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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1385613
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-04 
確定日 2022-05-12 
事件の表示 特願2019−526404「ナビゲーション装置およびナビゲーション方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月3日国際公開、WO2019/003269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)6月26日を国際出願日とする出願であって、令和元年5月30日に手続補正書が提出され、令和2年3月23日付け(発送日:同年3月31日)で拒絶理由が通知され、令和2年5月26日に意見書が提出されたが、令和2年8月11日付け(発送日:同年8月18日)で拒絶査定がされ、これに対して令和2年11月4日に拒絶査定不服審判が請求され、令和3年4月1日付け(発送日:同年4月6日)に当審において拒絶理由が通知され、令和3年6月4日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年7月27日付け(発送日:同年8月3日)で当審において最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和3年9月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 令和3年9月30日の手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和3年9月30日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(令和3年6月4日の手続補正書)の請求項1に、
「目的地に関する視覚的な情報を取得する検索情報取得部と、
前記検索情報取得部により取得された目的地に関する視覚的な情報を用いて、当該視覚的な情報を示す文字列で構成される検索条件を生成する検索条件生成部と、
道路周辺の映像情報と位置情報を記憶している映像情報データベースを参照して、前記検索条件生成部により生成された検索条件に合致する映像情報を検索し当該映像情報に対応する位置情報を目的地に設定する目的地検索部とを備えるナビゲーション装置。」
とあったものを、
「目的地に関する視覚的な情報を取得する検索情報取得部と、
前記検索情報取得部により取得された目的地に関する視覚的な情報を用いて、当該視覚的な情報を示す文字列で構成される検索条件を生成する検索条件生成部と、
道路周辺の映像情報と位置情報を記憶している映像情報データベースを参照して、前記検索条件生成部により生成された検索条件に合致する映像情報を検索し当該映像情報に対応する位置情報を目的地に設定する目的地検索部とを備え、
前記目的地検索部における映像情報を検索する処理は、映像を参照して前記文字列で構成される検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理である、ことを特徴とするナビゲーション装置。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために請求人が付与したものである。)。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「目的地検索部」に関して、「目的地検索部における映像情報を検索する処理は、映像を参照して前記文字列で構成される検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理である」との限定を付したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 引用文献、引用発明
(1)引用文献1
当審拒絶理由に引用された特開2004−333233号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ナビゲーション装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与したものである。以下同様。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はナビゲーション装置に関し、特に、現在地から目的地までを結ぶ最適な経路を探索し、その探索した誘導経路に沿って運転者を案内する経路誘導機能を備えたナビゲーション装置に用いて好適なものである。」

イ 「【0006】
ところが、目的地に設定したい地点の建物や風景などは分っているものの、その位置や施設名などが全く分らないということもある。この場合には、従来のナビゲーション装置が備える地点検索機能ではその地点を検索することができず、目的地を設定することができない。そのため、このような場合にも目的地を設定できるようにするために、今までにない地点検索手法の開発が望まれている。」

ウ 「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来のナビゲーション装置では、施設名や地点名、電話番号、住所、郵便番号などをキーワードとして地点検索を行うことができるだけであり、これらの情報が分らない状況下では地点検索を行うことができず、目的地を設定することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、目的地に設定したい地点の位置や施設名などの情報が全く分らなくても、建物や風景などの画像データを用いて地点検索を行い、目的地を設定できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置では、画像データを検索キーとして画像データベース上から類似度の大きい画像を検索し、検索された1以上の画像データをそれに対応する地点特定情報と共に出力してユーザに提示し、これに応答してユーザにより選択された画像データに対応付けられた位置情報を目的地に設定するようにしている。
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、ある地点で撮影した画像データを入力して検索を実行すれば、その入力画像にマッチする画像とそれに対応する地点特定情報とが検索にヒットしてユーザに提示される。そして、提示された1以上の画像の中からユーザが1つを選択すれば、その地点が目的地に設定されることとなる。これにより、目的地に設定したい地点の位置や施設名などの情報が全く分らなくても、その地点の画像データを利用して目的地の設定を行うことが可能となる。」

エ 「【0014】
図1に示すように、本実施形態のナビゲーション装置100は、地図読出制御部1、位置測定装置2、目的地設定部3、経路誘導部4、走行履歴記憶部5、リモコンやタッチパネル等の操作部6、表示部7、画像入力部11、画像検索部12、画像データベース(DB)13および検索結果出力部14を備えて構成されている。」

