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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1386019
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-25 
確定日 2022-06-09 
事件の表示 特願2017−110340「電磁波検出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018−205095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月2日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 9月 1日付け:拒絶理由通知書(最初)
同年11月 2日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月 2日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 3年 1月28日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月28日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(同年6月1
1日送達、以下「原査定」という。)
同年 8月25日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和3年8月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年8月25日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和3年8月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正を含むものであり、この補正により、以下に示すとおり、本件補正前の特許請求の範囲の記載が、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。

<本件補正前の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
車両に備えられ、前記車両が左右の最大舵角線に沿って前進または後進したときに前記車両の左右の側面が描く軌跡とその内側を含む領域に電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置と、
前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、前記領域の少なくとも一部が重なるように電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射を検出する第2の電磁波検出装置と、
を備え、
前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して左側に設けられている、
電磁波検出システム。
【請求項2】
車両に備えられ、前記車両の左右の側面の延長線とその内側を含む領域に電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置と、
前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、前記領域の少なくとも一部が重なるように電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射を検出する第2の電磁波検出装置と、
を備え、
前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して左側に設けられている、
電磁波検出システム。
【請求項3】
車両に備えられ、電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置と、
前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第2の電磁波検出部と、
を備え、
前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、それぞれの放射領域の少なくとも一部が重複し、重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離とが所定の距離以下となるように電磁波を放射し、
前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して左側に設けられている、
電磁波検出システム。」

<本件補正後の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
車両に備えられ、電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置と、
前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第2の電磁波検出部と、
を備え、
前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、それぞれの放射領域の少なくとも一部が重複し、重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離とが所定の距離以下となるように電磁波を放射し、
前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して左側に設けられ、
前記第1の電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含み、かつ、
前記第2の電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含んでいる状態において、
前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、前記重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離が所定の距離以下となるように電磁波を放射する、
電磁波検出システム。」(下線は、補正箇所を示す。)

新規事項の追加について
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項3において、
「前記第1の電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含み、かつ、前記第2の電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含んでいる状態において」、
「前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、前記重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離が所定の距離以下となるように電磁波を放射する」
という構成を追加したものである(下線は、当審において付した。以下同様である。)。

(2)当初明細書等の記載
一方、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等)という。)において、審判請求の理由で請求人が補正の根拠として挙げている【0064】、【図12】には、以下のように記載されている。

「【0064】
また、図12に示すように、本開示の第2の実施形態に係る電磁波検出システム2において、各電磁波検出装置100は、車両Zの最先端と重複領域Vとの間、車両Zの最後端と重複領域Wとの間には距離がある。そして、これらの距離が広いと、物体の方向を検出することができない領域が広くなることになる。そこで、本開示の第2の実施形態に係る電磁波検出システム2において、各電磁波検出装置100はそれぞれ、これらの距離が所定の距離以下になるように電磁波を放射する。ここで、所定の距離とは、例えば、車両Zの前方においては20cm、車両Zの後方においては25cmである。」

「【図12】



(3)新規事項の追加の判断
ア まず、補正後の請求項1には、「前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線」と記載されているが、上記(2)において摘記した記載及び当初明細書等の他の記載のいずれにも、「仮想直線」という文言は見当たらない。
よって、「仮想直線」の「仮想」という語句が、どのような意味を有するのか全く不明であり、「仮想直線」という概念の意味する範囲を定めることができず、当初明細書等の記載の範囲内のものであるとはいえない。

イ また、【図12】には、車両の進行方向に垂直な方向である左右方向に延び、かつ車両の最先端及び最後端を通る2つの波線が示されており、当該波線が「仮想直線」であるとの記載は当初明細書等にはないものの、仮に、当該波線を「仮想直線」であると理解したとしても、補正後の請求項1の「電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含んでいる状態」には、放射領域に仮想直線が少しでも含まれていれば、仮想直線が円錐状の放射領域の内側に完全に入っていない状態も含まれることになる。
しかしながら、【図12】には、車両の進行方向に垂直な方向に電磁波が放射され、仮想直線が円錐状の放射領域の内側に完全に入っているものしか記載されていないから、仮想直線が円錐状の放射領域の内側に完全に入っていない状態も含むような上記補正後の請求項1は、当初明細書等に記載されていない事項を特定しているといえる。

ウ 上記ア及びイの検討のとおり、上記補正により追加された上記構成は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。

