• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A23L
管理番号 1386154
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-14 
確定日 2022-06-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6856907号発明「酢酸含有飲食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6856907号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6856907号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、令和2年2月28日に特許出願され、令和3年3月23日に特許権の設定登録がされ、同年4月14日にその特許公報が発行され、その後、令和3年10月14日に、特許異議申立人 森田 弘潤(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜12に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1〜12に係る特許発明をそれぞれ、「本件発明1」〜「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。

【請求項1】
酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす、酢酸含有飲食品。
【請求項2】
(要件X)前記A成分、前記B成分、前記C成分、前記D成分、及び前記E成分の合計含有量が0.1ppb以上であること、並びに
(要件Y)前記F成分の含有量が1.0ppb以上であること、
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項3】
前記要件iが、
(要件ia)前記A成分及び前記C成分の合計含有量が0.5ppb以上であること、並びに(要件ib)前記B成分及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすことである、請求項1又は2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項4】
(要件ia’)前記A成分及び前記C成分の合計含有量が1.0ppb以上であること、(要件ib’)前記B成分及び前記D成分の合計含有量が0.5ppb以上であること、(要件ii’)前記E成分の含有量が2.0ppb以上であること、並びに
(要件iii’)前記F成分の含有量が10.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
【請求項5】
前記B成分と前記D成分との質量比(B成分質量:D成分質量)が2:8〜8:2である、請求項1〜4のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
【請求項6】
さらに果汁を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
【請求項7】
果汁含有率(ストレート果汁換算)が、0.2質量%以上700質量%以下である、請求項6に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項8】
前記果汁がリンゴ果汁、ブルーベリー果汁、柑橘果汁、イチゴ果汁、ザクロ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、ウメ果汁、マンゴー果汁である、請求項6又は7に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項9】
飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項1〜8のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
【請求項10】
酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、並びに
(A成分)イソブタナール、(B成分)ブタナール、(C成分)2−メチルブタナール、(D成分)ペンタナール、(E成分)酢酸イソブチル、及び(F成分)酢酸ブチルからなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を、合計含有量が0.5ppb以上になるように、且つ要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たすように配合すること
を含む、酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された酢酸含有飲食品の製造方法。
【請求項11】
(A成分)イソブタナール、(B成分)ブタナール、(C成分)2−メチルブタナール、(D成分)ペンタナール、(E成分)酢酸イソブチル、及び(F成分)酢酸ブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を合計含有量が0.5ppb以上になるように配合することを含む、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法。
【請求項12】
(A成分)イソブタナール、(B成分)ブタナール、(C成分)2−メチルブタナール、(D成分)ペンタナール、(E成分)酢酸イソブチル、及び(F成分)酢酸ブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、且つ酢酸含有飲食品中の前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上になるように用いるための、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種の抑制剤。

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、甲第1号証〜甲第40号証を提出するとともに、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の申立理由により、本件発明1〜12に係る特許は取り消されるべき旨主張している。

1 申立理由1(サポート要件)
本件発明1〜12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当する。

2 申立理由2−1(新規性)、2−2(進歩性
本件発明1〜12は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
また、本件発明1〜12は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3〜5、9〜28、31号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

3 申立理由3−1(新規性)、3−2(進歩性
本件発明1〜12は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
また、本件発明1〜12は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、16〜19、24〜27、31号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

4 申立理由4−1(新規性)、4−2(進歩性
本件発明1〜12は、甲第3号証に係る発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
また、本件発明1〜12は、甲第3号証に係る発明及び甲第1、6、9〜12、26、28〜30号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

5 申立理由5−1(新規性)、5−2(進歩性
本件発明1〜12は、甲第4号証に係る発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
また、本件発明1〜12は、甲第4号証に係る発明及び甲第1、6、9〜12、26、28〜30号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

6 申立理由6−1(新規性)、6−2(進歩性
本件発明1〜12は、甲第5号証に係る発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
また、本件発明1〜12は、甲第5号証に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

7 申立理由7−1(新規性)、7−2(進歩性)
本件発明1〜8、10〜12は、甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
また、本件発明1〜8、10〜12は、甲第6号証に記載された発明及び甲第16〜18,21〜40号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

