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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  F24C
審判 全部申し立て 2項進歩性  F24C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F24C
管理番号 1386190
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-07 
確定日 2022-06-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6934628号発明「加熱調理器用トッププレート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6934628号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6934628号の請求項1ないし16に係る特許についての出願は、令和2年12月25日(優先権主張 令和2年2月28日)に出願され、令和3年8月26日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について令和4年3月7日に特許異議申立人 黒野美穂(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下「本件特許発明1ないし16」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられ、屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含むと共に、青色顔料を含む基板色改善層とを有する、加熱調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記明度向上層が前記青色顔料を含む、請求項1に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記基板色改善層は、前記明度向上層の下面に設けられた、白色顔料と前記青色顔料を含む色調調整層を有する、請求項1に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記明度向上層が前記青色顔料を含む、請求項3に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記基板色改善層は、前記明度向上層が前記青色顔料を含み、かつ
前記明度向上層の下面に設けられた、白色顔料を含む色調調整層を有する、
請求項1に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記基板色改善層は、前記青色顔料を含む明度向上層で形成されている、請求項1に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記明度向上層は、空隙含有層である、請求項1〜6のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項8】
前記明度向上層は、中空粒子と多孔質材料のうちの1以上を含む空隙含有層、または、
前記結晶化ガラス基板の下面に、空隙を確保できるように凹凸が形成されてなる空隙含有層である、請求項1〜6のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項9】
前記明度向上層は、
前記結晶化ガラス基板と前記色調調整層の間に、空隙を確保できるようにスペーサーが設けられた空隙含有層、または、
前記色調調整層の上面に、空隙を確保できるように凹凸が形成されてなる空隙含有層である、請求項3〜5のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項10】
前記明度向上層は反射材と光輝材のうちの1以上を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項11】
前記反射材と光輝材のうちの1以上は、マイカ、アルミニウムフレーク、ガラス粒子、ガラスフレーク、金属蒸着層を有するガラスフレーク、および金属酸化物層を有するマイカよりなる群から選択される1種以上である、請求項10に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項12】
前記結晶化ガラス基板の下面の表面粗さRaが、0.1μm以上、10μm以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項13】
前記明度向上層は、厚さが800nm以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項14】
前記明度向上層は、Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、透明または半透明である、請求項1〜13のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項15】
前記基板色改善層の下面に遮光層を有する、請求項1〜14のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項16】
前記明度向上層は、空隙含有層であり、かつLi2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、透明または半透明である、請求項1〜15のいずれかに記載の加熱調理器用トッププレート。」

第3 特許異議申立ての概要
異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(以下、申立人の各号証をそれぞれ「甲1」等という。)を提出し、概略次の特許異議の申立ての理由を主張している。

甲1:特願2019−190148号(特開2021−63634号公報)
甲2:特願2019−227027号(特開2021−96025号公報)
甲3:特許第4998016号公報
甲4:特開2015−21692号公報
甲5:特開2011−208820号公報
甲6:「USTRON 事業案内 光学薄膜材料」
https://www.ustron.co.jp/service/material/opticalthinfilm.html

理由1(拡大先願):本件特許発明1、2、6、10、11は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲1、甲2の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

理由2(進歩性):本件特許発明1ないし5、10ないし12、15は、甲3ないし甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

理由3(サポート要件):本件特許の請求項1の記載は発明が解決しようとしている課題の解決手段が反映されたものではないので、本件特許発明1ないし16は特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。

理由4(明確性):本件特許の請求項1の記載が明確でないので、本件特許発明1ないし16は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

第4 当審の判断
1 甲1ないし甲6の記載について
(1)甲1
ア 甲1には以下の記載がある(下線は当審において付したものである。以下同様。)。
(ア)「【請求項1】
調理器具が接する調理面と、前記調理面と対向する裏面とを有するガラス板と、
を有する調理器用トッププレートであって、
前記裏面上に、着色顔料を含む着色層と、
前記着色層上に、フレーク状の無機フィラーを含む接着剤遮蔽層とを含む、
調理器用トッププレート。」

(イ)「【0025】
ガラス基板2の裏面2b上には、着色層3が設けられている。着色層3は、ガラス基板2の裏面2b上に直接接して設けられている。
また、着色層3は、例えば、ガラスと、無機着色顔料と、体質顔料とを含んでいる。
【0026】
無機着色顔料は、有色の無機物である限りにおいて特に限定されない。無機着色顔料としては、例えば、TiO2粉末、ZrO2粉末若しくはZrSiO4粉末などの白色の顔料粉末、Coを含む青色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti−Sb−Cr系若しくはTi−Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co−Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末、又はCuを含む黒色の無機顔料粉末などが挙げられる。」

(ウ)「【0032】
ガラスとしては、例えば、ホウケイ酸塩系ガラス、アルカリ金属成分及びアルカリ土類金属成分のうちの少なくとも一方を含むケイ酸塩系ガラス、亜鉛及びアルミニウムを含むリン酸塩系ガラス等からなるガラスを用いることができる。また、ガラスの形状としては、鱗片状、粉状等が挙げられる。
【0033】
着色層3中におけるガラスの含有量は、20〜50質量%の範囲内であることが、耐衝撃性の観点からみて好ましい。なお、ガラスの含有量は、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、ガラスの含有量は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。なお、着色層3中に含まれるガラスの含有量は、着色層3を構成する材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0034】
体質顔料としては、特に限定されないが、例えば、タルク、マイカなどを用いることができる。これらの体質顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。体質顔料は、トッププレート1の耐熱性や耐衝撃性をより一層高めることができる。」

