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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1385511
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-29 
確定日 2022-06-13 
事件の表示 特願2016−563421「ゴルフスイングモニタリングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日国際公開、WO2015/162423、平成29年 9月 7日国内公表、特表2017−525398〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年4月22日(パリ条約による優先権主張 2014年4月24日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成30年4月20日付けで手続補正書が提出され、平成31年3月25日付で拒絶理由が通知され、令和1年8月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月28日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年5月29日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年5月29日付けで提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年5月29日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年8月13日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至21を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至22へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
スポーツ器具による物体の打撃を伴うプレーヤまたはユーザにより実行されるスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を少なくとも1個のセンサから自動的に収集するためのシステムであって、
該システムは、少なくとも1個のタグと、身体装着型装置とを備え、
前記少なくとも1個のタグは、少なくとも1個のRFIDタグまたはNFCタグからなり、かつ、前記スポーツ器具に取り付けられるよう構成されており、
前記身体装着型装置は、ストラップと、前記少なくとも1個のセンサと、タグ読取装置とを備え、
前記少なくとも1個のセンサは、少なくとも1個のスイングセンサと、少なくとも1個の物体接触センサとを備え、該少なくとも1個の物体接触センサは、前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されており、
該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサからの読み取り値に基づいて、あるいは、該読み取り値に応答して、前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるよう構成されており、および、
前記タグ読取装置は、RFIDタグ読取装置またはNFCタグ読取装置からなり、かつ、前記ストラップの少なくとも一部またはすべてに沿ってまたはその周囲に延在するアンテナを備える、
システム。
【請求項2】
前記少なくとも1個の物体接触センサの1個以上は、衝撃および/または振動センサを備え、および/または、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの1個以上は、音センサを備え、
該システムは、前記衝撃および/または振動センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた衝撃および/または振動を少なくとも部分的に検知し、および/または、前記音センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた音を少なくとも部分的に検知して、前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該システムは、前記プレーヤまたはユーザにより実行されるゴルフスイングのパフォーマンスに関する情報を自動的に収集するためのシステムであって、前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、前記物体が、該ゴルフクラブにより打撃されるゴルフボールであり、
前記少なくとも1個の物体接触センサが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの接触を検知するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記身体装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着される手首装着型装置からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記手首装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザが前記ゴルフクラブを把持した際に、該プレーヤまたはユーザの上側に来る手の手首に装着されるように構成されている、請求項3に従属する請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
該システムは、前記スポーツ器具が使用されていること、および、該スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを、自動的に検知するように構成されていて、
前記少なくとも1個のタグは、前記スポーツ器具の、前記プレーヤまたはユーザに隣接する部分、前記プレーヤまたはユーザに近接する部分、あるいは、前記プレーヤまたはユーザによって把持される部分のいずれかに取り付け可能であり、
前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを判定するように構成されている、
請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1個のタグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部に取り付けられるか、前記スポーツ器具のハンドルまたはグリップ内に少なくとも部分的に配置されるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
該システムは、前記少なくとも1個のタグと前記タグ読取装置とが接近していることを判定し、かつ、前記スポーツ器具上の前記タグが、前記タグ読取装置の少なくとも一部に隣接または近接しているときに、前記スポーツ器具が前記プレーヤまたはユーザにより保持されていると判定するように構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記手首装着型装置の少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に配置可能であり、前記アンテナの少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置するように構成されている、請求項4に従属する請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整可能であり、
