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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1385575
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-11 
確定日 2022-06-08 
事件の表示 特願2019−522712「多様なファセット角を有するフレネルレンズアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月17日国際公開、WO2018/089107、令和 2年 4月23日国内公表、特表2020−512568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2019−522712号(以下「本件出願」という。)は、2017年(平成29年)9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年(平成28年)11月11日 米国 2016年(平成28年)12月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年 5月 9日提出:手続補正書
令和 元年11月21日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月26日提出:意見書
令和 2年 2月26日提出:手続補正書
令和 2年 5月 1日付け:拒絶査定
令和 2年 9月11日提出:審判請求書
令和 2年 9月11日提出:手続補正書
令和 2年 9月23日提出:手続補正書(方式)
令和 3年 8月19日付け:拒絶理由通知書
令和 3年11月24日提出:意見書
令和 3年11月24日提出:手続補正書


第2 本願発明
本件出願の請求項1〜10に係る発明は、令和3年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 装置であって、
レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み、
前記レンズ本体は前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に前記第1のファセット角と異なる第2のファセット角を有し、
前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さく
前記レンズ本体は、前記第1の表面の反対側にある第2の表面により規定される複数の第2のフレネルプリズムをさらに含み、
前記複数の第2のフレネルプリズムに含まれる各第2のフレネルプリズムは、前記第3の断面において見た場合に第3のファセット角を有し、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第4のファセット角を有し、前記第3のファセット角は前記第4のファセット角とは異なる、装置。」


第3 拒絶の理由
令和3年8月19日付けで当合議体が通知した拒絶理由のうちの理由2は、概略、本件出願の請求項1〜12に係る発明は、本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2011−507011号公報
引用文献2:特開平11−52114号公報
引用文献3:特開2006−276321号公報
引用文献4:特開2003−295051号公報
(当合議体注:引用文献1〜4は、いずれも主引例である。)


第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献2の記載事項
当合議体の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平11−52114号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。

(1)「【0001】
【技術分野】本発明は、微細凹凸パターンを有する素子を製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】例えば、球面または非球面からなるこれらの素子(レンズ、ミラー、成形型等)に、回折格子の形状を作成するとき、従来は精密旋盤によっていた。すなわち、高速で回転する素子素材の半径方向に沿って切削具をゆっくり動かし、球面または非球面という巨視的形状と回折格子としての微細な凹凸形状を同時に創成していた。このため、作成できる回折格子は、その回折溝の並び(パターン)が回転軸に対して回転対称なものに限定されていた。
【0003】
【発明の目的】本発明は、球面、非球面を問わず、さらに非球面が回転対称であると否とを問わず、任意の基礎曲面(平面を含む)上に微細凹凸パターンを形成できる素子の製造方法を得ることを目的とする。このような微細凹凸パターンを有する素子を例示すると、回折レンズ、回折ミラー、フレネルレンズ、フレネルミラー、回折型色補正の乱視矯正用眼鏡レンズ、累進多焦点眼鏡レンズ、回折型反射集光ミラー等の光学素子、及びこれらの光学素子を成形するための成形型がある。
【0004】
【発明の概要】本発明の製造方法は、素子素材に、その上に微細凹凸パターンを形成する基礎曲面を加工する工程;加工した基礎曲面上に、微細凹凸パターンの凸部に対応するマスクを形成するマスク形成工程;このマスク以外の部分の素子素材の基礎曲面表面を除去して凹部とする凹部加工工程;及び基礎曲面表面に残ったマスクを除去するマスク除去工程;を有することを特徴としている。
【0005】このマスク形成工程、凹部加工工程及びマスク除去工程は、微細凹凸パターンの溝形状に応じて、マスク形状を異ならせて複数回実行することができる。そして2回目以降のマスク形成工程では、それまでの凹部加工工程で形成されている凹部内の一部をマスクし、次の凹部加工工程で、該凹部内にさらに深い凹部を形成することができる。
【0006】基礎曲面は、微細凹凸パターンの各凸部の先端を通る曲面から構成することが好ましい。この基礎曲面は、球面であると非球面であるとを問わず、またこの基礎曲面上に形成する微細凹凸パターンは、回転対称であると、非回転対称であるとを問わないが、特に基礎曲面が非回転対称非球面であるとき、また微細凹凸パターンが非回転対称であるとき、本発明方法はより有用である。
【0007】
【発明の実施の形態】図1ないし図3は、本発明方法がより有用である微細凹凸パターンを例示するもので、図1は、非球面(トーリック面)1上に平面楕円形の同心状微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)2を有する素子3、図2は球面4上に短辺部5と長辺部6からなる矩形状の回転非対称微細凹凸パターンを有する素子7、図3はシリンダー面上に半楕円の同心状の非回転対称微細凹凸パターン8を有する素子9を示している。本発明方法は、基礎曲面の形成(加工)が可能である限り、これらの形態を問わずにその基礎曲面上に微細凹凸パターンを形成することができるものである。
【0008】図4、図5は、基礎曲面及びその加工方法の例を示している。図4は、基礎曲面をトーリック面10とする素子11を形成する例であって、軸12を中心に回転駆動されるホルダ13の周囲に、複数の素子11が保持されており、この素子11に対して、直交二方向の曲率半径が異なるポリシャ14を当てて研磨することにより、トーリック面10が得られる。図5は、旋盤15に保持して回転駆動する素子16に、刃物17を当てて径方向及び回転軸と平行な方向に移動させることにより、素子16上に球面または回転対称非球面18を形成する例である。
【0009】次に、基礎曲面形状の決定方法の一例を図6、図7について説明する。図6は、凸部21と凹部22を交互に有する微細な凹凸パターンの一例を示しており、微細な凹凸のピッチpに対して、深さdを拡大して(例えば20倍程度)描いている。実際のピッチpは例えば、20μm前後、深さdは1μm程度を予定している。図7は、この微細凹凸パターンの凸部21の先端21tどうしを結んで描いた基礎曲面23である。
【0010】本発明は、任意の方法により、素子素材(硝子、プラスチック、金型素材)24上に、まずこの基礎曲面23を形成し、次に、この基礎曲面23上に微細凹凸パターンを形成するものであって、マスク形成工程、凹部加工工程及びマスク除去工程を有し、これらの工程を必要に応じ、複数回繰り返す。
【0011】図8ないし図15は、その工程例を示している。図8は、図7の基礎曲面23から一つの凸部21(隣り合う2つの先端21t)だけを取り出して描いたものである。理想的な凹部22は、一つの先端21tから隣りの先端21tに向けて徐々に深くなる形状をしている。この工程例は、3回の工程によってこの凹部22を形成する例である。
【0012】基礎曲面23上には、隣り合う先端21tの間の凹部22の深い側の所要長さ(領域)を除いて、第1マスキング(マスク)251を施す(図9)。この第1マスキング251は、基礎曲面23表面をエッチングするとき、第1マスキング251で覆われた部分をエッチングさせない材料、例えばアルミニウム薄膜から構成する。
【0013】この第1マスキング工程(マスク形成工程)が終了した基礎曲面23をエッチングし、第一工程凹部261を形成する。この第1エッチング工程(凹部加工工程)では、凹部22の理想深さdの略半分の深さの第一工程凹部261が形成されるように、エッチング条件を定める(図10)。エッチングは、例えばイオンエッチング、反応性イオンエッチング等を用いることができる。
【0014】次に、残存している第1マスキング251を除去(マスク除去工程)してから、第2マスキング工程により、第一工程凹部261と基礎曲面23の表面に再び第2マスキング(マスク)252を施す。第2マスキング252は、第一工程凹部261内の凹部22の深い側の所要長さ(領域)と、基礎曲面23の表面の第一工程凹部261に続く所要長さ(領域)を除いて、施される(図11)。この第2マスキング252が終了した基礎曲面23を、第2エッチング 工程により再びエッチングして、第二工程凹部262を、第一工程凹部261内と基礎曲面23の表面にそれぞれ形成する。この第二工程凹部262の深さは、第一工程凹部261の約半分である(図12)。
【0015】同様にして、残存している第2マスキング252を除去してから、第3マスキング工程により、第一工程凹部261、第二工程凹部262及び基礎曲面23の表面に再び第3マスキング(マスク)253を施す。第3マスキング253は、第一工程凹部261内の凹部22の深い側の所要長さ(領域)と、第二工程凹部262内の凹部22の深い側の所要長さ(領域)と、基礎曲面23の表面の第二工程凹部262に続く所要長さ(領域)を除いて、施される(図13)。この第3マスキング253が終了した基礎曲面23を、第3エッチング工程により再びエッチングして、第三工程凹部263を、第一工程凹部261内、第二工程凹部262内及び基礎曲面23の表面にそれぞれ形成する。この第三工程凹部263の深さは、第二工程凹部262の約半分である(図14)。そして、最後に、第3マスキング253を除去すれば、これらの第一工程凹部261、第二工程凹部262、及び第三工程凹部263により、理想とする凹部22の形状に近い形状の最終凹部が形成される(図15)。
・・・省略・・・
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、基礎曲面が球面か非球面か、微細凹凸パターンが回転対称か非対称か等を問わずに、微細凹凸パターンを有するレンズ、ミラー、成形型等の素子を製造することができる。」