8 証拠方法
甲第1号証: クックパッドレシピ、「即席 リンゴ酢ジュース(合議体注:原文では、即席の後にハート記号。)」、[online]、2012年2月21日(更新日)、クックパッド、[2021年10月6日検索]、インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/1410714>
甲第2号証: クックパッドレシピ、「リンゴジュース酢ドリンク」、[online]、2017年3月2日(更新日)、クックパッド、[2021年10月6日検索]、インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3983698>
甲3号証−1: 「ミツカン りんご黒酢ストレート」(商品情報)、[online]、[2021年10月13日印刷日]、インターネット<URL:https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=03032>
甲3号証−2: 消費者庁ウェブサイト「機能性表示食品の届出情報検索」「りんご黒酢ストレート」の検索画面、[online]、2016年10月7日(機能性表示食品の届出日)、[2021年10月13日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc01/search>
甲第3号証−3: 消費者庁ウェブサイト「様式I :届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け) 商品名:りんご黒酢ストレート、[online]、[2021年10月13日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42109080481700>
甲第3号証−4: 消費者庁ウェブサイト「変更事項 新旧対照表 商品名:りんご黒酢ストレート」、平成28年12月9日(最初の変更日)、令和3年9月10日(最終更新日)、[online]、[2021年10月13日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid. caa.go.jp/caaks/cssc02/shinkyu?taisyouHyouFile=B247%255CB247_shinkyu.pdf>
甲第3号証−5: 消費者庁ウェブサイト「様式VI :表示の内容/表示見本 商品名:りんご黒酢ストレート」、[online]、[2021年10月13日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc07/?recordSea=42109080481700>
甲第4号証−1: 「ミツカン りんご黒酢」(6倍希釈タイプ)(商品情報) 、[[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=03008>
甲第4号証−2: 消費者庁ウェブサイト「機能性表示食品の届出情報検索」「りんご黒酢」の検索画面、[online]、2016年10月7日(機能性表示食品の届出日)、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc01/search>
甲第4号証−3: 消費者庁ウェブサイト「様式I :届出食品の科学的根 拠等に関する基本情報(一般消費者向け) 商品名:りんご黒酢、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42110070291001>
甲第4号証−4: 消費者庁ウェブサイト「変更事項 新旧対照表 商品名:りんご黒酢」平成28年12月9日(最初の変更日)、令和3年4月16日(最終更新日)、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc02/shinkyu?taisyouHyouFile=B242%255CB242_shinkyu. pdf>
甲第4号証−5: 消費者庁ウェブサイト「様式VI :表示の内容/表示見 本商品名:りんご黒酢」、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc07/?recordSeq=42110070291001>
甲第5号証−1: 「ミツカン まろやかりんご酢はちみつりんご」(商品情報)、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=03017>
甲第5号証−2: 消費者庁ウェブサイト「機能性表示食品の届出情報検索」「まろやかりんご酢 はちみつりんご」の検索画面、[online]、2016年10月7日(機能性表示食品の届出日)、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc01/search>
甲第5号証−3: 消費者庁ウェブサイト「様式I:届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け) 商品名:まろやかりんご酢 はちみつりんご、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=42104010160800>
甲第5号証−4: 消費者庁ウェブサイト「変更事項 新旧対照表 商品名:まろやかりんご酢 はちみつりんご」平成28年12月8日(最初の変更日)、令和3年4月9日(最終更新日)、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa. go.jp/caaks/cssc02/shinkyu?taisyouHyouFile=B250%255CB250_shinkyu.pdf>
甲第5号証−5: 消費者庁ウェブサイト「様式VI:表示の内容/表示見本 商品名:まろやかりんご酢 はちみつりんご」、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc07/?recordSeq=42104010160800>
甲第6号証: 特開2011−172508号公報
甲第7号証: 特許第6792251号公報
甲第8号証: 特許第6792252号公報
甲第9号証: 「(案) 添加物評価書 イソブタナール 2006年10月 食品安全委員会 添加物専門調査会」、[online]、2006年10月、インターネット<URL:https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_isobutanal181026.pdf>
甲第10号証: 「(案) 添加物評価書 ブタナール 2007年2月 食品安全委員会 添加物専門調査会」、[online]、2007年2月、インターネット<URL:https://www.fsc.go.jp/iken-hosyu/pc_butanal 190208.pdf>
甲第11号証: 「(案) 添加物評価書 2−メチルブチルアルデヒド 2008年12月 食品安全委員会 添加物専門調査会」、[online]、2008年12月、インターネット<URL:https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc2_tenkabutu_2mbuthy1_201204.pdf>
甲第12号証: 「(案) 添加物評価書 バレルアルデヒド 2008年2月 食品安全委員会 添加物専門調査会」、2008年2月、[online]、2008年2月、インターネット<URL:https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_tenkabutu_valer_200221.pdf>
甲第13号証: 「リンゴみつ入り果の官能特性と香味成分プロファイル およびその形成メカニズム」 日本食品科学工学会誌 2016年、63巻3号、101−116頁
甲第14号証: Volatiles in Gravenstein Apple Essence Identified by GC-Mass Spectrometry,Journal of Chromatographic Science, August 1969, Volume 7,Issue 8, Pages 508-512
甲第15号証: Effects of supercritical C02 and N2O pasteurisation on the quality of fresh apple juice,Food Chemistry, 2009, vol.115, p129-136
甲第16号証: 「<醸造成分 > 食酢(2)」、日本醸造協會雑誌第7 3卷第 6号、1 9 7 8年、p453−460
甲第17号証 Volatile Components in the Vapors of Natural and Distilled Vinegars, Journal of Food Science, 1966, Vol.31, No.2, p172-177
甲第18号証: VOLATILE CONSTITUENTS OF VINEGAR. I. A SURVEY OF SOME COMMERCIALLY AVAILABLE MALT VINEGARS, Journal of The Institute of Brewing, September - October 1969, vol.75, issue 5, p457-463
甲第19号証:「Characteristic aroma profiles of unifloral honeys obtained with a dynamic headspace GC-MS system, Journal of Apicultural Research ,1992, 31(2), p96-109
甲第20号証: クックパッドレシピ、家で簡単ビネガードリンク、[online]、2013年1月30日(更新日)、クックパッド、[2021年10月6日印刷]、インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/2100074>
甲第21号証: クックパッドレシピ、お酢が苦手な人に♪黒酢オレンジジュース、[online]、2012年9月13日(更新日)、クックパッド、[2021年10月6日印刷]、インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/1953971>
甲第22号証−1: 「ミツカン ブルーベリー黒酢」(商品情報) 、[online]、[2021年10月7日印刷日]、インターネット<URL:https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=03005>
甲第22号証−2 :消費者庁ウェブサイト「機能性表示食品の届出情報検索」「ブルーベリー黒酢」の検索画面、[online]、2016年10月7日(機能性表示食品の届出日)、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc01/search>
甲第22号証−3: 消費者庁ウェブサイト「様式I :届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)」商品名:ブルーベリー黒酢、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/csscO2/?recordSeq=42109240160901>
甲第22号証−4: 消費者庁ウェブサイト「変更事項 新旧対照表 商品名:ブルーベリー黒酢」、平成28年12月9日(最初の変更日)、令和3年4月2日(最終更新日)、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.fid.caa.go.jp/caaks/cssc02/shinkyu?taisyouHyouFile=B241%255CB241_shinkyu.pdf>
甲第23号証: 「シリーズ『悪臭に関わる苦情への対応』-第1回 においの特徴と悪臭公害の現状-」、総務省機関誌「ちょうせい」、平成27年11月、第83号、12〜23頁、インターネット<URL:https ://www.soumu.go.jp/main_content/000452167.pdf>
甲第24号証: カロリー Slism リンゴジュース(林檎ジュース)、株式会社 amaze、[online]、[2021年10月13日印刷日]、インターネット<URL:https://calorie.slism.jp/107149/>
甲第25号証:みんなの知識 ちょっと便利帳 計量スプーン・計量カップによる重量表、[online]、[2021年10月6日印刷日]、インターネット<URL:https://www.benr icho.org/doryoko_cup_spoon/>
甲第26号証: 試験結果報告書、2021年10月14日、申立人
甲第27号証: 塩『少々』と『ひとつまみ』はどう違う?はかり方の 基本あれこれ、[online]、[2021年10月8日印刷日]、インターネット<URL:https://iemone. jp/article/gourmet/hitoka_katagiri_11496/>
甲第28号証: FENAROLI’S HANDBOOK OF Flavor Ingredients SIXTH EDITION, Taylor and Francis Group, LLC,、2009、表紙〜1頁、188-189頁、221-222頁、980頁、1000-1001頁、1238-1239頁、1988-1989頁
甲第29号証: 特開2019−129806号公報
甲第30号証: 特開2005−15686号公報
甲第31号証: (七訂)食品成分表 2017、2017年2月25日発行、発行者 香川明夫、発行所 女子栄養大学出版部、2−5頁、214-219頁
甲第32号証: ウェブページ「味の素 ピュアセレクト(R)マヨネーズ(合議体注:丸囲みのRを(R)として示す。以下同様)」、[online]、WayBack Machine、2019年7月2日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190702040526/https://www.ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName^pureselect>
甲第33号証: ウェブページ「味の素 ピュアセレクト(R)コクうま(R)65%カロリーカット」、[online]、WayBack Machine、2019年7月8日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190708070244/https://www.ajinomoto.co.jp/ products/detail/?ProductName=pureselect_2>
甲第34号証: ウェブページ「味の素 ピュアセレクト(R)べに花マヨネーズ」、[online]、WayBack Machine、2019年7月6日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170706092241/https://www.ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName=pures elect_4>
甲第35号証: ウェブページ「味の素 ピュアセレクト(R)サラリア」、[online]、WayBack Machine、2019年7月6日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170706125153/https://www. ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName=pureselect_5>
甲第36号証: ウェブページ「味の素 和風ゆずしょうゆ」、[online]、WayBack Machine、2019年7月6日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170706 100809/https://www.ajinomoto.co.jp/ products/detail/?ProductName=semisepa>
甲第37号証:ウェブページ「キューピー シーザーサラダドレッシング」、[online]、WayBack Machine、2019年7月10日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190710153002/https://www.kewpie. co.jp/products/product/dressing/regular/4901577073564/>
甲第38号証:ウェブページ「理研ビタミン リケンのノンオイル味わうおろし」、[online]、WayBack Machine、2019年3月30日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190330174659/https://www.rikenvitamin.jp/household/products/dressing/nonoi1/ajiwauoroshi.html>
甲第39号証:ウェブページ「理研ビタミン リケンのノンオイル青じそ塩レモン」、[online]、WayBack Machine、2019年3月30日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190330183734/https://www.rikenvitamin.jp/ household/products/dressing/nonoi1/aojisolemon.html>
甲第40号証: ウェブページ「理研ビタミン リケンのノンオイル青じそ」、[online]、WayBack Machine、2019年3月30日のインターネットアーカイブ、[2021年10月13日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190330054742/https://www.rikenvitamin.jp/household/products/dressing/nonoil/aojiso.html>

以下、甲第1号証〜甲第40号証を号証番号の順に「甲1」、「甲2」、「甲3−1」などと略記する。

第4 当審の判断
当審は、請求項1〜16に係る特許は、異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 甲号証に記載された事項
(1) 甲1に記載された事項
甲1ア 「即席 リンゴ酢ジュース(合議体注:原文では、即席の後にハート記号。)」(表題)

