• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04L
管理番号 1386206
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-05 
確定日 2022-07-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6945416号発明「電源制御装置、制御方法、制御プログラム、および制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6945416号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6945416号の請求項1−11に係る特許についての出願は、平成29年10月19日を出願日とする特許出願であって、令和3年9月16日に特許権の設定登録がされ、令和3年10月6日に特許掲載公報が発行された。その後、令和4年4月5日に特許異議申立人 遠藤 真美(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。

第2 本件特許発明
特許第6945416号の請求項1−11の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」−「本件特許発明11」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段とを備えたPoE給電装置への電源を制御する電源制御装置において、
前記PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段と、
前記PoE給電装置と通信を行なう通信手段と、
前記通信手段を介して前記PoE給電装置および前記接続機器の正常稼働を監視する監視手段と、
前記監視手段によって前記PoE給電装置が正常ではないと判断された場合に、前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段と、
前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させる接続機器復旧手段と、
を備えることを特徴とする電源制御装置。

【請求項2】
前記PoE給電装置復旧手段は、
前記第一電源出力手段への電源を一時的に遮断し、再接続することで前記PoE給電装置を再起動させることを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項3】
前記接続機器復旧手段は、
前記通信手段を介して前記PoE電源制御手段に対し、復旧すべき接続機器へのPoE電源を一時的に遮断し、再接続する指示信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項4】
前記接続機器復旧手段は、
前記通信手段を介して前記PoE電源制御手段に対し、復旧すべき接続機器へのPoE電源を一時的に遮断し、前記復旧すべき接続機器にマジックパケットを送信することで再起動させることを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項5】
前記監視手段は、
前記PoE給電装置および前記接続機器に対して定期的にPingコマンドを実行するPingコマンド実行部と、
前記Pingコマンドを実行したPoE給電装置および接続機器から既定回数応答がない場合に、応答がないPoE給電装置または接続機器を正常ではないと判断するPingコマンド判断部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項6】
前記監視手段は、
前記PoE給電装置および前記接続機器が定期的に送信するハートビート信号を受信するハートビート信号受信手段と、
前記ハートビート信号が途絶えたときに、前記ハートビート信号が途絶えたPoE給電装置または接続機器を正常ではないと判断するハートビート判断部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項7】
前記監視手段によって前記PoE給電装置または前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記PoE給電装置または前記接続機器の管理者へ警告を通知する通知手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項8】
前記PoE給電装置に上位層から接続されるゲートウェイ機器に入力するための電力を出力する第二電源出力手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。

【請求項9】
配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段とを備えたPoE給電装置への電源を制御する電源制御方法において、
第一電源出力手段が、前記PoE給電装置に入力するための電力を出力ステップと、
通信手段が、前記PoE給電装置と通信を行なうステップと、
監視手段が、前記通信手段を介して前記PoE給電装置および前記接続機器の正常稼働を監視するステップと、
PoE給電装置復旧手段が、前記監視手段によって前記PoE給電装置が正常ではないと判断された場合に、前記PoE給電装置を復旧させるステップと、
接続機器復旧手段が、前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させるステップと、
を備えることを特徴とする電源制御方法。

【請求項10】
配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段とを備えたPoE給電装置への電源を制御する電源制御プログラムにおいて、
コンピュータを、
前記PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段、
前記PoE給電装置と通信を行なう通信手段、
前記通信手段を介して前記PoE給電装置および前記接続機器の正常稼働を監視する監視手段、
前記監視手段によって前記PoE給電装置が正常ではないと判断された場合に、前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段、
前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させる接続機器復旧手段、
として機能させることを特徴とする電源制御プログラム。

【請求項11】
配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、
接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段と、
を備えるPoE給電装置と、
前記PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段と、
前記PoE給電装置と通信を行なう通信手段と、
前記通信手段を介して前記PoE給電装置および前記接続機器の正常稼働を監視する監視手段と、
前記監視手段によって前記PoE給電装置が正常ではないと判断された場合に、前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段と、
前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させる接続機器復旧手段と、
を備える電源制御装置と、
を備えることを特徴とする電源制御システム。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として特開2011−188072号公報(以下、「甲1号証」という。)、特開2016−167891号公報(以下、「甲2号証」という。)、特開2006−135849号公報(以下、「甲3号証」という。)及び従たる証拠として特開2005−117371号公報(以下、「甲4号証」という。)、特開2004−140673号公報(以下、「甲5号証」という。)、特開2011−109529号公報
(以下、「甲6号証」という。)、特開2009−238137号公報(以下、「甲7号証」という。)を提出し、請求項1−11に係る発明は、主たる証拠のいずれかに記載された発明及び従たる証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1−11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1−11に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

証拠について
特許異議申立人が提出した証拠
甲1号証:特開2011−188072号公報
甲2号証:特開2016−167891号公報
甲3号証:特開2006−135849号公報
甲4号証:特開2005−117371号公報
甲5号証:特開2004−140673号公報
甲6号証:特開2011−109529号公報
甲7号証:特開2009−238137号公報

