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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1385879
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-16 
確定日 2022-06-21 
事件の表示 特願2017−150008「脳活動推定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017−209516、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成28年6月13日(優先権主張平成27年6月12日)に出願した特願2016−116905号の一部を平成29年8月2日に新たな特許出願としたものであって、平成31年3月6日に手続補正書が提出され、令和2年1月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月3日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し同年10月12日に意見書が提出され、令和3年3月5日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年6月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、令和3年12月2日に上申書が提出され、令和4年2月25日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年4月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月5日付け)の概要は次のとおりである。なお、原査定の備考欄の記載より、請求項1,2,6については、令和2年8月3日付け拒絶理由通知の理由2(進歩性)も拒絶査定の理由であると判断した。

理由1:(新規性)本願請求項1,2及び6係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:(進歩性)本願請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2014/145204号

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和4年2月25日付け)の概要は次のとおりである。

理由1:(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和4年4月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし3は以下のとおりの発明である。(下線は、請求人が付与したものであり、補正箇所を表している。)
「 【請求項1】
対象者の顔面のRGBデータの時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したRGBデータに基づき、前記顔面の時系列の血行量データを算出する血行量算出部と、
前記時系列の血行量データの集合を特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する解析部と、
前記複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部と、
を備える、脳活動推定装置。
【請求項2】
前記時系列の血行量データには、脳機能賦活課題が与えられている期間のデータが含まれている、
請求項1に記載の脳活動推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、鼻部周辺及び/又は前額部のRGBデータに基づいて脳活動を推定する、
請求項1または2に記載の脳活動推定装置。」

第5 当審拒絶理由通知の理由1について
1.当審拒絶理由通知の理由1は、補正前の請求項1の発明特定事項である「前記血行量算出部が算出した前記時系列の血行量データから求められた血行量分布に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部」における「血行量分布に基づいて前記対象者の脳活動を推定する」とは、どのような血行量分布でどのように血行量分布に基づいて脳活動を推定するのか不明であるし、また「血行量分布」が、本願明細書の段落【0048】及び【0082】に記載されている「血行量分布図」と同じものを指すのか否かが不明である、というものである。
2.これに対し、請求人は、令和4年4月27日提出の手続補正書により、補正前の請求項1の発明特定事項である、
「前記血行量算出部が算出した前記時系列の血行量データから求められた血行量分布に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部」
を、
「前記時系列の血行量データの集合を特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する解析部と、
前記複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部」
に補正した本願発明1とした。
3.上記補正は、本願の明細書の段落【0046】ないし【0048】及び【0082】の記載に基づくものであり、血行量データの集合が特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解され、それら分解された複数の成分それぞれに応じた血行量分布図であることが明確になり、複数の成分それぞれに応じた血行量分布図に基づいて脳活動を推定することが明確になった。
4.したがって、本願発明1ないし3に対する当審拒絶理由通知の理由1は解消された。
(なお、本願発明1の「前記複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて前記対象者の脳活動を推定する」手法については、明細書の段落【0082】ないし【0084】に開示されていることから、発明の詳細な説明によりサポートもされている。)

第6 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2014/145204号)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。また、当審訳を引用箇所の後に記す。)
(1)「[0002] This application relates generally to analysis of mental states, and more particularly to mental state analysis using heart rate collection based on video imagery.」
(当審訳:[0002] このアプリケーションは、一般的に精神状態の分析に関連し、より具体的には、ビデオ画像に基づく心拍数収集を使用した精神状態分析に関連する。)