甲1イ 「材料(1杯分)
リンゴ酢、黒酢などお好みの酢 大さじ1〜2
りんごジュース(100%) 200ml(コップ1杯分)
蜂蜜、黒密など お好みで小さじ1〜」(材料の欄)

甲1ウ 「作り方
1 上の写真は、リンゴ酢、リンゴジュース、蜂蜜を入れたもの。
グラスに全て入れて、かき混ぜたら出来上がり。」(作り方の欄)

(2) 甲2に記載された事項
甲2ア 「リンゴジュース酢ドリンク」(表題)

甲2イ 「材料(1人分)
酢 大匙1
リンゴジュース 200ml
塩 少々」(材料の欄)

(3) 甲3−1に記載された事項
甲3−1ア 「りんご黒酢ストレート

」(表題、製品写真)

甲3−1イ 「国産玄米を100%使って醸造した黒酢に、りんご果汁を加えて飲みやすく仕上げた、おいしく黒酢をとることができる黒酢飲料です。そのまま飲めるストレートタイプです。本品500m1に食酢(黒酢)の主成分である酢酸750mgを含んでいます。」(製品写真の下の説明)

甲3−1ウ 「原材料名
米黒酢(国内製造)、りんご果汁、果糖ぶどう糖液糖、果糖、黒糖入り砂糖液、砂糖/乳酸Ca、酸味料、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロース)」(原材料名の欄)

(4) 甲4−1に記載された事項
甲4−1ア 「りんご黒酢

」(表題、製品写真)

甲4−1イ 「国産玄米を100%使って醸造した黒酢に、りんご果汁を加えて飲みやすく仕上げた、おいしく黒酢をとることができる黒酢飲料です。6倍希釈タイプです。本品60ml(希釈後360ml)に食酢(黒酢)の主成分である酢酸750mgを含んでいます。」(製品写真の下の説明)

甲4−1ウ 「原材料名
米黒酢、りんご果汁、砂糖、黒糖入り砂糖液/乳酸Ca、酸味料、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロース)」(原材料名の欄)

(5) 甲5−1に記載された事項
甲5−1ア 「まろやかりんご酢 はちみつりんご



甲5−1イ 「りんご果汁をたっぷりと使用したまろやかなりんご酢に、はちみつを加えた、 おいしいりんご酢飲料です。6倍希釈タイプです。本品90ml(希釈後540ml)に食酢(りんご酢)の主成分である酢酸750mgを含んでいます。」(製品写真の下の説明)

甲5−1ウ 「原材料名
りんご酢、りんご果汁、黒糖入り砂糖液(砂糖液糖、黒糖、果糖ぶどう糖液糖、果糖)、はちみつ/酸味料、香料、甘味料(スクラロース)」(原材料の欄)

(6) 甲6に記載された事項
甲6ア 「【請求項1】
食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、0.1ppb以上3.0ppm未満である炭素数4から7を有する直鎖および分岐鎖アルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする飲食品。
【請求項2】
食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるペンタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘキサナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘプタナール、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるイソブチルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上3.0ppm未満であるイソバレルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満である2-メチルブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする飲食品。
・・・
【請求項4】
食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるペンタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘキサナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘプタナール、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるイソブチルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上3.0ppm未満であるイソバレルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満である2-メチルブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする飲食品の呈味改良方法。
・・・
【請求項8】
食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるペンタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘキサナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘプタナール、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるイソブチルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上3.0ppm未満であるイソバレルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満である2-メチルブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする塩味増強剤。
・・・
【請求項10】
食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるペンタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘキサナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘプタナール、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるイソブチルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上3.0ppm未満であるイソバレルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満である2-メチルブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする食塩代替物質由来の苦味の低減方法。
・・・
【請求項12】
食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるペンタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘキサナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘプタナール、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるイソブチルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上3.0ppm未満であるイソバレルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満である2-メチルブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする食塩代替物質由来の苦味低減用調味料。」
(特許請求の範囲)

甲6イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数4から7を有する直鎖および分岐鎖アルデヒド、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含む呈味の改良された飲食品およびその製造法、呈味改良方法、呈味改良剤等に関する。」

甲6ウ 「【背景技術】
【0002】
食塩は、食品を調味する基本調味料として広く用いられているが、一方で食塩の過剰摂取が高血圧、及び心疾患などの循環器疾患に対して悪影響を与えることが知られている。これらの背景から、食塩以外の物質で塩味を補完または増強しおいしさを維持する方法が望まれている。
・・・
一方、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナールなどの短鎖から中鎖の直鎖アルデヒド類は不飽和脂肪酸等の脂質類の酸化反応生成物としてよく知られており、もっぱら食品のオフフレーバーとして認知され(非特許文献3)、フルーツ様の香付けやコーヒーの香料として利用されている。イソブチルアルデヒドやイソバレルアルデヒド、2-メチルブタナールは上述の直鎖アルデヒド類と構造が類似している分岐鎖アルデヒド類であり清酒や味噌・醤油などの醸造食品のフレーバー成分として報告されている(非特許文献4)。ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィドも食品のオフフレーバーとして認知され、またタマネギに含まれるフレーバー成分として報告されている(非特許文献5)。しかし上述のフレーバー類について、塩味増強効果や食塩代替物質を用いた際に生じる苦味などの好ましくない呈味を軽減する効果に関する検討例は存在しない。・・・上述のフレーバー成分を用いて塩味代替物質の呈味を改善する検討例は存在しない。」

甲6エ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術の中で食塩代替効果や塩味増強効果が報告されている物質を飲食品に添加した場合には当該飲食品に対して好ましくない酸味や苦味などが付与されることがしばしば生じることや共存するその他の呈味成分および/または香気成分により塩味代替効果や塩味増強効果が減弱されるという問題がある。このため既に報告されている食塩代替物質や塩味増強物質に加えて、更に効果的で官能上も好ましい食品由来の食塩代替物質や塩味増強物質の拡充が課題となっている。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、添加効果が高く、酸味や苦味などの余分な味を付与しない塩味増強剤およびその利用法、ならびに塩化カリウム等の食塩代替物質を用いた際に生じる好ましくない苦味の抑制をすることができる呈味改良剤とその利用法を提供することができる。」

甲6オ 「【0014】
本発明の呈味改良剤を使用する際は、調味料形態としての飲食品への添加や、粉末調味料、固形調味料、液体調味料の原料としての混合、加工食品への原料としての混合等、利用形態に特に制限はない。具体例としては、例えば、白飯、おにぎり、・・・、調味料類(調味塩、風味調味料、味噌、醤油、つゆ、たれ、ソース、ドレッシング、マヨネーズ等)、スープ類(カップスープ、即席めんのスープ等)、ルー等の加工食品、蒲鉾、ちくわ、さつま揚げ、ハム、ソーセージ等の水産・畜肉加工製品が挙げられる。
呈味改良剤として使用する際、当該呈味改良剤として含まれる炭素数4から7を有する直鎖および分岐鎖アルデヒド、例えばブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブタナール、またはジメチルジスルフィドとジメチルトリスルフィドの濃度に特に限定はないが、効果の点から、炭素数4から7を有する直鎖および分岐鎖アルデヒドは、0.1ppb以上、例えばブタナールは0.3ppb以上、ペンタナールは0.5ppb以上、ヘキサナールは0.3ppb以上、ヘプタナールは0.3ppb以上、イソブチルアルデヒドは0.3ppb以上、イソバレルアルデヒドは0.1ppb以上、2−メチルブタナールは0.5ppb以上であり、ジメチルジスルフィドは0.8ppb、ジメチルジスルフィドは0.8ppb以上が好ましく、上限値は賦形剤を使用することを考え99重量%以下であることが好ましい。」

