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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G06Q |
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管理番号 | 1386161 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-12-22 |
確定日 | 2022-07-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6898416号発明「契約管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6898416号の請求項1〜8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6898416号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜8に係る特許についての出願は、令和元年10月30日に出願され、令和3年6月14日にその特許権の設定登録がされ、同年7月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年12月22日に特許異議申立人相川和信(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 その後、当審より、特許異議の申立てにおいて提出された証拠の公知日に関し、令和4年2月14日付けで通知書を通知したが、申立人から何ら応答はなかった。 第2 本件特許 特許第6898416号の請求項1〜8に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 書面契約書に関する情報と電子契約書に関する情報とを管理する管理サーバーと、 ネットワークを介して前記管理サーバーに接続され、前記書面契約書に関する情報および前記電子契約書に関する情報の操作を行う端末装置と を少なくとも有する契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、 前記書面契約書に関する情報と前記電子契約書に関する情報とが混在する契約書リストと、新たな書面契約の登録を行うための第1操作部材と、新たな電子契約の登録を行うための第2操作部材と、を少なくとも含む管理画面を作成して前記端末装置に表示する処理と、 前記第1操作部材が操作された場合は、新たな書面契約書に関する台帳データを前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理と、 前記第2操作部材が操作された場合は、新たな電子契約書の契約書データおよび電子契約に関する台帳データを前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理と を実行することを特徴とする契約管理システム。 【請求項2】 請求項1に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、 登録済の前記書面契約書の原本の保管を管理会社に依頼するための第3操作部材をさらに含む管理画面を作成して前記端末装置に表示する処理と、 前記第3操作部材が操作された場合は、登録済の前記書面契約書の原本の保管を管理会社に依頼する処理を実行することを特徴とする契約管理システム。 【請求項3】 請求項2に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、 前記第3操作部材の操作時に前記書面契約書の原本が管理会社へ配送されたときに電子化するか否かを選択する機能を有し、 前記第3操作部材が操作された場合、前記書面契約書の原本が管理会社へ配送されたときに電子化するか否かを判別し、電子化する場合は配送時に前記書面契約書を電子化し、電子化された前記書面契約書を前記管理サーバーに登録する処理を実行することを特徴とする契約管理システム。 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、 管理会社が保管する前記書面契約書の原本の電子化を依頼するための第4操作部材をさらに含む管理画面を作成して前記端末装置に表示する処理と、 前記第4操作部材が操作された場合は、管理会社が保管する前記書面契約書の原本の電子化を管理会社に依頼し、電子化された前記書面契約書を前記管理サーバーに登録する処理を実行することを特徴とする契約管理システム。 【請求項5】 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、前記管理画面に表示される前記契約書リストの表示内容の変更、並べ替え、検索、電子署名の実行、のいずれかを操作する操作部材を少なくとも備え、 前記操作部材のいずれかが操作された場合に、前記契約書リストの表示内容の変更、並べ替え、検索、電子署名の実行のいずれかの処理を行うとともに、前記電子契約書が未署名の場合は電子署名を促すメッセージを署名者に送信する ことを特徴とする契約管理システム。 