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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1385865
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-08 
確定日 2022-01-11 
事件の表示 特願2019−509938「粘着剤層付偏光フィルム、インセル型液晶パネル用粘着剤層付偏光フィルム、インセル型液晶パネルおよび液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日国際公開、WO2018/181415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2019−509938号(以下「本件出願」という。)は、平成30年3月28日(先の出願に基づく優先権主張 平成29年3月28日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年10月15日提出:手続補正書
令和2年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和3年 1月21日提出:意見書
令和3年 1月21日提出:手続補正書
令和3年 2月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 6月 8日提出:審判請求書
令和3年 6月 8日提出:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
令和3年 9月 2日提出:上申書


第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1〜7の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
粘着剤層と偏光フィルムを有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートおよび極性官能基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、無機カチオンアニオン塩を含有する粘着剤組成物より形成され、かつ、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記無機カチオンアニオン塩を0.05〜20重量部(但し、0.0001〜5重量部の場合を除く)を含有し、かつ、
前記粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。
(但し、前記aは、前記偏光フィルムに前記粘着剤層を設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に250時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。)
【請求項2】
前記無機カチオンアニオン塩が、フッ素含有アニオンを含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値が、1.0×108〜1.0×1012Ω/□であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項4】
前記極性官能基含有モノマーが、ヒドロキシル基含有モノマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項5】
前記偏光フィルムと前記粘着剤層の間にアンカー層を有し、
前記アンカー層は導電ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項6】
前記無機カチオンアニオン塩のカチオンがリチウムイオンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項7】
前記変動比(b/a)が、0.1を超え5以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明1」という。)の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
粘着剤層と偏光フィルムを有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記偏光フィルムと前記粘着剤層の間にアンカー層を有し、
前記アンカー層は導電ポリマーを含有し、
前記粘着剤層は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートおよび極性官能基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、無機カチオンアニオン塩を含有する粘着剤組成物より形成され、かつ、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記無機カチオンアニオン塩を0.05〜20重量部(但し、0.0001〜5重量部の場合を除く)を含有し、かつ、
前記粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。
(但し、前記aは、前記偏光フィルムに前記粘着剤層を設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に250時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。)」

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項5は、請求項1の記載を引用して記載されたものであり、本件補正前の請求項1を引用する請求項5に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明とは、発明として相違するところがないから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項5の記載のうち請求項1を引用する記載を、独立形式に書き改めて記載したものである。そうしてみると、本件補正は、本件補正前の請求項1を削除し、本件補正前の請求項5の記載のうち請求項1を引用する記載を本件補正後の請求項1に記載したものであるから、本件補正は、特許法17条の2第5項1号に掲げる、同法36条5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
したがって、請求項1に係る本件補正は適法になされたものである。


第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本件出願の請求項5に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2015−199942号公報
引用文献3:特開2013−253202号公報(周知技術を示す文献)


第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1(特開2015−199942号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

