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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01K
管理番号 1386041
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-13 
確定日 2022-06-28 
事件の表示 特願2019−177023「テトラフルオロプロペン及びテトラフルオロエタンを含む組成物、動力サイクルにおけるその使用、並びに動力サイクル装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年2月13日出願公開、特開2020−23971、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年11月22日、アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2016−533590号の一部を令和元年9月27日に新たな特許出願としたものであって、令和2年9月23日付け(発送日:同年9月29日)で拒絶理由が通知され、令和2年12月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年4月28日付け(発送日:同年5月11日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和3年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともにその審判の請求と同時に手続補正書が提出され、前置審査において、令和3年10月6日(発送日:同年10月12日)に拒絶理由が通知され、令和4年1月11日に意見書が提出され、令和4年4月6日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし20に係る発明に対して:引用文献1ないし4

<引用文献等一覧>
1.特開2010−090285号公報
2.国際公開第2012/082939号
3.特開2011−168771号公報(周知技術を表す文献)
4.国際公開第2013/096515号

第3 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、令和3年9月13日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
有機ランキン装置で熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法であって、前記熱源から供給される熱を用いて、E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2,2−テトラフルオロエタンからなる作動流体を加熱する工程と;前記加熱された作動流体を膨張させて、前記作動流体の圧力を低下させ、前記作動流体の圧力が低下するにつれて機械エネルギーを発生させる工程とを含み、
前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、合計40〜65重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる方法。
【請求項2】
前記作動流体を、加熱前に圧縮し、前記膨張した前記作動流体を、反復サイクルのために冷却及び圧縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作動流体は不燃性組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
亜臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法であって、
前記方法は、
(a)液体作動流体を、その臨界圧よりも低い圧力に圧縮する工程と、
(b)蒸気作動流体を形成するために、(a)から得られた圧縮された液体作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)前記作動流体の圧力を低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、
を含む方法。
【請求項5】
遷移臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法であって、
前記方法は、
(a)液体作動流体を前記作動流体の臨界圧よりも高い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)前記作動流体の圧力をその臨界圧よりも低い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)冷却された液体作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された前記液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、
を含む方法。
【請求項6】
超臨界サイクルを用いて、熱源からの熱を機械エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法であって、
前記方法は、
(a)作動流体をその臨界圧よりも高い圧力からより高い圧力に圧縮する工程と、
(b)(a)から得られた圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給された熱を用いて加熱する工程と、
(c)前記作動流体の圧力をその臨界圧よりも高い圧力に低下させ、機械エネルギーを発生させるために、(b)から得られた加熱された作動流体を膨張させる工程と、
(d)その臨界圧よりも高い、冷却された作動流体を形成するために、(c)から得られた膨張した作動流体を冷却する工程と、
(e)冷却された液体作動流体を、圧縮するために(d)から(a)に循環させる工程と、
を含む方法。
【請求項7】
E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2,2−テトラフルオロエタンからなる作動流体を含み、前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、合計40〜65重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる、有機ランキン装置。
【請求項8】
(a)熱交換ユニットと、(b)前記熱交換ユニットと流体連通している膨張機と、(c)前記膨張機と流体連通している作動流体冷却ユニットと、(d)前記作動流体冷却ユニットと流体連通している圧縮機と、を含み、前記作動流体が、次いで、反復サイクルにおいて構成要素(a)、(b)、(c)、および(d)を繰り返し流れるように、前記圧縮機が、前記熱交換ユニットと更に流体連通している、請求項7に記載の有機ランキン装置。
【請求項9】
前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、10〜16重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンと、30〜49重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、10〜26重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンと、24〜49重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記作動流体が、共沸性混合物または共沸混合物様組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、10〜16重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンと、30〜49重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる、請求項7に記載の有機ランキン装置。
【請求項13】
前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、10〜26重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンと、24〜49重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる、請求項7に記載の有機ランキン装置。
【請求項14】
前記作動流体が、共沸混合物または共沸混合物様組成物である、請求項7に記載の有機ランキン装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010−90285号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ランキンサイクル発電のタービン用潤滑油及び作動流体組成物」に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。

