとして表されるイソシアネートとポリオールとの好適な比は、10〜1000の範囲、好ましくは80〜350の範囲である。 【0042】 本発明の目的のための好適な触媒は、ゲル反応(イソシアネート−ポリオール)、発泡反応(blowing reaction)(イソシアネート−水)、またはイソシアネートの二量体または三量体形成を触媒する物質である。典型例は、アミントリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、1、2−ジメチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−1、3、5−トリアジン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、およびビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、および金属含有化合物例えば、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズまたは2−エチルヘキサン酸スズ(II)のようなスズ化合物、および酢酸カリウムおよび2−エチルヘキサン酸カリウムのようなカリウム塩である。 【0043】 好適な使用量は、触媒の種類に依存し、典型的には、0.05〜5pphp(=ポリオール100重量部あたりの重量部)またはカリウム塩については0.1〜10pphpの範囲である。」 ク 甲8の記載事項 甲8には、以下の記載がされている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ヒドロキシメチル基を有するベンジリックエーテル型フェノール樹脂を含有するポリオール成分と、有機ポリイソシアネート成分とを、有機錫系ウレタン化触媒、分子中にイソシアネート基と反応する官能基を有する三級アミン系ウレタン化触媒及び水の存在下に反応させることを特徴とするポリウレタン発泡体の製造方法。」 「【0029】加えて、本発明においては発泡体の難燃性を高めるため、必要に応じてイソシアヌレート化触媒を、反応性三級アミン系触媒の100重量%以下、好ましくは50重量%以下の範囲で加え、イソシアヌレート化することもできる。尚、イソシアヌレート化触媒を100重量%以上用いると、ウレタン化やウレア化よりもイソシアヌレート化反応が先行し、発泡体製造時の発泡体内部温度が急激に上昇してしまい、発泡体内部に亀裂やスコーチ(焼け)が発生し、発泡体の機械的強度が低下するため、好ましくない。 【0030】上記イソシアヌレート化触媒として、例えば1,3,5−トリス(N,N−ジルキルアミノアルキル)−S−ヘキサヒドロトリアジン及びこのアルキレンオサイド及び水の付加物で、好ましい例としてはN,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)へキサヒドロ−S−トリアジン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール等の三級アミン触媒;酢酸カリウム、オクタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸カリウム、イソブチル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、ソルビン酸カリウム、酢酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、炭酸ソーダ、しゅう酸鉄等の有機金属塩系触媒;4級アミンの有機酸塩触媒等を挙げることができる。」 ケ 甲9の記載事項 甲9には、以下の記載がされている。 「(3)触媒 触媒はポリウレタンの反応を制御するために用いられ、ポリウレタンの加工性および物性にも影響を与えるので、触媒の選択および使用量がきわめて重要である。・・・種々のアミン触媒の混合物またはアミン系と有機金属系と併用する場合がある。」(第264ページ左欄下から第11行〜右欄第1行) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「イソシアネート成分(住化バイエルウレタン社製粗製ジフェニルメタンジイソシアネート「スミジュール44V−20L」、NCO%:31%)」は、本件特許発明1における「ポリイソシアネート化合物を含むA液」に相当する。 また、甲1発明における「ポリオールA(マンニッヒ系ポリエーテルポリオール(第一工業製薬(株)))」、「ポリオールB(エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)))」及び「ポリオールC(TDA系ポリエーテルポリオール(旭硝子(株)))」は、本件特許発明1における「ポリオール化合物」に相当し、甲1発明における「1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(ハネウェル・ジャパン(株))」、「整泡剤(SH−193(シリコン系界面活性剤)(東レ・ダウコーニング(株)))」、「ポリオール組成物」は、各々、本件特許発明1における「発泡剤」、「シリコーン界面活性剤」、「B液」に相当する。 甲1発明における「触媒A(オクチル酸カリウム(東栄化工(株)))」は、本件特許発明1における「カルボン酸塩」に相当する。そして、甲1の段落【0029】に、「また、ポリウレタン分子の構造において難燃性向上に寄与するイソシアヌレート結合を形成する触媒の使用も好ましい。イソシアヌレート結合を形成する触媒としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムが例示できる。」、段落【0038】には、「係る構成により発泡硬化反応が促進され、硬質ポリウレタンフォームを構成する樹脂中にウレタン結合やウレア結合、イソシアヌレート結合が多く形成され、物性、特に圧縮強度や熱伝導率の物性がより一層向上した硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。」と記載されていることから、甲1発明における「触媒A(オクチル酸カリウム(東栄化工(株)))」を用いて発泡硬化を行う「硬質ポリウレタンフォーム」は、本件特許発明1の「硬質ポリイソシアヌレートフォーム」に相当する。 さらに、甲1発明における「NCO/OH当量比」は、本件特許発明1における「イソシアネート指数」に相当し、両者は「175」の点で一致する。 してみると、両発明は、以下の<一致点>で一致し、<相違点1>で相違する。 <一致点> 硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う方法において、 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化前の配合組成物が、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含むB液との混合液を含み、 前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含み、 前記混合液のイソシアネート指数が175である方法 <相違点1> 硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う方法について、本件特許発明1では「トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞内に注入して・・・裏込め注入工法」と特定されているのに対して、甲1発明ではそのような特定がされていない点 そこで、上記<相違点1>について検討する。 