(1) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用粘着剤組成物および当該粘着剤組成物により光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されている粘着剤層付光学フィルムに関する。さらには、本発明は、前記粘着剤層付光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。
・・・省略・・・
【0007】
一方、液晶表示装置の製造時、前記粘着剤層付偏光フィルムを液晶セルに貼り付ける際には、粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層から離型フィルムを剥離するが、当該離型フィルムの剥離により静電気が発生する。このようにして発生した静電気は、液晶表示装置内部の液晶の配向に影響を与え、不良を招くようになる。また、液晶表示装置の使用時に静電気による表示ムラが生じる場合がある。静電気の発生は、例えば、偏光フィルムの外面に帯電防止層を形成することにより抑えることができるが、静電気発生の根本的な位置で発生を抑えるためには、粘着剤層に帯電防止機能を付与することが効果的である。
【0008】
粘着剤層に帯電防止機能を付与する手段として、例えば、粘着剤層を形成する粘着剤に、イオン性化合物を配合することが提案されている(特許文献4乃至5)。特許文献4ではイミダゾリウムカチオンと無機アニオンを含むイオン性固体、特許文献5では4級窒素原子を含有する炭素数6〜50のカチオンと、フッ素原子含有アニオンとからなるオニウム塩等の常温で液体の有機溶融塩を、偏光フィルムに用いるアクリル系粘着剤に配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−158702号公報
【特許文献2】特開2009−215528号公報
【特許文献3】特開2009−242767号公報
【特許文献4】特開2009−251281公報
【特許文献5】国際公開2007/034533号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液晶表示装置の使用時に静電気による表示ムラが生じる場合があるため、液晶パネルのガラス基板には、透明導電層(例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム:ITO層)が形成される場合がある。また前記透明導電層は、静電気による表示ムラの対策の他に、液晶表示装置をタッチパネルに利用する場合には、液晶セル内の駆動電界とタッチパネルとを切り離すシールド電極として機能する。かかる構成の液晶表示装置において、粘着剤層付光学フィルムの粘着剤層は、前記ITO層に、直接、貼り合わせる。そのため、前記粘着剤層には、ガラス基板だけでなく、ITO層に対する密着性も要求される。一般的にガラス板よりも、ITO層の方が粘着剤層との密着性が悪く、耐久性が問題になることが多い。前記粘着剤層付光学フィルムをガラス基板に貼り合せた状態で、60℃95%RHなどの高温高湿条件に置いた後に、常温に戻すと粘着剤層が白濁する現象(加湿白濁)が起こることが明らかになった。加湿白濁が発生すると、ディスプレイの視認性が低下する原因となる。
【0011】
また、前記粘着剤層は、液晶パネルのITO層や引回し配線の銅等の金属に、直接、接触する。そのため、前記粘着剤層の組成によっては、ITO層や金属を腐食するおそれがある。また、腐食が起こると、ITO層や引回し配線の抵抗値が上昇する問題がある。
【0012】
特許文献1では、芳香環含有モノマーとアミド基含有モノマーを含むアクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤を4〜20重量部を配合した粘着剤組成物が提案されている。しかし、特許文献1では、アクリル系ポリマーを形成するモノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーを含有していないため、アクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤が直接反応できずに相分離することで、粘着剤が白濁しやすい傾向があり好ましくない。また、特許文献1の粘着剤組成物は、架橋剤の割合が多いため、耐久性試験で剥がれが発生しやすくなる傾向がある。
【0013】
また、特許文献2、3では、芳香環含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレートを含有する(メタ)アクリル系ポリマー;並びに、架橋剤を含有する粘着剤組成物が提案されている。しかし、特許文献2、3の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、ITO層に対する密着性が悪く、耐久性を満足することができない。なお、特許文献2の比較例では、アミノ基含有(メタ)アクリレートの代わりに、アミド基含有モノマーを用いることが開示されているが、特許文献2、3の各表2の結果が示すように、アミド基含有モノマーを用いた場合においては耐久性を満足できていない。
【0014】
一方、特許文献4、5に記載のように、粘着剤層を形成する粘着剤に、イオン性化合物を配合することにより帯電防止機能を付与することができる。さらに、液晶表示装置は様々な温湿度環境での使用が想定されるため、温度や湿度が変化しても表面抵抗値が変化せず、長期に渡って安定した帯電防止機能を付与できる粘着剤が求められている。近年、タッチパネルと積層された液晶表示装置や、液晶パネルのガラス基板上に直接ITO層などのセンサー電極を成膜した、所謂オンセルタッチパネル型の液晶表示装置が増えてきている。このような場合、粘着剤層の表面抵抗が低すぎるとタッチパネルの感度が低下する問題が起こることが分かった。静電気ムラの防止と、タッチパネルの感度低下を両立させるためには、表面抵抗を従来よりも狭い範囲で制御する必要があるため、以前にも増して、より安定した帯電防止機能が求められるようになっている。
【0015】
特許文献4には、イミダゾリウムカチオンと、無機アニオンとイオン性固体を含むアクリル系粘着剤により、長期に渡って安定した帯電防止機能を付与する粘着剤層を形成することが提案されている。しかし、特許文献4の粘着剤層では、ITO層に対する加湿条件下での密着性が十分でなかった。また、特許文献5には、常温で液体の有機溶融塩を含むアクリル系粘着剤が提案されている。しかし、特許文献5に記載のアクリル系粘着剤は、有機溶融塩の分散性が悪く、当該粘着剤により形成される粘着剤層の帯電防止機能の安定性は十分でなかった。
【0016】
本発明は、ガラスおよび透明導電層のいずれに対しても、発泡や剥がれ、または加湿白濁を生じない耐久性を満足し、かつ光漏れによる表示ムラを抑制することができ、さらには、耐金属腐食性にも優れる粘着剤層を形成することができる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、ガラスおよび透明導電層のいずれに対しても、発泡や剥がれ、または加湿白濁を生じない耐久性を満足し、かつ光漏れによる表示ムラを抑制することができ、さらには、耐金属腐食性にも優れ、安定した帯電防止機能を付与できる粘着剤層を形成することができる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0018】
また本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する粘着剤層付光学フィルムを提供すること、さらには前記粘着剤層付光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記光学フィルム用粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち本発明は、
モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート(a1)70重量%以上、
芳香環含有(メタ)アクリレート(a2)3〜25重量%、
アミド基含有モノマー(a3)0.1〜8重量%、
カルボキシル基含有モノマー(a4)0.01〜2重量%、および、
ヒドロキシル基含有モノマー(a5)0.01〜3重量%を含有し、
重量平均分子量(Mw)が100万〜250万であり、かつ、Mw/数平均分子量(Mn)が1.8以上10以下を満足する(メタ)アクリル系ポリマー(A)、並びに、架橋剤(B)を前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.01〜3重量部を含有することを特徴とする光学フィルム用粘着剤組成物、に関する。
・・・省略・・・
【0025】
前記光学フィルム用粘着剤組成物は、さらに、イオン性化合物(D)を含有することができる。前記イオン性化合物(D)は、アルカリ金属塩及び/または有機カチオン−アニオン塩であることが好ましい。また、前記イオン性化合物(D)は、フルオロ基含有アニオンを含むことが好ましい。前記イオン性化合物(D)は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.05〜10重量部含有することが好ましい。
・・・省略・・・
【0027】
また本発明は、前記光学フィルム用粘着剤組成物により形成されることを特徴とする光学フィルム用粘着剤層、に関する。
【0028】
また本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、前記光学フィルム用粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着剤層付光学フィルム、に関する。
【0029】
また本発明は、前記粘着剤層付光学フィルムを少なくとも1つ用いたことを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、ベースポリマーとして、芳香環含有(メタ)アクリレート(a2)、アミド基含有モノマー(a3)、カルボキシル基含有モノマー(a4)、および、ヒドロキシル基含有モノマー(a5)を所定量のモノマーユニットの割合で含有し、かつ特定の重量平均分子量と分子量分布を有する(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含有する。当該特定組成の(メタ)アクリル系ポリマー(A)および所定量の架橋剤(B)を含有する光学フィルム用粘着剤組成物から得られる粘着剤層を有する粘着剤層付光学フィルムは、ガラスおよび透明導電層(ITO層等)のいずれに対しても加湿白濁を生じない耐久性が良好であり、液晶セル等に貼り付けた状態において剥がれや、浮き等の発生を抑えることができる。
【0031】
一般的に、ITO層等の透明導電層に対する耐久性は、ITO層の組成の影響も受けやすく、高スズ比率の結晶性ITO層よりも、低スズ比率の非晶性ITO層の方が耐久性は悪くなる傾向が見られる。光学フィルム用粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、非晶性ITO層に対しても安定した耐久性を実現することができる。また、本発明の粘着剤層を有する粘着剤層付光学フィルムは、透明導電層に対する耐金属腐食性にも優れる。
【0032】
また、粘着剤層付偏光板等の粘着剤層付光学フィルムを用いた液晶表示装置等の画像表示装置を、加熱や加湿条件下においた場合には、液晶パネル等の周辺部に、周辺ムラやコーナームラといった(白ヌケ)による、表示ムラが生じ、表示不良が起きることがあるが、本発明の粘着剤光学フィルムの粘着剤層は、上記光学フィルム用粘着剤組成物を用いていることから、表示画面の周辺部分の光漏れによる表示ムラを抑えることができる。
【0033】
また本発明の光学フィルム用粘着剤組成物には、イオン性化合物(D)を配合することで帯電防止機能を付与することができる。本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、前記当該特定組成の(メタ)アクリル系ポリマー(A)および所定量の架橋剤(B)を含有しているため、イオン性化合物(D)を配合した場合には、安定した帯電防止機能を付与できる粘着剤層を形成することができる。また本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、良好なリワーク性を有するが、反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(E)を配合することで、リワーク性をより向上させることができる。」

