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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C02F
審判 一部申し立て 2項進歩性  C02F
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C02F
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C02F
管理番号 1386196
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-15 
確定日 2022-06-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6942658号発明「カルシウム含有排水のカルシウム除去方法及びカルシウム除去設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6942658号の請求項1、8、11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6942658号の請求項1〜11に係る特許についての出願は、平成30年3月1日に出願され、令和3年9月10日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、8、11に係る特許に対し、令和4年3月15日に特許異議申立人小川鐵夫(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。

第2 本件発明
特許第6942658号の請求項1〜11の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、上記特許異議の申立てに係る請求項である請求項1、8及び11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明8」及び「本件発明11」という。また、まとめて「本件発明」という。)ついて記載すると、以下のとおりである。
「【請求項1】
被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること、
前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること、
前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加することを特徴とするカルシウム含有排水のカルシウム除去方法。」
「【請求項8】
被処理水としてのカルシウム含有排水が導入される配管又は所定の槽と、
前記配管又は前記所定の槽を介して導入された前記被処理水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを生成させる反応槽と、
前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに前記炭酸カルシウムから形成されるスケールを軟質化するためのスケール軟質化剤を添加する添加手段と、
前記反応槽及び前記所定の槽のうちの少なくともいずれかの槽内に添加されたスケール軟質化剤を撹拌する攪拌手段と、
を備えたことを特徴とするカルシウム除去設備。」
「【請求項11】
前記スケール軟質化剤を添加、攪拌した後の被処理水に、更に高分子凝集剤が添加され、凝集フロックを形成するフロック形成槽と、
前記高分子凝集剤添加後の凝集フロックが形成された被処理水を、凝集沈殿して沈殿上澄水を得る沈殿槽と、
を更に備えたことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のカルシウム除去設備。」

第3 申立理由の概要
(1)29条関係について
申立人は、証拠として以下の甲第1号証〜甲第15号証(以下「甲1」〜「甲15」という。)を提示し、以下の理由により、請求項1、8及び11に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
理由1−1:
本件発明1及び8は、甲1に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号に該当)か、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1及び8に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

理由1−2:
本件発明1及び8は、甲4に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号に該当)か、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1及び8に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

理由1−3
本件発明1、8及び11は、甲5に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号に該当)か、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1、8及び11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

理由1−4
本件発明1、8及び11に係る発明は、甲6に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号に該当)か、甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1、8及び11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

理由2:
本件発明1、8及び11は、甲7〜甲10に記載された慣用技術と、甲11〜15に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1、8及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲1:「クボスイープ(スケール付着防止剤)」に係るカタログの写し
甲2:2010年1月14日付けニュースリリース「創業120周年を機に新しいグループスローガン「For Earth, For Life」を制定」の内容が掲載された株式会社クボタのウェブサイト出力物(https://www.kubota.co.jp/news/2010/120.html)
甲3:クボタ環境サービス株式会社「沿革」の内容が掲載されたクボタ環境サービス株式会社のウェブサイト出力物(https://www.kubota-ksk.co.jp/company/history/)
甲4:特開2000−288585号公報
甲5:特開2008−238033号公報
甲6:特開昭63−258694号公報
甲7:特開2001−129561号公報
甲8:特開平7−185590号公報
甲9:特開2015−112593号公報
甲10:特開2002−11466号公報
甲11:特開昭55−94690号公報
甲12:特開平6−49081号公報
甲13:特開平6−80524号公報
甲14:特開2003−80294号公報
甲15:特開昭57−202311号公報

なお、甲2及び甲3は、甲1の頒布された時期を示すための間接証拠であって、技術的な事項を示すものではない。

(2)36条関係について
理由3:
本件発明1及び8に記載されている「スケール軟質化剤」の用語について、スケールの硬度を低下させる作用を有する薬剤であることが理解できるものの、どの程度の硬度低下が見られれば「スケール軟質化剤」に該当するのかが不明である。「スケール軟質化剤」を包括的に定義するとしても、「スケール軟質化剤」に該当するか否かを判断できる客観的な基準が示されていないため、「スケール軟質化剤」の用語は依然として不明確である。
したがって、本件発明1、8及び11に係る記載が、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1、8及び11に係る特許は取り消されるべきものである。

理由4:
「スケール軟質化剤」の用語が不明確である以上、本件発明1、8及び11を実施できない。特に、「スケール軟質化剤」に該当する薬剤の要件(スケールをどの程度軟質化するのか、どのような化学物質が含まれるのか、など)が発明の詳細な説明に具体的に示されていない以上、スケール軟質化剤を選定することは不可能である。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1、8及び11を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1、8及び11に係る特許は取り消されるべきものである。

理由5:
本件明細書の【0034】〜【0039】には、「スケール軟質化剤」の具体例が列挙されているが、上記段落の記載は「スケール軟質化剤」として使用されうる物質の列挙にすぎず、「スケール軟質化剤」の作用機序や「スケール軟質化剤」に該当する薬剤の要件を開示するものではない。また、本件明細書の【0048】〜【0064】に示されている実施例において、実際に作用効果が確認されている例は、「スケール軟質化剤」として(メタ)アクリル系ポリマーを用いた例に限られている。してみると、本件発明1、8及び11のうち、(メタ)アクリル系ポリマー以外の物質を「スケール防止剤」として用いる態様について、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
したがって、本件発明1、8及び11に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1、8及び11に係る特許は取り消されるべきものである。

第4 甲号証の記載
1 甲1について
(1)甲1は、「クボスイープ(スケール付着防止剤)」に係るカタログの写しであり、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付与したものである。以下同様。)。
(甲1ア)「「クボスイープ」の特徴
スケール防止剤「クボスイープ」は、機器・配管・水槽などにスケールが付着することを防止する安全で画期的な添加剤です。
「クボスイープ」の使用方法
(使用目的)カルシウムなどスケールを形成する塩類が原因となる「スケール付着」を防止すことを目的としている。
(使用対象)原水中にカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などスケールの発生原因になる金属イオンなどを含む排水の水処理施設。(最終処分場浸出水処理施設、ごみ焼却施設、下水処理施設、工場排水処理施設など)」(2頁左側の上側)

(甲1イ)
「「クボスイープ」の実証結果I(高濃度施設)
・・・
3、実証内容

・・・
2)スケール付着状況結果(水槽内付着状況結果)*攪拌機については写真−1提示

」(2頁右側)


」(1頁左側の下側)

(甲1ウ)「2)スケール付着防止効果
凝集混和槽攪拌機へのスケール付着は無く、生物スライム付着も正常であり、処理への影響はない。」(3頁右側の下)

(2)甲1発明について
ア 摘記(1イ)の「実証試験施設フロシート」から、以下の事項が看取される。
・浸出水を計量槽を介して反応槽へ導入すること。
・「反応槽」の下側に「CaCO3化反応システム」と記載されていることから、反応槽において、導入された浸出水を反応させて炭酸カルシウムを生成させること。
・クボスイープを計量槽に添加すること。

イ 甲1発明
上記(1)の摘記事項及び上記アを踏まえると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「原水中にカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などスケールの発生原因になる金属イオンなどを含む排水である最終処分場浸出水を、計量槽を介して反応槽へ導入すること、
反応槽において、導入された浸出水を反応させて炭酸カルシウムを生成させること、
クボスイープ(スケール付着防止剤)を計量槽に添加すること、である水処理方法。」(以下「甲1発明」という。)

2 甲4について
(1)甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カルシウムイオン含有水中のカルシウムイオンを除去するよう注入される炭酸ナトリウムの注入量制御方法及びこれを用いたカルシウムイオン含有水処理設備に関する。」