(エ)「【0054】
(実施例1)
まず、2種類の着色層用のペースト(第一ペースト、第二ペースト)を準備する。
第一ペーストは、シリコーン樹脂60質量%(樹脂固形分)、マイカをTiO2でコーティングしたシルバー顔料40質量%となるように混合し、この混合物100質量%に対して有機溶剤を60質量%添加して作成した。
第二ペーストは、シリコーン樹脂56質量%(樹脂固形分)、Co−Al−Zn系の青顔料6質量%、Co−Si−Ni系の紫顔料38質量%となるように混合し、この混合物100質量%に対して有機溶剤を56質量%添加して作成した。
【0055】
次に、接着剤遮蔽層用のペーストを準備する。
接着剤遮蔽用のペーストは、シリコーン樹脂58質量%(樹脂固形分)、タルク12質量%、フレーク状のアルミフィラー粉末30質量%となるように混合した。次に、これらの混合物100質量%に対して、有機溶剤を58質量%添加して作成した。
【0056】
次に、このペーストを透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N−0」、30℃〜750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10−7/℃、厚み4mm)の全体の上に、それぞれの厚みが10μmとなるように、第一ペースト、第二ペースト、接着剤遮蔽ペーストの順にスクリーン印刷した。その後、100℃で10分間乾燥させ、さらに300℃で15分間焼成することにより着色層及び接着剤遮蔽層を形成し、調理器用トッププレート(トッププレート)を作製した。」

(オ)「



イ 上記アから分かること
(ア)【請求項1】、段落【0056】、図1の記載から、調理器用トッププレート1は加熱調理用で、 ガラス基板2及びガラス基板2の下面に設けられた着色層3を有していることが分かる。
(イ)段落【0056】の記載から、ガラス基板2は結晶化ガラス基板であることが分かる。
(ウ)段落【0025】−【0027】の記載から、着色層3は青色顔料を有していることが分かる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、甲1には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「結晶化ガラス基板2と、
前記結晶化ガラス基板2の下面に設けられ、青色顔料を含む着色層3とを有する、加熱調理器用トッププレート1。」

(2)甲2
ア 甲2には次の記載がある。
(ア)「【0023】
トッププレート1では、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有するものであることが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃〜750℃における平均線熱膨張係数は、−10×10−7/℃〜+60×10−7/℃の範囲内であることが好ましく、−10×10−7/℃〜+50×10−7/℃の範囲内であることがより好ましく、−10×10−7/℃〜+40×10−7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、低膨張な結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張な結晶化ガラスの具体例としては、例えば、日本電気硝子社製の「N−0」が挙げられる。なお、ガラス基板2としては、ホウケイ酸ガラスなどを用いてもよい。」

(イ)「【0026】
次に、ガラス基板2の裏面2b上に形成したペースト塗布層3Aを焼成する。それによって、図1(c)に示すように、ガラス基板2の裏面2b上に印刷層3を形成する。」

(ウ)「【0037】
ペースト中に含まれるガラスフリットとしては、例えば、B2O3−SiO2系ガラス粉末、ZnO−B2O3系ガラス粉末、SiO2−Al2O3系ガラス粉末などを用いることができる。
【0038】
また、ペースト中に含まれるガラスフリットの含有量としては、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下である。ガラスフリットの含有量が上述した範囲内にある場合、印刷層3のガラス基板2からの膜剥がれをより一層生じ難くすることができる。
【0039】
ペースト中に含まれる顔料としては、特に限定されないが、例えば、着色顔料や光沢顔料を用いることができる。着色顔料及び光沢顔料は、それぞれを単独で用いてもよく、併用してもよい。トッププレート1の意匠性をより一層向上させる観点からは、着色顔料及び光沢顔料を併用することが好ましい。
【0040】
着色顔料は、有色の無機物である限りにおいて特に限定されない。着色顔料としては、例えば、TiO2粉末、ZrO2粉末若しくはZrSiO4粉末などの白色の顔料粉末、Coを含む青色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti−Sb−Cr系若しくはTi−Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co−Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末、又はCuを含む黒色の無機顔料粉末などが挙げられる。」

(エ)「【0046】
光沢顔料は、トッププレート1のメタリック感を向上させることができる顔料である。光沢顔料としては、例えば、カオリン、タルク、セリサイト、ピロフェライト、マイカ、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。なかでも、天然のマイカを粉砕することにより得られたフレークを基材としてその表面を金属酸化物で被覆したパール顔料を用いることが好ましい。また、アルミナフレーク、シリカフレーク、フレーク状ガラスなど、人工的に作られたフレークを基材としてその表面を金属酸化物で被覆したエフェクト顔料を用いてもよい。なお、パール顔料やエフェクト顔料に用いられる金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄等が挙げられる。」

(オ)「【0056】
ペースト中に含まれる溶媒の含有量は、特に限定されない。ペースト中に含まれる溶媒の含有量は、好ましくは23質量%以上であり、より好ましくは28質量%以上であり、好ましくは41質量%以下であり、より好ましくは38質量%以下である。溶媒の含有量が上述した範囲内にある場合、ペーストの塗布時から焼成を開始するまでの粘度を適度に大きくすることができ、印刷層3の膜剥がれをより一層生じ難くすることができる。」

(カ)「【0059】
(実施例及び比較例)
まず、ガラスフリット(比重:2.4g/cm3)と、青色の着色顔料粉末(比重:4.2g/cm3)及び黒色の着色顔料粉末(比重:5.3g/cm3)と、光沢顔料粉末としてのマイカ(表面を酸化チタンでコーティングしたもの、比重:2.8g/cm3、平均粒子径:53μm)と、溶媒としての「KFA−794」とをそれぞれ質量比(ガラスフリット:着色顔料粉末:光沢顔料粉末:溶媒)で、50:12:38:200の割合となるように混合し、ペーストを作製した。
【0060】
次に、このペーストをガラス基板としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N−0」、30℃〜750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10−7/℃、厚み:4mm)全体の上に、厚みが30μmとなるように、スクリーン印刷により塗布した。その後、炉内を830℃に保持した焼成炉で30分間焼成した。それによって、ガラス基板の一方側主面上に、印刷層を形成して、トッププレートを得た。

(キ)「



イ 上記アから分かること
(ア)段落【0023】、【0026】、図1の記載から、調理器用トッププレート1は加熱調理用で、 ガラス基板2及びガラス基板2の下面に設けられた印刷層3を有していることが分かる。
(イ)段落【0060】の記載から、ガラス基板2は結晶化ガラス基板であることが分かる。
(ウ)段落【0026】、【0037】−【0040】の記載から、印刷層3は青色顔料を有していることが分かる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、甲2には、下記の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「結晶化ガラス基板2と、
前記結晶化ガラス基板2の下面に設けられ、青色顔料を含む印刷層3とを有する、加熱調理器用トッププレート1。」

