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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1385967
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-27 
確定日 2022-06-28 
事件の表示 特願2017−119081「車両認識装置、車両認識システム、車両認識プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月10日出願公開、特開2019−3513、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月16日の出願であって、令和2年11月16日付け(発送日:令和2年11月24日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年3月12日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年4月14日付け(発送日:令和3年4月27日)で拒絶査定がされた。これに対し、令和3年7月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明(以下「本願発明1〜9」という。)は、令和3年7月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
指向性が所定よりも高い電磁波で検知範囲を走査し且つ前記検知範囲内において全周囲に静止物が存在する場所に設置されたレーダに適用され、前記電磁波の反射波に基づいて車両を認識する車両認識装置であって、
前記走査における前記電磁波の全ての照射方向に存在する静止物により反射された前記電磁波の反射波に基づいて、前記走査における前記電磁波の全ての照射方向において、前記レーダから前記静止物までの距離を予め特定する静止物特定部と、
それぞれの照射方向において、前記静止物特定部により予め特定された前記全ての照射方向における前記距離から、前記レーダから前記反射波に基づき検出した反射点までの距離を引いた差が閾値よりも大きい反射点を、前記レーダから前記静止物よりも近い距離で前記電磁波を反射する反射点として特定する反射点特定部と、
前記反射点特定部により特定された前記反射点のうち、共通の車両に属する反射点の群である共通反射点群を特定する反射点群特定部と、
前記反射波の強度が閾値よりも小さい前記電磁波の照射方向である弱反射方向を特定する弱反射特定部と、
前記弱反射特定部により特定された前記弱反射方向のうち、前記反射点群特定部により特定された前記共通反射点群への前記電磁波の照射方向に連続している方向である連続方向を特定する連続方向特定部と、
前記電磁波の全ての照射方向を含む平面における前記車両の輪郭が矩形であるとの仮定と前記反射点群特定部により特定された前記共通反射点群とに基づいて、前記連続方向特定部により特定された前記連続方向において、前記共通の車両に属すると推定される弱反射点を前記共通反射点群に補填して、前記共通の車両に属する点の群である車両点群を作成する点群作成部と、
を備える車両認識装置。
【請求項2】
前記点群作成部は、前記共通反射点群に含まれる前記反射点への前記電磁波の照射方向同士の間に前記連続方向が存在する場合に、前記連続方向の両隣の前記照射方向で特定された前記反射点同士の間に前記弱反射点を補填する請求項1に記載の車両認識装置。
【請求項3】
前記点群作成部は、前記共通反射点群に含まれる前記反射点への前記電磁波の照射方向同士の間に前記連続方向が存在する場合に、前記連続方向の両隣の前記照射方向で特定された前記反射点同士の間において、前記共通反射点群に含まれる全ての反射点が矩形のいずれかの辺を含む直線上の点となるように近似した第1近似直線と、前記連続方向のうち各方向を表す直線との交点に前記弱反射点を補填する請求項1又は2に記載の車両認識装置。
【請求項4】
前記点群作成部は、前記共通反射点群への前記電磁波の照射方向が前記連続方向に対して片側にのみ連続している場合に、前記共通反射点群への前記電磁波のそれぞれの照射方向で特定された前記反射点が直線上の点となるように近似した第2近似直線に直交し且つ前記連続方向の隣の前記照射方向で特定された前記反射点を通る直線と、前記連続方向のうち各方向を表す直線との交点に前記弱反射点を補填する請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両認識装置。
【請求項5】
指向性が所定よりも高い電磁波で検知範囲を走査するレーダに適用され、前記電磁波の反射波に基づいて車両を認識する車両認識装置であって、
前記反射波に基づいて、前記走査における前記電磁波の全ての照射方向において、前記レーダから静止物までの距離を特定する静止物特定部と、
前記静止物特定部により特定された前記全ての照射方向における前記距離と前記反射波とに基づいて、前記レーダから前記静止物よりも近い距離で前記電磁波を反射する反射点の位置を特定する反射点特定部と、
前記反射点特定部により特定された前記反射点のうち、共通の車両に属する反射点の群である共通反射点群を特定する反射点群特定部と、
前記反射波の強度が閾値よりも小さい前記電磁波の照射方向である弱反射方向を特定する弱反射特定部と、
前記弱反射特定部により特定された前記弱反射方向のうち、前記反射点群特定部により特定された前記共通反射点群への前記電磁波の照射方向に連続している方向である連続方向を特定する連続方向特定部と、
前記電磁波の全ての照射方向を含む平面における前記車両の輪郭が矩形であるとの仮定と前記反射点群特定部により特定された前記共通反射点群とに基づいて、前記連続方向特定部により特定された前記連続方向において、前記共通の車両に属すると推定される弱反射点を前記共通反射点群に補填して、前記共通の車両に属する点の群である車両点群を作成する点群作成部と、
を備え、
前記点群作成部は、前記共通反射点群への前記電磁波の照射方向が前記連続方向に対して片側にのみ連続している場合に、前記共通反射点群への前記電磁波のそれぞれの照射方向で特定された前記反射点が直線上の点となるように近似した第2近似直線に直交し且つ前記連続方向の隣の前記照射方向で特定された前記反射点を通る直線と、前記連続方向のうち各方向を表す直線との交点に前記弱反射点を補填する車両認識装置。
【請求項6】
前記レーダは、前記電磁波を斜め下方へ照射するように配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両認識装置。
【請求項7】
前記点群作成部により作成された前記車両点群に基づいて、前記共通の車両を認識する車両認識部を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両認識装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両認識装置と、
前記レーダと、を備える車両認識システム。
【請求項9】
コンピュータにインストールされるプログラムであって、
前記コンピュータに、請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両認識装置が備える各部の機能を実現させる車両認識プログラム。」

