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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1385800
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-27 
確定日 2022-06-16 
事件の表示 特願2016−221708「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月24日出願公開、特開2018− 81141〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月14日を出願日とする出願であって、令和2年7月1日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月21日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において同年11月17日付けで拒絶理由が通知され、令和4年1月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和4年1月24日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定され、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
トナー画像が形成される感光体ドラムを有した感光体装置と、
前記感光体ドラムの周面に沿って上下方向に並び、前記感光体ドラムと対向する第1の現像ローラ及び第2の現像ローラの2本の前記現像ローラを有した現像装置と、
2本の前記現像ローラが前記感光体ドラムに押圧される第1の方向に第1の力で前記現像装置を押す第1の押圧力付与手段と、
第1の力と作用方向が交差し、重力方向と対向した上方向または重力方向と対向した方向に対して傾いた斜め上方向である第2の方向に第2の力で前記現像装置を押す第2の押圧力付与手段を備え、
前記現像装置は、前記第1の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第1の突き当て部材と、前記第2の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第2の突き当て部材とを備え、
前記感光体装置は、一対の前記第1の突き当て部材が突き当てられる一対の第1の被突き当て部材と、一対の前記第2の突き当て部材が突き当てられる一対の第2の被突き当て部材とを備え、
第1の力と作用方向が交差した第2の力で前記現像装置を押すことで、一対の前記第1の突き当て部材を、一対の前記第1の被突き当て部材にそれぞれ突き当て、一対の前記第2の突き当て部材を、一対の前記第2の被突き当て部材にそれぞれ突き当てるために必要な、前記第1の押圧力付与手段による第1の力を、第2の力を付与しない場合と比較して小さくする
ことを特徴とする画像形成装置。」

第3 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審において令和3年11月17日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は以下の通りである。

理由1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が、請求項1乃至12について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 。

理由2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項1乃至12の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.当審拒絶理由の判断
(1)当審拒絶理由の理由1(実施可能要件)について
ア.本願発明には、「第1の力と作用方向が交差した第2の力で前記現像装置を押すことで、一対の前記第1の突き当て部材を、一対の前記第1の被突き当て部材にそれぞれ突き当て、一対の前記第2の突き当て部材を、一対の前記第2の被突き当て部材にそれぞれ突き当てるために必要な、前記第1の押圧力付与手段による第1の力を、第2の力を付与しない場合と比較して小さくする」と記載されている。

イ.一方、上記「第1の力と作用方向が交差した第2の力で前記現像装置を押すことで、一対の前記第1の突き当て部材を、一対の前記第1の被突き当て部材にそれぞれ突き当て、一対の前記第2の突き当て部材を、一対の前記第2の被突き当て部材にそれぞれ突き当てるために必要な、前記第1の押圧力付与手段による第1の力を、第2の力を付与しない場合と比較して小さくする」に関して、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、以下の通り記載されている。
「【0059】
現像装置14は、載置部材148aに載置されて画像形成装置1Aに取り付けられることで、現像装置14の自重で、バネ148bが圧縮した状態となる。これにより、現像装置14は、第2の押圧力付与部148のバネ148bにより、第2の方向に第2の力Pw2で押圧される。
【0060】
第2の力Pw2は、作用方向が重力方向と対向する。これにより、現像装置14は、第2の押圧力付与部148により第2の方向に第2の力Pw2で押圧されることで、重量が軽減される。
【0061】
従って、2本の現像ローラ141a、141bのそれぞれ両側に設けた合計で4か所の突き当て部材146a、146bを、それぞれ対向する被突き当て部材122a、122bに突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできる。
【0062】
突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるための第1の力が強くなると、現像ローラ141a、141b及び感光体ドラム12が変形する可能性がある。これに対し、第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできることで、第1の力Pw1による負荷の増加を抑制しつつ、2本の現像ローラ141a、141bと感光体ドラム12の平行度を確保できる。」