ところで、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0001】より、「トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞内に注入して硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う裏込め注入工法」に関するものであり、「発泡剤としてHFOやHCFO等が用いられる場合に、機械的強度や寸法安定性、貯蔵安定性に優れ、しかも、内部温度の上昇が抑制され、優れた難燃性及び耐熱性を有しており、施工安全性にも優れた、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム、及びその製造に好適に用いられる2液型プレミックス組成物、並びにこれらを用いた裏込め注入工法を提供すること」を課題とするものである。そして、その「難燃性及び耐熱性」について、本件特許明細書の段落【0060】によると、裏込め注入において、周囲に地下水等の水が存在する場合の耐熱性、発煙の危険性等の評価の指標となるものであり、周囲に水が存在する環境下では、水との接触がないときよりも、発泡硬化時に発泡体が高温になりやすく、このような高温状態においても、焼けが生じない、又は、生じていても焼けの程度が小さければ、耐熱性及び安全性に優れていると言える旨の説明がされている。 一方、甲1には、甲1発明を「現場発泡硬質ウレタンフォームなどの製造に使用可能である」ことは記載されているものの、特に、「トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞内に注入して硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う裏込め注入工法」に用いることについての記載も示唆もされていない。 そして、甲1発明は、甲1の段落【0006】より、「発泡剤としてHFO−1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬質ポリウレタンフォームの物性の低下を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供すること」を課題とするものであって、本件特許発明の課題とは異なるものであり、特に、甲1には、「周囲に水が存在することにより、水との接触がないときよりも、発泡硬化時に発泡体が高温になりやすい環境下」で使用すること、さらには、甲1には、甲1発明の硬質ポリウレタンフォームを当該環境下で使用することによって、「難燃性及び耐熱性」を奏することの記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明を裏込め注入工法とする動機付けがあるとは言えない。 他方、甲2には、上記(1)イより、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を発泡剤に用いたトンネル裏込め注入用のウレタン製品であって、HFOを発泡剤に使用しても従来と同等の寸法安定性や内部発熱温度となる製品が開発されたことが記載されている。 甲3には、上記(1)ウの【請求項1】、段落【0001】等より、ポリオールとヌレート化触媒と水を含有するA液と、イソシアネートを主成分とするB液とからなり、上記A液とB液の混合比が、重量比で、A液:B液=1:3〜1:7の範囲に設定され、かつ、上記水の配合量がA液とB液の合計量中0.8〜2.5重量%の範囲に設定されていることを特徴とする老朽化した既設トンネルの覆工コンクリート背面に存在する空洞等を充填するための空洞充填用組成物が記載されている。 また、甲4には、上記(1)エ(ウ)、(エ)より、従来硬質ウレタンフォームの発泡剤として用いられていたフロオロカーボン類と同等の沸点、気体の熱伝導率及び不燃性を有し、地球温暖化への影響が非常に小さい硬質ウレタンフォームの代替発泡剤として、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)が開発されている旨記載されている。 甲5には、上記(1)オの段落【0002】、【0003】より、トンネル、又は地中構造物等と周囲地盤との空隙部への充填材として独立気泡の硬質フォームを使用する場合、発泡時の反応熱がフォーム内部に蓄熱され、フォームの熱劣化(焼け)現象や自然発火するおそれがあり、発泡剤として水を使用した場合、フォームの内部温度は更に高くなる傾向にあり、実際の施工現場においては内部発熱温度の厳重な管理が必要である旨記載されている。 さらに、甲6には、上記(1)カの段落【0002】【0003】等より、ポリイソシアネート、ポリオール、触媒、整泡剤、難燃剤、その他の助剤、および発泡剤を混合することにより得られる硬質ポリウレタンフォームを屋外で行なわれる現場発泡、例えばスプレー工法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の材料として使用することが記載されている。 甲2、甲3及び甲6の記載からすると、硬質ポリウレタンフォームを裏込め注入工法に使用すること自体は、本件特許出願前に公知の技術ではある。しかしながら、甲2、甲3、甲6、さらには甲4及び甲5のいずれにも、「硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化前の配合組成物が、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含むB液との混合液を含み、前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含み、前記混合液のイソシアネート指数が160〜500である」裏込め注入工法、さらには、当該工法により、「難燃性及び耐熱性」を奏することは記載も示唆もされておらず、やはりこれらの証拠を参酌しても、甲1発明を裏込め注入工法とする動機付けがあるとは言えない。 そして、本件特許発明1は、発泡剤としてHFOやHCFO等を用いる場合において、機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ、優れた難燃性及び耐熱性を有しており、施工安全性に優れた、硬質ポリイソシアヌレートフォームによる裏込め注入工法を提供することができる(段落【0015】)、という効果、具体的には、周囲に地下水等の水が存在する環境下のような発泡硬化時に高温状態となる場合においても焼けが生じない(段落【0060】及び【表2】)、という効果を奏するものである。一方、甲1には、発泡剤としてHFOを用いた場合でも原液保存安定性が良く、硬質ポリウレタンフォームの物性の低下を抑制できることが記載されているに留まるものであることから、本件特許発明1が奏する効果は、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲6に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。 イ 本件特許発明2ないし9について 本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1を引用するものであるから、上記アで検討したのと同様、本件特許発明2ないし9は、甲1発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易になし得たものではない。 (3)申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細には次の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 硬質ポリイソシアヌレートフォームは、硬質ウレタンフォームと同様に、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物と、水酸基を2個以上有するポリオール化合物とを、発泡剤や触媒等とともに混合して、泡化反応及び樹脂化反応を同時に行うことにより得られる樹脂発泡体である。 ポリイソシアネート化合物は、特定の触媒を用いた三量化反応により、イソシアヌレート環を生成する。このイソシアヌレート環の結合は、ウレタン結合に比べて、熱安定性が高いことから、イソシアヌレート環を含む硬質ポリイソシアヌレートフォームは、難燃性及び耐熱性に優れており、また、圧縮強さや曲げ強さ等の強度特性にも優れている。 