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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1385758
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-30 
確定日 2022-06-09 
事件の表示 特願2018−210442「フレキシブルディスプレイを伴う電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月11日出願公開、特開2019− 57305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,本願は,2012年(平成24年)3月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月21日,同年5月16日,同年6月28日,同年7月15日,2012年3月16日,いずれも米国)を国際出願日とする出願である特願2013−557948号の一部を平成27年11月12日に新たな特許出願とした特願2015−222405号の一部を平成30年11月8日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年11月 8日 審査請求書・手続補正書・上申書 提出
令和 元年10月30日付け 拒絶理由通知
令和 2年 2月 5日 意見書・手続補正書 提出
令和 2年 8月 4日付け 拒絶理由通知(最後)
令和 2年11月11日 意見書・手続補正書 提出
令和 2年11月18日付け 令和2年11月11日の手続補正について
の補正の却下の決定・拒絶査定
令和 3年 3月30日 審判請求書・手続補正書 提出

第2 令和3年3月30日の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年3月30日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の理由]

1.手続補正の内容

令和3年3月30日の手続補正(以下,「本件補正」という)により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,本件補正前の(1)のとおりの記載から,本件補正後の(2)のとおりの記載に補正された(下線は補正により変更された部分を示す)。

(1)本件補正前の請求項1

本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は,令和2年2月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「凸状の曲率を有する,対向する前面及び後面と,該前面と該後面との間の少なくとも1つのカーブした側面とを有する電子装置であって,
ハウジングと,
前記ハウジングにおいてマウントされたディスプレイであって,当該ディスプレイはピクセルアレイ及び堅牢なカバー層を有し,前記堅牢なカバー層は前記電子装置のカーブした側面を形成し,前記電子装置の前記前面の少なくとも一部を形成し,そして前記電子装置の前記後面の少なくとも一部を形成し,前記ピクセルアレイは前記堅牢なカバー層の前,前記カーブした側面及び後において画像を表示する,ディスプレイと,
前記前と後との間で前記ハウジングにマウントされた電子的コンポーネントと,
を備えた電子装置。」

(2)本件補正後の請求項1

「凸状の曲率を有する,対向する前面及び後面と,該前面と該後面との間の第1及び第2のカーブした側面とを有する電子装置であって,
ハウジングと,
前記ハウジングにおいてマウントされたディスプレイであって,当該ディスプレイはピクセルアレイ及び堅牢なカバー層を有し,前記堅牢なカバー層は前記電子装置の第1及び第2のカーブした側面を形成し,前記電子装置の前記前面の少なくとも一部を形成し,そして前記電子装置の前記後面の少なくとも一部を形成し,前記ピクセルアレイは前記堅牢なカバー層の前,前記第1及び第2のカーブした側面及び前記後面において画像を表示する,ディスプレイと,
前記前と後との間で前記ハウジングにマウントされた電子的コンポーネントと,
を備えた電子装置。」

2.補正の適否

(1)本件補正の目的

この補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「カーブした側面」について,「第1及び第2の」と限定するものであって,本件補正の前後で,請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。(なお,「後」を「前記後面」とする補正箇所は,誤記の訂正を目的とするものである。)

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けられるものであるか否かについて以下検討する。

(2)独立特許要件についての判断

ア 本件補正発明

本件補正発明は,上記1.(2)の記載により特定されるとおりのものである。

イ 引用文献1

原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2010/0117975号明細書(以下,「引用文献1」という)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審で付加した。以下同様。)。

(ア)図1


(イ)「[0028] FIG. 1 illustrates a block diagram of a mobile terminal 100 according to an embodiment of the present invention. Referring to FIG. 1, the mobile terminal 100 may include a wireless communication unit 110, an audio/video (A/V) input unit 120, a user input unit 130, a sensing unit 140, an output unit 150, a memory 160, an interface unit 170, a controller 180, and a power supply unit 190. Two or more of the wireless communication unit 110, the A/V input unit 120, the user input unit 130, the sensing unit 140, the output unit 150, the memory 160, the interface unit 170, the controller 180, and the power supply unit 190 may be incorporated into a single unit, or some of the wireless communication unit 110, the A/V input unit 120, the user input unit 130, the sensing unit 140, the output unit 150, the memory 160, the interface unit 170, the controller 180, and the power supply unit 190 may be divided into two or more smaller units.」
(当審訳:
[0028] 図1は,本発明の一実施形態による携帯端末100のブロック図である。図1を参照すると,携帯端末100は,無線通信ユニット110,オーディオ/ビデオ(A/V)入力ユニット120,ユーザ入力ユニット130,センシングユニット140,出力ユニット150,メモリ160,インタフェースユニット170,コントローラ180,および電源ユニット190を含んでもよい。なお,無線通信ユニット110,A/V入力ユニット120,ユーザ入力ユニット130,感知ユニット140,出力ユニット150,メモリ160,インターフェースユニット170,コントローラ180,および電源ユニット190のうち,2つ以上が単一のユニットに組み込まれていてもよいし,無線通信ユニット110,A/V入力ユニット120,ユーザ入力ユニット130,感知ユニット140,出力ユニット150,メモリ160,インターフェースユニット170,コントローラ180,および電源ユニット190のうち,一部が2つ以上の小さなユニットに分割されていてもよい。)

