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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B66C
管理番号 1386072
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-04 
確定日 2022-07-05 
事件の表示 特願2020−118385「報知装置及び移動システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月15日出願公開、特開2020−169100、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月23日に出願された特願2015−11317号の一部を令和2年7月9日に新たな特許出願としたものであって、令和2年7月13日に手続補正がされ、令和3年4月16日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年6月14日に手続補正がされ、令和3年7月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年7月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1 理由1について
本願は、請求項1の「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニット」の記載が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2について
本願は、請求項1の「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニット」及び「前記制御ユニットから前記動作情報を取得する動作情報取得ユニット」の記載が発明の詳細な説明に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 理由3について
本願の請求項1〜3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1:特開2008−143613号公報
引用文献2:特開昭58−11865号公報

第3 本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、令和3年6月14日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
モータの駆動力により移動体を直線の軌道に沿って移動可能な本体ユニット、及び操作入力に応じて前記モータを制御し、前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニットを備えるクレーンに用いられる報知装置であって、
前記制御ユニットから前記動作情報を取得する動作情報取得ユニットと、
前記モータが回転中である場合は、前記モータが停止中である場合とは異なる態様の報知を行う報知ユニットと、
を備えることを特徴とする報知装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、インバータを用いて前記モータを制御し、前記動作情報取得ユニットは、前記インバータから前記動作情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の報知装置と、前記クレーンと、を備えることを特徴とする移動システム。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、上記引用文献1には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

「【0001】本発明は、火力発電所工場内の天井軌道に走行可能に設けられた天井クレーンを運転する運転席を有し、運転者が制御器を操作して天井クレーンを運転する際の誤操作を防止する天井クレーン誤操作防止装置に関する。」

「【0002】一般に天井クレーンは工場の両側の柱等に設けられた安定性のあるランウエイのレールの上又はレールに懸垂されて走行するクレーンガータにトロリと呼ばれる台車を載置して、このクレーンガータ上をトロリが走行する。このトロリにはフックが昇降自在に設けられる。」

「【0003】天井クレーンを運転するには、運転席から操作ハンドルを操作し、フックによって吊荷を吊り上げ(巻上げ)て、クレーンガータとトロリの移動により吊荷を所望位置に運搬(横行、走行)する。」

「【0004】天井クレーンを停止させるには、操作ハンドルを操作し、電磁接触器を遮断するとモータの電源が遮断され、駆動トルクが喪失する。駆動トルクが喪失すると、電磁ブレーキの保持コイルの電源が遮断されブレーキシューが締めつけられモータが停止する。モータが停止すると、天井クレーンは徐々に減速して停止に至る(特許文献1参照)。」

「【0006】しかしながら天井クレーンを使用した重量物の運搬作業では、時として、運転者の操作ミスにより吊り荷を損傷させるトラブルが発生することがある。即ち、運転者の慣れにより、クレーンの動きと操作ハンドルの感触によって、操作ハンドルを停止位置である0ノッチ位置へ戻したと判断してしまい、吊り荷が動いて損傷させるという問題があった。」

「【0007】本発明は、上記問題に鑑みて、運転者に光や音で天井クレーンの動作状態を知らせることにより誤操作を防止することを目的とする。」

「【0008】上記目的を達成するため、請求項1の天井クレーン誤操作防止装置は、工場内の天井軌道に走行可能に設けられた天井クレーンを運転する運転席を有し、運転者が制御器を操作して天井クレーンを運転するにあたり、前記制御器の操作ハンドルのノッチ位置が前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段と前記検出手段の検出結果を光及び/又は音で報知する報知手段を有することを特徴とするものである。」

「【0009】また、請求項2の天井クレーン誤操作防止装置は、請求項1記載の天井クレーン誤操作防止装置であって、検出手段は、天井クレーンを初期の位置から巻上げ・走行・横行作動させる電動モータと天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動によって所定の位置に達したときに停止させる電磁ブレーキといづれか一方の負荷電流を検出する電流検出器とにより構成したことを特徴とするものである。」

