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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1386128
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-05 
確定日 2022-04-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6806168号発明「樹脂成形品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6806168号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。 特許第6806168号の請求項1、3−5及び7−9に係る特許を維持する。 特許第6806168号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6806168号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)12月9日を国際出願日とする出願であって、令和2年12月8日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月5日に特許異議申立人 伴 よし子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5及び7ないし9)がされ、同年11月12日付けで取消理由が通知され、令和4年1月14日に特許権者 昭和電工マテリアルズ株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、本件訂正の内容は、特許請求の範囲について、実質的に訂正前の請求項2を訂正後の請求項1とする、いわゆる請求項の削除と同じ内容であると認められ、特許法第120条の5第5項ただし書き所定の「特別の事情があるとき」に該当すると判断されることから、当合議体は、申立人に対し、同項所定の「意見書を提出する機会」を与えない。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年1月14日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされ、
前記基材が設置される側の前記金型によって意匠面が形成される、樹脂成形品の製造方法。」と記載されているのを、「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程では、一方の前記金型のキャビティ面に前記基材を設置し、
前記射出工程では、前記キャビティ面に設置された前記基材の前記キャビティ面と反対側の面に向かって前記射出用樹脂を射出し、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記一方の金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされ、
前記基材が設置される側の前記一方の金型の前記キャビティ面によって意匠面が形成される、樹脂成形品の製造方法。」に訂正する。
請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項3ないし5及び7ないし9も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。」に訂正する。
請求項3の記載を直接的または間接的に引用する請求項4、5及び7ないし9も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1又は請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。」に訂正する。
請求項4の記載を直接的または間接的に引用する請求項5及び7ないし9も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
(訂正事項5−1)
特許請求の範囲の請求項6に「前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、請求項4又は請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。」とあるうち、引用する請求項4のうち請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされ、
前記基材が設置される側の前記金型によって意匠面が形成され、
前記射出工程の前に、一対の前記金型間の間隔が第1の間隔となるように型閉じする型閉じ工程と、
前記射出工程の後に、一対の前記金型の間隔が前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔となるように前記射出用樹脂を圧縮する圧縮工程と、
をさらに有し、
前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、脂成形品の製造方法。」に訂正する。
請求項6の記載を直接的または間接的に引用する請求項7ないし9も同様に訂正する。

(訂正事項5−2)
特許請求の範囲の請求項6に「前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、請求項4又は請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。」とあるうち、引用する請求項4のうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、「前記射出工程では、前記射出用樹脂を前記基材に向かって射出する、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載し、新たに請求項10とする。

(訂正事項5−3)
特許請求の範囲の請求項6に「前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、請求項4又は請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。」とあるうち、引用する請求項4のうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、「前記射出用樹脂の射出圧力が、1MPa〜100MPaの範囲内に設定されている、請求項10に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載し、新たに請求項11とする。

(訂正事項5−4)
特許請求の範囲の請求項6に「前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、請求項4又は請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。」とあるうち、引用する請求項5のうち請求項1を引用する請求項4、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4、及び、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4のいずれかを引用するものについて、「前記型閉じ工程における一対の前記金型間の間隔が0.3mm〜60mmの範囲内に設定されている、請求項6、請求項10及び請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載し、新たに請求項12とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。」に訂正する。
請求項7の記載を直接的または間接的に引用する請求項8及び9も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。」に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。

2 本件訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1に係る請求項1についての訂正
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1における「設置工程」及び「射出工程」について、それぞれ「前記設置工程では、一方の前記金型のキャビティ面に前記基材を設置し」及び「前記射出工程では、前記キャビティ面に設置された前記基材の前記キャビティ面と反対側の面に向かって前記射出用樹脂を射出し」と限定するとともに、意匠面を形成する金型について、「前記一方の金型の前記キャビティ面」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、当該訂正は、本件特許の明細書の【0027】、【0031】、【0032】、請求項2、並びに、図1〜図3及び図5〜図7に記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらをまとめて「本件明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないのは明らかである。
よって、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。
また、請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項3ないし5及び7ないし9に関しても同様である。

(2)訂正事項2に係る請求項2についての訂正
訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、その記載を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、このような特許請求の範囲の記載を削除する訂正は本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
よって、訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。

