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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1385858
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-04 
確定日 2022-06-09 
事件の表示 特願2019−126032「粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月17日出願公開、特開2019−179271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2019−126032号(以下「本件出願」という。)は、平成27年2月26日を出願日とする特願2015−36486号の一部を令和元年7月5日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和2年 8月 3日付け:拒絶理由通知書
令和2年 9月25日提出:意見書
令和2年 9月25日提出:手続補正書
令和3年 2月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 6月 4日提出:審判請求書
令和3年 6月 4日提出:手続補正書
令和3年10月29日提出:上申書


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年6月4日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和2年9月25日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「 画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%以上30%以下であり、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルム、アクリルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムであり、かつ厚さが40μm以下であり、かつ
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有することを特徴とする粘着剤層付き偏光フィルム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以下「本件補正発明」という。)。
なお、下線は補正箇所を示す。

「 画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%以上17%以下であり、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルム、アクリルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムであり、かつ厚さが40μm以下であり、かつ
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有することを特徴とする粘着剤層付き偏光フィルム。」

(3)本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率」について、「6%以上30%以下」から「6%以上17%以下」へと数値範囲をさらに限定して、本件補正後の請求項1に係る発明とすることを含む。
また、本件補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0148】【表1】に記載される実施例1〜13における「視認側保護フィルムの380nm透過率(%)」の「17」という値に基づいて、上限値を「17」という値とするものであって、それによって新たな技術的事項を導入するものではない。そして、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0007】〜【0008】)。
そうしてみると、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同条5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえる。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1)引用文献及び引用発明等
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前の平成26年6月26日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2014−115468号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項(ア)〜(ウ)がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの前面に透明板またはタッチパネルを備える画像表示装置の形成に用いられる粘着剤付き光学フィルムに関する。さらに、本発明は当該粘着剤付き光学フィルムを用いた画像表示装置の製造方法に関する。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
層間充填剤として、液状の光硬化性樹脂を用いる方法では、液状樹脂のはみ出しに伴う汚染が生じる等の問題がある。一方、粘着シートを用いる方法では、貼り合せの前に粘着シートを画像表示装置のサイズと合致するようにカットする必要があることに加えて、所望位置に精度よく貼り合せることが容易でなく、作業性が良好とはいえない。
【0010】
前面透明板の画像表示パネル側の面の周縁部には、装飾や光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い。周縁部に印刷が施されると、印刷部分の境界に、10μm〜数十μm程度の段差が生じるが、層間充填剤としてシート状粘着剤を用いた際は、この印刷段差部に気泡が生じ易いとの問題も生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
層間充填構造を採用する画像表示装置において、画像表示パネルと前面部材との貼り合せに関わる上記の諸問題は、偏光板の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着剤付きの偏光板を用いることによって解決される。
【0012】
すなわち、本発明は、前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる両面粘着剤付き光学フィルムに関する。本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、偏光板を含む光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層を備え、当該光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に第二粘着剤層を備える。第一粘着剤層および第二の粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されている。第一粘着剤層の厚みは3〜30μmであることが好ましく、第二粘着剤層の厚みは30μm以上であることが好ましい。
