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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45C
管理番号 1385748
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-16 
確定日 2022-07-06 
事件の表示 特願2016−123250「ロック装置を装着可能な開閉式構造体のロック機構」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日出願公開、特開2017−225601、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月22日の出願であって、令和2年6月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月14日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に、手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された周知技術及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本願の請求項4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された周知技術及び引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1 実願昭48−106752号(実開昭50−052100号)のマイクロフィルム
2 実願平05−028803号(実開平06−029428号)のCD−ROM
3 米国特許出願公開第2009/0193631号明細書
4 登録実用新案第3192182号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和3年3月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

・本願発明1
「基体とそれに対向する対向体とを所定箇所で位置決めして開閉する開閉式構造体のロック機構であって、
前記基体又は前記対向体の一方に固設された掛止体と、
前記基体又は前記対向体の他方に形成された掛止孔と、
前記掛止孔に挿通された前記掛止体の可動を規制する規制体と、
で構成され、
前記規制体は、
前記掛止体に当接する当接部と、
ロック装置を装着して、前記基体と前記対向体との開閉を規制する装着部を有する押圧部と、
が一体形成されており、
前記規制体は、前記押圧部の押圧による押上操作及び押下操作によって前記押圧部及び前記装着部の埋没及び表出を可能とし、前記押圧部の押下状態において前記装着部は埋没し、前記押圧部の押上状態において前記装着部は表出していることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。」

・本願発明2
「前記規制体は、前記押圧部の押下状態において前記当接部の前記掛止孔への進入がなく、前記押圧部の押上状態において前記当接部の前記掛止孔への進入があることを特徴とする請求項1記載の開閉式構造体のロック機構。」

・本願発明3
「前記基体は本体ケース、前記対向体は蓋ケースであり、前記本体ケースと前記蓋ケースとがヒンジ部を介して開閉自在とされ、TSAロックが備えられたスーツケースに用いることを特徴とする請求項1又は2記載の開閉式構造体のロック機構。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。

ア 「蝶番3を介して開閉自在に一体に設けたるスーツケース本体1と蓋2とに於て、この本体1の両側部位置にコイルばね78にて常時外方に突出するようにして止具本体71内に釦本体74を内蔵すると共に該釦本体74に先端にフツクを形成した係止具76.76を対向し、且フツク部が閉じるようにコイルばね75を附勢して設けた止具7.7を設け、蓋2のこの止具7と対向する位置にフツク8.8を設けて成るカバンに於ける蓋止具。」(1ページ5行(空白行を除く。以下同様。)ないし同ページ14行)

イ 「本考案はスーツケースその他のカバンに於て開閉する蓋を本体側にロツク状に係止する止具に関するものである。
従来スーツケース等のカバンに於て蓋を開閉する開口面に止具又は止具を兼ねたる施錠装置を設けている。このため横型のカバン即ち横長のカバンに適しているが、縦型のカバン(縦長のカバン)にはこの止具と蝶番間の距離が長くなるため蓋の係止状態がしつくり行い難い等の欠点がある。
本考案はこれに鑑みて縦型のカバンにも適したる止具を提供せんとするものである。」(1ページ16行ないし2ページ10行)

ウ 「図に於て1はスーツケースの本体、2は本体1と略同形に形成したる蓋、3はこの本体1と蓋2をがま口状に開閉自在に一体に係着する蝶番である。そしてこの本体1の蝶番3を有する面と対向する位置に提手4を設けると共にこの提手取付台5に施錠装置6を一体に具備せしめる。
又この提手4や蝶番3を有しない本体1の2側面には止具7.7を対向して設ける。この止具7は第2図、第3図に詳記する如く所要の大きさを有する本体71の表面中央に内蔵したる釦本体の一部が露出する窓72を、又一側面即ち本体1が蓋2と対向する側面に蓋2側に突出するようにして固定したるフツク8を挿通する長孔状のフツク挿通孔73を夫々穿孔し、又この本体71内に釦本体74を摺動自在に内蔵し、この釦本体74はその頂面中央に窓72に露出する釦部74aを設けると共にその一側面にフツク8が挿入できるようにコ字形の切欠74bを設け、且この釦本体74の裏面に2本の軸74c.74cを突設せしめ、この軸74cに夫々両端が係合部となるように突出したるコイルばね75.75を介して先端がフツク76aとなしたる係止具76.76を嵌合支持し、揺動自在とし、さらにこの釦本体74の裏面の軸74cを介して裏板77を嵌合して一体とし、さらにこの裏板77の裏面には釦本体74を常に本体71側に押圧するようにコイルばね78を介して止め板79を重ね、この本体71と止め板79にて本体1の一部を挟持するようにして止め板79側よりビスBを挿通して本体71に係着して止具7をスーツケースの本体1に一体に係着するものである。また上記フツク8はその両側部先端がかぎ状となした即ち矢じり状となす。」(2ページ12行ないし4ページ9行)

