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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1386033
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-10 
確定日 2022-06-09 
事件の表示 特願2016−202374「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日出願公開、特開2018− 61739〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月14日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 2年 5月26日付け:拒絶理由通知
令和 2年 7月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年12月16日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 3年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 7月29日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
(送達日:同年8月3日)
令和 3年 9月10日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年9月10日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和3年9月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和2年7月20日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技の制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、
第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出し、前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードし、ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出するアドレス算出モジュールを備え、
前記アドレス算出モジュールは、
前記第1アドレスデータの算出から前記第2アドレスデータの算出までの一連の処理を1回の呼び出しで実行することを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技の制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、
第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出し、前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードし、ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出するアドレス算出モジュールを備え、
前記アドレス算出モジュールは、
前記第1アドレスデータの算出から前記第2アドレスデータの算出までの一連の処理を1回の呼び出しで実行し、
前記一連の処理における前記第1アドレスデータを算出する処理と前記第2アドレスデータを算出する処理とは同一のプログラムコードを用いて実行し、
前記一連の処理を前記第1レジスタ及び前記第2レジスタだけを用いて実行することを特徴とする遊技機。」とする補正である(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 補正の適否について
(1)補正の目的について
ア 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「一連の処理」に関し、「前記一連の処理における前記第1アドレスデータを算出する処理と前記第2アドレスデータを算出する処理とは同一のプログラムコードを用いて実行し、前記一連の処理を前記第1レジスタ及び前記第2レジスタだけを用いて実行する」と限定するものである。

イ 上記アからみて、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項について
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面における【0633】ないし【0637】、【0672】ないし【0684】、図57、図61等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、AないしFについては、分説するため合議体が付した。以下A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。
「A 遊技の制御を行う制御装置を備え、
B 前記制御装置は、
第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出し、前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードし、ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出するアドレス算出モジュールを備え、
C 前記アドレス算出モジュールは、
前記第1アドレスデータの算出から前記第2アドレスデータの算出までの一連の処理を1回の呼び出しで実行し、
D 前記一連の処理における前記第1アドレスデータを算出する処理と前記第2アドレスデータを算出する処理とは同一のプログラムコードを用いて実行し、
E 前記一連の処理を前記第1レジスタ及び前記第2レジスタだけを用いて実行する
F ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例の記載事項、引用発明
ア 引用例の記載事項
原査定で引用文献1として引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015−109892号公報(平成27年6月18日公開、以下「引用例」という。)には、遊技機に関し、次の事項が図とともに記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同じ。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、新たな遊技性等を実現していく上で、遊技機の制御を行うプログラムはさらに肥大化することとなり、プログラムの使用可能領域の容量を逼迫させてしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、プログラムの容量がむやみに増大することを防止し、プログラムの容量を削減することができる技術の提供を課題とするものである。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、パチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」と略称する。)1の正面図である。また、図2は、パチンコ機1の背面図である。パチンコ機1は、遊技球を遊技媒体として用いるものであり、遊技者は、遊技場運営者から遊技球を借り受けてパチンコ機1による遊技を行う。なお、パチンコ機1における遊技において、遊技球はその1個1個が遊技価値を有した媒体であり、遊技の成果として遊技者が享受する特典(利益)は、例えば遊技者が獲得した遊技球の数に基づいて遊技価値に換算することができる。以下、図1及び図2を参照しつつパチンコ機1の全体構成について説明する。」

(ウ)「【0089】
〔制御上の構成〕
次に、パチンコ機1の制御に関する構成について説明する。図9は、パチンコ機1に装備された各種の電子機器類を示すブロック図である。パチンコ機1は、制御動作の中枢となる主制御装置70(主制御用コンピュータ)を備えており、この主制御装置70は主に、パチンコ機1における遊技の進行を制御する機能を有している。なお、主制御装置70は、上記の主制御基板ユニット170に内蔵されている。
【0090】
また、主制御装置70には、中央演算処理装置である主制御CPU72を実装した回路基板(主制御基板)が装備されており、主制御CPU72は、図示しないCPUコアやレジスタとともにROM74、RAM(RWM)76等の半導体メモリを集積したLSIとして構成されている。また、主制御装置70には、乱数発生器75やサンプリング回路77が装備されている。このうち乱数発生器75は、特別図柄抽選の大当り判定用や普通図柄抽選の当り判定用にハードウェア乱数(例えば10進数表記で0〜65535)を発生させるものであり、ここで発生された乱数は、サンプリング回路77を通じて主制御CPU72に入力される。その他にも主制御装置70には、入出力(I/O)ポート79や図示しないクロック発生回路、カウンタ/タイマ回路(CTC)等の周辺ICが装備されており、これらは主制御CPU72とともに回路基板上に実装されている。なお、回路基板上(又は内層部分)には、信号伝送経路や電源供給経路、制御用バス等が配線パターンとして形成されている。」

(エ)「【0147】
ステップS200:先ず主制御CPU72は、メインループの実行中に使用していたレジスタ(アキュムレータAとフラグレジスタF、汎用レジスタB〜Lの各ペア)の値をRAM76の退避領域に退避させる。値を退避させた後のレジスタ(A〜L)には、割込管理処理の中で別の値を書き込むことができる。」