(2)「【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
・・・省略・・・
【0041】
ヒドロキシル基含有モノマー(a5)は、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。ヒドロキシル基含有モノマー(a5)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシル基含有モノマー(a5)のなかでも、耐久性の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
・・・省略・・・
【0043】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、前記各モノマーを全構成モノマー(100重量%)の重量比率において所定量含有する。アルキル(メタ)アクリレート(a1)の重量比率は、アルキル(メタ)アクリレート(a1)以外のモノマーの残部として設定でき、具体的には、70重量%以上である。アルキル(メタ)アクリレート(a1)の重量比率は、70〜96.88重量%の範囲内で調整することができる。アルキル(メタ)アクリレート(a1)の重量比率を前記範囲に設定することは、接着性を確保するうえで好ましい。
・・・省略・・・
【0047】
ヒドロキシル基含有モノマー(a5)の重量比率は、0.01〜3重量%であり、0.1〜2重量%が好ましく、さらには0.2〜2重量%が好ましい。ヒドロキシル基含有モノマー(a5)の重量比率が0.01重量%未満では、粘着剤層が架橋不足になり、耐久性や粘着特性を満足できない。一方、3重量%を超える場合には、耐久性を満足できない。
・・・省略・・・
【0085】
本発明の粘着剤組成物は、イオン性化合物(D)を含有することができる。イオン性化合物(D)としては、アルカリ金属塩及び/または有機カチオン−アニオン塩を好ましく用いることができる。アルカリ金属塩は、アルカリ金属の有機塩および無機塩を用いることができる。なお、本発明でいう、「有機カチオン−アニオン塩」とは、有機塩であって、そのカチオン部が有機物で構成されているものを示し、アニオン部は有機物であっても良いし、無機物であっても良い。「有機カチオン−アニオン塩」は、イオン性液体、イオン性固体とも言われる。
【0086】
<アルカリ金属塩>
アルカリ金属塩のカチオン部を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
【0087】
アルカリ金属塩のアニオン部は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン部としては、例えば、CH3COO−、CF3COO−、CH3SO3−、CF3SO3−、(CF3SO2)3C−、C4F9SO3−、C3F7COO−、(CF3SO2)(CF3CO)N−、−O3S(CF2)3SO3−、PF6−、CO32−、や下記一般式(1)乃至(4)、
(1):(CnF2n+1SO2)2N−(但し、nは1〜10の整数)、
(2):CF2(CmF2mSO2)2N−(但し、mは1〜10の整数)、
(3):−O3S(CF2)lSO3−(但し、lは1〜10の整数)、
(4):(CpF2p+1SO2)N−(CqF2q+1SO2)、(但し、p、qは1〜10の整数)、で表わされるもの等が用いられる。特に、フッ素原子を含むアニオン部は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。無機塩を構成するアニオン部としては、Cl−、Br−、I−、AlCl4−、Al2Cl7−、BF4−、PF6−、ClO4−、NO3−、AsF6−、SbF6−、NbF6−、TaF6−、(CN)2N−、等が用いられる。アニオン部としては、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、等の前記一般式(1)で表わされる、(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが好ましく、特に(CF3SO2)2N−、で表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0088】
アルカリ金属の有機塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、KO3S(CF2)3SO3K、LiO3S(CF2)3SO3K等が挙げられ、これらのうちLiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C等が好ましく、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N等のフッ素含有リチウムイミド塩がより好ましく、特に(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が好ましい。
【0089】
また、アルカリ金属の無機塩としては、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
・・・省略・・・
【0093】
また、イオン性化合物(D)としては、前記のアルカリ金属塩、有機カチオン−アニオン塩の他に、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム等の無機塩が挙げられる。これらイオン性化合物(D)は単独でまたは複数を併用することができる。
【0094】
本発明の粘着剤組成物におけるイオン性化合物(D)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。前記イオン性化合物(D)が0.05重量部未満では、帯電防止性能の向上効果が十分ではない場合がある。前記イオン性化合物(D)は、0.1重量部以上が好ましく、さらには0.5重量部以上であるのが好ましい。一方、前記イオン性化合物(D)は10重量部より多いと、耐久性が十分ではなくなる場合がある。前記イオン性化合物(D)は、5重量部以下が好ましく、さらには3重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下であるのが好ましい。前記イオン性化合物(D)の割合は、前記上限値または下限値を採用して好ましい範囲を設定できる。
・・・省略・・・
【0105】
本発明の粘着剤層付光学フィルム等の粘着剤層付光学部材は、光学フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤組成物により粘着剤層を形成したものである。
・・・省略・・・
【0117】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光フィルムが挙げられる。偏光フィルムは偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0118】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。
・・・省略・・・
【0127】
本発明の粘着剤層付光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成等に好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着剤層付光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤層付光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型等の任意なタイプ等のものを用いうる。
【0128】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着剤層付光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたもの等の適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による粘着剤層付光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散層、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散シート、バックライト等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。」

