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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1385749
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-17 
確定日 2022-03-07 
事件の表示 特願2018−556622「充電システム、充電コントローラ、充電器、ユーザ端末、充電方法および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日国際公開、WO2018/110416〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2017年12月7日(優先権主張 2016年12月15日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、平成31年4月23日に手続補正がなされ、令和2年6月3日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年7月29日に手続補正がなされたが、同年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和3年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審の令和3年9月30日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年11月16日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
令和3年11月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項10には、以下の事項が記載されている(以下「本願発明」という。なお、下線は補正された箇所を示す。)。
「【請求項10】
サーバと、車両のバッテリを充電可能な充電器を制御するとともに前記サーバと通信可能な充電コントローラとを備え、前記車両のユーザが所持するユーザ端末と通信可能な充電システムによる充電方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記車両が前記充電器に接続され、前記ユーザが前記ユーザ端末において前記充電コントローラの検出を指示し、前記ユーザ端末が前記ユーザ端末の位置情報を取得した場合、前記ユーザ端末から前記位置情報を前記サーバによって取得するステップと、
前記サーバは、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを前記ユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末は、前記充電コントローラのリストにおいて前記ユーザ端末によって決定された前記充電コントローラとの無線通信を確立するステップと、
前記ユーザ端末によって充電開始要求を含む認証要求を前記充電コントローラに送信するステップと、
前記充電コントローラによって前記サーバに前記認証要求を送信するステップと、
前記サーバは、前記認証要求の認証が成功した場合に、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを前記サーバから前記ユーザ端末に送信するステップと、
を備えることを特徴とするプログラム。」

3.当審の拒絶の理由
本願の請求項10に対して令和3年9月30日付けで当審が通知した拒絶理由のうち「理由2」の(11)は次のとおりのものである。なお、当該拒絶理由の通知時には請求項24であった。

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

「(11)請求項24においても、上記(7)と同様のことがいえる。
よって、請求項24に係る発明は、課題を解決するための手段が適切に反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。」
ここで、(7)の内容は次のとおりである。
「(7)発明の詳細な説明の段落【0005】〜【0006】の記載によれば、この発明の解決しようとする課題は、従来の充電システムにおいて、ユーザは充電コントローラにIDカードを読み取らせ、充電器番号を入力するなどの煩雑な操作が必要であり、また、充電コントローラが充電器から離れて設置されている場合には、ユーザは車両から降りた後、充電コントローラまで徒歩で移動しなければならないといったユーザの負担を軽減し、利便性に優れた充電システムを提供することであると認められる。
これに対し、請求項16において「前記サーバから、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを受信することを特徴とするユーザ端末。」と記載されているが、かかる記載のみでは、そもそもユーザ端末が何のために充電コントローラのリストを受信するのか明らかてなく、上記課題を如何にして解決しているのかも適切に把握することができない。
よって、請求項16に係る発明及び請求項16を引用する請求項17〜19、21、22に係る発明は、課題を解決するための手段が適切に反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。」

4.本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には以下の各記載がある(下線は当審で付与した。)。
(1)「【0003】
電動車両の普及のためには、バッテリを充電する充電システムの充実が欠かせないことから、様々な充電システムが案出されてきている。例えば、特許文献1に記載された充電システムは、車両に接続可能な複数の充電器と、複数の充電器を管理する充電コントローラと、ネットワークに接続されたサーバとを含む。充電器は典型的にはショッピングモールなどの駐車場に施設され、充電コントローラは店舗の入り口に設置され得る。このような充電システムにおいて、ユーザは、充電器と車両とをコネクタケーブルで接続した後、充電コントローラを操作することによって充電を開始させる必要がある。すなわち、ユーザが充電コントローラにIDカードを読み取らせるとともに、車両に接続された充電器の番号を入力することで、充電コントローラは指定された充電器における充電を開始させる。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0005】
特許文献1に記載の充電システムにおいて、ユーザは充電コントローラにIDカードを読み取らせ、充電器番号を入力するなど煩雑な操作が必要となる。また、充電コントローラが充電器から離れて設置されている場合には、ユーザは車両から降りた後、充電コントローラまで徒歩で移動しなければならない。特に、大型の駐車場に充電システムが施設されている場合には、充電器から充電コントローラまでの距離は長くなり、ユーザの負担はさらに大きくなる。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ユーザの負担を軽減し、利便性に優れた充電システムを提供することを目的とする。」

