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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1385811
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-06 
確定日 2022-07-04 
事件の表示 特願2019−544962「マップインタラクション、検索、および表示の方法、デバイス、システム、サーバ、および端末」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月11日国際公開、WO2018/082475、令和 1年12月19日国内公表、特表2019−537178、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2017年(平成29年)10月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年11月7日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年 7月 5日 :手続補正書の提出
令和 2年 7月 3日 :手続補正書の提出
令和 2年 8月24日付け:拒絶理由通知書
令和 2年11月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年12月18日付け:拒絶査定
令和 3年 5月 6日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 4年 1月 6日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 4年 4月11日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年12月18日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1〜16に係る発明は、以下の引用文献A,Bに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:米国特許出願公開第2010/94548号明細書
引用文献B:特開2011−192123号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年1月6日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 理由1(明確性
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1に「前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し」と記載されているとともに、「前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリアの物理的位置を表し」と記載されているが、両記載は、「・・・内」との表記の有無が異なっていることから、両記載の関係が不明である。また、そのため、「物理的エリア」が何のエリアであるのか、整合的に理解できない。
請求項1に「前記選択された距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す」と記載されているが、「前記選択された距離」は、何と何との「間の物理的距離」を「表す」のか不明である。
請求項1に「前記第1の位置は、前記形状の中心であり」と記載されているが、請求項1のその余の記載によれば、「形状」は「前記物理的エリア内の形状」であるから「第1の位置」と「形状の中心」とは対応する関係にはあるものの、前者は後者そのものではあり得ないから、上記記載は何を意味するのか不明である。
請求項1に「前記距離決定点は、前記形状の頂点に位置する」と記載されているが、「距離決定点」が「形状の頂点」そのものに位置することはあり得ないから、上記記載は何を意味するのか不明である。
請求項1に「各ターゲットオブジェクトは、前記区分された範囲によって表される前記物理的エリアのサブセット内の物理的位置に関連付けられている」と記載されているが、上記のとおり「物理的エリア」が何のエリアであるのかが理解できないため、「前記物理的エリアのサブセット」が、どのような「物理的エリア」に関するどのような「サブセット」であるのかも理解できない。
請求項7,13にもそれぞれ請求項1と同様の記載がある。
よって、請求項1〜14に係る発明は明確でない。


2 理由2(進歩性
この出願の請求項1〜14に係る発明は、以下の引用文献1〜7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許出願公開第2010/94548号明細書(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献2:特開2004−177634号公報
引用文献3:特開2011−34151号公報
引用文献4:特開2014−164316号公報
引用文献5:特開2009−15388号公報
引用文献6:特開平7−274150号公報
引用文献7:特開2011−192123号公報(拒絶査定時の引用文献B)

第4 本願発明
本願請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は、令和4年4月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される発明であって、それらのうち、本願発明1,6,11は以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。

「【請求項1】
マップインタラクションのためのコンピュータにより実施される方法であって、
視覚的マップインターフェースから、マップ検索操作を特定するユーザ入力を受け取るステップであって、
前記マップ検索操作は、第1の位置、検索基準、距離決定点、およびドラッグ操作の方向を含み、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表し、
前記ドラッグ操作の前記方向は、前記物理的エリア内の物理的方向を表し、
前記マップ検索操作を特定する前記ユーザ入力を受け取るステップは、
タッチスクリーンディスプレイ上に表示される前記視覚的マップインターフェースから、前記第1の位置を表すタッチ入力を受け取るステップと、
前記タッチ入力がタップアンドホールドであることに応答して、前記視覚的マップインターフェース上に、前記距離決定点を特定することを促すプロンプトを表示するステップと
をさらに含む、ステップと、
前記第1の位置と前記距離決定点との間の距離を決定するステップであって、
前記距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す、ステップと、
前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて、区分された範囲を決定するステップであって、
前記区分された範囲は、前記物理的エリア内の形状を表し、
前記形状は、所定の角度を有する扇形であり、前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて定義され、
前記第1の位置は、前記扇形の始点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し、
前記距離決定点は、前記扇形の円弧上の点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する、ステップと
前記区分された範囲内の、前記検索基準に照合する1つまたは複数のターゲットオブジェクトを識別するステップと、
前記視覚的マップインターフェースにおいて、検索結果セットとして、前記区分された範囲内の前記1つまたは複数のターゲットオブジェクトを表示するステップであって、
各ターゲットオブジェクトは、前記区分された範囲によって表される前記物理的エリアのサブセット内の物理的位置に関連付けられている、ステップと
を含む方法。」

