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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A46B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A46B
管理番号 1386205
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-01 
確定日 2022-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6943541号発明「歯ブラシ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6943541号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6943541号の請求項1〜4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年6月27日に出願され、令和3年9月13日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月6日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和4年4月1日に特許異議申立人高松直樹(以下、「特許異議申立人A」という。)が特許異議の申立て(以下、「特許異議の申立てA」という。)を行い、令和4年4月4日に特許異議申立人秋山朋毅(以下、「特許異議申立人B」という。)が特許異議の申立て(以下、「特許異議の申立てB」という。)を行った。

第2 本件特許発明
特許第6943541号の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件特許発明1」〜「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
植毛面に複数の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され、
前記ヘッド部の厚さは、3mm以上3.5mm以下であり、
前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下であり、
前記ヘッド部の長さは、15mm以上27mm以下であり、
前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり、
前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有する、歯ブラシ。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記毛束の植毛方向と直交する方向に延在している溝である、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記溝は、前記毛束の植毛方向に複数並列して形成された、請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記溝は、前記平線の一方の端から他方の端にかけて、前記毛束の植毛方向と直交する
方向に延在している、請求項2又は3に記載の歯ブラシ。」

第3 特許異議の申立ての理由の概要
1 特許異議の申立てAについて
特許異議申立人Aが主張する特許異議の申立てAの理由の概要は次のとおりである。
(1)甲第1号証に記載された発明を主引用発明とした進歩性
本件特許発明1〜本件特許発明4は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第5号証〜甲第8号証に記載されるような周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1〜本件特許発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)甲第2号証に記載された発明を主引用発明とした進歩性
本件特許発明1〜本件特許発明4は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証〜甲第8号証に記載されるような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1〜本件特許発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(3)甲第3号証に記載された発明を主引用発明とした進歩性
本件特許発明1〜本件特許発明4は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明及び甲第5号証〜甲第8号証に記載されるような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1〜本件特許発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(4)甲第4号証に記載された発明を主引用発明とした進歩性
本件特許発明1〜本件特許発明4は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証〜甲第8号証に記載されるような周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1〜本件特許発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2007−229065号公報(以下、「引用文献1」という。)
甲第2号証:国際公開第2005/039355号(以下、「引用文献2」という。)
甲第3号証:特開2013−118944号公報(以下、「引用文献3」という。)
甲第4号証:特開2013−43040号公報(以下、「引用文献4」という。)
甲第5号証:特開2001−309818号公報(以下、「引用文献5」という。)
甲第6号証:特開2006−223426号公報(以下、「引用文献6」という。)
甲第7号証:特開2000−325145号公報(以下、「引用文献7」という。)
甲第8号証:特開2001−314231号公報(以下、「引用文献8」という。)

2 特許異議の申立てBについて
特許異議申立人Bが主張する特許異議の申立てBの理由の概要は次のとおりである。
(1)進歩性
本件特許発明1〜本件特許発明4は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1〜本件特許発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2013−118944号公報(前記と同様に、「引用文献3」という。)
甲第2号証:特開2003−9951号公報(以下、「引用文献9」という。)
甲第3号証:米国特許第5740579号明細書(以下、「引用文献10」という。)

(2)サポート要件
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(3)明確性
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第4 文献の記載
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
特許異議申立人Aが提出した引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同様である。)。
ア 「【0009】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態について、図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の歯ブラシを示す外観斜視図であり、図1(b)はヘッド部を上から見た平面図である。歯ブラシ10は、前端11aと後端11bとの間で広がる植毛面12を有するヘッド部11と、このヘッド部11の後端11bから延びるハンドル部13とを備える。ハンドル部13は、歯ブラシ10を把持する部分であり、歯ブラシ10を用いた刷掃操作に最適な形状に形成されていればよい。ヘッド部11やハンドル部13は、例えば硬質樹脂による一体成形により形成されればよい。ハンドル部13には、さらにエラストマーなどの柔軟な樹脂を部分的あるいは全体に形成し、把持性を向上させてもよい。
【0010】
ヘッド部11やハンドル部13の形成素材を例示すれば、熱可塑性樹脂として、曲げ弾性率500〜3000MPa(JIS K7203またはK7171準拠)のものが好ましく、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート(ポリエステルとのブレンドを含む)、ポリアリレート(ポリエステルとのブレンドを含む)、ポリオキシメチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン、PMMA樹脂などの材料を用いることができるが、価格や加工性の点からポリプロピレンが好ましい。」

イ 「【0012】
ヘッド部11は、厚みtが例えば2〜6mm程度に形成されればよい。ヘッド部11の植毛面12は、微細な刷毛を多数束ねた毛束15が複数配される(植設される)。・・・。」

ウ 「【0018】
毛束15をヘッド部11に植設する方法としては、従来技術の方法でヘッド部11に固定することができ、例えば平線(真鍮、ステンレス、硬質樹脂などの抜け止め部材)で毛束を2つ折りにして植毛する平線植毛、毛束の一端を熱等の手段により結合し、結合部が金型内にある状態でヘッド部樹脂を充填し固定するインモールド植毛(例えば、特開昭61−268208、特表平9−512724などを参照)、毛束の一端とヘッド部を熱等の手段で溶融結合する熱融着植毛(例えば、特開昭60−241404を参照)等で行なうことができる。」

エ 「【0026】
植毛面12の後端側植毛領域Bに植毛された小口径毛束15bの配列は、円形断面の毛束として通常は格子状や千鳥状に配列され、ヘッド部11の幅方向Wにおいては2〜6列(植毛面12における植毛部分の最大幅として3〜13mm程度)、ヘッド部11の長さ方向Lにおいては2〜8列(植毛面12における植毛部分の最大長さとして5〜20mm程度)配列されるが、毛束の断面形状の組合せや配列の組み合わせを目的機能に応じて適宜選択できる。
【0027】
植毛面12における毛束15の植毛されている領域の全体植毛面積(JIS S 3016:植毛面積)は、子供用では小さく、大人用では大きくなるが、一般的には0.5cm2程度から3cm2程度とされている。また、ヘッド部11の大きさについても、一般的には毛束15が植毛されている領域(植毛面積)の周囲に、縁幅0.5〜1mm程度を加えた大きさとされている。」

オ 「【0034】
なお、植毛面積や毛束の面積を取り扱うにあたっては、通常用いられている平線による植毛方式による歯ブラシであれば、ヘッド部の植毛面に開口した植毛穴を基準に測定可能であるし、インモールド植毛や熱融着植毛やそれに類して平線を用いない植毛方式であったりして、ヘッド部の植毛面の植毛穴が明確でない場合には、ヘッド部の植毛面の毛束根元部の外周を滑らかに結んだ形状を基準に測定するか、あるいは、平線を用いない植毛工程においてヘッド部に固定する際に、毛束を保持するための治具の穴断面積を用いてもよい。」

カ 「【0039】
本発明の歯ブラシの植毛面への毛束配列実施例(1)〜(5)を図2に示す。図中の大きな円R1で示される大口径毛束は直径が2.4mm、小さな円R2で示される小口径毛束は直径が1.6mmにそれぞれ形成した。また、図中にそれぞれの毛束間のピッチをmm単位で示した。また、これら(1)〜(5)の実施例について、植毛面積、植毛面積比および植毛密度を表1に示す。」

キ 図2(4)には、以下の事項が図示されている。


ク 前記オによると、平線による植毛方式による歯ブラシであれば、ヘッド部の植毛面に植毛穴が開口しているといえ、また、前記イによると、毛束15は複数、植設されるから、植毛穴が複数、開口していることは明らかである。さらに前記アも考慮すると、歯ブラシ10は、ヘッド部11を備え、該ヘッド部11は、植毛面12に複数の植毛穴が開口されているといえる。

ケ 前記イ及びウによると、平線で刷毛を多数束ねた毛束15を2つ折りにして植毛し、毛束15がヘッド部11に植設されているといえる。

コ 前記エによると、ヘッド部11の幅方向Wの大きさは、植毛面12における植毛部分の最大幅である3〜13mm程度に、縁幅0.5〜1mm程度を加えた大きさといえる。そして、縁幅を0.5mmとすると、該縁幅はヘッド部11の幅方向W両側にあるから、合計1mmを、植毛部分の最大幅である3〜13mm程度に加えることになり、ヘッド部11の幅方向Wの大きさは4〜14mm程度といえる。同様に、縁幅を1mmとすると、合計2mmを、植毛部分の最大幅に加えることになり、ヘッド部11の幅方向Wの大きさは5〜15mm程度といえる。これらを総合すると、ヘッド部11の幅方向Wの大きさは、4〜15mm程度といえる。

サ 前記エによると、ヘッド部11の長さ方向Lの大きさは、植毛面12における植毛部分の最大長さである5〜20mm程度に、縁幅0.5〜1mm程度を加えた大きさといえる。そして、縁幅を0.5mmとすると、該縁幅はヘッド部11の長さ方向L両側にあるから、合計1mmを、植毛部分の最大長さである5〜20mm程度に加えることになり、ヘッド部11の長さ方向Lの大きさは6〜21mm程度といえる。同様に、縁幅を1mmとすると、合計2mmを、植毛部分の最大長さに加えることになり、ヘッド部11の長さ方向Lの大きさは7〜22mm程度といえる。これらを総合すると、ヘッド部11の長さ方向Lの大きさは、6〜22mm程度といえる。

(2)引用発明1
前記ア〜サによると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「植毛面12に複数の植毛穴が開口されたヘッド部11を備え、平線で刷毛を多数束ねた毛束15を2つ折りにして植毛し、前記毛束15が前記ヘッド部11に植設された歯ブラシ10において、
前記ヘッド部11の形成素材は、ポリプロピレンが好ましく、
前記ヘッド部11の厚みtは、2〜6mm程度であり、
前記ヘッド部11の幅方向Wの大きさは、4〜15mm程度であり、
前記ヘッド部11の長さ方向Lの大きさは、6〜22mm程度である、歯ブラシ10」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
特許異議申立人Aが提出した引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「[0043]刷毛を束ねた毛束の断面形状は、通常は円形であるが、必ずしも円形である必要はなく、植毛部の設計に合わせて、三角形、四角形などの多角形、直線や曲線を組み合わせた不定形としてもよい。・・・。」

イ 「[0046]毛束の配列は、通常は円形断面の毛束として格子状や千鳥状に配列され、ヘッド部幅方向にわたって2〜6列程度(最大幅3〜13mm程度)、ヘッド部長手方向にわたって4〜12列程度(最大長さ5〜35mm程度)配列されるが、毛束断面形状や配列の組み合わせは刷掃目的や機能に応じて適宜選択すればよい。」

ウ 「[0047]刷毛または毛束を歯ブラシヘッド部の植毛面に固定する方法としては、従来公知の方法を利用することができ、例えば、平線と呼ばれる抜け止め部材(真鍮片、ステンレス片、硬質樹脂片など)で毛束を2つ折りにして植毛する平線植毛法、毛束の一端を熱などの手段によって溶融結合し、この結合部を金型内に臨ませた状態でヘッド部樹脂を充填して固定するインモールド植毛法(例えば、特開昭61-268208号公報、特表平9-512724号公報参照)、毛束の一端とヘッド部を熱などの手段で溶融結合する熱融着植毛法(例えば、特開昭60-241404号公報参照)などを利用すればよい。」