該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたストラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、
該システムが、複数のアンテナ整合回路またはシステム、および/または、調整可能な整合回路またはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記整合回路またはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、
前記ストラップセンサが、前記ストラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じられるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、前記ストラップセンサによって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するように構成されている、
請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、
該システムが、前記少なくとも1個のスイングセンサを使用して、所定のスイング動作をモニタするように構成されており、
該システムが、前記スポーツ器具が検知されたことに起因して、前記少なくとも1個のスイングセンサを作動させ、かつ、前記プレーヤまたはユーザによるスイング動作中の所定期間に前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるように構成されており、
該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能であり、かつ、該少なくとも1個のスイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、前記スイング動作を検知するように構成されたスイング検知器を備え、さらに、
前記スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成されており、
前記スイング検知器は、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知するように構成されており、
前記動作パターンが、所定の空間定義域および時間定義域内における範囲またはパターンを含み、
前記スイング検知器が、前記動作が行われていることを示す所定の範囲内の読み取り値に関して、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタし、次にスイングの次の段階を示す別の動作をモニタするように構成されている、
請求項1〜10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、および、前記スイング検知器が、ゴルフスイングを検知するように構成されており、前記1個以上の運動のパターンは、前記ゴルフスイングが通常示す少なくとも1個のパターンからなる、請求項3に従属する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
該システムは、
位置データと、
時間データと、
前記スポーツ器具のタイプおよび/または識別データと、
前記少なくとも1個のスイングセンサ、および、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの少なくともいずれかからの読み取り値から得られたスイングデータと、
前記身体装着型装置からの内部変数と、
前記少なくとも1個のスイングセンサ、前記少なくとも1個の物体接触センサ、および、前記身体装着型装置殻の前記内部変数のうちの少なくともいずれかから得られたスイングタイプデータと、および、
ショットカウントと、
のうちの1個以上を収集するように構成されており、
該システムが、前記1個以上の物体接触センサを使用して、前記プレーヤまたはユーザによる前記スポーツ器具のスイング中に前記物体との接触が起こったかどうかを判定することによって、練習スイングと、前記スポーツ器具が前記物体と接触する実スイングとを区別するように構成されており、
該システムが、前記実スイングと1以上の前記練習スイングを含み、かつ、所定の時間定義域および空間定義域内で行われる、一群のスイングの位置情報を使用して、前記実スイングの最終位置を決定するように構成されている、
請求項1〜12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
該システムは、1個以上のユーザインタフェースを備え、該1個以上のユーザインタフェースは、前記ユーザまたはプレーヤが、前記スポーツ器具と前記物体との接触による該物体のショットをログ記録し、および/または、前記ショットが行われたかどうかについての前記プレーヤまたはユーザからの明示を受け取ることを可能に構成されており、
該システムは、
前記少なくとも1個の通信インタフェースを介して、1個以上のリモートサーバと通信して、
収集情報、追加情報、前記身体装着型装置からの内部変数、および、これらから得られたデータを送信し、および、マップまたはその他の位置固有情報を受信することが可能であり、
前記収集された情報を解析し、あるいは、前記1個以上のリモートサーバに解析させて、統計データを生成し、かつ、
実スイングショットが行われたことを判定し、その判定に従ってスコアカードを自動的に更新するように、構成されている、
請求項1〜12のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、
該システムは、前記スイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、スイング動作を検知するように構成され、
前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能である、スイング検知器を備え、
該スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成され、
前記スイング検知器が、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知して、前記スイングのパフォーマンスまたは特徴を識別するように構成されており、
および、
前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信し、
該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプを判定するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記アンテナは、フレキシブルプリント基板の一部として形成され、該アンテナは、前記ストラップに沿って伸長しており、前記プレーヤまたはユーザが前記身体装着型装置を装着し、前記スポーツ器具を保持した際に、該アンテナは、該プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置し、該アンテナから離間した前記少なくとも1個のタグと通信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のシステムとともに使用するように構成されている携帯装置であって、