エ 「而してカバン本体1に閉蓋する場合は本体1に蓋2を重合するのみでフツク8は止具本体71のフツク挿通孔73に侵入するとフツク8の先端にて対向する係止具76.76間を拡大して挿入され、且フツク先端が係止具のフツク76aと係合して一体になる。このように閉蓋される。
次に蓋2を開かんとする場合は釦本体74.74を押すことによつてコイルばね78をたわませて本体71内に侵入すると係止具76.76も内部に侵入して係止具76のフツク76aとフツク8との係合位置がずれて解除され容易に開蓋できるものである。このとき一度釦を押してフツク8と係止具との係合位置がずれると係止具76.76はそれに附勢したコイルばね75.75にてその先端フツク76a.76a間は閉じ、再びこのフツク76a間にフツク8は侵入できなくなるのでフツク8と係止具76とは外れた状態となるものである。」(4ページ10行ないし5ページ9行)

オ 引用文献1には、第2図、第3図、第4図(A)、第5図として、下図が記載されている。





カ 止具7は、前記ウより、本体1の側面に設けられ、フツク8は、前記アより、止具7と対向する位置にある蓋止具に設けられていることがわかる。さらに、前記エより、止具7とフツク8とは、本体1に蓋2が重合すると係合し、この係合を解除して、蓋2を開くものであることがわかる。これらのことから、引用文献1には、本体1とそれに重合する蓋2とを本体1の側面で係合して開閉する蓋止具について記載されていることがわかる。また、フツク8は、蓋2に設けられていることもわかる。

キ 前記ウより、止具7は、フツク8を挿通する長孔状のフツク挿通孔73を穿孔してあることがわかる。止具7は、本体1に設けられているから、フツク挿通孔73も本体1に設けられているといえる。

ク 前記エより、フツク8をフツク挿通孔73に侵入させると、フツク8の先端が係止具76のフツク76aと係合して一体になることがわかる。また、前記ウより、係止具76は、釦本体74の裏面に突設した2本の軸74cに揺動自在に嵌合支持され、さらにこの軸74cを介して裏板77を嵌合して一体としていることがわかる。これらのことから、釦本体74、係止具76及び裏板77は、フツク挿通孔73に侵入したフツク8と係合して一体になるといえる。

ケ 前記ウより、釦本体74と係止具76は、釦本体74に対し係止具76が揺動自在に一体とされていることがわかる。

コ 前記ウ及びエの記載及び前記オに示す第5図より、釦本体74を押すと釦本体74は、本体71の中に侵入し、釦本体74を離すと、釦本体74は、露出するといえる。

(2)引用文献1に記載された発明
前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「本体1とそれに重合する蓋2とを本体1の側面で係合して開閉する蓋止具であって、
前記蓋2に設けられたフツク8と、
前記本体1に設けられたフツク挿通孔73と、
前記フツク挿通孔73に侵入した前記フツク8と係合して一体となる釦本体74、係止具76及び裏板77と、
で構成され、
前記釦本体74、係止具76及び裏板77は、
前記フツク8に係合する係止具76と、
釦本体74と、
が前記釦本体74に対し前記係止具76が揺動自在となるように一体とされており、
前記釦本体74、係止具76及び裏板77は、前記釦本体74を押すこと及び離すことによって前記釦本体74が本体71に侵入及び露出する蓋止具。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(一部、改行及び空白を省略した。)。

