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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1385954
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-20 
確定日 2022-07-05 
事件の表示 特願2019−560231「中継UEから遠隔UEへのブロードキャスト/マルチキャスト配信の中継」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日国際公開、WO2018/204695、令和 2年 6月25日国内公表、特表2020−519156、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2018年(平成30年)5月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年5月5日 米国、2018年3月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 9月25日付け 拒絶理由通知書
令和 2年12月 4日 手続補正書、意見書の提出
令和 3年 4月 9日付け 拒絶査定
令和 3年 7月20日 審判請求書の提出
令和 3年 7月28日 手続補正書(方式)の提出
令和 4年 2月24日付け 拒絶理由通知書
令和 4年 4月22日 手続補正書、意見書の提出
令和 4年 5月12日 令和4年5月11日に行われた電話応対等の応対記録の作成
令和 4年 5月12日付け 拒絶理由通知書(当審:最後)
令和 4年 5月26日 手続補正書、意見書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和3年4月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(特許法第29条第1項第3号)について
請求項1、6ないし9、12、13、17ないし20、23、及び24に対して、引用文献1
●理由2(特許法第29条第2項)について
請求項1、2、6ないし9、12ないし14、17ないし20、及び23ないし24に対して、引用文献1
請求項3、10、11、15、21、及び22に対して、引用文献1及び2
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2017/026408号
2.国際公開第2017/046978号

第3 当審拒絶理由の概要

当審における令和4年5月12日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(明確性)について
・請求項 18及び19
請求項18には「前記関心のあるMBMSサービス」という記載があるが、請求項18、及び請求項18が引用する請求項13のいずれにも、当該記載と対応すべき「関心のあるMBMSサービス」は記載されていないから、「前記関心のあるMBMSサービス」が何を意味するのか不明である。
また、請求項19の記載にも、同様の不備がある。
したがって、請求項18及び19のそれぞれに係る発明は、明確でない。

第4 本願発明

本願の請求項1ないし24に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明24」という。)は、令和4年5月26日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。(下線は請求人が付したものであり補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
中継ユーザ機器(UE)装置が、基地局に、前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージを送信することと、
前記中継UE装置が、遠隔UE装置にブロードキャスト/マルチキャスト情報を提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のMBMS関心インディケーションメッセージを送信することは、前記中継UE装置のRRC(Radio Resource Control)状態に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブロードキャスト/マルチキャスト情報を提供することは、SC−PTM(Single Cell−Point to Multipoint)制御情報を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遠隔UE装置が、関心のあるMBMSサービスの配信方法に基づいて、前記関心のあるMBMSサービスを選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遠隔UE装置が前記中継UE装置に、関心のあるMBMSサービスの配信方法を示す配信プリファレンスを含む第2のMBMS関心インディケーションメッセージを送信することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ブロードキャスト/マルチキャスト情報を提供することは、関心のあるMBMSサービスを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記関心のあるMBMSサービスは、ブロードキャスト配信を介して提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記関心のあるMBMSサービスは、ユニキャスト配信を介して提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記中継UE装置において、前記遠隔UE装置からのブロードキャスト/マルチキャスト情報の要求を受信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ブロードキャスト/マルチキャスト情報の要求は、SC−PTM(Single Cell−Point to Multipoint)制御情報の要求を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記SC−PTM制御情報は、SC−PTMサービスに関連付けられたシステム情報ブロック(System Information Blocks)、及びSC−MCCH(Single Cell−Multicast Control Channel)情報を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブロードキャスト/マルチキャスト情報の要求は、関心のあるMBMSサービスのための第3のMBMS関心インディケーションメッセージを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
中継ユーザ機器(UE)装置であって、
制御部と、
前記制御部に結合された送信部と、を備え、
前記送信部は、
前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージを基地局に送信し、
ブロードキャスト/マルチキャスト情報を遠隔UE装置に送信する、中継UE装置。
【請求項14】
前記第1のMBMS関心インディケーションメッセージの送信は、RRC(Radio Resource Control)状態に基づく、請求項13に記載の中継UE装置。
【請求項15】
前記ブロードキャスト/マルチキャスト情報の送信は、SC−PTM(Single Cell−Point to Multipoint)制御情報の送信を含む、請求項13に記載の中継UE装置。
【請求項16】
前記中継UE装置は、関心のあるMBMSサービスの配信方法を示す配信プリファレンスを含む前記遠隔UE装置から第2のMBMS関心インディケーションメッセージを受信する受信部をさらに備える、請求項13に記載の中継UE装置。
【請求項17】
前記ブロードキャスト/マルチキャスト情報の送信は、関心のあるMBMSサービスの送信を含む、請求項13に記載の中継UE装置。
【請求項18】
前記関心のあるMBMSサービスは、ブロードキャスト配信を介して提供される、請求項17に記載の中継UE装置。
【請求項19】
前記関心のあるMBMSサービスは、ユニキャスト配信を介して提供される、請求項17に記載の中継UE装置。
【請求項20】
前記中継UE装置は、ブロードキャスト/マルチキャスト情報の要求を前記遠隔UE装置から受信する受信部をさらに備える、請求項13に記載の中継UE装置。
【請求項21】
前記ブロードキャスト/マルチキャスト情報の要求は、SC−PTM(Single Cell−Point to Multipoint)制御情報の要求を含む、請求項20に記載の中継UE装置。
【請求項22】
前記SC−PTM制御情報は、SC−PTMサービスに関連付けられたシステム情報ブロック及びSC−MCCH(Single Cell−Multicast Control Channel)情報を含む、請求項21に記載の中継UE装置。
【請求項23】
前記ブロードキャスト/マルチキャスト情報の要求は、関心のあるMBMSサービスのための第3のMBMS関心インディケーションメッセージを含む、請求項20に記載の中継UE装置。
【請求項24】
中継ユーザ機器(UE)装置のプロセッサであって、
前記プロセッサは、
前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージを基地局に送信し、
前記MBMSサービスに対応するブロードキャスト/マルチキャスト情報を遠隔UE装置に送信する、プロセッサ。」