「【0010】また、請求項3の天井クレーン誤操作防止装置は、請求項1記載の天井クレーン誤操作防止装置であって、報知手段は、電流検出器と一体構成されたモータリレーの動作により接点信号を出力する補助リレーと補助リレーの接点信号により導通する表示灯及び/又は報知器とにより構成したことを特徴とするものである。」

「【0011】本発明の天井クレーン誤操作防止装置によれば、工場内の天井軌道に走行可能に設けられた天井クレーンを運転する運転席を有し、運転者が制御器を操作して天井クレーンを運転するにあたり、前記制御器の操作ハンドルのノッチ位置が前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段と前記検出手段の検出結果を光及び/又は音で報知する報知手段を有することにより運転者に光や音で天井クレーンの動作状態を知らせることにより誤操作を防止することができる。」

「【0013】先ず、本発明の基本原理とその動作について、図1?図2を参照しながら説明する。図1は本発明の天井クレーン誤操作防止装置の基本原理を示した回路図で、1は天井クレーンのクレーン動作を制御する主回路で、ノーヒューズブレーカ11、制御器の操作ハンドル接点12、天井クレーンを初期の位置から巻上げ・走行・横行作動させる電動モータ13、天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動によって所定の位置に達したときに停止させる電磁ブレーキ14、負荷抵抗15から構成される。」

「【0014】2は天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段で、電磁ブレーキ14の負荷電流を検出する変流器21、変流器21と一体構成されたモータリレー22、モータリレー22のリレー接点23から構成される。」

「【0015】3は制御器側の制御回路で、ノーヒューズブレーカ31、モータリレー22の動作により接点信号を出力する補助リレー32、補助リレー32のリレー接点33、表示灯34、報知器35から構成される。」

「【図1】



「【0016】図2は天井クレーンを操作する制御器4の外観を示す側面図(a)、上面図(b)で、クレーン動作を制御する操作ハンドル41、操作ハンドル41のノッチ位置を光と音で報知する表示灯42、報知器43を有する。」

「【0017】この天井クレーンを初期の位置から巻上げ・走行・横行作動させるにあたり、天井クレーンを操作する運転席で運転者がクレーン動作を制御する操作ハンドル41を操作する。天井クレーンを運転中は操作ハンドル41の操作ハンドル接点12が閉成され電動モータ13に電流が流れクレーンが動作する。」

「【0018】電動モータ13に電流が流れると同時に電磁ブレーキ14にも電流が流れ、その負荷電流を変流器21で検出すると変流器21と一体構成されたモータリレー22が動作してリレー接点23を閉成する。リレー接点23の閉成により補助リレー32に電流が流れ、補助リレー32は接点信号を出力する。補助リレー32の接点信号によりリレー接点33を閉成し表示灯34、報知器35を導通させ、光と音、又光と音のどちらか一方で天井クレーンの作動状態を報知する。」

「【0019】天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動によって所定の位置に達したときに停止させるにあたり、操作ハンドル41のノッチ位置を0ノッチ位置へ戻すと操作ハンドル41の操作ハンドル接点12が開成され電磁ブレーキ14に電流が流れなくなるのでブレーキが動作し天井クレーンは停止する。」

「【0020】電磁ブレーキ14に電流が流れなくなると変流器21と一体構成されたモータリレー22は動作せずリレー接点23を開成する。リレー接点23が開成すると補助リレー32に電流が流れなくなるのでリレー接点33が開成し表示灯34、報知器35は動作を停止し、天井クレーンの停止状態を報知する。」