エ 「[0054]ヘッド部植毛面に形成される植毛穴の穴数は、10〜40穴程度であり、単一穴形状の植毛穴を単独で使用してもよいし、異なる穴形状の植毛穴を組み合わせてもよい。また、全植毛穴のうち、少なくとも60%程度以上が前記断面積0.75〜2.6mm2の条件を満たしていれば、その他のさまざまな穴断面積を持つ植毛穴を組み合わせることも可能である。」

オ 「[0055]植毛穴とヘッド部外周縁との距離は、強度が確保できる最低限の幅があればよく、0.5〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mmの範囲とする。
[0056]ヘッド部の厚さは、平線植毛法あるいは平線植毛法以外の植毛法によって若干の違いが見られるが、一般的には2〜6mm程度が望ましい。ヘッド部の厚さを薄くすれば口腔内の操作性は向上するが、一方において十分な植毛強度と耐折強度を確保するにはある程度の厚さが必要である。したがって、この両方の要望を兼ね備えるものとして、上記厚さ範囲とすることが望ましい。これによって、強度充分で操作性のよい、歯ブラシとすることができる。」

カ 「[0057]ヘッド部を含めて歯ブラシハンドルの構成樹脂としては、熱可塑性樹脂として、曲げ弾性率500〜3000MPa(JIS K 7203)のものが好ましく、例えば、ポリオレフイン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート(ポリエステルとのブレンドを含む)、ポリアリレート(ポリエステルとのブレンドを含む)、ポリオキシメチレン樹脂、AS樹脂、ABS脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド (ナイロン)、ポリウレタン、PMMA樹脂などを用いることができるが、価格や加工性の点からポリプロピレンが好ましい。」

キ 「[0098]以下に、PTT毛を用いた本発明の歯ブラシの具体的な構造例を示す。
図6および図7は、PTT毛を用いた本発明の歯ブラシの第1の具体例である。この第1の具体例は、大人用の歯ブラシの例を示すもので、植毛部の仕様は以下の通りである。なお、図面を見やすくするため、植毛穴3に植毛されたPTT毛については図示を省略した。図中、符号7および8は、それぞれサイドゲートおよび型番表示部を示す。
[0099]刷毛材質:熱水収縮率0.03%のPTT毛
刷毛径:8mil(0.203mm)
刷毛本数(2つ折り前):18本/穴
植毛穴3の穴径:1.6mm(断面積2.01mm2)
植毛穴数:23穴
植毛面積S:1.18cm2
植毛密度:39.2%
ハンドル5の材質(ヘッド部1を含む):PCTA樹脂」

ク 「[0102]図10および図11は、PTT毛を用いた本発明の歯ブラシの第3の具体例である。この第3の具体例は、乳歯生え替わり時期用の歯ブラシの例であって、植毛部の仕様は以下の通りである。なお、植毛穴3に植毛されたPTT毛については図示を省略した。図10中、符号9はピンゲートを示す。
[0103]刷毛材質:熱水収縮率0.03%のPTT毛
刷毛径:8mil(0.203mm)
刷毛本数(2つ折り前):20本/穴
植毛穴3の穴径:1.7mm(断面積2.27mm2)
植毛穴数:20穴
植毛面積S:1.14cm2
植毛密度:39.8%
ハンドル5の材質(ヘッド部1を含む):ポリプロピレン(PP)樹脂」

ケ 「[0104]図12および図13は、PTT毛を用いた本発明の歯ブラシの第4の具体例である。この第4の具体例は、乳歯期用の歯ブラシの例であって、植毛部の仕様は以下の通りである。なお、植毛穴3に植毛されたPTT毛については図示を省略した。
[0105]刷毛材質:熱水収縮率0.03%のPTT毛
刷毛径:7mil(0.178mm)
刷毛本数(2つ折り前):28本/穴
植毛穴3の穴径:1.7mm(断面積2.27mm2)
植毛穴数:17穴
植毛面積S:0.96cm2
植毛密度:40.2%
ハンドル5の材質(ヘッド部1を含む):ポリプロピレン(PP)樹脂」

コ 図6には、以下の事項が図示されている。


サ 図7には、以下の事項が図示されている。


シ 図10には、以下の事項が図示されている。


ス 図11には、以下の事項が図示されている。


セ 図12には、以下の事項が図示されている。


ソ 図13には、以下の事項が図示されている。


タ 前記エによると、ヘッド部の植毛面に10〜40穴程度の植毛穴が形成されているといえ、また、該ヘッド部が歯ブラシに備えられていることは明らかであるから、歯ブラシは、ヘッド部を備え、該ヘッド部は、植毛面に10〜40穴程度の植毛穴が形成されているといえる。

チ 前記ア及びウによると、平線で刷毛を束ねた毛束を2つ折りにして植毛し、毛束がヘッド部の植毛面に固定されているといえる。また、毛束は刷毛を束ねたものである以上、複数本の刷毛を束ねたものといえる。

ツ 前記イ及びオによると、毛束は、ヘッド部の幅方向にわたって最大幅3〜13mm程度、配列され、該毛束が植毛される植毛穴とヘッド部外周縁との距離(以下、「縁幅」という。)が0.5〜1.5mmの範囲とされているから、ヘッド部の幅方向の大きさは前記最大幅に縁幅を加えた大きさといえる。そして、縁幅を0.5mmとすると、該縁幅はヘッド部の幅方向両側にあるから、合計1mmを、前記最大幅である3〜13mm程度に加えることになり、ヘッド部の幅方向の大きさは4〜14mm程度といえる。同様に、縁幅を1.5mmとすると、合計3mmを、前記最大幅に加えることになり、ヘッド部の幅方向の大きさは6〜16mm程度といえる。これらを総合すると、ヘッド部の幅方向の大きさは、4〜16mm程度といえる。

テ 前記イ及びオによると、毛束は、ヘッド部の長手方向にわたって最大長さ5〜35mm程度、配列され、縁幅が0.5〜1.5mmの範囲とされているから、ヘッド部の長手方向の大きさは前記最大長さに縁幅を加えた大きさといえる。そして、縁幅を0.5mmとすると、該縁幅はヘッド部の長手方向両側にあるから、合計1mmを、前記最大長さである5〜35mm程度に加えることになり、ヘッド部の長手方向の大きさは6〜36mm程度といえる。同様に、縁幅を1.5mmとすると、合計3mmを、前記最大長さに加えることになり、ヘッド部の長手方向の大きさは8〜38mm程度といえる。これらを総合すると、ヘッド部の長手方向の大きさは、6〜38mm程度といえる。

(2)引用発明2
前記ア〜テによると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「植毛面に10〜40穴程度の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、平線で複数本の刷毛を束ねた毛束を2つ折りにして植毛し、前記毛束が前記ヘッド部の植毛面に固定された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部の構成樹脂は、ポリプロピレンが好ましく、
前記ヘッド部の厚さは、2〜6mm程度が望ましく、
前記ヘッド部の幅方向の大きさは、4〜16mm程度であり、
前記ヘッド部の長手方向の大きさは、6〜38mm程度である、歯ブラシ」

3 引用文献3
(1)引用文献3の記載
特許異議申立人A及び特許異議申立人Bが提出した引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0011】
本発明の一実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図1〜2を参照して説明する。
図1の歯ブラシ1は、平面視略四角形のヘッド部2と該ヘッド部2に延設されたネック部4と該ネック部4に延設されたハンドル部6とが一体成形された略長尺状のハンドル体10と、ヘッド部2に設けられた植毛部(不図示)とを備えるものである。」

イ 「【0012】
ハンドル体10の材質は、ハンドル体10に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)500MPa以上の樹脂(以下、硬質樹脂ということがある)が好ましく、曲げ弾性率2000MPa以上の樹脂がより好ましい。ハンドル体10に用いられる樹脂の曲げ弾性率の上限は特に限定されないが、例えば3000MPaとされる。
曲げ弾性率500MPa以上の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられ、中でも、曲げ弾性率2000MPa以上であるPOM、PEN、PBT等が好ましい。曲げ弾性率2000MPa以上の樹脂を用いることで、ヘッド部2を薄くし、ネック部4を細くして、口腔内での操作性を高められ、かつハンドル体10の破損を防止できる。」

ウ 「【0015】
ヘッド部2は、ハンドル体10の長さ方向が長手とされ、平面視においてネック部4側の頂部が曲線で隅切りされた略四角形の平板状とされ、一方の面(植毛面)20に、植毛穴22が複数形成されたものである。この植毛穴22に、用毛が束ねられた毛束が植設されて、複数の毛束からなる植毛部が形成される。
なお、本稿において、植毛面20と平行でかつハンドル体10の長さ方向に直交する方向を幅とし、植毛面20に直交する方向を厚さとする。加えて、植毛面20が臨む側を表面、植毛面20が臨む側の反対側を裏面とする。」

エ 「【0016】
ヘッド部2の大きさは、口腔内での操作性等を勘案して決定できる。
ヘッド部2の幅W1は、大きすぎると口腔内での操作性が低下し、小さすぎると植毛される毛束の数が少なくなりすぎて、清掃効果が損なわれやすい。このため、幅W1は、例えば、5〜13mmとされる。
ヘッド部2の厚さT1は、薄いほど口腔内での操作性を高められるが、薄すぎるとヘッド部2の強度が不十分になりやすい。このため、厚さT1は、ハンドル体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましい。
ヘッド部2の長さL3は、長すぎると口腔内での操作性が損なわれやすく、短すぎると植毛される毛束の数が少なくなりすぎて、清掃効果が損なわれやすい。このため、長さL3は、10〜26mmの範囲で適宜決定される。」

オ 「【0030】
本実施形態の歯ブラシ1は、従来公知の歯ブラシの製造方法に準じて製造される。
例えば、金型に硬質樹脂を射出して、ハンドル体10を成形する。次いで、得られたハンドル体10の植毛面20に毛束を植設することで、歯ブラシ1が得られる。毛束を植設する方法としては、例えば、毛束を二つ折りにしその間に挟み込まれた平線を植毛穴22に打ち込むことにより毛束を植設する平線式植毛、毛束の下端を植毛部となる溶融樹脂中へ圧入して固定する熱融着法、毛束の下端を加熱して溶融塊を形成した後に金型中に溶融樹脂を注入して植毛部を成形するインモールド法等が挙げられる。」

カ 「【0042】
(実験例1〜6)
表1の仕様に従い、図1と同様の歯ブラシを作製した。各例の歯ブラシは、ハンドル体の長さL1:185mm、ハンドル体先端からネック部後端までの長さL2:75mm、ヘッド部の長さL3:29mm、ヘッド部の幅W1:9.7mmであった。ヘッド部には、太さ7.5milの用毛(PBT製)23本を束ねて毛束とし、この毛束を図1に示す植毛パターンで植設して、植毛部を設けた。
得られた歯ブラシについて、折れ強度、口腔内操作性及びフィット感を評価し、その結果を表1に示す。
表中のA−A断面は、図1のA−A断面同様にネック部先端の断面であり、表中のC−C断面は、図1のC−C断面同様にネック部後端の断面である。表中B−B断面は、ハンドル体先端からハンドル体後端に向かう60mmの位置での断面である。」

キ 「【0049】
【表1】



ク 図1には、以下の事項が図示されている。


ケ 前記アによると、歯ブラシ1は、ヘッド部2を備えているといえ、前記ウによると、ヘッド部2は、植毛面20に複数の植毛穴22が形成されているといえる。

コ 前記ウ及びオによると、用毛が束ねられた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を植毛穴22に打ち込むことで、毛束を植設しているといえる。また、毛束は用毛を束ねたものである以上、複数本の用毛を束ねたものといえる。