オ 「【0023】
画像DB13は、観光地や各種施設など、様々な地点を撮影した画像に関する情報を記憶したデータベースである。この画像DB13は、図1に示すように画像データ記憶部13a、特徴量記憶部13b、位置情報記憶部13c、地点特定情報記憶部13dを含んでいる。
【0024】
画像データ記憶部13aは、上述した各種地点の画像データを記憶する。特徴量記憶部13bは、上述した各種地点の画像データから抽出した特徴量を記憶する。位置情報記憶部13cは、各画像データの撮影地点が地図記録媒体10に記憶されている地図データ上のどこに相当するのかを表した位置情報を記憶する。
地点特定情報記憶部13dは、撮影地点を特定するための情報(例えば、観光地や施設の地点名称)を記憶する。
【0025】
これらの特徴量、位置情報および地点特定情報は、対応する画像データに関連付けられている。なお、この関連付けが行われていれば、これらの情報が全て同じデータベース上に格納されている必要は必ずしもない。
【0026】
この画像DB13は、代表的な観光地や施設等に関する情報をあらかじめ記憶して構成されている。これに加えて、ユーザが任意の地点においてデジタルカメラ等で撮影した画像データとそれに関連する特徴量、位置情報および地点特定情報とを追加記録することも可能である。」

カ 「【0029】
画像入力部11は、検索キーとなる画像データを入力する。例えば、この画像入力部11は、ナビゲーション装置100の本体に対して着脱可能に成されたメモリカード等のリムーバル記録媒体の挿入スロットを備え、当該スロットに挿入されたメモリカードを介して、図示しないデジタルカメラ等で撮影され当該メモリカードに記録された画像データを入力する。
【0030】
画像検索部12は、画像入力部11より入力された検索キーの画像データを用いて画像DB13を検索し、検索キーとの類似度が高い1以上の画像データを抽出する。この画像検索部12は、図1に示すように特徴量抽出部12aおよびマッチング部12bを備えている。
【0031】
特徴量抽出部12aは、画像入力部11より入力された画像データから特徴量を抽出する。マッチング部12bは、特徴量抽出部12aにより抽出された入力画像の特徴量と、特徴量記憶部13bに記憶されている蓄積画像の特徴量とを照合し、類似度の高い1以上の画像データを抽出する。例えば、類似度が所定レベル以上の画像データを類似度の高い順に抽出する。」

キ 「【0036】
次いで、検索結果出力部14は、画像検索部12により抽出された1以上の画像データを、画像DB13上でその画像データに対応付けて記憶されている地点特定情報と共に表示部7のモニタ画面に表示する。ユーザは、操作部6を操作して、表示部7に表示された1以上の画像データの中から所望の1つを選択する。
【0037】
ユーザが操作部6を操作して何れかの画像データを選択すると、その選択情報が目的地設定部3に供給される。これを受けて目的地設定部3は、当該選択された画像データに対応付けて記憶されている位置情報を画像DB13から読み出して、その読み出した位置情報を目的地に設定する。」