このため、硬質ポリイソシアヌレートフォームは、従来から、土木建築用途でも広く用いられており、具体的には、断熱材や空隙充填材等に利用されている。 【0003】 また、土木建築用途の中でも、空隙充填材として、特に、トンネルや地下構造物等の裏込め注入用の硬質ポリイソシアヌレートフォームにおいては、従来から、大空洞部への注入時の内部発熱の抑制や、発泡後の体積収縮を防止する観点から、発泡剤としてはハイドロフルオロカーボン(HFC)が用いられていた。 しかしながら、HFCはオゾン破壊係数(ODP)が0であるものの、地球温暖化係数(GWP)が、例えば、HFC−245faは794、HFC−365mfcは1030と高く、温室効果ガスとして管理物質に指定されており、近年、地球温暖化対策の観点から、削減が求められている。 【0004】 このため、ノンフロンタイプの発泡剤として、水を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。 【0005】 また、一方で、フッ素を含有するものの、温室効果ガスの環境問題対策に適合し得る新たな発泡剤として、主鎖に二重結合を有するハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)が注目されている。 例えば、特許文献2には、ポリイソシアヌレートフォームのためのポリオールプレミックスとして、HCFOである1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(ODP:0、GWP:1)を発泡剤として用いるものが記載されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2002−256054号公報 【特許文献2】特開2016−196652号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、上記特許文献1に記載されているような水を発泡剤の主成分として用いた場合には、大空洞部では、注入された硬質ポリイソシアヌレートフォームが内部発熱を生じやすく、酸化反応の併発や、発泡体内部の内圧変動によって、さらに昇温し、炭化とともに発煙が生じ、ひいては、トンネル坑内火災等の重大事故を招くおそれがある。 【0008】 また、上記特許文献2に記載されているポリオールプレミックスは、反応させるポリイソシアネートとしては、具体的には、イソシアネート指数(Iso指数)が150であるポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルイソシアネート)を用いたものしか開示されていない。これらの反応生成物である、イソシアネート指数の比較的低いポリイソシアヌレートフォームは、裏込め注入用としての十分な難燃性及び耐熱性を有していると言えるものではなかった。 【0009】 したがって、裏込め注入用の硬質ポリイソシアヌレートフォームにおいては、発泡剤としてHFOやHCFO等が用いられる場合においても、より優れた難燃性及び耐熱性を有していることが求められる。さらに、従来のHFCを用いた場合と同等程度に、大空洞部への注入時の内部発熱が抑制され、また、発泡後の体積収縮を抑制することができる、すなわち、寸法安定性に優れていることが望ましい。 また、現場施工における安全性や耐久性等の観点から、所定の強度特性や貯蔵安定性等を有していることも必要である。 【0010】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、発泡剤としてHFOやHCFO等が用いられる場合に、機械的強度や寸法安定性、貯蔵安定性に優れ、しかも、内部温度の上昇が抑制され、優れた難燃性及び耐熱性を有しており、施工安全性にも優れた、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム、及びその製造に好適に用いられる2液型プレミックス組成物、並びにこれらを用いた裏込め注入工法を提供することを目的とするものである。」 「【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、発泡剤としてHFOやHCFO等を用いる場合において、機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ、優れた難燃性及び耐熱性を有しており、施工安全性に優れた、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォームを提供することができる。 また、本発明によれば、前記裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造に好適に用いることができ、貯蔵安定性に優れた、2液型プレミックス組成物が提供される。さらに、これらを用いることにより、より安全で、かつ耐久性に優れた、硬質ポリイソシアヌレートフォームによる裏込め注入工法を提供することが可能となる。」 「【発明を実施するための形態】 【0016】 以下、本発明の2液型プレミックス組成物、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム及び裏込め注入工法について詳細に説明する。 【0017】 [2液型プレミックス組成物] 本発明の2液型プレミックス組成物は、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム製造用のプレミックス組成物である。そして、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含むB液とからなり、前記発泡剤が、HFO及びHCFOのうちのいずれか1種以上を含み、プレミックス組成物のイソシアネート指数が160〜500であることを特徴としている。 前記プレミックス組成物は、A液及びB液のプレミックスからなる2液型であり、発泡剤がHFOやHCFOである場合においても、機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性にも優れた裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォームを得ることができる。また、2液のプレミックスとして調製されていることにより、現場施工の際の作業の効率性及び安全性にも優れている。 【0018】 「裏込め注入」とは、上述したように、トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞を充填する、土木建築工事における施工方法である。本明細書においては、特に、その工程や方法を指す場合には、「裏込め注入工法」と言うものとする。 【0019】 また、ここで言う「イソシアネート指数」とは、B液中のポリオール化合物の水酸基1モルに対する、A液中のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数を百分率[%]で表した値を指す。 イソシアネート指数は、難燃性及び耐熱性評価の際、硬質ポリイソシアヌレートフォームを硬質ポリウレタンフォームと区別する上での指標ともなるものである。具体的には、日本ウレタン工業協会における難燃性及び耐熱性評価においては、イソシアネート指数が150以上、かつ、三量化触媒が用いられているものが、硬質ポリイソシアヌレートフォームであり、それ以外のものが硬質ポリウレタンフォームと定義されている。 【0020】 本発明においては、裏込め注入用として、難燃性及び耐熱性に優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームを得るために、2液型プレミックス組成物のイソシアネート指数を160〜500とする。イソシアネート指数は、200〜400であること好ましく、より好ましくは230〜300である。 前記イソシアネート指数が160未満では、十分な難燃性及び耐熱性を有する硬質ポリイソシアヌレートフォームを得ることができない。一方、前記イソシアネート指数が500を超える場合には、ポリオール化合物が少なすぎて、硬質ポリイソシアヌレートフォームを製造することが困難となる。」 