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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B01D
管理番号 1385658
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-23 
確定日 2022-06-28 
事件の表示 特願2016−181716「セラミック製ろ過膜の洗浄方法、ろ過膜装置及びろ過容器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018− 43217、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月16日の出願であって、令和2年4月2日付けで拒絶理由が通知され、同年6月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたのに対し、同年12月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明について
本願請求項1〜8に係る発明(以下「本願発明1」〜「本願発明8」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される発明であり、そのうち独立項に係る発明である本願発明1及び4は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
被処理水を膜ろ過した後のセラミック製ろ過膜の一次側に蒸気を噴射して、前記セラミック製ろ過膜を洗浄する蒸気洗浄工程を有し、
前記ろ過膜は、水槽内の被処理水に浸漬された浸漬型ろ過膜であり、
前記蒸気洗浄工程は、前記ろ過膜を大気中に露出させた後に実施され、前記蒸気により前記セラミック製ろ過膜の一次側に堆積したケーキを掻き取ることを特徴とするセラミック製ろ過膜の洗浄方法。」
「【請求項4】
被処理水を膜ろ過処理するセラミック製ろ過膜と、
前記ろ過膜の一次側に蒸気を噴射して前記ろ過膜を洗浄する蒸気噴射手段と、
前記ろ過膜を大気中に露出させる機構と、を有し、
前記ろ過膜は、水槽内の被処理水に浸漬された浸漬型ろ過膜であり、
前記蒸気噴射手段による前記ろ過膜の洗浄は、前記機構により前記ろ過膜を大気中に露出させた後に実施され、前記蒸気により前記ろ過膜の一次側に堆積したケーキを掻き取るろ過膜装置。」
そして、本願発明2、3及び6は、いずれも本願発明1を直接的又は間接的に引用し、本願発明1をさらに減縮した発明であり、本願発明5、7及び8は、いずれも本願発明4を直接的又は間接的に引用し、本願発明4をさらに減縮した発明である。

第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
新規性)この出願の下記の請求項係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1〜8
・引用文献1、3
新規性)については、請求項1及び4に係る発明は、引用文献1に記載された発明であると、(進歩性)については、請求項1〜8に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、あるいは引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであると説示している。
<引用文献等一覧>
1.実願平3−48756号(実開平4−134426号)のマイクロフィルム
3.国際公開第2015/083628号

第4 引用文献、引用発明について
(1)引用文献1について
(ア)記載事項
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(実願平3−48756号(実開平4−134426号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。なお、下線は、以下の(イ)で記載する引用発明に関連する箇所に当審において付与したものである。
(引1ア)「【0002】
【従来の技術】
従来、例えばクラフトパルプ工場の苛性化工程においては、緑液(スメルトの水溶液)に焼成石灰を添加して得たホワイトミルク(白液+ライムマッド)からライムマッドを取除く、いわゆる白液清澄処理が行われる。」
「【0005】
この装置は、図10に概略構成(斜視図)を、図11にその断面を示すように、複数のディスクフィルタ2A〜2Dを直立させ、その一部が加圧下にあるタンク4内のホワイトミルク6内に浸漬するように位置決めした状態で中空軸8を中心に回転させ、
(1)(当審中:原文では○数字である)タンク4内下部のホワイトミルク6の通過によるライムマッドの付着、
(2)タンク4内上部の気相部10の通過による付着したライムマッドの脱水、及び、
(3)再びタンク4内下部のホワイトミルク6内に入る直前での脱水後に残ったライムマッドのスクレーパ12による掻き取り、
を連続して実行するように構成したものである。
【0006】
ディスクフィルタに付着したライムマッドの水分率は、ホワイトミルク6内(濾過ゾーン)を出ると急激に低下し、気相部10(脱水ゾーン)の前半1/3〜1/2程度でほぼこの脱水を完了できるため、脱水されてディスク上に残存した固形物(ライムマッドの混合物)をスクレーパ12で削り取って排出することにより、極めて効率的に白液とライムマッドの分離・回収ができる。即ち、白液は、ディスクフィルタ2A〜2D、中空軸8の中空部8Aを経て清澄された状態で回収される。」
そして、上記図10及び11として、以下の図面が記載されている。



