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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1385795
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-26 
確定日 2022-06-16 
事件の表示 特願2019− 94612「処理装置及びその電力制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月17日出願公開、特開2019−179244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月21日に出願した特願2013−130608号の一部を平成29年7月18日に新たな特許出願とした特願2017−139280号の一部を令和1年5月20日に新たな特許出願としたものであって、令和1年8月6日に手続補正書及び上申書が提出され、令和2年6月2日付けで拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書が提出され、令和3年1月21日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、同年4月26日付けで、拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出され、令和3年11月24日付けで令和3年4月26日に提出された手続補正書が却下されると共に拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和4年1月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 令和4年1月24日に提出の手続補正書の概要
上記当審拒絶理由通知に対し、令和4年1月24日に請求人が提出した手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正することを含むものであり、その請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
人を検知する検知手段及び操作者が操作する操作部を備え、前記検知手段により人が検知されたことに基づき所定のデバイスに電力を供給する処理装置であって、
前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止し、
前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する
ことを特徴とする処理装置。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。

理由1(新規事項の追加
令和1年8月6日になされた手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(以下、それぞれ「当初明細書」、「当初特許請求の範囲」、「当初図面」といい、これらをまとめて「当初明細書等」という。)の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(1)本願の請求項1に記載された「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記検知手段により人が検知されている間に前記操作部が操作された場合、前記操作部の操作からの経過時間に基づいて前記所定のデバイスへの電力を停止し」について検討する(下線は当審で付した。以下同じ。)。
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0042】
図7は、本実施形態を示す画像形成装置の制御方法を説明するフローチャートである。本例は、省電力モード復帰シーケンス例である。なお、各ステップは、電源制御部312の図示しないサブCPUがメモリに制御プログラムをロードして実行することで実現される。
まず、画像形成装置100が省電力モードから復帰して通常モード状態にいる場合に、画像形成装置100の前に人が存在するかを、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認する(S601)。CPU部317が画像形成装置100の前に人がいると判断した場合は、人感センサ部104の状態が人がいない状態になるまで定期的にポーリングする(S601がYES)。CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は(S601がNO)、CPU部317がHDD部316に格納されている処理実行履歴情報320を確認する(S602)。処理実行履歴情報320に省電力モード復帰後からのジョブ実行履歴がない場合には(S602がNO)、CPU部317がメモリ部315に格納されている操作履歴情報321を確認する(S603)。
【0043】
操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作部の操作履歴がある場合には(S603がYES)、一時的に画像形成装置100の前から離れた(使用中)と判断する。そこで、CPU部317は予め設定された時間を計測するために、タイマ部314をリセットし、計測する時間をタイマ部314に設定した後、タイマ部314を起動させ時間計測を開始する(S604)。タイマ部314を起動させた後、画像形成装置100の前に人が存在するか(人が(操作者)戻ってきたか)を、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認する(S605)。
【0044】
CPU部317が画像形成装置100の前に人がいると判断した場合は(S605がYES)、時間計測を中止するためにCPU部317がタイマ部314をリセットする(S607)。タイマ部314のリセット後、人感センサ部104の状態が人がいない状態になるまでCPU部317が人感センサ部104の状態を定期的にポーリングする。
【0045】
CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は(S605がNO)、タイマ部314のタイマカウント値を確認し、予め設定された時間経過していなければ(S606がNO)、再度人感センサ部104の状態を確認する。予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、消費電力の少ない省電力モードへの移行させる(S608)。
【0046】
また、処理実行履歴情報320に省電力モード復帰後からのジョブ実行履歴がある場合も(S602がYES)、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる(S608)。また、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作履歴がない場合も(S603がNO)、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる(S608)。」
ここで、上記段落【0042】〜【0046】の記載からは、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作部の操作履歴がある場合には、タイマ部314をリセットし、計測する時間をタイマ部314に設定した後、タイマ部314を起動させ時間計測を開始し、予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、消費電力の少ない省電力モードへの移行させる、という構成については記載されているものの、「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記検知手段により人が検知されている間に前記操作部が操作された場合、前記操作部の操作からの経過時間に基づいて前記所定のデバイスへの電力を停止」する構成は記載されていない。
また、当初明細書等のその他の箇所を参酌しても、当該構成は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