ク 「【0039】
次に、上記のように構成したナビゲーション装置100における画像検索および目的地設定の動作を、図2の例を参照しながら説明する。まず、デジタルカメラ等で撮影した画像データを、検索キーとして画像入力部11から入力する。すると、図2(a)のように、入力された画像データが表示部7のモニタ画面に表示されるとともに、過去に走行したことのある場所を参照して検索するか否かの選択肢が表示される。
【0040】
ユーザが操作部6を操作して選択肢の何れかを選択すると、画像検索部12によって画像検索が行われる。このとき、過去に走行したことのある場所を参照して検索することが指示されると、画像検索部12は、走行履歴記憶部5に記憶されている走行履歴情報を利用して限定した範囲を対象として画像DB13の検索を実行する。一方、過去に走行したことのある場所を参照して検索することが指示されなかった場合は、画像検索部12は、画像DB13の全てを対象として画像検索を実行する。
【0041】
検索結果出力部14は、画像検索部12による画像検索の結果を表示部7のモニタ画面に表示する。このとき、類似度が所定レベル以上となって検索ヒットした画像データの件数がn件(nは任意に設定可能)未満であった場合は、図2(b)に示すように、類似度が最も高い方から順番にx件(x≦nで、xは任意に設定可能)だけ、その撮影地点を特定する名称等の情報をサムネイル画像と共に表示する。
【0042】
このとき検索結果出力部14は、これらのサムネイル画像等と一緒に「次のx件」という選択肢も表示部7に表示する。ユーザが操作部6を操作してこの選択肢を選択すると、検索結果出力部14は、検索結果のうち類似度が最も高い方から数えてx+1番目から2x番目までに相当するx件の名称等をサムネイル画像と共に表示部7に表示する。
【0043】
ユーザが操作部6を操作して、図2(b)のように表示されたサムネイル画像の中から何れか1つを選択すると、選択された画像に対応する位置情報が画像DB13から目的地設定部3に供給される。目的地設定部3は、受け取った位置情報を誘導経路の目的地に設定する。
【0044】
一方、画像検索の結果、検索ヒットした画像データの件数がn件以上であった場合、検索結果出力部14は、図2(c)に示すように、検索ヒットした件数を表示部7に表示するとともに、「名称」「地域」「ジャンル」等の複数の絞り込み条件を選択肢として表示する。これに対応してユーザは、操作部6を操作して任意の絞り込み条件を選択することができる。
【0045】
例えば「名称」の絞り込み条件が選択された場合、検索結果出力部14は、図2(d)に示すように、類似度の高い検索結果から順番に地点の名称を表示部7に表示するとともに、「上位x件のサムネイル表示」という選択肢を表示する。
ユーザは、表示された名称の中から何れか1つを選択することができる。何れか1つの名称を選択すると、選択された名称に対応する位置情報が画像DB13から目的地設定部3に供給され、誘導経路の目的地に設定される。
【0046】
また、ユーザが「上位x件のサムネイル表示」の選択肢を選択した場合は、検索結果出力部14は、図2(b)に示すように、類似度が高い上位x件の検索結果を表すサムネイル画像と地点名称とを表示する。上述したように、ここで何れか1つのサムネイル画像を選択すると、選択された画像に対応する位置情報が画像DB13から目的地設定部3に供給されて、誘導経路の目的地に設定される。
【0047】
上記図2(c)の画面上で「地域」の絞り込み条件が選択された場合、検索結果出力部14は、図2(e)に示すように、類似度の高い検索結果が含まれている順番に地域名の絞り込み条件を表示する。ユーザは、表示された地域名の中から何れか1つを選択することができる。ここで選択された地域内に含まれる検索結果がn件未満であれば、図2(b)と同様に上位x件のサムネイル画像と地点名称とが表示される。一方、検索結果がn件以上の場合には、更に細かい絞り込み条件が表示される(図示せず)。
【0048】
なお、上記図2(e)の画面上では、「名称」や「ジャンル」等の他の絞り込み条件も選択肢として表示される。ユーザは、操作部6を操作して、この中から何れかの絞り込み条件を選択することもできる。このように、地域を選択している途中の段階でも、その時点における名称やジャンルを更に絞り込めるようになっている。
【0049】
また、上記図2(c)の画面上で「ジャンル」の絞り込み条件が選択された場合、検索結果出力部14は、図2(f)に示すように、類似度の高い検索結果が含まれている順番にジャンル名の絞り込み条件を表示する。ユーザは、表示されたジャンル名の中から何れか1つを選択することができる。ここで選択されたジャンル内に含まれる検索結果がn件未満であれば、図2(b)と同様に上位x件のサムネイル画像と地点名称とが表示される。一方、検索結果がn件以上の場合には、更に細かい絞り込み条件が表示される(図示せず)。
【0050】
この図2(f)の画面上では、「名称」や「地域」等の他の絞り込み条件も選択肢として表示される。ユーザは、操作部6を操作して、この中から何れかの絞り込み条件を選択することもできる。このように、ジャンルを選択している途中の段階でも、その時点における名称や地域を更に絞り込めるようになっている。
【0051】
なお、上記図2(c)〜(f)のように表示される複数の絞り込み条件の利用頻度情報を管理し、利用頻度の多い順に絞り込み条件の表示順番を並び替えるようにしても良い。例えば、図2(e)の画面上では地域名の絞込み条件が東京都→神奈川→京都→山梨→・・・の順番で表示されており、一画面中に表示し切れない地域名はスクロール等により順次表示される。このとき、画面外の下位に表示される他の地域の利用頻度が多くなってきた場合は、当該他の地域の絞り込み条件を上位の順番に並び替える。このようにすれば、よく使う絞り込み条件をスクロール無しで利用することができるようになり、便利である。」

ケ 「【0052】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、デジタルカメラ等で撮影した画像データを検索キーとして画像DB13を検索し、検索によって抽出された1以上の画像データをそれに対応する地点名称と共に出力してユーザに提示するようにしている。これにより、検索キーとして用いた被写体画像の名称や撮影場所が分からなくても、その地点名称を特定することができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、検索の結果として提示された画像データの中からユーザにより選択された画像データに対応付けられた位置情報を取得し、これを目的地に設定するようにしている。これにより、目的地に設定したい地点の位置や名称などの情報が全く分らなくても、その地点の画像データを利用して目的地の設定を行うことが可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態では、デジタルカメラ等で撮影された画像データを、メモリカード等のリムーバル記録媒体を介して入力する例について説明したが、画像入力方法はこれに限定されない。例えば、タッチパネルで構成される表示部7のモニタ画面上で所望の絵柄を描画することによって入力するようにしても良い。
また、図3に示すように、ナビゲーション装置100に電気的に接続されたテレビジョン受信装置200において受信中の映像の一部を任意のタイミングで切り取って入力するようにしても良い。
【0055】
この場合にテレビジョン受信装置200は、画像キャプチャ部21およびキャプチャボタン22を備える。画像キャプチャ部21は、ユーザによりキャプチャボタン22が押されたタイミングで、受信中のテレビ映像の1フレームを切り取って出力する。ナビゲーション装置100の画像入力部11は、画像キャプチャ部21から出力された画像データを入力する。
【0056】
なお、画像キャプチャ部21とキャプチャボタン22はテレビジョン受信装置200が標準で備える必要は必ずしもなく、テレビジョン受信装置200に追加された機能拡張ユニットに備えるようにしても良いし、テレビジョン受信装置200とは別に専用のキャプチャ装置として備えるようにしても良い。あるいは、画像キャプチャ部21とキャプチャボタン22とをナビゲーション装置100が備え、ナビゲーション装置100からテレビジョン受信装置200にキャプチャ命令を与えることによって画像入力するようにしても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、ナビゲーション装置100が画像DB13を備え、自車内の画像DB13を対象として画像検索を行う例について説明したが、これに限定されない。例えば、自車内の画像DB13を検索した結果、類似度が所定レベル以上となる画像が見つからなかった場合に、車外のデータセンタにインターネット網や携帯電話網を使って無線でアクセスしたり、車々間通信によって他車にアクセスしたりして、車外に存在する画像データベースを更に利用して画像検索を行うようにしても良い。もちろん、自車内に画像DB13は設けず、最初から車外の画像データベースを利用して画像検索を行うようにしても良い。」