(7) 甲9〜12
甲9には、イソブタナールが、果物や野菜などの香気成分として、食品に天然に含まれていることが記載されている(p.2 「1.はじめに」の欄)。
甲10には、ブタナールが、りんごや洋梨等に天然に含まれていることが記載されている(p.2 「1.はじめに」の欄)。
甲11には、2−メチルブチルアルデヒドが、果実等に天然に存在することが記載されている(p.4 「6.評価要請の経緯」)。
甲12には、バレルアルデヒドが、果物、穀類、豆類等の様々な食品に香料成分として天然に存在することが記載されている(p.4 「6.評価要請の経緯」)。

(8) 甲13〜19
甲13には、ふじとこうとくの液を絞り、その香料の揮発成分として、B、D、E、F成分が含まれることが記載されている(p.104 表1、p.107〜108 表2)。
甲14には、グラベンスタインアップルエッセンスから抽出された揮発性アロマ成分にA〜F成分が含まれることが記載されている(表1)。
甲15には、ゴールデンデリシャスとグラニースミスのりんごジュースのブレンドにおいて、低温殺菌未処理のジュース中にD、E、F成分が含まれることが記載され、その量は
D 1.3又は1.2(μg/l)
E 0.8又は0.9(μg/l)
F 31.0又は29.5(μg/l)
と記載されている。
甲16には、様々な食物酢は、A〜D成分を含み、E、F成分を多めに含むことが記載されている(p456、p457の表)。また、リンゴ酢は、C、F成分を含むことが記載されている。
甲17には、様々な酢に、E成分が含まれることが記載されている(図1、2)。
甲18には、モルトビネガーにE、F成分が含まれることは記載されている(表5、6)。
甲19には、ユニフローラルハニーに、平均でA成分25ppb、C成分18ppbが含まれることが記載されている(p99 表)。

(9) 甲20〜25、27に記載されている事項
甲20、21には、クックパットレシピとのインターネット上の情報であり、ビネガードリンク、黒酢オレンジジュースのレシピが記載されている。
甲22−1〜甲22−4には、商品の「ミツカン ブルーベリー黒酢」に関する情報が記載されている。
甲23には、A、B、D〜F成分のにおい物質について、人間のにおいを感じる最小の濃度(嗅覚閾値濃度)が記載されている(p17表−1)。
甲24には、「りんごジュースのカロリーは100ml(105g) 46kcal」であることが記載されている。
甲25には、酢は大さじ1(15ml,15cc)で15g、はちみつ小さじ1(5ml,5cc)で7gであることが記載されている。
甲27には、塩の「ひとつまみ」が1.5gぐらいであることが記載されている。

(10) 甲26
甲26は、申立人が作成した試験結果報告書であり、市販のアップルジュース及びビネガードリンクについて、酢酸及びA〜F成分の含有量を測定した結果が記載されている。

(11) 甲28〜30
甲28には、本件発明のA〜F成分がりんごや蜂蜜に含まれること、ノンアルコール飲料に香料を添加する場合の量が記載されている。
甲29には、酢酸含有飲食品に関する発明が記載されており、酸味、酸臭の抑制に関する記載がされている。
甲30には、フルーツ用香料組成物に関する発明が記載され、マスキングに関する記載がされている。

(12) 甲31
甲31には、可食部100gあたりの成分値が記載されており、黒酢100gに酢酸が4.0g、リンゴ酢100gに酢酸が4.7g含まれることが記載されている(2頁、215頁の黒酢の備考欄、217頁の表のリンゴ酢の備考欄)。

(13) 甲32〜40
甲32〜40には、マヨネーズやドレッシングの商品のウェブ情報が記載されている。

(14) 甲7、8
本件と同じ特許権者に係る「酢酸含有飲食品」に関する出願の特許公報であって、申立理由1(サポート要件違反)のための証拠である。

新規性進歩性についての当審の判断
事案に鑑み、新規性進歩性から判断する。

(1) 申立理由2−1(新規性)、2−2(進歩性):甲1を主引例とする理由
ア 甲1に記載された発明
甲1には、甲1ア〜ウの記載からみて、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の材料からなるリンゴ酢ジュース
材料(1杯分)
リンゴ酢、黒酢などお好みの酢 大さじ1〜2
りんごジュース(100%) 200ml(コップ1杯分)
蜂蜜、黒蜜など お好みで小さじ1〜。」(以下「甲1発明1」という。)

「リンゴ酢、リンゴジュース、蜂蜜をグラスに全て入れて、かき混ぜて、甲1発明1のリンゴ酢ジュースの製造方法。」(以下「甲1発明2」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
甲1発明1の「りんご酢、黒酢などのお好みの酢」は、酢酸を含むから、本件発明1の「酢酸」に相当する。
甲1発明1の「リンゴ酢ジュース」は、甲1発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1は、
「酢酸を含有する酢酸含有飲食品」
の発明である点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。

<相違点1>
酢酸含有飲食品に含まれる酢酸の量について、本件発明1は、「0.02w/v%以上」と特定するのに対し、甲1発明1は、その特定がない点。

<相違点2>
本件発明1は、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす」と特定されるのに対し、甲1発明1は、このような特定はない点。

(イ) 判断
新規性について
まず、本件発明1と甲1発明1の間には、相違点1、2が存在し、以下bで検討するようにこれらは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明ではない。

進歩性について
(a) 相違点1について
相違点1について検討する。
甲1発明1の「リンゴ酢、黒酢などお好みの酢 大さじ1〜2」は、具体的にどのような材料(商品)を用いたのか記載がないので、甲1発明1が、どの程度の量の酢酸を含むのかは不明であり、相違点1は、実質的な相違点である。

(b) 相違点2について
相違点2について検討する。
まず、甲1発明1には、A〜F成分が含まれることは記載されていない。
そして、甲1には、甲1発明1に用いる原材料として、具体的に何を用いたのか記載はないから、甲1発明1に、甲13〜19に記載された具体的な材料に関する記載事項を適用することはできない。
また、甲26の試験結果報告書には、作成者として申立人の名前が記載されているものの、実際に試験を行った者の氏名及びその者の経歴(申立人又は試験を行った者が別にいるのであればその者の経歴)や、この試験がなされた日や場所について全く記載がなく、当該報告書には、最終的な測定結果と試験方法が記載されているものの、その結果を導き出すに必要な測定チャート等の元データも示されておらず、試験に使用されたものも本件出願日前の市販品と成分・量において同じであるとの十分な説明もなされていない。したがって、甲26の試験結果報告書は、技術的に信用に値する試験結果を示すものとは認めることはできず、この内容を採用することはできない。
さらに、他の証拠(甲3〜5、甲9〜12、甲25、26、31)をみても、甲1発明1が、A〜F成分を相違点2にある特定の条件で含むことを示唆する記載はない。
一方、本件発明1は、調製直後のみならず、一定期間保存後も、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭が抑制された酢酸含有飲料を提供することを目的とするものであり、この目的は、相違点1の酢酸含有量とした酢酸含有飲料において、相違点2の条件とすることにより達成されるものである。
他の証拠をみても、上記目的のために相違点2の条件とすることは記載されていないから、甲1発明1において、相違点2の構成を採用することは、当業者にとって容易になし得たことではない。

(c) 効果について
本件発明1は、A〜F成分を相違点2にある特定の条件で含むことにより、調製直後のみならず、一定期間保存後も、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭が抑制された酢酸含有飲料を提供することができるものであって、格別顕著な効果が奏されていると認められる。

(d) 進歩性の判断のまとめ
そうすると、本件発明1は、甲1に記載された発明、甲3〜5、甲9〜26、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、請求項1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであるところ、上記イに記載したのと同様の理由が該当する。
よって、本件発明2〜9は、甲1発明1、すなわち、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲3〜5、甲9〜26、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明10について
(ア) 対比
本件発明10と甲1発明2を対比すると、酢酸含有飲食品における構成において、相違点1、2と同様の相違点が存在する上に、さらに本件発明10は、
「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」酢酸含有飲食品の製造方法であることを特定するのに対し、甲1発明2は、このような特定がない点(相違点3)においても相違する。