該携帯装置が、前記身体装着型装置により構成され、
前記物体接触センサが、衝撃および/または振動センサ、慣性センサ、音響センサ、1個以上の加速度計、1個以上のジャイロスコープ、および/または、1個以上の音センサのうちの1個以上を備える、
携帯装置。
【請求項18】
位置センサを備え、かつ、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着可能である、請求項17に記載の携帯装置。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載のシステムに使用されるタグであって、固有識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されている、タグ。
【請求項20】
該タグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部にねじ留めされるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに取り付けられるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項19に記載のタグ。
【請求項21】
前記スポーツ器具が前記物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を自動的に収集する方法であって、請求項1〜16のいずれかに記載のシステム、請求項17または18に記載の携帯装置、あるいは、請求項19または20に記載のタグを使用して、前記スポーツ器具が前記物体に当たることを自動的に検知することを含む、方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
スポーツ器具による物体の打撃を伴うプレーヤまたはユーザにより実行されるスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報をセンサから自動的に収集するためのシステムであって、
該システムは、少なくとも1個のタグと、身体装着型装置とを備え、
前記少なくとも1個のタグは、少なくとも1個のRFIDタグまたはNFCタグからなり、かつ、前記スポーツ器具に取り付けられるよう構成されており、
前記身体装着型装置は、ストラップと、前記センサと、タグ読取装置とを備え、
前記センサは、少なくとも1個のスイングセンサと、少なくとも1個の物体接触センサとを備え、該少なくとも1個の物体接触センサは、前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されており、
該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサからの読み取り値に基づいて、あるいは、該読み取り値に応答して、前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるよう構成されており、および、
前記タグ読取装置は、RFIDタグ読取装置またはNFCタグ読取装置からなり、かつ、前記ストラップの少なくとも一部またはすべてに沿ってまたはその周囲に延在するアンテナを備える、
システム。
【請求項2】
前記少なくとも1個の物体接触センサの1個以上は、衝撃および/または振動センサを備え、および/または、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの1個以上は、音センサを備え、
該システムは、前記衝撃および/または振動センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた衝撃および/または振動を少なくとも部分的に検知し、および/または、前記音センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた音を少なくとも部分的に検知して、前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該システムは、前記プレーヤまたはユーザにより実行されるゴルフスイングのパフォーマンスに関する情報を自動的に収集するためのシステムであって、前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、前記物体が、該ゴルフクラブにより打撃されるゴルフボールであり、前記少なくとも1個の物体接触センサが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの接触を検知するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記身体装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着される手首装着型装置からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記手首装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザが前記ゴルフクラブを把持した際に、該プレーヤまたはユーザの上側に来る手の手首に装着されるように構成されている、請求項3に従属する請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
該システムは、前記スポーツ器具が使用されていること、および、該スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを、自動的に検知するように構成されていて、
前記少なくとも1個のタグは、前記スポーツ器具の、前記プレーヤまたはユーザに隣接する部分、前記プレーヤまたはユーザに近接する部分、あるいは、前記プレーヤまたはユーザによって把持される部分のいずれかに取り付け可能であり、
前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを判定するように構成されている、
請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1個のタグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部に取り付けられるか、前記スポーツ器具のハンドルまたはグリップ内に少なくとも部分的に配置されるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整可能であり、
該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたストラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、
該システムが、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されている、
請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