(甲4イ)
「【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明のカルシウムイオン含有水処理設備の実施形態について説明する。なお、全図中、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付すものとする。
【0023】図1は、本発明のカルシウム含有水処理設備の一例を示すフローシートである。図1に示すように、原水槽2には、カルシウムイオン含有水(以下、「原水」という)1が自然流下もしくはポンプ圧送により流入され、原水槽2から原水ポンプ3により原水流量検出器4を経由して原水カルシウム濃度計量槽5に圧送される。原水流量検出器4としては、堰式流量計や電磁流量計が用いられる。
【0024】原水カルシウム濃度計量槽5には原水カルシウム濃度分析計(流入カルシウムイオン濃度計)6が設置され、この原水カルシウムイオン濃度分析計6により原水カルシウムイオン濃度が検出される。原水カルシウム濃度分析計6としては、イオン電極式のカルシウムイオン濃度計、又は間接的にカルシウムイオン濃度を測定できる電気伝導度計が用いられる。電気伝導度計を利用する場合は、カルシウムイオン含有水のカルシウムイオン濃度と電気伝導度の間に相関があることを予め確認の上、両者の関係を回帰式にまとめておく必要がある。
【0025】次いで、原水1は反応混和槽(貯留槽)7に送られる。反応混和槽7においては、炭酸ナトリウムを一定濃度に溶解する炭酸ナトリウム溶解槽20から炭酸ナトリウム注入ポンプ8により炭酸ナトリウムが注入され、その注入量は、炭酸ナトリウム注入量制御装置30で設定される。炭酸ナトリウム溶解槽20には、溶解槽20の異常を確認するため、炭酸ナトリウム濃度を検出する炭酸ナトリウム濃度計21が設置されている。炭酸ナトリウム濃度計21としては、電気伝導度計が用いられる。なお、炭酸ナトリウム溶解槽20、炭酸ナトリウム注入ポンプ8及び炭酸ナトリウム濃度計21により炭酸ナトリウム注入装置が構成されている。
【0026】また、凝集剤貯槽22から凝集剤注入ポンプ9により凝集剤が定量供給される。反応混和槽7のpHは、反応混和槽pH検出器11で検出された信号に基づいて、反応混和槽pHコントローラ12で9〜11(通常10付近)に調整される。pHが低い場合、反応混和槽pHコントローラ12により水酸化ナトリウム供給ポンプ10の作動が制御され、水酸化ナトリウム貯槽23から水酸化ナトリウムが反応混和槽7へ供給される。pH10付近では、カルシウムイオンは、炭酸イオンと反応して炭酸カルシウムとして析出される。ここで、凝集剤としては鉄塩が添加されると、この鉄塩により炭酸カルシウムとして析出した粒子の凝集性が改善される。なお、反応混和槽7としては、炭酸カルシウムを析出させる反応槽と、凝集剤を添加する混和槽の2槽に分割されたものでもよい。
【0027】反応混和槽7における処理水は凝集槽13に送られる。凝集槽13では、凝集助剤溶解槽24から凝集助剤注入ポンプ14により凝集助剤が凝集槽13へ定量供給される。これにより炭酸カルシウムの沈降性が改善され、後述の凝集沈殿槽16での固液分離が容易となる。凝集槽13には、凝集槽カルシウム濃度分析計(流出カルシウムイオン濃度計)15が設置され、この凝集槽カルシウム濃度分析計15により凝集槽カルシウムイオン濃度が検出される。凝集槽カルシウム濃度分析計15としては、イオン電極式のカルシウムイオン濃度計が用いられる。ここで、凝集槽カルシウム濃度分析計15の設置位置は、カルシウムイオンが炭酸カルシウムとして析出した後の位置であれば特に限定する必要はなく、後述の凝集沈殿槽16等の水槽や凝集沈殿槽越流水17を通過させる配管ライン等に設置することができる。
【0028】凝集槽13からの流出水は、凝集沈殿槽16に送られ、凝集沈殿槽越流水17と凝集沈殿槽汚泥18に分離される。凝集沈殿槽汚泥18は、凝集沈殿汚泥引抜ポンプ19により凝集沈殿槽16から引き抜かれる。」

(甲4ウ)図1として、以下の図面が記載されている。
【図1】


(2)甲4発明について
上記(1)の摘記事項(特に下線部)を踏まえると、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。

「原水槽2には、カルシウムイオン含有水1(以下、「原水」という)が自然流下もしくはポンプ圧送により流入され、原水槽2から原水ポンプ3により原水流量検出器4を経由して原水カルシウム濃度計量槽5に圧送され、
次いで、原水1は反応混和槽(貯留槽)7に送られ、反応混和槽7においては、炭酸ナトリウムを一定濃度に溶解する炭酸ナトリウム溶解槽20から炭酸ナトリウム注入ポンプ8により炭酸ナトリウムが注入され、
また、凝集剤貯槽22から凝集剤注入ポンプ9により凝集剤が定量供給され、反応混和槽7のpHは、反応混和槽pH検出器11で検出された信号に基づいて、反応混和槽pHコントローラ12で9〜11(通常10付近)に調整され、pH10付近では、カルシウムイオンは、炭酸イオンと反応して炭酸カルシウムとして析出され、
ここで、凝集剤としては鉄塩が添加され、この鉄塩により炭酸カルシウムとして析出した粒子の凝集性が改善される、
カルシウムイオン含有水中のカルシウムイオンを除去する方法。」(以下「甲4発明」という。)

3 甲5について
(1)甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明によるカルシウム除去方法及びカルシウム除去装置が組み込まれた水処理設備について説明する。
【0020】
図1に示すように、ダイオキシンや重金属等で汚染された埋立浸出水に対する水処理設備1は、ポンプアップされた浸出水を貯留する原水槽2と、原水槽2からポンプP1で注水される被処理水に含まれるカルシウムを分離除去するカルシウム除去装置としての反応槽3と、反応槽3のオーバーフロー水に凝集剤を注入して重金属類等を析出させる混和槽4と、凝集助剤を添加して被処理水中に浮遊する析出塩を凝集させる凝集槽5と、凝集物を沈殿除去する凝集沈殿槽6と、凝集沈殿槽6のオーバーフロー水に薬品添加機構72から中和剤を注入して中和処理する中和槽7と、中和処理後の被処理水を微生物によりBOD除去及び硝化脱窒する生物処理設備8と、さらにはダイオキシン類等を酸化分解処理する設備や、活性炭吸着設備等を備えて構成されている。
【0021】
反応槽3では、攪拌羽根3aにより攪拌される被処理水にpH調整機構により非処理水のpH値が所定のアルカリ領域に入るようにpH調整剤の一例である苛性ソーダが注入され、薬品添加機構により被処理水に含まれるカルシウム濃度に対応するカルシウム除去剤の一例である炭酸ソーダが添加され、不溶性の炭酸カルシウムが析出される。
【0022】
つまり、酸またはアルカリでなるpH調整剤を調整して注入し、反応槽3内に収容された被処理水のpHを調整するpH調整機構30と、反応槽3にカルシウム除去剤を添加する薬品添加機構32とを備え、被処理水に含まれるカルシウムを不溶性塩として析出させるカルシウム除去方法を採用したカルシウム除去装置が構成される。
【0023】
混和槽4では反応槽3からオーバーフローした処理水を攪拌羽根4aにより攪拌しながらFeCl3等の凝集剤を注入して重金属類等を不溶性塩として析出させ、凝集槽5では混和槽4からオーバーフローした処理水を攪拌羽根5aにより攪拌しながら、高分子系凝集助剤を添加してフロックを生成し、凝集沈殿槽6ではフロックを沈降させて除去する。」

(甲5イ)「【0038】
さらに、水処理設備1としては、図2に示すように、反応槽3と混和槽4を一体にした反応混和槽3´を設けて、pH調整機構30´によりpH調整しながらカルシウム除去剤を添加し、さらに凝集剤を同時に投入することにより、カルシウム除去と重金属類除去を並行して行なうように構成してもよい。」

(甲5ウ)図2として、以下の図面が記載されている。
【図2】


(2)甲5発明について
摘記(甲5イ)に「反応槽3と混和槽4を一体にした反応混和槽3´」と記載されていることから、「反応槽3」と「混和槽4」を「反応混和槽3´」とする。
上記(1)の摘記事項(特に下線部)を踏まえると、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。

「原水槽2からポンプP1で注水される、ダイオキシンや重金属等で汚染された埋立浸出水である被処理水に含まれるカルシウムを分離除去するカルシウム除去装置としての反応混和槽3´があり、
反応混和槽3´では、攪拌羽根3aにより攪拌される被処理水にpH調整機構により非処理水のpH値が所定のアルカリ領域に入るようにpH調整剤の一例である苛性ソーダが注入され、薬品添加機構により被処理水に含まれるカルシウム濃度に対応するカルシウム除去剤の一例である炭酸ソーダが添加され、不溶性の炭酸カルシウムが析出され、
さらに、反応混和槽3´では、FeCl3等の凝集剤を注入して重金属類等を不溶性塩として析出させる、カルシウム除去方法。」(以下「甲5発明」という。)

4 甲6について
(1)甲6には、以下の事項が記載されている。
(甲6ア)「実施例
埋立地浸出汚水を第1図の工程図に従って、処理する。まず原水を調整槽1で空気遮断の状態で機械撹拌を行なって均一化した後、カルシウム除去設備2へ送液する。カルシウム除去設備2では、まず反応槽3において、生物処理水が混合される。生物処理水中には、有機物の分解により生成するなどしてHCO3―、またはCO2――がCaCO3に換算して約1000ppm含まれており、これが原水と混合されると原水中に含まれるCa++(500ppm以上)と反応して水不溶性のCaCO3が生成して沈澱する。この場合PH7〜10の中性ないし微アルカリ性の条件が好ましい。さらに上記の反応で生成するCaCO3の粒子の沈降を促進するため塩化第2鉄、硫酸ばん土などの凝集剤を添加する。10〜20分間撹拌混合した後、第1フロック形成槽4へ送液して、高分子凝集剤を添加し、撹拌してフロックを形成させ、第1沈澱槽5へ送液し、フロックを沈澱させて、固液分離する。」(2頁左下欄1〜19行)

(甲6イ)第1図として、以下の図面が記載されている。


(2)甲6発明について
第1図から、原水のカルシウム除去設備への送液は、まず反応槽3に送液されていることが看て取れる。
そうすると、上記(1)の摘記事項(特に下線部)を踏まえると、甲6には、以下の発明が記載されていると認められる。