第4 甲号証の記載
1 甲1号証には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。

「【0007】
先ず、特許文献1に開示された技術は、PoE技術による給電装置、給電方法及び給電制御プログラムに関する技術である。この技術は、PoE給電装置からPoE受電装置へ通信ケーブルを通じて電力を供給する際に、当該通信ケーブルで送信される情報量の変化に合わせて電力の供給を制御するというものである。これにより、前記通信ケーブルでの情報の送受信が行われているときは電力を供給し、情報の送受信が行われていないときは電力供給を中断することができるため、電力消費を節減することができる。」

「【0015】
[発明の目的]
本発明は、上述した各関連技術の有する不都合を改善し、特に、PoE給電の対象装置に何らかの障害が発生したときには、当該対象装置の設置数及びIPアドレスの有無に拘らず適確且つ低コストで前記対象装置の稼働の監視及び障害復旧を可能とする障害検知復旧システム、障害検知復旧方法、及びその復旧用プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明にかかる障害検知復旧システムでは、通信ケーブルで接続された複数の受電装置に電力を供給する複数の給電装置と、前記各受電装置の稼働状況を予め設定された時間間隔で確認すると共に前記稼働状況が正常でない受電装置が存在する場合に当該受電装置に対応する前記給電装置に給電を一時停止させることにより前記受電装置の機能の復旧措置を行う装置稼働監視手段を備えた監視制御装置とを有して成る障害検知復旧システムにおいて、
前記装置稼働監視手段が、前記受電装置から送られてくる識別情報に基づいて当該識別情報に対応した監視手順にかかる情報を予め併設された監視手順記憶部から抽出して特定すると共にこの特定した監視手順にかかる情報が備えている判定基準に基づいて前記受電装置の正常性を判定する装置稼働状況監視部と、前記受電装置が正常でないと判定された場合に設定される当該受電装置への一時的な給電停止時間にかかる情報を予め前記識別情報に対応して記憶し保持する給電停止時間記憶部と、前記装置稼働状況監視部により前記受電装置が正常でないと判定された場合に機能し、当該受電装置に対応した前記一時的な給電停止時間にかかる情報を前記給電停止時間記憶部から抽出すると共に、これにより特定された当該給電停止時間にかかる情報に基づいて前記受電装置への給電を前記給電装置を介して一時的に停止制御するコマンドを生成し前記給電装置に向けて出力する制御コマンド生成部と、を備えたことを特徴とする。」

「【0022】
[全体的構成]
先ず、本実施形態における障害検知復旧システムの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態における障害検知復旧システム1は、1又は2以上のPoE受電装置に電力を供給する機能を有する複数のPoE給電装置4A,4Bと、前記各PoE受電装置の稼働状況を監視する監視制御装置2とにより構成されて成る。
【0023】
上記PoE受電装置は、本第1実施形態においては三つのPoE受電装置5A,5B,及び5Cが設置されており、それら各々が上記PoE給電装置4A及び4BにLANケーブルで接続されている。この内、PoE給電装置4AはPoE受電装置5Aに電力供給を行い、PoE給電装置4Bは二つのPoE受電装置5B及び5Cに電力供給を行う。又、上記監視制御装置2とPoE給電装置4A,4Bとはネットワーク3を介して接続されている。」
【0024】
又、上記監視制御装置2は、上記各PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況を監視すると共に障害を検知したときに復旧措置を行う装置稼働監視手段20と、この装置稼働監視手段20で用いられる各種情報を保持する記憶手段10と、この記憶手段10と外部ネットワーク3とを接続したネットワークインターフェース30とを備えている。
これにより、上記監視装置2と上記各PoE受電装置5A,5B,5Cとの間で円滑に情報の送受信が実行されるようになる。
【0025】
更に、上記装置稼働監視手段20は、上記各PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況を予め設定された時間間隔で定期的に監視する装置稼働状況監視部21と、上記PoE給電装置4A,4Bから上記PoE受電装置5A,5B,5Cへの給電を制御するコマンドを生成すると共に当該コマンドを上記PoE給電装置4A,4Bに送り込む制御コマンド生成部22と、上記PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働の不具合が改善しないときにその旨の通報をシステム管理者に対し行う通報処理部23とを備えている。
これにより、上記各PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況の監視や障害検知、及び障害復旧が可能となる。
【0026】
又、上記記憶手段10は、上記各PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況の正常性を判定するための手順にかかる情報を保持する監視手順記憶部11と、上記各PoE受電装置5A,5B,5Cとを接続するLANケーブルが上記各PoE給電装置4A,4Bのどのポート(コネクタ)に接続されているかに関する情報を保持するポート接続情報記憶部12と、上記各PoE給電装置4A,4Bが上記各PoE受電装置5A,5B,5Cへの給電を停止する際の停止時間にかかる情報を保持する給電停止時間記憶部13とを備えている。
これにより、様々な上記PoE受電装置5A,5B,5Cに対し効果的且つ臨機応変に監視をすることができるようになる。」

