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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1386099
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-16 
確定日 2022-03-31 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6716190号発明「長尺位相差フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6716190号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−6〕について訂正することを認める。 特許第6716190号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6716190号の請求項1〜請求項6に係る特許(以下「本件特許」と総称する。)についての出願は、平成26年8月7日(先の出願に基づく優先権主張 平成25年8月9日)を出願日とするものであって、令和2年6月12日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和2年7月1日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和2年12月16日に特許異議申立人 栗 暢行(以下「特許異議申立人」という。)から、全請求項に対して、特許異議の申立てがされた(異議2020−700981号、以下「本件事件」という。)。
本件事件についての、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和3年 3月31日付け:取消理由通知書
令和3年 6月 3日付け:訂正請求書
令和3年 6月 3日付け:意見書(特許権者)
令和3年 7月12日付け:意見書(特許異議申立人)
令和3年 8月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年11月22日付け:訂正請求書
令和3年11月22日付け:意見書(特許権者)
令和3年12月21日付け:意見書(特許異議申立人)

なお、令和3年6月3日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。


第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
令和3年11月22日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第6716190号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1〜6のとおり訂正することを求める、というものである。

(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「以下の(1)〜(6)及び(8)の工程をこの順に有する」とあるのを、
「以下の(1)〜(6)及び(8)の工程をこの順に有し、前記長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により(1)〜(6)の工程を連続的に行うことにより製造される、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜6も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「(1)長尺基材に光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程」とあるのを、「(1)長尺基材に、シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜6も同様に訂正する)。

ウ 一群の請求項について
本件訂正請求は、訂正前の一群の請求項である請求項1〜請求項6に対して請求されたものである。なお、本件訂正請求において、別の訂正単位とする求めはなされていない。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「長尺位相差フィルム」が「Roll to Roll形式により(1)〜(6)の工程を連続的に行うことにより製造される」ことを特定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項追加
本件特許の願書に添付した図1の説明として、本件特許の願書に添付した明細書の【0114】、【0117】、【0118】、【0119】、【0120】、【0121】及び【0122】には、それぞれ、「本発明の長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により連続的に製造するのが好ましい。」、「前記第1ロール210から巻き出された長尺基材は、塗布装置211Aを通過する際に、その表面上に塗布装置211Aにより光配向膜形成用組成物が塗布される」、「塗布装置211Aを通過して第1塗布膜が形成された長尺基材は、乾燥炉212Aへ搬送され、乾燥炉212Aによって第1塗布膜が乾燥されて第1乾燥被膜が形成される」、「得られた前記第1乾燥被膜に、偏光照射装置213Aによって偏光を照射することにより、長尺光配向膜が得られる。その際、長尺基材の長尺方向D1に対して、光配向膜の配向規制力の方向D2が斜めとなるように偏光を照射する」、「長尺光配向膜が形成された長尺基材は、塗布装置211Bを通過する。塗布装置211Bによって、前記長尺光配向膜上に液晶硬化膜形成用組成物が塗布され、第2塗布膜が形成される。その後、乾燥炉212Bを通過することにより、第2乾燥被膜が形成される」、「前記乾燥炉212Bを通過することにより、液晶硬化膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物が液晶相を形成する。第2乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物が液晶相を形成した状態で、偏光照射装置213Bによって光を照射することにより、該重合性液晶化合物は液晶相を保持したまま重合して、位相差膜が形成さる」及び「かくして得られた長尺位相差フィルムは、第2の巻芯220Aに巻き取られ、第2ロール220の形態が得られる」と、記載されている。訂正事項1による訂正は、これらの記載及び本件特許の願書に添付した図1に基づくものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてした訂正である。

ウ 拡張又は変更
訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされたものが訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1における「光配向膜形成用組成物」を「シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物」に限定するものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項追加
本件特許の願書に添付した明細書の【0015】には「光配向膜形成用組成物は、光反応性基を有するポリマー又はモノマー、及び、溶剤を含有する。」との記載があり、【0018】には「光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。」との記載がある。
したがって、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。

ウ 拡張又は変更
訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされたものが訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

3 まとめ
以上より、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6716190号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕のとおり訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の請求項1〜請求項6に係る発明(以下、総称して「本件特許発明」という。また、請求項の番号とともに「本件特許発明1」などという。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
プラスチック基材である長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、下記式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層されている長尺円偏光板を製造する方法であり、
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
以下の(1)〜(6)及び(8)の工程をこの順に有し、前記長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により(1)〜(6)の工程を連続的に行うことにより製造される、前記長尺円偏光板の製造方法。
(1)長尺基材に、シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、該長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°の角度で偏光を、照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めであり、かつ一様の配向パターンを有する膜厚10nm〜500nmの長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥すると共に加熱することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、膜厚1μm〜3μmの長尺位相差膜を形成する工程
(8)長尺位相差膜に長尺偏光フィルムを貼合する工程
【請求項2】
重合性液晶化合物が、下記式(A)で表される化合物である請求項1に記載の製造方法。


[X1は、酸素原子、硫黄原子またはNR1−を表わす。R1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表わす。
Q3およびQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR2R3または−SR2を表わすか、または、Q3とQ4とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに芳香環または芳香族複素環を形成する。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
D1およびD2は、それぞれ独立に、単結合、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR4R5−、−CR4R5−CR6R7−、−O−CR4R5−、−CR4R5−O−CR6R7−、−CO−O−CR4R5−、−O−CO−CR4R5−、−CR4R5−O−CO−CR6R7−、−CR4R5−CO−O−CR6R7−またはNR4−CR5R6−またはCO−NR4−を表わす。
R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。
G1およびG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH−に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1およびL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表わし、L1およびL2のうちの少なくとも一つは、重合性基を有する。]
【請求項3】
工程(5)において、長尺光配向膜が形成された長尺基材を長尺方向に搬送しながら乾燥すると共に加熱することにより第2乾燥被膜を形成する請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法により前記長尺円偏光板を得、得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(9)を施す、
長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板の製造方法。
(9)長尺基材を剥離する工程
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法により前記長尺円偏光板を得、得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(9)を施す、
長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板の製造方法。
(9)長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する工程
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法により前記長尺円偏光板を得、得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(10)を施す、円偏光板の製造方法。
(10)長尺円偏光板を枚葉状に切断する工程」


第4 当合議体が通知した取消しの理由及び証拠
1 取消しの理由
令和3年8月31日付け取消理由通知(決定の予告)により当合議体が通知した取消しの理由の概要は、以下のとおりである。