(2)図1


(3)図4


(4)図5


(5)図15



2 引用発明2
上記1の【0003】及び【0007】より、引用文献2には、非球面(トーリック面)1上に平面楕円形の同心状微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)2を有する素子3を具備する回折型色補正の乱視矯正用眼鏡レンズとして、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「 非球面(トーリック面)上に平面楕円形の同心状微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)を有する素子を具備する回折型色補正の乱視矯正用眼鏡レンズ。」

3 引用文献3
当合議体の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2006−276321号公報(以下、同じく「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野レンズの前面部が平面状に設けられ、該前面部に連続した視野レンズの側面部がトーリック面状に設けられると共に、該側面部には水中における負の光学的屈折力を補正するフレネルレンズ部が設けられたことを特徴とする水中眼鏡。
【請求項2】
前記視野レンズが2層以上の透明素材からなり、該層同士が対向する面の少なくとも一つの面に前記フレネルレンズ部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の水中眼鏡。
【請求項3】
前記視野レンズが外側層と内側層の2層からなり、前記外側層の内面に前記フレネルレンズ部が設けられたことを特徴とする請求項2記載の水中眼鏡。」

(2)「【技術分野】
【0001】
この発明は、視野レンズの側面部における光学的屈折力の補正を行い、水中での視野を好適に拡大できる水中眼鏡及び水中眼鏡用レンズに関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水中眼鏡及び水中眼鏡用レンズに関して解決しようとする問題点は、像の見え方の異常を抑制して広い視野を確保できるものを、高精度且つ安価に製造できない点にある。
そこで本発明の目的は、像の見え方の異常を好適に抑制でき、高精度且つ安価に製造できる形態の水中眼鏡及び水中眼鏡用レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、視野レンズの前面部が平面状に設けられ、該前面部に連続した視野レンズの側面部がトーリック面状に設けられると共に、該側面部には水中における負の光学的屈折力を補正するフレネルレンズ部が設けられたことを特徴とする。
また、本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、前記視野レンズが2層以上の透明素材からなり、該層同士が対向する面の少なくとも一つの面に前記フレネルレンズ部が設けられたことを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、前記視野レンズが外側層と内側層の2層からなり、前記外側層の内面に前記フレネルレンズ部が設けられたことを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、前記視野レンズが左右に分割された形態であって、該左右の視野レンズが同一形状であることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、前記視野レンズの最内面が、所要の視力矯正力を有する曲面に形成されたことを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、前記トーリック面が始まる位置を、人間の平均的瞳孔位置と同等若しくはそれより外側にすることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる水中眼鏡の一形態によれば、前記視野レンズの最内面に、曇り止め処理を施したことを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる水中眼鏡用レンズの一形態によれば、以上に記載の水中眼鏡に用いられるべく設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中眼鏡及び水中眼鏡用レンズによれば、像の見え方の異常を抑制して広い視野を確保でき、高精度且つ安価に製造できるという特別顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る水中眼鏡及び水中眼鏡用レンズの最良の形態の一例を添付図面に基いて詳細に説明する。図5は本発明に係る水中眼鏡の外観を示す斜視図である。図6(A)は水中眼鏡用の視野レンズの断面図であり、図6(B)は各視線位置a〜dに対応する像の見え方の説明図である。
10は視野レンズであり、前面部11が平面状に設けられ、その前面部11に連続した側面部12がトーリック面状に設けられている。そして、その側面部12には水中における負の光学的屈折力を補正するフレネルレンズ部13が設けられている。また、側面部12は使用者の顔面に沿うように湾曲した形態となっている。ここで、トーリック面とは、円形の周線を曲率半径の中心として形成される曲面である。
なお、上記のトーリック面状とは、厳密な意味でのトーリック面に限定されず、トーリック面に相当する曲面を含むことを意味する。従って、トーリック面状とは、少なくとも回転体に設けられる曲面であればよい(図7参照)。すなわち、旋盤加工によって樹脂成形金型に設けることができる形状であればよい。
【0010】
前面部11が平面状に設けられることで、水中及び大気中において、高分解能の観察や両眼視が可能な前方の視野を好適に確保できる。
