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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
管理番号 1385551
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-15 
確定日 2022-06-17 
事件の表示 特願2018−159749「汚染廃棄物の固化体貯蔵容器3」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日出願公開、特開2019− 49547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月17日に出願した特願2015−44042号(以下「原出願」という。)の一部を平成30年8月10日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和 元年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和 元年12月27日 :意見書・手続補正書
令和 2年 5月14日付け:拒絶査定
令和 2年 7月15日 :審判請求書・手続補正書
令和 3年 9月30日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
令和 3年12月 3日 :意見書・手続補正書

第2 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由
当審拒絶理由通知書の拒絶の理由は、次の内容を含むものである。
1 本願の請求項1に係る発明は、当業者が、本願の発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、廃棄物の保管容器の劣化による有害物質の溶出を防ぐという課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないものであるから、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本願の請求項1に係る発明を、廃棄物の保管容器の劣化による有害物質の溶出を防ぐという課題を解決できるように使用することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 本願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である後記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2014−219375号公報
引用文献2:特開2007−47033号公報(周知例)
引用文献3:特開2000−63077号公報(周知例)

第3 当審の判断
当審は、上記第2の1〜3の理由により、本願は拒絶されるべきものであると判断する。
1 本願発明の認定
本願の請求項に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年12月3日に提出された手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「汚染物質を填めた袋の中に、汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填しながら泡を取込んで固めた、袋を容器の中に填めて、密閉蓋をする第1工程と、該容器を、外側容器内に填めて、該容器の上部から、陶磁器粉末を充填し、密閉蓋した第2工程と、該外側容器の外側面に、絶縁銅線コイルを巻き付けた、該外側容器の全面に炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れか一つ以上のシートを、貼り付けたシートの外側に、コイルの端を取り出し、電極板、磁極板バンドで装着する第3工程から成る該外側容器を、保管施設内に填めた隙間に、石炭灰、ゼオライト、粘土、石膏の何れか1つ以上の混練物を充填し、トンネル及び保管施設内を密閉し固めたことを特徴とする、 構造体。」

2 サポート要件違反及び実施可能要件違反
(1)本件補正後の本願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)の記載
本願明細書等には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【技術分野】」、
「本発明は、重金属を含む有害汚染物質、汚染焼却灰及び汚染除洗水廃棄物の処理及び保管に関する。」(【0001】)

イ 「【背景技術】」、
「従来、重金属を含む有害汚染焼却灰及び除洗水廃棄物の処理及び保管方法としては、ドラム缶内にセメント材と混練物で固め、地中に埋設され膨大な中間処理施設及び最終貯蔵施設が求められている。また、ガラス固化体の地層処分に際しては、地層処分の行われる深地下の環境条件下においては相当の耐食性を有する炭素鋼製の厚肉容器(オーバーパック)にガラス固化体を収納密封し、その全面を緩衝材と呼ばれる材料(現在の計画における緩衝材材料の候補は、ベントナイトと呼ばれる一種の粘土である)で厚く覆うことが計画されている。」(【0002】)

ウ 「【発明が解決しようとする課題】」、
「従来の処理方法では、最終的に地下保管貯蔵しなければならないが、大量廃棄物を保管する物理的土地の確保と施設の限界があり、また、容器及び一体固化物の劣化による溶出問題がある。その原因は、保管容器内外の腐食浸食による一体固化物の劣化等による溶出問題があり、また、固型化容器の容積は容器に応じて定まっているので、汚染廃棄物及び放射性廃棄物の充填量が多くなると、汚染廃棄物及び放射性廃棄物以外の再資源として利用する部材の固化材および混練に必要な混練物の水分量の割合が多くなり、固化後の劣化及び腐食溶出原因になり、また、容器腐食による液漏れを防止できない。・・・」(【0003】)、
「この発明の目的は、最終的な廃棄物量の低減と廃棄物の保管容器の劣化による有害物質の溶出を防ぎ、また事前に液漏れ防止することができる。また、汚染廃棄物の処理及び保管方法を提供することにある。」(【0004】)

エ 「【課題を解決するための手段】」、
「上記目的を達成するため、請求項1の発明は、汚染物質及び重金属物質を含む汚染された除洗水の中に、汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填し、容器又は袋内で固める第1工程。又、袋詰めした汚染物質を容器内に填める第1工程。次に容器を密閉蓋し、該、別容器内に填めて、固定させた容器上部から、陶磁器粉末を、該、容器内に充填し密閉蓋する第2工程。更に、該外側容器の外側面に、絶縁銅線コイルを巻き付けた、該外側容器の全面に炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れか一つ以上のシートを、貼り付けたシートの外側に、コイルの端を取り出し、電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着した、第3工程から成る該外側容器を、保管施設内に填めた隙間に、石炭灰、ゼオライト、粘土、石膏の何れか1つ以上の混練物を充填し、トンネル及び保管施設内を密閉し固める、構造体を提供する。第4工程。」(【0005】)、
「この請求項1の発明は、重金属物質及び汚染焼却灰及び汚染した除洗水の拡散を防ぎ固定させる。また、汚染除洗水廃棄物を40度から60度に加熱し、その中に石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及び粘土、石膏、セメントを含む改良材に、動物性油脂又は植物性油脂の中に、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、ケイ酸化カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメントを適宜に填めて、掻き混ぜて乾燥させながら粒粉末状にし、重金属物質及び汚染焼却灰の表面をコーティング固化する第1の工程。それにより、常温度水では溶けなくする。」(【0006】)、
「また、第1の工程で固化した固形物を密閉できる袋内に充填し、保管容器内に填めて腐食及び劣化防止と固化物の劣化を防ぐ保管目的で、地上及び地中又は、深海等の保管目的場所に応じ、貯蔵容器内側及び容器外側に、絶縁コイルを巻き付けたコイルの両端を容器に装着する第2工程で、電極板、磁極板を装着させた容器にする。また、容器外側に、絶縁銅線コイルを巻き付け塩化ビニール樹脂、パラフィン、スチロール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂で、炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れか一つ以上のシートを、貼り付けて、絶縁防水にされた外側に電極を取り出し、電極板又はその一端が、銅板及び真鍮、銀板に他端が鉄板、アルミ、ニッケル板乃至亜鉛板に接続配置された第3工程の保管容器にする。」(【0007】)、
「該、別容器内に、第2工程の容器を填めて、容器下部に約15cmの隙間を空かし容器中央部に設置する。容器上部から、改良材原料、石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及び粘土、石膏、セメントを含む改良材に、水を充填し混練物にして固め、上蓋した密閉容器の側面部の外側に、絶縁コイルの両端に電極板を接続し巻き付けた、コイルの両端を接続し装着すると共に、使用用途に応じて電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着した、電極及び磁極を備えた固化体貯蔵容器と成る第3工程。」(【0008】)、
「また、第1工程から第3工程までの工程作業から、容器及び容器内の重金属及び汚染物質を、大気及び外部に拡散しない。その結果、容器保管過程で、腐食を防止する安全対策として、固化体貯蔵容器及び複数の固化体貯蔵容器同士の電極板又は、磁極板バンド又は弾力締付け金具で装着した、固化体貯蔵容器の外側に、炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れかの一つ以上のシートを容器に貼り付けたことで、放射線の遮断と反射及び溶出を防ぎ、また、重金属及び汚染物質を分解する微生物及びカビ、菌類が付着する第4工程。」(【0009】)

