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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1386029 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-09-06 |
確定日 | 2022-06-21 |
事件の表示 | 特願2017−190213「コーティング組成物、導電性膜、タッチパネル及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019− 67037、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年9月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年1月18日付け:拒絶理由通知書 令和3年5月25日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年6月 1日付け:拒絶査定(原査定) 令和3年9月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和4年4月 5日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和4年4月21日 :手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和3年6月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1〜13に係る発明は、以下の引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2016−004183号公報 2.国際公開第2013/099777号 3.特開2014−177552号公報 第3 本願発明 本願の請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は、令和4年4月21日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1及び本願発明12は、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 鎖状導電性無機粒子と、バインダと、高沸点溶剤と、低沸点溶剤とを含むコーティング組成物であって、 該コーティング組成物は、鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%であり、 2枚の偏光板の間に順番に積層された、TFT基板、液晶層、カラーフィルタ基板、及びタッチパネル基板を有するタッチパネルにおいて、該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面に、2〜60nmの膜厚を有する導電性膜を形成する用途に使用されるものであり、 該バインダは、アルコキシシランから成るものである、コーティング組成物。」 「 【請求項12】 2枚の偏光板の間に順番に積層された、TFT基板、液晶層、カラーフィルタ基板、及びタッチパネル基板を有するタッチパネルにおいて、該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面にコーティング組成物を塗布し乾燥させる工程を包含する、2〜60nmの膜厚を有する導電性膜を形成する方法であって、 該コーティング組成物は、鎖状導電性無機粒子と、バインダと、高沸点溶剤と、低沸点溶剤とを含み、 該鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%であり、 該塗布はスプレーコート法を使用して行われ、 該バインダは、アルコキシシランから成るものである方法。」 また、本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した「コーティング組成物」の発明であり、本願発明6〜9は、本願発明1の「コーティング組成物」を使用して形成された「導電性膜」の発明であり、本願発明10及び11は、本願発明6〜9の「導電性膜」を有する「タッチパネル」の発明である。 第4 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1、引用発明について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、強調のため当審にて付与した。以下同様。)。 「【0048】 <タッチ検出機能付き表示デバイス> 次に、図5〜図8を参照し、タッチ検出機能付き表示デバイス10の構成例を詳細に説明する。図6は、実施の形態1の表示装置のタッチ検出機能付き表示デバイスを示す断面図である。図7は、実施の形態1の表示装置のタッチ検出機能付き表示デバイスを示す回路図である。図8は、実施の形態1の表示装置の駆動電極および検出電極の一構成例を示す斜視図である。図6は、図5のA−A線に沿った断面図である。 【0049】 タッチ検出機能付き表示デバイス10は、アレイ基板2と、対向基板3と、偏光板4と、偏光板5と、液晶層6と、封止部7と、を有する。対向基板3は、アレイ基板2の主面としての上面と、対向基板3の主面としての下面とが対向するように、アレイ基板2と対向配置されている。偏光板4は、アレイ基板2を挟んで対向基板3と反対側に、設けられている。偏光板5は、対向基板3を挟んでアレイ基板2と反対側に、設けられている。液晶層6は、アレイ基板2と対向基板3との間に設けられている。すなわち、液晶層6は、基板21の上面と基板31の下面との間に挟まれている。アレイ基板2の外周部と対向基板3の外周部との間には、封止部7が設けられており、アレイ基板2と対向基板3との間の空間は、その空間の外周部を封止部により封止されている。そして、外周部が封止部により封止された空間には、液晶層6が封入されている。 【0050】 アレイ基板2は、基板21を有する。また、対向基板3は、基板31を有する。 【0051】 基板31は、一方の主面としての上面と、上面と反対側の他方の主面としての下面と、を有し、基板21の主面としての上面と、基板31の主面としての下面とが対向するように、基板21と対向配置されている。基板31の上面は、上面の一部の領域である表示領域Adと、上面の他の領域であって、表示領域Adよりも基板21の外周側に位置する領域である周辺領域Asと、を含む。したがって、周辺領域Asは、基板31の上面の領域であって、周辺領域Asよりも基板31の外周側に位置する領域である。または、表示領域Adおよび周辺領域Asは、基板31の他方の主面としての下面に含まれてもよい。 【0052】 あるいは、表示領域Adおよび周辺領域Asは、基板21の一方の主面としての上面に含まれてもよい。このとき、基板21は、一方の主面としての上面を有し、基板21の上面は、表示領域Adと、表示領域Adよりも基板21の外周側に位置する領域である周辺領域Asとを有する。