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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25C
管理番号 1385573
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-20 
確定日 2022-06-17 
事件の表示 特願2018−248951「無頭釘の釘抜き装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月 2日出願公開、特開2020− 99988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月21日に出願された特願2018−248951号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和元年12月4日付け :拒絶理由通知
令和2年2月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年7月14日付け :拒絶査定
令和2年8月21日 :審判請求
令和3年9月30日付け :拒絶理由通知
令和3年10月21日 :意見書の提出


第2 本願発明
令和2年2月10日に提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 【請求項1】
インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体に於いて、該回転釘抜き本体は、その基端側に該回転連結部に連結装着する連結部を設け、他方の先端側は内腔部を有する略ソケットレンチ状の筒状釘抜き体として形成し、また該筒状釘抜き体の先端から基端方向に略V字状で所定長さの切込みの溝を形成して誘導部として複数箇所設け、該誘導部の略V字状の奥側が連続して狭まる溝幅を、釘のサイズ違いの胴部径に適合する程度に狭まるように形成すると共にその溝幅と、除去する該釘の胴部径に対応する位置を釘抜き支持部として設けたことを特徴とする無頭釘の釘抜き装置。」

ここで、本願発明における「釘抜き装置」は、次の通りに理解することができる。

すなわち、本願発明は、「・・・回転釘抜き本体に於いて、・・・を特徴とする無頭釘の釘抜き装置。」(下線は当審において付した。以下同様。)という形式で記載され、当該形式で記載された場合は、通常、「を特徴とする」に続いて記載される事項は、下線を付した「に於いて」の直前に記載された「回転釘抜き本体」と符合する記載とされるところ、同「を特徴とする」に続いて記載される「釘抜き装置」は、実質的には「回転釘抜き本体」に関するものを意味すると解される。また、本願発明は、専ら「回転釘抜き本体」に係る発明特定事項からなるものであることからみても、本願発明における「釘抜き装置」は、インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部に連結装着するという用途で用いられる「回転釘抜き本体」を有する「釘抜き装置」を意味するものと理解することができる。


第3 拒絶の理由
令和3年9月30日付けで当審より通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

1 (新規性)この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 (進歩性)この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許第4531716号明細書
引用文献2:特開2012−86300号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2014−176946号公報(周知技術を示す文献)


第4 引用文献1の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1)引用文献1の記載事項及び認定できる技術的事項

ア 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。

(ア)「This invention relates to the field of tools and other devices for pulling nails, spikes, tacks, staples and the like from pieces of wood or other structures in which they are embedded.」(第1欄第5行−第8行)

(当審仮訳)
「本発明は、釘、スパイク、タック、ステープル等を、それらが埋め込まれている木材または他の構造物から引き抜くための工具および他の装置の分野に関する。」

(イ)「It is an object of the invention to provide a ratchet puller for nails, staples and similar items which takes up little additional space and adds little additional weight, thereby being easy to carry and keep on hand for immediate use when needed.」(第2欄第4行−第8行)

(当審仮訳)
「本発明の目的は、追加のスペースをほとんど取らず、追加の重量をほとんど追加せず、それによって、必要なときに直ちに使用するために持ち運びおよび手元での保持が容易な、釘、ステープルおよび類似の物品のためのラチェットプラーを提供することである。」

(ウ)「It is an object of the invention to provide a ratchet puller for nails, staples and similar items, comprising a ratchet bar having a ratchet mechanism at one end, a connecting stud projecting from said ratchet mechanism, a pry tool connectable to said connecting stud, said pry tool including a claw portion having a wedge slot for pulling nails and stab or pointed tip portion for pulling staples.」(第2欄第14行−第21行)

(当審仮訳)
「本発明の目的は、一端にラチェット機構を有するラチェットバーと、前記ラチェット機構から突出する接続スタッドと、前記接続スタッドに接続可能なてこツールとを備え、前記てこツールが、釘を引き抜くためのウェッジスロットを有する爪部分と、ステープルを引っ張るためのスタブ又は尖った先端部分とを含む、釘、ステープル、及び同様の物品のためのラチェットプラーを提供することである。」

(エ)「A ratchet puller 1 for nails, spikes, tacks, staples and similar items, includes a ratchet bar or lever 2 having a ratchet mechanism 3 therein, comprising a ratchet wheel 4 having two rows 5 and 6 of inclined teeth 7 around its circumference, the teeth 7 of row 5 being inclined upwardly in one direction and the teeth 7 in row 6 being inclined upwardly in the opposite direction, a two detent pawl 8 pivotally mounted on the ratchet bar 2, having a first detent 9 positioned in registration with the teeth 7 in row 5 and a second detent 10 positioned in registration with the teeth 7 in row 6, the pivotally mounted pawl 8 being pivoted between a first position in which first detent 9 is dropped into operating communication with teeth 7 of row 5 of the ratchet wheel 4 and a second position in which second detent 10 is dropped into operation communication with teeth 7 of row 6 of the ratchet wheel 4.
・・・A drive shaft 13a is connected to said ratchet wheel 4 and rotates in the same direction as said ratchet wheel 4. A connecting lug 14 is connected to said drive shaft 13.」(第3欄第3行−第40行)