(4)新規事項の追加のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明
本件補正は上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、上記第2の「1 補正の内容」の<本件補正前の特許請求の範囲>に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。


第4 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項2、3に係る発明に対する理由は、次のとおりである。

本件発明2、3は、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1.国際公開第2006/030832号(主たる引用例として引用)
引用文献2.特開2016−121986号公報(周知例として引用)


第5 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された国際公開第2006/030832号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したもので、以下同様である。

「[0001] 本発明は、電波を送出して、反射した反射信号を受信することにより周囲にある物体や人を検出するための監視装置等に関するものである。」

「[0189] また、異なる位置に配置された複数の周囲監視装置のそれぞれから得られる複数の情報から、検出対象の正確な位置を取得できるようにしてもよい。つまり、図20のように、異なる車両周囲監視装置1910、1920、1930が離れて配置されており、異なる車両周囲監視装置の監視領域が重なる位置に検出対象がある場合、2つの車両周囲監視装置からの両方の情報に基づいて、検出対象の位置を決定するようにしてもよい。
[0190] この場合の検出対象の位置決定方法について、図20に示すように車両周囲監視装置1910、1920、1930が車両後部に配置されている、図19の構成の車両周囲監視システムを例にして説明する。
[0191] 検出対象が、車両周囲監視装置1920と車両周囲監視装置1930のそれぞれの監視領域の重なる位置(監視領域2012と監視領域2021の重なる領域)に存在する場合、車両周囲監視装置1920の処理部は、車両周囲監視装置1920から検出対象までの距離を取得する。同様に、車両周囲監視装置1930の処理部は、車両周囲監視装置1930から検出対象までの距離を取得する。
[0192] 車両周囲監視装置1920および車両周囲監視装置1930の処理部は、それぞれの検出対象までの距離の情報を、中央処理部1972に伝送する。そして、中央処理部1972は、これらの2つの距離の情報から、三角測量法、つまり三角形の辺と角度の関係式で、検出対象の正確な位置を算出する。」

「[図20]



「[図26]



(2) 引用発明の認定
ア 引用文献1の[図20]、[図26]から、車両周囲監視装置1920と車両周囲監視装置1930のそれぞれの監視領域の重なる位置(監視領域2012と監視領域2021の重なる領域)が、車両の左右の側面の延長線の内側にあることが読み取れる。また、車両周囲監視装置1920が車両の中央部に設けられ、車両周囲監視装置1930が車両の中央部に対して右側に設けられていることが読み取れる。

イ 前記(1)の記載事項及び上記アの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「電波を送出して、反射した反射信号を受信することにより周囲にある物体や人を検出する監視装置であって([0001])、
周囲監視装置1920、1930は、車両後部の異なる位置に配置され([0189]、[0190])、
検出対象が、車両周囲監視装置1920と車両周囲監視装置1930のそれぞれの監視領域の重なる位置(監視領域2012と監視領域2021の重なる領域)に存在する場合、車両周囲監視装置1920から検出対象までの距離と、車両周囲監視装置1930から検出対象までの距離を取得し([0191])、
これらの2つの距離の情報から、三角測量法、つまり三角形の辺と角度の関係式で、検出対象の正確な位置を算出し([0192])、
車両周囲監視装置1920は車両の中央部に設けられ、車両周囲監視装置1930は車両の中央部に対して右側に設けられ、車両周囲監視装置1920と車両周囲監視装置1930のそれぞれの監視領域の重なる位置(監視領域2012と監視領域2021の重なる領域)が、車両の左右の側面の延長線の内側にある([図20]、[図26])、
車両周囲監視装置。」

2 引用文献2〜4に記載された事項と周知技術の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2016−121986号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0025】
図3は、図1のレーダ装置1A,1Bの動作を説明するための模式図である。図3において、レーダ装置1Aは車両の左前方部に取り付けられ、レーダ装置1Bは車両の右前方部に取り付けられる。ここで、レーダ装置1Aのフェーズドアレイアンテナ14Aから送信される送信信号を第1の送信信号とし、レーダ装置1Bのフェーズドアレイアンテナ14Aから送信される送信信号を第2の送信信号とする。」

「【図3】



(2) 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用され、本願の出願前に発行された特開平10−59120号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0017】なお、図中矢印FRは車両前方方向を示す。図1に示される如く、本実施形態の車両10には、前面10Aの車幅方向両端部近傍に2個の電波レーダーセンサからなる右側(R)の測距センサー12と左側(L)の測距センサー14とがそれぞれ搭載されており、これらの測距センサー12、14の検出値に基づいて前面衝突時に車両10と障害物16の距離及び相対速度を検出するようになっている。」