進歩性)本件特許の請求項1〜請求項6に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
甲2:特開2013−71956号公報

2 特許異議申立人の提出したその他の証拠について
特許異議申立人は、上記の他、以下の証拠も提出している。
甲1:特開2013−109220号公報
甲3:特開2006−243653号公報
甲4:特開2002−14233号公報
甲5:特表2010−507831号公報
甲6:特表2010−537955号公報
甲7:特表2013−509458号公報
甲8:特開2011−207765号公報
参考資料1:特開2013−33249号公報
参考資料2:特開2013−101328号公報
参考資料3:特開2013−33248号公報
参考文献:特開2013−148883号公報

3 特許権者の提出した証拠について
特許権者は、以下の証拠を提出している。
乙1:”2013年度 実施状況報告書 パーフルオロアルキル基の自己組織化による環境応答性ポリマーフィルムの創製”,[online],2015年5月28日,KAKEN 科学研究費助成事業データベース,[令和3年5月7日検索],インターネット<URL:https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-24550140/245501402013hokoku/>
乙2:三木定雄,“光応答性有機分子”,有機合成化学,公益社団法人有機合成化学協会,1986年11月1日,第44巻第11号(1986)、p.1095-1104
乙3:幡中伸行作成 実験成績証明書 2021年11月16日付け


第5 当合議体の判断
1 甲2の記載
本件特許の先の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2(特開2013−71956号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、甲2発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び光学フィルムに関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の組成物では、基材上に塗布する際に、その塗布条件によっては、塗布膜中で部分的に重合性液晶化合物の結晶化が生じる場合があった。そのため、該組成物は成膜性の点では改善の余地があった。」

(3)「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
〔1〕以下の(A)、(B)及び(C)を含む組成物。
(A)式(A)で表される化合物


[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR2R3又は−SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR4R5−、−CR4R5−CR6R7−、−O−CR4R5−、−CR4R5−O−CR6R7−、−CO−O−CR4R5−、−O−CO−CR4R5−、−CR4R5−O−CO−CR6R7−、−CR4R5−CO−O−CR6R7−又は−NR4−CR5R6−又は−CO−NR4−を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は−NH−に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]
(B)メルカプト基を有する化合物
(C)光重合開始剤」

(4)「【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成膜性に優れた光学フィルム製造用の組成物及び該組成物から形成される光学フィルムが提供できる。」

