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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1386133
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-12 
確定日 2022-04-13 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6812454号発明「着色されたブランク及びブランクを製造する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6812454号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−30〕、〔31−42〕について訂正することを認める。 特許第6812454号の請求項1〜3、5、7〜42に係る特許を維持する。 特許第6812454号の請求項4及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
(1)特許第6812454号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜42に係る特許についての出願(特願2018−549935号)は、2017年(平成29年)3月20日(パリ条約による優先権主張 2016年3月23日、2016年4月7日 いずれも(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日として出願され、令和2年12月18日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項1〜42に係る特許について、令和3年7月12日に特許異議申立人 松永健太郎(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審より、同年9月29日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である同年12月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。
なお、令和4年1月19日付けで当審から申立人に対して意見書を提出する機会を与えたが(特許法第120条の5第5項)、申立人から意見書は提出されなかった。

(2)上記手続において提出された証拠方法は、次のとおりである(以下、甲第1号証〜甲第5号証は、それぞれ「甲1」・・・「甲5」と略して記載する。)。

甲1:特開2010−222466号公報
甲2:国際公開第2015/084931号
甲2の2:特表2016−540772号公報(甲2に対応する日本語公表公報)
甲3:特開2004−35332号公報
甲4:特開2014−218418号公報
甲5:特開2008−68079号公報
<以上、申立人が特許異議申立書とともに提出>

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正しようとするものであって、その内容は、以下の訂正事項1〜13のとおりである(なお、訂正箇所には当審が下線を付した。)。
ここで、訂正前の請求項5〜8、14、16〜18、30は請求項1〜3を引用しているので、これらの請求項は訂正事項1〜9により訂正される請求項1〜3に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項4は請求項2又は3を引用しているので、当該請求項は訂正事項4〜9により訂正される請求項2又は3に連動して訂正されるものである。
請求項9〜13、15は請求項1を直接的又は間接的に引用しているので、これらの請求項は訂正事項1〜3により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
請求項19〜24、27〜29は請求項2を直接的又は間接的に引用しているので、これらの請求項は訂正事項4〜6により訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
請求項25〜26は請求項3を直接的又は間接的に引用しているので、これらの請求項は訂正事項7〜9により訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
請求項32〜42は請求項31を直接的又は間接的に引用しているので、これらの請求項は訂正事項13により訂正される請求項31に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1〜30及び請求項31〜42は、それぞれ特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1〜4、6、7について訂正する訂正事項1〜12、及び訂正前の請求項31について訂正する訂正事項13は、一群の請求項についてされたものである。

(1)一群の請求項1〜30に係る訂正について
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「主成分としての二酸化ジルコニウムを粉末形態で原材料に混合することによって」とあるのを、「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる1つの要素」とあるのを、「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマス」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なる」とあるのを、「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである」に訂正する。

なお、上記訂正事項1〜3に関して、訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項5、7〜18、30も同様に訂正されることになる。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「主成分としての二酸化ジルコニウムを粉末形態で原材料に混合することによって」とあるのを、「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる1つの要素」とあるのを、「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマス」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なる」とあるのを、「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである」に訂正する。

なお、上記訂正事項4〜6に関して、訂正後の請求項2を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項5、7〜8、14、16〜24、27〜30も同様に訂正されることになる。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3に「主成分としての二酸化ジルコニウムを粉末形態で原材料に混合することによって」とあるのを、「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって」に訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる1つの要素」とあるのを、「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマス」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3に「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なる」とあるのを、「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである」に訂正する。

なお、上記訂正事項7〜9に関して、訂正後の請求項3を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項5、7〜8、14、16〜18、25〜26、30も同様に訂正されることになる。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至6のいずれか1項」とあるのを、「請求項1乃至3、5のいずれか1項」に訂正する。

(2)一群の請求項31〜42に係る訂正について
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項31に「前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせる前記要素の含有量は、前記第2のセラミック材料(20)における含有量とは異なる」とあるのを、「前記第1のセラミック材料(14)及び前記第2のセラミック材料(20)は着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42)において蛍光効果を生じさせるビスマス含み、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、
前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせるビスマスの含有量は、前記第2のセラミック材料(20)における含有量とは異なる」に訂正する。

なお、訂正後の請求項31を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項32〜42も同様に訂正されることになる。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項1〜30に係る訂正について
ア 訂正事項1、4、7について
訂正事項1、4、7は、令和3年9月29日付け取消理由通知書で指摘した、訂正前の請求項1〜3の記載から「原材料」が「主成分としての二酸化ジルコニウム」を含むのか否か明らかでなく、「主成分としての二酸化ジルコニウム」と「原材料」の関係が明確でないという趣旨の取消理由1(1)アに対応して、訂正前の請求項1〜3の「主成分としての二酸化ジルコニウムを粉末形態で原材料に混合することによって」という記載を「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって」とすることにより、「原材料」は主成分として二酸化ジルコニウムを含む原材料であることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、
「【0073】
最初に、第1の原材料バリアントIIの粉末を金型10に充填する、というのも、この材料は切歯の材料として使用されるためである。対応する粉末は、結合剤を含有し得る。
・・・
【0075】
続いて、材料14に、むしろこの材料によって成形された層に、プレススタンパ16によって開キャビティ18が成形される。・・・キャビティ18が成形された後(図2b)、プレススタンパ16が取り除かれ、カラーVITAカラーA2を有する歯科補綴物を製造するために、キャビティ18内に次の組成を有し得る第2のセラミック材料20が充填される:
91.66重量%の原材料1二酸化ジルコニウムバリアントI
3.26重量%の原材料2
2.0重量%の原材料3(二酸化ジルコニウムバリアントIを有する)
3.0重量%の原材料4(二酸化ジルコニウムバリアントIを有する)
0.08重量%の原材料5(二酸化ジルコニウムバリアントIを有する)
・・・」との記載があり、さらに、【0062】には、
「・・・
原材料1二酸化ジルコニウムバリアントI(無着色二酸化ジルコニウム粉末)(重量%):
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O3 4.5乃至7.0
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+避けられない不純物)
原材料1二酸化ジルコニウムバリアントII(無着色二酸化ジルコニウム粉末)(重量%):
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O3 7.0乃至9.5
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+避けられない不純物)
原材料2:Y2O3を含まず、9.2重量%の酸化エルビウム(Er2O3)含有量を有する二酸化ジルコニウムバリアントII
原材料3;二酸化ジルコニウムベース、0.04重量%の酸化コバルト(Co3O4)含有量を有するバリアントI又はバリアントII
原材料4;二酸化ジルコニウムベース、2.0重量%の酸化テルビウム(Tb2O3)含有量を有するバリアントI又はバリアントII
原材料5;二酸化ジルコニウムベース、0.3重量%の酸化ビスマス(Bi2O3)含有量を有するバリアントI又はバリアントII
・・・」
と記載されている。
これらの記載によれば、「原材料」は主成分として二酸化ジルコニウムを含む原材料と認められるから、訂正事項1、4、7は新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2、5、8について
訂正事項2、5、8は、本件明細書【0009】の「特に、粉末形態の原材料の1つが蛍光効果を生じさせる要素として、(天然不純物を度外視して)ビスマスのみを含有することが意図されており」との記載や、訂正前の請求項4の「ビスマスが前記蛍光効果を生じさせる前記要素として使用されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。」との記載に基づいて、訂正前の請求項1〜3における「蛍光効果を生じさせる1つの要素」を「蛍光効果を生じさせるビスマス」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3、6、9について
訂正事項3、6、9は、訂正前の請求項6の記載に基づき、訂正前の請求項1〜3における「粉末形態の原材料」について、「粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がない」ことをさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項10、11について
訂正事項10、11は、それぞれ訂正前の請求項4、6を削除するものである。したがって、訂正事項10、11は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項12について
訂正事項12は、訂正事項10、11によって請求項4、6が削除されたため、訂正前の請求項7における引用請求項「請求項1乃至6のいずれか1項」を「請求項1乃至3、5のいずれか1項」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項12は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、このような訂正事項12は新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)一群の請求項31〜42に係る訂正について
カ 訂正事項13について
訂正事項13は、本件明細書【0009】における「本発明は、主として、粉末形態の原材料として、天然不純物を除いて少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、しかし鉄を含まない、が着色要素として使用され、粉末形態の原材料の少なくとも1つは、歯科修復物において蛍光効果を生じさせる要素を含有する。特に、粉末形態の原材料の1つが蛍光効果を生じさせる要素として、(天然不純物を度外視して)ビスマスのみを含有することが意図されており、」との記載に基づいて、訂正前の請求項31におけるブランクの「前記第1のセラミック材料(14)及び前記第2のセラミック材料(20)」について、これらが「着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42)において蛍光効果を生じさせるビスマス含み、天然の不純物を除いて、鉄は存在」しないことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項13は、上記取消理由通知書で取消理由1(2)として指摘した、訂正前の請求項31の「前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせる前記要素の含有量は、」という記載おいて「前記」の意味するところ明らかでないという趣旨の取消理由に対応して、前記記載を「前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせるビスマスの含有量は、」として明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
そして、このような訂正事項13は新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課されない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜30〕、〔31〜42〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1〜3、5、7〜42に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜3、5、7〜42に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」等という。訂正箇所に下線を付した。)。