(当審仮訳)
「釘、スパイク、タック、ステープルおよび類似の物品のためのラチェットプラー1は、ラチェット機構3を有するラチェットバーまたはレバー2を含み、ラチェットバーまたはレバーは、その円周の周りに傾斜した歯7の2つの列5および6を有するラチェットホイール4を含み、列5の歯7は、一方向に上向きに傾斜し、列6の歯7は、反対方向に上向きに傾斜し、ラチェットバー2に枢動可能に取り付けられた2つの戻り止め爪8は、列5の歯7と位置合わせされて位置付けられた第1の戻り止め9と、列6の歯7と位置合わせされて位置付けられた第2の戻り止め10とを有し、枢動可能に取り付けられた爪8は、第1の戻り止め9がラチェットホイール4の列5の歯7と動作連通する第1の位置と、第2の位置との間で枢動する。戻り止め10は、ラチェットホイール4の列6の歯7と作動連通する。
・・・駆動軸13aは、前記ラチェットホイール4に接続され、前記ラチェットホイール4と同じ方向に回転する。連結突起14は、前記駆動シャフト13に接続される。」

(オ)「When second detent 10 is in operating communication with teeth 7 of row 6, the flat face 11 of detent 10 bears against the flat face 12 of teeth 7 in row 6 when the ratchet bar 2 is moved in a second direction of rotation thus making ratchet wheel 4 rotate in said second direction of rotation. ・・・The drive shaft 13a connected to ratchet wheel 4, and the lug 14 connected to the drive shaft 13a also thereby rotates in said second direction of rotation.」(第3欄第41行−第61行)

(当審仮訳)
「第2の戻り止め10が列6の歯7と作動的に連通しているとき、戻り止め10の平坦面11は、ラチェットバー2が第2の回転方向に移動されるときに列6の歯7の平坦面12に当接し、したがってラチェットホイール4を前記第2の回転方向に回転させる。・・・それによって、ラチェットホイール4に接続された駆動シャフト13a、および駆動シャフト13aに接続された突起14も、前記第2の回転方向に回転する。」

(カ)「A pry tool 16 having a claw portion 17 for pulling nails is provided with a mounting recess 18 corresponding in dimension and cross-section to that of lug 14 of the ratchet bar 2 for operatively mounting the pry tool 16 on the lug 14 of ratchet bar 2.」(第3欄第66行−第4欄第2行)

(当審仮訳)
「釘を引き抜くための爪部分17を有するてこツール16には、てこツール16をラチェットバー2の突起14に作動的に取付けるために、ラチェットバー2の突起14の寸法及び断面に対応する取付凹部18が設けられている。」

(キ)「Another modified form of the pry tool 1600 is shown in FIGS. 10 and 11 and includes a pre-existing socket wrench tool 1601 in which a pair of wedge shaped slots 200 have been cut in the peripheral wall 1602 of socket 1601. In this modification the socket tool 1601 is placed on the lug 14 of rachet bar 2 in the normal manner, and the shank 35 of a nail 17 to be pulled is then received in one of the slots 200 with its head 33 along the inner surface 1603 of the peripheral wall 1602 of the socket 1601.」(第4欄第54行−第63行、(注)引用文献1の第4欄第60行の「a nail 17」は「a nail 27」の誤記と認められる。)

(当審仮訳)
「てこツール1600の別の変形形態を図6A?図6Cに示す。これは、図10および図11に示されており、ソケット1601の外周壁1602に一対のくさび形状のスロット200が切り込まれた既存のソケットレンチツール1601を含む。この変形例では、ソケットツール1601は、通常の方法でラチェットバー2の突起14上に配置され、次に、引き抜かれる釘17のシャンク35は、その頭部33がソケット1601の外周壁1602の内面1603に沿った状態でスロット200の1つに収容される。」

(ク)「The pry tool 1600 also includes nail positioning means, since the wedge slots 200 are aligned on opposite portions of the side wall 1602. Thus, the shank 35 of a nail 27 can be held in position for starting by placing it in both of the aligned wedge slots 200, then holding the tool 1600 in place by the ratchet bar 2 to which it is connected with the pointed end 32 of the nail 27 in registration with the point where it is to be hammered in. The nail head 33 is tapped sufficiently until the nail holds its position, the pry tool 1600 is removed from the nail shank 35, and the nail can then be hammered home.」(第6欄第28行−第38行))

(当審仮訳)
「また、くさびスロット200が側壁1602の対向する部分に位置合わせされるので、てこツール1600は釘位置決め手段を含む。したがって、釘27のシャンク35は、整列されたくさびスロット200の両方にシャンクを配置することによって開始するための所定の位置に保持され、次に、てこツール1600がハンマーで打ち込まれるべき点と位置合わせされて釘27の尖った端部32に接続されたラチェットバー2によって工具80を所定の位置に保持することができる。釘の頭部33は、釘がその位置を保持するまで十分にタップされ、てこツール1600が釘のシャンク35から取り外され、次いで、釘を打ち込むことができる。」