【0013】
一実施形態において、第二粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率が1.0×104Pa〜1.0×107Paであり、80℃における貯蔵弾性率が1.0×102Pa〜1×105Paである。貯蔵弾性率に上記温度依存性を持たせる目的で、第二粘着剤層は、軟化点が50℃〜150℃の粘着付与剤を含有していてもよい。また、貯蔵弾性率に上記温度依存性を持たせる目的で、第二粘着剤層を構成する粘着剤は、ベースポリマーが、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有するものであってもよい。
【0014】
一実施形態において、第二粘着剤層を構成する粘着剤は、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤である。当該実施形態において、第二粘着剤層は、活性光線が照射され硬化された場合に、硬化後の80℃における貯蔵弾性率が1.0×103Pa〜1.0×106Paであることが好ましい。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0018】
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、画像表示セルとの貼り合せのための第一粘着剤層に加えて、前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材と貼り合せるための第二の粘着剤層を備える。このような構成によれば、画像表示パネルと前面透明部材とを貼り合せて層間充填構造とする際に、別途の液状接着剤や粘着シートを設ける必要がない。そのため、液状樹脂や粘着シートのはみ出しによる汚染が防止されることに加えて、製造プロセスが簡略化される。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、偏光板を含む光学フィルムの一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備える。第一粘着剤層は、画像表示セルと光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層であり、第二粘着剤層は、前面透明部材(前面透明板またはタッチパネル)と光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層である。
・・・中略・・・
【0024】
図1に示す両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10として偏光板11を備える。両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10の一方の面に第一粘着剤層21を備え、他方の面に第二粘着剤層22を備える。第一粘着剤層21上には、第一保護シート31が剥離可能に貼着されており、第二粘着剤層22上には、第二保護シート32が剥離可能に貼着されている。
・・・中略・・・
【0026】
[光学フィルム]
光学フィルム10を構成する偏光板11としては、偏光子の片面または両面に、必要に応じて適宜の透明保護フィルムが貼り合せられたものが一般に用いられる。偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0027】
偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムには、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる。なお、偏光子の両面に透明保護フィルムが設けられる場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムが用いられてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムが用いられてもよい。また、液晶セルの光学補償や視野角拡大等を目的として、位相差板(延伸フィルム)等の光学異方性フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることもできる。
・・・中略・・・
【0033】
[第一粘着剤層]
光学フィルム10の一方の面には、画像表示セル60との貼り合せに用いるための第一粘着剤層21が設けられる。第一粘着剤層21の厚さは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定できるが、本発明においては、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜27μmがより好ましく、10μm〜25μmがさらに好ましい。第一粘着剤層の厚みが前記範囲であれば、耐久性に優れると共に、気泡の混入等の不具合を抑制することができる。
・・・中略・・・
【0039】
[第二粘着剤層]
光学フィルム10の他方の面には、前面透明部材70との貼り合せに用いるための第二粘着剤層22が設けられる。このように、画像表示セルとの貼り合せに用いられる第一粘着剤層21の反対面に、前面透明部材との貼り合せのための第二粘着剤層22が設けられた両面粘着剤付き光学フィルムを用いれば、層間充填構造とする際に、光学フィルム10上に、液状接着剤や別途のシート状粘着剤層を付設する工程を設ける必要がない。そのため、画像表示装置の製造工程を簡略化できると共に、接着剤(粘着剤)のはみ出しによる汚染が防止される。
【0040】
<厚み>
第二粘着剤層22の厚さは、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。第二粘着剤層の厚みが前記範囲より小さいと、光学フィルムと前面透明部材との貼り合せの際に、気泡が混入し易くなる傾向がある。
・・・中略・・・
【0042】
第二粘着剤層22の厚さの上限は特に限定されないが、画像表示装置の軽量化・薄型化の観点や、粘着剤層形成の容易性、ハンドリング性等を勘案すると、300μm以下が好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
・・・中略・・・
【0053】
<組成>
第二粘着剤層22を構成する粘着剤の組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性および接着性に優れ、かつ貯蔵弾性率を上記範囲に調整する観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
・・・中略・・・
【0065】
第二粘着剤層22は、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。
・・・中略・・・
【0067】
粘着剤層中には、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加することもできる。
・・・中略・・・