「【0032】
又、上記装置稼働状況監視部21は、上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cの稼働状況の何れかが異常であると判定したときに、その旨の情報を上記制御コマンド生成部22へ送り込む。
【0033】
次に、上記制御コマンド生成部22は、上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cの何れかの動作が異常である旨の情報を上記装置稼働状況監視部21から受け取ったときに、該当する上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cへの給電を停止する旨のコマンドを生成し、その後、当該コマンドを上記PoE給電装置4A乃至4Bに対し投入する。
これにより、上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cの何れかにトラブルが発生したときに上記PoE給電装置4A又は4Bからの給電を停止させることで、当該PoE受電装置5A,5B,又は5Cの電源をオフにすることができる。」

「【0035】
これにより、上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cに異常が発生したときは、該当するPoE受電装置を再起動させることで、その機能の復旧を図ることができるようになる。」

「【0037】
上記制御コマンド生成部22は、上記装置稼働状況監視部21から上記PoE受電装置5A,5B,5Cの動作が異常である旨の情報を受け取ると、上記PoE受電装置5A,5B,5Cへの給電を停止する旨のコマンドを生成し、上記PoE給電装置4A又は4Bに投入する。続いて、上記制御コマンド生成部22は、給電停止時間(電源オフからオンまでの時間)にかかる情報を上記給電停止時間記憶部13から取得する。」

「【0041】
最後に、上記通報処理部23は、上記制御コマンド生成部22によって上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cを再起動したにも拘らずその機能が復旧しなかった場合に、当該PoE受電装置5A,5B,又は5Cは装置の再起動では機能復旧不可能な状況である旨の内容の通報をシステム管理者に対して行う。ここで、この通報の手段としては、例えば電子メールによる送信がある。」

「【0044】
ここで、上記監視手順としては、例えば以下に挙げるものがある。
上記装置稼働状況監視部21が、上記PoE受電装置5A,5B,5Cの各々のIPアドレスに向けて定期的にICMPエコー要求(Internet Control Message Protocol Echo Request)を送信する。その後、予め設定した時間内に前記ICMPエコー要求に対する応答にかかる情報(ICMPエコー)が上記装置稼働状況監視部21に送られてきたときは、上記PoE受電装置5A,5B,5Cは正常に稼働していると判定する。
以上の操作を予め設定した時間間隔で繰返すことにより、上記PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況を監視する。」

「【図1】


【図2】



上記記載から、甲1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「各PoE受電装置の稼働状況を監視する監視制御装置2であって、
監視制御装置2とPoE給電装置4A,4Bとはネットワーク3を介して接続されており、
各PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況を予め設定された時間間隔で定期的に監視する装置稼働状況監視部21と、
PoE給電装置4A,4Bから上記PoE受電装置5A,5B,5Cへの給電を制御するコマンドを生成すると共に当該コマンドを上記PoE給電装置4A,4Bに送り込む制御コマンド生成部22と、を備え、
上記PoE受電装置5A,5B,又は5Cに異常が発生したときは、該当するPoE受電装置を再起動させることで、その機能の復旧を図る、
監視制御装置。」

2 甲2号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0011】
本発明によれば、PoE対応機器が安定して運用される。」

「【0015】
主制御部101は、CPU、およびRAM等の内部記憶装置を有している。CPUが記憶部103に記憶されている各種制御プログラムや各種設定事項を読み出し実行することによって、主制御部101は、ルーティング制御やLAN接続機器の制御等を実行できる。また、LAN接続機器がPoE対応機器の場合には、主制御部101は、有線LAN通信/電力供給部111を制御して、PoE給電の制御(例えば、PoE給電をオン状態/オフ状態にする制御)を実行できる。また、主制御部101は、PoE対応機器の死活監視を行い、PoE対応機器が応答しない場合にはPoE対応機器にリセットコマンドを送信、あるいはPoE給電をオフ状態にしてからオン状態にすることで、PoE対応機器の再起動の制御を実行できる。」