(オ)「【図44】




(カ)「【0440】
図44は、バイトデータ選択処理の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って説明する。この処理は、共通サブモジュールとして、様々な処理において呼び出され実行されるものである。
【0441】
ステップS7030:主制御CPU72は、選択オフセットと選択アドレスの下位バイトを加算する。例えば、選択オフセットが00Hであり、選択アドレスが1000Hである場合、00Hと00Hとを加算して、00Hといった加算結果が出力される。主制御CPU72は次にステップS7032を実行する。
【0442】
ステップS7032:主制御CPU72は、選択アドレスの下位バイトに演算結果値をセットする。具体的には、選択アドレスの下位バイトに先の処理(ステップS7030)で出力された結果をセットする。例えば、選択アドレスが1000Hの下位バイトに加算結果00Hがセットされ、選択結果アドレスとして1000Hが出力される。主制御CPU72は次にステップS7034を実行する。
【0443】
ステップS7034:主制御CPU72は、桁上がりではないか否かを確認する。具体的には、先の処理(ステップS7032)の加算結果が桁上がりしているか否かを確認する。例えば、FFHが100Hに桁上がりしているか否かを確認する。この確認の結果、桁上がりではない場合(Yes)、主制御CPU72は次にステップS7038を実行する。一方、桁上がりである場合(No)、主制御CPU72は次にステップS7036を実行する。
【0444】
ステップS7036:主制御CPU72は、選択アドレスの上位バイトを1加算する。例えば、選択アドレスが1000Hであった場合、1100Hに加算する。主制御CPU72は次にステップS7038を実行する。
【0445】
ステップS7038:主制御CPU72は、選択結果アドレスで示す選択結果データをロードする。具体的には、先の処理(ステップS7032やステップS7036)で出力された選択結果のアドレス値に記録されているデータ値を読み出す。例えば、図43に示すように、アドレス1000Hに1002が記録されている場合、1002Hが読み出される。他にも、アドレスが1001Hであれば1005Hが読み出され、アドレスが1002Hであれば10が読み出され、アドレスが1003Hであれば20が読み出され、アドレスが1004Hであれば30が読み出され、アドレスが1005Hであれば40が読み出され、アドレスが1006Hであれば50が読み出され、アドレスが1007Hであれば60が読み出される。主制御CPU72は次にステップS7040を実行する。
【0446】
ステップS7040:主制御CPU72は、選択結果データを確認し選択結果フラグ値をセットする。例えば、先の処理(ステップS7038)で読み出された値に対応したフラグがセットされる。そして、そのフラグに基づいて別の処理が行われる場合もある。
【0447】
以上の手順を終えると、主制御CPU72は図42のサブルーチンプログラム処理に復帰する。」

(キ)「【図45】


【図46】




(ク)「【0448】
図45は、比較対象とするサブルーチンプログラム(比較例2)の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って説明する。また、図46は、参照データの一例を示す図である。以下、手順例に沿って説明する。なお、図45に示すサブルーチンプログラム(比較例2)は、図42に示すサブルーチンプログラム(比較例1)の一部(ステップS7004)を変更したものである。
・・・
【0451】
また、図46に示す参照データには、他にもデータ値が記録されており、具体的な内容について説明する。
例えば、アドレス1000Hには1002H?$が記録されており、$には現在のアドレス1000Hが入るため、実質的には02H(1002H?1000H)が記録されていることを表している。また、アドレス1001Hには1005H?$が記録されており、$には現在のアドレス1001Hが入るため、実質的には04H(1005H?1001H)が記録されていることを表している。したがって、それぞれの値はバイトサイズのデータが記録されていることを表している。他にも、アドレス1002Hには10、アドレス1003Hには20、アドレス1004Hには30、アドレス1005Hには40、アドレス1006Hには50、アドレス1007Hには60が記録されている。
【0452】
したがって、上記図43で示した参照データよりも、図46で示した参照データの方が2バイト分の容量だけ少ないことを表している。具体的には、図43で示したアドレス1000Hと1001Hとの値がそれぞれ2バイトずつであるのに対し、図46で示したアドレス1000Hと1001Hとの値がそれぞれ1バイトずつであるため、2バイト分の容量だけ少ないことを表している。なお、このアドレス1000Hと1001Hの値は、それぞれ第1特別図柄に対応する変動時間の選択テーブルのアドレス値(1002H)や第2特別図柄に対応する変動時間の選択テーブルのアドレス値(1005H)と選択アドレスとの比較値(そのテーブルアドレスまでの距離)を表している。
【0453】
ステップS7014:主制御CPU72は、バイトデータ選択処理を実行する。この処理により、先の処理(ステップS7010、ステップS7012)でセットされた、選択オフセット1と選択アドレスとに基づいて、バイトデータ及び書き換えられたアドレスが出力されることとなる。なお、具体的な処理の内容については、上記バイトデータ選択処理(図44)と同様の処理であるため説明は省略する。そして、このバイトデータ選択処理により、バイトデータ及び書き換えられたアドレスが出力される。具体的には、選択オフセット1として00Hが入力されると、バイトデータ02Hが出力され、選択結果アドレスとして1000Hに置き換えられる。また、選択オフセット1として01Hが入力されると、バイトデータ04Hが出力され、選択結果アドレスとして1001Hに置き換えられる。主制御CPU72は次にステップS7016を実行する。
【0454】
ステップS7016:主制御CPU72は、バイトデータ選択処理を実行する。この処理により、先の処理(ステップS7014)で出力された、バイトデータと選択結果アドレスとに基づいて、書き換えられたアドレスが出力されることとなる。なお、具体的な処理の内容については、上記バイトデータ選択処理(図44)と同様の処理であるため説明は省略する。そして、このバイトデータ選択処理により、書き換えられたアドレスが出力される。具体的には、バイトデータとして02Hが入力されると、選択結果アドレスとして1002Hに置き換えられる。また、バイトデータとして04Hが入力されると、選択結果アドレスとして1005Hに置き換えられる。主制御CPU72は次にステップS7018を実行する。」