【0068】
粘着剤層中には、必要に応じて粘着付与剤を用いることができる。
・・・中略・・・
【0081】
上記例示の各成分の他、粘着剤層中には、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
・・・中略・・・
【0098】
[画像表示装置]
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、図3に模式的に示すように、偏光板を含む光学フィルム10の一方の面に液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル60を備え、他方の面(視認側)にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備える画像表示装置100の形成に好適に用いられる。当該画像表示装置において、画像表示セル60は、第一粘着剤層21を介して光学フィルム10と貼り合せられ、前面透明部材70は、第二粘着剤層22を介して光学フィルム10と貼り合せられる。」

(ウ)「【実施例】
【0108】
・・・中略・・・
【0109】
[実施例1]
<偏光板>
ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板(偏光度99.995%)を用いた。偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる位相差フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムであった。
【0110】
<セル側粘着剤層(第一粘着剤層)の形成>
(ベースポリマーの調製)
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート97部、アクリル酸3部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル233部投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリル系ポリマーを得た。
【0111】
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液(固形分を100重量部とする)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)0.8重量部、シランカップリング剤(信越化学(株)製「KBM−403」)0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。
【0112】
(粘着剤層の形成および架橋)
セパレータ(表面が離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレート系フィルム)上に、上記の粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着剤層を得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行った。(以下、この粘着剤層を「粘着剤層A」と称する)
【0113】
<視認側粘着剤層(第二粘着剤層)の形成>
(ベースポリマーの調製)
ベースポリマーとして、ブチルアクリレート(BA)とメチルメタクリレート(MMA)のブロック共重合体(BA/MMA=2/1、重量平均分子量10万)が用いられた。
(以下、このベースポリマーを「ポリマー1」と称する)
【0114】
(粘着剤組成物の調製)
上記のポリマー1を80重量部、および可塑剤を20重量部、120重量部のトルエンに溶解して、粘着剤組成物(溶液)を調製した。可塑剤としては、重量分子量約3000のアクリルオリゴマー(東亜合成(株)製「ARUFON UP−1000」)が用いられた。
【0115】
(粘着剤層の形成)
セパレータ上に、上記の粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが150μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着剤層を得た。(以下、この粘着剤層を「粘着剤層B1」と称する)
【0116】
<両面粘着剤付き光学フィルムの作製>
上記偏光板の一方の面にセル側粘着剤層として上記の粘着剤層Aを貼り合せた。その後、偏光板の他方の面に視認側粘着剤層として上記の粘着剤層B1を貼り合せた後、セパレータを剥離し、その上に粘着剤層B1を貼り合せて、粘着剤層B1が2層(合計厚み300μm)の粘着剤層とした。
【0117】
このようにして、偏光板(光学フィルム)の一方の面に、厚み20μmの粘着剤層、他方の面に、厚み300μmの粘着剤層が貼り合せられ、各粘着剤層上にセパレータが剥離可能に貼着された両面粘着剤付き光学フィルムを得た。」

イ 引用発明1
引用文献1の記載事項(イ)の【0022】には、「偏光板を含む光学フィルムの一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備える」、「両面粘着剤付き光学フィルム」が記載されており、【0026】には、「偏光板」が一般に、「偏光子の片面または両面」に「透明保護フィルムが貼り合せられたもの」であることが記載されている。そうすると、引用文献1には、偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板を含む光学フィルムの、一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備えた態様の、両面粘着剤付き光学フィルムが記載されているといえる。
さらに、引用文献1の記載事項(イ)の【0033】における「光学フィルム10の一方の面には、画像表示セル60との貼り合せに用いるための第一粘着剤層21が設けられる。」、「第一粘着剤層21の厚さは、・・・10μm〜25μmがさらに好ましい。」との記載、【0039】における「光学フィルム10の他方の面には、前面透明部材70との貼り合せに用いるための第二粘着剤層22が設けられる。」、【0040】における「第二粘着剤層22の厚さは、・・・50μm以上がさらに好ましい。」、【0042】における「第二粘着剤層22の厚さの上限は特に限定されないが、・・・250μm以下がさらに好ましい。」との記載、及び、【0081】における「上記例示の各成分の他、粘着剤層中には、・・・紫外線吸収剤、・・・等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。」との記載に基づけば、上記第一粘着剤層は、画像表示セルとの貼り合せに用いるための粘着剤層であって、厚さが「10μm〜25μm」であり、上記第二粘着剤層は、前面透明部材との貼り合せに用いるための粘着剤層であって、厚さが「50μm以上」、「250μm以下」であり、上記粘着剤層中に添加剤として「紫外線吸収剤」を含有した、両面粘着剤付き光学フィルムが記載されているといえる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「偏光板を含む光学フィルムの一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備え、第一粘着剤層は、画像表示セルと光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層であり、第二粘着剤層は、前面透明部材(前面透明板またはタッチパネル)と光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層である両面粘着剤付き光学フィルムであって、
偏光板が、偏光子の両面に、透明保護フィルムが貼り合せられたものであり、
上記第一粘着剤層は、画像表示セルとの貼り合せに用いるための粘着剤層であって、厚さが10μm〜25μmであり、上記第二粘着剤層は、前面透明部材との貼り合せに用いるための粘着剤層であって、厚さが50μm以上、250μm以下であり、上記粘着剤層中に添加剤として、紫外線吸収剤を含有する、
両面粘着剤付き光学フィルム。」

ウ 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用され、本願出願前の平成24年7月12日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012−133308号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の記載事項(ア)〜(ウ)がある。


