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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1385765
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-05 
確定日 2022-06-16 
事件の表示 特願2019−123107「防眩性ハードコートフィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月17日出願公開、特開2019−179268〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2019−123107号(以下「本件出願」という。)は、2014年(平成26年)3月26日を国際出願日とする特願2016−509711号の一部を令和元年7月1日に新たな出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年 5月29日付け:拒絶理由通知書
令和2年 7月17日提出:意見書
令和2年 7月17日提出:手続補正書
令和2年12月23日付け:補正の却下の決定
令和2年12月23日付け:拒絶査定
令和3年 4月 5日提出:審判請求書
令和3年 4月 5日提出:手続補正書
令和3年 9月17日提出:上申書
令和4年 1月 7日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和4年 2月21日提出:意見書
令和4年 2月21日提出:手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1〜5に係る発明は、令和4年2月21日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のものである(以下「本願発明1」という。また、本願発明1〜5を総称して「本願発明」という。)。

「 プラスチック基材の表面に防眩性ハードコート層を備えた防眩性ハードコートフィルムであって、
前記防眩性ハードコート層が、(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂と、(B)成分としての樹脂微粒子と、(C)成分としての分散剤と、(D)成分としての光重合開始剤と、(E)成分としてのシリカ微粒子を含む防眩性ハードコート層形成用組成物の硬化物からなるとともに、
前記(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を1〜2.0μm(但し、2.0μmは除く)の範囲内の値とし、前記(B)成分としての樹脂微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とし、かつ、
前記(C)成分としての分散剤が、分子内に少なくとも1つの極性基を有するとともに、前記極性基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、ピリジウム塩基、スルホニウム塩基およびホスホニウム塩基からなる群から選択される少なくとも一種を有する化合物であり、前記(C)成分としての分散剤の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0〜2重量部(但し、0重量部を除く。)の範囲内の値とし、
前記(E)成分としてのシリカ微粒子が、表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有しており、
前記(E)成分としてのシリカ微粒子の体積平均粒子径を2〜500nmの範囲内の値とし、かつ、
前記(E)成分としてのシリカ微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、15〜200重量部の範囲内の値とし、
JIS K 7136に準拠して測定されるヘイズ値を6.3〜40%の範囲内の値とすると共に、JIS Z 8741に準拠して測定される60°鏡面光沢度を104.7〜130%の範囲内の値とし、さらに、
下記測定方法で得られてなるギラツキを、100ppi以上の値とすることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
(測定方法)
1)60ppi(ピクセル/インチ)となるように光透過部を設けた格子状パターンをバックライト上に載置する。
2)次いで、防眩性ハードコートフィルムを格子状パターン上に防眩性ハードコート層が上になるように載置し、ギラツキの発生箇所を確認する。
3)次いで、防眩性ハードコートフィルムを、格子状パターン上でこれと平行な方向に移動させ、予め確認しておいたギラツキの発生箇所が、防眩性ハードコートフィルムと共に移動した場合は、当該ギラツキの発生が防眩性ハードコートフィルムに起因したものとし、60ppiの格子状パターンでは防眩性ハードコートフィルムに起因したギラツキの発生が確認されなかった場合には、10ppi刻みでppiを増加させた格子状パターンを順次用いて、防眩性ハードコートフィルムに起因したギラツキの発生箇所が確認されるまで、同様の作業を繰り返す。
4)防眩性ハードコートフィルムに起因したギラツキの発生箇所が確認されない一番大きな格子状パターン(ppi)をギラツキの値とする。」

3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

●理由1:(進歩性)本件出願の請求項1〜5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2010−266672号公報
2.特開2009−244305号公報
3.特開2004−322481号公報
4.特開2005−164890号公報
5.特開2008−96781号公報
6.特開2013−105160号公報
7.特開平10−264284号公報
8.特開2014−16602号公報
(当合議体注:引用文献1、3、6は主引用例である。また、引用文献4〜5、7〜8は、技術常識又は周知技術を示すための文献であり、引用文献2は参考文献である。)