「【図2】



上記記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「工場内の天井軌道に走行可能に設けられた天井クレーンを運転する運転席を有し、運転者が制御器4を操作して天井クレーンを運転する際の誤操作を防止する天井クレーン誤操作防止装置であって、前記天井クレーンは、ランウエイのレール上を走行するクレーンガータと、前記クレーンガータ上を走行するトロリを有し、前記クレーンガータと前記トロリを走行・横行作動させるものであり、
前記天井クレーンのクレーン動作を制御する主回路1と、前記制御器4の操作ハンドル41のノッチ位置に基づき前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果を報知する報知手段とを有する、天井クレーン誤操作防止装置において、
前記主回路1は、前記制御器4の操作ハンドル接点12と、前記天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動させる電動モータ13と、前記天井クレーンを停止させる電磁ブレーキ14とを有し、
前記検出手段は、前記電磁ブレーキ14の負荷電流を検出する変流器21により構成するとともに、前記報知手段は、前記変流器21と一体構成されたモータリレー22の動作により接点信号を出力する補助リレー32と、前記補助リレー32の接点信号により導通する表示灯34及び報知器35とにより構成し、
運転者が前記操作ハンドル41を操作すると、前記操作ハンドル接点12が閉成されて前記電動モータ13に電流が流れて前記天井クレーンが動作し、前記電動モータ13に電流が流れると同時に前記電磁ブレーキ14にも電流が流れ、その負荷電流を前記変流器21で検出すると、前記モータリレー22が動作して天井クレーンの作動状態を報知し、
前記操作ハンドル41を0ノッチ位置へ戻すと、前記操作ハンドル接点12が開成されて前記電磁ブレーキ14に電流が流れなくなり、前記電磁ブレーキ14が動作して前記天井クレーンは停止するとともに、前記モータリレー22は動作せず前記天井クレーンの停止状態を報知する、
天井クレーン誤操作防止装置。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、上記引用文献2には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。
(1)1ページ左欄4〜9行
「2.特許請求の範囲
(1) インダクシヨンモータの惰性回転時の誘起電圧を検出する手段と、検出された誘起電圧が0vとなつた時に停止信号を出力する手段とを備えてなるインダクシヨンモータの回転停止検出装置。」

(2)1ページ左欄11行〜右欄10行
「本発明は、インダクシヨンモータの回転が停止したことを確実に検出できるようにした装置に関するものである。
インダクシヨンモータの回転方向を正逆切換制御する場合には、モータの回転が完全に停止した後に正転→逆転、又は逆転→正転への切替を行なう必要がある。即ち、インダクシヨンモータの回転方向を切替える時は制御スイッチ等を停止操作しようともモータ自身は惰性で回転し続けている。従つて、停止操作を行なつた後に直ちに逆転起動を行なうと、過大な起動電流が流れ、例えば、トランジスタインバータ制御等ではトランジスタのデツドシヨートを起す危険がある。
このような危険を回避するために、従来ではインダクシヨンモータの回転軸にタコジエネレータ又はパルスジエネレータを取り付け、これらジエネレータの出力を介してインダクシヨンモータの停止を検出するようにしていたが、この場合には装置が大型化する欠点があつた。」

(3)1ページ右欄11〜16行
「本発明は上記に鑑みてなされたものであつて、モータが惰性回転すると供給線に誘導電圧が発生することに着目し、この誘導電圧を検知してモータの回転停止に同期して停止信号を出力するようにしたインダクシヨンモータの回転停止検出装置を提供するものである。」

(4)2ページ右上欄7行〜左下欄10行
「即ち、インバータを構成するすべてのトランジスタTr1、Tr2…Tr6がオフとなつてインダクシヨンモータI.Mが回転している時、つまりモータI.Mが惰性回転している時は供給線U、V、Wに誘起電圧が発生する。又、二本の供給線V、W間には電位差が生じるので、モータが惰性回転している時は、この回転数に応じた電圧がアイソレーシヨンアンプI.AからゲートスイツチSWを介してゼロクロスアンプAに供給される。
すると、ゼロクロスアンプAの出力によつてツエナZDの順方向電圧0.6V程度になつているためトランジスタTrがオフし、リレーRYが消磁保持されるので前記トランジスタTr1、 Tr2…Tr6の制御回路が停止状態にインターロツクされる。
そして、惰性回転が停止して誘起電圧が0vとなると、アイソレーシヨンアンプI.Aの出力がツエナーZDのツエナー電圧になり、トランジスタTrがオンされるので、リレーRYが励磁されてインターロツクが解除される。従つて、モータI.Mが完全に停止した後でないとモータI.Mの回転方向の変換にともなう再起動が不能になり、起動電流の過大が予防される。」