ア 「【0001】【産業上の利用分野】
この考案は、バッグ、リュックサックなどの覆蓋をバッグ本体に掛止するときに用いる係止具に関するものである。」

イ 「【0007】【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この考案の係止具においては、中空状のケース体3の裏面板5の中央に掛合孔6を穿設し、両側壁7に係止部9を設け、かつ奥内部両側にテーパー面10を配設し、スライド板17の中央に掛合孔6’を設け、両側には前記係止部9と係合する係止片18を突設し、その内側には前記テーパー面10と弾接する弾性片19を突設したスライド板17を、ケース体3内に進退自在に嵌装した雌部材1と、前記掛合孔6、6’に嵌挿し、そしてスライド板17の掛合孔6’と嵌合する掛合凹環部23を掛合突部22に凹設した雄部材2とから形成された係止具を主な構成としている。
【0008】
また、スライド板17の端部に操作部20を設け、この操作部20はケース体3より突出状態にある雌部材1から形成された係止具であり、また雌部材1におけるケース体3の一端に、裏面に脚部13を突設した取付板12を延設し、雄部材2は、裏面に脚部26を突設した取付板25を掛合突部22の基部に敷設し、これら脚部13、26に嵌挿できる取付孔14、27を穿設した固定板15、28を、それぞれ固着可能に形成した係止具である。」

ウ 「【0010】【作用】
この考案の係止具は、上述のような構成であり、係止具は、図3、4に示すように、雌部材1におけるケース体3の掛合孔6と、スライド板17の掛合孔6’とが食い違った状態にあるケース体3へ、雄部材2の掛合突部22を挿入させると、スライド板17は、弾性片19がテーパー面10によって弾性変形しながら奥部側へ移動し、掛合孔6と掛合孔6’とは合致して掛合突部22が完全に嵌挿される。そしてスライド板17は弾性片19とテーパー面10とによって最初の状態に復帰するとともに、掛合突部22の掛合凹環部23にスライド板17の掛合孔6’が嵌合し、図5に示すように雌部材1と雄部材2とは係止する。」

エ 「【0012】
この係止状態にある雌部材1と雄部材2との係合を解除させるには、最初にケース体3から突出しているスライド板17の操作部20を押圧しながら、雌部材1を掛合突部22から引き離せば、係合は解除される。」

オ 「【0015】
係止具は、図1に示すように、雌部材1と雄部材2とから構成され、雌部材1は、図2、3に示すようにケース体3は、中空状で表面板4と裏面板5との中央に円形の掛合孔6を穿設し、両側壁7には係止孔8を穿設することによって係止部9を設け、ケース体3の奥内部両側にテーパー面10、また中央にはガイド突部11を配設し、そしてケース体3の表面一端に平板状の取付板12を延設し、この取付板12の裏面には脚部13が突設され、この脚部13に嵌挿できる取付孔14が穿設され、周縁が突出した固定板15を別体で作製し、取付板12と組合せる。
【0016】
ケース体3の嵌入口16から挿入されるスライド板17は、両側に外向の鍵状先端を形成した係止片18を突設し、その内側に係止片18より突出し、やはり外向の鍵状先端を形成した弾性片19が突設され、スライド板17の中央にはケース体3に設けた掛合孔6と合致する掛合孔6’が穿設され、基部側には円弧状に膨出した操作部20が形成され、先端にはガイド凹部21が形成されている。」