(イ) 判断
新規性について
まず、本件発明10と甲1発明2との間には相違点があるから、本件発明10は、甲1に記載された発明ではない。

進歩性について
また、相違点1、2と同様の相違点については、上記イ(イ)bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、相違点3についても、他の証拠をみても、相違点2の構成を採用することにより、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減」されることは記載されていない。
そうすると、本件発明10は、甲1に記載された発明及び甲3〜5、甲9〜26、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明11、12について
本件発明11、12は、A〜F成分の少なくとも1種の香料を成分を合計含有量が0.5ppb以上となるように含有させることにより、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤に関するものであるところ、甲1には、これらに関する記載や示唆はない。
本件発明11、12は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲3〜5、甲9〜26、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2) 申立理由3−1(新規性)、3−2(進歩性)について:甲2を主引例とした理由
ア 甲2に記載された発明
甲2の記載(摘記甲2ア、イ)からみて、甲2には、以下の発明が記載されている。
「以下の材料からなるリンゴジュース酢ドリンク
材料(1人分)
酢 大匙1
リンゴジュース 200ml
塩 少々。」(以下「甲2発明1」という。)

「以下の材料からなるリンゴジュース酢ドリンクの製造方法
材料(1人分)
酢 大匙1
リンゴジュース 200ml
塩 少々。」(以下「甲2発明2」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「りんご酢、黒酢などのお好みの酢」は、酢酸を含むから、本件発明1の「酢酸」に相当する。
甲2発明1の「リンゴ酢ジュース」は、甲2発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明1は、
「酢酸を含有する酢酸含有飲食品」
の発明である点で一致し、以下の相違点1a、2aで相違する。

<相違点1a>
酢酸含有飲食品に含まれる酢酸の量について、本件発明1は、「0.02w/v%以上」と特定するのに対し、甲2発明1は、そのような特定がない点。

<相違点2a>
本件発明1は、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす」と特定されるのに対し、甲2発明1は、そのような特定はない点。

(イ) 判断
新規性について
まず、本件発明1と甲2発明1の間には、相違点1、2が存在し、これらは実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明1、すなわち甲2に記載された発明ではない。

進歩性について
相違点2aについては、上記(1)イ(イ)の相違点2について検討したのと同様であり、甲2に、A〜F成分を相違点2にある特定の条件で含むことを示唆する記載はなく、甲2発明1に用いる原材料のりんごジュースや酢として、具体的に何を用いたのか記載はないから、甲2発明1に、甲16〜19に記載された具体的な材料に関する記載事項を適用することはできない。
また、甲26の試験結果報告書は、技術的に信用に値する試験結果を示すものとは認めることはできず、、この結果を採用することはできない。
さらに、他の証拠(甲1、甲24、甲25、27、31)をみても、甲2発明1に、A〜F成分を相違点2aにある特定の条件で含むことを示唆する記載はない。
そうすると、相違点1aを検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、請求項1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであるところ、本件発明1が上記イで検討したとおり、甲2に記載された発明、甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本件発明2〜9についても同様に、甲2に記載された発明、甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明10について
(ア) 対比
本件発明10と甲2発明2を対比すると、酢酸含有飲食品における構成において、相違点1a、2bと同様の相違点が存在する上に、さらに本件発明10は、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」酢酸含有飲食品の製造方法であることを特定するのに対し、甲2発明2は、このような特定がない点(相違点3a)においても相違する。

(イ) 判断
まず、本件発明10と甲2発明2との間には相違点があるから、本件発明10は、甲1に記載された発明ではない。
また、相違点2aの相違点については、上記イ(イ)bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、相違点3aについて、他の証拠をみても、相違点2aの構成を採用することにより、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減」されることは記載も示唆もない。
そうすると、本件発明10は、甲2に記載された発明、甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

オ 本件発明11、12について
本件発明11、12は、A〜F成分の少なくとも1種の香料成分を合計含有量が0.5ppb以上となるように含有させることにより、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤に関するものであるところ、甲2には、これらに関する記載や示唆はないし、他の証拠にも、これらに関する記載や示唆はない。
そうすると、本件発明11、12は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(3) 申立理由4−1(新規性)、4−2(進歩性)について:甲3−1を主引例とした理由
ア 甲3−1に係る発明
甲3−1の「ミツカン りんご黒酢ストレート」の商品情報、甲3−2〜3−5の消費者庁ウェブサイトの情報により当該商品の機能性表示食品の届出日が2016年10月7日であること、原材料に関する変更情報がないことからみて、本件特許出願前に、甲3−1に示された、以下の「ミツカン りんご酢ストレート」に関する発明が公然実施されていたものと認められる。
「ミツカン りんご黒酢ストレート
原材料が、米黒酢(国内製造)、りんご果汁、果糖ぶどう糖 液糖、果糖、黒糖入り砂糖液、砂糖/乳酸Ca、酸味料、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロースであり、そのまま飲めるストレートタイプであり、本品500mlに食酢(黒酢)の主成分である酢酸750mgを含む黒酢飲料。」(以下、「甲3−1発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲3−1発明を対比する。
甲3−1発明の「米黒酢」は、酢酸を含むから、本件発明1の「酢酸」を含有するとの条件を満たしている。
甲3−1発明の「りんご黒酢ストレート」は、黒酢飲料であるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3−1発明は、
「酢酸を含有する酢酸含有飲食品」
の発明である点で一致し、以下の相違点1b、2bで相違する。

<相違点1b>
酢酸含有飲食品に含まれる酢酸の量について、本件発明1は、「0.02w/v%以上」と特定するのに対し、甲3−1発明は、「本品500mlに食酢(黒酢)の主成分である酢酸750mgを含む」との特定であって、本件発明1のような特定ではない点。

<相違点2b>
本件発明1は、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす」と特定されるのに対し、甲3−1発明は、このような特定はない点。

(イ) 判断
新規性について
相違点1bについて、甲3−1発明の酢酸の含有量を計算すると
750mg/500ml=0.15g/100ml=0.15w/v%
となり、本件発明1で特定する酢酸の量の範囲内であるから、相違点1bは、両発明において実質的な相違点ではない。
しかしながら、相違点2bは、下記bで検討するように実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3−1発明ではない。

進歩性について
相違点2bについて検討する。
甲3−1〜3−5をみても、甲3−1発明が相違点2bを満たすことについての示唆はない。
また、甲26には、甲3−1発明について、相違点2bに関する測定結果が記載されているが、上記(1)の相違点2に関して述べたように、当該証拠は採用できるものではない。
さらに、他の証拠をみても、公然実施された発明である甲3−1発明において、A〜F成分を相違点2bに特定の条件で含むことを示唆する記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲3−1発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、請求項1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであるところ、本件発明1が上記イで検討したとおり、甲3−1に係る発明でなく、かつ、甲3−1に係る発明と、甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本件発明2〜9についても同様に、甲3−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明10について
(ア) 対比
本件発明10と甲3−1発明を対比すると、酢酸含有飲食品における構成において、相違点1b、2bと同様の相違点が存在する上に、本件発明10は、
「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」酢酸含有飲食品の製造方法であることを特定するのに対し、甲3−1発明は、このような特定がない点(相違点3b)においてさらに相違する。

(イ) 判断
まず、本件発明10と甲3−1発明との間には相違点があるから、本件発明10は、甲3−1に記載された発明ではない。
また、相違点2bの相違点については、上記イ(イ)bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、相違点3bについて、他の証拠をみても、相違点2bの構成を採用することにより、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減」されることは記載も示唆もない。
そうすると、本件発明10は、甲3−1に記載された発明、甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

