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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J |
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管理番号 | 1385937 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-07-13 |
確定日 | 2022-06-16 |
事件の表示 | 特願2017− 51040号「什器および調理商品管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日出願公開、特開2018−153298号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年3月16日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和 2年11月 4日付け:拒絶理由通知書 同年12月18日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 4月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 4月20日 :原査定の謄本の送達) 同年 7月13日 :審判請求書の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1〜8に係る発明は、令和2年12月18日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。 以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。 「 【請求項1】 調理商品を陳列するスペースを有する什器であって、 前記スペースに陳列された前記調理商品が出来上がるまでの残り時間を示す第1の情報を生成する情報生成手段と、 前記第1の情報を表示する第1の表示手段と、を備え、 前記第1の表示手段は、店員側に向けられる第1面以外の面のいずれかであって、顧客側から視認可能な第2面に配置されている什器。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2004−337466号公報 2.特開2015−230704号公報 第4 当審の判断 1 引用文献等 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献1(特開2004−337466号公報)には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様。)。 ア 「【請求項6】 蒸気を発生する蒸気発生手段を備えた蒸し器において、蒸し運転が終了するまでの時間を算出する第1の算出手段と、追炊き運転が終了するまでの時間を算出する第2の算出手段と、前記時間または時間以外のいずれかを表示手段に切替表示させる操作手段とを備えたことを特徴とする蒸し器。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ファーストフードなどの各種店舗に設置される調理品販売・保温用の蒸し器に関する。」 ウ 「【0009】 加えて、中華まんなどの蒸し物を販売する場合に、蒸し運転を開始してからどのくらいの時間で販売ができるのか判らず、また、途中で食材を追加して追炊き運転を行なう場合も同様に、販売までの時間が判らない不便さがあった。 ・・・ 【0012】 本発明の第3の目的は、蒸し運転や追炊き運転時において、販売を開始できるまでの時間を的確に把握できる使い勝手の良い蒸し器を提供することにある。」 エ 「【0019】 本発明における請求項6の蒸し器では、必要に応じて操作手段を操作すれば、蒸し運転が終わるまでの残時間や、追炊き運転が終わるまでの残時間を表示手段で表示することができ、空の状態から新たに商品を投入した場合や、ある程度蒸し上がった商品が残っている状態で、別の商品を投入した場合でも、あとどの程度の時間で販売ができるのかを的確に把握することができる。・・・ 【0020】 【発明の実施の形態】 以下、本発明における蒸し器の各実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の各実施例に共通する蒸し器の基本的な全体構成を示す外観図である。 