したがって、周辺領域Asは、基板21の上面の領域であって、表示領域Adよりも基板21の外周側に位置する領域である。 【0053】 図7に示すように、表示領域Adで、基板21には、複数の走査線GCL、複数の信号線SGL、および、複数の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)であるTFT素子Trが形成されている。なお、図6では、走査線GCL、信号線SGLおよびTFT素子Trの図示は、省略する。また、走査線は、ゲート配線を意味し、信号線は、ソース配線を意味する。」 「【図6】 ![]() 」 「【図7】 ![]() 」 「【0194】 (実施の形態3) 実施の形態1では、対向基板を挟んでアレイ基板と反対側に設けられた偏光板は、導電層を含む。それに対して、実施の形態3では、対向基板を挟んでアレイ基板と反対側に設けられた偏光板は、導電層を含まず、導体パターンを覆うように設けられた保護膜が、導電層として機能する。 【0195】 本実施の形態3の表示装置における全体構成は、実施の形態1の表示装置における全体構成と同様にすることができ、その説明を省略する。 【0196】 <タッチ検出機能付き表示デバイス> 図20は、実施の形態3の表示装置のタッチ検出機能付き表示デバイスを示す断面図である。図21は、実施の形態3の表示装置のタッチ検出機能付き表示デバイスにおける静電気の移動を模式的に示す断面図である。 【0197】 図20に示すように、本実施の形態3におけるタッチ検出機能付き表示デバイス10は、アレイ基板2と、対向基板3と、偏光板4と、偏光板5aと、液晶層6と、封止部7と、を有する。本実施の形態3におけるアレイ基板2、偏光板4、液晶層6および封止部7については、実施の形態1におけるアレイ基板2、偏光板4、液晶層6および封止部7の各部分と同様であり、それらの説明を省略する。 【0198】 本実施の形態3では、対向基板3は、基板31と、カラーフィルタ層32と、導体パターンCB1と、保護膜33aとを有する。本実施の形態3における基板31、カラーフィルタ層32および導体パターンCB1は、実施の形態1における基板31、カラーフィルタ層32および導体パターンCB1と同様である。また、検出部が、導体パターンCB1に含まれる複数の検出電極TDLの各々の静電容量に基づいて、入力位置を検出する点も、実施の形態1と同様である。 【0199】 本実施の形態3では、実施の形態1の導電層52(図6参照)が設けられていない。したがって、偏光板5aは、接着層51と、カバー層53と、偏光層54と、カバー層55と、を含む。また、偏光板5aにおける接着層51、カバー層53、偏光層54およびカバー層55の各々については、実施の形態1の偏光板5における接着層51、カバー層53、偏光層54およびカバー層55のそれぞれと同様にすることができる。したがって、本実施の形態3では、偏光板5aは、絶縁膜からなる偏光層54を含む複数の層がいずれかの順で積層された積層膜56aを含む。積層膜56aは、保護膜33a上に、接着層51を介して設けられている。 【0200】 一方、本実施の形態3では、保護膜33aが、導電性を有する。保護膜33aのシート抵抗は、導体パターンCB1のシート抵抗よりも高いが、実施の形態1の保護膜33のシート抵抗よりも低く、実施の形態1の導電層52のシート抵抗と同程度とすることができる。 【0201】 このような保護膜33aとして、例えば銀(Ag)などの金属としての導電性粒子33bを含有する樹脂33cからなるものを用いることができる。導電性粒子33bは、絶縁膜としての樹脂33c中に分散されている。このような場合、樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量を調整することにより、保護膜33aのシート抵抗を広い範囲で容易に調整することができる。 【0202】 図21に示すように、タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部から、例えば偏光板5aの表面であるカバー層55などに静電気SEが加えられたときに、この静電気SEは、カバー層55、偏光層54、カバー層53および接着層51を通して、例えば保護膜33aに移動される。その後、静電気SEは、抵抗RS1を有する保護膜33aを通して、複数の検出電極TDLの各々に移動される。 【0203】 複数の検出電極TDLの各々に移動された静電気SEは、実施の形態1と同様に、その検出電極TDL、引き回し配線WRT、端子部TMおよび配線基板WS(図5参照)を通して移動される。そして、配線基板WSを通して移動された静電気SEは、タッチ検出部40の入力端子に接続された抵抗RS0(図1参照)またはESD保護回路(図示は省略)を通して、タッチ検出機能付き表示デバイス10の接地線などに移動される。これにより、タッチ検出機能付き表示デバイス10に加えられた静電気SEを、タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部に逃がすことができる。 【0204】 好適には、保護膜33aのシート抵抗は、1×108〜1×1013Ω/squareである。保護膜33aのシート抵抗が、1×108Ω/square以上であることにより、検出信号VdetのS/N比を確実に向上させ、隣り合う検出電極TDLが短絡することを防止または抑制することができる。また、保護膜33aのシート抵抗が、1×1013Ω/square以下であることにより、保護膜33a中で静電気を容易に移動することができる。 【0205】 <本実施の形態の主要な特徴と効果> 本実施の形態3の表示装置でも、実施の形態1の表示装置と同様に、導体パターンCB1のシート抵抗は、8Ω/square以下である。また、複数の副画素SPixの面積の総和に対する、複数の副画素SPixのうち平面視において導体パターンCB1と重なる部分の面積の総和の比は、1〜22%である。 【0206】 一方、本実施の形態3では、実施の形態1における保護膜33(図6参照)に代え、保護膜33aが設けられており、保護膜33aのシート抵抗は、導体パターンCB1のシート抵抗よりも高いが、実施の形態1の保護膜33のシート抵抗よりも低く、実施の形態1の導電層52(図6参照)のシート抵抗と同程度である。 【0207】 これにより、タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部から加えられた静電気を、保護膜33aおよび導体パターンCB1を通して、タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部に容易に逃がすことができる。また、実施の形態1と同様に、導体パターンCB1に含まれる低抵抗材料の比抵抗が、透明導電材料の比抵抗よりも低いので、導体パターンCB1の厚さを厚くする必要がなく、導体パターンCB1の面積率を大きくする必要がない。したがって、実施の形態1と同様に、光学特性を劣化させずに、静電気による画像の表示の乱れを低減することができる。」 