オ 「【発明を実施するための形態】」、
「以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。」(【0010】)、
「〔第1の実施の形態〕
この発明は、原子力発電所の事故に係る瓦礫処理から大量発生した汚染焼却灰と除洗水を軽減させるものである。又、重金属を含む汚染焼却灰と除洗水廃棄物処理方法の第1工程の実施形態の処理工程を示す。この第1工程の実施の形態は、原子力発電所事故と大津波にできた瓦礫を焼却した時の焼却灰及び放射能除洗水を処理する方法である。図1に、この第1の実施の形態は、重金属を含んだ汚染焼却灰と洗浄水及び汚染水の封じ込め策として、例100L容器内に汚染した洗浄水を填めた中に、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、鉄粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全てを入れて攪拌する第1工程で、冬場の常温水の場合反応がやや遅いが、加熱器で約45〜約65度に設定してやると作業工程が短縮するとともに、袋詰めした汚染物質を容器内に填める第1工程。」(【0011】)、


」、
「尚、上記第1,第2,第3の実施形態の第1工程において、自然乾燥又は、加熱乾燥させているときに、汚染水から発生する有害な放射性物質を含んだガスは、水面に混合物から発生する気泡及び泡内に閉じこめる。また、泡と気泡で水表面を蓋してガスが大気中に拡散しない。また容器内に、袋を設けた袋内に混合物を充填し固める方法で、大気中に汚染ガスを拡散させることなく、水分を取り除いた有害な放射性物質を取込んだ粒状粉のみになる方法。又は容器内に、固形物を密閉できる袋内に混合物を充填し固める第3工程。」(【0012】)、
「次に、図2に、この第2の実施の形態は、例100L容器外側に電極板又は磁極板に接続した絶縁コイルを巻き付けた、固化体貯蔵容器に炭化繊維と炭素繊維又は、炭化繊維乃至炭素繊維に薄板状の光沢アルミ箔、光沢鉛箔、光沢ステンレス箔、光沢クロム箔で貼り合わせたシートで包み込んだことで、放射線を反射遮断する第2工程で、地中及び海中に保管施設使用条件目的が異なる場合は、図4のアルミ・銅・亜鉛の電極板と、磁性帯金属を締め目付バンド又は、弾力締付け金具を取付ける電流、磁性帯装着を内側と外側と交換することができる。」(【0013】)、


」、
「次に、図3に、この第3の実施の形態は、該、例200L別容器内に、第2工程、例100L容器を填めて、該、別容器下部底から10cm乃至15cmの隙間を設けて容器中央部に設置する。容器上部から、改良材の一つに石炭灰、ゼオライト及び粘土、石膏、セメントの適宜量の混練物を、該、ドラム缶内に充填し固める第3工程。」(【0014】)、


」、
「次に、図4に、この第4の実施の形態は、該、別容器の上蓋した密閉容器側面の外側に、磁性帯鉄板又は、アルミ板の電極板と、磁性帯金属を締め付けバンド又は、弾力締付け金具を装着することにより、電極及び磁極を備えた固化体貯蔵容器と成る第4工程。」(【0015】)、


」、
「次に、図5の実施の形態は、該、筒状の底上蓋付きの鋼管容器内に、複数の固化体貯蔵容器を、縦又は横方向の電極同士又は、磁極同士の連結接続保管ができる。また、その上から、外側に炭化繊維に光沢アルミ箔、光沢鉛箔、光沢ステンレス箔、光沢クロム箔で貼り合わせたシートで包み込んだことで放射線を遮断し、最終的には地下縦抗および横抗の保管に填める方法又は、施設貯蔵内で封印する。」(【0016】)、




カ 「【発明の効果】」、
「従来の処理方法では、大量廃棄物を保管する物理的土地の確保と施設の限界があり、また、容器及び一体固化物の劣化による溶出問題がある。その原因は、保管容器内外の腐食浸食による一体固化物の劣化等による溶出問題であり、また、固化容器の容積は容器に応じて定まっているので、汚染廃棄物及び放射性廃棄物の充填量が多くなると、汚染廃棄物及び放射性廃棄物以外の固化材および混練に、必要な混練物の水分量の割合が多くなり、固化後の劣化及び腐食溶出原因であったが、本発明は汚染水を蒸発させる時に、水面に泡を発生させて、放射線ガスを封じ込め固めながらガスを蓋することでガスの放出を防ぎ、大気汚染を防ぐとともに、溶質防止効果がある。また、固形物を密閉できる袋内に混合物を充填し固める方法とか。また、固化体貯蔵容器内に、袋詰めした汚染物質を填めて、密閉蓋した容器の安全対策として、該外側容器の側面部の外側に、絶縁コイルの巻き付け又は、電極板又は磁極板のバンド又は弾力締付け金具で装着し、更に、外側容器の外側全面に、炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れかの一つ以上のシートを、容器に貼り付けた該容器を、縦横坑やトンネル及び保管貯蔵施設内に、該外側容器を填めた隙間に、石炭灰、ゼオライト、粘土、石膏の何れか1つ以上の混練物を充填し固めて密閉し、自然界との隔離が可能になる構造体を提供する。」(【0017】)

キ 「【符号の説明】」、
「1.攪拌機 2.容器 3.混練物 4.電極板
5.コイル 6.成型物 7.外側容器 8.上蓋バンド
9.電極バンド 10.弾力締付け金具 11.筒状管 12.締付ボルトナット
13.地面 14.締付バンド 15.接続金具 16.鉛箔
17.ステンレス箔 18.アルミ箔 19.炭素繊維 20.固化体容器
21.地下保管施設 22.取入れ口」(【0019】)

(2)本願発明の技術的特徴
上記(1)によれば、本願発明の技術的特徴は、概ね次のとおりであると認められる。
なお、本願の発明の詳細な説明に記載された「第1工程」〜「第4工程」は、その意味する内容に一貫性がない部分があり、本願発明で特定された「第1工程」〜「第3工程」の内容とも整合していない部分があるが、大まかには、本願発明の「第1工程」が発明の詳細な説明に記載された「第1工程」(例えば、【0006】・【0011】・【0012】・図1)に対応し、本願発明の「第2工程」が発明の詳細な説明に記載された「第3工程」(例えば、【0014】・図3)に対応し、本願発明の「第3工程」が発明の詳細な説明に記載された「第4工程」(例えば、【0015】・図4)に対応するものといえる。

ア 本願発明は、重金属を含む有害汚染物質、汚染焼却灰及び汚染除洗水廃棄物の処理及び保管に関するものである。(【0001】)

イ 従来の重金属を含む有害汚染焼却灰及び除洗水廃棄物の処理及び保管方法は、これらの廃棄物等をドラム缶内においてセメント材と混練物で固めた上で、地中に埋設するものであったが、大量の廃棄物を保管するための土地及び施設の確保に限界があり、また、容器及び一体固化物が劣化することによる溶出問題がある。固型化容器の容積は容器に応じて定まっているので、汚染廃棄物及び放射性廃棄物の充填量が多くなると、汚染廃棄物及び放射性廃棄物以外の再資源として利用する部材の固化材および混練に必要な混練物の水分量の割合が多くなって、固化後の劣化及び腐食溶出原因になり、また、容器腐食による液漏れを防止できない。(【0002】・【0003】)