(5)「【発明を実施するための形態】
【0008】
1.組成物(以下、本発明の組成物を場合により、「本組成物」という)
本組成物は、式(A)で表される化合物(以下、場合により「化合物(A)」という)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む。本発明は、本組成物、本組成物を用いて形成される光学フィルム等を提供するものであり、以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。なお、図面中の寸法等は見易さのために任意になっている。
・・省略・・
【0232】
本組成物により形成される光学フィルムの波長分散特性は、本組成物が化合物(A)とともに液晶化合物(A’)を含むことにより制御できる。具体的には、光学フィルムに含まれる重合体(化合物(A)の重合体、又は化合物(A)と液晶化合物(A’)との(共)重合体)において、化合物(A)に由来する構造単位の含有量及び液晶化合物(A’)に由来する構造単位の含有量により所望の波長分散特性を有する光学フィルムを形成できる。光学フィルム中にある前記重合体の化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より逆波長分散特性を示す傾向がある。所望の波長分散特性を有する光学フィルムを形成するためには、化合物(A)に由来する構造単位の含有量が異なる本組成物を2〜5種類程度調製し、それぞれの本組成物について、同じ膜厚の光学フィルムを製造してその位相差値を求める。そして、結果から、化合物(A)に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
・・省略・・
【0240】
2.光学フィルム
続いて、本組成物から形成される光学フィルム(以下、場合により「本光学フィルム」という)について説明する。
本光学フィルムは、上述した本組成物に含まれる重合性成分を重合してなるものである。本光学フィルムは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムである。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。
【0241】
本光学フィルムは、可視光領域における透明性に優れ、様々な表示装置用部材として使用し得る。本光学フィルムの厚さは、本光学フィルムの用途のより適宜調節でき、例えば、その位相差値によって適宜調節すればよいが、0.1μm〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2μm〜5μmであることがさらに好ましい。
【0242】
表示装置に本光学フィルムを用いる場合、本光学フィルムは単層で用いることもできるし、本光学フィルム複数枚を積層させて積層体としてもよいし、他のフィルムと組み合わせてもよい。他のフィルムと組み合わせて用いることにより、位相差フィルム、視野角補償フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム及び輝度向上フィルム等に利用することができる。
・・省略・・
【0244】
2−1.位相差フィルム
光学フィルムの一種である位相差フィルムは本光学フィルムの好適な実施態様の一つである。該位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる。
・・省略・・
【0246】
前記位相差フィルムの位相差値は、用いられる表示装置により、30〜300nmの範囲から適宜選択すればよい。
前記位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いる場合は、Re(549)は113〜163nm、好ましくは130〜150nmに調整すればよい。広帯域λ/2板として用いる場合は、Re(549)は250〜300nm、好ましくは265〜285nmに調整すればよい。位相差値が前記の値であると、広範の波長の光に対し、一様に偏光変換できる傾向があり、好ましい。ここで、広帯域λ/4板とは、各波長の光に対し、その1/4の位相差値を発現する位相差フィルムであり、広帯域λ/2板とは、各波長の光に対し、その1/2の位相差値を発現する位相差フィルムである。ここでいうReについては後述する。
【0247】
なお、本組成物中の化合物(A)及び液晶化合物(A’)の含有量を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。得られる位相差フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(4)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを適宜調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (4)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0248】
2−2.本光学フィルムの製造方法
本光学フィルムは、適当な基材を準備し、該基材上に本組成物を塗布し、乾燥し、本組成物に含まれる化合物(A)を、又は化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合することにより製造することができる。以下、本光学フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0249】
2−2−0.基材の準備
本光学フィルムの製造に用いることができる基材としては例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルムが好ましい。前記透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0250】
なお、かかる基材の本組成物を塗布する面には、配向膜が形成されていてもよい。
【0251】
2−2−1.未重合フィルムの作製
基材の上に、本組成物を塗布することにより、該基材上に未重合フィルムが得られる。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。
【0252】
基材上への塗布方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAP(キャップ)コーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法及びバーコーターによる塗布等が挙げられる。中でも、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法及びバーコーターによる塗布が好ましい。本組成物によれば、上記いずれの塗布方法によって未重合フィルムを形成しても、該未重合フィルム中で、本組成物の構成成分(化合物(A)等の重合性液晶化合物等)が結晶化することを良好に防止できる。
【0253】
本光学フィルムは、前記基材と積層した状態で使用してもよい。本光学フィルムに前記基材を積層しておくことで、フィルムの運搬、保管等を行う際に、本光学フィルムが破損することが抑制され、容易に取り扱うことができる。
・・省略・・
【0255】
配向膜を形成する方法としては、ラビングによって配向規制力が付与される配向性ポリマーを用いる方法(以下、場合により「ラビング法」という)、偏光を照射することにより配向規制力が付与される光配向性ポリマーを用いる方法(以下、場合により「光配向法」という)、基板表面に酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、及びラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法等が挙げられる。中でも、本組成物に含まれる化合物(A)の配向均一性、本光学フィルム製造の処理時間及び処理コストの観点から、ラビング法及び光配向法が好ましく、光配向法がより好ましい。配向膜としては、その上に本組成物を塗布しても、本組成物に含まれる成分、例えば、本組成物に含まれる溶剤に溶解しない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。また、該配向膜には、前記未乾燥フィルムからの溶剤の除去や、化合物(A)や液晶化合物(A’)の液晶配向時の熱処理に対する耐熱性、下地である基材に対しての密着性を有することも求められる。
・・省略・・
【0257】
配向膜が光配向法によって形成される場合、光配向法に用いられる光配向性ポリマーとしては、感光性構造を有するポリマーが挙げられる。感光性構造を有するポリマーに偏光を照射すると、照射された部分の感光性構造が異性化又は架橋することで光配向性ポリマーが配向し、光配向性ポリマーからなる膜に配向規制力が付与される。上記感光性構造としては、例えば、アゾベンゼン構造、マレイミド構造、カルコン構造、桂皮酸構造、1,2−ビニレン構造、1,2−アセチレン構造、スピロピラン構造、スピロベンゾピラン構造及びフルギド構造等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。これらのポリマーは、感光性構造を有する単量体を用いて、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等により得ることができる。また、異なる感光性構造を有する単量体を複数種用い、それらの共重合体であってもよい。このような光配向性ポリマーとしては、特許第4450261号、特許第4011652号、特開2010−49230号公報、特許第4404090号、特開2007−156439号公報、特開2007−232934号公報等に記載される光配向性ポリマーが挙げられる。
【0258】
基材上に配向膜を形成するためには、上記配向性ポリマー及び光配向性ポリマーは、溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)とし、該配向膜形成用組成物を該基材上に塗布する方法が簡便で好ましい。
・・省略・・
【0259】
配向膜形成用組成物から配向膜を形成するためには、上述のように、まず、前記基材上に、該配向膜形成用組成物を塗布する。塗布方法としては、すでに説明した本組成物を基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が採用できる。この場合も、ロールtoロール形式で連続的に基材上に本組成物を塗布できる方法が商業的生産の点では好ましい。
【0260】
続いて、配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去する。
【0261】
乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥又は減圧乾燥等、或いはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。具体的な乾燥温度としては、10〜250℃であることが好ましく、25〜200℃であることがさらに好ましい。また乾燥時間としては、用いた配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類にもよるが、5秒間〜60分間であることが好ましく、10秒間〜30分間であることがより好ましい。乾燥温度及び乾燥時間が上記範囲内であれば、前記の基材のいずれかを用いた場合、該基材に対する損傷を抑制することができる。
【0262】
かくして基材上に形成された配向膜形成用塗布膜に、すでに説明した方法により配向規制力を付与して配向膜を形成する。ここでは、配向規制力を付与する好ましい方法として例示したラビング法及び光配向法について詳述する。
・・省略・・
【0267】
次に、配向膜形成用塗布膜に対し、光配向法により配向規制力を付与する光配向法について説明する。
光配向法により配向規制力を付与するには、配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を行う。偏光照射は、例えば、特開2006−323060号公報に記載される装置を用いて行うことができる。例えば、配向膜形成用塗布膜上で、例えば所望の複数領域に対応したフォトマスクを準備し、当該領域毎にフォトマスクを介しての偏光照射(例えば、直線偏光紫外線)を繰り返し行うことにより、パターン化配向膜を形成することができる。上記フォトマスクとしては、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラスまたはポリエステルなどのフィルム上に、遮光パターンを設けたものが挙げられる。遮光パターンで覆われている部分は露光される光が遮断され、覆われていない部分は露光される光が透過される。熱膨張の影響が小さいため、フォトマスクに用いられる基材としては石英ガラスが好ましい。
【0268】
光配向法によってもパターン化配向膜を形成することができる。ここではその一例を挙げる。まず、配向膜形成用塗布膜(光配向性ポリマーを含む)に、第1のパターン領域に対応した空隙部を有する第1のフォトマスク(残りの領域は遮光パターンになっている)を介して、第1の偏光方向を有する第1の偏光を照射する(第1の偏光照射)。この第1の偏光照射によって、上記第1のパターン領域の配向規制力の方向を上記第1の偏光方向に対応させる。次いで、第2のパターン領域に対応した空隙部を有する第2のフォトマスク(残りの領域は遮光パターンになっている)を介して、上記第1の偏光方向とは異なる第2の偏光方向(例えば、第1の偏光方向に対して垂直な方向)を有する第2の偏光を照射する(第2の偏光照射)。この第2の偏光照射によって、上記第2のパターン領域12の配向規制力の方向を上記第2の偏光方向に対応させる。これにより、互いに配向規制力の方向が異なる複数のパターン領域を有する配向膜が得られる。さらに、3種類以上のフォトマスクを介して偏光照射を繰り返し行うことにより、互いに配向規制力の方向が異なる3つ以上のパターン領域を有するパターン化配向膜を作成することもできる。光配向性ポリマーの反応性の点で、各偏光照射とも、照射する光は紫外線であることが好ましい。
【0269】
かくして基材上に形成される配向膜又はパターン化配向膜の膜厚は、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。このような範囲とすれば、本組成物に含まれる液晶性成分(化合物(A)、液晶化合物(A’))を所望の角度に配向させることができる。
【0270】
2−2−2.未重合フィルムの重合
基材上又は配向膜上に形成された前記未重合フィルムに含まれる化合物(A)を、又は、未重合フィルムに含まれる化合物(A)と液晶化合物(A’)とを重合し、硬化させることにより、光学フィルムが得られる。光学フィルムは、化合物(A)の配向性が固定化されており、熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
・・省略・・
【0272】
基材上又は配向膜上に、本組成物を塗布した形成された未重合フィルムに対し、そのまま光照射を行って、該未重合フィルムを硬化することもできるが、該未重合フィルムを乾燥して、該未重合フィルムから溶剤を除去しておくことが好ましい。このようにして、未重合フィルムを乾燥した場合であっても、該未重合フィルム中で、本組成物の構成成分(化合物(A)等の重合性液晶化合物等)が結晶化することを良好に防止できる。
なお、溶剤の除去は、重合反応と並行して行ってもよいが、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておくことが好ましい。その除去方法としては、配向膜の形成方法において乾燥方法として例示したものと同じ方法が採用される。中でも、自然乾燥又は加熱乾燥が好ましく、自然乾燥又は加熱乾燥を行う際の温度は、0℃〜250℃の範囲が好ましく、50℃〜220℃の範囲がより好ましく、80℃〜170℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は、10秒間〜60分間が好ましく、より好ましくは30秒間〜30分間である。加熱温度および加熱時間が上記範囲内であれば、基材として、耐熱性が必ずしも十分ではないものを用いることができる。
【0273】
化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本光学フィルムとが積層されたフィルム(積層フィルム)が得られる。さらに、配向膜を剥離して、単層の本光学フィルムを得ることができる。また、他の基材(フィルム又は板)を、該積層フィルムに貼合しておいてから、本光学フィルムに積層されていた基材や配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる。
【0274】
3.偏光板
本光学フィルムは、例えば偏光板製造に用いることができる。当該偏光板は、上述した本光学フィルム(本光学フィルムが位相差フィルムである場合を含む)を少なくとも一つ有するものである。
この偏光板としては、図1(a)〜図1(e)に示すように、(1)本光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板4a(図1(a));(2)本光学フィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3を介して貼り合わされた偏光板4b(図1(b));(3)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを積層させ、さらに、本発明の本光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを積層させた偏光板4c(図1(c));(4)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本光学フィルム1’上に偏光フィルム層2を積層させた偏光板4d(図1(d));及び、(5)本光学フィルム1と、本光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板4e(図1(e))等が挙げられる。ここで接着剤とは、接着剤及び/又は粘着剤のことを総称するものである。なお、図1の説明では、光学フィルムとしては、本光学フィルムのみであってもよいし、本光学フィルムに配向膜が積層しているものであってもよいし、本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであってもよい。
【0275】
前記偏光フィルム層2は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
・・省略・・
【0280】
4−2.有機EL表示装置
有機EL表示装置としては、図3に示す有機EL表示装置等が挙げられる。上記有機EL表示装置としては、本発明の偏光板4と、有機ELパネル7とを、接着層5を介して貼り合わせてなる有機EL表示装置11が挙げられる。上記有機ELパネル7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。上記構成によれば、図示しない電極を用いて、有機ELパネルに電圧を印加することにより、有機ELパネルが有する発光層に含まれる化合物が発光し、白黒表示ができる。
なお、上記有機EL表示装置11において、偏光板4は、広帯域円偏光板として機能するものであることが好ましい。広帯域円偏光板として機能するものであると、有機EL表示装置11の表面において外光の反射を防止することができる。」