「【図20】 ![]() 」 「【図21】 ![]() 」 したがって、特に段落【0194】〜【0207】及び【図20】、【図21】に記載された「実施の形態3」は、上記の段落【0048】〜【0053】及び【図6】、【図7】に記載された「実施の形態1」において含まれていた「導電層」を含まず、「導電パターンを覆うように設けられた保護膜」が「導電層」として機能する実施の形態であり(段落【0194】参照)、「実施の形態3」の表示装置における全体構成は、「実施の形態1」の表示装置における全体構成と同様にすることができる(段落【0195】参照)ことから、上記引用文献1には、特に「実施の形態3」に注目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「タッチ検出機能付き表示デバイス10は、アレイ基板2と、対向基板3と、偏光板4と、偏光板5aと、液晶層6と、を有し、(【0197】) 対向基板3は、基板31と、カラーフィルタ層32と、導体パターンCB1と、導体パターンを覆うように設けられた保護膜33aとを有し、検出部が、導体パターンCB1に含まれる複数の検出電極TDLの各々の静電容量に基づいて、入力位置を検出し、偏光板5aは、接着層51と、カバー層53と、偏光層54と、カバー層55と、を含み、(【0194】、【0198】、【0199】) 液晶層6は、基板21の上面と基板31の下面との間に挟まれており、(【0049】、【図6】、【図20】) アレイ基板2は、基板21を有し、また、対向基板3は、基板31を有し、(【0050】、【図6】、【図20】) 基板21には、複数の走査線GCL、複数の信号線SGL、および、複数の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)であるTFT素子Trが形成され、(【0053】) 保護膜33aが、導電性を有し、このような保護膜33aとして、例えば銀(Ag)などの金属としての導電性粒子33bを含有する樹脂33cからなるものを用いることができ、導電性粒子33bは、絶縁膜としての樹脂33c中に分散され、樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量を調整することにより、保護膜33aのシート抵抗を広い範囲で容易に調整することができ、(【0200】〜【0201】) タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部から、偏光板5aの表面であるカバー層55などに静電気SEが加えられたときに、この静電気SEは、カバー層55、偏光層54、カバー層53および接着層51を通して、保護膜33aに移動され、その後、静電気SEは、抵抗RS1を有する保護膜33aを通して、複数の検出電極TDLの各々に移動される(【0202】)、 タッチ検出機能付き表示デバイス10の保護膜33aの樹脂33c。」 また、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用方法発明> 「タッチ検出機能付き表示デバイス10は、アレイ基板2と、対向基板3と、偏光板4と、偏光板5aと、液晶層6と、を有し、(【0197】) 対向基板3は、基板31と、カラーフィルタ層32と、導体パターンCB1と、導体パターンを覆うように設けられた保護膜33aとを有し、検出部が、導体パターンCB1に含まれる複数の検出電極TDLの各々の静電容量に基づいて、入力位置を検出し、偏光板5aは、接着層51と、カバー層53と、偏光層54と、カバー層55と、を含み、(【0194】、【0198】、【0199】) 液晶層6は、基板21の上面と基板31の下面との間に挟まれており、(【0049】、【図6】、【図20】) アレイ基板2は、基板21を有し、また、対向基板3は、基板31を有し、(【0050】、【図6】、【図20】) 基板21には、複数の走査線GCL、複数の信号線SGL、および、複数の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)であるTFT素子Trが形成され、(【0053】) 保護膜33aが、導電性を有し、このような保護膜33aとして、例えば銀(Ag)などの金属としての導電性粒子33bを含有する樹脂33cからなるものを用いることができ、導電性粒子33bは、絶縁膜としての樹脂33c中に分散され、樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量を調整することにより、保護膜33aのシート抵抗を広い範囲で容易に調整することができ、(【0200】〜【0201】) タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部から、偏光板5aの表面であるカバー層55などに静電気SEが加えられたときに、この静電気SEは、カバー層55、偏光層54、カバー層53および接着層51を通して、保護膜33aに移動され、その後、静電気SEは、抵抗RS1を有する保護膜33aを通して、複数の検出電極TDLの各々に移動される(【0202】)、 方法。」 (2)引用文献2に記載された事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0034] [実施の形態] 以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。 [0035] [全体の構成] 図1は、本発明の一実施形態にかかるタッチパネル付き表示装置100の概略構成を示す断面図である。タッチパネル付き表示装置100は、タッチパネル1、カラーフィルタ基板101、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)基板102、シール材103、液晶104、偏光板105,106および貼付材107とを備えている。 [0036] カラーフィルタ基板101とTFT基板102とは、互いに対向して配置されている。カラーフィルタ基板101およびTFT基板102の周縁部にはシール材103が形成され、内部に液晶104が封入されている。カラーフィルタ基板101の、液晶104側と反対側の面には、タッチパネル1が、貼付材107により貼り合わされている。タッチパネル1の、カラーフィルタ基板101側と反対側の面には、偏光板105が配置されている。TFT基板102の、液晶104側と反対側の面には、偏光板106が配置されている。 [0037] タッチパネル1は、詳しい構成は後述するが、静電容量方式のタッチパネルであり、絶縁性の基板10、センサ電極(X電極11、Y電極12等)を備えている。X電極11およびY電極12は、格子状に形成されている。X電極11およびY電極12は、タッチパネル1に近接した指等との間に静電容量を形成する。タッチパネル1は、この静電容量の変化に基づいて、指等の位置を検出する。」 「[0043] [タッチパネルの構成] 以下、タッチパネル1の構成について詳しく述べる。 [0044] 図2は、本発明の第1の実施形態にかかるタッチパネル1の、概略構成を模式的に示す平面図である。図3は、図2におけるA−A’線、B−B’線、C−C’線、およびD−D’線の各線に沿った断面図である。