第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1(特開2010−266672号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコートフィルム及びそれを用いた偏光板に関する。さらに詳しくは、本発明は、球状有機微粒子及び球状ケイ素系微粒子を含むハードコート層が設けられた耐擦傷性を有する防眩性ハードコートフィルムであって、外部ヘーズ値を大きく変化させずに、内部ヘーズ値を変化させることができ、フィルム量産時の外/内部ヘーズ値の調整が容易で、コントラストを損なうことなく、所望の60°鏡面光沢度及び防眩性を得ることができる防眩性ハードコートフィルム、及びこの防眩性ハードコートフィルムを用いた偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)などのディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見難くすることがあり、特に近年ディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、ますます重要な課題となってきている。この問題を解決する手段の一つとして防眩性ハードコート層を有する部材を用いることが挙げられる。
近年、防眩性フィルムにおいては、従来の防眩性付与を目的とする表面凹凸に起因する外部ヘーズ値に加え、ぎらつき低減のため、フィルム内部の光拡散性に由来する内部ヘーズ値を併せもつことが要求されている。
【0003】
この内部ヘーズ値は、ハードコート層中に、バインダー樹脂との屈折率差を有する微粒子を含有させることで発揮させることができる。しかし、バインダー樹脂との屈折率差を有する微粒子を1種のみ用いて防眩性フィルムを作製する場合、該微粒子は外/内部ヘーズ値の両方に寄与しなくてはならない。そのため、フィラーの種類、添加量により防眩性フィルムの外/内部ヘーズ値の両方が変動してしまい、生産時に外/内部ヘーズ値の調整が困難であるという問題があった。
そこで、この問題を解決するために、本発明者らは1種類の有機微粒子を一定量添加し(内部ヘーズ値が固定される)、外部ヘーズ値を分散剤(界面活性剤)の添加量によってコントロールするといった手法を見出し、先に特許を出願した(特願2008−087295号明細書)。
【0004】
一方、透明基板上に、屈折率1.40〜1.60の樹脂ビーズと電離放射線硬化型組成物から構成される防眩層が形成された防眩フィルムが提案されている。例えば、特許文献1では、防眩性を発現する凹凸を形成するために塗膜の膜厚以上の粒径の有機フィラーによる防眩性フィルムが提案されているが、防眩性を高めるために凹凸を大きくするとヘーズ値が上昇し、透過鮮明度が下がるという問題があった。それを改善するために、特許文献2では、防眩性を発現する凹凸形成用の塗膜の膜厚以上の粒径の有機フィラー添加量を低減し、塗膜の膜厚以下の粒径の有機フィラーを添加することで、バランスのとれた防眩性フィルムを作製することが提案されている。
しかしながら、実際には上記のような方法では光学物性的なバランスをとることはできても、使用微粒子の粒径のばらつきにより、凹凸が存在しない箇所が現れ、全面で防眩性が得られなくなる。また、膜厚による外部ヘーズ値の変動が大きいことにより安定生産性に劣るという問題があった。また、これらの系は膜厚が微粒子のサイズによって決定され、表面硬度のような膜厚によってその性能が変わる物性の調整が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−18706号公報
【特許文献2】特許第3515401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、透明プラスチックフィルムの表面に耐擦傷性を有するハードコート層が形成された防眩性ハードコートフィルムであって、外部ヘーズ値を大きく変化させずに、内部ヘーズ値を変化させることができ、フィルム量産時の外/内部ヘーズ値の調整が容易で、コントラストを損なうことなく、所望の60°鏡面光沢度及び防眩性を得ることができる防眩性ハードコートフィルム、及びこの防眩性ハードコートフィルムを用いた偏光板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
ハードコート層として、活性エネルギー線感応型組成物と、平均粒径が所望の範囲にある特定の球状有機微粒子、特定の球状ケイ素系微粒子、及び界面活性剤とを含むハードコート層形成材料を用いて形成し、かつ該ハードコート層の厚さを、上記球状有機微粒子及び球状ケイ素系微粒子のそれぞれの平均粒径よりも大きくすることにより、前記目的に適合し得る防眩性ハードコートフィルムが得られることを見出した。
また、この防眩性ハードコートフィルムは、前記活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率と、前記球状有機微粒子の屈折率及び球状ケイ素系微粒子の屈折率との差を、それぞれ特定の範囲に規定することにより、さらには前記ハードコート層形成材料に、界面活性剤を含有させることにより、容易にその目的に適合し得るものとなることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)透明プラスチックフィルムの表面に、(A)(a)多官能性及び塩化ビニル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の球状有機微粒子、(C)平均粒径が0.5〜10μmであるシリコーン系樹脂、中空シリカ及びポーラスシリカの中から選ばれる少なくとも1種の球状ケイ素系微粒子、及び(D)界面活性剤を含むハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層を有し、かつ該ハードコート層の厚さが、上記(B)成分及び(C)成分のそれぞれの平均粒径よりも大きいことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム、
(2)(b)シリカ系微粒子が、表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有するシリカ微粒子である上記(1)項に記載の防眩性ハードコートフィルム、
(3)(A)成分の硬化物と(B)成分との屈折率差が0.02未満であり、かつ(A)成分の硬化物と(C)成分との屈折率差が0.02以上0.2未満である上記(1)又は(2)項に記載の防眩性ハードコートフィルム、及び
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の防眩性ハードコートフィルムのハードコート層形成面の反対側の面を偏光子に貼合してなる偏光板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、球状有機微粒子及び球状ケイ素系微粒子を含むハードコート層が設けられた耐擦傷性を有する防眩性ハードコートフィルムであって、外部ヘーズ値を大きく変化させずに、内部ヘーズ値を変化させることができ、フィルム量産時の外/内部ヘーズ値の調整が容易で、コントラストを損なうことなく、所望の60°鏡面光沢度及び防眩性を得ることができる防眩性ハードコートフィルム、及びこの防眩性ハードコートフィルムを用いた偏光板を提供することができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の防眩性フィルムは、透明プラスチックフィルムの表面に、(A)(a)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーと、(b)シリカ系微粒子を含む活性エネルギー線感応型組成物、(B)平均粒径が1〜10μmである以下に示す特定の球状有機微粒子、(C)平均粒径が0.5〜10μmである以下に示す特定の球状ケイ素系微粒子、及び(D)界面活性剤を含むハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層を有し、かつ該ハードコート層の厚さが、上記(B)成分及び(C)成分のそれぞれの平均粒径よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
[ハードコート層形成材料]
本発明におけるハードコート層形成材料は、(A)活性エネルギー線感応型組成物、(B)球状有機微粒子、(C)球状ケイ素系微粒子、及び(D)界面活性剤を含有する。
((A)活性エネルギー線感応型組成物)
前記ハードコート層形成材料において、(A)成分として用いられる活性エネルギー線感応型組成物には、(a)活性エネルギー線硬化型化合物である多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーと、(b)シリカ系微粒子が必須成分として含まれる。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。
【0012】
<(a)活性エネルギー線硬化型化合物>
本発明においては、(a)活性エネルギー線硬化型化合物として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/ 又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが用いられる。
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
一方、前記(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらのプレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
【0014】
<(b)シリカ系微粒子>
本発明においては、(b)シリカ系微粒子として、コロイド状シリカ微粒子及び/又は表面官能基を有するシリカ微粒子を用いることができる。
コロイド状シリカ微粒子は、平均粒径が1〜400nm程度のものであり、また、表面官能基を有するシリカ微粒子としては、例えば表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有するシリカ微粒子(以下、反応性シリカ微粒子と称することがある。)を挙げることができる。
上記反応性シリカ微粒子は、例えば、平均粒径0.005〜1μm程度のシリカ微粒子表面のシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。重合性不飽和基としては、例えばラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
前記シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物としては、例えばアクリル酸、アクリル酸クロリド、アクリル酸2−イソシアナートエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2,3−イミノプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど及びこれらのアクリル酸誘導体に対応するメタクリル酸誘導体を用いることができる。これらのアクリル酸誘導体やメタクリル酸誘導体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようにして得られた重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子は、活性エネルギー線硬化成分として、活性エネルギー線の照射により架橋、硬化する。
この反応性シリカ微粒子は、得られるハードコートフィルムの耐擦傷性を向上させる効果を有している。
このようなシリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物を含む活性エネルギー線感応型組成物(A)として、例えばJSR(株)製、商品名「オプスターZ7530」、「オプスターZ7524」、「オプスターTU4086」などが上市されている。
本発明においては、この(b)成分のシリカ系微粒子の含有量は、(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物の固形分中に、通常5〜90質量%程度、好ましくは10〜70質量%である。
なお、この(b)成分のシリカ系微粒子におけるシリカ粒子の平均粒径は、レーザ回折・散乱法で測定することができる。この方法では、粒子を分散した液にレーザ光を当てた際に回折・散乱する光の強度変化により、平均粒径を測定する。
【0015】
((B)球状有機微粒子)
本発明におけるハードコート層形成材料において、(B)成分として用いられる球状有機微粒子としては、平均粒径が1〜10μmの範囲にあるアクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及び塩化ビニル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この球状有機微粒子の平均粒径が1μm未満では、防眩性の発現が不十分となる場合があり、一方10μmを超えると該球状有機微粒子の粒径と形成されるハードコート層の膜厚とが近接し、該球状有機微粒子の透明プラスチックフィルム表面からの浮き量が小さくなるために粒径のばらつきの影響を強く受けたり、塗工時の該球状有機微粒子の分散性が不十分となり、形成されるハードコート層の凹凸にムラが生じることがある。好ましい平均粒径は2〜8μmである。なお、この平均粒径はコールターカウンター法に基づく測定値である。粒度分布はコールターカウンター法で測定した平均粒径の±2μm以内の範囲の重量分率が70%以上であるものが好ましい。
本発明においては、この(B)成分の球状有機微粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、防眩性能の観点から、前述した(A)成分である活性エネルギー線感応型組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部、特に好ましくは3〜15質量部である。
本発明においては、前述した(A)成分である活性エネルギー線感応型組成物の硬化物と、当該(B)成分である球状有機微粒子とは、屈折率差が内部ヘーズ値の上昇を抑える観点から0.02未満であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。この球状有機微粒子は、主として外部ヘーズ値の調整に用いられる。なお、球状有機微粒子の屈折率は、JISK7142のB法に基づく測定値である。また、前記活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率は、JISK7142のA法に基づく測定値である。
【0016】
((C)球状ケイ素系微粒子)
本発明におけるハードコート層形成材料において、(C)成分として用いられる球状ケイ素系微粒子としては、平均粒径が0.5〜10μmの範囲にある、シリコーン系樹脂、中空シリカ及びポーラスシリカの中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この球状ケイ素系微粒子の平均粒径が0.5μm未満では内部ヘーズ値に作用させる効果が不十分であり、一方10μmを超えると形成されるハードコート層の膜厚との差が小さくなり、該球状ケイ素系微粒子の粒径のバラツキにより外部ヘーズ値に影響を与える恐れがある。好ましい平均粒径は1〜8μmであり、特に好ましくは2〜6μmである。なお、この平均粒径はコールターカウンター法に基づく測定値である。また粒度分布はコールターカウンター法で測定した平均粒径の±2μm以内の範囲の重量分率が70%以上であるものが好ましい。
本発明においては、この(C)成分の球状ケイ素系微粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、防眩性能の観点から、前述した(A)成分である活性エネルギー線感応型組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部、特に好ましくは2〜15質量部である。
本発明においては、前述した(A)成分である活性エネルギー線感応型組成物の硬化物と、当該(C)成分である球状ケイ素系微粒子とは、屈折率差が、内部ヘーズ値に作用させる観点から、0.02以上0.2未満であることが好ましく、0.04〜0.1であることがより好ましい。該屈折率差が0.02未満であると内部ヘーズ値への作用が不十分となる場合があり、0.2を超えると透過鮮明度等に悪影響を与える恐れがある。なお、球状ケイ素系微粒子の屈折率は、JISK7142のB法に基づく測定値である。
【0017】
((D)界面活性剤)
本発明におけるハードコート層形成材料においては、(D)成分として界面活性剤を用いる。この界面活性剤は、膜厚が前記(C)球状有機微粒子の平均粒径よりも大きいハードコート層中での該球状有機微粒子の沈降を抑制し、該微粒子をハードコート層の表面近傍に多く存在させ、防眩性能を向上させる作用を有しているものであればよく、その種類については特に制限はない。
このような界面活性剤としては、例えば分子内に、アルキル基の炭素数1〜8のN,N−ジアルキルアミノ基由来の極性基を有するものを挙げることができる。入手性の観点から特に炭素数2〜6のN,N−ジアルキルアミノアルカノール由来の極性基を有するものが好ましい。
前記のN,N−ジアルキルアミノアルカノールの具体例としては、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジプロピルアミノエタノール、N,N−ジブチルアミノエタノール、N,N−ジペンチルアミノエタノール、N,N−ジヘキシルアミノエタノールなど、及びこれらの化合物におけるエタノール部分を、プロパノールやブタノールに置き換えた化合物などを挙げることができる。なお、ジアルキル部分の2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
N,N−ジアルキルアミノアルカノール由来の極性基を有する界面活性剤としては、例えばN,N−ジアルキルアミノアルカノール変性ポリオキシアルキレングリコールを挙げることができる。
【0018】
本発明においては、(D)成分の界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、ハードコート層の防眩性、耐擦傷性、その他物性、経済性などのバランスの観点から、前述した(A)成分である活性エネルギー線感応型組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
本発明においてはハードコート層形成材料に(D)界面活性剤を含有させることにより、該界面活性剤の親油性部分が(B)球状有機微粒子の表面に吸着され、吸着した界面活性剤の親水性部分により(B)球状有機微粒子の表面が親水性化され、親油性である(A)活性エネルギー線感応型組成物を主成分とするハードコート層の形成過程において、該(B)球状有機微粒子が表面に浮上するものと思われる。このため、(B)球状有機微粒子に(D)界面活性剤を作用させることにより主に外部ヘーズ値を発現させることができる。一方、(C)球状ケイ素系微粒子はシラノール基等を表面に有するため、(D)界面活性剤の親水性部分で吸着され、(D)界面活性剤の吸着に作用しなかった親油性部分により(C)球状ケイ素系微粒子の表面を親油性化し、同じく親油性である(A)活性エネルギー線感応型組成物を主成分とするハードコート層の形成過程において、表面への浮上を抑制するものと思われる。このため、(C)球状ケイ素系微粒子は(D)界面活性剤と作用することにより主に内部ヘーズ値のみを発現させることができる。
【0019】
(光重合開始剤)
本発明におけるハードコート層形成材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどが挙げられる。
これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、全活性エネルギー線硬化型化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。なお、ここで全活性エネルギー線硬化型化合物とは、(b)シリカ系微粒子として、反応性シリカ微粒子を用いる場合は、それを含むものを表す。
【0020】
(ハードコート層形成材料の調製)
本発明で用いるハードコート層形成材料は、必要に応じ、適当な溶媒中に、前述した(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物、(B)成分の球状有機微粒子、(C)成分の球状ケイ素系微粒子、(D)成分の界面活性剤及び所望により用いられる光重合開始剤、さらには各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製されたハードコート層形成材料の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0021】
[透明プラスチックフィルム]
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前述のようにして調製したハードコート層形成材料を用いて、ハードコート層を形成する。
前記の透明プラスチックフィルムについては特に制限はなく、従来光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(「PET」と称することがある)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム(「TACフィルム」と称することがある)、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
なお、本発明の防眩性ハードコートフィルムを偏光板保護フィルム用とする場合には、光学的等方性に優れる等の理由により透明プラスチックフィルムとしてはTACフィルムがより好ましい。
【0022】
これらのプラスチックフィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらのプラスチックフィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けることもできる。
【0023】
[ハードコート層の形成]
前記透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記ハードコート層形成材料を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化物を得ることができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは、本発明においては、使用した(B)成分の球状有機微粒子及び(C)成分の球状ケイ素系微粒子それぞれの平均粒径よりも大きいことを要し、従って、下限は3μm程度であり、上限はハードコート層の硬化収縮によってハードコートフィルムがカールすることを防止する観点から20μm程度である。好ましい厚さは5〜15μmの範囲である。
【0024】
[防眩性ハードコートフィルム]
(光学特性)
このようにして形成された本発明の防眩性ハードコートフィルムの光学特性は、そのタイプによって好ましい値が異なる場合がある。
高コントラストタイプの場合、通常内部ヘーズ値が0〜10%である。内部ヘーズ値がこの範囲にあってぎらつきが発生するものであっても、高コントラストを達成できるのでディスプレイの種類(設計思想)によっては十分適用できる。内部ヘーズ値が10%を超えると高コントラストが得られない(汎用タイプになる)。また、汎用タイプの場合、通常内部ヘーズ値が5〜40%である。内部ヘーズ値が5%未満ではぎらつきを抑える性能が不十分であり、40%を超えると視認性が低下する。汎用タイプの防眩性ハードコートフィルムの好ましい内部ヘーズ値は、通常10〜30%であり、15〜25%であることが好ましい。
また、外部ヘーズ値は、高コントラストタイプ、汎用タイプともに視認性の観点から、20%以下が好ましく、防眩性の観点から1%以上であることが好ましい。なお、内部ヘーズ値とは内部の光散乱のみに起因するヘーズ値を表し、外部ヘーズ値とは表面の凹凸による光散乱のみに起因するヘーズ値を表し、トータルヘーズ値とは前記内部ヘーズ値と前記外部ヘーズ値の総和を表す。また、トータルヘーズ値は、防眩性ハードコートフィルムのJISK7136に準拠したヘーズ値から、防眩性ハードコートフィルムの構成部材である透明プラスチックフィルム単体のJISK7136に準拠したヘーズ値を差し引いた値に該当する。
【0025】
以下に内部ヘーズ値、外部ヘーズ値、及びトータルヘーズ値の算出方法を記載する。
<ハードコート層の内部へーズ値、外部ヘーズ値、及びトータルヘーズ値の算出>
まず、JISK7136に準拠して、本発明の防眩性ハードコートフィルムのヘーズ値及びその透明プラスチックフィルム単体のヘーズ値を測定する。
前記防眩性ハードコートフィルムのヘーズ値から前記透明プラスチックフィルム単体のヘーズ値を差し引いた値をトータルヘーズ値とする。
次に、厚さ20μmの透明粘着シートを、防眩性ハードコートフィルムのハードコート層側に貼付して内部ヘーズ値算出用試料とする。該透明粘着シートのヘーズ値及び内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値をJISK7136に準拠して測定する。
そして、内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値から前記透明粘着シートのヘーズ値及び透明プラスチックフィルム単体のヘーズ値を差し引いた値を光学フィルムのハードコート層の内部ヘーズ値とする。
最後に、前記トータルヘーズ値から前記内部ヘーズ値を差し引いた値を外部ヘーズ値とする。
なお、前記透明粘着シートのヘーズ値は、前述のとおり計算の過程で差し引きされるため、内部ヘーズ値、外部ヘーズ値、及びトータルヘーズ値に直接の影響を与えないので、特に制限されないが、測定精度を高める観点から5%未満のヘーズ値のものを用いることが好ましい。
さらに、60°鏡面光沢度は、高コントラストタイプ、汎用タイプともに20〜130が好ましい。60°鏡面光沢度が130を超えると表面光沢度が大きく(光の反射が大きい)、防眩性に悪影響を及ぼす。60°グロスが20未満では白茶けが発生しやすくなる。また、防眩性ハードコートフィルムの全光線透過率は88%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。全光線透過率が88%未満では透明性が不十分となるおそれがある。
なお、前記60°鏡面光沢度はJISK7105に基づく測定値であり、前記全光線透過率はJISK7136に基づく測定値である。
【0026】
(効果)
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、球状有機微粒子及び球状ケイ素系微粒子を含むハードコート層が設けられており、耐擦傷性を有すると共に、外部ヘーズ値を大きく変化させずに、内部ヘーズ値を変化させることができ、フィルム量産時の外/内部ヘーズ値の調整が容易で、コントラストを損なうことなく、所望の60°鏡面光沢度及び防眩性を得ることができる。
【0027】
(その他機能層)
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、必要により、最上層に、反射防止性を付与させるなどの目的で反射防止層、例えばシロキサン系被膜、フッ素系被膜などを設けることができる。この場合、該反射防止層の厚さは、0.05〜1μm程度が適当である。この反射防止層を設けることにより、太陽光、蛍光灯などによる反射から生じる画面の映り込みが解消され、また、表面の反射率を抑えることで、全光線透過率が上がり、透明性が向上する。なお、反射防止層の種類によっては、帯電防止性の向上を図ることができる。
【0028】
(粘着剤層)
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、プラスチックフィルムのハードコート層とは反対側の面に、液晶表示体などの被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途に適した、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、必要に応じて剥離シートを設けることができる。この剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0029】
このような粘着剤層を形成した防眩性ハードコートフィルムは、CRT、LCD、PDPなどのディスプレイに対して、防眩性能や耐擦傷性能などを付与する部材として好適に用いられ、特にLCDなどにおける偏光板貼付用として好適である。
[偏光板]
本発明はまた、前述した本発明の防眩性ハードコートフィルムを偏光子に貼合してなる偏光板をも提供する。
LCDにおける液晶セルは一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板を、その配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隙になるように配置し、その周辺をシールして該間隙に液晶材料を挟持させると共に、上記2枚の透明電極基板の外側表面に、それぞれ粘着剤層を介して偏光板が配設された構造を有している。
図1は、上記偏光板の1例の構成を示す斜視図である。この図で示されるように、該偏光板10は、一般的には、ポリビニルアルコール系偏光子1の両面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム2及び2'を貼り合わせた3層構造の基材を有しており、そして、その片面には液晶セルなどの光学部品に貼着するための粘着剤層3が形成され、さらに、この粘着剤層3には、剥離シート4が貼着されている。また、この偏光板の該粘着剤層3と反対側の面には、通常表面保護フィルム5が設けられている。
本発明の偏光板は、偏光子1の両面に設けられたTACフィルム2、2'のうち、一方のTACフィルムに上述した本発明に係わるハードコート層が設けられたものである。偏光板に粘着剤層3、剥離シート4及び表面保護フィルム5が設けられている場合は、特に表面保護フィルム5側のTACフィルム2'側に本発明に係わるハードコート層が設けられる。
【0030】
本発明の偏光板を製造する方法としては、例えば以下に示す操作を行うことでできる。
なお、図2は、本発明の偏光板の1例の構成を示す断面模式図である。
まず、基材の透明プラスチックフィルムとしてTACフィルムのような光学異方性のないフィルム12'を用い、その一方の面に本発明に係わるハードコート層13を形成し、防眩性ハードコートフィルム14とする。次に、偏光子11の片面にハードコート層13の形成されていないTACフィルム12を、反対面に前記防眩性ハードコートフィルム14を接着剤層15、15'を用いて積層する。透明プラスチックフィルムにTACフィルムを使用する場合、接着剤による積層で密着性を向上させるには、前述した表面処理の他けん化処理なども行うことができる。
これにより、防眩性能と耐擦傷性能に優れる偏光板20が得られる。偏光板20も必要に応じて、ハードコート層13の設けられる面に、前記図1に示す剥離可能な表面保護フィルム5や、その反対面に液晶セル等の光学部品に貼付するための粘着剤層16や剥離シート17が設けられてもよい。
本発明の偏光板は、LCDにおける液晶セル用を始め、光量調整用、偏光干渉応用装置用、光学的欠陥検出器用などとして用いることができる。」