該システムは、前記少なくとも1個のタグと前記タグ読取装置とが接近していることを判定し、かつ、前記スポーツ器具上の前記タグが、前記タグ読取装置の少なくとも一部に隣接または近接しているときに、前記スポーツ器具が前記プレーヤまたはユーザにより保持されていると判定するように構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記手首装着型装置の少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に配置可能であり、前記アンテナの少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置するように構成されている、請求項4に従属する請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整可能であり、
該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたストラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、
該システムが、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、
前記ストラップセンサが、前記ストラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じられるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、前記ストラップセンサによって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するように構成されている、
請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、
該システムが、前記少なくとも1個のスイングセンサを使用して、所定のスイング動作をモニタするように構成されており、
該システムが、前記タグ読み取り装置が前記少なくとも1個のタグの1つを読み取ることにより、前記スポーツ器具が検知されたことに起因して、前記少なくとも1個のスイングセンサを作動させ、かつ、前記プレーヤまたはユーザによるスイング動作中の所定期間に前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるように構成されており、
該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能であり、かつ、該少なくとも1個のスイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、前記スイング動作を検知するように構成されたスイング検知器を備え、さらに、
前記スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成されており、
前記スイング検知器は、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知するように構成されており、
前記動作パターンが、所定の空間定義域および時間定義域内における範囲またはパターンを含み、
前記スイング検知器が、前記動作が行われていることを示す所定の範囲内の読み取り値に関して、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタし、次にスイングの次の段階を示す別の動作をモニタするように構成されている、
請求項1〜11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、および、前記スイング検知器が、ゴルフスイングを検知するように構成されており、前記1個以上の運動のパターンは、前記ゴルフスイングが通常示す少なくとも1個のパターンからなる、請求項3に従属する請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
該システムは、
位置データと、
時間データと、
前記スポーツ器具のタイプおよび/または識別データと、
前記少なくとも1個のスイングセンサ、および、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの少なくともいずれかからの読み取り値から得られたスイングデータと、
前記身体装着型装置からの内部変数と、
前記少なくとも1個のスイングセンサ、前記少なくとも1個の物体接触センサ、および、前記身体装着型装置からの前記内部変数のうちの少なくともいずれかから得られたスイングタイプデータと、および、
ショットカウントと、
のうちの少なくとも前記スイングデータを含む1個以上を収集するように構成されており、
該システムが、前記1個以上の物体接触センサを使用して、前記プレーヤまたはユーザによる前記スポーツ器具のスイング中に前記物体との接触が起こったかどうかを判定することによって、練習スイングと、前記スポーツ器具が前記物体と接触する実スイングとを区別するように構成されており、
該システムが、前記実スイングと1以上の前記練習スイングを含み、かつ、所定の時間定義域および空間定義域内で行われる、一群のスイングの位置情報を使用して、前記実スイングの最終位置を決定するように構成されている、
請求項1〜13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
該システムは、1個以上のユーザインタフェースを備え、該1個以上のユーザインタフェースは、前記ユーザまたはプレーヤが、前記スポーツ器具と前記物体との接触による該物体のショットをログ記録し、および/または、前記ショットが行われたかどうかについての前記プレーヤまたはユーザからの明示を受け取ることを可能に構成されており、
該システムは、
前記少なくとも1個の通信インタフェースを介して、1個以上のリモートサーバと通信して、
収集情報、追加情報、前記身体装着型装置からの内部変数、および、これらから得られたデータを送信し、および、マップまたはその他の位置固有情報を受信することが可能であり、
前記収集された情報を解析し、あるいは、前記1個以上のリモートサーバに解析させて、統計データを生成し、かつ、
実スイングショットが行われたことを判定し、その判定に従ってスコアカードを自動的に更新するように、構成されている、
請求項1〜14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、
該システムは、前記スイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、スイング動作を検知するように構成され、
前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能である、スイング検知器を備え、
該スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成され、
前記スイング検知器が、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知して、前記スイングのパフォーマンスまたは特徴を識別するように構成されており、
および、
前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信し、