(3)訂正事項3に係る請求項3についての訂正
訂正前の請求項3は「請求項2」を引用する記載であったところ、訂正事項3に係る請求項3についての訂正は、引用する請求項について、「請求項1」とする訂正である。これは、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係に生じた記載上の不備を訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、当該訂正により、請求項3は請求項1を引用するものとなったが、訂正後の請求項1は訂正前の請求項2の特定事項をすべて包含していることに照らせば、当該訂正は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
よって、訂正事項3に係る請求項3についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。
また、請求項3の記載を直接的または間接的に引用する請求項4、5及び7ないし9に関しても同様である。

(4)訂正事項4に係る請求項4についての訂正
訂正事項4に係る請求項4についての訂正は、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係に生じた記載上の不備を訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるか、引用する請求項の数を減少させることによる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、当該訂正は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
よって、訂正事項4に係る請求項4についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1項及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。
また、請求項4の記載を直接的または間接的に引用する請求項5及び7ないし9に関しても同様である。

(5)訂正事項5−1に係る請求項6についての訂正、訂正事項5−2に係る請求項10についての訂正、訂正事項5−3に係る請求項11についての訂正及び訂正事項5−4に係る請求項12についての訂正
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項6は、6つの引用関係を有するもの(請求項1及び請求項4を引用するもの、請求項1、2及び4を引用するもの、請求項1、2、3及び4を引用するもの、請求項1、4及び5を引用するもの、請求項1、2、4及び5を引用するもの並びに請求項1、2、3、4及び5を引用するもの。以下、順に「第1引用関係部分」等という。)が含まれる。
そして、訂正事項5−1に係る請求項6についての訂正は、第1引用関係部分について、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)」を目的とするものであるといえる。
同様に、訂正事項5−2に係る請求項10についての訂正は、第2引用関係部分について、訂正事項5−3に係る請求項11についての訂正は、第3引用関係部分について、訂正事項5−4に係る請求項12についての訂正は、第4引用関係部分ないし第6引用関係部分について、それぞれ、請求項間の引用関係を改める訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)」を目的とするものであるといえる。
そして、これらの訂正は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
よって、訂正事項5−1に係る請求項6についての訂正、訂正事項5−2に係る請求項10についての訂正、訂正事項5−3に係る請求項11についての訂正及び訂正事項5−4に係る請求項12についての訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1項及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。また、請求項6の記載を直接的または間接的に引用する請求項7ないし9に関しても同様である。

イ 独立特許要件
訂正後の請求項6及び当該請求項6の記載を直接的または間接的に引用する請求項7ないし12は、上述のとおり「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正がされたものである。そして、訂正前の請求項6は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許異議申立ての対象である請求項7ないし9を除く、請求項6及び10ないし12についての訂正が認められるためには、これらの請求項について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件が課せられる。
そこで、訂正後の請求項6及び10ないし12に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討したが、独立特許要件を欠くとする事由を見いだすことができない。
よって、訂正事項5−1に係る請求項6についての訂正、訂正事項5−2に係る請求項10についての訂正、訂正事項5−3に係る請求項11についての訂正及び訂正事項5−4に係る請求項12についての訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

(6)訂正事項6に係る請求項7についての訂正
訂正事項6に係る請求項7についての訂正は、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係に生じた記載上の不備を訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるか、引用する請求項の数を減少させることによる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、当該訂正は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
よって、訂正事項6に係る請求項7についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1項及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。
また、請求項7の記載を直接的または間接的に引用する請求項8及び9に関しても同様である。

(7)訂正事項7に係る請求項8についての訂正
訂正事項7に係る請求項8についての訂正は、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係に生じた記載上の不備を訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるか、引用する請求項の数を減少させることによる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、当該訂正は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
よって、訂正事項7に係る請求項8についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1項及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。
また、請求項8の記載を引用する請求項9に関しても同様である。