(3)甲3
ア 甲3には次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
透明低膨張ガラスからなる基板ガラスにおける調理面とは反対側の面である裏側面にTiO2、CeO2、ZrO2のうち1種以上を主成分とすると共に厚みが20〜300nmである高反射膜を積層し、該高反射膜上にパール調材料を含有するパール調層を積層し、さらに、該パール調層上に遮光層を積層してなることを特徴とする調理器用ガラストッププレート。」

(イ)「【請求項4】
請求項3において、上記パール調絵具は、さらに、無機顔料を含有することを特徴とする調理器用ガラストッププレート。」

(ウ)「【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記基板ガラスは、上記裏面側の表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする調理器用ガラストッププレート。」

(エ)「【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、上記基板ガラスは、β−石英固溶体又はβ−スポジューメンを主結晶とする透明低膨張結晶化ガラス板であることを特徴とする調理器用ガラストッププレート。」

(オ)「【0013】
本発明は、透明低膨張ガラスからなる基板ガラスの裏側面にTiO2、CeO2、ZrO2のうち1種以上を主成分とすると共に厚みが20〜300nmである高反射膜を積層し、該高反射膜上にパール調層を積層し、さらに、該パール調層上に遮光層を積層してなる。」

(カ)「【0002】
従来より、電磁調理器やガス調理器などの調理器の上部には、ガラス板よりなる調理器用トッププレートが設置されている。この調理器用トッププレートには、鍋などの被加熱物が載置され、該被加熱物は調理器内部の加熱装置により加熱調理できる。特に、電磁調理器は、安全性が高いため、近年ますますその需要が増加する傾向にあり、それに伴い調理器用トッププレートの需要も増大している。」

(キ)「【0025】
また、上記パール調層は、パール調絵具を上記高反射膜上に塗布して200〜900℃で焼成することにより形成することが好ましい。
上記焼成温度が200℃未満の場合には、上記パール調層の焼付が十分に行われ難く、焼付け後にパール調層が剥離するおそれがある。一方、上記焼成温度が900℃を超える場合には、基板ガラスとして透明結晶化ガラスを用いる場合に、基板ガラスが白濁し、金属光沢が得られなくなるおそれがある。上記焼成の温度は、より好ましくは、700〜850℃である。
【0026】
また、上記パール調絵具は、さらに、無機顔料を含有することが好ましい(請求項4)。
上記無機顔料は、パール調材料の色を調整するために、パール調材料の色彩を阻害しない範囲で添加することができる。
【0027】
上記無機顔料としては、例えば、白色無機顔料、黒色無機顔料、灰色無機顔料、黄色無機顔料、茶色無機顔料、緑色無機顔料、青色無機顔料、桃色無機顔料等がある。
具体的には、上記白色無機顔料としては、例えば、TiO2、ZrO2、ZrSiO4、Al2O3、3Al2O3−2SiO2、Al2TiO3等が挙げられる。」

(ク)
「【0046】
また、上記基板ガラスは、β−石英固溶体又はβ−スポジューメンを主結晶とする透明低膨張結晶化ガラス板であることが好ましい(請求項12)。
上記β−石英固溶体やβ−スポジューメンを主結晶とする透明低膨張結晶化ガラスは、特に、電磁調理器用ガラストッププレートの基板ガラスとして適している。」

(ケ)
「【0069】
上記基板ガラスとしては、熱膨張係数が0.4×10−7/Kで、表面粗さRaが0.7μmの透明低膨張結晶化ガラスを用いた。
高反射膜用のペーストとしては、チタンレジネートと有機樹脂(セルロース系樹脂)とから構成されるTi濃度0.75%のペーストを用意した。」

(コ)「



イ 上記アから分かること
(ア)【請求項1】、段落【0002】、図1の記載から、調理器用ガラストッププレート1は加熱調理用で、基板ガラス2及び基板ガラス2の下面に設けられたパール調層4を有していることが分かる。
(イ)【請求項12】の記載から、基板ガラス2は結晶化基板ガラスであることが分かる。
(ウ)段落【0025】−【0027】の記載から、パール調層4は青色顔料を有していることが分かる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、甲3には、下記の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「結晶化基板ガラス2と、
前記結晶化基板ガラス2の下面に設けられ、青色顔料を含むパール調層4とを有する、加熱調理器用ガラストッププレート1。」

(4)甲4
ア 甲4には次の記載がある。
(ア)「【0002】
電磁調理器やガス調理器などの上部には、調理器用トッププレートが設置されている。調理器用トッププレートの調理面側には、鍋などの被加熱物が載置され、被加熱物は調理器内部の加熱装置により加熱される。電磁調理器用のトッププレートとしては、ガラス製のトッププレート(ガラストッププレート)が広く使用されている。一方、ガス調理器用のトッププレートとしては、ホーロー天板が使用されてきたが、優れた意匠性や清掃のし易さという観点から、近年、ガラストッププレートが注目されている。」