(2)本願の請求項1に記載された「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記検知手段により人が検知されなくなったことに基づき前記所定のデバイスへの電力を停止する」について検討する。
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0042】
図7は、本実施形態を示す画像形成装置の制御方法を説明するフローチャートである。本例は、省電力モード復帰シーケンス例である。なお、各ステップは、電源制御部312の図示しないサブCPUがメモリに制御プログラムをロードして実行することで実現される。
まず、画像形成装置100が省電力モードから復帰して通常モード状態にいる場合に、画像形成装置100の前に人が存在するかを、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認する(S601)。CPU部317が画像形成装置100の前に人がいると判断した場合は、人感センサ部104の状態が人がいない状態になるまで定期的にポーリングする(S601がYES)。CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は(S601がNO)、CPU部317がHDD部316に格納されている処理実行履歴情報320を確認する(S602)。処理実行履歴情報320に省電力モード復帰後からのジョブ実行履歴がない場合には(S602がNO)、CPU部317がメモリ部315に格納されている操作履歴情報321を確認する(S603)。
【0043】
操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作部の操作履歴がある場合には(S603がYES)、一時的に画像形成装置100の前から離れた(使用中)と判断する。そこで、CPU部317は予め設定された時間を計測するために、タイマ部314をリセットし、計測する時間をタイマ部314に設定した後、タイマ部314を起動させ時間計測を開始する(S604)。タイマ部314を起動させた後、画像形成装置100の前に人が存在するか(人が(操作者)戻ってきたか)を、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認する(S605)。
【0044】
CPU部317が画像形成装置100の前に人がいると判断した場合は(S605がYES)、時間計測を中止するためにCPU部317がタイマ部314をリセットする(S607)。タイマ部314のリセット後、人感センサ部104の状態が人がいない状態になるまでCPU部317が人感センサ部104の状態を定期的にポーリングする。
【0045】
CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は(S605がNO)、タイマ部314のタイマカウント値を確認し、予め設定された時間経過していなければ(S606がNO)、再度人感センサ部104の状態を確認する。予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、消費電力の少ない省電力モードへの移行させる(S608)。
【0046】
また、処理実行履歴情報320に省電力モード復帰後からのジョブ実行履歴がある場合も(S602がYES)、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる(S608)。また、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作履歴がない場合も(S603がNO)、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる(S608)。」
ここで、上記段落【0042】〜【0046】の記載からは、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認し、CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は、CPU部317がメモリ部315に格納されている操作履歴情報321を確認し、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作履歴がない場合、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる構成は記載されているものの、当該構成は、「画像形成装置100の前に人がいないと判断」するステップと、「省電力モードへの移行させる」ステップの間に、「操作履歴情報321を確認」するステップが介在するため、「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記検知手段により人が検知されなくなったことに基づき前記所定のデバイスへの電力を停止する」という構成が記載されているとは言えない。
また、当初明細書等のその他の箇所を参酌しても、当該構成は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

第4 当審の判断
1 本件補正事項
本件補正は、令和4年1月24日に提出された手続補正書により、請求項1の発明特定事項である「処理装置」について、本件補正前の「前記検知手段により人が検知されている間に前記操作部が操作された場合、前記操作部の操作からの経過時間に基づいて前記所定のデバイスへの電力を停止し」としていたものを「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止し」とし(以下、「本件補正事項1」という。)、請求項1の発明特定事項である「処理装置」について、本件補正前の「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記検知手段により人が検知されなくなったことに基づき前記所定のデバイスへの電力を停止する」としていたものを「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」とする(以下、「本件補正事項2」という。)ことを含むものである。

2 本件補正事項1の補正の適否(新規事項の追加の有無について)
(1)ア まず、「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成(本件補正事項1)が、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲に記載されているか否かを検討する。