「【請求項1】
歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)を製造する方法であって、前記方法は、
主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである、
前記第1の混合物から成る第1のセラミック材料(14)の層を金型(10)に導入し、
前記層に第1の開キャビティ(18)を成形し、
前記第2の混合物から成る少なくとも第2のセラミック材料(20)を前記第1の開キャビティに導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)を製造する方法であって、前記方法は、
主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである、
金型内の第1の層(114)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、この層の表面は前記第1の層の前記表面(118)として構造化され、表面に沿って見ると異なる高さの領域を有し、そして、
その後、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(124)を前記金型に導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)を製造する方法であって、前記方法は、
主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである、
金型(110)内の第1の層(214)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、
金型(110)内の前記第1の層の頂部にさらなる層(227)を充填し、前記さらなる層は前記第1の層の混合物とは異なる混合物から成り、
中間層(228)の形態のさらなる層の材料を前記第1の層の材料に混合し、そして、
その後、金型(110)内に、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(224)を導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
自然に生じる不純物を除いて、粉末形態の第1の原材料は前記蛍光効果を生じさせる前記要素としてビスマスを含有し、及び/又は、粉末形態の第2の原材料はテルビウムのみ又はテルビウムとプラセオジムとを含有し、及び/又は、粉末形態の第3の原材料はエルビウムのみを含有し、及び/又は、粉末形態の第4の原材料は、コバルトのみ又はコバルトとマンガン及び/又はセリウムを含有することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
粉末形態の前記原材料は、イットリウムで安定化した二酸化ジルコニウムを含有し、以下の組成:
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O34.5乃至9.5
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+不可避的不純物)
であることを特徴とする、
請求項1乃至3、5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
粉末形態の前記原材料は、
以下の組成:
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O3 4.5乃至7.0
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+避けられない不純物)
又は
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O37.0乃至9.5
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+避けられない不純物)、
であることを特徴とする、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のセラミック材料(20)の導入後に、第2の開キャビティ(26,36)がそれに生成されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の開キャビティ(36)に前記第1及び/又は第2のセラミック材料(20)の組成とは異なる組成を有する第3のセラミック材料(38)が充填されることを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のセラミック材料(14)から成形された前記層において複数の第1の開キャビティ(18)が成形され、これらの中にセラミック材料(20)が充填されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック材料(18)は、前記第2のセラミック材料であることを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の第1の開キャビティ(18)の少なくともいくつかは異なる内部形状を有することを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のセラミック材料(20)として、完全密度までの前記焼結後に、前記第1のセラミック材料(14)の熱膨張係数より0.2乃至0.8μm/m*K大きい熱膨張係数を有する材料が使用されることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の開キャビティ(18)の内部形状は、歯の残根などの、修復物が提供される歯の顎領域の形状に、又は顎領域から生じる支台歯の形状に幾何学的に適合することを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ブランク(28,48)から前記歯科修復物を加工するとき、前記歯科修復物の象牙質領域は、少なくとも部分的に前記第2のセラミック材料(20)から構成され、及び切歯領域は、前記第1のセラミック材料(14)から構成されることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び/又は第2のセラミック材料(14,20)として、前記第1の材料における酸化イットリウム含有量が7.0重量%乃至9.5重量%であり、及び/又は、前記第2の及び/又は第3の材料における前記含有量が4.5重量%乃至7.0重量%であるように、材料を選択し、ここにおいて前記第1のセラミック材料における酸化イットリウム含有量が前記第2又は第3の材料の酸化イットリウム含有量よりも高いことを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項18】
選択されたセラミック材料において、予備焼結後の前記材料(14,20)における二酸化ジルコニウムの正方晶相と立方晶相との比率は1以上であることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層(114)の前記表面(118)は、窪み部及び隆起部が生成され、ここにおいて後者が前者を収容するように構造化されていることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記表面(118)の上面図において、前記生成された構造体は、窪み部とそれらに接する隆起部とを備える環状パターンを有することを特徴とする、
請求項2又は19に記載の方法。
【請求項21】
構造体は、前記第1の層(114)に対して移動し、および、波状、櫛状又は鋸歯状を有するように具体化されるセグメントを有する前記第1の層(114)の前記表面の領域を構造化する要素(116)によって生成されることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項22】
構造体は、前記第1の層(114)の前記表面(118)に対して垂直の方向に沿って作用する圧力要素によって生成されることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項23】
用いられる前記圧力要素は、同軸に又は平行に延びる隆起部と、前記隆起部の間に延びる窪み部とを前記第1の層(114)の前記表面(118)にインプリントすることを特徴とする、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
隆起部の容積が窪み部の容積と等しいか又はほぼ等しくなるように構造体が成形されることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記さらなる層(227)の前記混合物の材料は、追加の前記層の高さの2倍又は約2倍の高さに対応する高さに沿って追加の前記層の自由表面から下方に向かって、前記第1の層(214)の前記混合物の材料と混合されることを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項26】
前記さらなる層(227)に使用される前記混合物は、前記第2の層(124,224)の混合物と同一であることを特徴とする、
請求項3又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の層(114)と前記第2の層(124)との接触する領域が、1/15H乃至1/4Hに対応する高さにわたって混合されており、ここにおいて、Hは前記第1の層及び前記第2の層の全高であることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の層(114)と前記第2の層(124)との接触する領域は、1/10H乃至1/5Hに対応する高さであることを特徴とする、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
構造化されていない状態の前記第1の層(114)は、前記第1の層及び前記第2の層(114,124)の全高Hの半分又は約半分の高さに対応する高さを有することを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項30】
第1の層(114)及び第2の層(124)のために使用される混合物は、予備焼結の後に前記第1の層及び前記第2の層の両方における前記二酸化ジルコニウムの立方晶相に対する正方晶相の比率が1以上であることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項31】
二酸化ジルコニウムを含有し種々の組成の領域を有するセラミック材料から成る歯科修復物(42)の製造に使用される予備焼結又は完全に焼結されたブランク(28,48)、であって、ここにおいて、第1の領域(28)は、第1のセラミック材料(14)から成り、少なくとも第2の領域(34)は異なる組成の第2のセラミック材料(20)から成り、それら領域は互いに隣接し、
前記第2の領域(34,52,54,56)が第1の領域(32)内に延び、ベース領域(35)又はベース表面からの距離が増加するにつれて狭くなる外部形状を有し、
前記第1のセラミック材料(14)および前記第2のセラミック材料(20)は着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42)において蛍光効果を生じさせるビスマス含み、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、
前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせるビスマスの含有量は、前記第2のセラミック材料(20)における含有量とは異なることを特徴とする、
ブランク。
【請求項32】
前記第2の領域(34)の前記ベース領域(35) 又 は 前記ベース表面は、前記第1の領域(32)の外面(33)の領域に延びることを特徴とする、
請求項31に記載のブランク。
【請求項33】
前記第2の領域(34)は、そのベース領域(35)又はベース表面から生じるキャビティ(26)を有することを特徴とする、
請求項31又は32に記載のブランク。
【請求項34】
第2の領域(34)は、円錐状の外形を有することを特徴とする、
請求項31乃至33のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項35】
前記第2の領域(34)内に、第3の領域(38)が延び、それは、前記第1及び/又は第2のセラミック材料(14,20)の組成とは異なる組成を有する第3のセラミック材料から成ることを特徴とする、
請求項31乃至34のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項36】
第1の領域(32,50)は、いくつかの第2領域(52,54,56)を取り囲んでいることを特徴とする、
請求項31乃至35のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項37】
複数の前記第2の領域(52,54,56)の少なくともいくつかは、異なる外形を有することを特徴とする、
請求項36に記載のブランク。
【請求項38】
前記ブランク(28,48)は、酸化イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする、
請求項31乃至37のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項39】
第2の、又は第3のセラミック材料(20)における酸化イットリウム含有量は、4.5重量%乃至7.0重量%であるのに対し、前記第1のセラミック材料(14)においてそれは7.0重量%乃至9.5重量%である、ここにおいて、前記第1のセラミック材料における前記酸化イットリウム含有量は、前記第2のセラミック材料においてよりも多いことを特徴とする、
請求項38に記載のブランク。
【請求項40】
前記第2のセラミック材料(20)は、前記第1のセラミック材料(14)とは異なる色に着色されていることを特徴とする、
請求項31乃至38のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項41】
完全密度までの焼結後に、前記ブランク(28)から製造された前記修復物(42)は、切歯側においてよりも象牙質側において高い強度を有し、及び/又は、前記象牙質側においてよりも前記切歯側において高い透光性を有し、及び/又は、切歯領域においてよりも象牙質領域において、蛍光効果を生じさせる要素の高い含有量を有することを特徴とする、
請求項31乃至40のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項42】
前記第1の領域(32,50)の熱膨張係数は、前記第2の領域(34)及び/又は第3の領域(38)の熱膨張係数より0.2μm/m*K乃至0.8μm/m*K低いことを特徴とする、
請求項31乃至41のいずれか1項に記載のブランク。」