(6)「【実施例】
【0281】
・・省略・・
【0295】



(7)「【図1】



2 引用発明
引用文献1には、基材と配向膜を剥離した「単層の本光学フィルム」(【0273】)との記載、及び「図1の説明では、光学フィルムとしては」、「本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものであってもよい」(【0274】)との記載があることから、以下では表現を統一するため、基材と配向膜を含まないものを「単層の本光学フィルム」といい、単層の本光学フィルムに配向膜及び基材が積層しているものを「光学フィルム」ということとする。

(1)広帯域円偏光板の製造方法について
甲2の【0244】及び【0246】には、「光学フィルム」の実施態様の一つとして位相差フィルムがあり、位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いることが記載されている。また、甲2の【0274】には、光学フィルムと偏光フィルム層とを接着剤層を介して貼り合わせることにより、偏光板を製造することが記載され、甲2の【0280】には、偏光板として広帯域円偏光板として機能することが好ましいことが記載されている。
これらの記載によれば、甲2からは、光学フィルムが広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルムであり、該光学フィルムと偏光フィルム層とが接着剤層を介して貼り合わせられた広帯域円偏光板の製造方法を把握することができる。

(2)光学フィルムについて
甲2の【0232】の記載より、光学フィルムは、式(A)で示される化合物(A)により、逆波長分散特性を示すものである。また、甲2の【0246】の記載からは、位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いる際には、Re(549)を130nm〜150nmとすることを把握することができ、さらに、甲2の【0241】の記載からは、光学フィルムの厚さを0.2μm〜5μmとすることを把握できる。
さらに、甲2の【0250】及び【0253】には、それぞれ、「基材の本組成物を塗布する面には、配向膜が形成されていてもよい。」、「本光学フィルムは、前記基材と積層した状態で使用してもよい。」との記載がある。これらの記載からは、基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層されたものを使用することが把握できる。

(3)光学フィルムの製造方法について
甲2の【0248】〜【0273】には、光学フィルムの製造方法が記載され、甲2の【0255】には「本光学フィルム製造の処理時間及び処理コストの観点から、ラビング法及び光配向法が好ましく、光配向法がより好ましい。」との記載があり、配向膜の配向法として光配向法によることを把握できる。さらに、甲2の【0259】等の記載に接した当業者ならば、「光学フィルム」が「ロールtoロール形式」により製造されることを把握できる。

(4)上記(1)〜(3)より、甲2には、広帯域円偏光板の製造方法として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「光学フィルムは、逆波長分散特性を示し、Re(549)が130nm〜150nm、厚さが0.2μm〜5μmであり、広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルムであり、基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているものにおける光学フィルムと偏光フィルム層とが接着剤層を介して貼り合わせられた広帯域円偏光板の製造方法であって、
光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであり、以下の工程を有する広帯域円偏光板の製造方法。
光学フィルムの製造に用いることができる基材として、例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルムを準備し(【0248】、【0249】)、
基材上に、感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布し(【0257】〜【0259】)、
配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去し(【0260】)、
基材上に形成された配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射を行い、光配向法により配向規制力を付与して配向膜を形成し(【0262】、【0267】)、
基材上に形成される配向膜の膜厚は、10nm〜1000nmであり(【0269】)、
配向膜上に、以下の式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布して形成された未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておき(【0008】、【0272】)、
化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させ(【0273】)、
光学フィルムと偏光フィルム層とを、接着剤層を介して貼り合わせる。(【274】)
式(A)