(ウ)「[0046] The output unit 150 may output an audio signal, a video signal and an alarm signal. The output unit 150 may include the display module 151, and an audio output module 153, an alarm module 155 and a haptic module 157.
[0047] The display module 151 may display various information processed by the mobile terminal 100. For example, if the mobile terminal 100 is in a call mode, the display module 151 may display a user interface (UI) or a graphic user interface (GUI) for making or receiving a call. If the mobile terminal 100 is in a video call mode or an image capturing mode, the display module 151 may display a UI or a GUI for capturing or receiving images.
(中略)
[0050] The display module 151 may include at least one of a liquid crystal display (LCD), a thin film transistor (TFT)-LCD, an organic light-emitting diode (OLED), a flexible display, a three-dimensional (3D) display and a transparent display.」
(当審訳:
[0046] 出力ユニット150は,音声信号,映像信号,及びアラーム信号を出力してもよい。出力ユニット150は,ディスプレイモジュール151と,音声出力モジュール153と,アラームモジュール155と,ハプティックモジュール157とを含んでもよい。
[0047] ディスプレイモジュール151は,携帯端末100で処理された様々な情報を表示してもよい。例えば,携帯端末100が通話モードである場合,表示モジュール151は,通話を行うためのユーザインタフェース(UI)や,通話を受けるためのグラフィックユーザインタフェース(GUI)を表示してもよい。また,携帯端末100がビデオ通話モードまたは画像キャプチャモードである場合,ディスプレイモジュール151は,画像をキャプチャまたは受信するためのUIまたはGUIを表示してもよい。
(中略)
[0050] ディスプレイモジュール151は,液晶ディスプレイ(LCD),TFT(Thin Film Transistor)-LCD,有機発光ダイオード(OLED),フレキシブルディスプレイ,3次元(3D)ディスプレイ,および透明ディスプレイのうちの少なくとも1つを含んでもよい。)

(エ)「[0079] The mobile terminal 100 may be embodied in various shapes other than those set forth herein. The mobile terminal 100 may be largely classified into a bar-type mobile terminal or a folder-type mobile terminal according to the shape of the body of the mobile terminal 100 or the position of a flexible display in the mobile terminal 100. The bar-type mobile terminal may be classified into a cylindrical, cylindroid, prism-shaped or freestyle mobile terminal. The folder-type mobile terminal may be classified into a folding, rolling or hybrid mobile terminal.」
(当審訳:
[0079] 携帯端末100は,本明細書に記載されたもの以外の様々な形状で具現化されてもよい。携帯端末100は,携帯端末100の本体の形状や,携帯端末100におけるフレキシブルディスプレイの位置によって,バー型携帯端末とフォルダ型携帯端末とに大別されてもよい。バー型の携帯端末は,円筒形,略円筒形,プリズム型,フリースタイル型の携帯端末に分類されてもよい。また,フォルダ型の携帯端末は,折り畳み型,ローリング型,またはハイブリッド型の携帯端末に分類することができる。)

(オ)図5

上記図5(a)によれば,フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,表面および裏面が平面であり,表面と裏面の間の左右に設けられた側面は,曲面であることが認められる。