カ 引用文献2には、図1として、下図が記載されている。




(2)前記(1)より引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。
・引用文献2に記載された事項
「覆蓋をバッグ本体に掛止するときに用いる係止具において、雌部材1と雄部材2との係合を解除させるときに、押圧する操作部20と、雄部材2の掛合突部22を挿入させたときに、掛合突部22の掛合凹環部23に嵌合する掛合孔6’とをスライド板17に設けたこと。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0028]Referring to FIG. 1 and FIG. 2, the shoulder strap assembly having a snap hook structure and the snap hook structure according to the first embodiment of the present invention are shown, respectively. The shoulder strap assembly having a snap hook structure provided by the present invention may be used to fix a first article 10 at a fixed position (e.g. a desk or a chair), so as to provide an anti-theft function to protect the first article 10 from being stolen. The first article 10 may be, but not limited to, a bag, such as a notebook bag, a briefcase, and a camera bag. The shoulder strap assembly having a snap hook structure in this embodiment includes a strap 30 and a snap hook structure 50. The first article 10 has a ring 11 which may be caught by the snap hook structure 50.」
(当審仮訳:[0028]図1及び図2を参照すると、スナップフック構造と本発明の第1の実施の形態に係るスナップフック構造を有するショルダーストラップ組立体が、それぞれ示されている。本発明により提供されるスナップフック構造を有するショルダーストラップ組立体は、第1の物品10を固定する固定位置(例えば、机や椅子など)に使用されてもよく、第1の物品10の盗難を防止する盗難防止機能を提供することができる。第1の物品10は、限定はしないが、ノートブックバッグ、ブリーフケース、カメラバッグなどのバッグであってもよい。この実施形態では、スナップフック構造を有するショルダーストラップ組立体は、ストラップ30とスナップフック構造50を含む。第1の物品10は、スナップフック構造50に引っ掛かることができるリング11を有している。)

イ 「[0029]Referring to FIGS. 1, 5, and 6, one end of the strap 30 is directly combined with the first article 10, and the other end of the strap 30 is combined with the first article 10 through the snap hook structure 50, so as to enable the user to carry the first article 10 on shoulder or by hand. The strap 30 may wind around a second article 20, so as to cooperate with a block member to lock the first article 10 with the second article 20. The second article 20 may be, but not limited to, a chair or a desk. In this embodiment, the block member is actually a lock 60 having a hook 61. The lock 60 hooks an article by the hook 61 and locks this article. The lock 60 may be equipped with a password lock head or key lock head.」
(当審仮訳:[0029]図1、図5及び図6を参照すると、ストラップ30の一方の端部は、第1の物品10と直接的に結合されると、ストラップ30の他方の端部はスナップフック構造50を介して第1の物品10に結合されて、使用者が肩や手で第1の物品10を搬送できるようにする。ストラップ30は、第2の物品20の周囲に巻くこともでき、ブロック部材と協働して、第1の物品10を第2物品20に係合するようになっている。第2の物品20は、限定されないが、椅子または机であってもよい。この実施形態では、ブロック部材は、実際には、フック61を備えたロック60である。ロック60は、フック61によって物品をフックして、この物品を係止できる。ロック60は、パスワードロックヘッド又は鍵ロックヘッドを備えていてもよい。)

ウ 「[0030] Referring to FIGS. 1, 2, 3, and 4, the snap hook structure 50 includes a main body 51, a keeper member 53, an axle 54, and an elastic member 55. The main body 51 has a body portion 511, a hook portion 512 extending from the body portion 511, and a ring portion 513. The keeper member 53 has an acting portion 531 corresponding to the body portion 511 and a clamping portion 532.

[0031] The hook portion 512 forms a hooking range 52 at one end of the body portion 511 and hooks the ring 11 of the first article 10. The other end of the body portion 511 opposite to the hook portion 512 is connected with the strap 30, i.e., the strap 30 passes through and is connected with the ring portion 513 of the main body 51, so as to combine the strap 30 and the snap hook structure 50. In this manner, the other end of the strap 30 may be combined with the first article 10 through the snap hook structure 50. The body portion 511 has a limiting plane 515 corresponding to the acting portion 531 and a slot 514 penetrating the two sides of the body portion 511. An end edge of the hook portion 512 has an abutted surface 516 which is inclined on the body portion 511. The abutted surface 516 has a rib 517 facing the body portion 511.」
(当審仮訳:[0030]図1、図2、3及び図4を参照すると、スナップフック構造50は、本体51、キーパー部材53、回転軸54、及び弾性部材55を含む。本体51は、本体部分511と、本体部分511から延びるフック部512と、リング部513を有している。保持部材53は、本体部511と、このクランプ部532に対応する作用部531を有する。
[0031]フック部512は、本体部511の一方の端部にフック52を形成し、第1の物品10のリング11を係止する。フック部512の反対側に、本体部511の他方の端部は、ストラップ30に接続されている、即ち、ストラップ30が貫通しており、本体51の環状部分513と接続されており、ストラップ30のスナップフック構造50を結合することができる。このようにして、ストラップ30の他方の端部はスナップフック構造50を介して、第一の物品10と結合されてもよい。本体部511は、作用部531に対応する制限面515と、本体部511aの2辺を貫通するスロット514を有している。フック部分512の端縁は、本体部511上の傾斜した当接面516を有している。当接面516は、本体部分511に対向するリブ517を有している。)