[式(A)中、
X1は、酸素原子、硫黄原子又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表す。
Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR2R3又は−SR2を表すか、Q3及びQ4が互いに結合して、これらがそれぞれ結合する炭素原子とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR4R5−、−CR4R5−CR6R7−、−O−CR4R5−、−CR4R5−O−CR6R7−、−CO−O−CR4R5−、−O−CO−CR4R5−、−CR4R5−O−CO−CR6R7−、−CR4R5−CO−O−CR6R7−又は−NR4−CR5R6−又は−CO−NR4−を表す。
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は−NH−に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうち少なくとも一方が、重合性基を有する有機基である。]」

3 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。

ア 長尺基材
引用発明の「基材」は、「配向膜及び単層の本光学フィルムが積層」されるものであり、また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、長尺形状となっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「基材」は、本件特許発明1の「長尺基材」に相当する。

イ 長尺光配向膜
引用発明の「配向膜」は、「光配向法により配向規制力を付与して」「形成」されたものであり、また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、長尺形状となっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「配向膜」は、本件特許発明1の「長尺光配向膜」に相当する。

ウ 長尺位相差膜
引用発明の「光学フィルム」は、「広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルム」であることから、「単層の本光学フィルム」が位相差膜として機能していることは明らかであり、また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、「単層の本光学フィルム」も長尺形状となっていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「単層の本光学フィルム」は、本件特許発明1の「長尺位相差膜」に相当する。

エ 長尺位相差フィルム
引用発明の「光学フィルム」は「広帯域λ/4板として用いられる位相差フィルム」であることから、「単層の本基材に配向膜及び光学フィルムが積層しているもの」についても「位相差フィルム」としての特性を有するものと認められる。さらに、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、「基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているもの」についても長尺形状であり、また、「フィルム」状となっていることは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているもの」は、本件特許発明1の「長尺位相差フィルム」に相当する。
また、引用発明の製造工程からは引用発明の「基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているもの」は、「基材」、「配向膜」、「単層の本光学フィルム」がこの順となっていることは明らかであり、本件特許発明1の「長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、」との要件を満たすものである。

また、逆波長分散特性を有するものは、波長が長くなるに従い面内位相差も大きくなることは、光学フィルムの技術分野における技術常識である。当該技術常識に基づけば、引用発明の「光学フィルムは、逆波長分散特性を示」すことから、引用発明における「基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているもの」は、本件特許発明1の式(1)及び式(2)を満たすものである。

さらに、引用発明の「光学フィルム」は「Re(549)が130nm〜150nmに調整された」ものである。波長が1nm異なったとしても、その面内位相差が大きく変化することはないのが光学フィルムの技術分野において一般的であり、引用発明の「Re(549)が130nm〜150nmに調整された」「光学フィルム」のRe(550)は「100nm<Re(550)<160nm」を満たすものである蓋然性が高いといえる。
そうしてみると、引用発明の「基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているもの」は、本件特許発明1の式(3)を満たすものである。

以上より、引用発明の「基材に配向膜及び単層の本光学フィルムが積層しているもの」は、本件特許発明1の「長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する」という要件を満たすものである。

オ 長尺偏光フィルム
引用発明の「偏光フィルム層」は、その名称のとおり「フィルム」状のものであることは明らかである。また、長尺偏光板と長尺位相差膜とを直接積層して長尺円偏光板を製造する方法は周知であって、引用文献1においても長尺状である「光学フィルム」と「貼り合わ」せることにより「広帯域円偏光板」を「製造」することから、その「偏光フィルム層」もまた長尺状であるか、少なくとも長尺状であることが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明の「偏光フィルム層」は、本件特許発明1の「長尺偏光フィルム」に相当する。

カ 長尺円偏光板
引用発明の「広帯域円偏光板」は、その名称のとおり「円偏光板」としての特性を有するものであり、また、上記オのとおり、「広帯域円偏光板」も長尺状であるか、少なくとも長尺状であることが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明の「広帯域円偏光板」は、本件特許発明1の「長尺円偏光板」に相当し、「長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層されている」という要件を満たすものである。

キ (1)の工程
引用発明の「感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)」は、本件特許発明1の「光配向膜形成用組成物」と、「ポリマーを含有する光配向膜形成用組成物」という点で共通する。また、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、引用発明の「塗布」も連続的に行われると認められる。さらに、引用発明における「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)」は、本件特許発明1の「第1塗布膜」に相当し、「基材上に」「(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程により「配向膜形成用塗布膜」を形成することは、その工程からみて明らかである。
そうすると、引用発明の「基材上に、感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程は、本件特許発明1の「(1)」の工程と「(1)長尺基材に、」「ポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する」という点で共通する。

ク (2)の工程
引用発明の「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去」する工程における、「乾燥」により「溶剤などの低沸点成分を」「除去」された「配向膜形成用塗布膜」は、本件特許発明1の「第1乾燥被膜」に相当する。
そうすると、引用発明の「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去」する工程は、本件特許発明1の「(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程」に相当する。

ケ (3)の工程
引用発明の「基材上に形成された配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射を行い、光配向法により配向規制力を付与して配向膜を形成」する工程は、本件特許発明1の「(3)」の工程と「(3)該第1乾燥被膜に、」「偏光を、照射することにより、」「長尺光配向膜を形成する工程」である点で共通する。

コ 液晶硬化膜形成用組成物
引用発明の「式(A)で表される化合物(A)」は、甲2の【0252】の「化合物(A)等の重合性液晶化合物等」の記載から「重合性液晶」であると認められ、また、甲2の【0295】【表3】の記載から「サーモトロピック性」を示すものと認められる。そうすると、引用発明の「式(A)で表される化合物(A)」は、本件特許発明1の「サーモトロピック性の重合性液晶化合物」に相当する。
また、引用発明の「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物」は、重合性液晶化合物である「式(A)で表される化合物(A)」を含み、後の工程で「硬化」することにより「単層の本光学フィルム」となるものであることから、本件特許発明1の「サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物」に相当する。