(2)「[0007] Heart rate and other types of analysis can be gleaned from facial video as someone observes various media presentations. The information on heart rates can be used to aid in mental state analysis. A method for mental state analysis is described which includes obtaining video of an individual as the individual is interacting with a computer, either by performing various operations or by consuming a media presentation. The video is then analyzed to determine heart rate information on the individual including both heart rate and heart rate variability. A mental state of the individual is then inferred based on the heart rate information. A computer-implemented method for mental state analysis is disclosed comprising: obtaining video of an individual; analyzing the video to determine heart rate information; and inferring mental states of the individual based on the heart rate information.」
(当審訳:[0007] 心拍数やその他のタイプの分析は、誰かがさまざまなメディアプレゼンテーションを観察するときに、顔のビデオから収集できる。心拍数に関する情報は、精神状態の分析に役立てることができる。個人が様々な操作を実行することによって、またはメディアプレゼンテーションを消費することによって、個人がコンピュータと対話しているときに個人のビデオを取得することを含む、精神状態分析のための方法が説明される。次に、ビデオを分析して、心拍数と心拍数の変動性の両方を含む、個人の心拍数情報を決定する。次に、心拍数情報に基づいて個人の精神状態が推測される。精神状態分析のためのコンピュータ実装された方法は、以下を含むように開示される。個人のビデオを得ること。ビデオを分析して心拍数情報を決定すること。心拍数情報に基づいて個人の精神状態を推測すること。)

(3)「[0021] Fig. 1 is a flow diagram 100 for mental state analysis. The flow 100 describes a computer- implemented method for mental state analysis. The flow 100 includes obtaining video 110 of an individual. In some embodiments the video is captured using a webcam 112 while in other embodiments the video is received from another computer 114 and/or over the Internet 116. The video can be color video and can be of various spatial resolutions, frame rates (temporal resolution), and lengths. ・・・.」
(当審訳:[0021] 図1は、精神状態分析の流れ図100である。フロー100は、精神状態分析のためのコンピュータ実装の方法を説明している。フロー100は、個人のビデオ110を取得することを含む。いくつかの実施形態では、ビデオはウェブカメラ112を使用してキャプチャされ、他の実施形態では、ビデオは別のコンピュータ114からおよび/またはインターネット116を介して受信される。ビデオはカラービデオであり得、様々な空間解像度、フレームレート(時間解像度)、および長さ、であり得る。)

(4)「[0022] The flow 100 continues by analyzing the video to determine heart rate information 120. The analyzing can be performed using any type of algorithm, but one algorithm that can be used is described in more detail in Fig. 3. In some embodiments, the heart rate information includes a measure of heart rate (HR) 122. The heart rate can be an instantaneous heart rate or an average heart rate over a period of time. In some embodiments, the heart rate information includes heart rate variability (HRV) 123. In some embodiments, the analyzing correlates the heart rate information to a stimulus 124 such as a scene of a movie, a portion of an advertisement, a specific task performed within a software application, or any other type of stimulus generated by the individual's interaction with the computer, by an external event, or through some other context. ・・・In some embodiments, the analyzing includes calculating blood volume pulse (BVP) 128. The BVP can be included in the heart rate information, and/or can be used to calculate the heart rate information, depending on the embodiment.」
(当審訳:[0022] フロー100は、ビデオを分析して心拍数情報120を決定することによって継続する。分析は、任意のタイプのアルゴリズムを使用して実行できるが、使用できる1つのアルゴリズムは、図3にさらに詳細に記載されている。心拍数情報には、心拍数(HR)122の測定値が含まれる。心拍数は、瞬間心拍数または一定期間の平均心拍数にすることができる。いくつかの実施形態では、心拍数情報は、心拍変動(HRV)123を含む。いくつかの実施形態では、分析は、心拍数情報を、映画のシーン、広告の一部、ソフトウェアアプリケーション内で実行される特定のタスク、コンピュータとの個人の相互作用、外部イベント、またはその他のコンテキストによって生成される刺激124に相関させる。・・・いくつかの実施形態では、分析は、血液量パルス(BVP)128の計算を含む。BVPは、実施形態に応じて、心拍数情報に含まれ得、および/または心拍数情報を計算するために使用され得る。)