(ケ)「The arcuate peripheral wall and bearing surface 19, 190 and 1602 permit the ratchet bar 2 to rotate pry tools 16, 160 and 1600 in a complete circle, whereby the nail head 33 gripped in the wedge slot 20 or 200 can be brought around through a complete three hundred and sixty degree circle with the nail shank 35 bending around the peripheral wall bearing surface 19, 190 and 1602 until the sharp pointed end 32 of the nail 27 is pulled out of the wood or whatever it was embedded in. Thus, nails spikes and the like which are as long as the circumferential path around the pry tools of this invention can be pulled completely out.」(第7欄第11行−第23行))

(当審仮訳)
「弓形の外周壁および支持面19、190および1602は、ラチェットバー2がてこツール16、160および1600を完全な円で回転させることを可能にし、それによって、くさびスロット20または200に把持された釘の頭部33は、釘27の鋭く尖った端部32が木材またはそれが埋め込まれたものから引き抜かれるまで、外周壁支持面19、190および1602の周りで曲がる釘のシャンク35とともに完全な360度の円を通って運ばれ得る。従って、本発明のてこツールの周りの円周経路と同じ長さの釘スパイク等を完全に引き抜くことができる。」

(コ)「

」(Fig.1)

(サ)「

」(Fig.5)

(シ)「

」(Fig.10))

(ス)「

」(Fig.11)

イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)上記ア(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)、(コ)、(サ)、(シ)及び(ス)の記載からみて、てこツール1600は、ラチェットバー2の端部のラチェット機構3の連結突起14に取付けるものであると認められる。

(イ)上記ア(キ)、(ク)、(ケ)、(シ)及び(ス)の記載からみて、てこツール1600は、ソケットレンチツール1601として形成しているものであると認められる。

(ウ)上記ア(カ)、(キ)、(ケ)、(シ)及び(ス)の記載からみて、ソケットレンチツール1601は、その基端側に該連結突起14に取付ける取付凹部18を設け、他方の先端側は外周壁1602の内面1603によって画成された中空部を有するものであると認められる。

(エ)上記ア(キ)、(ク)、(ケ)、(シ)及び(ス)の記載からみて、ソケットレンチツール1601の先端から基端方向に略V字状で所定長さのくさび形状のスロット200を形成して釘27のシャンク35を収容する位置に誘導する部位として2箇所設けられているものであると認められる。

(オ)上記ア(キ)、(ク)、(ケ)、(シ)及び(ス)の記載からみて、引き出す釘27のシャンク35の径と該シャンク35が収容されているスロット200の対応部位の幅は略同程度と認められることから、該スロット200の略V字状の奥側が連続して狭まるスロット200の幅を、釘27のサイズ違いのシャンク35径に適合する程度に狭まるように形成すると共にそのスロット200の幅と、引き抜く該釘27のシャンク35径に対応する位置をシャンク35を収容するスロット200の対応部位として設けられているものであると認められる。

(オ)上記ア(ア)−(ス)の記載からみて、頭部33を有する釘27用のラチェットプラー1が記載されている。

(2)引用発明
上記(1)のア及びイを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、単に「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ラチェットバー2の端部のラチェット機構3の連結突起14に取付けるてこツール1600に於いて、該てこツール1600は、その基端側に該連結突起14に取付ける取付凹部18を設け、他方の先端側は外周壁1602の内面1603によって画成された中空部を有する、ソケットレンチツール1601として形成し、また該ソケットレンチツール1601の先端から基端方向に略V字状で所定長さのくさび形状のスロット200を形成して釘27のシャンク35を収容する位置に誘導する部位として2箇所設け、該スロット200の略V字状の奥側が連続して狭まるスロット200の幅を、釘27のサイズ違いのシャンク35径に適合する程度に狭まるように形成すると共にそのスロット200の幅と、引き抜く該釘27のシャンク35径に対応する位置をシャンク35を収容するスロット200の対応部位として設けた頭部33を有する釘27用のラチェットプラー1。」


第5 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明における「ラチェットバー2の端部のラチェット機構3」は、「締付け工具本体先端の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体を交換可能な締付け工具」という限りにおいて、本願発明における「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」に相当する。
そして、引用発明における「ラチェットバー2の端部のラチェット機構3の連結突起14」は、「締付け工具本体先端の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体を交換可能な締付け工具本体先端の回転連結部」という限りにおいて、本願発明における「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部」に相当する。

(2)引用発明における「連結突起14に取付ける」ことは、本願発明における「回転連結部に連結装着する」ことに相当する。
そして、引用発明における「てこツール1600」は、「締付け工具本体先端の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体」という限りにおいて、本願発明における「回転釘抜き本体」に相当する。

(3)引用発明における「連結突起14に取付ける取付凹部18」は、本願発明における「回転連結部に連結装着する連結部」に相当する。

(4)引用発明における「外周壁1602の内面1603によって画成された中空部」は、本願発明における「内腔部」に相当する。そして、引用発明における「ソケットレンチツール1601」は本願発明における「略ソケットレンチ状の筒状釘抜き体」に相当する。