サ (4)の工程
引用発明において、「光学フィルムは、ロールtoロール形式により製造されるものであ」ることから、引用発明の「配向膜上に、」「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布」は、連続的に行われることは明らかである。また、「塗布して形成された未重合フィルム」は、本件特許発明1の「第2塗布膜」に相当する。
そうすると、引用発明の「配向膜上に、」「式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布」する工程は、本件特許発明1の「(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程」に相当する。

シ (5)の工程
引用発明の「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておき」との工程において、「乾燥」により「ほとんどの溶剤を除去」された「未重合フィルム」は、本件特許発明1の「第2乾燥被膜」に相当する。
そうすると、引用発明の「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておき」との工程は、本件特許発明1の「(5)」の工程と「(5)該第2塗布膜を乾燥する」「ことにより、第2乾燥被膜を形成する工程」という点で共通する。

ス (6)の工程
引用発明の「化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させ」る工程は、本件特許発明1の「(6)」の工程と「(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、」「長尺位相差膜を形成する工程」という点で共通する。

セ (8)の工程
引用発明の「光学フィルムと偏光フィルム層とを、接着剤層を介して貼り合わせる」工程は、本件特許発明1の「(8)長尺位相差膜に長尺偏光フィルムを貼合する工程」に相当する。

ソ (1)〜(6)及び(8)の工程
上記キ〜ケ、サ〜スの工程を総合すると、引用発明の「光学フィルム」が「製造される」工程は、本件特許発明1の「長尺位相差フィルム」が「製造される」工程と、「長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により(1)〜(6)の工程を」「行うことにより製造される」という点で共通する。
また、上記キ〜ケ、サ〜セの工程を総合すると、引用発明の「広帯域円偏光板の製造方法」は、本件特許発明1の「長尺円偏光板の製造方法」の「(1)〜(6)及び(8)の工程をこの順に有し」という要件を満たすものである。

(2)一致点
上記(1)によると、本件特許発明1と引用発明は次の点で一致する。

「 長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、下記式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層されている長尺円偏光板を製造する方法であり、
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
以下の(1)〜(6)及び(8)の工程をこの順に有し、前記長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により(1)〜(6)の工程を行うことにより製造される、前記長尺円偏光板の製造方法。
(1)長尺基材に、ポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、偏光を、照射することにより、長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、長尺位相差膜を形成する工程
(8)長尺位相差膜に長尺偏光フィルムを貼合する工程」

(3)相違点
本件特許発明1と引用発明は次の点で相違する。

(相違点1)
「長尺基材」について、本件特許発明1では「プラスチック基材である」のに対して、引用発明では、「ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム」と例示されている点。

(相違点2)
「(1)〜(6)の工程」について、本件特許発明1では、「連続的に行う」のに対して、引用発明では、連続的かどうかが明らかでない点。

(相違点3)
「ポリマーを含有する光配向膜形成用組成物」における「ポリマー」について、本件特許発明1では「シンナモイル基を有する」のに対して、引用発明では「感光性構造を有する」と特定されるのみである点。

(相違点4)
「長尺光配向膜」について、本件特許発明1では「長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°の角度で偏光を、照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めであり、かつ一様の配向パターンを有する」のに対して、引用発明では、照射される「偏光」の角度についての特定がなく、また、「配向膜」について「配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めであり、かつ一様の配向パターンを有する」との特定がない点。

(相違点5)
「長尺光配向膜」の「膜厚」について、本件特許発明1では「10nm〜500nm」であるのに対して、引用発明では「10nm〜1000nm」である点。

(相違点6)
「第2乾燥被膜を形成する工程」について、本件特許発明1では「第2塗布膜を乾燥すると共に加熱する」のに対して、引用発明では「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥」すると特定されている点。

(相違点7)
「長尺位相差膜」の「膜厚」について、本件特許発明1では「1μm〜3μm」であるのに対して、引用発明では「0.2μm〜5μm」である点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用発明における基材として、「例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルム」が挙げられているところ、この中より、プラスチックからなる基材を選択することは、当業者が適宜選択する事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
ロールtoロール形式で光学素子を製造する際に、長尺基材上に光配向膜形成用組成物を塗布、乾燥、偏光光を照射して光配向膜を形成し、光配向膜上に重合性液晶化合物を塗布、乾燥、光を照射することを、連続的に行うことは、周知技術である(例えば、特開2013−33249号公報の【0106】〜【0116】、特開2013−101328号公報の【0089】〜【0099】等を参照。)。
ここで、引用発明の「光学フィルム」の製造において、「基材上に、感光性構造を有するポリマーである光配向性ポリマーを溶剤に溶解した溶液(配向膜形成用組成物)を塗布」する工程、「配向膜形成用組成物を基材上に塗布した塗布膜(配向膜形成用塗布膜)を乾燥して、該配向膜形成用組成物に含まれる溶剤などの低沸点成分を該配向膜形成用塗布膜から除去」する工程、「基材上に形成された配向膜形成用塗布膜上に、偏光照射を行い、光配向法により配向規制力を付与して配向膜を形成」する工程、「配向膜上に、以下の式(A)で表される化合物(A)、(B)チオール基を有する化合物及び(C)光重合開始剤を含む組成物を塗布して形成された未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥して、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去してお」く工程及び「化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させ」る工程を、連続的に行わなければ、単に効率が落ちるだけでなく、配向膜等にスリキズやゴミによる損傷等を招きやすくなる。そうすると、引用発明の「光学フィルム」の製造において、各工程を連続的に行うことは、ごく自然なことである。
そうしてみると、引用発明の「光学フィルム」の製造において、効率を高めたり損傷等を防いだりするために各工程を連続的に行うようにすることは、当業者にとって格別の困難性はない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点3について
甲2の【0257】には、「感光性構造を有するポリマー」の例として「桂皮酸構造」(シンナモイル基を有する構造である)が例示されており、また、ロールtoロール形式で連続的に光学素子を製造する際の光配向膜として、シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を用いることは周知技術である(例えば、特開2013−33249号公報の【0020】、特開2013−101328号公報の【0075】、特開2013−33248号公報の【0040】等を参照。)。また、シンナモイル基を有することにより、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいことも周知である(特開2013−33249号公報の【0020】、特開2013−101328号公報の【0075】等を参照。)。
そうしてみると、引用発明における「感光性構造を有するポリマー」として、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れているものである「シンナモイル基を有するポリマー」とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ 相違点4について
長尺方向に対して45°に一様に配向する位相差フィルムと偏光フィルムとを、ロールtoロール形式で連続的に積層させることにより、高い生産性で容易に製造ができ、低コストである円偏光板の製造方法は周知技術である(特開2010−266723号公報の【0077】〜【0083】等、特開2012−042530号公報の請求項15、【0251】、【0320】、図3等、特開2007−155970号公報の【0069】〜【0071】等を参照。)。また、照射する偏光方向を制御することで、配向の角度を所望の角度にできることについても周知技術である(甲2の【0268】〜【0269】及び特開2006−243653号公報(甲3)の【0070】〜【0073】等を参照。)。
そうすると、これらの周知技術を心得た当業者にとって、引用発明において、高い生産性で容易に製造ができ、低コストである円偏光板の製造方法として、引用発明の「光学フィルム」の配向を長尺方向に対して45°に一様な配向となるように、「配向膜」を長尺方向に対して45°に一様に配向したものとし、そのために、光配向法により配向規制力を付与する際に照射する偏光を、長尺方向に対して30°〜60°の角度とすることは、格別の工夫なく採用する手段にすぎない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点4に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