(8)一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし9は訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし9は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし7は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(9)訂正の実質的な内容について
訂正事項1ないし7に係る訂正が、特許請求の範囲について、発明を特定するための事項の限定・付加を行うような実質的な特許請求の範囲の減縮には当たらない理由について、以下で説明する。
ア 訂正事項1に係る訂正
訂正前の請求項2では、上記「射出工程」について、「前記射出用樹脂を前記基材に向かって射出する」と特定している。一般に、射出成形では、一対の金型でキャビティを形成し、当該一対の金型のうちの片側に形成されたスプルーを通じて、上記キャビティ内に樹脂を射出するものであるという本件特許出願時における技術常識に照らせば、訂正前の請求項2に係る上記特定事項において、射出用樹脂の射出の方向が「基材に向かって」いることは、スプルーが形成された金型に対向する、もう一方の金型のキャビティ面に基材が設置されていることを実質的に特定しているといえる。すなわち、訂正前の請求項2に係る上記特定事項は、上記「射出工程」について、「前記射出用樹脂を前記基材に向かって射出する」と特定するとともに、「設置工程」において「基材」を、上記「一対の金型」のうち「一方の」金型の「キャビティ面」に設置することも実質的に特定しているといえ、また、訂正前の請求項1における「前記基材が設置される側の前記金型によって意匠面が形成される」との特定事項についても、当該訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2においては「前記基材が設置される側の前記一方の金型の前記キャビティ面によって意匠面が形成される」ことが実質的に特定されているといえる。
したがって、訂正事項1による請求項1の訂正は、訂正前の請求項1を実質的に訂正前の請求項2に限定するものであるといえ、訂正前の請求項2について、さらに発明を特定するための事項の限定・付加を行うような実質的な特許請求の範囲の減縮には当たらない。

イ 訂正事項2に係る訂正
訂正事項2に係る訂正は、その記載を削除するものであるから、発明を特定するための事項の限定・付加を行うような実質的な特許請求の範囲の減縮には当たらない。

ウ 訂正事項3、4、6及び7に係る訂正
訂正事項3、4、6及び7に係る訂正は、引用する請求項の数を減少するものであるから、発明を特定するための事項の限定・付加を行うような実質的な特許請求の範囲の減縮には当たらない。

エ 訂正事項5に係る訂正
訂正事項5に係る訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、発明を特定するための事項の限定・付加を行うような実質的な特許請求の範囲の減縮には当たらない。

オ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし7に係る訂正は、いずれも特許請求の範囲について、発明を特定するための事項の限定・付加を行うような実質的な特許請求の範囲の減縮には当たらない。

3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項で規定する要件を満たすと判断される。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で検討のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5及び7ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項の番号に応じて各発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明3」、…という。)。
「【請求項1】
繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程では、一方の前記金型のキャビティ面に前記基材を設置し、
前記射出工程では、前記キャビティ面に設置された前記基材の前記キャビティ面と反対側の面に向かって前記射出用樹脂を射出し、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記一方の金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされ、
前記基材が設置される側の前記一方の金型の前記キャビティ面によって意匠面が形成される、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記射出用樹脂の射出圧力が、1MPa〜100MPaの範囲内に設定されている、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記射出工程の前に、一対の前記金型間の間隔が第1の間隔となるように型閉じする型閉じ工程と、
前記射出工程の後に、一対の前記金型の間隔が前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔となるように前記射出用樹脂を圧縮する圧縮工程と、
をさらに有する、請求項1又は請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記型閉じ工程における一対の前記金型間の間隔が0.3mm〜60mmの範囲内に設定されている、請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。」
「【請求項7】
前記射出用樹脂は、前記基材用樹脂と相溶性が高い、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記基材用樹脂及び前記射出用樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂である、請求項8に記載の樹脂成形品の製造方法。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年7月5日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1−1(甲第1号証を主引用文献とする新規性
本件特許の請求項1、8及び9に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由1−2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由2−1(甲第2号証を主引用文献とする新規性
本件特許の請求項1、2、4、8及び9に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 申立理由2−2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

5 証拠方法
甲第1号証:特開2016−188290号公報
甲第2号証:特開2012−71595号公報
甲第3号証:“アミラン”GF強化グレード CM1011G30 安全データシート
甲第4号証:化学便覧 基礎編 改訂5版
甲第5号証:高分子工学講座11 プラスチック成形機械と成型技術(II)
甲第6号証:高分子・複合材料の成形加工
甲第7号証:実践 二次加工によるプラスチック製品の高機能化技術
(以下、順に「甲1」のようにいう。なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。)

第5 令和3年11月12日付けで通知された取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の概要
1 取消理由1−1(甲1を主引用文献とする新規性
本件特許の請求項1、7及び8に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、7及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 取消理由1−2(甲1を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 取消理由2−1(甲2を主引用文献とする新規性
本件特許の請求項1、2、4、7及び8に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、7及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 取消理由2−2(甲2を主引用文献とする進歩性
本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、本件特許の出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第6 取消理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、令和 4年 1月14日にされた訂正請求によって訂正された請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
1 証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「複合成形品およびその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。