「埋立地浸出汚水である原水を調整槽1で空気遮断の状態で機械撹拌を行なって均一化した後、カルシウム除去設備2の反応槽3へ送液し、
反応槽3において、生物処理水が混合され、生物処理水中には、有機物の分解により生成するなどしてHCO3―、またはCO2――が含まれており、これが原水と混合されると原水中に含まれるCa++と反応して水不溶性のCaCO3が生成して沈澱し、
さらに、上記の反応で生成するCaCO3の粒子の沈降を促進するため塩化第2鉄、硫酸ばん土などの凝集剤を添加する、カルシウム除去方法。」(以下「甲6発明」という。)

5 慣用技術について
申立人は、甲7〜10の記載事項から慣用技術を認定しているので、以下、甲7〜10の記載事項を摘記したうえで慣用技術についてまとめることとする。
(1)甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
(甲7ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カルシウムを含有した浸出水等の被処理水に、炭酸塩等を添加して炭酸カルシウムを沈殿分離する水処理施設における炭酸塩注入制御装置及び制御方法に関するものである。」

(甲7イ)「【0006】すなわち、従来のカルシウム除去工程においては、図3に示したように、炭酸カルシウムを凝集沈殿させるための反応槽1と、凝集槽2と、フロック形成槽3と、沈殿槽4とが設けられている。そして、反応槽1には、浸出水中のカルシウムイオンと反応させるための炭酸ソーダと、pH調整のための酸とアルカリ剤が添加されるように構成されている。また、反応槽1において析出した炭酸カルシウムをさらに凝集させ沈殿処理するために、凝集槽2には酸、アルカリ剤及び凝集剤が添加され、フロック形成槽3にはポリマーが添加されるように構成されている。」

(甲7ウ)図3として、以下の図面が記載されている。
【図3】


(2)甲8について
甲8には、以下の事項が記載されている。
(甲8ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はカルシウムスケーリング防止方法にかかるもので、とくに廃棄物の埋め立て地における浸出水の処理施設など、カルシウムを多量に含有する廃水のカルシウムによるスケーリングを防止するカルシウムスケーリング防止方法に関するものである。」

(甲8イ)「【0033】上記スケーリング防止対策としては、処理する廃水の状況に応じてこれを選択することができる。たとえば図4は、本発明によるカルシウムスケーリング防止方法を実施する炭酸カルシウム凝集沈澱法によるスケーリング防止設備1のフローを概略的に示す説明図であって、このスケーリング防止設備1は、スケール生成有無の判断をコンピューターにより行う制御装置2と、水質モニター3と、炭酸カルシウムを凝集沈澱させるための反応槽4と、凝集槽5と、フロック形成槽6と、沈澱槽7とを有する。
【0034】水質モニター3としては、廃水中のカルシウム濃度、全無機炭素濃度およびpHをモニターすることができるものであれば、任意の機器を採用可能である。
【0035】図1に示した判断を制御装置2および水質モニター3により行い、スケーリング防止対策が必要と判断されたときに、反応槽4に炭酸ナトリウムおよびpH調整用のアルカリ剤を加えて廃水のpHを高くし、炭酸イオンとカルシウムイオンを反応させ、炭酸カルシウムを析出させる。
【0036】つぎの凝集槽5において無機凝集剤を加えて、析出した炭酸カルシウムを凝集させてより大きくし、フロック形成槽6において高分子ポリマーを加えることによってさらに凝集させて沈澱槽7において沈澱処理するとともに、後の処理プロセスに進むものである。」

(甲8ウ)図4として、以下の図面が記載されている。
【図4】


(3)甲9について
甲9には、以下の事項が記載されている。
(甲9ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属である硬度成分を100mg−CaCO3/L以上含む高硬度排水において、硬度成分の不溶化物を析出させ、これを固液分離することで当該排水から硬度成分を除去するプロセスにおいて、発生汚泥の濃縮を促進して排出汚泥の減容化を図ると共に、濁度ないしは浮遊粒子状物質(SS)濃度の低い清澄な処理水を得る高硬度排水の処理装置及び処理方法に関する。」

(甲9イ)「【0039】
図1の高硬度排水の処理装置は、原水、即ち、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属である硬度成分を100mg−CaCO3/L以上含む高硬度排水を、配管11より反応槽1に導入し、配管12より炭酸根とアルカリ剤を添加すると共に、配管13からの返送汚泥、配管14からの膜濾過装置5の濃縮水、及び配管15からの汚泥濃縮槽6の上澄みを添加して撹拌混合する。」
「【0043】
原水に添加する炭酸根とは、原水に添加されて炭酸イオンを生成させる物質であり、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの炭酸塩の他、炭酸水素ナトリウム(重曹)や炭酸ガス等を用いることもできる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
原水に炭酸根を添加してアルカリ剤によりpH12〜13に調整すると、以下の反応によって、原水に含まれるカルシウム及びストロンチウムは炭酸塩として、マグネシウムは水酸化物として不溶化して固体析出する。これらの固体濃度を高めたスラリーを汚泥と称す。
Ca2+ + CO32− → CaCO3↓
Sr2+ + CO32− → SrCO3↓
Mg+ + 2OH− → Mg(OH)2↓」

(甲9ウ)図1として、以下の図面が記載されている。
【図1】


(4)甲10について
甲10には、以下の事項が記載されている。
(甲10ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水処理方法及び水処理装置、主として塩類を含む原水、例えば一般廃棄物最終処分場の浸出汚水等を脱塩処理する水処理方法及び水処理装置の改良に関する。」

(甲10イ)「【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。先ず、本実施形態の水処理装置の構成について説明すると、図1において、1は、浸出水としての原水又は沈殿ろ過等の前処理のなされた原水が貯留された原水貯留槽、2は該原水貯留槽1からの原水が導入される逆浸透膜装置で、この逆浸透膜装置は、図2に示すように、円筒状の装置本体13内に、円板状の逆浸透膜14が同じく円板状のスペーサ15の間に設けられた逆浸透膜部16が複数組積層されて構成されている。」
「【0039】5は、原水に添加するための炭酸ナトリウムが貯留された炭酸ナトリウム貯留槽で、原水貯留槽1と逆浸透膜装置2間のライン4であって、分散剤が添加される箇所の手前側のライン4に炭酸ナトリウムが添加されうるように設けられている。
【0040】6は、前記炭酸ナトリウムの添加によって沈殿する塩を除去するための沈殿除去槽を示す。」
「【0047】廃棄物処理場から浸出される浸出水を原水として貯留する原水貯留槽1から、原水を逆浸透膜装置2へ導入して原水の脱塩が行われるが、その逆浸透膜装置2の手前側で、先ず炭酸ナトリウム貯留槽5からライン4に炭酸ナトリウムが添加される。
【0048】これによって生ずる炭酸バリウムや炭酸カルシウムの沈殿が沈殿槽6で沈殿除去されることとなる。」

(甲10ウ)図1として、以下の図面が記載されている。
【図1】


(5)慣用技術
上記甲7の摘記事項、甲8の摘記事項、甲9の摘記事項及び甲10の摘記事項(特に各々の下線部参照)に共通する事項として慣用技術を認定すると、以下のとおりである。
「廃棄物処分場の浸出水等の排水を処理する方法であって、
排水を槽に導入し、その槽に炭酸ナトリウムを添加して、炭酸カルシウムを析出、沈殿させることによって、カルシウムを排水から除去する方法。」

6 周知技術について
申立人は、甲11〜15の記載事項から周知技術を認定しているので、以下、甲11〜15の記載事項を摘記したうえで周知技術についてまとめることとする。
(1)甲11について
甲11には、以下の事項が記載されている。
(甲11ア)「2.特許請求の範囲
1)ポリカルボン酸および/又はポリカルボン酸塩と界面活性剤を併用することを特徴とするスケール抑制方法。
2)ポリカルボン酸および/又はポリカルボン酸塩と界面活性剤からなるスケール抑制剤。」(1頁左欄4〜9行)

(甲11イ)「本発明は淡水及び海水などの濃縮又は熱交換により析出付着するスケールの抑制方法及び抑制剤に関するものである。
淡水及び海水を使用する一過式又は循環式冷却回路及び海水の淡水化装置等の熱交換面にはカルシューム、マグネシュームを主体とする無機質スケール等が析出して、その熱伝導を妨げ機器装置の性能を低下させ、ついには運転を停止せざるを得なくするばかりでなく機器装置の寿命を著しく短縮させる事となる。」(1頁左欄11行〜右欄1行)

(甲11ウ)「本発明によれば界面活性剤を併用することにより硬質スケール付着という短所を完全に改良しスケールが付着した場合の除去を容易にするばかりでなくスケール抑制効果自体を大幅に向上させることが出来る。
平均重合度50のポリアクリル酸単独の添加量と抑制率の関係については表1に示した様に給水に対して4〜5ppm添加時まで抑制率が向上するが、その後7〜8ppm添加時まで低下し、さらに添加すると再び抑制率が向上する。そして50〜60ppm添加時に抑制率の低下が再び始まる。
界面活性剤単独ではスケール抑制効果は全くない。ポリカルボン酸および/又はその塩に界面活性剤を併用した場合、界面活性剤の添加量を高くするにつれて抑制率は向上し給水に対して50〜60ppm付近で抑制率の向上は停止するがスケールの軟質化はさらに高添加量域まで進行する。」(2頁右上欄6行〜左下欄2行)