【0021】 同図において、1は略直方体に形成される筐体、2は筐体1の上部開口部を塞ぐ天板で、この天板2の内部には、図示しないが筐体1の内部を上方から照明する照明用蛍光灯が配置される。・・・ 【0022】 食材などの商品を陳列する筐体1は、その側面部を形成する周囲の少なくとも一方向を透明部材であるガラス7で覆われており、ここでは上方から見て略U字状をなすガラス7と、ガラス7の側部開口部に設けられた非透明部材の前板8および左右一対の側板9,9で、筐体1の側面部を略密閉した状態で形成している。さらに、筐体1の上部開口部と下部開口部に、それぞれ上仕切板10と下仕切板11を密閉した状態で取付けている。筐体1の前側面部をなす前板8は、周囲に枠体を残した形状で、商品を出し入れする開口部が形成されており、その開口部を密閉状態に覆うべく、周囲にパッキン(図示せず)を備えた扉14が、ヒンジ15によって開閉自在に設けられている。なお16は、ヒンジ15の反対側に位置して扉14の一側に設けられた取手で、扉14を通して筐体1の内部が視認できるように、扉14は枠部を除く部分に透明部材であるガラス17が設けられる。 【0023】 筐体1の下部にある基台3は有底筒状で、側面部の四方向を囲む前記枠4の他に、いずれも図示しないが、底板と脚を設けた構造を有している。そして、前記扉14と同じ配置面である枠4の前側面には、前記照明用スイッチ5と共に、表示機能を兼用した操作部21,ドレンパイプ22,ドレンコック23,水位計24,本体内に商用電源電圧を供給する電源コード25などがそれぞれ配置される。」 オ 「【0057】 図8において、53は制御装置29を構成する制御手段としてのマイクロコンピュータ(以下、単にマイコンと称する)であり、これはいずれも図示しないが、周知のマイクロプロセッサを構成する制御装置および演算装置の他に、計時装置、ROMやRAMなどからなる記憶装置、および入出力装置などを備えて構成される。マイコン53の入力側には、前記基台3に設けられる操作部21のスイッチ部からなる操作手段51が設けられる。この操作手段51は、表示手段であるLCD60の表示を切替える表示切替えスイッチ51Aや、他に加熱動作や追炊き動作の開始および停止を指示するスイッチ(図示せず)などにより構成される。また前記マイコン53の入力側には、その他に、筐体1内の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ37が接続される。 【0058】 一方、マイコン53の出力側には、前記図1にも示した底面ヒータ30や、側面ヒータ38や、蒸気発生手段を構成する加湿ヒータ62の他に、表示手段として取付けられたLCD60がそれぞれ接続される。 【0059】 マイコン53は自身の保有するプログラムの機能的な構成として、温度センサ37で検出される筐体1内部の温度と、計時手段の計時結果とに基づき、筐体1内が冷えた状態から、筐体1内部に陳列した食材全体を蒸し上げる蒸し運転を実行する蒸し運転制御手段54と、同じく温度センサ37で検出される筐体1内部の温度と、計時手段の計時結果とに基づき、筐体1内が温められた状態で、筐体1内部に追加投入した食材を蒸し上げる追炊き運転制御手段55と、蒸し運転制御手段54による蒸し運転を開始した後に、蒸し運転が終了するまでの残時間を算出する蒸し上げ残時間計測手段56と、追炊き運転制御手段55による追炊き運転を開始した後に、追炊き運転が終了するまでの残時間を算出する追炊き残時間計測手段57と、前記切替スイッチ51Aからの操作信号を受けて、LCD60の表示を蒸し運転または追炊き運転が終了するまでの残時間と、それ以外の例えば温度センサ37で検出される現在温度のいずれかに切替える表示制御手段58と、前記蒸し運転や追炊き運転が終了した後に、筐体1内の温度を一定温度に保持する保温制御手段59などを備えている。 【0060】 次に、上記構成についてその動作手順を説明する。図10における制御フローチャートに示すように、筐体1内部が冷えた状態で商品を投入し、ステップS1で操作手段51のスイッチを投入して蒸し運転の開始を指示すると、蒸し運転制御手段54は予め設定された第1の条件に達するまで、加湿ヒータ62を通電して筐体1内部を蒸し加熱する。上記第1の条件は、運転開始から所定時間である45分間が経過するまでの時間とするが、筐体1内の温度が90℃に達したら、その時点で蒸し加熱を終了するようにする。