タッチパネル1は、基板10、X電極11、Y電極12、端子13、配線14、グランド(ground)配線140、配線保護膜15、絶縁膜16、保護膜17、および取出し電極181〜184を備えている。なお、図2では、図を見易くするために配線14およびグランド配線140にハッチングを付している。」 「[0056] 図3に示すように、配線保護膜15は、無機配線保護膜151と有機配線保護膜152との積層構造になっている。 [0057] 無機配線保護膜151は、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、および酸窒化ケイ素(SiON)から選択される一種以上の化合物を含む膜である。無機配線保護膜151は、有機配線保護膜152よりも緻密であり、外部からの水分等の浸透を防ぐ。無機配線保護膜151によって、水分等による配線14の腐食を防止することができる。一方、有機配線保護膜152は無機配線保護膜151に比べて弾性があり、不意の接触等による衝撃を緩和することができる。 [0058] 本実施形態では、有機配線保護膜152と絶縁膜16とは、同一材料で形成されている。 [0059] X電極11、Y電極12、配線保護膜15、絶縁膜16、および取出し電極181〜184の全てを覆って、保護膜17が形成されている。保護膜17は、基板10および端子13の一部も覆っている。端子13の一部は、配線保護膜15にも保護膜17にも覆われることなく露出している。端子13の露出部分は、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)等を介して駆動回路に接続される。 [0060] [タッチパネル1の製造方法] 以下、図5A〜図5Fを参照して、タッチパネル1の製造方法を説明する。なお、図5A〜図5Fは、図2におけるA−A’線、B−B’線、およびC−C’線の各線に沿った断面図である。 [0061] 図5Aに示すように、基板10上に、X電極11の接続部111、Y電極12の島状電極120、および端子13を形成する。基板10は、例えばガラス基板である。図5Aには図示していないが、X電極11の島状電極110(図2を参照)、取出し電極181(図2および図3を参照)、取出し電極183(図2を参照)も同時に形成する。」 「[0068] 次に、図5Cに示すように、配線14およびグランド配線140の全てを覆って、無機配線保護膜151を形成する。 [0069] 無機配線保護膜151は、既述のように、SiO2、SiN、およびSiONから選択される一種以上の化合物を含む膜である。まず、基板10の全面に、CVDによってこれらの化合物の均一な無機材料膜を形成する。無機材料膜の厚さは厚い方が好ましく、配線14の厚さの2倍以上であることが好ましい。」 「[図1] ![]() 」 「[図2] ![]() 」 「[図3] ![]() 」 「[図5A] ![]() 」 「[図5C] ![]() 」 したがって、上記引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献2技術事項> 「タッチパネル付き表示装置100は、タッチパネル1、カラーフィルタ基板101、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)基板102、シール材103、液晶104、偏光板105,106および貼付材107とを備え、 カラーフィルタ基板101とTFT基板102とは、互いに対向して配置され、カラーフィルタ基板101およびTFT基板102の周縁部にはシール材103が形成され、内部に液晶104が封入され、カラーフィルタ基板101の、液晶104側と反対側の面には、タッチパネル1が、貼付材107により貼り合わされ、タッチパネル1の、カラーフィルタ基板101側と反対側の面には、偏光板105が配置され、TFT基板102の、液晶104側と反対側の面には、偏光板106が配置され、 タッチパネル1は、静電容量方式のタッチパネルであり、絶縁性の基板10、センサ電極(X電極11、Y電極12等)を備え、X電極11およびY電極12は、格子状に形成され、X電極11およびY電極12は、タッチパネル1に近接した指等との間に静電容量を形成し、タッチパネル1は、この静電容量の変化に基づいて、指等の位置を検出し、 タッチパネル1は、基板10、X電極11、Y電極12、端子13、配線14、グランド(ground)配線140、配線保護膜15、絶縁膜16、保護膜17、および取出し電極181〜184を備え、配線保護膜15は、無機配線保護膜151と有機配線保護膜152との積層構造になっており、無機配線保護膜151は、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、および酸窒化ケイ素(SiON)から選択される一種以上の化合物を含む膜であり、X電極11、Y電極12、配線保護膜15、絶縁膜16、および取出し電極181〜184の全てを覆って、保護膜17が形成され、 タッチパネル1の製造方法として、基板10上に、X電極11の接続部111、Y電極12の島状電極120、および端子13を形成し、基板10は、例えばガラス基板であり、X電極11の島状電極110、取出し電極181、取出し電極183も同時に形成し、 配線14およびグランド配線140の全てを覆って、無機配線保護膜151を形成し、無機材料膜の厚さは厚い方が好ましく、配線14の厚さの2倍以上であることが好ましい、 タッチパネル1の無機配線保護膜151。」 (3)引用文献3に記載された事項ついて 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 しかし、横電界方式液晶表示パネルと、静電容量方式のタッチ感知機能層を配置したタッチパネル機能内蔵型液晶表示パネルとを組み合わせた液晶表示パネルでは、横電界方式液晶表示パネルに要求されるESD機能を付与するために、液晶表示パネルに導電層を設けると、タッチ感度が低下する場合があることが判明した。 【0010】 本発明は、上記問題を解決したもので、静電容量式タッチ感知機能層を備えたタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶パネルにおいて、ESD機能及びタッチパネル機能を両立できると共に、光透過率と硬度に優れた透明導電性膜を形成できる透明導電性コーティング組成物及びそれを用いた透明導電性膜、並びにその透明導電性膜を備えたタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルを提供するものである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明の透明導電性コーティング組成物は、鎖状導電性無機粒子と、バインダと、高沸点溶剤と、低沸点溶剤とを含む透明導電性コーティング組成物であって、前記鎖状導電性無機粒子の含有量は、前記鎖状導電性無機粒子及び前記バインダの合計量に対して、40〜90質量%であることを特徴とする。 【0012】 本発明の透明導電性膜は、上記本発明の透明導電性コーティング組成物を用いて形成したことを特徴とする。 