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、前記契約書リストに進捗状態を表示するとともに、前記進捗状態の欄に、当該契約書リストが前記書面契約書の場合は書面契約を示す第1記号を表示し、当該契約書リストが前記電子契約書の場合は電子契約を示す第2記号を表示する ことを特徴とする契約管理システム。 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、前記管理画面に表示される前記契約書リストのうち、未署名の前記電子契約書のリストに電子署名アイコンを表示し、 前記端末装置は、前記管理画面の電子署名アイコンを操作することによって、当該電子契約書に電子署名を行う ことを特徴とする契約管理システム。 【請求項8】 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、前記書面契約書または前記電子契約書にユーザーが任意に付与可能な管理番号とは別に、前記管理サーバーが管理する全てのユーザーの前記書面契約書および前記電子契約書のそれぞれに唯一のドキュメント識別子を付与して、前記管理サーバーが管理する全ての契約書を識別する ことを特徴とする契約管理システム。」 第3 申立理由の概要 申立人は、甲第1号証「PDF化した紙文書と電子契約を一元管理」(https://www.gmosign.com/function/scan.html)、甲第2号証(「甲第1号証が少なくとも平成27年12月1日にはホームページ上で公開されていたこと、及び令和元年10月30日時点において、電子契約書と書面契約書とを一元管理することが周知技術であったこと」を立証する証拠)、甲第3号証「E-STAMP スタートアップガイド」(https://www.e-stamp.jp/wp_company/wp-content/uploads/2019/03/e-stamp_startup_guide_20190219_2.pdf)及び甲第4号証(「甲第3号証が少なくとも平成31年1月31日当時においてホームページ上で公開されていたこと」を立証する証拠)を証拠として提出し、本件発明1〜8は、甲第1号証及び甲第3号証の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、よって、請求項1〜8に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 なお、以下、甲第1号証〜甲第4号証を、それぞれ、「甲1」〜「甲4」という。 第4 甲1及び甲3の公知日について 1 甲1について 申立人は、甲1を証拠として提出すると共に、甲1が平成27年12月1日にはホームページ上で公開されていたことを示す証拠として、甲1を検索結果として含む、インターネット検索結果画面である甲2を提出したが、当審において、「PDF化した紙文書と電子契約を一元管理」(https://www.gmosign.com/function/scan.html)を確認したところ、提出された甲1とは異なるものであり、甲2の検索結果画面を再現することもできなかったことから、甲1の公知日(掲載日)が本件特許出願の前であるかを確認することができない。 そして、当審より、甲1について、甲1と同一の記事をインターネットで確認することができず、甲1の公知日(掲載日)を特定できない旨、甲1の公知日(掲載日)を明確にするための証拠の提出が必要である旨、及び当該公知日(掲載日)を明確にするための証拠がない場合には公知日は不明確なものとして審理する旨を令和4年2月14日付け通知書にて申立人に通知して意見を求めたが、申立人からは何ら応答がなかった。 したがって、当審において、甲1を、特許法第29条第1項第3号の特許出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとして採用しない。 2 甲3について 甲3は、当審において、提出された甲3と同一の「E-STAMP スタートアップガイド」(https://www.e-stamp.jp/wp_company/wp-content/uploads/2019/03/e-stamp_startup_guide_20190219_2.pdf)を確認し、甲4及び職権により公知日が本件特許出願の前であることを確認した。 第5 甲3について 1 甲3に記載された事項 甲3は、電子契約サービス「イースタンプ」というクラウドサービスに関するスタートアップガイドであり、以下のとおりの記載がある。 (1)02頁 ![]() (2)08頁 ![]() (3)16頁 ![]() (4)19頁 ![]() (5)20頁 ![]() (6)21頁 ![]() 2 甲3から把握できる事項 (1)甲3には、上記1(1)の「01. はじめてログインする アカウントの発行が完了すると、システムよりアカウント発行のメールがお客様ご契約のメールアドレスに送付されます。」