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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B32B |
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管理番号 | 1386164 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-21 |
確定日 | 2022-07-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6906915号発明「層状物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6906915号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6906915号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜12に係る特許についての出願は、平成28年9月6日(優先権主張:平成27年9月29日,以下「優先日」という。)に出願され、令和3年7月2日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年1月21日に特許異議申立人 大澤豊(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1〜12に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明12」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有する層状物品であって、 溶着部を有し、 該溶着部の厚みが5×10−6m〜28×10−6mであり、 式(1)で表される指数Aが0.90×10−6m3/g以下であり、面ファスナー雌部材である層状物品であって、 面ファスナー雄部材に係合可能な係合層と該係合層を保持する物性層とを有し、 該係合層が繊維の不織布を含み、かつ、該物性層の材料が繊維の不織布であり、 前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下である、層状物品: A=T/G (1) T:溶着部の厚み(単位はm) G:坪量(単位はg/m2) 【請求項2】 前記指数Aが0.75×10−6m3/g以下である、請求項1に記載の層状物品。 (なお、請求項2の「0.75×10−6m3/g」との記載は「0.75×10−6m3/g」の誤記であると認める。) 【請求項3】 前記Gが50g/m2以下である、請求項1または2に記載の層状物品。 【請求項4】 前記溶着部が前記繊維同士の溶着部を含む、請求項1から3までのいずれかに記載の層状物品。 【請求項5】 前記溶着部に存在する直径100μm以上の孔の個数が10個/m2以下である、請求項1から4までのいずれかに記載の層状物品。 【請求項6】 前記溶着部がエンボスパターンを有する、請求項1から5までのいずれかに記載の層状物品。 【請求項7】 前記エンボスパターンが不連続のエンボスパターンである、請求項6に記載の層状物品。 【請求項8】 前記面ファスナー雌部材が不織布のみからなる、請求項1から7までのいずれかに記載の層状物品。 【請求項9】 前記係合層に含まれる不織布を構成する繊維の表面と前記物性層の該係合層側の表面が、同種のポリマーを含む、請求項1から8までのいずれかに記載の層状物品。 【請求項10】 前記ポリマーがポリオレフィンである、請求項9に記載の層状物品。 【請求項11】 請求項1から10までのいずれかに記載の層状物品と、該層状部材と係合する面ファスナー雄部材とを有する、面ファスナー。 【請求項12】 請求項1から10までのいずれかに記載の層状物品を有する衛生用品。」 第3 申立理由の概要 申立人は、甲第1号証〜甲第11号証を提出し、請求項1〜12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1〜12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備であり特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、そして、請求項1〜12に係る特許は、発明の詳細な説明が実施可能な程度に記載されておらず特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1〜12に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2004−81254公報 甲第2号証:国際公開第2008/108238号 甲第3号証:特開2013−144864号公報 甲第4号証:特開2010−104654号公報 甲第5号証:特開2015−112235号公報 甲第6号証:特開2011−102456号公報 甲第7号証:特開2002−191412号公報 甲第8号証:特開2009−97133号公報 甲第9号証:特開昭56−148954号公報 甲第10号証:特開平5−140849号公報 甲第11号証:特開2001−279570号公報 甲第1号証〜甲第11号証それぞれを、以下「甲1」〜「甲11」といい、これらをまとめて「甲号証」という。 