(カ)「[0080] FIGS. 5(a) and 5(b) illustrate a full-display-type cylindroid mobile terminal and a full-display-type cylindrical mobile terminal, respectively. Referring to FIG. 5(a), the full-display-type cylindroid mobile terminal may include a body 201 which is cylindroid, and a flexible display 203 which is attached onto the body 201, surrounding the outer circumferential surface of the body 201. Referring to FIG. 5(b), the full-display-type cylindrical mobile terminal may include a body 205 which is cylindrical, and a flexible display 207 which is formed on the body 205, surrounding the outer circumferential surface of the body 205. The flexible displays 203 and 207 may be flexible enough to be bent or folded, and may thus allow the outer circumferential surfaces of the bodies 201 and 205 to be used as display regions.
[0081] The flexible display 203 or 207 may be used as a single display, and thus, a single operation screen may be displayed on the entire flexible display 203 or 207.」
(当審訳:
[0080] 図5(a)および図5(b)は,それぞれ,フルディスプレイ型略円筒形携帯端末およびフルディスプレイ型円筒形携帯端末を示す図である。図5(a)を参照すると,フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,略円筒形である本体201と,本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられるフレキシブルディスプレイ203とを含んでもよい。図5(b)を参照すると,フルディスプレイタイプの円筒形端末は,円筒形である本体205と,本体205の外周面を囲むように本体205上に形成されるフレキシブルディスプレイ207とを含んでいてもよい。フレキシブルディスプレイ203,207は,折り曲げたり,折り畳んだりできる程度の柔軟性を有していてもよく,これにより,ボディ201,205の外周面を表示領域として利用することができる。
[0081] フレキシブルディスプレイ203または207は,単一のディスプレイとして使用されてもよく,したがって,フレキシブルディスプレイ203または207の全体に単一の操作画面が表示されてもよい。)

(キ) 上記(ア)〜(カ)より,引用文献1の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「無線通信ユニット110,オーディオ/ビデオ(A/V)入力ユニット120,ユーザ入力ユニット130,センシングユニット140,出力ユニット150,メモリ160,インタフェースユニット170,コントローラ180,および電源ユニット190を含んでいる携帯端末100であって,
出力ユニット150は,ディスプレイモジュール151等を含んでおり,ディスプレイモジュールモジュール151は,携帯端末100で処理された様々な情報を表示しており,ディスプレイモジュール151は,フレキシブルディスプレイ等を含んでおり,
携帯端末100は,様々な形状で具現化されてもよく,略円筒形であってもよく,
フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,表面および裏面が平面であり,表面と裏面の間の左右に設けられた側面は,曲面であり,
フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,略円筒形である本体201と,本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられるフレキシブルディスプレイ203とを含んでおり,ボディ201の外周面を表示領域として利用することができ,フレキシブルディスプレイ203は,単一のディスプレイとして使用され,フレキシブルディスプレイ203の全体に単一の操作画面が表示される
携帯端末100。」

ウ 引用文献2

原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2011−003537号公報には,以下の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
発光装置及び発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,発光装置は,さまざまな場所や用途で用いられており,それによって要求される特性や形状も多様化している。よって目的にあった機能性を付与された発光装置の開発が進められている。
【0003】
例えば,遊技機に設ける発光装置として,より遊技者が立体感を得られるように表示面を曲面状にしたディスプレイが報告されている(例えば,特許文献1参照。)。
【0004】
発光装置としては,軽量であり,高いコントラストや広い視野角を実現できるエレクトロルミネセンス(以下ELともいう)を発現する発光素子(以下EL素子ともいう)を有する発光装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平7−114347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,EL素子は外部より侵入する水分などの汚染物質により素子劣化を生じやすく,これは発光装置における信頼性低下の要因の一つとなっている。
【0007】
よって,より多様化する用途に対応でき,利便性が向上した信頼性の高い発光装置を提供することを目的の一とする。また,工程を複雑化させることなく,目的に適した形状を有する信頼性の高い発光装置を作製することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発光装置の作製工程において,電極層や素子層を作製後,形状を成形する加工を行うことによって少なくとも一部が曲折した発光パネルを作製し,少なくとも一部が曲折した発光パネル表面を覆う保護膜を形成して,当該発光パネルを用いた発光装置に高機能化及び高信頼性を付加する。」