2 拒絶査定の理由について
拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1−3、6−9
・引用文献等 1−2

<引用文献等一覧>
1. 特開2012−173230号公報
2. 特開2013−92459号公報

3 当審の判断
(1)引用文献1記載事項及び引用発明
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
・「【0021】
図1は自車両1が備える物体認識装置の構成を示し、この物体認識装置は車載レーダとしてのレーザレーダ2を備える。レーザレーダ2は、自車両1の前方の所定範囲(例えばほぼ180°の範囲)を探査する広角の測距レーダであり、近赤外線を利用すること等により、自転車や歩行者などの反射も得られる。そして、レーザレーダ2は、例えば自車両1のフロントバンパーに取り付けられ、自車両1の前方を例えば80ms秒間隔のフレーム毎に探査しつつレーザパルスを出力し、前方の他の車両(自動車)、モータバイク、自転車、歩行者(人)等の物体での反射を受信して各反射点の位置データ(自車両1からの距離および左右方向の位置のデータ)を受信処理部3に出力する。なお、レーザレーダ2は、実際には前方を上下左右に走査するが、ここでは、説明を簡単にするため、レーザレーダ2は左右方向に探査するものとする。」
・「【0048】
図6は自車両1が進む方向にガードレール400に接近して認識対象の車両200が停車している場合を示し、この場合、反射点rのクラスタリング処理によって車両200とガードレール400の反射点rを含む反射点群のパターンP3が得られる。このパターンP3には、車両200の前端と左側のエッジの反射点rに基づくL字状部分L3の折曲の凸部分βと、車両200とガードレール400の境界の凹部分αとが存在する。
【0049】
そして、分離処理部6は、上記した分離の処理により、パターンP3の反射点rを車両200側の端部からたどって凸部分βの候補位置を検出し、さらに、パターンP3の反射点rをたどって凹部分αの候補位置を検出し、この候補位置を凹部分αに確定して凹部分αでパターンP3を切断し、図6に示すように、前記パターンP11と同様の車両200のパターンP31と、ガードレール400のパターンP32とに分離する。なお、図6の凸部分βと凹部分αの直線距離WyもWy>W0である。また、パターンP3の反射点rをガードレール400側の端部からたどると、凸部βを検出したとしても、それに続く凹部分αは検出できないので、このような場合には、パターンP3の反射点rを車両200側の端部までたどった後、パターンP3の反射点rを車両200側の端部から再びたどって凸部βおよびそれに続く凹部分αを検出して凹部分αを確定する。
【0050】
したがって、パターンP3に認識対象の物体(例えば車両200)と他の物体(例えばガードレール)の反射点が含まれている場合にも、認識対象の物体のパターンP31を分離し、その物体を矩形R31の属性推定に基づいて認識することができる。」
・「【図6】





上記記載を総合し、本願発明1の記載に倣って整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「自車両1の前方を探査しつつレーザパルスを出力し、前方の他の車両(自動車)、モータバイク、自転車、歩行者(人)等の物体での反射を受信して各反射点の位置データ(自車両1からの距離および左右方向の位置のデータ)を受信処理部3に出力するレーザレーダ2を備える物体認識装置であって、
反射点rのクラスタリング処理によって車両200とガードレール400の反射点rを含む反射点群のパターンP3が得られて、
分離処理部6は、パターンP3の反射点rを車両200側の端部からたどって凸部分βの候補位置を検出し、さらに、パターンP3の反射点rをたどって凹部分αの候補位置を検出し、この候補位置を凹部分αに確定して凹部分αでパターンP3を切断し、車両200のパターンP31と、ガードレール400のパターンP32とに分離することで、
パターンP3に認識対象の物体(例えば車両200)と他の物体(例えばガードレール)の反射点が含まれている場合にも、認識対象の物体のパターンP31を分離し、その物体を矩形R31の属性推定に基づいて認識する物体認識装置。」

