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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01F
管理番号 1385232
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-18 
確定日 2022-06-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6939336号発明「拡散源」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6939336号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6939336号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成29年9月28日に出願され、令和3年9月6日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年3月18日に特許異議申立人 松崎 隆(以下、「申立人」という。)により特許異議の申し立てがされた。

第2 本件発明
特許第6939336号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
Dy及びTbの少なくとも一方を必ず含む希土類元素R1を全体の40質量%以上含有する合金の粉末であって、
前記合金の粉末は、平均結晶粒径が3μmを超える金属間化合物の粒子から構成されており、
前記粒子の断面は薄片形状である、拡散源。
【請求項2】
前記合金の粉末は、RHRLM1M2合金(RHはSc、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選ばれる1種以上であり、Tb及びDyの少なくとも一方を必ず含む、RLはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Euからなる群から選ばれる1種以上であり、Pr及びNdの少なくとも一方を必ず含む、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末である、請求項1に記載の拡散源。
【請求項3】
前記合金の粉末は、RHM1M2合金(RHはSc、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選ばれる1種以上であり、Tb及びDyの少なくとも一方を必ず含む、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末である、請求項1に記載の拡散源。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下の申立理由1ないし2により、請求項1ないし3に係る本件特許を取り消すべきである旨主張している。
1 申立理由1(明確性
請求項1には、「前記粒子の断面は薄片形状である」と記載されているが、発明特定事項である断面の形状が明確でなく、請求項1に係る発明は、明確でない。請求項1を引用して記載された請求項2,3に係る発明も同様である。
本件特許の請求項1,2,3に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違背し、特許を受けることができないものである。

2 申立理由2(サポート要件)
請求項1の「前記粒子の断面は薄片形状である」は、実施例を反映しておらず、請求項1に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。請求項1を引用して記載された請求項2,3に係る発明も同様である。
本件特許の請求項1,2,3に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定に違背し、特許を受けることができないものである。

第4 当審の判断
1 申立理由1(明確性)について
(1)明確性についての判断
明確性要件の判断の考え方
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面の記載並びに当業者の出願時における技術常識を考慮して判断されるべきものである。

イ 本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は、当審で付与した。
「【0027】
メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法により作製さた合金を粉砕して得られた合金の粉末(拡散源)における粒子の断面は薄片形状である。本開示における「粒子の断面は薄片形状である」とは、合金の粉末(拡散源)における粒子の断面を観察すると、薄片形状であることをいう。さらに本開示における薄片形状とは真円度の平均が0.70以下であることをいう。本開示における真円度とは、対象となる図形(粉末粒子)の(4π×面積)を(周囲の長さの2乗)で割った値である。これらの計算を10回行い(10個の粉末粒子を調べ)、その平均値を求めることで真円度の平均値を求め、真円度の平均値が0.70以下であるかどうか確認する。本開示における真円度は、円は1.00であり、形状が細長くなるにつれ値が小さくなる。」

明確性要件についての判断
本件特許の発明の詳細な説明の上記記載によれば、本件発明1における「粒子の断面は薄片形状である」とは、合金の粉末(拡散源)における粒子の断面を観察した場合に、粉末粒子の(4π×面積)を(周囲の長さの2乗)で割った値である真円度の平均値が0.70以下となる程度に細長い形状であることをいうものである。
そして、粒子の断面を観察した場合、観察方向に面した粒子断面の二次元の形状が観察されるものと認められる。
してみると、明細書の記載を考慮すれば、本件発明1における「粒子の断面は薄片形状である」との記載は、観察方向から見た粉末粒子断面の二次元の形状が、真円度の平均値が0.70以下となる程度に細長い形状であることを特定したものとして、明確である。
本件発明2および3についても同様である。