また、側面部12は、正の屈折力を持つフレネルレンズ(フレネルレンズ部13)となっている。従って、水中において、側面部12の湾曲による負の屈折力を相殺し、屈折力の異常や歪みを抑制できる。さらに、前面部11と側面部12との境界において光学的特性が滑らかに連続しているので、死角や重複のない視野を確保できる。
【0011】
本形態例の視野レンズ10は、外側層20と内側層30の2層の透明素材から構成されている。どちらの層20、30もトーリック面状に設けられた曲面部(側面部12)を備える板状である。また、2つの層20、30は、フレネルレンズ素子を形成する溝の部分を除いて接触する状態で重ね合わされている。そして、外側層20の内面にフレネルレンズ部13が設けられている。
本発明の視野レンズ10は、これに限らず、さらに多くの層から構成されてもよい。また、層同士が対向する面の少なくとも一つの面にフレネルレンズ部13が設けられればよく、複数の面にフレネルレンズ部13が形成されてもよい。
また、本形態例の視野レンズ10は、左右に分割された形態であって、その左右の視野レンズ10が同一形状に設けられている。
【0012】
このように視野レンズ10が形成されているため、樹脂成形金型を用いて高精度且つ安価に製造できる。その理由を以下に説明する。
先ず、側面部12をトーリック面状としたため、図7に示すような円形状の形態に金型50を製作することができる。(図7はトーリック面状の側面部12にフレネルレンズ部13を形成するための金型50の斜視図である。)これによれば、金型50を、旋盤加工(切削加工)で高精度且つ安価に製作できる。なお、図7に示した回転体の一部を視野レンズ10の金型として用いればよい。
さらに、外側層20の内面にフレネルレンズ部13を設けるため、金型50の凸面に複数のフレネル光学素子を設けるためのリング状溝51が刻設されている(図7)。金型50の凸面(トーリック面)を加工する方が、凹面を加工する場合よりも製作し易い利点がある。
また、側面部12をトーリック面状としたため、対称性があり、左右の視野レンズ10を同一形状としても好適な形態となる。このため、左右の視野レンズ10を一つの金型で製造することが可能となる。
従って、水中眼鏡及び水中眼鏡用レンズを、品質良く且つ安価に量産できる。
【0013】
また、図8に示すように、視野レンズ10aの最内面が、所要の視力矯正力を有する曲面に形成されてもよい。視野レンズ10aの最内面とは、内側層30aの内面である。本形態例では、前面視野を球面レンズ33で矯正し、側面視野を度入りのトーリックレンズ35で矯正するように設けられている。なお、視野レンズ10の前面部11における視力矯正用レンズのレンズ光軸(近視用では最薄部、遠視用では最厚部のレンズ面に対する法線)が、使用時において視軸と略一致するように設定するとよい。このような度入りの形態のレンズも、外側層20のレンズと同様に旋盤加工で金型を製作できる。従って、品質良く且つ安価に量産できる。
【0014】
また、上記のトーリック面が始まる位置を、人間の平均的瞳孔位置と同等若しくはそれより外側にするとよい。さらに、注視野に対応する視野レンズ10の部位を平面状の前面部11とし、その外側をトーリック面の側面部12としてもよい。これによれば、陸上における前方視野を好適に確保できる。なお、注視野とは人間が高い分解能で見ることのできる視野のことである。これに対して静視野とは注視野の外側まで広がっている視野のことである。
また、視野レンズ10の最内面に、曇り止め処理を施すとよい。
【0015】
さらに、本発明に係る具体例の詳細について以下に説明する。
本形態例では、前面部11と側面部12は、窓枠を介在せずに一体的に構成されている。また、視野レンズ10は、外側層20と内側層30とを重ねて配置し且つ気密した二重構造になっている。なお、外側層20と内側層30との間の気密は、各層20、30の外周部分を接着、溶着又はゴム素材のガスケット等を用いて行うことができる。
また、フレネルレンズ部13の各帯状プリズムの凹凸面は、外側層20の内側層30へ面する側に形成され、上記のように気密されている。これにより、帯状プリズムの凹凸部分が常に乾燥した状態に保たれ、帯状プリズムのピッチを0.5mm未満にしても、毛細管現象で凹凸部分に水が付着することを防止できる。このため、フレネル光学素子の効果が失われることはない。従って、ピッチの細かいフレネルレンズを用いて、高分解能の視野を確保できる。
【0016】
また、各帯状プリズムの境界部分に存在する光学的に利用されない段差面を、その段差面の傾斜角を調整することにより、視野から取り除くことが可能である。従って、段差面によるゴースト像やフレアを抑えて、コントラストの高い視野を確保することができる。
【0017】
本発明に係る水中眼鏡用レンズの光学系を構成する剛性のある透明材料としては、カーボネート系、アクリル系、ポリエチレン系、ウレタン系、エポキシ系その他の各種プラスチック材料、或いはガラス材料を用いることができる。
本発明に係る水中眼鏡用レンズが有するフレネル光学素子は、プレス成形、射出成形、紫外線硬化型樹脂成形、真空圧空成形その他の各種成形方法によって成形することができる。
【0018】
また、本発明に係る水中眼鏡用レンズにおいて、平板状の前面部11の外面は、完全な平面である必要はなく、微小な曲率を持つ曲面であってもよい。
さらに、本発明に係る水中眼鏡レンズにおいて、フレネル光学素子を備えた側面部12は、左右の側面だけでなく、上下の側面に配置してもよい。
【0019】
本発明に係る水中眼鏡は、スキューバ・ダイビング用、又はスキン・ダイビング用として好適に用いることができる。また、スイミング・ゴーグルとしても好適に用いることができる。また、以上に説明した水中眼鏡に用いられるべく設けられた水中眼鏡用レンズは、部品として単体で流通させることができる。
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。」