(1)「【0009】
本発明によれば、ランキンサイクル発電の作動媒体として用いられる非塩素系ハロゲン化炭化水素に対して良好な相溶性を示し、且つ、潤滑性および熱安定性に優れるタービン用潤滑油、並びにその潤滑油を用いた作動流体組成物が提供される。」

(2)「【0197】
上記構成を有する本発明の潤滑油、並びに当該潤滑油を含有する本発明の作動流体組成物を用いることによって、ランキンサイクルシステム内において、作動媒体と潤滑油との相溶性が良いことから凝縮器や蒸発器の熱交換表面への潤滑油の付着が少なく熱交換の効率が良好となる。また、ランキンサイクル発電システムにおける膨張タービン等の摺動部分の摩擦係数を十分に低下することができ、運転時のエネルギー損失を十分に削減することができることから、高水準の発電効率を達成する上で非常に有用である。
【0198】
本発明の作動流体組成物は、本発明の潤滑油と、炭素数1〜2のフッ化炭化水素及び炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種の作動媒体とを含有する。ランキンサイクル発電システムに導入された本発明の作動流体組成物は、通常、当該システム内において本発明の潤滑油と上記作動媒体との混合物として存在している。
【0199】
炭素数1〜2のフッ化炭化水素としては、具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの作動媒体は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0200】
炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素としては、フルオロプロペンが好ましいものとして用いられ、具体的には例えば、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO−1225ye、HFO−1234zeおよびHFO−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。」

上記記載事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「作動媒体が、炭素数1〜2のフッ化炭化水素及び炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種を含有し、
炭素数1〜2のフッ化炭化水素が、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物であり、
炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素が、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物である、
ランキンサイクル発電システム。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/082939号(以下「引用文献2」という。)には、「COMBINATIONS OF E-1,3,3,3-TETRAFLUOROPROPENE AND AT LEAST ONE TETRAFLUOROETHANE AND THEIR USE FOR HEATING」(訳:E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと少なくとも1つのテトラフルオロエタンとの組み合わせおよび加熱のためのそれらの使用)に関して、次の事項が記載されている。

(1)「Compositions
Compositions as disclosed for use in the present method include working fluids comprising (a) E-CF3CH=CHF (E-HFO-1234ze or trans- HFO-1234ze) and (b) at least one compound of the formula CF2XCHFY wherein X and Y are each selected from the group consisting of H and F; provided that when X is H, Y is F and when X is F, Y is H. These compositions include as component (b) one or both of the two tetrafluoroethane isomers of formula C2H2F4 (i.e., 1,1,2,2- tetrafluoroethane (HFC-134, CHF2CHF2) and/or 1,1,1,2-tetrafluoroethane (HFC-134a, CF3CH2F)).」(10ページ1ないし10行)
訳:「組成物
本方法における使用のために開示されるような組成物は、(a)E−CF3CH=CHF(E−HFO−1234zeまたはトランス−HFO−1234ze)、および(b)XおよびYがそれぞれHおよびFからなる群から選択される式CF2XCHFYの少なくとも一つの化合物を含む作動流体を含み;ただし、XがHの時、YはF、XがFの時はYはHである。これらの組成物は、成分(b)として、式C2H2F4の2つのテトラフルオロエタン異性体のうちの1つまたは両方(即ち、1、1、2、2−テトラフルオロエタン(HFC−134、CHF2CHF2)および/または1、1、1、2−テトラフルオロエタン(HFC−134a,CF3CH2F))である。」