該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプを判定するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記アンテナは、フレキシブルプリント基板の一部として形成され、該アンテナは、前記ストラップに沿って伸長しており、前記プレーヤまたはユーザが前記身体装着型装置を装着し、前記スポーツ器具を保持した際に、該アンテナは、該プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置し、該アンテナから離間した前記少なくとも1個のタグと通信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記身体装着型装置が、前記物体接触センサを備え、
前記物体接触センサが、衝撃および/または振動センサ、慣性センサ、音響センサ、1個以上の加速度計、1個以上のジャイロスコープ、および/または、1個以上の音センサのうちの1個以上を備える、
請求項1〜17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記センサは、位置センサを備え、かつ、前記身体装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着可能である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記タグは、固有識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されている、請求項1〜17のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記タグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部にねじ留めされるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに取り付けられるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
スポーツ器具が物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を自動的に収集する方法であって、
請求項1〜21のいずれかに記載のシステムを使用して、
少なくとも1個のスイングセンサからの読み取り値に基づいて、あるいは、該読み取り値に応答して、少なくとも1個の物体接触センサを作動させ、および、前記スポーツ器具が前記物体に当たることを自動的に検知することを含む、
方法。」

2 本件補正について
(1)補正目的について
特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで、本件補正について、以下、検討する。
ア 請求項8を追加する補正について
(ア)本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は、「少なくとも1個のセンサ」との特定事項が「センサ」と補正されて、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1となった。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に対応するものと認められる。
(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項2〜7、9、10、16、17は、それぞれ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2〜7、8、9、15、16と比較して、何ら補正されていないものであるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2〜7、9、10、16、17は、それぞれ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2〜7、8、9、15、16に対応するものと認められる。
(ウ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項11は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項10と比較すると、「調整位置」、「アンテナ整合回路またはシステム」及び「前記整合回路またはシステム」との特定事項を、それぞれ「前記調整位置」、「アンテナ整合回路もしくはシステム」及び「前記複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステム」と補正されたものであると解される。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項11は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項10に対応するものと認められる。
(エ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項12は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項11の「前記システムが、前記スポーツ器具が検知されたことに起因して」との特定事項を、「前記システムが、前記タグ読み取り装置が前記少なくとも1個のタグの1つを読み取ることにより、前記スポーツ器具が検知されたことに起因して」と補正されたものと解される。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項12は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項11に対応するものと認められる。
(オ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項13は、本件補正前の請求項12と比較して、本件補正前の特許請求の範囲の請求項12が引用する請求項を11を、本件補正後の請求項13においては請求項12を引用するものに補正されているところ、上記の通り、本件補正後の特許請求の範囲の請求項12は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項11に対応するものと認められるものである。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項13は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項12に対応するものと認められる。
(カ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項14は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項13の「身体装着型装置殻の前記内部変数」及び「ショットカウントと、のうちの1個以上」との特定事項を、それぞれ「身体装着型装置からの前記内部変数」及び「ショットカウントと、のうちの少なくとも前記スイングデータを含む1個以上」と補正するとともに、本件補正前の請求項13が引用する請求項1〜12」を本件補正後の特許請求の範囲の請求項14において1〜13を引用するものに補正されたものと解される。そして、本件補正後の請求項1ないし7、9ないし13が、それぞれ本件補正前の請求項1ないし7、8ないし12に対応するものであることは上記のとおりであり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8は、本件補正により追加された請求項である。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項14は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項13に対応するものと認められる。