「【0021】
図2を用いて、本実施の形態によるルーター100のPoE給電の構成を説明する。図2は、ルーター100にPoE対応カメラ300がLANケーブル200を介して接続された状態を示すブロック図である。ルーター100の有線LAN通信/電力供給部111は、有線通信制御部111aと、所定の標準規格(例えば、IEEE802.3af/IEEE802.3at)に準拠した給電を行う電力供給制御部111bを有している。有線通信制御部111aは、通信線D1を介して主制御部101に接続される。電力供給制御部111bには、電圧線P1を介して所定の電圧が供給される。電圧線P1の電圧は、PoE対応カメラ300に供給するために用いられる。また、電力供給制御部111bは、通信線D1を介して、主制御部101に接続される。このため、主制御部101は、通信線D1を介して電力制御部111b(当審注:「電力供給制御部111b」の誤記と認められる)を制御し、PoE対応カメラ300への給電を制御することができる。
【0022】
電力供給制御部111bは、主制御部101の制御に基づいて、所定の電圧をLANインターフェース117bに接続される通信線D2に出力する。また、通信線D2に出力された所定の電圧は、LANインターフェース117a、およびLANケーブル200を介して、PoE対応カメラ300に供給される。
【0023】
図2に示すPoE対応カメラ300は、PoE給電を電力源として動作するカメラである。PoE対応カメラ300は、撮像機能を備えたカメラ部301と、全体の制御を行う制御部303を有している。また、PoE対応カメラ300は、外部に接続された機器との間でLANケーブルを介して通信を行う有線通信部305と、LANケーブルを介して入力された通信データとPoE給電の電力を分離する通信/電力分離部307と、通信/電力分離部307から送られてきた電圧を所定の電圧に変換して各部に供給する電源部309と、LANインターフェース311を有している。
【0024】
また、PoE対応カメラ300は、LANケーブル200、LANインターフェース311、および通信/電力分離部307を介して電源部309に所定の電圧が入力されることで、自動的に制御部303が起動する。このため、ルーター100は、PoE対応カメラ300へのPoE給電をオフ状態にしてからオン状態にすることによって、PoE対応カメラ300を再起動させることができる。」

「【0031】
ステップS203の次のステップS205では、主制御部101は、読み出した運用条件テーブルのタイムテーブルに基づいて、有線LAN通信/電力供給部111を制御して、PoE対応機カメラ300へ所定のコマンド(例えば、1枚の画像データを要求するコマンド)を送信する。ステップS205の次のステップS207では、主制御部101は、所定の時間内にPoE対応機カメラ300から要求した画像データを受信したかどうかの判定をする。ステップS207で、主制御部101は、所定の時間内にPoE対応機カメラ300から要求した画像データを受信したと判定した場合は、ステップS209の処理を実行する。ステップS209では、主制御部101は、運用条件テーブルの画像圧縮率に基づいて、受信した画像データを圧縮する。また、主制御部101は、無線WAN通信部109のアンテナ109aの電波受信状態に対応した画像圧縮率に基づいて、受信した画像データを圧縮する場合があってもよい。」

「【0035】
ステップS207で、主制御部101は、所定の時間内にPoE対応機カメラ300から要求した画像データを受信しなかったと判定した場合は、ステップS221の死活判定/復帰処理を実行する(詳細は後述する)。ステップS221の次のステップS223では、主制御部101は、ステップS221の処理に基づいて死活判定フラグがオンかオフかの判定をする。死活判定フラグがオフの場合は、主制御部101は、PoE対応カメラ300は応答可能な状態であると判断して、ステップS205の処理を実行する。また、死活判定フラグがオンの場合は、主制御部101は、PoE対応カメラ300は応答不能な状態であると判断して、ステップS225の処理を実行する。
【0036】
ステップS225では、主制御部101は、有線LAN通信/電力供給部111を制御して、PoE給電をオフ状態にする。ステップS225の次のステップS227では、主制御部101は、運用スケジュール情報に基づいて、翌日の開始時刻をRAMに記憶して、PoE対応機器制御処理を終了する。」