オ 本件発明11、12について
本件発明11、12は、A〜F成分の少なくとも1種の香料成分を合計含有量が0.5ppb以上となるように含有させることにより、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤に関するものであるところ、甲3−1には、これらに関する記載や示唆はないし、他の証拠にも、これらに関する記載や示唆はない。
そうすると、本件発明11、12は、甲3−1に係る発明ではなく、また、甲3−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(4) 申立理由5−1(新規性)、5−2(進歩性)について:甲4−1を主引例とした理由
ア 甲4−1に係る発明
甲4−1の「ミツカン りんご黒酢」の商品情報、甲4−2〜4−5の消費者庁ウェブサイトの情報により当該商品の機能性表示食品の届出日が2016年10月7日であること、原材料に関する変更情報がないことからみて、本件特許出願前に、甲4−1に示された、以下の「ミツカン りんご黒酢」に関する発明が公然実施されていたものと認められる。
「ミツカン りんご黒酢
原材料が、米黒酢、りんご果汁、砂糖、黒糖入り砂糖液/乳酸Ca、酸味料、香料、ビタミンC、甘味料(スクラロースであり、6倍希釈タイプであり、本品60ml(希釈後360ml)に食酢(黒酢)の主成分である酢酸750mgを含む黒酢飲料。」(以下、「甲4−1発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲4−1発明を対比する。
甲4−1発明の「米黒酢」は、酢酸を含むから、本件発明1の「酢酸」を含有するとの条件を満たしている。
甲4−1発明の「ミツカン りんご黒酢」は、黒酢飲料であるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4−1発明は、
「酢酸を含有する酢酸含有飲食品」
の発明である点で一致し、以下の相違点1c、2cで相違する。

<相違点1c>
酢酸含有飲食品に含まれる酢酸の量について、本件発明1は、「0.02w/v%以上」と特定するのに対し、甲4−1発明は、「本品60ml(希釈後360ml)に食酢(黒酢)の主成分である酢酸750mgを含む」との記載があり、本件発明1の特定ではない点。

<相違点2c>
本件発明1は、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす」と特定されるのに対し、甲4−1発明は、このような特定はない点。

(イ) 判断
新規性について
相違点1cについて、甲4−1発明の酢酸の含有量を6倍希釈して計算すると
750mg/360ml=0.21g/100ml=0.21w/v%
となり、本件発明1で特定する酢酸の量の範囲内であるから、相違点1cは、両発明において実質的な相違点ではない。
しかしながら、相違点2cは、下記bで検討するように実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4−1発明ではない。

進歩性について
相違点2cについて検討する。
甲4−1〜4−5をみても、甲4−1発明が相違点2cを満たすことについての示唆はない。
また、甲26には、甲4−1発明について、相違点2cに関する測定結果が記載されているが、上記(1)の相違点2に関して述べたように、当該証拠は採用できるものではない。
さらに、他の証拠をみても、公然実施された発明である甲4−1発明において、A〜F成分を本件発明1に特定する条件で含むことを示唆する記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲4−1発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、請求項1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであるところ、本件発明1が上記イで検討したとおり、甲4−1に係る発明でなく、かつ、甲4−1に係る発明と、甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本件発明2〜9についても同様に、甲4−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明10について
(ア) 対比
本件発明10と甲4−1発明を対比すると、酢酸含有飲食品における構成において、相違点1c、2cと同様の相違点が存在する上に、本件発明10は、
「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」酢酸含有飲食品の製造方法であることを特定するのに対し、甲3−1発明は、このような特定がない点(相違点3c)において、さらに相違する。

(イ) 判断
まず、本件発明10と甲4−1発明との間には相違点があるから、本件発明10は、甲4−1に記載された発明ではない。
また、相違点2cの相違点については、上記イ(イ)bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、相違点3cについて、他の証拠をみても、相違点2cの構成を採用することにより、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減」されることは記載も示唆もない。
そうすると、本件発明10は、甲4−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

オ 本件発明11、12について
本件発明11、12は、A〜F成分の少なくとも1種の香料を成分を合計含有量が0.5ppb以上となるように含有させることにより、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤に関するものであるところ、甲4−1には、これらに関する記載や示唆はないし、他の証拠にも、これらに関する記載や示唆はない。
そうすると、本件発明11、12は、甲4−1に係る発明ではなく、また、甲4−1に係る発明及び甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(5) 申立理由6−1(新規性)、6−2(進歩性)について:甲5−1を主引例とした理由
ア 甲5−1に係る発明
甲5−1の「ミツカン まろやかりんご酢はちみつりんご」の商品情報(摘記甲5−1ア〜甲5−1ウ)、甲5−2〜5−5の消費者庁ウェブサイトの情報により当該商品の機能性表示食品の届出日が2016年10月7日であること、原材料に関する変更情報がないことからみて、本件特許出願前に、甲5−1に示された、以下の「ミツカン まろやかりんご酢はちみつりんご」に関する発明が公然実施されていたものと認められる。
「ミツカン まろやかりんご酢はちみつりんご
原材料が、りんご酢、りんご果汁、砂糖、黒糖入り砂糖液(砂糖液糖、黒糖、果糖ぶどう糖液糖、果糖)、はちみつ/酸味料、香料、甘味料(スクラロースであり、6倍希釈タイプであり、本品90ml(希釈後540ml)に食酢(りんご酢)の主成分である酢酸750mgを含むりんご酢飲料。」(以下、「甲5−1発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲5−1発明を対比する。
甲5−1発明の「りんご酢」は、酢酸を含むから、本件発明1の「酢酸」を含有するとの条件を満たしている。
甲5−1発明の「ミツカン まろやかりんご酢はちみつりんご」は、りんご酢飲料であるから、本件発明1の「酢酸含有飲食品」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲5−1発明は、
「酢酸を含有する酢酸含有飲食品」
の発明である点で一致し、以下の相違点1d、2dで相違する。

<相違点1d>
酢酸含有飲食品に含まれる酢酸の量について、本件発明1は、「0.02w/v%以上」と特定するのに対し、甲5−1発明は、「本品90ml(希釈後540ml)に食酢(りんご酢)の主成分である酢酸750mgを含む」との記載があり、本件発明1のような特定ではない点。

<相違点2d>
本件発明1は、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす」と特定されるのに対し、甲5−1発明は、このような特定はない点。

(イ) 判断
新規性について
相違点1dについて、甲5−1発明の酢酸の含有量を6倍希釈した場合で計算すると
750mg/540ml=0.14g/100ml=0.14w/v%
となり、本件発明1で特定する酢酸の量の範囲内であるから、相違点1dは、両発明において実質的な相違点ではない。
しかしながら、相違点2dは、下記bで検討するように実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲5−1発明ではない。

進歩性について
相違点2dについて検討する。
甲5−1〜5−5をみても、甲5−1発明が相違点2dを満たすことについての示唆はない。
また、甲26には、甲3−1発明について、相違点2dに関する測定結果が記載されているが、上記(1)の相違点2に関して述べたように、当該証拠は採用できるものではない。
さらに、他の証拠をみても、公然実施された発明である甲5−1発明において、A〜F成分を本件発明1に特定する条件で含むことを示唆する記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲5−1発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2〜9について
本件発明2〜9は、請求項1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであるところ、本件発明1が上記イで検討したとおり、甲5−1に係る発明ではなく、かつ、甲5−1に係る発明及び甲1、甲16〜19、24〜27、31に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本件発明2〜9についても同様に、甲5−1に係る発明ではなく、かつ、甲5−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明10について
(ア) 対比
本件発明10と甲5−1発明を対比すると、酢酸含有飲食品における構成において、相違点1d、2dと同様の相違点が存在する上に、本件発明10は、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」酢酸含有飲食品の製造方法であることを特定するのに対し、甲5−1発明は、このような特定がない点(相違点3d)において、さらに相違する。

(イ) 判断
まず、本件発明10と甲5−1発明との間には相違点があるから、本件発明10は、甲5−1に記載された発明ではない。
また、相違点2dの相違点については、上記イ(イ)bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、相違点3dについて、他の証拠をみても、相違点2dの構成を採用することにより、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減」されることは記載も示唆もない。
そうすると、本件発明10は、甲5−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