オ 相違点5について
引用発明の「配向膜の膜厚」を「10nm〜500nm」の範囲内のものとすることは、当業者が適宜設計する事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点5に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

カ 相違点6について
引用発明における「未重合フィルム」の乾燥方法として「自然乾燥又は加熱乾燥」のうち「加熱乾燥」によって乾燥させることは、両者のうち当業者が適宜選択する事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点6に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

キ 相違点7について
引用発明における「光学フィルム」の「厚さ」を「1μm〜3μm」の範囲内のものとすることは、当業者が適宜設計する事項にすぎない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて、上記相違点7に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 本件特許発明2について
(1)対比
本件特許発明2と引用発明とを対比すると、両者は、既に述べた相違点1〜7に加え、次の相違点8で相違し、その余の構成においては一致する。

(相違点8)
「Q3およびQ4」として挙げられる基のうち「炭素数3〜20の」「脂環式炭化水素基」について、本件特許発明2では、「1価の脂環式炭化水素基」となっているのに対して、引用発明では「1価の」という特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1〜7について
相違点1〜7については、上述したとおりである。

イ 相違点8について
甲2の【0039】〜【0067】には、「Q3及びQ4」の具体例として式(ar−1)〜式(ar−135)が挙げられているが、この中に炭素数3〜20の2価以上の脂環式炭化水素基は含まれておらず、また、甲2の【0068】において好ましいとされる(ar−86)の「Q3及びQ4」は水素原子である。甲2のこれらの記載に基づいて、引用発明における「Q3及びQ4」として、本件特許発明2において「Q3及びQ4」として挙げられるものから選択することは、当業者が適宜選択しうる事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点8に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 本件特許発明3について
(1)対比
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、両者は、既に述べた相違点1〜5、7〜8に加え、次の相違点9で相違し、その余の構成においては一致する(なお、相違点6において相違する点は、以下の相違点9に含まれる。)。

(相違点9)
「第2乾燥被膜を形成する工程」について、本件特許発明3では「長尺光配向膜が形成された長尺基材を長尺方向に搬送しながら乾燥すると共に加熱する」のに対して、引用発明では「未重合フィルムを自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥」すると特定されている点。

(2)判断
ア 相違点1〜5、7〜8について
相違点1〜5、7〜8については、上述したとおりである。

イ 相違点9について
引用発明の「光学フィルム」は「ロールtoロール形式により連続的に製造されるもの」なので、引用発明の乾燥工程も「配向膜」が形成された「基材」を長尺方向に搬送しながら行われることは明らかである。また、引用発明における「未重合フィルム」の乾燥方法として「自然乾燥又は加熱乾燥」のうち「加熱乾燥」によって乾燥させることは、両者のうち当業者が適宜選択する事項にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点9に係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件特許発明4について
(1)対比
本件特許発明4と引用発明とを対比すると、両者は、既に述べた相違点1〜9に加え、次の相違点10で相違し、その余の構成においては一致する。

(相違点10)
本件特許発明4では、「得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(9)を施す、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板の製造方法。(9)長尺基材を剥離する工程」となっているのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1〜9について
相違点1〜9については、上述したとおりである。

イ 相違点10について
甲2の【0273】には、「化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本光学フィルムとが積層されたフィルム(積層フィルム)が得られる。」と記載されており、また、「他の基材(フィルム又は板)を、該積層フィルムに貼合しておいてから、本光学フィルムに積層されていた基材や配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる」とも記載されているように、甲2には、基材を剥離して利用することが示唆されている。
そして、基材の剥離を、偏光フィルム層の貼り合わせの前に行うか、後に行うかは当業者が適宜選択する事項にすぎず、引用発明において、上記の甲2の示唆に基づいて、得られた広帯域円偏光板から基材を剥離する工程を施すことは、当業者が容易に想到しうることである。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点10に係る本件特許発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明4は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 本件特許発明5について
(1)対比
本件特許発明5と引用発明とを対比すると、両者は、既に述べた相違点1〜9に加え、次の相違点11で相違し、その余の構成においては一致する。

(相違点11)
本件特許発明5では、「得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(9)を施す、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板の製造方法。(9)長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する工程」となっているのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1〜9について
相違点1〜9については、上述したとおりである。

イ 相違点11について
甲2の【0273】には、「化合物(A)等を重合させて、未重合フィルムを硬化させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本光学フィルムとが積層されたフィルム(積層フィルム)が得られる。さらに、配向膜を剥離して、単層の本光学フィルムを得ることができる」と記載されており、また、「他の基材(フィルム又は板)を、該積層フィルムに貼合しておいてから、本光学フィルムに積層されていた基材や配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる」とも記載されているように、甲2には、基材及び配向膜を剥離して利用することが示唆されている。
そして、基材及び配向膜の剥離を、偏光フィルム層の貼り合わせの前に行うか、後に行うかは当業者が適宜選択する事項にすぎず、引用発明において、上記の甲2の示唆に基づいて、得られた広帯域円偏光板から基材及び配向膜を剥離する工程を施すことは、当業者にとって格別の困難性はない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点11に係る本件特許発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 本件特許発明6について
(1)対比
本件特許発明6と引用発明とを対比すると、両者は、既に述べた相違点1〜11に加え、次の相違点12で相違し、その余の構成においては一致する。

(相違点12)
本件特許発明6では、「得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(10)を施す、円偏光板の製造方法。(10)長尺円偏光板を枚葉状に切断する工程」となっているのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1〜11について
相違点1〜11については、上述したとおりである。

