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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1385915
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-05 
確定日 2022-07-05 
事件の表示 特願2018−216778「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020− 81099、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月19日の出願であって、令和2年11月12日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年1月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶査定(原査定)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年4月6日)、これに対し、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1−4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2018−86157号公報
2.特開2014−54334号公報
3.特開2018−175328号公報
4.特開2014−36686号公報

第3 審判請求時の補正(以下「本件補正」という。)について
1 本件補正
令和3年7月5日に提出された手続補正書による本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2は、
(補正後:令和3年7月5日付け手続補正書による補正)
「 【請求項1】
A 第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
B 第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
C 点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
D 前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
E 演出表示手段を少なくとも含む演出手段と、
F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、を備え、
G 前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
H 前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
I 前記演出制御手段は、
J 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を前記演出表示手段に表示させず、且つ、前記第一の始動口に係る図柄変動の保留数を特定可能な第三画像を前記演出表示手段に表示させ、
K 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示及び前記第三画像を前記演出表示手段に表示させ、
L 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示及び前記第三画像を前記演出表示手段に表示させず、
M 当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させ、且つ、少なくとも前記右打ち表示を表示させる期間において前記第三画像を前記演出表示手段に表示させず、
N 前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ、更に、当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後に前記点灯手段を点灯させ、
O 前記特定の場合において、前記演出制御手段は、前記第二の始動口への遊技球の入賞が
発生しても前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させない遊技機。
【請求項2】
P 前記演出制御手段は、前記特定の場合において、一般入賞口への遊技球の入賞、アウト口の遊技球の通過、又は所定の遊技操作の検知のうち少なくとも一つが発生しても前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させる請求項1に記載の遊技機。」へと補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。また、符号AからPは、当審にて分説して付した。)。

2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項1について、

ア 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断の発生前に前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一画像を前記演出表示手段に表示させず、」「且つ、当該電断の発生前に前記第一の始動口に係る図柄変動の保留数を特定可能な第三画像を前記演出表示手段に表示させ、」ることについて、「所定領域への遊技球の打ち出し又は」「所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す第一画像」を「右打ち表示」と限定するとともに、その条件に関して「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、」との限定を加えるとともに、

イ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断の発生前に」おける他の条件として、「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、」と限定するとともに、これを満たした場合の動作に関して「前記右打ち表示及び前記第三画像を前記演出表示手段に表示させ」る、との限定を加えるとともに、

ウ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断の発生前に」おけるさらなる他の条件として、「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、」と限定するとともに、これを満たした場合の動作に関して「前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示及び前記第三画像を前記演出表示手段に表示させず、」との限定を加えるとともに、

エ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断後の復電後に前記第一画像を前記演出表示手段に表示させ、」「少なくとも当該電断後の復電後に前記第一画像を表示させる期間において、前記第三画像を前記演出表示手段に表示させず、」について、「第一画像」を「右打ち表示」と限定するとともに、その条件に関して「前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、」との限定を加えるとともに、

オ 発明を特定するために必要な事項である、「当該電断後の復電後にも、前記点灯手段を点灯させ、」について、「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、」との限定を加えるものである。

また本件補正は、補正前の請求項2について、

カ 発明を特定するために必要な事項である、「前記特定の場合において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生すると前記第一画像を前記演出表示手段に表示させ、」ることについて、補正後の請求項1に上記「イ」に係る限定を加えたことに伴い、これを削除するものである。

(2)補正目的
上記(1)の補正事項ア〜カは、補正前の発明特定事項に限定を加えるものであって、補正後の請求項1及び2に係る発明は、補正前の請求項1及び2に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1及び2についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の【0235】〜【0256】、図21〜図27の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

(4)独立特許要件
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1及び請求項2に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

第4 本願発明1及び本願発明2
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)及び本件出願の請求項2に係る発明(以下「本願発明2」という。)は、本件補正により補正された、上記「第3 1 本件補正」で示した特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりのものである。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 「【0030】
第1特別図柄表示器4aは、第1始動口21に遊技球が入賞することに対応して表示図柄が変動して表示される。例えば、第1特別図柄表示器4aは、7セグ表示装置で構成され、第1始動口21に遊技球が入賞した場合、第1特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示する。また、第2特別図柄表示器4bは、第2始動口22に遊技球が入賞することに対応して表示図柄が変動して表示される。例えば、第2特別図柄表示器4bも同様に、7セグ表示装置で構成され、第2始動口22に遊技球が入賞した場合、第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示する。普通図柄表示器4eは、役連作動ゲート25を遊技球が通過することに対応して表示図柄が変動して表示される。例えば、普通図柄表示器4eは、LED表示装置で構成され、遊技球が役連作動ゲート25を通過した場合、普通図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示する。なお、以下の説明では、第1特別図柄表示器4aにより変動表示される特別図柄(つまり、第1特別図柄抽選に基づいて変動表示される特別図柄)を第1特別図柄と称し、あるいは特1と略称し、第2特別図柄表示器4aにより変動表示される特別図柄(つまり、第2特別図柄抽選に基づいて変動表示される特別図柄)を第2特別図柄と称し、あるいは特2と略称することがある。
・・・
【0032】
遊技状態表示器4gは、例えばLED表示装置で構成され、遊技機1の電源投入時点における遊技状態(時短状態等)を表示する。右打ち表示器4hは、例えばLED表示装置で構成され、大当り遊技が行われているときや、後述する高確状態のときのように、上記した右打ちを行うと有利なときに点灯し、右打ちを行っても有利ではないとき(左打ちを行うべきとき)には消灯することで、右打ちを行うべきときを示す。」

イ 「【0037】
図4において、遊技機1の制御装置は、メイン制御部100、発射制御部200、払出制御部300、演出制御部400、画像音響制御部500、およびランプ制御部600等を備えている。
・・・
【0039】
メイン制御部100は、第1始動口21または第2始動口22に遊技球が入賞すると特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、特別図柄抽選で当選したか否かを示す判定結果データを演出制御部400に送る。
・・・
【0043】
メイン制御部100は、遊技の進行に応じて遊技状態を変化させ、又、遊技の進行に応じて、特別図柄抽選の当選確率、特別図柄抽選の実行間隔(特別図柄が表示器4に変動表示されて停止表示される時間と言ってもよい)、電動チューリップ27の開閉動作等を変化させる。」

