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審決分類 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:83  F23D
審判 全部申し立て 2項進歩性  F23D
管理番号 1386131
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-09 
確定日 2022-02-28 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6813533号発明「バーナおよび燃焼装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6813533号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。 特許第6813533号の請求項1〜10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6813533号の請求項1〜10に係る特許についての出願は、平成30年5月22日を出願日とするものであって、令和2年12月21日に特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年7月9日:特許異議申立人 神田 紀子(以下「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和3年10月7日付け:取消理由通知書
令和3年12月3日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年12月9日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項
令和4年1月12日:特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和3年12月9日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の事項からなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域に向けて、」と記載されているのを、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3〜10も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域に向けて、」と記載されているのを、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3〜10も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3
明細書の段落【0007】に「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域に向けて、」と記載されているのを、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、」に訂正する。
(4) 訂正事項4
明細書の段落【0008】に「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域に向けて、」と記載されているのを、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「還元領域」について、「前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域」と特定することで、還元領域が、燃焼用空気よりも内側の位置に存在して、燃料供給ノズルからの固体燃料を含んだ混合流が供給される領域であることを具体的に特定し、限定するものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に関して、明細書には、実施例1について、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、付与したものである。)。
「【0039】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のバーナ7では、微粉炭と搬送空気の混合流体は、燃料ノズル21から火炉22内に噴出される。また、燃焼用空気は、内側燃焼用空気(2次空気)と、外側燃焼用空気(3次空気)に分かれて火炉22に供給される。2次空気は保炎器31に設置のガイドベーン31aで外側に広げられ、3次空気は内側燃焼用空気ノズル26に設置のガイドベーン26aで外側に広げられて供給されるため、混合流体と2次空気および3次空気からなる外周空気51との間には、循環渦52が形成される。火炉22内の高温ガスは循環渦52内の循環流に乗ってバーナ7の出口部に戻されるため、混合流体はバーナ7の出口近傍で急速に着火される。
【0040】
ここで、燃料ノズル21から供給される微粉炭は、燃料濃縮器34で外周側(燃料ノズルの内壁面近傍)に濃縮され、微粉炭濃縮域を形成する。そして、火炉22内の高温ガスは、微粉炭濃縮域の近傍に戻されるため、急速着火の性能がさらに高められている。
急速着火でバーナ7の出口の中心軸近傍には、1次燃焼領域53が形成される。外周空気51は1次燃焼領域53から離れて供給されているため、1次燃焼領域53は、燃料過剰(空気不足)の還元条件となっている。
【0041】
具体的には、急速着火でバーナ7の出口部から形成された1次燃焼領域53の内部では、急速な燃焼反応が進行する。燃焼の進行により酸素(O2)が急速に消費される。そして、燃料(微粉炭)中のN分からは窒素酸化物(NO)が生成され、燃焼の主成分からは中間生成物としての炭化水素ラジカル(・HC)が急激に生成される。O2低下後の還元強化条件下では、発生した窒素酸化物(NO)と炭化水素ラジカル(・HC)との反応で、窒素元素を含むラジカル(・NX)が生成され、・NXとNOとの反応により、NOはN2へと還元される。
この還元領域(1次燃焼領域)53中にアンモニア(NH3)を噴出すると、・NHラジカルを経て優先的にN2への還元反応が進行する。
したがって、実施例1のバーナ7では、固体燃料とアンモニアとを混焼しつつ窒素酸化物の上昇が抑制される。
【0042】
また、実施例1のバーナ7では、混合流体と燃焼用空気(外周空気51)の隔壁(燃料ノズル21)先端部に、保炎器31のガイドベーン31aが設置されており、外周空気51(の2次空気)を混合流体から確実に分離している。
したがって、分離されない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
【0043】
さらに、実施例1のバーナ7では、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aでも外周空気51の混合流からの分離が強化されている。よって、ガイドベーン26aを設けない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
また、実施例1のバーナ7では、外側燃焼用空気ノズル27に旋回発生器27cが設置されており、3次空気(外周空気51)が混合流に混合されにくく、混合流からの分離が強化されている。したがって、旋回発生器27cを設けない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
【0044】
また、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の下流端が、保炎器31のガイドベーン31aよりも上流側に配置されている。アンモニア供給ノズル42が保炎器31よりも火炉22の内部まで伸びていると、アンモニア供給ノズル42が焼損する恐れがある。これに対して、実施例1では、アンモニア供給ノズル42がガイドベーン31aよりも上流側に配置されており、上流側から送り込まれる2次空気によるシールで炎から保護されるとともに、2次空気で冷却される。したがって、アンモニア供給ノズル42の焼損が抑制される。
さらに、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の下流端が、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも下流側に配置されている。そのため、ガイドベーン26aに沿って広がる燃焼用空気の流れの影響を受けることなくアンモニアを供給可能であり、還元域へアンモニアを供給し易くなる。」
「【図2】


したがって、還元領域が、燃料供給ノズルから供給された混合流と流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域(循環渦52)よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域(53)に向けて、供給することの記載がなされていることから、当該訂正事項1は、これらの記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