(3)「【実施例】
【0129】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
・・・省略・・・
【0131】
<偏光フィルムの作成>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルムを作成した。
【0132】
実施例1
(アクリル系ポリマー(A1)の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート74.8部、フェノキシエチルアクリレート23部、N−ビニル−2−ピロリドン1.5部、アクリル酸0.3部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.4部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)160万、Mw/Mn=3.7のアクリル系ポリマー(A1)の溶液を調製した。
【0133】
(粘着剤組成物の調製)
製造例1で得られたアクリル系ポリマー(A1)の溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(三井化学社製のタケネートD160N,トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部、およびγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0134】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが23μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。次いで、上記で作成した偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0135】
実施例2〜29、比較例1〜13
実施例1において、表1に示すように、アクリル系ポリマー(A)の調製に用いたモノマーの種類、その使用割合を変え、また製造条件を制御して、表1に記載のポリマー性状(重量平均分子量,Mw/Mn)のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0136】
また、得られた各アクリル系ポリマーの溶液に対して、表1に示すように、架橋剤(B)の種類またはその使用量、シランカップリング剤(C)の種類または使用量(または使用しない)を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。また、当該アクリル系粘着剤組成物の溶液を用いて、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光板を作製した。なお、実施例24乃至26、28および比較例5ではイオン性化合物(D)を、実施例27では反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(E)を表1に示す割合で配合したアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0137】
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤層付偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、表面抵抗値の測定は、実施例24乃至26、28および比較例5で得られた粘着剤層付偏光フィルムについてのみ行った。
【0138】
<ガラスでの耐久性試験>
粘着剤層付偏光フィルムを37インチサイズに切断したものをサンプルとした。当該サンプルを、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,EG−XG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、80℃、85℃、90℃(但し、90℃については、実施例3、23、25、28、29と比較例4、5についてのみ)の各雰囲気下で500時間処理を施した後(加熱試験)、また、60℃/90%RH、60℃/95%RHの各雰囲気下で500時間処理を施した後(加湿試験)、また、85℃と−40℃の環境を1サイクル1時間で300サイクル施した後(ヒートショック試験)、偏光板とガラスの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
(評価基準)
◎:発泡、剥がれ等の外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
・・・省略・・・
【0142】
<導電性:表面抵抗値(Ω/□)>
粘着剤層付偏光フィルムのセパレータフィルムを剥がした後、粘着剤表面の表面抵抗値(初期)を測定した。また、粘着剤層付偏光フィルムを60℃/95%RHの環境に500時間投入した後、40℃で1時間乾燥させてから、セパレータフィルムを剥がした後、粘着剤表面の表面抵抗値(湿熱後)を測定した。測定は、三菱化学アナリテック社製MCP−HT450を用いて行った。
【0143】
<加湿白濁>
粘着剤層付偏光フィルムを50mm×50mmのサイズに切断し、ガラスに貼り合せた。さらに、厚さ25μmのPETフィルム(ダイアホイルT100−25B,三菱樹脂社製)を50mm×50mmのサイズに切断し、偏光フィルムの上面に貼り合せて測定用サンプルとした。測定用サンプルを60℃/95%RHの環境に250時間投入した後、室温下に取り出して10分後のヘイズ値を測定した。ヘイズ値は、村上色彩技術研究所社製のヘイズメーターHM150を用いて測定した。
・・・省略・・・
【0145】
【表1】

