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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B66B
管理番号 1386192
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-10 
確定日 2022-06-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6940020号発明「エレベータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6940020号の請求項1、4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6940020号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜4に係る特許についての出願は、令和 3年 4月19日の出願であって、同年 9月 6日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月22日に特許掲載公報が発行された。その後、令和 4年 3月10日に特許異議申立人足立幸子(以下、「申立人」という。)から本件特許の請求項1、4に係る特許について特許異議の申立てがあったものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1及び4に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明4」という。)は、本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1及び4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
乗りかごの扉の戸開閉を非接触で操作可能なエレベータであって、
前記扉の戸開操作を非接触で検出する戸開センサと、
前記扉の戸閉操作を非接触で検出する戸閉センサと、
前記戸開センサと前記戸閉センサの操作の検出に基づいて、戸開閉に関するモードを実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記戸開センサと前記戸閉センサが同時に操作を検出した場合には、前記扉を戸開させる戸開モードを実行し、前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モードを実行する
ことを特徴とする、エレベータ。」
「【請求項4】
同時に操作を検出した前記戸開センサと前記戸閉センサは、隣接している
ことを特徴とする、請求項1乃至3に記載のエレベータ。」

第3 特許異議の申立ての理由及び証拠方法
1.特許異議の申立ての理由
申立人は、証拠として甲第1号証及び甲第2号証を提出し、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、4に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

2.証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下に示す甲第1号証〜甲第2号証である。

甲第1号証:特開2013−124166号公報
甲第2号証:国際公開第2018/235156号

第4 甲各号証の記載事項
1.甲第1号証に記載された事項及び甲1発明
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されていると認められる(下線は、当審において付与した。以下同様。)。

ア「【0015】
図1〜図3に、エレベータ10を示す。
エレベータ10は、昇降路内において、乗りかご11が各階床に設置された乗場の間を昇降する昇降機構部と、その動作を制御する制御装置30とで構成されている。昇降路は、建造物内等に鉛直方向に貫通して設けられた乗りかご11の通路である。昇降路の上には、例えば、乗りかご11を昇降させる巻き上げ機や制御装置30が配置された機械室が設けられる。」

イ「【0017】
乗りかご11は、さらに、かご内操作盤20を備える。かご内操作盤20は、行き先階を登録する行き先階操作部21、かごドア12を開閉操作するドア開閉操作部22、乗りかご11の移動方向等を表示するインジケータ27、及び外部との連絡手段であるインターホン28などを有する。かご内操作盤20は、制御装置30に接続されており、その操作信号は制御装置30に送信される。
【0018】
かご内操作盤20に搭載されたかご内操作部である行き先階操作部21及びドア開閉操作部22は、いずれも非接触式操作部である。非接触式操作部は、操作部に手を触れることなく、例えば、その近傍に手をかざすことで操作可能な操作部である。本実施形態では、非接触式操作部として、赤外線を用いる光電センサ23を例示する。但し、非接触式操作部は、これに限定されず、例えば、静電容量センサとしてもよい。」

ウ「【0020】
表示部26は、例えば、押し込み式のボタンとしても機能する。つまり、図2に例示する行き先階操作部21は、その近傍に手をかざすことで操作可能であり、且つ表示部26を押して操作することも可能である。なお、ドア開閉操作部22は、サイズがやや大きい点を除き、行き先階操作部21と同様の構成を有する。
【0021】
光電センサ23は、一対の投光器24及び受光器25を含んで構成されている。光電センサ23は、投光器24から出た赤外線が対となる受光器25に入射する、又は投光器24から対となる受光器25に入射していた赤外線が遮断される、即ち、受光器25に赤外線が入射しなくなることにより操作信号を出力する。なお、検出感度等の観点から前者の方式が好ましい。一対の投光器24及び受光器25は、表示部26の周囲に配置されることが好適であり、例えば、表示部26の周縁部のうち左右両側の上下方向中央部に配置される。」