コ 「【0061】
また、画像入力部11より入力された画像データの色・形状・模様等を検索キーとするか、入力された画像データ中に含まれる文字を検索キーとするかに分けて検索できるようにしても良い。この場合の構成例を図6に示す。図6に示す例において、画像検索部12は、上述した特徴量抽出部12aおよびマッチング部12bの他に、検索対象選択部12d、文字認識部12eおよび文字検索部12fを備えて構成される。
【0062】
検索対象選択部12dは、入力された画像データ中の何を対象として検索するか、すなわち、色・形状・模様等を検索キーとするか、文字を検索キーとするかの選択肢を図7のように画面表示し、ユーザの選択を促す。ユーザが操作部6を操作して色・形状・模様等を選択した場合は、特徴量抽出部12aおよびマッチング部12bを用いて上述した手順で画像検索を実行する。一方、検索キーとして文字が選択された場合は、文字認識部12eおよび文字検索部12fを用いて検索を実行する。
【0063】
文字認識部12eは、入力された画像データ中に含まれる文字情報を認識する。文字検索部12fは、文字認識部12eにより認識された文字情報を検索キーとして、画像DB13の地点特定情報記憶部13dに記憶されている各地点の名称等を検索し、認識文字との一致度が高い1以上の名称等を抽出する。この場合に検索結果出力部14は、抽出された名称等をそれに対応付けられた画像と共に表示部7に表示する。このように文字認識をして文字情報の検索も行えるようにすることにより、撮影地点をより確実に検索することができる。」

上記アないしコの記載事項及び図面(特に図1及び2)の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「目的地に設定したい地点の画像データを検索キーとして入力する画像入力部11と、
画像入力部11より入力された画像データから特徴量を抽出する画像検索部12の特徴量抽出部12aと、
特徴量抽出部12aにより抽出された入力画像の特徴量と、画像データ記憶部13a、特徴量記憶部13b、位置情報記憶部13cを含む画像DB13の特徴量記憶部13bに記憶されている蓄積画像の特徴量とを照合し、類似度の高い1以上の画像データを抽出する画像検索部12のマッチング部12bと、
ユーザが画像検索部12により抽出された1以上の画像データの中から何れかの画像データを選択すると、選択された画像データに対応付けて記憶されている位置情報を画像DB13から読み出して、その読み出した位置情報を目的地に設定する目的地設定部3とを備えて構成されたナビゲーション装置100。」

(2)引用文献5
当審拒絶理由に引用された特開2011−70412号公報(以下、「引用文献5」という。)には、「画像検索装置および画像検索方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0035】
画像検索プログラムSP1は、検索文字列取得モジュールSM11、形態素解析モジュールSM12、特徴量取得モジュールSM13、画像データ検索モジュールSM14、画像データ送信モジュールSM15を備えている。検索文字列取得モジュールSM11は、クライアントコンピューターであるプリンタ30およびパーソナルコンピューター40によって送信された検索文字列を取得するために実行されるモジュールである。なお、本実施例において、文字列とは複数の単語から構成される有意の単語群を意味し、さらに本実施例では、検索文字列として、日常使用されている自然な形の文章である自然文が用いられている。したがって、検索文字列取得モジュールSM11は、名詞、形容詞、助詞といった複数の単語から構成される文字列を受け付ける機能を有している。なお、本実施例は、自然文に該当しない文字列を用いた画像検索処理にも同様に適用することができる。」