本件訂正は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る「還元領域」について、「前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域」と特定することで、還元領域が、燃焼用空気よりも内側の位置に存在して、燃料供給ノズルからの固体燃料を含んだ混合流が供給される領域であることを具体的に特定し、限定するものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に関して、上記(1)イで示したと同様であり、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのように訂正前の請求項2における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書中の当該特許請求の範囲の記載に対応する箇所を整合させる訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3に関して、上記(1)イで示したと同様であり、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書中の当該特許請求の範囲の記載に対応する箇所を整合させる訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4に関して、上記(1)イで示したと同様であり、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
本件訂正に係る訂正前の請求項1〜10について、請求項3〜10は、それぞれ少なくとも請求項1または2を直接または間接的に引用するものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1及び2に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、訂正前の請求項〔1〜10〕の一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜10〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりであり、本件訂正後の本件特許の請求項1〜10に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」などという。また、まとめて、「本件訂正発明」ともいう。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、
前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、
前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルであって、前記第2の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの下流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズルと、
を備えたことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、
前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルと、
前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、
前記第2の誘導部材を貫通して設置されて前記還元領域にアンモニアを供給可能な前記アンモニア供給ノズルと、
を備えたことを特徴とするバーナ。
【請求項3】
前記混合流と前記燃焼用空気の隔壁先端部に設置され、前記燃焼用空気を前記混合流から分離するように誘導する第1の誘導部材、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のバーナ。
【請求項4】
前記第1の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの上流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズル、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載のバーナ。
【請求項5】
前記燃焼用空気の流路に配置され、前記燃焼用空気を前記混合流から分離させる旋回発生器、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバーナ。
【請求項6】
アンモニアの噴射角度が調整可能な前記アンモニア供給ノズル、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバーナ。
【請求項7】
固体燃料の燃焼による入熱とアンモニアの燃焼による入熱の比率を調整可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバーナ。
【請求項8】
アンモニアの燃焼による入熱の比率を50%以下とすることを特徴とする請求項7に記載のバーナ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のバーナが設置された火炉と、
前記火炉においてバーナよりも下流側に燃焼用の空気の一部を分離して供給する追加ノズルと、
を備えたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項10】
前記バーナから供給される全空気流量を理論空気量以下にする
ことを特徴とする請求項9に記載の燃焼装置。」

第4 取消理由の概要
本件特許の請求項1〜10に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

<甲号証>
甲第1号証:特開昭63−210508号公報
甲第2号証:特許第6296216号公報
甲第3号証:特開2016−183840号公報
甲第4号証:特開2004−301372号公報
甲第5号証:特開2004−205161号公報
(当審注:以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第5号証」を「甲1」ないし「甲5」という。)

第5 当審の判断
1 各甲号証の記載等
(1) 甲1
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審が参考のため付与したものである。)。
(ア) 「本発明は、微粉炭を1次空気で搬送する手段と、ガス燃料をガスノズルより供給する手段と、燃焼用空気を2次および3次空気に分けて供給する手段と、油を供給、噴霧する手段とを備えた超低NOx燃焼装置において、2次空気と3次空気の流路間に2次内スリーブと2次外スリーブを設け、その先端に環状のフラット部を形成するとともに、前記スリーブ間および該フラット部を貫通してガスノズルを軸方向に移動可能に配置したことを特徴とする。」(第2ページ左下欄16行〜右下欄5行)
(イ) 「石炭は粉砕機で粉砕された後、1次空気によって搬送される。1次空気に搬送された微粉炭4はベンチュリ5で加速、減速され、スワラ7により弱い旋回流を付勢された後、1次噴口8により炉内に供給され燃焼する。」(第3ページ左上欄9〜13行)
(ウ) 「燃焼空気の1部は2次スライドダンパ17で調整された2次空気取入口18より流入し、1次スリーブ6と2次内スリーブ19の環状通路を通り、2枚ベーン21にて旋回を付勢され、2次噴口22より火炉内へ供給される。残りの燃焼空気は3次エアレジスタ23で旋回流となり、3次噴口24より火炉内へ供給される。」(第3ページ左上欄18行〜右上欄5行)
(エ) 「ガス燃料10はガスマニホルド13へ供給され、ここより1種または複数個のガス供給管11を通り、ガスノズル12より火炉内へ供給される。ガスノズル供給用のガスノズル12および環状部26は、2次内スリーブ19および2次外スリーブ20によって2次、3次空気の通路とは別に形成されており、これらのガスノズル12は、バーナの軸方向に所定量可動できるようになっている。」(第3ページ右上欄5〜13行)
(オ) 「バーナ中心軸上にスプレーノズル3、その周りに1次噴口8およびその外周に保炎板9が配置されている構成が示されている。」(第3ページ左下欄1〜4行)
(カ) 「外板9(当審注:「外板9」は、「保炎板9」の誤記と認める。)の外周に2次噴口22があり、その外周に複数個のガスノズル12を設置したフラット部(環状部)26があり、その外周に3次ガイドスリーブ25が設けられ、さらにその外周に3次噴口24が設けられている。
第4図は、第1図のA視図を示したもので、フラット部26、3次ガイドスリーブ25およびガスノズル12の配置状況が示されている。ガスノズル12は、炉内へ直接ガスを供給する主孔(旋回炎を形成するように中心部からややずれた方向に配置されている)の他に、第4図のように副孔ガス噴射方向27を発生させるように副孔が設けられている。この副孔ガスにより、フラット部26と3次ガイドスリーブ25の後流でさらに安定な火炎を形成させることができる。」(第3ページ左下欄7〜右下欄2行)
(キ) 「3次空気噴口24はフラット部26分だけ2次空気噴口22より隔離して配置されることになるので、1次空気の燃焼域を充分に高温還元雰囲気に保持することができる。」(第3ページ右下欄4〜7行)
(ク) 「




(ケ) 上記(エ)、(カ)及び第1図から、「ガスノズル12は、1次スリーブ6の出口よりも下流側にガス燃料を供給可能である」点が看取できる。
(コ) 第1図及び第3図から、「ガスノズル12の下流端が3次ガイドスリーブ25よりも燃焼用空気の下流側に配置されている」点が看取できる。
(サ) フラット部26及び三次ガイドスリーブ25は、配置や形状(第1図〜第3図)からみて、2次空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化するものであるといえる。
(シ) 上記(イ)より、石炭は粉砕機で粉砕された後、1次空気によって搬送されるから、1次空気に搬送された微粉炭4の態様は、混合流をなしているといえる。
イ 甲1発明
上記アを総合し、本件発明1に倣って整理すると、甲1には以下の発明(以下「甲1−1発明」という。)が記載されていると認められる。