「【0040】
ステップS317の次のステップS319では、主制御部101は、運用条件テーブルの電源リセット上限数に基づいて、電源リセット回数が電源リセット上限数より多いかどうかを判定する。電源リセット回数が電源リセット上限数より多い場合は、主制御部101は、PoE対応カメラ300の復帰処理を断念して、電源リセット回数を0に設定し(ステップS321)、PoE給電をオフ状態にする処理を実行する(ステップS323)。次いで、主制御部101は、死活判定フラグをオンにし(ステップS325)、PoE対応カメラ300が応答不能状態であることをセンター501に送信して(ステップS327)、死活判定/復帰処理を終了する。また、ステップS319において、電源リセット回数が電源リセット上限数以下の場合は、主制御部101は、図7に示すステップS329の処理を実行する。
【0041】
図7に示すステップS329では、主制御部101は、運用条件テーブルのリセットコマンド送信上限数に基づいて、リセットコマンド送信回数がリセットコマンド送信上限数以下であるかを判定する。リセットコマンド送信回数がリセットコマンド送信上限数以下の場合は、主制御部101は、PoE対応カメラ300にリセットコマンドを送信する処理を実行する(ステップS331)。次いで、主制御部101は、リセットコマンド送信回数を更新して(ステップS333)、PoE対応カメラ300の再起動が終了するまでの所定時間において待機する処理を実行する(ステップS335)。また、ステップS335の処理実行後は、ステップS301に戻って、ステップS301以後の処理を実行する。
【0042】
ステップS329において、リセットコマンド送信回数がリセットコマンド送信上限数より多い場合は、主制御部101は、PoE対応カメラ300の電源をリセットする処理を実行する(ステップS337)。PoE対応カメラ300の電源をリセットする処理は、主制御部101が有線LAN通信/電力供給部111を制御して、PoE給電をオフ状態にしてから所定の時間(例えば、10秒)経過後にPoE給電をオン状態にすることで実行される。次いで、主制御部101は、電源リセット回数を更新して(ステップS339)、PoE対応カメラ300の再起動が終了するまでの所定時間において待機する処理を実行する(ステップS341)。また、ステップS341の処理実行後は、ステップS301に戻って、ステップS301以後の処理を実行する。
【0043】
このように、ルーター100の主制御部101は、ルーター100に接続されたPoE対応カメラ300の死活監視を行い、PoE対応カメラ300が応答不能状態にあると判断した場合は、PoE対応カメラ300を再起動させる処理を実行する。また、ルーター100にPoE給電機能を有する有線LAN通信/電力供給部111を持たせることで、PoE対応カメラ300への給電を停止しその後に給電を再開することが可能となる。このため、ルーター100は、応答不能状態にあるPoE対応カメラ300を自動的に再起動させることが可能となり、PoE対応カメラ300の安定運用を実現することができる。
【0044】
また、本実施の形態によるルーター100とPoE対応カメラ300が組み合わされることによって、次のようなことができる。
(1)ルーター100は、PoE対応カメラ300がハングアップした場合に、PoE給電をオフ状態/オン状態にすることで、PoE対応カメラ300を強制的に再起動させて復帰させることができる。
(2)ルーター100は、PoE対応カメラ300に所定のコマンドを送り、PoE対応カメラ300の状態監視や設定を行うことができる。
(3)ルーター100は、スケジュールされた時間だけPoE対応カメラ300に給電することが可能であり、省電力化が実現される。
(4)ルーター100は、PoE対応カメラ300の撮影モードを変更したり、PoE対応カメラ300のログを収集したり、撮影のスタートやストップ等のコントロールをすることができる。
(5)ルーター100は、日の出から日没までPoE対応カメラ300に給電する運用とか、5分に一度給電して撮影データ送信後に給電を止める運用とか、人感センサーや外部からのトリガー信号時に応じて5分間給電する運用等の多彩な運用を実行することができる。また、PoE対応カメラ300の給電時間は、可変的にルーター100や、クラウド上のセンター501から設定できる。」

「【0055】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施の形態では、主にPoE対応機器が接続されるルーターを例に挙げたが、本発明はこれに限らず、PoE対応機器以外のネットワーク機器が接続(例えば、USB接続等)されるルーターやPoE給電装置やルーター機能を有するネットワーク機器にも適用できる。また、上述の各実施の形態は、本発明の好適な一例であるので、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上述の説明によって不当に限定されるものではない。また、上述の各実施の形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成要件ではない。」

【図1】

【図2】



上記記載から、甲2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「ルーター100であって、
PoE対応カメラ300がLANケーブル200を介して接続され、
有線LAN通信/電力供給部111は、有線通信制御部111aと、所定の標準規格(例えば、IEEE802.3af/IEEE802.3at)に準拠した給電を行う電力供給制御部111bを有し、
有線通信制御部111aは、通信線D1を介して主制御部101に接続され、
主制御部101は、通信線D1を介して電力供給制御部111bを制御し、PoE対応カメラ300への給電を制御することができ、
主制御部101は、所定の時間内にPoE対応機カメラ300から要求した画像データを受信しなかったと判定した場合は、死活判定フラグがオンかオフかの判定をし、
死活判定フラグがオンの場合は、主制御部101は、PoE対応カメラ300は応答不能な状態であると判断し、
有線LAN通信/電力供給部111を制御して、PoE給電をオフ状態にしてから所定の時間(例えば、10秒)経過後にPoE給電をオン状態にすることで、
応答不能状態にあるPoE対応カメラ300を自動的に再起動させることが可能となり、PoE対応カメラ300の安定運用を実現することができる、
ルーター100。」