(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着型光学フィルムおよびその製造方法に関する。さらに本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置および前面板などの画像表示装置と共に使用される部材、に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムや、反射防止フィルム等の表面処理フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
・・・中略・・・
【0012】
本発明は、光学フィルムおよび粘着剤層を有する粘着型光学フィルムであって、粘着剤層に基づく視認性に係るムラの問題を低減することができる粘着型光学フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムが、偏光板および粘着剤層を有する粘着型偏光板である場合には、クリアな高級感を有し、かつ粘着型偏光板に基づく視認性に係るムラの問題を低減した粘着型偏光板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
・・・中略・・・
【0016】
即ち本発明は、光学フィルムと、前記光学フィルムに設けられた粘着剤層を有する粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、厚み(μm)の標準偏差値が0.12μm以下であることを特徴とする粘着型光学フィルム、に関する。
【0017】
前記粘着型光学フィルムとしては、前記光学フィルムが、偏光子の片側に第一透明保護フィルムまたは両側に第一および第二透明保護フィルムを有する偏光板であり(以下、粘着型光学フィルムのなかで、光学フィルムとして偏光板を用いたものを粘着型偏光板という)、
前記第一透明保護フィルムは、ヘイズ値が15%以下であり、
前記粘着剤層は、前記第一透明保護フィルムを有しない側の偏光板に設けられているものが挙げられる。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0035】
本発明は、前記粘着型光学フィルム(または積層粘着型光学フィルム)における粘着剤層は、その厚み(μm)の標準偏差値が、0.12μm以下に制御されており、粘着剤層の厚みに係る凹凸のバラツキが非常に小さく平滑性がよい。粘着型光学フィルムの表面凹凸は粘着剤層と光学フィルムの厚みバラツキに起因しており、本発明の粘着型光学フィルムによれば、光学フィルムおよび粘着剤層に基づく凹凸によるムラを低減することができる。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の粘着型光学フィルムを、以下に図面を参照しながら説明する。図1に示すように、粘着型光学フィルムは、光学フィルム1と、前記光学フィルム1に設けられた粘着剤層2を有する。前記粘着剤層2は、厚み(μm)の標準偏差値が0.12μm以下である。光学フィルム1としては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルムや、反射防止フィルム等の表面処理フィルム等の各種の光学フィルムを用いることができる。図2乃至図10では、各種光学フィルムの態様を例示する。
・・・中略・・・
【0072】
薄型高機能偏光膜の実施態様は、以下のとおりである。
・・・中略・・・
【0135】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
・・・中略・・・
【0142】
第一透明保護フィルムの厚みは適宜に決定しうる。一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜80μmであるの好ましく、偏光板に基づく凹凸を小さく抑えることができることから、第一透明保護フィルムの厚みは60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。」

(ウ)「【0253】
実施例1
(偏光板の作製)
偏光子(1)の両側に、第一および第二透明保護フィルムとして厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(ヘイズ値0.3%,コニカミノルタ社製のKC4UY)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光板を作製した。」

エ 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用され、本願出願前の平成18年11月30日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2006−323042号公報(以下、「引用文献5」という。)には、以下の記載事項(ア)〜(ウ)がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルを構成する液晶セルの光源側表面に貼着積層する積層偏光フィルムの製造方法に関する。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、実質的な逆カールを発生することのない積層偏光フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、実質的な逆カールを生じることのない積層偏光フィルムを得るべく鋭意検討した結果、直線偏光フィルムと直線偏光分離フィルムとを積層する際に、直線偏光フィルムまたは直線偏光分離フィルムの積層側に、直線偏光フィルムから直線偏光分離フィルムへ透過する水分を、透湿度で500g/m2以下とする表面処理層を設けた後、直線偏光フィルムと直線偏光分離フィルムを積層することによって、逆カールを発生することのない積層偏光フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によって、液晶セルに接着する際に、接着面に気泡が残って液晶パネルに不良を発生する原因となる実質的な逆カールを発生しない直線偏光フィルムと直線偏光分離フィルムとからなる積層偏光フィルムが得られる。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
・・・中略・・・
【0012】
直線偏光フィルムは、通常、偏光子およびその両側に積層した保護膜からなり、偏光子は、膜厚が10μm〜150μmのポリビニルアルコールフィルムに一軸延伸、二色性色素による染色およびホウ酸処理してなるフィルムである。保護膜としては、通常、酢酸セルロース系樹脂フィルム、例えば、トリアセチルセルロースフィルムが使用されている。
トリアセチルセルロースフィルムには、富士写真フィルム(株)から販売されている「フジタック(登録商標)TD80」、「フジタック(登録商標)TD80UF」及び「フジタック(登録商標)TD80UZ」、コニカ(株)から販売されている「KC8UX2M」及び「KC8UY」などがある。
酢酸セルロース系保護フィルムの厚みは、20〜200μm程度である。
また、保護フィルムの他の例として、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルムなど、光学的な透明性に優れたフィルムも挙げることができる。」