第4 各甲号証の記載等 1 甲1の記載事項・甲1発明等 (1)記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与したものである。以下同じ。) ア「【0002】 【従来の技術】 一般に面ファスナーは工業用をはじめとして生活雑貨等のあらゆる分野で使用されている。面ファスナーの構成としては、通常鉤型やアーチ型、マッシュルーム形状のフックからなる雄材とループからなる雌材とで構成される。・・・(略)・・・」 イ「【0013】 該短繊維ウェブは、面ファスナー雌側としての係合機能を有する非熱融着領域の繊維が該非熱融着領域を構成する繊維同士で互いに熱融着して素子形状を固定化するとともに該素子を形成する繊維が係合の剥離力を受けた場合でも熱融着領域での素抜けが生じないようにするために、強度があり、かつ熱融着性のある繊維であることがより好ましい。従って、ウェブを構成する繊維は、低融点ポリマー成分を繊維表面に有する芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合型熱融着繊維であることが好ましい。すなわち、構成繊維の一部が強度保持成分として働き、他方が融着成分として働くことになる。・・・(略)・・・」 ウ「【0029】 実施例1 ポリエチレンテレフタレート(融点255℃)を芯成分、ポリエチレン(融点130℃)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維で、単繊維繊度が6.7dTexと2.0dTexの複合繊維を用い、前者を60%、後者を40%で充分に混綿した目付40g/m2のカードウェブを作製した。このカードウェブを基材である目付け重量15g/m2のポリプロピレン製スパンボンド不織布−ポリプロピレン製メルトブロー不織布−ポリプロピレン製スパンボンド不織布貼り合せ基材に積層した。 積層した後、熱エンボス法で熱圧着させた。用いたエンボスロールは直径が5mmで、深さが2mmの円形孔が5.5mm間隔で一列に並び、その円形孔列に対して次の円形孔列が千鳥状に並ぶように配列されたもので、対ローラーとしてフラットローラーを用いた。処理のエンボス圧力は45Kg/cm、エンボス温度は155℃であった。エンボス領域の面積率は76.3%であった。 図1で示される如き、エンボス熱融着領域Sの中に、エンボス非熱圧着面として、多数の非熱融着領域Iが突出したエンボス不織布を得た。得られた不織布は、図2に示すように非熱融着部の高さHが0.65mmであった。 このエンボス不織布を面ファスナー雌材として用い、高さ0.3mmからなるマッシュルーム状の雄側係合部材として用い、両者で係合剥離強力を測定した。」 (2)認定事項 上記(1)イの「短繊維ウェブは、面ファスナー雌側としての係合機能を有する」との記載から、上記(1)ウに記載された実施例1の「カードウェブ」は、面ファスナー雌側としての係合機能を有するものと認められる。 (3)甲1に記載された発明 上記(1)及び(2)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「面ファスナー雌材であって、 熱融着領域Sを有し、 ポリプロピレン製スパンボンド不織布−ポリプロピレン製メルトブロー不織布−ポリプロピレン製スパンボンド不織布繊維貼り合わせ基材からなる目付け重量15g/m2の基材を、 目付40g/m2の、芯鞘型複合繊維60%、単繊維度が6.7dTexと2.0dTexの複合繊維40%を混綿からなるカードウェブに積層した後、熱エンボス法で熱圧着した熱融着領域Sと非熱融着領域Iを有する、エンボス不織布である面ファスナー雌材であって、 カードウェブの非熱融着領域Iが面ファスナー雌側としての係合機能を有する、面ファスナー雌材。」 2 甲2の記載事項・甲2発明等 (1)記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 ア「[0009] 本発明の不織布積層体は、伸縮性、柔軟性及び嵩高性に優れ、ベタツキが少なくまたメカニカルファスニング雌材の性能を兼ね備える。」 イ「[0076] 本発明の不織布積層体をおむつ等衛生材用途に用いる場合には、柔軟性および通気性の観点から、前記不織布積層体の目付は、積層体合計で通常、200g/m2以下、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは60〜15g/m2範囲にある。」 ウ「[0114] (4)係止性 突起部の寸法:平均高さ0.4mm、先端の大きさ:平均0.2mm×0.3mm、突起の個数:約220個/cm2、材質:ポリプロピレン製のマッシュルームテープ(雄材)MD25mm×CD13mmを巾25mm×100mmのコピー用紙(短冊)の端に両面テープで貼り付け、上記(3)の評価後の延伸後の不織布積層体にマッシュルームテープを適当に貼り付け、コピー紙をもって不織布積層体から剥離する際の感度を繰り返し5回、5人の評価にて係止性を評価した。」 