「【0021】 <A液> A液は、ポリイソシアネート化合物を主成分として含む液である。 A液には、ポリイソシアネート化合物以外に、必要に応じて、溶剤や、整泡剤等の添加剤が含まれていてもよい。ただし、製造効率等の観点から、A液中のポリイソシアネート化合物の含有量は、70〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは95〜100質量%である。 【0022】 (ポリイソシアネート化合物) ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物であり、その三量化反応により、イソシアヌレート環を生成する。また、イソシアヌレート環を構成しないイソシアヌレート基が、B液中のポリオール化合物との付加反応によりウレタン結合を形成する。これらの反応により、ポリイソシアヌレート樹脂の発泡体である硬質ポリイソシアヌレートが得られる。 【0023】 ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートのいずれでもよく、これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 芳香族ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルエーテル−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、4,6−ジメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)等のモノメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI又はポリメリックMDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。 脂肪族ポリイソシアネートは、非環式又は脂環式のポリイソシアネートのいずれでもよく、具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。 これらのうち、反応性、及び製造される硬質ポリウレタンフォームの機械的強度等の観点から、2,2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDI等のモノメリックMDI、クルードMDI又はポリメリックMDIが好ましく、また、この中でも、コストの観点からは、クルードMDI又はポリメリックMDIが好適に用いられる。 【0024】 <B液> B液は、ポリオール化合物を主成分とし、さらに、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含む液である。B液には、ポリオール化合物、発泡剤シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩以外に、必要に応じて、溶剤や、アミン系触媒、難燃剤、非シリコーン界面活性剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。 ただし、製造効率等の観点から、主成分であるB液中のポリオール化合物の含有量は、30〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは35〜80質量%、さらに好ましくは40〜65質量%である。 【0025】 (ポリオール化合物) ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有するアルコール化合物であり、イソシアネート化合物との付加反応によりウレタン樹脂を生成する。 ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール等が挙げられ、これらのうちから選ばれるいずれかを用いることが好ましく、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの分子量は、反応性、及び十分な機械的強度を有する硬質ポリイソシアヌレートフォームを得る観点から、70〜5,000であることが好ましく、より好ましくは100〜3,000である。 【0026】 ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸とを重縮合させたものが挙げられる。前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA等が挙げられる。また、多価カルボン酸としては、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、アゼライン酸、トリメリット酸、グルタコン酸、α−ヒドロムコン酸、β−ジエチルサクシン酸、ヘミメリチン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。また、ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを、多価ジオールでエステル交換したもの等も挙げられる。 ポリエーテルポリオールとしては、例えば、グリコール、グリセリン、ソルビトール及び糖類等の多価アルコールや、芳香族アミン、脂肪族アミン等に、プロピレンオキサイドやエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させたもの等が挙げられる。 【0027】 (発泡剤) 発泡剤は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とが反応してポリウレタン樹脂を生成する際の発熱により気化し、ポリウレタン樹脂を発泡させる作用を有するものである。 発泡剤としては、HFO又はHCFOを含むものとする。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 HFOやHCFOは、発泡剤として水のみを用いる場合に比べて、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との発熱反応において、発泡体の内部発熱を180℃以下の温度にまでに抑えることができ、発泡体の炭化や発煙の発生を抑制することができる。また、環境問題の観点から、HFCに代わり、今後、需要の増加が見込まれる発泡剤である。HFOやHCFOは、それ自体が難燃性であることから、これらの発泡剤で独立気泡が形成されることにより、より難燃性に優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームを得ることができる。 【0028】 HFO及びHCFOとしては、具体的には、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス−HFO−1234ze)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz)、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロぺン(HCFO−1233zd)等が挙げられる。 発泡剤は、ポリイソシアヌレート樹脂を適度に発泡させる観点から、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、3〜40質量部添加されることが好ましく、より好ましくは5〜30質量部、さらに好ましくは7〜20質量部である。 【0029】 なお、発泡剤は、従来から用いられているHFCや水を含んでいてもよい。ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、水と反応してアミノ基を生成する際、二酸化炭素を発生し、これも、ポリウレタン樹脂の生成反応の初期段階における発泡の誘因となることから、発泡剤として水が含まれていることが好ましい。 ただし、水は、ポリオール化合物がポリエステルポリオールを含む場合、B液の貯蔵保管状態によっては、該ポリエステルポリオールを加水分解させるおそれがあるため、その他の発泡剤よりも含有量が少ないことが好ましい。