オ 本件発明11、12について
本件発明11、12は、A〜F成分の少なくとも1種の香料成分を合計含有量が0.5ppb以上となるように含有させることにより、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤に関するものであるところ、甲5−1には、これらに関する示唆はないし、他の証拠にも、これらに関する記載や示唆はない。
そうすると、本件発明11、12は、甲5−1に係る発明ではなく、また、甲5−1に係る発明及び甲1、6、9〜12、26、28〜30に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(6) 申立理由7−1(新規性)、7−2(進歩性)について:甲6を主引例とした理由
ア 甲6に記載された発明
上記1(6)の摘記甲6ア〜甲6エ、特に甲6アの請求項2の記載から、甲6には、以下の発明が記載されている。
「食塩濃度が0.2重量%〜20重量%であり、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるペンタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘキサナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるヘプタナール、濃度が0.1ppb以上700ppb以下であるイソブチルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上3.0ppm未満であるイソバレルアルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満である2-メチルブタナール、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする飲食品。」(以下「甲6発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲6発明を対比する。
甲6発明の「ブタナール」、「ペンタナール」、「2−メチルブタナール」は、本件発明1の「(B成分)ブタナール」、「(D成分)ペンタナール」、「(C成分)2−メチルブタナール」に相当する。
甲6発明の「飲食品」は、「飲食品」である限りにおいて、本件発明1の「酢酸含有飲食品」と一致する。
そうすると、本件発明1と甲6発明は、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される香気成分を含有する飲食品」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1e>
飲食品について、本件発明1は、「酢酸を0.02w/v%以上含有」する「酢酸含有」飲食品と特定するのに対し、甲6発明は、このような特定はない点。

<相違点2e>
含有する(A成分)イソブタナール、(B成分)ブタナール、(C成分)2−メチルブタナール、(D成分)ペンタナール、(E成分)酢酸イソブチル、及び(F成分)酢酸ブチルからなる群から選択される香気成分について、本件発明1は、
「群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり、且つ
要件i〜iiiからなる群より選択される少なくとも1種の要件:
(要件i)前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の合計含有量が0.3ppb以上であること、
(要件ii)前記E成分の含有量が1.0ppb以上であること、並びに
(要件iii)前記F成分の含有量が5.0ppb以上であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件
を満たす」
と特定されるのに対し、甲6発明は、このような特定はない点。

(イ) 判断
新規性について
相違点1e、2eは、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲6発明ではない。

進歩性について
相違点1e、2eについて検討する。
甲6発明は、甲6アの記載から、「食塩濃度が0.2〜20重量%」を含む飲食品や飲食品に配合する「呈味改善剤」に関するものであり、甲6エに記載されているように、段落【0006】、【0008】の記載からみて、「添加効果が高く、酸味や苦味などの余分な味を付与しない塩味増強剤およびその利用法、ならびに塩化カリウム等の食塩代替物質を用いた際に生じる好ましくない苦味の抑制をすることができる呈味改良剤とその利用法を提供すること」を目的とするものである。
そして、甲6には、呈味改善剤は調味料形態で利用でき、その調味料類としてドレッシングやマヨネーズが例示にされているが(甲6オ)、ドレッシングやマヨネーズに関する具体的な実施例もない。
一方、本件発明1は、酢酸含有飲食品であり、「一定期間保存後も酢酸臭、刺激臭及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供する」ことを課題とし、それを解決するために相違点2eの構成を有するものであるところ、甲6の記載を見ても、また、他の証拠の記載を見ても、本件発明1の課題が記載されているわけではないから、甲6発明において、ドレッシングやマヨネーズの調味料形態を選択して酢酸の含有量について相違点1eの構成を採用し、その上でさらに、本件発明1の課題を解決するために相異点2eの構成を採用することを動機づける記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲6に記載された発明ではなく、また、甲6に記載された発明及び甲1、甲16〜18、31〜40に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

ウ 本件発明2〜8について
本件発明2〜8は、請求項1を直接又は間接的に引用し、さらに限定するものであるところ、本件発明1が上記イで検討したとおり、甲6に記載された発明ではなく、また、甲6に記載された発明及び甲1、甲16〜18、31〜40に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。から、本件発明2〜8についても同様に、甲6に記載された発明ではなく、また、甲6に記載された発明及び甲1、甲16〜18、31〜40に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

エ 本件発明10について
(ア) 対比
本件発明10と甲6発明を対比すると、酢酸含有飲食品における構成において、相違点1e、2eと同様の相違点が存在する上に、本件発明10は、
「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」酢酸含有飲食品の製造方法であることを特定するのに対し、甲6発明は、このような特定がない点(相違点3e)において、さらに相違する。

(イ) 判断
まず、本件発明10と甲6発明との間には相違点があるから、本件発明10は、甲6に記載された発明ではない。
また、相違点1e、2eの相違点については、上記イ(イ)bで検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、相違点3eについて、他の証拠をみても、相違点2eの構成を採用することにより、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減」されることは記載も示唆もない。
そうすると、本件発明10は、甲6に記載された発明ではなく、また、甲6に記載された発明及び甲1、甲16〜18、31〜40に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

オ 本件発明11、12について
本件発明11、12は、A〜F成分の少なくとも1種の香料を成分を合計含有量が0.5ppb以上となるように含有させることにより、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤に関するものであるところ、甲6には、これらに関する示唆はないし、他の証拠にも、これらに関する記載や示唆はない。
そうすると、本件発明11、12は、甲6に記載された発明ではなく、また、甲6に記載された発明及び甲1、甲16〜18、31〜40に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(7) まとめ
よって、申立理由2−1〜7−2は採用できず、本件発明1〜12に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

3 申立理由1(サポート要件)について
(1)サポート要件について
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点から検討する。

(2) 申立理由の概要
ア 本件明細書には、本件発明の作用効果の裏付けとして試験例1(実施例1〜40及び比較例1〜5)が記載されているが、甲13〜19、甲26のとおり、リンゴ果汁にはA〜F成分がすべて含まれるが、比較例1〜5につき、5倍濃縮のりんご果汁がA〜F成分を1ppb単位ですら含まれておらず、データの信憑性に欠けるため、本件発明はサポート要件を満たさない。(申立書第57〜60頁(4−2−2):主張a)
イ 本件発明は、酢酸の含有割合に関する上限値、香気成分の配合量と酢酸の配合量の比率の規定が存在しないので、酢酸濃度が、段落【0015】に記載の「好ましくは」として特定される含有量の範囲よりも大きい場合を含み、そのような場合に、課題を解決できると認識できる範囲のものではないし、また、本件特許と同じ特許権者の同様の課題を有する特許公報の甲7、甲8によれば、香気成分と酢酸の比率を規定することが課題解決のために不可欠な解決手段であり、本件発明にも同様のことが当てはまらない筈はないから、本件発明はサポート要件を満たさない(申立書第60〜65頁(4−2−3):主張b)
ウ (要件i)〜(要件iii)がいずれもサポートされていない(主張c)。
本件明細書の実施例1〜60のうち、A〜F成分を極めて多量に含む例(実施例51〜60)、実施例1〜28はB成分とD成分を含むものではないし、本件発明1の香料の限定の下限値に係る実施例はないから、本件発明1〜12は、サポートされているとはいえない。

(3) 判断
ア 本件発明の課題について
本件発明1〜9、10の課題は、本件明細書の段落【0007】の記載からみて、
「調製直後のみならず一定期間保存後も酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品およびその製造方法を提供すること」であると認められる。
また、本願発明11、12の課題は、各請求項の記載からみて
「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭から」なる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法又は抑制剤を提供すること」
であると認められる。