(イ)図1










(ウ)「【0023】
(実施の形態1)
発光装置を,図1及び図5を用いて説明する。
【0024】
図1及び図5は発光装置及び発光装置の作製方法を示す断面図である。
【0025】
発光装置は,少なくとも第1の電極層,EL層及び第2の電極層を含む発光素子と,発光素子を間に封止する一対の封止部材とを有している。また,半導体素子が設けられても良く,好適には薄膜トランジスタが用いられる。アクティブマトリクス型の発光装置の場合,各画素ごとに駆動用の薄膜トランジスタが設けられる。
【0026】
本実施の形態では,アクティブマトリクス型の発光装置の例を示すが,パッシブマトリクス型の発光装置にも本実施の形態は適応できる。
【0027】
本実施の形態では,発光素子の電極層や半導体素子を含む素子層を作製後,形状を成形する加工を行うことによって少なくとも一部が曲折した発光パネルを作製し,少なくとも一部が曲折した発光パネル表面を覆う保護膜を形成して,当該発光パネルを用いた発光装置に高機能化及び高信頼性を付加する。
【0028】
作製基板100上に素子層101を形成する(図1(A)参照。)。素子層101は薄膜トランジスタを含む。次に素子層101を,支持基板102に転置する(図1(B)参照。)。
【0029】
作製基板100は,素子層101の作製工程に合わせて適宜選択すればよい。例えば,作製基板100としては,ガラス基板,石英基板,サファイア基板,セラミック基板,表面に絶縁層が形成された金属基板などを用いることができる。また,処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0030】
支持基板102より,第1の封止部材110に素子層101を転置する(図1(C)参照。)。
【0031】
素子層101と電気的に接続する発光素子125を形成し,素子層101及び発光素子125を覆う第2の封止部材120を形成する。よって,第1の封止部材110と第2の封止部材120とによって封止された素子層101及び発光素子125を含む可撓性の発光パネル155aが作製される(図1(D)参照。)。
【0032】
可撓性の発光パネル155aは,一対の封止部材によって封止されていればよく,封止部材は可撓性であれば,基板でも膜でもよい。発光パネル155aは基板状の第1の封止部材110と樹脂層状の第2の封止部材120を用いる例である。封止する手段として,封止部材同士を接着するシール材や,異なる形状の封止部材を複数用いてもよい。図5に可撓性の発光パネルの他の例を示す。
【0033】
図5(A)は,樹脂層状の第2の封止部材120上にさらに基板状の第3の封止部材128を設けた可撓性の発光パネル155bの例である。また,図5(B)はさらに,第1の封止部材110と第3の封止部材128をシール材124によって接着した可撓性の発光パネル155cの例である。
【0034】
第2の封止部材120のような樹脂層状の封止部材は,紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ,PVC(ポリビニルクロライド),アクリル,ポリイミド,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。また,封止部材として,乾燥剤などの吸湿性を有する物質を用いる,または封止部材中に吸湿性を有する物質を添加すると,さらなる吸水効果が得られ,素子の劣化を防ぐことができる。
【0035】
シール材124としては,代表的には可視光硬化性,紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。代表的には,アクリル樹脂,エポキシ樹脂,アミン樹脂などを用いることができる。また,光(代表的には紫外線)重合開始剤,熱硬化剤,フィラー,カップリング剤を含んでもよい。
【0036】
第1の封止部材110と第3の封止部材128をシール材124によって貼り合わせる工程は減圧下で行ってもよい。
【0037】
支持基板102,第1の封止部材110,及び第3の封止部材128は可撓性を有する基板(可撓性基板)又は膜を用いる。しかし,形状を加工され固定された後の第1の封止部材110,第2の封止部材120,及び第3の封止部材128は可撓性を有する必要はない。支持基板102,第1の封止部材110,第2の封止部材120,及び第3の封止部材128として,アラミド樹脂,ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂,ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂,ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂,ポリイミド(PI)樹脂などを用いることができる。また,繊維に有機樹脂が含浸された構造体であるプリプレグを用いてもよい。透光性を有する必要がない場合,ステンレスなどの金属フィルムを用いてもよい。
【0038】
封止部材には無機絶縁膜などの保護膜を設けてもよい。例えば,第1の封止部材110において,素子層101側に保護膜を設けると外部や第1の封止部材110から素子層101へ汚染物質が進入するのを保護膜によって遮断できる。また第1の封止部材110において外側(素子層101と反対側)に保護膜を設けると第1の封止部材110自体への汚染物質の進入が遮断でき,劣化を防ぐことができる。
(中略)
【0051】
可撓性の発光パネル155aを発光パネル150の形状に変化させる際,その変化させた形状を固定させるために加熱処理や光照射処理などの固定処理を行ってもよい。また,加熱処理によって発光パネル150の形状に変形させ,変形を保持させたまま冷却することによって,発光パネル150の形状を固定させてもよい。」