水の配合量は、水以外の上記の発泡剤100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜18質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。 【0030】 (シリコーン界面活性剤) シリコーン界面活性剤は、硬質イソシアヌレートフォームにおいて、整泡剤としての働きを有するものであり、寸法安定性にも寄与する。 シリコーン界面活性剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、シロキサン−ポリアルキレンオキサイド共重合体が挙げられ、市販品として入手することができる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 シリコーン界面活性剤は、硬質イソシアヌレートフォームの気泡を適度に調整する観点から、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部添加されることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。 【0031】 (カルボン酸塩) カルボン酸塩は、硬質イソシアヌレートフォームを得るためのポリイソシアネート化合物の三量化触媒として作用するものである。 ポリイソシアネート化合物の三量化触媒としては、アミン系触媒も知られているが、シリコーン界面活性剤及びポリオール化合物を含むプレミックス組成物においては、主たる三量化触媒としてアミン系触媒を用いた場合は、該プレミックス組成物の貯蔵安定性に劣る。 これに対して、カルボン酸塩を三量化触媒として用いることにより、前記プレミックス組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。 【0032】 カルボン酸塩としては、炭素数が1〜20のカルボン酸のアルカリ金属塩、又は第四級アンモニウム塩であることが好ましい。具体的には、アルカリ金属塩としては、蟻酸カリウム、酢酸カリウム、n−オクタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、カプリン酸カリウム、N−(2−ヒドロキシ−5−ノニルフェノール)メチル−N−メチルグリシン酸ナトリウム等が挙げられる。また、第四級アンモニウム塩としては、トリメチルヒドロキシプロピルギ酸アンモニウム、オクタン酸・N−(2−ヒドロキシプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、蟻酸カリウム、酢酸カリウム、n−オクタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、又はカルボン酸の第四級アンモニウム塩が好ましく、n−オクタン酸カリウム、又は2−エチルヘキサン酸カリウムがより好ましい。 【0033】 カルボン酸塩は、ポリイソシアネート化合物の三量化反応を十分に促進する観点から、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、0.5〜10質量部添加されることが好ましく、より好ましくは1.0〜5質量部、さらに好ましくは1.2〜3質量部である。 また、B液の貯蔵安定性を保持する観点から、B液中で、ポリオール化合物100質量部に対するカルボン酸塩の配合量は、2〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは5〜20質量部である。 【0034】 (その他の成分) B液中には、必要に応じて、溶剤や、アミン系触媒、難燃剤、非シリコーン界面活性剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。 〔溶剤〕 溶剤は、各成分を均一に混合する観点から、必要に応じて用いられるものであり、硬質ポリイソシアヌレートフォームの生成反応において、その反応性を妨げない範囲内であれば、水溶性有機溶剤であっても、疎水性有機溶剤であってもよい。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの溶剤は、市販のカルボン酸塩やアミン触媒、シリコーン界面活性剤等に含まれている場合もある。 【0035】 〔アミン系触媒〕 カルボン酸塩が三量化触媒の主触媒であるが、ウレタン化反応を促進する上で、アミン系触媒を助触媒として用いることが好ましい。 ただし、アミン系触媒のうち、三量化触媒として作用するものと、ウレタン化触媒として作用するものとの明確な区別は難しく、また、発泡剤がHFO又はHCFOである場合には、これらの発泡剤との反応性を有するものが多い。このため、B液中のアミン系触媒の配合量は、カルボン酸塩よりも少ないことが好ましい。また、HFO又はHCFOとの反応性が低いアミン系触媒は、高価であることから、コストの観点からも、アミン系触媒の使用量はできる限り少ないことが好ましい。 【0036】 このようなアミン系触媒としては、公知のものを用いることができ、HFOやHCFO等の発泡剤と併存させた場合においても、貯蔵安定性に優れているものが好ましい。例えば、ビス(2−モルホリノエチル)エーテル、スチレン化ジフェニルアミン、N,N’,N”−ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 【0037】 アミン系触媒は、A液中のポリイソシアネート化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部添加されることが好ましく、より好ましくは0.1〜8質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部である。 また、B液の貯蔵安定性を保持する観点から、B液中で、ポリオール化合物100質量部に対するアミン系触媒の配合量は、1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。」 「【0043】 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームは、JIS A 9511:2006Rの燃焼性試験の測定方法Cに準拠して測定された酸素指数が23.0以上であることが好ましい。 「酸素指数」とは、燃焼性の指標となるものであり、JIS K 7201−2:2007に定義されているように、所定の条件下で、試料が有炎燃焼を維持するのに必要な23±2℃の酸素と窒素との混合ガスの最小酸素濃度であり、体積分率[%]で表される。 酸素濃度が、空気の酸素濃度である約21[%]よりも大きい値であれば、通常、燃焼し続けることは困難である。本発明においては、裏込め注入用としての難燃性に優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームを得る観点から、酸素指数は23.0以上であることが好ましい。 JIS A 9511:2006Rの燃焼性試験の測定方法Cとは、JIS K 7201−2:2007に基づくものであり、本発明においては、長さ150mm、幅10mm、厚さ10mmの試験片について測定した値とする。 【0044】 また、前記硬質ポリイソシアヌレートフォームは、JIS A 9511:2006Rに準拠して測定された圧縮強さが0.10MPa以上であり、かつ、JIS A 9511:2006Rに準拠して測定された曲げ強さが0.15MPa以上であることが好ましい。 圧縮強さ及び曲げ強さは、機械的強度の指標となるものである。 JIS A 9511:2006Rに準拠して測定された圧縮強さとは、JIS K 7220:2006に基づいて測定されたものである。 また、JIS A 9511:2006Rに準拠して測定された曲げ強さとは、JIS K 7221−2:2006に基づいて測定されたものである。 