「【図1】



(3) 引用文献4に記載された事項
当審において新たに引用され、本願の出願前に発行された特表2003−516908号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0032】
図1で、1は第1の車両(自動車)を、2は第2の車両(自動車)を示し、第2の車両2は第1の車両1の左斜め後方に位置している。第2の車両2のこの位置は、第1の車両のドライバーにとって危険(重大)である。これは第1の車両のドライバーである彼または彼女は、本願明細書の冒頭部分で説明したように、車両の後方視界ミラーで第2の車両2を発見するのは非常に困難であることによる。車両1の外部後方視界ミラーを参照番号3で示す。(スエーデン特許出願第9700276−0号に記載の)発明による警告装置が発明の原理をより概略図的に示す図2でより詳細に示されている。発明の原理をより明確に示すために、図2の寸法、形状は図1と比較すると歪まされている。参照番号4はカバーまたはハウジングを示し、これには2個の電磁放射源5、6が互いに距離を置いて配置されている。
【0033】
位置感知検出器7、すなわち後程説明するように入射ビームの位置を検出する検出器は電磁放射源5、6の中間の位置に配置されている。電磁放射源5、6と位置感知検出器7は集積化電流回路の部分を構成し、電磁放射源は付勢されて位相偏位によって変調される。すなわちこれらの電磁放射源は交互に付勢(活性化)される。レーザ源またはレーザ・ダイオードが放射源として使用されることもある。このような放射源は位置感知放射検出器としてそれ自体周知であり、接続回路を構成するここで特定されたこれらの放射源間の接続も当業者には明らかである。各放射源5、6の外面上、放射検出器7の外部にはそれぞれ凸レンズ8が配置されている。
【0034】
電磁放射源5は放射ビームまたは円錐状ビーム9を放射し、電磁放射源6も同様に放射ビームまたは円錐状ビーム10を放射する。図を明確にするために、任意の時点で放射ビーム9または10のいずれか一方のみがこのような態様で付勢(活性化)されていることを理解する必要がある。付勢された光源が変調される周波数は例えば100Hzでよい。図2の点線11は放射ビーム9および10の中心軸を示している。説明ならびに簡単化のために図1および図2中で示した点線/鎖線(ダッシュ線)12は、第1の車両1に対面する第2の車両2の右側面を示している。車両2のこの側面は後程説明するように、例えば放射ビーム9および10を反射するその側面であると仮定する。図1に最も明確に示されているように、第2の車両2は図示の例で角度αで放射ビーム9および10を通過し、すなわち放射ビーム9および10を切って移動する。この角度αは実際には約15°乃至25°の範囲にある。
【0035】
車両2の反射部分が、図2の左からの放射ビーム9に侵入すると、すなわちBによってマークされた(示された)領域内に位置すると、位置感知検出器7に向けて反射された放射ビーム9からのビームはのみが記録される。この場合、検出器は信号が発生されないように変調される。第2の車両2の反射部分が放射ビーム9と10が互いに交差する図1および図2で斜線(ハッチ)を施して示した領域に侵入すると、放射源5および6の両方から発生して反射されたビームが放射検出器で検出され、それによって信号が発生され、処理され、さらにドライバーに見えるように例えばフラッシュ光に変換される。」

「【図2】



(4) 周知技術の認定
ア 引用文献2の上記(1)の摘記箇所の記載、引用文献3の上記(2)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は、周知技術であると認める(以下「周知技術1」という。)。

<周知技術1>
「車両の右側と左側の2カ所に車載レーダーを設けること。」

イ 同じく、引用文献4の上記(3)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は、周知技術であると認める(以下「周知技術2」という。)。

<周知技術2>
「レーダーが、円錐状ビームを放射すること。」


第6 当審の判断
1 本件発明2について
(1) 本件発明2と引用発明の対比
本件発明2と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「車両周囲監視装置1930」は、車両後部に配置され、電波を送出して、反射した反射信号を受信することにより周囲にある物体や人を検出し、車両周囲監視装置1930の監視領域2021と車両周囲監視装置1920の監視領域2012の重なる位置が、車両の左右の側面の延長線の内側にあるものである。
よって、引用発明の「車両周囲監視装置1930」と、本件発明2の「車両に備えられ、前記車両の左右の側面の延長線とその内側を含む領域に電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置」は、「車両に備えられ、前記車両の左右の側面の延長線とその内側を含む領域に電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置」という点で共通する。