(5)引用発明における「くさび形状のスロット200」は、ソケットレンチツール1601(筒状釘抜き体)の先端から基端方向に略V字状で所定長さの溝であるから、本願発明における「切込みの溝」に相当する。
そして、引用発明における「釘27のシャンク35を収容する位置に誘導する部位」は、筒状釘抜き体の先端から基端方向に釘を誘導する部位であるから、本願発明における「誘導部」に相当する。
また、引用発明における「2箇所」は本願発明における「複数箇所」に相当する。

(6)引用発明における「スロット200の略V字状の奥側が連続して狭まるスロット200の幅」は本願発明における「誘導部の略V字状の奥側が連続して狭まる溝幅」に相当する。

(7)引用発明における「釘27」は、本願発明における「釘」に相当する。
また、引用発明における「シャンク35」は、本願発明における「胴部」に相当する。

(8)引用発明における「引き抜く」ことは、本願発明における「除去する」ことに相当する。

(9)引用発明における「シャンク35を収容するスロット200の対応部位」は、本願発明における「釘抜き支持部」に相当する。

(10)引用発明における「頭部3を有する釘27」は、「釘」という限りにおいて、本願発明における「無頭釘」に相当する。

(11)引用発明における「ラチェットプラー1」は、「てこツール1600」を有するものであり、上記第2の理解のもとでは本願発明の「釘抜き装置」は「回転釘抜き本体」を有する「釘抜き装置」を意味するものと理解されることから、本願発明における「釘抜き装置」に相当する。
そして、引用発明における「頭部3を有する釘27用のラチェットプラー1」は、「釘の釘抜き装置」という限りにおいて、本願発明における「無頭釘の釘抜き装置」に相当する。

2 一致点、相違点

本願発明と引用発明は、
「締付け工具本体先端の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体を交換可能な締付け工具の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体に於いて、該回転釘抜き本体は、その基端側に該回転連結部に連結装着する連結部を設け、他方の先端側は内腔部を有する、略ソケットレンチ状の筒状釘抜き体として形成し、また該筒状釘抜き体の先端から基端方向に略V字状で所定長さの切込みの溝を形成して誘導部として複数箇所設け、該誘導部の略V字状の奥側が連続して狭まる溝幅を、釘のサイズ違いの胴部径に適合する程度に狭まるように形成すると共にその溝幅と、除去する該釘の胴部径に対応する位置を釘抜き支持部として設けた釘の釘抜き装置。」
である点で一致し、次の各点において相違する。

<相違点1>
「回転釘抜き本体」を連結装着する「締付け工具本体先端の回転連結部に連結装着する回転釘抜き本体を交換可能な締付け工具」の「回転連結部」が、本願発明では、「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端」の「回転連結部」であるのに対して、引用発明では、「ラチェットバー2の端部のラチェット機構3」の「連結突起14」である点。

<相違点2>
本願発明は、「無頭釘」の「釘抜き装置」であるのに対して、引用発明は、「頭部33を有する釘27」用の「ラチェットプラー1」である点。


第6 判断

1 相違点の検討
上記相違点について検討する。

(1)相違点の検討(新規性について)

ア <相違点1>について
相違点1に係る特定事項は、「回転釘抜き本体」を連結装着する回転連結部が設けられた「締付け工具」に関するものであって、「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」自体について何らかの特定をする事項とは認められない。また、その余の「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」自体の各特定事項において相違する点は見出されないため、該「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」の発明として実質的に相違する点とは認められない。

イ <相違点2>について
相違点2に係る特定事項は、「釘抜き装置」が除去する「釘」に関するものであって、「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」自体について何らかの特定をする事項とは認められない。また、その余の「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」自体の各特定事項において相違する点は見出されないため、「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」の発明として実質的に相違する点とは認められない。

ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明である。

(2)相違点の検討(進歩性について)
上記各相違点を実質的な相違点とした場合についても、以下に検討する。

ア <相違点1>について
ソケットを手動の締付け工具と電動の締付け工具とで共用してそれらの回転連結部に連結装着することは周知の使用形態であり(例えば、引用文献2の段落【0032】の「動力源に電動工具を用いるので、ボルトに対して充分な力を加えることができるのである。なお、電動工具に代えて手動の工具を使用してもよいことは勿論である。」なる記載、引用文献3の段落【0012】の「工具ソケットは、手動によるソケットレンチ、電動による電動工具等に取り付けて使用することができる。」なる記載を参照。以下、単に「周知技術」という。)、引用発明におけるてこツール1600(回転釘抜き本体)を、かかる周知の使用形態のように電動の締め付け工具と共用するようにして、本願発明の「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部に連結装着する」ように構成することなどは、当業者であれば特段の困難性を伴わずに試行し得るものであって、容易に想到し得るものである。

イ <相違点2>について
引用発明は、本願発明と同様に「スロット200(誘導部)の略V字状の奥側が連続して狭まるスロット200の幅(溝幅)を、釘27(釘)のサイズ違いのシャンク35(胴部)径に適合する程度に狭まるように形成する」ものであって、上記(1)アにおいて説示したように、本願発明と引用発明は、「回転釘抜き本体」に関する「釘抜き装置」自体の各特定事項において相違する点は見出されない上、引用発明のスロット200は略V字状の奥側が連続して狭まる構造となっていることから、必ずしも釘の頭部においてのみ係合するものでなく、釘の軸部においても係合し得ることは自然に理解できるところ、当業者であれば必要に応じて無頭釘に対しても特段の困難性を伴わずに適宜使用を試み得るものである。