(ケ)「【図47】




(コ)「【0457】
図47は、本実施形態におけるサブルーチンプログラムの手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って内容を説明する。
【0458】
ステップS7050:主制御CPU72は、選択オフセット1をセットする。具体的には、次の処理(ダブルバイト選択処理(ステップS7054))において使用する値である選択オフセット1をセットする。なお、選択オフセット1として、例えば、第1特別図柄である場合は00Hがセットされたり、第2特別図柄である場合は01Hがセットされたりする。主制御CPU72は次にステップS7052を実行する。
【0459】
ステップS7052:主制御CPU72は、選択アドレスとしてデータ選択テーブル(D_Table_Sel)のアドレスをセットする。例えば、データ選択テーブル(D_Table_Sel)のアドレスとして1000Hがセットされる。主制御CPU72は次にステップS7054を実行する。ここで、データ選択テーブルとは、図46に示す参照データのアドレス1000Hから開始されるデータ値を表している。
【0460】
ステップS7054:主制御CPU72は、ダブルバイト選択処理を実行する。ここで、ダブルバイト選択処理が共通サブモジュールであることを想定しており、この処理においては、主制御CPU72はダブルバイト選択処理といった共通サブモジュールを呼び出して実行していることを表している。」

(サ)「【図48】




(シ)「【0461】
図48は、ダブルバイト選択処理の手順例を示すフローチャートである。
ステップS7060:主制御CPU72は、バイトデータ選択処理(図44)を実行する。この処理により、入力されたオフセット値とアドレス値とに基づいて、バイトデータや選択結果アドレス値が出力される。主制御CPU72は次にステップS7062を実行する。
【0462】
ステップS7062:主制御CPU72は、再度バイトデータ選択処理(図44)を実行する。この処理により、入力されたオフセット値とアドレス値とに基づいて、バイトデータや選択結果アドレス値が出力される。
【0463】
以上の手順を終えると、主制御CPU72は図47のサブルーチンプログラムに復帰する。
【0464】
〔図47の処理を参照〕
なお、このステップS7054(ダブルバイト選択処理)により、選択アドレス1000Hがセットされている際に、選択オフセット1として00Hが入力されると、第1特別図柄に対応する変動時間の選択テーブルのアドレス値(1002H)が出力され、選択オフセット1として01Hが入力されると、第2特別図柄に対応する変動時間の選択テーブルのアドレス値(1005H)が出力される。
・・・略・・・
【0468】
また、比較例2と本実施形態のサブルーチンプログラムを比較すると、比較例2ではサブモジュールを2回呼び出しているのに対し、本実施形態では1回しか呼び出していない。したがって、本実施形態ではサブモジュールを1回しか呼び出さないため、比較例2の2回呼び出す場合に比べてプログラム容量が少なくすむ。例えば、RST命令で呼び出すと1バイト必要であるため(コール命令で呼び出すと3バイト必要であるため)、本実施形態のサブルーチンプログラムは比較例2のサブルーチンプログラムよりも1バイト(3バイト)だけプログラム容量が少ない。なお、バイトデータ選択処理を2回呼び出すダブルバイト選択処理については、RST命令で呼び出すと1バイト必要であるため(コール命令で呼び出すと3バイト必要であるため)、2バイト(6バイト)さらにプログラム容量が多くなる。ここでは簡単なサブルーチンプログラムを挙げたが、実際主制御装置70は、特別図柄の変動表示に関する変動パターンを選択する処理、内部抽選の結果大当りに該当した際に当選種類(当選図柄)を選択する処理、普通図柄の変動表示に関する変動パターンを選択する処理、作動抽選の結果当りに該当した際に当選種類(当選図柄)を選択する処理、大当り遊技や小当り遊技におけるオープニング時間、エンディング時間、インターバル時間等を選択する処理、大当り遊技終了後に設定する確変回数や時短回数、特殊変動回数を選択する処理等の様々なサブルーチンプログラムを実行している。したがって、その個々のサブルーチンプログラムにおいて連続してバイトデータ選択処理を呼び出して実行せずに、1回のダブルバイト選択処理を呼び出して実行することで、その分プログラム容量を削減することができる。具体的には、異なる2つの処理中に1回ずつダブルバイト選択処理が呼び出される場合のプログラム容量と、2回ずつバイトデータ選択処理が呼び出される場合のプログラム容量とは同一であるが、それ以上の回数にわたりダブルバイト選択処理が呼び出されると、その回数に応じて1バイト(RST命令の場合、コール命令の場合は3バイト)ずつプログラム容量を減らすことができる。
【0469】
このように、サブルーチンプログラム上で共通のサブモジュールを呼び出す命令(RST命令やコール命令)が連続している場合、その命令をまとめて1つの新たなサブモジュールとし、個々のサブルーチンプログラム上で新たなサブモジュールを呼び出すことで、プログラムの容量がむやみに増大することを防止し、プログラムの容量を削減することができる。」