及び「【イースタンプ】アカウント発行のお知らせ」のメール本文の画像から、「イースタンプ」は、「お客様」であるユーザーが使用する端末装置から「ログインURL」にアクセスして「システム」にログインするものであると共に、上記1(5)には、「09.紙で締結した契約をクラウド上に残しておきたい」、「TOPページから文書を管理をクリックし、スキャン文書をアップロード。」、「スキャン文書の登録完了」とあるように、「書面で締結した契約書のデータ」を「アップロード」して「クラウド」上に登録管理するものであり、これにより、「書面で締結した契約書のデータ(スキャン文書)」も電子契約とともに管理することができ」ることが記載されているといえる。 このように、甲3の「イースタンプ」は電子化された契約書データを「クラウド」上に登録管理する電子契約システム上で提供しうるものであるから、当該システムは電子化された契約文書データの登録管理を行うサービス提供者側のコンピュータ、すなわち、「クラウドコンピュータ」を備えていることは自明である。 そうすると、甲3には、ユーザーが使用する端末装置と、この端末装置から、書面で締結した契約書のデータがアップロードされるクラウドコンピュータとからなる、書面で締結した契約書のデータであるスキャン文書と電子契約を管理する電子契約システムが記載されているといえる。 (2)上記1(2)〜(4)の画面には、電子契約の契約手続時の操作に関し、「文書のアップロード」>「文書情報の入力」>「署名位置の設定」の順で操作を行うことを意味する表示と共に、「文書をアップロードし、内容をご確認の上、文書情報の入力ボタンを押してください。」との表示がある。そして、上記1(2)の「01 契約締結の準備<書類のアップロードと署名依頼>」、「契約締結ボタンをクリックし、契約書データをアップロード」との記載を併せてみると、甲3には、電子契約の契約書のアップロードを行うことで新たな契約の登録が行われることが記載されているといえる。 そして、この電子契約のアップロードに関する手続は、上記1(2)から、「契約を締結」をクリックすることで、新たに締結する契約書のデータをアップロードすることで開始されることが看取できるから、甲3には、「契約を締結」ボタンをクリックすると、「契約を締結」の画面から、新たな電子契約の契約書データをアップロードすることができることが記載されているといえる。 (3)上記1(5)には、「TOPページから文書を管理をクリック」すると、「アップロードするファイルをドロップ または ファイルを選択」との案内を含む、アップロードするスキャン文書を選択する画面が表示され、登録するスキャン文書のファイルを選択して、「文書登録確認」の画面で「登録」ボタンをクリックすると、「スキャン文書の登録完了」となることが示されていることから、甲3には、TOPページから「文書を管理」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書を選択してアップロードするための画面が表示され、さらに、登録する書面で締結した契約書のファイルを選択して、「文書登録確認」の画面で「登録」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書のデータがアップロードされて登録されることが記載されているといえる。 (4)上記1(6)は「10.送信、保存した文書を探す、管理する」として、文書一覧の画面と共に「01 文書一覧から対象の文書を選択」、「TOPページから文書管理画面に入り、情報登録を行いたい文書の対象文書の詳細ボタンをクリックします。」と記載されており、また、文書一覧の画面から、「文書一覧」の左側に「契約を締結」ボタン及び「文書を管理」ボタンが表示されていることが看取でき、これらのボタンを操作することによって「送信、保存」され、そして、一覧表示される文書は、上記1(3)の電子契約の契約書データ、上記1(6)の書面で締結した契約書のデータのことであることから、甲3には、TOPページから文書管理画面に入ると、当該文書管理画面では、クラウドコンピュータ上で管理されている電子契約の契約書データ及び書面で締結した契約書のデータの一覧が表示されている状態で、当該一覧表示の左側に、「契約を締結」ボタン及び「文書を管理」ボタンがクリック可能に表示されることが記載されているといえる。 (5)また、上記1(6)から、甲3には、当該文書管理画面において、文書一覧が表示されている状態で、情報登録を行いたい文書の対象文書の「詳細ボタン」をクリックし、画面が切り替わると、一番下にある「文書情報編集」ボタンをクリックすることで、対象文書の登録情報が編集可能になり、情報登録を行いたい対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報を入力することができることが記載されているといえる。 