「【請求項6】
コンピュータシステムによって実行可能な1つまたは複数の命令を記憶した非一時的コンピュータ可読記録媒体であって、前記命令は、前記コンピュータシステムに、
視覚的マップインターフェースから、マップ検索操作を特定するユーザ入力を受け取るステップであって、
前記マップ検索操作は、第1の位置、検索基準、距離決定点、およびドラッグ操作の方向を含み、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表し、
前記ドラッグ操作の前記方向は、前記物理的エリア内の物理的方向を表し、
前記マップ検索操作を特定する前記ユーザ入力を受け取るステップは、
タッチスクリーンディスプレイ上に表示される前記視覚的マップインターフェースから、前記第1の位置を表すタッチ入力を受け取るステップと、
前記タッチ入力がタップアンドホールドであることに応答して、前記視覚的マップインターフェース上に、前記距離決定点を特定することを促すプロンプトを表示するステップと
をさらに含む、ステップと、
前記第1の位置と前記距離決定点との間の距離を決定するステップであって、
前記距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す、ステップと、
前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて、区分された範囲を決定するステップであって、
前記区分された範囲は、前記物理的エリア内の形状を表し、
前記形状は、所定の角度を有する扇形であり、前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて定義され、
前記第1の位置は、前記扇形の始点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し、
前記距離決定点は、前記扇形の円弧上の点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する、ステップと
前記区分された範囲内の、前記検索基準に照合する1つまたは複数のターゲットオブジェクトを識別するステップと、
前記視覚的マップインターフェースにおいて、検索結果セットとして、前記区分された範囲内の前記1つまたは複数のターゲットオブジェクトを表示するステップであって、
各ターゲットオブジェクトは、前記区分された範囲によって表される前記物理的エリアのサブセット内の物理的位置に関連付けられている、ステップと
を含む動作を実行させる、非一時的コンピュータ可読記録媒体。」

「【請求項11】
コンピュータにより実施されるシステムであって、
1つまたは複数のコンピュータと、
前記1つまたは複数のコンピュータに動作可能に接続され、かつ1つまたは複数の命令を記憶した非一時的マシン可読記録媒体を備えた1つまたは複数のコンピュータメモリデバイスと
を備え、
前記1つまたは複数の命令は、前記1つまたは複数のコンピュータによって実行されると、前記1つまたは複数のコンピュータに、
視覚的マップインターフェースから、マップ検索操作を特定するユーザ入力を受け取るステップであって、
前記マップ検索操作は、第1の位置、検索基準、距離決定点、およびドラッグ操作の方向を含み、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表し、
前記ドラッグ操作の前記方向は、前記物理的エリア内の物理的方向を表し、
前記マップ検索操作を特定する前記ユーザ入力を受け取るステップは、
タッチスクリーンディスプレイ上に表示される前記視覚的マップインターフェースから、前記第1の位置を表すタッチ入力を受け取るステップと、
前記タッチ入力がタップアンドホールドであることに応答して、前記視覚的マップインターフェース上に、前記距離決定点を特定することを促すプロンプトを表示するステップと
をさらに含む、ステップと、
前記第1の位置と前記距離決定点との間の距離を決定するステップであって、
前記距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す、ステップと、
前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて、区分された範囲を決定するステップであって、
前記区分された範囲は、前記物理的エリア内の形状を表し、
前記形状は、所定の角度を有する扇形であり、前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて定義され、
前記第1の位置は、前記扇形の始点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し、
前記距離決定点は、前記扇形の円弧上の点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する、ステップと
前記区分された範囲内の、前記検索基準に照合する1つまたは複数のターゲットオブジェクトを識別するステップと、
前記視覚的マップインターフェースにおいて、検索結果セットとして、前記区分された範囲内の前記1つまたは複数のターゲットオブジェクトを表示するステップであって、
各ターゲットオブジェクトは、前記区分された範囲によって表される前記物理的エリアのサブセット内の物理的位置に関連付けられている、ステップと
を含む動作を実行させる、システム。」

なお、本願発明2〜5は本願発明1を、本願発明7〜10は本願発明6を、本願発明12は本願発明11を、それぞれ減縮した発明である。

第5 当審拒絶理由の理由1について
令和4年4月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載について、次のことがいえる。
「前記物理的エリアの物理的位置」との記載が「前記物理的エリア内の物理的位置」との記載に変更されたことにより、この記載が「物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置」との記載と対応している関係が明確なものとなり、「物理的エリア」が、「前記第1の位置と前記距離決定点と」が表す「物理的位置」を含むエリアであることが明確なものとなった。
「前記第1の位置と前記距離決定点との間の距離」について、「前記距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す」と記載されているものとなり、視覚的マップインターフェース上の2点間の距離が、各点によって表される物理的位置の間の物理的距離を表す[W1]ものであることが明確なものとなった。
「前記第1の位置は、前記扇形の始点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し」との記載及び「前記距離決定点は、前記扇形の円弧上の点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する」との記載は、「第1の位置」及び「距離決定点」がいずれも「視覚的マップインターフェース上の点」であることが明確なものとなった。
以上のことは、請求項6,11の記載についても同様である。
よって、当審拒絶理由の理由1は解消した。

第6 引用文献の記載、引用発明
1 引用文献1の記載
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。