第4 令和3年9月29日付け取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の要旨
(1)取消理由1(明確性
請求項1〜42に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
請求項1〜3、5〜42に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(進歩性
請求項1〜4に係る特許は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲2に記載された発明、並びに、甲2〜5の記載事項及び慣用技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

なお、取消理由は、異議申立理由を全て含むものである。

2 取消理由1(明確性)についての当審の判断
(1)請求項1〜3、5、7〜30について
ア 取消理由通知書では、訂正前の請求項1〜30について、取消理由1(1)として以下の(ア)〜(エ)の点を指摘した。

(ア)請求項1の記載から、「原材料」が「主成分としての二酸化ジルコニウム」を含むのか否か明らかでなく、「主成分としての二酸化ジルコニウム」と「原材料」の関係が明確であるとはいえない。
また、【0073】では、「第1の原材料バリアントIIの粉末」(【0062】のとおり無着色二酸化ジルコニウム粉末である。)が他の原材料と混合されることなく、金型に充填されている(つまり、「第1の混合物から成る第1のセラミック材料」として用いられている)。しかし、請求項1の記載によれば、前記「第1の原材料バリアントIIの粉末」のような、他の原料と混合されない無着色二酸化ジルコニウム粉末は、「第1の混合物」や「第1の混合物から成る第1のセラミック材料」には該当しないと解されるものの、上記のように、「主成分としての二酸化ジルコニウム」と「原材料」の関係が明確でないことを踏まえると、請求項1で意図している「第1の混合物」や「第1の混合物から成る第1のセラミック材料」についても明確であるとはいえない。
請求項2、3に記載の「主成分としての二酸化ジルコニウム」と「原材料」の関係、「第1の混合物」や「第1の混合物から成る第1のセラミック材料」についても同様に明確でない。

(イ)請求項1の「主成分としての二酸化ジルコニウムを粉末形態で原材料に混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、」との規定において、「原材料」は、複数の原材料の混合物とされてはいない。
一方、請求項1の「少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し」との規定を考慮すると、同項の「粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる1つの要素が使用され」との規定を満たすためには、各々1つの着色要素を含有する「原材料」を複数使用する必要がある。
そうすると、請求項1において、「主成分としての二酸化ジルコニウムを粉末形態で原材料に混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、」との規定における「原材料」と、「少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し」との規定における「原材料」が対応せず、請求項1の記載は不明確である。
請求項2、3の同様の記載についても、上記と同様のことがいえる。

(ウ)請求項1における「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる」「要素」に如何なるものが包含されるのか、明確でない。
請求項2、3における「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる」「要素」についても同様である。

(エ)請求項1の「前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる1つの要素が使用され」との記載は、「着色要素」には、「少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト」及び「・・・蛍光効果を生じさせる1つの要素」が含まれるものと理解できるが、本件明細書【0009】〜【0012】には、「着色要素」と「蛍光要素」は別の成分として記載されているから、請求項1の記載における「着色要素」と「・・・蛍光効果を生じさせる1つの要素」との関係が不明確である。
請求項2、3の同様の記載についても同様に明らかでない。

イ 本件訂正後の請求項1〜3には、「原材料」に関して、「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され」と記載されている。
そして、当該記載によれば、以下の点が特定されていると解される。
(i)「原材料」が主成分として二酸化ジルコニウムを含むものであること
(ii)「第1及び第2の混合物」は、「各々1つの着色要素を含有」する「少なくともいくつかの」「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって」生成されること
(iii)「粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され」ること

ウ そうすると、上記ア(ア)〜(エ)の点については、上記(i)〜(iii)のとおり、原材料が主成分として二酸化ジルコニウムを含み、第1及び第2の混合物は、各々1つの着色要素を含有する主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって生成され、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、テルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用されると解されるから、明確であるといえる。