3 甲3号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るイーサネット給電装置の構成を示すブロック図である。
図1で示すように、イーサネット給電装置1は、給電制御部2と給電スイッチ部3と、HUBインタフェース部4と、受電端末インタフェース部5から構成される。
給電制御部は、内蔵されたプログラム命令を実行するCPU6と、各種パラメータを格納する不揮発性メモリ7(代表的にはEEPROMやフラッシュメモリなど)から構成される。不揮発性メモリ7はCPU6に内蔵されていてもよい。
また、給電制御部2のCPU6は、LANインタフェース部8を経由して、LAN用のツイストペアケーブル9で外部のスイッチングHUB10と接続される。
LANインタフェース部8は、予めMACアドレスが登録されたイーサネットコントローラICやパルストランス、RJ−45モジュラコネクタなどで構成されるが、従来周知であるため詳細な構成についての図示及び説明は省略する。また、内蔵するプログラムには、LANインタフェース部8を制御するためのLANドライバ、及びTCP(TransmissionControlProtocol)、UDP(UserDatagramProtocol)、IP(InternetProtocol)、ICMP(InternetControlMessageProtocol)のプロトコルスタックが格納されている。
また、イーサネット給電装置1自身のネットワークアドレス(IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイなど)は、予め後述する設定端末11や外部のWebブラウザからの操作などで不揮発性メモリに登録され、ネットワーク機器(イーサネット給電装置含む)とTCP/IP通信が可能となる。
【0012】
また、給電制御部2のCPU6は、シリアルインタフェース部12を経由して、外部の設定端末11と接続される。設定端末11は、パーソナルコンピュータを利用した従来周知のVT100端末エミュレータなどにより不揮発性メモリ7に各種パラメータを登録・変更するためのもので、運用中は常に接続しておく必要はない。また、シリアルインタフェース部12と設定端末11との接続は、RS232CであってもUSB(UniversalSerialBUS)であってもよい。
なお、内蔵プログラムにHTTP(Hypertext Transfer Protocol)プロトコルを格納しておけば、外部のWebブラウザを利用してLANインタフェース部8を経由して不揮発性メモリ7に各種パラメータを登録することも可能である。その場合には、必ずしもシリアルインタフェース部12は必要としない。
【0013】
給電スイッチ部3は、1または2以上の電流制限回路13で構成されており、電流制限回路13としては、例えばFET(FieldEffectTransister)を用いた回路がある。給電スイッチ部3は給電制御部2からの指令により電流制限回路13の開閉を行い、給電部14から得る電力のON/OFFを接続されたイーサネット受電端末15毎に行う。なお、図1では給電部14をイーサネット給電装置1内で構成しているが、給電部14をイーサネット給電装置1の外部に配置してもよい。
【0014】
HUBインタフェース部4は、外部のスイッチングHUB10と接続するためのRJ−45モジュラコネクタを前記の電流制限回路13と同数個有しており、外部のスイッチングHUB10と2組または4組のLAN用のツイストペアケーブル16で接続される。また、受電端末インタフェース部5とは、同ツイストペアケーブル16のデータ信号をそのまま接続する。
【0015】
受電端末インタフェース部5は、イーサネット受電端末15と接続するためのRJ−45コネクタを前記の電流制限回路13と同数個有しており、外部のスイッチングHUB10からHUBインタフェース部4を経由して受信するデータ信号に電力を結合させるものである。RJ−45モジュラコネクタに接続するケーブルは2組または4組のLAN用のツイストペアケーブル17である。なお、ツイストペアケーブル17でLANのデータ送受信と電力供給を行う方法については、様々な提案がされているので、ここでは説明を省略する。
【0016】
次に、本実施形態1におけるイーサネット受電端末15のハングアップ検出方法と給電制御方法について説明する。
イーサネット給電装置1の不揮発メモリ7には、装置自身のネットワークアドレス(IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイアドレスなど)以外に、給電ポート番号(受電端末インタフェース部5のRJ−45コネクタを識別する番号)とハングアップ検出対象となるイーサネット受電端末15のIPアドレス、及び給電するか否かのフラグを登録しておく。例えば、イーサネット受電端末に対して最大4台まで給電可能なイーサネット給電装置において、ハングアップ検出対象端末が1,2,4の給電ポートに接続されている場合は図5に示すようなテーブル登録内容となる。登録方法は前述したように、パーソナルコンピュータを利用したシリアルインタフェース部12経由でも良いし、Webブラウザを利用したLANインタフェース部8経由でも良いが、不揮発性メモリ7に上記テーブル情報を予め登録できる方法であれば、この限りではない。
【0017】
給電制御部2は、ハングアップ検出対象、かつ給電中のイーサネット受電端末15(図5の例では給電ポート1,2に接続されている端末)のIPアドレスに対して、定期的にICMPエコー要求パケットを送信する(図6の1)。同パケットを送信したイーサネット給電装置1は、同パケットに対するICMPエコー応答パケットをイーサネット受電端末15から受信することを待ち合わせる(図6の2)。この時、待ち合わせたICMPエコー応答パケットが一定期間(図6の3)内に連続して受信できなかった場合(図6の4)は、再度ICMPエコー要求パケットを再送し、再送が数回続いた場合(例では3回)は、同端末がハングアップしているものと見なす(図6の5)。この時、ICMPエコー応答パケットの待ち合わせ時間(図6の3)や再送回数は、プログラム固定値でも良いし、他のパラメータと同様に不揮発性メモリ7に格納して、外部から変更可能にしてもよい。また、ネットワークのトラフィック状態やICMPエコー要求パケット受信機器側の負荷状況を勘案したICMPエコー要求送信アルゴリズムについては、いくつかの方法が発明されているので、ここでは言及しない。
【0018】
なお、ICMPエコー要求/応答パケットは一般的にping(Packet InternetGroper)と呼ばれるもので、TCP/IP通信可能なイーサネット受電端末15であれば、特別な機器やソフトウェアを別途用意することなく送受信可能であり、ネットワーク機器の通信状態を確認するための手段として既知のものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0019】
ここで、ハングアップと判定した場合、給電制御部2は同イーサネット受電端末15の給電を一旦OFF(図6の6)し、一定期間(図6の7)経過後にON(図6の8)する。この一定期間(図6の7)はプログラム固定でも良いし、他のパラメータと同様に不揮発性メモリ7に格納して、外部から変更可能にしてもよい。これによって、ハングアップしたイーサネット受電端末15をハングアップから復旧させる。ただし、ハングアップした原因によっては、同動作では復旧しない場合もあるため、一定期間内にOFF/ON動作を繰り返すような場合は、図5のテーブルの給電可否フラグを「しない」とし、同イーサネット受電端末15が接続されている給電ポート番号への給電を恒久的に停止させることが必要である。恒久的に停止した給電ポート番号への再給電(一般的にはイーサネット受電端末15自身の交換を伴う)は、オペレータにより図5のテーブルの給電可否フラグを「する」に変更することによって解除される。この時の操作はパーソナルコンピュータを利用したシリアルインタフェース部12経由でも良いし、Webブラウザを利用したLANインタフェース部8経由でも良いが、不揮発性メモリ7の内容を変更できる方法であれば、この限りではない。なお、ハングアップ検出時や恒久的な給電停止時は、オペレータに対して注意喚起を促すような通知(LANインタフェース部8経由での電子メール送信など)を有することが好ましい。」