エ 「[0035]As shown in FIGS. 1, 5, and 6, when the clamping portion 532 of the keeper member 53 is at the locking position, the hook 61 can urge against the limiting plane 515 of the main body 51 when the user puts the hook 61 (the block member) of the lock 60 into the stop portion 533 (the perforation) of the acting portion 531, so that the keeper member 53 cannot be pressed to rotate. In this manner, the keeper member 53 is locked by the lock 60 and cannot rotate, and the clamping portion 532 is made to keep enclosing the hooking range 52, such that the hook portion 512 of the main body 51 cannot be separated from the ring 11 of the first article 10. Further, since the strap 30 winds around the second article 20, the shoulder strap assembly of the present invention may lock the first article 10 with the second article 20, so as to prevent the two from separating from each other, thereby providing the anti-theft function.」
(当審仮訳:[0035]図1、図5及び図6に示すように、キーパー部材53の挟持部532が係止位置にあるときに、作用部531の係止部533(穿孔)内にロック60のフック61(ブロック部材)をユーザが挿入すると、フック61は、本体51の平面515に対して干渉するから、キーパー部材53が回転するように押すことができない。このようにして、キーパー部材53はロック60によってロックされて回転不可能となっており、挟持部532は、係止範囲52を閉じた状態に維持することで、本体51のフック部512が第1の物品10のリング11から離脱することができない。さらに、ストラップ30が、第2の物品20に巻きつけられているため、本発明のショルダーストラップ組立体は、第1の物品10を第2の物品20にロックし、2つの物品が互いから離れることを防止し、それによって盗難防止機能を提供する。)

オ 引用文献3には、図2及び図6として、下図が記載されている。




(2)前記(1)より引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。
・引用文献3に記載された事項
「第1の物品10のリング11を係止するための係止範囲52が形成されたフック部512を備えたスナップフック構造50において、キーパー部材53に設けられた係止部533(穿孔)にロック60のフック61を挿入して、キーパー部材53を本体51に対し回転不可能にすることで、係止範囲52を閉じた状態に維持するようにしたこと。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「【0015】
以下、添付図を参照しつつ本考案に係る収納ケースの実施の形態について詳細に説明する。図1は本考案に係る収納ケースをキャリーバッグとした場合の斜視図であり、図2は把手部及び開閉操作部を説明するための部分拡大図である。本考案に係る収納ケースは、図1、2に示すように、互いに開閉可能に設けられた蓋部12と荷物や工具等を収納する収納部11とからなるケース本体10と、ケースを持ち運ぶための把手部20と、開閉装置の解錠・施錠に対応して蓋部と収納部とを開閉するための開閉操作部30とを備えている。開閉操作部30a、30bは、把手部20の両側のフレーム40に2個配置され、把手部20の取付け部21より突出しない厚さ(高さ)に形成して配設されている。開閉操作部30a、30bの把手部側端部にはプッシュボタン31a、31bが設けられている。」

イ「【0022】
なお、本考案においては、図2に示すように、開閉装置としてさらに施錠性を高めるため、シリンダー錠等の施錠ロック装置32を併設することができる。施錠ロック装置としては、シリンダー錠に限定されないが、アメリカ旅行時に、施錠したまま航空会社に荷物を預けることが可能な、アメリカ運輸保安局(Transportation Security Administration)によって認定されたTSAロックを用いることが望ましい。」