(エ)図10


(オ)「【0225】
本実施の形態では,本明細書に開示する発光装置を携帯電話機に適用する例を図10及び図11に示す。
【0226】
図10(C)は,携帯電話機を正面から見た図,図10(D)は携帯電話機を横から見た図,図10(B)は携帯電話機を縦から見た図,筐体は筐体1411a,1411bからなり,筐体1411a,1411bの少なくとも表示領域となる領域は透光性の保持部材である。図10(A)は,筐体1411a及び筐体1411b内の断面図である。筐体1411aの正面から見た形状は,長い辺と短い辺を有する矩形であり,矩形の角は丸まっていてもよい。本実施の形態では,正面形状である矩形の長い辺と平行な方向を長手方向と呼び,短い辺と平行な方向を短手方向と呼ぶ。
【0227】
また,筐体1411a,1411bの側面から見た形状も,長い辺と短い辺を有する矩形であり,矩形の角は丸まっていてもよい。本実施の形態では,側面形状である矩形の長い辺と平行な方向は長手方向であり,短い辺と平行な方向を奥行方向と呼ぶ。
【0228】
図10(A)〜図10(D)で示される携帯電話機は,表示領域1413,操作ボタン1404,タッチパネル1423を有し,筐体1411a,1411b内に,発光パネル1421,配線基板1425を含んでいる。タッチパネル1423は必要に応じて設ければよい。
【0229】
発光パネル1421は実施の形態1乃至7で説明した発光パネル及び発光モジュールを用いればよい。
【0230】
図10(B)(C)に示されるように,発光パネル1421は,筐体1411aの形状にそって視認側正面領域のみでなく,上面領域及び下面領域の一部も覆うように配置されている。よって携帯電話機の長手方向の上部にも表示領域1413と連続する表示領域1427を形成することができる。すなわち,携帯電話機の上面にも表示領域1427が存在している。これにより,例えば携帯電話機を胸ポケットに入れていたとしても,取り出すことなく表示領域1427を見ることができる。
【0231】
表示領域1413,1427には,メールの有無,着信の有無,日時,電話番号,人名等が表示できればよい。また必要に応じて,表示領域1427のみ表示し,その他の領域は表示しないことにより,省エネルギー化を図ることができる。」

(カ) 特に,上記(ア)〜(オ)の下線部に着目すると,引用文献2には,以下の技術(以下,「引用文献2記載技術」という。)が記載されているといえる。

「発光装置としては,軽量であり,高いコントラストや広い視野角を実現できるエレクトロルミネセンス(以下ELともいう)を発現する発光素子(以下EL素子ともいう)を有する発光装置において,EL素子は外部より侵入する水分などの汚染物質により素子劣化を生じやすいことから,信頼性の高い発光装置を提供するため,電極層や素子層を作製後,形状を成形する加工を行うことによって曲折した発光パネル表面を覆う保護膜を形成して,当該発光パネルを用いた発光装置であって,
発光装置は,少なくとも第1の電極層,EL層及び第2の電極層を含む発光素子と,発光素子を間に封止する一対の封止部材とを有しており,半導体素子が設けられており,薄膜トランジスタが用いられ,アクティブマトリクス型の発光装置の場合,各画素ごとに駆動用の薄膜トランジスタが設けられており,
第1の封止部材110と第2の封止部材120とによって封止された素子層101及び発光素子125を含む可撓性の発光パネル155aを備えており,
第2の封止部材120のような樹脂層状の封止部材は,紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ,PVC(ポリビニルクロライド),アクリル,ポリイミド,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができ,
第1の封止部材110,第2の封止部材120として,アラミド樹脂,ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂,ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂,ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂,ポリイミド(PI)樹脂などを用いることができ,
可撓性の発光パネル155aを発光パネル150の形状に変化させる際,その変化させた形状を固定させるために加熱処理や光照射処理などの固定処理を行って,発光パネル150の形状を固定させた
発光装置を適用した携帯電話機。」

エ 対比

本件補正発明と,引用発明とを対比する。

(ア)引用発明において「携帯端末100は,様々な形状で具現化されてもよく,略円筒形であってもよく,フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,表面および裏面が平面であり,表面と裏面の間の左右に設けられた側面は,曲面であり,フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,略円筒形である本体201と,本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられるフレキシブルディスプレイ203とを含んで」いるとされている。

ここで,引用発明の「表面」,「裏面」,および,「表面と裏面の間の左右に設けられた」「曲面であ」る「側面」は,それぞれ,本件補正発明の「前面」,「後面」および「該前面と該後面との間の第1及び第2のカーブした側面」に対応する。

また,引用発明の「携帯端末」は,「電子装置」の一種であるといえる。

したがって,本件補正発明と,引用発明とは,「対向する前面及び後面と,該前面と該後面との間の第1及び第2のカーブした側面とを有する電子装置であ」る点で共通しているといえる。

しかし,本件補正発明の「対向する前面及び後面」が「凸状の曲率を有」しているのに対して,引用発明の「対向する前面及び後面」は,平面であり,「凸状の曲率を有」していない点で相違している。