エ「[0140] 次いで移動ベルト上に上記混繊スパンボンド不織布を繰り出しその上にMFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm3、融点138℃、Mw/Mn=3.0のプロピレン・エチレンランダム共重合体(以下、「PP−2」と略す)を押出機(75mmφ)で溶融し、また、PP―1を押出機(50mmφ)で溶融し、重量比PP―2:PP―1=80:20となる並列型複合繊維を溶融押し出し、目付30g/m2の捲縮繊維不織布(スパンボンド不織布)を移動ベルト上に堆積させ、ニップロール(線圧10kg/cm)にて不織布積層体を得た。 [0141] またこの繊維の繊維径は20.2μmであり捲縮数は29個/25mmであった。 [0142] 移動ベルトから積層体を剥離させたところ、得られた積層体のエンボスパターンは面積率18%、エンボス面積0.41mm2であった。この積層体を加熱温度110℃、線圧30kg/cm条件の加熱エンボスにて2層を一体化し、混繊スパンボンド不織布/捲縮繊維不織布からなる目付60g/m2の不織布積層体を得た。」 オ「[0148] 得られた不織布積層体を上記記載の方法で評価した。なお、上記(4)係止性は、捲縮スパンボンド不織布層側の面を評価した。評価結果を表1に示す。」 (2)認定事項 上記(1)の段落[0140]の「移動ベルト上に上記混繊スパンボンド不織布を繰り出しその上に・・・(略)・・・捲縮繊維不織布(スパンボンド不織布)を移動ベルト上に堆積させ、・・・(略)・・・不織布積層体を得た」との記載から、段落[0142]の「混繊スパンボンド不織布/捲縮繊維不織布からなる目付60g/m2の不織布積層体」は「混繊スパンボンド不織布の層及び捲縮スパンボンド繊維不織布の層からなる目付60g/m2の不織布積層体」であると解される。 (3)甲2に記載された発明 上記(1)及び(2)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「混繊スパンボンド不織布の層及び捲縮スパンボンド繊維不織布の層からなる目付60g/m2の不織布積層体であって、加熱エンボスにて2層を一体化した、メカニカルファスニング雌材の性能を備える不織布積層体であって、雄材に係止性を有する捲縮スパンボンド繊維不織布の層と、捲縮スパンボンド繊維不織布の層と一体化された混繊スパンボンド不織布の層とを有する、不織布積層体。」 3 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項5】 前記繊維シートがスパンレース不織布からなる請求項1ないし4のいずれかに記載のシート基材。」 (2)「【0024】 (ハ)その上、シート基材10に凸部11及び凹部12が形成されていることによって、該シート基材10は、厚みの小さな部位である凹部12が屈曲の起点となりやすいので、風合いが柔軟なものである。・・・(略)・・・」 (3)「【0040】 シート基材10構成する繊維シートにおいては、更にエンボス加工して圧密化しても良い。圧密化は、部分的でもよく、あるいは全面でも良い。凸部11及び凹部12に、エンボス加工を行うことにより、エンボス加工によって圧密化された部分は、見掛け密度が更に高く、繊維間距離が更に小さくなる。それによって液移動に対して抵抗力が一層高くなるので好ましい。特に、凹部12は、もともと圧密化によって見掛け密度が上がっているので、凹部12の位置に合わせてエンボス加工を行うことにより、圧密化された部分は、凹部12のうちエンボスされていない部位に比べて薄くて更に見掛け密度が高く、繊維間距離が小さくなる。それによって液移動に対して抵抗力が一層高くなるので好ましい。」 4 甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0073】・・・(略)・・・あるいは、シール間欠部41に対応する胴周りに沿った帯状領域S1a、S2a内に、吸収体13を水平方向に横断する線状のエンボスを設けることにより、折り線位置S1、S2での吸収体13の折り曲げを容易にすることができる。」 5 甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【0050】 側方縦溝52は、高密度部と隣接していることが好ましい。このような構成によって側方縦溝52の側方側に接する吸収性コア4と側方縦溝52の中央側に接する吸収性コア4の硬さが異なりその硬度の違いから、ナプキン1が側方縦溝52を基軸として側縁部を使用者の肌とは反対方向に屈曲させやすくなり、着用中のナプキン1の形状をより安定させることにより、ナプキン1の着用により使用者が感じる違和感を軽減すると共に、ナプキン1中央部をより使用者の肌に密着させ、より効率よく液を吸収することが可能となる。・・・(略)・・・」 6 甲6の記載事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0022】 第1面と第2面における繊維の結合状態の観察には、走査型電子顕微鏡を使用し、繊維と繊維の並列状態での固定が判別できる程度の大きさで画像を取り込み、2mm×1.5mmの範囲で、個数及び固定距離を測定する。 図5には本発明の一実施形態である不織布の第1面及び第2面、並びに従来繊維による不織布の第1面の拡大写真を示している。