(2)「Also of note for use in producing heating (including but not limited to as replacements for other heat pump working fluids) are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E-CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.1 to 0.2. Also of note are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E-CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.2 to 0.3. Also of note are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E- CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.3 to 0.4. Also of note are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E-CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.4 to 0.5. Also of note are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E-CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.5 to 0.6. Also of note are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E- CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.6 to 0.7. Also of note are compositions wherein component (b) is a mixture of CHF2CHF2 and CF3CH2F, wherein the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is at least about 1 :4 (e.g., from about 9:1 to about 1 :4) and the weight ratio of E-CF3CH=CHF to the total amount of E-CF3CH=CHF, CHF2CHF2 and CF3CH2F is from about 0.7 to 0.8. Of particular note for the compositions comprising both CHF2CHF2 to CF3CH2F described above are compositions where the weight ratio of CHF2CHF2 to CF3CH2F is from about 9:1 to about 1 :1 .25 (for example 1 .25:1 to about 1 :1 .25).」(31ページ26行ないし32ページ30行)
訳:「また、加熱における使用(他のヒートポンプ作動流体の代替物としての使用に限定されない)のために注目すべきは、成分(b)がCHF2CHF2およびCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2のCHF3CH2Fに対する重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)であり、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2およびCHF3CH2Fの合計量に対するE−CF3CH=CHFの重量比は約0.1から約0.2である。また、注目すべきは、成分(b)がCHF2CHF2とCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2、CHF3CH2Fの総量に対するE−CF3CH=CHFの重量比が約0.2〜約0.3である組成物である。また、注目すべきは、成分(b)がCHF2CHF2とCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2、CHF3CH2Fの総量に対するE−CF3CH=CHFの重量比は約0.3〜0.4である、組成物である。また、注目すべきは、成分(b)がCHF2CHF2とCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2、CHF3CH2Fの総量に対するE−CF3CH=CHFの重量比が約0.4〜0.5である、組成物である。また、注目すべきは、成分(b)がCHF2CHF2とCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2、CHF3CH2Fの総量に対するE−CF3CH=CHFの重量比が約0.5〜0.6である、組成物である。また、注目すべきは、成分(b)がCHF2CHF2とCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2、CHF3CH2Fの総量に対するE−CF3CH=CHFの重量比は約0.6〜0.7である、組成物である。また、成分(b)がCHF2CHF2とCHF3CH2Fの混合物であり、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が少なくとも約1:4(例えば、約9:1〜約1:4)、E−CF3CH=CHF、CHF2CHF2、CHF3CH2Fの総量に対するE−CF3CH=CHFの重量比は約0.7〜0.8である組成物も注目すべきことである。上記のCHF2CHF2とCHF3CH2Fの両方を含む組成物について特に注目すべきは、CHF2CHF2とCHF3CH2Fの重量比が約9:1〜約1:1.25(例えば、1.25:1〜約1:1.25)である組成物である。」

上記記載事項から、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
「E−CF3CH=CHF(E−HFO−1234ze)並びに1、1、2、2−テトラフルオロエタン(HFC−134、CHF2CHF2)及び1、1、1、2−テトラフルオロエタン(HFC−134a、CHF3CH2F)からなり、総量に対するE−HFO−1234zeの重量比が0.4〜0.5であるヒートポンプの作動流体。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011−168771号公報(以下「引用文献3」という。)には、「熱伝達組成物」に関して、次の事項が記載されている。

(1)「【0019】
本発明は、トランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)を含んでなる熱伝達組成物の提供により、上記欠点に取り組んでいる。これは、別記されない限り、以下において本発明の組成物と称される。」

(2)「【0036】
別の側面において、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aを含有する本発明の組成物は、1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)をさらに含んでなる。R‐134aは、典型的には、本発明の組成物の燃焼性を減らすために含有される。」

(3)「【0078】
一態様において、本発明は本発明の組成物を含んでなる熱伝達装置を提供する。
【0079】
好ましくは、熱伝達装置は冷却装置である。
【0080】
便宜上、熱伝達装置は自動車空調システム、住宅空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却(chiller refrigeration)システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または空調システムである。」

(4)「【0095】
本発明の別の側面によると、本発明の組成物を含有している機械的動力発生装置が提供される。
【0096】
好ましくは、機械的動力発生装置はランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から動力を発生するように構成されてなる。」

上記記載事項から、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
「トランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)並びに1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)を含んでなる、ヒートポンプシステム又はランキンサイクルのための組成物。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2013/096515号(以下「引用文献4」という。)には、「USE OF COMPOSITIONS COMPRISING E-1,1,1,4,4,5,5,5-OCTAFLUORO-2-PENTENE AND OPTIONALLY, 1,1,1,2,3-PENTAFLUOROPROPANE IN POWER CYCLES」(訳:動力サイクルでのE−1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンおよび任意選択的に、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを含む組成物の使用)に関して、次の事項が記載されている。