(3)図5




(6)図6




4 引用発明3
上記3より、引用文献3には、請求項1記載の水中眼鏡を引用する請求項2に係る発明として、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

「 視野レンズの前面部が平面状に設けられ、該前面部に連続した視野レンズの側面部がトーリック面状に設けられると共に、該側面部には水中における負の光学的屈折力を補正するフレネルレンズ部が設けられたことを特徴とする水中眼鏡であって、
前記視野レンズが2層以上の透明素材からなり、該層同士が対向する面の少なくとも一つの面に前記フレネルレンズ部が設けられたことを特徴とする水中眼鏡。」

5 引用文献4
当合議体の拒絶の理由で引用文献4として引用され、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2003−295051号公報(以下、同じく「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等で活用した箇所である。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、保護層の厚さや記録密度が異なる複数種類の光ディスクに対する記録/再生が可能な光ディスク装置、およびこれに含まれる光ヘッド、対物レンズに関する。
・・・省略・・・
【0007】本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、2つの半導体レーザーを1つのパッケージに組み込んだモジュールを利用し、対物レンズ等の光学素子を2つの波長について兼用した場合にも、収差の発生を抑え、規格が異なる複数の光ディスクに対して信号の記録再生が可能な光ディスク装置、およびこれに含まれる光ヘッド、対物レンズの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる対物レンズは、上記の目的を達成させるため、短波長のレーザー光を保護層が薄く記録密度が高い第1の光ディスクに集光させる際に、軸上で波面収差0.01λ[rms]以上に相当する非点収差を発生させると共に、当該対物レンズの光軸と光ディスクの法線とが一致する仮想状態において、短波長のレーザー光を第1の光ディスクに集光させる際と長波長のレーザー光を第2の光ディスクに集光させる際とで逆符号の軸外の3次コマ収差を発生させることを特徴とする。
【0009】上記のように軸上で非点収差を発生させることにより、いずれの光ディスクに対しても、波面収差の最小値は増加するものの、波面収差が許容値以下になる入射角度の範囲を広げることができる。また、第1の光ディスクと第2の光ディスクとに対して逆符号のコマ収差を発生させるよう設定すると、対物レンズの光軸と光ディスクの法線とを相対的に傾けることにより、第1、第2の光ディスクに対して互いに異なる入射角度で波面収差を補正することができる。すなわち、第1、第2の光ディスクに対して波面収差が最小となる入射角度が、0度を基準にして互いに逆方向にシフトし、波面収差が許容レベル以下となる入射角度の範囲も同様に入射角度0度を基準にして互いに逆方向にシフトする。したがって、第1の光ディスクに対する入射角度の範囲が、従来のように第2の光ディスクに対する入射角度の範囲に含まれるのではなく、一部が重複したとしても、それぞれ異なる範囲に分布する。このため、2つの発光点を備えるレーザーモジュールを利用する場合(各発光点から発して対物レンズに入射するレーザー光が所定の角度差を持つ場合)にも、設定できる入射角度の範囲が広く、従来のような厳密な設定は不要となる。
・・・省略・・・
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる対物レンズ、およびこれを利用した光ヘッド、光ディスク装置の実施形態を説明する。最初に、光ヘッドを含む光ディスク装置の実施形態を説明した後、対物レンズの具体的な設計例を説明する。図1は実施形態にかかる光ディスク装置を示す斜視図、図2は図1の光ディスク装置に含まれる光ヘッドの光路を展開して示す説明図である。
【0022】実施形態の光ディスク装置1は、0.6mmの保護層を有する記録密度が高いDVD等の第1の光ディスクD1と、1.2mmの保護層を有する記録密度が低いCD,CD−R等の第2の光ディスクD2とを利用可能である。光ディスク装置1は、図1に示すように、第1,第2の光ディスクD1,D2を回転させるスピンドルモーター2と、光ヘッド10とを備えている。光ヘッド10は、図示せぬ駆動機構により光ディスクD1,D2の半径方向Rにスライドされる。
【0023】光ヘッド10は、第1,第2の半導体レーザー11a,11bを内蔵するレーザーモジュール11、各半導体レーザーから発した発散光を平行光に変換するコリメーターレンズ12、レーザー光の断面形状を整形すると共にモニター用のレーザー光を分離するビーム整形・分離プリズム13、分離されたモニター光を受光するモニターセンサ14、プリズム13を透過したレーザー光を光ディスクD1,D2に向けて反射させる立ち上げミラー15、そして、反射されたレーザー光を光ディスクD1,D2の記録面に収束させる対物レンズ20を備えている。
・・・省略・・・
【0029】続いて、図3に基づいて対物レンズ20の詳細について説明する。図3は、対物レンズ20を示す説明図であり、(A)は正面図、(B)は側面から見た断面図、(C)は(B)の一部拡大図である。対物レンズ20は、図3(B)に示すような両凸の単レンズであり、コリメーターレンズ12側となる第1面21は回転対称な非球面上に回折レンズ構造を形成して構成され、光ディスク側となる第2面22は方向によりパワーが異なるトーリック非球面として構成されている。トーリック非球面は、光軸に対して回転非対称であり、主経線に沿う断面形状が非円弧となる曲面である。
【0030】対物レンズ20の第1面21には、図3(A)に示すように光軸を中心とした輪帯状のパターンとして回折レンズ構造が形成されている。回折レンズ構造は、フレネルレンズのように各輪帯の境界に光軸方向の段差を持つ。対物レンズ20の第1面21は、記録密度の低いCD,CD−R等の第2の光ディスクD2に必要十分な低NAの光束が透過する共用領域Rcと、この共用領域Rcの周囲に位置し、DVD等の記録密度の高い第1の光ディスクD1に対してのみ必要な高NAの光束が透過する高NA専用領域Rhとに区分することができる。回折レンズ構造は、共用領域Rcと高NA専用領域Rhとを含む第1面21の全域に形成されている。
【0031】第1面21に形成された回折レンズ構造は、波長が長くなるにしたがって補正不足となる球面収差の波長依存性を有する。光ヘッドの球面収差は、保護層が厚くなるとより補正過剰となる方向に変化する。一方、保護層が薄い第1の光ディスクD1については短波長、保護層が厚い第2の光ディスクD2については長波長のレーザー光が用いられる。そこで、第1の光ディスクD1の使用時を基準として球面収差を補正し、上記のように回折レンズ構造に波長が長波長に変化した場合に球面収差が補正不足となる方向に変化する特性を持たせることにより、DVDからCDへの切換で補正過剰となる球面収差を、波長の長波長側への変化により生じる回折レンズ構造の補正不足方向の球面収差を利用して打ち消すことができる。
【0032】また、第2面22をトーリック非球面とすることにより、対物レンズ20は、光軸Axと平行に垂直入射する光束に対して所定の非点収差を発生させる。すなわち、対物レンズ20は、第1の半導体レーザー11aからのレーザー光を第1の光ディスクD1に集光させる際に、軸上で波面収差0.01λ[rms]以上に相当する非点収差を発生させることにより、軸外の所定の入射角度で非点収差を補正している。」