ウ 「【0055】
画像音響制御部500は、演出制御部400から送られたコマンドに基づいて、第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示する画像およびスピーカ35から出力する音響を制御する。具体的には、画像音響制御部500のROM502には、特別図柄抽選結果を報知等するための装飾図柄等の画像(後述する装飾図柄DIや小図柄SIの画像)、予告演出や先読み予告演出を表示するためのキャラクタやアイテム等の画像、特別図柄抽選が保留されていることを示す保留画像、および各種背景画像等を、第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示するための画像データが記憶されている。また、画像音響制御部500のROM502には、第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示される画像と同期させて、または表示される画像とは独立に、スピーカ35から出力させる楽曲や音声等の各種音響データが記憶されている。画像音響制御部500のCPU501は、ROM502に記憶された画像データや音響データの中から、演出制御部400から送られたコマンドに対応したものを選択して読み出す。そして、CPU501は、読み出した画像データを用いて、背景画像表示、装飾図柄画像表示、およびキャラクタ/アイテム表示等のための画像処理を行って、演出制御部400から送られたコマンドに対応した各種演出表示を行う。そして、CPU501は、画像処理された画像データが示す画像を第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示する。また、CPU501は、読み出した音響データを用いて音声処理を行い、音声処理された音響データが示す音響をスピーカ35から出力する。」

エ 「【0060】
[本実施形態における遊技状態の概要]
次に、本実施形態における遊技機1の遊技状態について説明する。遊技機1の遊技状態としては、低確状態(通常状態)、高確状態、大当り遊技状態、小当り遊技状態が少なくとも存在する。低確状態(通常状態)は、特別図柄抽選の当選確率が通常の低確率(例えば1/150)に設定されている遊技状態であり、高確状態は、特別図柄抽選の当選確率が、低確状態よりも高確率(例えば1/70)に設定されている遊技状態である。大当り遊技状態とは、特別図柄抽選に当選して(大当りして)第2大入賞口51が開放される大当り遊技が実行されている遊技状態である。小当り遊技状態とは、特別図柄抽選において小当りに当選して第1大入賞口23が開放される小当り遊技が実行されている遊技状態である。なお、本実施形態では、低確状態であっても高確状態であっても、普通図柄抽選の実行時間(普通図柄の変動時間;例えば2.0秒)や普通図柄抽選の当選確率(例えば9/10)は同じであり、普通図柄抽選に当選した場合の電動チューリップ27の開放時間および開放回数(例えば、1.0秒間を1回)も同じである。つまり、本実施形態における遊技機1は、電動チューリップ27を備えるものの、電動チューリップ27に係る第2始動口22への遊技球入賞が容易となる、いわゆる電サポ(電チューサポート)状態を設けていない。このため、通常状態であっても高確状態であっても第2始動口22への入賞確率は変わらない。」

オ 「【0063】
まず、図6の(1)を用いて、大当りAに当選した場合の大当り遊技について説明する。特別図柄抽選に当選して大当り遊技を実行する権利が獲得され、大当り遊技のオープニングが行われているときに、役連作動ゲート25を遊技球が通過すると、第2大入賞口51が閉状態から開状態にされて1ラウンド(以下単に「R」と記載する場合がある)目のラウンド遊技が開始される。1R目のラウンド遊技において、第2大入賞口51に遊技球が8個入賞するか開放時間が29.5秒経過すると、第2大入賞口51が開状態から閉状態にされて1R目のラウンド遊技が終了される。その後、ラウンドとラウンドとの間のインターバル期間(例えば2秒間)が設けられた後に、1R目と同様に第2大入賞口51が開放されてから2R目のラウンド遊技が開始され、第2大入賞口51が閉鎖されて2R目のラウンド遊技が終了する。同様に、インターバル期間(2秒間)を挟んで第2大入賞口51の開閉によって3R目のラウンド遊技が実行される。そして、3R目のラウンド遊技の終了後、インターバル期間(例えば、それまでの2秒間よりも長い5秒間)が設けられた後に、第2大入賞口51が閉状態から開状態にされて4R目のラウンド遊技が開始される。4R目のラウンド遊技において、第2大入賞口51に遊技球が8個入賞するか開放時間が29.5秒経過すると、第2大入賞口51が開状態から閉状態にされて4R目のラウンド遊技が終了される。ここで、V領域53は、4R目のラウンド遊技において第2大入賞口51が開状態にされてから3秒後に閉状態から開状態にされ、第2大入賞口51が閉鎖されてから所定時間経過後(例えば1秒後)に閉状態に戻る。このことから、大当り遊技の4R目のラウンド遊技において、第2大入賞口51に入った遊技球が1つ以上V領域53を通過することが可能となる。そして、V領域53を遊技球が通過することを条件に、大当り遊技後の遊技状態が高確状態に制御され、より具体的には、大当り遊技が終了してから70回転終了するまで(つまり、特別図柄抽選が70回実行されて表示器4に特別図柄が70回変動されてから停止表示されるまで)の間高確状態に制御され、その後通常状態(低確状態)に制御されることとなる。なお、4R目のラウンド遊技において遊技球の打ち出しを行わなかった等の理由により、V領域53に1つも遊技球が通過しなかった場合には、大当り遊技後の遊技状態は低確状態に制御される。4R目のラウンド遊技が終了されると、所定のエンディング時間が経過することにより大当り遊技が終了し、その後、前述したように、4R目においてV領域53を遊技球が通過したことに基づいて高確状態に制御される。」

カ 「【0070】
[本実施形態における遊技システムの概要]
ここで、本実施形態における遊技システムの概要について説明する。前述したように、本実施形態では、電サポ状態が設けられていないため、高確状態であっても通常状態であっても同じ条件で第2始動口22へ遊技球を入賞させる(つまり、第2特別図柄抽選を始動させる)ことが可能である。しかし、詳細は後述の説明によって明らかとなるが、本実施形態では、第2特別図柄抽選に基づく変動時間(第2特別図柄の変動時間)が、通常状態のときには高確状態のときに比べて極めて長い時間(例えば、10分間)に設定されている。このため、通常状態において右打ちを行うことによって第2特別図柄抽選を始動させても、当該抽選が終了するまでに極めて長い時間を要し、遊技効率が極めて低下する。したがって、通常状態においては、遊技者は左打ちを行うことによって第1特別図柄抽選を始動させることが推奨される。このため、通常状態においては、右打ちを行うべきではない(左打ちを行うべき)ときであることを示すように、右打ち表示器4hが消灯表示される。通常状態において第1特別図柄抽選を始動させて、大当りBに当選した場合には、大当り遊技後には再度通常状態で制御される一方、大当りAに当選すると、大当り遊技後には高確状態で制御される。高確状態においては、第2特別図柄抽選に基づく変動時間は、通常状態における第1特別図柄抽選に基づく変動時間と同等である(またはより短い)ため、遊技者が右打ちを行うことによって第2特別図柄抽選を始動させても、遊技効率が低下するということはない。また、前述したように、第2特別図柄抽選に当選した場合の利益度合は、第1特別図柄抽選に当選した場合の利益度合よりも大きくなっており、かつ、第1特別図柄抽選では小当りは設けられていないのに対して、第2特別図柄抽選では小当りが頻発するように、小当り確率が高確率(1/1.6)に設定されている。このため、第2特別図柄抽選を始動させる方が遊技者にとって有利であり、したがって、高確状態においては、遊技者は右打ちを行うことによって第2特別図柄抽選を始動させることが推奨される。このため、高確状態においては、右打ちを行うべきときであることを示すように、右打ち表示器4hが点灯表示される。また、上記したように、原則として、高確状態において右打ちが行われているとき(右打ちを行うべきとき)に小当りが発生し、詳細は後述するが、小当り遊技中においては、遊技状態(高確状態)は切り替わらない。このため、小当り遊技が行われるときには、高確状態であることに基づいて、右打ち表示器4hが継続して点灯表示されることにより、右打ちを行うべきときであることが示される。高確状態において第2特別図柄抽選を始動させて大当りAまたは大当りCに当選すると、大当り遊技後には再度高確状態に制御される一方、規定の70回転の高確状態において大当りしなかった場合には、低確状態に制御されることで再び左打ちを行うことが推奨される。なお、規定の70回転の高確状態において大当りしなかった場合でも、小当りに当選することが多く、小当りに伴って規定期間(1.0秒間×1回)開放される第1大入賞口23に遊技球を入賞させることによって賞球を獲得可能であるため、遊技球を増加させることが可能となる。以上が、本実施形態における原則的な遊技システムである。」