イ 本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲には、以下の事項が記載されている。

(ア) 「【請求項1】
第1電力状態および前記第1電力状態より省電力の第2電力状態で動作する画像形成装置であって、
ユーザの操作を受け付ける操作手段と、
前記操作手段を用いて設定されるジョブを実行する処理手段と、
物体を検知する検知手段と、
前記検知手段が物体を検知していない状態に変化した場合、前記処理手段によるジョブ実行状態に基づいて、前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行するタイミングを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置が前記第1電力状態に移行してから前記処理手段がジョブを実行し、且つ、前記検知手段が操作者を検知していない状態に変化した場合、前記制御手段は、所定時間が経過する前に、前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置が前記第1電力状態に移行してから前記処理手段がジョブを実行せず、かつ、前記検知手段が操作者を検知していない状態に変化した場合、前記制御手段は、所定時間経過後に、前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置が前記第1電力状態に移行してから前記処理手段がジョブを実行せずかつ前記操作手段が操作されずに、前記検知手段が前記操作者を検知していない状態に変化した場合、前記制御手段は、所定時間が経過する前に前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記処理手段は、プリント手段、スキャナ手段、画像処理手段、メモリ手段、コントローラ手段を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知手段は、焦電センサである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
第1電力状態および前記第1電力状態より省電力の第2電力状態で動作する画像形成装置の制御方法であって、
ユーザの操作を受け付ける操作手段を用いて設定されるジョブを実行する処理工程と、
物体を検知する検知工程と、
前記検知工程が物体を検知していない状態に変化した場合、前記処理工程によるジョブ実行状態に基づいて、前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行するタイミングを制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。」

ウ ここで、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項3には、「前記検知手段が操作者を検知していない状態に変化した場合、前記制御手段は、所定時間経過後に、前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行させる」構成は記載されているものの、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項3には「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成が記載されているとは認められない(特に、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項3には、「人が検知されなくなった場合」ではなく、「操作者を検知していない状態に変化した場合」と記載されている点に注意されたい。)。
そして、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲のその他の記載を参酌しても、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲に「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成(本件補正事項1)が記載されているとは認められない。

エ 次に、「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成(本件補正事項1)が、本願の願書に最初に添付された明細書及び図面の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載されているか否か検討する。

オ 本願の願書に最初に添付された明細書及び図面の段落【0041】〜【0047】及び図7には、以下の事項が記載されている。

(ア) 「【0041】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、省電力モードから復帰した後に操作部を操作したことを検知する場合の省電力モード移行シーケンスについて説明する。なお、画像形成装置の構成に関しては、第1実施形態と同じであるため、説明を割愛する。
【0042】
図7は、本実施形態を示す画像形成装置の制御方法を説明するフローチャートである。本例は、省電力モード復帰シーケンス例である。なお、各ステップは、電源制御部312の図示しないサブCPUがメモリに制御プログラムをロードして実行することで実現される。
まず、画像形成装置100が省電力モードから復帰して通常モード状態にいる場合に、画像形成装置100の前に人が存在するかを、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認する(S601)。CPU部317が画像形成装置100の前に人がいると判断した場合は、人感センサ部104の状態が人がいない状態になるまで定期的にポーリングする(S601がYES)。CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は(S601がNO)、CPU部317がHDD部316に格納されている処理実行履歴情報320を確認する(S602)。処理実行履歴情報320に省電力モード復帰後からのジョブ実行履歴がない場合には(S602がNO)、CPU部317がメモリ部315に格納されている操作履歴情報321を確認する(S603)。
【0043】
操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作部の操作履歴がある場合には(S603がYES)、一時的に画像形成装置100の前から離れた(使用中)と判断する。そこで、CPU部317は予め設定された時間を計測するために、タイマ部314をリセットし、計測する時間をタイマ部314に設定した後、タイマ部314を起動させ時間計測を開始する(S604)。タイマ部314を起動させた後、画像形成装置100の前に人が存在するか(人が(操作者)戻ってきたか)を、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認する(S605)。
【0044】
CPU部317が画像形成装置100の前に人がいると判断した場合は(S605がYES)、時間計測を中止するためにCPU部317がタイマ部314をリセットする(S607)。タイマ部314のリセット後、人感センサ部104の状態が人がいない状態になるまでCPU部317が人感センサ部104の状態を定期的にポーリングする。
【0045】
CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は(S605がNO)、タイマ部314のタイマカウント値を確認し、予め設定された時間経過していなければ(S606がNO)、再度人感センサ部104の状態を確認する。予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、消費電力の少ない省電力モードへの移行させる(S608)。
【0046】
また、処理実行履歴情報320に省電力モード復帰後からのジョブ実行履歴がある場合も(S602がYES)、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる(S608)。また、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作履歴がない場合も(S603がNO)、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる(S608)。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、操作部の操作もジョブも実行していない状態でユーザが離れたことを検知した場合には、すぐに省電力モードに移行するため、無駄な電力消費を極力抑えることが可能となる。また、操作部の操作は実行しているがジョブは実行していない状態(記録紙切れで取りに行った等)で人感検出手段でユーザが離れたことを検知した場合には、一定時間通常モードを維持するため、ユーザの利便性を維持することが可能となる。」
(イ)「【図7】