ウ そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 まとめ
よって、本願発明は、引用発明である。
また、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 審判請求人の主張について

1 審判請求人の意見書における主張

(1)審判請求人は、令和3年10月21日に提出された意見書において、以下のように主張している。

ア 「出願の本意は、型枠解体作業で使われ始めたインパクトドライバーにおいてのくぎ抜き工具の考案です。インパクトドライバーで使える工具の一つです。
よって、インパクトレンチのその回転力とくぎのひっかけ部の合体を出願したつもりですが、くぎ抜き回転体の説明ばかりしているので同じものと思われたのでしょう。引用文献のV溝は周知の事実でそれを改良したくぎのひっかけ回転体とインパクトドライバーをくみ合わせたものです。」(意見書第1ページ第22行−第27行)

イ 「同じものと言われるのなら引用文献に六角軸をつけたものを見せてほしい。それなら同じものといわれても仕方がないが、回転体の接続部分に相違点があることは認めておられる・・・
ラチェットの回転機能とインパクトドライバーは全然違うものですから。・・・ラチェットのこの考案で一番大事なことは、駆動方式です。手動よりラチェットを利用する方が楽で速いかもしれない。それで特許になった。そしてラチェットよりインパクトドライバーの方が楽で速い。だからその速い方法を一番に採用したものに特許を与えるべきだと思っております。・・・
その当時、六角のナットの取り外しに使っていたものをくぎ抜きやステップルにも使えるよと考え出したこと。ラチェットが使われていることに意義があります。
よって本考案も、近年、型枠解体作業に使われ始めたところのインパクトドライバーが使われていることに意義があります。」(意見書第1ページ第28行−第45行)

ウ 「本考案は、パイプの円周部を利用するものですから、当時、出始めたインパクトドライバーは、移動可能な充電式の工具で、木ネジを回す回転力しかなく、本考案のような円周部を利用してくぎの引き抜きができるものではなく、だれでも簡単に、くぎ抜きに利用しようとは思いつくものではないと。これは、周知の事実ではない。・・・
・・・本考案も木ネジやナットの取り付け取り外しの工具の変形利用です。ただ力がなくて、初めは、くぎ抜きが不可能でした。」(意見書第1ページ下から第3行−第2ページ第6行)

エ 「そこで新規性について意見を申しあげます。
引用文献の円筒の縦の溝を利用して釘をひっかけて抜く方法は、一般的に知られていることで、てこの部分を、ラチェットの回転機能に変えたのが新規的で特許になったものと思われる。本考案は、ラチェット回転機能を、もち運びのできるインパクト電動工具に変えたもので、新規に考案されたもので、新規性があるものと思われる。即ちラチェットの回転機能よりインパクトドライバーの回転機能の方が新しい機能があり、それを利用した本考案は、新規性があると思います。よって引用文献と同じとの判断は間違いです。」(意見書第2ページ第7行−第13行)

オ 「次に進歩性の意見を述べさせて頂きます・
上記でも述べたように考案を始めたのは10年以上も前で、型枠の解体作業に使う、持ち運びのできる12ボルトのインパクト電動工具は、世間の常識では力がないと思われていた。だから周知の事実に基いて考案されたものとの拒絶理由は納得できません。」(意見書第2ページ第14行−第17行)

カ 「この点において本考案の無頭くぎ抜きの方がどの釘でも抜き取ることができ、広い範囲に利用できるので進歩的だと思います。」(意見書第2ページ第26行−第27行)

キ 「当初は、電動工具が12ボルトから14.6ボルトになり、細い円周を利用すれば何とか巻き付けて抜けるようになったが、まだまだ抜き取るスピードが遅く、実用には適さなかったが、ようやく数年前に、18ボルトの電動工具が市販されて、抜き取るスピードが速くなり、実用に耐えられるものがようやく出来て、販売できるようになりました。時代がついてきました。
このように、インパクトドライバーを容易にくぎ抜きに利用出来ると考えるのは、周知の事実ではなくて、周知の事実とはネジやナット回しに使えるということです。引用文献も円筒にV溝をつけたもので、ただ単にソケットレンチ用ラチェット工具で、これでくぎを抜いた時に、くぎの頭が折れて抜けなくなることは想定していません。しかし、本考案は、くぎの頭がなくなってもくぎが抜けるように、薄肉パイプ状に内腔を作り、くぎの胴にくびれをつけて釘が持ち上がって抜けるように改良しているので、この点でも全く異なっていて新規的で、拒絶理由には当たらないと思います。」(意見書第2ページ第28行−第39行)

ク 「以上のように引用文献とは全く違うものであり、周知の事実から容易に考案されたものとの、拒絶の判断には、賛成できません。ラチェットが使える四角の突起ではなく、本考案のインパクトドライバーが使えるよう接続のための六角軸を持っており、引き抜きの回転体は細く長くしてあり、薄肉でくぎの胴に食い込み、滑らなくする装置を備えている。このように違いがあるのに引用文献と同じと判断されたのは理解に苦しみます。この対策をとっていない引用文献でも無頭釘は抜けるとの意見は、どこから来るのでしょう。」(意見書第2ページ第40行−第45行)