キ 「【0094】
[メイン制御部100による復旧処理]
図9は、図7のステップS909における復旧処理の詳細フローチャートである。まず、図9のステップS9091において、CPU101は、復旧時におけるRAM103の作業領域を設定し、処理はステップS9092に移る。
【0095】
ステップS9092において、CPU101は、RAM103の情報を参照して、電源遮断時における遊技状態や特別図柄抽選の保留数に関する情報を確認し、当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信する。このように、CPU101は、パチンコ遊技機1に対する電源供給が復旧したことを通知するために、電源遮断時の状態を示す復旧通知コマンドを演出制御部400へ送信する。このステップS9092の処理により、演出制御部400は、電源遮断前の遊技状態等を確認することができる。
【0096】
ステップS9093において、CPU101は、周辺部の設定を行い、処理はステップS9094に移る。」

ク 「【0130】
なお、以上に説明した特別図柄ゲームの一連の制御時間を1つのタイマ機能を用いて計測する構成において、大当り遊技(または小当り遊技)の制御において大入賞口有効期間の直後に第1大入賞口23または第2大入賞口51への入賞を有効とみなさない大入賞口休止期間を設けてもよい。
また、第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示と、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示とを並行して実行可能な制御構成にして、例えば、第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示の制御時間と、第1特別図柄抽選の当選による大当り遊技に関する制御時間とを、1つのタイマ機能を用いて計測し、一方で、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示の制御時間と、第2特別図柄抽選の当選による大当り遊技に関する制御時間とを、1つの他のタイマ機能を用いて計測してもよい。
また、特別図柄ゲームおよび普通図柄ゲームの一連の制御時間をそれぞれ1つのタイマ機能を用いて計測する際に、計測対象時間の経過を、「減算」処理ではなく、「加算」処理によって計測する構成としてもよい。この場合、例えば、特別図柄ゲーム側のタイマ(11A)の値が、計測対象時間(例えば、特別図柄停止表示の時間0.5秒)を示す時間データの値「125」に到達したか否かを判定する制御となる。
また、上記したように図12の加算変動時間の部分のテーブルにおいて同じ時間データ値を重複して記憶せずに1つだけ記憶することに加えて、図12の基本変動時間の部分のテーブルにおいても同じ時間データ値を重複して記憶せずに1つだけ記憶する構成にして、使用メモリ領域抑制の効果を更に高めてもよい。
また、以上に説明した方法により、演出制御部400等によって実行される各種演出の実行時間を計測してもよい。」

ケ 「【0210】
ステップS4143において、CPU101は、遊技状態を設定する。具体的には、CPU101は、RAM103に格納された高確フラグを「OFF」に設定し、大当り遊技フラグを「ON」に設定する。ここで、大当り遊技フラグは、「ON」に設定されることにより大当り遊技中であることが示され、後述する図24のステップS627の処理により「OFF」に設定されることにより大当り遊技の終了が示される。また、CPU101は、右打ち表示器4hを点灯させる。なお、このステップS4143の処理において、上記した各種フラグの設定は、ステップS414の停止中処理が開始されてから(ステップS413の処理が終了してから)、規定の確定時間(0.5秒)が経過することで実行される。これにより、大当りを示す特別図柄が確定停止(既定の確定時間停止)すると、遊技状態が大当り遊技状態で制御される。一方、右打ち表示器4hの点灯は、ステップS414の停止中処理が開始されてから(ステップS413の処理が終了してから)、規定の確定時間(0.5秒)が経過し、さらに所定の準備期間(例えば3.0秒間)が経過することで実行される。なお、この所定の準備期間は、遊技者に、第2大入賞口51が開放される契機となる役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる期間であり、この準備期間が経過するまでは役連作動ゲート25を遊技球が通過しても有効な通過情報とはみなされず、第2大入賞口51は開放されない。一方、準備期間が経過するとゲート有効期間が開始され、このゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過すると、有効な通過情報とみなされて、第2大入賞口51が開放される。したがって、ゲート有効期間が開始されるときに、右打ちを行うべきときである(右打ちを行うと有利である)ことが示されることになる。その後、処理はステップS4144に移る。」

コ 「【0334】
ステップS134において、CPU401は、ステップS133で受信した客待ちコマンドおよび遊技状態通知コマンドに基づいて、画像音響制御部500等に指示して、客待ち処理を開始させる。なお、画像音響制御部500等への指示は、コマンドをRAM403にセットすることで行われる。そして、コマンド受信処理は終了し、処理は図27のステップS12に移る。なお、客待ち処理は、いわゆる客待ち状態になることを契機に開始される処理であり、客待ち処理の開始を指示された画像音響制御部500のCPU501は、例えば、報知演出の開始指示を受けるまで、この客待ち処理を実行し、報知演出の開始指示を受けることで、この客待ち処理を終了する。具体的には、CPU501は、客待ち処理の開始を指示されると、遊技状態に応じた所定の停止演出(例えば、装飾図柄が停止表示された演出)を第1画像表示部6aに表示し、この停止演出を開始してから所定時間(例えば90秒)が経過したときにCPU401から他の演出の指示を受けない場合に客待ち演出を開始する。ここで、客待ち演出(デモ演出)とは、例えば、遊技機1の題材となったコンテンツ(アニメや物語等)に関する映像を第1画像表示部6aに表示させる演出や、例えば、遊技中に実行される所定の演出(例えばリーチ演出)の一部を第1画像表示部6aに表示させる演出であり、この客待ち演出(デモ演出)によって、遊技が中断又は終了していることが示唆されるとともに、第1画像表示部6aに静止画像の焼き付き(ゴーストイメージ)が発生することが防止される。また、CPU501は、客待ち状態において役連作動ゲート25を遊技球が通過したことを示す情報や、普通入賞口に遊技球が入賞したことを示す情報を通知された場合には、客待ち処理を終了せずに継続する。」