イ 本件明細書の記載内容について
ます、本件発明1、10について、香料成分の中でB成分とD成分を組み合わせると好ましいことは、段落【0030】、【0041】に記載があり、香料成分の合計量が0.5ppb以上であるとより好ましいことは、段落【0029】に記載があり、要件i〜iiiについては、段落【0032】に記載されている。
そして、本件明細書の実施例において、表1の実施例1〜12、表2の実施例13〜18の結果をみると、酢酸の含有量が0.1w/v%、ムレ臭の1つであるイソ吉草酸の含有量が5.0ppmの場合に、各A〜F成分の含有量を0.5ppm、1.0ppm、5.0ppmと増加させると、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭に対する評価が改善されることが記載されており、コントロールに対し酢酸臭、刺激臭、ムレ臭の抑制に係る総合評価Cとなるのは、A、C成分であれば、0.5ppb必要であり、E成分では1.0ppb、F成分であれば5.0ppb必要なこと、B、D成分が0.5ppb含有すればさらに上の総合評価Bとなることも記載されている(表1実施例1〜4、実施例12、表2実施例18)。
また、総合評価Bとなるために必要な各香料の含有量は、表2の実施例19〜24の結果から、酢酸の含有量が5.0w/v%、イソ吉草酸の含有量が100ppmの場合であるが、B、D成分では0.5ppbであり、A、C成分では1.0ppb、E成分では5.0ppbであり、F成分では10.0ppbであることが記載されており、この結果から、香料成分のうち、B、D成分の抑制効果が優れていることが理解できる。
さらに、表3の実施例27〜34の結果から、実施例27、28においてB、D成分をそれぞれ単独で用いた場合よりも、両成分を併用した実施例29〜33の方が評価において優れることが記載されている。また、果汁を含んだ場合についても、表4において同様の評価がされている。
上述した本件明細書の記載内容、特に、実施例の結果から理解できるのは、
・B、D成分を併用すると酢酸臭、刺激臭、ムレ臭の抑制に係る総合評価が高いこと、
・酢酸臭、刺激臭、ムレ臭に対する抑制され、酢酸の含有量が0.1w/v%、ムレ臭の1つであるイソ吉草酸の含有量が5.0ppmの場合に、総合評価Cとなる含有量は、A、C成分であれば0.5ppb必要であり、E成分では1.0ppb、F成分であれば5.0ppb必要であり、B、D成分の含有量は0.5ppbであればその上の総合評価Bとなり、これらの香料の含有量は、酢酸や吉草酸などの含有量に合わせて調整することでより好ましい評価が得られること、
であり、実施例で開示された含有量よりも、酢酸の含有量やイソ吉草酸の含有量が低くければ、香料成分の含有量が同様に低くても本件発明の課題を達成できることも当業者であれば当然に理解できるものといえる。
そうすると、本件発明1、10について、香料の含有量の下限値に係る実施例はなくとも、B、D成分を併用した本件発明1.10の構成により、その課題を達成できることを当業者であれば推認できるものといえる。
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜9についても同様である。

さらに、本件発明11、12の酢酸臭、刺激臭、ムレ臭の抑制方法、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭に対する抑制剤の発明についても、実施例の結果より、酢酸の含有量が0.1w/v%であって、ムレ臭の1つであるイソ吉草酸の含有量が5.0ppmの場合に、総合評価Cとなるのは、A、C成分であれば0.5ppb必要であり、E成分では1.0ppb、F成分であれば5.0ppbであり、B、D成分で0.5ppb含有するとさらに優れた総合評価Bとなるところ、上述したように、酢酸やイソ吉草酸の含有量が少なければ、実施例に効果があると開示された各香料の含有量よりも少ない量で酢酸臭、刺激臭、ムレ臭に対する抑制効果が達成されることが理解できるので、A〜D成分だけでなく、E、F成分であっても0.5ppb以上含めば、本件発明の課題を達成できる範囲が存在しているといえる。

ウ 申立人の主張について
(ア) 主張aについて
上記主張aで引用する甲13〜19は、様々な種の異なるりんご果汁に関するものであり、また、甲26は上記2(1)イ(イ)b(b)で述べたとおりその結果は採用できないものであるところ、いずれの甲号証も本件明細書に記載された実施例に用いた5倍濃縮のリンゴ果汁の香料に関するデータを開示するものはない。
一方、本件明細書の実施例に用いた5倍濃縮のりんご果汁は、特定のりんごジュースを60〜70℃の条件で加熱して得たものであり(段落【0095】)、果実由来の劣化臭の評価のために使用されるものであって(段落【0103】、【0104】)、表4の比較例1〜5で測定されているとおり、当該濃縮果汁を配合しても、A〜F成分の濃度が0ppbと示されるものである。
そして、本件明細書の記載をみても、加熱して5倍濃縮のりんご果汁を含んだ実施例において、A〜F成分の濃度が明らかに誤りであることを示す記載はなく、申立人が、上記証拠以外を用いて本件明細書に係るデータが信憑性のないことを説明するものでもないから、申立人の主張aは採用できない。

(イ) 主張bについて
まず、酢酸の含有量(酢酸濃度)について、本件明細書の段落【0015】には、「本発明の酢酸含有飲食品中の酢酸の含有量は、0.02w/v%以上である限り、特に制限されない」との記載がある一方で、「喫食(特に飲用)するために適しているという観点」等から、「好ましくは0.02〜15w/v%」と規定する記載もある。
そして、飲食品である限り、酸である酢酸の含有量は、飲食可能な上限値があろうことは当業者でなくとも理解できるし、また、本件発明において、上記【0015】の喫食に適するとされる量を大きく超えるという証拠はなく、段落【0015】に記載の適量の範囲であれば、酢酸の量に応じて香料成分の量を調整すればよいから、本件発明は、酢酸含有量の上限の記載がなければその課題を解決できないというものではない。
また、酢酸の含有量と香料の含有量との比率について、本件特許の特許権者の特許公報(甲7、8)において、類似の課題(酢酸臭、刺激臭)があり、当該比率について特定されていたとしても、甲7、8に係る発明と本件発明とは香料の組み合わせが異なるものであり、本件発明も甲7、8と同様にこの比率がなければ課題が解決できないという技術常識もない。そして、本件明細書には、当該比率についての記載はなく、これがなくとも本件発明の課題も解決できることが記載されているから、酢酸の含有量と香料の含有量との比率に関する特定がなければ課題が解決できないとする申立人の主張も採用できない。
よって、申立人の主張2は採用できない。

(ウ) 主張cについて
要件i〜iiiの特定があるのは、本件発明1〜10であるから、この主張cは、本件発明1〜10に対するものと認められる。
そして、本件発明1では、
「(A成分)イソブタナール、
(B成分)ブタナール、
(C成分)2−メチルブタナール、
(D成分)ペンタナール、
(E成分)酢酸イソブチル、及び
(F成分)酢酸ブチル
からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり」
との特定があるところ、当該「前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり」との特定に係る「前記香料成分」は、「(A成分)・・・(F成分)からなる群より選択される少なくとも2種の香気成分であって、前記B成分及び前記D成分を含有する香気成分」であって、B成分及びD成分のみを含有する香料成分を意味するものではないから、上記の「前記香気成分の合計含有量が0.5ppb以上であり」との要件を満たしたとしても、それにより要件iが自動的に満たされるものではない。
そして、上記イで述べたように、香料の合計含有量0.5ppb以上との特定における下限値や、要件i〜iiiの下限値に対する実施例はなくとも、酢酸の含有量やイソ吉草酸の含有量などが低ければ、要件i〜iiiの下限値に係る含有量であっても、本件発明の課題が達成できることは推認できるものである。
そうすると、申立人の主張cは採用できない。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は理由がなく、本件発明1〜12は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、これらの発明の係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反したものではないから、同法第第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

第5 むすび
以上のとおり、請求項1〜12に係る特許は特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に、請求項1〜12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-06-10 
出願番号 P2020-034287
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 112- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 冨永 みどり
岡崎 美穂
登録日 2021-03-23 
登録番号 6856907
権利者 株式会社Mizkan Holdings 株式会社Mizkan
発明の名称 酢酸含有飲食品  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