「微粉炭と1次空気との混合流を炉内へ供給する1次スリーブ6、
2次空気を供給する1次スリーブ6と2次内スリーブ19の間の環状通路と、3次空気を供給する2次外スリーブ20とボイラ水壁15の間の通路、
2次空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化するフラット部26及び三次ガイドスリーブ25、
1次スリーブ6の出口よりも下流側にガス燃料を供給可能であり、フラット部26及び3次ガイドスリーブ25よりも2次空気の流れの下流側に下流端が配置されたガスノズル12、
を備えるバーナ。」
また、甲1には以下の発明(以下「甲1−2発明」という。)が記載されている。
「微粉炭と1次空気との混合流を炉内へ供給する1次スリーブ6、
2次空気を供給する1次スリーブ6と2次内スリーブ19の間の環状通路と、3次空気を供給する2次外スリーブ20とボイラ水壁15の間の通路、
1次スリーブ6の出口よりも下流側にガス燃料を供給可能なガスノズル12、
2次空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化するフラット部26及び三次ガイドスリーブ25、
フラット部26を貫通して設置されてガス燃料を供給可能なガスノズル12、
を備えるバーナ。」
ウ 甲1記載事項
上記アの記載事項より、さらに、甲1には、バーナにおいて、「微粉炭と1次空気の混合流と2次空気の隔壁(1次スリーブ6)の先端に配置され、2次空気を混合流から分離するように誘導する保炎板9」を備えること(以下「甲1記載事項A」という。)、「ガスノズル12はバーナの軸方向に可動であり、ガスノズル12を所定量引き抜いて火炎からの輻射熱を緩和させ、冷却空気によって冷却させる」こと(以下「甲1記載事項B」という。)、及び「3次空気の通路に配置され、旋回流を発生させる3次エアレジスタ23」を備えること(以下「甲1記載事項C」という。)が記載されている。
(2) 甲2
ア 甲2の記載
「【0004】
このようなことから、二酸化炭素を発生しない燃料として、アンモニアガスの利用が提案されている」
「【0013】
本発明者らは、微粉炭とアンモニアを火炉の内部で混焼する燃焼装置であって、アンモニアを燃焼させた火炎が微粉炭の燃焼火炎の噴射方向を中心軸とする仮想円の接線方向に沿うように、微粉炭の燃焼火炎の噴射方向側に傾斜して噴射することで、窒素酸化物の発生とアンモニアの不完全燃焼を極力、抑制できると考え、これに基づいて、以下のような新たな燃焼装置及び燃焼方法を発明するに至った。
【0014】
(1)本発明による燃焼装置は、微粉炭とアンモニアを火炉の内部で混焼させる燃焼装置であって、前記火炉の内部に向かって微粉炭を噴射する第1噴射口を有する第1ノズルと、前記第1ノズルの周囲に配置され、前記火炉の内部に向かってアンモニアを噴射する第2噴射口を有する一つ以上の第2ノズルと、を備え、前記第2ノズルの第2噴射口は、アンモニアの燃焼火炎が微粉炭の燃焼火炎の噴射方向を中心軸とする仮想円の接線方向に沿うように、かつ、微粉炭の燃焼火炎の噴射方向側に傾斜して開口している。」
「【0019】
本発明による燃焼方法は、第1ノズルから燃焼可能に噴射される微粉炭に対して、第2ノズルから燃焼可能に噴射されるアンモニアの混焼率を0.8%以上とすることで、窒素酸化物の発生を極力、抑制できる。」
「【0037】
(ガス燃料供給部の構成)
次に、実施形態によるガス燃料供給部70の構成を説明する。図1を参照すると、ガス燃料供給部70には、LNG(液化天然ガス)を貯蔵している。LNGを液化して貯蔵する場合に、外部からの自然入熱などによりLNGが気化して、BOGガス(boil off gas)が発生する。本実施形態では、ガス燃料配管170は、このBOGを燃料として後述するバーナに輸送する配管である。」
「【0039】
図1を参照して、遮断弁54を閉じると共に、ガス燃料配管遮断弁71を開くことで、BOGをバーナ62Aに供給できる。遮断弁54を開くと共に、ガス燃料配管遮断弁71を閉じることで、アンモニアをバーナに供給できる。」
「【0041】
図1を参照すると、四段のバーナ62A・62B・62C・62Dには、石炭貯蔵部75から燃料としての石炭(微粉炭)が供給されている。最上段の4つのバーナ62Aには、ガス燃料又はアンモニアを供給できる。」
「【0060】
図2から図7を参照すると、第1実施形態による燃焼装置6Aは、微粉炭とアンモニアを火炉の内部で混焼する燃焼装置6Aであって、アンモニアを燃焼させた火炎が微粉炭の燃焼火炎の噴射方向を中心軸とする仮想円の接線方向に沿うように、第2ノズル173A・173B・173C・173D・173Eからアンモニアを噴射するので、微粉炭の燃焼火炎により、アンモニアの不完全燃焼を極力、抑制できる。」
「【0109】
より詳細には、1日目の13時〜15時においては100kg/hのアンモニアを燃焼し、1日目の15時〜16時においては200kg/hのアンモニアを燃焼し、1日目の16時〜17時においては400kg/hのアンモニアを燃焼し、2日目以降は450kg/hのアンモニアを燃焼した。」
「【0110】
又、基本的には、ボイラを155MWの負荷で運転したため、アンモニアの混焼率は約0.6%(1MW相当)であったが、5日目のみにおいては、ボイラを120MWの負荷で運転したため、アンモニアの混焼率は約0.8%であった。なお、排ガス量超過がない範囲でアンモニアを燃焼した。」
「【0118】
(ボイラ出口NOx値)
図15を参照して、[A系]及び[B系]で示される断面図中の十字で示されるような、ボイラ出口のA系24点、B系24点の合計48点において、ECO(節炭器)出口ガスのNOx値を測定した。
【0119】
図16は、混焼前と混焼後のボイラ出口におけるNOx値を示す。なお、1日目においては種々の機器の調整を実行し、3日目においてはNOx計の点検をしたために、データから除外している。又、図16(b)の表は、図16(a)のグラフで用いた数値を表形式で示し、図16(c)の表は、発電所出力、混焼率、及び図16(c)内の最も左の列で示される日にちの差の平均値を示す。また、混焼前の値は、アンモニア注入前30分の値であり、混焼後の値は、アンモニア注入後30分ごとに4点乃至5点のデータを取った、その平均値である。
【0120】
図16(c)を参照して、アンモニアの混焼率が約0.8%の5日目においては、他の日に比較して、アンモニアの混焼率が約0.6%から約0.8%に上昇したのに反して、混焼後のボイラ出口におけるNOx値が、混焼前より大きく減少することを確認した。
【0121】
又、図16(c)を参照して、アンモニアの混焼率が約0.6%であった、2日目、4日目、6日目、7日目においては、混焼前に比較した混焼後のNOx値の増加量は安定しないと共に、その平均値は、0.17ppmとプラスの値を示した一方で、アンモニアの混焼率が約0.8%であった5日目の、混焼前に比較した混焼後のNOx値の増加量は、−13.75ppmとマイナスの値となったことを確認した。
【0122】
これにより、アンモニアを石炭と混焼させる場合、アンモニア混焼率は0.8%以上が望ましく、又、アンモニア供給量を増加させるほど、NOx値を低減できる可能性が示唆された。
これは、
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2Oの化学反応式で示されるような、無触媒脱硝反応が進行したためであると推定される。」
「【図4】


第4図から、「アンモニアを噴出する第2ノズル173A―173Eの下流端が、微粉炭及び燃焼空気の混合ガスを噴出する第1ノズル175の下流端よりも燃焼用空気の上流側に配置されている」点が看取できる。
イ 以上から、甲2には、「微粉炭とガス燃料との混焼バーナにおいて、ガ
ス燃料としてアンモニアガスを用いる」点(以下「甲2記載事項A」という
。)、「アンモニアを噴出する第2ノズル(173A―173E)の下流端が
、微粉炭及び燃焼空気の混合ガスを噴出する第1ノズル(175)下流端より
も燃焼用空気の上流側に配置されている」点(以下「甲2記載事項B」とい
う。)、「アンモニアの燃焼による入熱の比率を約0.8%である」点(以
下「甲2記載事項C」という。)、「微粉炭とアンモニアを混焼すると、N
Oxが低減する」点(以下「甲2記載事項D」という。)及び「前記第2ノ
ズルの第2噴射口は、アンモニアの燃焼火炎が微粉炭の燃焼火炎の噴射方向
を中心軸とする仮想円の接線方向に沿うように、かつ、微粉炭の燃焼火炎の
噴射方向側に傾斜して開口している」点(以下「甲2記載事項E」という。
)が記載されている。
(3) 甲3
ア 甲3の記載
「【0030】
図2に示すように、ボイラ2には燃料として石炭(微粉炭)が投入され、石炭の燃焼により蒸気が生成される。」
「【0033】
例えば、再生可能エネルギー発電設備20(図1参照)の出力が低下した
場合、電力系統9(図1参照)の要求出力を賄うために、ボイラ2にアンモ
ニアが投入されるようにアンモニア調整装置33から指令が出力される。ア
ンモニア供給装置32からアンモニアがボイラ2に追加の燃料として供給さ
れ、蒸気タービン3の出力を上げて、再生可能エネルギー発電設備20(図
1参照)の出力の低下に追従させる。」
「【0039】
アンモニア供給装置25からは、アンモニア調整装置26の指令により、
アンモニアが燃料として燃焼器12に供給される。」
イ 以上から、甲3には、「微粉炭との混焼において、アンモニアを用いる
」点(以下「甲3記載事項A」という。)、及び、
「発電設備(20)の出力の低下を補うように、アンモニア供給装置(32
)からアンモニアが燃焼器(12)へ追加の燃料として供給されることから
、微粉炭の燃焼による入熱とアンモニアの燃焼による入熱の比率を調整可能
である」点(以下「甲3記載事項B」という。)が記載されている。