「【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、樹状ポリエステル(B)、強化繊維(C)、からなる一方向熱可塑プリプレグの少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(D)を溶着させてなる複合成形品であって、前記一方向熱可塑プリプレグは、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して樹状ポリエステル(B)0.1〜9重量部の溶融物からなるマトリックス樹脂として、強化繊維(C)50〜250重量部に含浸させてなるとともに、熱可塑性樹脂(A)がポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、またはポリオレフィン樹脂の少なくとも1種類の樹脂から構成され、樹状ポリエステル(B)が溶融液晶性を示すポリエステルからなることを特徴とする複合成形品。」

「【請求項3】
熱可塑性樹脂(D)が、熱可塑性樹脂(A)と同種、または熱可塑性樹脂(A)より高い融点を有する請求項1または2に記載の複合成形品。」

「【0001】
本発明は、複合成形品およびその製造方法に関し、特に、一方向熱可塑プリプレグを熱可塑性樹脂と溶着させ、一体化する複合成形品およびその製造方法に関する。」

「【0013】
熱可塑性樹脂(A)は、耐熱性、成形性および機械特性に優れた、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、またはポリオレフィン樹脂の少なくとも1種類の樹脂から構成されることが重要である。これらの樹脂主成分として用いるのであれば、2種以上併用してポリマーアロイとして用いてもよいし、前記熱可塑性樹脂を不飽和カルボン酸、その酸無水物またはその誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物で変性して用いることもできる。また、この3種類以外の熱可塑性樹脂(A)とのポリマーアロイとすることもできる。溶融成形可能な樹脂であればいずれでもよく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂を他の樹脂とブレンドまたはグラフト重合させて変性させた変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ1−ブテン樹脂、ポリ1−ペンテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン/α−オレフィン共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化して得られるポリオレフィン、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素のブロック共重合体の水素化物、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂などのアクリル樹脂、アクリロニトリルを主成分とするアクリロニトリル系共重合体、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、塩化ビニル/エチレン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、およびエチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物などが挙げられる。」

「【0017】
本発明において好ましいポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどのオレフィン類を重合または共重合して得られる熱可塑性樹脂である。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体および共重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体、及び、そのブロック共重合体の水素化物などが用いられる。ここでいうエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。」

「【0032】
本発明の熱可塑性樹脂(D)は、熱可塑性樹脂(A)と同種、または高融点を有する熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(D)の融点が熱可塑性樹脂(A)の融点が低い場合、例えば、熱可塑性樹脂(D)の射出成形のシリンダー温度を十分に上げられず、熱可塑性樹脂(A)を溶融できないため、接着不足が生じ得る。また一方で、熱可塑性樹脂(A)を溶融するために、シリンダー温度を必要以上に増大させた場合、熱可塑性樹脂(D)が熱分解し、複合成形品の外観不良や強度特性の低下が見られる。」

「【0035】
本発明の一方向熱可塑プリプレグ1の複合成形品体に関する製造方法は、図3に示すように、射出成形機6のキャビティー8に一方向熱可塑プリプレグ1を配置した後、熱可塑性樹脂9を射出成形することで、一方向熱可塑プリプレグ1を用いた複合成形品4を得ることができる。前述の一方向熱可塑プリプレグの少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(D)を一体化させることであれば、特に限定はされず従来公知の方法で製造することができ、例えば、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、自動テープ積層、(ATL)、射出成形(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサート射出成形、多層射出成形や、それらの組み合わせなどを含む)、ブロー成形、押出成形、プレス成形、トランスファー成形、フィラメントワインディング成形、ラミネート成形などの公知の成形方法によって成形される。なかでも、あらかじめ一方向熱可塑プリプレグ1を射出成形機6に配置し、射出成形を行うことで、複雑形状を付与できるインサート成形が好ましい。」