ケ 「ただ請求項に書かれている回転体の部分は簡単に書いているため、引用文献との違いをあまり書いていないので同じものとの判断をされたのは無理もないことです。こちらの主張は、インパクトドライバーという新しい電動工具の円周回転力を、最初に利用したもので、その回転力を伝える六角軸と一体の円筒状のくぎの係止部を回転させて、くぎを巻き取るように構成した、くぎ抜き装置ということです。今までにない考案で、特許にふさわしい出願と思う。」(意見書第2ページ下から第3行−第3ページ第3行)

コ 「この考案は、インパクトドライバーによるくぎ抜き装置です。」(意見書第3ページ第7行)


(2) 上記(1)からみて、特許請求の範囲の請求項1における特定事項もあわせると、以下の各点が主張されているものと認められる。

ア 本願発明について

(ア)上記(1)アからみて、本願発明は、「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」及び「回転釘抜き本体」を有する釘抜き装置である。

(イ)上記(1)ケからみて、本願発明は、「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」の円周回転力ないし回転機能を利用したものであり、「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」の円周回転力を伝える六角軸の「連結部」を備え、同六角軸の「連結部」と一体の「筒状釘抜き体」(意見書では「円筒状のくぎの係止部」ないし「パイプの円周部」と記載。)を回転させて、くぎを巻き取るものである。

(ウ)上記(1)キからみて、本願発明は、「くぎの頭がなくなってもくぎが抜けるように、薄肉パイプ状に内腔を作り、くぎの胴にくびれをつけて釘が持ち上がって抜けるように改良して」(意見書第2ページ第37行−第38行)いるものである。

(エ)上記(1)ウ及びクからみて、本願発明は、「パイプの円周部を利用するもの」(意見書第1ページ下から第3行−第2行)であって、「ラチェットが使える四角の突起ではなく、本考案のインパクトドライバーが使えるよう接続のための六角軸を持っており、引き抜きの回転体は細く長くしてあり、薄肉でくぎの胴に食い込み、滑らなくする装置を備えている」(意見書第2ページ第41行−第43行)ものである。

新規性について

(ア) 上記(1)イ、エ、ク、ケ及びコからみて、本願発明は、上記ア(イ)bのように、「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」の円周回転力ないし回転機能を利用したものであって、「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」の円周回転力を伝える六角軸の「連結部」を備え、同六角軸の「連結部」と一体の「筒状釘抜き体」(意見書では「円筒状のくぎの係止部」ないし「パイプの円周部」)を回転させて、くぎを巻き取るものであり、該六角軸の「連結部」は、引用文献1に記載されたラチェット機構3における四角の突起である「連結突起14」ないし同「連結突起14」に取付ける「取付凹部18」とは異なるものであって、ラチェット回転機能を有する引用文献1には記載されていない新規性を有する発明である。

(イ)上記(1)キからみて、本願発明は、上記ア(ウ)のように、「くぎの頭がなくなってもくぎが抜けるように、薄肉パイプ状に内腔を作り、くぎの胴にくびれをつけて釘が持ち上がって抜けるように改良して」(意見書第2ページ第37行−第38行)おり、引用文献1に記載された「円筒にV溝をつけたもので、ただ単にソケットレンチ用ラチェット工具で、これでくぎを抜いた時に、くぎの頭が折れて抜けなくなくことは想定して」(意見書第2ページ第35行−第36行)いないものとは異なり、新規性を有する発明である。

(ウ)上記(1)ウ及びクからみて、本願発明は、上記ア(エ)のように、パイプの円周部を利用するものであって、「ラチェットが使える四角の突起ではなく、本考案のインパクトドライバーが使えるよう接続のための六角軸を持っており、引き抜きの回転体は細く長くしてあり、薄肉でくぎの胴に食い込み、滑らなくする装置を備えている」(意見書第2ページ第41行−第43行)ものであり、引用発明とは異なり、新規性を有する発明である。

進歩性について

(ア)技術常識について
意見書には、以下のように記載されている。

a 上記(1)ウのうち、「当時、出始めたインパクトドライバーは、移動可能な充電式の工具で、木ネジを回す回転力しかなく、本考案のような円周部を利用してくぎの引き抜きができるものではなく、だれでも簡単に、くぎ抜きに利用しようとは思いつくものではないこと。」(意見書第1ページ下から2行−第2ページ第2行)

b 上記(1)オのうち、「考案を始めたのは10年以上も前で、型枠の解体作業に使う、持ち運びのできる12ボルトのインパクト電動工具は、世間の常識では力がないと思われていた。」(意見書第2ページ第15行−第17行)

c 上記(1)キのうち、「当初は、電動工具が12ボルトから14.6ボルトになり、細い円周を利用すれば何とか巻き付けて抜けるようになったが、まだまだ抜き取るスピードが遅く、実用には適さなかったが、ようやく数年前に、18ボルトの電動工具が市販されて、抜き取るスピードが速くなり、実用に耐えられるものがようやく出来て、販売できるようになりました。時代がついてきました。」(意見書第2ページ第28行−第32行)

d 上記(1)キのうち、「インパクトドライバーを容易にくぎ抜きに利用出来ると考えるのは、周知の事実ではなくて、周知の事実とはネジやナット回しに使えるということです。」(意見書第2ページ第33行−第34行)