【0146】
表1において、アクリル系ポリマー(A)の調製に用いたモノマーは、
BA:ブチルアクリレート、
PEA:フェノキシエチルアクリレート、
NVP:N−ビニル−ピロリドン、
NVC:N−ビニル−ε−カプロラクタム、
AAM:アクリルアミド、
AA:アクリル酸、
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート、
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、を示す。
架橋剤(B)における、「イソシアネート系」の「D160N」は三井化学社製のタケネートD160N(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体)、「C/L」は日本ポリウレタン工業社製のコロネートL(トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)を、
「過酸化物系」はベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製,ナイパーBMT)を、
「シランカップリング剤(C)」は、
KBM403:信越化学工業(株)製のKBM403、
X−41−1056:信越化学工業(株)製のX−41−1056を、
「イオン性化合物(D)」は、
Li−TFSI:三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム;
EMP−TFSI:三菱マテリアル社製の1−エチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、を示す。
「ポリエーテル化合物(E)」は、カネカ社製のサイリルSAT10を示す。
【0147】
【表2】


(当合議体注:上記【0146】の記載中、「N−ビニル−ピロリドン、」の記載は、「N−ビニル−2−ピロリドン、」の誤記と認める(上記【0132】を参照))

2 引用発明
引用文献1の【0129】〜【0147】には、実施例25の「粘着剤層付き偏光フィルム」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート81.8部、フェノキシエチルアクリレート16部、N−ビニル−2−ピロリドン1.5部、アクリル酸0.3部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.4部を含有するモノマー混合物を仕込み、さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)157万、Mw/Mn=3.3のアクリル系ポリマーの溶液を調製し、得られたアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(三井化学社製のタケネートD160N,トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.3部、およびγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)0.2部、イオン性化合物(D)(Li−TFSI:三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)を1部配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製し、
上記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが23μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成し、次いで、偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して作製した、粘着剤層付偏光フィルムであって、
粘着剤層付偏光フィルムのセパレータフィルムを剥がした後に測定した粘着剤表面の表面抵抗値(初期)と、粘着剤層付偏光フィルムを60℃/95%RHの環境に500時間投入した後、40℃で1時間乾燥させてから、セパレータフィルムを剥がした後に測定した粘着剤表面の表面抵抗値(湿熱後)が、それぞれ4.1E+10と、4.5E+10である粘着剤層付偏光フィルム。」