サ 前記アによると、ハンドル体10は、ヘッド部2とネック部4とハンドル部6とが一体成形されたものであり、ヘッド部2の材質は、前記イに記載されたハンドル体10の材質と同じといえる。

(2)引用発明3
前記ア〜サによると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「植毛面20に複数の植毛穴22が形成されたヘッド部2を備え、複数本の用毛が束ねられた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴22に打ち込むことで、前記毛束を植設している歯ブラシ1において、
前記ヘッド部2の材質としては、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、中でも、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が好ましく、
前記ヘッド部2の厚さT1は、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましく、
前記ヘッド部2の幅W1は、5〜13mmとされ、
前記ヘッド部2の長さL3は、10〜26mmの範囲で適宜決定される、歯ブラシ1」

4 引用文献4
(1)引用文献4の記載
特許異議申立人Aが提出した引用文献4には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0009】
本発明の一実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図面を参照して説明する。
図1〜3に示すように、歯ブラシ1は、ハンドル部2と、ハンドル部2の先端に形成された平面視略矩形のヘッド部5とが形成されたハンドル体を備えるものであり、ハンドル体は、先端51から後端41にかけて、全体として長尺状のものとされている。ハンドル部2は、グリップ部4と、グリップ部4とヘッド部5との間に形成されたネック部6とを備えるものである。ハンドル体は、本体10と、本体10の一部を被覆する被覆体20とを備えるものである。
【0010】
ヘッド部5の一方の面は、植毛面52とされ、植毛面52には、複数の植毛穴54が形成されている。植毛穴54の数量は特に限定されず、例えば、20〜80個程度とされる。植毛面52は、複数の用毛を束ねた毛束が植毛穴54に植毛され、植毛部が形成される面である。なお、図1〜2において、毛束の図示は省略されている。」

イ 「【0017】
ネック部6の長さL2(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、20〜70mmとされる。
ネック部6の幅W3(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、3〜7mmとされる。
ネック部6の厚みT3(図2)は、本体の10の材質等を勘案して決定でき、例えば、3〜7mmとされる。
【0018】
ヘッド部5の長さL3(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、15〜50mmとされる。
ヘッド部5の幅W4(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、5〜15mmとされる。
ヘッド部5の厚みは、ネック部6の厚みT3と同様である。」

ウ 「【0023】
本体10は、硬質樹脂により一体成形されたものであり、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ強さ3000N/cm2超のものが挙げられ、好ましくは曲げ強度4000〜15000N/cm2のものが挙げられる。このような硬質樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられ、中でもPBTが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。」

エ 「【0027】
歯ブラシ1は、従来公知の二色成形方法に準じて製造される。
例えば、一次金型に硬質樹脂を射出して、本体10を成形し、次いで、二次金型内に本体10を設置し軟質樹脂を射出して、前記本体10に被覆部20を形成することで、ハンドル体が得られる。
次いで、得られたハンドル体の植毛面52に毛束を植設することで、歯ブラシ1が得られる。毛束を植設する方法としては、例えば、毛束を二つ折りにしその間に挟み込まれた平線を植毛穴54に打ち込むことにより毛束を植設する平線式植毛、毛束の下端を植毛部となる溶融樹脂中へ圧入して固定する熱融着法、毛束の下端を加熱して溶融塊を形成した後に金型中に溶融樹脂を注入して植毛部を成形するインモールド法等が挙げられる。」

オ 図1には、以下の事項が図示されている。


カ 前記アによると、歯ブラシ1は、ヘッド部5を備えているといえ、ヘッド部5は、植毛面52に複数の植毛穴54が形成されているといえる。

キ 前記ア及びエによると、複数の用毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を植毛穴54に打ち込むことで、毛束を植設しているといえる。

ク 前記アによると、ハンドル体には、ハンドル部2とヘッド部5とが形成されているから、ヘッド部5は、前記ウに記載されたハンドル体の本体10に用いられている硬質樹脂で形成されているといえる。

(2)引用発明4
前記ア〜クによると、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「植毛面52に複数の植毛穴54が形成されたヘッド部5を備え、複数の用毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴54に打ち込むことで、前記毛束を植設している歯ブラシ1において、
前記ヘッド部5を形成する硬質樹脂としては、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、中でも、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましく、
前記ヘッド部5の厚みは、3〜7mmとされ、
前記ヘッド部5の幅W4は、5〜15mmとされ、
前記ヘッド部5の長さL3は、15〜50mmとされる、歯ブラシ1」

5 引用文献5
特許異議申立人Aが提出した引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0007】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面を用いて具体的に説明する。以下の実施形態は本発明を何ら制限するものではない。
(実施形態1)図1は本発明のブラシの一実施形態である歯ブラシの部分断面を示している。図1においてこの歯ブラシは、ポリプロピレン製のブラシ本体1の植毛部2に植毛穴4が形成され、この植毛穴4に刷毛束3が植毛されてなっている。刷毛束3は、植毛穴4の直径より僅かに長い寸法に切断された平線10を挟んでU字形に折り返され、この刷毛束の折返し部6が植毛穴4に緊密に挿入され、刷毛束3に挟まれた状態で平線10の両端部が植毛穴4の壁面に食い込んで係止されている。
【0008】この平線10は図2により詳しく示すように、植毛穴4の直径より僅かに長く、両端部が植毛穴4の壁面に食い込んで係止できる長さLを有する真ちゅう製の、断面が概略長方形のリボン状線材であり、この平線の双方の側面11,11には長さL方向に沿ってそれぞれ2条の凹条(または溝)12…が形成されている。この平線10は、刷毛束の折返し部6に挟まれた状態で、高さHの方向が植毛穴4の中心軸と平行になるように植毛穴4に押し込まれて係止されている。従ってこの状態で刷毛束3は、平線の双方の側面11,11および折返し部6側の辺部13に密着し、かつ凹条12…と直交している。」

(2)「【0010】この歯ブラシは、平線10が植毛穴4の壁面に食い込んで係止され、しかも刷毛束3と接触する部分すなわち双方の側面11,11に凹条12…(凹凸パターン)が形成されているので、植毛穴4が応力を受けるなどにより変形しても平線10が抜け落ちないばかりでなく、平線10と刷毛束3との間の摩擦力が強く、折返し部6を植毛穴4に強く押し込んだ状態で刷毛束の緊密度が低下しても、平線10と刷毛との間の摩擦力によって刷毛が係止され、抜け落ちが防止される。」

6 引用文献6
特許異議申立人Aが提出した引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0026】
毛束を2つ折りにして打ち込むための平線の材質は、真鍮、ステンレスなどの金属の他、硬質プラスチックを用いることができる。使用する平線の幅や長さには特に制限はなく、任意に設定できる。また、平線の外面に平線の打ち込み方向に対して垂直となるような溝をつければ、植毛強度を向上させることも可能である。」

(2)「【0033】
図において、1はヘッド部、2は植毛面、3は植毛穴、4は毛束、5は毛束を構成する刷毛、6は平線であって、植毛穴3として短軸方向と長軸方向を有する長円形状の植毛穴を採用し、この長円形状の植毛穴3を植毛面2に千鳥状に配列するとともに、長円形状の長軸方向がヘッド部1の長手方向に対して垂直方向となるように穴の向きを配置したもので、毛束4を植毛穴3に2つ折りに固定するための平線6をヘッド部1の長手方向に対して垂直方向、すなわち長円形状をした植毛穴3の長軸方向に沿って打ち込んだものである。」

7 引用文献7
特許異議申立人Aが提出した引用文献7には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、ヘッド部に複数の植毛穴を有し、該植毛穴に、植毛穴径よりも長い平線を、該平線の底部が植毛穴深さの少なくとも1/2以上の深さまで達するように打ち込むことによって毛束を植毛した歯ブラシにおいて、植毛穴径Dに対する平線長さLと植毛穴径Dとの差の比率(L−D)/Dが0.033〜0.80であるように植毛された毛束を有することを特徴とするものである。
【0006】また、平線の略延長方向に沿った隣り合う植毛穴同士の直線間隙距離Pに対する平線長さLと植毛穴径Dとの差の1/2の比率(L−D)/2Pが0.025〜0.50であるように植毛された毛束を有することを特徴とするものである。
【0007】さらに、平線長さLと植毛穴径Dとの差(L−D)が0.10〜0.80mmであることを特徴とするものである。
【0008】上記のような構成とした場合、植毛穴に対して平線が長すぎもせず、また短かすぎもせず、最適な長さとなるので、平線打ち込み時の衝撃を小さくできるとともに、打ち込み衝撃の周囲への波及を小さくすることができる。このため、植毛機の植毛ピン折れや平線の曲がり、歯ブラシヘッド部の割れや白化などを防止することができるとともに、十分な抜毛強度を与えることができる。」

(2)「【0010】通常、この種の歯ブラシにおける歯ブラシヘッド部1の厚みは、ヘッド部の操作性と強度との兼ね合いから3.0〜5.0mm程度とされているのが普通であり、この歯ブラシヘッド部1に設けられた植毛穴2の深さHは、2.5〜4.0mm程度である。刷毛を束ねた毛束(図示せず)は、平線3によって2つ折りにされて植毛穴2に打ち込まれることにより植毛されるが、十分な抜毛強度を確保するには、2つに折り曲げて打ち込まれた毛束を平線3の底部3aと植毛穴2の底部との間で効果的に押さえ付けて固定する必要がある。そこで、これ実現するために、通常、平線3はその底部3aが植毛穴2の深さHの少なくとも1/2以上の深さに達するまで打ち込まれるのが一般的である。」

(3)「【0021】また、平線3の断面形状も長方形だけでなく凹凸をつけたり、ノッチ状にしたりして植毛穴2から抜けにくくするほか、植毛の際の切断線形状を工夫して抜けにくくすることも好ましい。」

8 引用文献8
特許異議申立人Aが提出した引用文献8には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の歯ブラシは、図1に示すような構成を採用した。すなわち、図1は本発明に係る歯ブラシの構造を説明するためのヘッド部の模式拡大平面図であって、請求項1記載の歯ブラシは、刷毛(図示略)を束ねた状態で2つ折りにし、平線1とともにヘッド部2の植毛穴3に打ち込んで固定するようにした平線植毛式の歯ブラシにおいて、前記平線1がヘッド部2の植毛穴3の植毛面における面積を略2分割するように打ち込まれ、該略二分割された植毛穴3における面積分割比率S1:S2が1:0.7〜1:1.3の範囲内となるようにしたものである。」

(2)「【0024】また、平線の断面形状も、長方形だけでなく、片面ないし両面に凹凸をつけたり、ノッチ状にしたりして植毛穴3から抜け難くするほか、植毛の際の切断線形状を工夫して抜け難くすることも好ましい。」