(1)「FIG. 1 shows a schematic of one embodiment of the ORC system for using heat from a heat source. Heat supply heat exchanger 40 transfers heat supplied from heat source 46 to the working fluid entering heat supply heat exchanger 40 in liquid phase. Heat supply heat exchanger 40 is in thermal communication with the source of heat (the communication may be by direct contact or another means). In other words, heat supply heat exchanger 40 receives heat energy from heat source 46 by any known means of thermal transfer. The ORC system working fluid circulates through heat supply heat exchanger 40 where it gains heat. At least a portion of the liquid working fluid converts to vapor in heat supply heat exchanger (an evaporator, in some cases) 40.
The working fluid now in vapor form is routed to expander 32 where the expansion process results in conversion of at least a portion of the heat energy supplied from the heat source into mechanical shaft power. The shaft power can be used to do any mechanical work by employing conventional arrangements of belts, pulleys, gears, transmissions or similar devices depending on the desired speed and torque required. In one embodiment, the shaft can also be connected to electric power- generating device 30 such as an induction generator. The electricity produced can be used locally or delivered to a grid.
The working fluid still in vapor form that exits expander 32 continues to condenser 34 where adequate heat rejection causes the fluid to condense to liquid.
It is also desirable to have liquid surge tank 36 located between condenser 34 and pump 38 to ensure there is always an adequate supply of working fluid in liquid form to the pump suction. The working fluid in liquid form flows to pump 38 that elevates the pressure of the fluid so that it can be introduced back into heat supply heat exchanger 40 thus completing the Rankine cycle loop. In an alternative embodiment, a secondary heat exchange loop operating between the heat source and the ORC system can also be used. In FIG. 2, an organic Rankine cycle system is shown, in particular for a system using a secondary heat exchange loop. The main organic Rankine cycle operates as described above for FIG. 1 . The secondary heat exchange loop is shown in FIG. 2 as follows: the heat from heat source 46' is transported to heat supply heat exchanger 40' using a heat transfer medium (i.e., secondary heat exchange loop fluid). The heat transfer medium flows from heat supply heat exchanger 40' to pump 42' that pumps the heat transfer medium back to heat source 46'. This arrangement offers another means of removing heat from the heat source and delivering it to the ORC system. This arrangement provides flexibility by facilitating the use of various fluids for sensible heat transfer.」(21ページ11行ないし22ページ22行)
訳:「図1は、本発明に係る熱源からの熱を利用するORCシステムの一実施形態の概略を示す図である。熱供給熱交換器40は、熱源46から供給される熱を、液相で熱供給熱交換器40に流入する作動流体に伝達する。熱供給熱交換器40は、熱源と熱的に連通している(連通は、直接接触によるものであってもよいし、他の手段によるものであってもよい)。すなわち、熱供給熱交換器40は、熱源46から任意の公知の熱伝達手段により熱エネルギーを受け取る。ORCシステムの作動流体は、熱供給熱交換器40を循環して、熱を得る。液体作動流体の少なくとも一部は、熱供給熱交換器40(場合によっては蒸発器40)で蒸気に変換される。
蒸気の状態になった作動流体は膨張器32に送られ、膨張プロセスにより、熱源から供給された熱エネルギーの少なくとも一部が機械的な軸動力に変換されます。シャフト動力は、必要な速度及びトルクに応じて、ベルト、プーリ、歯車、変速機又は同様の装置の従来の配置を採用することにより、任意の機械的作業を行うために使用することができる。一実施形態では、シャフトは、誘導発電機などの電力生成装置30に接続することもできる。生成された電気は、局所的に使用されるか、またはグリッドに供給されることができる。
膨張機32を出た蒸気状の作動流体は、凝縮機34に進み、そこで十分な熱除去により流体が凝縮して液体になる。
液体サージタンク36を凝縮器34とポンプ38の間に配置して、ポンプ吸引口への液体状態の作動流体の適切な供給が常にあるようにすることも望ましい。液体状の作動流体は、ポンプ38に流れて流体の圧力を上昇させ、熱供給熱交換器40に再び導入できるようにして、ランキンサイクルループを完成させる。代替の実施形態では、熱源とORCシステムの間で動作する二次熱交換ループも使用することができる。図2において、有機ランキンサイクルシステムが、特に二次熱交換ループを使用するシステムに関して示されている。主な有機ランキンサイクルは、図1について前述したように動作します。二次熱交換ループは、図2に以下のように示されている:熱源46’からの熱は、熱伝達媒体(すなわち、二次熱交換ループ流体)を使用して熱供給熱交換器40’に輸送される。熱伝達媒体は、熱供給熱交換器40’から、熱伝達媒体を熱源46’に送り返すポンプ42’に流れる。この配置は、熱源から熱を除去し、それをORCシステムに供給する別の手段を提供する。この配置は、顕熱伝達のための様々な流体の使用を容易にすることにより、柔軟性を提供する。」