(引1イ)「【0014】
【課題を解決するための手段】
本考案は、複数のディスクフィルタを直立させた状態でこれを中空軸の周りで回転させ、且つ、スラリー内の固形物の付着、及びこの付着した固形物の除去を連続して行うことにより、スラリーの清澄、濃縮又はスラリーからの固形物の回収を行うようにしたディスクフィルタ装置において、前記ディスクフィルタの表面を、微細多孔質プレートによって形成したことにより、上記課題を解決したものである。」
「【0017】
【作用】
本考案においては、ディスクフィルタの表面は、微細多孔質プレートによって形成される。
【0018】
この微細多孔質プレートは、処理する液の特性(温度、腐蝕性)に応じて、セラミック、金属、合成樹脂等から選択される。
【0019】
又、微細多孔質プレートの粒間(孔)のサイズは、被処理液中の被捕捉固形物サイズによって選択する。なお、サブミクロン〜ミクロンオーダの選択が可能である。
【0020】
ディスクフィルタのエレメント材を、従来の濾布から上述したような多孔質プレートとすることにより、高温処理が可能となり、濾材の耐熱温度が向上して高温液を予め温度低下処理することなく処理することが可能となる。その結果、エネルギのロスを大幅に低減できる。」

(引1ウ)「【0031】
【実施例】
以下、図面に基づいて本考案の実施例を詳細に説明する。
【0032】
図3、図4において、符号40がディスクフィルタ42をその軸回りに回転させるための電動機、44が図示せぬ配管を介してホワイトミルクが供給されると共に加圧可能とされたタンク、46が白液回収タンク、48がライムマッド回収タンクである。
【0033】
前記電動機40は、二重中空構造とされた中空管50と接続されている。この中空管50には、複数のディスクフィルタ42がその軸方向に等間隔に直立するように組付けられている。ディスクフィルタ42の具体的な構成については後に詳述する。このディスクフィルタ42の取付けられた位置からは該ディスクフィルタ42を介してホワイトミルクの白液が中空管50の第1中空部52に流入できるようになっている(矢印A)。
【0034】
各ディスクフィルタ42は、後述する方法によって付着したライムマッドが除去され、除去されたライムマッドは落下チューブ54を介してライムマッドの受けボッスク56に落下し、スクリュー58によってライムマッド回収タンク48に回収されるようになっている。
【0035】
ディスクフィルタ42は、具体的には図1に示されるように構成されている。
【0036】
(B)は(A)の斜線を付した部分のフィルタエレメント42Aの分解斜視図に相当している。なお、図中矢印X方向が円周方向に相当している。
【0037】
このフィルタエレメント42Aは、エレメントホルダ100を中心にして、シール材102、微細多孔質プレート104がそれぞれ配置され、これらがボルト106によって一体化されている。
【0038】
エレメントホルダ100は開口部109及び貫通孔108を介して脱水された白液が第1中空部52に流入できるようになっていると共に、第1中空部52側からライムマッドを逆圧印加によって除去する際の流体を通すことができるようになっており、且つ、ここに逆洗浄を行うときの逆洗浄液を通すことができるようになっている。この構成を具体的に図2に示す。
【0039】
図2において、110が固定摺動板であり、ここには清澄された(ライムマッド固形物から脱水された)白液が通るための貫通孔112、逆圧印加用の流体が通るための貫通孔114、更に逆洗浄を行うための逆洗浄液が通るための貫通孔116が備えられている。
【0040】
一方、前記中空管50の第1中空部52は軸方向に沿って独立したいくつかの軸空間50A〜50Mを有しており、この軸空間50A〜50Mを介して濾過・脱水が行われているときの清澄された白液や逆圧印加用の流体が通ったり、あるいは、逆洗浄のための逆洗液が通ったりする。その円周上の規制・制御が前述した固定摺動板110によって行われる。図の例では軸空間50Cが当該時刻における逆圧印加用の流体が通る軸空間、50Eが逆洗液が通る軸空間に相当している。図5は、この制御態様を示している。
【0041】
なお、図5は図2の矢視V方向から見たものである。
【0042】
今、ディスクフィルタ42のフィルタエレメント42Aに対応している部分の円周方向の移動に着目して運転パターンを説明すると、フィルタエレメント42Aが濾過ゾーンにあるときには、タンク内44の加圧によりホワイトミルク中のライムマッドがディスクの表面に付着し、これと共に白液も該ディスクフィルタ42の微細多孔質プレートに濾過される形でディスク内に浸入してくる。やがて、フィルタエレメント42Aが脱水ゾーンに入ると、タンク内の加圧エアによって脱水液がディスクフィルタ42内に取込まれ、ここで脱水(白液の回収)が行われる。次いで、フィルタエレメント42Aが逆圧印加ゾーンに到達すると、固定摺動板110の貫通孔114及びこのときこの貫通孔114に対応している軸空間50Cを介して逆圧印加用の液体がディスクフィルタ42の内側から噴出され、脱水されたライムマッドをディスクフィルタ42から離反させる。そしてこの離反させたライムマッドが落下チューブ54を介して受けボックス56に回収されることになる。その後、フィルタエレメント42Aは逆洗浄ゾーンに至り、ここで固定摺動板110の貫通孔116及びこのときこの貫通孔116に対応している軸空間50Eを介して供給される逆洗液により逆洗浄され、微細多孔質プレートの個々の孔内に残存していたライムマッドをきれいに洗い流され、次に再び濾過ゾーンに入ったときにホワイトミルク内の濾過能力を落とさないようにするものである。
【0043】
即ち、従来の濾布にプレコートしたフィルタでは、スクレーパにより表面部に固着した薄いライムマッドの層を削り取っていたが、この実施例では、このゾーンにおいて逆圧(空気、水、水蒸気等による)をかけることでライムマッドを剥離・除去するものである。この操作は、常時(ディスクフィルタ42の各フィルタエレメントがこのゾーンにくる毎に)行ってもよいし、あるいはディスクが数回転する度に1回(1回転分)行うようにすることも可能である。
【0044】
スクレーパが不要となるため、ディスクフィルタ42の平面度に対する公差も緩和でき、両者の接触による破損等の危険性も解消される。なお、この除去操作を補助する目的で、ディスクフィルタ42上に空気、水、蒸気等をスプレーするノズルを設置したり、あるいはディスクフィルタ42の表面上に直接接触する可撓性に富んだスクレーパを設置することも可能である。」
そして、上記図3及び5として、以下の図面が記載されている。