第5 引用文献、引用発明、及び技術的事項

1.引用文献1について
原査定の拒絶理由で引用された、国際公開第2017/026408号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

(1) 「[0131] 図13に示すように、ステップS101において、UE100−2は、TMGIモニタリング要求をUE100−1に送信する。
[0132] ステップS102において、UE100−1は、TMGIモニタリング要求により、リモートUEからMBMSサービスの中継が要求されたと判断する。UE100−1は、MBMSサービスを中継するための無線リソースをeNB200に要求する。UE100−1は、例えば、SLUE情報メッセージ(SL UE information)を用いて、当該無線リソースをeNB200に要求する。SLUE情報メッセージは、例えば、UEが近傍サービス(例えば、直接ディスカバリ、直接通信、UE・ネットワーク中継など)に興味がある場合に用いられるメッセージである。
[0133] eNB200は、UE100−1からの無線リソースの要求に応じて、MBMSサービスを中継するための無線リソースをUE100−1に割り当てる。ここで、eNB200は、通常のUE・ネットワーク中継に用いられる第1の無線リソースとは異なる第2の無線リソースを割り当てることができる。eNB200は、ユニキャスト用の第1の無線リソースではなく、マルチキャスト又はブロードキャスト用の第2の無線リソースを割り当てることができる。
[0134] 第2の無線リソースは、例えば、第1の無線リソースよりも長い期間利用可能な無線リソースである。eNB200は、第2の無線リソースの期間を特定するための情報を第2の無線リソースの割当情報と共に、UE100−1へ送信してもよい。当該特定するための情報は、例えば、絶対時間を示す情報(例えば、タイマ)、第2の無線リソースが送信リソースプールの何周期分かを示す情報などである。
[0135] ステップS103において、eNB200は、MBMSサービスを中継するために用いられる無線リソース(第2の無線リソース)の割当情報をUE100−2に送信する。
[0136] ステップS104において、UE100−1は、無線リソースの割当情報に基づいて、無線リソースを用いて、MBMSサービス(MBMSトラフィック)をリモートUEへ中継(送信)する。」

(2) 「

」(図13)
(当審訳:



引用文献1の上記記載、及び移動体通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記(1)の段落[0132]の「UE100−1は、MBMSサービスを中継するための無線リソースをeNB200に要求する。UE100−1は、例えば、SLUE情報メッセージ(SL UE information)を用いて、当該無線リソースをeNB200に要求する。」という記載及び上記(2)の記載によれば、引用文献1には、UEが、eNBに、MBMSサービスを中継するための無線リソースを要求するSLUE情報メッセージを送信することが記載されている、といえる。

イ 上記(1)の段落[0133]の「eNB200は、UE100−1からの無線リソースの要求に応じて、MBMSサービスを中継するための無線リソースをUE100−1に割り当てる。ここで、eNB200は、通常のUE・ネットワーク中継に用いられる第1の無線リソースとは異なる第2の無線リソースを割り当てることができる。eNB200は、・・・マルチキャスト又はブロードキャスト用の・・・無線リソースを割り当てることができる。」という記載及び上記(2)の記載によれば、引用文献1には、eNBは、UEからの無線リソースの要求に応じて、MBMSサービスを中継するための無線リソースとして、マルチキャスト又はブロードキャスト用の無線リソースをUEに割り当てることが記載されている、といえる。