「[0024]A multiple listing service (MLS) system may include a user interface provided in accordance with the invention herein, which may be displayed across a network such as the Internet. For example, as shown in FIG. 1, an implementation may include a client computer comprising a video display with at least one display page comprising data. The data may include real property data, which may include data relating to real estate listings, other multiple listing service data, or so forth.
[0025]A user interface of an MLS system may be shown on a video display. Video displays may include devices upon which information may be displayed in a manner perceptible to a user, such as, for example, a computer monitor, cathode ray tube, liquid crystal display, light emitting diode display, touchpad or touchscreen display, and/or other means known in the art for emitting a visually perceptible output. Video displays may be electronically connected to a client computer according to hardware and software known in the art.」
(当審訳: [0024]マルティプルリスティングサービス(MLS)システムは、本明細書では、本発明により提供されるユーザインターフェースは、インターネットのようなネットワークを介して表示することを含むことができる。例えば、図1に示すように、一実施例は、データを含む少なくとも1つのディスプレイページを有するビデオディスプレイを有するクライアントコンピュータを含むことができる。データは、不動産物件データ、不動産リスティング、多数のリスティングサービスデータなどに関するデータを含むことができる。
[0025]MLSシステムのユーザインターフェースは、ビデオディスプレイ上に表示することができる。ビデオ表示装置は、情報をユーザに、たとえば、コンピュータモニタ、陰極線管、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、タッチパッド又はタッチスクリーンのような、ディスプレイ及び/又は視覚的に知覚可能な出力を出すための当技術分野で公知の他の手段を認識できる方法で表示することができる装置を含むことができる。ビデオ・ディスプレイは、当技術分野で知られているハードウェアおよびソフトウェアのクライアントコンピュータに電子的に接続されてもよい。)