(2)請求項31〜42について
ア 取消理由通知書では、訂正前の請求項31〜42について、取消理由1(2)として以下の点を指摘した。
独立形式請求項である請求項31の「前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせる前記要素の含有量は、」という記載において「前記」の意味するところが明らかでない。仮に、「前記要素」が請求項1〜3の「前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせる」「要素」のことであるとしても、これに如何なるものが包含されるのか明確でないから、「前記要素」についても同様に明確でない。

イ 本件訂正後の請求項31には、「前記第1のセラミック材料(14)および前記第2のセラミック材料(20)は着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42)において蛍光効果を生じさせるビスマス含み、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、
前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせるビスマスの含有量は、」と記載されており、「前記要素」との記載はない。
そして、請求項31には「蛍光効果を生じさせる」ものが「ビスマス」であることが特定されているから、上記アの点は明確であるといえる。

(3)小括
以上のとおりであるから、訂正後の請求項1〜3、31の記載は明確であり、本件発明1〜3及び請求項1〜3のいずれかを直接的又は間接的に引用する本件発明5、7〜30、並びに、本件発明31及び請求項31を直接的又は間接的に引用する本件発明32〜42は明確であるから、本件訂正により取消理由1は解消した。

3 取消理由2(サポート要件)についての当審の判断
(1)請求項1〜3、5、7〜30について
ア 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明(特に、【0008】)の記載によれば、本件発明1〜3及び請求項1〜3の少なくともいずれかを直接的又は間接的に引用する本件発明5、7〜30が解決しようとする課題は、「完成した修復物が所望の色を有するだけでなく、少なくとも天然歯の蛍光特性に近い蛍光特性を有するような、歯科修復物の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランクを提供すること」であると認められる。

ウ そして、発明の詳細な説明(【0062】、【0099】〜【0120】)には、主成分として二酸化ジルコニウムを含み、天然の不純物を除いて着色要素がない原材料1と、主成分として二酸化ジルコニウムを含み、エルビウム、コバルト、テルビウム、又は蛍光効果を生じさせるビスマスである着色要素を各々1つ含有する原材料2〜5であって、天然の不純物を除いて鉄は存在しない原材料1〜5を用い、これらを混合して得られる、組成及びビスマスの含有量が異なる2種類の混合物を、異なる組成のセラミックス材料からなる複数の層を含有するように金型内に充填し、その後、圧縮及び焼結することが記載され、このような場合に、完成した歯の修復物において所望の蛍光特性を得られることも記載されている(【0107】)。

エ したがって、当業者は、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、本件発明1〜3の原材料・混合物及び工程により、天然歯の蛍光特性に近い蛍光特性が得られると理解できるから、当該発明の課題を解決できると認識できる。
同様の理由により、請求項1〜3の少なくともいずれかを直接的又は間接的に引用する本件発明5、7〜30は、本件出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

(2)請求項31〜42について
ア 本件発明31及び請求項31を直接的又は間接的に引用する本件発明32〜42が解決しようとする課題は、上記(1)イで説示したものと同じである。

イ ここで、訂正後の請求項31においては、「第1の領域(28)は、第1のセラミック材料(14)から成り、少なくとも第2の領域(34)は異なる組成の第2のセラミック材料(20)から成り、それら領域は互いに隣接」すること、「前記第1のセラミック材料(14)および前記第2のセラミック材料(20)は着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42)において蛍光効果を生じさせるビスマス」を含むこと、そして、「天然の不純物を除いて、鉄は存在」しないこと、さらに、「前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせるビスマスの含有量は、前記第2のセラミック材料(20)における含有量とは異なる」ことが特定されている。

ウ そして、上記(1)ウで説示したように、発明の詳細な説明(【0062】、【0099】〜【0120】)には、主成分として二酸化ジルコニウムを含み、天然の不純物を除いて着色要素がない原材料1と、主成分として二酸化ジルコニウムを含み、エルビウム、コバルト、テルビウム又は蛍光効果を生じさせるビスマスである着色要素を各々1つ含有する原材料2〜5であって、天然の不純物を除いて鉄は存在しない原材料1〜5を用い、これらを混合して得られる、組成及びビスマスの含有量が異なる2種類の混合物を、異なる組成のセラミックス材料からなる複数の層を含有するように金型内に充填し、その後、圧縮及び焼結することが記載され、このような場合に、完成した歯の修復物において所望の蛍光特性を得られることも記載されている(【0107】)。

エ したがって、当業者は、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、本件発明31の、第1のセラミック材料からなる第1の領域及び第2のセラミック材料からなる第2の領域を有する、予備焼結又は完全に焼結されたブランクにより、天然歯の蛍光特性に近い蛍光特性が得られると理解できるから、当該発明の課題を解決できると認識できる。
同様の理由により、請求項31を直接的又は間接的に引用する本件発明32〜42は、本件出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1〜3、5、7〜42は、本件出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、本件訂正により取消理由2は解消した。

4 取消理由3(進歩性)についての当審の判断
(1)甲2に記載された事項及び甲2発明
原文は外国語であるため、甲2の2に基づく翻訳文を記載する。
なお、甲2における「ZrO2」は、一般的な記載のとおり「ZrO2」として記載した。他の酸化物についても同様である。また、引用箇所等に付した下線は、特に言及がない限り、いずれも当審によるものである。

(摘記2a)
「1.多孔質ジルコニア材料を含み、機械加工装置に取り付けるか又は固定することを可能とする形状を有する歯科用ミルブランクであって、
重量%を前記多孔質ジルコニア材料の重量に対するものとして、前記多孔質ジルコニア材料が、以下の酸化物、すなわち、
○ZrO2として計算される酸化ジルコニウムを、約80〜約97重量%、
○Al2O3として計算される酸化アルミニウムを、約0〜約0.15重量%、
○Y2O3として計算される酸化イットリウムを、約1〜約10重量%、
○Bi2O3として計算される酸化ビスマスを、約0.01〜約0.20重量%、
○Tb2O3として計算される酸化テルビウムを、約0.01〜約0.8重量%、
及び場合により以下の酸化物の1つ又は2つ、すなわち、
○Er2O3として計算される酸化エルビウムを、約0.01〜約3.0重量%、
○MnO2として計算される酸化マンガンを、約0.0001〜約0.08重量%、含み、
前記多孔質ジルコニア材料が、Fe2O3として計算される酸化鉄を、約0.01重量%を上回る量で含まない、歯科用ミルブランク。
・・・
9.請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクを製造する方法であって、
○それぞれの酸化物の粉末を混合して粉末混合物を得る工程と、
○前記粉末混合物をプレスする工程と、を含む方法。」(特許請求の範囲の請求項1〜9)

(摘記2b)
「本発明は、蛍光特性を有する着色されたジルコニアセラミック歯科用ミルブランク、かかるミルブランクの製造方法、及び、詳細には、ジルコニアセラミック歯科用修復物を製造するためのその使用に関する。」(p.1の6〜8行;甲2の2【0001】)