(ス)「本実施形態におけるサブルーチンプログラム」のダブルバイト選択処理(【0457】ないし【0469】(上記(コ)、(シ))、図47(上記(ケ))及び図48(上記(サ)))については、バイトデータ選択処理に関する記載(【0440】ないし【0447】(上記(カ))、図44(上記(オ)))、及び、「比較対象とするサブルーチンプログラム(比較例2)」(【0448】ないし【0454】(上記(ク))、図45及び図46(上記キ))の記載を援用して、説明がなされている。
まず、バイトデータ選択処理に関して、【0441】には「主制御CPU72は、選択オフセットと選択アドレスの下位バイトを加算する。例えば、選択オフセットが00Hであり、選択アドレスが1000Hである場合、00Hと00Hとを加算して、00Hといった加算結果が出力される。」と、【0442】には「主制御CPU72は、選択アドレスの下位バイトに演算結果値をセットする。・・・例えば、選択アドレスが1000Hの下位バイトに加算結果00Hがセットされ、選択結果アドレスとして1000Hが出力される。」と、【0445】には「先の処理・・・で出力された選択結果のアドレス値に記録されているデータ値を読み出す。例えば、・・・アドレス1000Hに1002が記録されている場合、1002Hが読み出される。他にも、アドレスが1001Hであれば1005Hが読み出され・・・」と、それぞれ記載されている。
また、比較例2に関して、【0453】には「ステップS7014:主制御CPU72は、バイトデータ選択処理を実行する。・・・選択オフセット1と選択アドレスとに基づいて、バイトデータ及び書き換えられたアドレスが出力されることとなる。なお、具体的な処理の内容については、上記バイトデータ選択処理(図44)と同様の処理であるため説明は省略する。・・・具体的には、選択オフセット1として00Hが入力されると、バイトデータ02Hが出力され、選択結果アドレスとして1000Hに置き換えられる。また、選択オフセット1として01Hが入力されると、バイトデータ04Hが出力され、選択結果アドレスとして1001Hに置き換えられる。」と、【0454】には「ステップS7016:主制御CPU72は、バイトデータ選択処理を実行する。・・・バイトデータと選択結果アドレスとに基づいて、書き換えられたアドレスが出力されることとなる。なお、具体的な処理の内容については、上記バイトデータ選択処理(図44)と同様の処理であるため説明は省略する。・・・・具体的には、バイトデータとして02Hが入力されると、選択結果アドレスとして1002Hに置き換えられる。また、バイトデータとして04Hが入力されると、選択結果アドレスとして1005Hに置き換えられる」と、それぞれ記載されている。
また、ダブルバイト選択処理に関し、【0460】には「主制御CPU72はダブルバイト選択処理といった共通サブモジュールを呼び出して実行している・・・」と、【0461】には「ステップS7060:主制御CPU72は、バイトデータ選択処理(図44)を実行する。この処理により、入力されたオフセット値とアドレス値とに基づいて、バイトデータや選択結果アドレス値が出力される。」と、【0462】には「ステップS7062:主制御CPU72は、再度バイトデータ選択処理(図44)を実行する。この処理により、入力されたオフセット値とアドレス値とに基づいて、バイトデータや選択結果アドレス値が出力される。」と、それぞれ記載されている。
以上の記載からみて、本実施形態のダブルバイト選択処理は、比較例2の連続した2つのバイトデータ選択処理(ステップS7014、S7016)をダブルバイト選択処理といった共通モジュールとして呼び出して実行し、該バイトデータ選択処理は、具体的には、選択オフセットと選択アドレスの下位バイトを加算して選択結果アドレスを出力する処理を実行する。
そうすると、引用例のダブルバイト選択処理として、以下の事項が認定できる。
「選択オフセット1と選択アドレスの下位バイトを加算し、例えば、選択オフセット1が00Hであり、選択アドレスが1000Hである場合、00Hと00Hとを加算して、00Hといった加算結果を出力し、選択アドレスの下位バイトに加算結果をセットし、例えば、選択アドレスが1000Hの下位バイトに加算結果00Hがセットされ、選択結果アドレスとして1000Hを出力し、選択結果アドレス値に記録されているバイトデータを読み出し、例えば、アドレスが1000Hであればバイトデータ02Hが読み出される、バイトデータ選択処理を実行し、バイトデータと選択結果アドレスを加算し、書き換えられたアドレスが出力されることとなり、具体的には、バイトデータとして02Hが入力されると、選択結果アドレス1000Hに加算されて、選択結果アドレスとして1002Hに置き換えられる、バイトデータ選択処理を再度実行する」という事項が認定できる。

イ 引用発明
上記アからみて、引用例には、次の発明が記載されている。なお、aないしfについては本願補正発明の特定事項AないしFに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 遊技の進行を制御する機能を有し、CPUコアやレジスタ(アキュムレータAとフラグレジスタF、汎用レジスタB〜Lの各ペア)とともに半導体メモリを集積したLSIとして構成されている主制御CPU72を実装した主制御基板が装備されている主制御装置70を備え(【0089】、【0090】、【0147】)、
b、d、e 主制御CPU72は、
選択オフセット1と選択アドレスの下位バイトを加算し、例えば、選択オフセット1が00Hであり、選択アドレスが1000Hである場合、00Hと00Hとを加算して、00Hといった加算結果を出力し、選択アドレスの下位バイトに加算結果をセットし、例えば、選択アドレスが1000Hの下位バイトに加算結果00Hをセットし、選択結果アドレスとして1000Hを出力し、選択結果アドレス値に記録されているバイトデータを読み出し、例えば、アドレスが1000Hであればバイトデータ02Hを読み出す、バイトデータ選択処理を実行し、
バイトデータと選択結果アドレスを加算し、書き換えられたアドレスが出力されることとなり、具体的には、バイトデータとして02Hが入力されると、選択結果アドレス1000Hに加算して、選択結果アドレスとして1002Hに置き換える、バイトデータ選択処理を再度実行する(【0461】、【0462】、上記ア(ス))、
ダブルバイト選択処理を実行し(【0460】)、
このようなダブルバイト選択処理により、選択アドレス1000Hがセットされている際に、選択オフセット1として00Hが入力されると、第1特別図柄に対応する変動時間の選択テーブルのアドレス値(1002H)が出力され、選択オフセット1として01Hが入力されると、第2特別図柄に対応する変動時間の選択テーブルのアドレス値(1005H)が出力されるものであり(【0464】)、
c ダブルバイト選択処理を共通サブモジュールとして呼び出して実行しており(【0460】)、
このようにすることで、サブルーチンプログラム上で共通のサブモジュールを呼び出す命令が連続している場合、その命令をまとめて1つの新たなサブモジュールとし、個々のサブルーチンプログラム上で新たなサブモジュールを1回しか呼び出さないことで、2回呼び出す場合に比べて、プログラムの容量がむやみに増大することを防止し、プログラムの容量を削減することができるようにした(【0468】、【0469】)、
f パチンコ遊技機1(【0017】)。」(以下「引用発明」という。)