前述した並列融着部は、本発明の一実施形態の不織布における第1面では10ヶ所〔図5(a)〕、同じ不織布の第2面では4ヶ所〔図5(b)〕、従来繊維による不織布では3ヶ所〔図5(c)〕であり、同じ面積で比較したときに、前述した並列融着部が、第1面に、第2面及び従来不織布それぞれよりも多く形成されている。異なる面積では同じ面積となるように換算することにより比較できる。 また、繊維の太さが異なる不織布の比較では、基準となる繊維の太さを決め、基準とした繊維の太さに換算する。(本実施形態では繊維径が25μmであり、比較形態が28μmであるため、25μmを基準径として算出した。表1参照)」 (2)「【0036】 第1面の凹部の深さd1は不織布厚みTの60〜99%、第2面の凹部の深さd2は不織布厚みTの0〜40%であることが好ましく、第1面の凹部12aの深さd1は0.3〜1.5mm、第2面の凹部12bの深さd2は0〜0.3mmであることが、柔軟性及びクッション性の点から好ましく、吸収性物品の表面シートとしては低液残り性と低拡散性、さらには液の移行性の点から好ましい。」 (3)「【0069】 前記のような用途に用いられる場合、本発明の不織布は、その坪量が15〜60g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましい。またその厚みが1〜5mm、特に2〜4mmであることが好ましい。但し、用途により適切な厚みは異なるため、目的に合わせ適宜調整される。」 7 甲7の記載事項 甲7には、以下の事項が記載されている。 「【0021】雌材用不撒布の目付は、30〜150g/m2であるのが好ましい。目付が30g/m2未満であると、構成繊維の数が少ないため、ループの数も相対的に少なくなり、雄材に引っ掛かりにくくなる。一方、目付が150g/m2を超えると、不織布の構成繊維の数が多くなるため、繊維の剛性が高くなり、雌材の柔軟性が低下する傾向となる。また、不織布の価格も目付が高くなるほど高価になる。」 8 甲8の記載事項 甲8には、以下の事項が記載されている。 「【0051】 不織布(加熱後の不織布)の目付は、例えば、10〜300g/m2程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜250g/m2、さらに好ましくは30〜200g/m2程度である。不織布の厚みは、例えば、0.1〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.4〜1.5mm程度である。目付や厚みがこの範囲にあると、不織布の伸縮性と柔軟性又はクッション性とのバランスが良くなる。」 9 甲9の記載事項 甲9には、以下の事項が記載されている。 (1)「面積率の小さい程、熱圧着部の間隔が広い程、非熱圧着部(凸部)の高さが大きい程、得られる不織布の柔軟性は良くなり、毛羽立ちし易くなる。」(第2ページ左下欄第20行〜右下欄第3行) (2)「このように、本発明不織布は部分熱圧着により使用上必要な強力を持ち、かつ風合(柔軟性)も変らず一段と耐摩耗性の向上したものであることは明らかである。」(第3ページ右下欄第4〜7行) 10 甲10の記載事項 甲10には、以下の事項が記載されている。 「【0022】・・・(略)・・・融点差が30℃未満であると、複合連続単糸を構成する二成分ともが溶融し、融着部位において孔が開いて外観が悪くなったり、或いは完全にフィルム化して柔軟性が低下する傾向が生じる。・・・(略)・・・」 11 甲11の記載事項 甲11には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0019】また、別の不織布やフィルムなどと積層する際に、短繊維のループと積層相手の第3の素材を接着することで、曲げや引っ張りなどの外力がかかったときにメルトブローン不織布が破壊されるのを防止することが可能となる。適切なループの大きさを形成するために、ニードルパンチの針深度は15mm以下であることが好ましい。針深度が15mmを超えると、メルトブローン極細繊維不織布を針および短繊維が貫通するときの衝撃で該不織布が破れたり、貫通した後の針穴が大きくなりすぎることが多くなりあまり好ましくない。針深度は、ニードルのバーブの位置にもよるが5mm以上であることが、不織布の交絡を増やして剥離を防止する上で好ましい。 【0020】刺孔密度は30〜200本/cm2であることが好ましい。刺孔密度が30本/cm2より小さいと不織布の剥離の問題が生じやすく、250本/cm2より大きいと刺孔による開口総面積が大きすぎたり、メルトブローン極細繊維不織布の破れや破壊を生じやすくあまり好ましくない。」 (2)「【0030】比較例2・・・(略)・・・積層不織布1m2あたりに5〜20程度のメルトブロー不織布が針穴近傍で破れが発生しており問題であった。複合不織布を折り曲げても剥離の問題は生じなかったが、破れの箇所が増加して問題であった。破れのない箇所の吸音率を測定したが、28%と低く問題であった。」 第5 当審の判断 1 サポート要件違反について (1)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の「3.申立ての理由」の「(4)具体的理由」の「ウ 本件発明と証拠に記載された発明との対比」の「(イ)特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)」(第31ページ第17行〜第34ページ第21行参照。)