サ 「【0387】
[本実施形態における報知演出の画面構成例]
まず、図41を参照して、本実施形態において特別図柄の変動表示が行われるとき(報知演出がおこなわれるとき)に表示される第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bの演出画面の画面構成例について説明する。なお、以下の説明においては第1画像表示部6bをメイン画面と称し、第2画像表示部6bをサブ画面と称する。図41の(1)は、通常状態(低確状態)におけるメイン画面およびサブ画面の演出画面の画面構成例を示し、図41の(2)は、高確状態におけるメイン画面およびサブ画面の演出画面の画面構成例を示す。」

シ 「【0390】
また、メイン画面では、通常状態においては、図41の(1)に示すように、メイン画面下部の第1保留表示領域SA1に、第1特別図柄抽選が保留されていることを示す第1保留画像RI1が表示され、高確状態においては、図41の(2)に示すように、メイン画面上部の第2保留表示領域SA2に、第2特別図柄抽選が保留されていることを示す第2保留画像RI2が表示される。
【0391】
第1保留画像RI1は、第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)であり、第1特別図柄抽選が新たに記憶(保留)される毎に最大4つまで右に追加表示される。したがって、第1特別図柄抽選の保留が消化される(第1特別図柄抽選が開始される)ときには、左端の保留画像に対応する第1特別図柄抽選から実行され、実行された第1特別図柄抽選に対応する左端の保留画像が非表示となると、残りの保留画像は、その表示位置を左に1つずつ移動させる。なお、第1保留画像RI1は、通常状態(遊技者が左打ちを行う状態)において表示され、高確状態(遊技者が右打ちを行う状態)においては表示されない。」

ス 「【0439】
[通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合の演出概要]
次に、図51〜図57を参照して、本実施形態において、通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合に行われる演出の概要について説明する。なお、前述したように、本実施形態では、通常状態においては、左打ちを行うことによって第1特別図柄抽選を始動させることが推奨されるため、通常状態において第2特別図柄抽選で大当りするのは極めてまれであるが、このときには、第2特別図柄抽選の大当りに対する変動パターンとして図17に示す「低確特殊当り(60.0秒)」が設定される。そして、「低確特殊当り」の変動パターンに対する演出パターンとしては、特1激熱対象保留がない場合には「無報知演出パターン」が設定され、特1激熱対象保留がある場合には「入替演出パターン」が設定される(図32参照)。したがって、最初に図51〜図55を参照して、第2特別図柄抽選で大当りしたときの演出パターンが「無報知演出パターン」である(特1激熱対象保留がない)場合に行われる演出の概要について説明し、次に図56、図57を参照して、第2特別図柄抽選で大当りしたときの演出パターンが「入替演出パターン」である(特1激熱対象保留がある)場合に行われる演出の概要について説明する。なお、以下では、通常状態において大当りと判定された第2特別図柄抽選に基づく第2特別図柄の変動表示を、単に特2大当り変動といい、第1特別図柄の変動表示を、単に特1変動ということがある。
・・・
【0441】
[特2大当り変動開始時に特1変動が行われていない場合]
まず、図51を参照して、特2大当り変動開始時に特1変動が行われていない場合について説明する。図51の(1)は、特2大当り変動の変動開始から変動終了(変動停止)まで、特1変動が行われない例を示し、図51の(2)は、特2大当り変動の変動開始時および変動終了時には特1変動が行われないが、特2大当り変動の変動中に特1変動が行われる例を示し、図51の(3)は、特2大当り変動の変動中から特2大当り変動の変動終了まで特1変動が行われる例を示す。また、以下では、演出例として、適宜、図53、図54を参照して説明する。
【0442】
図51の(1)に示す例では、特1変動が行われていないとき(いわゆる客待ち状態のとき;図53の(1)参照)に、特2大当り変動が開始されても、特1変動に対応した装飾図柄DIは変動表示されないため、メイン画面において装飾図柄DIは停止表示されたまま(客待ち状態と同じ)となり、特2大当り変動の演出パターン「無報知演出パターン」に応じて報知演出は行われない(図53の(2)参照)。また、特1変動が行われていないときに特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われるため、サブ画面においても特2大当り変動に対応した小図柄SI2は表示されない(図53の(2)参照)。そして、特2大当り変動が終了すると、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始されるが、メイン画面においては、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出は表示されない。なお、準備期間が経過してゲート有効期間が開始されると、右打ち表示器4hは点灯表示される。また、本実施形態では、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始されず、また外端情報も送信されないため、大当りに当選しても、役連作動ゲート25を遊技球が通過するまでは、例えば外部カウンタ表示器による大当り表示も実行されない。そして、準備期間が経過するとゲート有効期間が開始されるが、メイン画面やサブ画面にはなんら報知演出が実行されていない(つまり、客待ち状態と同じ演出が行われている)ため、客待ち中と認識した遊技者が左打ちを行うことによって第1始動口21に遊技球が入賞すると、当該入賞を契機にメイン画面において、大当り遊技演出を開始するための準備演出が開始される(図53の(4)参照)。したがって、遊技者に対しては、第1始動口21への遊技球が入賞したことで即座に大当りしたような印象を与えることができる。そして、準備演出が実行された後には、準備演出の指示にしたがって右打ちが行われて、ゲート有効期間において遊技球が役連作動ゲート25を通過することで、オープニング期間が開始されて、その後、ラウンド遊技が開始されるとともに、メイン画面においては、オープニング演出が開始されて、その後、ラウンド演出が開始され、また、例えば外部カウンタ表示器による大当り表示が実行される。なお、ゲート有効期間が開始されてメイン画面やサブ画面にはなんら報知演出が実行されていないときに、例えば、右打ち表示器4hを認識した遊技者等が左打ちを行うことなく右打ちを行うことにより遊技球が役連作動ゲート25を通過した場合には、メイン画面においては、準備演出が行われることなくオープニング演出が開始される。」

(2)認定事項
ア 認定事項ア
引用文献1の【0391】には、「第1特別図柄抽選の保留」に関し「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)」が、「第1特別図柄抽選が新たに記憶(保留)される毎に最大4つまで右に追加表示される」一方、「第1特別図柄抽選の保留が消化される(第1特別図柄抽選が開始される)ときには、左端の保留画像に対応する第1特別図柄抽選から実行され、実行された第1特別図柄抽選に対応する左端の保留画像が非表示となると、残りの保留画像は、その表示位置を左に1つずつ移動させる」ことが記載されている。
これらの記載からみて、「第1特別図柄抽選の保留が消化され」ることに対応して、実行された第1特別図柄抽選に対応する保留画像は非表示となるから、引用文献1の【0442】に記載されるところの「第1特別図柄の変動表示」すなわち「特1変動」が行われていない客待ち状態のときにおいて、「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)は表示されない」ことが記載されていると認められる(以下「認定事項ア」という。)。