ウ.ここで、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0059】〜【0062】の記載からは、第2の力で現像装置を押すことで、現像装置の重量が軽減され、2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできることが記載されていると言えるが、なぜ、第2の力で現像装置を押すことで、現像装置の重量が軽減されると、2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできるのか(どのようなメカニズムにより、第2の力で現像装置を押すことで、現像装置の重量が軽減されると、2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできるのか)が、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の他の記載や、技術常識等を考慮しても不明であり、感光体ドラムや現像ローラの位置関係や、第1の力Pw1及び第2の力Pw2を付与する位置・方向等の装置構成をどのようにすれば、「第1の力と作用方向が交差した第2の力で前記現像装置を押すことで、一対の前記第1の突き当て部材を、一対の前記第1の被突き当て部材にそれぞれ突き当て、一対の前記第2の突き当て部材を、一対の前記第2の被突き当て部材にそれぞれ突き当てるために必要な、前記第1の押圧力付与手段による第1の力を、第2の力を付与しない場合と比較して小さくする」ことができるか不明であるため、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。

エ.請求人の主張について
(ア)請求人は、令和4年1月24日付け意見書において、以下の通り主張している。

a.「本願発明は、トナー画像が形成される感光体ドラムを有した感光体装置と、感光体ドラムの周面に沿って上下方向に並び、感光体ドラムと対向する第1の現像ローラ及び第2の現像ローラの2本の現像ローラを有した現像装置とを備え、現像装置は、第1の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第1の突き当て部材と、第2の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第2の突き当て部材とを備え、感光体装置は、一対の第1の突き当て部材が突き当てられる一対の第1の被突き当て部材と、一対の第2の突き当て部材が突き当てられる一対の第2の被突き当て部材とを備えた構成です。
感光体装置と現像装置が独立した構成要素である画像形成装置において、計4箇所の突き当て部材と被突き当て部材が突き当てられることで、2本の現像ローラと、感光体ドラムの軸線が合うように、感光体装置と現像装置は各部品の精度、組み立て精度が実現されています。
一方、感光体装置と現像装置が独立した構成要素であるため、2本の現像ローラの両端部の突き当て部材と、感光体ドラム側に設置された被突き当て部材との間では機械的な誤差を持ちます。
このような誤差を持った計4箇所の突き当て部材と被突き当て部材は、現像装置が感光体装置に対して水平方向(第1の方向)に移動しただけでは、2か所乃至3か所でしか突き当らない可能性があります。
誤差を持った計4箇所の突き当て部材と被突き当て部材の全てを突き当てられるようにするためには、感光体ドラムの周方向に沿って現像装置を上方向(第2の方向)に持ち上げ、2本の現像ローラと、感光体ドラムの軸線を合わせる必要があります。
しかし、2本の現像ローラを感光体ドラムに対して第1の方向に押圧する第1の力だけで、計4箇所の突き当て部材と被突き当て部材の全てを突き当てるためには、第1の力だけで、2本の現像ローラを感光体ドラムに押圧する力と、現像装置を持ち上げる力を発生させる必要があります。
これに対し、第1の力と作用方向が交差した第2の力で現像装置を持ち上げ、現像装置の重量の影響を軽減することで、第1の力で現像装置を持ち上げる力を発生させることなく、感光体ドラムの周方向に沿って現像装置を第2の方向に持ち上げ、2本の現像ローラと、感光体ドラムの軸線を合わせることができます。
これにより、「2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできる」ための構成が、請求項1に記載されていると考えます。
また、作用方向が重力方向と対向する第2の力で現像装置を押すことで、現像装置の重量が軽減されると、2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較してなぜ小さくできるかの説明がなされていると考えます。
従って、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとは言え、実施可能要件を満たすと考えます。
また、請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されており、請求項1に係る発明は、サポート要件を満たすと考えます。」

(イ)上記「a.」の主張について検討すると、「誤差を持った計4箇所の突き当て部材と被突き当て部材の全てを突き当てられるようにするためには、感光体ドラムの周方向に沿って現像装置を上方向(第2の方向)に持ち上げ、2本の現像ローラと、感光体ドラムの軸線を合わせる必要があ」る必要があることは理解できるとしても、どのような作用機序により、第1の力により現像装置を上方向(第2の方向)に持ち上げる力を発生させるようにした場合に、「一対の前記第1の突き当て部材を、一対の前記第1の被突き当て部材にそれぞれ突き当て、一対の前記第2の突き当て部材を、一対の前記第2の被突き当て部材にそれぞれ突き当てるために必要な、前記第1の押圧力付与手段による第1の力」が大きくなるのかが不明であり、「第1の力と作用方向が交差した第2の力で前記現像装置を押すことで、一対の前記第1の突き当て部材を、一対の前記第1の被突き当て部材にそれぞれ突き当て、一対の前記第2の突き当て部材を、一対の前記第2の被突き当て部材にそれぞれ突き当てるために必要な、前記第1の押圧力付与手段による第1の力を、第2の力を付与しない場合と比較して小さくする」ことができるか不明である。