ウ 「【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により、なんら限定されるものではない。
なお、有機微粒子及びケイ素系微粒子の平均粒径及び屈折率、活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率並びにハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って求めた。
<球状有機微粒子及び球状ケイ素系微粒子>
(1)平均粒径
コールターカウンター[ベックマン・コールター(株)製、商品名「Multisizer 3」]を用いて0.5%のイオン交換水の分散液として、25℃にてコールターカウンター法により測定する。
(2)屈折率
スライドガラス上に被検微粒子を載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下したのち、カバーガラスを被せ、試料を作製した。該試料をJISK7142のB法に基づき、顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が最も見づらくなった屈折率標準液の屈折率を、該微粒子の屈折率とする。
<活性エネルギー線感応型組成物>
(3)硬化物の屈折率
各調製例において、活性エネルギー線感応型組成物(A)、光重合開始剤と希釈溶剤からなるコート剤を作製する。これを実施例と同様にしてTACフィルム[富士フィルム(株)製、商品名「TAC80TD80ULH」]に塗工し、硬化物の屈折率測定用のハードコートフィルムとした。これをJISK7142のA法に基づき(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いてハードコート層の屈折率を求め、これを活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率とした。
【0032】
<ハードコートフィルム>
(4)全光線透過率
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JISK7136に準拠して、実施例及び比較例で作成した防眩性ハードコートフィルムについて全光線透過率を測定する。
(5)ハードコート層の内部ヘーズ値、外部ヘーズ値、及びトータルヘーズ値
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JISK7136に準拠して、実施例及び比較例で作製した防眩性ハードコートフィルム、及び該フィルムの構成部材である透明プラスチックフィルム単体のヘーズ値を測定する。
前記測定により得られた防眩性ハードコートフィルムのヘーズ値から透明プラスチックフィルムのヘーズ値を差し引くことにより防眩性ハードコートフィルムのハードコート層のトータルヘーズ値を算出する。
次に、アクリル系粘着剤[日本カーバイト社製、商品名「PE−121」]100質量部に、イソシアナート架橋剤[東洋インキ社製、商品名「BHS−8515」]2質量部、及びトルエン100質量部を加えて粘着剤溶液を作製した。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績社製、商品名「A4300」]に、乾燥後の厚さが20μmになるように粘着剤溶液を塗布し、100℃で3分間乾燥して透明粘着シートを作製した。
作製した透明粘着シートを防眩性ハードコートフィルムのハードコート層側に貼付して内部ヘーズ値算出用試料とした。該透明粘着シートと内部ヘーズ値算出用試料の夫々のヘーズ値を前記同様にJISK7136に準拠して測定する。
そして、内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値から、透明粘着シートのヘーズ値及び透明プラスチックフィルムのヘーズ値を差し引くことにより防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の内部ヘーズ値を算出する。
最後に、前記トータルヘーズ値から内部ヘーズ値を差し引くことにより防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の外部ヘーズ値を算出する。
(6)防眩性の評価ハードコートフィルムをアクリル樹脂黒板[住友化学(株)製]にアクリル系粘着剤を介して貼り付けたサンプルを蛍光灯下にて目視にて観察し、下記の判定基準で防眩性を評価する。
○:蛍光灯の映り込み防止性が十分であり、かつ白茶けがない
△:蛍光灯の映り込み防止性が若干劣る、又は白茶けが若干ある
×:蛍光灯の映り込み防止性が不十分である、又は蛍光灯の映り込み防止性は十分であるが、白茶けが大きく視認性に劣るもの
(7)60°鏡面光沢度
日本電色工業(株)製グロスメーター「VG2000」を使用し、JISK7105に準拠して測定する。
(8)ハードコート層の厚さ
実施例及び比較例で作製した防眩性ハードコートフィルム、及び該防眩性ハードコートフィルムの作製に使用する透明プラスチックフィルムであるTAC(トリアセチルセルロース)フィルムの夫々について、定圧厚さ計[ニコン社製、商品名「MH−15M」]にて厚さを測定し、その差を取ることによりハードコート層の厚さを算出する。
【0033】
調整例1 ハードコート層用コート剤1
(A)活性エネルギー線感応型組成物として、ハードコート剤[JSR(株)製、商品名「オプスターZ7524」、固形分濃度70質量%、反応性シリカ微粒子と多官能アクリレートを含有する全活性エネルギー線硬化型化合物65質量%、光重合開始剤5質量%、メチルエチルケトン30質量%、硬化物の屈折率1.50]100質量部、(B)球状有機微粒子として、アクリル樹脂からなるポリメチルメタクリレート微粒子(以下、「PMMA微粒子」と称することがある)[綜研化学(株)製、商品名「MX500」平均粒径5μm、屈折率1.49]7.5質量部、(C)球状ケイ素系微粒子として、シリコーン樹脂微粒子[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名「トスパール120」、平均粒径2μm、屈折率1.43]2質量部、(D)界面活性剤として、カプロラクトン−ポリエチレングリコール−ジブチルアミノエタノール共重合体[ビックケミージャパン社製、商品名「disperbyk103」、メトキシプロピルアセテートによる40質量%希釈品]1質量部、希釈溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテル90質量部を均一に混合し、固形分約40質量%であるハードコート層用コート剤1を調製した。
・・・中略・・・
【0045】
調製例13 ハードコート層用コート剤13
(B)球状有機微粒子を用いなかったこと以外は、調製例5と同様の操作を行い、固形分約40質量%であるハードコート層用コート剤13を調製した。
前記の調製例1〜13で得られたハードコート層用コート剤1〜13の性状を第1表に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1
厚さ80μmのTACフィルム[富士フィルム(株)製、商品名「TAC80TD80ULH」]の表面に、調整例1で得たハードコート層用コート剤1を硬化膜厚が約10μmになるようにマイヤーバーで塗工した。70℃のオーブンで1分間乾燥させたのち、高圧水銀ランプで、光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成して、防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0048】
実施例2〜5、比較例1〜7及び参考例1
実施例1において、ハードコート層用コート剤1の代わりに、第2表に示す種類の各ハードコート層用コート剤を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、各種の防眩性ハードコートフィルムを作製した。
各ハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
前記第1表及び第2表から、次のことが分かる。
実施例1〜3で得られた本発明の防眩性ハードコートフィルムは、(D)界面活性剤の影響を受けにくい(C)成分の球状ケイ素系微粒子の含有量を変えても、主として内部ヘーズ値が変化し、外部ヘーズ値はあまり変化しない。また、実施例4、5では、(C)成分の球状ケイ素系微粒子としてポーラスシリカや中空シリカを用いても、防眩性付与効果が良好に発揮されている。
参考例1では、(A)成分の硬化物と(B)成分の球状有機微粒子の屈折率差が小さいため、内部ヘーズ値が小さい。一方、実施例1〜3では、(A)成分硬化物と屈折率差のある(C)成分のケイ素系微粒子を含むために、内部ヘーズが発現している。比較例1〜3は、界面活性剤を含まないため、平均粒径よりも大きいハードコート層の膜厚(10μm)において防眩性が不十分である。
比較例4〜7のように、界面活性剤の影響を受けない(C)成分の球状ケイ素系微粒子のみでは、該粒子の平均粒径より大きいハードコート層の膜厚において防眩性が不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、球状有機微粒子及び球状ケイ素系微粒子を含むハードコート層が設けられており、耐擦傷性を有すると共に、外部ヘーズ値を大きく変化させずに、内部ヘーズ値を変化させることができ、フィルム量産時の外/内部ヘーズ値の調整が容易で、コントラストを損なうことなく、所望の防眩性を得ることができる。本発明の防眩性ハードコートフィルムは、特に偏光板用として好適である。」