【図5】


(イ)引用発明
上記(ア)の摘記(引1イ)の【課題を解決するための手段】に記載されている「スラリー」及び「スラリー内の固形物」は、具体的には摘記(引1ウ)の【実施例】に記載されている「ホワイトミルク」及び「ライムマッド」のことであるから、以下の引用発明においては、「スラリー」及び「スラリー内の固形物」は「ホワイトミルク」及び「ライムマッド」のことであり、同様に、摘記(引1イ)の【0018】の「処理する液」も「ホワイトミルク」のことと解されるから、この点と上記(ア)の記載事項を併せみると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数のディスクフィルタを直立させた状態でこれを中空軸の周りで回転させ、且つ、ホワイトミルク内のライムマッドの付着、及びこの付着したライムマッドの除去を連続して行うことにより、ホワイトミルクの清澄、濃縮又はホワイトミルクからのライムマッドの回収を行うようにしたディスクフィルタ装置であって、
前記ディスクフィルタのエレメント材を微細多孔質プレートとし、微細多孔質プレートは、ホワイトミルクの特性(温度、腐蝕性)に応じて、セラミック、金属、合成樹脂等から選択され、ディスクフィルタをその軸回りに回転させるための電動機、配管を介してホワイトミルクが供給されると共に加圧可能とされたタンクを備え、
フィルタエレメントが濾過ゾーンにあるときには、タンク内の加圧によりホワイトミルク中のライムマッドがディスクの表面に付着し、これと共に白液も該ディスクフィルタの微細多孔質プレートに濾過される形でディスク内に浸入し、フィルタエレメントが脱水ゾーンに入ると、タンク内の加圧エアによって脱水液がディスクフィルタ内に取込まれ、ここで脱水(白液の回収)が行われ、次いで、フィルタエレメントが逆圧印加ゾーンに到達すると、軸空間を介して逆圧印加用の液体がディスクフィルタの内側から噴出され、脱水されたライムマッドをディスクフィルタから離反させ、その後、フィルタエレメントは逆洗浄ゾーンに至り、軸空間を介して供給される逆洗液により逆洗浄される、ディスクフィルタ装置において、
上記逆圧(空気、水、水蒸気等による)をかけることでライムマッドを剥離・除去するものであり、この除去操作を補助する目的で、ディスクフィルタ上に空気、水、蒸気等をスプレーするノズルが設置されたり、あるいはディスクフィルタの表面上に直接接触する可撓性に富んだスクレーパが設置されている、
ディスクフィルタ装置。」