(2)「4.The method of claim 2 wherein heat from a heat source is converted to mechanical energy using a sub-critical cycle comprising:
(a) compressing a liquid working fluid to a pressure below its critical pressure;
(b) heating compressed liquid working fluid from (a) using heat supplied by the heat source to form vapor working fluid;
(c) expanding heated working fluid from (b) to lower the pressure of the working fluid and generate mechanical energy;
(d) cooling expanded working fluid from (c) to form a cooled liquid working fluid; and
(e) cycling cooled liquid working fluid from (d) to (a) for compression.」
訳:「4.熱源からの熱を、以下を含む亜臨界サイクルを用いて機械的エネルギーに変換する、請求項2に記載の方法。
(a)液体作動流体を臨界圧力以下の圧力まで圧縮する。
(b)熱源から供給される熱を用いて(a)から圧縮された液体作動流体を加熱し、蒸気作動流体を形成する。
(c)(b)からの加熱された作動流体を膨張させて、作動流体の圧力を下げ、機械的エネルギーを発生させる。
(d)(c)からの膨張した作動流体を冷却して、冷却された液体作動流体を形成する。そして
(e)冷却された液体作動流体を(d)から(a)に循環させて圧縮する。」

(3)「5.The method of claim 2 wherein heat from a heat source is converted to mechanical energy using a trans-critical cycle comprising:
(a) compressing a liquid working fluid above said working fluid's critical pressure;
(b) heating compressed working fluid from (a) using heat supplied by the heat source;
(c) expanding heated working fluid from (b) to lower the pressure of the working fluid below its critical pressure and generate mechanical energy;
(d) cooling expanded working fluid from (c) to form a cooled liquid working fluid; and
(e) cycling cooled liquid working fluid from (d) to (a) for
compression.」
訳:「5.熱源からの熱が、以下を含む遷移臨界サイクルを用いて機械的エネルギーに変換される、請求項2に記載の方法。
(a)液体作動流体を前記作動流体の臨界圧力以上に圧縮する。
(b)熱源から供給される熱を用いて、(a)から圧縮された作動流体を加熱する。
(c)(b)からの加熱された作動流体を膨張させて、作動流体の圧力をその臨界圧力より低くし、機械エネルギーを生成する。
(d)(c)からの膨張した作動流体を冷却して、冷却された液体作動流体を形成する。そして
(e) 冷却された液体作動流体を (d) から (a) に循環させ、圧縮する。」

(4)「6.The method of claim 2 wherein heat from a heat source is converted to mechanical energy using a super-critical cycle comprising:
(a) compressing a working fluid from a pressure above its critical pressure to a higher pressure;
(b) heating compressed working fluid from (a) using heat supplied by the heat source;
(c) expanding heated working fluid from (b) to lower the pressure of the working fluid to a pressure above its critical pressure and generate mechanical energy;
(d) cooling expanded working fluid from (c) to form a cooled
working fluid above its critical pressure; and
(e) cycling cooled liquid working fluid from (d) to (a) for compression.」
訳:「6.熱源からの熱を、以下を含む超臨界サイクルを用いて機械エネルギーに変換する請求項2に記載の方法。
(a)作動流体を、その臨界圧力以上の圧力からより高い圧力まで圧縮する。
(b)熱源から供給される熱を用いて、(a)から圧縮された作動流体を加熱する。
(c)(b)から加熱された作動流体を膨張させて、作動流体の圧力をその臨界圧力より高い圧力まで下げ、機械エネルギーを発生させる。
(d) (c)から膨張した作動流体を冷却して、冷却された、その臨界圧力以上の作動流体を形成する。そして
(e)冷却された液体作動流体を(d)から(a)へ循環させて圧縮する。」