(3)周知例の記載、周知技術
ア 周知例1
原査定で引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012−223330号公報(平成24年11月15日公開、以下「周知例1」という。)には、遊技台に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0040】
パチンコ機100の制御部は、大別すると、主に遊技の進行(例えば、遊技者による操作の検出、遊技状態の遷移、遊技媒体の払出制御、当否判定など)を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、主制御部300が送信するコマンドに応じて主に遊技球の払い出しに関する制御を行う払出制御部600と、遊技球の発射制御を行う発射制御部630と、パチンコ機100に供給される電源を制御する電源制御部660と、によって構成している。
【0041】
<主制御部>
まず、パチンコ機100の主制御部300について説明する。
【0042】
主制御部300は、主制御部300の全体を制御する基本回路302を備えており、この基本回路302には、CPU304と、制御プログラムや各種データを記憶するためのROM306と、一時的にデータを記憶するためのRAM308と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O310と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ312と、プログラム処理の異常を監視するWDT314を搭載している。なお、ROM306やRAM308については他の記憶装置を用いてもよく、この点は後述する第1副制御部400についても同様である。この基本回路302のCPU304は、水晶発振器316bが出力する所定周期のクロック信号をシステムクロックとして入力して動作する。」

(イ)「【0070】
<主制御部のCPUの内蔵レジスタ>
CPU304は、カウンタ回路、タイマ回路、シリアル通信回路、乱数回路、演算回路、リセット/割込みコントローラ等を制御するための制御レジスタのほか、CPU304が制御プログラムを実行する際に使用するレジスタなどの内蔵レジスタを備える。内蔵レジスタには、本発明の特徴点の一つであるTレジスタ(特殊レジスタ)と、汎用レジスタと、プログラムカウンタ(PC)、命令レジスタ等が含まれる。汎用レジスタの種類は特に限定されないが、本実施形態では、Iレジスタ、Aレジスタ、Fレジスタ、Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタの8ビットレジスタを備えており、BレジスタとCレジスタ、DレジスタとEレジスタ、HレジスタとLレジスタは、それぞれ、16ビット長の演算が可能なBCレジスタ、DEレジスタ、HLレジスタの16ビットレジスタ(ペアレジスタ)としても機能するように構成されている。
・・・略・・・
【0074】
また、本実施形態では、A、F、B、C、D、E、H、Lの各汎用レジスタ(主レジスタ)に対応する補助レジスタ(裏レジスタ)として、A´、F´、B´、C´、D´、E´、H´、L´の各汎用レジスタを備えているが、特殊レジスタであるTレジスタのみ補助レジスタを備えていない。よって、Tレジスタの使用用途は限定され、Tレジスタの使用頻度は汎用レジスタに比べて低くなるため、不用意にTレジスタの値が書き換えられてしまうような事態(Tレジスタの内容が破壊されてしまうような事態)を未然に防止できる場合がある。なお、補助レジスタの値は各種命令によって直接読み書きすることができず、特殊な交換命令(EX命令、EXX命令)によって主レジスタの値と補助レジスタの値を交換することのみが許されている。ここでは、説明の便宜上、レジスタの値をPUSH命令・POP命令等の命令で変更し易いレジスタを汎用レジスタとしたが、これに限らず、Aレジスタ(アキュムレータ)とFレジスタ(フラグレジスタ)など特別な役割を持つレジスタを汎用レジスタに含めなくてもよい。」

(ウ)「【図34】


【図35】




(エ)「【0256】
<特別図柄変動時間抽選処理>
次に、図34および図35を用いて、上述の特図1関連抽選処理における特別図柄変動時間抽選処理について説明する。なお、図34は、特別図柄変動時間抽選処理の流れを示すフローチャートであり、図35は、特別図柄変動時間抽選処理のプログラムリストの一例である。
【0257】
ステップS1101では、演出用乱数取得処理を行う。この演出用乱数取得処理では、上述の特図1関連抽選処理で取得した特図1乱数値(0〜255)を、上述の乱数値1記憶領域(RWM領域のアドレス7E41H)に記憶し、上述の特図2関連抽選処理で取得した特図2乱数値(0〜255)を、上述の乱数値2記憶領域(RWM領域のアドレス7E42H)に記憶する。
【0258】
次のステップS1102では、上述のテーブル選択用テーブル(図32(a))の先頭アドレス(本実施形態では、1600H)を、HLレジスタに転送する(LD HL,tableSelectTable)。これにより、HLレジスタに1600Hが記憶される。
【0259】
次のステップS1103では、上述の保留数記憶領域(RWM領域のアドレス7E40H)に記憶された保留数を、Aレジスタに転送する(LDT A,(40H))。ここで、「LDT A、(n:イミディエイト値)」命令は、図36に示すように、Tレジスタを上位、イミディエイト値を下位で示すアドレスのデータをAレジスタにロードする命令である。本実施形態では、Tレジスタに7EHを記憶しているため、「LDT A,(40H)」命令を実行した場合、Tレジスタ(7EH)を上位、イミディエイト値(40H)を下位で示すアドレス(7E40H)のデータ、すなわち保留数記憶領域に記憶された保留数がAレジスタにロード(転送)される。例えば、保留数記憶領域に記憶された保留数が2の場合には、Aレジスタに02Hがロード(転送)される。
【0260】
次のステップS1104では、Aレジスタの値にAレジスタの値を加算する(ADD A,A)。先の例では、Aレジスタの値(02H)にAレジスタの値(02H)を加算することによってAレジスタに04Hが記憶される。次のステップS1105では、HLレジスタにAレジスタの値を加算する(ADDTWOONE HL,A)。詳細は後述するが、ADDTWOONE命令(ADDTWOONE HL,A)は、HLレジスタに記憶された2バイト長の値に、Aレジスタに記憶された1バイト長の値を加算するための命令である。先の例では、HLレジスタ(1600H)にAレジスタの値(04H)を加算することによってHLレジスタに1604Hが記憶される。」