において、請求項1には、溶着部の、パターン、大きさ、個数、形状等について何ら規定されていないため、請求項1に係る発明の層状物品は、柔軟性、良好な手触り感及び優れた係合力を呈しないものが含まれるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとし、同様に本件発明2〜12は発明の詳細な説明に記載された発明ではない旨主張している。 (2)発明の詳細な説明の記載等 ア 本件特許の明細書の【発明の概要】には、以下の(ア)〜(ウ)の記載がある。 (ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的とするところは、繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有し、柔軟性が十分であり、良好な手触り感を達成できる、層状物品を提供することにある。また、本発明の目的とするところは、本発明の層状物品を有する面ファスナーを提供することにある。また、本発明の目的とするところは、本発明の層状物品を有する衛生用品を提供することにある。」 (イ)「【0047】 本発明の層状物品は、式(1)で表される指数Aが0.90×10−6m3/g以下である。 A=T/G (1) 【0048】 式(1)において、Tは、溶着部の厚み(単位はm)を表し、Gは、坪量(単位はg/m2)を表す。なお、この坪量とは、本発明の層状物品の全体の総坪量を意味する。」 (ウ)「【0050】 指数Aが上記範囲内にあれば、本発明の層状物品は、柔軟性がより十分となり、より良好な手触り感を達成できる。 【0051】 指数Aは、本発明の層状物品のような、繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有して溶着部を有する層状物品の柔軟性を適切に反映する指標である。指数Aがより小さいということは、溶着部の厚み方向の層状物品の材料の量が非溶着部の厚み方向の層状物品の材料の量に比べてより少ないことを反映しており、このような層状物品の材料の量の少ない部分が屈曲の起点となるため、柔軟性が高いものとなる。本発明の層状物品においては、指数Aが0.90×10−6m3/g以下というレベルになると、特に実用効果としての柔軟性に優れることを反映しているものといえる。なお、指数Aは小さいほどよいが、小さ過ぎると屈曲時に破断するという問題が起こり得るため、指数Aの下限値は、上記のように、好ましくは0.50×10−6m3/gである。 【0052】 溶着部の厚み(単位はm)を表すTは、好ましくは35×10−6m以下であり、より好ましくは1×10−6m〜30×10−6mであり、さらに好ましくは5×10−6m〜28×10−6mであり、特に好ましくは10×10−6m〜25×10−6mであり、最も好ましくは15×10−6m〜22×10−6mである。Tが上記範囲内にあれば、本発明の層状物品は、柔軟性がより十分となり、より良好な手触り感を達成できる。」 イ 上記ア(ア)〜(ウ)の記載から、発明の詳細な説明に記載された、本件発明1の解決しようとする課題は、「柔軟性が十分であり、良好な手触り感を達成できる、層状物品を提供すること」であると認められ、この課題を解決するために、本件発明1は「溶着部の厚みが5×10−6m〜28×10−6mであり」「式(1)で表される指数Aが0.90×10−6m3/g以下」であり、式(1)として「A=T/G(T:溶着部の厚み(単位はm)、G:坪量(単位はg/m2))」を特定していると認められる。 ウ 本件特許の明細書の【実施例】には、以下の(ア)及び(イ)の記載がある。 (ア)「【0119】 <柔軟性> 得られた層状物品を2.5cm(MD方向)×50cm(TD方向)に切出し、切出した層状物品の物性層表面側を巻き内側として、TDが円周となるようにリング状とし、端部が互いに重なることのないようにステープラーで2箇所固定した。 得られた層状物品のリング体に幅方向から人差し指と親指で挟んで圧縮荷重を加え、該リング体が初期直径の半分まで変形させた時の反発力を確認した。○:反発力が低く、柔軟性が高い。×:反発力が高く、柔軟性が低い。 【0120】 〔実施例1〜6〕 表1に示す原反不織布を積層し、23℃のエンボスパターンロールと、Herrmann社製超音波連続溶着装置(周波数20kHz、押付け力900N、速度50m/分)を用い、エンボス処理を施して、層状物品を得た。 用いたエンボスパターンは、図1に示す円弧状のエンボスパターンであり、エンボス幅0.8mm、隣接する2つのエンボスのMD方向の線上の距離の最大値(最大エンボス間距離)3.2mm、エンボス溶着面積割合23%、エンボスパターンによる溶着部の厚みは表1に示す通りであった。 結果を表1に示した。 【0121】 〔実施例7〕 実施例1において、エンボスパターンロールの温度を50℃とし、速度を100m/分とした以外は、実施例1と同様に行った。 結果を表1に示した。 【0122】 〔実施例8〕 実施例6において、エンボスパターンロールの温度を70℃とし、押付け力を850Nとし、速度を100m/分とした以外は、実施例6と同様に行った。 結果を表1に示した。 【0123】 〔実施例9〜11〕 実施例8において、原反不織布を表1のように変更した以外は、実施例8と同様に行った。 