(イ)引用発明において,「ディスプレイモジュール151は,有機発光ダイオード(OLED),フレキシブルディスプレイ等を含んでおり,」「フルディスプレイ型略円筒形携帯端末は,略円筒形である本体201と,本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられるフレキシブルディスプレイ203とを含んでおり,ボディ201の外周面を表示領域として利用することができ,フレキシブルディスプレイ203は,単一のディスプレイとして使用され,フレキシブルディスプレイ203の全体に単一の操作画面が表示される」とされている。

ここで,引用発明の「本体201」,「ディスプレイモジュール」は,それぞれ,本件補正発明の「ハウジング」,「ディスプレイ」に対応する。

また,引用発明の「有機発光ダイオード(OLED),フレキシブルディスプレイ等」のような「ディスプレイモジュール」において,画素がマトリックス上に配置されてアレイを形成していることは,本願優先日前の技術常識であるから,引用発明の「ディスプレイモジュール」も,本件補正発明と同様に,「ピクセルアレイ」を有しているといえる。

さらに,引用発明の「有機発光ダイオード(OLED),フレキシブルディスプレイ等」のような「ディスプレイモジュール」は,「本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられ」「ボディ201の外周面を表示領域として利用することができ,フレキシブルディスプレイ203は,単一のディスプレイとして使用され,フレキシブルディスプレイ203の全体に単一の操作画面が表示される」から,引用発明の「ディスプレイモジュール」が有する「ピクセルアレイ」も,本件補正発明と同様に,「前,前記第1及び第2のカーブした側面及び前記後面において画像を表示」しているといえる。

したがって,本件補正発明と,引用発明とは,「ハウジングと,前記ハウジングにおいてマウントされたディスプレイであって,当該ディスプレイはピクセルアレイ」「を有し,」「前記ピクセルアレイは」「前,前記第1及び第2のカーブした側面及び前記後面において画像を表示する,ディスプレイと,を備え」ている点で共通しているといえる。

しかし,本件補正発明の「ディスプレイ」が「堅牢なカバー層を有し,前記堅牢なカバー層は前記電子装置の第1及び第2のカーブした側面を形成し,前記電子装置の前記前面の少なくとも一部を形成し,そして前記電子装置の前記後面の少なくとも一部を形成し」ているのに対して,引用発明の「ディスプレイ」が「堅牢なカバー層」を有しているか否か明らかでない点で相違している。

(ウ)引用発明の「携帯端末100」は,「無線通信ユニット110,オーディオ/ビデオ(A/V)入力ユニット120,ユーザ入力ユニット130,センシングユニット140,出力ユニット150,メモリ160,インタフェースユニット170,コントローラ180,および電源ユニット190を含んでいる」とされている。

ここで,引用発明の「無線通信ユニット110,オーディオ/ビデオ(A/V)入力ユニット120,ユーザ入力ユニット130,センシングユニット140,出力ユニット150,メモリ160,インタフェースユニット170,コントローラ180,および電源ユニット190」は,本件補正発明の「電子的コンポーネント」に対応する。

したがって,本件補正発明と,引用発明とは,「電子的コンポーネント」「を備え」ている点で共通しているといえる。

しかし,本件補正発明の「電子的コンポーネント」が「前記前と後との間で前記ハウジングにマウントされ」ているのに対して,引用発明の「電子的コンポーネント」が「前記前と後との間で前記ハウジングにマウントされ」ているのか否か明らかでない点で相違している。

オ 一致点および相違点

本件補正発明と,引用発明とは,以下(ア)の点で一致し,以下(イ)の点で相違する。

(ア)一致点

「対向する前面及び後面と,該前面と該後面との間の第1及び第2のカーブした側面とを有する電子装置であって,
ハウジングと,
前記ハウジングにおいてマウントされたディスプレイであって,当該ディスプレイはピクセルアレイを有し,前記ピクセルアレイは前,前記第1及び第2のカーブした側面及び前記後面において画像を表示する,ディスプレイと,
電子的コンポーネントと,
を備えた電子装置。」

(イ)相違点

a <相違点1>

本件補正発明の「対向する前面及び後面」が「凸状の曲率を有」しているのに対して,
引用発明の「対向する前面及び後面」は,平面であり,「凸状の曲率を有」していない点。

b <相違点2>

本件補正発明の「ディスプレイ」が「堅牢なカバー層を有し,前記堅牢なカバー層は前記電子装置の第1及び第2のカーブした側面を形成し,前記電子装置の前記前面の少なくとも一部を形成し,そして前記電子装置の前記後面の少なくとも一部を形成し」ているのに対して,
引用発明の「ディスプレイ」が「堅牢なカバー層」を有しているか否か明らかでない点。

c <相違点3>

本件補正発明の「電子的コンポーネント」が「前記前と後との間で前記ハウジングにマウントされ」ているのに対して,
引用発明の「電子的コンポーネント」が「前記前と後との間で前記ハウジングにマウントされ」ているのか否か明らかでない点。