ウ そこで、本願発明は、最終的な廃棄物量の低減と廃棄物の保管容器の劣化による有害物質の溶出を防ぎ、また事前に液漏れを防止することや、汚染廃棄物の処理及び保管方法を提供することを目的とするものである。(【0004】)

エ 本願発明は、その特定された第1工程により、重金属物質及び汚染焼却灰の表面をコーティング固化して、常温度水では溶けなくする。また、これらの物質は、水分を取り除いた有害な放射性物質を取込んだ粒状粉のみになる。
自然乾燥又は加熱乾燥させているときに汚染水から発生する有害な放射性物質を含んだガスは、混合物から発生する気泡及び泡内に閉じこめられるとともに、泡と気泡で水表面が蓋されることになるので、大気中に拡散しない。(【0006】・【0012】・【0017】)

オ 本願発明は、その特定された第1工程から第3工程までの工程作業により、容器及び容器内の重金属及び汚染物質を、大気及び外部に拡散させないことが可能である。本願発明で特定された第3工程により、容器保管過程で腐食を防止する安全対策をして、放射線の遮断と反射及び溶出を防ぐことができる。炭化繊維、光沢アルミ箔、光沢鉛箔、光沢ステンレス箔、光沢クロム箔を貼り合わせたシートで包み込んだことにより、放射線を遮断することができる。(【0005】・【0009】・【0016】・【0017】)

(3)判断
ア サポート要件違反について
(ア)特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(イ)これを本願発明についてみると、本願発明が解決しようとする課題は、上記(2)イによれば、容器及び一体固化物の劣化による有害物質の溶出(以下「本件課題」という。)を含むものであり、それを解決する手段は、同オによれば、本願発明で特定された第3工程のうち、外側容器の外側面に絶縁銅線コイルを巻き付け、その端に電極板、磁極板バンドを装着すること(以下「本件課題解決手段」という。)を含むものと認められる。そして、本件課題解決手段により本件課題を解決する原理は、同オによれば、容器保管過程で腐食を防止することにあるようである。
しかしながら、本願明細書等は、ここでいう腐食が具体的にどのようなものであるのかを記載していない。また、本願明細書等は、本件課題解決手段により腐食が防止できる原理を説明していないし、その説明がなくともその原理が理解できるといえるだけの技術常識が存在するとも認められない。その上、本願明細書等には、実施例による裏付けも存在しない。
よって、当業者であっても、本願明細書等の記載及び技術常識に照らして、本件課題解決手段によって本件課題を解決できると認識できるとはいえない。

(ウ)したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、本願発明に係る請求項1の記載はサポート要件を満たしていない。

実施可能要件違反について
上記アで説示したとおり、当業者であっても、本願明細書等の記載及び技術常識に照らして、本件課題解決手段により本件課題を解決できることを認識できるとはいえないから、本件課題解決手段に係る特定事項を備える本願発明が、本件課題を解決できるという作用効果を奏することを理解できるともいえず、よって、本願発明は、当該作用効果を奏するものとして使用することができるとはいえない。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、当該記載は実施可能要件を満たしていない。

進歩性欠如について
(1)引用発明1の認定
ア 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由通知において引用された引用文献1(特開2014−219375号公報)には、次の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様。)。
(ア)「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水を填めた容器の中に、再資源として利用する部材である改良剤に、動物性油脂、又は植物性油脂に、ゼラチン、澱粉、及びセメントに水を適宜に填めた混合物を、掻き混ぜながら気泡を取込んだ粒粉末状に固め、密閉蓋した該容器の外側に、電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着し、外側容器内に該容器を填めた上部から、改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物を、攪拌混練物にし固め密閉した、該外側容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続し巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した脇に、エヤーを詰めた金属性のタンクに圧力調整弁に音声管を装着した貯蔵容器に、アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込んだ、固化体貯蔵容器」(【請求項1】。当審注:「該外側容器内に該容器を填めた上部から」の「該外側容器」は「外側容器」の明らかな誤記であると認められるので、誤記を正した上で摘記した。)、
「汚染物質を含む焼却灰又は、汚染水を填めた容器の中に、再資源として利用する部材である、改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物を、攪拌混練物にし固め、密閉蓋した該容器の外側に、電極板、又は磁極板バンド弾力締付け金具を装着し、該外側容器内に該容器を填めて、密閉した該容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は磁極板に接続し、巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を点灯又は過熱体に接続した片側に、エヤーを詰めた金属性のタンク及び圧力調整弁に音声管を装着した貯蔵容器にアルミ箔を貼り付けたシートで包み込んだ、 固化体貯蔵容器」(【請求項2】)、
「汚染物質を含む焼却灰又は、汚染水を填めた容器の中に、再資源として利用する部材である、改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物を、攪拌混練物にし固め、密閉蓋した該容器の外側に、電極板、又は磁極板バンド弾力締付け金具を装着した貯蔵容器に、アルミ箔を貼り付けたシートで包み込んだ、 固化体貯蔵容器」(【請求項3】)、
「上記、[請求項1]〜[請求項3]のいずれか1項に記載の固化体貯蔵容器の外側面方向から縦向き、又は横向き径方向に延びた、複数の固化体貯蔵容器で、電極同士又は、磁極同士で連結接続した貯蔵容器に、アルミ箔を貼り付けたシートで包み込んだ、 固化体貯蔵容器。」(【請求項4】)

(イ)「【技術分野】」、
「この発明は、重金属を含む有害汚染物質、汚染焼却灰及び汚染除洗水廃棄物の廃棄物の処理及び保管に関する。」(【0001】)

(ウ)「【背景技術】」、
「従来、重金属を含む有害汚染焼却灰及び除洗水廃棄物の処理及び保管方法としては、ドラム缶内にセメント材混練物にし固めて、地中に埋設され膨大な中間処理施設及び最終貯蔵施設が求められている。」(【0002】)

(エ)「【発明が解決しようとする課題】」、
「従来の処理方法では、最終的に地下貯蔵しなければならないが、大量廃棄物を保管する物理的土地の確保と施設の限界があり、また、容器及び一体固化物の劣化による溶出問題がある。その原因は、保管容器内外の腐食浸食による一体固化物の劣化等による溶出問題があり、また、固型化容器の容積は容器に応じて定まっているので、汚染廃棄物及び放射性廃棄物の充填量が多くなると、汚染廃棄物及び放射性廃棄物以外の再資源として利用する部材の固化材および混練に必要な混練物の水分量の割合が多くなり、固化後の劣化及び腐食溶出原因になり、また、容器腐食による液漏れを感知できない。・・・」(【0003】)、
「この発明の目的は、最終的な廃棄物量の低減と廃棄物の保管容器の劣化による有害物質の溶出を防ぎ、また事前に液漏れ感知を知ることができる。また再資源として利用する部材であって、汚染廃棄物の処理及び保管方法を提供することにある。」(【0004】)