2 引用発明1
引用文献1(【0003】、【0010】、【0014】、【0016】〜【0018】、【0023】〜【0025】、【0032】〜【0033】、【0046】〜【0047】、【0049】等を参照。)には、実施例1として、「TACフィルム」の表面に「調整例1」で得た「ハードコート層用コート剤1」を塗工して「ハードコート層」を形成した「防眩性ハードコートフィルム」が記載されている。ここで、「ハードコート層用コート剤1」に含まれる「(A)活性エネルギー線感応型組成物」の固形分含有量を100質量部とした場合の、「(B)球状有機微粒子」、「(C)球状ケイ素系微粒子」、「(D)界面活性剤」の含有量(質量部)が【表1】から把握できる。
また、同文献【0018】の記載から、「(B)球状有機微粒子」は、ハードコート層の形成過程において界面活性剤を作用させることにより表面に浮上し、主に外部ヘーズ値を発現させるものであることが理解でき、同文献【0014】を参照すると、ハードコート層形成材料に含まれる「反応性シリカ微粒子」は、「平均粒径が1〜400nm程度のものであり」、「表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有するシリカ微粒子」であることが把握できる。
さらに、同文献【0024】、【0049】を参照すると、実施例1の「防眩性ハードコートフィルムのJISK7136に準拠したヘーズ値から、防眩性ハードコートフィルムの構成部材である透明プラスチックフィルム」である「TACフィルム」単体のJISK7136に準拠したヘーズ値を差し引いた値であるトータルヘーズ値は27.67%である。
引用文献1の上記記載より理解される下記の「防眩性ハードコートフィルム」の発明を、引用発明1とする。

「 (A)活性エネルギー線感応型組成物として、ハードコート剤[JSR(株)製、商品名「オプスターZ7524」、固形分濃度70質量%、反応性シリカ微粒子と多官能アクリレートを含有する全活性エネルギー線硬化型化合物65質量%、光重合開始剤5質量%、メチルエチルケトン30質量%、硬化物の屈折率1.50]100質量部、(B)球状有機微粒子として、アクリル樹脂からなるポリメチルメタクリレート微粒子(以下、「PMMA微粒子」と称することがある)[綜研化学(株)製、商品名「MX500」平均粒径5μm、屈折率1.49]7.5質量部(固形分換算で10.7重量部)、(C)球状ケイ素系微粒子として、シリコーン樹脂微粒子[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名「トスパール120」、平均粒径2μm、屈折率1.43]2質量部(固形分換算で2.9重量部)、(D)界面活性剤として、カプロラクトン−ポリエチレングリコール−ジブチルアミノエタノール共重合体[ビックケミージャパン社製、商品名「disperbyk103」、メトキシプロピルアセテートによる40質量%希釈品]1質量部(固形分換算で0.6重量部)、希釈溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテル90質量部を均一に混合し、固形分約40質量%であるハードコート層用コート剤1を調製し、
厚さ80μmのTACフィルムの表面に、ハードコート層用コート剤1を硬化膜厚が約10μmになるようにマイヤーバーで塗工し、70℃のオーブンで1分間乾燥させたのち、高圧水銀ランプで、光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成して作製した、防眩性ハードコートフィルムであって、
上記球状有機微粒子は、ハードコート層の形成過程において界面活性剤を作用させることにより表面に浮上し、主に外部ヘーズ値を発現させるものであり、
上記反応性シリカ微粒子は、平均粒径が1〜400nm程度のものであり、表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有するシリカ微粒子であり、防眩性ハードコートフィルムのJISK7136に準拠したヘーズ値から、防眩性ハードコートフィルムの構成部材であるTACフィルム単体のJISK7136に準拠したヘーズ値を差し引いた値であるトータルヘーズ値が27.67%である、
防眩性ハードコートフィルム。」

3 対比
(1)プラスチック基材
引用発明1の「TACフィルム」は、技術的にみて、本願発明1の「プラスチック基材」に相当する。

(2)(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂、(E)成分としてのシリカ微粒子
引用発明1の「反応性シリカ微粒子」は、その文言の意味するとおりシリカ微粒子であって、「平均粒径が1〜400nm程度のものであり、表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有する」ものである。
上記構成からみて、引用発明1の「反応性シリカ微粒子」は、本願発明1の「シリカ微粒子」に相当し、本願発明1の「前記(E)成分としてのシリカ微粒子が、表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有しており、」という要件を満たす。
引用発明1の「ハードコート剤[JSR(株)製、商品名「オプスターZ7524」」に含まれる「反応性シリカ微粒子と多官能アクリレートを含有する全活性エネルギー線硬化型化合物」から「反応性シリカ微粒子」を除いた樹脂は、その構成からみて、本願発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」に相当する。
ここで、特開2009−244305号公報の【0032】、【0044】【表1】を参照すると、引用発明1に含まれる「オプスターZ7524」に由来する活性エネルギー線感応型組成物の固形分100重量部は、反応性シリカ微粒子39重量部、光重合開始剤7.1(=5/(65+5)×100)重量部、多官能アクリレート53.9(=100−39−7.1)重量部からなると認められる(当合議体注:小数点第2位を四捨五入した。以下、同様である。)。
そうすると、「反応性シリカ微粒子」を除いた「反応性シリカ微粒子と多官能アクリレートを含有する全活性エネルギー線硬化型化合物」の固形分100重量部に対して「反応性シリカ微粒子」は、72.4(=39/53.9×100)質量部を含まれるものであるから、引用発明1は、「前記(E)成分としてのシリカ微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、15〜200重量部の範囲内の値とし、」という要件を満たす。

(3)(B)成分としての樹脂微粒子
引用発明1の「球状有機微粒子」は、樹脂からなる微粒子であって、ハードコート層の形成過程において界面活性剤を作用させることにより表面に浮上し、主に外部ヘーズ値を発現させるものであるから、本願発明1の「樹脂微粒子」に相当する。

また、引用発明1は、上記多官能アクリレート100質量部に対して、「球状有機微粒子」を19.9質量部(=10.7×100/53.9)含むものである。
よって、「前記(B)成分としての樹脂微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値と」するという要件を満たす。