(3)引用発明
上記「(1)記載事項」及び「(2)認定事項」によると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(符号a〜oは、本願発明1の構成A〜Oに対応させて合議体により付与したものである。)。

「a メイン制御部100は、第1始動口21または第2始動口22に遊技球が入賞すると特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、第1または第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示した後に停止表示してその抽選結果を表示し、第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示と、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示とを並行して実行可能であり(【0030】、【0039】、【0130】)、特別図柄抽選に当選して大当り遊技を実行する権利が獲得され、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させると第2大入賞口51が閉状態から開状態にされて、1ラウンド目のラウンド遊技が開始される(【0063】)遊技機1(【0037】)であって、
b 低確状態(通常状態)、特別図柄抽選の当選確率が低確状態よりも高確率に設定されている高確状態、大当り遊技状態、小当り遊技状態が存在し、遊技の進行に応じて遊技状態を変化させるメイン制御部100(【0039】、【0060】)と、
c 右打ちを行うと有利なときに点灯し、右打ちを行うべきときを示す右打ち表示器4h(【0032】)と、
d 右打ち表示器4hを点灯させるCPU101(【0210】)と、
e、f、i 第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6bに表示する画像およびスピーカ35から出力する音響を制御するコマンドを送る演出制御部400(【0055】)と、
g 第2特別図柄抽選に基づく変動時間が、通常状態のときには高確状態のときに比べて極めて長い時間に設定され、遊技者は左打ちを行うことによって第1特別図柄抽選を始動させることが推奨され(【0070】)、
h 通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合、第1特別図柄の変動表示、すなわち、特1変動が行われていない客待ち状態のとき、第2特別図柄の変動表示、すなわち、特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ、停止表示し、ゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始されず(【0030】、【0439】、【0442】)、電源遮断時に復旧処理を行い(【0094】、【0095】)、
j、k、l、o 特1変動が行われていない客待ち状態のとき、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出は第1画像表示部6aにおいて表示されず、第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)は表示されず(認定事項ア)、客待ち処理が開始してから所定時間が経過したときに第1画像表示部6aにおいて客待ち状態と同じ演出が行われ、客待ち中と認識した遊技者が左打ちを行うことによって第1始動口21に遊技球が入賞すると、当該入賞を契機に第1画像表示部6aにおいて、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出が開始され(【0334】、【0387】、【0391】、【0442】)、
m 復旧処理において、CPU101は、電源遮断時における遊技状態や特別図柄抽選の保留数に関する情報を確認し、当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信し、電源供給が復旧したことを通知し、周辺部の設定を行い(【0094】、【0095】、【0096】)、
n 特2大当り変動が終了すると、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させるための準備となる準備期間(例えば3.0秒間)が開始され、準備期間が経過してゲート有効期間が開始されると、CPU101は右打ち表示器4hを点灯表示する(【0210】、【0442】)遊技機1(【0037】)。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0129】
また、RAM55は、その一部または全部が電源基板において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている不揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。すなわち、遊技機に対する電力供給が停止しても、所定期間(バックアップ電源としてのコンデンサが放電してバックアップ電源が電力供給不能になるまで)は、RAM55の一部または全部の内容は保存される。特に、少なくとも、遊技状態すなわち遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御状態に応じたデータ(特別図柄の可変表示状況を示す特別図柄プロセスフラグや各保留記憶数カウンタの値等)と未払出賞球数を示すデータは、バックアップRAMに保存される。遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御状態に応じたデータとは、停電等が生じた後に復旧した場合に、そのデータに基づいて、制御状態を停電等の発生前に復旧させるために必要なデータである。本実施の形態の場合、このようにバックアップRAMに保存される遊技制御用マイクロコンピュータ560の制御状態に応じたデータ(バックアップデータ)には、大当り図柄が導出表示されてから権利発生状態が終了するまで(大当り遊技状態が開始されるまで)セットされる停止フラグ、権利発生状態に制御されているときにセットされる権利発生フラグ、大当り遊技状態に制御されているときにセットされる大当り開始フラグ、および、確変状態に制御されているときにセットされる確変フラグに関するデータが含まれている。停止フラグとは、特別図柄の表示結果として大当り図柄が導出表示されたこと、即ち所定条件が成立していることを示すフラグである。権利発生フラグとは、特別図柄の変動表示の結果大当り図柄が導出された後、所定のゲート無効期間(例えば5秒)が経過して、遊技状態を大当り遊技状態とする権利が発生したことを示すフラグである。また、制御状態に応じたデータと未払出賞球数を示すデータとを遊技の進行状態を示すデータと定義する。なお、この実施の形態では、RAM55の全部が、電源バックアップされているとする。
【0130】
従って、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、電力供給時に実行されるメイン処理において、停止フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに大当り図柄が導出表示されていたが大当り遊技状態が開始されていなかったことを確認可能である。また、権利発生フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに権利発生状態であったか否かを確認することができる。また、大当り開始フラグを参照することにより、前回電力供給が停止したときに大当り遊技状態であったか否かを確認することができる。また、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、電力供給時に実行されるメイン処理において、停止フラグがセットされているが権利発生フラグがセットされていないときには、前回電力供給が停止したときに権利発生前状態であったことを特定することができる。」