(オ)「【課題を解決するための手段】」、
「上記目的を達成するため、請求項1の発明は、汚染物質及び重金属物質を含む汚染された焼却灰及び除洗水の中に、再資源として利用する部材である石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂及びセメントを含む改良剤に、動物性油脂、又は植物性油脂に、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、及びセメントに水を適宜に填めた混合物を、攪拌混練物にし固める第1の工程、電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着した、第2工程。この電流及び磁性帯容器を、該、別容器内に填めて、固定させた容器上部から、改良剤にゼオライト及びセメント、水の攪拌混練物を、該、容器内に充填し固めて密閉蓋し固める第3工程。密閉した該外側容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続し巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した片側に、エヤーを詰めた圧力調整弁出口管に音声管機能を設けた金属性タンクを取付け 点灯音声管機構付きにした、固化体貯蔵容器が点灯又は、発光音声管機構付き容器に固化体貯蔵容器を、アルミ箔を貼り付けたシートで包み込みをする第4工程。」(【0005】)、
「この請求項1の発明は、重金属物質及び汚染焼却灰及び汚染した除洗水の拡散を防ぎ固定させる。また、汚染除洗水廃棄物を40度から60度に加熱し、その中に再資源として利用する部材である石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメントを含む改良剤に、動物性油脂又は植物性油脂の中に、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、ケイ酸化カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメントを適宜に填めて、掻き混ぜて乾燥させながら粒粉末状にし、重金属物質及び汚染焼却灰の表面をコーティング固化する第1の工程。それにより、常温度水では溶けなくする。」(【0006】)、
「次に保管容器の腐食劣化防止と固化物の劣化を防ぐ目的で、地中又は、深海等の保管目的場所に応じて、貯蔵容器内側及び容器外側に、容器外側に電極板に接続した絶縁コイルを巻き付けたコイル中央部に、電球体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続し、点灯機構付き容器に装着する第2工程で、電流、磁性帯、電球体を装着させた容器にする。また、容器外側に、絶縁銅線コイルを巻き付け塩化ビニール樹脂、パラフィン、スチロール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂で絶縁防水された外側に電極を取り出し、その一端が、銅板及び真鍮、銀板に他端が鉄板、アルミ、ニッケル板乃至亜鉛板に接続配置された第2工程の保管容器にする。」(【0007】)、
「該、別容器内に、第2工程の容器を填めて、容器下部に約15cmの隙間を空かし容器中央部に設置する。容器上部から、改良剤原料、石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメントを含む改良剤に、水を充填し混練物にして固め、上蓋した密閉容器の側面部の外側に、絶縁コイルの両端に電極板を接続し巻き付けコイル中央部に、電球体に絶縁体金具を設けた機構付き装置に、コイルの両端を接続し装着すると共に、使用用途に応じて電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着した、電極及び磁極を備えた固化体貯蔵容器と成る第3工程。」(【0008】)、
「また、第1工程から第3工程までの工程作業から、容器及び容器内に陰イオン弱電流及び磁場圧が発生し、陽イオン分子及びイオン電子である重金属及び汚染物質を引付け、大気及び外部に拡散しない。その結果、容器保管過程で、腐食を防止しながら、安全対策として容器腐食を想定し中で、電球体の点灯又は、発光音声管機構付き容器装置で液漏れによる加磁極及び加電流の異常を感知し、電球体で点灯及び発光音にさせることで外部に知らせる。また、電球体及び過熱体の点灯及び発光音声管の光源電球は、LED蛍光灯又はLED電球、又は従来の蛍光灯、白熱電球、フラメント電球等を使用することできることで、耐久性の延伸及び加電流にも対応できる。また、容器の外側に固化体貯蔵容器にアルミ箔を貼り付けた塩ビ又は布シートで包み込み、放射線の遮断と溶出を防ぎ、また、重金属及び汚染物質を分解する微生物及びカビ、菌類が付着する第4工程。」(【0009】)

(カ)「〔第1の実施の形態〕」、
「この発明は、原子力発電所の事故に係る瓦礫処理から大量発生した汚染焼却灰と除洗水を軽減させるものである。又、重金属を含む汚染焼却灰と除洗水廃棄物処理方法の第1工程の実施形態の処理工程を示す。この第1工程の実施の形態は、原子力発電所事故と大津波にできた瓦礫を焼却した時の焼却灰及び放射能除洗水を処理する方法である。図1に、この第1の実施の形態は、重金属を含んだ汚染焼却灰と洗浄水及び汚染水の封じ込め策として、例100L容器内に、汚染した洗浄水4割、焼却灰2割、改良剤2割、動物性油脂、又は植物性油脂に1割、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉に、カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメント、1割を適宜に配分し入れて攪拌する。冬場の常温水の場合反応がやや遅いが、加熱器で約45〜約65度に設定してやると作業工程が短縮する。第1工程。」(【0011】)、
「【図1】

」、
「尚、上記第1,第2,第3の実施形態の第1工程において、自然乾燥又は、加熱乾燥させているときに、汚染水から発生する有害な放射性物質を含んだガスは、水面に混合物から発生する気泡及び泡内に閉じこめて、また、泡と気泡で水表面を蓋してガスが大気中に拡散しない。また、大気中に汚染ガスを拡散させることなく、水分を取り除いた有害な放射性物質を取込んだ粒状粉のみになる。」(【0012】)、
「次に、図2に、この第2の実施の形態は、例100L容器外側に電極板又は磁極板に接続した絶縁コイルを巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱器に絶縁体金具を設けた装置にコイルの両端を接続した片側に、エヤーを詰めた圧力調整弁出口管に音声管機能を取付けた金属性タンクを取付けた点灯発光音声管機構付き、固化体貯蔵容器にアルミ箔を貼り付けた塩ビ又は布シートで包み込み、放射線を反射遮断する第2工程で、地中及び海中に保管施設使用条件目的が異なる場合は、図4のアルミ・銅・亜鉛の電極板と、磁性帯金属を締め目付バンド又は、弾力締付け金具を取付ける電流、磁性帯装着を内側と外側と交換することができる。」(【0013】)、
「【図2】

」、
「次に、図3に、この第3の実施の形態は、該、例200L別容器内に、第2工程、例100L容器を填めて、該、別容器下部底から10cm乃至15cmの隙間を設けて容器中央部に設置する。容器上部から、改良剤にゼオライト及びセメント、水の適宜量の混練物を、該、ドラム缶内に充填し固める第3工程。」(【0014】)、
「【図3】

」、
「次に、図4に、この第4の実施の形態は、該、別容器の上蓋した密閉容器側面の外側に、磁性帯鉄板又は、アルミ板の電極板と、磁性帯金属を締め付けバンド又は、弾力締付け金具を装着することにより、電極及び磁極を備えた最終点灯機構付き固化体貯蔵容器と成る第4工程を備えることを特徴とする。」(【0015】)、
「【図4】

」、
「次に、図5の実施の形態は、該、筒状の底上蓋付きの鋼管容器内に、複数の固化体貯蔵容器を、縦又は横方向の電極同士又は、磁極同士の連結接続保管ができる。また、その上から、アルミ箔を貼り合わせた塩ビ又は布及び紙のシートで包みことで、放射線を遮断する。」(【0016】)、
「【図5】