(甲11エ)「注)スケールの状態A:柔らかく手で簡単におとせる。
B:柔らかいが所どころに堅いスケールのあるもの。
C:堅く薬品処理しなければおとせないもの。
D:堅いスケール、柔らかいスケールが層になってついているもの。」(3頁右上欄の表1の注))

(2)甲12について
甲12には、以下の事項が記載されている。
(甲12ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に高いpH及び高い方解石濃度条件(例えば、冷却塔系の循環時に起こる)下での、水系の金属表面上のアルカリ土類金属スケール沈積物、特に炭酸カルシウム(CaCO3)スケール沈積物の形成、析出及び付着を阻害するための組成物及び方法に関する。本組成物は、N,N-ビス(ホスホノメチル)-2-アミノ-1-プロパノール、誘導体及び対応する低級アルキルエーテル並びにそのN-オキシドである。
【0002】通常、炭酸カルシウムスケール沈積物は、多くの原因により送水系の金属表面上に集積する外被被膜である。
【0003】種々の工業的及び商用の送水系は、炭酸カルシウムスケール形成問題から免れられない。炭酸カルシウムのスケールは、特に、水を使用する熱交換系[例えば、ボイラー系、一循環(once-through)及びオープン式再循環水冷系]では特に重要な問題である。pHが高く且つ方解石濃度が高い過酷な条件である冷却塔では特にひどい。」

(甲12イ)「【0010】本発明のN,N-ビス(ホスホノメチル)-2-アミノ-1-プロパノール、誘導体及び対応する低級アルキルエーテル並びにN-オキシドは、本発明のスケール阻害法では、金属イオン封鎖剤またはキレート化剤というよりはむしろ限界阻害剤(threshold inhibitor)として同範囲の量で使用するが、本発明の組成物は、同様に分散剤特性を有し、形成する任意のスケール沈積物の付着性を下げ、除去し易くする。」

(甲12ウ)「【0054】「沈澱を阻害する」及び「形成及び析出を阻害する」という用語は、限界阻害、分散、可溶化または粒径減少を指す。「付着を阻害する」及び「非付着性を高める」という用語は、容易に(例えば、簡単に濯ぐだけで)除去されるスケール沈積物、即ち、ごしごし機械的または化学的に処理しなくとも簡単な物理的手段で除去できる程度に、付着表面にゆるく結合しているスケール沈積物の形成を意味する。」

(3)甲13について
甲13には、以下の事項が記載されている。
(甲13ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水性系に添加されたポリエーテルポリアミノメチレンホスホネート水あか抑制剤が水性系中の酸化性殺菌剤の臭素及び塩素によって劣化することを抑制するための組成物及び方法に関する。水性系中の微生物の増殖を制御するために通常は臭素系の殺菌剤が水性系に添加されている。また、循環式冷却システムのような水性系で見られる特に高pH及び高カルサイト濃度の過酷な条件下に、該水性系の金属性表面にアルカリ土類金属の水あか沈着層、特に炭酸カルシウム(CaCO3)の水あか沈着層が形成、堆積及び付着することを防止するためにこのようなホスホネート類が添加されている。」
「【0006】工業的及び商業的な種々の水輸送システムは炭酸カルシウム水あか形成の問題を生じ易い。炭酸カルシウム水あかは、例えばボイラーシステム、並びに通過型及び開放再循環型水冷システムのような水を使用する熱交換システムで特に問題になる。冷却塔、特に、高pH及び高カルサイト濃度のような過酷な条件が伴う冷却塔が特に問題である。」

(甲13イ)「【0009】炭酸カルシウム水あか沈着層の形成は、熱伝達の遅延、沈着層で被覆された部分の腐食の進行、流体流動の相当の阻害などの深刻な問題を与える。多くの慣用の水あか抑制剤が無効であるような高pH濃度及び高カルサイト濃度という過酷な条件下の炭酸カルシウム水あかの抑制に対しても、本文中に記載のポリエーテルポリアミノメチレンホスホネートは、限界抑制(threshold inhibitor)的な量で使用して炭酸カルシウム水あかの形成及び堆積を防止し得る。これらはまた分散特性を有しており、形成された炭酸カルシウム水あか沈着層の付着力をかなり弱めてその除去を容易にする。」

(甲13ウ)「【0067】ホスホネート水あか抑制剤と上記のポリマー添加剤との混用に関する記載中、「沈殿を抑制する」及び「形成及び堆積を抑制する」という表現はいずれも、限界抑制、分散、可溶化または微粉化を意味することを理解されたい。「付着を抑制する」及び「非付着性を強化する」という表現は、例えば簡単な洗浄によって容易に除去される水あか沈着層、即ち付着表面に堅固に接着しないので強力な機械的及び化学的処理によらずとも簡単な物理的手段で除去できるような水あか沈着層の生成を意味する。」

(4)甲14について
甲14には、以下の事項が記載されている。
(甲14ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ホスホン酸及び/又はその塩、および、少なくとも(メタ)アクリル酸及び/又はその塩の単量体単位、(メタ)アクリルアミド−アルキル−及び/又はアリール−スルホン酸及び/又はその塩の単量体単位及び置換(メタ)アクリルアミドの単量体単位からなる水溶性共重合体を含有することを特徴とするスケール防止剤。」

(甲14イ)「【0002】
【従来の技術】近年、ビル空調や一般工場、石油化学コンビナート等の冷却水系において、水資源節約のため、補給水を長時間循環使用する高濃縮運転化が進められてきている。それに伴い、冷却水中に溶存しているカルシウム塩やマグネシウム塩、シリカ等の成分が、熱交換器や配管表面などにスケールとして析出しやすくなり、その結果、熱交換器の伝熱効率の低下や配管の閉塞などの障害がより深刻な問題となってきている。なかでも、珪酸カルシウムや珪酸マグネシウムなどのシリカ系スケールは硬質で、塩酸等による通常の酸洗浄では洗浄効果が弱いことから、一旦スケールを生成してしまうと除去するのが困難であり、前記のような様々な障害を引き起すことが知られている。なお、冷却水系では、冷却のために水の一部が蒸発するため、強制的に冷却水の一部を入れ替えない限り溶存成分が濃縮される。」

(甲14ウ)「【0030】実施例1
スケール付着防止効果を評価するために、下記の様な試験を行なった。表1に示す成分を含有する薬剤を調製し、各薬剤をそれぞれ試験水(pH9.0、全硬度500mgCaCO3/リットル、シリカ濃度220mgSiO2/リットル)に所定の濃度になるように添加した。それから、50℃の恒温槽に設置したビーカーに薬剤を添加したそれぞれの試験液を入れ、金属製試験片(材質SUS304、寸法50mm×30mm×1mm)を吊るして浸漬し、マグネティックスターラーで各試験液を7日間攪拌した。7日後にそれぞれの試験液から試験片を取り出し、試験片表面に付着した軟質なスケールを除去するため純水で1分間超音波洗浄を行ない、乾燥後、試験片の重量を測定した。試験片の腐食減量は実質的に無視することができることから、試験片へのスケール付着量は試験前後での試験片の重量差から求めた。試験結果を表2に示す。」

(5)甲15について
甲15には、以下の事項が記載されている。
(甲15ア)「2.特許請求の範囲


・・・
10.特許請求の範囲第1項記載の新規ブロック共重合体からなるスケール防止剤。」(1頁左欄5行〜2頁左下欄6行)

(甲15イ)「また、本発明の新規ブロック共重合体(I)は、前記のようにスケール防止剤として用いられ、スケールの析出防止及び析出したスケールの分散にすぐれた性能を示す。一般にスケール防止剤は、管、ボイラー、蒸発器、蒸気エゼクタ等の表面にカルシウム、マグネシウム、バリウム塩及び堆積物の形成を防止するために水に添加されるが、本発明の新規ブロック共重合体(I)をスケール防止剤として用いれば、スケール形成が問題であるあらゆる水系においてスケール析出防止及び析出スケールの分散剤として作用する。例えば、ボイラー給水やプロセス冷却水の加熱時;海水の蒸発脱塩による淡水化時;高炉、転炉、焼結炉等から排出される排ガスの集塵装置及び塵埃や各種の反応ガスが存在する作業場の環境浄化に用いられる環境集塵装置に使用される集塵水の循環使用時等に析出するスケールの析出防止及び析出したスケールの分散に効果が顕著である。」(5頁左下欄10行〜右下欄7行)

(甲15ウ)「本発明のスケール防止剤を使用すれば、長期に亘りスケールの発生を防止又は抑制することができる。また、長期間の運転によりスケールが析出沈着した場合に於いても、析出したスケールは本発明のスケール防止剤の作用により軟質なものとなっているため、水流によって容易に分散除去することができる。」周知技術「水を使用する熱交換系のシステムにおいて、熱交換面など機器の表面に炭酸カルシウム等のスケールが付着しないようにする、又はスケールが付着したとしても容易に除去できるようにするスケール抑制剤。」(6頁左上欄5〜11行)