イ 「【0041】
プリンタの構成:
図6は本実施例に係るプリンタの内部構成を機能ブロック図にて模式的に示す説明図である。図7は画像プリンタが備えるメモリに格納されている各種プログラム、モジュールを示す説明図である。本実施例では、画像検索端末装置としてプリンタ30を例にとって説明するが、パーソナルコンピューター40についても同様に画像検索端末装置として用いることが可能であることは言うまでもない。なお、本実施例に係るプリンタ30は、第2および第3の実施例においても同様に用いられ得る。プリンタ30は、信号線によって互いに接続されている制御回路31、入力操作部32、表示部33、印刷部34、外部入出力インターフェース35を備えている。制御回路31は、互いに通信可能に接続されている中央処理装置(CPU)310、メモリ311、入出力(I/O)インターフェース312を備えている。CPU310は、メモリ311に格納されている各種プログラム、モジュールを実行する。メモリ311は、CPU310によって実行されるプログラム、モジュールを不揮発的に記憶すると共に、CPU310による処理実行時にプログラム、モジュールが展開される揮発的な作業領域を有する。メモリ311としては、例えば、プログラム等を不揮発的に記憶するリードオンリメモリ、プログラム実行時における揮発的な作業領域を提供するランダムアクセスメモリといった半導体記憶装置、ハードディスクドライブ、大容量フラッシュメモリが用いられ得る。入出力インターフェース312は、制御回路31と、入力操作部32、表示部33、印刷部34および外部入出力インターフェース35との間で、コマンド、データの送受信を実行する。入力操作部32は、プリンタ30に対してユーザが指示を入力するための操作部であり、例えば、ボタン、ホイールによって実現され得る。表示部33は、ユーザに対して検索した画像データに基づく画像の表示、ユーザに対する各種情報の表示を行うカラー表示可能な表示画面である。印刷部34は、ユーザ(制御回路31)からの印刷指示に従って印刷媒体に対して画像を形成する印刷実行部である。外部入出力インターフェース35は、外部装置、例えば、画像サーバー10との間で、周知の通信プロトコルに従って検索要求および検索結果の送受信を実行する。
【0042】
メモリ311に格納されている各種プログラム、モジュールについて図7を用いて説明する。メモリ311は、画像サーバー10に対して画像検索を要求するための画像検索要求プログラムCP1を備え、画像検索要求プログラムCP1は、検索文字列取得モジュールCM11、検索要求送信モジュールCM12、検索結果受信モジュールCM13を備えている。検索文字列取得モジュールCM11は、検索対象となる画像(画像データ)を特定するためにユーザによって入力された文字列を取得するために実行されるモジュールである。なお、文字列の取得は、入力操作部32によって入力された文字列を取得しても良く、あるいは、画像データに予め関連付けられているメタデータに記述されている文字情報(キーワード)を抽出、取得することによって実行されても良い。さらには、文字列の取得は、入力操作部32によって入力された文字列と画像データのメタデータに記述されているキーワードの双方を取得することによって実行されても良い。検索要求送信モジュールCM12は、取得された文字列と検索の要求を画像サーバー10に対して送信するためのモジュールである。検索結果受信モジュールCM13は、画像サーバー10から検索結果としての一または複数の画像データを取得するためのモジュールである。なお、画像検索要求プログラムCP1、検索文字列取得モジュールCM11、検索要求送信モジュールCM12、検索結果受信モジュールCM13、それぞれCPU310によって実行されることによって、画像検索要求部、検索要求検索文字列取得部、検索要求送信部、検索結果受信部として機能する。」