(摘記2c)
「米国特許第US 8,541,329 B2号(Ivoclar)は、ZrO2に基づいた組成物、及び酸化セラミックから製造された単色及び多色ブランクに関するものである。ZrO2に基づいた好ましい組成物には、Pr2O3として計算されたPrを0.0001〜0.01重量%の量で、Fe2O3として計算されたFeを0.005〜0.5重量%の量で、Tb2O3として計算されるTbを0.0001〜0.1重量%の量で、及びMn2O3として計算されるMnを0.0001〜0.1重量%の量で含むものがある。
しかしながら、特に最近の歯科用材料に対して満たされるべき要件に関しては、今なお改善の余地がある。患者と歯科医は昨今、審美性の高い歯科用修復物に対する要求を増している。

発明の実施の形態(当審注:左記の下線は原文に記載されたものである。)
本文書に述べられる本発明の課題の1つは、審美的に優れた歯科用修復物を製造するために使用することができる歯科用ミルブランクを提供する際に明らかとなる。歯科用修復物は、自然の歯の色とマッチするだけでなく、光沢のある外観も有さなければならない。この課題は、本文書に述べられる歯科用ミルブランク及び関連するその製造プロセスによって解決することができる。」(p.2の12〜26行;甲2の2【0009】〜【0011】)

(摘記2d)
「ビスマスは、青色光を最大に発光するのみでなく、緑、黄、橙色、及び赤色光も発光する、自然な外観の蛍光スペクトルを生じることから、歯科用ジルコニアに蛍光を加えるうえで優れた添加剤であることが見出されている。」(p.9の6〜9行;甲2の2【0053】の3〜6行)

(摘記2e)
「Bi2O3とともにジルコニア材料中に存在する以下の着色酸化物の組み合わせ、すなわち、MnO2とTb2O3、Er2O3とTb2O3が特に有用であることが見出されているが、Er2O3とTb2O3の組み合わせが、より良好で改善された歯の色を得るうえでしばしばより好ましい。鉄イオンがまったく、又は実質的にまったく存在しないことが好ましい。したがって、ジルコニア材料は、鉄イオンを実質的に含まない。しかしながら、製造プロセスに起因して、微量の鉄イオンが材料中に依然として存在することが避けられない場合がある。しかしながら、鉄イオンの含有量(酸化物として計算したもの)が本文書に述べられる範囲を上回る場合には、歯科用物品の光沢のある輝いた所望の外観を適切に得ることができない。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、鉄を着色剤として使用することにより、蛍光を引き起こすために必要とされる紫外線、若しくは放射された青色の蛍光自体、又は更にはこれらの両方が、鉄イオンによって吸収されることで失われ、所望の外観が得られなくなるものと考えられる。」(p.12の18〜29行;甲2の2【0065】)。

(摘記2f)
「かかる方法による多孔質セラミックジルコニア材料の製造は、混合及び粉砕の手法を用いた方法と比較した場合に、材料中に着色及び蛍光酸化物をより均質に分布させることがしばしば可能であるため、効果的でありうる。更に、使用される原材料に含まれる不純物が通常はより少ないことから、多孔質セラミックジルコニア材料の全体の化学組成をより効果的に制御することが、多くの場合可能である。更に、使用される粉砕装置(例えばミルボール)から生じる粒子によって材料が汚染されるリスクが低減される。多孔質セラミックジルコニア材料を製造するためのプロセスは、一般的には、ZrO2粒子のゾルを提供することで開始する。これらの粒子を製造する方法では、蛍光剤であるBi及び着色剤であるTb、並びに必要に応じてEr及び/又はMnの塩を加えることができる。」(p.16の14〜23行;甲2の2【0082】)

(摘記2g)
「本発明の実施例2
99.109重量%の酸化ジルコニウム(ZrO2として計算)、0.574重量%の酸化エルビウム(Er2O3として計算)、0.250重量%の酸化テルビウム(Tb4O7として計算)、0.066重量%の酸化ビスマス(Bi2O3として計算)及び0.00081重量%の酸化マンガン(MnO2として計算)の計算された組成物を得るため、結合されたZrO2粉末(TZP)、ZrO2/Er2O3粉末混合物(2.18重量%のEr2O3粉末)、Tb4O7粉末、Bi2O3粉末、及びZrO2/MnO2粉末混合物(0.035重量%のMnO2粉末)を激しく振盪して混合してから、200MPaの圧力を加えることによって円筒状のブロックにプレスした。ブロックの結合剤を除去し、予備焼結し、ディスクにスライスしてから完全密度となるまで焼結した。」(p.38の25行〜最終行;甲2の2【0189】)

上記摘記2a〜2g(特に2a及び2b)の記載によれば、甲2には請求項1を引用する請求項9として、以下の発明が記載されているといえる。

「歯科用修復物を製造するための、多孔質ジルコニア材料を含み、機械加工装置に取り付けるか又は固定することを可能とする形状を有する、蛍光特性を有する着色された歯科用ミルブランクを製造する方法であって、
○それぞれの酸化物の粉末を混合して粉末混合物を得る工程と、
○前記粉末混合物をプレスする工程と、を含み、
前記歯科用ミルブランクは、重量%を前記多孔質ジルコニア材料の重量に対するものとして、前記多孔質ジルコニア材料が、以下の酸化物、すなわち、
○ZrO2として計算される酸化ジルコニウムを、約80〜約97重量%、
○Al2O3として計算される酸化アルミニウムを、約0〜約0.15重量%、
○Y2O3として計算される酸化イットリウムを、約1〜約10重量%、
○Bi2O3として計算される酸化ビスマスを、約0.01〜約0.20重量%、
○Tb2O3として計算される酸化テルビウムを、約0.01〜約0.8重量%、
及び場合により以下の酸化物の1つ又は2つ、すなわち、
○Er2O3として計算される酸化エルビウムを、約0.01〜約3.0重量%、
○MnO2として計算される酸化マンガンを、約0.0001〜約0.08重量%、含み、
前記多孔質ジルコニア材料が、Fe2O3として計算される酸化鉄を、約0.01重量%を上回る量で含まない、
方法。」(以下「甲2発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ZrO2として計算される酸化ジルコニウム」は本件発明1の「二酸化ジルコニウム」に相当する。また、甲2発明の「歯科用ミルブランク」は本件発明1の「ブランク」に相当する。
そして、本件発明1は、二酸化ジルコニウムの構造やブランクの形状を特定しないものであるから、甲2発明において、ジルコニア材料が「多孔質」であること、歯科用ミルブランクが「機械加工装置に取り付けるか又は固定することを可能とする形状を有する」ことは、本件発明1との相違点にはならない。
よって、甲2発明の「歯科用修復物を製造するための、多孔質ジルコニア材料を含み、機械加工装置に取り付けるか又は固定することを可能とする形状を有する、蛍光特性を有する着色された歯科用ミルブランク」は、本件発明1の「歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)」に相当する。