このとき蒸し上げ残時間計測手段56は、マイコン53の計時手段を利用して、蒸し加熱が終了するまでの残時間を算出する。 【0061】 蒸し運転制御手段54が蒸し運転を開始すると、切替スイッチ51Aを操作しない限り、表示制御手段58は蒸し運転が終了するまでの残時間を表示する(ステップS2)。図10における符号60Aは、そのときのLCD60の表示形態を示している。この例では、「45」なる表示形態の表示部60Aにより、蒸し運転が終了すまでの時間が45分であることを知らせている。なお、LCD60の表示形態は、図10に示すものに限られない。また、LCD60以外の例えば7セグメントのLEDや、複数個のLEDで同様の機能を持たせてもよい。 【0062】 一方、蒸し運転の途中に切替スイッチ51Aを操作すると、表示制御手段58はそれまでの蒸し運転が終了するまでの残時間表示に代わり、温度センサ37で検出される筐体1内の温度をLCD60に表示させる(ステップS3)。このときの表示形態を、図10の符号60Bに示す。この例では、「30」なる表示形態の表示部60Bにより、現在の庫内温度が30℃であることを知らせている。こうして、蒸し運転の途中であっても、筐体1内の温度が正しく上昇しているか否かを把握することができる。因みに、切替スイッチ51Aを再度操作すれば、ステップS2の手順に戻り、この切替スイッチ51Aからの操作信号を受けて、蒸し運転が終了するまでの残時間をLCD60に再表示させることができる。 【0063】 蒸し運転を開始してから所定の45分が経過するか(この時、残時間は0になる)、さもなければ温度センサ37の検出温度が、筐体1内部の商品が蒸し上がるに十分な温度(90℃)に達すると、一連の蒸し運転は終了して保温制御手段59による保温に移行する。このとき表示制御手段58は、切替スイッチ51Aの操作を受付けず、LCD60に筐体1内部の温度を表示させる。これにより、使用者は蒸し運転の終了を知ることができる。 【0064】 一方、前記ステップS2やステップS3における蒸し運転及び保温中に、筐体1内に商品を追加投入した場合は、操作部21のスイッチ(図示せず)により、追い炊き運転の開始を指示する。これを受けて追炊き運転制御手段55は、予め設定された第2の条件に達するまで、加湿ヒータ62を通電して筐体1内部を追炊き加熱する。上記第2の条件は、運転開始から所定時間である15分間が経過するまでの時間とするが、筐体1内の温度が90℃に達したら、その時点で追炊き加熱を終了するようにする。なお、追炊き運転の時間(15分)を、蒸し運転の時間(45分)よりも短くする理由は、追炊き運転時には筐体1内部の温度がある程度上昇していることに起因する。このとき追炊き残時間計測手段57は、マイコン53の計時手段を利用して、追炊き加熱が終了するまでの残時間を算出する(ステップS4)。 【0065】 追炊き運転制御手段54が追炊き運転を開始すると、切替スイッチ51Aを操作しない限り、表示制御手段58は追炊き運転が終了するまでの残時間を表示する(ステップS2)。図10における符号60Cは、そのときのLCD60の表示形態を示している。この例では、「15」なる表示形態の表示部60Cにより、追炊き運転が終了すまでの時間が15分であることを知らせている。そして、追炊き運転を開始してから所定の15分が経過するか、さもなければ温度センサ37の検出温度が90℃に達すると、一連の追炊き運転は終了して保温制御手段59による保温に移行し、再度ステップS3にて筐体1内部の温度をLCD60で表示する。これにより、使用者は追炊き運転の終了を知ることができる。・・・」 カ 「 」 キ 「 」 (2) 引用発明の認定 上記(1)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「中華まんなどの蒸し物を販売し、商品を陳列する筐体を有し、各種店舗に設置される調理品販売・保温用の蒸し器であって、 蒸気を発生する蒸気発生手段を備えた蒸し器において、商品を投入し、蒸し運転が終了するまでの時間を算出する第1の算出手段と、追炊き運転が終了するまでの時間を算出する第2の算出手段と、前記時間または時間以外のいずれかを表示手段に切替表示させる操作手段とを備えた、 蒸し器。」 (3) 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用した引用文献2(特開2015−230704号公報)には、以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 顧客と対面する位置で商品に対応づけられた第1の電子棚札と、前記商品と対応し、従業員と対面する位置に設けられた第2の電子棚札と、を有する商品表示システムにおいて、 前記第1の電子棚札と第2の電子棚札と共通して表示する第1の表示情報と、第2の電子棚札のみに表示する第2の表示情報と、を記憶する記憶手段と、 を有することを特徴とする商品表示システム。」 イ 「【0002】 近年、スーパーマーケット等の小売店で電子棚札を使用した商品表示システムの導入が進んでいる。上記商品表示システムは、店内のショーケース内に陳列した商品の近くの顧客側に商品の価格等を電子データにより表示する電子棚札を設置している。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上述の商品表示システムでは、顧客の注文商品は正確に認識しているが、ショーケース内から取り出す際に従業員が誤って、注文商品とは別の商品を取り出してしまう場合があり、また、時間帯や売れ数に応じた販売方針などのリアルタイムな指示等を従業員に行う場合、時間がかかってしまう。 【0006】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、お客が望む商品を店員が間違いなく手にすることができ、且つ、従業員に対して商品に関する指示を迅速に行うことができる商品表示システムを提供することである。」 エ 「【0016】 以下、本発明の実施形態の商品表示システムについて、図を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態による商品表示システム1の構成を示した概略図である。商品表示システム1は、管理装置20、第1の電子棚札30、第2の電子棚札40及び商品処理装置50を有する。 【0017】 図2は、店舗内の売場に設置され、商品を陳列するショーケース4の外観を示した図である。図2(a)は、商品を陳列するショーケース4の斜視図である。図2(b)は、商品を陳列するショーケース4の平面図である。ショーケース4の商品表示システム1は、例えばお惣菜や精肉などの商品を販売するスーパーマーケットに設けられる。スーパーマーケットの食品売り場では、図2に示すように、お惣菜や精肉などの商品が種類毎に受け皿11(パレット)に収納され、それぞれのショーケース4内に陳列されている。 【0018】 第1の電子棚札30は、管理装置20に有線または無線を通じて接続されている。第1の電子棚札30は、管理装置20から送信される第1の表示情報を自装置の表示部に表示する。第1の電子棚札30は、ショーケース4内の商品毎に顧客と対面する位置で配置される。例えば、第1の電子棚札30は、受け皿11の前端部(顧客側端部)に固定されている。第1の表示情報は、顧客に知らせるための情報であり、例えば品名や価格等である。 【0019】 第2の電子棚札40は、管理装置20及び商品処理装置50に有線または無線を通じて接続されている。第2の電子棚札40は、管理装置20から送信される第1の表示情報及び第2の表示情報を自装置の表示部に表示する。第2の電子棚札40は、ショーケース4内の商品毎に従業員と対面する位置で配置される。例えば、第2の電子棚札40は、受け皿11の後端部(従業員側端部)に固定されている。第2の表示情報は、従業員に知らせるための情報であり、例えば廃棄指示や売れ数である。」 オ 「【0024】 表示フォーマットファイルは、表示フォーマットファイルA及び表示フォーマットファイルBを有する。図6は、管理装置20の記憶部104に記憶された第1の電子棚札30の表示フォーマットファイルAの一例を示す。表示フォーマットファイルAは、商品ファイル内の必要な項目を第1の電子棚札30の表示部に表示する際のレイアウトを設定するファイルである。表示フォーマットファイルAで設定される表示項目は、第1の表示情報であり、例えば品名、カロリー、POP、税抜価格、税込価格、単価、原材料、品番等である。管理装置20は、表示フォーマットファイルAと第1の表示情報を、第1の電子棚札IDに対応する第1の電子棚札30に送信する。 【0025】 図7は、管理装置20の記憶部104に記憶された第2の電子棚札40の表示フォーマットファイルBの一例を示す。表示フォーマットファイルBは、商品ファイル内の必要な項目を第2の電子棚札40の表示部に表示する際のレイアウトを設定するファイルである。表示フォーマットファイルBで設定される表示項目は、第1の表示情報及び第2の表示情報である説明文である。