(6)周知技術について
上記甲11の摘記事項、甲12の摘記事項、甲13の摘記事項、甲14の摘記事項及び甲15の摘記事項(特に、各々の下線部参照)に共通する事項として周知技術を認定すると、以下のとおりである。
「水を使用する熱交換系のシステムにおいて、熱交換面など機器の表面に炭酸カルシウム等のスケールが付着しないようにする、又はスケールが付着したとしても容易に除去できるようにするスケール抑制剤。」

第5 当審の判断
上記第3で記載した申立理由を判断するにあたり、特許法第29条関係の申立理由を判断するには、本件発明が明確である必要があることから、まず、特許法第36条関係の申立理由から判断することとする。

1 本件明細書の記載
本件明細書(下線は当審において付与した。)には、本件発明の解決しようとする課題について、
「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、焼却灰由来のスケール付着問題が認識され始めたころの、スケール問題の言わばハシリの技術とも言え、その問題としている浸出水のカルシウム濃度は400〜520mg/Lといった低濃度レベルであり、最近の高濃度のカルシウムを含有する浸出水の処理とは状況を異にしている。」
「【0013】
図11は、従来のカルシウム除去設備の反応槽の撹拌機のスケール付着状況を示す写真である。この撹拌機はシャフト中段及び下段に2つのインペラを有するものであるが、厚さ30mm以上のスケールがシャフトもインペラも覆い尽くしており、シャフト径やインペラ径が外観からは判断できないような状況になっている。
【0014】
スケールは硬く石化しており、ハンマーで叩き割らないと除去できないほどである。スケール除去後、再び図11のような状態になるまでおよそ2〜3週間であり、スケールが付き過ぎるとモーターが過負荷となり電源トリップが発生するため、2〜3週間ごとにスケール除去作業が必要となっている。」
「【0017】
本発明の目的は、特に、カルシウム濃度が高いカルシウム含有排水を処理する場合において、カルシウム除去設備の反応槽の部材に固着したスケールの除去作業を容易にすることができ、カルシウム除去設備のメンテナンス性を向上させることができる、カルシウム含有排水のカルシウム除去方法及びカルシウム除去設備を提供することにある。」と記載されている。
上記図11として、以下の図面(撹拌機の部分)が記載されている。
【図11】


そして、その課題を解決するための手段として、
「【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成とすることができる。
【0019】
(1)被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して導入し、
前記導入されたカルシウム含有排水を、炭酸塩と反応させて炭酸カルシウムを生成させる反応槽へ導入し、
前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加することを特徴とするカルシウム含有排水のカルシウム除去方法。」
「【0025】
(7)被処理水としてのカルシウム含有排水が導入される配管又は所定の槽と、
前記配管又は前記所定の槽を介して導入された前記被処理水を、炭酸塩と反応させて炭酸カルシウムを生成させる反応槽と、
前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに前記炭酸カルシウムから形成されるスケールを軟質化するためのスケール軟質化剤を添加する添加手段と、
前記反応槽及び前記所定の槽のうちの少なくともいずれかの槽内に添加されたスケール軟質化剤を撹拌する攪拌手段と、
を備えたことを特徴とするカルシウム除去設備。」と記載されている。

そして、スケール軟質化剤について、
「【0034】
スケール軟質化剤は、炭酸カルシウムから形成されたスケールを軟質化することができればどのようなものでもよい。スケール軟質化剤の例としては、(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−スルホン酸系モノマー共重合体、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−ヒドロキシアリロキシプロパンスルホン酸共重合体、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)が挙げられる。スルホン酸系モノマー(スルホン酸基含有モノマー)としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸等が挙げられる。また、他のスケール軟質化剤の例としては、ポリアクリルアミド及びその加水分解物、マレイン酸系重合体、イタコン酸系重合体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸などを含むアクリル酸系の2成分系又は3成分系共重合体が挙げられる。これらの列挙した化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ポリ(メタ)アクリル酸塩、アクリル酸−メタクリル酸共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体塩、及びアクリル酸−スルホン酸系モノマー共重合体塩が特に好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタアクリル酸、又はその両方を意味する。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーの分子量については特に限定するものではないが、例えば、重量平均分子量が2000〜12000、好ましくは3000〜9000などの比較的低分子量のものが好ましい。
【0036】
また、本発明のスケール軟質化剤は、上記の有機高分子に加え、鉄塩やアルミニウム塩などの無機塩を含有することが好ましい。これにより、スケール軟質化効果が更に向上する。具体的には、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)からなる群より選択される少なくとも1種以上を使用することができる。
【0037】
スケール軟質化剤が、上記の有機高分子に加えて無機塩を含有する場合、それらの好ましい組み合わせは、(メタ)アクリル酸−スルホン酸系モノマー共重合体/鉄塩の組み合わせ、ポリアクリル酸ナトリウム塩/鉄塩の組み合わせ、ポリアクリル酸ナトリウム塩/アルミニウム塩の組み合わせが好ましい。
【0038】
スケール軟質化剤の所要添加量(上記無機塩を含有する場合は無機塩を含めた量)は、被処理水のカルシウム濃度及び塩類濃度に応じて適宜設定されるが、例えば、10〜200mg/L(カルシウム含有排水1L当たり10〜200mg)、好ましくは20〜180mg/L、より好ましくは30〜150mg/L、更に好ましくは40〜130mg/L、最も好ましくは50〜100mg/Lである。
【0039】
このうち、無機塩を使用する場合、無機塩の添加量は、上記の(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して100〜200質量部、好ましくは130〜190質量部、特に好ましくは150〜180質量部とすることが好ましい。」と記載されている。

また、実施例として、
「【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0049】
以下の実施例及び比較例では、表1に示す水質の被処理水を処理する際に、表2に示すスケール軟質化剤を使用した。表3は、スケール軟質化剤の注入位置及び注入率を示している。」
「【0053】
<実施例1>
上記と同様の実験装置を用い、反応槽12の注入点a−1(図2参照)に表2に示すスケール軟質化剤1を100mg/L注入して図1のフロー1として処理した以外は、比較例と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
除去試験は5週間実施したが、期間中、反応槽注入部のドラフトチューブがスケール付着による閉塞で流入水の越流が発生することはなく、また、反応槽撹拌機が電流トリップで停止することもなく連続運転のまま試験を終了した。水抜き後、反応槽の内面及び撹拌機を観察したところ、スケールも軟質化が認められ、金属製スクレーパーなどで軽く擦りながら水洗するだけで容易に剥離することができた。
また、撹拌機シャフトの付着スケールについては厚さは比較例とあまり変わらないものの、軟質化は顕著であり、ハンマーによる粉砕は不要で金属製スクレーパーで削ることにより容易に剥離除去することができた。
【0054】
<実施例2>
上記と同様の実験装置を用い、反応槽12の注入点a−1及び注入点a−2(図4参照)に表2に示すスケール軟質化剤2をそれぞれ50mg/L注入して処理した以外は実施例1と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
【0055】
<実施例3>
上記と同様の実験装置を用い、反応槽12にはスケール軟質化剤を注入せず、調整槽11の注入点b(図5参照)に表2に示すスケール軟質化剤3を100mg/L注入して図5のフロー2として処理した以外は実施例1と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
【0056】
<実施例4>
上記と同様の実験装置を用い、調整槽11の注入点b(図6参照)及び反応槽12の注入点a−2(図3参照)に表2に示すスケール軟質化剤4をそれぞれ50mg/L注入して図6のフロー3として処理した以外は実施例3と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
【0057】
<実施例5>
上記と同様の実験装置から凝集槽をバイパスさせてポリ鉄の添加位置を反応槽に変更するとともに、反応槽の注入点a−1及び注入点a−2(図4参照)に表3に示すスケール軟質化剤3をそれぞれ50mg/L注入して図7のフロー4として処理した以外は実施例2と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
【0058】
<実施例6>
実施例5と同様の実験装置を用い、反応槽12の注入点a−1及び注入点a−2(図4参照)に表2に示すスケール軟質化剤4をそれぞれ50mg/L注入して処理した以外は実施例5と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
【0059】
<実施例7>
反応槽にはスケール軟質化剤を注入せず、調整槽11の注入点b(図8参照)に表2に示すスケール軟質化剤5を100mg/L注入して図8のフロー5として処理した以外は実施例6と同じ条件でカルシウム除去試験を行った。
【0060】
<実施例8>
調整槽11の注入点b及び反応槽12の注入点a−2に表2に示すスケール軟質化剤6をそれぞれ50mg/L注入して図9のフロー6として処理した以外は実施例7と同じ条件でカルシウム除去処理試験を行った。
【0061】
実施例2〜実施例8の何れにおいても、5週間の連続試験期間中に反応槽12の流入部ドラフトチューブでの流入水越流、撹拌機の電流トリップは発生せず、処理試験終了後の反応槽12の内面及び撹拌機を観察したところ、実験例1と同等かそれ以上の軟質化が確認できた。特に、実施例5及び実施例6においては、反応槽12内面及び底面の付着スケールは厚さ1cm以下であり、圧力水によりホース水洗のみで付着スケールを除去することが可能であった。」
「【表2】

」と記載されている。

2 理由3について
(1)本件発明1及び8の「スケール軟質化剤」については、本件発明8に「炭酸カルシウムから形成されるスケールを軟質化するためのスケール軟質化剤」と記載されているとおり、炭酸カルシウムから形成される「スケール」を「軟質化」するための「剤」であり、文言上不明確であるとまではいえない。