「[0076]FIG. 6 shows a user interface with a search entry interface and a geographic map with a circular destination search area, in accordance with an embodiment of the invention. The circular destination search area may be formed using a radius tool. A circular destination search area may be displayed with a boundary and/or shading to indicate the area covered by the destination search area. The circular destination search area may also include a radius marking which may indicate the radius of the area.
[0077]An MLS system may include a radius tool. This may enable a user to select a shape such a circle and specify the radius. The radius may be the distance from center. For example, a user may select a radius and select the center by entering coordinates or by clicking on a location, which may give a user a custom circle, as illustrated below. In some embodiments, the radius tool may be limited to circles. In other embodiments, a user may be able to select a shape, such as a square, triangle, hexagon, octagon, or other polygon, and specify the radius and location.
[0078]In some implementations, the radius of the shape may be visible on the user interface. In other implementations, the location of the center of the shape may also be visible or indicated on the map. In some cases, the radius of the shape may be visible in distance units, such as miles or kilometers, while a user is determining the size of the shape (i.e. dragging the shape) and may or may not still be visible once the size is determined (i.e. the user releases the shape). In some instances, a user may enter the location of the center of the shape and/or the radius, which may cause the shape to be visible. The user may adjust the shape by modifying the values relating to the shape location and/or radius, or by clicking and dragging the shape.
[0079]FIG. 7 illustrates another example of a user interface with a search entry interface and a circular destination search area. For any of the user interfaces of a real property listing tool displaying a geographic map and/or search entry interface, may include a status index. The status index may show examples of various real property statuses, including but not limited to: active; pending with release, show; pending, show; pending, no show; sold; expired; cancelled; or withdrawn.
[0080]FIG. 8 shows a graphical user interface comprising a destination list, and a geographic map with destination indicators corresponding to the destinations listed. The graphical user interface may display the map search results, after a destination search area and/or selection criteria have been selected. The graphical user interface showing search results may include a destination list with at least two real property listing destinations and a geographic map displaying a destination search area. The geographic map may include at least one destination indicator within the destination search area corresponding to the location of at least one real property listing destination on the destination list.
[0081]A user may be able to search within selected areas for listing results. For example, a user may be able to search within a circle with a given radius, and the results within the circle may be displayed. When searching, a user may be able to combine spatial and non-spatial criteria, as previously discussed. For example, a user may include spatial data such as a selected area. In one embodiment, the selected area may be a destination search area that may be defined by a circle, polygon, or custom shape. Such destination search areas may be formed of a continuous shape or one or more discontinuous shapes. The selected areas may also be inside or outside spatial search boundaries.
[0082]The user may also include non-spatial criteria which may include information about the listing such as desired square footage, lot square footage, number of bedrooms, number of bathrooms, property status, property type, price range, list/sale date, etc. For instance, a user may be searching for a single family residential house with four bedrooms and two bathrooms within a price range from $200,000 to $500,000 within a selected circle of particular radius.
[0083]Conducting a search may direct a user to a map results page, which may show the selected shape with flags indicating the positions of the listings found within the area. For example, as shown in FIG. 8, a search may yield 18 results that fall within the desired area and numbered flags may appear on a map to show the location of the results, while a corresponding list on the side may show the addresses of the results. The corresponding list may include numbered flags that correspond to the numbered flags on the map. Such flags may be color-coded to represent different statuses of properties, whether they are active, sold, etc. Such statuses may be specified during a search.」
(当審訳: [0076]図6は、本発明の一実施形態に従った、検索入力インターフェース及び円形の目的地検索領域を用いた地理的マップを有するユーザインターフェースを示す。円形の目的地検索領域は半径ツールを用いて形成することができる。円形の目的地検索領域は、目的地検索領域によってカバーされた領域を示すための境界及び/又は陰影を付けて表示されてもよい。目的地検索領域は、領域の半径を示すことができる半径マーキングを含んでいてもよい。
[0077]MLSシステムは半径ツールを含むことができる。これにより、ユーザが、そのような円の形状を選択し、その半径を特定することを可能にする。この半径は、中心からの距離であってもよい。例えば、ユーザは、半径を選択し、また、座標を入力することによって又は位置上でクリックすることによって、中心を選択してもよく、このことは、以下で図示されるように、ユーザにカスタムの円をもたらす。いくつかの実施形態では、半径ツールは円に限定されてもよい。他の実施形態では、ユーザが、正方形、三角形、六角形、八角形、または他の多角形などの形状を選択し、また、その半径及び位置を指定することができてもよい。
[0078]いくつかの実装形態では、形状の半径は、ユーザインターフェース上で見ることができる。他の実施形態では、形状の中心の位置は、マップ上で見える又は示されていてもよい。ある場合では、形状の半径は、ユーザが形状のサイズを決定している(すなわち、形状をドラッグしている)最中に、マイル又はキロメートルのような距離単位において見えていてもよく、また、サイズが一度決定されたら(すなわち、ユーザが形状をリリースする)、まだ見えていても、見えなくなってもよい。ある場合では、ユーザは、形状の中心の位置及び/又は半径を入力してもよく、それは、形状の可視化をもたらし得る。ユーザは、形状の位置及び/又は半径に関連する数値を変更することによって、又は形状をクリック及びドラッグすることによって、形状を調整してもよい。
[0079]図7は、検索入力インターフェース及び円形の目的地検索領域を有するユーザインターフェースの別の例を示す図である。地理的マップ及び/又は検索入力インターフェースを表示する不動産リストツールのいずれのユーザインターフェースも、状態インデックスを含んでいてもよい。状態インデックスは、活性状態;リリース待ち、ショー;保留、ショー;保留、ノーショー;売約済み;期限切れ;キャンセル;撤退、を含むが、それらに限定されない、様々な不動産の状態の例を示すものであってもよい。
[0080]図8は、目的地一覧及び一覧表示された目的地に対応する目的地指示標識を含む地理的マップからなるグラフィカルユーザインターフェースを示す図である。グラフィカルユーザインターフェースは、目的地検索領域及び/又は選択基準が選択された後の、マップ検索結果を表示してもよい。検索結果を示すグラフィカルユーザインターフェースは、少なくとも2つの不動産一覧目的地及び目的地検索領域を表示する地理的マップを含み得る。地理的マップは、目的地一覧上の少なくとも1つの不動産一覧目的地の位置に対応する目的地検索領域内に、少なくとも1つの目的地指示標識を含み得る。
[0081]ユーザは、選択された領域内で結果を一覧表示するために検索することができる。例えば、ユーザは、所与の半径を有する円内で検索することができ、円内の結果が表示され得る。ユーザは、検索するとき、上述のように空間的及び非空間的な基準を組み合わせることができる。例えば、ユーザは、選択された領域のような空間的データを含めてもよい。一実施形態では、選択領域は、円、多角形、またはカスタム形状によって定義され得る目的地検索領域であってもよい。このような目的地検索領域は、連続的な形状、または一つ又は複数の不連続な形状で形成されてもよい。選択された領域はまた、空間検索境界の内部又は外部であってもよい。
[0082]ユーザはまた、所望の平方フィート数、ロット平方フィート数、ベッドルーム数、浴室数、物件の状態、物件のタイプ、価格帯、リスト/販売の日付、などのような、一覧に関する情報を含み得る、非空間的な基準を含めてもよい。例えば、ユーザは、特定の半径の選択された円内で、ベッドルーム数が4及び浴室数が2の価格帯が200,000ドルから500,000ドルの一世帯住宅について検索することができる。
[0083]検索の実行は、ユーザをマップ結果ページへと導き、それは、領域内で発見された一覧の位置を示すフラグを伴う、選択された形状を示し得る。例えば、図8に示すように、検索は、所望の領域内に収まった18個の結果をもたらし得、番号付けされたフラグが、結果の位置を示すマップ上に出現し得、一方、脇における対応する一覧が結果の住所を示し得る。対応する一覧は、マップ上の番号付けされたフラグに対応する番号付けされたフラグを含み得る。そのようなフラグは、活性状態であるか売約済みであるかなどの、不動産の異なる状態を表すため、カラーでコード化されてもよい。そのような状態は検索中に特定され得る。)