(5)2ページ左下欄17行〜右上欄2行
「尚、実施例では、インダクシヨンモータI.Mが完全に停止した時にインターロツクを解除するようにしたものであるが、必ずしも実施例に限定されるものではなく、停止したことをランプ、ブザー又はデイスプレイ等で表示するようにしても良い。」

(6)2ページ右下欄3〜8行
「以上説明したように本発明によれば、従来のようにタコジエネレータ又はパルスジエネレータ等のような装置を付加することなく、供給線に誘起される電圧値を介してインダクシヨンモータの回転状態を検出するようにしたものであるから、装置が小型化すると共に安価となる。」

(7)第1図




第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「工場内の天井軌道」及び「ランウエイのレール」、「天井クレーン」、「制御器4」、「クレーンガータ」及び「トロリ」、「表示灯34及び報知器35」及び「報知手段」、「電動モータ13」、は、それぞれ本願発明1の「直線の軌道」、「クレーン」、「制御ユニット」、「移動体」、「報知ユニット」、「モータ」に相当する。

イ 上記アによれば、引用発明の「工場内の天井軌道に走行可能に設けられ」かつ「ランウエイのレール上を走行するクレーンガータと、前記クレーンガータ上を走行するトロリを有し、前記クレーンガータと前記トロリを走行・横行作動させる」「天井クレーン」の「工場内の天井軌道」、「ランウエイのレール」、「クレーンガータ」及び「トロリ」を合わせた構成は、本願発明1の「モータの駆動力により移動体を直線の軌道に沿って移動可能な本体ユニット」に相当する。

ウ 引用発明の「前記天井クレーンのクレーン動作を制御する主回路1」及び「前記制御器4の操作ハンドル接点12と、前記天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動させる電動モータ13と、前記天井クレーンを停止させる電磁ブレーキ14とを有」する「前記主回路1」は、制御器4の制御ハンドル41のノッチ位置に基づき電動モータ13を制御するものであるから、上記アの「制御器4」と同様に、本願発明1の「制御ユニット」に相当する。

エ 上記ア及びウによれば、引用発明の「天井クレーンを運転する運転席を有し、運転者が制御器4を操作して天井クレーンを運転する際」に「前記天井クレーンのクレーン動作を制御する主回路1」の「電動モータ13」に対して「前記天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動させる」ことは、本願発明1の「操作入力に応じて前記モータを制御」することに相当する。

オ 上記ア、ウ及びエによれば、引用発明の「前記制御器4の操作ハンドル41のノッチ位置に基づき前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する」ために、「運転者が前記操作ハンドル41を操作すると、前記操作ハンドル接点12が閉成されて…前記電動モータ13に電流が流れると同時に前記電磁ブレーキ14にも電流が流れ」る状態、及び、「前記操作ハンドル41を0ノッチ位置へ戻すと、前記操作ハンドル接点12が開成されて前記電磁ブレーキ14に電流が流れなくなり、前記電磁ブレーキ14が動作して前記天井クレーンは停止する」状態を実現することは、本願発明1の「制御ユニット」が「前記モータの」「動作情報を出力する」ことに相当する。

カ 上記ア、ウ〜オによれば、引用発明の「前記制御器4の操作ハンドル41のノッチ位置に基づき前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段」及び「前記電磁ブレーキ14の負荷電流を検出する変流器21により構成する」「前記検出手段」は、本願発明1の「前記制御ユニットから前記動作情報を取得する動作情報取得ユニット」に相当する。