甲2発明は、多孔質ジルコニア材料が、ZrO2として計算される酸化ジルコニウムを約80〜約97重量%を含むこと(つまり、主成分としての二酸化ジルコニウムを含むこと)、酸化ビスマス及び酸化テルビウムを含むこと、場合により酸化エルビウムを含むことが特定されている。ここで、摘記2d〜2fのとおり、酸化ビスマスは蛍光剤であり、酸化テルビウム及び酸化エルビウムは着色剤である。
そして、甲2発明の多孔質ジルコニア材料は、「それぞれの酸化物の粉末」を混合した「粉末混合物」から得られるものであるから、甲2発明において、「それぞれの酸化物の粉末」(本件発明1の「粉末形態の原材料」に相当)として、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末、酸化ビスマスを含む粉末及び酸化テルビウムを含む粉末が用いられ、場合により酸化エルビウムを含む粉末が用いられることは明らかである。
よって、甲2発明の「それぞれの酸化物の粉末」と本件発明1の「粉末形態の原材料」とは、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末が用いられる点、各々1つの着色要素として、テルビウム及び歯科用修復物において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用される点において共通している。
甲2発明の「それぞれの酸化物の粉末を混合して粉末混合物を得る工程」と本件発明1の「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し」とは、「粉末形態の原材料を混合することによって、混合物を生成する」点において共通している。
そして、甲2発明の「前記粉末混合物をプレスする工程」と本件発明1の「前記第1の混合物から成る第1のセラミック材料(14)の層を金型(10)に導入し、
前記層に第1の開キャビティ(18)を成形し、
前記第2の混合物から成る少なくとも第2のセラミック材料(20)を前記第1の開キャビティに導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、」とは、「粉末混合物を圧縮する」点において共通している。

そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランクを製造する方法であって、前記方法は、
粉末形態の原材料を混合することによって混合物を生成し、ここにおいて、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料が使用され、いくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、
粉末混合物を圧縮することを特徴とする、方法。」

<相違点1>
本件発明1では、
(i)「粉末形態の原材料」が「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む」こと、
(ii)粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、「エルビウム、コバルト」が使用されること、
(iii)前記原材料において「天然の不純物を除いて、鉄は存在」しないこと、
(iv)「粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである」ことが特定されているのに対し、
甲2発明においては、
(i)上記アで説示したように、「それぞれの酸化物の粉末」として、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末が使用されることは明らかであるものの、「それぞれの酸化物の粉末」が各々「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む」ことは規定されておらず、
(ii)酸化エルビウムは場合により含まれる成分であり、コバルトを含むことは規定されておらず、
(iii)「それぞれの酸化物の粉末」を混合した「粉末混合物」から得られる「多孔質ジルコニア材料」が、Fe2O3として計算される酸化鉄を、約0.01重量%を上回る量で含まないと規定されており、
(iv)「それぞれの酸化物の粉末」について、そのうち1つは、天然の不純物を除いて着色要素がないものであることは規定されていない点。

<相違点2>
本件発明1では、混合物として、「少なくとも第1及び第2の混合物を生成し」、「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異な」ること、及び、「前記第1の混合物から成る第1のセラミック材料(14)の層を金型(10)に導入し、
前記層に第1の開キャビティ(18)を成形し、
前記第2の混合物から成る少なくとも第2のセラミック材料(20)を前記第1の開キャビティに導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる」ことが特定されているのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

イ 相違点1、2について
(ア)甲2には、着色要素としてコバルトを使用することは記載されておらず、さらなる実施形態として、Fe、V、Mo、Cr、Co、Cu、Prのいずれか又はすべてを実質的に含まないことが記載されている(p.12の30行〜p.13の3行;甲2の2【0066】〜【0067】)。
よって、甲2発明において、あえてコバルトを使用する動機付けがあるとはいえない。

(イ)甲2には、「それぞれの酸化物の粉末を混合して粉末混合物を得る工程」の具体的な態様である実施例2において、「結合されたZrO2粉末(TZP)」(本件発明1の、「天然の不純物を除いて、着色要素がない」、「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料」に相当。)を、ZrO2/Er2O3粉末混合物(2.18重量%のEr2O3粉末)及びZrO2/MnO2粉末混合物(0.035重量%のMnO2粉末)(本件発明1の、「各々1つの着色要素を含有」する「主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料」に相当。)、並びにTb4O7粉末及びBi2O3粉末と混合したことが記載されている。
しかし、Tb4O7粉末及びBi2O3粉末を、ZrO2/Er2O3粉末混合物及びZrO2/MnO2粉末混合物と同様に、主成分として二酸化ジルコニウムを含むものとした場合にも、これらの粉末、つまり、各々1つの着色酸化物を含有する、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末を、結合されたZrO2粉末(TZP)と混合することは、記載されていない。

(ウ)また、甲2には、「粉末混合物」(本件発明1の「混合物」に相当。)について、酸化ビスマスの含有量が異なる2種類の粉末混合物を生成し、これを積層することは記載されていない。

(エ)ところで、甲3(請求項1、5、6、【0004】、【0005】、【0009】、【0013】〜【0017】)、甲4(請求項1、3、22、【0108】〜【0109】、【0123】)、甲5(請求項1、18、【0003】、【0012】、【0057】、【0066】〜【0071】)に記載されるように、歯科用補綴物を自然の歯の色に合わせたり、その審美性を向上させたりするために、歯科用補綴物加工用のブロックを、着色要素の含有比率が異なる複数の層から構成させることは、当該技術分野における慣用技術である。
しかし、上記(ア)〜(ウ)で説示した点を考慮すると、甲2発明において、さらにコバルトを使用した上で、各々1つの着色又は蛍光酸化物(酸化テルビウム、酸化エルビウム、酸化コバルト及び酸化ビスマス)を含有する、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む「それぞれの酸化物の粉末」と、「結合されたZrO2粉末(TZP)」(天然の不純物を除いて、着色要素がない、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料に相当。)を混合し、組成及び酸化ビスマスの含有量が異なる2種類の粉末混合物を生成し、その上、これらを積層することを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲2〜5の記載事項及び慣用技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

ウ 効果について
本件明細書(【0017】)に記載されるように、本件発明1は、異なる蛍光特性を備えた領域を有するブランクを製造することが可能になるという利点を奏するものである。

(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
上記(2)アで示した本件発明1と甲2発明との対比を踏まえると、本件発明2と甲2発明とは、上記(2)アで示した一致点において一致し、上記相違点1及び次の相違点3において相違する。

<相違点3>
本件発明2では、混合物として、「少なくとも第1及び第2の混合物を生成し」、「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異な」ること、及び、「金型内の第1の層(114)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、この層の表面は前記第1の層の前記表面(118)として構造化され、表面に沿って見ると異なる高さの領域を有し、そして、
その後、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(124)を前記金型に導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる」ことが特定されているのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

イ 相違点1、3について
上記(2)イに説示したとおり、甲2発明において、さらにコバルトを使用した上で、各々1つの着色又は蛍光酸化物(酸化テルビウム、酸化エルビウム、酸化コバルト及び酸化ビスマス)を含有する、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む「それぞれの酸化物の粉末」と、「結合されたZrO2粉末(TZP)」(天然の不純物を除いて、着色要素がない、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料に相当。)を混合し、組成及び酸化ビスマスの含有量が異なる2種類の粉末混合物を生成し、その上、これらを積層することを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明2は、甲2発明、並びに、甲2〜5の記載事項及び慣用技術に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

ウ 効果について
上記(2)ウで説示したことと同様に、本件発明2は、異なる蛍光特性を備えた領域を有するブランクを製造することが可能になるという利点を奏するものである。

(4)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲2発明とを対比する。
上記(2)アで示した本件発明1と甲2発明との対比を踏まえると、本件発明3と甲2発明とは、上記(2)アで示した一致点において一致し、上記相違点1及び次の相違点4において相違する。