第5 対比
本件補正発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

1 粘着剤層、偏光フィルム、粘着剤層付偏光フィルム
引用発明の「粘着剤層」、「偏光フィルム」及び「粘着剤層付偏光フィルム」は、その文言からみて、それぞれ本件補正発明1の「粘着剤層」、「偏光フィルム」及び「粘着剤層付偏光フィルム」に相当する。
また、引用発明の「粘着剤層付偏光フィルム」は、「偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して作製した」ものである。
そうしてみると、その構成及び上記対比結果からみて、引用発明の「粘着剤層付偏光フィルム」は、本件補正発明1の「粘着剤層付偏光フィルム」に対し、「粘着剤層と偏光フィルムを有する」という要件を満たす。

2 粘着剤層の材料
引用発明の「アクリル系粘着剤組成物」は、「ブチルアクリレート81.8部、フェノキシエチルアクリレート16部、N−ビニル−2−ピロリドン1.5部、アクリル酸0.3部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.4部を含有するモノマー混合物を仕込み、さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)157万、Mw/Mn=3.3のアクリル系ポリマーの溶液を調製し、得られたアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、」「イオン性化合物(D)(Li−TFSI:三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)を1部配合し」たものである。
ここで、引用発明の「ブチルアクリレート」及び「4−ヒドロキシブチルアクリレート」は、その化合物名からみて、それぞれ本件補正発明1の「アルキル(メタ)アクリレート」及び「極性官能基含有モノマー」に相当する。
また、引用発明の「アクリル系ポリマー」は、本件補正発明1の「(メタ)アクリル系ポリマー」に相当し、その合成材料及び上記対比結果からみて、本件補正発明1の「(メタ)アクリル系ポリマー」に対し、「モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートおよび極性官能基含有モノマーを含有する」という要件を満たす。
さらに、引用発明の「イオン性化合物(D)(Li−TFSI:三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)」は、その化合物名からみて、本件補正発明1の「無機カチオンアニオン塩」に相当する。
また、引用発明の「アクリル系粘着剤組成物」は、その文言からみて、本件補正発明1の「粘着剤組成物」に相当し、その構成材料及び上記対比結果からみて、本件補正発明1の「粘着剤組成物」に対し、「モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートおよび極性官能基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、無機カチオンアニオン塩を含有する」という要件を満たす。
くわえて、引用発明の「粘着剤層」は、「アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが23μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に」「形成した」ものである。
そうしてみると、その構成及び上記対比結果からみて、引用発明の「粘着剤層」は、本件補正発明1の「粘着剤層」に対し、「モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートおよび極性官能基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、無機カチオンアニオン塩を含有する粘着剤組成物より形成され」という要件を満たす。

3 一致点
本件補正発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「 粘着剤層と偏光フィルムを有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートおよび極性官能基含有モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、無機カチオンアニオン塩を含有する粘着剤組成物より形成される粘着剤層付偏光フィルム。」

4 相違点
本件補正発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
「粘着剤層付偏光フィルム」が、本件補正発明1は、「偏光フィルムと粘着剤層の間にアンカー層を有し、前記アンカー層は導電ポリマーを含有」するものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(相違点2)
「粘着剤層」の「無機カチオンアニオン塩」が、本件補正発明1は、「(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.05〜20重量部(但し、0.0001〜5重量部の場合を除く)を含有」するものであるのに対し、引用発明は、アクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、1部である点。

(相違点3)
「粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)」(但し、前記aは、前記偏光フィルムに前記粘着剤層を設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に250時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。)が、本件補正発明1は、「5以下」であるのに対して、引用発明は、不明である点。


第6 判断
相違点についての判断は以下のとおりである。
1 相違点1についての判断
引用文献1の【0007】には、「静電気は、液晶表示装置内部の液晶の配向に影響を与え、不良を招くようになる。また、液晶表示装置の使用時に静電気による表示ムラが生じる場合がある。静電気の発生は、例えば、偏光フィルムの外面に帯電防止層を形成することにより抑えることができるが、静電気発生の根本的な位置で発生を抑えるためには、粘着剤層に帯電防止機能を付与することが効果的である。」と記載されている。
また、粘着剤層付偏光フィルムにおいて、偏光フィルムと粘着剤層との間に両者の投錨力(密着性)の向上を目的としたアンカー層を設けることは、先の出願前に周知の技術である。そして、粘着剤層付偏光フィルムの帯電防止を目的として、このアンカー層に導電性を付与すること、具体的には、アンカー層に導電ポリマーを含有させることも、例えば、上記特開2016−62028号公報の【0072】〜【0074】や、引用文献3(特開2013−253202号公報)の【0001】、【0004】、【0007】、【0011】〜【0035】等に記載されているように、先の出願前に周知の技術である。
したがって、引用発明において、偏光フィルムと粘着剤層との投錨力(密着性)を向上させるとともに、より優れた帯電防止機能を得る目的で、上記先の出願前に周知の技術に基づいて、導電性を付与したアンカー層を採用し、上記相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たものである。