【0013】 本発明のタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルは、液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電性膜と、前記第2の透明基板の前記液晶層の側に配置された表示用電極及び基準電極と、前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板との間に配置された静電容量式タッチ感知機能層とを含むタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルであって、前記透明導電性膜として上記本発明の透明導電性膜を用いることを特徴とする。 【発明の効果】 【0014】 本発明によれば、ESD機能が高く、且つタッチ感度を低下させないと共に、光透過率と硬度に優れた透明導電性膜を、タッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルに直接的且つ簡易に配置することができる。」 したがって、上記引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献3技術事項> 「静電容量式タッチ感知機能層を備えたタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶パネルにおいて、ESD機能及びタッチパネル機能を両立できると共に、光透過率と硬度に優れた透明導電性膜を形成できる透明導電性コーティング組成物を備え、 透明導電性コーティング組成物は、鎖状導電性無機粒子と、バインダと、高沸点溶剤と、低沸点溶剤とを含む透明導電性コーティング組成物であって、前記鎖状導電性無機粒子の含有量は、前記鎖状導電性無機粒子及び前記バインダの合計量に対して、40〜90質量%であり、 透明導電性膜は、透明導電性コーティング組成物を用いて形成し、 タッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルは、液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電性膜と、前記第2の透明基板の前記液晶層の側に配置された表示用電極及び基準電極と、前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板との間に配置された静電容量式タッチ感知機能層とを含むタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルに用いられる透明導電性膜の透明導電性コーティング組成物。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と上記引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「導電性粒子33b」は、「例えば銀(Ag)などの金属」であることから、本願発明1の「鎖状導電性無機粒子」とは、「導電性無機粒子」である点で共通する。 イ 引用発明の「保護膜33a」は「導体パターンを覆うように設けられた」ものであるから、当該「導体パターン」を「コーティング」するといえる。そして、当該「保護膜33a」は「例えば銀(Ag)などの金属としての導電性粒子33bを含有する樹脂33cからなるものを用いる」ことから、当該「樹脂33c」は、少なくとも、「導電性粒子33b」を含むものであり、また、「樹脂」として当該導電性粒子を結合する結合材である「バインダ」を含むことは自明である。 以上のことから、上記アを踏まえると、引用発明の上記「樹脂33c」は、本願発明1の「鎖状導電性無機粒子と、バインダと、高沸点溶剤と、低沸点溶剤とを含むコーティング組成物」とは、「導電性無機粒子と、バインダと、を含むコーティング組成物」である点で共通する。 ウ 引用発明においては、「導電性粒子33bは、絶縁膜としての樹脂33c中に分散され、樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量を調整することにより、保護膜33aのシート抵抗を広い範囲で容易に調整することができ、」とあるものの、引用発明においては、具体的な「樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量」の数値は特定されていない。 したがって、引用発明において、「樹脂33c」は、「導電性粒子33bの含有量」があることは、本願発明1における「該コーティング組成物は、鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%であ」ることとは、「該コーティング組成物は、導電性無機粒子の含有量があ」る点で共通する。 エ (ア)引用発明の「偏光板4と、偏光板5a」は、本願発明1の「2枚の偏光板」に相当する。 (イ)引用発明の「アレイ基板2は、基板21を有し」、「基板21には、複数の走査線GCL、複数の信号線SGL、および、複数の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)であるTFT素子Trが形成され」ることから、当該「基板21」は、本願発明1の「TFT基板」に相当する。 (ウ)引用発明の「液晶層6」は、本願発明1の「液晶層」に相当する。 (エ)引用発明の「カラーフィルタ層32」を有する「対向基板3」は、本願発明1の「カラーフィルタ基板」に相当する。 (オ)引用発明の「タッチ検出機能付き表示デバイス10」における「入力位置」は、「導体パターンCB1に含まれる複数の検出電極TDLの各々の静電容量に基づいて」、「検出部が」「検出」するものであり、具体的には、「タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部から、偏光板5aの表面であるカバー層55などに静電気SEが加えられたときに、この静電気SEは、カバー層55、偏光層54、カバー層53および接着層51を通して、保護膜33aに移動され、その後、静電気SEは、抵抗RS1を有する保護膜33aを通して、複数の検出電極TDLの各々に移動される」ものである。 そうすると、引用発明において、「タッチ検出機能」としての「入力位置」を、「静電気SE」として受ける「検出電極TDL」を含む「導体パターンCB1」と、当該「導体パターンCB1」を備える「基板31」は、本願発明1の「タッチパネル基板」に相当する。 (カ)引用発明の「タッチ検出機能付き表示デバイス10」は、特に引用文献1の【図20】に図示されるように、「偏光板4と、偏光板5a」の間に、「基板21」、「液晶層6」、「カラーフィルタ層32」、及び「導体パターンCB1」を備える「基板31」を順番に備えることから、上記(ア)〜(オ)を踏まえると、本願発明1の「2枚の偏光板の間に順番に積層された、TFT基板、液晶層、カラーフィルタ基板、及びタッチパネル基板を有するタッチパネル」に相当する。 (キ)上記(オ)を踏まえると、引用発明の「基板31」の「導体パターンCB1」が存在する面は、本願発明1の「該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面」に相当する。