(イ)「【0013】
上記ガス調理器用ガラストッププレートは、上記のように、ガラス板と、該ガラス板の裏面側に積層された装飾層と、該装飾層上に積層された遮蔽層と、該遮蔽層上に積層された樹脂層とを有する。
ガラス板は、透明の低膨張ガラスセラミックスからなることが好ましい。透明の低膨張ガラスセラミックスは、透光性で膨張率が低いものがよい。例えば、主結晶相にβ−石英固溶体を析出したものがある。β−石英固溶体を析出した低膨張ガラスセラミックスの体積結晶化度は、約70%であり、結晶の大きさは0.1μm以下である。β−石英固溶体は負の膨張特性を示し、残存ガラス相の正の膨張特性と打ち消し合って熱膨張率がほぼゼロになる。屈折率(nD)は1.541であり、β−石英固溶体の析出結晶の大きさは0.1μm以下で可視光の波長より小さく、結晶相と残存ガラス相の屈折率もほぼ同程度であるため、光の散乱がなく、外観的には透明であり、可視光域から赤外域の光をよく透過する。
【0014】
ガラス板は、リチウムアルミノシリケートガラスからなることが好ましい。
この場合には、ガス調理器用ガラストッププレートとして要求される機械的強度及び耐熱性を十分に確保することができる。また、ガラス板の厚みは、例えば1〜4mmにすることができる。
【0015】
上記装飾層は、無機顔料を含有する層である。無機顔料は、所望の色調に応じて適宜選択することができる。無機顔料としては、様々なものを利用することができる。そのため、様々な色調のニーズに対応することが可能である。白系やシルバー系のように調理器用トッププレートにおいて需要の高い色にも対応が可能である。無機顔料としては、市販のものを利用することができる。
【0016】
装飾層は、無機顔料として白系顔料又はシルバー系顔料を含有する白系又はシルバー系の層からなり、遮蔽層は黒色系無機顔料を含有する黒色系の層からなることが好ましい。
この場合には、上記ガス調理器用ガラストッププレートは、白又はシルバー系の高級感のある意匠性を示すことができると共に、遮蔽層がその隠蔽効果をより確実に示すことができる。また、白系又はシルバー系の装飾層を有するトッププレートにおいては、上述の調理シミが目立ち易い傾向があるが、上記ガス調理器用ガラストッププレートは、上述のごとく液体透過性及び気体透過性の低い樹脂層を有しているため、例え調理シミの目立ち易い白系又はシルバー系であっても、調理シミの形成を抑制することができる。即ち、この場合には、調理シミの発生を抑制できるという上述の作用効果が顕著になる。
【0017】
装飾層は、無機顔料としてパール調顔料を含有することが好ましい。
この場合には、ガス調理器用ガラストッププレートは、光沢感のあるシルバー系のパール調の色調を示し、より優れた意匠性を発揮することができる。また、パール調の装飾層を有するトッププレートにおいては、調理シミが目立ち易い傾向があるが、上記ガス調理器用ガラストッププレートは、上述のように液体透過性及び気体透過性の低い樹脂層を有するため、調理シミの形成を抑制することができる。
【0018】
パール調顔料としては、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び酸化鉄から選ばれる少なくとも1種により無機顔料を被覆してなるものを用いることができる。即ち、パール調顔料は、例えば無機顔料と、該無機顔料を被覆するパール調皮膜とからなるものを用いることができる。被覆対象の無機顔料としては、例えばカオリン、タルク、セリサイト、ピロフェライト、天然雲母、合成雲母、酸化アルミニウム等がある。パール調顔料としては、市販品を利用することもできる。
【0019】
装飾層は、シリカを主成分とするシリカ膜と、該シリカ膜中に分散された無機顔料とを有する層から構成することができる。このような装飾層は、シリコーンレジン及び/又はシリカゾルからなるシリカ形成材料と、無機顔料とを少なくとも含有する装飾層形成用塗料を焼き付けることにより作製することができる。焼き付けによりシリカ形成材料からシリカが生成し、シリカ膜を作製できる。無機顔料は、このシリカ膜に分散して配置される。」

(ウ)「【0023】
装飾層形成用塗料の焼き付け温度が低すぎる場合には、焼き付けが不十分になり、焼き付け後に生成する装飾層の強度が低下するおそれがある。また、焼き付け温度が高すぎる場合には、上述のβ−石英を主結晶とするガラス板を用いる場合に、該ガラス板が白濁してしまうおそれがある。したがって、装飾層は、装飾層形成用塗料を500〜900℃で焼き付けてなることが好ましい。焼き付け時間は、焼き付けを十分に行うという観点や生産性の観点から、上述の焼き付け温度に応じて適宜調整することができる。例えば5〜60分にすることができる。装飾層の厚みは、適宜変更することが可能であるが、例えば1〜10μmにすることができる。」

(エ)「【0031】
(実施例1)
次に、ガス調理器用ガラストッププレートの実施例について説明する。
図1〜図3に示すごとく、本例のガス調理器用ガラストッププレート1は、ガラス板2と、この裏面22側に積層された無機顔料32を含有する装飾層3と、この上に積層された遮蔽層4と、この上に積層された樹脂層5とを有する。ガラス板2は、リチウムアルミノシリケートガラスからなり、主結晶相がβ−石英固溶体を析出してなる。具体的には、ガラス板2としては、熱膨張係数が−1×10−7/℃(30〜380℃)の日本電気硝子(株)製の商品名「ネオセラムN−0」(以下、「N−0」という。)を用いた。
【0032】
図3に示すごとく、装飾層3は、シリカからなるシリカ膜31と、このシリカ膜31中に分散されたパール調顔料32を有する。パール調顔料32は、マイカよりなる無機顔料321と、これを被覆する酸化チタンからなるパール調皮膜322とからなる。シリカ膜31中に存在するシリカの少なくとも一部は、ガラス板2の表面に存在するシラノール基の少なくとも一部とSi−O−Si結合を形成している(図示略)。また、シリカ膜31中に存在するシリカの少なくとも一部は、パール調顔料32のパール調皮膜322中に存在する少なくとも一部のTiと、Si−O−Ti結合を形成している(図示略)。装飾層3は、シリコーンレジンとパール調顔料とを少なくとも含有する装飾層形成用塗料を焼き付けてなる。」

(オ)「【0037】
次に、装飾層形成用塗料を塗布したガラス板2を温度750℃で焼成することにより、塗料を焼結させてガラス板2に焼き付けた。このようにして、ガラス板2の裏面22側に装飾層3を形成した(図2及び図3参照)。装飾層3の厚みを膜厚計で測定したところ、その厚みは5μmであった。」

(カ)「



イ 上記アから分かること
(ア)段落【0002】、【0031】、【0032】、図2の記載から、調理器用ガラストッププレート1は加熱調理用で、ガラス板2及びガラス板2の下面に設けられた装飾層3を有していることが分かる。
(イ)段落【0013】の記載から、ガラス板2は結晶化ガラス板であることが分かる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、甲4には、下記の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「結晶化ガラス板2と、
前記結晶化ガラス板2の下面に設けられた装飾層3とを有する、加熱調理器用トッププレート1。」