(4) 甲4
ア 甲4の記載
「【0017】
・・・前記高圧空気噴出部8が、燃料噴出ノズル3の燃料噴出方向に沿う方向での軸心周りで回転自在で且つ軸心と異なる方向に空気を噴出孔8aを備えた空気噴出ノズルMを設けて、その空気噴出ノズルMの回転により、空気噴出方向を変更できるように構成されており、この空気噴出方向の変更により炎の形成方向を変更できるようになっている。」
イ 以上から、甲4には、「空気噴出ノズルの空気噴出方向を変更できる」ことが記載されている。
(5) 甲5
ア 甲5の記載
「【0003】
二段燃焼法では,燃焼用空気をバーナとバーナ下流に設置した空気投入口(以下,アフタエアポートと記す)の2箇所から投入する。バーナ部分の空気量を少なくして,火炉内に酸素不足の還元域を形成することで低NOx化を図る。さらにアフタエアポートから空気を供給し,未燃焼分の低滅を図る。」
「【0013】
【発明の実施の形態】
ボイラ火炉の運転は、通常の場合、高効率化のため,低空気比での運転が指向される。さらに,近年は低NOx化のため二段燃焼方式がとられることが多い。二段燃焼時は,火炉内のバーナ配置部(以下,バーナゾーンと記す)では,空気供給量は燃料投入量に対する理論空気量以下の空気不足の状態となる。」
「【0043】
(実施例1)
・・・燃焼用空気はブロア4からバーナ5用と、アフターエアポート6用に,ダンパ(図示せず)により、所定の流量に調整され、火炉3内へ供給される。燃焼用空気は、バーナ5の部分(空気不足域またはバーナゾーン20)で還元燃焼に使用される。」
第1図から、「バーナ5へ送られる燃焼用空気の一部を分離してアフタエアポート6へ供給する」点が看取できる。
イ 以上から、甲5には、「バーナ(5)が設置された火炉(3)」、
「火炉(3)がバーナ(5)よりも下流側に燃焼用空気の一部を分離して供給するアフタエアポート(6)、を備える」点、及び、
「バーナ(5)から供給される全空気流量を理論空気量以下にする」点が開示されている。
2 理由についての判断
(1) 本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と、甲1−1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1−1発明の「微粉炭」は本件訂正発明1の「固体燃料」に、以下同様に、「1次空気」は「搬送ガス」に、「混合流」は「混合流」に、「1次スリーブ」は「燃料供給ノズル」に、「2次空気」は「燃焼用空気」に、「3次空気」は「外周空気」に、「バーナ」は「バーナ」に、それぞれ相当する。
甲1−1発明の「微粉炭と1次空気との混合流を炉内へ供給する」態様は、本件訂正発明1の「固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される」態様に相当する。
甲1−1発明の「2次空気を供給する1次スリーブ6と2次内スリーブ19の間の環状通路」は、第1図の配置から見て、1次スリーブの外側に配置され、2次空気を混合流から分離して供給しているので、本件訂正発明1の「前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路」に相当する。
甲1−1発明の「2次空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する」「三次ガイドスリーブ25」は、環状通路の出口部分に配置されているから、本件訂正発明1の「前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材」に相当する。
甲1−1発明の「1次スリーブ6の出口よりも下流側にガス燃料を供給可能であり、フラット部26及び3次ガイドスリーブ25よりも2次空気の流れの下流側に下流端が配置されたガスノズル12」と、本件訂正発明1の「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルであって、前記第2の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの下流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズル」とは、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で、燃料を供給可能な燃料供給ノズルであって、前記第2の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの下流側に下流端が配置された前記燃料供給ノズル」との限りで一致する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1−1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、
前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、
前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で、燃料を供給可能な燃料供給ノズルであって、前記第2の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの下流側に下流端が配置された前記燃料供給ノズルと、
を備えたバーナ。」

<相違点1>
燃料供給ノズルについて、本件訂正発明1は、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズル」であるのに対して、甲1−1発明は、燃料がガスとされるものの、アンモニアとは特定されておらず、また、ガスをどこの領域に向けて供給しているのかも特定されていない点。

イ 以下相違点1について検討する。
甲1には、ガスノズルからガスを供給することについて、以下の事項が記載されている。
「ガス燃料10はガスマニホルド13へ供給され、ここより1種または複数個のガス供給管11を通り、ガスノズル12より火炉内へ供給される。」(上記1(1)ア(エ)参照。)
「ガスノズル12は、炉内へ直接ガスを供給する主孔(旋回炎を形成するように中心部からややずれた方向に配置されている)の他に、第4図のように副孔ガス噴射方向27を発生させるように副孔が設けられている。この副孔ガスにより、フラット部26と3次ガイドスリーブ25の後流でさらに安定な火炎を形成させることができる。」(上記1(1)ア(カ)参照。)
これらの記載によると、甲1−1発明のガスノズルは、ガスを火炉へ供給するものであり、ガスノズルによる炎は、旋回炎を形成したり、後流で安定な火炎を形成するものであるものの、ガスノズル12からガスを具体的にどこに向けて供給するかについては、記載されていない。
そして、相違点1に係る本件訂正発明1の「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域」のうち、「前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域」である循環渦52「よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて」、「アンモニア供給ノズル」を設けることについては、甲1〜甲5のいずれにおいても記載や示唆がなされていない。
微粉炭とアンモニアとを混焼することについての、上記甲2記載事項A〜Eをみても、「前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域」である循環渦52「よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて」、「アンモニア供給ノズル」を設けることを示唆するものではない。
甲1において、ガスノズルから供給されるガスが、混合流が燃焼して形成される還元領域に供給されることがあるとしても、燃料供給ノズルを向ける方向を「前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域」である循環渦52「よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向け」ているとまではいうことはできない。
そして、本件訂正発明1は、相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採用することにより、「還元領域に向けてアンモニアを供給することで、アンモニアをガス燃料として使用しつつ、窒素酸化物の上昇を抑えた固体燃料とアンモニアとを混焼可能なバーナを提供することができる。」(【0017】)、「この還元領域(1次燃焼領域)53中にアンモニア(NH3)を噴出すると、・NHラジカルを経て優先的にN2への還元反応が進行する。
したがって、実施例1のバーナ7では、固体燃料とアンモニアとを混焼しつつ窒素酸化物の上昇が抑制される。」(【0041】)という効果を奏するものであるので、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成を当業者が適宜なし得る設計的事項とすることもできない。
ウ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1−1発明、甲1〜甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と、甲1−2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1−2発明の「微粉炭」は本件訂正発明2の「固体燃料」に、以下同様に、「1次空気」は「搬送ガス」に、「混合流」は「混合流」に、「1次スリーブ」は「燃料供給ノズル」に、「2次空気」は「燃焼用空気」に、「3次空気」は「外周空気」に、「バーナ」は「バーナ」に、それぞれ相当する。