(2)図1




(3)図2



(4)図3



6 引用発明4
上記5より、引用文献4には、光ヘッドを含む光ディスク装置として、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されている。

「光ヘッドを含む光ディスク装置であって、
光ヘッドは、第1,第2の半導体レーザーを内蔵するレーザーモジュール、各半導体レーザーから発した発散光を平行光に変換するコリメーターレンズ、レーザー光の断面形状を整形すると共にモニター用のレーザー光を分離するビーム整形・分離プリズム、分離されたモニター光を受光するモニターセンサ、プリズムを透過したレーザー光を光ディスクに向けて反射させる立ち上げミラー、そして、反射されたレーザー光を光ディスクの記録面に収束させる対物レンズを備えており、
対物レンズは、両凸の単レンズであり、コリメーターレンズ側となる第1面は回転対称な非球面上に回折レンズ構造を形成して構成され、光ディスク側となる第2面は方向によりパワーが異なるトーリック非球面として構成され、トーリック非球面は、光軸に対して回転非対称であり、主経線に沿う断面形状が非円弧となる曲面であり、第1面には、光軸を中心とした輪帯状のパターンとして回折レンズ構造が形成されている、
光ディスク装置。」


第5 対比・判断
1 引用発明2を主引例とした場合
(1)本願発明と引用発明2との対比
本願発明と引用発明2とを対比する。

ア レンズ本体について
引用発明2の「素子」は、「非球面(トーリック面)上に平面楕円形の同心状微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)を有する」。
上記構成からみて、引用発明2の「素子」は、本願発明の「レンズ本体」に相当する。
また、技術的にみて、引用発明2の「同心状」及び「微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)」は、それぞれ、本願発明の「ループ状」及び「フレネルプリズム」に相当する。さらに、引用発明2の「微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)」は、同心状に延在する少なくとも1つの微細凹凸パターンを規定する非球面(トーリック面)を有するといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」のいずれの表面を第1とするかは随意であるから、引用発明2「非球面(トーリック面)」は、本願発明の「第1の表面」に相当する。
そうしてみると、引用発明2の「素子」は、本願発明の「レンズ本体」の「ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有する」との要件を満たす。

イ レンズ本体の第1の断面及び第2の断面について
引用発明2の「素子」は、「非球面(トーリック面)」を有する。
上記構成からみて、引用発明2の「素子」は、素子のある位置において直交する2つの断面の各々から見た場合に湾曲しているといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」のある位置において直交する2つの断面のいずれを第1及び第2とするかは随意である。
そうしてみると、引用発明2の「素子」は、本願発明の「レンズ本体」の「前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており」との要件を満たす。

ウ レンズ本体の第1の曲率半径及び第2の曲率半径について
上記イの構成からみて、引用発明2の「素子」の表面は、ある断面において、曲率半径にほぼ適合しており、また、2つの平行な断面において、2つの曲率半径のいずれか一方は他方よりも小さいといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」の第1の表面において、2つの断面のいずれを第3及び第4とするかは随意であり、また、2つの断面の曲率半径のいずれを第1及び第2とするかも随意である。
そうしてみると、引用発明2の「素子」は、本願発明の「レンズ本体」の「前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており」、「前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており」及び「前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さく」との要件を満たす。