(キ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項15は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項14が引用する請求項1〜13を本件補正後の特許請求の範囲の請求項15において1〜14を引用するものに補正されたものと解される。そして、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7、9ないし14が、それぞれ本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし14に対応するものであり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8は、本件補正により追加された請求項である。
してみると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項15は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項14に対応するものと認められる。
(ク)本件補正後の特許請求の範囲の請求項18の「前記物体接触センサが、衝撃および/または振動センサ、慣性センサ、音響センサ、1個以上の加速度計、1個以上のジャイロスコープ、および/または、1個以上の音センサのうちの1個以上を備える」との特定事項は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17に記載されていた特定事項であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項18は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17に対応するものと認められる。
(ケ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項19の「位置センサを備え、かつ、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着可能である」との特定事項は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項18に記載されていた特定事項であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項19は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項18に対応するものと認められる。
(コ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項20の「タグ」及び「固有識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されている」との特定事項は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項19に記載されていた特定事項であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項20は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項19に対応するものと認められる。
(サ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項21の「タグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部にねじ留めされるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに取り付けられるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている」との特定事項は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項20に記載されていた特定事項であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項21は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項20に対応するものと認められる。
(シ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項22の「スポーツ器具が物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を自動的に収集する方法」及び「前記スポーツ器具が前記物体に当たることを自動的に検知することを含む」との特定事項は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項21に記載されていた特定事項であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項22は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項21に対応するものと認められる。
(ス)そうすると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8については、本件補正前の特許請求の範囲に対応する請求項は見出せないから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8は、本件補正前の特許請求の範囲に記載された請求項のうちのいずれかの請求項に記載された発明特定事項をさらに限定するものとはいえない。
また、本件補正により、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8を追加する補正(以下「補正事項1」という。)は、特許請求の範囲の請求項数を増加する補正であって、上記検討からすれば、補正事項1は、「n項引用形式請求項をn−1以下の請求項に変更する補正」にも「発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正」にも該当しないものである。
してみると、補正事項1は、同項第1号ないし4号に掲げられたいずれを目的とするものにも該当しない。

イ 請求項18ないし21に係る補正について
上記アの検討から、本件補正後の特許請求の範囲の請求項18〜21は、それぞれ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17〜20に対応するものである。(以下、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17〜20を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項18〜21とする補正を、それぞれ「補正事項2〜5」という。)
(ア)補正事項2について