(5)甲5
ア 甲5には次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
酸化チタンを含む透明結晶化ガラス基板と、前記透明結晶化ガラス基板の裏面に形成されており、可視波長域における少なくとも一部の波長域の光を反射させる反射膜とを備える調理器用トッププレートであって、
前記透明結晶化ガラス基板と前記反射膜との間に形成されており、可視波長域において、波長が長くなるに従って光透過率が漸減する色調補正膜をさらに備え、
前記反射膜と前記色調補正膜とは、可視波長域において、前記色調補正膜と前記透明結晶化ガラス基板との間の界面における平均光反射率が、前記色調補正膜と前記反射膜との間の界面における平均光反射率よりも低くなるように構成されている調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記色調補正膜は、前記透明結晶化ガラス基板の光透過率と、前記色調補正膜の光透過率とを乗算して得られる値が可視波長域において一定となるように構成されている請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記透明結晶化ガラス基板の色調と、前記色調補正膜の色調とが補色関係にある請求項1または2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記色調補正膜は、相対的に屈折率が低い低屈折率膜と、相対的に屈折率が高い高屈折率膜とが交互に積層された積層膜である請求項1〜3のいずれか一項に記載の調理器用トッププレート。」

(イ)「【0002】
電磁加熱(IH:Induction Heating)調理器や赤外線加熱調理器に用いられる調理器用トッププレートとしては、低熱膨張であるガラス基板やセラミックス基板等が用いられている。また、ガス調理器においても、美観性や清掃性が優れていることから、低熱膨張のガラス基板やセラミックス基板等が用いられるようになっている。」

(ウ)「【0005】
ところで、低膨張透明結晶化ガラス基板としては、現在、酸化チタンを核形成剤とした透明結晶化ガラス基板が一般的に使用されている。この透明結晶化ガラス基板は、酸化チタンを含むため、可視波長域の短波長側の部分の光透過率が低く、可視波長域において、透明結晶化ガラス基板の光透過率は、波長が長くなるに従って漸増する。従って、酸化チタンを含む透明結晶化ガラス基板は、黄色系の色調を有する。
【0006】
よって、この酸化チタンを含む透明結晶化ガラス基板の裏面に遮光膜を形成した調理器用トッププレートでは、色調が遮光膜の色調よりも黄色側にシフトしてしまう。このため、調理器用トッププレートの色調が、所望の色調からずれてしまい、調理器用トッププレートの美観性が悪くなるという問題がある。」

(エ)「【0014】
本発明において、色調補正膜は、可視波長域において、透明結晶化ガラス基板の光透過率と、色調補正膜の光透過率とを乗算して得られる値が一定となるように構成されていることが好ましい。すなわち、透明結晶化ガラス基板の色調と、色調補正膜の色調とが補色関係にあることが好ましい。この場合、調理器用トッププレートの色調を反射膜の色調とより近づけることができる。その結果、より美観性に優れた調理器用トッププレートを実現することができる。」

(オ)「【0024】
透明結晶化ガラス基板2は、TiO2などの酸化チタンを含んでいる。すなわち、透明結晶化ガラス基板2は、チタン原子を含んでいる。具体的には、本実施形態では、透明結晶化ガラス基板2は、核形成剤として酸化チタンを含んでいる。すなわち、透明結晶化ガラス基板2に含まれている酸化チタンの少なくとも一部は、結晶化していないガラス基板(結晶性ガラス基板)を結晶化させて透明結晶化ガラス基板2を作製する際に、透明結晶化ガラス基板2に析出している結晶の核形成剤となったものである。
【0025】
このように、透明結晶化ガラス基板2は、酸化チタンを含んでいるため、可視波長域の短波長側部分における透過率が低い。また、透明結晶化ガラス基板2の可視波長域における光透過率は、波長が長くなるに従って漸増する。具体的には、透明結晶化ガラス基板2のλT5は、350nm〜360nm程度であり、透明結晶化ガラス基板2のλT80は、450nm〜470nm程度である。ここで、λT5とは、透明結晶化ガラス基板2の可視波長域における光透過率の最大値の5%以上である波長域の最小値である。ここで、λT80とは、透明結晶化ガラス基板2の可視波長域における光透過率の最大値の80%以上である波長域の最小値である。
【0026】
透明結晶化ガラス基板2における酸化チタンの含有量は、特に限定されないが、例えば、1質量%〜5質量%であることが好ましく、1.5質量%〜3質量%であることがより好ましい。透明結晶化ガラス基板2における酸化チタンの含有量が少なすぎると、結晶化しにくく、例えば熱膨張係数などの所望の特性が得られない場合がある。透明結晶化ガラス基板2における酸化チタンの含有量が多すぎると原ガラスを成形する際に失透する虞がある。
【0027】
透明結晶化ガラス基板2の組成は、酸化チタンを含有している限りにおいて特に限定されない。透明結晶化ガラス基板2は、β−スポジュメン固溶体やβ−石英固溶体を主結晶とするLi2O−Al2O3−SiO2系結晶化ガラスであってもよい。
【0028】
透明結晶化ガラス基板2の裏面2bの上には、反射膜4が形成されている。反射膜4は、可視波長域における少なくとも一部の波長域の光を反射させる膜である。すなわち、反射膜4は、黒色以外の色調の膜である。
【0029】
反射膜4は、調理器用トッププレート1に所望の色調を付与するための膜である。例えば、白色調の調理器用トッププレート1を得ようとする場合は、白色調の反射膜4が設けられる。また、例えば、シルバー調の調理器用トッププレート1を得ようとする場合は、シルバー調の反射膜4が設けられる。
【0030】
反射膜4の構成は、得ようとする色調等に応じて適宜設定することができる。例えば、白色調の調理器用トッププレート1を得たい場合は、反射膜4は、白色の無機顔料を含む白色無機顔料層により構成することができる。白色の無機顔料としては、例えば、ルチル(酸化チタン)やZrO2などが挙げられる。」