(キ)「【発明の効果】」、
「従来の処理方法では、大量廃棄物を保管する物理的土地の確保と施設の限界があり、また、容器及び一体固化物の劣化による溶出問題がある。その原因は、保管容器内外の腐食浸食による一体固化物の劣化等による溶出問題であり、また、固型化容器の容積は容器に応じて定まっているので、汚染廃棄物及び放射性廃棄物の充填量が多くなると、汚染廃棄物及び放射性廃棄物以外の固化材および混練に必要な混練物の水分量の割合が多くなり、固化後の劣化及び腐食溶出原因にであったが、本発明は汚染水を蒸発させる時に、水面に気泡及び泡を発生させて、放射線ガスを封じ込め固めながらガスを蓋することでガスの放出を防ぎ、大気汚染を防ぐ。また、コーティング乾燥粒粉状にすることで、直接常温水に触れても溶け難くするコーティングをし、溶質防止効果があり、また、密閉容器充填し、容器に絶縁コイルを巻くことで、イオン電子を陽イオン物質及び陰イオン物質を電極板及び磁極板を通すことで、電子イオン帯及び陽イオン物質及び陰イオン物質の干渉帯及び電子分子の共鳴帯を構成させて、重金属物質及び汚染物質、セシュウムを封印しながら、電極板又は磁極板に接続した絶縁コイルを巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した片側に、エヤーを詰めた圧力調整弁の金属性タンクを取付けた点灯発光音声管機構付きにすることにより、容器内の腐食による液漏れを光と音で確認する。また、電子エネルギー及び熱エネルギーによる電球帯点灯発光音声管機構付き容器にアルミ箔を貼り合わせたシートで包み込むことで、放射線を封じ込めて、自然界から分離し安全に保管する。更に該、別容器内に填めて、該容器と該、外側容器の隙間にコンクリート部材で固めることで、耐久性と安全性を強化し、密閉蓋した該容器の側面部の外側に、電極板又は磁極板をバンド又は弾力締付け金具を装着することで、固化体貯蔵容器と、外部容器及び内部容器内のコイル内の電極及び磁場電解層の干渉帯を形成し、イオン電子を電気エネルギーにして、電極板及び磁極板に伝えて、コイル内の汚染物質及び重金属、セシュウム、陽イオン電子を容器中心部に引き付けて、外部漏れを防ぐことと、コイル中央部に、電球体および過熱体に絶縁体金具を設けた装置にコイルの両端を接続し装着しすることで、容器からの液漏れによる加電流及び加磁場を感知し、電極体はLED蛍光灯又はLED電球で、点灯発光及び熱エネルギーでエヤーを詰めた調整弁付きタンクを過熱させることで、一定圧力になると、エヤーを放出して、点灯発光音声管機構付き装置になり、外部に光とエヤー音で液漏れを知らせる。また、点灯機構付き固化体貯蔵容器を、アルミ箔を貼り合わせたシートで包み、また、施設内及び筒状の鋼管パイプ内に納めて連結接続することにより、筒状及びトンネル状の保管施設が可能になり、鋼管及びコンクリート施設の外部に、有害物質及び汚染物質セシュウムを分解する微生物及びカビ、菌類を引き付けて繁殖させることで、有害物質及び汚染物質漏れを防ぐバリアになりながら食物連鎖の中で、自然界との隔離を計りながら、適切な汚染物質処理及び固化物の劣化による廃液漏れ防止機能を効果的に発揮させて、地上及び地中に縦横坑及び深海で連結接続保管ができる。又、製造と保管、安全管理が容易で安価に施工できる。」(【0017】)

イ 引用発明1の認定
上記アの各記載事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(参考までに、認定の根拠となる段落番号等を括弧内に記載してある。)。
「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水を填めた容器の中に、再資源として利用する部材である改良剤に、動物性油脂、又は植物性油脂に、ゼラチン、澱粉、及びセメントに水を適宜に填めた混合物を、掻き混ぜながら気泡を取込んだ粒粉末状に固め、密閉蓋した該容器の外側に、電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着し、外側容器内に該容器を填めた上部から、改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物を、攪拌混練物にし固め密閉した、該外側容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続し巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した脇に、エヤーを詰めた金属性のタンクに圧力調整弁に音声管を装着した貯蔵容器に、アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込んだ、固化体貯蔵容器であって、(【請求項1】)
前記固化体貯蔵容器は、
汚染物質及び重金属物質を含む汚染された焼却灰及び除洗水の中に、再資源として利用する部材である石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂及びセメントを含む改良剤に、動物性油脂、又は植物性油脂に、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、及びセメントに水を適宜に填めた混合物を、攪拌混練物にし固める第1工程であって、(【0005】)、
再資源として利用する部材である石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメントを含む改良剤に、動物性油脂又は植物性油脂の中に、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、ケイ酸化カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメントを適宜に填めて、掻き混ぜて乾燥させながら粒粉末状にし、重金属物質及び汚染焼却灰の表面をコーティング固化し、(【0006】)
例100L容器内に、汚染した洗浄水4割、焼却灰2割、改良剤2割、動物性油脂、又は植物性油脂に1割、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉に、カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメント、1割を適宜に配分し入れて攪拌し、(【0011】)
自然乾燥又は、加熱乾燥させているときに、汚染水から発生する有害な放射性物質を含んだガスは、水面に混合物から発生する気泡及び泡内に閉じこめて、また、泡と気泡で水表面を蓋してガスが大気中に拡散せず、また、大気中に汚染ガスを拡散させることなく、水分を取り除いた有害な放射性物質を取込んだ粒状粉のみになり、(【0012】)
汚染水を蒸発させる時に、水面に気泡及び泡を発生させて、放射線ガスを封じ込め固めながらガスを蓋することでガスの放出を防ぎ、大気汚染を防ぐ、(【0017】)
第1工程と、
電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着した、第2工程と、(【0005】)
この電流及び磁性帯容器を、該、別容器内に填めて、固定させた容器上部から、改良剤にゼオライト及びセメント、水の攪拌混練物を、該、容器内に充填し固めて密閉蓋し固める第3工程であって、(【0005】)
改良材は、改良剤原料、石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメントを含み、(【0008】)
例200L別容器内に、第2工程、例100L容器を填めて、別容器下部底から10cm乃至15cmの隙間を設けて容器中央部に設置し、容器上部から、改良剤にゼオライト及びセメント、水の適宜量の混練物を、該、ドラム缶内に充填し固める(【0014】)、
第3工程と、
密閉した該外側容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続し巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した片側に、エヤーを詰めた圧力調整弁出口管に音声管機能を設けた金属性タンクを取付け 点灯音声管機構付きにした、固化体貯蔵容器が点灯又は、発光音声管機構付き容器に固化体貯蔵容器を、アルミ箔を貼り付けたシートで包み込みをする第4工程であって、(【0005】)、
該、別容器の上蓋した密閉容器側面の外側に、磁性帯鉄板又は、アルミ板の電極板と、磁性帯金属を締め付けバンド又は、弾力締付け金具を装着することにより、電極及び磁極を備えた最終点灯機構付き固化体貯蔵容器と成る第4工程と、(【0015】)
により構成された固化体貯蔵容器であり、
前記固化体貯蔵容器を、
施設内及び筒状の鋼管パイプ内に納めて連結接続することにより、筒状及びトンネル状の保管施設が可能になる、(【0017】)
施設。」