(5)「[0024] The flow 100 further comprises inferring an individual's mental states based on the heart rate information 140. The mental states can include one or more of frustration, confusion, disappointment, hesitation, cognitive overload, focusing, engagement, attention, boredom, exploration, confidence, trust, delight, disgust, skepticism, doubt, satisfaction, excitement, laughter, calmness, stress, and curiosity. The inferring can include determining arousal 142, determining attention 144, and/or determining valence 146. The method can include interpreting physiological arousal from the heart rate information.Various combinations of the absolute value, relative value, phasic response, and/or tonic response of HR, HRV, BVP, and/or other heart rate information can be used for the inferring. For example, a phasic response of HR can be used to infer attention and a tonic response of HR can be used to infer arousal. A decrease in phasic HR can be used to infer a change of valence with a measure of tonic HR used to infer the direction of the change of valence. In some embodiments, a time lag is factored into the inference 148, as there can be a lag between the video and the stimulus as well as a lag in the individual's heart-rate response to the stimulus. The time-lag factoring can be used to help correlate the response to a specific stimulus. In some embodiments, the flow 100 further comprises aggregating 149 the heart rate information for the individual with other people and/or inferring mental states of the plurality of other people based on the heart rate information on the plurality of other people. Such aggregation can be useful in determining a mental state of the group of people, or a group's response to a certain stimulus.」
(当審訳:[0024] フロー100は、心拍数情報140に基づいて個人の精神状態を推測することをさらに含む。精神状態は、1つまたは複数の欲求不満、混乱、失望、ためらい、認知過負荷、集中、関与、注意、退屈、探索、自信、 信頼、喜び、嫌悪感、懐疑論、疑い、満足、興奮、笑い、落ち着き、ストレス、好奇心を含む。推論は、覚醒142の決定、注意144の決定、および/または価数146の決定を含むことができる。この方法は、心拍数情報から生理学的覚醒を解釈することを含むことができる。HR、HRV、BVP、および/または他の心拍数情報の絶対値、相対値、位相応答、および/または強直性応答のさまざまな組み合わせを推測に使用することができる。たとえば、HRの位相応答を使用して注意を推測し、HRの強直性応答を使用して覚醒を推測することができる。相性HRの減少は、価数の変化の方向を推測するために使用される強直性HRの測定値を使用して、価数の変化を推測するために使用できる。いくつかの実施形態では、ビデオと刺激との間にラグ、ならびに刺激に対する個人の心拍数応答にラグがあり得るので、タイムラグが推論148に考慮される。タイムラグファクタリングは、特定の刺激に対する反応を相関させるのに役立つ。いくつかの実施形態では、フロー100は、個人の心拍数情報を他の人と一緒に集約する149、および/または複数の他の人の心拍数情報に基づいて複数の他の人の精神状態を推測することをさらに含む。このような集計は、人々のグループの精神状態、または特定の刺激に対するグループの反応を判断するのに役立つ。)