(ウ)「【実施例】
【0023】
以下、本発明を具体的に実施例で示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、測定方法は以下のとおりである。
(1)透湿度:上記したJISZ0208の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じて測定した。
(2)カール量:直線偏光フィルム側を下にして平板上に置いたときに、積層偏光フィルムの四頂点の平板からの高さの平均値として求めた。プラスは正カール、マイナスは逆カールであることを示す。
また、略号は以下のフィルムを表す。
PVA:ポリビニルアルコールフィルム
TAC:トリアセチルセルロースフィルム
・・・中略・・・
【0027】
実施例2
PVA(25μm)からなる偏光子の両面にTAC(40μm)が積層された直線偏光フィルムの一方のTACに表面処理層として紫外線硬化樹脂層(5μm)が設けられた4層構造を有する厚さが約110μmの直線偏光フィルム「SRW062A−HC」(住友化学社製)を準備した。
使用したTAC(40μm)の透湿度は900g/m2、紫外線硬化樹脂層(5μm)が設けられたTAC(40μm)の透湿度は470g/m2であった。
次に、直線偏光分離フィルムとして、厚さ108μmのポリエチレンナフタレート製の直線偏光分離フィルム「DBEF−P2」(住友スリーエム社製、一方の面にポリエチレンテレフタレートの保護フィルムが積層)を250mm×250mmに切断したものを用意した。
実施例1と同様にして、積層偏光フィルムを得た。
積層偏光フィルムの構成:
TAC/PVA/TAC/紫外線硬化樹脂層/接着剤層/DBEF
(40μm/25μm/40μm/5μm/25μm/108μm)
得られた積層偏光フィルムを実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。」

(2)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 偏光フィルム
引用発明1の「偏光板」は、技術的にみて、本件補正発明の「偏光フィルム」に相当する。
また、引用発明1の「偏光板」は、「偏光子の両面に、透明保護フィルムが貼り合せられたもの」である。ここで、引用発明1の「偏光子」及び「透明保護フィルム」は、それぞれ、本件補正発明の「偏光子」及び「透明保護フィルム」に相当する。そうすると、引用発明1の「偏光板」は、本件補正発明の「前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し」とする要件を満たしている。

イ 粘着剤層付き偏光フィルム
引用発明1の「両面粘着剤付き光学フィルム」は、「偏光板を含む光学フィルムの一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備え」るものである。そうすると、引用発明1の「両面粘着剤付き光学フィルム」は、本件補正発明の「粘着剤層付き偏光フィルム」に相当し、本件補正発明の「前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し」とする要件を満たしている。
また、引用発明1の「両面粘着剤付き光学フィルム」は、その「第一粘着剤層」が「画像表示セルとの貼り合せに用いるための粘着剤層」であって、「第二粘着剤層」が「前面透明部材との貼り合せに用いるための粘着剤層」である。そうすると、引用発明1の「両面粘着剤付き光学フィルム」は、本件補正発明の「画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる」とする要件を満たしている。

ウ 紫外線吸収機能
引用発明1は「第一粘着剤層」及び「第二粘着剤層」を備えており、「粘着剤層中に添加剤として、紫外線吸収剤を含有」するものである。そうすると、視認側に設けられることとなる「第二粘着剤層」も「紫外線吸収剤を含有」するものであるから、紫外線吸収機能を有するといえる。
したがって、引用発明1の「第二粘着剤層」は、本件補正発明の「前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有する」との要件を満たしている。

(3)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(2)によれば、本件補正発明と引用発明1は、次の点で一致する。
「 画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有する粘着剤層付き偏光フィルム。」である点。

イ 相違点
上記(2)によれば、本件補正発明と引用発明1は、次の点で相違する。

[相違点]
「偏光子の視認側の透明保護フィルム」が、本件補正発明は、「波長380nmにおける透過率が6%以上17%以下であり」、「トリアセチルセルロースフィルム、アクリルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムであり、かつ厚さが40μm以下であ」るのに対し、引用発明1は波長380nmにおける透過率、材料及び厚さが特定されたものではない点。