カ 相違点についての判断

(ア)相違点1

引用発明の「フルディスプレイ型略円筒形携帯端末」において,「略円筒形」は「円筒形」に近い形を意味するから,「略円筒形である本体201」という概念には,「表面および裏面が平面であ」る形状だけでなく,当該形状よりも,より「円筒形」に近い,表面と裏面が「凸状の曲率を有する」形状も包含されるものであり,また,上記イ(オ)の図5(b)に示される「フルディスプレイ型円筒形携帯端末」を参酌しても,「略円筒形である本体201」という表現から,表面と裏面が「凸状の曲率を有する」形状を当業者は想起しうるといえる。

さらに,令和2年11月18日付けの補正の却下の決定において,引用文献4として引用された特開2011−34029号公報にも,以下の様な記載がある。

a「【技術分野】
【0001】
本発明は,携帯電話機などの電子機器に関し,特にユーザインターフェースの改善技術に関する。」

b「【0065】
また,以上の説明では,筐体2の形を“円筒状”としたが,これは一例に過ぎない。転がりやすい,または,姿勢が安定しない形状,もしくは,手持ちした際に情報の表示面を特定しにくい形状であればよい。
図15は,筐体2の他の形状を示す図であり,たとえば,図15(a)に示すような三角断面形状の筐体2,図15(b)に示すような多面体断面形状の筐体2,あるいは,図15(c)に示すような楕円断面形状の筐体2などであってもよい。また,筐体2は,軸方向に同一の断面形状である必要もない。要は,転がりやすい,または,姿勢が安定しない形状,もしくは,手持ちした際に情報の表示面を特定しにくい形状であればよい。」

c 図15


上記図15(c)から,表面及び裏面が凸状の曲率を有する形状であると認められる。

したがって,引用発明において,「略円筒形である本体201」という表現に基づいて,「対向する前面及び後面」が「凸状の曲率を有する」という<相違点1>に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)相違点2

上記ウ(カ)で述べたように,引用文献2には,以下の様な引用文献2記載技術が記載されている。

「発光装置としては,軽量であり,高いコントラストや広い視野角を実現できるエレクトロルミネセンス(以下ELともいう)を発現する発光素子(以下EL素子ともいう)を有する発光装置において,EL素子は外部より侵入する水分などの汚染物質により素子劣化を生じやすいことから,信頼性の高い発光装置を提供するため,電極層や素子層を作製後,形状を成形する加工を行うことによって曲折した発光パネル表面を覆う保護膜を形成して,当該発光パネルを用いた発光装置であって,
発光装置は,少なくとも第1の電極層,EL層及び第2の電極層を含む発光素子と,発光素子を間に封止する一対の封止部材とを有しており,半導体素子が設けられており,薄膜トランジスタが用いられ,アクティブマトリクス型の発光装置の場合,各画素ごとに駆動用の薄膜トランジスタが設けられており,
第1の封止部材110と第2の封止部材120とによって封止された素子層101及び発光素子125を含む可撓性の発光パネル155aを備えており,
第2の封止部材120のような樹脂層状の封止部材は,紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ,PVC(ポリビニルクロライド),アクリル,ポリイミド,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができ,
第1の封止部材110,第2の封止部材120として,アラミド樹脂,ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂,ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂,ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂,ポリイミド(PI)樹脂などを用いることができ,
可撓性の発光パネル155aを発光パネル150の形状に変化させる際,その変化させた形状を固定させるために加熱処理や光照射処理などの固定処理を行って,発光パネル150の形状を固定させた
発光装置を適用した携帯電話機。」

ここで,引用文献2記載技術では,「発光素子125を含む可撓性の発光パネル155a」を封止している「第1の封止部材110」および「第2の封止部材120」は,「ポリイミド(PI)樹脂など」の「熱硬化樹脂を用いることが」開示されており,「ポリイミド(PI)樹脂など」の「熱硬化樹脂」は,「加熱処理」により,堅牢な部材となることは,当業者にとって本願優先日前に技術常識であったといえる。