(図6)



(図8)




(2)上記(1)の記載中、段落[0076]〜[0078]は、例えば図6の円形の領域のような、「目的地検索領域」を設定することに関する記載であり、また、段落[0080]〜[0083]は、当該「目的地検索領域」を設定することによって、例えば図8の「マップ検索結果」が表示されることに関する記載であって、それらは、全体として「MLSシステム」(A multiple listing service system)における方法についての記載であるといえる。

2 引用発明
上記1(1)、(2)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「MLSシステムにおける方法であって、
円形の目的地検索領域を用いた地理的マップを有するユーザインターフェースにおいて、円形の目的地検索領域は、目的地検索領域によってカバーされた領域を示すための境界を付けて表示され、
MLSシステムは半径ツールを含み、これにより、ユーザが、そのような円の形状を選択し、その半径を特定することを可能にし、ユーザは、半径を選択し、また、位置上でクリックすることによって、中心を選択し、ユーザが、正方形、三角形、六角形、八角形、又は他の多角形などの形状を選択し、また、その半径及び位置を指定することができてもよく、
形状の半径は、ユーザが形状のサイズを決定している(すなわち、形状をドラッグしている)最中に、マイル又はキロメートルのような距離単位において見えており、
目的地に対応する目的地指示標識を含む地理的マップからなるグラフィカルユーザインターフェースは、目的地検索領域及び/又は選択基準が選択された後の、マップ検索結果を表示し、目的地検索領域を表示する地理的マップを含み、地理的マップは、目的地検索領域内に、少なくとも1つの目的地指示標識を含み、
ユーザはまた、ベッドルーム数、浴室数、価格帯などのような、一覧に関する情報を含み得る、非空間的な基準を含めてもよく、例えば、ユーザは、特定の半径の選択された円内で、ベッドルーム数が4及び浴室数が2の価格帯が200,000ドルから500,000ドルの一世帯住宅について検索することができる、
方法。」

第7 当審拒絶理由の理由2について(引用発明との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「MLSシステムにおける方法」は、コンピュータにより実施されることが明らかであり、当該方法は、「ユーザ」が「円の形状を選択」する等の操作により「マップ検索結果を表示」する、「ユーザ」とコンピュータとのマップに関する相互作用、すなわちマップインタラクションのためのものであるといえる。
したがって、引用発明の「MLSシステムにおける方法」は、後述する相違点は別として、本願発明1の
「マップインタラクションのためのコンピュータにより実施される方法」
に相当する。

(イ)引用発明は、「円形の目的地検索領域を用いた地理的マップを有するユーザインターフェースにおいて、円形の目的地検索領域は、目的地検索領域によってカバーされた領域を示すための境界を付けて表示され」、「MLSシステムは半径ツールを含み、これにより、ユーザが、そのような円の形状を選択し、その半径を特定することを可能にし、ユーザは、半径を選択し、また、位置上でクリックすることによって、中心を選択」するものである。
ここで、「位置上でクリックする」ことは、「地理的マップ」の特定の「位置上」にマウスカーソル等を位置させた状態でマウスのボタン等を「クリック」する操作であることが明らかであり、当該操作によって「選択」される「中心」の位置は、本願発明1の「第1の位置」に相当する。
また、引用発明の「形状の半径は、ユーザが形状のサイズを決定している(すなわち、形状をドラッグしている)最中に、マイル又はキロメートルのような距離単位において見えて」いるとの構成によれば、「半径を選択」することは、「地理的マップ」において「境界を付けて表示され」た「円形の目的地検索領域」の「形状」の「サイズ」を、「ドラッグ」によって変更する操作であることが明らかである。ここで一般に、ドラッグは、画面上に示されるマウスカーソル等を移動させる際の移動の始点及び終点をマウスのボタン等により確定する操作であるから、引用発明の「ドラッグ」の終了により確定される終点(以下、「ドラッグ終点」という。)は、ユーザがドラッグ終点を「中心」の位置からどの程度の距離に設定したかを、「MLSシステム」が決定する点であるということができ、本願発明1の「距離決定点」に相当する。

(ウ)上記(イ)で検討した、「クリック」による「中心」の位置の「選択」及び「ドラッグ」によるドラッグ終点の確定により、「地理的マップ」内の「形状」の位置がそれぞれ特定されるとともに、「形状」と幾何学的に相似形状の現実の物理的区画が、現実のどの場所に位置するかが特定されることが明らかである。
一方、電子地図において、ある範囲の物理的エリアを表すマップデータのセットに係る地図が画面に表示されることは、技術常識である。
そうすると、引用発明は、「中心」の位置とドラッグ終点とが、「地理的マップ」に対応する物理的エリアを表すマップデータのセット内の「形状」の位置をそれぞれ特定するものであり、また、「中心」の位置とドラッグ終点とが、「地理的マップ」に対応する物理的エリア内の、「形状」に対応する物理的区画の物理的位置を表すものであるといえる。
よって、引用発明は、本願発明1の
「前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表」す
ことに相当する構成を備えている。