(2)「【0032】
図7、図8、図9は本実施形態における充電システムのシーケンスチャートである。充電コントローラ3は無線LANユニット306からビーコンを一定周期(例えば100msec)で送信し続ける(ステップS702)。ビーコンには、無線LANユニット306の識別子であるSSID(Service Set ID)、チャネル(周波数)情報、セキュリティ情報などが含まれる。車両5が駐車場2に入り、ユーザは車両5を充電器4の前に停車し、充電ケーブル4aを車両5のコネクタCN2に接続する(ステップS706)。充電器4において、充電ケーブル4aが車両5に接続されることで、パイロット信号CPLTの電圧は12Vから9Vに低下する(ステップS707)。充電器4は、パイロット信号CPLTの電圧が9Vになったことを検出すると、充電ケーブル4aが車両5に接続されたと判断し、LEDを点滅させる。さらに、充電器4は、充電器4に車両5が接続されたことを、充電器4の識別番号とともに充電コントローラ3に通知する(ステップS709)。
【0033】
ユーザがユーザ端末6においてアプリケーションプログラムを起動すると(ステップS714)、ユーザ端末6はカード番号、パスワードなどの情報を無線WANユニット607を介してサーバ1に送信する(ステップS715)。サーバ1はカード番号、パスワードの認証を行い(ステップS716)、認証結果をユーザ端末6に送信する(ステップS717)。ここで、パスワードの期限が過ぎていた場合には、ユーザは登録画面(図10A)から改めてパスワードの取得を行なっても良い。認証が成功すると、ユーザ端末6は近隣の充電コントローラ3を検出し始める。例えば、図10Bの表示画面において、ユーザが「開始」のボタンに触れると、ユーザ端末6は充電コントローラ3の検出を開始し、ディスプレイ604に「検出中」のメッセージを表示する(図10C)。ユーザ端末6が駐車場、すなわち充電コントローラ3の通信可能エリアに入っている場合、ユーザ端末6はSSIDを受信する(ステップS718)。複数の駐車場が近接して設けられている場合、ユーザ端末6は複数のSSIDを受信し得る。この場合には、ユーザ端末6は複数のSSIDを取得する。ユーザ端末6は取得したSSIDの一覧を無線WAN607を介してサーバ1に送信する(ステップS719)。
【0034】
サーバ1は受信したSSIDのリストとサーバ1に保存されたデータベースとを照合し、SSIDのそれぞれに対応した充電コントローラ3と、当該充電コントローラ3が設置された店舗とを検索する(ステップS722)。サーバ1は検索された充電コントローラ3、店舗の情報をユーザ端末6に送信する(ステップS723)。なお、サーバ1は無線LANユニット306のIPアドレスを位置情報として取得しても良い。また、ユーザ端末6にSSIDと充電コントローラ3との変換テーブルを記憶させておき、ユーザ端末6がSSIDに対応した充電コントローラ3を検索しても良い。この場合には、ユーザ端末6は充電コントローラ3の情報をサーバ1に問い合わせることを要しない。
【0035】
図8において、ユーザ端末6はサーバ1から送信された店舗などの情報をディスプレイ604に表示させる(ステップS802)。例えば、「店舗1:コントローラA、コントローラB」、「店舗2:コントローラA、コントローラB、コントローラC」のように、充電コントローラ3が店舗ごとに分類して表示される(図10D参照)。表示された充電コントローラ3は、ユーザ端末6によって受信されたSSIDに対応しており、自己の車両5に充電を行なう充電コントローラ3の他、近隣の充電コントローラ3を含んでいる。ユーザは、表示された複数の充電コントローラ3の中から自己の車両5に充電を行なう充電コントローラ3を決定する(ステップS804)。例えば、ユーザがディスプレイ604において店舗1の「コントローラA」に触れることで、充電コントローラ3を決定することができる。
【0036】
ユーザ端末6は、決定された充電コントローラ3に認証要求を行なう(ステップS805)。認証方法は限定されないが、Radius(Remote Authentication Dial In User Service)、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)などを用いることが可能である。また、公開鍵認証、デジタル証明書など様々な認証方法を用い得る。充電コントローラ3は認証を行い(ステップS806)、認証の結果をユーザ端末6に送信する(ステップS809)。認証が成功した場合には、ユーザ端末6は利用可能な充電器4のリストを充電コントローラ3に要求する(ステップS811)。充電コントローラ3は、当該充電コントローラ3に接続された複数の充電器4の中から、車両5に充電ケーブル4aが接続されており、かつ、充電が開始されていない充電器4を検出する(ステップS814)。なお、複数のユーザが同じ時刻に充電を開始しようとした場合には、複数の充電器4が検出されることもある。サーバ1は検出された充電器4のリストをユーザ端末6に送信し(ステップS815)、ユーザ端末6はディスプレイ604に充電器4のリストを表示する(ステップS818)。図11Aに示されるように、表示画面は、「店舗1:コントローラA」において充電開始可能な充電器4の識別番号「A−1」、「A−3」を含む。また、表示画面は、選択可能な充電時間の表示を含む。例えば、ユーザの車両5が識別番号「A−1」の充電器4に接続されている場合には、ユーザはディスプレイ604上において識別番号「A−1」の充電器4を選択する。さらに、ユーザは充電時間を選択し、「次へ」のボタンに触れることで、充電器4、充電時間を決定する(ステップS820)。
【0037】
続いて、ユーザ端末6は、充電開始の要求をディスプレイ604に表示し、ユーザに充電開始を促す(ステップS822)。例えば、図11Bに示されたように、「店舗1:コントローラA」、「充電器:A−1」、「充電時間:1時間」などの充電条件が表示される。図9において、ユーザは充電条件を確認し、「充電開始」の表示に触れると、ユーザ端末6は充電開始中であることをディスプレイ604に表示し(図11C)、認証要求を充電コントローラ3に送信する(ステップS901)。認証要求には、充電開始要求、充電器4の識別番号、充電時間、決済情報(ユーザID、パスワード)等が含まれ得る。充電コントローラ3は、ユーザ端末6からの認証要求を受信し(ステップS902)、さらにサーバ1に対してユーザの認証の要求を行なう(ステップS903)。サーバ1は認証要求に対してデータベースの照合を行い(ステップS906)、認証結果を充電コントローラ3に送信する(ステップS907)。
【0038】
認証が成功した場合には、充電コントローラ3は充電の開始を決定し(ステップS910)、識別番号「A−1」の充電器4に対して充電の開始を指示する(ステップS911)。さらに、充電コントローラ3は充電の開始をユーザ端末6に通知し(ステップS913)、ユーザ端末6は充電が開始したことをディスプレイ604に表示する(図11D)。充電器4は最大電流を0Aから例えば15Aに変更する(ステップS916)。最大電流は上述したようにパイロット信号CPLTのデューティ比によって定められる。充電ECU501はパイロット信号CPLTのデューティ比を検出し(ステップS917)、定められた最大電流で充電を開始する(ステップS920)。すなわち、充電ECU501はリレースイッチ502をオンにし、充電器4から供給された電流をバッテリ506に充電する。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0041】
以上により、本実施形態によれば、ユーザは車両から離れて充電コントローラを操作することなく、充電を開始することができ、ユーザの利便性を高めることが可能となる。」