エ「【0024】
光電センサ23は、投光器24と受光器25との間において、表示部26の前方10mm〜30mm程度の範囲で、指100等の対象物を検知可能な設定とすることが好ましい。光電センサ23により検知される対象物は、赤外線を反射する物であれば特に限定されないが、以下では指100を例示する。図4及び図5では、指100の検知範囲Zを網目ハッチングで示している。光電センサ23では、検知範囲Zに指100がある場合に、投光器24から出射された赤外線が指100にあたって反射し、受光器25に入射するように構成されている。このような構成は、投光器24、受光器25の向きや配置などを調整することにより実現できる。例えば、検知範囲Zから外れた位置で指100に赤外線があたる場合には、受光器25は、当該反射光が入射しないように受光方向が調整される。
【0025】
制御装置30は、乗場呼び操作部及びかご内操作盤20の操作信号に対応する制御を実行する。制御装置30は、例えば、行き先階操作部21の操作により出力される操作信号を取得し、当該操作信号に基づいて行き先階登録を行なう。なお、巻き上げ機は、当該行き先階登録や乗場呼び登録に応じて乗りかご11を移動させる。また、ドア開閉操作部22の操作により出力される操作信号を取得し、ドア開閉装置に指令を与えてかごドア12を開扉又は閉扉させる。」

オ「【図2】



カ「【図4】



キ 甲第1号証の【0018】、【0024】、【0025】、【図2】及び【図4】の記載から、かごドア12を開扉させる操作を非接触で検知する光電センサ23と、かごドア12を閉扉させる操作を非接触で検知する光電センサ23と、が記載されていると認められる。

(2)甲1発明
(1)の上記ア〜カの摘記事項及び上記キの認定事項から、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

【甲1発明】
「乗りかご11のかごドア12を開閉操作する非接触式操作部であるドア開閉操作部22を備えたエレベータ10であって、
かごドア12を開扉させる操作を非接触で検知する光電センサ23と、
かごドア12を閉扉させる操作を非接触で検知する光電センサ23と、
光電センサ23から出力される操作信号を取得し、ドア開閉装置に指令を与えてかごドア12を開扉又は閉扉させる制御装置30と、を備える、エレベータ10。」

2.甲第2号証に記載された事項及び甲2発明
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されていると認められる。

ア「[0005] ところで、乗かご内の操作盤には、かご呼び釦や、ドアの開釦、閉釦等が設けられているが、安全性確保の観点から、一般的には、開釦の優先度が最も高く設定されており、例えば、開釦と他釦を同時に押した場合には、開釦が有効となり、他釦は無視されるため、戸開動作が実行される。」

イ「[0016] ここに示すように、乗かご1には、乗かご内の乗客の有無を検出する乗客検出装置2と、乗客が操作するかご内操作盤7と、乗かご1の出入口に開閉可能に配置されるドア8と、ドア8を開閉するドアモータ9が備えられている。また、かご内操作盤7には、戸開指令を出力する開釦4と、戸閉指令を出力する閉釦5と、行先階の登録を行うかご呼び釦6とが備えられている。なお、ここでは、乗客検出装置2として、乗かご1内の重量を計測する秤装置を例示しているが、かご内カメラを乗客の有無の検出に用いても良い。
[0017] エレベータ制御装置3は、乗客検出装置2や、かご内操作盤7からの信号に応じて、ドアモータ9や図示しない巻上機を制御するものであり、その内部に、送受信部11、戸開釦固渋検出部12、タイマ12a、乗客有無判断部13、強制戸閉部14、戸閉速度変更部15、戸開閉指令優先度変更部16を備えている。なお、エレベータ制御装置3は、半導体メモリ等の記憶装置に記録された、戸開釦固渋検出部12等に相当するプログラムを、演算装置(CPU)が実行することで、戸開釦固渋検出部12等の各機能を実現するものであるが、図1では、演算装置、記憶手段などの図示を省略している。」

ウ「[0020] 先ず、何らかの要因によって開釦4が固渋すると(手順S1)、戸開釦固渋検出部12は、タイマ12aを用いて、戸開指令の入力が所定時間(例えば1分)以上継続したかを判断する。開釦4の固渋継続が所定時間に達する前(手順S2:NO)は、従来と同様に、戸開指令が他指令に優先され、戸開状態が維持される。」

エ「[0024] 一方、開釦4の固渋が所定時間継続しており、かつ、乗かご1内に乗客がいる場合には(手順S3:YES)、戸開閉指令優先度変更部16は、戸閉指令の優先度を戸開指令より高くし、閉釦5を有効化する(手順S8)。この時点ではドア8は戸開状態であるが、乗かご1内の乗客が閉釦5を押下すると(手順S9:YES)、閉釦5の戸閉指令により戸閉を完了し(手順S6)、通常運転に復帰し、かご呼びで指定された階床に乗りかご1を移動させる。」