(エ)引用発明の「目的地に対応する目的地指示標識を含む地理的マップからなるグラフィカルユーザインターフェース」は、「目的地検索領域及び/又は選択基準が選択された後の、マップ検索結果を表示」するものであり、また、引用発明では、「ユーザはまた、ベッドルーム数、浴室数、価格帯などのような、一覧に関する情報を含み得る、非空間的な基準を含めてもよく、例えば、ユーザは、特定の半径の選択された円内で、ベッドルーム数が4及び浴室数が2の価格帯が200,000ドルから500,000ドルの一世帯住宅について検索することができる」ものである。
ここで、「選択基準」は、例えば、「ベッドルーム数が4及び浴室数が2の価格帯が200,000ドルから500,000ドルの一世帯住宅」のような、「マップ検索結果」を得るための「非空間的な基準」であって、本願発明1の「検索基準」に相当する。

(オ)上記(イ)の「クリック」及び「ドラッグ」、並びに上記(エ)「選択基準」の「選択」は、引用発明の「MLSシステム」が受け取るユーザ入力であるということができ、それらはいずれも、「円形の目的地検索領域を用いた地理的マップを有するユーザインターフェース」から「マップ検索結果」を得る操作を特定するといえる。そして、当該操作は本願発明1の「マップ検索操作」に相当する。
また、上記「ユーザインターフェース」は「地理的マップを有する」ことから、本願発明1の「視覚的マップインターフェース」に相当する。

(カ)上記(イ)〜(オ)から、引用発明と、本願発明1の
「視覚的マップインターフェースから、マップ検索操作を特定するユーザ入力を受け取るステップであって、
前記マップ検索操作は、第1の位置、検索基準、距離決定点、およびドラッグ操作の方向を含み、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表し、
前記ドラッグ操作の前記方向は、前記物理的エリア内の物理的方向を表」す、
「ステップ」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「視覚的マップインターフェースから、マップ検索操作を特定するユーザ入力を受け取るステップであって、
前記マップ検索操作は、第1の位置、検索基準、および距離決定点を含み、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表」す、
「ステップ」
を含む点で共通している。

(キ)引用発明において、上記(イ)で検討した、「MLSシステム」が、ユーザがドラッグ終点を「中心」の位置からどの程度の距離に設定したかを決定することは、換言すれば、「中心」の位置とドラッグ終点との間のユーザにより設定された距離を決定することであるといえる。
一方、上記(ウ)のとおり、引用発明は、「中心」の位置とドラッグ終点とが、「地理的マップ」に対応する物理的エリア内の、「形状」に対応する物理的区画の物理的位置を表すものであるといえることから、上記距離は、「中心」の位置とドラッグ終点とによって表される、「形状」に対応する物理的区画の物理的位置に関して、当該物理的区画における任意の2点間の物理的距離を表すともいえる。
以上の点について上記(イ)で更に検討した点も踏まえると、引用発明の「MLSシステムにおける方法」は、本願発明1の
「前記第1の位置と前記距離決定点との間の距離を決定するステップであって、
前記距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す、ステップ」
に相当するステップを含むものである。

(ク)引用発明は、上記(ウ)のとおり、「クリック」による「中心」の位置の「選択」及び「ドラッグ」によるドラッグ終点の確定により、「地理的マップ」内の「形状」の位置がそれぞれ特定されるとともに、「形状」と幾何学的に相似形状の現実の物理的区画が、現実のどの場所に位置するかが特定されることが明らかなものである。
また、上記(ウ)で検討したように、引用発明は、「中心」の位置とドラッグ終点とが、「地理的マップ」に対応する物理的エリア内の、「形状」に対応する物理的区画の物理的位置を表すものであるといえる。
これらのことは、引用発明の「MLSシステム」は、「中心」の位置および上記(キ)の距離に基づいて、「形状」を決定すること、「形状」は、「地理的マップ」に対応する物理的エリア内の上記現実の物理的区画の形状を表すこと、当該形状は、「中心」の位置および上記(キ)の距離に基づいて定義されること、をそれぞれ意味する。
また、上記(イ)で検討した点によれば、引用発明において、「中心」の位置、ドラッグ終点は、いずれも「ユーザインターフェース」上に位置する。
そして、引用発明の「形状」は、本願発明1の「区分された範囲」に相当する。
これらの点について、上記(イ)で更に検討した点も踏まえると、本願発明1の
「前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて、区分された範囲を決定するステップであって、
前記区分された範囲は、前記物理的エリア内の形状を表し、
前記形状は、所定の角度を有する扇形であり、前記第1の位置、前記距離、および前記ドラッグ操作の前記方向に基づいて定義され、
前記第1の位置は、前記扇形の始点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し、
前記距離決定点は、前記扇形の円弧上の点に対応する前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する、ステップ」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記第1の位置および前記距離に基づいて、区分された範囲を決定するステップであって、
前記区分された範囲は、前記物理的エリア内の形状を表し、
前記形状は、前記第1の位置および前記距離に基づいて定義され、
前記第1の位置は、前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し、
前記距離決定点は、前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する、ステップ」
を含む点で共通している。