(4)判断
ア [相違点]について
引用文献1には、透明保護フィルムについて、「偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムには、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる。」(記載事項(イ)の【0027】)と記載されている。また、引用文献1の記載事項(ウ)の「偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる位相差フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムであった。」(【0109】)との記載に基づけば、実施例における透明保護フィルムとして「トリアセチルセルロースフィルム」が用いられていたこと、その厚さは「40μm」又は「60μm」であったことが理解できる。さらに、引用文献1の記載事項(イ)の「画像表示装置の軽量化・薄型化の観点や、粘着剤層形成の容易性、ハンドリング性等を勘案すると、300μm以下が好ましく、250μm以下がさらに好ましい。」(【0042】)との記載に基づけば、画像表示装置を「軽量化・薄型化」しようとすることも認識されていたといえる。そして、画像表示装置の「軽量化・薄型化」に際して、保護フィルムについても、薄いものを採用することは、当業者であれば当然考慮することである。
一方、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献4には、「本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい」、「第一透明保護フィルムの厚みは適宜に決定しうる。一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜80μmであるの好ましく、偏光板に基づく凹凸を小さく抑えることができることから、第一透明保護フィルムの厚みは60μm以下であるのが好ましく、さらには10〜60μm、さらには10〜50μmであるのが好適である。」(記載事項(イ)【0135】、【0142】)と記載されており、また、実施例1においては、第一および第二透明保護フィルムとして厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いたもの(記載事項(ウ)【0253】)が記載されている。また、引用文献5においては、「保護膜としては、通常、酢酸セルロース系樹脂フィルム、例えば、トリアセチルセルロースフィルムが使用されている。」、「酢酸セルロース系保護フィルムの厚みは、20〜200μm程度である。」、「保護フィルムの他の例として、・・・ポリエチレンテレフタレート・・・からなるフィルム・・・など、光学的な透明性に優れたフィルムも挙げることができる。」(記載事項(イ)【0012】)と記載されており、加えて、実施例として、「PVA(25μm)からなる偏光子の両面にTAC(40μm)が積層された直線偏光フィルム」(記載事項(ウ)【0027】;合議体注:「TAC」は「トリアセチルセルロースフィルム」を意味する。)が記載されている。これらの記載に基づけば、偏光子のいずれの面においても、「40μm」程度の厚さの「トリアセチルセルロースフィルム」を保護フィルムとして用いることは周知技術であったといえる。
そうすると、引用発明1において、視認側を含む「透明保護フィルム」を、「40μm」程度の厚さの周知のトリアセチルセルロースフィルム、アクリルフィルム、ポリエチレンテレフタレート等の材料からなるものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
一方で、紫外線による劣化を防止すること等を目的として、粘着剤層のみならず、透明保護フィルムにも紫外線吸収剤を含有させ、光学フィルムにおける紫外線の透過を抑える技術は周知技術である(当合議体注:例えば、特開2012−48259号公報(【0041】〜【0043】)、特開2012−3269号公報(【0003】、【0015】、【0085】、【0097】)、国際公開第2007/029788号([0067]、[0202]、[0250])、国際公開第2010/061834号([0006]、[0008][0076]〜[0077])等を参照。)。また、光学フィルムに与える所望の紫外線吸収機能に応じて粘着剤層及び透明保護フィルム中の紫外線吸収剤の含有量を調整することは当業者であれば適宜なし得たことであるところ、このような紫外線吸収機能を有する透明保護フィルムとして、厚さが「40μm以下」でかつ、透過率が6%以上17%未満のものについても、例えば、特開2012−78621号公報の【0013】、【0128】に記載されているように周知であり、そのような透明フィルムを用いることが格別なことであるともいえない。
ここで、少なくとも引用発明1では、上述のように紫外線吸収剤を含有させることで「透過率を6%以上17%以下」とするものは除外されていない。
そうすると、引用発明1において、上記周知技術に接した当業者であれば、光学フィルムの薄型化の要請と紫外線吸収機能の付与の両方を考慮して、粘着剤層及び透明保護フィルムの両方に紫外線吸収剤を含有させ、厚さが「40μm以下」でかつ、波長380nmにおける透過率が「6%以上17%未満」のものを得ることは、通常の創作能力の発揮により適宜なし得たことである。
以上のとおりであるから、引用発明1の視認側の「透明保護フィルム」について、トリアセチルセルロース等の材料を用いつつ、波長380nmにおける透過率及び厚さを、本件補正発明の上記[相違点]に係る本件補正後発明の要件を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 発明の効果について
本件補正発明の効果は、本願の明細書【0018】の記載に基づけば、「工程削除、歩留まり低下の課題を解決することができ、かつ、偏光フィルムが薄型の場合であっても、十分な紫外線カット機能を付与することができる」というものといえる。
一方、引用文献1には、「本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、画像表示セルとの貼り合せのための第一粘着剤層に加えて、前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材と貼り合せるための第二の粘着剤層を備える。このような構成によれば、画像表示パネルと前面透明部材とを貼り合せて層間充填構造とする際に、別途の液状接着剤や粘着シートを設ける必要がない。そのため、液状樹脂や粘着シートのはみ出しによる汚染が防止されることに加えて、製造プロセスが簡略化される。」(記載事項(ア)の【0018】)と記載されている。上記記載に基づけば、引用発明1も、製造プロセスが簡略化されるものであるから、「工程削除」されるものであって、汚染が防止されることにより「歩留まり低下の課題を解決する」ものといえる。さらに、引用発明1は、「粘着剤層中に添加剤として、紫外線吸収剤を含有する」ものであるから、「偏光フィルムが薄型の場合であっても、十分な紫外線カット機能を付与することができる」ものであることは明らかである。
したがって、本件補正発明の効果は、引用文献1の記載に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであって格別顕著なものでもない。