甲1−2発明の「微粉炭と1次空気との混合流を炉内へ供給する」態様は、本件訂正発明2の「固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される」態様に相当する。
甲1−2発明の「2次空気を供給する1次スリーブ6と2次内スリーブ19の間の環状通路」は、第1図の配置から見て、1次スリーブの外側に配置され、2次空気を混合流から分離して供給しているので、本件訂正発明2の「前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路」に相当する。
甲1−2発明の「2次空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する」「三次ガイドスリーブ25」は、環状通路の出口部分に配置されているから、本件訂正発明2の「前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材」に相当する。
甲1−2発明の「1次スリーブ6の出口よりも下流側にガス燃料を供給可能なガスノズル12」と、本件訂正発明2の「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズル」とは、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で、燃料を供給可能な燃料供給ノズル」との限りで一致する。
さらに、甲1−2発明の「ガスノズル12」の「フラット部26を貫通して設置されてガス燃料を供給可能な」態様と、本件訂正発明2の「アンモニア供給ノズル」の「前記第2の誘導部材を貫通して設置されて前記還元領域にアンモニアを供給可能な」態様とは、「燃料供給ノズル」の「部材を貫通して設置されて燃料を供給可能な」態様との限りで一致する。

そうすると、本件訂正発明2と甲1−2発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

<一致点>
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、
前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で、燃料を供給可能な燃料供給ノズルと、
前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、
前記燃料供給ノズルの部材を貫通して設置されて燃料を供給可能な燃料供給ノズルと
を備えたバーナ。」

<相違点2>
燃料供給ノズルについて、本件訂正発明2は、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズル」であるのに対して、甲1−2発明は、燃料がガスとされるものの、アンモニアとは特定されておらず、また、ガスをどこの領域に向けて供給しているのかも特定されていない点。

<相違点3>
燃料供給ノズルについて、本件訂正発明2は、「第2の誘導部材を貫通して設置されて」いるのに対して、甲1−2発明は、「フラット部26を貫通して設置されて」いる点。

イ 以下、相違点2について検討する。
相違点2は、本件訂正発明1の相違点1と同様に、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズル」との事項に係るものであるから、上記1の相違点1について検討したのと同様に、甲1−2発明、甲1〜甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ したがって、本件訂正発明2は、相違点3を検討するまでもなく、甲1−2発明、甲1〜甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件訂正発明3〜10について
本件訂正発明3〜10は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2を引用するものであって、本件訂正発明1の発明特定事項の全て、又は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含むものである。
そして、上記(1)、(2)で述べたとおり、本件訂正発明1が甲1−1発明及び甲1〜5に基いて、並びに本件訂正発明2が甲1−2発明及び甲1〜5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明3〜10も、甲1−1発明又は甲1−2発明、及び甲1〜5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことが明らかである。
3 特許異議申立人の主張
(1) 令和4年1月12日付けの意見書において、特許異議申立人は、以下の主張をしている。
ア 「特許権者は上記意見書において『甲第1号証に記載の構成のように循環渦(52)にガスを供給すると、還元条件が弱く、NOxの発生量が多くなる問題があります(本件【0039】−【0047】等、参照)。そして、甲第1号証−甲第5号証のいずれにも、循環渦(52)や還元領域(53)に関する記載もなければ、示唆さえない状況で、還元領域(53)にアンモニアガスを供給することでNOxを抑止できると想起することには、発想の飛躍があります。」と述べている。しかし、このような訂正後本件特許発明1の作用効果は、甲第1号証のガスノズル12から噴出するガス燃料は循環渦52へ供給されるという不確定な条件を前提とし、それを比較対象としているため認められるべきではない。」
イ 「甲第2号証の【0013】には『本発明者らは、微粉炭とアンモニアを火炉の内部で混焼する燃焼装置であって、アンモニアを燃焼させた火炎が微粉炭の燃焼火炎の噴射方向を中心軸とする仮想円の接線方向に沿うように、微粉炭の燃焼火炎の噴射方向側に傾斜して噴射することで、窒素酸化物の発生とアンモニアの不完全燃焼を極力、抑制できると考え、これに基づいて、以下のような新たな燃焼装置及び燃焼方法を発明するに至った。』と記載され、【0014】には『(1)本発明による燃焼装置は、微粉炭とアンモニアを火炉の内部で混焼させる燃焼装置であって、前記火炉の内部に向かって微粉炭を噴射する第1噴射ロを有する第1ノズルと、前記第1ノズルの周囲に配置され、前記火炉の内部に向かってアンモニアを噴射する第2噴射ロを有する一つ以上の第2ノズルと、を備え、前記第2ノズルの第2噴射ロは、アンモニアの燃焼火炎が微粉炭の燃焼火炎の噴射方向を中心軸とする仮想円の接線方向に沿うように、かつ、微粉炭の燃焼火炎の噴射方向側に傾斜して開口している。』と記載されている。甲第2号証の燃焼装置において、微粉炭を噴出する第1ノズルの後流部に還元領域が生じることは当業者にとって自明である。そして、甲第2号証の燃焼装置では、本件の図2に記載されたものと同様に、第2ノズルから噴出するアンモニアの噴射方向が第1ノズルから噴出する微粉炭の噴射方向の中心軸に向いており、第1ノズルの後流部へ向けて第2ノズルからアンモニアが噴出する。甲第2号証に記載されているように、微粉炭を噴出するノズルの後流部に生じる還元領域へ向けてアンモニアを噴出することによってNOxを削減しようとする構成は、当業者にとって周知の事項である。」
(2) 以下に、特許異議申立人の上記主張について検討する。
ア 本件訂正により、本件訂正発明1は、「前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズル」とされた。
これにより、本件訂正発明1のアンモニア供給ノズルは、「燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域」のうち、「燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域」である循環流52よりも「内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向け」るものであることとなった。
したがって、甲1においては、領域(循環流)との関係において、領域(循環流)よりも内側に、燃料ノズルからガスを供給するようにガス供給ノズルを向けているとまではいうことができず、また、そのような構成を採用することが当業者にとって容易になし得たとする証拠もない。
したがって、上記アの特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 上記(1)イについても、同様に、甲2においても、領域(循環流)との関係において、領域(循環流)よりも内側に、燃料ノズルからガスを供給するようにガス供給ノズルを向けているとまではいうことができないから、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1〜10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】バーナおよび燃焼装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料を使用するバーナおよび前記バーナを有する燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を粉砕して得られる微粉炭等の固体燃料を燃焼させるバーナにおいて、燃料ノズルの外周側に2次空気ノズルを設置して、2次空気をガイドベーンによって広げることで、バーナの開口端の下流側の還元領域を拡大する技術が知られている(特許文献1−3)。
また、LNG(液化天然ガス)等のガス燃料を使用するバーナにおいて、NOxを低減するために、ガス燃料の噴出方向、角度を調整する技術も知られている(特許文献4,5)。