カ ここで、本件補正事項1の「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止し」との構成は、検知手段により人が検知されなくなった場合以降、人が検知手段により検知されるのか否かについては何ら特定されていないのであるから、前記本件補正事項1の構成には、「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合」、以降も検知手段により人が検知されずに一定時間が経過し、「一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成と、「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合」、一定時間が経過する前に再び検知手段により人が検知された場合に「一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成を包含するものと認められる。
一方、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載された実施例は、「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合」、一定時間が経過する前に再び検知手段により人が検知された場合、(S607で)タイマ部314のリセットがかかり、省電力モード移行処理が行われなくなるため、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載された実施例として「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合」、一定時間が経過する前に再び検知手段により人が検知された場合に「一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成が記載されているとは認められない。

(2)ア また、本件補正事項1の「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止し」との構成は、「前記検知手段により人が検知されなくなった」時点を起点として、「一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成であると解し得る。

イ 一方、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載された実施例には、CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認し、CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は、CPU部317がメモリ部315に格納されている操作履歴情報321を確認し、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作履歴がある場合、タイマ部314のリセット及びスタートを行って、タイマ部314のスタートから再び人がいると判断されることなく一定時間が経過した場合、一定時間経過後に省電力モードへ移行させる構成は記載されているものの、「画像形成装置100の前に人がいないと判断」するステップと、「タイマ部314のリセット及びスタート」を行うステップの間に、「操作履歴情報321を確認」するステップが介在するため、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載された実施例として、「前記検知手段により人が検知されなくなった」時点を起点として、「一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成が記載されているとはいえない。

(3)そして、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)のその他の記載を参酌しても、本願の当初明細書等に「前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」する構成(本件補正事項1)が記載されているとは認められない。
また、当該記載の構成は、当初明細書等から自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件補正事項1は、新たな技術的事項を導入するものである。

3 本件補正事項2の補正の適否(新規事項の有無について)

(1)ア まず、「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」構成(本件補正事項2)が、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲に記載されているか否かを検討する。

イ 本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲には、上記「第4 2(1)イ」で摘記した事項が記載されている。

ウ ここで、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項4には、「前記検知手段が前記操作者を検知していない状態に変化した場合、前記制御手段は、所定時間が経過する前に前記画像形成装置を前記第2電力状態に移行させる」構成は記載されているものの、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項4には「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」構成が記載されているとは認められない(特に、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項4には、「人が検知されなくなった場合」ではなく、「操作者を検知していない状態に変化した場合」と記載されている点に注意されたい。)。

エ そして、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲のその他の記載を参酌しても、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲に「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」する構成(本件補正事項2)が記載されているとは認められない。

(2)ア 次に、「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」構成(本件補正事項2)が、本願の願書に最初に添付された明細書又は図面の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載されているか否か検討する。

イ 本願の願書に最初に添付された明細書又は図面の段落【0041】〜【0047】及び図7には、上記「第4 2(1)オ」で摘記した事項が記載されている。

ウ ここで、本件補正事項2の「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」とは、「前記検知手段により人が検知されなくなった」時点を起点として、「前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」ことを意味していると解し得る。
一方、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載された実施例は、「画像形成装置100の前に人がいないと判断」するステップと、省電力モードへ移行させるステップの間に、「操作履歴情報321を確認」するステップが介在するため、本願の願書に最初に添付された明細書及び図面の段落【0041】〜【0047】及び図7に記載された実施例として「前記検知手段により人が検知されなくなった」時点を起点として、「前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」する構成が記載されているとはいえない。

(3)そして、本願の当初明細書等のその他の記載を参酌しても、本願の当初明細書等に「前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」構成(本件補正事項2)が記載されているとは認められない。
また、当該記載の構成は、当初明細書等から自明な事項でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件補正事項2は、新たな技術的事項を導入するものである。

4 まとめ
したがって、本件補正事項1及び本件補正事項2を含む本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