キ 上記ア、ウ〜カによれば、引用発明の「前記検出手段の検出結果を報知する報知手段」及び「前記変流器21と一体構成されたモータリレー22の動作により接点信号を出力する補助リレー32と、前記補助リレー32の接点信号により導通する表示灯34及び報知器35とにより構成」され「その負荷電流を前記変流器21で検出すると、前記モータリレー22が動作して天井クレーンの作動状態を報知し」「前記モータリレー22は動作せず前記天井クレーンの停止状態を報知する」「前記報知手段」は、本願発明1の「前記モータが回転中である場合は、前記モータが停止中である場合とは異なる態様の報知を行う報知ユニット」と、「前記モータの動作情報に基づく態様の報知を行う報知ユニット」の限りで一致する。

ク 上記ア〜キによれば、引用発明の「工場内の天井軌道に走行可能に設けられた天井クレーンを運転する運転席を有し、運転者が制御器4を操作して天井クレーンを運転する際の誤操作を防止する天井クレーン誤操作防止装置」であって「前記制御器4の操作ハンドル41のノッチ位置に基づき前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果を報知する報知手段とを有する、天井クレーン誤操作防止装置」は、本願発明1の「モータの駆動力により移動体を直線の軌道に沿って移動可能な本体ユニット、及び操作入力に応じて前記モータを制御し、前記モータの」「動作情報を出力する制御ユニットを備えるクレーンに用いられる報知装置であって、前記制御ユニットから前記動作情報を取得する動作情報取得ユニットと、前記モータ」の動作情報に基づく「態様の報知を行う報知ユニットと、を備える」「報知装置」に相当する。

以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「モータの駆動力により移動体を直線の軌道に沿って移動可能な本体ユニット、及び操作入力に応じて前記モータを制御し、前記モータの動作情報を出力する制御ユニットを備えるクレーンに用いられる報知装置であって、
前記制御ユニットから前記動作情報を取得する動作情報取得ユニットと、
前記モータの動作情報に基づく態様の報知を行う報知ユニットと、
を備える報知装置。」

[相違点]
本願発明1は、制御ユニットが出力し、かつ、動作情報取得ユニットが取得する「モータの動作状態」が「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報」であり、報知ユニットが行う報知の態様が「前記モータが回転中である場合は、前記モータが停止中である場合とは異なる態様」であるのに対して、
引用発明は、検出手段たる変流器21で検出される情報が「電動モータ13に電流が流れると同時に」流れる「電磁ブレーキ14の負荷電流」であり、報知手段が報知する態様が「天井クレーンの作動/停止状態」であって、電動モータ13の回転数の情報を検出して、当該回転数の情報に基づく報知を行っていない点。

(2)相違点の判断
ア 引用文献2に「モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報」が示されていること
上記相違点に係る本願発明1の構成に関しては、引用文献2には、上記第4の2に示したとおり、「インダクシヨンモータの惰性回転時の誘起電圧を検出する手段と、検出された誘起電圧が0vとなつた時に停止信号を出力する手段とを備えてなるインダクシヨンモータの回転停止検出装置」、「本発明は、インダクシヨンモータの回転が停止したことを確実に検出できるようにした装置に関するものである。」、「モータI.Mが惰性回転している時は供給線U、V、Wに誘起電圧が発生する」、「惰性回転が停止して誘起電圧が0vとなる」、「インダクシヨンモータI.Mが完全に停止した時に…停止したことをランプ、ブザー又はデイスプレイ等で表示する」等の記載がある。
ここで、引用文献2の上記「検出された誘起電圧が0vとなつた…停止信号」は、インダクションモータの惰性回転が停止したことを示すものであるから、上記相違点に係る本願発明1の構成中、「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報」に相当する。
そうすると、引用文献2には、上記の「インダクシヨンモータI.Mが完全に停止した時に…停止したことをランプ、ブザー又はデイスプレイ等で表示する」の記載があるから、同構成中、報知ユニットが報知する態様につき「前記モータが停止中である場合」の「態様」が示されているといえる。