エ フレネルプリズムのファセット角について
技術的にみて、引用発明2の「微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)」は、ファセット角を有するといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」の第1の表面において、2つの断面のいずれを第3及び第4とするかは随意であることは、上記ウで述べたとおりである。また、本願発明の「第3の断面」及び「第4の断面」のそれぞれにおいて見た場合におけるファセット角のいずれを第1及び第2とするかも随意である。
そうしてみると、引用発明2の「微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)」は、本願発明の「フレネルプリズム」の「前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し」及び「前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に」「第2のファセット角を有し」との要件を満たす。

オ 装置及びレンズアセンブリ
上記ア〜エを総合すると、引用発明2の「眼鏡レンズ」は、本願発明の「装置」に相当する。また、引用発明2の「眼鏡レンズ」は、レンズアセンブリを具備するといえる。
そうしてみると、引用発明2の「眼鏡レンズ」は、本願発明の「装置」の「レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明2は、以下の点で一致する。

「 装置であって、
レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み、
前記レンズ本体は前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第2のファセット角を有し、
前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さい、装置。」

イ 相違点
本願発明と引用発明2は、以下の点で相違するか、一応相違する。
(相違点2−1)
「フレネルプリズム」が、本願発明は、「前記第1のファセット角と異なる第2のファセット角を有」するのに対して、引用発明2の「微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)」は、この点が一応明らかでない点。

(相違点2−2)
「レンズ本体」が、本願発明は、「前記レンズ本体は、前記第1の表面の反対側にある第2の表面により規定される複数の第2のフレネルプリズムをさらに含み、前記複数の第2のフレネルプリズムに含まれる各第2のフレネルプリズムは、前記第3の断面において見た場合に第3のファセット角を有し、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第4のファセット角を有し、前記第3のファセット角は前記第4のファセット角とは異なる」のに対して、引用発明2の「素子」は、このような構成でない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点2−1について
フレネルプリズムにおいて平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせることは慣用手段であるところ、引用文献2の図15においても平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角が異なっていることが看取できる。
そうしてみると、上記相違点2−1は、実質的な差異ではない。仮に相違するとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

イ 相違点2−2について
両面にフレネルプリズムを含む光学部材は、周知技術(例えば、特開2000−249965号公報の【0012】〜【0015】、図2〜図4、米国特許出願公開第2016/0011341号明細書の[0037]〜[0038]、図9参照。)である。
上記周知技術を心得た当業者であれば、引用発明2の素子の非球面(トーリック面)の反対側にある面にも微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)を有するようにすることは、当然想起するものである。
そして、フレネルプリズムにおいて平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせることは慣用手段であるところ、引用文献2の図15においても平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角が異なっていることが看取できることは、上記アで述べたとおりであり、引用発明2の素子の非球面(トーリック面)の反対側にある面に微細凹凸パターン(非回転対称回折パターン)を有するようにするにあたって、2つの平行な断面のそれぞれのファセット角を異ならせるようにすることは、当業者にとって当然なし得る設計事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明2に上記周知技術を適用して上記相違点2−2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年11月24日提出の意見書において、「引用文献2の開示によれば、素子11または素子16の加工面の反対側の面に対して加工することについて何らの言及もありません。図4の開示によれば、素子11の一つの表面の加工が完了した後に素子11をホルダ13から取り外して、他の面が素子11に加工されるように素子11をホルダ13に取り付け直す必要があります。その場合、最初の加工面が損傷する恐れもありますので、引用文献2の開示に接した当業者であれば、両面を加工する構成を採用し得ず、引用文献2の開示は、補正後の請求項1に係る発明に想到する上での阻害要因にすらなるものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、両面にフレネルプリズムを含む光学部材は、周知技術である以上、引用文献2に開示の素子の製造においても、両面を加工する製造装置及び製造方法を採用することは、当業者が当然想起するものである。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(5)小括
本願発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明3を主引例とした場合
(1)本願発明と引用発明3との対比
本願発明と引用発明3とを対比する。

ア レンズ本体について
引用発明3の「視野レンズ」は、「前面部が平面状に設けられ、該前面部に連続した視野レンズの側面部がトーリック面状に設けられると共に、該側面部には水中における負の光学的屈折力を補正するフレネルレンズ部が設けられ」ている。
上記構成からみて、引用発明3の「視野レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」に相当する。
また、技術的にみて、引用発明3の「フレネルレンズ部」は、本願発明の「フレネルプリズム」に相当する。さらに、引用発明3の「視野レンズ」は、少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する「層同士が対向する面の少なくとも一つの面」を有するといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」のいずれの表面を第1とするかは随意であるから、引用発明3の「層同士が対向する面の少なくとも一つの面」は、本願発明の「第1の表面」に相当する。
そうしてみると、引用発明3の「視野レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」の「少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有する」との要件を満たす。

イ レンズ本体の第1の断面及び第2の断面について
引用発明3の「視野レンズ」は、「側面部がトーリック面状に設けられると共に、該側面部には水中における負の光学的屈折力を補正するフレネルレンズ部が設けられ」ている。
上記構成からみて、引用発明3の「視野レンズ」は、視野レンズのある位置において直交する2つの断面の各々から見た場合に湾曲しているといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」のある位置において直交する2つの断面のいずれを第1及び第2とするかは随意である。
そうしてみると、引用発明3の「視野レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」の「前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており」との要件を満たす。

ウ レンズ本体の第1の曲率半径及び第2の曲率半径について
上記イの構成からみて、引用発明3の「視野レンズ」の側面部は、ある断面において、曲率半径にほぼ適合しており、また、2つの平行な断面において、2つの曲率半径のいずれか一方は他方よりも小さいといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」の第1の表面において、2つの断面のいずれを第3及び第4とするかは随意であり、また、2つの断面の曲率半径のいずれを第1及び第2とするかも随意である。
そうしてみると、引用発明3の「視野レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」の「前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており」、「前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており」及び「前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さく」との要件を満たす。