「【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によって、より具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
以下に、本実施例において用いる、各種特性の測定方法、および原材料(樹脂、強化繊維)を示す。
・・・
【0041】
強度評価試験後の試験片を用いて、一方向熱可塑プリプレグと熱可塑性樹脂(D)との界面接着の状態をキーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−900により100倍に拡大して目視観察し、一方向熱可塑プリプレグとの接着性の指標とした。一方向熱可塑プリプレグを用いた複合成形品の外観において、“良好”は、実使用上問題ないレベル、“不良”は、一方向熱可塑プリプレグの繊維の浮きやうねりなど、一方向プリプレグ表面に異常が見られるレベルを示す。また一方向熱可塑プリプレグと他基材との界面接着では、“良好”は実使用上問題ないレベル、“不良”は、基材間の接着が不十分であるレベルを示す。
【0042】
C.原材料
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は、下記のとおりである。
A−1 ポリアミド6:“アミラン”(登録商標)“CM1001”(東レ(株)製)
A−2 ポリフェニレンサルファイド:“トレリナ”(登録商標)“A900”(東レ(株)製)
A−3 ポリオレフィン:“プライムポリプロ”(登録商標)J830HV(株プライムポリマー)
B 樹状ポリエステル
C 炭素繊維:“トレカ”(登録商標)“T700SC−12K”(東レ(株)製)
【0043】
(実施例1)
30mmΦの単軸押出機のホッパーに熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)のブレンド物を投入し、ポリアミド6を融点以上の温度で溶融混錬して含浸ダイ内に供給するとともに、連続炭素繊維束“トレカ”(登録商標)“T700SC−12K”(繊維径7ミクロン、比重1.76g/cm3)を含浸ダイ内に供給し、含浸ダイ内で溶融したポリアミド6を連続炭素繊維束内に含浸させながら引き抜きローラーで引き抜き、冷却固化させ幅50mm、厚さ0.3mm、炭素繊維束の体積ボリュームが50〜60%の一方向熱可塑プリプレグを得た。
【0044】
前述の一方向熱可塑プリプレグ1を用いてインサート成形を行った。図3に示すように、(a)一方向熱可塑プリプレグ1を金型のキャビティー8内に配置し、(b)ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(東レ(株)製CM1011G30)を射出ノズル401から、所定の溶融温度で溶融し、キャビティー8内に注入した後、(c)金型を広げ、注入された溶融樹脂を冷却固化し、一方向熱可塑プリプレグ1を用いた複合成形品を取り出した。なお、射出成形の条件として、日本製鋼所社製射出成形機(J11AD−110H、型締力110t)、シリンダー温度280℃、金型温度120℃とした。
【0045】
このようにして得られた一方向熱可塑プリプレグの複合成形品4は、曲げ強度583MPaであり、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の曲げ強度150MPaに比べ、一方向熱可塑プリプレグ1による補強効果が得られ、実使用上問題ないレベルであった。」

「【0054】



「【0055】
本発明に係る複合成形体の製造方法は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂を使用したあらゆる複合成形体の製造に適用できる。かかる製造方法から得られる複合成形体は、自動車、航空機、船舶等の輸送機器、レジャー・スポーツ部材、圧力容器、油田掘削、土木建築の構造部材・準構造部材などに好適に使用することができる。」





イ 甲1発明
射出装置に関し、甲1の図3の記載からみて、一方向熱可塑プリプレグ1を、両方の金型のキャビティー8のそれぞれに配置することが看取できる。
そうすると、甲1に記載された事項を、特に実施例1を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

熱可塑性樹脂(A)(ポリアミド6:“アミラン”(登録商標)“CM1001”(東レ(株)製))と樹状ポリエステル(B)のブレンド物を、連続炭素繊維束内に含浸させ、厚さ0.3mmの一方向熱可塑プリプレグを得て、この一方向熱可塑プリプレグを用いるインサート成形方法において、
(a)一方向熱可塑プリプレグ1を、両側の金型のキャビティー8のそれぞれに配置し、
(b)ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(東レ(株)製CM1011G30)を射出ノズル401から、所定の溶融温度で溶融し、キャビティー8内に注入した後、
(c)金型を広げ、注入された溶融樹脂を冷却固化し、一方向熱可塑プリプレグ1を用いた複合成形品を取り出すインサート成形方法であって、
射出成形の条件として、シリンダー温度280℃、金型温度120℃とするインサート成形方法。

(2)甲2に記載された事項及び甲2発明
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「複合成形体の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
竪型プレス機のプレス端に、該プレス機の作動に応じて相対移動可能な上型と下型とからなる金型を配置し、該金型のキャビティ内に、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる予備成形体を配置し、該キャビティの残りの空間内に不連続強化繊維を含有する溶融熱可塑性樹脂を射出し、前記竪型プレス機によるプレスで前記キャビティを所定の容積に縮小することによって、前記不連続強化繊維含有溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に充満させつつ前記予備成形体をキャビティの所定の内面に押し付け、該不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂と前記予備成形体を一体化して複合成形体に成形することを特徴とする、複合成形体の製造方法。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形体の製造方法に関し、とくに、所望の形態、機械特性を有する繊維強化熱可塑性樹脂の複合成形体を効率よく容易に製造できる方法に関する。」