3 引用発明 上記1、2によれば、甲3には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「ユーザーが使用する端末装置と、この端末装置から、書面で締結した契約書のデータがアップロードされるクラウドコンピュータとからなる、書面で締結した契約書のデータであるスキャン文書と電子契約を管理する電子契約システムにおいて(上記2(1))、 TOPページから文書管理画面に入ると、当該文書管理画面では、クラウドコンピュータ上で管理されている電子契約の契約書データ及び書面で締結した契約書のデータの一覧が表示されている状態で、当該一覧表示の左側に、「契約を締結」ボタン及び「文書を管理」ボタンがクリック可能に表示され(上記2(4))、 TOPページから「文書を管理」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書を選択してアップロードするための画面が表示され、さらに、登録する書面で締結した契約書のファイルを選択して、「文書登録確認」の画面で「登録」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書のデータがアップロードされて登録され(上記2(3))、 「契約を締結」ボタンをクリックすると、「契約を締結」の画面から、新たな電子契約の契約書データをアップロードすることができ(上記2(2))、 当該文書管理画面において、文書一覧が表示されている状態で、情報登録を行いたい文書の対象文書の「詳細ボタンを」をクリックし、画面が切り替わると、一番下にある「文書情報編集」ボタンをクリックすることで、対象文書の登録情報が編集可能になり、情報登録を行いたい対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報を入力することができる(上記2(5))、 電子契約システム。」 第6 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 ア 引用発明の「書面で締結した契約書のデータ」、「電子契約の契約書データ」は、本件発明1の「書面契約書に関する情報」、「電子契約書に関する情報」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「クラウドコンピュータ」は、「書面で締結した契約書のデータ」及び「電子契約の契約書データ」がアップロードされることから、「書面で締結した契約書のデータ」及び「電子契約の契約書データ」を管理する点で、本件発明1の「管理サーバー」に相当する。さらに、引用発明の「ユーザーが使用する端末装置」は、ユーザーが操作することで、「クラウドコンピュータ」に「書面で締結した契約書のデータ」及び「電子契約の契約書データ」をアップロードするものであって、アップロードは、ネットワークを介して行われることは明らかであるから、本件発明1の「ネットワークを介して前記管理サーバーに接続され、前記書面契約書に関する情報および前記電子契約書に関する情報の操作を行う端末装置」に相当する。 そうすると、引用発明の「電子契約システム」は「クラウドコンピュータ」で契約書のデータを管理するシステムであって、当該「クラウドコンピュータ」は、本件発明1と同様の「管理サーバー」であるといえることから、引用発明の「電子契約システム」は、本件発明1と同様の「契約管理システム」といえる。 よって、引用発明の、「書面で締結した契約書のデータ」と「電子契約の契約書データ」を管理する「クラウドコンピュータ」と、インターネットを介して当該「クラウドコンピュータ」に接続され、「書面で締結した契約書のデータ」及び「電子契約の契約書データ」に関するデータ操作を行うユーザー側の「端末装置」とを有する「電子契約システム」は、本件発明1の「書面契約書に関する情報と電子契約書に関する情報とを管理する管理サーバーと、ネットワークを介して前記管理サーバーに接続され、前記書面契約書に関するおよび前記電子契約書に関する情報の操作を行う端末装置とを少なくとも有する契約管理システム」に相当する。 イ 引用発明は、「文書管理画面では、クラウドコンピュータ上で管理されている電子契約の契約書データ及び書面で締結した契約書のデータの一覧が表示され」ることから、引用発明の文書管理画面における「一覧」は、本件発明1の「前記書面契約書に関する情報と前記電子契約書に関する情報とが混在する契約書リスト」に相当する。また、引用発明は、「「文書を管理」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書を選択してアップロードするための画面が表示され」、このとき、書面で締結した契約書を選択することで、クラウドコンピュータにアップロードできることから、引用発明の「文書を管理」ボタンは、本件発明1の「書面契約の登録を行うための第1操作部材」に相当する。さらに、引用発明は、「「契約を締結」ボタンをクリックし、「契約を締結」の画面から、新たな電子契約の契約書データをアップロードすることができ」、新たな電子契約の契約書データが登録されることから、引用発明の「新たな電子契約の契約書データをアップロードする」「契約を締結」ボタンは、本件発明1の「新たな電子契約の登録を行うための第2操作部材」に相当する。 