(2)前記(1)より引用文献4には、TSAロックを用いたキャリーバッグが記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「本体1」は、本願発明の「基体」に相当し、以下同様に、「重合する」との事項は、「対向する」との事項に、「蓋2」は、「対向体」に、「本体1の側面」は、「所定箇所」に、「係合して」との事項は、「位置決めして」との事項に、「蓋止具」は、「開閉式構造体のロック機構」にそれぞれ相当する。
引用発明の「前記蓋2に設けられた」との事項は、本願発明1の「前記基体又は前記対向体の一方に固設された」との事項に相当し、同様に「フツク8」は、「掛止体」に相当する。
引用発明の「前記本体1に設けられた」との事項は、本願発明1の「前記基体又は前記対向体の他方に形成された」との事項に相当し、同様に「フツク挿通孔73」は、「掛止孔」に相当する。
引用発明の「侵入した」との事項は、本願発明1の「挿通された」との事項に相当し、引用発明の「フツク8と係合して一体となる」との事項は、本願発明1の「掛止体の可動を規制する」との事項に相当する。さらに、引用発明の「釦本体74、係止具76及び裏板77」は、本願発明1の「規制体」に相当する。
引用発明の「係合する」との事項は、本願発明1の「当接する」との事項に相当し、同様に「係止具76」は、「当接部」に相当する。
引用発明の「釦本体74」は、本願発明1の「押圧部」に相当する。
引用発明の「前記釦本体74、係止具76及び裏板77は、前記フツク8に係合する係止具76と、釦本体74と、が前記釦本体74に対し前記係止具76が揺動自在となるように一体とされて」いることは、本願発明1の「前記規制体は、前記掛止体に当接する当接部と、ロック装置を装着して、前記基体と前記対向体との開閉を規制する装着部を有する押圧部と、が一体形成されて」いることと、「規制体は、前記掛止体に当接する当接部と、押圧部と、が一体とされている」ことという限りで一致する。
引用発明の「前記釦本体74、係止具76及び裏板77は、前記釦本体74を押すこと及び離すことによって前記釦本体74が本体71に侵入及び露出する」ことは、本願発明1の「前記規制体は、前記押圧部の押圧による押上操作及び押下操作によって前記押圧部及び前記装着部の埋没及び表出を可能とし、前記押圧部の押下状態において前記装着部は埋没し、前記押圧部の押上状態において前記装着部は表出している」ことと、「規制体は、押圧部の操作によって押圧部の埋没及び非埋没を可能としている」ことという限りで一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

・一致点
「基体とそれに対向する対向体とを所定箇所で位置決めして開閉する開閉式構造体のロック機構であって、
前記基体又は前記対向体の一方に固設された掛止体と、
前記基体又は前記対向体の他方に形成された掛止孔と、
前記掛止孔に挿通された前記掛止体の可動を規制する規制体と、
で構成され、
前記規制体は、
前記掛止体に当接する当接部と、
押圧部と、
が一体とされており、
前記規制体は、前記押圧部の操作によって前記押圧部の埋没及び非埋没を可能としていることを特徴とする開閉式構造体のロック機構。」

・相違点1
本願発明1は、押圧部が「ロック装置を装着して、前記基体と前記対向体との開閉を規制する装着部を有する」ものであり、「前記規制体は、前記押圧部の押圧による押上操作及び押下操作によって前記押圧部及び前記装着部の埋没及び表出を可能とし」ているものであり、さらに、「前記押圧部の押下状態において前記装着部は埋没し、前記押圧部の押上状態において前記装着部は表出している」のに対し、引用発明は、釦本体74が、このような装着部を有するものではなく、「前記釦本体74、係止具76及び裏板77は、前記釦本体74を押すこと及び離すことによって前記釦本体74が本体71に侵入及び露出する」点。