管理装置20は、表示フォーマットファイルBと第1の表示情報及び第2の表示情報を、第2の電子棚札IDに対応する第2の電子棚札40に送信する。」 カ 「 」 キ 「 」 (4) 引用文献2に記載された事項 引用文献2の請求項1、段落【0002】、【0016】〜【0019】及び【0024】の記載から、次の技術事項が認められる(以下「引2事項」という。)。 「顧客と対面する位置で商品に対応づけられた第1の電子棚札と、前記商品と対応し、従業員と対面する位置に設けられた第2の電子棚札と、を有する商品表示システムにおいて、 前記第1の電子棚札と第2の電子棚札と共通して表示する第1の表示情報を有すること。」 2 対比・判断について (1) 対比 本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 引用発明の「販売」される「中華まんなどの蒸し物」及び「商品」は、本願発明の「調理商品」に相当する。 イ 引用発明の「各種店舗に設置される調理品販売・保温用の蒸し器」は、本願発明の「什器」に相当する。 ウ 引用発明の「商品を陳列する筐体を有し」ていることは、本願発明の「陳列するスペースを有する」ことに相当する。 エ 引用発明の「商品を投入」する態様は、引用文献1の図1の蒸し器の基本的な全体構成とみると、本願発明の「前記スペースに陳列された」態様に相当する。 オ 引用発明の「蒸し運転が終了するまでの時間」及び「追炊き運転が終了するまでの時間」は、本願発明の「前記調理商品が出来上がるまでの残り時間を示す第1の情報」に相当する。 カ そうすると、引用発明の「商品を投入し、蒸し運転が終了するまでの時間を算出する第1の算出手段」及び「追炊き運転が終了するまでの時間を算出する第2の算出手段」は、中華まんなどの蒸し物が出来上がるまでの残り時間を生成しているといえるので、本願発明の「前記スペースに陳列された前記調理商品が出来上がるまでの残り時間を示す第1の情報を生成する情報生成手段」に相当する。 キ 引用発明の「前記時間」を表示させる「表示手段」は、本願発明の「前記第1の情報を表示する第1の表示手段」に相当する。 ク 上記ア〜キの対比結果をまとめると、本願発明と引用発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。 [一致点] 「調理商品を陳列するスペースを有する什器であって、 前記スペースに陳列された前記調理商品が出来上がるまでの残り時間を示す第1の情報を生成する情報生成手段と、 前記第1の情報を表示する第1の表示手段と、を備える、 什器。」 [相違点] 第1の表示手段について、本願発明は、「前記第1の表示手段は、店員側に向けられる第1面以外の面のいずれかであって、顧客側から視認可能な第2面に配置されている」のに対して、引用発明では、表示手段の配置について、具体的に特定されていない点。 (2) 判断 ア 上記相違点について以下検討する。 引用文献1における、「本発明における請求項6の蒸し器では、必要に応じて操作手段を操作すれば、蒸し運転が終わるまでの残時間や、追炊き運転が終わるまでの残時間を表示手段で表示することができ、空の状態から新たに商品を投入した場合や、ある程度蒸し上がった商品が残っている状態で、別の商品を投入した場合でも、あとどの程度の時間で販売ができるのかを的確に把握することができる。」(【0019】)、「表示機能を兼用した操作部21,ドレンパイプ22,ドレンコック23,水位計24,本体内に商用電源電圧を供給する電源コード25などがそれぞれ配置される。」(【0023】)、「この操作手段51は、表示手段であるLCD60の表示を切替える表示切替えスイッチ51Aや、他に加熱動作や追炊き動作の開始および停止を指示するスイッチ(図示せず)などにより構成される。」(【0057】)、「マイコン53の出力側には、前記図1にも示した底面ヒータ30や、側面ヒータ38や、蒸気発生手段を構成する加湿ヒータ62の他に、表示手段として取付けられたLCD60がそれぞれ接続される。」(【0058】)、「図10における符号60Aは、そのときのLCD60の表示形態を示している。この例では、「45」なる表示形態の表示部60Aにより、蒸し運転が終了すまでの時間が45分であることを知らせている。」(【0061】)、「使用者は蒸し運転の終了を知ることができる。」(【0063】)及び図1の蒸し器をあわせてみると、引用発明の「表示手段」は、「蒸し運転が終了するまでの時間」及び「追炊き運転が終了するまでの時間」といった、商品の出来上がりまでの残り時間を店員側に表示するものといえる。 