結果を表1に示した。 【0124】 〔実施例12〕 実施例6において、エンボスパターンロールの温度を80℃とし、押付け力を830Nとし、速度を100m/分とした以外は、実施例6と同様に行った。 結果を表1に示した。」 (イ)「【0126】 【表1】 」 エ 上記ウ(イ)の【表1】の「エンボスパターンによる溶着部の厚み[μm]」、「A[m3/g]」及び「総坪量[g/m2]」の欄の記載から、上記ウ(ア)の実施例1〜12は、「溶着部の厚みが5×10−6m〜28×10−6m」、「指数Aが0.90×10−6m3/g以下」及び「前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下」の条件を満たしており、本件発明1の実施例であるといえる。 そして、上記ウ(イ)の【表1】の、実施例1〜12の「柔軟性」の欄には「○」が記載されていて、実施例1〜12のものは、反発力が低く、柔軟性が高いことが理解できる。 そうであれば、実施例1〜12は、当業者が本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 オ そして、本件発明1の解決しようとする課題を解決するための手段として、溶着部の、パターン、大きさ、個数、形状等、つまり、エンボスパターンについて何ら必須の構成である旨の記載が発明の詳細な説明にないことから、上記(1)の申立人の主張は採用できない。 (3)小括 上記(2)のとおり、本件発明1は、柔軟性及び良好な手触り感を達成するための手段が反映された発明であって、発明の詳細な説明に記載された発明であり、同様に、本件発明2〜12も、発明の詳細な説明に記載された発明である。 2 実施可能要件違反について (1)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の「3.申立ての理由」の「(4)具体的理由」の「ウ 本件発明と証拠に記載された発明との対比」の「(ウ)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)」(第34ページ第22行〜第36ページ第11行参照。)において、 ア 特定パターン(不連続で円弧状の特定のエンボスパターン)以外のエンボスパターン処理を実施して、優れた柔軟性、手触り感、及び係合性を呈する面ファスナー雌部材を得る方法について何ら記載されておらず、そのような方法は出願時の技術常識でないとし、また、 イ 当業者が超音波溶着法以外の方法を用いて本件発明の溶着を実施するためには、過度の試行錯誤を要するものであるとし、 発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとし、同様に発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2〜12を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。 (2)発明の詳細な説明の記載等 溶着部に関して、本件発明6に「エンボスパターン」との事項が特定され、本件発明7においてそのエンボスパターンについて「不連続」との事項が特定されているが、不連続なスリットパターンや不連続なドットパターンで溶着部を設けることは、超音波溶着や熱溶着等の各種溶着手段とともに、本件特許の優先日前から不織布の技術分野においては広く慣用されている。 また、本件特許の明細書に「溶着部は、好ましくは、エンボスパターンを有する。このようなエンボスパターンは、好ましくは、エンボス処理によって形成される。エンボスパターンの具体例としては、例えば、連続格子状、不連続格子状、連続曲線状、不連続曲線状、連続ジグザグ状、不連続ジグザグ状、連続直線状、不連続直線状、円状、楕円状、中空円状、中空楕円状、円弧状、中空円弧状などが挙げられる。」(段落【0041】参照。)及び「エンボスパターンとしては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、不連続のエンボスパターンであり、より好ましくは、円弧状のエンボスパターンである。円弧状のエンボスパターンの一例の概略平面図を図1に示す。図1において、溶着部100は、円弧状のエンボスパターンを構成する複数のエンボス10を有する。図1において、溶着部100は、エンボスパターンのない領域20を有する。円弧状のエンボスパターンにおいては、好ましくは、個々のエンボスが「角」を有さないエンボスである。」(段落【0042】参照。)と記載されており、十分な柔軟性及び良好な手触り感を達成するにあたって、特定のエンボスパターンが、より好ましいというだけであって、その特定のエンボスパターンが必須ではないと理解できることを考慮すれば、どのような溶着部を採用し、また、どのようなエンボスのパターンを採用するかは、当業者が慣用されているもののなかから適宜試行錯誤して決定することができる程度のものにすぎない。 そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。 (3)小括 上記(2)のとおり、明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているから、上記(1)の申立人の主張は採用できない。 