イ 引用文献2の技術的事項はインダクションモータを前提としたものであること
しかしながら、引用文献2の上記アの技術的事項は、上記第4の2(2)、(3)及び(6)等で示した記載に照らせば、動作情報の検出対象たるモータが「インダクシヨンモータ」であることを前提としたものであると認められる。

ウ 組み合わせの動機付けがないこと
一方、引用発明については、「天井クレーンを巻上げ・走行・横行作動させる電動モータ13」がインダクションモータであることの特定はなく、引用文献1には、「電動モータ13」がインダクションモータであることを示唆する記載もない(上記第4の(1)参照)。
また、上記第4の1のとおり、引用文献1の段落【0006】には、天井クレーンを使用した重量物の運搬作業の問題点として、運転者の慣れにより、クレーンの動きと操作ハンドルの感触によって、操作ハンドルを停止位置である0ノッチ位置へ戻したと判断してしまい、吊り荷が動いて損傷させることが挙げられており、同【0007】には、かかる問題点に鑑みて、発明の目的として、「運転者に光や音で天井クレーンの動作状態を知らせることにより誤操作を防止することを目的とする」ことが記載されている。
そして、かかる目的に照らすと、引用発明が「前記制御器4の操作ハンドル41のノッチ位置に基づき前記天井クレーンの作動/停止状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果を報知する報知手段とを有する、天井クレーン誤操作防止装置」との構成を採用することによって、当該目的が既に達成されていることから、上記報知手段が検知する「天井クレーンの作動/停止状態」について、更に電動モータ13の回転数の情報を追加的に検出して、その検出結果に基づいて報知態様を変更する動機付けはないといえる。
以上のとおり、引用発明には、引用文献2の上記アの技術的事項を組み合わせる動機付けはない。

エ 本願発明1の作用効果は格別のものであること
そして、本願発明1は、上記相違点に係る「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニットを備え」「前記モータが回転中である場合は、前記モータが停止中である場合とは異なる態様の報知を行う報知ユニットと」を備える構成を有することにより、「移動装置の操作者は、例えば、モータの停止を指示する操作入力を行った後でも、モータが動作中(すなわち移動体が移動中)であれば、容易にそのことを知ることができ、操作者の安全性が向上する」という格別の作用効果を奏するものといえる(本願明細書の段落【0006】を参照。)。

(3)小括
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3については、本願発明1の下位概念発明であって、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1の「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニット」の記載は、不明確であるとはいえない。
すなわち、「コントローラに移動停止の操作入力をしても、フックやそれに吊り下げられた物品はすぐには停止しないことがある。このため、移動停止の操作入力後でも、フックや物品が操作者に接触するおそれがある…点に鑑み…移動装置に関する安全性を高めることができる報知装置及び移動システムを提供する」(本願明細書【0004】)という課題に照らして、当該課題を解決する手段としては「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニット」が発明特定事項として特定されていれば十分である。そうすると、モータの回転数を検出する構成及び機能が発明特定事項として特定されていないことをもって、請求項1の上記記載が不明確であるとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

2 理由2(特許法第36条第6項第1号)について
請求項1の「前記モータの回転数が0であるか否かを表す動作情報を出力する制御ユニット」及び「前記制御ユニットから前記動作情報を取得する動作情報取得ユニット」の記載については、審判請求書3ページ10行〜4ページ8行の主張(本願明細書の段落【0028】及び【0032】には、制御ユニット31が「モータが動作中である(回転数が0ではない)か停止中であるかを表す情報」である動作情報を報知装置1の動作情報取得ユニット5に出力することが、同【0039】、【0042】及び【0043】には、そのことによる効果として「操作者の安全性が向上する」ことが、それぞれ記載されている。)を踏まえると、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。したがって、原査定を維持することはできない。

3 理由3(特許法第29条第2項)について
上記第5の1及び2のとおり、本願発明1〜3は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-17 
出願番号 P2020-118385
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B66C)
P 1 8・ 537- WY (B66C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 尾崎 和寛
平瀬 知明
発明の名称 報知装置及び移動システム  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
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