さらに、固体燃料とガス燃料を切り替えて運用することに対応するために、微粉炭バーナとガスバーナが組み合わされた技術も知られている(特許文献6,7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−214102号公報
【特許文献2】特許第3344694号公報
【特許文献3】特許第5794419号公報
【特許文献4】実全昭56−075507号公報
【特許文献5】特公昭57−061125号公報
【特許文献6】特許第2526236号公報
【特許文献7】特公平06−023607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料としてアンモニア(NH3)を使用した場合、燃焼後にCO2が発生しないため、CO2フリーアンモニアの直接燃焼の研究が進められている。燃焼の際に考慮すべき点としては、特許文献4,5に記載のような天然ガスなどの一般的なガス燃料にはN(窒素)分がほとんど含まれていないのに対して、アンモニアでは重量比率で82%と多大のN分を含んでおり、NOxを生成しやすい。これは、燃料中にN分を含む石炭と共通性がある。
ボイラ内では、酸素濃度の高低分布があるが、常に還元条件である固体燃料バーナ(特許文献1−3参照)の一次燃焼域(還元領域)にアンモニアを注入することができれば、安定してNOxの上昇を抑えた混焼が可能となる。
【0005】
特許文献6,7に記載の構成では、ガス燃料を供給するガスノズルの下流端が保炎器よりも下流側に配置されている。特許文献6,7に記載の技術は、固体燃料とガス燃料を切り替えて使用する前提であり、固体燃料とガス燃料を混焼する前提ではないため、ガスノズルが保炎器よりも下流側まで伸びていても問題は少ない。しかし、特許文献6,7の構成で混焼を行う場合には、保炎器よりも下流側のガスノズルが焼損する問題がある。
【0006】
本発明は、固体燃料とアンモニアとを混焼可能なバーナおよび前記バーナを備えた燃焼装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより達成できる。
請求項1に記載の発明は、固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルであって、前記第2の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの下流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズルと、を備えたことを特徴とするバーナである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルと、前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、前記第2の誘導部材を貫通して設置されて前記還元領域にアンモニアを供給可能な前記アンモニア供給ノズルと、を備えたことを特徴とするバーナである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記混合流と前記燃焼用空気の隔壁先端部に設置され、前記燃焼用空気を前記混合流から分離するように誘導する第1の誘導部材を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のバーナである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記第1の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの上流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズルを備えたことを特徴とする請求項3に記載のバーナである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記燃焼用空気の流路に配置され、前記燃焼用空気を前記混合流から分離させる旋回発生器を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバーナである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、アンモニアの噴射角度が調整可能な前記アンモニア供給ノズルを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバーナである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、固体燃料の燃焼による入熱とアンモニアの燃焼による入熱の比率を調整可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバーナである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、アンモニアの燃焼による入熱の比率を50%以下とすることを特徴とする請求項7に記載のバーナである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載のバーナが設置された火炉と、前記火炉においてバーナよりも下流側に燃焼用の空気の一部を分離して供給する追加ノズルとを備えたことを特徴とする燃焼装置である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、前記バーナから供給される全空気流量を理論空気量以下にすることを特徴とする請求項9に記載の燃焼装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,2記載の発明によれば、還元領域に向けてアンモニアを供給することで、アンモニアをガス燃料として使用しつつ、窒素酸化物の上昇を抑えた固体燃料とアンモニアとを混焼可能なバーナを提供することができる。
また、請求項1,2記載の発明によれば、第2の誘導部材で外周空気の混合流からの分離を強化しない場合に比べて、還元領域に燃焼空気が混ざりにくく、還元の強い還元領域を生成することができる。
さらに、請求項1,2記載の発明によれば、第2の誘導部材に沿って広がる燃焼用空気の流れの影響を受けることなくアンモニアを供給可能であり、還元域へアンモニアを供給し易くなる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1,2に記載の発明の効果に加えて、第1の誘導部材で燃焼用空気を混合流から分離しない場合に比べて、還元領域に燃焼空気が混ざりにくく、還元の強い還元領域を生成することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3に記載の発明の効果に加えて、アンモニア供給ノズルの下流端が第1の誘導部材よりも燃焼用空気の流れの上流側に配置されない場合に比べて、アンモニア供給ノズルの焼損を抑制できる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1ないし4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、旋回発生器で外周空気の混合流からの分離をさせない場合に比べて、還元領域に燃焼空気が混ざりにくく、還元の強い還元領域を生成することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項1ないし5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、還元領域におけるアンモニアの分布を調整することができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、上記請求項1ないし6のいずれかに記載の発明の効果に 加えて、固体燃料の燃焼による入熱とアンモニアの燃焼による入熱の比率を調整することで、燃焼を最適化して、窒素酸化物の上昇を抑制できる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、上記請求項7に記載の発明の効果に加えて、アンモニアの燃焼による入熱の比率を50%以下とすることで、火炎を安定化に必要な固体燃料の流量を確保することができる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、追加ノズルを有しない場合に比べて、窒素酸化物の上昇を抑制できる。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、上記請求項9に記載の発明の効果に加えて、バーナから供給される全空気流量を理論空気量以下とすることで、還元作用の低下を抑制し、窒素酸化物の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の実施例1の燃焼システムの全体説明図である。
【図2】図2は実施例1のバーナの説明図である。
【図3】図3は図2の矢印III方向から見た図である。
【図4】図4は本実施例のバーナのアンモニア供給ノズルの先端部分の拡大図である。
【図5】図5はアンモニア供給ノズルの先端部の要部断面図である。
【図6】図6はアンモニア供給ノズルの本体と湾曲するノズル接続部との連結部分の詳細説明図である。
【図7】図7はアンモニアの供給方向の説明図であり、図7(A)は図2に対応する説明図、図7(B)は中心軸方向斜めにアンモニアを噴射する場合の説明図、図7(C)は中心軸から逸れて斜めにアンモニアを噴射する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態を示す。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の実施例1の燃焼システムの全体説明図である。