(4)(C)成分としての分散剤
引用発明1の「カプロラクトン−ポリエチレングリコール−ジブチルアミノエタノール共重合体」は、界面活性剤として用いられるものであり、技術的にみて、本願発明1の「分散剤」に相当する。
また、引用発明1の「カプロラクトン−ポリエチレングリコール−ジブチルアミノエタノール共重合体」は、分子内に極性基であるアミノ基を有するものであるから、本願発明1の「分子内に少なくとも1つの極性基を有するとともに、前記極性基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、ピリジウム塩基、スルホニウム塩基およびホスホニウム塩基からなる群から選択される少なくとも一種を有する化合物であり、」という要件を満たす。さらに、引用発明1は、多官能アクリレート100質量部に対し、「カプロラクトン−ポリエチレングリコール−ジブチルアミノエタノール共重合体」を1.1(=0.6×100/53.9)質量部を含むから、本願発明1の「前記(C)成分としての分散剤の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0〜2重量部(但し、0重量部を除く。)の範囲内の値とし、」という要件を満たす。

(5)(D)成分としての光重合開始剤
引用発明1の「光重合開始剤」は、その用語の意味するとおり、本願発明1の「光重合開始剤」に相当する。

(6)防眩性ハードコート層形成用組成物、防眩性ハードコート層
上記(2)〜(5)に記載した成分を含む「ハードコート層用コート剤1」は、本願発明1の「防眩性ハードコート層形成用組成物」に相当し、当該「ハードコート層用コート剤1」から形成される層である引用発明1の「ハードコート層」は、本願発明1の「防眩性ハードコート層」に相当する。
また、引用発明1の「ハードコート層」は、「(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂と、(B)成分としての樹脂微粒子と、(C)成分としての分散剤と、(D)成分としての光重合開始剤と、(E)成分としてのシリカ微粒子を含む防眩性ハードコート層形成用組成物の硬化物からなる」という要件を満たす。

(7)防眩性ハードコートフィルム
上記(1)〜(6)の構成からみて、引用発明1の「防眩性ハードコートフィルム」は、本願発明1の「防眩性ハードコートフィルム」に相当し、「プラスチック基材の表面に防眩性ハードコート層を備えた防眩性ハードコートフィルムであ」るという要件を満たす。また、引用発明1は、「防眩性ハードコートフィルムのJISK7136に準拠したヘーズ値から、防眩性ハードコートフィルムの構成部材である透明プラスチックフィルム単体のJISK7136に準拠したヘーズ値を差し引いた値であるであるトータルヘーズ値が27.67%であ」ることから、「防眩性ハードコートフィルム」のヘイズ値は、27.67%より「TACフィルム」単体のヘーズ値分だけ大きい値をとると認められる(当合議体注:TACのヘーズ値は通常、数%に満たない。)。よって、引用発明1の「防眩性ハードコートフィルム」は、「JIS K 7136に準拠して測定されるヘイズ値を6.3〜40%の範囲内の値とする」という要件を満たすものといえる。

4 一致点及び相違点
(1)一致点
上記3によれば、本願発明1と引用発明1は、次の点で一致する。
「 プラスチック基材の表面に防眩性ハードコート層を備えた防眩性ハードコートフィルムであって、
前記防眩性ハードコート層が、(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂と、(B)成分としての樹脂微粒子と、(C)成分としての分散剤と、(D)成分としての光重合開始剤と、(E)成分としてのシリカ微粒子を含む防眩性ハードコート層形成用組成物の硬化物からなるとともに、
前記(B)成分としての樹脂微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とし、かつ、
前記(C)成分としての分散剤が、分子内に少なくとも1つの極性基を有するとともに、前記極性基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、ピリジウム塩基、スルホニウム塩基およびホスホニウム塩基からなる群から選択される少なくとも一種を有する化合物であり、前記(C)成分としての分散剤の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0〜2重量部(但し、0重量部を除く。)の範囲内の値とし、
前記(E)成分としてのシリカ微粒子が、表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有しており、かつ、
前記(E)成分としてのシリカ微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、15〜200重量部の範囲内の値とし、
JIS K 7136に準拠して測定されるヘイズ値を6.3〜40%の範囲内の値とした、
防眩性ハードコートフィルム。」

(2)相違点
上記3によれば、本願発明1と引用発明1は、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、「(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を1〜2.0μm(但し、2.0μmは除く)の範囲内の値」であるのに対し、引用発明1においては、「球状有機微粒子」の平均粒径は5μmである点。

(相違点2)
本願発明1では、「JIS Z 8741に準拠して測定される60°鏡面光沢度を104.7〜130%の範囲内の値とし、さらに、下記測定方法で得られてなるギラツキを、100ppi以上の値」であるのに対し、引用発明1においては、そのように特定されていない点。
「(測定方法)
1)60ppi(ピクセル/インチ)となるように光透過部を設けた格子状パターンをバックライト上に載置する。
2)次いで、防眩性ハードコートフィルムを格子状パターン上に防眩性ハードコート層が上になるように載置し、ギラツキの発生箇所を確認する。
3)次いで、防眩性ハードコートフィルムを、格子状パターン上でこれと平行な方向に移動させ、予め確認しておいたギラツキの発生箇所が、防眩性ハードコートフィルムと共に移動した場合は、当該ギラツキの発生が防眩性ハードコートフィルムに起因したものとし、60ppiの格子状パターンでは防眩性ハードコートフィルムに起因したギラツキの発生が確認されなかった場合には、10ppi刻みでppiを増加させた格子状パターンを順次用いて、防眩性ハードコートフィルムに起因したギラツキの発生箇所が確認されるまで、同様の作業を繰り返す。
4)防眩性ハードコートフィルムに起因したギラツキの発生箇所が確認されない一番大きな格子状パターン(ppi)をギラツキの値とする。」

(相違点3)
「シリカ微粒子」が、本願発明1では「体積平均粒子径」が「2〜500nmの範囲内の値」であるのに対し、引用発明1においては、「平均粒径1〜400nm程度のもの」である点。

5 判断
(1)相違点1〜2について
技術的な関連性から相違点1〜2について、まとめて判断する。
引用文献1には、球状有機微粒子について平均粒径が1〜10μmの範囲にできることが記載されている(【0015】)。また、同文献の【0002】、【0024】には、ぎらつきの低減が課題として認識されており、さらに、例えば、特開2013−178533号公報の【0003】に記載されているように、光学フィルムを高精細ディスプレイ用に用いる場合には、より高いレベルでのギラツキ防止対策が求められることが技術常識である。
一方で、光学フィルムにおいて、防眩層に含有される樹脂微粒子の体積平均粒径を小さくすることでぎらつきを低減できることは、引用文献3の実施例3〜4、比較例1、【0014】、【0046】、【0048】等、引用文献5の実施例1〜3、比較例2〜4、【0017】、【0082】、【0086】〜【0087】、引用文献7の実施例1、【0006】、【0026】、【0057】、引用文献8の【0049】、【0139】、【0151】等)に例示されるように周知の事項である。
そして、上記技術常識及び周知技術に鑑みると、引用発明1において、ディスプレイの高精細化の要望に応じて、防眩層中の球状有機微粒子の体積平均粒子径を小さくすることでギラツキを抑制することは容易に想到し得たことであるといえ、ギラツキを抑制可能な具体的な粒子径としては、引用文献3、5、7〜8に記載される微粒子の粒子径を参考にして1μmから2μm未満の値を採用することができたといえる。
また、請求項1で特定される「下記測定方法で得られてなるギラツキを、100ppi以上の値とすること」に関しては、単に、高精細化の要請を満たすギラツキ防止機能を特定の評価方法に基づいて表現したにすぎず、上述のように、ギラツキの抑制という課題の下、粒子径を小さくすることで当業者が適宜なし得たことである。さらに、同様の測定方法によりギラツキを評価すること自体、周知技術であり(当合議体注:例えば、特開2012−73637号公報の【0005】、【0158】、【0160】【表2】等を参照。)、同様の測定方法により求められたギラツキの評価値が100ppi以上のものについても周知であることに鑑みて、この点に進歩性が認められるものではない。
次に、相違点2に係る、60°鏡面光沢度の数値限定について検討する。引用文献1の【0006】に記載されているように、引用発明1の課題は、「フィルム量産時の外/内部ヘーズ値の調整が容易で、コントラストを損なうことなく、所望の60 °鏡面光沢度及び防眩性を得ることができる防眩性ハードコートフィルム、及びこの防眩性ハードコートフィルムを用いた偏光板を提供すること」であり、【0025】には、「60°鏡面光沢度は、高コントラストタイプ、汎用タイプともに20〜130が好ましい」という記載があるところ、防眩フィルムに含まれる樹脂微粒子の粒子径を小さいものとすることで鏡面光沢が向上することも当業者にとって自明であるから(例えば、特開2010−113220号公報の【0016】参照。)、上述のように防眩層中の球状有機微粒子の体積平均粒子径として1μmから2μm未満の値を採用することで、「JIS Z 8741に準拠して測定される60°鏡面光沢度」を「104.7〜130%の範囲内の値」とすることは当業者が適宜なし得たことである。
また、そもそも本件明細書において光沢の下限値を設定することの技術的意義は明らかではなく、60°鏡面光沢度に関する特定事項は、当業者の設計的事項の範疇のものといえる。
以上のことから、相違点1〜2に係る構成は、引用発明1及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点3について
引用発明1の「反応性シリカ微粒子」の平均粒径(当合議体注:引用発明1における平均粒子径は、その測定方法(引用文献1の【0014】参照。)からみて体積平均粒子径であると認められる。)は、1〜400nm程度であり、粒子径が定まっていないものの、当該範囲から1〜2nm程度のような極端に小さいものを避け、「2〜500nmの範囲内の値」の粒径の「反応性シリカ微粒子」を用いることは、当業者であれば適宜なし得た程度のことである。
したがって、相違点3に係る構成は、引用文献1が示唆する範囲内の事項である。

6 発明の効果について
本願発明の効果に関して、本件出願の明細書の【0009】には、「そこで、本発明者等は、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、防眩性ハードコート層を形成するための防眩性ハードコート層形成用組成物に対し、所定の体積平均粒子径を有する樹脂微粒子を所定の割合で配合するとともに、所定の分散剤を所定の割合で配合することにより、優れた防眩性を維持しつつ、ギラツキの発生についても効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、優れた防眩性を有するとともに、高精細ディスプレイに適用した場合であっても、ギラツキの発生を効果的に抑制することができる防眩性ハードコートフィルムを提供することにある。」と記載されている。
しかしながら、上記5(1)で述べたとおり、光学フィルムを高精細ディスプレイ用に用いる場合には、より高いレベルでのギラツキ防止対策が求められることは技術常識であって、そのような高いレベルでのギラツキ防止効果を得ようとする当業者により、引用発明1及び周知技術等に基づいて容易に推考される発明が具備する効果であるといえる。また、当該効果は上記周知技術に基づいて当業者であれば予測可能な効果である。