補正事項2は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17が「請求項1〜16のいずれかに記載のシステムとともに使用するように構成されている携帯装置」であったところ、「請求項1〜17のいずれかに記載のシステム」と補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17において特定されていた「システムとともに使用するように構成された携帯装置」に係る発明を、本件補正後の特許請求の範囲の性有効18において「システム」に係る発明を特定するものへと補正をするものであって、当該補正は、発明の対象を変更するものであり、また、本件補正前の請求項において特定されている発明特定事項をさらに特定するものには該当しないから、上記補正事項2は、同項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、上記補正事項2が、同項第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。(イ)補正事項3〜5について 補正事項3〜5は、それぞれ、本件補正前の請求項18ないし20において特定されていた「携帯装置」に係る発明、「タグ」に係る発明を、いずれも本件補正後の請求項19ないし21において「システム」の発明を特定するものとその対象を変更するものであるから、上記補正事項2と同様の理由により、上記補正事項3〜5は、いずれも、同項第1〜4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。

ウ 小括
よって、上記補正事項1〜5を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、上記補正事項1は、新規事項を追加するものではないとしか主張せず、また、上記補正事項2〜5は、発明を変更するものではないと主張するのみであって、本件補正が、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの目的に該当するかについて、何ら具体的に説明していない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項19〜21に係る発明は、令和1年8月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項19〜21に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載のシステムに使用されるタグであって、固有識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されている、タグ。
【請求項20】
該タグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部にねじ留めされるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに取り付けられるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項19に記載のタグ。
【請求項21】
前記スポーツ器具が前記物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を自動的に収集する方法であって、請求項1〜16のいずれかに記載のシステム、請求項17または18に記載の携帯装置、あるいは、請求項19または20に記載のタグを使用して、前記スポーツ器具が前記物体に当たることを自動的に検知することを含む、方法。」(以下、それぞれ「本願発明19」〜「本願発明21」という。)

2 引用例
平成31年3月25日付けの拒絶理由通知に引用された特表2013−509968号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0002】
本発明は、複数のセンサの出力を処理し、センサ出力または検出されたゴルフショットの指標を携帯型ポジションアウェア機器に報告することによりゴルフショットを検出し、携帯型ポジションアウェア機器がその後に位置情報と関連してゴルフショットのロケーションを記録する方法および装置に関する。」
(2)「【0012】
図1は、ゴルフコース関連情報を取得するためにプレーヤによって使用されるロケーションアウェア携帯型機器100の例示的コンフィギュレーションを示すブロック図である。ロケーションアウェア機器100は、たとえば、フラッシュメモリ115またはランダム・アクセス・メモリ110に記憶されたソフトウェアを動かすマイクロコントローラ105によって管理される複数のコンポーネントを含むハンドヘルド型機器でもよい。マイクロコントローラ105は、ロケーションアウェア機器の中の複数のハードウェアシステムおよび機器アプリケーションシステムのためのインターフェイスおよびコントローラとしての機能を果たす。例示的な実施形態では、携帯型ロケーションアウェア機器100の主目的は、グリーン上の様々なポイント、ゴルフコース上の様々なターゲットおよびハザードまでの距離情報をゴルファに提供することである。

【0018】
ロケーションアウェア機器は、タグが運転状態にある場合に、クラブタグIDと、タグバッテリ状態と、他のセンサデータとを送信することがあり、以下に詳述された、タグ200から送信された信号を受信する無線周波数(RF)トランシーバ165をさらに含む。タグの様々な状態と、タグから送信されたデータとに関するより具体的な詳細は、以下で詳細に検討される。 【0019】
タグから送信されたデータは、ロケーションアウェア機器100のRFIDトランシーバ165によって受信され、使用中のクラブのID、ロケーションアウェア機器の現在位置、クラブ・スイング・データ、および/または、タグが装着されているゴルフクラブを用いたボール打撃の指標があるかどうかを記録するためにマイクロコントローラ105によって処理される。このデータは、メモリ(たとえば、フラッシュメモリ115および/またはRAMメモリ110)に記憶され、スコアリングプロセスを自動化し、クラブが置き忘れられているかどうかをゴルファに気付かせ、ラウンドおよびショットデータを機器に図形的に表示し、1ラウンドの過程のプレーヤのゴルフショットのラウンド後解析およびグラフィカル追跡のためのコンピュータおよび/またはウェブサイトへデータをアップロードするため利用できるようにするためにマイクロコントローラ105によって使用される。
(3)「【0020】
図2は、ゴルフクラブに装着され、クラブに加えられた様々な力を感知するために使用されるRFIDタグ200のハードウェアの例示的コンフィギュレーションを示すブロック図である。タグ200は、ショットがクラブを用いて打たれたことを検出すること、または、その後に、受信されたデータに基づいて、ショットがクラブを用いて打たれたことを判定するロケーションアウェア機器100に未加工データを中継することのいずれかのために、タグ200の様々なセンサからの出力を処理するためにメモリ210に記憶されたアプリケーションを実行するマイクロコントローラ205を含む。」
(4)「【0022】
タグ200は、ボールがゴルフクラブによって打撃されたかどうかを検出するプロセスで使用される複数の半導体または微小電気機械(MEM)センサをさらに含む。これらのセンサの実施例は、以下でより詳しく説明される。」
(5)「【0029】
タグは、理想的には、クラブグリップの端に、または、クラブシャフトの上部の内部に防水性かつ耐久性を兼ねて搭載された小型縮小化回路であるであろう。
(6)「【0053】
前述の通り、図7および8に記載されたプロセスは、マイクロコントローラ205がゴルフスイングに関連して加速度計およびジャイロセンサの各々の出力のパーセンテージを計算し、このデータをメモリ210に記憶する方法を指定する。…」