(2)「【0197】
ここで、大当り図柄が導出表示されてから大当り遊技状態に制御されるまで(特定領域を遊技球が通過するまで)の区間B又は区間Cにおいて、パチンコ遊技機1への電源供給が停止された場合には、電源供給の再開時に、停電復旧コマンドが演出制御用マイクロコンピュータ100に送信されることになる。このとき、本実施形態では、停電復旧コマンドの送信に伴い、停止フラグのセット状況を示すコマンドも送信される。区間B又は区間Cで電源供給が停止されていた場合には、停止フラグがセットされている。
【0198】
演出制御用CPU101では、受信した停止フラグのセット状況を示すコマンドを解析し、停止フラグがセットされていることを示している場合には、演出表示装置9に、例えば「クルーンを狙え!!」の文字を表示するようにして、遊技者に特定領域部60を狙って遊技球を発射させるように促す報知を実行する。このようにすることで、電源供給が再開されたときに、大当り図柄が導出表示されているが大当り遊技状態には制御されていないことを遊技者に把握させると共に、特定領域に遊技球を通過させるよう促すことで混乱を防止することができる。
【0199】
このように、遊技制御用マイクロコンピュータ560が、電力供給復旧時の初期化コマンドとしての停電復旧指定コマンドを送信する際に、停止フラグのセット状況に応じたコマンドも送信することにより、演出制御用マイクロコンピュータ100側で、電力供給が停止されたときに停止フラグがセットされていたか否か(大当り図柄は導出表示されていたが大当り遊技状態には制御されていない状態であったか否か)を把握可能であり、停止フラグがセットされていたことに基づいて、遊技者に右打ちを示唆する報知(「クルーンを狙え!!」の表示)を行うことが可能である。
【0200】
なお、この実施の形態では、ゲート無効期間は、送出領域スイッチ33により検出された遊技球がいずれかの特定領域を通過したことが確定できるような時間であり、これにより、少なくとも大当り図柄が導出表示されたときに送出領域スイッチ33により検出されていた遊技球が、いずれかの特定領域を通過したとしても、特定領域スイッチ61a〜63aによる当該遊技球の検出は無効化される例について説明したが、これに限らず、大当り図柄が導出表示されたときに送出領域スイッチ33により遊技球が検出されていた場合に、該検出されたタイミングをゲート無効期間の開始時点とするようにしても良い。このようにしても、大当り図柄が導出表示されたときに送出スイッチ33により検出されていた遊技球が、いずれかの特定領域を通過したとしても、特定領域スイッチ61a〜63aによる当該遊技球の検出は無効化される。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0329】
次に、本実施例における右打ち報知用LED30の点灯態様、右打ち報知画像の表示態様、電断復旧画面の表示態様、大入賞口開放中報知画像の表示態様について、図28及び図29に基づいて説明する。
【0330】
先ず、遊技状態が通常状態である場合について説明する。図28(A)に示すように、通常状態は遊技球を左遊技領域10Lに向けて打ち出す遊技状態であるので、右打ち報知用LED30は消灯している。図28(B)に示すように、該通常状態での変動表示の実行中に振動検出1エラー等の遊技が停止されるエラーが検出された場合は、遊技場の店員等の操作によってパチンコ遊技機1への電力の供給が停止される。そして、遊技場の店員等の操作によってパチンコ遊技機1に再度電力の供給が開始されると、図28(C)に示すように、演出表示装置5に左打ち用電断復旧画面として「復旧中 しばらくおまちください」等のメッセージが表示される。
【0331】
次に、遊技状態が時短状態、小当り遊技状態、大当り遊技状態である場合について説明する。尚、本実施例では、時短状態、小当り遊技状態、大当り遊技状態における右打ち報知用LED30の点灯態様、右打ち報知画像の表示態様、電断復旧画面の表示態様、大入賞口開放中報知画像の表示態様は同一であるので、小当り遊技状態での例を説明する。
【0332】
図29(A)に示すように、小当り遊技状態(及び時短状態、大当り遊技状態)は遊技球を右遊技領域10Rに向けて打ち出す遊技状態であるので、右打ち報知用LED30は点灯している。また、小当り遊技状態(及び時短状態、大当り遊技状態)中は、演出表示装置5の右上部において右打ち報知画像が第1態様にて表示されている。
【0333】
図29(B)に示すように、該小当り遊技で振動検出1エラー等の遊技が停止されるエラーが検出された場合は、遊技場の店員等の操作によってパチンコ遊技機1への電力の供給が停止される。そして、遊技場の店員等の操作によってパチンコ遊技機1に再度電力の供給が開始されると、図29(C)に示すように、演出表示装置5に右打ち用電断復旧画面として「復旧中 右打ちを続けて下さい」等のメッセージが表示される。
【0334】
尚、右打ち用電断復旧画面の表示中は、パチンコ遊技機1への電力の供給が停止された時点での遊技状態が小当り遊技状態であるので、右打ち報知用LED30が点灯しており、演出表示装置5の右上部において右打ち報知画像が第2態様にて表示されている。そして、右打ち用電断復旧画面の表示中に第2大入賞口(大当り遊技中は第1大入賞口または第2大入賞口)が開放されると、演出表示装置5の下部に大入賞口開放中報知画像として「大入賞口が開いています」等のメッセージが表示される。
【0335】
尚、本実施例では、右打ち用電断復旧画面の表示中に遊技状態が大当り遊技状態である場合と小当り遊技状態である場合とで共通の大入賞口開放中報知置画像を表示する形態を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、右打ち用電断復旧画面の表示中に遊技状態が大当り遊技状態である場合と小当り遊技状態である場合とで異なる態様の大入賞口開放中報知画像を表示してもよい。
【0336】
また、本実施例では右打ち用電断復旧画面の表示中に開放する大入賞口が第1大入賞口と第2大入賞口とで共通の大入賞口開放中報知画像を表示する形態を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、右打ち用電断復旧画面の表示中に開放する大入賞口が第1大入賞口と第2大入賞口とで異なる態様の大入賞口開放中報知画像を表示し、第1大入賞口と第2大入賞口のどちらに遊技球を入賞させればよいかを遊技者が認識し易いようにしてもよい。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【2103】
図258(a)の左側の図には、特図1の保留が4つ残っている状態で大当りした様子が示されている。特図1の4つの保留のうち、第2保留アイコンh2の表示態様は、青色の表示態様であり、信頼度は低いものの先読み予告が行われている。
【2104】
この例におけるパチンコ機100では、大当り遊技(アタッカー開放遊技)は、大当り図柄が停止表示しただけでなく、遊技盤200上の所定の領域(大当りゲート237)に遊技球を通過させなければ、大当り遊技が開始されない。同図(a)の右側には、大当りゲート237が示されている。遊技盤200上の大当りゲート237には、「大当りを始めたい時に球を通してね」という注意書きが付されている。なお、この大当りゲート237は、条件装置の作動時以外に球を通過させても何も起こらない。
【2105】
図258(b)の左側の図には、装飾図柄表示装置208に、大当り開始演出を表示させる前に、「大当り開始ウエイト中演出」を表示させる。図258(b)〜同図(c)の左側の図では、「大当り開始ウエイト中」という文字表示を点滅させる待機アニメーションを実行している。「大当り開始ウエイト中演出」の裏側には、特図1の保留アイコンが表示されており、第2保留アイコンh2の表示態様は、青色の表示態様であることがわかる。この「大当り開始ウエイト中演出」は、特図1の保留アイコンの保留に基づく図柄変動表示の開始時期が遅延されたことを報知する演出に相当する。
【2106】
図258(b)〜同図(c)の右側の図には、遊技盤200上に設けられた大当ゲート237に遊技球Bが通過する様子が示されている。該大当りゲート237を遊技球Bが通過したことを検出したことに基づいて、役物連続作動装置(アタッカー)が開始される(大当りが開始される)。」