ウ 「【0043】
画像検索処理:
図8は本実施例に係る画像サーバーにおいて実行される画像検索処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図9は形態素の解析結果の第1の例を示す説明図である。図10は形態素の解析結果の第2の例を示す説明図である。画像検索処理は、プリンタ30等の検索端末装置からの検索要求を受けて、画像サーバー10において実行される。本処理ルーチンが開始されると、検索文字列取得モジュールSM11は、検索に用いるべき文字列を取得する(ステップS100)。検索文字列の取得は、ユーザによって、例えば、プリンタ30の入力操作部32を介して入力された文字列を取得することによって実現される。
【0044】
検索文字列が取得されると、形態素解析モジュールSM12は、文字列を複数の形態素(単語)に分割し、単語を切り出す(ステップS102)。具体的には、形態素解析モジュールSM12は、形態素解析を実行して、文字列を複数の単語に分割する。形態素解析における単語分割パターンを選択する方法としては、文字列の先頭から解析を行い最も長い単語を選択する最長一致法、原文を構成する単語の総数が最も少ない候補パターンを選択する分割数最小法、品詞間の文法的接続可能性にも続く方法、品詞間の接続コストに基づく方法、統計的言語モデルに基づく方法が知られている。例えば、最長一致法を用いる場合には、先ず、形態素辞書に格納されている形態素(単語エントリ)の中で検索対象文字列と最も長く一致する単語エントリが検索され、検索された単語エントリが単語分割(分かち書き)の対象とされる。つぎに、単語分割候補とした単語エントリの文字列長だけ検証対象文字列に対するポインタが先頭位置から進められ、上述の手順で次の単語分割候補が得られる。得られた最新の単語エントリの素性と直前の単語エントリの素性に基づき両単語エントリが接続可能な関係にあるか否かが判定され、接続可能である場合には、単語の切り出しは正しく実行されたので、検索対象文字列の末尾に至るまで、切り出し、接続テストが繰り返し実行される。一方、接続不可能である場合には、最新の単語エントリの末尾の文字が捨てられ、単語分割候補の獲得、接続テストが実行される。接続不可の状態が繰り返されると、形態素辞書を検索する文字列長が0になってしまう。そこで、この場合には、直前の単語エントリの単語切り出しが誤っていた可能性があるので、直前の単語エントリの末尾の文字が捨てられ、改めて形態素辞書の検索、単語分割候補の取得が実行される。この一連の処理によって、形態素の切り出し(単語の分割)と形態素の素性(品詞)の決定が行われる。
【0045】
なお、検索用の文字列に、複数の単語が含まれており、それぞれについて画像特徴量を取得することによって漏れのない画像検索を実現することができると共に、検索精度を向上させることができる。
【0046】
図9および図10を用いて形態素の解析結果の一例について説明する。図9の例では、検索文字列として、「先週札幌で見た赤い車」が用いられている。形態素解析によって、図9に示すように、各切り出された単語について、表記、読み、品詞、基本形、および全情報が得られる。図10の例では、検索文字列として、「アイルランドの黒いビール」が用いられている。形態素解析によって、図10に示すように各切り出された単語について、表記、読み、品詞、基本形、および全情報が得られる。
【0047】
文字列から単語が取得(決定)されると、特徴量取得モジュールSM13は、単語−画像特徴量データベースDB2から、対応する画像特徴量を取得する(ステップS104)。具体的には、得られた各単語に対して、図4に示す単語−画像特徴量データベースDB2から対応する画像特徴量の種類および値が取得される。
【0048】
各単語に対応する画像特徴量の種類および値が取得されると、画像データ検索モジュールSM14は、得られた画像特徴量の種類および値を用いて、画像データベースDB1から切り出された単語に対応する画像データを検索する(ステップS106)。具体的には、得られた画像特徴量の種類および値と、画像データベースDB1において各画像データに対応付けられている特徴量の種類および値とを用いて、単語に対応する画像データの類似度が判定され、算出された類似度が所定の範囲内、あるいは、所定の類似度以上である画像データを検索結果として得る。」

上記アないしウの記載事項及び図面(特に図1、2、8ないし10)の図示内容を総合すると、引用文献5には、次の事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献5記載事項〕
「プリンタ30等の画像検索端末装置からの検索要求を受けて、画像サーバー10において実行される画像検索処理において、ユーザによって、プリンタ30の入力操作部32を介して入力された視覚的な情報を示す検索文字列を取得し、検索文字列が取得されると、文字列を複数の単語に分割し、単語−特徴量データベースDB2から、対応する画像特徴量を取得し、各単語に対応する画像特徴量の種類および値が取得されると、画像データ検索モジュールSM14は、得られた画像特徴量の種類および値を用いて、画像データベースDB1から切り出された単語に対応する画像データを検索すること。」

3 対比及び判断
(1)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「目的地に設定したい地点の画像データ」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件補正発明における「目的地に関する視覚的な情報」に相当し、以下同様に、「画像入力部11」は「検索情報取得部」に、「画像DB13」は「映像情報データベース」に、「ナビゲーション装置100」は「ナビゲーション装置」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明における「画像検索部12の特徴量抽出部12a」は、「画像入力部11」より入力された画像データから特徴量を抽出するが、その特徴量は、「画像DB13」の「特徴量記憶部13b」に記憶されている蓄積画像の特徴量と照合し、類似度の高い1以上の画像データを抽出するために用いるものである。
そうすると、引用発明における「画像入力部11より入力された画像データから抽出」される「特徴量」は、本件補正発明における「視覚的な情報を示す文字列で構成される検索条件」と「検索条件」という限りにおいて一致し、その特徴量を抽出する「画像検索部12の特徴量抽出部12a」は、本件補正発明における「検索条件生成部」に相当する。

ウ 引用発明における「画像DB13」は、「画像データ記憶部13a」と「位置情報記憶部13c」とを含むものである。引用発明の「画像データ記憶部13a」に記憶される「画像データ」と「位置情報記憶部13c」に記憶される「位置情報」は、それぞれ道路周辺に関するものであるから、本件補正発明の「道路周辺の映像情報と位置情報」に相当する。

エ 引用発明における「画像検索部12のマッチング部12b」は、「画像DB13」の「特徴量記憶部13b」に記憶されている蓄積画像の特徴量と入力画像の特徴量とを照合し、類似度の高い1以上の画像データを抽出するものである。
言い換えると、「画像検索部12のマッチング部12b」は、「画像DB13」を参照して、「画像DB13」の「特徴量記憶部13b」に記憶されている蓄積画像の特徴量と合致する画像データを検索しているといえる。
また、引用発明における「目的地設定部3」は、ユーザが「画像検索部12」により抽出された1以上の画像データの中から何れかの画像データを選択すると、選択された画像データに対応付けて記憶されている位置情報を目的地に設定するものである。
そうすると、引用発明における「画像検索部12のマッチング部12b」及び「目的地設定部3」は、本件補正発明における「目的地検索部」に相当する。