(6)「[0028] The webcam 230 can have a line-of-sight 232 to the user's 220 face, and can capture any one or more of video, audio, and still images of the individual 220. A webcam, as the term is used herein, can include a video camera, a still camera, a thermal imager, a CCD device, a phone camera, a three-dimensional camera, a depth camera, multiple webcams used to show different views of a person, or any other type of image capture apparatus which can allow image data to be captured and used in an electronic system. The images of the person 220 as taken by the webcam 230 can be captured by a video capture unit 240. In some embodiments, video is captured, while in others, one or more still images are captured at regular or irregular intervals. In some embodiments, the one or more still images are used to create a video, which can have a variable frame rate. The captured video or still images can be analyzed to determine one or both of facial movements 242 and heart rate information 244. The facial movements can include information on facial expressions, action units, head gestures, smiles, smirks, brow furrows, squints, lowered eyebrows, raised eyebrows, or attention. In some embodiments, the webcam 230 can also capture images of the setting, which can assist in determining contextual information, other physiological data, gestures, actions, and/or other movements. The analysis of the video can be used to infer a mental state 250 of the user 220.」
(当審訳:[0028] ウェブカメラ230は、ユーザ220の顔に対して視線232を有することができ、個人220のビデオ、オーディオ、および静止画像の任意の1つまたは複数をキャプチャすることができる。ウェブカメラは、本明細書で使用される用語として、以下を含むことができる。ビデオカメラ、スチルカメラ、サーマルイメージャー、CCDデバイス、電話カメラ、3次元カメラ、深度カメラ、人のさまざまなビューを表示するために使用される複数のWebカメラ、または、画像データをキャプチャして電子システムで使用できるようにすることができるその他のタイプの画像キャプチャ装置。ウェブカメラ230によって撮影された人物220の画像は、ビデオキャプチャユニット240によってキャプチャすることができる。いくつかの実施形態では、ビデオがキャプチャされ、他の実施形態では、1つまたは複数の静止画像が一定または不規則な間隔でキャプチャされる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の静止画像を使用して、可変フレームレートを有することができるビデオを作成する。キャプチャされたビデオまたは静止画像を分析して、顔の動き242および心拍数情報244の一方または両方を決定することができる。顔の動きは表情の表現、動作単位、頭のジェスチャ、笑顔、にやにや、額の溝、細目、眉毛の下降、眉毛の隆起、または注意の情報を含みうる。いくつかの実施形態では、ウェブカメラ230はまた、設定の画像をキャプチャすることができ、これは、文脈情報、他の生理学的データ、ジェスチャ、アクション、および/または他の動きを決定するのを助けることができる。ビデオの分析を使用して、ユーザ220の精神状態250を推測することができる。)

(7)「[0033] The flow 300 can further comprise decomposing the raw traces into at least one independent source signal 340. The decomposition can be accomplished using independent component analysis (ICA). Independent component analysis (ICA) is a technique for uncovering independent signals from a set of observations composed of linear mixtures of underlying sources. In this case, the underlying source signal of interest can be BVP. During the cardiac cycle, volumetric changes in the blood vessels modify the path length of the incident ambient light, which in turn changes the amount of light reflected, a measurement which can indicate the timing of cardiovascular events. By capturing a sequence of images of the facial region with a webcam, the red, green and blue (RGB) color sensors pick up a mixture of reflected plethysmographic signals along with other sources of fluctuations in light due to artifacts. Given that hemoglobin absorptivity differs across the visible and near- infrared spectral range, each color sensor records a mixture of the original source signals with slightly different weights. The ICA model assumes that the observed signals are linear mixtures of the sources where one of the sources is hemoglobin absorptivity or reflectivity. ICA can be used to decompose the raw traces into a source signal representing hemoglobin absorptivity correlating to BVP. Respiration rate information is also determined, in some embodiments.」
(当審訳:[0033] フロー300は、生のトレースを少なくとも1つの独立したソース信号340に分解することをさらに含むことができる。分解は、独立成分分析(ICA)を使用して達成することができる。独立成分分析(ICA)は、基礎となるソースの線形混合で構成される一連の観測から独立信号を明らかにするための手法である。この場合、対象となる基になるソース信号はBVPである可能性がある。心周期の間、血管の体積変化は、入射する周囲光の経路長を変更し、それが次に反射される光の量を変更し、これは心血管イベントのタイミングを示すことができる測定値である。ウェブカメラで顔の領域の一連の画像をキャプチャすることにより、赤、緑、青(RGB)のカラーセンサーは、アーティファクトによる他の光の変動源とともに、反射したプレチスモグラフ信号の混合物を検出する。ヘモグロビンの吸収率が可視および近赤外のスペクトル範囲で異なることを考えると、各カラーセンサーは、わずかに異なる重みを持つ元のソース信号の混合物を記録する。ICAモデルは、観測された信号がソースの線形混合物であり、ソースの1つがヘモグロビン吸収率または反射率であると想定している。ICAを使用して、生のトレースをBVPに相関するヘモグロビン吸収率を表すソース信号に分解できる。いくつかの実施形態では、呼吸数情報も決定される。)