「【0014】
なお、本発明において用いる熱可塑性樹脂の種類はとくに限定されず、使用可能な樹脂を例示すると、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、液晶ポリエステルや、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等を挙げることができる。これらの混合物でもよい。また、ナイロン6とナイロン66との共重合ナイロンのように共重合したものであってもよい。さらに得たい成形品の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくことができる。」

「【0021】
このような一連の動作により、不連続強化繊維含有溶融熱可塑性樹脂13が所定の形状まで縮小されたキャビティ5内に充満されつつ、予備成形体10がキャビティ5の所定の内面(図示例では、上型2の内面)に押し付けられ、不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂13と予備成形体10とが一体化されて複合成形体14に成形される。成形後、竪型プレス機4の作動により、上型2を開き、複合成形体14を取り出せばよい。」

「【0025】
前述の如く、本発明は、比較的大きな面積を有する複合成形体、さらにはその肉厚が薄い複合成形体の成形に好適なものであり、例えば、複合構造を有するパネル部材(例えば、主要剛性を受け持つ構造材の内面側に内装材や外面側に外装材を複合したパネル部材[例えば自動車用パネル部材]) の成形に好適なものである。図3に、このようなパネル部材における構造材21と内装材22や外装材23との一体化構成例を示す。この場合、構造材21を本発明における不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂、内装材22や外装材23を本発明における予備成形体とすることにより、あるいはその逆に設定することにより、図示したいずれの一体化構成も成形可能である。」

「【実施例】
【0026】
予備成形体として、一方向に引き揃えた炭素繊維(東レ(株)製、“トレカ”(登録商標)T700S−12K)にナイロン系樹脂を含浸させたテープ状の一方向強化繊維基材(幅:50mm、厚み:0.3mm)を用意した。射出するための不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂としては、内部に強化繊維としての炭素繊維を含有するナイロン系樹脂(東レ(株)製、TLP1060)であり、ペレットの段階における炭素繊維の繊維長が約7mm、炭素繊維重量含有率Wf=約30%のものを用意した。
【0027】
[実施例1]
竪型プレス機(アミノプレス社製、1000tプレス機)に設けた上型および下型を開き、図4(A)および(B)にそれぞれキャビティ31の平面形状にて示すように、予備成形体32の貼り付け位置を変えた2通りの方法で予備成形体32を配置した。図5(A)、(B)、(C)に示すように、キャビティ31を開いた状態で、射出装置におけるシリンダー温度を270℃、上型34、下型35からなる金型の型温80℃で上述の不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂36を射出し、射出完了後に上型34をプレス機で成形圧力150tでプレス(型締め)して、平面寸法にて縦:400mm、横:210mmで厚みが2mmの成形品を成形した。」

「【図4】



「【図5】



イ 甲2発明
甲2の図5の記載からみて、一方向強化繊維基材を、上型34及び下型35のキャビティ面のそれぞれに貼り付けていること、及び、連続強化繊維含有熱可塑性樹脂36を、下型35側からキャビティ内に向けて射出することが看取できる。
そうすると、甲2に記載された事項を、特に実施例1を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

予備成形体として、一方向に引き揃えた炭素繊維(東レ(株)製、“トレカ”(登録商標)T700S−12K)にナイロン系樹脂を含浸させたテープ状の一方向強化繊維基材(幅:50mm、厚み:0.3mm)を用意するとともに、射出するための不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂として、内部に強化繊維としての炭素繊維を含有するナイロン系樹脂(東レ(株)製、TLP1060)であり、ペレットの段階における炭素繊維の繊維長が約7mm、炭素繊維重量含有率Wf=約30%のものを用意し、竪型プレス機(アミノプレス社製、1000tプレス機)に設けた上型および下型を開き、予備成形体32を、上型および下型のキャビティ面のそれぞれに配置し、キャビティ31を開いた状態で、射出装置におけるシリンダー温度を270℃、上型34、下型35からなる金型の型温80℃で上述の不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂36を、下型35側からキャビティ内に向けて射出し、射出完了後に上型34をプレス機で成形圧力150tでプレス(型締め)して、平面寸法にて縦:400mm、横:210mmで厚みが2mmの成形品を成形する複合成形体の製造方法