3 甲1発明を主引用例とする場合の進歩性について (1)本件発明1の検討 ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「面ファスナー雌材」は、本件発明の「面ファスナー雌部材である層状物品」に相当し、以下同様に、 「熱融着領域S」は「溶着部」に、 「面ファスナー雌側としての係合機能を有する」ことは「面ファスナー雄部材に係合可能」であることに、 「カードウェブ」は「係合層」に、 「基材」は「係合層を保持する物性層」に、それぞれ相当する。 そして、甲1発明の基材に係る「スパンボンド不織布」及び「メルトブロー不織布」は、いずれも繊維を作る紡糸工程からそのまま製造された不織布であるから、甲1発明の「基材」は、全体の材料が繊維の不織布であって、本件発明1の「材料が繊維の不織布」に相当するといえる。 また、甲1発明の「カードウェブ」は、全体が繊維の不織布であるから、本件発明1の「繊維の不織布を含」む構成に相当するといえる。 以上から、甲1発明の「面ファスナー雌材」は、本件発明1の「繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有する」構成に相当する構成を有するといえる。 また、甲1発明において、「基材」の目付け重量(坪量)が「15g/m2」であり、「カードウェブ」の目付け重量(坪量)が「40g/m2」であるから、甲1発明の「面ファスナー雌材」の不織布の坪量は55g/m2となるので、甲1発明の「面ファスナー雌材」は、本件発明1の「前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下」という条件を満たすといえる。 したがって、本件発明1と甲1発明とは 「繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有する層状物品であって、 溶着部を有し、 面ファスナー雌部材である層状物品であって、 面ファスナー雄部材に係合可能な係合層と該係合層を保持する物性層とを有し、 該係合層が繊維の不織布を含み、かつ、該物性層の材料が繊維の不織布であり、 前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下である、層状物品。」の点で一致し、以下の相違点1で相違する。 [相違点1] 本件発明1は「該溶着部の厚みが5×10−6m〜28×10−6mであり、 式(1)で表される指数Aが0.90×10−6m3/g以下であり、 A=T/G (1) T:溶着部の厚み(単位はm) G:坪量(単位はg/m2)」であるのに対し、甲1発明は、このような構成を有するか不明である点。 イ 検討 上記相違点1について検討する。 甲6には、「第1面の凹部の深さd1は不織布厚みTの60〜99%、第2面の凹部の深さd2は不織布厚みTの0〜40%であることが好ましく、第1面の凹部12aの深さd1は0.3〜1.5mm、第2面の凹部12bの深さd2は0〜0.3mm」(段落【0036】)及び「本発明の不織布は、その坪量が15〜60g/m2、特に20〜40g/m2であることが好ましい。またその厚みが1〜5mm、特に2〜4mmであることが好ましい。」(段落【0069】)と記載されているが、溶着部の厚みは記載されておらず、上記アの相違点1に係る式1の内容も、記載ないし示唆されていない。 なお、申立人は、特許異議申立書(特に第22ページ第21〜24行参照)において、甲6の段落【0036】及び【0069】の記載を根拠に、第1面の凹部の深さd1を不織布厚みTの99%、第2面の凹部の深さd2を不織布厚みTの0%、不織布の厚みTを2mmとした場合、20×10−6mという溶着部厚さが導き出せる旨主張している。 しかしながら、申立人の主張する、溶着部厚さが20×10−6m(20μm)で、不織布の厚みが2mmであり、第2面の凹部12bの深さd2が0mmという設定では、第1面の凹部12aの深さd1は1.98mmとなり、段落【0036】に記載された「0.3〜1.5mm」という条件の範囲外となる。そうすると、申立人の導き出した20×10−6mという溶着部厚さは、そもそも甲6の段落【0036】及び【0069】の記載から導き出されたものということはできない。 また、仮に溶着部厚さ20μmが計算上導き出せたとしても、甲6の段落【0022】の、「本実施形態では繊維径が25μmであり、比較形態が28μmである」との記載からみて、甲6に記載の技術では、溶着部の厚みについて、申立人が主張するような厚みをそもそも想定していないともいえる。 そうすると、申立人の主張する厚みは、本件発明1にあわせて逆算した、いわゆる後知恵によるものであって、甲6の記載から導き出されたものではないと認められる。 また、甲1〜5及び甲7〜11にも、溶着部の厚みは記載されておらず、また、上記相違点1に係る式1の内容が記載ないし示唆されていない。 そして、「前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下」という条件下において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、不織布の技術分野において周知技術であったとも認められない。 