オ「[請求項1] 乗かごの出入口のドアを開閉するドア開閉手段と、
前記乗かご内に設置され、戸開指令を出力する開釦と、
前記乗かご内に設置され、戸閉指令を出力する閉釦と、
入力された前記戸開指令または前記戸閉指令に基づいて、前記ドア開閉手段を制御する制御装置と、
を有するエレベータ装置であって、
前記制御装置は、
前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開し、
前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると前記ドアを戸閉することを特徴とするエレベータ装置。」

カ「[図1]



キ「[図2]



(2)甲2発明
(1)の上記ア〜キの摘記事項から、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

【甲2発明】
「乗かごの出入口のドアを開閉するドア開閉手段を有するエレベータ装置であって、
前記乗かご内に設置され、戸開指令を出力する開釦と、
前記乗かご内に設置され、戸閉指令を出力する閉釦と、
入力された前記戸開指令または前記戸閉指令に基づいて、前記ドア開閉手段を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開し、前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると前記ドアを戸閉する
エレベータ装置。」

第5 当審の判断
1.本件発明1について
(1)甲1発明を主引用例とした場合
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「エレベータ10」は、本件発明1の「エレベータ」に相当する。
甲1発明の「乗りかご11」は、本件発明1の「乗りかご」に相当する。
甲1発明の「かごドア12」は、本件発明1の「扉」に相当する。
甲1発明の「かごドア12を開閉操作する」ことは、本件発明1の「扉の戸開閉を」「操作」することに相当し、甲1発明の「かごドア12を開閉操作する非接触式操作部であるドア開閉操作部22を備え」ることは、本件発明1の「扉の戸開閉を非接触で操作可能」であることに相当し、甲1発明の「乗りかご11のかごドア12を開閉操作する非接触式操作部であるドア開閉操作部22を備えたエレベータ10」は、本件発明1の「乗りかごの扉の戸開閉を非接触で操作可能なエレベータ」に相当する。
甲1発明の「開扉させる操作」は、本件発明1の「戸開操作」に相当し、甲1発明の「非接触で検知する」ことは、本件発明1の「非接触で検出する」ことに相当し、甲1発明の「かごドア12を開扉させる操作を非接触で検知する光電センサ23」は、本件発明1の「前記扉の戸開操作を非接触で検出する戸開センサ」に相当する。
甲1発明の「閉扉させる操作」は、本件発明1の「戸閉操作」に相当し、甲1発明の「かごドア12を閉扉させる操作を非接触で検知する光電センサ23」は、本件発明1の「前記扉の戸閉操作を非接触で検出する戸閉センサ」に相当する。
甲1発明の「制御装置30」は、本件発明1の「制御部」に相当する。
甲1発明の「ドア開閉装置に指令を与えてかごドア12を開扉又は閉扉させる」ことは、本件発明1の「戸開閉に関するモードを実行する」ことに相当する。そして、甲1発明の「光電センサ23から出力される操作信号」は、「かごドア12を開扉させる操作を非接触で検知する」又は「かごドア12を閉扉させる操作を非接触で検知する」と出力されるものであり、甲1発明の「ドア開閉装置に指令を与えてかごドア12を開扉又は閉扉させる」ことは、「制御装置30」が「光電センサ23から出力される操作信号を取得」することに応じて行われるのであるから、甲1発明の「制御装置30」が「光電センサ23から出力される操作信号を取得し、ドア開閉装置に指令を与えてかごドア12を開扉又は閉扉させる」ことは、本件発明1の「制御部」が「前記戸開センサと前記戸閉センサの操作の検出に基づいて、戸開閉に関するモードを実行する」ことに相当する。

以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

【一致点1】
「乗りかごの扉の戸開閉を非接触で操作可能なエレベータであって、
前記扉の戸開操作を非接触で検出する戸開センサと、
前記扉の戸閉操作を非接触で検出する戸閉センサと、
前記戸開センサと前記戸閉センサの操作の検出に基づいて、戸開閉に関するモードを実行する制御部と、を備える、エレベータ。」