(7)[【0063】
図13は、タグからのデータ受信時のロケーションアウェア機器の例示的プロセスフローを示す。このプロセスは、タグから識別情報およびセンサデータを受信S1300するロケーションアウェア機器のトランシーバ165で始まる。タグからの送信を受信し次第、ロケーションアウェア機器のマイクロコントローラ105は、受信されたタグデータを処理する(S1305)。このプロセスは、タグから受信されたパケットデータを復調し、スクランブル解除し、および/または、暗号解読する(S1310)ことを含む。
【0064】
ロケーションアウェア機器は、その後、タグから受信されたID情報に基づいて、記憶されたタグIDおよびクラブID情報を参照する(S1315)。前述の通り、タグから受信されたID情報は、固有のクラブ識別データ(たとえば、5番アイアン、ドライバなど)としてもよく、または、特有のクラブに対応するとしてロケーションアウェア機器に予め登録されたタグに固有のID情報としてもよい。これは、タグが装着されたクラブが後に続く処理のためにロケーションアウェア機器によって識別されることを可能にする。」
(8)上記(7)より、ロケーションアウェア機器がタグから受信するID情報を、固有のクラブ識別データとしてもよいことが記載されているから、タグは、固有のクラブ識別データをロケーションアウェア機器に送信するものといえる。

そうすると、上記(1)〜(8)の記載事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「クラブグリップの端に搭載されたタグであって、ボールがゴルフクラブによって打撃されたかどうかを検出するプロセスで使用される複数の半導体または微小電気機械(MEM)センサを含み、固有のクラブ識別データと、センサデータとをロケーションアウェア機器に送信する、タグ。」

3 本願発明19について
(1)対比
そこで、本願発明19と引用発明とを対比すると、
ア 後者の「固有のクラブ識別データ」、「クラブ」及び「タグ」は、それぞれ、前者の「固有識別子」、「スポーツ器具」及び「タグ」に相当する。
イ 後者の「タグ」は、固有のクラブ識別データをロケーションアウェア機器に送信するものであるから、前者の「タグ」と後者の「タグ」とは、「固有識別子を送信することが可能」なものとの概念で一致する。
また、後者の「タグ」から「ロケーションアウェア機器」へ固有のクラブ識別データが送信されるのであるから、後者の「タグ」及び「ロケーションアウェア機器」は、「システム」を構成するものであるから、前者の「システム」に相当し、前者の「タグ」と後者の「タグ」とは、「システムに使用されるタグ」との概念で一致する。
ウ 後者の「タグ」は、クラブグリップの端に搭載されたものであるから、前者の「タグ」と後者の「タグ」とは、「スポーツ器具に取り付け可能である」ものとの概念で一致する。

したがって、両者は、
「システムに使用されるタグであって、固有識別子を備え、該識別子をそのまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されている、タグ。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
[一応の相違点]
本願発明19が、「請求項1〜16のいずれかに記載のシステム」に使用されるものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

(2)判断
上記[一応の相違点]について検討すると、本願発明19の「請求項1〜16のいずれかに記載のシステムに使用される」との特定事項は、「タグ」が使用されるシステムの構成を特定するものであるものの、「タグ」自体の構成を特定するものではないから、上記[一応の相違点]は、実質的な相違点とは認められない。
また、仮に、本願発明19の「請求項1〜16のいずれかに記載のシステムに使用される」との特定事項を考慮したとしても、上記(1)イの通り、引用発明の「タグ」がシステムで使用されるものであるといえるのであるから、上記[一応の相違点]は、実質的な相違点とは認められない。
そうすると、本願発明19の発明特定事項は、実質的に、すべて引用発明が備えているから、本願発明19と、引用発明とに差異はない。

4 本願発明20について
上記3(1)に加え、本願発明20と引用発明とを対比すると、
後者の「タグ」は、クラブグリップの端に搭載されたものであるから、前者の「タグ」と後者の「タグ」とは、「スポーツ器具のグリップのまわりに取り付けられる」ものとのとの概念で一致する。
そして、上記3(2)の判断を踏まえれば、本願発明20の発明特定事項は、実質的に、すべて引用発明が備えているといえるから、本願発明20と、引用発明とに差異はない。

5 本願発明21について
上記3(1)及び4に加え、本願発明21と引用発明とを対比すると、
後者の「タグ」は、ボールがゴルフクラブによって打撃されたかどうかを検出するプロセスで使用される複数の半導体または微小電気機械(MEM)センサを含むものであるから、後者の「タグ」は、「スポーツ器具が物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を自動的に収集する」ものといえる。
そして、上記2(6)の通り、引用文献には、引用発明の「タグ」を使用してセンサの出力を記憶する方法が記載されているのであるから、引用発明の「タグ」を使用することは、「スポーツ器具が物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を自動的に収集する」こととなる。
そうすると、本願発明21の発明特定事項は、実質的に、すべて引用発明が備えているから、本願発明21と、引用発明とに差異はない。

請求人は、請求項19及び20は、請求項1〜16に従属し、請求項21は、請求項1〜20に従属したことにより、新規性及び進歩性を備えることとなった主張するが、上記3〜5の通り、請求項20〜22に係る発明は、用途限定によりその構成が特定されるものではなく、また、用途限定を考慮したとしても、引用発明が、クラブ識別情報を備え、打撃を検出するセンサを備えるタグである以上、請求項19〜21で特定される用途に用いることができることは明らかである。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明19〜21は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明19〜21は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 尾崎 淳史
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-03-16 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-06 
出願番号 P2016-563421
審決分類 P 1 8・ 56- Z (A63B)
P 1 8・ 57- Z (A63B)
P 1 8・ 113- Z (A63B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
畑井 順一
発明の名称 ゴルフスイングモニタリングシステム  
代理人 特許業務法人貴和特許事務所  

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