9 引用文献9
特許異議申立人Bが提出した引用文献9には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0004】従って、本発明の目的は、ブリッスルの感触がソフトで、磨き心地が良く、ブリッスルの歯間への到達感が高く、歯間の汚れ除去効果が高く、製造が容易な歯ブラシを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々検討を重ねた結果、タフトを植設する植毛孔の横断面積を特定値以下にし、植毛台の面積に対する該植毛孔の横断面積の総和の比率(タフトの植毛密度)を特定範囲にすることにより、上記目的を達成できることを知見した。本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、植毛孔が多数個設けられた植毛台における該植毛孔それぞれに、ブリッスルを束ねて構成されるタフトを植設した歯ブラシにおいて、前記植毛孔が横断面積1.2mm2以下の植毛孔であり、前記タフトの植毛密度〔(前記植毛孔の横断面積の総和)/(前記植毛台の面積)×100〕が25%〜35%である歯ブラシを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の歯ブラシを、その好ましい一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の歯ブラシ10は、図1及び図2に示すように、植毛孔11,11・・・・が多数個設けられた植毛台12における該植毛孔11,11・・・・それぞれに、ブリッスル13,13・・・・を束ねて構成されるタフト14,14・・・・を植設した歯ブラシにおいて、前記植毛孔が横断面積1.2mm2以下の植毛孔であり、前記タフト14の植毛密度〔(前記植毛孔11の横断面積Sの総和)/(前記植毛台の面積T)×100〕が25%〜35%である。植毛孔11の分散の程度は、好ましくは100mm2あたり30〜80個である。タフト14の植毛密度が25%未満であると、タフト14同士の間隔が離れすぎるので感触が物足りないものとなり、一方、該タフト14の植毛密度が35%超であると、密度過多により磨き心地が硬くなる。」

(2)前記(1)によると、引用文献9には、歯ブラシのタフトの植毛密度〔(植毛孔の横断面積の総和)/(植毛台の面積)×100〕を25%〜35%とすることにより、感触が物足りないものでなく、磨き心地が硬くないものにすることが記載されているといえる。

10 引用文献10
特許異議申立人Bが提出した引用文献10には、以下の事項が記載されている。なお、訳は、添付の抄訳文による。
(1)「The present invention relates generally to brushes and more particularly, to a brush exhibiting improved tuft retention by use of a grooved anchor wire.」(第1欄第8行〜第10行)[本発明は、一般に、ブラシ、より具体的には、溝付きアンカーワイヤを使用することによってタフト保持が改善されたブラシに関する。]

(2)「FIG.2 is cross-sectional view of the head of a conventional toothbrush showing the tufts anchored in the tuft holes. As FIG.2 illustrates, individual bristles are grouped together to form a tuft, looped (or bent in half) around a piece of anchor wire called a staple. The staple is driven into the tuft hole bringing the loop of the tuft to rest against the bottom of the tuft hole.」(第1欄第28行〜第34行)[図2は、従来の歯ブラシのヘッドの断面図であり、タフト穴に固定されたタフトを示している。図2は、個々の毛が一緒にされてタフトを形成し、ステープルと呼ばれるアンカーワイヤの一部の回りにループ状になっている(又は半分に曲がっている)ことを示している。ステープルは、ループ状のタフトをタフト穴の底に留めるように、タフト穴に打ち込まれている。]

(3)「As shown in FIGS. 4-8, an anchor wire of the present invention has a plurality of longitudinal grooves formed in at least one surface of the wire. As shown in FIG. 4, a first embodiment of an anchor wire 20 of the present invention has longitudinally extending grooves cut into the "top" surface 21.」(第2欄第32行〜第37行)[図4〜8に示すように、本発明のアンカーワイヤは、ワイヤの少なくとも1つの表面に形成された複数の長手方向の溝を、有している。図4に示されるように、本発明のアンカーワイヤ20の第1実施形態は、上面21に切り込まれた長手方向に延びた溝を有している。]

(4)「In use; as shown in FIG. 9, an anchor wire is cut into staples 50 which are driven into the tuft holes 52 with the grooves 54 transverse to the direction of the longitudinal axis of the bristles 56. The grooves 54 significantly increase the retention of the tufts 58 within the tuft holes 52 as shown, by way of example, in tests conducted for tuft retention in sample toothbrushes of two types of plastic (Propionate and Polypropylene) the result of which is set forth in Table I, below.」(第3欄第1行〜第9行)[使用に際しては、第9図に示されるように、アンカーワイヤは、毛56の長手方向軸の方向を横切る溝54を備えてタフト穴52に打ち込まれるステープル50に、切断される。溝54は、例えば2種類のプラスチック(プロピオネート及びポリプロピレン)のサンプル歯ブラシにおけるタフト保持について実施された試験において示されるように、タフト穴52内のタフト58の保持を著しく増加させており、その結果は以下の表1に示されている。]

(5)FIG.2には、以下の事項が図示されている。


(6)FIG.9には、以下の事項が図示されている。


(7)前記(1)〜(6)によると、引用文献10には、毛56が一緒にされて形成されたタフト58をアンカーワイヤによりヘッドのタフト穴52に打ち込んでいる歯ブラシにおいて、アンカーワイヤのタフト58を半分に曲げた部分と対向する面に溝54を設け、タフト穴52内のタフト58の保持を著しく増加させることが記載されているといえる。

第5 当審の判断
1 特許異議の申立てAについて
(1)引用文献1に記載された発明を主引用発明とした進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と引用発明1の対比
引用発明1の「植毛面12」、「植毛穴が開口された」、「ヘッド部11」及び「歯ブラシ10」は、それぞれ本件特許発明1の「植毛面」、「植毛穴が形成された」、「ヘッド部」及び「歯ブラシ」に相当する。
引用発明1の「毛束15」及び「刷毛を多数束ねた毛束15」は、それぞれ本件特許発明1の「毛束」及び「複数本の刷毛を束ねた毛束」に相当する。そして、引用発明1の「平線で刷毛を多数束ねた毛束15を2つ折りにして植毛し、前記毛束15が前記ヘッド部11に植設された」という事項は、平線による毛束の植毛方法における技術常識を踏まえると、2つ折りにした毛束15の間に挟み込まれた平線を植毛穴に打ち込むことにより、毛束15をヘッド部11の植毛穴に植設しているものと解されるから、本件特許発明1の「複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された」という事項に相当する。また、引用発明1の「平線」は、前記したように、2つ折りにした毛束15の間に挟み込まれるものと解されるから、毛束15の2つ折り部分に対向する面を有しているといえ、本件特許発明1の「前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有する」という事項と、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面を有する点において共通する。
引用発明1の「ポリプロピレン」は、本件特許発明1の「ポリプロピレン樹脂」に相当し、引用発明1の「前記ヘッド部11の形成素材は、ポリプロピレンが好まし」いという事項は、ヘッド部11をポリプロピレンで形成することを示唆するものであり、本件特許発明1の「前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され」るという事項に相当する。
引用発明1の「ヘッド部11の厚みt」、「ヘッド部11の幅方向Wの大きさ」及び「ヘッド部11の長さ方向Lの大きさ」は、それぞれ本件特許発明1の「ヘッド部の厚さ」、「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」に相当し、引用発明1の「前記ヘッド部11の厚みtは、2〜6mm程度であり、前記ヘッド部11の幅方向Wの大きさは、4〜15mm程度であり、前記ヘッド部11の長さ方向Lの大きさは、6〜22mm程度である」という事項と、本件特許発明1の「前記ヘッド部の厚さは、3mm以上3.5mm以下であり、前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下であり、前記ヘッド部の長さは、15mm以上27mm以下であ」るという事項とは、ヘッド部の厚さ、ヘッド部の幅及びヘッド部の長さの範囲が特定されている点において共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、
[一致点1]
植毛面に複数の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され、
前記ヘッド部の厚さ、前記ヘッド部の幅及び前記ヘッド部の長さの範囲が特定されており、
前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面を有する、歯ブラシ。

以下の点で相違する。
[相違点1]
本件特許発明1は、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するのに対し、引用発明1は、ヘッド部11の厚みtが「2〜6mm程度」であり、ヘッド部11の幅方向Wの大きさが「4〜15mm程度」であり、ヘッド部11の長さ方向Lの大きさが「6〜22mm程度」であり、植毛面12の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が不明であり、平線は、毛束15の二つ折り部分に対向する面に、前記のような脆弱部を有しない点。

(イ)判断
a 相違点1について
引用発明1は、ヘッド部11の形成素材として、ポリプロピレンが好ましく、ヘッド部11の厚みtを、2〜6mm程度とするものであるが、一般に、ヘッド部の厚みは、ヘッド部の強度に影響を与えるものであって、ヘッド部を形成する材料の硬度が変われば、選択されるヘッド部の厚みも異なるものになると解されるところ、引用発明1において、ヘッド部11の形成素材を、好ましいとされているポリプロピレンとした際、ヘッド部11の厚みtを2〜6mm程度の範囲のうち、どの程度の値とするかは、引用文献1の記載をみても不明である。そして、引用文献1には、ヘッド部11の厚みtとして、2〜6mm程度の範囲のうち、特に3mm以上3.5mm以下の範囲を選択することの動機付けとなるような記載も見あたらない。
また、引用文献5の記載事項(前記第4 5(1)(2)参照。)、引用文献6の記載事項(前記第4 6(1)(2)参照。)、引用文献7の記載事項(前記第4 7(2)(3)参照。)、引用文献8の記載事項(前記第4 8(1)(2)参照。)によると、刷毛を束ねた毛束を平線によりヘッド部の植毛穴に植設する歯ブラシにおいて、刷毛が抜け落ちないように、平線の毛束と対向する面に溝、凹凸、ノッチ等を設けることは、本件特許の出願前から周知の事項であるといえるが、引用発明1の平線の毛束と対向する面に、前記周知の事項にならい、溝を設けたとしても、これにより、平線が柔らかくなり、平線打ち込み時に生じるヘッド部への衝撃が緩和されるため、ヘッド部の厚さを薄くすることができるという技術思想が、引用文献1、5〜8のいずれにも何ら記載も示唆もされていない以上、引用発明1のヘッド部11の厚みtとして、2〜6mm程度の範囲のうち、特に3mm以上3.5mm以下の範囲を選択することまで、当業者といえども、容易に想到できるものではない。
そして、本件特許発明1は、硬度が低く粘弾性に優れ安価なポリプロピレンでヘッド部が形成され、口腔内操作性に優れたヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下、ヘッド部の幅が12mm以上17mm以下、ヘッド部の長さが15mm以上27mm以下、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下の歯ブラシであっても、平線の毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより、植毛時において、植毛穴に対して平線が打ち込まれたときの衝撃が、平線で吸収されて、平線からヘッド部に伝わる衝撃が緩和され、また、歯ブラシの使用時において、平線がヘッド部の変形に合わせて変形しやすくなるため、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができるという作用効果を生じさせる(本件特許の明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0003】、【0005】〜【0006】、【0009】、【0010】、【0014】参照。)ものであって、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項等が相互に関連して、顕著な作用効果を奏するものである。一方、引用文献1、5〜8には、ヘッド部をポリプロピレン樹脂により形成すること、ヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下であること、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下であること、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有すること等を併せ備えることによる作用効果は何ら示唆されていないから、本件特許発明1の前記した顕著な作用効果は、引用発明1及び前記周知の事項の奏する作用効果から、当業者といえども予測できるものではない。