イ 相違点12について
甲2の【0280】に記載のように、引用発明は有機EL表示装置に用いられることができるものである。そして、引用発明において製造された長尺状の「広帯域円偏光板」について、枚葉状に切断することは、「広帯域円偏光板」を有機EL表示装置に用いるために当業者が通常行う工程にすぎない。
したがって、引用発明に基づいて、上記相違点12に係る本件特許発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明6は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 特許権者の主張
1 令和3年6月3日付け意見書について
特許権者は、令和3年6月3日付け意見書において、概略、以下の主張をする。
甲第2号証では、
(1)光軸方向が、長尺基材の長尺方向に対して30〜60゜である長尺位相差フィルムをRoll to Roll形式により連続的に製造することを何ら意図していない。
(2)工業的製造が困難な光配向ポリマーも列挙されている。
(3)実施例では工業的製造が困難なラビング配向膜のみが使用されている。
(4)長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層された円偏光板を工業的に生産するという教示がない。
このような甲第2号証の記載に基づき、本件訂正発明1の構成を導き出すことは容易に想到し得ることではない。(同意見書8頁16行〜9頁2行)
また、甲第2号証からは予測し得ない異質又は顕著な効果として、
(5)シンナモイル基を有するポリマーを使用することで、Roll to Roll形式により、光軸方向が、長尺基材の長尺方向に対して30〜60°である長尺位相差フィルムを含む長尺円偏光板を連続的に安定して製造することが可能となった。(同意見書5頁10行〜13行)
(6)フィルムの長尺方向に対して斜め方向に光軸を有する長尺位相差フィルムを含む長尺円偏光板が煩雑な加工技術を要さずに工業的に製造でき、得られる長尺円偏光板が有効に機能する。(同意見書9頁3行〜9頁24行)
とも主張する。
しかしながら、上記(1)及び(4)については、上記「第5」3(4)イ及びエで述べたとおりであり、上記(2)については、上記「第5」3(4)ウで述べたとおりであり、上記(3)については、甲2には、配向均一性、製造の処理時間及び処理コストの観点で、光配向法がより好ましいことが記載されている(甲2の【0255】)。
また、上記(5)の効果については、明細書の記載に基づかない主張であると認められるが、仮にそれを考慮するとしても、引用発明及び上記「第5」3(4)イないしエにおいて挙げた周知技術から当業者が予測可能な範囲を超える顕著なものでもない。上記(6)の効果についても引用発明及び上記「第5」3(4)イ及びエにおいて挙げた周知技術から当業者が予測可能な範囲を超える顕著なものでもない。
したがって、上記主張は採用できない。

2 令和3年11月22日付け意見書について
特許権者は、令和3年11月22日付け意見書において、令和3年6月3日付け意見書における主張に加えて、概略、以下の主張をする。
(1)甲第2号証には、基材から位相差膜を形成するまでの一連の工程を連続的に行うことが開示されていないだけでなく、むしろ、一連の工程を分けて行うことが示唆され、本件特許発明1の構成を容易に導き出すことはできない。
また、本件特許発明1の効果として、
(2)(1)〜(3)の工程により長尺光配向膜を形成後、一旦ロールに巻き取って保管した後、ロールから巻き出して(4)〜(6)の工程を行う方法、により長尺位相差フィルムを形成するという比較実験を行って、得られた長尺位相差フィルム(1’)のヘイズが実施例1と比べて非常に高い値を示すことを確認した。
しかしながら、上記(1)については、上記「第5」3(4)イ及びエで述べたとおりである。
また、上記(2)の効果については、引用発明及び上記「第5」3(4)イ及びエにおいて挙げた周知技術から当業者が予測可能な範囲を超える顕著なものでもない。
したがって、上記主張は採用できない。


第7 むすび
本件特許発明1〜6は、いずれも、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2013−71956号公報に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、いずれも、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1〜6に係る特許は、いずれも、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材である長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有し、下記式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層されている長尺円偏光板を製造する方法であり、
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
以下の(1)〜(6)及び(8)の工程をこの順に有し、前記長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により(1)〜(6)の工程を連続的に行うことにより製造される、前記長尺円偏光板の製造方法。
(1)長尺基材に、シンナモイル基を有するポリマーを含有する光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基材上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、該長尺基材の長尺方向に対して30°〜60°の角度で偏光を、照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めであり、かつ一様の配向パターンを有する膜厚10nm〜500nmの長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、サーモトロピック性の重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥すると共に加熱することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、膜厚1μm〜3μmの長尺位相差膜を形成する工程
(8)長尺位相差膜に長尺偏光フィルムを貼合する工程
【請求項2】
重合性液晶化合物が、下記式(A)で表される化合物である請求項1に記載の製造方法。

[X1は、酸素原子、硫黄原子またはNR1−を表わす。R1は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。
Y1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表わす。
Q3およびQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR2R3または−SR2を表わすか、または、Q3とQ4とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに芳香環または芳香族複素環を形成する。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
D1およびD2は、それぞれ独立に、単結合、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−CR4R5−、−CR4R5−CR6R7−、−O−CR4R5−、−CR4R5−O−CR6R7−、−CO−O−CR4R5−、−O−CO−CR4R5−、−CR4R5−O−CO−CR6R7−、−CR4R5−CO−O−CR6R7−またはNR4−CR5R6−またはCO−NR4−を表わす。R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。
G1およびG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH−に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L1およびL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表わし、L1およびL2のうちの少なくとも一つは、重合性基を有する。]
【請求項3】
工程(5)において、長尺光配向膜が形成された長尺基材を長尺方向に搬送しながら乾燥すると共に加熱することにより第2乾燥被膜を形成する請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法により前記長尺円偏光板を得、得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(9)を施す、
長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板の製造方法。
(9)長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する工程
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法により前記長尺円偏光板を得、得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(9)を施す、
長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板の製造方法。
(9)長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する工程
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法により前記長尺円偏光板を得、得られた前記長尺円偏光板にさらに以下の工程(10)を施す、円偏光板の製造方法。
(10)長尺円偏光板を枚葉状に切断する工程


 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2022-02-16 
出願番号 P2014-161221
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (G02B)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 関根 洋之
井口 猶二
登録日 2020-06-12 
登録番号 6716190
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 長尺位相差フィルムの製造方法  
代理人 森住 憲一  
代理人 岩木 郁子  
代理人 梶田 真理奈  
代理人 中山 亨  
代理人 森住 憲一  
代理人 梶田 真理奈  
代理人 岩木 郁子  
代理人 坂元 徹  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  
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