(2)明確性に関する申立人の主張
申立人は、明確性について、
「請求項1には『前記粒子の断面は薄片形状である』と記載されているが、断面という二次元の形状が薄片形状という三次元の形状で規定されている。故に、粒子の断面の形状が観念できない。更に、無数に存在する粒子の断面のいずれか1つ又は全ての形状を規定しているものなのか不明である。
また、『薄片形状』について、明細書の記載の参酌が許されたとしても、明細書第【0027】欄には、真円度の平均が0.70以下であることをいうとするが、真円度は、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさをいう(JIS B 0621−1984 参照)のであって、二次元の形状を規定するものだから、三次元の「薄片形状」を定義できない。
よって、発明特定事項である粒子の断面の形状が不明確で、請求項1に係る発明は、明確でない。」と主張している。(申立書第2頁第19行ないし第3頁第4行)
しかしながら、明確性要件は上記「(1)ア」の見地から判断されるものであって、上記「(1)ウ」に述べたように本件発明1の「粒子の断面は薄片形状である」との記載は二次元の形状を特定したものとして明確である。
よって、申立人の当該主張は採用できない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件についての判断
ア サポート要件の判断の考え方
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載されたもので、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 本件発明1の課題
本件発明1の課題は、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0009】、【0013】の記載からみて、Dy及びTbの少なくとも一方を含む拡散源を用いる方法において、Dy及びTbの少なくとも一方をより均一に拡散することを実現し、時期特性のばらつきを抑制しつつR−T−B系焼結磁石のHcjを向上させることが可能な拡散源を提供することにあるといえる。

ウ 特許請求の範囲の記載
請求項1には、「Dy及びTbの少なくとも一方を必ず含む希土類元素R1を全体の40質量%以上含有する合金の粉末であって、前記合金の粉末は、平均結晶粒径が3μmを超える金属間化合物の粒子から構成されており、前記粒子の断面は薄片形状である」ことが特定された物の発明が記載されている。

エ 本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は、当審で付与した。
「【0020】
<拡散源>
[合金]
合金は、Dy及びTbの少なくとも一方を必ず含む希土類元素R1を全体の40質量%以上含有する合金である。合金の典型例は、RHM1M2合金、及び、RHRLM1M2合金である。以下、これらのRH合金の例について説明する。」

「【0024】
本開示において、合金は、メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法によって作製される。」

「【0027】
メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法により作製さた合金を粉砕して得られた合金の粉末(拡散源)における粒子の断面は薄片形状である。本開示における「粒子の断面は薄片形状である」とは、合金の粉末(拡散源)における粒子の断面を観察すると、薄片形状であることをいう。さらに本開示における薄片形状とは真円度の平均が0.70以下であることをいう。本開示における真円度とは、対象となる図形(粉末粒子)の(4π×面積)を(周囲の長さの2乗)で割った値である。これらの計算を10回行い(10個の粉末粒子を調べ)、その平均値を求めることで真円度の平均値を求め、真円度の平均値が0.70以下であるかどうか確認する。本開示における真円度は、円は1.00であり、形状が細長くなるにつれ値が小さくなる。
【0028】
合金の溶湯を、メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法によって急冷凝固する場合、冷却速度を厳密に制御することは難しい。このため、合金を粉砕して得た粉末粒子は、粉末粒子ごとに組織の構造がばらつきやすい。・・・(略)・・・このような組織の構造および平均結晶粒径のばらつきが生じると、後述する拡散工程において、粒子を構成する相の溶融温度、およびDy、Tbを拡散源として供給するレートにばらつきが生じる。このようなばらつきは、最終的に磁石特性のばらつきを招来する。
【0029】
このような課題を解決するため、本開示の実施形態では、合金の粉末(拡散源)は、平均結晶粒径が3μmを超える金属間化合物の粒子から構成する。これにより、合金の粉末を構成する粉末粒子の結晶性を改質し、均一性に優れた拡散源を得ることができる。そして、前記拡散源を用いることにより拡散工程における磁気特性のばらつきを抑制することができる。・・・(略)・・・
【0030】
このような構成にするためには、例えば以下に説明する熱処理を行う。
【0031】
[合金の熱処理]
本開示のある実施形態では、メルトスピニング法により得た合金又は前記合金を粉砕して得た合金の粉末に対して、前記合金又は前記合金の粉末の融点よりも270℃低い温度以上、融点以下の温度で熱処理を行う。」

「【0035】
また、本開示のある実施形態では、ストリップキャスト法により得た合金又は前記合金を粉砕して得た合金の粉末に対して、前記合金又は前記合金の粉末の融点よりも230℃低い温度以上、融点以下の温度で熱処理を行う。この熱処理により拡散源を構成する合金の粉末は、平均結晶粒径が3μmを超える粒子から構成される。このように、メルトスピニング法とストリップキャスト法とで得た合金の違いにより好ましい熱処理範囲は異なる。」