(2)本願発明と引用発明1との対比
ア 本願発明の「汚染物質を填めた袋の中に、汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填しながら泡を取込んで固めた、袋を容器の中に填めて、密閉蓋をする第1工程と、」との特定事項について
(ア)引用発明1に係る「施設」に用いられる「固化体貯蔵容器」は、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水を填めた容器の中に、再資源として利用する部材である改良剤に、動物性油脂、又は植物性油脂に、ゼラチン、澱粉、及びセメントに水を適宜に填めた混合物を、掻き混ぜながら気泡を取込んだ粒粉末状に固め」、「該容器」を「密閉蓋」することを含むものであって、この内容は引用発明1の「第1工程」に係るものであると解されるところ、これを工程の観点でさらに詳細にみると、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水を填めた容器の中に、再資源として利用する部材である改良剤に、動物性油脂、又は植物性油脂に、ゼラチン、澱粉、及びセメントに水を適宜に填めた混合物を、掻き混ぜながら気泡を取込んだ粒粉末状に固め」る工程(以下「工程1」という。)と、「該容器」を「密閉蓋」する工程(以下「工程2」という。)とを備えていることになる。
そして、工程1は、「容器の中」において「粒粉末状に固め」て生成された物を得るものといえるところ、当該「粒粉末状に固め」て生成された物は、認定された引用発明1によれば、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水」(【請求項1】)と「石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメントを含む改良剤」(【0005】・【0006】)と「動物性油脂又は植物性油脂」(【請求項1】・【0005】・【0006】)と「ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、ケイ酸化カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメント」(【0006】)と「水」(【請求項1】・【0005】)とを「適宜に填めた混合物」(【請求項1】・【0005】)を、「掻き混ぜながら気泡を取込ん」(【請求項1】)で「攪拌混練物」(【0005】)にし「固め」(【請求項1】・【0005】)て生成された物であると認められる。

(イ)引用発明1の「汚染物質」は本願発明の「汚染物質」に相当し、以下同様に、引用発明1の「汚染水」は本願発明の「汚染水」に、引用発明1の「動物性油脂」は本願発明の「動物性油脂」に、引用発明1の「植物性油脂」は本願発明の「植物性油脂」に、引用発明1の「ゼラチン」は本願発明の「ゼラチン」に、引用発明1の「納豆」は本願発明の「納豆」に、引用発明1の「蒟蒻」は本願発明の「蒟蒻」に、引用発明1の「寒天」は本願発明の「寒天」に、引用発明1の「澱粉」は本願発明の「澱粉」に、引用発明1の「カーバイド」は本願発明の「カーバイド」に、引用発明1の「苛性ソーダ粉末」は本願発明の「苛性ソーダ粉末」に、引用発明1の「攪拌混練物」は本願発明の「混練物」に、引用発明1の「容器」は本願発明の「容器」に、それぞれ相当する。

(ウ)引用発明1の「容器の中」に存在する「粒粉末状に固め」て生成された物(上記(ア)の工程1で生成された物)は、本願発明の「袋の中」に填められている「汚染物質」に「汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填しながら泡を取込んで固めた」ものとは、汚染された物を「混練物」にし「固め」たものである点で共通する。

(エ)本願発明の「第1工程」と引用発明1の「第1工程」とは、上記(ア)の工程2によれば、「容器」に対して「密閉蓋をする」点で共通する。

(オ)以上によれば、本願発明と引用発明1とは、汚染された物を「混練物」にし「固め」たものが中に存在する「容器」に対して「密閉蓋をする第1工程」を備える点で一致する。

イ 本願発明の「該容器を、外側容器内に填めて、該容器の上部から、陶磁器粉末を充填し、密閉蓋した第2工程と、」との特定事項について
(ア)引用発明1に係る「施設」に用いられる「固化体貯蔵容器」は、「密閉蓋した該容器の外側に、電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着し、外側容器内に該容器を填めた上部から、改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物を、攪拌混練物にし固め」、「該外側容器」を「密閉」することを含むものであって、この内容は引用発明1の「第2工程」及び「第3工程」に係るものであると解されるところ、これを工程の観点でさらに詳細にみると、「密閉蓋した該容器の外側に、電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着」する工程(以下「工程3」という。)と、「該容器」を「外側容器内に」「填める」工程(以下「工程4」という。)と、「外側容器内に該容器を填めた上部から、改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物を、攪拌混練物にし固め密閉」する工程(以下「工程5」という。)とを備えていることになる。
そして、認定された引用発明1によれば、工程5で用いられる「改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物」は、「改良剤原料、石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメント」(【0008】)を含むものであり、また、当該工程5は、当該混合物を「容器内に充填し固めて密閉蓋し固める」(【0005】)ことを含むものと認められる。

(イ)引用発明1の「外側容器」は、本願発明の「外側容器」に相当する。

(ウ)引用発明1の「陶磁器」(上記(ア)のとおり、工程5で用いられる「改良剤にゼオライト及びセメントを填めた混合物」の中に含まれている。)と本願発明の「陶磁器粉末」とは、陶磁器構造体である点で共通する。

(エ)上記(ア)の工程4及び5をも考慮すれば、本願発明と引用発明1とは、「該容器を、外側容器内に填めて、該容器の上部から、」陶磁器構造体を「充填し、密閉蓋した第2工程」を備える点で一致する。

ウ 本願発明の「該外側容器の外側面に、絶縁銅線コイルを巻き付けた、該外側容器の全面に炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れか一つ以上のシートを、貼り付けたシートの外側に、コイルの端を取り出し、電極板、磁極板バンドで装着する第3工程」との特定事項について
(ア)引用発明1に係る「施設」に用いられる「固化体貯蔵容器」は、「該外側容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続し巻き付けたコイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した脇に、エヤーを詰めた金属性のタンクに圧力調整弁に音声管を装着した貯蔵容器に、アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込」むことを含むものであって、この内容は引用発明1の「第4工程」に係るものであると解されるところ、これを工程の観点でさらに詳細にみると、「該外側容器の外側に」「絶縁コイル」を「巻き付け」る工程(以下「工程6」という。)と、「絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続」する工程(以下「工程7」という。)と、巻き付けられた「コイル中央部に、電球体又は、過熱体を設けた絶縁体金具にコイルの両端を接続した脇に、エヤーを詰めた金属性のタンクに圧力調整弁に音声管を装着」した「貯蔵容器」とする工程(以下「工程8」という。)と、その「貯蔵容器」を「アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込」む工程(以下「工程9」という。)とを備えていることになる。

(イ)引用発明1の「絶縁コイル」は、本願発明の「絶縁銅線コイル」(又は「コイル」)とは、絶縁コイル構造体である点で共通する。
引用発明1の「アルミ箔」は、本願発明の「アルミ箔」に相当する。
引用発明1の「電極板」及び「磁極板」は、本願発明の「電極板」「バンド」及び「磁極板バンド」とは、それぞれ、電極板構造体及び磁極板構造体である点で共通する。