(2)引用文献3について
本願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(国際公開第2015/083628号)には、次の事項が記載されている。
(3ア)「[0001] 本発明は上水用原水、下水、各種廃水等の被処理水を膜分離処理するセラミックフィルタに関する。」

(3イ)「[0065] セラミックフィルタ(実施例のフィルタ,比較例のフィルタ)20の洗浄では、ブロアBからスクラビングエアを1.0l/分の流量で散気管16からセラミックフィルタ20に供給した。また、逆洗工程では、バルブVを閉に設定する一方でバルブV2を開に設定し、濾過水槽13から濾過水を逆洗ポンプP2によって1.0m3/(m2・日)の流量でセラミックフィルタ20に逆流させた。スクラビングは常時実施し、逆洗工程は14分毎に1分間実施した。」

第5 対比・判断
事案に鑑み、本願発明4から検討する。
1 本願発明4について
(1)本願発明4と引用発明とを対比する。
(ア)「被処理水を膜ろ過処理するセラミック製ろ過膜」について
a 被処理水について
本願発明4における「被処理水」とは、本願明細書の【0026】に「原水槽10内には懸濁物質(例えば、固形物、汚泥、有機物、又は炭素繊維、鉄、アルミニウムといった無機物等の有価物等)を含む原水(被処理水)が貯留される。」との記載から固形物などを含む水のことといえる。
一方、引用発明における「ホワイトミルク」は、(引1ア)の【0002】に記載されているとおり「ホワイトミルク(白液+ライムマッド)」であり、「ライムマッド」は、(引1ア)の【0006】に「固形物(ライムマッドの混合物)」として記載されているものであり、そして、白液とは、一般にパルプ製造工程で使用されるNaOH等が入っている水溶液のことであるから、引用発明における「ホワイトミルク」とは、固形物としてライムマッドを含む「水」のことといえる。
そうすると、引用発明における「ホワイトミルク」は、本願発明4の「被処理水」に相当する。

b セラミック製ろ過膜について
本願発明4における「セラミック製ろ過膜」とは、本願明細書の【0038】に「セラミック製ろ過膜22の形状は、特に制限されるものではなく、例えば、管状膜、平膜等である。」との記載から、平らな形状のもの、すなわちプレート形状のものを含むものである。
一方、引用発明の「微細多孔質プレート」は「フィルタのエレメント材」であり、「ホワイトミルク中のライムマッドがディスクの表面に付着し、これと共に白液も該ディスクフィルタの微細多孔質プレートに濾過される」ことから、引用発明の「微細多孔質プレート」は、本願発明4の「ろ過膜」に相当するものである。
そうすると、引用発明の「フィルタのエレメント材」である「セラミック」を「選択」した「微細多孔質プレート」は、本願発明4の「セラミック製ろ過膜」に相当する。

c 上記a及びbを踏まえると、引用発明の「ホワイトミルク中のライムマッドがディスクの表面に付着し、これと共に白液も該ディスクフィルタの微細多孔質プレートに濾過される」ところの「フィルタのエレメント材」である「セラミック」を「選択」した「微細多孔質プレート」は、本願発明4の「被処理水を膜ろ過処理するセラミック製ろ過膜」に相当する。

(イ)「ろ過膜の一次側に蒸気を噴射して前記ろ過膜を洗浄する蒸気噴射手段」について
本願発明4の「ろ過膜の一次側」とは、本願明細書の【背景技術】の【0002】に「ろ過膜の洗浄方法としては、ろ過膜の二次側から処理水を通水する逆洗や、膜の一次側に気体を供給する気体洗浄等の物理洗浄が挙げられる。」と記載されているように、ろ過膜の被処理水が入る側のことであるから、引用発明においては、「ディスクフィルタの内側」ではなく、「ディスクフィルタの表面上」あるいは「ディスクフィルタ上」に対応する側のことである。
そして、「洗浄」には上記【0002】の記載のとおり物理洗浄などあらゆる洗浄が含まれ、ろ過膜に蒸気(スチーム)を噴射して洗浄すること自体は本出願前周知(例えば、特開2008−259945号公報(請求項2参照)、特開2011−189237号公報(請求項1参照)等参照。)であることに鑑みても、フィルタ上に蒸気をスプレーすることには洗浄の作用があるといえることから、引用発明の「エレメント材を微細多孔質プレート」とする「ディスクフィルタ上に」「蒸気」「をスプレーする」ことは、「微細多孔質プレート」を洗浄しているといえる。
そうすると、引用発明の「エレメント材を微細多孔質プレート」とする「ディスクフィルタ上に」「蒸気」「をスプレーするノズル」は、本願発明4の「ろ過膜の一次側に蒸気を噴射して前記ろ過膜を洗浄する蒸気噴射手段」に相当する。