(2)本願発明1と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「自車両1の前方を探査しつつレーザパルスを出力し、前方の他の車両(自動車)、モータバイク、自転車、歩行者(人)等の物体での反射を受信して各反射点の位置データ(自車両1からの距離および左右方向の位置のデータ)を受信処理部3に出力するレーザレーダ2を備える物体認識装置」について、レーザパルスが指向性の高い電磁波といえるから、引用発明の当該記載と、本願発明1の「指向性が所定よりも高い電磁波で検知範囲を走査し且つ前記検知範囲内において全周囲に静止物が存在する場所に設置されたレーダに適用され、前記電磁波の反射波に基づいて車両を認識する車両認識装置」とは、指向性が所定よりも高い電磁波で検知範囲を走査し、前記電磁波の反射波に基づいて車両を認識する車両認識装置の限りで一致する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
<一致点>
「指向性が所定よりも高い電磁波で検知範囲を走査し、前記電磁波の反射波に基づいて車両を認識する車両認識装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明1は、「前記検知範囲内において全周囲に静止物が存在する場所に設置されたレーダに適用され」るものであって、「前記走査における前記電磁波の全ての照射方向に存在する静止物により反射された前記電磁波の反射波に基づいて、前記走査における前記電磁波の全ての照射方向において、前記レーダから前記静止物までの距離を予め特定する静止物特定部と、
それぞれの照射方向において、前記静止物特定部により予め特定された前記全ての照射方向における前記距離から、前記レーダから前記反射波に基づき検出した反射点までの距離を引いた差が閾値よりも大きい反射点を、前記レーダから前記静止物よりも近い距離で前記電磁波を反射する反射点として特定する反射点特定部と、
前記反射点特定部により特定された前記反射点のうち、共通の車両に属する反射点の群である共通反射点群を特定する反射点群特定部と、
前記反射波の強度が閾値よりも小さい前記電磁波の照射方向である弱反射方向を特定する弱反射特定部と、
前記弱反射特定部により特定された前記弱反射方向のうち、前記反射点群特定部により特定された前記共通反射点群への前記電磁波の照射方向に連続している方向である連続方向を特定する連続方向特定部と、
前記電磁波の全ての照射方向を含む平面における前記車両の輪郭が矩形であるとの仮定と前記反射点群特定部により特定された前記共通反射点群とに基づいて、前記連続方向特定部により特定された前記連続方向において、前記共通の車両に属すると推定される弱反射点を前記共通反射点群に補填して、前記共通の車両に属する点の群である車両点群を作成する点群作成部と、
を備える」のに対して、
引用発明は、反射点rのクラスタリング処理によって車両200とガードレール400の反射点rを含む反射点群のパターンP3が得られて、
分離処理部6は、パターンP3の反射点rを車両200側の端部からたどって凸部分βの候補位置を検出し、さらに、パターンP3の反射点rをたどって凹部分αの候補位置を検出し、この候補位置を凹部分αに確定して凹部分αでパターンP3を切断し、車両200のパターンP31と、ガードレール400のパターンP32とに分離することで、
パターンP3に認識対象の物体(例えば車両200)と他の物体(例えばガードレール)の反射点が含まれている場合にも、認識対象の物体のパターンP31を分離し、その物体を矩形R31の属性推定に基づいて認識する点。

イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
本願発明1は、「前記検知範囲内において全周囲に静止物が存在する場所に設置されたレーダに適用され」るものであって、「前記走査における前記電磁波の全ての照射方向に存在する静止物により反射された前記電磁波の反射波に基づいて、前記走査における前記電磁波の全ての照射方向において、前記レーダから前記静止物までの距離を予め特定する静止物特定部と、
それぞれの照射方向において、前記静止物特定部により予め特定された前記全ての照射方向における前記距離から、前記レーダから前記反射波に基づき検出した反射点までの距離を引いた差が閾値よりも大きい反射点を、前記レーダから前記静止物よりも近い距離で前記電磁波を反射する反射点として特定する反射点特定部と、」を備えるものであるから、静止物特定部により予めレーダから検知範囲内の全周囲の静止物までの距離を特定し、反射点特定部により、それぞれの照射方向において、静止物特定部により予め特定された前記距離から、レーダから反射波に基づき検出した反射点までの距離を引いた差が閾値よりも大きい反射点を、レーダから静止物よりも近い距離で前記電磁波を反射する反射点として特定することで、車両を認識するものである。
一方、引用発明は、「車両200のパターンP31と、ガードレール400のパターンP32とに分離する」ものであって、ガードレール400は静止物といえるが、そもそも、本願発明1の「予めレーダから検知範囲内の全周囲の静止物までの距離を特定」することを行っておらず、車両を認識する手法が大きく異なる。
また、引用文献2には、「予めレーダから検知範囲内の全周囲の静止物までの距離を特定」することについて、記載も示唆もない。

したがって、引用発明において、引用文献2に記載された事項を適用して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ウ 小括
ゆえに、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明2、3、6〜9について
本願発明2、3、6、7は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付した発明であって、本願発明8、9は、実質、本願発明1の発明特定事項を全て備える車両認識システム又は車両認識プログラムであるから、上記(2)と同様の理由により、本願発明2、3、6〜9は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第3 まとめ
以上のとおりであるから、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-14 
出願番号 P2017-119081
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 沼生 泰伸
佐々木 正章
発明の名称 車両認識装置、車両認識システム、車両認識プログラム  
代理人 松田 洋  
代理人 山田 強  

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