(2)申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)で「どの程度の硬度低下が見られれば「スケール軟質化剤」に該当するのかが不明である。「スケール軟質化剤」を包括的に定義するとしても、「スケール軟質化剤」に該当するか否かを判断できる客観的な基準が示されていない」ことを主張している。

(3)しかし、上記1で摘記した本件明細書には、従来の状況として、「従来のカルシウム除去設備の反応槽の撹拌機のスケール付着」は「スケールは硬く石化しており、ハンマーで叩き割らないと除去できないほどである」(【0013】、【0014】)と記載され、これに対し、本件発明は「スケールの除去作業を容易にすることができ」(【0017】)と記載され、軟質化について、実施例の記載として、「<実施例1>・・・。水抜き後、反応槽の内面及び撹拌機を観察したところ、スケールも軟質化が認められ、金属製スクレーパーなどで軽く擦りながら水洗するだけで容易に剥離することができた。また、撹拌機シャフトの付着スケールについては厚さは比較例とあまり変わらないものの、軟質化は顕著であり、ハンマーによる粉砕は不要で金属製スクレーパーで削ることにより容易に剥離除去することができた。」(【0053】)、「実施例2〜実施例8の何れにおいても、・・・、実験例1と同等かそれ以上の軟質化が確認できた。特に、実施例5及び実施例6においては、反応槽12内面及び底面の付着スケールは厚さ1cm以下であり、圧力水によりホース水洗のみで付着スケールを除去することが可能であった。」(【0061】)と記載されている。
そうすると、本件明細書の上記の記載によれば、硬く石化しておりハンマーで叩き割らないと除去できない状態は「軟質」ではなく、この状況よりも容易に除去できるスケールの状態が「軟質」であり、具体的には、「軟質」とは、金属製スクレーパーなどで軽く擦りながら水洗するだけで容易に剥離することができる、圧力水によりホース水洗のみで除去することができる状態である。
よって、本件明細書を参照すれば、「どの程度の硬度低下が見られれば「スケール軟質化剤」に該当するのかが不明である」とはいえず、上記申立人の主張によって、「スケール軟質化剤」を不明確とすることはできない。

(4)したがって、本件発明1、8及び11に係る記載が不明確とはいえないことから、申立理由4によって、本件発明1、8及び11に係る特許を取り消すことはできない。

3 理由4について
(1)発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成などの記載があるか否かを検討して判断すべきものであるところ、上記1で摘記した本件明細書【0034】〜【0039】には、「スケール軟質化剤」の具体的な物質について幅広く記載されており、そして【0048】〜【0061】には、実施例として、スケール軟質化剤を反応槽、所定の槽、及び配管の少なくともいずれかに添加すると、スケールがどの程度軟質化するかについて、実験結果を示しつつ記載されている。
そうすると、当業者は本件明細書におけるこれらの記載を参照し、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1、8及び11を実施することができるといえる。

(2)申立人は、申立書で「「スケール軟質化剤」の用語が不明確である以上、本件発明1、8及び11を実施できない。特に、「スケール軟質化剤」に該当する薬剤の要件(スケールをどの程度軟質化するのか、どのような化学物質が含まれるのか、など)が発明の詳細な説明に具体的に示されていない以上、スケール軟質化剤を選定することは不可能である。」と主張している。

(3)しかしながら、上記2で述べたように「スケール軟質化剤」の用語は明確であり、また上記(1)で述べたように、上記1で摘記した本件明細書【0034】〜【0039】には、「スケール軟質化剤」の具体的な物質について幅広く記載されており、そして【0048】〜【0061】には、実施例として、スケール軟質化剤を反応槽、所定の槽、及び配管の少なくともいずれかに添加すると、スケールがどの程度軟質化するかについて、実験結果を示しつつ記載されている。
そうすると、「スケール軟質化剤」について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(4)したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1、8及び11を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていることから、申立理由5によって、本件発明1、8及び11に係る特許を取り消すことはできない

4 理由5について
(1)本件発明の解決しようとする課題は、上記1で摘記したとおり、「従来のカルシウム除去設備の反応槽の撹拌機のスケール付着」は「スケールは硬く石化しており、ハンマーで叩き割らないと除去できないほどで」あったことから、「カルシウム除去設備の反応槽の部材に固着したスケールの除去作業を容易にすることができ」るようにすることである。
そして、その課題を解決するための手段として、本件明細書には、
「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加すること」、「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに前記炭酸カルシウムから形成されるスケールを軟質化するためのスケール軟質化剤を添加する添加手段」が記載されている。

(2)「スケール軟質化剤」とは、上記2(1)で述べたように、炭酸カルシウムから形成される「スケール」を「軟質化」するための「剤」であるから、「反応槽、所定の槽、及び配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加する」ことで、スケールが軟質化し、当然スケールの除去作業が容易になることが理解でき、上記本件発明の解決しようとする課題を解決することができると当業者が認識できるといえる。

(3)申立人は、申立書で「実施例において、実際に作用効果が確認されている例は、「スケール軟質化剤」として(メタ)アクリル系ポリマーを用いた例に限られている。してみると、本件発明1、8及び11のうち、(メタ)アクリル系ポリマー以外の物質を「スケール防止剤」として用いる態様について、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。」と主張している。

(4)しかし、上記(2)で述べたように、本件発明は、本件発明の解決しようとする課題を「反応槽、所定の槽、及び配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加する」ことで解決しようとするものであるから、実施例において「スケール軟質化剤」として用いられているのが「(メタ)アクリル系ポリマー」のものだけとしても、それ以外のスケール軟質化剤では、本件発明の解決しようとする課題が解決できないとはいえない。
そうすると、「スケール軟質化剤」が「(メタ)アクリル系ポリマー」のものだけに限定されていない本件発明1、8及び11に係る発明が、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。

(5)したがって、本件発明1、8及び11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、申立理由6によって、本件発明1、8及び11に係る特許を取り消すことはできない。

5 理由1−1について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「原水中にカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などスケールの発生原因になる金属イオンなどを含む排水である最終処分場浸出水」は、カルシウムを含有しており、「処理」されることから、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水」に相当する。
また、甲1発明の「計量槽」は、本件発明1の「所定の槽」に相当する。
そうすると、甲1発明の「原水中にカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などスケールの発生原因になる金属イオンなどを含む排水である最終処分場浸出水を、計量槽を介して反応槽へ導入すること」は、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること」に相当する。

(イ)甲1発明の「導入された浸出水を反応させて炭酸カルシウムを生成させること」について、「浸出水」には「カルシウム(Ca)」などの「金属イオン」が含まれており、「炭酸」カルシウムを生成させるには、炭酸塩と反応させることになるから、甲1発明の「反応槽において、導入された浸出水を反応させて炭酸カルシウムを生成させること」は、本件発明1の「前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること」に相当する。

(ウ)甲1発明の「クボスイープ(スケール付着防止剤)」と、本件発明1の「スケール軟質化剤」とは、「スケールに関与する剤」という限りにおいて共通する。
そうすると、甲1発明の「クボスイープ(スケール付着防止剤)を計量槽に添加すること」と、本件発明1の「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加すること」とは、「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケールに関与する剤を添加すること」で共通する。

(エ)甲1発明の「水処理」は、「原水中にカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などスケールの発生原因になる金属イオンなどを含む排水である最終処分場浸出水を、計量槽を介して反応槽へ導入」し、「反応槽において、導入された浸出水を反応させて炭酸カルシウムを生成させる」ものであり、摘記(1イ)の「実証試験施設フロシート」を参照すると、「反応槽」の後工程で、凝集混和槽、凝集沈殿槽を経るものであり、凝集沈殿槽で「炭酸カルシウム」が凝集沈殿しているといえ、カルシウム(Ca)が除去されているといえる。
そすうると、甲1発明の「原水中にカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などスケールの発生原因になる金属イオンなどを含む排水である最終処分場浸出水」の「水処理方法」は、本件発明1の「カルシウム含有排水のカルシウム除去方法」に相当する。

(オ)したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「 被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること、
前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること、
前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケールに関与する剤を添加する、カルシウム含有排水のカルシウム除去方法。」