他方、引2事項として、引用文献2には、店内のショーケースについて、顧客と対面する位置で商品に対応づけられた第1の電子棚札と、前記商品と対応し、従業員と対面する位置に設けられた第2の電子棚札とを設け、前記第1の電子棚札と第2の電子棚札とに共通した第1の表示情報を表示することが記載されている。 すなわち、引2事項は、ショーケースの顧客側と店員側に、それぞれ表示手段を設け、店員と顧客の双方が知りたい情報を同時に表示するという技術を開示するものである。 そして、商品の出来上がりまでの残り時間が、店員だけでなく、顧客にとっても知りたい情報であることは、技術常識(パンの焼き上がり時間を表示することは、パン屋などで通常行われていることである。例えば、特開2004−77559号公報【0023】、【0024】参照。)であるので、引用発明に内在する課題といえる。 そうすると、上記課題から、引用発明に引2事項を適用する動機が存在するといえる。 また、引用発明において、表示手段を店員側と顧客側にそれぞれ設けたものは、店員側に向けられる第1面以外の面のいずれかであって、顧客側から視認可能な第2面に配置されている表示手段を備えたものとなる。 以上のとおりであるから、引用発明及び引2事項に基づいて、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。 イ 前記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果は引用発明及び引2事項から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び引2事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 請求人の主張について (1) 主張の概要 請求人は審判請求書において次の主張をしている。 「(c)本願発明と引用発明との対比 ・・・ しかし、引用文献1の段落[0019]の記載などから、引用文献1における『残時間』は、店員に対する情報であると読み取れます。また、引用文献2には、『第1の表示情報』について、引用文献1における『残時間』に相当するものを含めることは記載されていません。さらに、いずれの文献にも、顧客が知りたい情報の一例に『調理商品が出来上がるまでの残り時間』が含まれることについては示唆がありません。 そのため、当業者は、引用文献1及び引用文献2に基づいても、『前記スペースに陳列された前記調理商品が出来上がるまでの残り時間を示す第1の情報』を、『店員側に向けられる第1面以外の面のいずれかであって、顧客側から視認可能な第2面』に配置された第1の表示手段に表示させることを、容易になし得ない、と思料いたします。」 (2) 検討 上記(1)の主張について検討する。 引2事項は、「顧客と対面する位置で商品に対応づけられた第1の電子棚札と、前記商品と対応し、従業員と対面する位置に設けられた第2の電子棚札と、を有する商品表示システムにおいて、 前記第1の電子棚札と第2の電子棚札と共通して表示する第1の表示情報を有すること。」であり、これを引用発明に適用したものは、引用発明の「蒸し運転が終了するまでの時間」及び「追炊き運転が終了するまでの時間」を店員側と顧客側に表示することとなるので、「店員側に向けられる第1面以外の面のいずれかであって、顧客側から視認可能な第2面」に配置された第1の表示手段に表示させることは、上述のとおり、当業者が容易に想到し得たことである。 また、商品の出来上がりまでの残り時間は、店員だけでなく、顧客にとっても知りたい情報であることが技術常識であることは、上述のとおりである。 そうすると、上記(1)の主張を検討しても、前記2(2)に説示した判断を左右するものではないから、請求人の主張を採用することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-04-06 |
結審通知日 | 2022-04-12 |
審決日 | 2022-04-27 |
出願番号 | P2017-051040 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47J)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 河内 誠 |
発明の名称 | 什器および調理商品管理システム |
代理人 | 速水 進治 |