そうすると、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲1〜11に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点1に係る本件発明1の構成により、「溶着部の厚み方向の層状物品の量が非溶着部の厚み方向の層状物品の材料の量に比べてより少ないことを反映」して、溶着部が「屈曲の起点となるため、柔軟性が高いものとなる」(本件特許の明細書の段落【0051】参照。)という作用・効果を奏すると認められる。 以上から、本件発明1は、甲1発明及び甲1〜11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2)本件発明2〜12について 本件発明2〜12は、本件発明1の構成をすべて含み、請求項2〜12に記載された事項により限定をさらに付加したものである。 そうすると、本件発明2〜12も、上記(1)で示したものと同様の理由により、甲1発明及び甲1〜11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4 甲2発明を主引用例とする場合の進歩性について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「混繊スパンボンド不織布の層及び捲縮スパンボンド繊維不織布の層からなる」ことは、本件発明1の「繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有する」ことに相当し、以下同様に、 「不織布積層体」は「層状物品」に、 「加熱エンボスにて2層を一体化した」ことは「溶着部を有」することに、 「メカニカルファスニング雌材の性能を備える」ことは「面ファスナー雌部材である」ことに、 「雄材に係止性を有する」ことは「面ファスナー雄部材に係合可能」であることに、 「捲縮スパンボンド繊維不織布の層」は「係合層」に、 「捲縮スパンボンド繊維不織布の層と一体化された混繊スパンボンド不織布の層」は「係合層を保持する物性層」に、それぞれ相当する。 そして、甲2発明の「捲縮スパンボンド繊維不織布の層」は、全体が繊維の不織布であって、本件発明1の「繊維の不織布を含」む構成を備え、同様に、甲2発明の「混繊スパンボンド不織布」は、全体の材料が繊維の不織布であって、本件発明1の「材料が繊維の不織布」に相当する構成を備えるといえる。 また、甲2発明の「目付60g/m2の不織布積層体」は、本件発明1の「前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下」という条件を満たすといえる。 したがって、本件発明1と甲2発明とは 「繊維の不織布を含む層を少なくとも1層有する層状物品であって、 溶着部を有し、 面ファスナー雌部材である層状物品であって、 面ファスナー雄部材に係合可能な係合層と該係合層を保持する物性層とを有し、 該係合層が繊維の不織布を含み、かつ、該物性層の材料が繊維の不織布であり、 前記係合層中の不織布の坪量と前記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m2以下である、層状物品。」の点で一致し、以下の相違点2で相違する。 [相違点2] 本件発明1は「該溶着部の厚みが5×10−6m〜28×10−6mであり、 式(1)で表される指数Aが0.90×10−6m3/g以下であり、 A=T/G (1) T:溶着部の厚み(単位はm) G:坪量(単位はg/m2)」であるのに対し、甲2発明は、このような構成を有するか不明である点。 イ 検討 上記相違点2について検討する。 上記相違点2は、上記3(1)アの相違点1と同じものであって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、上記3(1)イで検討したと同様の理由により、甲2発明及び甲1〜11に記載された事項に基いて当業者が容易に想到しえたものとは認められず、本件発明1は、甲2発明及び甲1〜11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2)本件発明2〜12について 本件発明2〜12は、本件発明1の構成をすべて含み、請求項2〜11に記載された事項により限定をさらに付加したものである。 そうすると、本件発明2〜12も、上記(1)で示したものと同様の理由により、甲2発明及び甲1〜11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 むすび したがって、請求項1ないし12に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-06-30 |
出願番号 | P2016-173303 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B32B)
P 1 651・ 536- Y (B32B) P 1 651・ 121- Y (B32B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
一ノ瀬 覚 |
特許庁審判官 |
内田 博之 芦原 康裕 |
登録日 | 2021-07-02 |
登録番号 | 6906915 |
権利者 | 日東電工株式会社 |
発明の名称 | 層状物品 |
代理人 | 籾井 孝文 |