b 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第15ページ下から11行〜第16ページ第16行において、引用文献1の寸法値が記載された図2(4)をスキャナーで読み取り、CADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛面の面積と、引用文献1の段落【0039】に記載された植毛穴の直径から算出した植毛穴の面積を用いて、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合を約26%と算出し、本件特許発明1の該割合が27%以下であるという事項と、引用文献1に記載された発明の該割合は、同一である旨を主張している。
しかしながら、引用文献1に掲載された図は、特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ、一般に、特許出願の願書に添付された図面は、明細書の内容を補完し、特許を受けようとする発明の技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。すると、引用文献1の図2(4)に毛束間のピッチ等の寸法が図示されているとしても、そのことをもって、図2(4)がヘッド部の形状まで正確に記載されている図面であるとはいえず、特許異議申立人AがCADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛面の面積が、必ずしも正確なものであるとはいえない。
また、仮に、図2(4)の図示内容から、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が約26%であることが把握できるとしても、その場合、ヘッド部の幅は、図2(4)にヘッド部の幅方向両端にある2つの小口径毛束R2の中心間の距離が7.0mmと示されていることを考慮すると、この7.0mmに、該2つの小口径毛束R2のそれぞれの半径を加え(すなわち、小口径毛束R2の半径の2倍である直径1.6mm(前記第4 1(1)カ参照。)を加え)、さらに縁幅(0.5〜1mm程度)の2倍(1.0〜2.0mm程度)を加えたものと解され、7.0mm+1.6mm+1.0〜2.0mm程度となるから、合計9.6mm〜10.6mm程度となる。そして、このヘッド部の幅は、本件特許発明1の「前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下」であるという事項の範囲外であるところ、仮にこのヘッド部の幅を12mm以上17mmとしたとき、前記割合がどのような値になるかは不明といわざるを得ない。
したがって、仮に、引用文献1において、図2(4)の図示内容から、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が約26%であることが把握できるとしても、その場合のヘッド部の幅は、9.6mm〜10.6mm程度であると解さざるを得ない。
そして、特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第15ページ第7行〜第15行において、引用文献1の段落【0026】、【0027】の記載から、ヘッド部の幅は4〜15mm程度であるとしているが、引用文献1の段落【0026】、【0027】から把握されるヘッド部の幅(4〜15mm程度)と、引用文献1の図2(4)の図示内容から把握されるヘッド部の幅(9.6mm〜10.6mm程度)は異なるため、これらの記載を総合して、引用文献1に、ヘッド部の幅が4〜15mmであり、前記割合が約26%の歯ブラシが記載されていると認定することは不適切である。

また、特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第16ページ下から8行〜下から5行において、「このように溝を設けることで打ち込み抵抗が小さくても抜毛強度を維持できることから、ヘッド部の割れや白化を防止できる点についても、甲第7号証に記載されているとおり周知技術である。」と主張している。
しかしながら、引用文献7には、前記第4 7(1)によると、植毛穴径Dに対する平線長さLと植毛穴径Dとの差の比率(L−D)/Dを特定の範囲とし、植毛穴に対して平線が長すぎもせず、また短かすぎもせず、最適な長さとすることにより、平線打ち込み時の衝撃を小さくでき、歯ブラシヘッド部の割れや白化などを防止できることが記載されているのみであって、平線に設ける溝と、歯ブラシヘッド部の割れや白化を防止できることとを関連づける記載はない。したがって、引用文献7は、平線に溝を設けることでヘッド部の割れや白化を防止できる点が、特許異議申立人Aが主張するように周知技術であることを裏付けるものではない。

したがって、特許異議申立人Aの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明1及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件特許発明1は、当業者が、引用発明1及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2〜4について
請求項2〜4は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件特許発明2〜4も、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するという発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2〜4は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明1及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用文献2に記載された発明を主引用発明とした進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と引用発明2の対比
引用発明2の「10〜40穴程度の植毛穴」は、本件特許発明1の「複数の植毛穴」に相当する。
引用発明2の「平線で複数本の刷毛を束ねた毛束を2つ折りにして植毛し、前記毛束が前記ヘッド部の植毛面に固定された」という事項は、平線による毛束の植毛方法における技術常識を踏まえると、2つ折りにした毛束の間に挟み込まれた平線を植毛面の植毛穴に打ち込むことにより、毛束を植毛面の植毛穴に植設しているものと解されるから、本件特許発明1の「複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された」という事項に相当する。また、引用発明2の「平線」は、前記したように、2つ折りにした毛束の間に挟み込まれるものと解されるから、毛束の2つ折り部分に対向する面を有しているといえ、本件特許発明1の「前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有する」という事項と、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面を有する点において共通する。
引用発明2の「ポリプロピレン」は、本件特許発明1の「ポリプロピレン樹脂」に相当し、引用発明2の「前記ヘッド部の構成樹脂は、ポリプロピレンが好まし」いという事項は、ヘッド部をポリプロピレンで形成することを示唆するものであり、本件特許発明1の「前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され」るという事項に相当する。
引用発明2の「ヘッド部の幅方向の大きさ」及び「ヘッド部の長手方向の大きさ」は、それぞれ本件特許発明1の「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」に相当し、引用発明2の「前記ヘッド部の厚さは、2〜6mm程度が望ましく、前記ヘッド部の幅方向の大きさは、4〜16mm程度であり、前記ヘッド部の長手方向の大きさは、6〜38mm程度である」という事項と、本件特許発明1の「前記ヘッド部の厚さは、3mm以上3.5mm以下であり、前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下であり、前記ヘッド部の長さは、15mm以上27mm以下であ」るという事項とは、ヘッド部の厚さ、ヘッド部の幅及びヘッド部の長さの範囲が特定されている点において共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明2とは、以下の点で一致し、
[一致点2]
植毛面に複数の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され、
前記ヘッド部の厚さ、前記ヘッド部の幅及び前記ヘッド部の長さの範囲が特定されており、
前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面を有する、歯ブラシ。

以下の点で相違する。
[相違点2]
本件特許発明1は、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するのに対し、引用発明2は、ヘッド部の厚さが「2〜6mm程度が望ましく」、ヘッド部の幅方向の大きさが「4〜16mm程度」であり、ヘッド部の長手方向の大きさが「6〜38mm程度」であり、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が不明であり、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に、前記のような脆弱部を有しない点。

(イ)判断
a 相違点2について
引用発明2は、ヘッド部の構成樹脂として、ポリプロピレンが好ましく、ヘッド部の厚さは、2〜6mm程度が望ましいとするものであるが、一般に、ヘッド部の厚さは、ヘッド部の強度に影響を与えるものであって、ヘッド部を形成する材料の硬度が変われば、選択されるヘッド部の厚さも異なるものになると解されるところ、引用発明2において、ヘッド部の構成樹脂材を、好ましいとされているポリプロピレンとした際、ヘッド部の厚さを望ましいとされている2〜6mm程度の範囲のうち、どの程度の値とするかは、引用文献2の記載をみても不明である。そして、引用文献2には、ヘッド部の厚さとして、2〜6mm程度の範囲のうち、特に3mm以上3.5mm以下の範囲を選択することの動機付けとなるような記載も見あたらない。
また、前記(1)ア(イ)aに示したように、引用文献5〜8の記載事項によると、刷毛を束ねた毛束を平線によりヘッド部の植毛穴に植設する歯ブラシにおいて、刷毛が抜け落ちないように、平線の毛束と対向する面に溝、凹凸、ノッチ等を設けることは、本件特許の出願前から周知の事項であるといえるが、引用発明2の平線の毛束と対向する面に、前記周知の事項にならい、溝を設けたとしても、これにより、平線が柔らかくなり、平線打ち込み時に生じるヘッド部への衝撃が緩和されるため、ヘッド部の厚さを薄くすることができるという技術思想が、引用文献2、5〜8のいずれにも何ら記載も示唆もされていない以上、引用発明2のヘッド部の厚さとして、2〜6mm程度の範囲のうち、特に3mm以上3.5mm以下の範囲を選択することまで、当業者といえども、容易に想到できるものではない。
そして、前記(1)ア(イ)aに示したように、本件特許発明1は、硬度が低く粘弾性に優れ安価なポリプロピレンでヘッド部が形成され、口腔内操作性に優れたヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下、ヘッド部の幅が12mm以上17mm以下、ヘッド部の長さが15mm以上27mm以下、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下の歯ブラシであっても、平線の毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより、植毛時において、植毛穴に対して平線が打ち込まれたときの衝撃が、平線で吸収されて、平線からヘッド部に伝わる衝撃が緩和され、また、歯ブラシの使用時において、平線がヘッド部の変形に合わせて変形しやすくなるため、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができるという作用効果を生じさせるものであって、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項等が相互に関連して、顕著な作用効果を奏するものである。一方、引用文献2、5〜8には、ヘッド部をポリプロピレン樹脂により形成すること、ヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下であること、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下であること、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有すること等を併せ備えることによる作用効果は何ら示唆されていないから、本件特許発明1の前記した顕著な作用効果は、引用発明2及び前記周知の事項の奏する作用効果から、当業者といえども予測できるものではない。

b 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第19ページ第12行〜第20ページ第18行において、引用文献2の寸法値が記載された図7(a)、図11(a)、図13(a)をスキャナーで読み取り、CADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛面の面積と、引用文献2の段落[0099]、[0103]、[0105]に記載された植毛穴の直径から算出した植毛穴の面積を用いて、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合を、それぞれ25.4%、26.3%、25.6%と算出し、さらに、毛束列の数を増やしてヘッド部の幅が12mm以上となるように拡張させた場合も、該割合が27%以下又は27%付近の値になることを理由に、本件特許発明1の該割合が27%以下であるという事項と、引用文献2に記載された発明の該割合は、同一である旨を主張している。
しかしながら、引用文献2に掲載された図は、特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ、前記(1)ア(イ)bに記載したように、一般に、特許出願の願書に添付された図面は、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。すると、引用文献2の図7(a)、図11(a)、図13(a)に植毛穴3間のピッチ等の寸法が図示されているとしても、そのことをもって、図7(a)、図11(a)、図13(a)がヘッド部の形状まで正確に記載されている図面であるとはいえず、特許異議申立人AがCADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛面の面積が、必ずしも正確なものであるとはいえない。
また、仮に、図7(a)、図11(a)、図13(a)の図示内容から、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合がそれぞれ25.4%、26.3%、25.6%であることが把握できるとしても、その場合、ヘッド部の幅は、図7(a)に対応する図6(a)によると、8.2mmであり、図11(a)に対応する図10(a)によると、8.7mmであり、図13(a)に対応する図12(a)によると、8.5mmであるといえる。そして、これらのヘッド部の幅は、本件特許発明1の「前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下」であるという事項と異なるものであるところ、仮にこれらのヘッド部の幅を12mm以上17mmとしたとき、前記割合がどのような値になるかは不明といわざるを得ない。
さらに、ヘッド部の厚さは、図7(a)に対応する図6(b)及び図7(c)によると、3.9〜4.638mmであり、図11(a)に対応する図10(b)及び図11(c)によると、4.5〜4.959mmであり、図13(a)に対応する図12(b)及び図13(c)によると、4.5〜4.954mmであるといえ、これらのヘッド部の厚さは、本件特許発明1の「前記ヘッド部の厚さは、3mm以上3.5mm以下」であるという事項と異なるものである。
したがって、仮に、引用文献2において、図7(a)、図11(a)、図13(a)の図示内容から、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合がそれぞれ25.4%、26.3%、25.6%であることが把握できるとしても、その場合のヘッド部の幅は、それぞれ8.2mm、8.7mm、8.5mmであり、ヘッド部の厚さは、それぞれ3.9〜4.638mm、4.5〜4.959mm、4.5〜4.954mmであると解さざるを得ない。
そして、特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第18ページ第16行〜第33行において、引用文献2の段落[0046]、[0055]、[0056]の記載から、ヘッド部の厚さは2〜6mmであり、ヘッド部の幅は4〜14mm程度(植毛穴とヘッド部外周縁との距離が0.5mmのとき)あるいは6〜16mm程度(同距離が1.5mmのとき)であるとしているが、引用文献2の段落[0046]、[0055]、[0056]から把握されるヘッド部の厚さ(2〜6mm)及びヘッド部の幅(4〜14mm程度あるいは6〜16mm程度)と、引用文献2の図6〜7、図10〜11、図12〜13の図示内容から把握されるヘッド部の厚さ(それぞれ3.9〜4.638mm、4.5〜4.959mm、4.5〜4.954mm)及びヘッド部の幅(それぞれ8.2mm、8.7mm、8.5mm)はそれぞれ異なるため、これらの記載を総合して、引用文献2に、ヘッド部の厚さが2〜6mmであり、ヘッド部の幅が4〜14mm程度あるいは6〜16mm程度であり、前記割合が25.4%、26.3%又は25.6%の歯ブラシが記載されていると認定することは不適切である。