(相違点)
スケールに関与する剤が、本件発明1では「スケール軟質化剤」であるのに対し、甲1発明では「クボスイープ(スケール付着防止剤)」である点。

相違点の判断
「付着」とは、「他の物について離れないこと。くっつくこと。」(広辞苑第4版2251頁参照)であり、「付着防止」とは、その「付着」を「防止」することであるから、「付着防止」と「軟質化」とは異なる意味を有するものであると解され、技術的にも「付着防止剤」と「軟質化剤」を同一視することはない。
また、クボスイープ(スケール付着防止剤)を使用した写真である上記摘記(甲1イ)における写真−2の右側の写真と写真−1の右側の写真を見るに、スケールは付着していないことが看て取れる。そうすると、そもそも「付着防止剤」とはスケールが付着しないようにするものであるから、付着したスケールを軟質化させるものであるとはいえない。
したがって、上記相違点は実質的な相違点である。
そして、甲1発明の「クボスイープ(スケール付着防止剤)」はスケールを付着させないようにするものであるから、これに代えてスケールを軟質化させるもの、すなわち「スケール軟質化剤」を用いる動機はない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、申立書で「「クボスイープ」は、「「クボスイープ」の添加によりスライム付着のみになり、水中ポンプの稼働時間が延長され、清掃も用意になった」という作用効果をもたらす物質であるから、スケールの軟質化に寄与していると認められる。したがって甲1発明におけるクボスイープは、本件特許発明における「スケール軟質化剤」に相当する。」と主張している。
しかし、「スライム付着」は摘記(甲1ウ)に「凝集混和槽攪拌機へのスケール付着は無く、生物スライム付着も正常であり、処理への影響はない」と記載されているとおり、正常な生物スライム(生物が分泌する粘液などの有機物)のことであり、スケールを軟質化したものではない。
したがって、「クボスイープ(スケール付着防止剤)」は、スケールの軟質化に寄与しておらず、「スケール軟質化剤」とはいえない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないことから、甲1の公知日について検討するまでもなく、甲1発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−1によって取り消すことはできない。

(2)本件発明8について
ア 本件発明8は、上記第2で記載したように、本件発明1の「カルシウム除去方法」を、カテゴリーを代えて装置の発明(「カルシウム除去設備」)として発明特定事項を整理し、さらに「前記反応槽及び前記所定の槽のうちの少なくともいずれかの槽内に添加されたスケール軟質化剤を撹拌する攪拌手段」を追加した発明である。
そして、本件発明8には、本件発明1と同様に、「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに」「スケール軟質化剤を添加する」ことが特定されている。

イ 対比・判断
甲1発明をそのカテゴリーを代えて「水処理施設」の発明としても、本件発明8と甲1発明とは、少なくとも「スケール軟質化剤」で相違し、その相違点に対する判断は、上記(1)イ〜エで述べたとおりである。

ウ 小括
そうすると、本件発明8は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないことから、本件発明8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−1によって取り消すことはできない。

6 理由1−2について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「カルシウムイオン含有水1(以下、「原水」という)」は、カルシウムイオンの除去という処理を受けるものであるから、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水」に相当する。また、甲4発明の「反応混和槽(貯留槽)7」は、本件発明1の「反応槽」に相当する。
そうすると、甲4発明の「カルシウムイオン含有水1(以下、「原水」という)が自然流下もしくはポンプ圧送により流入され、原水槽2から原水ポンプ3により原水流量検出器4を経由して原水カルシウム濃度計量槽5に圧送され、次いで、原水1は反応混和槽(貯留槽)7に送られ」ることは、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること」に相当する。

(イ)甲4発明の「反応混和槽7においては、炭酸ナトリウムを一定濃度に溶解する炭酸ナトリウム溶解槽20から炭酸ナトリウム注入ポンプ8により炭酸ナトリウムが注入され、」「反応混和槽pHコントローラ12で9〜11(通常10付近)に調整され、pH10付近では、カルシウムイオンは、炭酸イオンと反応して炭酸カルシウムとして析出され」ることは、本件発明1の「前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること」に相当する。

(ウ)甲4発明の「ここで、凝集剤としては鉄塩が添加され」ることにおいて、「ここで」とは「反応混和槽7」のことである。そして、甲4発明の「凝集剤」と本件発明1の「スケール軟質化剤」とは、「剤」という限りにおいて共通する。
そうすると、甲4発明の「ここで、凝集剤としては鉄塩が添加され」ることと、本件発明1の「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加すること」とは、「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに剤を添加すること」で共通する。

(エ)甲4発明の「カルシウムイオン含有水中のカルシウムイオンを除去する方法」は、本件発明1の「カルシウム含有排水のカルシウム除去方法」に相当する。

(オ)したがって、本件発明1と甲4発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「 被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること、
前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること、
前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに剤を添加する、含有排水のカルシウム除去方法。」

(相違点)
剤が、本件発明1では、「スケール軟質化剤」であるのに対し、甲4発明では、「凝集剤」である点。

相違点の判断
「凝集」とは、「こり固まって集まること」(広辞苑第4版668頁参照)であり、「軟質化」とは異なる意味を有するものである。そして、技術的にも「凝集剤」と「軟質化剤」を同一視することはないから、上記相違点は実質的な相違点である。
そして、甲4発明は、「析出した」「炭酸カルシウム」を「凝集剤」により「凝集」させ、その後、摘記(甲4イ)の【0027】〜【0028】に記載されているように、凝集沈殿槽16に送られ、最終的に、凝集沈殿槽16から引き抜くものであるから、甲4発明において、「凝集剤」は必須のものであり、これを「スケール軟質化剤」とすることはない。
そうすると、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、申立書で「甲4発明における凝集剤の一例は鉄塩である。これに対し、本件特許発明における「スケール軟質化剤」は、用語として不明確であり、その技術的思想の範囲の外縁を明確に特定することができないが、本件特許[0036]段落に「本発明のスケール軟質化剤は…≪中略≫…鉄塩やアルミニウム塩などの無機塩を含有することが好ましい。」と記載されていることに鑑みると、鉄塩はスケール軟質化剤に該当する。」と主張している。
しかし、上記1で摘記した本件明細書の【0036】及び【0037】に「また、本発明のスケール軟質化剤は、上記の有機高分子に加え、鉄塩やアルミニウム塩などの無機塩を含有することが好ましい。これにより、スケール軟質化効果が更に向上する。」「スケール軟質化剤が、上記の有機高分子に加えて無機塩を含有する場合、それらの好ましい組み合わせは、(メタ)アクリル酸−スルホン酸系モノマー共重合体/鉄塩の組み合わせ、ポリアクリル酸ナトリウム塩/鉄塩の組み合わせ、ポリアクリル酸ナトリウム塩/アルミニウム塩の組み合わせが好ましい。」と記載されているように、鉄塩やアルミニウム塩は、有機高分子に加えて用いるものであり、鉄塩やアルミニウム塩を単独でスケール軟質化剤として添加することはない。
そうすると、「甲4発明における凝集剤の一例は鉄塩で」あり「鉄塩はスケール軟質化剤に該当する」との主張は成立しない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲4発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、そして、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−2によって取り消すことはできない。

(2)本件発明8について
ア 本件発明8は、上記5(2)で述べたように、本件発明1と同様に「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに」「スケール軟質化剤を添加する」ことが特定されている。そうすると、甲4発明をそのカテゴリーを代えて装置の発明としても、上記(1)ア(オ)を踏まえると、本件発明8と甲4発明とは、少なくとも「スケール軟質化剤」で相違し、その相違点に対する判断は、上記(1)イ〜エで述べたとおりである。

イ したがって、本件発明8は、甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないことから、本件発明8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−1によって取り消すことはできない。

7 理由1−3について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
(ア)甲5発明の「カルシウム」が「含まれる」「ダイオキシンや重金属等で汚染された埋立浸出水である被処理水」は、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水」に相当する。また、甲5発明の「反応混和槽3´」は、本件発明1の「反応槽」に相当する。
そうすると、甲5発明の「カルシウム」が「含まれる」「ダイオキシンや重金属等で汚染された埋立浸出水である被処理水」を「原水槽2からポンプP1で」「反応混和槽3´」に「注水される」ことは、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること」に相当する。

(イ)甲5発明の「反応混和槽3´では」「薬品添加機構により被処理水に含まれるカルシウム濃度に対応するカルシウム除去剤の一例である炭酸ソーダが添加され、不溶性の炭酸カルシウムが析出され」ることは、本件発明1の「前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること」に相当する。

(ウ)甲5発明の「凝集剤」と本件発明1の「スケール軟質化剤」とは、「剤」という限りにおいて共通する。
そうすると、甲5発明の「反応混和槽3´では、FeCl3等の凝集剤を注入して」いることと、本件発明1の「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加すること」とは、「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに剤を添加すること」で共通する。

(エ)甲5発明の「被処理水に含まれるカルシウムを分離除去する」「カルシウムの除去方法」は、本件発明1の「カルシウム含有排水のカルシウム除去方法」に相当する。

(オ)したがって、本件発明1と甲5発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「 被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること、
前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること、
前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに剤を添加する、含有排水のカルシウム除去方法。」

(相違点)
剤が、本件発明1では、「スケール軟質化剤」であるのに対し、甲5発明では、「凝集剤」である点。

相違点の判断
上記6(1)イで述べたとおり、「凝集」とは、「こり固まって集まること」であり、「軟質化」とは異なる意味を有するものである。そして、技術的にも「凝集剤」と「軟質化剤」を同一視することはないから、上記相違点は実質的な相違点である。
そして、甲5発明は、「凝集剤を注入して重金属類等を不溶性塩として析出させ」、その後、摘記(甲5ア)の【0023】に記載されているように、凝集沈殿槽6で沈降させて除去するものであるから、甲5発明において、「凝集剤」は必須のものであり、これを「スケール軟質化剤」とすることはない。
そうすると、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、申立書で「、上述の通り甲5発明における凝集剤の一例は鉄塩の一種であるFeCl3であり、鉄塩は本件特許発明におけるスケール軟質化剤に該当する。」と主張している。
しかし、上記6(1)ウで述べたように、鉄塩やアルミニウム塩は、有機高分子に加えて用いるものであり、鉄塩やアルミニウム塩を単独でスケール軟質化剤として添加することはない。
そうすると、上記請求人の主張は成立しない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲5発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、そして、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−3によって取り消すことはできない。