オ 引用発明における「画像検索部12のマッチング部12b」は、検索キーとして入力された「画像データ」から特徴量を特徴量抽出部12aによって抽出した後、「特徴量抽出部12aにより抽出された入力画像の特徴量」と、「特徴量記憶部13bに記憶されている蓄積画像の特徴量」とを照合し、類似度の高い1以上の画像データを抽出する処理を行っているものである。「参照」とは「照らし合わせて見ること。引き比べて参考にすること。(広辞苑第6版)」との意味を踏まえると、引用発明の「マッチング部12b」は、画像データを特徴量によって参照し、類似度の高い特徴量の画像データを抽出する処理を行っているといえる。
そうすると、引用発明の「画像検索部12のマッチング部12b」における映像情報を検索する処理と本件補正発明の「目的地検索部」における映像情報を検索する処理とは、「映像を参照して、検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理」という限りにおいて一致する。

カ 上記アないしオを総合すると、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点がある。

〔一致点〕
「目的地に関する視覚的な情報を取得する検索情報取得部と、
前記検索情報取得部により取得された目的地に関する視覚的な情報を用いて、検索条件を生成する検索条件生成部と、
道路周辺の映像情報と位置情報を記憶している映像情報データベースを参照して、前記検索条件生成部により生成された検索条件に合致する映像情報を検索し当該映像情報に対応する位置情報を目的地に設定する目的地検索部とを備え、
前記目的地検索部における映像情報を検索する処理は、映像を参照して、検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理である、
ナビゲーション装置。」

〔相違点1〕
「検索条件」に関して、本件補正発明は「視覚的な情報を示す文字列で構成される」のに対して、引用発明は画像入力部11より入力された画像データから抽出される特徴量である点。

〔相違点2〕
「目的地検索部」に関して、本件補正発明においては「映像情報を検索する処理は、映像を参照して前記文字列で構成される検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理である」のに対して、引用発明においては、マッチング部12bが、入力画像の特徴量と、特徴量記憶部13bに記憶されている蓄積画像の特徴量とを照合し、類似度の高い1以上の画像データを抽出するものである点。

(2)判断
ア 相違点1について検討する。
上記2(2)で述べたように、引用文献5記載事項は、
「プリンタ30等の画像検索端末装置からの検索要求を受けて、画像サーバー10において実行される画像検索処理において、ユーザによって、プリンタ30の入力操作部32を介して入力された視覚的な情報を示す検索文字列を取得し、検索文字列が取得されると、文字列を複数の単語に分割し、単語−特徴量データベースDB2から、対応する画像特徴量を取得し、各単語に対応する画像特徴量の種類および値が取得されると、画像データ検索モジュールSM14は、得られた画像特徴量の種類および値を用いて、画像データベースDB1から切り出された単語に対応する画像データを検索すること。」
というものである。
引用発明と引用文献5記載事項は、どちらも画像データを検索するのに、検索条件に対応する画像の特徴量を用いる点で共通する。
また、引用文献1の上記2(1)コの記載事項を踏まえると、引用発明は、画像データから特徴量を抽出して画像検索を行う際に、色・形状・模様等を検索キーとするか、文字を検索キーとするか、選択可能なものである。
したがって、引用発明において、引用文献5記載事項を適用して、ユーザーによって入力された視覚的な情報を示す検索文字列を取得し、検索条件として「視覚的な情報を示す文字列で構成される」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
本件補正発明は、「映像を参照」するとの特定事項について、映像自体を直接参照するものに限るのか、予め映像から抽出された特徴量を参照するものも含むのか否か等について、何ら具体的な特定はないから、引用文献5記載事項も「映像を参照」しているといえる。
また、引用発明の「マッチング部12b」は、画像データを特徴量によって参照し、類似度の高い特徴量の画像データを抽出する処理を行っている。
そして、引用発明と引用文献5記載事項は、どちらも画像データを検索するのに、検索条件に対応する画像の特徴量を用いる点で共通する。
したがって、引用発明において引用文献5記載事項を適用して、視覚的な情報を示す検索文字列を取得し、「映像を参照」して、対応する画像特徴量を取得して、対応する画像データを検索して、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
仮に、「映像を参照」することが、「映像自体を参照」して検索することに限定して解釈したとしても、画像検索技術において、予め画像を処理して特徴量を画像データベースに保有しておいた上で特徴量によって検索することも、検索時に随時リアルタイムで画像を処理して検索することも、どちらもよく知られた手法であって、適宜置換し得る技術にすぎない。
よって、「映像を参照」することを上記のとおり解釈したとしても、引用発明において引用文献5記載事項を適用し適宜の技術置換を行うことにより、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ さらに、全体としてみても、本件補正発明が奏する効果は、引用発明及び引用文献5記載事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、令和3年9月30日提出の意見書において、概略、次の内容を主張している。
(主張1)引用文献1に記載の発明は、画像データだけで地点検索を行って、目的地の設定を行うことを目的とする発明であるから、仮に引用文献5の「検索文字列」を入力として検索する技術を適用しようとしても、引用文献1記載の発明の本来の目的を達成できなくなってしまうことが明らかなため、引用文献1記載の発明に引用文献5記載の発明を適用することに阻害要因がある。さらに、引用文献1記載の発明と引用文献5記載の発明とは、課題や作用・機能の共通性がない、もしくは少なくとも共通性に乏しい。
(主張2)補正後の本願請求項1に係る発明は、「目的地検索部における映像情報を検索する処理」は、「映像を参照して前記文字列で構成される検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理」であり、これにより、本願請求項1に係る発明は、「目的地に関する視覚的な情報を用いて目的地を検索することができる」とともに、映像自体を参照して検索するように構成されているので、公開されている情報源を利用したり、撮像された映像自体を情報源にそのまま利用したりすることができ、より多様な情報源を用いて映像情報を検索することができるという効果を奏する。
これに対し、引用文献1及び5に記載の発明においては、映像自体を参照して検索しようとすることの示唆がない。