(オ)「【図36】




(カ)「【0275】
<特殊命令/ADDTWOONE命令>
特殊命令の一つであるADDTWOONE命令(ADDTWOONE OP1,OP2)は、第1オペランドOP1で示される2つのレジスタに記憶された2バイト長の値に、第2オペランドOP2で示されるレジスタに記憶された1バイト長の値(または、第2オペランドOP2で示される1バイト長のイミディエイト値)を加算するための命令である。ADDTWOONE命令の命令コードの上位1バイトは固定値(この例ではEDH)とし、下位バイトは、命令データテーブルの上位ビット4H(0100B)と下位ビット0H(0000B)〜2H(0010B)の組合せと、命令データテーブルの上位ビット4H(0100B)と下位ビット4H(0100B)〜7H(0001B)、9H(1001H)の組合せに割り当てている。このように、従来は空き領域とされていた命令の領域を利用することで、限られたハードウェア資源を有効利用することができる上に、空き領域に不正な命令(隠し命令)を埋め込むような不正行為を未然に防止することができ、遊技の公平性を担保できる場合がある。なお、本実施形態では、特殊命令の命令コードを2バイト長としているが、命令コードのバイト長は特に限定されず、例えば1バイト長でもよい。また、ADDTWOONE命令のうちの特定の命令(例えば、「ADDTWOONE HL,A」命令)のみ、他のADDTWOONE命令よりも命令コードが短く(例えば、1バイト長)てもよい。また、「ADDTWOONE OP1,A」命令のうちの特定の命令(例えば、「ADDTWOONE HL,A」命令)のみ、他のADDTWOONE命令よりも命令コードが短く(例えば、1バイト長)てもよい。この場合、該命令の利便性を高めることができる。」

イ 周知例2、3
本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013−27440号公報(平成25年2月7日公開、以下「周知例2」という。)の特に【0040】ないし【0042】、【0070】、【0074】、【0253】ないし【0257】、【0272】、図33ないし図35、及び、同じく本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013−180074号公報(平成25年9月12日公開、以下「周知例3」という。)の特に【0040】ないし【0042】、【0070】、【0074】、【0257】ないし【0261】、【0276】、図34ないし図36に、上記周知例1と同様な記載がある。

ウ 上記ア及びイからみて、以下の事項が本願の出願前に周知であると認められる。
「遊技の進行を制御する主制御部300によって構成している制御部を備え(周知例1の【0040】)、
主制御部300は、CPU304を搭載し(周知例1の【0042】)、
CPU304が制御プログラムを実行する際に使用するレジスタなどの内蔵レジスタを備え、内蔵レジスタには、汎用レジスタが含まれ、汎用レジスタの種類はIレジスタ、Aレジスタ、Fレジスタ、Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタの8ビットレジスタを備えており、BレジスタとCレジスタ、DレジスタとEレジスタ、HレジスタとLレジスタは、それぞれ、16ビット長の演算が可能なBCレジスタ、DEレジスタ、HLレジスタの16ビットレジスタ(ペアレジスタ)としても機能するように構成され(周知例1の【0070】)、
テーブル選択用テーブルの先頭アドレス1600HをHLレジスタに転送して、HLレジスタに1600Hを記憶し(周知例1の【0258】)、
ADDTWOONE命令(ADDTWOONE HL,A)により、HLレジスタにAレジスタの値を加算し、具体的には、HLレジスタに記憶された2バイト長の値に、Aレジスタに記憶された1バイト長の値を加算する(周知例1の【0260】、【0275】)、
パチンコ機100(周知例1の【0040】)。」(以下「周知技術」という。)

(4)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
ア 特定事項Aについて
引用発明のaの「主制御CPU72」は、遊技の進行を制御する機能を有するから、本願補正発明の「遊技の制御を行う制御装置」に相当する。
そうすると、引用発明のaは、本願補正発明の特定事項Aに相当する。

イ 特定事項Bについて
引用発明のb、d、eの「選択オフセット1」、「選択アドレス」、「選択結果アドレス」、「バイトデータ」及び「「置き換え」られた「選択結果アドレス」」は、それぞれ本願補正発明の「第1加算値データ」、「基本アドレスデータ」、「第1アドレスデータ」、「第2加算値データ」及び「第2アドレスデータ」に相当する。
引用発明のb、d、eにおいて、主制御CPU72(制御装置)は、選択オフセット1(第1加算値データ)と選択アドレス(基本アドレスデータ)の下位バイトを加算し、例えば、選択オフセット1が00Hであり、選択アドレスが1000Hである場合、選択結果アドレス(第1アドレスデータ)として1000Hを出力し、選択結果アドレス値に記録されているバイトデータ(第2加算値データ)を読み出し、例えば、アドレスが1000Hであればバイトデータ02Hが読み出される、バイトデータ選択処理を実行し、バイトデータ(第2加算値データ)と選択結果アドレス(第1アドレスデータ)を加算し、書き換えられたアドレス(第2アドレスデータ)が出力されることとなり、具体的には、バイトデータとして02Hが入力されると、選択結果アドレス1000Hに加算されて、選択結果アドレス(第2アドレスデータ)として1002Hに置き換える、というダブルバイト選択処理を実行するものである。
そして、このダブルバイト選択処理は、引用発明のcのように、共通サブモジュールであるから、その共通サブモジュールが本願補正発明の「アドレス算出モジュール」に相当するものである。
そうすると、引用発明のb、d、e及びcと、本願補正発明の「B 前記制御装置は、第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出し、前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードし、ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出するアドレス算出モジュールを備え、」とは、「前記制御装置は、」「第1加算値データと」「基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出し、前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードし、ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出するアドレス算出モジュールを備え」ている点で一致する。