(ウ)引用発明1の工程6では、「絶縁コイル」を「巻き付け」る対象が「該外側容器の外側」であるところ、これは、本願発明でいう「該外側容器の外側面」と同じであるといえる。
引用発明1の工程7では、「絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続」するところ、このことは、本願発明とは、「コイルの端」を電極板構造体、磁極板構造体に接続する点で共通する。
さらに、引用発明1の工程7における「電極板又は、磁極板」は、認定された引用発明1の「該、別容器の上蓋した密閉容器側面の外側に、磁性帯鉄板又は、アルミ板の電極板と、磁性帯金属を締め付けバンド又は、弾力締付け金具を装着する」(【0015】)によれば、本願発明でいう「該外側容器の外側面」に「装着」されていると認められる。

(エ)以上によれば、本願発明と引用発明1とは、「該外側容器の外側面に、」絶縁コイル構造体「を巻き付けた、該外側容器」に、「コイルの端」を、電極板構造体、磁極板構造体「で装着する第3工程」を備える点で一致する。

エ 本願発明の第1工程、第2工程及び第3工程「から成る該外側容器を、保管施設内に填めた隙間に、石炭灰、ゼオライト、粘土、石膏の何れか1つ以上の混練物を充填し、トンネル及び保管施設内を密閉し固めた」との特定事項について
(ア)引用発明1の「保管施設」は、本願発明の「保管施設」に相当する。
引用発明1の「トンネル状の保管施設」には、本願発明の「トンネル」といえる構造が存在するものといえる。

(イ)引用発明1は、「固化体貯蔵容器」を「施設内及び筒状の鋼管パイプ内に納めて連結接続することにより、筒状及びトンネル状の保管施設が可能となる」ものである。
このことに、上記ア〜ウも考慮すれば、本願発明と引用発明1とは、第1工程、第2工程及び第3工程「から成る該外側容器を、」「トンネル及び保管施設内」に設けた点で一致するといえる。

オ 本願発明の「構造体」との特定事項について
引用発明1の「施設」は、本願発明の「構造体」に相当する。

(3)一致点及び相違点の認定
上記(2)によれば、本願発明と引用発明1とは、
「汚染された物を混練物にし固めたものが中に存在する容器に対して密閉蓋をする第1工程と、
該容器を、外側容器内に填めて、該容器の上部から、陶磁器構造体を充填し、密閉蓋した第2工程と、
該外側容器の外側面に、絶縁コイル構造体を巻き付けた、該外側容器に、コイルの端を、電極板構造体、磁極板構造体で装着する第3工程
から成る該外側容器を、トンネル及び保管施設内に設けた
構造体。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「第1工程」の「汚染された物を混練物にし固め」たものが、本願発明は、「汚染物質」に「汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填しながら泡を取込んで固めた」ものであるのに対し、引用発明1は、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水」と「石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメントを含む改良剤」と「動物性油脂又は植物性油脂」と「ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、ケイ酸化カルシュウム、カーバイド、苛性ソーダ粉末、セメント」と「水」とを「適宜に填めた混合物」を、「掻き混ぜながら気泡を取込ん」で「攪拌混練物」にし「固め」て生成された物である点。

[相違点2]
「第1工程」において、本願発明は、「袋」を用いており、「第1工程」の「汚染された物を混練物にし固めた」ものを、「汚染物質を填めた袋の中に、汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填しながら泡を取込んで固めた、袋」の中に得ており、さらに、その「袋を容器の中に填め」るのに対し、引用発明1は、「袋」を用いておらず、「第1工程」の「汚染された物を混練物にし固めた」ものを、「容器」の中に直接得ている点。

[相違点3]
「第2工程」の「陶磁器構造体」が、本願発明は、「陶磁器粉末」であるのに対し、引用発明1は、「陶磁器」である点。

[相違点4]
「第3工程」の「絶縁コイル構造体」、「電極板構造体」及び「磁極板構造体」が、それぞれ、本願発明は、「絶縁銅線コイル」、「電極板」「バンド」及び「磁極板バンド」であるのに対し、引用発明1は、「絶縁コイル」、「電極板」及び「磁極板」である点。

[相違点5]
「第3工程」の「該外側容器の外側面に、絶縁コイル構造体を巻き付けた、該外側容器に、コイルの端を、電極板構造体、磁極板構造体で装着する」ことが、本願発明は、「外側容器の外側面に、絶縁コイル構造体を巻き付けた、該外側容器全面に炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れか一つ以上のシートを、貼り付けたシートの外側に、コイルの端を取り出し、電極板、磁極板バンドで装着」するのに対し、引用発明1は、「絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続」し、「電極板又は、磁極板」は「該、別容器の上蓋した密閉容器側面の外側に」「装着」されており、その後得られた「貯蔵容器」を「アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込」むものである点。

[相違点6]
「該外側容器を、トンネル及び保管施設内に設けた」ことが、本願発明は、「該外側容器を、保管施設内に填めた隙間に、石炭灰、ゼオライト、粘土、石膏の何れか1つ以上の混練物を充填し、トンネル及び保管施設内を密閉し固めた」ことであるのに対し、引用発明1は、「施設内及び筒状の鋼管パイプ内に納めて連結接続することにより、筒状及びトンネル状の保管施設が可能とな」る点。

(4)相違点の判断
ア 相違点1及び2について
本願発明が「構造体」という物の発明に係ることを踏まえれば、引用発明1において相違点1及び2に係る構成に至るためには、引用発明1の「第1工程」において、(i)汚染された物を混練物にし固めたものについて、これを相違点1に係る構成(「汚染物質」に「汚染水、動物性油脂、植物性油脂、ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉、アルミ粉末、カーバイド、苛性ソーダ粉末の全ての混練物を充填しながら泡を取込んで固めた」もの)にして、(ii)汚染された物を混練物にし固めたものを「容器」の中に得る手法について、当該固めたものを「袋の中」にまず得るとともに、その「袋」を「容器の中に填め」れば足りると解される。そして、(i)については、引用発明1の「第1工程」において、「粒粉末状に固め」る前に「容器」の中に存在する物質が、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水」の一方のみではなく双方を含み、「動物性油脂又は植物性油脂」の一方のみではなく双方を含み、「ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉」及び「カーバイド、苛性ソーダ粉末」の全てに加えて、「アルミ粉末」をも含めば足りると解される。
(ア)そこで、まず、(i)について検討する。
引用発明1の「第1工程」において、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水」のうち双方を添加するようにすることは、当業者が適宜なし得たことであり、「動物性油脂又は植物性油脂」についても同様である。
また、引用発明1は、「第1工程」において「汚染水を蒸発させる時に、水面に気泡及び泡を発生させる」ものであって、「ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉」及び「カーバイド、苛性ソーダ粉末」が含まれているところ、当該工程には、「苛性ソーダ粉末」などの塩基性の物質が用いられている。そして、両性金属であるアルミニウム粉末を発泡剤として用いることは一般に周知技術である(例えば、当審拒絶理由通知書に提示された引用文献2(特開2007−47033号公報)の【0023】・【0024】を参照。)。そうすると、引用発明1の「第1工程」において、アルミニウム粉末をも含めるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。なお、引用発明1が上記「ゼラチン、納豆、蒟蒻、寒天、澱粉」及び「カーバイド、苛性ソーダ粉末」の全てを含むとは限らないとしても、そのようにすることは当業者が適宜なし得たことである。