2 相違点2についての判断
引用文献1の【0094】には、「本発明の粘着剤組成物におけるイオン性化合物(D)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。」、「前記イオン性化合物(D)は10重量部より多いと、耐久性が十分ではなくなる場合がある。」と記載されている。
さらに、粘着剤層付偏光フィルムにおいて、粘着剤層中の無機カチオンアニオン塩(アルカリ金属塩)の含有量を、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して5重量部を超えて含有させることは、例えば、特表2014−514387号公報の【0109】〜【0116】等に記載されているように一般的に行われている。
そうしてみると、引用発明において、上記引用文献1に記載された示唆に基づいて、無機カチオンアニオン塩(アルカリ金属塩)であるLi−TFSI:三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの含有量を、相違点2に係る範囲とすることは、当業者が容易想到し得たものである。

3 相違点3についての判断
引用発明の「粘着剤層付偏光フィルムのセパレータフィルムを剥がした後に測定した粘着剤表面の表面抵抗値(初期)」が、本件補正発明1の「a」すなわち「偏光フィルムに前記粘着剤層を設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値」に相当する、あるいは少なくとも、両者が近接した値であることは明らかである。また、引用発明の「粘着剤層付偏光フィルムを60℃/95%RHの環境に500時間投入した後、40℃で1時間乾燥させてから、セパレータフィルムを剥がした後に測定した粘着剤表面の表面抵抗値(湿熱後)」が、本件補正発明1の「b」すなわち「粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に250時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値」に近接した値であることは明らかである。
そして、引用発明について表面抵抗値(湿熱後)を表面抵抗値(初期)で除した値、すなわち(4.5E+10)/(4.1E+10)が、約1.1であること、さらに、引用文献1の【0014】には「温度や湿度が変化しても表面抵抗値が変化せず、長期に渡って安定した帯電防止機能を付与できる粘着剤が求められている」との課題が示されていることからしても、引用発明の粘着剤層付偏光フィルムにおける粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)は、「5以下」である蓋然性が高い。

4 発明の効果について
本件補正発明1の効果として、本件出願の明細書の【0027】、【0028】には、「本発明のインセル型液晶パネルにおける視認側の粘着剤層付偏光フィルムは、粘着剤層に特定にモノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマー、及び、無機カチオンアニオン塩を含有することで、偏光フィルムと粘着剤層との密着性(投錨力)に優れ、加湿環境下であっても粘着剤層の白濁を防止でき(加湿白濁防止性)、加湿耐久性にも優れ、更に、帯電防止機能が付与されているため、インセル型液晶パネルにおいて、粘着剤層等のそれぞれの側面で導通構造を設けた場合には導通構造と接触することができ、かつ接触面積を十分に確保することができる。そのため、粘着剤層等のそれぞれの側面での導通が確保されて、導通不良による静電気ムラの発生を抑制することができる。」、「また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、前記(第1)粘着剤層の加湿前後の表面抵抗値の変動比についても所定範囲になるように制御することで、タッチセンサー感度が低下することがなく、加湿環境下での耐久性が悪くならないように制御しながら、粘着剤層側の表面抵抗値を低下させて所定の帯電防止機能を付与することができる。そのため、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、良好な帯電防止機能を有しながら、タッチセンサー感度を満足できる。」と記載されている。
しかしながら、本件補正発明1の上記効果は、引用発明が奏する効果、乃至は、当業者が引用発明や上記周知の技術から予測可能な範囲のものである。

5 審判請求書について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、令和3年6月8日提出の審判請求書において、概略、以下の点を主張している。
ア 引用文献1の段落[0094]には、「前記イオン性化合物(D)は、5重量部以下が好ましく、さらには3重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下であるのが好ましい。」との記載があり、引用文献1の段落[0094]の記載は、導電性材料(帯電防止剤)の含有量が多くすることにより帯電防止性を向上させることを指向させるものではなく、「帯電防止性の向上」の観点から、相違点を逆教示する開示になっている。

イ 引用文献1の段落[0094]の記載は、アルカリ金属塩及び/または有機カチオン−アニオン塩を含む、イオン性化合物(D)の全般について言及しているのみであり、本願発明のように、「無機カチオンアニオン塩」の割合について言及している記載ではない。

ウ 本願の段落[0124][0125]の表1、表2では、本願発明の無機カチオンアニオン塩の割合を満足する実施例5乃至14はESD評価の結果が「〇」または「◎」であるのに対して、本願発明に記載の無機カチオンアニオン塩の割合を満足しない実施例1乃至4ではESD評価の結果が「△」であり、本願発明は、引用文献1に記載された発明よりも、ESD評価において有利な効果を奏している。