また、引用発明の「保護膜33a」は「導電性を有」するから、本願発明1の「導電性膜」に相当する。 一方で、上記イで示したように、引用発明の「保護膜33a」は、「導体パターンを覆うように設けられた」ものであるから、「導体パターンを覆う」程度の膜厚を有するものの、具体的な数値は特定されていない。 以上のことから、上記イを踏まえると、引用発明の「基板31」の「導体パターンCB1」が存在する面に、「保護膜33a」を「導体パターンを覆うように設け」る用途で用いる「樹脂33c」は、本願発明1の「該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面に、2〜60nmの膜厚を有する導電性膜を形成する用途に使用されるものであ」る「コーティング組成物」と、「該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面に、膜厚を有する導電性膜を形成する用途に使用されるものであ」る「コーティング組成物」である点で共通する。 (2)一致点・相違点 以上のことから、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「導電性無機粒子と、バインダと、を含むコーティング組成物であって、 該コーティング組成物は、導電性無機粒子の含有量があり、 2枚の偏光板の間に順番に積層された、TFT基板、液晶層、カラーフィルタ基板、及びタッチパネル基板を有するタッチパネルにおいて、該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面に、膜厚を有する導電性膜を形成する用途に使用されるものである、 コーティング組成物。」 <相違点> 相違点1 導電性無機粒子は、本願発明1では、「鎖状導電性無機粒子」であるのに対し、引用発明には、「鎖状」であるとの特定はされていない点。 相違点2 コーティング組成物には、導電性無機粒子と、バインダとの他に、本願発明1では、「高沸点溶剤」と、「低沸点溶剤」とを含むのに対し、引用発明には、そのような構成は特定されていない点。 相違点3 コーティング組成物は、本願発明1では、「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」であるのに対し、引用発明には、具体的な数値の含有量について特定されていない点。 相違点4 導電性膜の膜厚が、本願発明1では、「2〜60nm」であるのに対し、引用発明には、具体的な数値が特定されていない点。 相違点5 本願発明1では、「該バインダは、アルコキシシランから成るものである」のに対し、引用発明には、バインダについて、そのような特定はされていない点。 (3)相違点についての検討 事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。 「タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面」に形成される「導電性膜」に使用される「コーティング組成物」について、「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」とする構成は、引用文献2及び3のいずれにも記載も示唆もされておらず、本願出願前に周知技術であるともいえない。 例えば、引用文献2には、「タッチパネル1」において、「基板10」の上に「センサ電極(X電極11、Y電極12等)」(本願発明1の「電極パターン」に相当する。以下同様。)を備え、当該「センサ電極」を保護する「配線保護膜」として、「酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、および酸窒化ケイ素(SiON)から選択される一種以上の化合物」(鎖状導電性無機粒子)を含む「無機配線保護膜151」(コーティング組成物)についての開示があるものの、上記相違点3に係る本願発明1の「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」とする構成は開示されていない。 また、引用文献3には、「鎖状導電性無機粒子の含有量」が「前記鎖状導電性無機粒子」及び「バインダ」の「合計量に対して、40〜90質量%」である「透明導電性コーティング組成物」の構成が開示されているものの、鎖状導電性無機粒子の含有量の数値が異なる上記相違点3に係る本願発明1の「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」とする構成は開示されていない。 また、引用文献3の当該「透明導電性コーティング組成物」は「液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電性膜と、前記第2の透明基板の前記液晶層の側に配置された表示用電極及び基準電極と、前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板との間に配置された静電容量式タッチ感知機能層とを含むタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルに用いられる透明導電性膜」の「コーティング組成物」であり、当該「透明導電性膜」が「配置」された「前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側」には、本願発明1のような「タッチパネル基板の電極パターン」は存在せず、そもそも引用文献3の「横電界方式液晶表示パネル」は「タッチパネル機能内蔵型」であるため、本願発明1のような「タッチパネル基板」が存在しないものである。 したがって、引用発明の「基板31」の「導体パターンCB1」を「覆うように設け」るための「保護膜33a」の「樹脂33c」に対して、引用文献3の「前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電性膜」の「透明導電性コーティング組成物」を適用する動機付けはないといえる。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明12について (1)対比 本願発明12と上記引用方法発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア (ア)引用方法発明の「偏光板4と、偏光板5a」は、本願発明12の「2枚の偏光板」に相当する。 (イ)引用方法発明の「アレイ基板2は、基板21を有し」、「基板21には、複数の走査線GCL、複数の信号線SGL、および、複数の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)であるTFT素子Trが形成され」ることから、当該「基板21」は、本願発明12の「TFT基板」に相当する。 (ウ)引用方法発明の「液晶層6」は、本願発明12の「液晶層」に相当する。 (エ)引用方法発明の「カラーフィルタ層32」を有する「対向基板3」は、本願発明12の「カラーフィルタ基板」に相当する。 (オ)引用方法発明の「タッチ検出機能付き表示デバイス10」における「入力位置」は、「導体パターンCB1に含まれる複数の検出電極TDLの各々の静電容量に基づいて」、「検出部が」「検出」するものであり、具体的には、「タッチ検出機能付き表示デバイス10の外部から、偏光板5aの表面であるカバー層55などに静電気SEが加えられたときに、この静電気SEは、カバー層55、偏光層54、カバー層53および接着層51を通して、保護膜33aに移動され、その後、静電気SEは、抵抗RS1を有する保護膜33aを通して、複数の検出電極TDLの各々に移動される」ものである。 そうすると、引用方法発明において、「タッチ検出機能」としての「入力位置」を、「静電気SE」として受ける「検出電極TDL」を含む「導体パターンCB1」と、当該「導体パターンCB1」を備える「基板31」は、本願発明12の「タッチパネル基板」に相当する。 (カ)引用方法発明の「タッチ検出機能付き表示デバイス10」は、特に引用文献1の【図20】に図示されるように、「偏光板4と、偏光板5a」の間に、「基板21」、「液晶層6」、「カラーフィルタ層32」、及び「導体パターンCB1」を備える「基板31」を順番に備えることから、上記(ア)〜(オ)を踏まえると、本願発明12の「2枚の偏光板の間に順番に積層された、TFT基板、液晶層、カラーフィルタ基板、及びタッチパネル基板を有するタッチパネル」に相当する。 (キ)上記(オ)を踏まえると、引用方法発明の「基板31」の「導体パターンCB1」が存在する面は、本願発明12の「該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面」に相当する。また、引用方法発明の「保護膜33a」は「導電性を有」するから、本願発明12の「導電性膜」に相当する。 引用方法発明の「保護膜33a」は、「導体パターンを覆うように設けられた」ものであるから、本願発明12の「コーティング組成物」に相当する。 一方で、引用方法発明の「保護膜33a」は、「導体パターンを覆う」程度の膜厚を有するものの、具体的な数値は特定されていない。 以上のことから、引用方法発明の「基板31」の「導体パターンCB1」が存在する面に、「樹脂33c」を「導体パターンを覆うように設けられた」「保護膜33a」を備える方法は、本願発明12の「該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面にコーティング組成物を塗布し乾燥させる工程を包含する、2〜60nmの膜厚を有する導電性膜を形成する方法」とは、「該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面にコーティング組成物を設けた工程を包含する、膜厚を有する導電性膜を形成する方法」である点で共通する。 イ 引用方法発明の「導電性粒子33b」は、「例えば銀(Ag)などの金属」であることから、本願発明12の「鎖状導電性無機粒子」とは、「導電性無機粒子」である点で共通する。 ウ 引用方法発明の「保護膜33a」は「例えば銀(Ag)などの金属としての導電性粒子33bを含有する樹脂33cからなるものを用いる」ことから、当該「樹脂33c」は、少なくとも、「導電性粒子33b」を含むものであり、また、「樹脂」として当該導電性粒子を結合する結合材である「バインダ」を含むことは自明である。 以上のことから、上記ア(キ)を踏まえると、引用方法発明の上記「樹脂33c」は、本願発明12の「鎖状導電性無機粒子と、バインダと、高沸点溶剤と、低沸点溶剤とを含」む「コーティング組成物」とは、「導電性無機粒子と、バインダと、を含」む点で共通する。 エ 引用方法発明においては、「導電性粒子33bは、絶縁膜としての樹脂33c中に分散され、樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量を調整することにより、保護膜33aのシート抵抗を広い範囲で容易に調整することができ、」とあるものの、引用方法発明においては、具体的な「樹脂33cに対する導電性粒子33bの含有量」の数値は特定されていない。 したがって、引用方法発明において、「樹脂33c」は、「導電性粒子33bの含有量」があることは、本願発明12における「該鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%であ」ることとは、「該鎖状導電性無機粒子の含有量があ」る点で共通する。 (2)一致点・相違点 以上のことから、本願発明12と引用方法発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「 2枚の偏光板の間に順番に積層された、TFT基板、液晶層、カラーフィルタ基板、及びタッチパネル基板を有するタッチパネルにおいて、該タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面にコーティング組成物を設けた工程を包含する、膜厚を有する導電性膜を形成する方法であって、 該コーティング組成物は、導電性無機粒子と、バインダと、を含み、 該導電性無機粒子の含有量がある、 方法。」 <相違点> 相違点6 タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面にコーティング組成物を設けた行程は、本願発明12では、コーティング組成物を「塗布し乾燥させる」ものであるのに対し、引用方法発明には、そのような特定がされていない点。 相違点7 導電性膜の膜厚が、本願発明12では、「2〜60nm」であるのに対し、引用方法発明には、具体的な数値が特定されていない点。 相違点8 導電性無機粒子は、本願発明12では、「鎖状導電性無機粒子」であるのに対し、引用方法発明には、「鎖状」であるとの特定はされていない点。 相違点9 コーティング組成物には、導電性無機粒子と、バインダとの他に、本願発明12では、「高沸点溶剤」と、「低沸点溶剤」とを含むのに対し、引用方法発明には、そのような構成は特定されていない点。 相違点10 コーティング組成物は、本願発明12では、「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」であるのに対し、引用発明には、具体的な数値の含有量について特定されていない点。 相違点11 本願発明12では、コーティング組成物の「塗布」は「スプレーコート法を使用して行われ」るのに対し、引用方法発明には、そのような特定はされていない点。 相違点12 本願発明12では、「該バインダは、アルコキシシランから成るものである」のに対し、引用発明には、バインダについて、そのような特定はされていない点。 (3)相違点についての検討 事案に鑑みて、相違点10について先に検討する。 「タッチパネル基板の電極パターンが存在する表面」に形成される「導電性膜」に使用される「コーティング組成物」について、「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」とする構成は、引用文献2及び3のいずれにも記載も示唆もされておらず、本願出願前に周知技術であるともいえない。 すでに、上記「第5 1.