(カ)「【0033】
透明結晶化ガラス基板2の裏面2bと反射膜4との間には、色調補正膜3が形成されている。この色調補正膜3は、調理器用トッププレート1に入射した光10の反射光12の色調を補正するための膜である。」

(キ)「【0037】
ところで、例えば、色調補正膜3が形成されておらず、透明結晶化ガラス基板の直上に反射膜が形成されている場合は、反射膜と透明結晶化ガラス基板との界面における反射光は、透明結晶化ガラス基板を通過した光であるため、透明結晶化ガラス基板2における光吸収に起因して、反射光の色調がシフトする。具体的には、上述のように、透明結晶化ガラス基板は、可視波長域の短波長側部分に吸収を持っており、透明結晶化ガラス基板2の可視波長域における光透過率は、波長が長くなるに従って漸増する。このため、入射光のうち、短波長側の光は、透明結晶化ガラス基板により吸収される。よって、反射光は、反射膜4の色調よりも黄色側にシフトした色調の光となる。従って、調理器用トッププレートの色調が、反射膜4の色調からずれてしまい、調理器用トッププレートの美観性が悪くなる。
【0038】
例えば、Ti膜などからなるシルバー調の反射膜を設けた場合であっても、調理器用トッププレートの色調がゴールド調となってしまう。また、白色の反射膜を設けた場合であっても、調理器用トッププレートの色調は、黄色となってしまう。」

(ク)「【0046】
(実施例1)
以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
透明結晶化ガラス基板2(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN−0)の上に、スパッタリング法を用いて、下記の表1に示す膜構成の色調補正膜3を形成した。その上に、酸化チタンの白色顔料を50重量%含有したシリコーン樹脂からなり、膜厚が10μmの白色の反射膜4をスクリーン印刷法によって形成することにより、上記実施形態と同様の構成を有する調理器用トッププレートを作製した。
【0047】
なお、本実施例1において用いた透明結晶化ガラス基板2は、β−石英固溶体を主結晶とするものであった。また、本実施例1において用いた透明結晶化ガラス基板における酸化チタンの含有量は、1.9質量%であった。
【0048】
【表1】



(ケ)「



イ 上記アから分かること
(ア)段落【0002】、図1の記載から、調理器用トッププレート1は加熱調理用で、透明結晶化ガラス基板2及び透明結晶化ガラス基板2の下面に設けられた色調補正膜3を有していることが分かる。
(イ)段落【0027】の記載から、結晶化ガラス基板2は、Li2O−Al2O3−SiO2を主成分としており、また、段落【0024】の記載から、結晶化のための核形成剤を含んでいることが分かる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、甲5には、下記の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、核形成剤を含む結晶化ガラス基板2と、
前記結晶化ガラス板2の下面に設けられた色調補正膜3とを有する、加熱調理器用トッププレート1。」

(6)甲6
ア 甲6には次の記載がある。
(ア)「


(甲6の1頁)

(イ)「


(甲6の2頁)

イ 上記アから分かること
(ア)の記載から、波長が550nmのときの屈折率について、「SiO2」の屈折率が1.46、「SiO2+AL2O3」の屈折率が1.48であることが分かる。
(イ)の記載から、波長が550nmのときの屈折率について、「ZrO2」の屈折率が2.05、「Nb2O5」の屈折率が2.25、「CeO2」の屈折率が2.35、「TiO2」の屈折率が2.35であることが分かる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、甲6には、下記の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「波長が550nmである場合において、「SiO2」の屈折率は1.46、「SiO2+AL2O3」の屈折率は1.48、「ZrO2」の屈折率は2.05、「Nb2O5」の屈折率は2.25、「CeO2」の屈折率は2.35、「TiO2」の屈折率は2.35であるとの事項。」

2 異議申立人が主張する理由1ないし理由4の検討
(1)理由1(拡大先願)について
ア 甲1発明との対比・判断
甲1発明における「結晶化ガラス基板2」は本件特許発明1における「結晶化ガラス基板」に相当し、以下同様に、「青色顔料を含む」ことは「青色顔料を含む」ことに、「着色層3」は「基板色改善層」に、「加熱調理器用トッププレート1」は「加熱調理器用トッププレート」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられた、青色顔料を含む基板色改善層とを有する、加熱調理器用トッププレート。」

[相違点1−1]
本件特許発明1の「結晶化ガラス基板」は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのに対し、甲1発明の結晶化ガラス基板2は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのか特定されていない点。

[相違点1−2]
本件特許発明1の「基板色改善層」が、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のに対し、甲1発明の「着色層3」が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のか特定されていない点。

事案に鑑みまず[相違点1−2]について検討する。
[相違点1−2について]
甲1の段落【0025】には「着色層3は、例えば、ガラスと、無機着色顔料と、体質顔料とを含んでいる。」、段落【0032】には「ガラスとしては、例えば、ホウケイ酸塩系ガラス、アルカリ金属成分及びアルカリ土類金属成分のうちの少なくとも一方を含むケイ酸塩系ガラス、亜鉛及びアルミニウムを含むリン酸塩系ガラス等からなるガラスを用いることができる。また、ガラスの形状としては、鱗片状、粉状等が挙げられる。」と記載されている。
そして、異議申立人は異議申立書(34頁参照。)において、甲6の記載を参照すると甲1のケイ酸塩系ガラスを含む着色層3の屈折率は結晶化ガラス基板2の屈折率より小さい蓋然性が高い旨主張している。
しかしながら、甲1には当該着色層3の具体的な屈折率は記載されておらず、また、甲6には、二酸化ケイ素(SiO2)単体の屈折率が記載されているだけであるので、甲1及び甲6の記載を総合しても当該着色層3の屈折率を具体的に特定することができない。
そうしてみると、[相違点1−2]は実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ともいえないので、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲1発明と実質同一ではない。

イ 甲2発明との対比・判断
甲2発明における「結晶化ガラス基板2」は本件特許発明1における「結晶化ガラス基板」に相当し、以下同様に、「青色顔料を含む」ことは「青色顔料を含む」ことに、「印刷層3」は「基板色改善層」に、「加熱調理器用トッププレート1」は「加熱調理器用トッププレート」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられた、青色顔料を含む基板色改善層とを有する、加熱調理器用トッププレート。」