本発明においては、裏込め注入用としての機械的強度に優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームを得る観点から、圧縮強さは0.10MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.14MPa以上であり、さらに好ましくは0.17MPa以上である。圧縮強さは大きいほど好ましく、上限値は特に限定されるものではない。 また、同様の観点から、曲げ強さは0.15MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.23MPa以上であり、さらに好ましくは0.28MPa以上である。曲げ強さは大きいほど好ましく、上限値は特に限定されるものではない。 【0045】 [裏込め注入工法] 本発明の裏込め注入工法は、トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞内に注入して硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う裏込め注入工法である。そして、前記硬質ポリイソシアヌレートフォームが、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含むB液との混合液を含み、前記発泡剤が、HFO及びHCFOのうちのいずれか1種以上を含むものであり、また、前記混合液のイソシアネート指数が160〜500である。 このようなA液及びB液の2液の混合液を用いることにより、発泡剤がHFOやHCFOである場合においても、機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性にも優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームで裏込め注入を行うことができる。 このような裏込め注入工法においては、A液及びB液の混合液は、混合直後から反応するため、混合液の調製は現場施工時に行うことが好ましい。この混合液に用いられるA液及びB液は、現場施工の際の作業の効率性及び安全性の観点から、上述した本発明の2液型プレミックス組成物を用いることが好ましい。また、現場施工時に2液を混合し、前記空洞内に注入することができる注入機を用いることが好ましい。 なお、A液及びB液、並びにイソシアネート指数については、上記の2液型プレミックス組成物と同様である。 【実施例】 【0046】 以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。 【0047】 [2液型プレミックス組成物の調製] (実施例1〜3、比較例1〜3及び参考例1) 下記表1の実施例1〜3、比較例1〜3及び参考例1に示す配合組成で、B液の各原料化合物を混合し、2液型プレミックス組成物のA液及びB液を調製した。A液、及びB液の調製に用いた化合物を以下に示す。 <ポリイソシアネート化合物(a)> ・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;「ミリオネート(登録商標) MR−200」、東ソー株式会社製 <ポリオール化合物(b)> ・ポリエーテルポリオール:「エクセノール 450SN」、旭硝子株式会社製 <発泡剤> ・HCFO:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン;「ソルスティス(登録商標) LBA」、ハネウェルジャパン株式会社製 ・HFO:(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;「フォーマセル 1100」、デュポン社製 ・HFC(1):1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン;「HFC−245fa」、セントラル硝子株式会社製 ・HFC(2):1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン;「ソルカン 365mfc」、日本ソルベイ株式会社製 ・水 <カルボン酸塩> (1)2−エチルヘキサン酸カリウム;「DABCO(登録商標) K−15」、エアープロダクツジャパン株式会社製;濃度75質量%ジエチレングリコール溶液 (2)オクタン酸カリウム;「NKC」、勝田化工株式会社製、濃度50質量%グリセリン溶液 <アミン系触媒> (1)ビス(2−モルホリノエチル)エーテル;「JEFFCAT(登録商標) DMDEE」、ハンツマン・ジャパン株式会社製 (2)N,N’,N”−ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロ−s−トリアジン;「POLYCAT(登録商標) 41」、エアープロダクツジャパン株式会社製 (3)N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン;「カオーライザー No.1」、花王株式会社製 (4)トリエチレンジアミン;「DABCO(登録商標) 33LV」、エアープロダクツジャパン株式会社製;濃度33質量%ジプロピレングリコール溶液 (5)特殊アミン;「U−CAT(登録商標) 420A」;サンアプロ株式会社製 <シリコーン界面活性剤> (1)ポリエーテルシロキサン;「TEGOSTAB(登録商標) B 8490」、エボニック・ジャパン株式会社製 (2)シロキサン−ポリアルキレンオキシド共重合体;「NIAX*(登録商標) SILICONE L−6100NT」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 (3)「SRX 280A FLUID」、東レ・ダウコーニング株式会社製 (4)ポリアルキレンオキシド−メチルシロキサン共重合体;「NIAX SILICONE L−6970」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 (5)ポリエーテル−ポリジメチルシロキサン共重合体;「TEGOSTAB(登録商標) B 8474」、エボニック・ジャパン株式会社製 (6)ポリエーテル変性ポリシロキサン;「TEGOSTAB(登録商標) B 8460」、エボニック・ジャパン株式会社製 <難燃剤> ・トリスクロロプロピルホスフェート;「TMCPP」、大八化学工業株式会社製 【0048】 【表1】 【0049】 [ハンド発泡における評価] 上記表1に示す配合組成で調製したA液及びB液をデスカップ内で混合して合計150g調製し、発泡原料とした。この発泡原料を、内寸が150mm×150mm×150mmの木箱に約100g充填し、20℃で発泡硬化させた。 このハンド発泡において、以下の項目について評価を行った。これらの評価結果を表2及び表3にまとめて示す。 【0050】 <各工程時間> A液及びB液の混合を開始した時点からの以下に示す時間を計測した。 (1)混合時間(MT:melting time):混合終了までの時間 (2)クリームタイム(CT:cream time):膨張が開始するまでの時間 (3)ゲルタイム(GT:gel time):ゲル化が開始するまでの時間 (4)ライズタイム(RT:rise time):膨張が停止するまでの時間 これらの各工程時間は、現場施工時の作業効率等に影響するものであり、クリームタイム(CT)は、7〜17秒であれば、良好であると言える。また、ライズタイム(RT)は、45〜75秒であれば、良好であると言える。また、クリームタイム(CT)とライズタイム(RT)が上記範囲であれば、急速発泡硬化により、トンネルや地下構造物等の覆工コンクリートにおいて、背面での地山への浸透や亀裂からの発泡原料のリークを抑えつつ、裏込め注入を行うことができ、発泡原料のロスを最小限に抑えることができるため好ましい。 【0051】 <芯密度> 木箱を取り外した発泡体を、約100mm×100mm×100mmに切り出して、ノギスで採寸し、体積を求めた。また、質量を測定し、体積と質量から芯密度を算出した。 芯密度は、発泡性の程度についての指標となるものであり、27〜33kg/m3の範囲内であれば、良好であると言える。 