図1において、火力発電所等で使用される実施例1の燃焼システム(燃焼装置)1では、微粉炭(固体燃料)がバンカ(燃料ホッパ)4に収容されている。バンカ4の固体燃料は、ミル(粉砕機)5で粉砕される。粉砕された燃料は、ボイラ6のバーナ7に燃料配管8を通じて供給されて、燃焼される。なお、バーナ7は、ボイラ6に複数設置されている。なお、固体燃料として、微粉炭に限定されず、例えばバイオマス燃料を使用することも可能である。
ボイラ6には、バーナ7の下流側(上方)に、燃焼用空気を供給する追加ノズル3が設置されている。
【0029】
図2は実施例1のバーナの説明図である。
図3は図2の矢印III方向から見た図である。
図2、図3において、実施例1のバーナ(混焼バーナ)7は、混合流が流れる燃料ノズル21を有する。燃料ノズル21の下流端の開口は、ボイラ6の火炉22の壁面(火炉壁、水管壁)23近傍に配置されている。燃料ノズル21の上流側に、燃料配管8が接続される。燃料ノズル21は中空の筒状に形成されており、燃料ノズル21の内部には、固体燃料(微粉炭)と搬送ガスとが流れる流路24が形成されている。
【0030】
燃料ノズル21の外周には、燃焼用空気を火炉22に噴出する内側燃焼用空気ノズル(2次燃焼用空気ノズル)26が設置されている。2次空気ノズル26の内部には、2次空気(2次燃焼用空気)が流れる2次空気流路11が形成されている。
また、内側燃焼用空気ノズル26の外周側には、外側燃焼用空気ノズル(3次燃焼用空気ノズル)27が設置されている。3次燃焼用空気ノズル27の内部には、3次空気(3次燃焼用空気)が流れる3次空気流路12が形成されている。
各燃焼用空気ノズル26,27は、ウインドボックス(風箱)28から空気を火炉22内に向けて噴出する。実施例1では、内側燃焼用空気ノズル26の下流端には、燃料ノズル21の中心に対して径方向外側に傾斜(下流側に行くに連れて径が拡大)するガイドベーン(第2の誘導部材)26aが形成されている。また、外側燃焼用空気ノズル27の下流部には、軸方向に沿ったスロート部27aと、ガイドベーン26aに平行する拡大部27bとが形成されている。したがって、各燃焼用空気ノズル26,27から噴出された燃焼用空気は、軸方向の中心から広がるように噴出される(流路24の混合流から離れるように誘導される)。
【0031】
図2において、内側燃焼用空気ノズル26の上流部には、2次燃焼用空気(2次空気)の流量を調整するためのスライド式のダンパ26cが設置されている。
また、外側燃焼用空気ノズル27の上流部には、3次燃焼用空気(3次空気)に対して、旋回成分を付与する旋回発生器27cが設置されている。
【0032】
また、燃料ノズル21の下流端の開口部には、保炎器31が設置されている。保炎器31の径方向外側には、径方向の外側に向けて延びるガイドベーン(第1の誘導部材)31aが形成されている。したがって、保炎器31のガイドベーン31aによって、流路24を流れる混合流に対して、内側燃焼用空気ノズル26を流れる燃焼用空気が、径方向の外側に分離するように誘導される。
【0033】
図2において、燃料ノズル21の内壁面には、ベンチュリ33が設置されている。ベンチュリ33は、上流側の径縮小部33aと、径縮小部33aの下流側に連続する最小径部33bと、最小径部33bの下流側に連続する径拡大部33cとを有する。径縮小部33aでは、下流側に向かうに連れて、流路24の内径は縮小する。また、径拡大部33cでは下流側に向かうに連れて、流路24の内径は拡大する。
したがって、実施例1のベンチュリ33では、燃料ノズル21に供給された燃料と搬送気体との混合流体が、径縮小部33aを通過する際に、径方向の内側に絞られる。したがって、燃料ノズル21の内壁面近傍に偏った燃料を中心側に移動させることが可能である。
【0034】
ベンチュリ33の下流側には、燃料濃縮器34が設置されている。燃料濃縮器34は、上流側の径拡大部34aと、径拡大部34aの下流側に連続する最大径部34bと、最大径部34bの下流側に連続する径縮小部34cとを有する。径拡大部34aは、下流側に向かうに連れて外径が拡大する。径縮小部34cは、下流側に向かうに連れて外径が縮小する。
したがって、実施例1の燃料濃縮器34では、燃料と搬送ガスとの混合流体に、径拡大部34aを通過する際に、径方向の外側に向かう速度成分が付与される。よって、燃料が燃料ノズル21の内壁面に向かって濃縮される
【0035】
図2において、ウインドボックス28の外壁の外側には、アンモニア供給管41が配置されている。アンモニア供給管41には、高圧のアンモニアガス(ガス燃料)が供給されている。アンモニア供給管41には、複数のアンモニア供給ノズル42が接続されている。本実施例では、図3に示すように、アンモニア供給ノズル42は、周方向に沿って間隔をあけて8つ配置されている。
アンモニア供給ノズル42は、直管状のノズル本体43と、ノズル本体43とアンモニア供給管41とを接続する湾曲するノズル接続部44とを有する。
【0036】
図4は本実施例のバーナのアンモニア供給ノズルの先端部分の拡大図である。
図5はアンモニア供給ノズルの先端部の末端部断面図である。
図2において、ノズル本体43は、アンモニア供給管41に、図示しないガイド管及びシールを介して、軸方向43bを中心として回転可能に支持されている。ノズル本体43は、ウインドボックス28や外側燃焼用空気ノズル27、内側燃焼用空気ノズル26の壁面を貫通している。図2、図4において、ノズル本体43の下流端43aは、燃焼用空気の流れ方向に対して、内側燃焼用空気ノズル26末端部に設置のガイドベーン26aよりも下流側、且つ、保炎器31に設置のガイドベーン31aよりも上流側に配置されている。
【0037】
図6はアンモニア供給ノズルの本体と湾曲するノズル接続部との連結部分の詳細説明図である。
図7はアンモニアの供給方向の説明図であり、図7(A)は図2に対応する説明図、図7(B)は中心軸方向斜めにアンモニアを噴射する場合の説明図、図7(C)は中心軸から逸れて斜めにアンモニアを噴射する場合の説明図である。
【0038】
図5において、ノズル本体43の先端部には、軸方向43bに対して角度θで傾斜する噴射口43cが形成されている。また、図6において、実施例のノズル本体43は、接続部44に固定支持された受部46に対して軸方向43bを中心として回転可能に支持されている。なお、ノズル本体43と接続部44とは、Oリング47を介してシール(密閉)されている。ノズル本体43には、回転調整のためのハンドル48が設置されている。試運転時やメンテナンス時に、ハンドル48を手動で操作して回転調整することにより、図7(B)及び図7(C)に示すように噴射方向を自在に設定可能である。
【0039】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のバーナ7では、微粉炭と搬送空気の混合流体は、燃料ノズル21から火炉22内に噴出される。また、燃焼用空気は、内側燃焼用空気(2次空気)と、外側燃焼用空気(3次空気)に分かれて火炉22に供給される。2次空気は保炎器31に設置のガイドベーン31aで外側に広げられ、3次空気は内側燃焼用空気ノズル26に設置のガイドベーン26aで外側に広げられて供給されるため、混合流体と2次空気および3次空気からなる外周空気51との間には、循環渦52が形成される。火炉22内の高温ガスは循環渦52内の循環流に乗ってバーナ7の出口部に戻されるため、混合流体はバーナ7の出口近傍で急速に着火される。
【0040】
ここで、燃料ノズル21から供給される微粉炭は、燃料濃縮器34で外周側(燃料ノズルの内壁面近傍)に濃縮され、微粉炭濃縮域を形成する。そして、火炉22内の高温ガスは、微粉炭濃縮域の近傍に戻されるため、急速着火の性能がさらに高められている。
急速着火でバーナ7の出口の中心軸近傍には、1次燃焼領域53が形成される。外周空気51は1次燃焼領域53から離れて供給されているため、1次燃焼領域53は、燃料過剰(空気不足)の還元条件となっている。
【0041】
具体的には、急速着火でバーナ7の出口部から形成された1次燃焼領域53の内部では、急速な燃焼反応が進行する。燃焼の進行により酸素(O2)が急速に消費される。そして、燃料(微粉炭)中のN分からは窒素酸化物(NO)が生成され、燃焼の主成分からは中間生成物としての炭化水素ラジカル(・HC)が急激に生成される。O2低下後の還元強化条件下では、発生した窒素酸化物(NO)と炭化水素ラジカル(・HC)との反応で、窒素元素を含むラジカル(・NX)が生成され、・NXとNOとの反応により、NOはN2へと還元される。
この還元領域(1次燃焼領域)53中にアンモニア(NH3)を噴出すると、・NHラジカルを経て優先的にN2への還元反応が進行する。
したがって、実施例1のバーナ7では、固体燃料とアンモニアとを混焼しつつ窒素酸化物の上昇が抑制される。
【0042】
また、実施例1のバーナ7では、混合流体と燃焼用空気(外周空気51)の隔壁(燃料ノズル21)先端部に、保炎器31のガイドベーン31aが設置されており、外周空気51(の2次空気)を混合流体から確実に分離している。したがって、分離されない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
【0043】
さらに、実施例1のバーナ7では、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aでも外周空気51の混合流からの分離が強化されている。よって、ガイドベーン26aを設けない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
また、実施例1のバーナ7では、外側燃焼用空気ノズル27に旋回発生器27cが設置されており、3次空気(外周空気51)が混合流に混合されにくく、混合流からの分離が強化されている。したがって、旋回発生器27cを設けない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