(ウ)「ろ過膜は、水槽内の被処理水に浸漬された浸漬型ろ過膜」について
引用発明の「配管を介してホワイトミルクが供給される」「タンク」内の「ホワイトミルク」は、上記(ア)を踏まえると、本願発明4の「水槽内の被処理水」に相当する。
そして、引用発明は「フィルタエレメントが濾過ゾーンにあるときには、タンク内の加圧によりホワイトミルク中のライムマッドがディスクの表面に付着し、これと共に白液も該ディスクフィルタの微細多孔質プレートに濾過される形でディスク内に浸入」するもので、それは(引1ア)の【0005】の「複数のディスクフィルタ2A〜2Dを直立させ、その一部が加圧下にあるタンク4内のホワイトミルク6内に浸漬するように位置決めした」との
記載を踏まえると、フィルタエレメントがホワイトミルクに「浸漬」されているといえる。
そうすると、引用発明の「タンク」内の「ホワイトミルク」が「濾過される形でディスク内に浸入」する「ディスクフィルタの微細多孔質プレート」は、本願発明4の「水槽内の被処理水に浸漬された浸漬型ろ過膜」に相当するといえる。

(エ)「ろ過膜を大気中に露出させる機構」について
引用発明の「フィルタエレメントが脱水ゾーンに入ると、タンク内の加圧エアによって脱水液がディスクフィルタ内に取込まれ、ここで脱水(白液の回収)が行われ、次いで、フィルタエレメントが逆圧印加ゾーンに到達すると、軸空間を介して逆圧印加用の液体がディスクフィルタの内側から噴出され、脱水されたライムマッドをディスクフィルタから離反させ、その後、フィルタエレメントは逆洗浄ゾーンに至り、軸空間を介して供給される逆洗液により逆洗浄され」「上記逆圧(空気、水、水蒸気等による)をかけることでライムマッドを剥離・除去するものであり、この除去操作を補助する目的で、ディスクフィルタ上に空気、水、蒸気等をスプレーする」ことは、(引1ア)の【0005】の記載を踏まえると、「気相部」で行われることになる。
ここで、「タンク内」は「加圧エア」によって「加圧」されたものであり、上記「タンク内」の気相部は「加圧」されたエアで占められるものであることから、加圧されたエアで占められる気相部は、本願発明4の「大気」とは、「気相」という点で共通するものである。
そして、引用発明においては、「ディスクフィルタをその軸回りに回転させる」ことによって、「フィルタエレメント」が気相部である「脱水ゾーンに入る」「逆圧印加ゾーンに到達する」「逆洗浄ゾーンに至り」「ディスクフィルタ上に空気、水、蒸気等をスプレーする」ことが行われている。
そうすると、引用発明の「ディスクフィルタをその軸回りに回転させるための電動機」と、本願発明4の「ろ過膜を大気中に露出させる機構」とは、「ろ過膜を気相部に露出させる機構」の点で共通するといえる。

(オ)「蒸気噴射手段による前記ろ過膜の洗浄は、前記機構により前記ろ過膜を大気中に露出させた後に実施され」ることについて
引用発明の「電動機」により「ディスクフィルタをその軸回りに回転させ」、気相部で「ディスクフィルタ上に」「蒸気」「をスプレーする」ことと、本願発明4の「前記機構により前記ろ過膜を大気中に露出させた後に」「蒸気噴射手段による前記ろ過膜の洗浄」が「実施され」ることとは、上記(イ)と(エ)を踏まえると、「前記機構により前記ろ過膜を気相部に露出させた後に」「蒸気噴射手段による前記ろ過膜の洗浄」が「実施され」る点で共通するといえる。