また、特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第20ページ下から6行〜下から3行において、「このように溝を設けることで打ち込み抵抗が小さくても抜毛強度を維持できることから、ヘッド部の割れや白化を防止できる点についても、甲第7号証に記載されているとおり周知技術である。」と主張しているが、この点については、前記(1)ア(イ)bに記載したとおりである。

したがって、特許異議申立人Aの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明2及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件特許発明1は、当業者が、引用発明2及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2〜4について
請求項2〜4は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件特許発明2〜4も、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するという発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2〜4は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明2及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(3)引用文献3に記載された発明を主引用発明とした進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と引用発明3の対比
引用発明3の「植毛面20」、「植毛穴22」、「ヘッド部2」、「用毛」、「用毛が束ねられた毛束」及び「歯ブラシ1」は、それぞれ本件特許発明1の「植毛面」、「植毛穴」、「ヘッド部」、「刷毛」、「刷毛を束ねた毛束」及び「歯ブラシ」に相当する。
引用発明3の「前記毛束を植設している」という事項は、毛束を平線が打ち込まれる植毛穴22に植設しているものと解されるから、本件特許発明1の「前記毛束が前記植毛穴に植設された」という事項に相当する。また、引用発明3の「平線」は、毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれるものであるから、毛束の二つ折り部分に対向する面を有しているといえ、本件特許発明1の「前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有する」という事項と、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面を有する点において共通する。
引用発明3の「ポリプロピレン(PP)」は、本件特許発明1の「ポリプロピレン樹脂」に相当し、引用発明3の「前記ヘッド部2の材質としては、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、中でも、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が好まし」いという事項と、本件特許発明1の「前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され」るという事項とは、ヘッド部は、樹脂により形成される点において共通する。
引用発明3の「ヘッド部2の厚さT1」、「ヘッド部2の幅W1」及び「ヘッド部2の長さL3」は、それぞれ本件特許発明1の「ヘッド部の厚さ」、「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」に相当し、引用発明3の「前記ヘッド部2の厚さT1は、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましく、前記ヘッド部2の幅W1は、5〜13mmとされ、前記ヘッド部2の長さL3は、10〜26mmの範囲で適宜決定される」という事項と、本件特許発明1の「前記ヘッド部の厚さは、3mm以上3.5mm以下であり、前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下であり、前記ヘッド部の長さは、15mm以上27mm以下であ」るという事項とは、ヘッド部の厚さ、ヘッド部の幅及びヘッド部の長さの範囲が特定されている点において共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明3とは、以下の点で一致し、
[一致点3]
植毛面に複数の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部は、樹脂により形成され、
前記ヘッド部の厚さ、前記ヘッド部の幅及び前記ヘッド部の長さの範囲が特定されており、
前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面を有する、歯ブラシ。

以下の点で相違する。
[相違点3]
本件特許発明1は、ヘッド部は「ポリプロピレン樹脂により形成され」、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するのに対し、引用発明3は、ヘッド部2を形成するポリプロピレン(PP)は選択肢の一つであり、ヘッド部2の厚さT1が「1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましく」、ヘッド部2の幅W1が「5〜13mm」とされ、ヘッド部2の長さL3が「10〜26mmの範囲で適宜決定され」、植毛面20の面積に対する植毛穴22の総開口面積の割合が不明であり、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に、前記のような脆弱部を有しない点。

(イ)判断
a 相違点3について
引用発明3は、ヘッド部2の材質としては、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、中でも、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が好ましいとされ、ヘッド部2の厚さT1は、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましいとされるものであるが、引用文献3の表1(前記第4 3(1)キ参照。)において、材質としてポリプロピレン(PP)を用いた実験例6は、折れ強度が×となっているため、引用発明3のヘッド部2の材質として、ポリプロピレン(PP)は積極的には採用されないものと解される。また、一般に、ヘッド部の厚さは、ヘッド部の強度に影響を与えるものであって、ヘッド部を形成する材料の硬度が変われば、選択されるヘッド部の厚さも異なるものになると解されるところ、引用発明3のヘッド部2の材質として、複数の選択肢の中から、仮にポリプロピレン(PP)を選択したとしても、その際のヘッド部2の厚さT1を、1.5〜5mmあるいは2〜3mmの範囲のうち、どの程度の値とするかは、引用文献3の記載をみても不明である。そして、引用文献3には、ヘッド部2の厚さT1として、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましいとされているところを、それに代えて、特に3mm以上3.5mm以下の範囲とすることの動機付けとなるような記載も見あたらない。
また、前記(1)ア(イ)aに示したように、引用文献5〜8の記載事項によると、刷毛を束ねた毛束を平線によりヘッド部の植毛穴に植設する歯ブラシにおいて、刷毛が抜け落ちないように、平線の毛束と対向する面に溝、凹凸、ノッチ等を設けることは、本件特許の出願前から周知の事項であるといえるが、引用発明3の平線の毛束と対向する面に、前記周知の事項にならい、溝を設けたとしても、これにより、平線が柔らかくなり、平線打ち込み時に生じるヘッド部への衝撃が緩和されるため、ヘッド部の厚さを薄くすることができるという技術思想が、引用文献3、5〜8のいずれにも何ら記載も示唆もされていない以上、引用発明3のヘッド部2の材質をポリプロピレン(PP)とした上で、さらに、ヘッド部2の厚さT1として、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましいとされているところを、それに代えて、特に3mm以上3.5mm以下の範囲とすることまで、当業者といえども、容易に想到できるものではない。
そして、前記(1)ア(イ)aに示したように、本件特許発明1は、硬度が低く粘弾性に優れ安価なポリプロピレンでヘッド部が形成され、口腔内操作性に優れたヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下、ヘッド部の幅が12mm以上17mm以下、ヘッド部の長さが15mm以上27mm以下、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下の歯ブラシであっても、平線の毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより、植毛時において、植毛穴に対して平線が打ち込まれたときの衝撃が、平線で吸収されて、平線からヘッド部に伝わる衝撃が緩和され、また、歯ブラシの使用時において、平線がヘッド部の変形に合わせて変形しやすくなるため、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができるという作用効果を生じさせるものであって、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項が相互に関連して、顕著な作用効果を奏するものである。一方、引用文献3、5〜8には、ヘッド部をポリプロピレン樹脂により形成すること、ヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下であること、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下であること、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有すること等を併せ備えることによる作用効果は何ら示唆されていないから、本件特許発明1の前記した顕著な作用効果は、引用発明3及び前記周知の事項の奏する作用効果から、当業者といえども予測できるものではない。

b 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第23ページ第6行〜第30行において、引用文献3の図1をスキャナーで読み取り、CADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛穴と植毛面の各面積を用いて、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合を、約19%と算出し、本件特許発明1の該割合が27%以下であるという事項と、引用文献3に記載された発明の該割合は、同一である旨を主張している。
しかしながら、引用文献3に掲載された図は、特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ、前記(1)ア(イ)bに記載したように、一般に、特許出願の願書に添付された図面は、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。すると、引用文献3の図1にヘッド部の長さL3やヘッド部2の幅W1等を示す矢印(寸法補助線)が図示されているとしても、そのことをもって、図1がヘッド部2の形状や植毛穴22の大きさまで正確に記載されている図面であるとはいえず、特許異議申立人AがCADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛穴と植毛面の各面積が正確なものであるとはいえない。

また、特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第24ページ第7行〜第10行において、「このように溝を設けることで打ち込み抵抗が小さくても抜毛強度を維持できることから、ヘッド部の割れや白化を防止できる点についても、甲第7号証に記載されているとおり周知技術である。」と主張しているが、この点については、前記(1)ア(イ)bに記載したとおりである。

したがって、特許異議申立人Aの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明3及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件特許発明1は、当業者が、引用発明3及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2〜4について
請求項2〜4は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件特許発明2〜4も、ヘッド部は「ポリプロピレン樹脂により形成され」、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するという発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2〜4は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明3及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(4)引用文献4に記載された発明を主引用発明とした場合
ア 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と引用発明4の対比
引用発明4の「植毛面52」、「植毛穴54」、「ヘッド部5」、「用毛」、「複数の用毛」及び「歯ブラシ1」は、それぞれ本件特許発明1の「植毛面」、「植毛穴」、「ヘッド部」、「刷毛」、「複数本の刷毛」及び「歯ブラシ」に相当する。
引用発明4の「前記毛束を植設している」という事項は、毛束を平線が打ち込まれる植毛穴54に植設しているものと解されるから、本件特許発明1の「前記毛束が前記植毛穴に植設された」という事項に相当する。また、引用発明4の「平線」は、毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれるものであるから、毛束の二つ折り部分に対向する面を有しているといえ、本件特許発明1の「前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有する」という事項と、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面を有する点において共通する。
引用発明4の「ポリプロピレン(PP)」は、本件特許発明1の「ポリプロピレン樹脂」に相当し、引用発明4の「前記ヘッド部5を形成する硬質樹脂としては、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、中でも、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好まし」いという事項と、本件特許発明1の「前記ヘッド部は、ポリプロピレン樹脂により形成され」るという事項とは、ヘッド部は、樹脂により形成される点において共通する。
引用発明4の「ヘッド部5の厚み」、「ヘッド部5の幅W4」及び「ヘッド部5の長さL3」は、それぞれ本件特許発明1の「ヘッド部の厚さ」、「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」に相当し、引用発明4の「前記ヘッド部5の厚みは、3〜7mmとされ、前記ヘッド部5の幅W4は、5〜15mmとされ、前記ヘッド部5の長さL3は、15〜50mmとされる」という事項と、本件特許発明1の「前記ヘッド部の厚さは、3mm以上3.5mm以下であり、前記ヘッド部の幅は、12mm以上17mm以下であり、前記ヘッド部の長さは、15mm以上27mm以下であ」るという事項とは、ヘッド部の厚さ、ヘッド部の幅及びヘッド部の長さの範囲が特定されている点において共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明4とは、以下の点で一致し、
[一致点4]
植毛面に複数の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部は、樹脂により形成され、
前記ヘッド部の厚さ、前記ヘッド部の幅及び前記ヘッド部の長さの範囲が特定されており、
前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面を有する、歯ブラシ。

以下の点で相違する。
[相違点4]
本件特許発明1は、ヘッド部は「ポリプロピレン樹脂により形成され」、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するのに対し、引用発明4は、ヘッド部5を形成するポリプロピレン(PP)は選択肢の一つであり、ヘッド部5の厚みが「3〜7mm」とされ、ヘッド部5の幅W4が「5〜15mm」とされ、ヘッド部5の長さL3が「15〜50mm」とされ、植毛面52の面積に対する植毛穴54の総開口面積の割合が不明であり、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に、前記のような脆弱部を有しない点。