・相違点2
「規制体は、前記掛止体に当接する当接部と、押圧部と、が一体とされて」いる点について、本願発明1は、当接部と押圧部とが「一体形成されて」いるのに対し、引用発明は、「前記釦本体74に対し前記係止具76が揺動自在となるように一体とされて」いる点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
まず、引用文献3には、前記第4・3(2)に示す事項が記載されている。この引用文献3に記載されたキーパー部材53は、本体51と共に係止範囲52を閉じた状態で維持することにより、スナップフック50が取り付けられた第1の物品10の盗難を防止するものと理解(前記第4・3(1)ア参照)でき、そのために、係止範囲52を形成するキーパー部材53にロック60のフック61を挿入する穿孔である係止部533を設けたものである。そして、本体51とキーパー部材53とが閉じた状態のときに、係止部533にロック60のフック61を挿入できるように、係止部533が本体51の制限面515から表出した状態になっている(前記第4・3・(1)オに示す図2、図6参照。)。
ここで、引用発明は、前記第4・1(2)に示す蓋止具であるところ、この蓋止具は、スーツケース、あるいは、その他のカバンの本体と蓋とを係止するためのものであり、縦型のカバンの場合、蝶番と止具(施錠装置6)との距離が長くなるため係止状態がしっくり行い難いという欠点を解決するためになされたものであり(前記第4・1(1)イ参照。)、そのために、施錠装置6を備えているスーツケース等の側面に蓋止具が設けられるものである(前記第4・1(1)ウ参照。)。そして、引用文献1には、この施錠装置6に代えて、あるいは加えて、蓋止具に施錠する機能を設けることは記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明の蓋止具には、引用文献3に記載されるようなロック60のフック61を設けることの動機があるとはいえない。
仮に、引用発明に引用文献3に記載されたロック60のフック61を設けることを試みたとしても、引用発明は、「前記釦本体74、係止具76及び裏板77は、前記釦本体74を押すこと及び離すことによって前記釦本体74が本体71に侵入及び露出する」ものであって、釦本体74は、本体71の表面に露出するものとされているが、釦本体74の上表面が本体71の表面と略面一となっており、釦本体74の上表面のみが露出するに留まるものであり、本体71の表面からさらに突出するものではない(前記第4・1(1)オに示す第5図参照。)ため、釦本体74は、引用文献3に記載されるようなロック60のフック61が挿入される孔を設けられるものではない。
そうすると、引用発明の釦本体74は、引用文献3に記載される係止部533を設けることができないから、相違点1に係る本願発明1の「装着部」にはなりえず、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が、引用発明に引用文献3を適用することで当業者が容易になしえたものとはいえない。
また、原査定の理由で引用された引用文献2,4を見ても、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を得ることが容易であるとはいえず、他に相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を得ることが容易であるとする文献も見当たらない。
よって、引用発明、引用文献2ないし4に記載された事項を検討しても、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは容易であるとはいえない。

イ 相違点2について
引用発明は、前記第4・1(2)に示すとおりであるところ、この引用発明は、係止具76が釦本体74に対し揺動自在となることで、係止具76がフツク挿通孔73に侵入したフツク8と係合できるものであると理解できる。
仮に、釦本体74と係止具76とが一体形成されているとすると、係止具76は、釦本体74に対し、揺動自在とはならず、その結果、係止具76は、フツク挿通孔73に侵入したフツク8と係合できなくなる。
そうすると、引用発明において、釦本体74と係止具76とを一体形成されているものとすることには、阻害要因があり、仮に、引用文献2等に当接部と押圧部とが一体形成されているものとすることが記載されているとしても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

原査定では、本願発明1は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された周知技術及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとしているが、上記のとおり、引用文献2及び3に記載された事項から、本願発明1と引用発明との相違点1、2を得ることは、当業者にとって容易であるとはいえないから、原査定の理由は採用することができない。

2 本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1と同一の発明特定事項を備え、さらに限定されたものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、当業者が引用発明、引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-06-15 
出願番号 P2016-123250
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A45C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 熊谷 健治
長馬 望
発明の名称 ロック装置を装着可能な開閉式構造体のロック機構  
代理人 岩永 和久  
代理人 本夛 伸介  

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