(8)「Fig.1



(9)上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ビデオ画像に基づく心拍数収集を使用した精神状態分析に関連する装置において、
可変フレームレートを有することができるユーザ220のビデオ110をユーザ220の顔に対して視線232を有するウェブカメラ230でキャプチャして、ウェブカメラ230の赤、緑、青(RGB)のカラーセンサーが反射したプレチスモグラフ信号の混合物を検出し、
上記ビデオ110を分析して血液量パルス(BVP)128の計算及び心拍数情報120の決定を行い、
さらに、独立成分分析(ICA)を使用してビデオ110を血液量パルス(BVP)に相関するヘモグロビン吸収率を表すソース信号に分解できる、
装置。」

第7 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1における「ユーザ220」は、本願発明1における「対象者」に相当する。
イ 引用発明1における「ウェブカメラ230」は、「ユーザ220の顔に対して視線232を有」し「可変フレームレートを有することができるユーザ220のビデオ110を」「キャプチャして、ウェブカメラ230の赤、緑、青(RGB)のカラーセンサーが反射したプレチスモグラフ信号の混合物を検出」するものであるから、本願発明1における「対象者の顔面のRGBデータの時系列データを取得するデータ取得部」に相当する。
ウ 引用発明1は、「上記ビデオ110を分析して血液量パルス(BVP)128の計算」を行う装置であることから、本願発明1における「前記データ取得部が取得したRGBデータに基づき、前記顔面の時系列の血行量データを算出する血行量算出部」を備えている。
エ 引用発明1は、「独立成分分析(ICA)を使用してビデオ110を血液量パルス(BVP)に相関するヘモグロビン吸収率を表すソース信号に分解できる」ことから、本願発明1における「前記時系列の血行量データの集合を」「独立成分分析により」「分解する解析部」を備えている。
オ 引用発明1における「ビデオ画像に基づく心拍数収集を使用した精神状態分析に関連する装置」は、精神状態は脳活動により引き起こされる状態であることから、本願発明1における「対象者の脳活動を推定する推定部」「を備える、脳活動推定装置」に相当する。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「対象者の顔面のRGBデータの時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したRGBデータに基づき、前記顔面の時系列の血行量データを算出する血行量算出部と、
前記時系列の血行量データの集合を独立成分分析により分解する解析部と、
前記対象者の脳活動を推定する推定部と、
を備える、脳活動推定装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点>
解析部と推定部が、本願発明1は、「前記時系列の血行量データの集合を特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する解析部と、前記複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部」であるのに対し、引用発明1は、ビデオ110を独立成分分析(ICA)を使用して血液量パルス(BVP)に相関するヘモグロビン吸収率を表すソース信号に分解し、心拍数情報を決定し、精神状態を分析しているものの、独立成分分析により分解された複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて脳活動を推定していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1に係る本願発明1の「前記時系列の血行量データの集合を特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する解析部と、前記複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部」という構成は、上記引用文献1には記載されておらず、本願の原出願の優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明1ではなく、当業者であっても引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし3について
本願発明1を引用する本願発明2ないし3も、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1ではなく、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第8 原査定についての判断
令和4年4月27日付けの手続補正により、補正後の請求項1ないし3は、「前記時系列の血行量データの集合を特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する解析部と、前記複数の成分に応じた血行量分布図に基づいて前記対象者の脳活動を推定する推定部」を備えるという技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献1には記載されておらず、本願の原出願の優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし3は、原査定における引用文献1に記載された発明ではなく、当業者であっても、原査定における引用文献1に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-06-06 
出願番号 P2017-150008
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 伊藤 幸仙
渡戸 正義
発明の名称 脳活動推定装置  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
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