[相違点2−1]
本件特許発明1の「結晶化ガラス基板」は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのに対し、甲2発明の結晶化ガラス基板2は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのか特定されていない点。

[相違点2−2]
本件特許発明1の「基板色改善層」が、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のに対し、甲2発明の「印刷層3」が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のか特定されていない点。

事案に鑑みまず[相違点2−2]について検討する。
[相違点2−2について]
甲2の段落【0026】には「次に、ガラス基板2の裏面2b上に形成したペースト塗布層3Aを焼成する。それによって、図1(c)に示すように、ガラス基板2の裏面2b上に印刷層3を形成する。」、段落【0037】には、「ペースト中に含まれるガラスフリットとしては、例えば、B2O3−SiO2系ガラス粉末、ZnO−B2O3系ガラス粉末、SiO2−Al2O3系ガラス粉末などを用いることができる。」、段落【0038】には「また、ペースト中に含まれるガラスフリットの含有量としては、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下である。ガラスフリットの含有量が上述した範囲内にある場合、印刷層3のガラス基板2からの膜剥がれをより一層生じ難くすることができる。」と記載されている。
そして、異議申立人は異議申立書(35頁参照。)において、甲6の記載を参照すると甲2の結晶化ガラス基板の下面に設けられるガラスの屈折率は結晶化ガラス基板2の屈折率より小さい蓋然性が高い旨主張している。
しかしながら、甲2には当該ガラスの具体的な屈折率は記載されておらず、また、甲6には、MU1(SiO2+AL2O3)単体の屈折率が記載されているだけであるので、甲2及び甲6の記載を総合しても当該ガラスの屈折率を具体的に特定することができない。そうしてみると、[相違点2−2]は実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ともいえないので、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明と実質同一ではない。

よって、本件特許発明1は、甲1発明、甲2発明と同一ではない。
また、本件特許発明2、6、10、11は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲1発明、甲2発明と同一ではない。

(2)理由2(進歩性)について
ア 甲3発明との対比・判断
甲3発明における「結晶化基板ガラス2」は本件特許発明1における「結晶化ガラス基板」に相当し、以下同様に、「青色顔料を含む」ことは「青色顔料を含む」ことに、「パール調層4」は「基板色改善層」に、「加熱調理器用ガラストッププレート1」は「加熱調理器用トッププレート」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられた、青色顔料を含む基板色改善層とを有する、加熱調理器用トッププレート。」

[相違点3−1]
本件特許発明1の「結晶化ガラス基板」は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのに対し、甲3発明の結晶化基板ガラス2は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのか特定されていない点。

[相違点3−2]
本件特許発明1の「基板色改善層」が、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のに対し、甲3発明の「パール調層4」が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のか特定されていない点。

事案に鑑みまず[相違点3−2]について検討する。
[相違点3−2について]
甲3の段落【0013】には、「透明低膨張ガラスからなる基板ガラスの裏側面にTiO2、CeO2、ZrO2のうち1種以上を主成分とすると共に厚みが20〜300nmである高反射膜を積層し、該高反射膜上にパール調層を積層し、さらに、該パール調層上に遮光層を積層してなる。」と記載されている。
そして、異議申立人は異議申立書(39頁参照。)において、甲6の記載を参照すると甲3の結晶化ガラス板2の下面に設けられる高反射膜は「(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上の屈折率を有する」との要件を具備していると主張している。
しかしながら、甲3には当該高反射膜の具体的な屈折率は記載されておらず、また、甲6には、それぞれ、二酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)単体の屈折率が記載されているだけであるので、甲3及び甲6の記載を総合しても当該高反射膜の屈折率を具体的に特定することができない。
そして、前述及び後述するように甲3ないし甲5の何れにも「基板色改善層」が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」ように構成することは記載されていない。
また、甲3の段落【0007】を参照すると、甲3発明が解決しようとする課題は「高輝度の金属光沢を有する調理器用ガラストッププレートを提供」することであると認められるところ、当該甲3発明において、パール調層が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」ように設計する動機も存在しない。

そうしてみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲4発明との対比・判断
甲4発明における「結晶化ガラス板2」は本件特許発明1における「結晶化ガラス基板」に相当し、以下同様に、「装飾層3」は「基板色改善層」に、「加熱調理器用ガラストッププレート1」は「加熱調理器用トッププレート」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられた、基板色改善層とを有する、加熱調理器用トッププレート。」

[相違点4−1]
本件特許発明1の「結晶化ガラス基板」は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのに対し、甲3発明の結晶化ガラス板2は「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ものであるのか特定されていない点。

[相違点4−2]
本件特許発明1の「基板色改善層」が、「青色顔料を含む」ものであり、また、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のに対し、甲4発明の「装飾層3」が「青色顔料を含む」ものであり、また、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のか特定されていない点。

事案に鑑みまず[相違点4−2]について検討する。
[相違点4−2について]
甲4の段落【0032】には、「装飾層3は、シリカからなるシリカ膜31と、このシリカ膜31中に分散されたパール調顔料32を有する。」と記載されている。
そして、異議申立人は異議申立書(40頁参照。)において、甲6の記載を参照すると甲4の結晶化ガラス板2の下面に設けられるシリカ膜は「(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上の屈折率を有する」との要件を具備していると主張している。
しかしながら、甲4には当該シリカ膜の具体的な屈折率は記載されておらず、また、甲6には、二酸化ケイ素(SiO2)単体の屈折率が記載されているだけであるので、甲4及び甲6の記載を総合しても当該シリカ膜の屈折率を具体的に特定することができない。
そして、前述及び後述するように甲3ないし甲5の何れにも「基板色改善層」が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」ように構成することは記載されていない。
また、甲4の段落【0007】を参照すると、甲4発明が解決しようとする課題は「意匠性に優れると共に、調理シミの発生を抑制することができるガス調理器用ガラストッププレートを提供」することであると認められるところ、当該甲4発明において、装飾層3が「青色顔料を含む」ように構成した上で、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」ように設計する動機も存在しない。

そうしてみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 甲5発明との対比・判断
甲5発明における「結晶化ガラス基板2」は本件特許発明1における「結晶化ガラス基板」に相当し、以下同様に、「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、核形成剤を含む」ことは「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む」ことに、「色調補正膜3」は「基板色改善層」に、「加熱調理器用トッププレート1」は「加熱調理器用トッププレート」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、遷移元素を含む結晶化ガラス基板と、
前記結晶化ガラス基板の下面に設けられた、基板色改善層とを有する、加熱調理器用トッププレート。」

[相違点5−1]
本件特許発明1の「基板色改善層」が、「青色顔料を含む」ものであり、また、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のに対し、甲5発明の「色調補正膜3」が「青色顔料を含む」ものであり、また、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」のか特定されていない点。

[相違点5−1]について検討する。
[相違点5−1について]
甲5の段落【0046】には「透明結晶化ガラス基板2(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN−0)の上に、スパッタリング法を用いて、下記の表1に示す膜構成の色調補正膜3を形成した。その上に、酸化チタンの白色顔料を50重量%含有したシリコーン樹脂からなり、膜厚が10μmの白色の反射膜4をスクリーン印刷法によって形成することにより、上記実施形態と同様の構成を有する調理器用トッププレートを作製した。」と記載されており、段落【0048】の表1にはSiO2膜や、Nb2O5膜の厚さが記載されている。
そして、異議申立人は異議申立書(41、42頁参照。)において、甲6の記載を参照すると甲5の結晶化ガラス板2の下面に設けられる色調補正膜3は「(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上の屈折率を有する」との要件を具備していると主張している。
しかしながら、甲5には色調補正膜3の具体的な屈折率は記載されておらず、また、甲6には、それぞれ、二酸化ケイ素(SiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)単体の屈折率が記載されているだけであるので、甲5及び甲6の記載を総合しても色調補正膜3の屈折率を具体的に特定することができない。
そして、前述したように甲3ないし甲5の何れにも「基板色改善層」が「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」ように構成することは記載されていない。
また、甲5の段落【0007】を参照すると、甲5発明が解決しようとする課題は「酸化チタンを含む透明結晶化ガラス基板と、透明結晶化ガラス基板の裏面に形成されている反射膜とを備える調理器用トッププレートであって、美観性に優れた調理器用トッププレートを提供することにある。」することであると認められ、段落【0041】には「透明結晶化ガラス基板2の色調と、色調補正膜3の色調とが補色関係にあることが好ましい。」と記載されている。
しかしながら、甲5においては、補色のため青色顔料を加えること及び屈折率を設定することを示唆することは記載されていないので、当該甲5発明において、パール調層が「青色顔料を含む」ように構成した上で、「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上である明度向上層を含む」ように設計する動機も存在しない。

そうしてみると、本件特許発明1は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件特許発明1は、甲3発明ないし甲5発明及び甲6記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明2ないし5、10ないし12、15は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲3発明ないし甲5発明及び甲6記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)理由3(サポート要件)について
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】の記載を参酌すると、本件特許発明が解決しようとする課題は、「高強度かつ低熱膨張性を示す結晶化ガラスを基板に使用し、白色を呈する調理器用トッププレートを提供することを目的とする。」ことであると認められる。
そして、段落【0011】には、基板として高強度かつ低膨張の結晶化ガラスを用いるために、結晶化ガラスの生成に際して、Li2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、Ti、Zr等の遷移元素を添加して結晶化させることが記載されている。
また、段落【0019】、【0031】、【0032】には黄色味から白色へ色調を補正するために、屈折率が、結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上となるようにした明度向上層を結晶化ガラス基板の下面に設けることが記載されている。さらに、段落【0032】には、「前記明度向上層の屈折率と結晶化ガラス基板の屈折率の差は、絶対値で示される値であり、「明度向上層の屈折率>結晶化ガラス基板の屈折率」と「明度向上層の屈折率<結晶化ガラス基板の屈折率」のいずれの場合も含まれる。」と記載されているから、実施例として明度向上層の屈折率が結晶化ガラス基板よりも小さい例しか示されていなくても、明度向上層の屈折率が結晶化ガラス基板よりも大きい場合と小さい場合の両方が含まれることが記載されているといえる。
そうしてみると、本件特許が解決しようとする課題の解決手段はLi2O−Al2O3−SiO2を主成分とし、Ti、Zr等の遷移元素を添加して結晶化させた結晶化ガラスを基板として使用すること及び当該結晶化ガラス基板の下面に屈折率が、結晶化ガラス基板よりも小さいか、(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上となるようにした明度向上層を設けることであると認められるところ、本件特許の請求項1の記載は、前記解決手段が特定されているので、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された課題の解決手段が反映されたものであると認められる。
よって、本件特許発明1ないし16は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。

なお、異議申立人は段落【0029】、【0030】の記載に基づき、明度向上層の屈折率が結晶化ガラス基板の屈折率より低い場合であっても明度が向上しない場合がある旨主張しているが、段落【0029】、【0030】の記載は、空気層の有無による明度の相対的な変化を記載したものであり、課題が解決できなくなることを記載したものとは認められない。

(4)理由4(明確性)について
本件特許の請求項1の「屈折率が、前記結晶化ガラス基板よりも小さい」という特性と、「(前記結晶化ガラス基板の屈折率+0.1)以上」という特性が相反する特性であっても、そのことにより請求項の記載が不明確であるとはいえない。
また、本件特許の請求項1の記載を検討したが、すべて一般的に使用される用語で記載されており、日本語として直ちに不明瞭とされる箇所はない。
そして、他に不明な点はないので、本件特許発明は明確である。
よって、本件特許発明1ないし16は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-09 
出願番号 P2020-217694
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F24C)
P 1 651・ 121- Y (F24C)
P 1 651・ 16- Y (F24C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 田村 佳孝
林 茂樹
登録日 2021-08-26 
登録番号 6934628
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 加熱調理器用トッププレート  

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