7 審判請求人の主張について
(1)令和3年4月5日提出の審判請求書の主張について
ア 審判請求人は、令和3年4月5日提出の審判請求書の「3−3 指摘に対する主張」において、以下の主張をしている。

「(1)−1 D1
・・・中略・・・
しかしながら、以下の点において、本願発明とD1は、目的、構成、効果が大きく異なります。
(1)−1−1 目的の相違
・・・中略・・・
5)従って、ギラツキという文言上、一致してはいるものの、本願発明とD1におけるギラツキ解消の課題(目的)は同一視されるべきものではないことから、目的が大きく異なるD1によって、本願発明の進歩性が否定されないことは明白であります。

(1)−1−2 構成の相違1(樹脂微粒子の体積平均粒子径)

1)本願発明では、樹脂微粒子の体積平均粒子径を、1μm以上、2.0μm未満としております。
かかる所定体積平均粒子径の樹脂微粒子とすることで、優れた防眩性を維持しつつ、ギラツキの発生についても効果的に抑制することができます。

2)一方、D1では、球状有機微粒子は、平均粒径を、1〜10μmの範囲内の値としているものの、平均粒径とギラツキの関係については記載も示唆もありません。
ましてや、本願発明のように樹脂微粒子の体積平均粒子径を1μm以上、2.0μm未満に限定することにより、ギラツキの発生を抑制することに関しては記載も示唆も一切ありません。

3)とすれば、ギラツキの発生を抑制するために、樹脂微粒子の体積平均粒子径を所定範囲内とすることを何ら考慮していないD1によって、本願発明の進歩性が否定されないことは明白であります。

(1)−1−3 構成の相違2(60°鏡面光沢度)
1)本願発明では、60°鏡面光沢度を104.7〜130%の範囲内の値としております。
一方、D1では、明細書の段落0025には、60°鏡面光沢度は20〜130%が好ましいとする記載があります。
この点、本願発明とD1とは、60°鏡面光沢度の数値範囲が重複していると言えます。

2)しかしながら、D1の実施例及び比較例での60°鏡面光沢度の値(全実施例:64.3〜92.2%、全比較例:90.4〜144.4%)に関しては、100%以上の実施例は存在せず、むしろ比較例に存在するものとなっております。

3)ここで、参考図2を用いて、この理由を説明いたします。
なお、参考図2で用いられているトータルヘーズ値と60°鏡面光沢度の値は、D1の実施例、参考例、比較例における測定値(D1の第2表)です。
参考図2は、横軸にトータルヘーズ値、縦軸に60°鏡面光沢度の値を、それぞれ採って示したものであります。そして、本願発明のヘイズ値の数値範囲と60°鏡面光沢度の数値範囲で囲まれた領域を点網掛け領域として示しております。
図より、本願発明の範囲である点網掛け領域には、D1の全実施例が入っていないことが理解されます。
一方、当該領域には、D1の比較例4(調整例10)及び比較例7(調整例13)が入ってはおりますが、両比較例とも球状有機微粒子(本願発明の樹脂微粒子に相当)が配合されておらず、球状ケイ素系微粒子であっても、平均粒径はそれぞれ2μm、3μmであり、本願発明における樹脂微粒子の体積平均粒径の範囲外であります。

4)従って、実質的には、60°鏡面光沢度の数値範囲が異なり、構成が大きく異なるD1によって、本願発明の進歩性が否定されないことは明白であります。
・・・中略・・・
(1)−1−4 効果の相違
・・・中略・・・
4)とすれば、本願発明とは構成が大きく異なり本願発明の効果が得られないD1によって、本願発明の進歩性を否定されないことは明白であります。

(1)−2 D2
・・・中略・・・
(1)−3 D3
・・・中略・・・
9)更に又、D3には、分散剤や比重差により有機質微粒子を浮かせるような技術的思想は記載されておらず、防眩層の塗膜厚さと平均粒径の関係で表面凹凸を調整するものであり、防眩層の設計もD1と技術的思想が大きく異なり、単純に、球状有機微粒子の部分のみを取り換えることができるものではありません。
従って、D3の内容は、周知技術として適用できないことは明白であります。

10)又、D3は、60°鏡面光沢度を65%以下とする発明であり(D3の請求項1)、本願発明における60°鏡面光沢度の数値範囲とは大きく異なります。
従って、仮にD1にD3を組み合わせても本願発明に至らないことは明らかです。

(1)−4 D5
・・・中略・・・
9)とすれば、ぎらつき性を根拠に、D5の実施例の平均粒径のみを、D1に組み合わせることはできず、後知恵と言わざるを得なものと思料します。
従って、D5の内容は、周知技術として適用できないことは明白であります。

10)又、D5の段落0023には、「・・・60°グロス値は100%以下であることが好ましく、・・・」と記載されています。そのため、仮に、D1にD5を組み合わせても本願発明に至らないことは明らかです。

(1)−5 D7
1)D7の実施例1は、粒子径1.5μmの架橋アクリル樹脂ビーズ(本願発明の樹脂微粒子に相当)を使用して、ギラツキの評価が「○」であるのに対し、粒子径1.5μmと粒子径3.0μmの架橋アクリル樹脂ビーズを併用した実施例3及び4、あるいは、粒子径3.0μmの架橋アクリル樹脂ビーズを使用した実施例5であっても、ギラツキの評価が「○」であります。

2)とすれば、D7からは、高精細ディスプレイでのギラツキの発生抑制に、粒子径2.0μm未満が好適であることを導き出すことができないのは明らかです。

3)そもそも、D7のギラツキ評価は、ディスプレイ上に重ねて確認するだけであり、高精細ディスプレイでのギラツキ抑制の評価となっておりません。

4)従って、D7を根拠に、平均粒子径2.0μm未満という技術要素を抽出し、周知技術として、D1に適用できないことは明白であります。

(1)−6 D8
1)D8は、請求項9及び明細書の段落0014に「全ヘイズが5.0%未満」と記載されており、段落0016には、「滑らかな凹凸表面を有する防眩層であって、・・・」と記載されており、更にD8の図2や図4の断面図を見ると、微粒子に基づく凹凸がほとんど無いものとなっています。

2)すなわち、ここまで凹凸がなく、かつ、低ヘイズのものであれば、そもそも凹凸に基づくギラツキの問題が発生しないものと思料致します。

3)とすれば、このような本願発明とは構成が大きく異なるD8を根拠に、樹脂粒子の平均粒径だけを抽出し、周知技術として、D1に適用できないことは明白であります。
又、D1にD8を組み合わせても本願発明を構成できないことは明らかです。

(1)−7 小まとめ
1)以上より、D1に、D3、5、7、8及び参考文献としてのD2を組み合わせることができず、仮に組み合わせても本願発明を構成できないことから、これらの組み合わせによって、本願発明の進歩性を否定されないことは明白であります。」(以下「主張1」という。)

イ 上記主張1について検討する。
「(1)−1−2 構成の相違1」及び「(1)−1−3 構成の相違2」については、上記5に記載したとおり、当業者が容易に想到し得たものである。
また、「(1)−3 D3」〜「(1)−6 D8」に関しては、提示した引用文献は、防眩層に含有される樹脂微粒子の粒径を小さくすることでぎらつきを低減できることが周知技術であることを示すために引用した文献であって、引用発明1において当該周知技術を適用することに格別阻害要因があるともいえない。
そして、「(1)−1−1 目的の相違」については実質的な相違点であるとはいえないし、「(1)−1−4 効果の相違」に関しては、上記6に記載したとおり、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に推考される発明が有する効果であって、当業者が予測可能なものにすぎない。
したがって、審判請求人の上記主張1は、採用することができない。

(2)令和3年9月17日提出の上申書の主張について
ア 審判請求人は、令和3年9月17日提出の上申書の「(2)本願発明が特許されるべき理由」において、以下の主張をしている。

(ア)「(2)−1 本願発明が特許されるべき理由1(樹脂微粒子(B)の配合量)
(2)−1−1 樹脂微粒子(B)の配合量1
1)D1の実施例を、本願発明の補正後の請求項1の各構成に当てはめなおしますと、「前記(B)成分としての樹脂微粒子の配合量を、前記(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値」という本願発明の構成は、下記の理由により、前置報告書において何ら議論の対象となっていない大きな相違点と言えます。

2)具体的には、令和2年6月2日付(発送日)の拒絶理由の通知における「理由1(進歩性)について」によれば、D1と本願発明との対比において、審査官殿は、「・・・球状有機微粒子と、シリコーン樹脂微粒子(球状有機微粒子及びシリコーン樹脂微粒子の少なくとも一方が(B)成分としての樹脂微粒子に相当)・・・」とご認定されております。
とすれば、D1の球状有機微粒子(以下、球状有機微粒子(B)と称する場合がある。)及びシリコーン樹脂微粒子(以下、球状ケイ素系微粒子(C)と称する場合がある。)の両方が、本願発明の(B)成分としての樹脂微粒子(以下、樹脂微粒子(B)と称する場合がある。)に相当すると考えることもできます。
むしろ、D1の発明を考慮すれば、令和2年7月17日付(提出日)の意見書や後述の「(ii)相違点B」でも記載の通り、D1は、球状有機微粒子とシリコーン樹脂微粒子を併用することを必須構成として、所定の効果を発揮させることから、当業者であれば、上記のように考えるものと思料致します。

3)ここで、本願発明の樹脂微粒子(B)に相当するD1の球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)の配合量を、ご指摘のD1の調整例1を対象として算出してみます。
すなわち、審査官殿のご認定の通り、D2を参照して、D1の調製例1における「オプスターZ7524」中の多官能アクリレートは53.9%になります。
従って、D1の実施例1(調整例1)の球状有機微粒子(B)10.7質量部及び球状ケイ素系微粒子(C)2.9質量部を、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量(重量部)に換算すると、(10.7+2.9)÷0.539=25.3重量部となります。
同様に、D1の他の実施例2〜5においても、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量(重量部)に換算すると、30.5又は39.8重量部と更に多くなります。

4)とすれば、D1の実施例から判断して、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量に関する構成についても、D1に対して明確な相違点となります。
・・・中略・・・
(2)−1−2 樹脂微粒子(B)の配合量2
1)ここで参考図1を用いて、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量の数値範囲とすることが、D1の実施例からでは、容易に想到できない旨を説明します。