また,引用発明のような携帯端末の技術分野において,落下等の際に,フレキシブルディスプレイを保護することは,本願優先日前に周知の課題であるから,フレキシブルディスプレイ保護のために,引用文献2記載技術の発光パネルの「ポリイミド(PI)樹脂など」の「熱硬化樹脂」による封止材を用いる動機付けがあるといえる。

さらに,引用発明の「ディスプレイモジュール151は,フレキシブルディスプレイ等を含んでおり」,「本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられる」ているのであるから,引用文献2記載技術の適用にあたり,封止部材も,「本体201の外周面を囲むように」なること,すなわち,「本体201」の表面(前面),裏面(後面),側面を形成することになるのは,当業者にとって明らかである。

したがって,引用発明の「ディスプレイモジュール151」において,引用文献2記載技術を用いて,「ピクセルアレイ」(発光素子125を含む可撓性の発光パネル155a)を「ポリイミド(PI)樹脂など」の「熱硬化樹脂」で封止し,「加熱処理」により「発光パネル150の形状を固定させ」る構成を採用して,「堅牢なカバー層を有し,前記堅牢なカバー層は前記電子装置の第1及び第2のカーブした側面を形成し,前記電子装置の前記前面の少なくとも一部を形成し,そして前記電子装置の前記後面の少なくとも一部を形成」するという<相違点2>に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ)相違点3

携帯端末の技術分野において,本体の前面と後面の間に,電子的コンポーネントをマウントすることは,常套手段に過ぎない(例えば,上記ウ(エ)図10,および,記ウ(オ)の【0228】にも,「図10(A)〜図10(D)で示される携帯電話機は,表示領域1413,操作ボタン1404,タッチパネル1423を有し,筐体1411a,1411b内に,発光パネル1421,配線基板1425を含んでいる。」との記載があり,電子的コンポーネントが配置された配線基板1425を前面の「筐体1411a」と後面の「筐体」「1411b」の間にマウントすることが記載されている。)

したがって,引用発明において,上記常套手段を採用して,「電子的コンポーネント」を「前と後との間で前記ハウジングにマウントされ」る<相違点3>に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

(エ)作用効果

また,引用発明において,上記相違点に係る構成を採用することによる効果も,当業者が容易に想到しうる範囲内のものに過ぎない。

よって,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

キ 請求人の主張について

請求人は,審判請求書において,引用文献2の図1(F)に示されているとおり,封止部材110及び120は装置の3つの面に延在するだけであり,引用文献2は装置の前,後及び2つの側面の周囲に配置された堅牢なカバー層を有するディスプレイを備える装置を開示するものではないから,引用文献1〜3はいずれも本願発明の「前記堅牢なカバー層は前記電子装置の第1及び第2のカーブした側面を形成し,前記電子装置の前記前面の少なくとも一部を形成し,そして前記電子装置の前記後面の少なくとも一部を形成」するという構成を開示するものでも示唆するものでもない旨主張している。

しかし,上記カ(イ)で述べたように,引用発明は,「本体201の外周面を囲むようにして本体201上に取り付けられるフレキシブルディスプレイ203」「を含んで」いるのであるから,引用文献2記載技術の適用にあたり,封止部材も,「本体201の外周面を囲むように」なること,すなわち,「本体201」の表面(前面),裏面(後面),側面を形成することになるのは,当業者にとって明らかである。

したがって,請求人の上記主張は採用できない。

(3)小活

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

上述のとおり,令和3年3月30日の手続補正は却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年2月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1−19の記載により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,上記第2の1.(1)に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された発明

引用文献1の記載事項及び引用発明は,上記第2の2.(2)イに記載したとおりであり,引用文献2の記載事項及び引用文献2記載技術は,上記第2.(2)ウで述べたとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断

本願発明は,上記第2の2.(1)で述べたように,本件補正発明から,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「カーブした側面」について,「第1及び第2の」との限定を省いたものであるから,本願発明と引用発明とは,上記の省いた構成を除いて,上記第2の2.(2)「エ 対比」と同様に対比でき,本願発明と引用発明との一致点は,上記第2の2.(2)「オ 一致点および相違点」「(ア)一致点」で述べた本願補正発明と引用発明との一致点と同様であり,本願発明は,本願補正発明と同様に,引用発明および引用文献2記載技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

したがって,本願発明は,引用発明および引用文献2記載技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 角田 慎治
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-01-06 
結審通知日 2022-01-11 
審決日 2022-01-25 
出願番号 P2018-210442
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 野崎 大進
林 毅
発明の名称 フレキシブルディスプレイを伴う電子装置  
代理人 那須 威夫  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 ▲吉▼田 和彦  

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