また、引用発明は、「TOPページから文書管理画面に入ると、当該文書管理画面では、クラウドコンピュータ上で管理されている電子契約の契約書データ及び書面で締結した契約書のデータの一覧が表示されている状態で、当該一覧表示の左側に、「契約を締結」ボタン及び「文書を管理」ボタンがクリック可能に表示され」ることから、引用発明の、電子契約の契約書データ及び書面で締結した契約書のデータの一覧、「契約を締結」ボタン及び「文書を管理」ボタンがクリック可能に表示される画面は、本件発明1の「前記書面契約書に関する情報と前記電子契約書に関する情報とが混在する契約書リストと、新たな書面契約の登録を行うための第1操作部材と、新たな電子契約の登録を行うための第2操作部材と、を少なくとも含む管理画面」に相当する。 そして、引用発明の電子契約システムは、電子契約の契約書データ及び書面で締結した契約書のデータの一覧、「契約を締結」ボタン及び「文書を管理」ボタンがクリック可能に表示される画面をクラウドコンピュータが生成し、ユーザーが使用する端末装置に表示されるものであることは明らかであるから、引用発明の、クラウドコンピュータが、当該画面を生成し、ユーザーが使用する端末装置に表示する処理を行うことは、本件発明1の「前記書面契約書に関する情報と前記電子契約書に関する情報とが混在する契約書リストと、新たな書面契約の登録を行うための第1操作部材と、新たな電子契約の登録を行うための第2操作部材と、を少なくとも含む管理画面を作成して前記端末装置に表示する処理」に相当する。 ウ 引用発明の「TOPページから「文書を管理」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書を選択してアップロードするための画面が表示され、さらに、登録する書面で締結した契約書のファイルを選択して、「文書登録確認」の画面で「登録」ボタンをクリックすると、書面で締結した契約書のデータがアップロードされて登録され」ることと、本件発明1の「前記第1操作部材が操作された場合は、新たな書面契約書に関する台帳データを前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理」を行うこととは、「前記第1操作部材が操作された場合は、新たな書面契約書に関するデータを前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理」を行うことである点で共通する。 エ 引用発明の「「契約を締結」ボタンをクリックすると、「契約を締結」の画面から、新たな電子契約の契約書データをアップロードする」ことは、本件発明1の「前記第2操作部材が操作された場合は、新たな電子契約書の契約書データ」「を前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理」することに相当する。 オ 引用発明の「当該文書管理画面において、文書一覧が表示されている状態で、情報登録を行いたい文書の対象文書の「詳細ボタンを」をクリックし、画面が切り替わると、一番下にある「文書情報編集」ボタンをクリックすることで、対象文書の登録情報が編集可能になり、情報登録を行いたい対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報を入力することができる」について、本件発明1の「台帳データ」は本件明細書の段落【0034】に「管理番号、文書名、契約相手(相手方)、契約日、契約満了日などの一般情報」と例示して記載されていることから、引用発明の「情報登録を行いたい対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報」は、本件発明1の「台帳データ」に相当することは明らかである。 カ してみると、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 書面契約書に関する情報と電子契約書に関する情報とを管理する管理サーバーと、 ネットワークを介して前記管理サーバーに接続され、前記書面契約書に関する情報および前記電子契約書に関する情報の操作を行う端末装置と を少なくとも有する契約管理システムにおいて、 前記管理サーバーは、 前記書面契約書に関する情報と前記電子契約書に関する情報とが混在する契約書リストと、新たな書面契約の登録を行うための第1操作部材と、新たな電子契約の登録を行うための第2操作部材と、を少なくとも含む管理画面を作成して前記端末装置に表示する処理と、 前記第1操作部材が操作された場合は、新たな書面契約書に関するデータを前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理と、 前記第2操作部材が操作された場合は、新たな電子契約書の契約書データを前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理と を実行することを特徴とする契約管理システム。 <相違点1> 「第1操作部材が操作された場合」に「前記端末装置から前記管理サーバーに登録」される「新たな書面契約書に関するデータ」が、本件発明1は「台帳データ」であるのに対し、引用発明は「契約書のデータ」であって、本件発明1の「台帳データ」に相当する引用発明の「情報登録を行いたい文書の対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報」の登録は、「文書を管理」ボタンをクリックして、書面で締結した契約書を選択してアップロードした後に、文書管理画面において、情報登録を行いたい文書の対象文書の「詳細ボタンを」をクリックし、画面が切り替わると、一番下にある「文書情報編集」ボタンをクリックすることで入力されるものである点。 <相違点2> 本件発明1は、「前記第2操作部材が操作された場合は、新たな電子契約書の契約書データ」および「電子契約に関する台帳データ」を「前記端末装置から前記管理サーバーに登録する処理」を実行するのに対し、引用発明は、「契約を締結」ボタンをクリックすると、「契約を締結」の画面から、「新たな電子契約の契約書データ」をアップロードするが、「電子契約に関する台帳データ」を登録するものではなく、本件発明1の「台帳データ」に相当する引用発明の「情報登録を行いたい文書の対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報」の登録は、文書管理画面において、情報登録を行いたい文書の対象文書の「詳細ボタンを」をクリックし、画面が切り替わると、一番下にある「文書情報編集」ボタンをクリックすることで入力されるものである点。 (2)相違点の判断 <相違点1について> 引用発明において、「第1操作部材が操作された場合」に「前記端末装置から前記管理サーバーに登録」される「新たな契約書面に関するデータ」を「契約書のデータ」から「台帳データ」に変更する動機は存在しておらず、且つ、引用発明の「情報登録を行いたい対象文書の文書名、相手方、契約満了日時等の契約書の詳細情報」は、「文書を管理」ボタンによってアップロードされた書面で締結した契約書のデータに対して、後から入力されるものであり、これらの情報の入力を書面で契約した契約書のデータの新規のアップロード時に行うことに変更する動機も存在しない。 よって、書面で締結した契約書のデータをアップロードする「文書を管理」ボタンに、さらに、台帳データの登録を行わせる機能を付加することが当業者にとって容易とはいえない。 <相違点2について> 引用発明は、アップロードされた電子契約の契約書のデータに対して、後から、台帳データが入力されるものである。これらの台帳データの入力を電子契約の契約書のデータの新規のアップロード時に行うことに変更する動機はないことから、本件発明1の「第2操作部材」に相当する引用発明の「契約を締結」ボタンをクリックした際に、契約書のアップロードとともに、「台帳データ」を登録する構成に変更する動機は存在しない。 よって、電子契約の契約書のデータをアップロードする「契約を締結」ボタンに、さらに、台帳データの登録を行わせる機能を付加することが当業者にとって容易とはいえない。 よって、引用発明において、上記相違点1、2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到することができたものではない。 また、本件発明1の構成を採ることによって、本件発明1が奏する「一元管理する書面契約書と電子契約書とが混在する契約書リストを同じ画面に表示して、進捗状態の確認や検索および閲覧などを行えるようにするとともに、新たな契約の登録を行う操作および書面契約の保管依頼や電子化依頼を行う操作を画面上で容易に行うことができる」という作用効果も当業者が予測し得るものではない。 したがって、本件発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、甲1を検討したとしても、甲1には甲3に記載されている以上の事項は記載されていないことから、上記判断に影響を与えるものではない。 2 本件発明2〜8について 本件発明2〜8は、本件発明1を引用するものであって、いずれも上記相違点1、2に対応する発明特定事項を含むから、上記1(2)と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-06-30 |
出願番号 | P2019-197348 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G06Q)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
溝本 安展 松田 直也 |
登録日 | 2021-06-14 |
登録番号 | 6898416 |
権利者 | 株式会社ワンビシアーカイブズ |
発明の名称 | 契約管理システム |
代理人 | 弁理士法人高田・高橋国際特許事務所 |