(イ)次に、(ii)について検討する。
一般に、漏出しやすい物や漏出されるべきでない物を容器に収容する場合に、多重に包む構造とすることは常套手段であるから、引用発明1の「第1工程」において、「粒粉末状に固め」てできた物を、「容器」の中で直接得ることに代えて、「袋」の中で得るとともに、その「袋」を「容器」の中に填める構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(ウ)よって、当業者は、引用発明1に周知技術を採用して相違点1及び2に係る構成に容易に至るといえる。
なお、仮に、混合等の順序を考慮するとしても、相違点1及び2に係る順序とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

イ 相違点3について
引用発明1の「第3工程」では、「この電流及び磁性帯容器を、該、別容器内に填めて、固定させた容器上部から、改良剤にゼオライト及びセメント、水の攪拌混練物を、該、容器内に充填し固めて密閉蓋し固める」から、「陶磁器」は、別容器内に充填されるものである。そして、固体を充填する際に粉末の形態が充填しやすいことは自明である。
そうすると、引用発明1の「第3工程」における「陶磁器」を「陶磁器粉末」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ 相違点4及び5について
引用発明1において相違点4及び5に係る構成に至るためには、引用発明1の「第4工程」において、(i)「絶縁コイル」について、「絶縁銅線コイル」を採用し、(ii)「絶縁コイル」が「巻き付け」られた「外側容器」について、その「全面に炭化繊維、炭素繊維、アルミ箔、鉛箔、ステンレス箔、クロム箔の何れか一つ以上のシートを、貼り付け」るとともに、その「貼り付けたシートの外側に、コイルの端を取り出し」、(iii)「絶縁コイルの両端に」「接続」された「電極板又は、磁極板」について、「電極板、磁極板バンド」とするとともに、その「貼り付けたシートの外側に」「取り出」された「コイルの端」に接続すれば足りると解される。
(ア)そこで、まず、(i)について検討する。
「コイル」を構成する導線として銅線を用いることは例示するまでもなく周知な技術であるから、引用発明1の「絶縁コイル」として「絶縁銅線コイル」を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)次に、(ii)及び(iii)について検討する。
a 引用発明1は、「第4工程」における「絶縁コイルの両端に」「接続」された「電極板又は、磁極板」の形状について、「磁性帯鉄板又は、アルミ板の電極板と、磁性帯金属を締め付けバンド又は、弾力締付け金具を装着することにより、電極及び磁極を備えた」との構成を備えているから、「バンド」状になっていると解される。また、そのことはさておくとしても、引用発明1の「第2工程」における「電極板、磁極板」の形状は、「バンド」状になっており、引用文献1の【0008】には、「コイルの両端を接続し装着すると共に、使用用途に応じて電極板、磁極板バンド又は弾力締付け金具を装着した」との記載がある。

b 引用発明1は、「汚染物質を含む焼却灰、又は汚染水」に由来する「固化体」の「貯蔵容器」に係るものであるから、放射線を封じ込めることが当然に求められている。そして、引用文献1の【0013】・【0017】には、アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込むことにより放射線を封じ込めることが記載されている。しかるに、放射線をより封じ込めるためには、アルミ箔を貼り合わせたシートによる包み込みを適宜追加して行えばよいことが明らかである。

c 引用発明1の「第4工程」は、「密閉した該外側容器の外側に、絶縁コイルの両端に電極板又は、磁極板に接続し巻き付けた」ものであるところ、絶縁コイルの該外側容器の外側への巻き付けと絶縁コイルの両端への電極板又は磁極板の接続とは、当業者が実施に当たり適宜の順序で行うものといえる。

d そうすると、引用発明1の「第4工程」において、「電極板又は、磁極板」の形状を「バンド」状とするとともに、「密閉した該外側容器の外側に、絶縁コイル」を「巻き付け」た後に、その「両端」に「電極板又は、磁極板」を「接続」する順序を採用し、さらに、「絶縁コイル」の「巻き付け」と「絶縁コイルの両端」への「電極板又は、磁極板」の「接続」との間の時点で、アルミ箔を貼り合わせたシートで包み込むようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
その際、「絶縁コイル」の端を、アルミ箔を貼り合わせたシートの外側に取り出した後に「電極板又は、磁極板」に「接続」する必要があることは当然であり、このことは、引用文献1の【0007】の「容器外側に、絶縁銅線コイルを巻き付け塩化ビニール樹脂・・・で絶縁防水された外側に電極を取り出し、その一端が、銅板及び真鍮、銀板に他端が鉄板、アルミ、ニッケル板乃至亜鉛板に接続配置された」との記載からも首肯できることである。

(ウ)よって、当業者は、引用発明1に引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術を採用して相違点4及び5に係る構成に容易に至るといえる。

エ 相違点6について
引用発明1において相違点6に係る構成に至るためには、「前記固化体貯蔵容器を、施設内及び筒状の鋼管パイプ内に納め」ることについて、「固化体貯蔵容器」と「施設」及び「筒状の鋼管パイプ」との間に、「石炭灰、ゼオライト、粘土、石膏の何れか1つ以上の混練物を充填し、」「密閉し固め」れば足りると解される。
(ア)a そこで検討すると、放射性廃棄物を収納した容器を埋設するにあたり、容器の外側面と埋設設備との隙間にセメント系充填材を密充することは周知技術である(例えば、当審拒絶理由通知書に提示された引用文献3(特開2000−63077号公報)の図9及び【0002】を参照。)。また、引用発明1は、「第3工程」においてではあるが、「別容器」(「例200L容器」)と「第2工程」で形成された「電流及び磁性帯容器」(「例100L容器」)との間に対して、「改良剤原料、石炭灰、ゼオライト、スラッグ、陶磁器、鉄粉、砂、及びセメント」からなる「改良材にゼオライト及びセメント、水の適宜量の混練物を、充填し固め」ているものと認められる。
そうすると、引用発明1において、「固化体貯蔵容器」と「施設」及び「筒状の鋼管パイプ」との間を、セメント系充填材で密充することは、当業者が適宜なし得たことであり、その際に、当該セメント系充填材に、「石炭灰、ゼオライト」等をも含めるようにすることも、設計的事項にすぎない。

b また、放射性廃棄物を収納した容器を埋設するにあたり、容器の外側面と埋設設備との隙間に粘土を含む混合物を充填することは周知技術である(例えば、特開2014−95551号公報の【0008】・【0012】、特開平3−77100号公報の第1頁右下欄第11行〜末行、特開昭63−214699号公報の特許請求の範囲(3)・第1頁右下欄第6行〜第15行を参照。)。
そうすると、引用発明1において、「固化体貯蔵容器」と「施設」及び「筒状の鋼管パイプ」との間を、粘土を含む混合物で充填することは、当業者が適宜なし得たことであるともいえる。

(イ)そして、上記(ア)a及びbの双方について、充填物を混練物とするとともに、隙間を密閉して固めることは、上記各周知技術でもそうなっているといえるし、そうでないとしても、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
よって、当業者は、引用発明1及び周知技術に基づいて相違点6に係る構成に容易に至るといえる。

オ 本願発明の効果について
本願発明の作用効果は、引用発明1、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)進歩性欠如の理由の小括
したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号及び同法第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-25 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-18 
出願番号 P2018-159749
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G21F)
P 1 8・ 121- WZ (G21F)
P 1 8・ 536- WZ (G21F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
山村 浩
発明の名称 汚染廃棄物の固化体貯蔵容器3  

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