第6 対比・判断
1 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1)構成Aについて
引用発明の構成aの「第1始動口21」、「第2始動口22」、「遊技球が入賞すると」、「特別図柄を変動表示」、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させる」こと、「遊技機1」は、それぞれ本願発明1の構成Aの「第一の始動口」、「第二の始動口」、「遊技球の入賞に基づいて」、「図柄変動」、「所定領域に遊技球が入球又は通過をしたこと」、「遊技機」に相当する。
また、引用発明の構成aにおいて、「第1始動口21または第2始動口22に遊技球が入賞する」と、「特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、第1または第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示」しているから、「遊技球の入賞」に伴う「特別図柄抽選(大当り抽選)」に対応して「特別図柄を変動表示」されるので、引用発明の構成aの「特別図柄抽選(大当り抽選)を行い、第1または第2特別図柄抽選に基づいて特別図柄を変動表示」することは、本願発明1の構成Aの「図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行」することに相当する。
さらに、引用発明の構成aの「第1特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示と、第2特別図柄抽選による特別図柄変動表示および特別図柄停止表示とを並行して実行可能であ」ることは、本願発明1の構成Aの「前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であ」ることに相当する。
そして、引用発明の構成aの「特別図柄抽選に当選して大当り遊技を実行する権利が獲得され、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させると第2大入賞口51が開放し、1ラウンド目のラウンド遊技が開始される」ことは、それにより「役連作動ゲート25」への「遊技球」の「通過」が発生するまでの間大当たり遊技が開始されないことになるから、本願発明1の構成Aの「前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ」ること、「該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させ」ることの双方に相当するといえる。
したがって、引用発明の構成aは、本願発明1の構成Aに相当する構成を備えている。

(2)構成Bについて
引用発明の構成bの「低確状態(通常状態)」は、本願発明1の構成Bの「第一の遊技状態」に相当し、引用発明の構成bの「特別図柄抽選の当選確率が低確状態よりも高確率に設定されている高確状態」、「大当り遊技状態」及び「小当り遊技状態」を併せたものは、本願発明1の構成Bの「第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態」に相当する。
また、引用発明の構成bの「遊技の進行に応じて遊技状態を変化させる」こと、「メイン制御部100」は、それぞれ本願発明1の構成Bの「複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する」こと、「遊技状態制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する構成を備えている。

(3)構成C、Dについて
引用発明の構成c、dの「点灯し」、「右打ちを行うべきとき」、「右打ち表示器4h」、「右打ち表示器4hを点灯させるCPU101」は、それぞれ本願発明1の構成C、Dの「点灯する」、「所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態」、「点灯手段」、「点灯制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成c、dは、本願発明1の構成C、Dに相当する構成を備えている。

(4)構成E、F、Iについて
引用発明の構成e、f、iの「第1画像表示部6a」、「演出制御部400」は、それぞれ本願発明1の構成E、F、Iの「演出表示手段」、「演出制御手段」に相当し、引用発明の構成e、f、iの「第1画像表示部6aおよび第2画像表示部6b」及び「スピーカ35」は、本願発明1の構成Eの「演出手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成e,f,iは、本願発明1の構成E,F,Iに相当する構成を備えている。

(5)構成Gについて
引用発明の構成gの、「通常状態」、「第1特別図柄抽選」、「第2特別図柄抽選」は、それぞれ本願発明の構成Gの「第一の遊技状態」、「第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定」、「第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定」に相当する。
また、引用発明の構成gにおいて、「第2特別図柄抽選に基づく変動時間が、通常状態のときには高確状態のときに比べて極めて長い時間に設定され」ることから、「通常状態」においては、「第1特別図柄抽選」による大当たりの当選が「第2特別図柄抽選」による当選に比べて頻度が高くなると解される。
してみると、引用発明の構成gは、本願発明1の構成Gに相当する構成を備えているといえる。

(6)構成Hについて
引用発明の構成hの「第1変動が行われていない客待ち状態」、「第2特別図柄抽選で大当り」すること、「特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ、停止表示」することは、それぞれ本願発明1の構成Hの「前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないとき」、「前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選」すること、「該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示」することに相当し、引用発明の構成hは、これらの構成の相当関係から、本願発明1の構成Hの「該大当りに係る前記大当り遊技を待機」する「特定の場合」を有するものといえる。
また、引用発明の構成hの「通常状態において第2特別図柄抽選で大当りした場合、特1変動が行われていない客待ち状態のとき、特2大当り変動の変動開始および変動停止が行われ、ゲート有効期間において、役連作動ゲート25を遊技球が通過しない限りラウンド遊技が開始され」ない状態において、「電源遮断後に復旧処理を行」うことは、本願発明1の構成Hの「特定の場合」において「電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部」に相当する。
してみると、引用発明の構成hは、本願発明1の構成Hに相当する構成を備えているといえる。

(7)構成Jについて
引用発明の構成j、k、l、oの「第1変動が行われていない客待ち状態のとき」、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出は」「表示され」ないこと、「第1画像表示部6a」は、それぞれ本願発明1の構成Jの「第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合」、「所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示」を「表示させ」ないこと、「演出表示手段」に相当する。
また、引用発明の構成j、k、l、oは電源遮断のない状態における動作に係るものであるから、本願発明1の構成Jの「当該電断の発生前にお」けるものであるといえる。
したがって、引用発明の構成j、k、l、oと、本願発明1の構成Jとは、「当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を前記演出表示手段に表示させ」ないものである点において共通する。

(8)構成Kについて
上記(7)で検討したことに加えて、引用発明の構成j、k、l、oの「第1始動口21に遊技球が入賞する」ことは、本願発明1の構成Kの「第一の始動口への遊技球の入賞が発生した」ことに相当し、引用発明の構成j、k、l、oの「第1画像表示部6aにおいて、役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出が開始され」ることは、本願発明1の構成Kの「右打ち表示」「を演出表示手段に表示させ」ることに相当する。
したがって、引用発明の構成j、k、l、oと、本願発明1の構成Kとは、「当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させ」るものである点において共通する。

(9)構成Lについて
上記(7)で検討したことに加えて、引用発明の構成j、k、l、oの「客待ち処理が開始してから所定時間が経過したときに」「客待ち状態と同じ演出が行われ」ることは、本願発明1の構成Lの「図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合」に相当し、引用発明の構成j、k、l、oの「客待ち状態と同じ演出が行われ」ており、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出は表示され」ないことは、本願発明1の構成Lの「前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示」「を前記演出表示手段に表示させ」ないことに相当する。
また、引用発明の構成j、k、l、oの「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)は表示され」ないことは、本願発明1の構成Lの「第三画像を前記演出表示手段に表示させ」ないことに相当する。
してみると、引用発明の構成j、k、l、oは、本願発明1の構成Lに相当する構成を備えているといえる。

(10)構成Nについて
上記(7)で検討したことに加えて、引用発明の構成nの「CPU101」、「右打ち表示器4h」、「点灯表示する」ことは、それぞれ本願発明1の構成Nの「点灯制御手段」、「点灯手段」、「点灯させ」ることに相当する。
したがって、引用発明の構成nと、本願発明1の構成Nとは、「前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ」る点において共通する。