イ 引用発明の「車両周囲監視装置1920」は、車両後部の、車両周囲監視装置1930と異なる位置に配置され、電波を送出して、反射した反射信号を受信することにより周囲にある物体や人を検出し、車両周囲監視装置1920の監視領域2012と車両周囲監視装置1930の監視領域2021の重なる位置が、車両の左右の側面の延長線の内側にあるものである。
よって、引用発明の「車両周囲監視装置1920」と、本件発明2の「前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、前記領域の少なくとも一部が重なるように電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射を検出する第2の電磁波検出装置」は、「前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、前記領域の少なくとも一部が重なるように電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射を検出する第2の電磁波検出装置」という点で共通する。

ウ 引用発明の「車両周囲監視装置1920は車両の中央部に設けられ、車両周囲監視装置1930は車両の中央部に対して右側に設けられ」ていることと、本件発明2の「前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して左側に設けられている」ことは、「前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両に設けられている」点で共通する。

エ 引用発明の「車両周囲監視装置」は、反射した電波を検出するものであるから、本件発明2の「電磁波検出システム」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本件発明2と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
車両に備えられ、前記車両の左右の側面の延長線とその内側を含む領域に電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置と、
前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、前記領域の少なくとも一部が重なるように電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射を検出する第2の電磁波検出装置と、
を備え、
前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両に設けられている、
電磁波検出システム、である点。

<相違点1>
本件発明2の「第1の電磁波検出装置」及び「第2の電磁波検出装置」が、電磁波を円錐状に放射しているのに対して、引用発明では、電波を円錐状に放射しているかどうか不明な点。

<相違点2>
本件発明2では、第1の電磁波検出装置は車両の中央部に対して右側に設けられ、第2の電磁波検出装置は車両の中央部に対して左側に設けられているのに対して、引用発明では、車両周囲監視装置1920は車両の中央部に設けられ、車両周囲監視装置1930は車両の中央部に対して右側に設けられている点。

(3) 相違点についての判断
ア 相違点1について
前記第5の2の「(4)周知技術の認定」において、周知技術2として示したとおり、レーダーが、円錐状ビームを放射することは、本願の出願前に周知である。
したがって、引用発明に周知技術2を適用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
前記第5の2の「(4)周知技術の認定」において、周知技術1として示したとおり、車両の右側と左側の2カ所に車載レーダーを設けることは、本願の出願前に周知の構成である。
したがって、引用発明に周知技術1を適用し、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点についての判断のまとめ
以上のとおり、引用発明において、上記相違点1、2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件発明2によって奏される効果は、引用発明及び周知技術1、2から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
よって、本件発明2は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本件発明3について
(1) 本件発明3と引用発明の対比
本件発明3と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「車両周囲監視装置1930」は、車両後部に配置され、電波を送出して、反射した反射信号を受信することにより周囲にある物体や人を検出するものである。
よって、引用発明の「車両周囲監視装置1930」と、本件発明3の「車両に備えられ、電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置」は、「車両に備えられ、電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置」という点で共通する。

イ 引用発明の「車両周囲監視装置1920」は、車両後部の、車両周囲監視装置1930と異なる位置に配置され、電波を送出して、反射した反射信号を受信することにより周囲にある物体や人を検出するものである。
よって、引用発明の「車両周囲監視装置1920」と、本件発明3の「前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、電磁波を円錐状に放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第2の電磁波検出部」は、「前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第2の電磁波検出部」という点で共通する。

ウ 引用発明の「車両周囲監視装置1920と車両周囲監視装置1930のそれぞれの監視領域の重なる位置(監視領域2012と監視領域2021の重なる領域)が、車両の左右の側面の延長線の内側にある」ことと、本件発明3の「前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、それぞれの放射領域の少なくとも一部が重複し、重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離とが所定の距離以下となるように電磁波を放射し」ていることは、「前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、それぞれの放射領域の少なくとも一部が重複するように電磁波を放射し」ている点で共通する。

エ 引用発明の「車両周囲監視装置1920は車両の中央部に設けられ、車両周囲監視装置1930は車両の中央部に対して右側に設けられ」ていることと、本件発明3の「前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して左側に設けられている」ことは、「前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両に設けられている」点で共通する。