<相違点4>
本件発明3では、混合物として、「少なくとも第1及び第2の混合物を生成し」、「前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異な」ること、及び、「金型(110)内の第1の層(214)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、
金型(110)内の前記第1の層の頂部にさらなる層(227)を充填し、前記さらなる層は前記第1の層の混合物とは異なる混合物から成り、
中間層(228)の形態のさらなる層の材料を前記第1の層の材料に混合し、そして、
その後、金型(110)内に、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(224)を導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる」ことが特定されているのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。

イ 相違点1、4について
上記(2)イに説示したとおり、甲2発明において、さらにコバルトを使用した上で、各々1つの着色又は蛍光酸化物(酸化テルビウム、酸化エルビウム、酸化コバルト及び酸化ビスマス)を含有する、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む「それぞれの酸化物の粉末」と、「結合されたZrO2粉末(TZP)」(天然の不純物を除いて、着色要素がない、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料に相当。)を混合し、組成及び酸化ビスマスの含有量が異なる2種類の粉末混合物を生成し、その上、これらを積層することを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲2発明、並びに、甲2〜5の記載事項及び慣用技術に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

ウ 効果について
本件明細書(【0054】)に記載されるように、本件発明3は、第1の層と第2の層との間に連続的な遷移を生じさせる可能性をもたらし、そのため、結果として着色された層材料に対しても着色と透光性の連続的な変化が可能である、また、所望の蛍光特性を得ることが可能となるという利点を奏するものである。

(5)申立人の主張について
申立人は、訂正前の請求項1に係る発明について、酸化コバルトは歯科修復物の着色剤として一般的なものであること、甲2に記載の歯科修復物について、着色要素である酸化ビスマス(蛍光効果を生じさせる要素にも相当)、酸化テルビウム、酸化エルビウム等の含有比率が異なる複数の層を構成することは当業者が容易になし得た事項であること、そして、甲3の記載を参考に、層を積層するに際して凸面パンチにて圧縮成形することは当業者が容易になし得た事項であることを主張する。(特許異議申立書p.28〜29(ア))
また、訂正前の請求項2に係る発明について、甲3の記載を参考に、層を積層するに際して構造化され、表面に沿って見ると異なる高さの領域を有する表面を形成するようにすることは当業者が容易になし得た事項であること(特許異議申立書p.29〜30(イ))、訂正前の請求項3に係る発明について、甲4の記載を参考に、層の積層方法に関して、請求項3の規定(「金型(110)内の第1の層(214)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、金型(110)内の前記第1の層の頂部にさらなる層(227)を充填し、前記さらなる層は前記第1の層の混合物とは異なる混合物から成り、中間層(228)の形態のさらなる層の材料を前記第1の層の材料に混合し、そして、その後、金型(110)内に、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(224)を導入し」)を満たすようにすることは当業者が容易になし得た事項であること(特許異議申立書p.30〜31(ウ))を主張する。

しかしながら、酸化コバルトは歯科修復物の着色剤として一般的なものであることや、甲3〜甲5に記載される慣用技術を考慮しても、甲2発明において、さらにコバルトを使用した上で、各々1つの着色又は蛍光酸化物(酸化テルビウム、酸化エルビウム、酸化コバルト及び酸化ビスマス)を含有する、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む「それぞれの酸化物の粉末」と、「結合されたZrO2粉末(TZP)」(天然の不純物を除いて、着色要素がない、主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料に相当。)を混合し、組成及び酸化ビスマスの含有量が異なる2種類の粉末混合物を生成し、その上、これらを積層することを当業者が容易に想到し得たとはいえないことは、上記(2)イ、(3)イ、(4)イで説示したとおりである。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正により取消理由3は解消した。