5 審判請求人の主張
審判請求人は、令和4年1月24日に提出された意見書で、
「(1)請求項1について
ア.補正前の請求項1の「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記検知手段により人が検知されている間に前記操作部が操作された場合、前記操作部の操作からの経過時間に基づいて前記所定のデバイスへの電力を停止し」(下線は、令和3年11月24日の拒絶理由通知書に付してあるとおり。)については、今回の補正により「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作を受け付けた後、前記検知手段により人が検知されなくなった場合、一定時間が経過した後に前記所定のデバイスへの電力供給を停止」といたしました。
イ.この補正の根拠は、例えば、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作部の操作履歴があり(S603がYES)、図7の人感センサにより人がいないことが検知される場合(S601がNO)、タイマ部314をリセットし、計測する時間をタイマ部314に設定した後、タイマ部314を起動させ時間計測を開始し、人感センサにより人がいない状態(S605がNO)で予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行(S608)し、消費電力の少ない省電力モードへの移行させる(段落〔0042〕〜〔0046〕)の記載に基づきます。
ウ.令和3年11月24日の拒絶理由通知書にて、審判長殿は、「操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作部の操作履歴がある場合には、タイマ部314をリセットし、計測する時間をタイマ部314に設定した後、タイマ部314を起動させ時間計測を開始し、予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、消費電力の少ない省電力モードへの移行させる、という構成については記載されているものの、「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記検知手段により人が検知されている間に前記操作部が操作された場合、前記操作部の操作からの経過時間に基づいて前記所定のデバイスへの電力を停止」する構成は記載されていない。」とご指摘されました。
エ.本発明は、段落〔0042〕〜〔0043〕に記載されているようにS603では操作履歴情報321を確認し、操作履歴がある場合には、維持的に画像形成装置100の前から離れた(使用中)と判断して、予め設定された時間を計測するために、タイマ部314をリセットし時間計測を開始(S604)するものです。これにより、予め設定された時間経過した場合(S606がYES)は、CPU部317が省電力モード移行処理を実行(S608)し、消費電力の少ない省電力モードへ移行します。本記載および審判長のご指摘を踏まえまして上記のとおり補正を行い明細書に記載されたとおりのものといたしました。
オ.次に、補正前の請求項1の「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記検知手段により人が検知されなくなったことに基づき前記所定のデバイスへの電力を停止する」(下線は、令和3年11月24日の拒絶理由通知書に付してあるとおり。)については、今回の補正により「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記一定時間が経過する前に前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」といたしました。
カ.補正の根拠は、例えば、図7の「画像形成装置100の前に人がいないと判断」するステップ(S601)と、「操作履歴情報321を確認」するステップ(S603)を経て、操作履歴がない場合(S603がNO)に、「省電力モードへの移行させる」ステップ(S608)を実行していることに基づいています。
キ.令和3年11月24日の拒絶理由通知書にて、審判長殿は、「CPU部317が電源制御部312を介して人感センサ部104の状態を確認し、CPU部317が画像形成装置100の前に人がいないと判断した場合は、CPU部317がメモリ部315に格納されている操作履歴情報321を確認し、操作履歴情報321に省電力モード復帰後からの操作履歴がない場合、CPU部317が省電力モード移行処理を実行し、省電力モードへの移行させる構成は記載されているものの、当該構成は、「画像形成装置100の前に人がいないと判断」するステップと、「省電力モードへの移行させる」ステップの間に、「操作履歴情報321を確認」するステップが介在するため、「前記検知手段により人が検知されたことに基づき前記所定のデバイスに電力が供給されて前記操作部が操作されることなく前記検知手段により人が検知されなくなった場合、前記検知手段により人が検知されなくなったことに基づき前記所定のデバイスへの電力を停止する」という構成が記載されているとは言えない。」とご指摘されました。
ク.上記ご指摘のとおり、「検知手段により人が検知されなくなったことに基づき前記所定のデバイスへの電力を停止する」ことについては、直接的に記載されているとまではいえないと考え、タイマのスタート(S604)から一定時間の経過(S606)のフローを通らない、すなわち「一定時間が経過する前に」「前記所定のデバイスへの電力供給を停止する」と補正しています。
ケ.以上の次第で、補正の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなったと思料します。」
と主張する。
しかし、上述のように、審判請求人が令和4年1月24日に提出された意見書において補正の根拠とする箇所を参酌しても、本件補正事項1及び本件補正事項2の構成は当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等から自明でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、上記審判請求人の主張は採用できない。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-30 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-26 
出願番号 P2019-094612
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G03G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 藤田 年彦
佐々木 創太郎
発明の名称 処理装置及びその電力制御方法  
代理人 特許業務法人ひのき国際特許事務所  

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