「【0063】
(実験例1)
まず公知の方法で、組成比Nd=23.4、Pr=6.2、B=1.0、Al=0.4、Cu=0.1、Co=1.5、残部Fe(質量%)のR−T−B系焼結磁石素材を作製した。前記R−T−B系焼結磁石素材の寸法は、厚さ5.0mm×幅7.5mm×長さ35mmであった。
【0064】
次に、およそ表1に示す組成になるように合金をメルトスピニング法により作製して用意した。具体的には、80kPaのアルゴン雰囲気としたチャンバー内にて、オリフィス径0.8mmの石英ノズル内で原料を高周波溶解した後、100kPaのバックプレッシャーを印加して、溶湯をCuロール上へ噴射した。Cuロール周速度は組成に応じて10〜40m/sの範囲で行った。次に、前記合金に表1に示す条件(温度及び時間)で熱処理を行い(但し、No.1は熱処理なし)、熱処理後の合金をピンミル粉砕することにより拡散源(No.1〜13)を得た。拡散源(合金粉末)の粒度は、篩い分けを行った所、200μm以下(篩いにより確認)であった。表1における合金の粉末の組成は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。
また、拡散源の酸素含有量は、ガス融解−赤外線吸収法によるガス分析装置を使用して測定した。
【0065】
また、得られた拡散源における金属間化合物相の平均結晶粒径を以下の方法により測定した。まず、拡散源を構成する粉末粒子の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察しコントラストから相別し、各相の組成をエネルギー分散X線分光(EDX)を用いて分析し金属間化合物相を特定した。次に画像解析ソフト(Scandium)を用いて、一番面積比率の高い金属間化合物相を一番含有量の高い金属間化合物相とし、当該金属間化合物相の結晶粒径を求めた。・・・(略)・・・」

「【0068】
これらの作業を5回行い(5個の粉末粒子を調べ)、その平均値を求めることで拡散源における金属間化合物相の平均結晶粒径を求めた。・・・(略)・・・
【0069】
次に拡散源を構成する粉末粒子が薄片形状であるかどうか確認した。拡散源を構成する粉末粒子の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析ソフト(Scandium)を用いて図形(粉末粒子)の(4π×面積)を(周囲の長さの2乗)で割った値を求めた。これらの計算を10回行い(10個の粉末粒子を調べ)、その平均値を求めることにより真円度の平均値を求めた。No.1〜No.13における真円度の平均値は0.40〜0.60の範囲にあり、粒子の断面は薄片形状(0.70以下)であることを確認した。
【0070】
次に、R−T−B系焼結磁石素材に粘着剤を塗布した。塗布方法は、R−T−B系焼結磁石素材をホットプレート上で60℃に加熱後、スプレー法でR−T−B系焼結磁石素材全面に粘着剤を塗布した。粘着剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を用いた。
【0071】
次に、粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石素材に対して、表1のNo.1〜13の拡散源を付着させた。拡散源を付着させたR−T−B系焼結磁石素材は、拡散源の種類ごと(No.1〜13ごと)に50個づつ準備した。付着方法は、容器に拡散源(合金粉末)を広げ、粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石素材を常温まで降温させた後、容器内で拡散源をR−T−B系焼結磁石素材全面にまぶすように付着させた。
【0072】
次に、前記R−T−B系焼結磁石素材及び拡散源を処理容器内に配置し、900℃(焼結温度以下)で8時間加熱することにより、前記拡散源に含まれるDy及びTbの少なくとも一方を前記R−T−B系焼結磁石素材の表面から内部に拡散する拡散工程を行った。拡散後のR−T−B系焼結磁石の中央部分から厚さ4.5mm×幅7.0mm×長さ7.0mmの立方体を切り出し、拡散源の種類ごと(No.1〜13ごと)に10個づつB−Hトレーサにより保磁力を測定し、得られた保磁力の最大値から保磁力の最小値を差し引いた値を磁気特性ばらつき(△HcJ)として求めた。△HcJの値を表1に示す。
【0073】

【0074】
表1に示すように、合金の粉末に熱処理をしていないNo.1(比較例)及び熱処理温度が本開示の範囲外であるNo.6(比較例)と比べ本発明例(No.2〜5、No.7〜13)は、いずれも△HcJが半分程度であり拡散工程における磁気特性のばらつきが抑制されている。」