エ フレネルプリズムのファセット角について
技術的にみて、引用発明3の「フレネルレンズ部」は、ファセット角を有するといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」の第1の表面において、2つの断面のいずれを第3及び第4とするかは随意であることは、上記ウで述べたとおりである。また、本願発明の「第3の断面」及び「第4の断面」のそれぞれにおいて見た場合におけるファセット角のいずれを第1及び第2とするかも随意である。
そうしてみると、引用発明3の「フレネルレンズ部」は、本願発明の「フレネルプリズム」の「前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し」及び「前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に」「第2のファセット角を有し」との要件を満たす。

オ 装置及びレンズアセンブリ
上記ア〜エを総合すると、引用発明3の「水中眼鏡」は、本願発明の「装置」に相当する。また、引用発明3の「水中眼鏡」は、レンズアセンブリを具備するといえる。
そうしてみると、引用発明3の「水中眼鏡」は、本願発明の「装置」の「レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは」、「少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明3は、以下の点で一致する。

「 装置であって、
レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み、
前記レンズ本体は前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第2のファセット角を有し、
前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さい、装置。」

イ 相違点
本願発明と引用発明3は、以下の点で相違するか、一応相違する。

(相違点3−1)
「フレネルプリズム」が、本願発明は、「ループ状に延在する」のに対して、引用発明3の「フレネルレンズ部」は、このような構成でない点。

(相違点3−2)
「フレネルプリズム」が、本願発明は、「前記第1のファセット角と異なる第2のファセット角を有」するのに対して、引用発明3の「フレネルレンズ部」は、この点が一応明らかでない点。

(相違点3−3)
「レンズ本体」が、本願発明は、「前記レンズ本体は、前記第1の表面の反対側にある第2の表面により規定される複数の第2のフレネルプリズムをさらに含み、前記複数の第2のフレネルプリズムに含まれる各第2のフレネルプリズムは、前記第3の断面において見た場合に第3のファセット角を有し、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第4のファセット角を有し、前記第3のファセット角は前記第4のファセット角とは異なる」のに対して、引用発明3の「視野レンズ」は、このような構成でない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点3−1について
フレネルプリズムにおいてループ状に延在することは慣用手段であるところ、ループ状のフレネルレンズの一部を用いるか全体を用いるかは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明3において上記相違点3−1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点3−2について
フレネルプリズムにおいて平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせることは慣用手段であるところ、引用文献3の図6においても平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角が異なっていることが看取できる。
そうしてみると、上記相違点3−2は、実質的な差異ではない。仮に相違するとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。

ウ 相違点3−3について
引用発明3の「視野レンズ」は2層以上の透明部材からなるものであるから、3層以上の透明部材からなる場合に、フレネルレンズ部を複数設けることは、当然想起されるものである(引用文献3の【0011】参照)。
ここで、両面にフレネルプリズムを含む光学部材が、周知技術であることは、上記2(3)イで述べたとおりであり、上記周知技術を心得た当業者であれば、引用発明3の「視野レンズ」を3層以上の透明部材からなるものとした場合において、「層同士が対向する面」が両面にある層の両面にフレネルレンズ部を設けるようにすることに、何ら格別の困難性はない。
そして、フレネルプリズムにおいて平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせることは慣用手段であるところ、引用文献3の図6においても平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角が異なっていることが看取できることは、上記イで述べたとおりであり、引用発明3の視野レンズのフレネルレンズ部が設けられた面と反対側にある面にフレネルレンズ部を設けるにあたって、2つの平行な断面のそれぞれのファセット角を異ならせるようにすることは、当業者にとって当然なし得る設計事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明3に上記周知技術を適用して上記相違点3−3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年11月24日提出の意見書において、「引用文献3の発明は、「前記視野レンズが外側層と内側層の2層からなり、前記外側層の内面に前記フレネルレンズ部が設けられたことを特徴」としますが(請求項2)、外側層の外面にもフレネルレンズ部が設けられることについては特段の言及がありません。2)そして、水中眼鏡の外側のレンズにフレネルレンズ部が設けられていない現状に対して、引用文献3に記載の発明が「像の見え方の異常を抑制して広い視野を確保でき、高精度且つ安価に製造できるという特別顕著な効果を奏する」(段落0008)以上、当業者であれば、さらにコストをかけて、外側のレンズにフレネルレンズ部を設けるということを行わないものと思料致します。むしろ、段落0008の記載は、当業者が両面にフレネルレンズ部を設けることについての阻害要因にすらなるものです。」と主張している。
しかしながら、安価であるかどうかは相対的な問題であって、引用文献3の【0011】に「複数の面にフレネルレンズ部13が形成されてもよい」と記載されているように、コストをかけても高精度な効果を求めることは当然想定されることであり、引用文献3の【0008】の記載によっても阻害要因になるとまではいえない。その余の点は、上述したとおりである。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(5)小括
本願発明は、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 引用発明4を主引例とした場合
(1)本願発明と引用発明4との対比
本願発明と引用発明4とを対比する。

ア レンズ本体について
引用発明4の「対物レンズ」は、「両凸の単レンズであり、コリメーターレンズ側となる第1面は回転対称な非球面上に回折レンズ構造を形成して構成され、光ディスク側となる第2面は方向によりパワーが異なるトーリック非球面として構成され、トーリック非球面は、光軸に対して回転非対称であり、主経線に沿う断面形状が非円弧となる曲面であり、第1面には、光軸を中心とした輪帯状のパターンとして回折レンズ構造が形成されている」。
上記構成からみて、引用発明4の「対物レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」に相当する。
また、技術的にみて、引用発明4の「輪帯状」及び「回折レンズ構造」は、それぞれ、本願発明の「ループ状」及び「フレネルプリズム」に相当する。さらに、引用発明4の「回折レンズ構造」は、輪帯状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1面を有するといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」のいずれの表面を第1とするかは随意であるから、引用発明4の「第1面」は、本願発明の「第1の表面」に相当する。
そうしてみると、引用発明の「対物レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」の「ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有する」との要件を満たす。