2)すなわち、参考図1は、横軸に樹脂微粒子(B)の配合量を、縦軸にヘイズ値を、それぞれ採って示してあります。
そして、D1の表1にまとめられた全実施例1〜5の球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)の配合量を、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量(重量部)に換算し、D1の表2にまとめられたトータルへーズ値を、ヘイズ値として用いております。

3)かかる図中の特性曲線によれば、樹脂微粒子(B)の配合量が増えるに従って、ヘイズ値が高くなる傾向となることが理解されます(線形近似で相関係数が0.63)。
又、D1の全実施例が本願発明の範囲外であることが理解されます。

4)又、仮に、D1が、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量の数値範囲をとることができたとしても、参考図1の特性曲線から考えると、本願発明のヘイズ値の数値範囲から外れてしまう場合(例えば、樹脂微粒子(B)の配合量が10〜15重量部の場合)もあるものと思料します。」(以下「主張2」という。)

(イ)「(2)−2 本願発明が特許されるべき理由2(本願発明とD1の相違)
・・・中略・・・
8)とすれば、本願発明と、D1との間で、目的、構成等において多数の相違点がございますが、特に、下記相違点A〜Fは、両者の発明を区別する上で、特に大きな相違点である思料します。

(i)相違点A
・・・中略・・・
とすれば、目的(作用効果も含む)において、両者は真逆の関係にあって、大きな相違点と言えます。

(ii)相違点B
又、D1は、所定平均粒径の球状有機微粒子(B)と、所定平均粒径のシリコーン系樹脂等の中から選ばれる少なくとも1種の球状ケイ素系微粒子(C)と、を組み合わせることを必須構成要件とした発明です。
それに対して、本願発明は、所定平均粒径の球状有機微粒子と、所定平均粒径のシリコーン系樹脂等の球状ケイ素系微粒子と、を組み合わせることを必須構成要件としておりません。
むしろ、D1が、必須構成要件とする球状ケイ素系微粒子(C)については、本願発明の参考例3に示すように、それを好適成分として、考慮しておりません。

(iii)相違点C
又、上述の「(2)−1 本願発明が特許されるべき理由1」に記載した通り、D1の球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)の両方が、本願発明の樹脂微粒子(B)に相当すると考えることができます。
その場合、少なくともD1の実施例レベルにおいては、本願発明の樹脂微粒子(B)の所定配合量の範囲外となることから、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量に関する構成もD1と比較して大きな相違点と言えます。

(iv)相違点D
D1は、ハードコート層の厚さが、球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)のそれぞれの平均粒径よりも大きいことを必須要件としております。
すなわち、D1の目的である外部ヘーズ値を大きく変化させずに、内部ヘーズ値を変化させるために、そのような大小関係を必須構成要件としていることは明白です。
それに対して、本願発明は、ハードコート層の厚さが、球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)のそれぞれの平均粒径よりも大きいことを必須要件としておりません。
すなわち、本願発明の防眩性ハードコートフィルムの場合、むしろフィルム表面に、充填粒子に起因すると思われる微細凹凸を形成し、内部ヘーズ値のみならず、外部ヘーズ値も変化させる構成であります。

(v)相違点E
D1は、少なくとも請求項1において、ヘイズ値や60°鏡面光沢度の値を所定範囲内の値とすることについて言及しておりません。
それに対して、本願発明は、構成9として、JIS K 7136に準拠して測定されるヘイズ値を6.3〜40%の範囲内の値とすると共に、JIS Z 8741に準拠して測定される60°鏡面光沢度を104.7〜130%の範囲内の値とすることを明確に規定しております。
もちろん、D1の明細書中、段落0025に、「60°鏡面光沢度は、高コントラストタイプ、汎用タイプともに20〜130が好ましい。」が好ましいと記載されております。 そして、確かに、D1の実施例1〜5における60°鏡面光沢度の値は、64.3〜92.2の範囲内の値であって、それなりに低い値であり、防眩性評価が「〇」と良好です。
しかしながら、D1の比較例2、3、4、5、7については、60°鏡面光沢度の値は、104.4、90.5、112.1、90.4、116.9であって、D1の60°鏡面光沢度の好適範囲に入っているにもかかわらず、防舷性評価が「×」となっております。
この点、D1の実施例及び比較例を考慮すれば、D1は、実施例レベルでは、少なくとも本願発明で規定する60°鏡面光沢度の値(104.7〜130%)よりも低い数値範囲を好適範囲としているものと理解され、事実上、本願発明の60°鏡面光沢度を否定する記載でないことは明白であります。

(vi)相違点F
D1の明細書、段落0002において、「近年、防眩性フィルムにおいては、従来の防眩性付与を目的とする表面凹凸に起因する外部ヘーズ値に加え、ぎらつき低減のため、フィルム内部の光拡散性に由来する内部ヘーズ値を併せもつことが要求されている。」と記載されております。
従って、一見、ギラツキ発生を抑制することについても、D1の目的の一つとして考えることもできます。
それに対して、本願発明の場合、表面の凹凸が十分に細かいため、60°鏡面光沢度が100%超の範囲にあり、最近の高精細ディスプレイ(例えば、画素密度が280ppi以上)に対応する格子状パターンと重ね合わせて観察してもギラツキ発生を抑制することができます(主効果2)。
すなわち、表面の凹凸状態等により、60°鏡面光沢度が100%超の範囲となるように制御し、高精細ディスプレイ(例えば、画素密度が280ppi以上)に対応する格子状パターンと重ね合わせて観察してなるギラツキ発生を抑制可能としております。
とすれば、内部ヘーズ値の制御によるぎらつき低減と、表面の凹凸状態等により、60°鏡面光沢度が100%超の範囲となるように制御し、高精細ディスプレイに対応する格子状パターンと重ね合わせて観察してなるギラツキ発生防止とは、効果の上からも、大きな相違点と言えます。

9)以上の説明から、本願発明と、D1との間に、多数の相違点がございますが、前置報告書においては、2つの相違点のみ言及しております。
よって、部分的に後述しますが、これでは、本願発明と、主引例であるD1の認識に、誤りがあることは明白であると思料いたします。」(以下「主張3」という。)

(ウ)「(2)−3 本願発明が特許されるべき理由3(本願発明及び主引例の認定の誤り1)
1)前置報告書において、本願発明と、主引例であるD1と、を比較すると、下記の相違点1〜2があるとの指摘です。
(i)相違点1
本願発明(請求項1)において、構成3として、B)成分としての、架橋アクリル樹脂等からなる樹脂微粒子の体積平均粒子径を1〜2.0μm(但し、2.0μmは除く)の範囲内の値としているのに対し、D1(調整例1等)では、樹脂微粒子と、平均粒径が2.0μmのシリコーン樹脂を併用している点において、両者で構成が異なっているとの指摘です。

(ii)相違点2
又、本願発明(請求項1)において、JIS Z 8741に準拠して測定される60°鏡面光沢度を104.7〜130%の範囲内の値としているのに対し、D1(実施例1等)では、JIS K 7105に準拠して測定される60°鏡面光沢度が86.3%である点において、両者で構成が異なっているとの指摘です。
2)しかしながら、上述したように、相違点A〜Fは、相違点1及び2を含んでおりますが、両者を比較する上で、比較排除できないことは明白です。
よって、このように誤った本願発明及び主引例の認定の誤りに基づく、前置報告書については、到底容認できるものではありません。」(以下「主張4」という。)

(エ)「(2)−4 本願発明が特許されるべき理由4(相違点1についての意見)
1)まず、前置報告書において、本願発明と、主引例であるD1と、を比較すると、上述した相違点1があるものの、下記理由にて、当業者が容易に想定できると認定されております。

認定1)D1には、シリコーン微粒子の平均粒径を0.5〜10μmの範囲にし、球状微粒子の平均粒径を1〜10μmの範囲にできることが記載されている。

認定2)D1には、ぎらつきの低減が課題として記載されている。

認定3)本願発明の「(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を1〜2.0μm(但し、2.0μmは除く)」という数値範囲に臨界的意義は認められない。

認定4)D3、D5、D7〜8に、防眩層に含有される樹脂粒子の体積平均粒径を小さくすることで、ぎらつきを低減できることは周知技術である。

2)しかしながら、認定1に関し、所定箇所に、所定数値が記載されていることは事実でありますが、その前提として、D1には、シリコーン微粒子と、球状微粒子とを組み合わせることを前提としており、かつ、ハードコート層の厚さが、(B)成分及び(C)成分のそれぞれの平均粒径よりも大きいことを必須要件としております。
とすれば、シリコーン微粒子等の併用を必須構成要件としない、本願発明における(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を直接的に比較できないことは明白であります。

3)又、認定2に関し、D1に、所定のぎらつきの低減が課題として記載されているという指摘も失当であります。
後述するように、本願発明が意図する、60°鏡面光沢度を100%超の範囲に制御し、高精細ディスプレイに対応する格子状パターンと重ね合わせた場合に観察されるギラツキの発生防止とは、異質の課題であります。とすれば、D1の従来技術に、ぎらつきの低減が課題として記載されているとしても、本願発明における、高精細ディスプレイに対応する格子状パターンと重ね合わせた場合に観察されるギラツキの発生防止と、直接的に比較できないことは明白であります。

4)又、認定3に関し、本願発明の「(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を1〜2.0μm(但し、2.0μmは除く)」という数値範囲に臨界的意義は認められないと言う指摘も失当であります。
この点、本願発明の図2を見れば、(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を所定範囲とする意義は、ギラツキ防止や60°鏡面光沢度の関係から明らかです。
なお、下記に参考図3を添付しますが、かかる参考図3の内容から判断しても、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量との関係で、(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径を所定範囲とする意義を有することは、十分推認されるものと思料いたします。
すなわち、参考図3は、横軸に樹脂微粒子(B)の体積平均粒子径を、縦軸に樹脂微粒子(B)の配合量を、それぞれ採って示してあります。
そして、本願明細書の表1にまとめられた本願発明の実施例、参考例、比較例、及びD1の表1にまとめられた全実施例1〜5を採用してプロットしてあります。
なお、D1の実施例1〜5は、理解を容易にするために、球状有機微粒子(B)よりも粒子径が小さい球状ケイ素系微粒子(C)の粒子径を、本願発明の樹脂微粒子(B)の体積平均粒径と便宜的に見なして用いております。
又、球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)の両方が本願発明の樹脂微粒子(B)に相当すると見なして、球状有機微粒子(B)及び球状ケイ素系微粒子(C)の合計配合量を、本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量(重量部)に換算した値を用いております。
かかる参考図3によれば、D2の実施例をもとに、本願発明の範囲となる点線網掛け領域に到達するには、樹脂微粒子(B)の体積平均粒子径と本願発明の樹脂微粒子(B)の配合量の双方を、所定数値範囲とする必要があることが視覚的に理解できます。
・・・中略・・・
5)又、認定4に関し、D3、D5、D7〜8に言及して、防眩層に含有される樹脂粒子の体積平均粒径を小さくすることで、ぎらつきを低減できることは周知技術であるとの指摘も失当であります。
本願発明は、上述したように、構成1〜9を全て満足した上での、(B)成分としての樹脂微粒子の体積平均粒子径であることに留意願います。
しかも、上述したように、本願発明の作用効果は、所定のバインダーに対し、小粒径かつ低比重な樹脂微粒子(B)及び分散剤(C)を添加し、バインダー内での樹脂微粒子(B)の浮力を増強することで、所定の樹脂微粒子(B)を表面近傍に偏在させた防眩性ハードコートフィルムを提供することであります。
とすれば、このような高度な作用効果に基づく本願発明が、単に、防眩層に含有される樹脂粒子の体積平均粒径を小さくすることで、ぎらつきを低減させる従来技術と同一視できないことは明白であります。」(以下「主張5」という。)