(3)甲3に記載された事項
甲3には、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂CM1011G30に関して、次の事項が記載されている。


」(第1ページ 1.製品及び会社情報)



」(第1ページ 3.組成、成分情報)

(4)甲4に記載された事項
甲4には、ポリアミド6の溶融温度に関して、次の事項が記載されている。


」(I−716ページ 表5.27)

(5)甲5に記載された事項
甲5には、射出装置の射出圧力に関して、次の事項が記載されている。
「(b)射出装置(射出プレス) 射出プランジャ(スクリュプランジャを含む)を往復させる機構は“射出プレス”と見ることができる。この方は高い射出圧力(数百kg/cm2から最高2000kg/cm2)を加えながら高速(数m〜十数m/min)で前進(後退時は圧力はないがやはり高速)させなければならない。」(第462ページ第6〜9行)

(6)甲6に記載された事項
甲6には、射出成形機の最大射出圧力に関して、次の事項が記載されている。
「通常の射出成形機の最大射出圧力は、700kg/cm2〜1,500kg/cm2位が標準とされている。」(第216ページ第6〜7行)

2 取消理由1−1(甲第1号証を主引用文献とする新規性)及び取消理由1−2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「連続炭素繊維束」、「熱可塑性樹脂(A)」は、それぞれ、本件特許発明1における「繊維材料」、「基材用樹脂」に相当するから、甲1発明の「熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)のブレンド物を、連続炭素繊維束内に含浸させ」た「厚さ0.3mmの一方向熱可塑プリプレグ」は、本件特許発明1における「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材」に相当する。
また、甲1発明の「ガラス繊維強化熱可塑性樹脂」は、本件特許発明1の「射出用樹脂」に相当する。そして、甲1発明の「熱可塑性樹脂(A)」である「ポリアミド6:“アミラン”(登録商標)“CM1001”(東レ(株)製)」の溶融温度は210〜220℃であるところ(上記1(4)参照。)、上記ガラス繊維強化熱可塑性樹脂を射出ノズルから、シリンダー温度280℃でキャビティー内に注入するため、注入されたガラス繊維強化熱可塑性樹脂の熱により「熱可塑性樹脂(A)」は溶融状態となるといえる。
さらに、甲1発明の射出成形時の金型温度は120℃であって、「熱可塑性樹脂(A)」の溶融温度(210〜220℃)よりも低いといえる。

以上の点をふまえると、両者は、以下の点で一致する。
「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされる、樹脂成形品の製造方法。」

そして、両者は、以下の点で相違又は一応相違する。

<相違点1>
設置工程及び射出工程に関し、本件特許発明1は「前記設置工程では、一方の前記金型のキャビティ面に前記基材を設置し、前記射出工程では、前記キャビティ面に設置された前記基材の前記キャビティ面と反対側の面に向かって前記射出用樹脂を射出」するものであるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

<相違点2>
樹脂成形品に関し、本件特許発明1は「前記基材が設置される側の前記一方の金型の前記キャビティ面によって意匠面が形成される」ものであるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。

イ 相違点についての判断
まず、<相違点1>について検討する。
甲1発明は、一方向熱可塑プリプレグ1を、キャビティー8を形成する一対の金型の両側のキャビティ面のそれぞれに配置し、これらの一方向熱可塑プリプレグ1に対して側方(一方向熱可塑プリプレグ1の厚み方向と直交する方向)から熱可塑性樹脂9を流れ込ませるものであるから、<相違点1>は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
また、甲1及び他の証拠の記載事項をみても、甲1発明において<相違点1>に係る本件特許発明1の構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
してみれば、上記<相違点2>について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明及び他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし5及び7ないし9について
本件特許発明1が、甲1発明と同一でなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのは上記(1)のとおりであるから、本件特許発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件特許発明2ないし5及び7ないし9についても同様に、甲1発明と同一でなく、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明及び他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)取消理由1−1及び取消理由1−2についてのまとめ
上記(1)、(2)のとおり、本件特許発明1、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、本件特許発明1ないし5及び7ないし9は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではなく、取消理由1−1及び取消理由1−2によっては取り消すことはできない。