イ レンズ本体の第1の断面及び第2の断面について
引用発明4の「対物レンズ」は、「第2面は方向によりパワーが異なるトーリック非球面として構成され」る。
上記構成からみて、引用発明4の「対物レンズ」は、対物レンズのある位置において直交する2つの断面の各々から見た場合に湾曲しているといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」のある位置において直交する2つの断面のいずれを第1及び第2とするかは随意である。
そうしてみると、引用発明4の「対物レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」の「前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており」との要件を満たす。

ウ レンズ本体の第1の曲率半径及び第2の曲率半径について
上記イの構成からみて、引用発明4の「対物レンズ」の表面は、ある断面において、曲率半径にほぼ適合しており、また、2つの平行な断面において、2つの曲率半径のいずれか一方は他方よりも小さいといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」の第1の表面において、2つの断面のいずれを第3及び第4とするかは随意であり、また、2つの断面の曲率半径のいずれを第1及び第2とするかも随意である。
そうしてみると、引用発明4の「対物レンズ」は、本願発明の「レンズ本体」の「前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており」、「前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており」及び「前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さ」くとの要件を満たす。

エ フレネルプリズムのファセット角について
技術的にみて、引用発明4の「回折レンズ構造」は、ファセット角を有するといえる。ここで、本願発明の「レンズ本体」において、2つの断面のいずれを第3及び第4とするかは随意であることは、上記ウで述べたとおりである。また、本願発明の「第3の断面」及び「第4の断面」のそれぞれにおいて見た場合におけるファセット角のいずれを第3及び第4とするかも随意である。
そうしてみると、引用発明4の「回折レンズ構造」は、本願発明の「フレネルプリズム」の「前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し」及び「前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に」「第2のファセット角を有し」との要件を満たす。

オ 装置及びレンズアセンブリ
上記ア〜エを総合すると、引用発明4の「光ディスク装置」は、本願発明の「装置」に相当する。また、引用発明4の「光ディスク装置」は、レンズアセンブリを具備するといえる。
そうしてみると、引用発明4の「光ディスク装置」は、本願発明の「装置」の「レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明4は、以下の点で一致する。

「 装置であって、
レンズアセンブリを備え、前記レンズアセンブリは、ループ状に延在する少なくとも1つのフレネルプリズムを規定する第1の表面を有するレンズ本体を含み、
前記レンズ本体は前記レンズ本体のある位置において直交する第1の断面および第2の断面の各々から見た場合に湾曲しており、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、第3の断面において、第1の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは前記第3の断面において見た場合に第1のファセット角を有し、
前記レンズ本体の前記第1の表面は、また、第4の断面において、第2の曲率半径にほぼ適合しており、
前記フレネルプリズムは、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第2のファセット角を有し、
前記第1の曲率半径は、前記第2の曲率半径より小さい、装置。」

イ 相違点
本願発明と引用発明4は、以下の点で相違するか、一応相違する。
(相違点4−1)
「フレネルプリズム」が、本願発明は、「前記第1のファセット角と異なる第2のファセット角を有」するのに対して、引用発明4の「回折レンズ構造」は、この点が明らかでない点。

(相違点4−2)
「レンズ本体」が、本願発明は、「前記第1の表面の反対側にある第2の表面により規定される複数の第2のフレネルプリズムをさらに含み、前記複数の第2のフレネルプリズムに含まれる各第2のフレネルプリズムは、前記第3の断面において見た場合に第3のファセット角を有し、前記第3の断面に平行な前記第4の断面において見た場合に第4のファセット角を有し、前記第3のファセット角は前記第4のファセット角とは異なる」のに対して、引用発明4の「対物レンズ」は、このような構成でない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点4−1について
フレネルプリズムにおいて平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせることは慣用手段であり、引用発明4の回折レンズ構造の平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせるようにすることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明4において上記相違点4−1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点4−2について
両面にフレネルプリズムを含む光学部材が、周知技術であることは、上記2(3)イで述べたとおりであり、また、トーリック非球面においてフレネルプリズムを含めることも、引用文献2や引用文献3に記載されているとおり周知技術である。上記周知技術を心得た当業者であれば、引用発明4の対物レンズのトーリック非球面として構成された第2面にも回折レンズ構造を有するようにすることは、当然想起するものである。
そして、フレネルプリズムにおいて平行な2つの断面におけるそれぞれのファセット角を異ならせることは慣用手段であり、引用発明4の対物レンズのトーリック非球面として構成された第2面に回折レンズ構造を有するようにするにあたって、2つの平行な断面のそれぞれのファセット角を異ならせるようにすることは、当業者にとって当然なし得る設計事項にすぎない。
そうしてみると、引用発明4に上記周知技術を適用して上記相違点4−2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年11月24日提出の意見書において、「引用文献4の開示に接した当業者は、フレネルレンズ部が形成され得る第1面21の反対側の第2面22を、当然に、トーリック非球面とするのであって、第2面22にもフレネルレンズを構成し得ないものと思料致します。むしろ、引用文献4の段落0032の記載は、第2面22にフレネルレンズ部を構成することについての阻害要因にすらなるものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、上記(3)で述べたとおりであるから、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(5)小括
本願発明は、引用文献4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 榎本 吉孝
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-01-07 
結審通知日 2022-01-11 
審決日 2022-01-24 
出願番号 P2019-522712
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
発明の名称 多様なファセット角を有するフレネルレンズアセンブリ  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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