【図1】


上記記載から、甲3号証には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「イーサネット給電装置1であって、
給電制御部2と給電スイッチ部3と、HUBインタフェース部4と、受電端末インタフェース部5から構成され、
受電端末インタフェース部5は、イーサネット受電端末15と接続され、
給電制御部2は、ハングアップ検出対象、かつ給電中のイーサネット受電端末15のIPアドレスに対して、定期的にICMPエコー要求パケットを送信し、
同パケットに対するICMPエコー応答パケットをイーサネット受電端末15から受信することを待ち合わせ、
待ち合わせたICMPエコー応答パケットが一定期間内に連続して受信できなかった場合は、再度ICMPエコー要求パケットを再送し、再送が数回続いた場合は、同端末がハングアップしているものと見なし、
ハングアップと判定した場合、給電制御部2は同イーサネット受電端末15の給電を一旦OFFし、一定期間経過後にONし、
これによって、ハングアップしたイーサネット受電端末15をハングアップから復旧させる、
イーサネット給電装置1。」

4 甲4号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0015】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、ネットワーク介して接続された機器の通信状態や障害を検出して、管理者に確実に通知することができるとともに、障害の発生した機器を復旧処理の一部を自動的に行うことができるリモート監視システムを提供することを目的とする。」

「【0027】
図1は、本実施形態のリモート監視システム10の構成概略図である。このリモート監視システム10は、インターネット設備を持つマンション、ホテル、工場等の監視対象の建物の内部に設置されているルータ18、コアスイッチングハブ(以下、「コアハブ」ともいう)29、スイッチングハブ(以下、単に「ハブ」ともいう)30等の機器(以下、これらを総称する場合には、「監視対象機器」という)を、SNMPを使用し、遠隔地にある管理センタである監視サーバ装置12から広域ネットワークを介してリモート監視および管理するものである。図1に示されるように、リモート監視システム10は、監視サーバ装置12と、リモート監視装置(以下、単に「監視装置」ともいう)14とを備えている。なお、本実施形態においては、監視対象機器は、LAN28上においてプライベートIPアドレスを用いてアクセスされるようになっている。」

「【0030】
一方、監視装置14は、監視サーバ装置12に対してはSNMPのエージェントとなり、例えばルータやスイッチングハブ等の監視対象機器に対してはSNMPの管理マネージャとなるもので、監視対象機器が設置される各々の建物内に設置され、ルータ18等を介してIP網等の主回線24に接続されているとともに、モデム22等を介して公衆電話回線等の副回線26に接続可能に構成されている。また、監視装置14は、LAN28を介してルータ18やスイッチングハブ30等を含む監視対象機器と互いに接続されている。
【0031】
監視装置14は、監視サーバ装置12の管理の下で、ローカルネットワークであるLAN28を介して監視対象機器(ローカルIPを持つものを含む)の監視を行い、その管理情報を主回線24もしくは副回線26を介して監視サーバ装置12に通知する機能を備えている。また、ルータ18及びコアスイッチングハブ29といった主要機器の電源は監視装置14から供給されており、その電源のオン/オフは、監視装置14によって制御される。監視装置14は、主要機器のハングアップを検知し、電源再投入により、これらの機器の復旧を試みる機能を備えている。」

「【0037】
バックアップ回線I/F38は、ルータ18やコアスイッチングハブ等の主要機器が故障し、監視サーバ装置12に対して管理情報の通知ができなくなった場合に使用されるバックアップ用の副回線26、本実施形態の場合、モデム22を使用した公衆電話回線のインターフェースである。」