【0044】
また、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の下流端が、保炎器31のガイドベーン31aよりも上流側に配置されている。アンモニア供給ノズル42が保炎器31よりも火炉22の内部まで伸びていると、アンモニア供給ノズル42が焼損する恐れがある。これに対して、実施例1では、アンモニア供給ノズル42がガイドベーン31aよりも上流側に配置されており、上流側から送り込まれる2次空気によるシールで炎から保護されるとともに、2次空気で冷却される。したがって、アンモニア供給ノズル42の焼損が抑制される。
さらに、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の下流端が、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも下流側に配置されている。そのため、ガイドベーン26aに沿って広がる燃焼用空気の流れの影響を受けることなくアンモニアを供給可能であり、還元域へアンモニアを供給し易くなる。
【0045】
また、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の噴射方向が調整可能に構成されている。したがって、図7(A)に示すように、還元領域53の中心部にアンモニアを集中させることも可能である。また、図7(B)に示すように、還元領域53の外縁部にアンモニアを寄せることも可能である。よって、還元領域53内において、アンモニアの集中、分散を自在に調整可能である。したがって、使用する微粉炭の種類やN分の割合、燃焼用空気の量等、使用環境に応じて、アンモニア中のN分を効率的にN2に還元するために適切な分散度合に応じて、噴射方向を調整することが可能である。
【0046】
さらに、実施例1ではアンモニア供給管41の上流部には図示しない制御弁が設けられており、アンモニアの供給量を制御することが可能である。したがって、固体燃料とアンモニアとの割合(混合比)を、アンモニア中のN分を効率的にN2に還元するために適切な割合に応じて調整、制御することが可能である。
特に、アンモニアの燃焼による入熱の比率が50%以下となるように、微粉炭とアンモニアとの割合を制御することが望ましい。アンモニアの入熱を多くして、微粉炭を減らしすぎると、火炎が安定しなくなる恐れがあるため、アンモニアの燃焼による入熱の比率が50%以下となるように、調整することが望ましい。
【0047】
また、実施例1では、火炉22において、バーナ7よりも下流側に燃焼用空気を供給する追加ノズル3が設置されている。したがって、バーナ7での燃焼の後、追加ノズル3の位置以降でも燃焼(2段燃焼)を行うことで、火炉22内での窒素酸化物の発生を低減することができる。
さらに、実施例1では、バーナ7から供給される全空気量(燃料ノズル21からの混合流体に含まれる空気や2次空気、3次空気の総量)が、還元領域53での還元反応で必要な理論空気量以下となるように設定されている。したがって、空気が多くて還元領域53での還元が弱くなってNOxの発生量が上昇することを抑制できる。
【0048】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、アンモニア供給ノズル42は、噴射方向を調整可能な構成とすることが望ましいが、これに限定されない。噴射方向が調整不能な構成とすることも可能である。また、ノズル本体43を回転させて噴射方向を調整する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、先端部に、複数の噴射口を形成し、各噴射口をシャッタで開閉可能な構成としておいて、噴射方向に応じて、シャッタを開閉するような構成等、任意の構成を採用可能である。
【0049】
(H02)前記実施例において、アンモニア供給ノズル42の下流端は、保炎器31のガイドベーン31aよりも上流側、且つ、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも下流側とすることが望ましいが、これに限定されない。焼損対策を行った上で保炎器31のガイドベーン31aよりも下流側に配置したり、アンモニアの噴射圧力を高くして内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも上流側とすることも可能である。
【0050】
(H03)前記実施例において、旋回発生器27cを設けることが望ましいが、設けない構成とすることも可能である。また、旋回発生器27cは、外側燃焼用空気ノズル27の上流部に設置する構成を例示したが、下流部(出口付近)に設けることも可能である。
(H04)前記実施例において、ガイドベーン26a,31aの形状や大きさは、実施例に例示した構成に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。また、ガイドベーン26a,31aを設けることが望ましいが、設けない構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…燃焼装置、
3…追加ノズル、
7…バーナ、
21…燃料供給ノズル、
22…火炉、
26,27…燃焼用空気ノズル、
26a…第2の誘導部材、
27c…旋回発生器、
31a…第1の誘導部材、
42…アンモニア供給ノズル、
53…還元領域。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、
前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、
前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルであって、前記第2の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの下流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズルと、
を備えたことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流が供給される燃料供給ノズルと、
前記燃料供給ノズルの外側に配置され、燃焼用空気を前記混合流から分離して供給する流路と、
前記燃料供給ノズルの出口よりも下流側で燃料への着火と燃焼進行により搬送ガス中の酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域であって、前記燃料供給ノズルから供給された混合流と前記流路から供給された燃焼用空気との間に形成される領域よりも内側に形成されて、前記混合流が供給される前記還元領域に向けて、アンモニアを供給可能なアンモニア供給ノズルと、
前記燃焼用空気の流路出口部に設置され、外周空気の前記混合流からの分離を強化する第2の誘導部材と、
前記第2の誘導部材を貫通して設置されて前記還元領域にアンモニアを供給可能な前記アンモニア供給ノズルと、
を備えたことを特徴とするバーナ。
【請求項3】
前記混合流と前記燃焼用空気の隔壁先端部に設置され、前記燃焼用空気を前記混合流から分離するように誘導する第1の誘導部材、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のバーナ。
【請求項4】
前記第1の誘導部材よりも前記燃焼用空気の流れの上流側に下流端が配置された前記アンモニア供給ノズル、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載のバーナ。
【請求項5】
前記燃焼用空気の流路に配置され、前記燃焼用空気を前記混合流から分離させる旋回発生器、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバーナ。
【請求項6】
アンモニアの噴射角度が調整可能な前記アンモニア供給ノズル、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバーナ。
【請求項7】
固体燃料の燃焼による入熱とアンモニアの燃焼による入熱の比率を調整可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバーナ。
【請求項8】
アンモニアの燃焼による入熱の比率を50%以下とすることを特徴とする請求項7に記載のバーナ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のバーナが設置された火炉と、
前記火炉においてバーナよりも下流側に燃焼用の空気の一部を分離して供給する追加ノズルと、
を備えたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項10】
前記バーナから供給される全空気流量を理論空気量以下にする
ことを特徴とする請求項9に記載の燃焼装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-17 
出願番号 P2018-098016
審決分類 P 1 651・ 83- YAA (F23D)
P 1 651・ 121- YAA (F23D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 平城 俊雅
山崎 勝司
登録日 2020-12-21 
登録番号 6813533
権利者 三菱パワー株式会社
発明の名称 バーナおよび燃焼装置  
代理人 亀井 岳行  
代理人 亀井 岳行  

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