(イ)動機付けについて
上記(ア)の技術常識からみて、引用文献1に記載された発明をインパクトドライバーに連結装着するように構成する動機がない。

(ウ)本願発明の特徴的な構成への容易想到性について
本願発明は、上記イの各点において特徴を有しており、引用文献1に記載された発明及び上記(ア)及び(イ)からみて、当業者が容易に想到し得るものではない。

(エ)d 本願発明の効果について
上記(1)アカ(カ)及びキ(キ)からみて、本願発明は、「くぎの頭がなくなってもくぎが抜けるように、薄肉パイプ状に内腔を作り、くぎの胴にくびれをつけて釘が持ち上がって抜けるように改良して」(意見書第2ページ第37行−第38行)おり、「どの釘でも抜き取ることができ、広い範囲に利用できる」(意見書第2ページ第26行−第27行)ものである。

2 審判請求人の主張の検討
上記1の主張に対して、上記1(2)に従い、以下に検討する。

(1) 上記1(2)ア 本願発明について

ア 上記1(2)ア(ア)について(本願発明は「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」及び「回転釘抜き本体」を有する釘抜き装置の発明であるとする主張について)
本願の請求項1の記載から、上記第2のとおり、本願発明における「釘抜き装置」は、インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部に連結装着するという用途で用いられる「回転釘抜き本体」を有する「釘抜き装置」を意味するものと理解できるものであるが、本願発明の「釘抜き装置」を「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具」及び「回転釘抜き本体」を有するものと解しても、上記第6の1(2)アで、判断を示したとおりである。

イ 上記1(2)ア(イ)について(本願発明の「連結部」が「六角軸」であるとする主張について)

(ア)本願発明の「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部に連結装着する連結部」なる発明特定事項において、上記1(2)ア(イ)のような「六角軸」なる事項は特定されておらず、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

(イ)また、本願の明細書を参酌しても、同「連結部」が「六角軸」であることについては、何ら記載がなされておらず、本願発明の特定事項における「連結部」が「六角軸」であるとまで解されるものではないため、やはり、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

(ウ)さらに、本願の図面を参酌すると、例えば、【図2】の斜視図から、断面略六角形の軸状の「連結部5」が看取されるものの、本願の明細書においては、段落【0033】以下に【実施例】と位置づけられているものに過ぎず、かかる本願発明を実施した例のみをもって、本願発明の特定事項における「連結部」が「六角軸」であるとまで限定的に解されるものではないため、やはり、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

(エ)さらにまた、本願発明の上記発明特定事項における「インパクトドライバーまたはインパクトレンチの締付け電動工具本体先端の回転連結部」なる記載を拠り所として、当該「回転連結部」に連結装着する「連結部」が実質的に「六角軸」であるかについては、例えば、特開2015−139827号公報の段落【0023】の「図1は、インパクトレンチやオイルパルスレンチなどの衝撃レンチにおけるソケットレンチを装着するアンビル7の装着部分となる角軸部71まわりを示したものである。前記アンビル7は、4つの平面71aと各平面71a間の角部71bとからなる角軸部71、円柱部72及び角軸部71と円柱部72とを連接する連接部73を備えている。」及び【図1】の記載並びに特開2016−68238号公報の段落【0024】の「駆動回転装置の一例として、バッテリーが内蔵されたインパクトレンチについて説明する。このようなインパクトレンチは、・・・その使用場所、範囲が制限されないため、例えば高所作業等にも使用することができる。」、【0025】の「駆動回路装置には、取り付けられるソケットや切削部材等を回転させるために、駆動源からの回転駆動力を受けて回転される先端部として、差込角が設けられている。差込角は、駆動回転装置から突出する凸形状に形成される。具体例として、差込角は、直方体、立方体等を象って形成される。」、【0032】の「接続部30は直方体または立方体等を象った箱型の凹形状に形成されている。すなわち、接続部30は、対向する長方形または正方形の内面の対が2対設けられ、これら対は互いに直交する。これら4つの内面が柱状をなし、それぞれインパクトレンチの差込角の面に面接触する。なお、接続部30は、インパクトレンジの差込角の形状が直方体または立方体である場合に対応するものであり、差込角が他の形状であれば、その形状に合わせて形成されるものである。」及び【図3】−【図6】の記載において例示されるように、インパクトレンチ等の締付け電動工具本体先端の回転連結部に連結装着する連結部は、必ずしも常に六角軸、あるいは、六角軸の同回転連結部に連結装着する連結部に限定されるものではないことから、やはり、本願発明の特定事項における「連結部」が「六角軸」であるとまで限定的に解されるものではなく、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

ウ 上記1(2)ア(ウ)について(本願発明は「くぎの頭がなくなってもくぎが抜けるように、薄肉パイプ状に内腔を作り、くぎの胴にくびれをつけて釘が持ち上がって抜けるように改良して」いるものであるとの主張について)