【0052】 <最高発熱温度> 発泡体の中心温度を測定し、最高温度を最高発熱温度とした。 最高発熱温度は、現場施工時の発煙による危険性を低減する観点から、180℃未満であれば、良好であると言える。 【0053】 <貯蔵安定性> 調製直後と、常温(20℃)、40℃、50℃の各温度で所定期間、貯蔵保管した後の各B液を用いて、発泡体を作製し、CT、GT、RT、芯密度を上記と同様にして測定し、また、外観を目視にて観察することにより、貯蔵保管条件による貯蔵安定性の変化を評価した。外観による評価基準は下記のとおりである。 A:気泡サイズが均一である。 B:気泡サイズが不均一、又は破泡している。あるいはまた、セル荒れ(発泡体の表面の気泡が不均一かつ大きくなる現象)が生じている。 所定期間経過後においても、CT、RT及び芯密度がいずれも上記において良好とされる数値の範囲内であり、かつ、外観による評価が「A」であれば、貯蔵安定性が良好であると言える。 なお、貯蔵安定性の評価結果は、表3に示す。 【0054】 [実機発泡における評価] 上記表1に示す配合組成で調製したA液及びB液を、現場施工用の注入機(実機)を用いて、内寸が幅150mm×長さ400mm×高さ500mmの木箱に、合計約1kg充填し、20℃で発泡硬化させた。 ただし、後述する最高発熱温度及び散水時の状態の評価においては、内寸1m×1m×1mの木箱にA液及びB液を合計約36kg(散水時は合計約27〜30kg)充填し、20℃で発泡硬化させた。 上記の実機発泡において、以下の項目について評価を行った。これらの評価結果を表2にまとめて示す。 【0055】 <芯密度> 芯密度は、発泡性の程度についての指標となるものであり、27〜33kg/m3の範囲内であれば、良好であると言える。 木箱を取り外した発泡体から、約50mm×50mm×50mmの試料を5個切り出して、ノギスで採寸し、体積を求めた。また、各試料の質量を測定し、体積と質量から密度を算出し、これらの平均値を芯密度とした。 【0056】 <圧縮強さ> 圧縮強さは、上記の芯密度の測定に用いた試料5個について、JIS A 9511:2006R(JIS K 7220:2006引用)に準拠した方法により測定し、これらの平均値とした。 <曲げ強さ> 曲げ強さは、発泡体から切り出した120mm×25mm×20mmの試料5個について、に準拠した方法により測定し、これらの平均値とした。 【0057】 <寸法安定性> 寸法安定性は、ASTM D2126−15に準拠した方法により、発泡方向に対する平行方向及び垂直方向について、高温(70℃)、低温(−30℃)及び湿熱(70℃、95%RH)の各条件下で、72時間経過後の寸法変化率を測定し、これらの測定値に基づいて評価を行った。評価基準は下記のとおりである。 A:上記のいずれの条件においても、平行及び垂直方向ともに、寸法変化率が±1.0%以内 B:上記のいずれか1つの条件において、寸法変化率が±1.0%超 C:上記のいずれか2つ以上の条件において、寸法変化率が±1.0%超 【0058】 <酸素指数> 酸素指数は、発泡体から切り出した150mm×10mm×10mmの試料5個について、JIS A 9511:2006Rの燃焼性試験の測定方法C(JIS K 7201−2:2007引用)に準拠した方法により測定し、これらの平均値とした。 【0059】 <最高発熱温度> 発泡体(1m×1m×1m)の中心温度を測定し、最高温度を最高発熱温度とした。 最高発熱温度は、現場施工時の発煙による危険性を低減する観点から、180℃以下であれば、良好であると言える。 【0060】 <散水時の評価(耐熱性)> 発泡体(1m×1m×1m)の製造時に、充填するA液及びB液の合計質量に対して約1質量%の水を霧吹きで散布しながら発泡硬化させた。このときの最高発熱温度を、上記と同様にして測定した。 また、得られた発泡体を、バンドソーで、中心部を含むように高さ方向にほぼ2等分し、この発泡体の断面に「焼け」(焦げたような黒褐色の着色)が生じている程度(色及び面積)を目視にて観察し、焼けの発生状態に基づいて、耐熱性の評価を行った。 焼けの発生状態は、裏込め注入において、周囲に地下水等の水が存在する場合の耐熱性、発煙の危険性等の評価の指標となるものである。周囲に水が存在する環境下では、水との接触がないときよりも、発泡硬化時に発泡体が高温になりやすい。このような高温状態においても、焼けが生じない、又は、生じていても焼けの程度が小さければ、耐熱性及び安全性に優れていると言える。耐熱性の評価基準は下記のとおりである。 A:焼け状態はほぼ確認されない。あるいはまた、断面の面積の約1/4以下に着色が見られる。 B:断面の面積の約1/4以上に焼けが生じている。 C:全体が焼け状態である。 【0061】 【表2】 【0062】 【表3】 【0063】 なお、表2及び表3のGTの欄における「−」との表記は、ゲル化開始を特定できなかったことを示している。また、表3の比較例1の芯密度の欄における「−」との表記は、発泡体の形が崩れ、所定の大きさの発泡体を切り出すことができなかったため、未測定であることを意味する。 【0064】 表2及び表3に示した評価結果から分かるように、所定のA液及びB液による本発明の2液型プレミックス組成物を用いた場合(実施例1〜3)は、発泡剤がHFO又はHCFOである場合においても、発泡性が良好であり、裏込め注入用としての機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性に優れ、発泡剤がHFCである場合(参考例1)と同等程度の特性を有する硬質ポリイソシアヌレートフォームが得られることが認められた。 一方、B液にカルボン酸塩を配合しない場合(比較例1)は、貯蔵安定性に劣っていた。また、イソシアネート指数が160未満である場合(比較例2)は、酸素指数が低く、難燃性及び耐熱性に劣っていた。また、水のみを発泡剤として用いた場合(比較例3)は、発泡性が十分であるとは言えず、内部発熱が大きく、耐熱性に劣っていた。」 (4) サポート要件の判断 本件特許発明1の解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0001】【0010】より、「発泡剤としてHFOやHCFO等が用いられる場合に、機械的強度や寸法安定性、貯蔵安定性に優れ、しかも、内部温度の上昇が抑制され、優れた難燃性及び耐熱性を有しており、施工安全性にも優れた、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム、及びその製造に好適に用いられる2液型プレミックス組成物、並びにこれらを用いた裏込め注入工法を提供すること」である。 そして、本件特許明細書の段落【0019】【0020】には、「イソシアネート指数は、難燃性及び耐熱性評価の際、硬質ポリイソシアヌレートフォームを硬質ポリウレタンフォームと区別する上での指標ともなるものである。具体的には、日本ウレタン工業協会における難燃性及び耐熱性評価においては、イソシアネート指数が150以上、かつ、三量化触媒が用いられているものが、硬質ポリイソシアヌレートフォームであり、それ以外のものが硬質ポリウレタンフォームと定義されている。本発明においては、裏込め注入用として、難燃性及び耐熱性に優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームを得るために、2液型プレミックス組成物のイソシアネート指数を160〜500とする。イソシアネート指数は、200〜400であること好ましく、より好ましくは230〜300である。 前記イソシアネート指数が160未満では、十分な難燃性及び耐熱性を有する硬質ポリイソシアヌレートフォームを得ることができない。一方、前記イソシアネート指数が500を超える場合には、ポリオール化合物が少なすぎて、硬質ポリイソシアヌレートフォームを製造することが困難となる。」と記載され、同段落【0031】には、「(カルボン酸塩) カルボン酸塩は、硬質イソシアヌレートフォームを得るためのポリイソシアネート化合物の三量化触媒として作用するものである。 