(3)」において、上記相違点3についての検討で示したように、 例えば、引用文献2には、「タッチパネル1」において、「基板10」の上に「センサ電極(X電極11、Y電極12等)」(本願発明12の「電極パターン」に相当する。以下同様。)を備え、当該「センサ電極」を保護する「配線保護膜」として、「酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、および酸窒化ケイ素(SiON)から選択される一種以上の化合物」(鎖状導電性無機粒子)を含む「無機配線保護膜151」(コーティング組成物)についての開示があるものの、上記相違点10に係る本願発明12の「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」とする構成は開示されていない。 また、引用文献3には、「鎖状導電性無機粒子の含有量」が「前記鎖状導電性無機粒子」及び「バインダ」の「合計量に対して、40〜90質量%」である「透明導電性コーティング組成物」の構成が開示されているものの、鎖状導電性無機粒子の含有量の数値が異なる上記相違点10に係る本願発明12の「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」とする構成は開示されていない。 また、引用文献3の当該「透明導電性コーティング組成物」は「液晶層と、前記液晶層を介して互いに対向して配置された第1の透明基板及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電性膜と、前記第2の透明基板の前記液晶層の側に配置された表示用電極及び基準電極と、前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板との間に配置された静電容量式タッチ感知機能層とを含むタッチパネル機能内蔵型横電界方式液晶表示パネルに用いられる透明導電性膜」の「コーティング組成物」であり、当該「透明導電性膜」が「配置」された「前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側」には、本願発明12のような「タッチパネル基板の電極パターン」は存在せず、そもそも引用文献3の「横電界方式液晶表示パネル」は「タッチパネル機能内蔵型」であるため、本願発明12のような「タッチパネル基板」が存在しないものである。 したがって、引用方法発明の「基板31」の「導体パターンCB1」を「覆うように設け」るための「保護膜33a」の「樹脂33c」に対して、引用文献3の「前記第1の透明基板の前記液晶層とは反対側に配置された透明導電性膜」の「透明導電性コーティング組成物」を適用する動機付けはないといえる。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明12は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.本願発明2〜11について 本願発明2〜5は、本願発明1を減縮した発明であるから、上記相違点3に係る本願発明1の上記構成を備えるものである。よって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明6〜9は、本願発明1の「コーティング組成物」を使用して形成された「導電性膜」の発明であるから、上記相違点3に係る本願発明1の上記構成と同一の構成を備えるものである。よって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明10及び11は、本願発明1の「コーティング組成物」を使用して形成された「導電性膜」を有する「タッチパネル」の発明であるから、上記相違点3に係る本願発明1の上記構成と同一の構成を備えるものである。よって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定についての判断 令和4年4月21日になされた手続補正により補正された請求項1〜12は、「コーティング組成物」について、上記相違点3及び相違点10に係る「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜30質量%」という構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1〜12は、上記引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 当審では、令和4年4月5日付けで、概略、以下の拒絶の理由を通知した。 理由1(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由2(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1 請求項1について (1)鎖状導電性無機粒子の含有量について 請求項1には、「鎖状導電性無機粒子の含有量が鎖状導電性無機粒子及びバインダの合計量に対して10〜34質量%」であるとの記載があるが、下線で示した当該鎖状導電性無機粒子の含有量についての質量%の上限を「34」とすることについて、明細書又は図面に適切にサポートされておらず(理由1)、また、発明の効果を奏する構成として、当該質量%の上限を「34」とすることが不明確である(理由2)。 (2)導電性膜の膜厚について オンセル型タッチパネルの性能としてのESD機能は、静電気放電機能であるので、フィラー含有率が高いほど、また、導電性膜の膜厚が厚いほど、向上すると考えられるところ、 請求項1には、フィラー含有率に関する特定があるものの、導電性膜の膜厚についての特定がないため、適切なESD性の効果を奏するための導電性膜の膜厚に関する構成が不明確である(理由2)。 2 請求項13について 請求項13においても、上記(1)及び(2)に示したように、請求項1と同様の拒絶理由を有する。 3 請求項2〜12について 請求項2〜12は、請求項1を引用する形式の従属項であるため、上記(1)に示したように、請求項1と同様の拒絶理由を有する。また、請求項2〜6及び8〜12は、上記(2)に示したように、請求項1と同様の拒絶理由を有する。 以上の拒絶の理由に対し、令和4年4月21日になされた手続補正において、上記の請求項における鎖状導電性無機粒子の含有量についての質量%の上限を「30」とする補正がなされ、また、導電性膜の膜厚について「2〜60nmの膜厚を有する」との補正がなされた結果、上記のすべての拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1〜12は、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-06-08 |
出願番号 | P2017-190213 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
角田 慎治 野崎 大進 |
発明の名称 | コーティング組成物、導電性膜、タッチパネル及び製造方法 |
代理人 | 松谷 道子 |
代理人 | 西下 正石 |