ウ 上記(1)の段落[0136]の「UE100−1は、無線リソースの割当情報に基づいて、無線リソースを用いて、MBMSサービス(MBMSトラフィック)をリモートUEへ中継(送信)する。」という記載、及び上記(2)の記載によれば、引用文献1には、UEは、無線リソースの割当情報に基づいて、無線リソースを用いて、リモートUEへMBMSトラフィックを中継することが記載されている、といえる。

エ 上記「ア」ないし「ウ」で検討した内容は、全体でひとつの方法を構成するといえるから、引用文献1には、上記「ア」ないし「ウ」で検討した内容を含む方法が記載されている。

以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 UEが、eNBに、MBMSサービスを中継するための無線リソースを要求するSLUE情報メッセージを送信することと、
前記eNBは、前記UEからの無線リソースの要求に応じて、MBMSサービスを中継するための無線リソースとして、マルチキャスト又はブロードキャスト用の無線リソースをUEに割り当てることと、
前記UEは、前記無線リソースの割当情報に基づいて、前記無線リソースを用いて、リモートUEへMBMSトラフィックを中継することと、を含む方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶理由で引用された、国際公開第2017/046978号(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付与した。)

(1) 「[0031] 続いて以下では、V2Xサービスのプロビジョニング手順について説明する。図4は、プロビジョニング手順の一例である処理400を示すシーケンス図である。ネットワーク410は、図1の構成例では少なくともeNB130を含み、図2の構成例では少なくともeNBとして動作するRSU220を含む。ネットワーク410は、さらに、V2Xコントローラ150を含んでもよい。」

(2) 「[0044] なお、V2X設定(V2X configuration)は、V2Xサービスために確保された個別の搬送波周波数帯域f1、LSAのための共用周波数帯域f2、及びセルラー通信ネットワークのオペレータにライセンスされた搬送波周波数帯域f3のいずれで送信されてもよい。さらに、V2X設定はRSU120から送信されてもよい。例えば、RSU(UE)120が、eNB130から送信されるV2X設定を受信し、当該V2X設定(の少なくとも一部)をV2Xサービスための個別周波数帯域f1でグループキャストしてもよいし、UE100へ転送(中継)してもよい。
[0045] いくつかの実装において、V2X設定は、V2Xサービスのために使用される搬送波周波数帯域の測定設定を示してもよい。いくつかの実装において、V2X設定は、V2Xサービスのための無線リソース設定を含んでもよい。当該無線リソース設定は、データ無線ベアラ(Data Radio Bearer(DRB))の設定及びシグナリング無線ベアラ(Signalling Radio Bearer(SRB))の設定のいずれか又は両方を含んでもよい。DRB設定は、以下に列挙される要素のうち少なくとも1つを含んでもよい:
・Multimedia Broadcast/Multicast Service(MBMS)のためのPhysical Multicast Channel(PMCH)の設定;
・Single Cell Point to Multi-point(SC-PTM)のためのPhysical Downlink Shared Channel(PDSCH)の設定;
・Logical Channel ID(LCID);及び
・E-UTRAN Radio Access Bearer(E-RAB) identity。」

そうすると、引用文献2には、「V2Xサービスのプロビジョニング手順において、RSU(UE)が、eNBから送信されるV2X設定をUEへ中継し、V2X設定はデータ無線ベアラ(DRB)の設定を含み、DRB設定はSingle Cell Point to Multi-point(SC-PTM)のためのPDSCHの設定を含む。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比及び判断

1.本願発明1について
本願発明1と引用発明を対比する。

(1) 引用発明の「eNB」は、本願発明1の「基地局」に相当する。また、引用発明では、「UE」が「リモートUE」へMBMSトラフィックを中継するから、引用発明の「UE」及び「リモートUE」は、本願発明1の「中継ユーザ機器(UE)装置」及び「遠隔UE装置」にそれぞれ相当する。
そして、本願発明の「中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」と、引用発明の「MBMSサービスを中継するための無線リソースを要求するSLUE情報メッセージ」は、「メッセージ」である点で共通し、引用発明の当該SLUE情報メッセージが「中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」ではない点で、相違する。
そうすると、本願発明1の「中継ユーザ機器(UE)装置が、基地局に、前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージを送信すること」と、引用発明の「UEが、eNBに、MBMSサービスを中継するための無線リソースを要求するSLUE情報メッセージを送信すること」は、「中継ユーザ機器(UE)装置が、基地局に、メッセージを送信すること」である点で共通し、引用発明の当該メッセージが「中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」ではない点で、相違する。