第5 むすび
以上のとおりであるから、令和3年9月29日付け取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1〜3、5、7〜42に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3、5、7〜42に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4及び6に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項4及び6に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)を製造する方法であって、前記方法は、
主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともデルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである、
前記第1の混合物から成る第1のセラミック材料(14)の層を金型(10)に導入し、
前記層に第1の開キャビティ(18)を成形し、
前記第2の混合物から成る少なくとも第2のセラミック材料(20)を前記第1の開キャビティに導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)を製造する方法であって、前記方法は、
主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである、
金型内の第1の層(114)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、この層の表面は前記第1の層の前記表面(118)として構造化され、表面に沿って見ると異なる高さの領域を有し、そして、
その後、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(124)を前記金型に導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
歯科修復物(42,134)の製造を意図した、二酸化ジルコニウムを含有する着色されたブランク(28,48,133)を製造する方法であって、前記方法は、
主成分としての二酸化ジルコニウムを含む粉末形態の原材料を混合することによって、少なくとも第1及び第2の混合物を生成し、ここにおいて、少なくともいくつかの前記原材料は各々1つの着色要素を含有し、粉末形態の前記原材料における前記着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42,134)において蛍光効果を生じさせるビスマスが使用され、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、前記第2の混合物の組成は前記第1の混合物の組成と異なり、粉末形態の前記原材料のうちの1つは、天然の不純物を除いて、着色要素がないものである、
金型(110)内の第1の層(214)の導入の後、前記第1の層は第1のセラミック材料としての前記第1の混合物から成り、
金型(110)内の前記第1の層の頂部にさらなる層(227)を充填し、前記さらなる層は前記第1の層の混合物とは異なる混合物から成り、
中間層(228)の形態のさらなる層の材料を前記第1の層の材料に混合し、そして、
その後、金型(110)内に、第2のセラミック材料としての前記第2の混合物から成る第2の層(224)を導入し、
前記層の導入の後圧縮し、その後、前記層を焼結し、
ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)内の蛍光効果を生じさせる要素の含有量は前記第2のセラミック材料(20)内のそれと異なる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
自然に生じる不純物を除いて、粉末形態の第1の原材料は前記蛍光効果を生じさせる前記要素としてビスマスを含有し、及び/又は、粉末形態の第2の原材料はテルビウムのみ又はテルビウムとプラセオジムとを含有し、及び/又は、粉末形態の第3の原材料はエルビウムのみを含有し、及び/又は、粉末形態の第4の原材料は、コバルトのみ又はコバルトとマンガン及び/又はセリウムを含有することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
粉末形態の前記原材料は、イットリウムで安定化した二酸化ジルコニウムを含有し、以下の組成:
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O34.5乃至9.5
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+不可避的不純物)
であることを特徴とする、
請求項1乃至3、5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
粉末形態の前記原材料は、
以下の組成:
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O34.5乃至7.0
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+避けられない不純物)
又は
HfO2<3.0
Al2O3<0.3
技術的制約のために避けられない不純物≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
Y2O37.0乃至9.5
ZrO2=100%−(Y2O3+Al2O3+HfO2+避けられない不純物)、であることを特徴とする、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のセラミック材料(20)の導入後に、第2の開キャビティ(26,36)がそれに生成されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の開キャビティ(36)に前記第1及び/又は第2のセラミック材料(20)の組成とは異なる組成を有する第3のセラミック材料(38)が充填されることを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のセラミック材料(14)から成形された前記層において複数の第1の開キャビティ(18)が成形され、これらの中にセラミック材料(20)が充填されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック材料(18)は、前記第2のセラミック材料であることを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の第1の開キャビティ(18)の少なくともいくつかは異なる内部形状を有することを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のセラミック材料(20)として、完全密度までの前記焼結後に、前記第1のセラミック材料(14)の熱膨張係数より0.2乃至0.8μm/m*K大きい熱膨張係数を有する材料が使用されることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の開キャビティ(18)の内部形状は、歯の残根などの、修復物が提供される歯の顎領域の形状に、又は顎領域から生じる支台歯の形状に幾何学的に適合することを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ブランク(28,48)から前記歯科修復物を加工するとき、前記歯科修復物の象牙質領域は、少なくとも部分的に前記第2のセラミック材料(20)から構成され、及び切歯領域は、前記第1のセラミック材料(14)から構成されることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び/又は第2のセラミック材料(14,20)として、前記第1の材料における酸化イットリウム含有量が7.0重量%乃至9.5重量%であり、及び/又は、前記第2の及び/又は第3の材料における前記含有量が4.5重量%乃至7.0重量%であるように、材料を選択し、ここにおいて前記第1のセラミック材料における酸化イットリウム含有量が前記第2又は第3の材料の酸化イットリウム含有量よりも高いことを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項18】
選択されたセラミック材料において、予備焼結後の前記材料(14,20)における二酸化ジルコニウムの正方晶相と立方晶相との比率は1以上であることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層(114)の前記表面(118)は、窪み部及び隆起部が生成され、ここにおいて後者が前者を収容するように構造化されていることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記表面(118)の上面図において、前記生成された構造体は、窪み部とそれらに接する隆起部とを備える環状パターンを有することを特徴とする、
請求項2又は19に記載の方法。
【請求項21】
構造体は、前記第1の層(114)に対して移動し、および、波状、櫛状又は鋸歯状を有するように具体化されるセグメントを有する前記第1の層(114)の前記表面の領域を構造化する要素(116)によって生成されることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項22】
構造体は、前記第1の層(114)の前記表面(118)に対して垂直の方向に沿って作用する圧力要素によって生成されることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項23】
用いられる前記圧力要素は、同軸に又は平行に延びる隆起部と、前記隆起部の間に延びる窪み部とを前記第1の層(114)の前記表面(118)にインプリントすることを特徴とする、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
隆起部の容積が窪み部の容積と等しいか又はほぼ等しくなるように構造体が成形されることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記さらなる層(227)の前記混合物の材料は、追加の前記層の高さの2倍又は約2倍の高さに対応する高さに沿って追加の前記層の自由表面から下方に向かって、前記第1の層(214)の前記混合物の材料と混合されることを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項26】
前記さらなる層(227)に使用される前記混合物は、前記第2の層(124,224)の混合物と同一であることを特徴とする、
請求項3又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の層(114)と前記第2の層(124)との接触する領域が、1/15H乃至1/4Hに対応する高さにわたって混合されており、ここにおいて、Hは前記第1の層及び前記第2の層の全高であることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の層(114)と前記第2の層(124)との接触する領域は、1/10H乃至1/5Hに対応する高さであることを特徴とする、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
構造化されていない状態の前記第1の層(114)は、前記第1の層及び前記第2の層(114,124)の全高Hの半分又は約半分の高さに対応する高さを有することを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項30】
第1の層(114)及び第2の層(124)のために使用される混合物は、予備焼結の後に前記第1の層及び前記第2の層の両方における前記二酸化ジルコニウムの立方晶相に対する正方晶相の比率が1以上であることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項31】
二酸化ジルコニウムを含有し種々の組成の領域を有するセラミック材料から成る歯科修復物(42)の製造に使用される予備焼結又は完全に焼結されたブランク(28,48)、であって、ここにおいて、第1の領域(28)は、第1のセラミック材料(14)から成り、少なくとも第2の領域(34)は異なる組成の第2のセラミック材料(20)から成り、それら領域は互いに隣接し、
前記第2の領域(34,52,54,56)が第1の領域(32)内に延び、ベース領域(35)又はベース表面からの距離が増加するにつれて狭くなる外部形状を有し、
前記第1のセラミック材料(14)および前記第2のセラミック材料(20)は着色要素として、少なくともテルビウム、エルビウム、コバルト、及び前記歯科修復物(42)において蛍光効果を生じさせるビスマス含み、天然の不純物を除いて、鉄は存在せず、
前記第1のセラミック材料(14)における蛍光効果を生じさせるビスマスの含有量は、前記第2のセラミック材料(20)における含有量とは異なることを特徴とする、
ブランク。
【請求項32】
前記第2の領域(34)の前記ベース領域(35) 又は前記ベース表面は、前記第1の領域(32)の外面(33)の領域に延びることを特徴とする、
請求項31に記載のブランク。
【請求項33】
前記第2の領域(34)は、そのベース領域(35)又はベース表面から生じるキャビティ(26)を有することを特徴とする、
請求項31又は32に記載のブランク。
【請求項34】
第2の領域(34)は、円錐状の外形を有することを特徴とする、
請求項31乃至33のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項35】
前記第2の領域(34)内に、第3の領域(38)が延び、それは、前記第1及び/又は第2のセラミック材料(14,20)の組成とは異なる組成を有する第3のセラミック材料から成ることを特徴とする、
請求項31乃至34のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項36】
第1の領域(32,50)は、いくつかの第2領域(52,54,56)を取り囲んでいることを特徴とする、
請求項31乃至35のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項37】
複数の前記第2の領域(52,54,56)の少なくともいくつかは、異なる外形を有することを特徴とする、
請求項36に記載のブランク。
【請求項38】
前記ブランク(28,48)は、酸化イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする、
請求項31乃至37のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項39】
第2の、又は第3のセラミック材料(20)における酸化イットリウム含有量は、4.5重量%乃至7.0重量%であるのに対し、前記第1のセラミック材料(14)においてそれは7.0重量%乃至9.5重量%である、ここにおいて、前記第1のセラミック材料における前記酸化イットリウム含有量は、前記第2のセラミック材料においてよりも多いことを特徴とする、
請求項38に記載のブランク。
【請求項40】
前記第2のセラミック材料(20)は、前記第1のセラミック材料(14)とは異なる色に着色されていることを特徴とする、
請求項31乃至38のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項41】
完全密度までの焼結後に、前記ブランク(28)から製造された前記修復物(42)は、切歯側においてよりも象牙質側において高い強度を有し、及び/又は、前記象牙質側においてよりも前記切歯側において高い透光性を有し、及び/又は、切歯領域においてよりも象牙質領域において、蛍光効果を生じさせる要素の高い含有量を有することを特徴とする、
請求項31乃至40のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項42】
前記第1の領域(32,50)の熱膨張係数は、前記第2の領域(34)及び/又は第3の領域(38)の熱膨張係数より0.2μm/m*K乃至0.8μm/m*K低いことを特徴とする、
請求項31乃至41のいずれか1項に記載のブランク。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-30 
出願番号 P2018-549935
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 鳥居 福代
藤原 浩子
登録日 2020-12-18 
登録番号 6812454
権利者 デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド デグデント・ゲーエムベーハー
発明の名称 着色されたブランク及びブランクを製造する方法  
代理人 峰 隆司  
代理人 峰 隆司  
代理人 峰 隆司  
代理人 森川 元嗣  
代理人 飯野 茂  
代理人 森川 元嗣  
代理人 飯野 茂  
代理人 飯野 茂  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 森川 元嗣  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 蔵田 昌俊  

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