(オ)「(2)−5 本願発明が特許されるべき理由5(相違点2についての意見)
・・・中略・・・
2)しかしながら、認定1に関し、所定箇所に、所定数値が記載されていることは事実でありますが、その前提として、D1には、シリコーン微粒子と、球状微粒子とを組み合わせて、所望の60°鏡面光沢度や防眩性を得ることを前提としており、かつ、ハードコート層の厚さが、(B)成分及び(C)成分のそれぞれの平均粒径よりも大きいことを必須要件としております。
とすれば、シリコーン微粒子等の併用を必須構成要件としない、本願発明において、60°鏡面光沢度を104.7〜130%の範囲内の値とすることにつき、D1に記載された数値を、直接的に比較できないことは明白であります。

3)しかも、上述した相違点Eで述べたように、D1の一般的記載はともかく、実施例1〜5における60°鏡面光沢度の値は、64.3〜92.2の範囲内の値であって、防眩性評価が「〇」であるのに対し、比較例2、3、4、5、7については、60°鏡面光沢度の値は、90.4、〜116.9であって、防眩性評価が「×」となっています。
すなわち、D1の実施例及び比較例を考慮すれば、D1は、実施例レベルでは、少なくとも本願発明で規定する60°鏡面光沢度の値(104.7〜130%)よりも低い数値範囲を好適範囲としているものと理解され、事実上、本願発明の60°鏡面光沢度を否定する記載でないことは明白であります。

4)よって、本願発明で規定する60°鏡面光沢度の値(104.7〜130%)は、D1の実施例等の記載をもとに、求められる視認性に応じて、所望の値に設定したものでないことは、言うまでもございません。

5)更に、認定2に関し、D1の比較例2、3、4、5、7については、60°鏡面光沢度の値が相当高く(本願発明の60°鏡面光沢度の数値範囲と部分的重複)、防眩性の評価が悪いと言う事実がございます。
これらの結果から判断すれば、それを覆す効果を発揮する、本願発明の60°鏡面光沢度に関する技術的意義は、非常に高いと思料いたします。」(以下「主張6」という。)

(カ)「(2)−6 本願発明が特許されるべき理由6(周知技術等に対する意見)
・・・中略・・・
2)しかしながら、拒絶査定においては、D1のみを引例とし、進歩性否定に基づき拒絶査定上、組み合わせる上での阻害要因があると思われるD3を周知技術に代え、かつ、D6については、撤回されました。

3)とすれば、本願発明(請求項1)は、特許第6603652号の分割出願であるものの、いわゆる後知恵として、後から知った特許出願の明細書等の知識をもとに、拒絶査定としたことは明白であります。
しかも、本願発明(請求項2〜5)については、周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができるとしか、述べておりません。
すなわち、このような後知恵による拒絶については、審査基準において明確に禁止されておりますが、本願発明及びD1等の内容を十分かつ適切に理解していただき、公平な観点からご判断いただきたいと存じます。」(以下「主張7」という。)

(キ)「(2)−7 本願発明が特許されるべき理由7(効果の非予測性1)1)本願発明によれば、上述の本願発明の構成1〜9が有機的な一体性を持って作用することにより、防眩性とギラツキ抑制の両立という効果を発揮します。
このような効果は、当業者であっても到底予想できないと思料いたします。
・・・中略・・・
この値は、解像度が280ppiを大きく上回る極めて高精細なモニタにおいても、ギラツキが発生しないことを意味しております。

5)一方、少なくともD1においては、本願発明のように、高精細なモニタに適用した場合のギラツキ抑制の効果を適切に判定できるような試験方法がとられておりません。
とすれば、本願発明の試験構成に基づくギラツキ発生は、これらの引用文献群とは全く異なるレベルのものであり、異質な効果と呼べるものです。

6)又、周知技術と認定されているD8では、明細書の段落0145に記載の通り、本願発明と類似のギラツキ評価(面ギラ評価)を行ってはおりますが、D8は、粒子に起因した明確な凹凸がほぼ認められない、いわゆる平滑なクリアハードコートに相当するものです。
言うまでもなく、微細な凹凸がなく、平滑性に優れた表面の場合、所望の防眩性を発揮できないと思料いたします。

7)とすれば、主引例であるD1に対して、本願発明と類似のギラツキ評価(面ギラ評価)を行っているD8を加味したとしても、本願発明は、当業者でも予想できない、防眩性とギラツキ抑制の両立という所定効果を発揮すると言えます。

8)従って、前置報告書における、本願発明の効果につき、「当業者が予測することができたものであって、格別でない」という認定は、当業者であっても、異質かつ非予測性の効果である以上、当業者によって容易に想到できない発明であることは明白であります。

(2)−8 本願発明が特許されるべき理由8(効果の非予測性2)
1)又、審査官殿は、本願発明のギラツキ抑制とD1のギラツキ抑制を同等のものと捉えておられますが、技術思想の面から全く異なることは明らかです。

2)すなわち、既に審判請求書の「(1)−1−1 目的の相違」にて説明しておりますように、D1のギラツキ抑制は、高ヘーズ化して光拡散を強めてギラツキが目立たなくするものです。

3)これに対し、本願発明のギラツキ抑制は、低いヘーズ値の範囲でギラツキが目立ちやすい状況において、ギラツキを根本的に抑えるものです。
4)両者は、ギラツキという用語は同じであっても技術思想としては真逆に近いものであり、大きく相違します。それを同質のものとご認定されている審査官殿のご判断には承服しかねます。」(以下「主張8」という。)

イ 主張2について検討する。
上記3(3)に記載したように、引用発明1の「球状有機微粒子」が、本願発明1の「樹脂微粒子」に相当するものであり、引用発明1は、多官能アクリレート100質量部に対して、「球状有機微粒子」を19.9質量部含むものであるから、この点が相違点であるとはいえない。ここで審判請求人は、引用発明1の「球状有機微粒子」及び「シリコーン樹脂微粒子」の両方が、本願発明の(B)成分に相当すると考えることができる旨主張しているが、本願発明1は複数種類の樹脂微粒子が含まれる場合を除外するものとはなっておらず、すなわち、外部ヘイズ値を発現させる種類の樹脂微粒子(本願発明1の「樹脂微粒子」や引用発明1の「球状有機微粒子」)とは別に、内部ヘイズ値を変化させる種類の樹脂微粒子(引用発明1の「シリコーン樹脂微粒子」)が含まれる場合を除外しておらず、そのときに、防眩性ハードコート層表面の微細な凹凸に関わる(B)成分の配合量として後者を算入すべきではないから、請求項1の記載に基づく主張ではない。
また、防眩フィルムのヘイズ値に関して、ヘイズ値は、樹脂微粒子の配合量のみならず複数の要因が影響するものであるから、単に樹脂微粒子の配合量のみに基づいて決まるものではない。そして、本願発明1で特定されている「6.3〜40%」というヘイズ値は、一般的な防眩フィルムが取り得るヘイズ値にすぎず、格別な技術的事項であるとはいえない。よって、仮に、相違点1〜3に係る構成を導くための設計変更等によって、ヘイズ値が影響を受けるとしても、そのヘイズ値は6.3〜40%の範囲内のものとなる。あるいは、ヘイズ値が6.3〜40%の範囲内のものとなるようにすることは当業者が適宜なし得た程度のことである。
したがって、審判請求人の主張2は採用できない。

ウ 主張3〜6について検討する。
主張3における「相違点A」、「相違点F」について、審判請求人は、目的又は効果を相違点としているが、これらは発明の構成を特定するものではないから、実質的な相違点であるとはいえない。また、「相違点B」について、本願発明1も「所定平均粒径の球状有機微粒子と、所定平均粒径のシリコーン系樹脂等の球状ケイ素系微粒子と、を組み合わせ」た場合を含有し得るものであり、このような場合が除外されていないから、請求項1の記載に基づかない主張であって、実質的な相違点であるとはいえない。「相違点C」及び「相違点D」に関する主張についても同様である。そして、「相違点E」についての判断は、上記5で述べたとおりである。
主張4〜6についても、相違点の認定及び判断は、上記及び上記5で述べたとおりである。
したがって、審判請求人の主張3〜6は採用できない。

エ 主張7について検討する。
原査定において引用した引用文献3はあくまで周知技術を示す文献として提示していたものであり、引用発明1に組み合わせる上で格別阻害要因があるとはいえず、また、仮に当該文献がなかったとしても拒絶理由は成立するものである。
したがって、審判請求人の主張7は採用できない。

オ 主張8について検討する。
審判請求人は、本願発明1のギラツキ防止効果について提示した引用文献に記載されるものと異質の効果である旨主張しているが、上記5(1)に記載したように、本願発明と同様に、フィルムにパターンが形成された板を配置してギラツキを目視観察することによりギラツキの抑制を評価する手法は、例えば特開2012−73637号公報に記載されているように周知技術であり、そのギラツキの評価値が100ppi以上のものも知られていることに鑑みて、その効果が格別なものとも異質なものであるともいえない。
したがって、審判請求人の主張8は採用できない。


第3 むすび
本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-16 
結審通知日 2022-03-22 
審決日 2022-04-26 
出願番号 P2019-123107
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 関根 洋之
下村 一石
発明の名称 防眩性ハードコートフィルム  
代理人 江森 健二  
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