(2) 引用発明の「前記UEは、前記無線リソースの割当情報に基づいて、前記無線リソースを用いて、リモートUEへMBMSトラフィックを中継すること」について、当該「前記無線リソース」が「マルチキャスト又はブロードキャスト用の無線リソース」であることは明らかである。
また、当該「MBMSトラフィック」は、マルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス・トラフィックを意味することが技術常識であり、また、当該マルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス・トラフィックを中継することにより、該当するマルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス情報が提供されることも技術常識である。
そうすると、引用発明の「前記UEは、前記無線リソースの割当情報に基づいて、前記無線リソースを用いて、リモートUEへMBMSトラフィックを中継すること」は、前記UEが、前記無線リソースの割当情報に基づいて、マルチキャスト又はブロードキャスト用の無線リソースを用いて、リモートUEへ、マルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス情報を提供することを意味するといえる。
したがって、引用発明の「前記UEは、前記無線リソースの割当情報に基づいて、前記無線リソースを用いて、リモートUEへMBMSトラフィックを中継すること」は、本願発明1の「前記中継UE装置が、遠隔UE装置にブロードキャスト/マルチキャスト情報を提供すること」に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 中継ユーザ機器(UE)装置が、基地局に、メッセージを送信することと、
前記中継UE装置が、遠隔UE装置にブロードキャスト/マルチキャスト情報を提供することと、を含む、方法。」

(相違点)
「メッセージ」について、本願発明1では、「前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」との発明特定事項を含むのに対して、引用発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。

したがって、本願発明1と引用発明は上記相違点で相違するから、本願発明1は引用発明でない。

次に、上記相違点について検討すると、中継ユーザ機器(UE)装置が基地局に送信するメッセージを、「前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」とすることは、引用文献2に記載されておらず、また周知技術であるともいえない。
そうすると、引用発明に基いて、上記相違点に係る発明特定事項を含むものとすることは、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易になし得たこととはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明でなく、また、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、引用発明でなく、また、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明13ないし23について
本願発明13は、中継ユーザ機器(UE)装置が行う「方法」の発明である本願発明1を、「中継ユーザ機器(UE)装置」の発明としたものである。
そして、本願発明13は、上記「1.」で検討した上記相違点に係る発明特定事項と同じ、「前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」という発明特定事項を含むから、本願発明13は、本願発明1と同様の理由により、引用発明でなく、また、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
そして、本願発明14ないし23は、本願発明13の発明特定事項を全て含むから、本願発明13と同じ理由により、引用発明でなく、また、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明24について
本願発明24は、中継ユーザ機器(UE)装置が行う「方法」の発明である本願発明1を、「中継ユーザ機器(UE)装置のプロセッサ」の発明としたものである。
そして、本願発明24は、上記「1.」で検討した上記相違点に係る発明特定事項と同じ、「前記中継UE装置が中継モードで動作していることを示す情報を含む第1のMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)関心インディケーションメッセージ」という発明特定事項を含むから、本願発明24は、本願発明1と同様の理由により、引用発明でなく、また、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断

1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
本願発明1、6ないし9、12、13、17ないし20、23、及び24は、上記「第6」の「1.」ないし「4.」のとおり、引用発明でない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
本願発明1ないし3、6ないし15、17ないし24は、上記「第6」の「1.」ないし「4.」のとおり、当業者であっても、引用発明、及び引用例2に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.まとめ
したがって、原査定の理由1及び2は、いずれも維持することができない。

第8 当審拒絶理由についての判断

本件補正により,請求項18の「前記関心のあるMBMSサービスは、ブロードキャスト配信を介して提供される、請求項13に記載の中継UE装置。」という記載が、「前記関心のあるMBMSサービスは、ブロードキャスト配信を介して提供される、請求項17に記載の中継UE装置。」(下線は補正箇所を示す。以下同様。)へと補正されるとともに、請求項19の「前記関心のあるMBMSサービスは、ユニキャスト配信を介して提供される、請求項13に記載の中継UE装置。」という記載が、「前記関心のあるMBMSサービスは、ユニキャスト配信を介して提供される、請求項17に記載の中継UE装置。」へと補正されたことにより、当審拒絶理由は解消した。

第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-21 
出願番号 P2019-560231
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 圓道 浩史
本郷 彰
発明の名称 中継UEから遠隔UEへのブロードキャスト/マルチキャスト配信の中継  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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