オ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比等に基づく検討
上記「エ」のとおり、本件発明1の各発明特定事項に対応して、本件特許の発明の詳細な説明には、「Dy及びTbの少なくとも一方を必ず含む希土類元素R1を全体の40質量%以上含有する合金」を用いること(【0020】)、当該合金をメルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法によって作製し、メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法により作製さた合金を粉砕して得られた合金の粉末(拡散源)における「粒子の断面は薄片形状」であること(【0027】)、合金の粉末(拡散源)は、「平均結晶粒径が3μmを超える金属間化合物の粒子から構成」するために熱処理を行うこと(【0029】ないし【0031】、【0035】)が記載されると共に、当該構成を有する拡散源を用いることにより磁気特性ばらつき△HcJが抑制されたことを示す実施例が示されている(【0063】ないし【0065】、【0068】ないし【0074】)。
してみると、本件発明1は本件発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、本件発明1によって、当業者であれば上記本件発明1の課題を解決できることを認識できる。
本件発明2および3についても同様である。

(2)サポート要件に関する申立人の主張
申立人は、サポート要件について、
「実施例では、『拡散源を構成する粉末粒子が薄片形状であるかどうか確認した。』(明細書第【0069】欄)と記載され、粉末粒子の形状(注:断面形状ではなく)が薄片形状であるべきことが述べられている。
ここで、
『メルトスピニング法は、・・・(中略)・・・形成される合金は、リボン状の薄帯や鱗片状の薄帯を呈し』(明細書第【0024】欄)、
『また、ストリップキャスト法は、・・・(中略)・・・形成される合金は薄板状を呈し』(明細書第【0024】欄)
を見ても、リボン状の薄帯や鱗片状の薄帯、薄板を粉砕したときに、上記した明細書第【0069】欄の記載のように、得られる粉末粒子の形状は薄片形状であると理解できる。このような薄片形状の物体の断面は、少なくとも円形形体ではないから、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさをいう(JIS B 0621−1984 参照)とした真円度では評価できない。
つまり、明細書第【0027】欄にあるように、真円度の平均が0.70以下であることを『粒子の断面は薄片形状』と定義するなら、かかる定義に基づく、請求項1の『前記粒子の断面は薄片形状である』は、メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法により作製された合金を粉砕して得られた合金の粉末であることを反映しておらず、実施例を反映していない。
換言すれば、立体形状から無数に存在する断面形状は特定できるが、逆に、無数に存在するうちの一部の断面形状だけから立体形状は特定できないものであり、断面形状を真円度で定めても実施例としての立体形状である粒子形状を特定できていない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。」と主張している。(申立書第3頁第8行ないし第4頁第5行)
上記請求人の主張は要するに、本件特許の課題解決手段は、メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法により作製された合金を粉砕して得られた合金の粉末を用いることであるところ、粒子断面の真円度を定義しただけでは粒子の三次元形状は特定できないのであるから、本件発明1で特定された粒子は、メルトスピニング法及び/又はストリップキャスト法により作製された合金を粉砕して得られた合金の粉末のみならず、それ以外の三次元形状の粒子を含んでしまうから、本件発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものである旨主張しているものと認められる。
しかしながら、上記「1(1)ウ」で検討したように、段落【0027】の記載より、本件発明1における「粒子の断面は薄片形状である」との記載は、観察方向から見た粉末粒子断面の二次元の形状が、真円度の平均値が0.70以下となる程度に細長い形状であることを特定したものと理解できる。そして、段落【0069】には、実施例の拡散源を構成する粉末粒子の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して真円度を求めた結果が示されているから、本件発明の課題解決手段は「粒子の断面は薄片形状」であれば足るものであり、粒子の三次元形状まで特定する必要は認められない。
よって、申立人の当該主張は前提において誤っており、採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、申立書に記載した特許異議の申し立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし3にかかる特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
異議決定日 2022-05-23 
出願番号 P2017-187699
審決分類 P 1 651・ 537- Y (H01F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 山田 正文
山本 章裕
登録日 2021-09-06 
登録番号 6939336
権利者 日立金属株式会社
発明の名称 拡散源  
代理人 奥田 誠司  
代理人 喜多 修市  
代理人 梶谷 美道  
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