(ア)本願発明の「筒状釘抜き体」なる発明特定事項において、上記1(2)ア(ウ)のような「薄肉」なる事項については特定されておらず、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

(イ)また、同上記1(2)ア(ウ)のような「くぎの胴にくびれをつけて」いるという事項については、本願発明の同「筒状釘抜き体」なる発明特定事項において、対応する記載は見当たらず、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

エ 上記1(2)ア(エ)について(上記イ及びウと同様な点、本願発明は「引き抜きの回転体は細く長くしてあり」なるものであるという主張について)

(ア)上記1(2)ア(エ)のうち、「六角軸」については、上記イのとおりである。

(イ)また、本願発明の同「連結部」なる発明特定事項において、上記1(2)ア(エ)のような「引き抜きの回転体は細く長くしてあり」なる事項については特定されておらず、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められない。

(ウ)さらに、上記1(2)ア(エ)のうち、「薄肉」なる事項については、上記ウのとおりである。

(2)上記1(2)イ 新規性について

ア 上記1(2)イ(ア)について(本願発明の「連結部」は「六角軸」であり、引用発明のラチェット機構3における四角の突起である「連結突起14」ないし同「連結突起14」に取付ける「取付凹部18」とは異なるものであるとの主張について)
上記(1)イのとおり、本願発明の特定事項における同「連結部」が「六角軸」であるとまで限定的に解されるものではなく、この点において引用発明と相違する旨の上記1(2)イ(ア)の主張は失当であり、上記第6の1(1)のとおり、新規性は認められない。

イ 上記1(2)イ(イ)について(本願発明は「くぎの頭がなくなってもくぎが抜けるように、薄肉パイプ状に内腔を作り、くぎの胴にくびれをつけて釘が持ち上がって抜けるように改良して」いるものであって引用発明とは異なるとの主張について)
上記(1)ウのとおり、本願発明の同「連結部」なる発明特定事項において、「薄肉」なる事項については特定されておらず、「くぎの胴にくびれをつけて」いるという事項に対応する記載は見当たらず、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められないため、これらにより引用発明とは相違する旨の上記1(2)イ(イ)の主張は失当であり、上記第6の1(1)のとおり、新規性は認められない。

ウ 上記1(2)イ(ウ)について

(ア)引用発明も、上記1(2)イ(ウ)の主張のように、本願発明と同様に「パイプの円周部を利用するもの」である。

(イ)上記(1)エのとおり、本願発明の同「連結部」なる発明特定事項について、「六角軸」であるとまで限定的に解されるものではなく、「引き抜きの回転体は細く長くしてあり」なる事項については特定されておらず、「薄肉」なる事項については特定されておらず、特許請求の範囲の記載により特定された事項に基づく主張とは認められないため、これらにより引用発明とは相違する旨の上記1(2)イ(ウ)の主張は失当であり、上記第6の1(1)のとおり、新規性は認められない。

(3)上記1(2)ウ 進歩性について

ア 上記1(2)ウ(ア)について(「技術常識」に関する主張について)
進歩性の判断の基準時は、本願の出願時であるところ、上記1(2)ウ(ア)a及びbに記載のものよりも時間的に後の時点であって、より本願の出願時に近い時点の技術常識に関する上記1(2)ウ(ア)cによると、当該時点におけるインパクトドライバーは出力が向上し、くぎ抜きにも適するものとなっていたことがうかがわれることから、当該時点よりも前の時点における上記1(2)ウ(ア)a及びbの主張は失当であり、また、当該時点の技術常識に関する上記1(2)ウ(ア)cからみて、むしろ、インパクトドライバーは釘抜き装置として利用し得るものであったと認められる。
そして、上記1(2)ウ(ア)dについて、上記第6の1(2)アで判断したとおり、上記周知技術であるソケットを手動の締付け工具と電動の締付け工具とで共用してそれらの回転連結部に連結装着することが周知の使用形態であり本願の出願時における技術常識であったと認められる。

イ 上記1(2)ウ(イ)について(「動機付け」に関する主張について)
上記アのとおり、上記1(2)ウ(ア)dによれば、本願の出願時において、むしろ、インパクトドライバーは釘抜き装置として利用し得るものであったと認められ、また、上記(ア)のとおりのものが技術常識と認められる。
そして、上記第6の1(2)アで判断したとおり、動機付けはあったものと認められる。

ウ 上記1(2)ウ(ウ)について(「本願発明の特徴的な構成への容易想到性」に関する主張について)
上記アのとおりのものが技術常識であり、また、上記イのとおり動機付けはあったものと認められる。
そして、上記第6の1(2)イで判断したとおり、相違点2に係る特定事項は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

エ 上記1(2)ウ(エ)について(「本願発明の効果」に関する主張について)
上記第6の1(2)イで判断したとおり、相違点2に係る特定事項は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、上記第6の1(2)ウのとおり、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではないものである。


第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-31 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-20 
出願番号 P2018-248951
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25C)
P 1 8・ 113- WZ (B25C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 大山 健
河端 賢
発明の名称 無頭釘の釘抜き装置  
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