(2)主張に対する判断
ア 上記主張1について検討する。
引用文献1の上記2(1)イの記載事項のとおり、引用発明は、位置や施設名などが分からなくても検索できるようにするものである。つまり、入力情報が位置や施設名でなければ文字列を入力情報としても目的は達成できるものである。
さらに、引用文献1の上記2(1)コの記載事項のとおり、引用文献1には画像データを用いて地点検索を行う際に、画像データ中に含まれる文字を検索キーとして、ユーザに画面表示することも記載されているから、引用発明において、引用文献5に記載される文字列情報を用いることを適用することを阻害する要因があるとはいえない。
また、引用発明と引用文献5記載事項とは、どちらも、特徴量を用いて画像検索するという点で共通の作用・機能を有するものであり、共通性がないものでもなく、乏しいものでもない。
したがって、請求人の主張1は採用できない。

イ 上記主張2について検討する。
本願の明細書の段落【0016】においても、「より具体的には、目的地検索部13は、視覚的な情報である形状および色等のトークンに基づき、映像に映っている構造物等の形状および色等を検索する。映像上の色を検索する方法は周知の技術であるため説明を省略する。映像上の形状を検索する方法としては、画像を構造解析する方法、またはディープラーニングの様な方法がある。」と記載されるにとどまり、具体的にどのように「映像を参照」するかの開示はない。
そして、上記3(2)イで判断したように、「映像を参照」との発明特定事項について、本件補正発明の請求項1では単に「映像を参照して」と特定されるのみであり、画像データを特徴量によって参照することも映像を参照することの一つといえるから、「映像自体を参照」という上記主張2は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。また、上記3(2)イで判断したとおり、「映像を参照」を限定的に解釈したとしても、よく知られた画像検索技術を適宜採用し得たことにすぎない。
また、本件補正発明が、公開されている情報源を利用したり、撮像された映像自体を情報源にそのまま利用したりすることができ、より多様な情報源を用いて映像情報を検索することができるという効果を有する、との主張についても、引用文献1には、上記2(1)ケの記載事項(特に【0057】)にあるとおり、車外のデータセンタや車外の画像データベースを利用して画像検索を行うことが記載されていること、引用文献5記載事項において公開されている情報源や撮像された映像を利用できないとする根拠はないこと等を踏まえると、引用発明及び引用文献5記載事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。
したがって、請求人の上記主張2は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和3年6月4日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1ないし15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2004−333233号公報
2.特開2006−195637号公報
3.特開2010−237166号公報
4.特表2016−522415号公報
5.特開2011−70412号公報

3 引用文献、引用発明
引用文献1の記載事項及び引用発明、並びに引用文献5記載事項は、上記「第2〔理由〕」の2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 当審の判断
本件補正発明は、上記「第2〔理由〕1」で述べたように、本願発明における「目的地設定部」に関して、「目的地検索部における映像情報を検索する処理は、映像を参照して前記文字列で構成される検索条件に合致する内容が映っている映像を検索する処理である」との限定を付したものであるから、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる。
そして、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる本件補正発明が、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、引用発明及び引用文献5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び引用文献5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-03 
結審通知日 2022-03-08 
審決日 2022-03-22 
出願番号 P2019-526404
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G01C)
P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 西中村 健一
鈴木 充
発明の名称 ナビゲーション装置およびナビゲーション方法  
代理人 特許業務法人山王内外特許事務所  

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