ポリイソシアネート化合物の三量化触媒としては、アミン系触媒も知られているが、シリコーン界面活性剤及びポリオール化合物を含むプレミックス組成物においては、主たる三量化触媒としてアミン系触媒を用いた場合は、該プレミックス組成物の貯蔵安定性に劣る。 これに対して、カルボン酸塩を三量化触媒として用いることにより、前記プレミックス組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。」と記載されている。 そして、本件特許明細書の【実施例】において、所定のA液及びB液による本発明の2液型プレミックス組成物、特に硬質イソシアヌレートフォームを得るための三量化触媒として作用するカルボン酸塩を使用し、イソシアネート指数が160〜500の範囲内にある実施例1〜3は、発泡剤がHFO又はHCFOである場合においても、発泡性が良好であり、裏込め注入用としての機械的強度や寸法安定性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性に優れ、発泡剤がHFCである場合(参考例1)と同等程度の特性を有する硬質ポリイソシアヌレートフォームが得られることが具体的に示されている。一方、B液にカルボン酸塩を配合しない場合(比較例1)は貯蔵安定性に劣り、イソシアネート指数が160未満である場合(比較例2)は酸素指数が低く、難燃性及び耐熱性に劣り、水のみを発泡剤として用いる場合(比較例3)は発泡性が不十分であり、内部発熱が大きく、耐熱性に劣ることが示されている。 以上の事項をふまえると、当業者は、「トンネル又は地下構造物とこれらの背面の地山との間の空洞内に注入して硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化を行う裏込め注入工法において、 前記硬質ポリイソシアヌレートフォームの発泡硬化前の配合組成物が、ポリイソシアネート化合物を含むA液と、ポリオール化合物、発泡剤、シリコーン界面活性剤及びカルボン酸塩を含むB液との混合液を含み、 前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含み、 前記混合液のイソシアネート指数が160〜500」である特定事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。 そして、本件件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし9についても同様である。 よって、本件特許発明1ないし9に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5) 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、下記の主張をしている。 <主張ア>本件特許発明1の構成の「カルボン酸塩」について、本件特許公報の明細書段落0048の表1には、触媒としてカルボン酸塩とアミン系触媒とを含有する実施例1〜3が記載されており、これら実施例によって内部温度の上昇が抑制されるという本発明の課題を解決できる旨が記載されている(同0010及び 0064) 。しかし、触媒としてアミン系触媒を非含有でカルボン酸塩のみを含有する例は、明細書に記載されていない。ここで、甲第9号証には、「触媒はポリウレタンの反応を制御するために用いられ、ポリウレタンの加工性および物性にも影響を与えるので、触媒の選択および使用量がきわめて重要である。」ことが記載され、「種々のアミン触媒の混合物またはアミン系と有機金属系と併用する」ことが記載されている。このことから、イソシアネートとポリオールとの化学反応において生じる反応の種類や進行の程度は、触媒の有無や種類によって大きく異なり、生成するイソシアヌレートフォーム(ウレタン)の物性も異なる から、触媒の選択は極めて重要であり、アミン触媒の混合物を使用する又はアミン触媒と有機金属触媒とを併用することが本願の出願時における技術常識である。すなわち、上記の例によれば本発明の課題を解決するのに、触媒としてカルボン酸塩に加え、アミン系触媒が不可欠である。従って、アミン系触媒とカルボン酸塩のような有機金属系触媒とを含有する例しか記載されていない発明の詳細な説明の記載を、アミン系触媒を必須に含有しない本件特許発明1にまで拡張乃至一般化できない。 <主張イ>本件特許発明8の構成 そこで、上記主張について以下検討する。 <主張ア>について まず、上記(4)で検討したように、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許明細書の段落【0031】に、三量化触媒にアミン系触媒を用いたときは貯蔵安定性に劣ること、同段落【0035】に、アミン系触媒は、三量化触媒として作用するものと、ウレタン化触媒として作用するものとの明確な区別が難しく、HFO又はHCFOとの反応性を有するものが多く、コストの観点からも、アミン系触媒の使用量はできる限り少ないことが好ましいことが記載されていることから、アミン系触媒を用いなければ課題を解決できないとまではいえない。 そして、甲9には、ポリウレタン全般について、「触媒はポリウレタンの反応を制御するために用いられ、ポリウレタンの加工性および物性にも影響を与えるので、触媒の選択および使用量がきわめて重要である。・・・種々のアミン触媒の混合物またはアミン系と有機金属系と併用する場合がある。」と記載されているだけで、申立人が主張するような触媒としてカルボン酸塩に加え、アミン系触媒を含有しないと本件特許発明の課題が解決できないことを述べているものではない。 このため、申立人の主張は、「触媒の有無や種類によって大きく異なり、生成するイソシアヌレートフォーム(ウレタン)の物性も異なる」という一般論を述べるにとどまるものであって、アミン系触媒が、本件特許発明の課題を解決するために必須の課題解決手段であることを具体的な証拠をもって立証するものではない。 よって、申立人の主張アは首肯することができない。 <主張イ>について 上記(4)で検討したように、本件特許発明8及び9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 そして、本件特許明細書の実施例は、発泡剤として水を含んでおり、さらに散水時(周囲に地下水等の水が存在する場合)の評価を行って、A評価(焼け状態はほぼ確認されない。あるいはまた、断面の面積の約1/4以下に着色が見られる。)となることが確認されているのであるから、発泡剤として水を主成分とした場合にも、発泡時に内部発熱による火災が抑えられるものと考えるのが相当である。 また、申立人が引用した本件特許明細書の段落【0007】には、「上記特許文献1に記載されているような水を発泡剤の主成分として用いた場合には、大空洞部では、注入された硬質ポリイソシアヌレートフォームが内部発熱を生じやすく、酸化反応の併発や、発泡体内部の内圧変動によって、さらに昇温し、炭化とともに発煙が生じ、ひいては、トンネル坑内火災等の重大事故を招くおそれがある。」との記載はあるものの、本件特許発明8及び9においても火災等が生じることを述べるものではない。 よって、申立人の主張イは首肯することができない。 (6) 申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-05-24 |
出願番号 | P2016-246972 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08G)
P 1 651・ 537- Y (C08G) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
近野 光知 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 井上 政志 |
登録日 | 2021-06-25 |
登録番号 | 6903427 |
権利者 | 日清紡ケミカル株式会社 |
発明の名称 | 2液型プレミックス組成物、裏込め注入用硬質ポリイソシアヌレートフォーム及び裏込め注入工法 |
代理人 | 有永 俊 |
代理人 | 大谷 保 |