(イ)判断
a 相違点4について
引用発明4は、ヘッド部5を形成する硬質樹脂としては、ポリプロピレン(PP)等が挙げられ、中でも、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましいとされ、ヘッド部5の厚みは、3〜7mmとされるものであるが、一般に、ヘッド部の厚さは、ヘッド部の強度に影響を与えるものであって、ヘッド部を形成する材料の硬度が変われば、選択されるヘッド部の厚みも異なるものになると解されるところ、引用発明4において、ヘッド部2の材質として、複数の選択肢の中から、仮にポリプロピレン(PP)を選択したとしても、その際のヘッド部5の厚みを、3〜7mmの範囲のうち、どの程度の値とするかは、引用文献4の記載をみても不明である。そして、引用文献4には、ヘッド部5の厚みとして、3〜7mmの範囲のうち、特に3mm以上3.5mm以下の範囲を選択することの動機付けとなるような記載も見あたらない。
また、前記(1)ア(イ)aに示したように、引用文献5〜8の記載事項によると、刷毛を束ねた毛束を平線によりヘッド部の植毛穴に植設する歯ブラシにおいて、刷毛が抜け落ちないように、平線の毛束と対向する面に溝、凹凸、ノッチ等を設けることは、本件特許の出願前から周知の事項であるといえるが、引用発明4の平線の毛束と対向する面に、前記周知の事項にならい、溝を設けたとしても、これにより、平線が柔らかくなり、平線打ち込み時に生じるヘッド部への衝撃が緩和されるため、ヘッド部の厚さを薄くすることができるという技術思想が、引用文献4〜8のいずれにも何ら記載も示唆もされていない以上、引用発明4のヘッド部5を形成する硬質樹脂をポリプロピレン(PP)とした上で、さらに、ヘッド部5の厚みとして、3〜7mmの範囲のうち、特に3mm以上3.5mm以下の範囲を選択することまで、当業者といえども、容易に想到できるものではない。
そして、前記(1)ア(イ)aに示したように、本件特許発明1は、硬度が低く粘弾性に優れ安価なポリプロピレンでヘッド部が形成され、口腔内操作性に優れたヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下、ヘッド部の幅が12mm以上17mm以下、ヘッド部の長さが15mm以上27mm以下、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下の歯ブラシであっても、平線の毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより、植毛時において、植毛穴に対して平線が打ち込まれたときの衝撃が、平線で吸収されて、平線からヘッド部に伝わる衝撃が緩和され、また、歯ブラシの使用時において、平線がヘッド部の変形に合わせて変形しやすくなるため、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができるという作用効果を生じさせるものであって、本件特許発明1の相違点4に係る発明特定事項が相互に関連して、顕著な作用効果を奏するものである。一方、引用文献4〜8には、ヘッド部をポリプロピレン樹脂により形成すること、ヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下であること、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下であること、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有すること等を併せ備えることによる作用効果は何ら示唆されていないから、本件特許発明1の前記した顕著な作用効果は、引用発明4及び前記周知の事項の奏する作用効果から、当業者といえども予測できるものではない。

b 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第26ページ第16行〜第27ページ第3行において、引用文献4の図1をスキャナーで読み取り、CADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛穴と植毛面の各面積を用いて、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合を、約24%と算出し、本件特許発明1の該割合が27%以下であるという事項と、引用文献4に記載された発明の該割合は、同一である旨を主張している。
しかしながら、引用文献4に掲載された図は、特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ、前記(1)ア(イ)bに記載したように、一般に、特許出願の願書に添付された図面は、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。すると、引用文献4の図1にヘッド部5の長さL3やヘッド部5の幅W4等を示す矢印(寸法補助線)が図示されているとしても、そのことをもって、図1がヘッド部5の形状や植毛穴54の大きさまで正確に記載されている図面であるとはいえず、特許異議申立人AがCADソフトの面積自動算出機能により入手した植毛穴と植毛面の各面積が正確なものであるとはいえない。

また、特許異議申立人Aは、その特許異議申立書の第27ページ第15行〜第18行において、「このように溝を設けることで打ち込み抵抗が小さくても抜毛強度を維持できることから、ヘッド部の割れや白化を防止できる点についても、甲第7号証に記載されているとおり周知技術である。」と主張しているが、この点については、前記(1)ア(イ)bに記載したとおりである。

したがって、特許異議申立人Aの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件特許発明1の相違点4に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明4及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件特許発明1は、当業者が、引用発明4及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2〜4について
請求項2〜4は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件特許発明2〜4も、ヘッド部は「ポリプロピレン樹脂により形成され」、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するという発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2〜4は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明4及び引用文献5〜引用文献8に記載されるような周知の事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

2 特許異議の申立てBについて
(1)進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と引用発明3の対比
本件特許発明1と引用発明3とを対比すると、前記1(3)ア(ア)に示したように、以下の点で一致し、
[一致点3]
植毛面に複数の植毛穴が形成されたヘッド部を備え、複数本の刷毛を束ねた毛束を二つ折りにしてその間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことで、前記毛束が前記植毛穴に植設された歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部は、樹脂により形成され、
前記ヘッド部の厚さ、前記ヘッド部の幅及び前記ヘッド部の長さの範囲が特定されており、
前記平線は、前記毛束の二つ折り部分に対向する面を有する、歯ブラシ。

以下の点で相違する。
[相違点3]
本件特許発明1は、ヘッド部は「ポリプロピレン樹脂により形成され」、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するのに対し、引用発明3は、ヘッド部2を形成するポリプロピレン(PP)は選択肢の一つであり、ヘッド部2の厚さT1が「1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましく」、ヘッド部2の幅W1が「5〜13mm」とされ、ヘッド部2の長さL3が「10〜26mmの範囲で適宜決定され」、植毛面20の面積に対する植毛穴22の総開口面積の割合が不明であり、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に、前記のような脆弱部を有しない点。

(イ)判断
a 相違点3について
前記1(3)ア(イ)aに示したように、引用発明3のヘッド部2の材質として、ポリプロピレン(PP)は積極的には採用されないものと解され、仮にポリプロピレン(PP)を選択したとしても、その際のヘッド部2の厚さT1を、1.5〜5mmあるいは2〜3mmの範囲のうち、どの程度の値とするかは、引用文献3の記載をみても不明である上、引用文献3には、ヘッド部2の厚さT1として、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましいとされているところを、それに代えて、特に3mm以上3.5mm以下の範囲とすることの動機付けとなるような記載も見あたらない。
また、引用文献9には、前記第4 9(2)に示したように、歯ブラシのタフトの植毛密度〔(植毛孔の横断面積の総和)/(植毛台の面積)×100〕を25%〜35%とすることにより、感触が物足りないものでなく、磨き心地が硬くないものにすることが記載され、引用文献10には、前記第4 10(7)に示したように、毛56が一緒にされて形成されたタフト58をアンカーワイヤによりヘッドのタフト穴52に打ち込んでいる歯ブラシにおいて、アンカーワイヤのタフト58を半分に曲げた部分と対向する面に溝54を設け、タフト穴52内のタフト58の保持を著しく増加させることが記載されているといえるが、引用発明3の植毛面20の面積に対する植毛穴22の総開口面積の割合を、引用文献9に記載された前記の事項に基づいて、25%〜35%とするとともに、引用発明3の平線の毛束と対向する面に、引用文献10に記載された前記の事項に基づいて、溝を設けたとしても、該溝を設けることにより、平線が柔らかくなり、平線打ち込み時に生じるヘッド部への衝撃が緩和されるため、ヘッド部の厚さを薄くすることができるという技術思想が、引用文献3、9、10のいずれにも何ら記載も示唆もされていない以上、引用発明3のヘッド部2の材質をポリプロピレン(PP)とした上で、さらに、ヘッド部2の厚さT1として、1.5〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましいとされているところを、それに代えて、特に3mm以上3.5mm以下の範囲とすることまで、当業者といえども、容易に想到できるものではない。
そして、前記1(1)ア(イ)aに示したように、本件特許発明1は、硬度が低く粘弾性に優れ安価なポリプロピレンでヘッド部が形成され、口腔内操作性に優れたヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下、ヘッド部の幅が12mm以上17mm以下、ヘッド部の長さが15mm以上27mm以下、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下の歯ブラシであっても、平線の毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより、植毛時において、植毛穴に対して平線が打ち込まれたときの衝撃が、平線で吸収されて、平線からヘッド部に伝わる衝撃が緩和され、また、歯ブラシの使用時において、平線がヘッド部の変形に合わせて変形しやすくなるため、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができるという作用効果を生じさせるものであって、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項が相互に関連して、顕著な作用効果を奏するものである。一方、引用文献3、9、10には、ヘッド部をポリプロピレン樹脂により形成すること、ヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下であること、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下であること、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部を有すること等を併せ備えることによる作用効果は何ら示唆されていないから、本件特許発明1の前記した顕著な作用効果は、引用発明3、引用文献9に記載された事項及び引用文献10に記載された事項の奏する作用効果から、当業者といえども予測できるものではない。

b 特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、その特許異議申立書の第7ページ第11行〜第18行において、引用文献3には、「ヘッド部の亀裂、割れ、白化等の損傷」に関する「折れ強度」、「口腔内操作性」、「フィット感」が示され、引用文献9には、「ブリッスルの感触がソフトで、磨き心地が良く、ブリッスルの歯間への到達感が高く、歯間の汚れ除去効果が高く」が示され、引用文献10には、「毛保持の向上」が示されているため、本件特許発明1の効果は、引用文献3、引用文献9及び引用文献10の効果を合わせれば容易に得ることができる旨を主張している。
しかしながら、本件特許発明1の作用効果は、前記aに示したように、硬度が低く粘弾性に優れ安価なポリプロピレンでヘッド部が形成され、口腔内操作性に優れたヘッド部の厚さが3mm以上3.5mm以下、ヘッド部の幅が12mm以上17mm以下、ヘッド部の長さが15mm以上27mm以下、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%以下の歯ブラシであっても、平線の毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより、植毛時において、植毛穴に対して平線が打ち込まれたときの衝撃が、平線で吸収されて、平線からヘッド部に伝わる衝撃が緩和され、また、歯ブラシの使用時において、平線がヘッド部の変形に合わせて変形しやすくなるため、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができるという、より具体的なものである。
そして、引用文献3、9、10には、特許異議申立人Bが主張する作用効果が記載されているとしても、平線の毛束と対向する面に溝を設けることにより、平線が柔らかくなり、平線打ち込み時に生じるヘッド部への衝撃が緩和されるため、ヘッド部の厚さを薄くすることができるという技術思想について、何ら記載も示唆もされておらず、本件特許発明1の前記した具体的な作用効果についても何ら示されていない。すると、本件特許発明1の前記した作用効果は、引用文献3、9、10の記載から、当業者といえども予測できるものではない。