【相違点1】
本件発明1では、「制御部」が「前記戸開センサと前記戸閉センサが同時に操作を検出した場合には、前記扉を戸開させる戸開モードを実行し、前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モードを実行する」のに対し、甲1発明では、そのように構成されているとは特定されていない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲第2号証には、「前記制御装置は、前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開し、前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると前記ドアを戸閉する」(上記第4 2.(1)の摘記事項オ)と記載されており、「前記制御装置は、前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開」するのであるから、「前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は」、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にされた場合に、「制御装置」が「ドアを戸開する」ことが記載されていると認められる。
ここで、甲第2号証には、「一方、開釦4の固渋が所定時間継続しており、かつ、乗かご1内に乗客がいる場合には(手順S3:YES)、戸開閉指令優先度変更部16は、戸閉指令の優先度を戸開指令より高くし、閉釦5を有効化する(手順S8)。この時点ではドア8は戸開状態であるが、乗かご1内の乗客が閉釦5を押下すると(手順S9:YES)、閉釦5の戸閉指令により戸閉を完了し(手順S6)、通常運転に復帰し、かご呼びで指定された階床に乗りかご1を移動させる。」(上記第4 2.(1)の摘記事項エ)と記載されており、当該記載に照らすと、甲第2号証には、「前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後」に、乗客によりさらに「該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると」、「制御装置」が「前記ドアを戸閉する」ことが記載されていると認められる。
他方で、甲第2号証には、「戸開指令の入力が所定時間を超え」る前に「戸開指令に加えて」「戸閉指令が入力され」、且つ、当該「戸閉指令」の「入力」が当該「所定時間を超えた後」まで継続した場合に、「制御装置」がどのような制御を行うのかについて記載されているとは認められず、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にある時間の間継続した場合に、「制御装置」が「前記ドアを戸閉する」ことが記載されているとまでは認めることができない。
してみれば、甲1発明の「制御装置30」について、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲第2号証に記載された事項を参酌しても、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲2発明を主引用例とした場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「エレベータ装置」は、本件発明1の「エレベータ」に相当する。
甲2発明の「乗かご」は、本件発明1の「乗りかご」に相当する。
甲2発明の「出入口のドア」は、本件発明1の「扉」に相当する。
甲2発明の「出入口のドアを開閉する」ことは、本件発明1の「扉の戸開閉を」「操作」することに相当し、甲2発明の「出入口のドアを開閉するドア開閉手段を有する」ことは、本件発明1の「扉の戸開閉を」「操作可能」であることに相当し、甲2発明の「乗かごの出入口のドアを開閉するドア開閉手段を有するエレベータ装置」は、本件発明1の「乗りかごの扉の戸開閉を非接触で操作可能なエレベータ」との関係において、「乗りかごの扉の戸開閉を操作可能なエレベータ」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「前記乗かご内に設置され、戸開指令を出力する開釦」は、乗かごの出入口のドアを戸開するための乗客の操作を検出するものであると認められるため、本件発明1の「前記扉の戸開操作を非接触で検出する戸開センサ」との関係において、「前記扉の戸開操作を検出するもの」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「前記乗かご内に設置され、戸閉指令を出力する閉釦」は、乗かごの出入口のドアを戸閉するために乗客が行う操作を検出するものであると認められるため、本件発明1の「前記扉の戸閉操作を非接触で検出する戸閉センサ」との関係において、「前記扉の戸閉操作を検出するもの」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「制御装置」は、本件発明1の「制御部」に相当する。
甲2発明の「前記ドア開閉手段を制御する」ことは、本件発明1の「戸開閉に関するモードを実行する」ことに相当する。そして、甲2発明の「前記戸開指令または前記戸閉指令」は、乗かごの出入口のドアを戸閉するために乗客が行う操作を検出して「出力」されるものであるため、甲2発明の「制御装置」が「入力された前記戸開指令または前記戸閉指令に基づいて、前記ドア開閉手段を制御する」ことは、本件発明1の「制御部」が「前記戸開センサと前記戸閉センサの操作の検出に基づいて、戸開閉に関するモードを実行する」との関係において、「制御部」が「前記扉の戸開操作を検出するものと前記扉の戸閉操作を検出するものの操作の検出に基づいて、戸開閉に関するモードを実行する」限りにおいて一致する。

以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

【一致点2】
「乗りかごの扉の戸開閉を操作可能なエレベータであって、
前記扉の戸開操作を検出するものと、
前記扉の戸閉操作を検出するものと、
前記扉の戸開操作を検出するものと前記扉の戸閉操作を検出するものの操作の検出に基づいて、戸開閉に関するモードを実行する制御部と、を備える、エレベータ。」