(11)構成Oについて
上記(4)及び(6)で検討したことに加えて、引用発明の構成nの「遊技機1」は、本願発明1の構成Oの「遊技機」に相当する。
また、引用発明の構成j、k、l、oの「準備演出」は、「特1変動が行われていない客待ち状態のとき」に、「客待ち中と認識した遊技者が左打ちを行うことによって第1始動口21に遊技球が入賞すると」「開始される」ものであるから、本願発明1の構成Oの「第二の始動口への遊技球の入賞が発生しても前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させない」ことに相当する構成を備えているといえる。
したがって、引用発明の構成j、k、l、o、構成e、f、i、構成h及び構成nは、本願発明1の構成Oに相当する構成を備えている。

以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明とは、
「A 第一の始動口または第二の始動口への遊技球の入賞に基づいて図柄変動を実行可能であり、図柄変動ごとに大当りに当選するか否かを判定する当否判定を実行し、前記第一の始動口に係る図柄変動と前記第二の始動口に係る図柄変動とを並行して実行可能であり、前記大当りに当選した図柄変動の終了後に該大当りに係る大当り遊技の開始を待機させ、該大当り遊技の待機中に所定領域に遊技球が入球又は通過をしたことに基づいて該大当り遊技を開始させる遊技機であって、
B 第一の遊技状態及び前記第一の遊技状態よりも有利な第二の遊技状態を含む複数の遊技状態の中から一の遊技状態を設定する遊技状態制御手段と、
C 点灯することによって、前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しが推奨される状態であることを示す点灯手段と、
D 前記点灯手段を制御する点灯制御手段と、
E 演出表示手段を少なくとも含む演出手段と、
F 前記演出手段を制御する演出制御手段と、を備え、
G 前記第一の遊技状態は、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第一の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合が、前記第一の遊技状態における前記当否判定によって当選する前記大当りのうちの前記第二の始動口に係る図柄変動での前記当否判定によって当選する前記大当りが占める割合よりも高くなる遊技状態であり、
H 前記第一の遊技状態に設定され、前記第一の始動口に係る図柄変動が停止し且つ前記第一の始動口に係る図柄変動が保留されていないときに、前記第二の始動口に遊技球が入賞して前記大当りに当選し、該大当りに基づく図柄の組合せが停止表示して該大当りに係る前記大当り遊技を待機している特定の場合において電断が発生し、当該電断後に復電した場合の少なくとも一部において、
I 前記演出制御手段は、
J’ 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、前記所定領域への遊技球の打ち出し又は前記所定領域が設けられている方向への遊技球の打ち出しを遊技者に促す右打ち表示を前記演出表示手段に表示させず、
K’ 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させ、
L 当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合において、図柄変動の停止中に実行させうる待機デモ演出を実行した場合、前記待機デモ演出の実行期間において前記右打ち表示及び前記第三画像を前記演出表示手段に表示させず、
N’ 前記点灯制御手段は、当該電断の発生前に前記点灯手段を点灯させ、
O 前記特定の場合において、前記演出制御手段は、前記第二の始動口への遊技球の入賞が
発生しても前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させない遊技機。」である点において一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成J)
「第一の始動口に係る図柄変動の保留数を特定可能な第三画像」に関して、本願発明1は、「当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合、」当該「第三画像」を「演出表示手段に表示させ」るのに対して、引用発明では、「特1変動が行われていない客待ち状態のとき、」「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)は表示さ」れない点。

[相違点2](構成K)
「第三画像」に関して、本願発明1は、「当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生した場合、」「前記第三画像を前記演出表示手段に表示させ」るのに対して、引用発明では、「客待ち中と認識した遊技者が左打ちを行うことによって第1始動口21に遊技球が入賞すると、」「当該入賞を契機に第1画像表示部6aにおいて、第2大入賞口51が開放される契機となる役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出が開始され」るものの、「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)」を表示することは、特定されていない点。

[相違点3](構成M)
電断時の復電後の演出表示手段に関して、本願発明1は、「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後において、前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しなくても前記右打ち表示を前記演出表示手段に表示させ、且つ、少なくとも前記右打ち表示を表示させる期間において前記第三画像を前記演出表示手段に表示させ」ないものであるのに対して、引用発明では、「電源遮断時に復旧処理を行」うものの、復旧処理後に、「役連作動ゲート25へ遊技球を通過させることを促す準備演出が開始され」ること、及び、「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)」を表示しないことは、特定されていない点。

[相違点4](構成N)
電断後の復電後の点灯表示手段に関して、本願発明1は、「当該電断時に前記待機デモ演出が実行されているか否かに関わらず、当該電断後の復電後に前記点灯手段を点灯させ」るものであるのに対して、引用発明は、「電源遮断時に復旧処理を行」うものの、「右打ち表示器4hを点灯表示する」ことは、特定されていない点。

2 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点のうち相違点1及び3について併せて検討する。
本願発明1の構成Jにおいて、「電断の発生前において」「第三画像」を「当該電断の発生前において前記第一の始動口への遊技球の入賞が発生しない場合」に「演出表示手段に表示させ」る一方、本願発明1の構成Mにおいては、「電断後の復電後において」「少なくとも前記右打ち表示を表示させる期間において前記第三画像を前記演出表示手段に表示させ」ないから、本願発明1は、電断の発生前後で「第三画像」の表示の有無の点において異なるものであるといえる。
一方、引用発明では、構成mの「復旧処理」において、「電源遮断時における遊技状態や特別図柄抽選の保留数に関する情報を確認し」、「当該情報を含めた復旧通知コマンドを演出制御部400に対して送信し、電源供給が復旧したことを通知し」た上で、「CPU101」が、「周辺部の設定を行」うことからみて、「電源遮断時における遊技状態」が復旧処理において復元されると解される。
そして、引用発明は、「特1変動が行われていない客待ち状態のとき」であって、「客待ち処理が開始してから所定時間が経過し」ていないときにおいて、「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)」(第三画像)が表示されないものである以上、「電源遮断時の復旧処理後」においても当該画像は表示されないこととなるが、前者すなわち電源遮断が生じていない状態のみにおいて「第1特別図柄抽選が保留されている数に対応して左右に配列される球状の画像(保留球画像)」を表示するようになすことが、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。
さらに、原査定の拒絶理由に引用された、上記引用文献2ないし4にも、上記相違点1及び3に係る本願発明1の構成は記載されていない。また、当該構成は、周知であるともいえない。

したがって、相違点2及び相違点4について検討するまでもなく、本願発明1は引用発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

また、本願発明1が、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえないから、請求項1に係る発明と同一の構成を備え、さらに他の構成を付加した請求項2に係る発明も同様に、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-21 
出願番号 P2018-216778
審決分類 P 1 8・ 4- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 古屋野 浩志
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 右田 俊介  

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