オ 引用発明の「車両周囲監視装置」は、反射した電波を検出するものであるから、本件発明3の「電磁波検出システム」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本件発明3と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点3〜5において相違する。

<一致点>
車両に備えられ、電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第1の電磁波検出装置と、
前記第1の電磁波検出装置と異なる位置で前記車両に備えられ、電磁波を放射し、放射された前記電磁波の反射波を検出する第2の電磁波検出部と、
を備え、
前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、それぞれの放射領域の少なくとも一部が重複するように電磁波を放射し、
前記第1の電磁波検出装置は前記車両の中央部に対して右側に設けられ、前記第2の電磁波検出装置は前記車両に設けられている、
電磁波検出システム、である点。

<相違点3>
本件発明3の「第1の電磁波検出装置」及び「第2の電磁波検出装置」が、電磁波を円錐状に放射しているのに対して、引用発明では、電波を円錐状に放射しているかどうか不明な点。

<相違点4>
本件発明3では、第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置の放射領域が重複する領域と、車両の最端との最短距離とが所定の距離以下であるのに対して、引用発明では、そのような構成であるか不明な点。

<相違点5>
本件発明3では、第1の電磁波検出装置は車両の中央部に対して右側に設けられ、第2の電磁波検出装置は車両の中央部に対して左側に設けられているのに対して、引用発明では、車両周囲監視装置1920は車両の中央部に設けられ、車両周囲監視装置1930は車両の中央部に対して右側に設けられている点。

(3) 相違点についての判断
ア 相違点3について
前記第5の2の「(4)周知技術の認定」において、周知技術2として示したとおり、レーダーが、円錐状ビームを放射することは、本願の出願前に周知である。
したがって、引用発明に周知技術2を適用し、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点4、5について
前記第5の2の「(4)周知技術の認定」において、周知技術1として示したとおり、車両の右側と左側の2カ所に車載レーダーを設けることは、本願の出願前に周知の構成である。
したがって、引用発明に周知技術1を適用することに格別の困難性は認められない。そして、本件発明3の「所定の距離」の「所定」は大きさを具体的に特定するものではなく、何らかの基準で定められた距離を意味するにとどまるから、引用発明における、車両周囲監視装置1920と車両周囲監視装置1930のそれぞれの監視領域の重なる領域と、車両の最後端の距離も、「所定の距離以下」となることに変わりはない。
仮に、本件発明3の「重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離とが所定の距離以下となる」という意味が、重複する放射領域と車両の最端との距離を最小にするという意味であったとしても、そのようなものは、幾何学的関係からみて、2つの電磁波検出装置の位置関係とそれぞれの放射領域の重複範囲により決まるものであるから、周囲の物体を検知するための重複する放射領域を、どの程度の範囲の領域とするかは、当業者が適宜になし得る設計事項にすぎない。
よって、引用発明に周知技術1を適用し、上記相違点4、5に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点についての判断のまとめ
以上のとおり、引用発明において、上記相違点3〜5に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件発明3によって奏される効果は、引用発明及び周知技術1、2から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
よって、本件発明3は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、次の主張をしている。

(審判請求書3頁24行〜4頁9行)
「しかしながら、補正後の新請求項1に係るは発明は、「前記第1の電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含み、かつ、前記第2の電磁波検出装置の放射領域が、前記車両の進行方向に垂直な方向に延びる前記車両の最端を通る仮想直線を含んでいる状態において、前記第1の電磁波検出装置および前記第2の電磁波検出装置は、前記重複する前記放射領域と前記車両の最端との最短距離が所定の距離以下となるように電磁波を放射する」構成が追加された構成となっています。
かかる追加構成により、新請求項1では、車両の最端を通る車両の進行方向に垂直な方向への検出を可能にすると共に、重複する放射領域と車両の最端との最短距離が所定の距離以下とすることで物体が検出することができない距離を広がることを防止することができる、という顕著な効果を奏します。
上記構成、効果は審査官ご指摘の各引用文献に記載も示唆もないものと思料いたします。」

しかしながら、上記主張は、本件補正後の請求項の記載に基づくものであるところ、本件補正は、上記第2に示した理由により却下されているから、当該主張は、請求項の記載に基づくものと認められない。
したがって、当該主張は採用できない。


第7 むすび
以上のとおり、本件発明2、3は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-31 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-18 
出願番号 P2017-110340
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 561- Z (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 濱野 隆
濱本 禎広
発明の名称 電磁波検出システム  
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