(ウ)以上のとおりであるから、上記請求人の主張は採用することができない。

オ.してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)当審拒絶理由の理由2(サポート要件)について
ア.願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】〜【0009】には、以下のとおり、記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の画像形成装置では、現像装置が回転する方向の力が生じると、現像装置が回転し突き当てがない現像ローラの位置がずれる。特許文献2に記載の画像形成装置では、現像装置に現像ローラを押圧する構成が必要で、構造が複雑になる。更に、特許文献3に記載の画像形成装置では、現像装置を感光体ドラム方向に押圧する力を弱くすると、感光体ドラムに対する現像ローラの位置合わせが困難になる。
【0008】
従来の画像形成装置では、現像装置を感光体ドラム方向に押圧する力を強くすることで、感光体ドラムと現像ローラが所定の位置関係を確保することができる。しかし、感光体ドラムに現像ローラが押圧される力が強くなることで、感光体ドラム及び現像ローラが変形する可能性があった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、現像装置を感光体ドラム方向に押圧する力を強くすることなく、感光体ドラムと現像ローラの位置関係を確保できるようにした画像形成装置を提供することを目的とする。」

イ.してみると、本願発明が解決しようとする課題は、「現像装置を感光体ドラム方向に押圧する力を強くすることなく、感光体ドラムと現像ローラの位置関係を確保できるようにした画像形成装置を提供すること」であると認められる。

ウ.一方、本願発明の記載では、以下の理由から、上記課題を解決するための構成が記載されているとは認められない。
本願発明には、「2本の前記現像ローラが前記感光体ドラムに押圧される第1の方向に第1の力で前記現像装置を押す第1の押圧力付与手段と、第1の力と作用方向が交差し、重力方向と対向した上方向または重力方向と対向した方向に対して傾いた斜め上方向である第2の方向に第2の力で前記現像装置を押す第2の押圧力付与手段を備え、前記現像装置は、前記第1の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第1の突き当て部材と、前記第2の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第2の突き当て部材とを備え、前記感光体装置は、一対の前記第1の突き当て部材が突き当てられる一対の第1の被突き当て部材と、一対の前記第2の突き当て部材が突き当てられる一対の第2の被突き当て部材とを備え」るという構成は記載されているものの、「第3 2(1)」でも指摘した通り、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0059】〜【0062】等の記載や技術常識を参酌しても、なぜ、第2の力で現像装置を押すことで、現像装置の重量が軽減されると、2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできるのか(どのようなメカニズムにより、第2の力で現像装置を押すことで、現像装置の重量が軽減されると、2本の現像ローラの突き当て部材を被突き当て部材に突き当てるために必要な第1の力Pw1を、第2の力Pw2を付与しない場合と比較して小さくできるのか)が不明であるため、「2本の前記現像ローラが前記感光体ドラムに押圧される第1の方向に第1の力で前記現像装置を押す第1の押圧力付与手段と、第1の力と作用方向が交差し、重力方向と対向した上方向または重力方向と対向した方向に対して傾いた斜め上方向である第2の方向に第2の力で前記現像装置を押す第2の押圧力付与手段を備え、前記現像装置は、前記第1の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第1の突き当て部材と、前記第2の現像ローラの軸方向の両側に設けられる一対の第2の突き当て部材とを備え、前記感光体装置は、一対の前記第1の突き当て部材が突き当てられる一対の第1の被突き当て部材と、一対の前記第2の突き当て部材が突き当てられる一対の第2の被突き当て部材とを備え」るという構成により、上記課題が解決されるとは認められない。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本願発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。

エ.また、令和4年1月24日付け意見書における請求人の主張も、上記「第3 2(1)エ.」のとおり、採用することができない。

オ.してみると、本願発明は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、その余について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-29 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-26 
出願番号 P2016-221708
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G03G)
P 1 8・ 537- WZ (G03G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 藤田 年彦
佐々木 創太郎
発明の名称 画像形成装置  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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