【相違点2】
「前記扉の戸開操作を検出するもの」及び「前記扉の戸閉操作を検出するもの」が、本件発明1では、「前記扉の戸開操作を非接触で検出する戸開センサ」及び「前記扉の戸閉操作を非接触で検出する戸閉センサ」であるのに対し、甲2発明では、「前記乗かご内に設置され、戸開指令を出力する開釦」及び「前記乗かご内に設置され、戸閉指令を出力する閉釦」である点。
【相違点3】
本件発明1では、「制御部」が「前記戸開センサと前記戸閉センサが同時に操作を検出した場合には、前記扉を戸開させる戸開モードを実行し、前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モードを実行する」のに対し、甲2発明では、「制御装置」が「前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開し、前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると前記ドアを戸閉する」点。

イ 判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
甲2発明は、「前記制御装置は、前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開し、前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると前記ドアを戸閉する」との構成を有するものであり、「前記制御装置は、前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開」するのであるから、「前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は」、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にされた場合に、「制御装置」が「ドアを戸開する」と認められる。
ここで、甲第2号証には、「一方、開釦4の固渋が所定時間継続しており、かつ、乗かご1内に乗客がいる場合には(手順S3:YES)、戸開閉指令優先度変更部16は、戸閉指令の優先度を戸開指令より高くし、閉釦5を有効化する(手順S8)。この時点ではドア8は戸開状態であるが、乗かご1内の乗客が閉釦5を押下すると(手順S9:YES)、閉釦5の戸閉指令により戸閉を完了し(手順S6)、通常運転に復帰し、かご呼びで指定された階床に乗りかご1を移動させる。」(上記第4 2.(1)の摘記事項エ)と記載されており、当該記載に照らすと、甲第2号証には、「前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後」に、乗客によりさらに「該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると」、「制御装置」が「前記ドアを戸閉する」ことが記載されていると認められる。
他方で、甲第2号証には、「戸開指令の入力が所定時間を超え」る前に「戸開指令に加えて」「戸閉指令が入力され」、且つ、当該「戸閉指令」の「入力」が当該「所定時間を超えた後」まで継続した場合に、「制御装置」がどのような制御を行うのかについて記載されているとは認められず、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にある時間の間継続した場合に、「制御装置」が「前記ドアを戸閉する」ことが記載されているとまでは認めることができない。
そうすると、甲2発明の「前記制御装置は、前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されても前記ドアを戸開し、前記戸開指令の入力が所定時間を超えた後は、該戸開指令に加えて前記戸閉指令が入力されると前記ドアを戸閉する」との構成は、「前記戸開指令の入力が所定時間を超える前は」、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にされた場合に、「制御装置」が「ドアを戸開する」ものと認められるが、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にある時間の間継続した場合に、「制御装置」が「前記ドアを戸閉する」ものとまでは認められないため、甲2発明が、上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するとは認められない。
さらに、甲第1号証は、「制御部」が「前記戸開センサと前記戸閉センサが同時に操作を検出した場合には、前記扉を戸開させる戸開モードを実行し、前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モードを実行する」という構成を開示するものではないし、他に「制御部」が「前記戸開センサと前記戸閉センサが同時に操作を検出した場合には、前記扉を戸開させる戸開モードを実行し、前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モードを実行する」という構成が本件特許の出願前に周知技術又は技術常識であったとする証拠もないことから、甲2発明を上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するものとすることは当業者が容易に想到し得たことということはできない。
したがって、本件発明1は、上記相違点2を検討するまでもなく、甲2発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の意見について
申立人は、異議申立書において、甲第2号証には、「前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モード(手順S8)を実行する」との構成を有する発明が記載されていると主張している(第7頁第21行〜第8頁第8行)。
しかしながら、(1)イ及び(2)イで述べたとおり、甲第2号証には、「戸開指令」の「入力」と「戸閉指令」の「入力」とが同時にある時間の間継続した場合に、「制御装置」がどのような制御を行うのかについて記載されているとは認めることができず、「前記戸開センサと前記戸閉センサが所定時間以上、同時に操作を検出した状態が継続した場合には、前記扉を戸閉させる第1戸閉モード(手順S8)を実行する」との構成が記載されていたとまでは認めることができない。
よって、申立人のかかる主張は採用できない。

2.本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項の全てを含むものである。
そして、上記1.で述べたとおり、本件発明1が甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできず、また、本件発明1が甲2発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないのであるから、本件発明4が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないことが明らかである。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-03 
出願番号 P2021-070421
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B66B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平瀬 知明
特許庁審判官 段 吉享
尾崎 和寛
登録日 2021-09-06 
登録番号 6940020
権利者 フジテック株式会社
発明の名称 エレベータ  
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