第5 対比及び判断
1 本願発明7について
先ず、本願発明7から検討する。
本願発明7と引用発明とを対比すると、引用発明の「ランキンサイクル発電システム」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本願発明7の「有機ランキン装置」に相当する。
引用発明の
「作動媒体が、炭素数1〜2のフッ化炭化水素及び炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種を含有し、炭素数1〜2のフッ化炭化水素が、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物であり、炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素が、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物である」と、
本願発明7の
「E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2,2−テトラフルオロエタンからなる作動流体を含み、前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、合計40〜65重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる」とは、
「作動流体を含む」
という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「作動流体を含む、有機ランキン装置。」

〔相違点〕
「作動流体」に関して、本願発明7においては、「E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2,2−テトラフルオロエタンからなる作動流体を含み、前記作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、合計40〜65重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなる」のに対して、引用発明においては、「炭素数1〜2のフッ化炭化水素及び炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種を含有し、炭素数1〜2のフッ化炭化水素が、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物であり、炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素が、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物である」点。

上記相違点について検討する。
本願発明7は、上記相違点に係る発明特定事項を有することにより、「多くの現用作動流体に比べて比較的低いGWPを依然として実現しながら、不燃性(ASHRAE規格34に従って)及びHFO−1234ze−Eよりも高い容積をもたらす」(明細書段落【0154】及び【0157】)ものであるところ、引用文献1には、上記相違点に係る発明特定事項のような組み合わせ及び混合比とすることについて、具体的な記載も示唆もない。
引用文献2記載事項は、ヒートポンプの作動流体に関するものであって、ランキンサイクルの作動流体に関するものではない。
引用文献3記載事項は、トランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)並びに1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)を含んでなる組成物が、ヒートポンプの組成物としても、ランキンサイクルの組成物としても用いることができることを示すが、その組成が、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)を含んでいて、1,1,2,2‐テトラフルオロエタン(R‐134)を含んでいないという点で、引用文献2記載事項の作動流体とは異なるものである。
したがって、引用発明において、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を参照して、炭素数1〜2のフッ化炭化水素として1,1,2,2−テトラフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを選択し、炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素としてE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを選択し、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、合計40〜65重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンとからなる作動媒体として、上記相違点に係る本願発明7の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
引用文献4は、亜臨界サイクル、遷移臨界サイクル及び超臨界サイクルの動作を開示するものであって、上記相違点に係る本願発明7の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
また、他に、上記相違点に係る本願発明7の発明特定事項が、周知の技術又は設計的事項であることを示す証拠や根拠はない。
したがって、本願発明7は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び引用文献4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明1ないし6及び9ないし11について
本願発明1は、有機ランキン装置で熱源からの熱を機械エネルギーに変換する方法であるところ、該有機ランキン装置の作動流体が、35〜60重量パーセントのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、合計40〜65重量パーセントの1,1,2,2−テトラフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、からなることが特定されているから、実質的に、本願発明7の発明特定事項を全て含んでいる。
本願発明2ないし6及び9ないし11は、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、実質的に、本願発明7の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本願発明7に対して述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び引用文献4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明8及び12ないし14について
本願発明8及び12ないし14は、本願発明7を引用するものであるから本願発明7の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本願発明7に対して述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び引用文献4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-14 
出願番号 P2019-177023
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 沼生 泰伸
鈴木 充
発明の名称 テトラフルオロプロペン及びテトラフルオロエタンを含む組成物、動力サイクルにおけるその使用、並びに動力サイクル装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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