ウ 特定事項Cについて
引用発明のcにおいて、選択結果アドレス(第1アドレスデータ)の算出から置き換えられた選択結果アドレス(第2アドレスデータ)の算出までの一連の処理を実行するダブルバイト選択処理を共通サブモジュール(アドレス算出モジュール)として呼び出して実行、すなわち、前記共通サブモジュールである新たなサブモジュールを1回しか呼び出さないものであり、このようにすることで、2回呼び出す場合に比べて、プログラムの容量がむやみに増大することを防止し、プログラムの容量を削減することができるようにしたものである。
そうすると、引用発明のcは、本願補正発明の「C 前記アドレス算出モジュールは、前記第1アドレスデータの算出から前記第2アドレスデータの算出までの一連の処理を1回の呼び出しで実行し、」との特定事項を備える。

エ 特定事項Fについて
引用発明の「パチンコ遊技機1」が本願補正発明の「遊技機」に相当するから、引用発明のfは、本願補正発明の特定事項Fに相当する。

オ 上記アないしエからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技の制御を行う制御装置を備え、
B’前記制御装置は、
第1加算値データと基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出し、前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードし、ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出するアドレス算出モジュールを備え、
C 前記アドレス算出モジュールは、
前記第1アドレスデータの算出から前記第2アドレスデータの算出までの一連の処理を1回の呼び出しで実行する、
F 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項B)
「第1加算値データ」と「基本アドレスデータ」に関し、
本願補正発明では、「第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して」いるのに対し、
引用発明では、選択オフセット1(第1加算値データ)及び選択アドレス(基本アドレスデータ)がそれぞれ第1レジスタ及び第2レジスタのものであるか明らかでない点。

・相違点2(特定事項D)
本願補正発明では、「前記一連の処理における前記第1アドレスデータを算出する処理と前記第2アドレスデータを算出する処理とは同一のプログラムコードを用いて実行」するのに対し、
引用発明では、選択結果アドレス(第1アドレスデータ)の算出と、置き換えられた選択結果アドレス(第2アドレスデータ)の算出とは、同一のプログラムコードを用いて実行するかどうかが明らかでない点。

・相違点3(特定事項E)
本願補正発明では、「前記一連の処理を前記第1レジスタ及び前記第2レジスタだけを用いて実行する」のに対し、
引用発明では、ダブルバイト選択処理(アドレス算出モジュール)に係る一連の処理を前記第1レジスタ及び前記第2レジスタだけを用いて実行するのか明らかでない点。

(5)判断
ア レジスタに関連するので、上記相違点1及び3についてまとめて検討する。
(ア)上記(3)ウで示した周知技術は、パチンコ機において、CPUが制御プログラムを実行する際に使用するレジスタなどの内蔵レジスタを備え、内蔵レジスタには、汎用レジスタが含まれ、汎用レジスタの種類はIレジスタ、Aレジスタ、Fレジスタ、Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタの8ビットレジスタを備えており、BレジスタとCレジスタ、DレジスタとEレジスタ、HレジスタとLレジスタは、それぞれ、16ビット長の演算が可能なBCレジスタ、DEレジスタ、HLレジスタの16ビットレジスタ(ペアレジスタ)としても機能するように構成され、テーブル選択用テーブルの先頭アドレス1600HをHLレジスタに転送して、HLレジスタに1600Hを記憶し、ADDTWOONE命令(ADDTWOONE HL,A)により、HLレジスタにAレジスタの値を加算し、具体的には、HLレジスタに記憶された2バイト長の値に、Aレジスタに記憶された1バイト長の値を加算する、というものである。

(イ)周知技術の「Aレジスタ」、「Aレジスタの値」、「HLレジスタ」及び「テーブル選択用テーブルの先頭アドレス」は、それぞれ本願補正発明の「第1のレジスタ」、「第1加算値データ」、「第2レジスタ」及び「基本アドレスデータ」に相当する。そうすると、周知技術は、本願補正発明の特定事項Bのうち「第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して」との特定事項を備えるといえる。
また、周知技術は、HLレジスタにAレジスタの値を加算する際に、他のレジスタを用いることの特定はなく、他のレジスタを用いることが技術常識でもなく、当該加算に関する処理については、Aレジスタ(第1のレジスタ)及びHLレジスタ(第2のレジスタ)だけを用いているといえるから、本願補正発明の特定事項Dのうち「加算する」「処理を第1レジスタ及び第2レジスタだけを用いて実行する」との特定事項を備えるといえる。