エ 引用文献3には、粘着剤層が帯電防止剤(イオン性化合物)を含有することに関する記載はなく、まして、帯電防止剤(イオン性化合物)として、無機カチオンアニオン塩を含有することに関する記載はない。
一方、本願の段落[0124][0125]の表1、表2の実施例16と比較例3では、いずれもアンカー層を有する場合が記載されているが、アンカー層を適用する粘着剤層(無機カチオンアニオン塩を含有)を用いた実施例16は、アンカー層を適用する粘着剤層(有機カチオンアニオン塩を含有)を用いた比較例3に比べて、投錨力(密着性)、加湿耐久性において有利な効果を示している。

(2)審判請求人の主張に対する検討
ア 上記(1)アについて検討する。
引用文献1の【0094】には、「前記イオン性化合物(D)は、5重量部以下が好ましく、さらには3重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下であるのが好ましい。」との記載もあるが、同時に、「本発明の粘着剤組成物におけるイオン性化合物(D)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。」、「前記イオン性化合物(D)は10重量部より多いと、耐久性が十分ではなくなる場合がある。」ことも記載されており、当業者であれば、粘着剤組成物におけるイオン性化合物(D)の含有量を多くするに伴い、帯電防止性(導電性)が高まり、他方で、粘着剤層の耐久性が低下する、という関係にあることは、当該記載及び技術常識から容易に理解できることである。すなわち、引用文献1の当該記載は、イオン性化合物(D)の含有量について、帯電防止性(導電性)の向上の観点からの上限値を当業者に教示するものではないことは明らかである。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

イ 上記(1)イについて検討する。
上記「第6」「2」で述べたように、粘着剤層付偏光フィルムにおいて、粘着剤層中の無機カチオンアニオン塩(アルカリ金属塩)を、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して5重量部を超えて含有させることは、例えば、特表2014−514387号公報の【0109】〜【0116】等に記載されているように一般的に行われていることである。そして、引用文献1では、【0093】に「イオン性化合物(D)は単独でまたは複数を併用することができる。」と記載され、【0129】以下に記載の実施例(ないし比較例)では1種類のイオン性化合物(D)を単独で用いた例のみが示されている。してみると、引用発明において、無機カチオンアニオン塩(アルカリ金属塩)であるLi−TFSIの含有量を、5重量部を超えるように調製することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

ウ 上記(1)ウについて検討する。
粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤として、粘着剤に対するイオン性化合物の含有量を高めれば導電性が高まり、それに従って、帯電防止機能(ESD評価)も向上するという関係にあることは、技術常識から当業者にとって明らかである。上記イでも説示したとおり、引用発明においてイオン性化合物の含有量を、5重量部を超えるように調製することは当業者が容易に想到し得たことであり、その場合に、ESD評価が向上する効果を奏することは、当業者が予測可能な範囲のものである。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
なお、審判請求人の主張における「実施例5乃至14」は、本件補正発明1の要件を満足しないものである。

エ 上記(1)エについて検討する。
本件出願の明細書【0124】、【0125】の【表1】、【表2】には、実施例7と比較例2として、いずれもアンカー層を有しない場合が記載されており、アンカー層を適用しない粘着剤層(無機カチオンアニオン塩を含有)を用いた実施例7は、アンカー層を適用しない粘着剤層(有機カチオンアニオン塩を含有)を用いた比較例2に比べて、投錨力(密着性)、加湿耐久性において有利な効果を示している。
同じく、実施例3と実施例15には、いずれも無機カチオンアニオン塩を含有する粘着剤層の場合が記載されており、アンカー層を適用しない実施例3と、アンカー層を適用する実施例15とは、投錨力(密着性)、加湿耐久性において効果に差はみられない。同様に実施例1と実施例16においても大差は無い。
してみると、本件出願の明細書【0124】、【0125】の【表1】、【表2】の記載に基づいて理解できることは、投錨力(密着性)、加湿耐久性における有利な効果は、粘着剤層中に無機アニオンカチオン塩を含有させたことによる効果ということになる。その場合、そのような効果は引用発明が奏する効果であって、少なくとも、無機カチオンアニオン塩を含有する粘着剤層とアンカー層とによって相乗的に奏される新たな効果ではない。
したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
なお、引用文献3は、上記「第6」「1」で述べたとおり、アンカー層に関する周知技術を示すものであって、粘着剤層について帯電防止剤(イオン性化合物)を含有することが公知であることを示すために提示した文献ではない。また、審判請求人の主張における「実施例16」は、本件補正発明1の要件を満足しないものである。
以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用できない。
なお、令和3年9月2日に提出された上申書における審判請求人の主張も参酌したが、以上の判断について変わりはない。


第7 むすび
以上のとおり、本件補正発明1は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-10-29 
結審通知日 2021-11-09 
審決日 2021-11-26 
出願番号 P2019-509938
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 井亀 諭
関根 洋之
発明の名称 粘着剤層付偏光フィルム、インセル型液晶パネル用粘着剤層付偏光フィルム、インセル型液晶パネルおよび液晶表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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