(2)本件発明8について
ア 本件発明8は、上記5(2)で述べたように、本件発明1と同様に「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに」「スケール軟質化剤を添加する」ことが特定されている。そうすると、甲5発明をそのカテゴリーを代えて装置の発明としても、上記(1)ア(オ)を踏まえると、本件発明8と甲5発明とは、少なくとも「スケール軟質化剤」で相違し、その相違点に対する判断は、上記(1)イ〜エで述べたとおりである。

イ したがって、本件発明8は、甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないことから、本件発明8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−3によって取り消すことはできない。

(3)本件発明11について
本件発明11は、上記第2で記載したように、本件発明8を直接的又は間接的に引用して、さらに限定を加えた発明であるあるから、本件発明11についても、甲5発明ではなく、そして、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−3によって取り消すことはできない。

8 理由1−4について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
(ア)甲6発明の「Ca++」が「含まれる」「埋立地浸出汚水である原水」は、カルシウムの除去という処理を受けるものであるから、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水」に相当する。また、甲6発明の「反応槽3」は、本件発明1の「反応槽」に相当する。
そうすると、甲6発明の「Ca++」が「含まれる」「埋立地浸出汚水である原水」を「カルシウム除去設備2の反応槽3へ送液」することは、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること」に相当する。

(イ)甲6発明の「反応槽3において」「HCO3―、またはCO2――が」「原水と混合されると原水中に含まれるCa++と反応して水不溶性のCaCO3が生成」することは、本件発明1の「前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること」に相当する。

(ウ)甲6発明の「凝集剤」と本件発明1の「スケール軟質化剤」とは、「剤」という限りにおいて共通する。そして、甲6発明では、摘記(甲6ア)によれば第1フロック形成槽4への送液前に「凝集剤を添加」していることから、「反応槽3」において「凝集剤を添加」しているといえる。
そうすると、甲6発明の「上記の反応で生成するCaCO3の粒子の沈降を促進するため塩化第2鉄、硫酸ばん土などの凝集剤を添加する」ことと、本件発明1の「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加すること」とは、「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに剤を添加すること」で共通する。

(エ)甲6発明の「カルシウム除去方法」は、本件発明1の「カルシウム含有排水のカルシウム除去方法」に相当する。

(オ)したがって、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「 被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること、
前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること、
前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに剤を添加する、含有排水のカルシウム除去方法。」

(相違点)
剤が、本件発明1では、「スケール軟質化剤」であるのに対し、甲6発明では、「凝集剤」である点。

相違点の判断
上記6(1)イで述べたとおり、「凝集」とは、「こり固まって集まること」であり、「軟質化」とは異なる意味を有するものである。そして、技術的にも「凝集剤」と「軟質化剤」を同一視することはないから、上記相違点は実質的な相違点である。
そして、甲6発明の「凝集剤」は、「反応で生成するCaCO3の粒子の沈降を促進するため」に「添加する」ものであるから、これを「スケール軟質化剤」とすることはない。
そうすると、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、申立書で「上述の通り甲6発明における凝集剤の例のうち少なくとも塩化第2鉄は本件特許発明におけるスケール軟質化剤に該当する。」と主張している。
しかし、上記6(1)ウで述べたように、鉄塩やアルミニウム塩は、有機高分子に加えて用いるものであり、鉄塩やアルミニウム塩を単独でスケール軟質化剤として添加することはない。
そうすると、上記請求人の主張は成立しない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲6発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、そして、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申し立理由1−3によって取り消すことはできない。

(2)本件発明8について
ア 本件発明8は、上記5(2)で述べたように、本件発明1と同様に「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに」「スケール軟質化剤を添加する」ことが特定されている。そうすると、甲6発明をそのカテゴリーを代えて装置の発明としても、上記(1)ア(オ)を踏まえると、本件発明8と甲6発明とは、少なくとも「スケール軟質化剤」で相違し、その相違点に対する判断は、上記(1)イ〜エで述べたとおりである。

イ したがって、本件発明8は、甲6発明ではなく、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないことから、本件発明8は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−3によって取り消すことはできない。

(3)本件発明11について
本件発明11は、上記7(3)で記載したように、本件発明8を直接的又は間接的に引用して、さらに限定を加えた発明であるあるから、本件発明11についても、甲6発明ではなく、そして、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1−4によって取り消すことはできない。

9 理由2について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と慣用技術とを対比する。
(ア)慣用技術の「カルシウムを」「除去する」「廃棄物処分場の浸出水等の排水」は、カルシウムの除去という処理を受けるものであるから、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水」に相当する。また、慣用技術の「排水を槽に導入」するに際し、甲7〜10ともそれらの図面を参照すると、なにがしかの槽あるいは配管を介して導入されるものである。そして、慣用技術の「槽」は、本件発明1の「反応槽」に相当する。
そうすると、慣用技術の「カルシウムを」「除去する」「廃棄物処分場の浸出水等の排水」「を槽に導入」することは、本件発明1の「被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること」に相当する。

(イ)慣用技術の「槽に炭酸ナトリウムを添加して、炭酸カルシウムを析出」させることは、本件発明1の「前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させること」に相当する。

(ウ)慣用技術の「カルシウムを排水から除去する方法」は、本件発明1の「カルシウム含有排水のカルシウム除去方法」に相当する。

(オ)したがって、本件発明1と慣用技術とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「 被処理水としてのカルシウム含有排水を、配管又は所定の槽の少なくともいずれかを介して、反応槽へ導入すること、
前記反応槽に導入されたカルシウム含有排水と炭酸塩とを反応させて炭酸カルシウムを前記反応槽において生成させる、カルシウム含有排水のカルシウム除去方法。」

(相違点)
本件発明1では、「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかにスケール軟質化剤を添加する」のに対し、慣用技術では、スケール軟質化剤を添加していない点。

相違点の判断
慣用技術は、「廃棄物処分場の浸出水等の排水を処理する方法」であって、排水のカルシウムを炭酸カルシウムとして除去するために、炭酸カルシウムを積極的に析出させなければならない技術である。
それに対して、上記第4の6(6)で記載した周知技術は、「熱交換系のシステム」に対する技術であり、熱交換面など機器の表面に炭酸カルシウム等のスケールが付着していると、熱伝導等の妨げになるために、炭酸カルシウム等のスケールを析出させないようにする技術であり、両者は、炭酸カルシウムの析出に対する技術的方向が相反するものである。
また、周知技術の一部として「スケールが付着したとしても容易に除去できるようにする」ことが記載されているが、それは「水を使用する熱交換系のシステムにおいて、熱交換面など機器の表面に炭酸カルシウム等のスケールが付着しないようにする」うえでのことであり、排水のカルシウムを炭酸カルシウムとして除去するためのものではない。
そうすると、「廃棄物処分場の浸出水等の排水を処理する」慣用技術において、上記「熱交換系のシステム」の周知技術を適用することはない。また、仮に、慣用技術に周知技術を適用しても、上記相違点の「前記反応槽、前記所定の槽、及び前記配管の少なくともいずれかに」スケール軟質化剤を添加することは周知技術からは導出されない。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、慣用技術と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2によって取り消すことはできない。

(2)本件発明8について
ア 本件発明8は、上記5(2)で述べたように、本件発明1と同様に「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに」「スケール軟質化剤を添加する」ことが特定されている。そうすると、慣用技術をそのカテゴリーを代えて装置の発明としても、上記(1)ア(オ)を踏まえると、本件発明8と慣用技術、少なくとも「前記反応槽、前記配管、及び前記所定の槽のうち少なくともいずれかに」「スケール軟質化剤を添加する」点で相違し、その相違点に対する判断は、上記(1)イ及びウで述べたとおりである。

イ したがって、本件発明8は、慣用技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないことから、本件発明8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
よって、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2によって取り消すことはできない。

(3)本件発明11について
本件発明11は、上記7(3)で記載したように、本件発明8を直接的又は間接的に引用して、さらに限定を加えた発明であるあるから、本件発明11についても、慣用技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2によって取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1及び8は、甲1発明でも甲4発明でもなく、甲1発明あるいは甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもなく、また、本件発明1、8及び11は、甲5発明でも甲6発明でもなく、甲5発明あるいは甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもなく、さらに、慣用技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもないことから、本件発明1、8及び11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではない。
そして、本件発明1、8及び11に係る特許は、本件特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものでも、本件明細書の発明の詳細な説明が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもない。
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、8及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、8及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-07 
出願番号 P2018-036287
審決分類 P 1 652・ 537- Y (C02F)
P 1 652・ 113- Y (C02F)
P 1 652・ 121- Y (C02F)
P 1 652・ 536- Y (C02F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 原 賢一
特許庁審判官 金 公彦
三崎 仁
登録日 2021-09-10 
登録番号 6942658
権利者 水ing株式会社
発明の名称 カルシウム含有排水のカルシウム除去方法及びカルシウム除去設備  
代理人 江藤 聡明  
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