3 取消理由2−1(甲第2号証を主引用文献とする新規性)及び取消理由2−2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「一方向に引き揃えた炭素繊維」、「ナイロン系樹脂」は、それぞれ、本件特許発明1における「繊維材料」、「基材用樹脂」に相当するから、甲2発明の「一方向に引き揃えた炭素繊維にナイロン系樹脂を含浸させたテープ状の一方向強化繊維基材(幅:50mm、厚み:0.3mm)」は、本件特許発明1の「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材」に相当する。
また、甲2発明のキャビティに射出される「不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂」は、本件特許発明1の「射出用樹脂」に相当する。
そして、甲2発明の「複合成形体」は、本件特許発明1における「樹脂成形品」に相当する

以上の点をふまえると、両者は、以下の点で一致する。
「繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出する射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法。」

そして、両者は、以下の点で相違又は一応相違する。

<相違点3>
射出工程に関し、本件特許発明1は「射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする」のに対して、甲2発明にはそのような特定がない点。

<相違点4>
設置工程及び射出工程に関し、本件特許発明1は「前記設置工程では、一方の前記金型のキャビティ面に前記基材を設置し、前記射出工程では、前記キャビティ面に設置された前記基材の前記キャビティ面と反対側の面に向かって前記射出用樹脂を射出」するものであるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

<相違点5>
設置工程に関し、本件特許発明1は「少なくとも前記基材が設置される側の前記一方の金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされる」のに対して、甲2発明にはそのような特定がない点。

<相違点6>
樹脂成形品に関し、本件特許発明1は「前記基材が設置される側の前記一方の金型の前記キャビティ面によって意匠面が形成される」ものであるのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記<相違点4>から検討する。
甲2発明は、予備成形体32を、上型34及び下型35のキャビティ面のそれぞれに配置し、不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂36を下型35からキャビティに向けて射出するものであるませるものであるから、<相違点4>は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲2発明ではない。
また、甲2及び他の証拠の記載事項をみても、甲2発明において<相違点4>に係る本件特許発明1の構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明及び他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし5及び7ないし9について
本件特許発明1が、甲2発明と同一でなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのは上記(1)のとおりであるから、本件特許発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件特許発明2ないし5及び7ないし9についても同様に、甲2発明と同一でなく、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明及び他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)取消理由2−1及び取消理由2−2についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2、4、7及び8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、本件特許発明1ないし5及び7ないし9は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではなく、取消理由2−1及び取消理由2−2によっては取り消すことはできない。

第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由はない。

第8 むすび
上記第5及び6のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1ないし5及び7ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程では、一方の前記金型のキャビティ面に前記基材を設置し、
前記射出工程では、前記キャビティ面に設置された前記基材の前記キャビティ面と反対側の面に向かって前記射出用樹脂を射出し、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記一方の金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされ、
前記基材が設置される側の前記一方の金型の前記キャビティ面によって意匠面が形成される、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記射出用樹脂の射出圧力が、1MPa〜100MPaの範囲内に設定されている、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記射出工程の前に、一対の前記金型間の間隔が第1の間隔となるように型閉じする型閉じ工程と、
前記射出工程の後に、一対の前記金型の間隔が前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔となるように前記射出用樹脂を圧縮する圧縮工程と、
をさらに有する、請求項1又は請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記型閉じ工程における一対の前記金型間の間隔が0.3mm〜60mmの範囲内に設定されている、請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
前記キャビティ内に射出用樹脂を射出し、前記射出用樹脂の熱によって前記基材を加熱して溶融状態にする射出工程と、
を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされ、
前記基材が設置される側の前記金型によって意匠面が形成され、
前記射出工程の前に、一対の前記金型間の間隔が第1の間隔となるように型閉じする型閉じ工程と、
前記射出工程の後に、一対の前記金型の間隔が前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔となるように前記射出用樹脂を圧縮する圧縮工程と、
をさらに有し、
前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記射出用樹脂は、前記基材用樹脂と相溶性が高い、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記基材用樹脂及び前記射出用樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂である、請求項8に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
前記射出工程では、前記射出用樹脂を前記基材に向かって射出する、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
前記射出用樹脂の射出圧力が、1MPa〜100MPaの範囲内に設定されている、請求項10に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記型閉じ工程における一対の前記金型間の間隔が0.3mm〜60mmの範囲内に設定されている、請求項6、請求項10及び請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-31 
出願番号 P2018-555429
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B29C)
P 1 652・ 113- YAA (B29C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 植前 充司
岩本 昌大
登録日 2020-12-08 
登録番号 6806168
権利者 昭和電工マテリアルズ株式会社
発明の名称 樹脂成形品の製造方法  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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