5.当審の判断
発明の詳細な説明の段落【0003】〜【0006】の記載によれば(上記「4.(1)」を参照)、本願発明は、従来の充電システムにおいて充電を開始させるために、ユーザは充電コントローラにIDカードを読み取らせ、充電器番号を入力するなどの煩雑な操作が必要であり、また、充電コントローラが充電器から離れて設置されている場合には、ユーザは車両から降りた後、充電コントローラまで徒歩で移動しなければならないといったユーザの負担を軽減し、利便性に優れた充電システムを提供することを課題としているといえる。
そして、発明の詳細な説明の段落【0032】〜【0041】には(上記「4.(2)」を参照)、車両が充電器に接続され、ユーザがユーザ端末においてアプリケーションプログラムを起動させて近隣の充電コントローラの検出を開始し、サーバはユーザ端末が取得したSSIDを取得して当該SSIDに対応した充電コントローラを検索し、検索された充電コントローラの情報(リスト)をユーザ端末に送信し、ユーザはユーザ端末に表示された複数の充電コントローラの中から充電を行う充電コントローラを決定し、続いて、ユーザ端末は充電開始要求を含む認証要求を決定した充電コントローラに送信し、充電コントローラはさらにサーバに対してその認証要求を送信し、そして、サーバは認証結果を充電コントローラに送信し、認証が成功した場合には、充電コントローラは充電の開始を決定し、充電器に対して充電の開始を指示することにより上記の課題を解決していることが記載されている。