ウ 審判請求人の主張について
(ア)令和3年6月4日提出の審判請求書の主張について
審判請求人は、令和3年6月4日提出の審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」「(4)本願発明と引用発明との対比」「イ.相違点の容易想到性」において、次のように主張している(以下「主張1」という。)。

「・・・前略・・・
しかしながら、引用発明1、2のいずれも、本願発明の偏光フィルムの薄型化と十分な紫外線カット機能の付与という相反する要請を両立可能な粘着剤層付き偏光フィルムの提供という課題について一切認識していません。それゆえ、引例1、2において薄型化した視認側透明保護フィルムの透過率の範囲を規定しようとする動機付けはありません。そうである以上、何らの証拠を示されることなく、引用発明1、2において視認側透明保護フィルムの「厚さ」と「透過率」とを結び付けて、視認側透明保護フィルムの透過率が「軽量化、薄型化によって要求される透明保護フィルムの厚さに応じて当業者が適宜決定する事項」とされる審査官殿の認定は、本願開示に接したことによる後知恵であると言わざるを得ません。
仮に、引用文献1、2において視認側透明保護フィルムの「厚さ」と「透過率」との相関性を見出せたとしても、視認側透明保護フィルムの薄型化を図ったとすれば透過率は増加し、一方、透過率の低下を達成しようとするなら、視認側透明保護フィルムは厚膜化の方向に向かうはずです。いずれも場合でも上記相違点a、bに係る構成を同時に満たすことはありません。
トリアセチルセルロース(TAC)の透過率に関する知見を開示するとされている引用文献3を参照したとしても、波長380nmにおける透過率は90%前後であり、本願発明の視認側透明保護フィルムの透過率の上限を大幅に上回っていますので、引用文献3に記載された発明は上記相違点に係る構成を導き出すことの契機とはなり得ません。
本願発明では、視認側透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率を特定範囲としていますので、視認側透明保護フィルムの薄型化と視認側粘着剤層(紫外線吸収剤含有)と組み合わせることにより優れた紫外線吸収能力を達成することができます(段落[0110])。このような作用効果は、視認側透明保護フィルムの「厚さ」と「透過率」とを結び付けて両者を高いレベルでバランスさせることについて一切認識のない引用発明1、2から予測し得るものではありません。」

上記主張1について検討する。
上記(4)アで述べたように、光学フィルムにおいて、紫外線を遮るために、粘着剤層のみならず透明保護層においても紫外線吸収剤を含有させる技術は周知技術である。そして、透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率は、紫外線吸収剤の含有量によっても調整可能なものであり、厚み40μm以下かつ透過率が17%以下に小さい透明保護フィルムも、例えば特開2012−78621号公報の【0013】、【0128】に記載されているように、格別なものではないことに鑑みれば、引用発明1において、上記周知技術に基づき、粘着剤層及び透明保護フィルムの両方に紫外線吸収剤を含有させ、厚さが「40μm以下」でかつ、波長380nmにおける透過率が「6%以上17%未満」のものを得ることは当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、このようにして推考される発明の奏する効果は、当業者であれば予測可能な範囲内のものである。
したがって、審判請求人の上記主張1は、採用することができない。

(イ)令和3年10月19日提出の上申書の主張について
審判請求人は、令和3年10月19日提出の上申書の「2.審判請求人の意見」「(2)本願発明と引用発明との対比」「イ.相違点a、bの容易想到性について」において、次のように主張している(以下「主張2」という。)。