(カ)引用発明の「ディスクフィルタ装置」は、本願発明4の「ろ過膜装置」に相当する。

上記(ア)〜(カ)を踏まえると、本願発明4と引用発明とは、
(一致点)
「被処理水を膜ろ過処理するセラミック製ろ過膜と、
前記ろ過膜の一次側に蒸気を噴射して前記ろ過膜を洗浄する蒸気噴射手段と、
前記ろ過膜を気相部に露出させる機構と、を有し、
前記ろ過膜は、水槽内の被処理水に浸漬された浸漬型ろ過膜であり、
前記蒸気噴射手段による前記ろ過膜の洗浄は、前記機構により前記ろ過膜を気相部に露出させた後に実施される、ろ過膜装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
気相部が、本願発明4では「大気」であるのに対し、引用発明では、「加圧エア」によって「加圧」されたものである点。

(相違点2)
本願発明4は、噴射する蒸気が「前記ろ過膜の一次側に堆積したケーキを掻き取る」ものであるのに対し、引用発明では、スプレーする蒸気が、そのような作用があるものかどうか不明である点。

(2)相違点についての判断
相違点1について検討する。
一般に「大気」とは、自然状態にある空気のことであり、加圧あるいは減圧など意図的にその状態を変化させた空気を含むものとはいえないことから、気相部が、本願発明では「大気」であることと、引用発明では「加圧エア」によって「加圧」されたものであることとは、実質的な相違点となる。
そして、引用発明は、「フィルタエレメントが脱水ゾーンに入ると、タンク内の加圧エアによって脱水液がディスクフィルタ内に取込まれ、ここで脱水(白液の回収)が行われ」るものであるから、タンク内の気相部を「大気」に露出することは、技術的想定されないことであり、むしろ、タンク内の気相部を「大気」に露出してしまうとタンク内は加圧されないことになり、脱水が行われないことになることから、阻害要因ともなる。
そうすると、上記引用文献3に記載された事項を考慮するまでもなく、上記相違点1は、当業者が容易になし得たことではない。

(3)小括
よって、本願発明4は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明ではなく、そして、引用発明及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易になし得たものでもない。

2 本願発明1について
本願発明1は、上記第2で記載したとおり、本願発明4の「ろ過膜装置」を、発明のカテゴリーを代えて「ろ過膜の洗浄方法」の発明としたものであり、「前記蒸気洗浄工程は、前記ろ過膜を大気中に露出させた後に実施され」ることを発明特定事項とするものである。
ここで、本願発明1が方法の発明であることに鑑み、上記引用文献1に記載されている発明を、上記第4(1)(イ)で認定した引用発明の「ディスクフィルタ装置」を用いてディスクフィルタからライムマッドを除去することを行う方法の発明(以下「引用発明’」という。)として認定することとする。
そうすると、上記1(2)で判断したように、本願発明1の「大気」と引用発明’の「加圧エア」によって「加圧」されたものであることとは、実質的な相違点であり、そして、引用発明’においては、タンク内の気相部を「大気」に露出することは、技術的想定されないことであり、むしろ、タンク内の気相部を「大気」に露出してしまうとタンク内は加圧されず、脱水が行われないことになり、阻害要因ともなることから、ディスクフィルタを「大気」中に露出させることはない。
そうすると、本願発明1は、引用発明’ではなく、引用発明’及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではない。

3 本願発明2、3、5〜8について
本願発明5、7及び8は、いずれも本願発明4を直接的又は間接的に引用し、本願発明4をさらに減縮した発明であることから、上記1(2)及び(3)で述べたとおり、引用発明でもなく、引用発明及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではない。
また、本願発明2、3及び6は、いずれも本願発明1を直接的又は間接的に引用し、本願発明1をさらに減縮した発明であるから、上記2で述べたとおり、引用発明’でもなく、引用発明’及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではない。

第6 原査定について
上記第5で述べたように、本願発明1〜8は、引用発明(又は引用発明’)でもなく、引用発明(又は引用発明’)及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではないことから、(新規性)について、請求項1及び4に係る発明は、引用文献1に記載された発明である、(進歩性)について、請求項1〜8に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、あるいは引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとの原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-15 
出願番号 P2016-181716
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01D)
P 1 8・ 113- WY (B01D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 三崎 仁
後藤 政博
発明の名称 セラミック製ろ過膜の洗浄方法、ろ過膜装置及びろ過容器  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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