(ケ)上記(エ)で述べた引用発明の構成において、「目的地に対応する目的地指示標識を含む地理的マップからなるグラフィカルユーザインターフェース」が「目的地検索領域及び/又は選択基準が選択された後の、マップ検索結果を表示」するものであり、「ユーザは、特定の半径の選択された円内で、ベッドルーム数が4及び浴室数が2の価格帯が200,000ドルから500,000ドルの一世帯住宅について検索することができる」ことは、「形状」内の、「選択基準」に照合する、「目的地に対応する目的地指示標識」を識別する、検索処理の結果として得られることが明らかであり、ここで、「目的地に対応する目的地指示標識」が1つまたは複数であり得ることは自明である。
また、引用発明の「ユーザインターフェース」と「グラフィカルユーザインターフェース」とは同じものを指していることが明らかであり、引用発明は、「ユーザインターフェース」において、「マップ検索結果」として、「形状」内の「目的地に対応する目的地指示標識」を表示するものであるといえる。
また、引用発明の「地理的マップは、目的地検索領域内に、少なくとも1つの目的地指示標識を含」むとの構成において、「目的地検索領域」は、上記(ウ)の「地理的マップ」に対応する物理的エリアのうちの、「形状」によって表される一部のエリア、すなわちサブセットに対応しているということができ、「目的地指示標識」は、当該サブセット内の物理的位置に関連付けられていることが明らかである(これらの点について、特に引用文献1の図8も参照。)。
そして、「マップ検索結果」、「目的地に対応する目的地指示標識」は、それぞれ、本願発明1の「検索結果セット」、「ターゲットオブジェクト」に相当する。
これらの点について、上記(エ)で更に検討した点、及び上記(オ)、(ク)も踏まえると、引用発明は、本願発明1の
「前記区分された範囲内の、前記検索基準に照合する1つまたは複数のターゲットオブジェクトを識別するステップと、
前記視覚的マップインターフェースにおいて、検索結果セットとして、前記区分された範囲内の前記1つまたは複数のターゲットオブジェクトを表示するステップであって、
各ターゲットオブジェクトは、前記区分された範囲によって表される前記物理的エリアのサブセット内の物理的位置に関連付けられている、ステップ」
に相当する各ステップを含むものである。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
(一致点)
「マップインタラクションのためのコンピュータにより実施される方法であって、
視覚的マップインターフェースから、マップ検索操作を特定するユーザ入力を受け取るステップであって、
前記マップ検索操作は、第1の位置、検索基準、および距離決定点を含み、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、物理的エリアを表すマップデータのセット内の位置をそれぞれ特定し、
前記第1の位置と前記距離決定点とは、前記物理的エリア内の物理的位置を表す、ステップと、
前記第1の位置と前記距離決定点との間の距離を決定するステップであって、
前記距離は、前記第1の位置と前記距離決定点とによって表される前記物理的位置の間の物理的距離を表す、ステップと、
前記第1の位置および前記距離に基づいて、区分された範囲を決定するステップであって、
前記区分された範囲は、前記物理的エリア内の形状を表し、
前記形状は、前記第1の位置および前記距離に基づいて定義され、
前記第1の位置は、前記視覚的マップインターフェース上の点に位置し、
前記距離決定点は、前記視覚的マップインターフェース上の点に位置する、ステップと
前記区分された範囲内の、前記検索基準に照合する1つまたは複数のターゲットオブジェクトを識別するステップと、
前記視覚的マップインターフェースにおいて、検索結果セットとして、前記区分された範囲内の前記1つまたは複数のターゲットオブジェクトを表示するステップであって、
各ターゲットオブジェクトは、前記区分された範囲によって表される前記物理的エリアのサブセット内の物理的位置に関連付けられている、ステップと
を含む方法。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、「マップ検索操作」が、「第1の位置、検索基準、距離決定点」に加えて「ドラッグ操作の方向」を含み、当該「ドラッグ操作の方向」について、「前記ドラッグ操作の前記方向は、前記物理的エリア内の物理的方向を表」すと特定されるのに対して、引用発明の「円形の目的地検索領域を用いた地理的マップを有するユーザインターフェース」から「マップ検索結果」を得る操作は、「中心」、「選択基準」およびドラッグ終点を含むものの、「ドラッグ操作の方向」を含むものではない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記マップ検索操作を特定する前記ユーザ入力を受け取るステップ」が、
「タッチスクリーンディスプレイ上に表示される前記視覚的マップインターフェースから、前記第1の位置を表すタッチ入力を受け取るステップと、
前記タッチ入力がタップアンドホールドであることに応答して、前記視覚的マップインターフェース上に、前記距離決定点を特定することを促すプロンプトを表示するステップと
をさらに含む」
ものであるのに対し、引用発明は、「位置上でクリックすることによって、中心を選択」する等の、「前記マップ検索操作を特定する前記ユーザ入力を受け取るステップ」に相当するステップを備えるものであり、当該ステップは「タッチ入力」等に関するものではない点。