これに対し、請求項10において「・・前記サーバは、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを前記ユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末は、前記充電コントローラのリストにおいて前記ユーザ端末によって決定された前記充電コントローラとの無線通信を確立するステップと、前記ユーザ端末によって充電開始要求を含む認証要求を前記充電コントローラに送信するステップと、前記充電コントローラによって前記サーバに前記認証要求を送信するステップと、前記サーバは、前記認証要求の認証が成功した場合に、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを前記サーバから前記ユーザ端末に送信するステップと」を備えると記載され、サーバは、充電開始要求を含む認証要求が成功した場合に位置情報に対応した充電コントローラのリストをユーザ端末に送信することまでが記載されているにすぎず、かかる記載のみでは、そもそも何のために充電コントローラのリストをユーザ端末に送信するのか明らかでなく、如何にしてユーザが車両から離れて充電コントローラを操作することなく充電を開始することができ、上記の課題を解決することができるのか適切に把握することができない。
さらに、請求項10には、「前記サーバは、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを前記ユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末は、前記充電コントローラのリストにおいて前記ユーザ端末によって決定された前記充電コントローラとの無線通信を確立するステップ」と、「前記サーバは、前記認証要求の認証が成功した場合に、前記位置情報に対応した前記充電コントローラのリストを前記サーバから前記ユーザ端末に送信するステップ」の二つのステップにおいてサーバは充電コントローラのリストをユーザ端末に送信しているが、発明の詳細な説明には二つのステップにおいて充電コントローラのリストを送信することは記載されておらず、特に後者のステップのように、「前記認証要求の認証が成功した場合に」充電コントローラのリストをユーザ端末に送信するようなことは記載されていないことである。

なお、請求項10に対する上記拒絶の理由(理由2)に対して、審判請求人は令和3年11月16日に提出した意見書には「(理由2について)審判官殿のご示唆に従い、独立請求項1、9、10の記載を補正致しましたので、特許法第36条第6項第1号及び第2号の拒絶理由についても解消するに至ったものと思料致します。」と記載されているだけであり、上記「理由2」の(7)や(11)で指摘した不備が解消したことの具体的な説明は何らなされていない。

したがって、依然として請求項10に係る発明は、課題を解決するための手段が適切に反映されておらず、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えて特許を請求するものである。

6.むすび
以上のとおり、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-01-04 
結審通知日 2022-01-06 
審決日 2022-01-20 
出願番号 P2018-556622
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 畑中 博幸
井上 信一
発明の名称 充電システム、充電コントローラ、充電器、ユーザ端末、充電方法および記録媒体  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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