したがって、特許異議申立人Bの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明3、引用文献9に記載された事項及び引用文献10に記載された事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件特許発明1は、当業者が、引用発明3、引用文献9に記載された事項及び引用文献10に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2〜4について
請求項2〜4は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件特許発明2〜4も、ヘッド部は「ポリプロピレン樹脂により形成され」、ヘッド部の厚さが「3mm以上3.5mm以下」であり、ヘッド部の幅が「12mm以上17mm以下」であり、ヘッド部の長さが「15mm以上27mm以下」であり、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」、平線は、毛束の二つ折り部分に対向する面に「溝を設けることにより柔軟性を有する脆弱部」を有するという発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2〜4は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明3、引用文献9に記載された事項及び引用文献10に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)サポート要件について
ア 「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下」について
特許異議申立人Bは、その特許異議申立書の第7ページ下から8行〜第8ページ第6行において、本件特許の請求項1には、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」という構成が含まれており、「27%以下」という表現は、例えば「20%」や「10%」を含んでいるが、発明の詳細な説明には、「20%」や「10%」の値によって特許明細書の段落【0007】に記載されている発明の課題を解決できることは示されていないため、「27%以下」という記載は、発明の詳細な説明に開示されていない内容を含んでおり、本件特許の請求項1〜4は、サポート要件を満たしていない旨を主張する。
そこで、特許明細書の段落【0007】に記載された「植毛の固定に平線を用いた歯ブラシであって、薄型ヘッド部の素材に硬度が低い低コストの素材を用いたとしても、ヘッド部にき裂や白化が生じるのを防ぐことができる歯ブラシを提供する」という課題を、前記割合が27%以下である本件特許発明1が解決できるか否かについて、以下、検討する。
特許明細書の段落【0048】には、以下の表1が示されている。


このうち、実施例1はヘッド部の厚さが2.3mmであり、実施例7はヘッド部の幅が20mm、ヘッド部の長さが30mmであり、実施例9はヘッド部の厚さが3.9mmであるため、本件特許発明1に含まれないものである。したがって、本件特許発明1の実施例に該当する実施例2〜6、8に着目すると、「植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合(%)」が27%である実施例3、及び26%である実施例2、4〜6、8の「外観」及び「継続使用後の外観」は「白濁、き裂無し」を意味する○となっており、ヘッド部にき裂や白化が生じなかったものと解される。そして、これらの実施例2〜6、8において、仮に、前記割合を27%以下である、20%や10%にしたとすると、植毛面の面積に対して植毛穴の総開口面積の割合はより小さくなり、ヘッド部の強度はより高くなると解され、特許明細書の段落【0003】に記載された「ヘッド部の強度が十分でない場合には、植毛の際又は使用による経時的な劣化により、ヘッド部は平線との接触部分で白化やき裂が発生する。」という事項を踏まえると、このとき、ヘッド部のき裂や白化は、より生じにくくなると解される。すると、実施例2〜6、8の前記割合を20%や10%等、より小さなものとしても、ヘッド部にき裂や白化がより生じにくくなり、本件特許発明1の前記課題を解決できることに変わりはないといえる。
また、実施例2、4〜6、8の前記割合は26%であり、これを27%にした場合、ヘッド部の強度は多少小さくなると解されるが、実施例3において、該割合が27%のものでも、ヘッド部にき裂や白化が生じていないことを勘案すると、前記割合を26%から27%に増加させた程度で、「外観」及び「継続使用後の外観」が、「白濁、き裂無し」を意味する○から、「白濁あり」を意味する△を越えて、「白濁・き裂あり」を意味する×まで変化するとは解されず、本件特許発明1の前記課題を、少なくとも一定程度、解決できることに変わりはないと考えるのが妥当である。
そうすると、本件特許発明1の発明特定事項が、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であ」ることをもって、本件特許発明1が前記課題を解決することができないものとはいえない。
したがって、特許異議申立人Bの前記の主張は採用できない。

イ 「ヘッド部の厚さ」、「ヘッド部の幅」、「ヘッド部の長さ」及び「植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合」の値の組合せについて
特許異議申立人Bは、その特許異議申立書の第8ページ第7行〜第37行において、特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0048】の表1によれば、実施例2〜6、8では、「ヘッド部の厚さ」、「ヘッド部の幅」、「ヘッド部の長さ」及び「植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合」の値の組合せが、離散しており、これら以外の組合せのものも本件請求項1の記載の範囲に含まれているが、ヘッド部耐久性、外観、植毛強度、継続使用後の外観、口腔内操作性についての試験による裏付けが示されておらず、本件特許発明1〜4は、発明の詳細な説明において効果の裏付けがないものも含んでおりサポート要件を満たしていない旨を主張する。
そこで、特許明細書の段落【0007】に記載された前記アに示した課題を、実施例2〜6、8として示された値の組合せ以外も含む本件特許発明1が解決できるか否かについて、以下、検討する。
まず、「ヘッド部の厚さ」、「ヘッド部の幅」、「ヘッド部の長さ」及び「植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合」のそれぞれと、ヘッド部のき裂や白化との関係について検討すると、「ヘッド部の厚さ」は、特許明細書の段落【0003】の記載を踏まえると、ヘッド部の厚さが小さくなると、ヘッド部の強度が十分でなくなり、ヘッド部にき裂や白化が生じやすくなるものと解される。次に、特許明細書の前記表1によると、「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」が比較的大きい実施例7において、「継続使用後の外観」が「白濁あり」を意味する△となっており、「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」が大きいと、使用時のヘッド部のたわみ等の影響を受け、ヘッド部にき裂や白化が生じやすくなるものと解される。さらに、「植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合」は、該割合が大きくなる程、植毛面の面積に対して植毛穴の総開口面積の割合が大きくなるため、ヘッド部の強度は小さくなり、ヘッド部にき裂や白化が生じやすくなるものと解される。以上を総合すると、本件特許発明1において、「ヘッド部の厚さ」が最も小さく、「ヘッド部の幅」及び「ヘッド部の長さ」が最も大きく、「植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合」が最も大きいもの、つまりヘッド部の厚さが3mm、ヘッド部の幅が17mm、ヘッド部の長さが27mm、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合が27%のものが、本件特許発明1の中で、最もヘッド部にき裂や白化が生じやすいと考えられ、このような値の組合せのものにおいても、本件特許発明1の前記課題を解決できるのかが問題となる。
前記表1の実施例には、これらの値の組合せを全て満たす実施例はないが、そのうちヘッド部の厚さが3mmであることを満たす実施例2をみると、この実施例2は、「外観」及び「継続使用後の外観」が○となっているから、ヘッド部の幅が15mm、ヘッド部の長さが26mm、前記割合が26%ではあるものの、ヘッド部の厚さが3mmの薄さのものにおいて、ヘッド部にき裂や白化が生じていないことを示している。そして、実施例2のヘッド部の幅を15mmから17mmにし、ヘッド部の長さを26mmから27mmにし、前記割合を26%から27%にした場合、使用時のヘッド部のたわみが多少大きくなり、また、ヘッド部の強度が多少小さくなることはあるとしても、ヘッド部の厚さが3.3mmであって、実施例2と比較して0.3mmだけ、厚くなっている実施例6(ヘッド部の幅:17mm、ヘッド部の長さ:27mm)及び実施例3(前記割合:27%)において、ヘッド部にき裂や白化が生じていないことを勘案すると、実施例2のヘッド部の幅、ヘッド部の長さ、前記割合を前記のようにわずかに増加させた程度で、「外観」及び「継続使用後の外観」が○から、△を越えて、×まで変化するとは解されず、本件特許発明1の前記課題を、少なくとも一定程度、解決できることに変わりはないと考えるのが妥当である。
すると、本件特許発明1において、ヘッド部の厚さを3mm、ヘッド部の幅を17mm、ヘッド部の長さを27mm、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合を27%としたものであっても、本件特許発明1の前記課題を解決することができるものと解され、本件特許発明1に含まれる範囲で、どのように値を組み合わせても、少なくともヘッド部の厚さを3mm、ヘッド部の幅を17mm、ヘッド部の長さを27mm、前記割合を27%としたものよりも、ヘッド部にき裂や白化が生じにくくなると解されるから、本件特許発明1は、前記課題を解決することができるものである。
そうすると、本件特許発明1に含まれる値の組合せのうち、実施例2〜6、8として示されていない値の組合せについて、試験による裏付けが示されていないことをもって、本件特許発明1が前記課題を解決することができないものとはいえない。
したがって、特許異議申立人Bの前記の主張は採用できない。

ウ まとめ
前記ア、イで検討したように、本件特許発明1は、前記課題を解決することができないものとはいえず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、本件特許発明2〜4についても、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(3)明確性について
ア 「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下」について
特許異議申立人Bは、その特許異議申立書の第8ページ下から10行〜第9ページ第8行において、本件特許の請求項1には、「前記植毛面の面積に対する前記植毛穴の総開口面積の割合は、27%以下であり」という構成が含まれており、「27%以下」という上限値のみを規定しているが、「27%以下」という上限値のみでは、例えば5%や、10%も、含むこととなり、ヘッド部の耐久性やヘッド部におけるき裂や白化の度合いへの影響を問題としない内容も含むこととなり発明特定事項としての技術的意味が不明確であり、本件特許の請求項1〜4は、明確性要件を満たしていない旨を主張する。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲における請求項1の記載は、植毛面の面積に対する植毛穴の総開口面積の割合について、「27%以下」と上限値のみを特定するものであるが、そのことをもって、前記割合の範囲が不明確になることはなく、本件特許発明1を不明確にすることはない。
したがって、特許異議申立人Bの前記の主張は採用できない。

イ 「平線の打ち込み角度」について
特許異議申立人Bは、その特許異議申立書の第9ページ第9行〜第10ページ第4行において、特許明細書の段落【0009】に記載の効果を発揮するため、又は段落【0007】に記載の発明の課題を解決するためには、平線に関して「平線の打ち込み角度」を規定することが必要であり、特許明細書では、図1に示されるように、全ての平線の打ち込み角度が平面視で歯ブラシの長手軸方向に沿っている構成のみが示されているので、本件の請求項1は、この構成を必須の発明特定事項として含むべきであるが、「平線の打ち込み角度」に関する必須の発明特定事項を欠いているので、本件特許の請求項1〜4は、明確性要件を満たしていない旨を主張する。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲における請求項1の記載は、平線の打ち込み角度について、何ら特定しておらず、本件特許発明1は、平線の打ち込み角度を何ら特定しない発明であることが明確であるから、平線の打ち込み角度が特定されていないことをもって、本件特許発明1が不明確になることはない。
したがって、特許異議申立人Bの前記の主張は採用できない。

ウ 「脆弱部」について
特許異議申立人Bは、その特許異議申立書の第10ページ第5行〜第15行において、本件特許の請求項1における「脆弱部」について、「脆弱」とは、一般に「身体・器物・組織などが、もろくよわいこと。(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)」であるが、「もろくよわい」というのは、絶対的なものではなく相対的なものであり、比較対象がないと評価できないため、「脆弱部」の意味が不明確であるので、本件特許の請求項1〜4は、明確性要件を満たしていない旨を主張する。
しかしながら、本件特許発明1における「脆弱部」とは、平線における、毛束の二つ折り部分に対向する面に溝を設けることにより柔軟性を有するものとなっている部分であり、その構成は明確である。したがって、本件特許発明1が「脆弱部」という発明特定事項を備えることをもって、本件特許発明1が不明確になることはない。
したがって、特許異議申立人Bの前記の主張は採用できない。

エ まとめ
前記ア〜ウで検討したように、本件特許発明1は、何ら不明確な事項はなく、明確である。
また、本件特許発明2〜4についても、同様の理由により、明確である。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立てAの理由及び証拠、並びに特許異議の申立てBの理由及び証拠によっては、請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項1〜4に係る特許を取り消す理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-24 
出願番号 P2014-133403
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A46B)
P 1 651・ 537- Y (A46B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 窪田 治彦
特許庁審判官 田合 弘幸
柿崎 拓
登録日 2021-09-13 
登録番号 6943541
権利者 小林製薬株式会社
発明の名称 歯ブラシ  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 阿部 豊隆  
代理人 山田 拓  
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