(ウ)引用発明において、ダブルバイト処理(アドレス算出モジュール)を実行する主制御CPU72(制御装置)が、レジスタ(アキュムレータAとフラグレジスタF、汎用レジスタB〜Lの各ペア)を備えていることを考慮すれば、該ダブルバイト処理(アドレス算出モジュール)における各バイトデータの保持に、前記各レジスタを利用することは技術常識から自明である。
そして、引用発明と周知技術とは、レジスタを備えた主制御CPUがバイトデータ同士を加算する処理を実行する遊技機である点で技術分野が共通し、プログラムの容量がむやみに増大することを防止するという課題を内在する点でも共通するから、周知技術を引用発明に適用し、選択オフセット1(第1加算値データ)をAレジスタ(第1レジスタ)のものとし、選択アドレス(基本アドレスデータ)をHLレジスタ(第2レジスタ)のものとすることは当業者が適宜なし得たことである。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(エ)引用発明のダブルバイト選択処理(アドレス算出モジュール)は、選択オフセット1(第1加算値データ)と選択アドレス(基本アドレスデータ)の下位バイトを加算し、選択アドレスの下位バイトに加算結果をセットし、選択結果アドレスを出力し、選択結果アドレス値に記録されているバイトデータを読み出し、バイトデータと選択結果アドレスを加算し、書き換えられたアドレスが出力されるものであり、選択アドレスは加算毎に書き換えられているのである。
そうすると、引用発明において、上記(ウ)のように、選択オフセット1(第1加算値データ)をAレジスタ(第1レジスタ)のものとし、選択アドレス(基本アドレスデータ)をHLレジスタ(第2レジスタ)のものとした際に、ダブルバイト選択処理(アドレス算出モジュール)において、Aレジスタ(第1レジスタ)に選択オフセット1が保持され、HLレジスタ(第2レジスタ)のアドレス値が加算毎に書き換えられ、その他のレジスタが関与しないから、ダブルバイト選択処理(アドレス算出モジュール)の一連の処理において、Aレジスタ(第1レジスタ)及びHLレジスタ(第2レジスタ)だけを用いて実行していることは明らかである。
したがって、引用発明において、上記相違点3に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
(ア)引用発明のダブルバイト選択処理(アドレス算出モジュール)は、サブルーチンプログラム上で共通のサブモジュール(バイトデータ選択処理)を呼び出す命令が再度実行(連続)する場合、その命令をまとめて1つの新たなサブモジュールとしたものであるから、連続しているバイトデータ選択処理が同一のプログラムコードで実行されることは当業者にとって自明である。むしろ、異なるプログラムコードで実行する方が不自然である。

(イ)引用発明と周知技術とは、前述のとおり、技術分野も課題も共通するから、周知技術におけるADDTWOONE命令(ADDTWOONE HL,A)によって、HLレジスタにAレジスタの値を加算していることを考慮すれば、引用発明において、周知技術を適用し、選択結果アドレス(第1アドレスデータ)の算出と、置き換えられた選択結果アドレス(第2アドレスデータ)の算出とを加算に関する同一のプログラムコード、例えばADDTWOONE命令(ADDTWOONE HL,A)を用いて実行することは、当業者が適宜なし得たことである。

(ウ)以上のとおり、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(6)本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

(7)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書の「6.本願発明が特許されるべき理由」において、概ね以下のとおり主張する。
「(4)本願請求項1に係る発明と引用文献1の発明との対比
本願請求項1に係る発明のアドレス算出モジュール(構成C)は、大きく分けて以下に示す3つの処理を実行するモジュールである。
(A)第1レジスタの第1加算値データと第2レジスタの基本アドレスデータとを加算して第1アドレスデータを算出する処理
(B)前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードする処理
(C)ロードした前記第2加算値データを前記第1アドレスデータに加算して第2アドレスデータを算出する処理
そして、(A)(B)(C)の処理は、それぞれが、異なる内容の処理となっている。
一方、引用文献1のダブルバイト選択処理(図48)は、大きく分けて以下に示す2つの処理を実行するモジュールである。
(a)バイトデータ選択処理
(b)バイトデータ選択処理
そして、(a)(b)の処理は、それぞれが、同じ内容の処理となっている。
このような状況では、引用文献1の(a)(b)の処理を同一のプログラムコードで実行することは、当業者にとっては当然である。むしろ、異なるプログラムコードで実行する方が不自然である。
一方、本願請求項1に係る発明は、異なる内容の(A)(C)の処理を同一のプログラムコードで実行する発明である。
そして、このような本願請求項1に係る発明の構成Fは、異なる内容の処理を実行していない引用文献1のダブルバイト選択処理(図48)から導き出すことはできない。
また、異なる内容の(A)(C)の処理を同一のプログラムコードで実行する場合、(A)(C)のプログラムコードを単純に統一すればよいという訳ではなく、(A)(C)の処理が正しく実行されるようにするためには、その間にある(B)の処理の内容を(A)(C)の処理の内容に即した処理(前記第1アドレスデータが示すアドレスに格納されている第2加算値データをロードする処理)に調整する必要がある。そして、このような調整は、引用文献1の発明には開示も示唆もされていない。
(5)引用文献2
引用文献2には、「HLレジスタ」に関する内容は記載されているが(〔0258〕)、引用文献2は、本願請求項1に係る発明の構成F、G(前記構成D、E)を開示するものでも示唆するものでもない。」

イ 請求人の主張について検討する。
引用発明において、バイトデータ選択処理は、請求人が主張する前記(B)に相当する、選択結果アドレスで示すバイトデータを読み出す処理を含むことが特定されており、当該バイトデータと、選択結果アドレスとに基づいて、次のバイトデータ選択処理を実行することが特定されている。
そうすると、引用発明のダブルバイト選択処理のそれぞれのバイトデータ選択処理において、バイトデータを算出する処理を、使用するレジスタを含め同一のプログラムコードとすることは、上記(5)イで示したように、引用発明と周知技術に基づいて当業者が適宜なし得たことである。
してみると、請求人の上記主張は採用できない。

(8)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
本願補正発明は、上記3のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和2年7月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概ね、次のとおりである。
進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等 引用例1−2

<引用文献等一覧>
1.特開2015−109892号公報
2.特開2012−223330号公報(周知技術を示す文献)

3 引用例
引用文献1(引用例)及び引用文献2(周知例1)は、上記第2[理由]3(2)及び(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2[理由]1)は、本願補正発明(上記第2[理由]3(1))から、本件補正により限定された事項を削除したものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明と引用発明とは、上記相違点1で相違し、その余の点で一致するから、上記第2[理由]3(5)アで示した理由と同様な理由により、本願発明は、当業者が、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-30 
結審通知日 2022-04-05 
審決日 2022-04-19 
出願番号 P2016-202374
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 鉄 豊郎
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 山崎 崇裕  

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