「・・・前略・・・
すなわち、審査官殿は、(i)相違点aのうち透過率が「6%以上」の部分及び相違点bについて画像表示装置において一般的に求められる軽量化、薄型化という課題の点から容易想到であるとされ、また、(ii)相違点aのうち透過率が「17%以下」の部分についても軽量化、薄型化によって要求される透明保護フィルムの厚さに応じて当業者が適宜決定する事項にすぎないとされており、前者の構成(i)と後者の構成(ii)とをあくまでも互いに独立した構成として捉えた上で個別に容易想到性を論じられています。
しかしながら、本来、本願発明に具現化された技術思想はそれ全体を一まとまりのものとして捉えるべきであって、個々の構成の単なる集合体として捉えるべきではありません。本願発明でいいますと、偏光フィルムの薄型化と十分な紫外線カット機能の付与という相反する要請を両立可能な粘着剤層付き偏光フィルムの提供という課題を解決するために、相違点a、bの全ての構成を同時に満たすようにしています。そうであれば、相違点aに至る動機付けや相違点bに至る動機付けのみならず、相違点a及び相違点bを同時に満たすことの動機付けについても考慮されるべきであると思料いたします。引例1−5はこの相違点a及び相違点bを同時に満たすことの動機付けについて一切開示も示唆もしていません。なお、審査官殿は、上述のように、『出願人が意見書で挙げている相違点aのうち「偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%以上である」という事項、相違点bである「偏光子の視認側の透明保護フィルムの厚さが40μm以下である」事項を同時に採用する動機付けは十分に存在するといえる』とされていますが、ご指摘の点はあくまでも、部材の軽量化、薄型化との関連性が比較的強いであろう事柄について述べられているだけであり、相違点aのうち透過率が「17%以下」の部分を含めた相違点a及び相違点bの構成全体を同時に満たすことの動機付けを述べられているわけではありません。相違点aのうち透過率が「17%以下」の部分について考えますと、薄膜の透過率はその厚さが大きくなるほど低下することは文献を示すまでもなく周知な事項ですので、仮に、審査官殿の認定のように、軽量化や薄型化の要請に従って視認側透明保護フィルムの厚さを薄くした場合には、当然、透過率は増加することになり、相違点aのうち透過率が「17%以下」の部分は成立しなくなる場合がでてきます。例えば、審査官殿がトリアセチルセルロース(TAC)の透過率の知見について参照されている引用文献3(段落[0119])の厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(波長380nmにおける透過率は90%前後)の厚さを本願実施例のトリアセチルセルロースフィルムの厚さ25μmという3分の1以下の厚さにまで薄型化しますとさらに透過率が増加することは容易に理解されます。また、相違点aのうち透過率が「17%以下」の部分が、審査官殿の認定のように「単に、厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルムを採用すること等により、もっぱら達成される特性」であるというものでもありません。
審査官殿の認定は、相違点a及び相違点bのうち自己の都合に良い部分のみを抜き出して両者の構成全体の相互の関わり合いを捨象してなされたものであるという点で失当と言わざるを得ません。
なお、審査官殿は、相違点aのうち透過率が「17%以下」の部分について、「前記実施例1等において、視認側の透明保護フィルムの前記透過率の値を17%とするのにどのような手段を採用しているのか、当業者の偏光フィルム等の技術分野における技術常識等を考慮しても不明である」と述べられています。しかしながら、波長380nmにおける透過率が17%以下の透明保護フィルム自体は、国際公開第2008/102466号、特開2014−142630号公報、特開2014−225008号公報等にも記載されているように周知の技術であり、偏光フィルム技術に携わる当業者であれば適宜作製ないし入手可能なものです。従って、本願明細書の記載や本願出願時の技術常識を参照することによって、当業者は本願発明に係る粘着剤層付き偏光フィルムを過度の負担なく作製することができると思料いたします。」

上記主張2について検討する。
上記(4)ア及びウ(ア)で述べたように、透明保護フィルムの透過率は、その厚みのみならず、紫外線吸収剤の含有量等によっても大きく変化する。そして、上述のとおり、粘着剤層及び透明保護フィルムの両方に紫外線吸収剤を含有させる技術が周知であることに鑑みれば、ディスプレイの薄型化の要請と透明保護フィルムに与える紫外線吸収機能のバランスを考慮して、厚さが「40μm以下」でかつ、波長380nmにおける透過率が「6%以上17%未満」のものを得ることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、審判請求人の上記主張2は、採用することができない。

(6)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、引用文献1(特開2014−115468号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献の記載及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明1は、前記「第2」[理由]2(1)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、「視認側保護フィルムの380nm透過率(%)」の範囲を「6%以上30%以下」に拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正後発明が、前記「第2」[理由]2に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-23 
結審通知日 2022-03-24 
審決日 2022-04-22 
出願番号 P2019-126032
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 関根 洋之
下村 一石
発明の名称 粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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