(相違点3)
本願発明1では、「区分された範囲を決定する」ことが、「前記第1の位置、前記距離」に加えて「前記ドラッグ操作の前記方向」にも基づいてなされるものであり、「前記区分された範囲」が「表す」「前記物理的エリア内の形状」が、「所定の角度を有する扇形」であって、「前記第1の位置、前記距離」に加えて「前記ドラッグ操作の前記方向」にも基づいて「定義され」るものであるのに対して、引用発明では、「形状」を決定することが「中心」の位置、ドラッグ終点に基づいてなされるものであって、「前記ドラッグ操作の前記方向」に基づいてなされるものではなく、「形状」が「正方形、三角形、六角形、八角形、又は他の多角形など」であって「所定の角度を有する扇形」ではない点。

(相違点4)
本願発明1の「前記第1の位置」が「前記視覚的マップインターフェース上」において「位置」するのが「前記扇形の始点に対応する」「点」であり、同じく「前記距離決定点」が「前記視覚的マップインターフェース上」において「位置」するのが「前記扇形の円弧上の点に対応する」「点」であるのに対して、引用発明において、「中心」、ドラッグ終点がそれぞれの「ユーザインターフェース」上において位置するのは「扇形」に関する点はない点。

(2)判断
相違点1,2,4は、「物理的エリア内の形状」が「ドラッグ操作の方向」に基づく「所定の角度を有する扇形」であることに関するものである点で相互に関連しているから、まとめて検討する。
マップ検索操作において、検索基準となる区分された範囲を決定するための入力を視覚的マップインターフェースを介してユーザから受け取る際に、マップ検索操作がドラッグ操作の方向を含むものとした上で、上記区分された範囲が表す物理的エリア内の形状が、ドラッグ操作の方向に基づく、所定の角度を有する扇形であるものとすることは、引用文献1〜7のいずれにも記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
引用文献2〜7には、それぞれ周知技術として以下の各事項が開示されているといえるが、上記事項について開示するものではない。
引用文献2,3には、タッチ式のユーザインターフェースにおいて、タッチ入力をタップアンドホールドとすることが開示されている(引用文献2について、段落【0035】、【0041】等参照。引用文献3について、段落【0035】、【0078】等参照。)。
引用文献4,5は、一方の操作に引き続いて他方の操作を実行する場合に、一方の操作が実行されたことに応答して、ユーザインターフェース上に、他方の操作を実行することを促すプロンプトを表示することが開示されている(引用文献4について、段落【0051】〜【0053】、図5等参照。引用文献5について、段落【0068】〜【0073】、図8等参照。)。
引用文献6,7には、ユーザインターフェースにおいて、四角形の中心の位置を指定した後、頂点の位置を指定することにより、当該四角形の位置及びサイズを指定することが開示されている(引用文献6について、段落【0009】、【0013】〜【0015】、図2等参照。引用文献7について、(段落【0064】、図5(b)等参照。)。
また、本願発明1における「所定の角度を有する扇形」は、「ドラッグ操作の方向」に基づくものであって、方向性を有するのに対して、引用発明の「正方形、三角形、六角形、八角形、又は他の多角形などの形状」は方向性を有するか否かが特定されないことから、本願発明1の相違点1,2,4に係る構成が引用発明について当業者が適宜なし得る設計変更の範囲内であるということもできない。
そうすると、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1〜7に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜12について
本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明である。また、本願発明6,11は、それぞれ本願発明1に対応する記録媒体、システムの発明であり、本願発明7〜10は本願発明6を、本願発明12は本願発明11を、それぞれ減縮した発明であって、いずれも本願発明1に対応する発明特定事項を含んでいる。
そうすると、本願発明2〜12も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜7に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
以上のことから、当審拒絶理由の理由2は解消した。

第8 原査定についての判断
令和4年4月11日に提出された手続補正書により、請求項1〜12は、「物理的エリア内の形状」が「ドラッグ操作の方向」に基づく「所定の角度を有する扇形」である等の相違点1,2,4に係る技術的事項を含むものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A(引用文献1)、引用文献B(引用文献7)には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったとも認められないので、本願発明1〜12は、当業者であっても、原査定における引用文献A,Bに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-06-22 
出願番号 P2019-544962
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 富澤 哲生
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 マップインタラクション、検索、および表示の方法、デバイス、システム、サーバ、および端末  
代理人 ▲高▼橋 史生  
代理人 飯田 雅人  

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