「【0040】
機器初期化制御部44は、制御装置14から電源を供給されている、ルータ18やコアスイッチングハブ等の主要機器に異常が発生したことを検知した場合、これらの主要機器の電源の再投入(電源を一旦オフした後、再度オンする)を所定回数繰り返し行う初期化(リブート)処理を行う。」

「【0044】
リモート監視システム10では、基本的に監視装置14から監視サーバ装置12に対し、トラップ(正常トラップ又は障害トラップ)による管理情報を送信することにより、監視サーバ装置12において、管理情報に基づいて監視装置14及び監視対象機器の監視および管理が行われる。また、必要に応じて、監視サーバ装置12が、監視装置14に対し、ポーリングによるSNMPコマンドやピン(ping)コマンド等の送信を行い、その応答を受信することによって、監視装置14および監視対象機器の監視および管理を行う。」

「【0056】
(2)主要機器を除く監視対象機器で障害が発生した場合
主要機器を除く監視対象機器で異常が発生した場合には、(a)異常が発生した監視対象機器からトラップが監視装置14に通知される、(b)監視装置14による状態情報の要求に対する応答情報の内容が正常とはいえない状態となる、及び(c)監視装置14による死活監視等の情報要求に対して応答がなくなる、の3つの内のいずれかが発生することにより、監視装置14により障害が発生したことが検出される。」

「【0061】
(3)監視対象機器における主要機器で障害が発生した場合
監視対象機器の中でも、ルータ18やコアスイッチングハブ等の主要機器については、主回線24の障害による障害通知の不達を防止するためにリアルタイムの死活監視が要求される。このため、これらの主要機器に対するポーリング等の間隔は、他の監視対象機器に対するポーリング間隔よりも短く設定されている。また、SNMPコマンドによる定期的な死活監視に加えて、ピンコマンドによる不定期な死活監視が併用される。なお、ピン(ping)コマンドは、SNMPに対応していない機器や、MIBを持っていない機器に対しても有効に利用することができる。これにより、このような機器に対しても別の手段を設けることなく監視を行うことができる。
【0062】
図7に示すように、監視装置14から、主要機器に例えば死活監視が送出された時に、その主要機器がハングアップしていると、監視装置14は、その収容機器から応答を受信することができない。これにより、監視装置14は、主要機器で異常が発生していることを検知し、電源を再投入し初期化して正常復帰させるよう試みる。この後、監視装置14は、副回線26を介して監視サーバ装置12に障害トラップを送出する。そして、一定時間が経過すると、監視装置14から、当該主要機器に死活監視を再度が送出する。この死活監視に対しても無応答であった場合には、監視装置14は、電源を再投入による初期化処理を規定回数まで行う。なお、この電源の再投入による初期化処理を行うごとに、監視装置14は、副回線26を介して監視サーバ装置12に障害トラップを送出する。これにより、当該主要機器が正常復帰すると、監視装置14から監視サーバ装置12に対し主回線24を介して、トラップによりその旨が通知される。この結果、監視サーバ装置12は、当該主要機器が異常から回復したことを検知する。一方、電源の再投入による初期化処理により正常復帰しない場合、監視装置14は、副回線26を介して監視サーバ装置12に障害トラップによりその旨を通知する。これにより、監視サーバ装置12は、当該主要機器で発生した異常が自己復帰できなかったことを検知する。」

【図1】

【図2】


上記記載から、甲4号証には以下の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「ルータ、コアスイッチングハブ、スイッチングハブ等の機器を、リモート監視および管理するリモート監視装置において、
ルータ及びコアスイッチングハブといった主要機器の電源は監視装置から供給されており、
監視装置は、主要機器のハングアップを検知し、電源再投入により、これらの機器の復旧を試みる機能を備えること。」

5 甲5号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、ネットワーク機器の論理的な接続が切断されたり、データの送受信を正常に行うことのできない重度障害に対してネットワークシステムの復旧を行うこと可能とするネットワーク機器制御方法を提供することにあり、また、物理リンクの断続の繰り返しによりネットワーク機器の制御を可能とするネットワーク機器の制御方法を提供することにある。」

「【0011】
前述したように構成されるネットワークシステムにおいて、管理端末1はHUB−A2、HUB−B4、HUB−Z6及び端末A1−Znの状態を定期的に監視することによりネットワークシステムの監視を行っている。管理端末1からの監視は、監視ソフト11がSNMP(Simple Network Management Protocol)を利用してコマンドデータを送信し、管理対象のHUBまたは端末からのレスポンスデータを受信することにより管理対象が正常に動作していることを確認するという方法で行われる。そして、管理端末1は、レスポンスデータを受信できない場合やデータが不正な場合に障害が発生していると認識する。」

「【0014】
接続相手であるHUB−A2も、前述と同様に送信信号線の信号電圧レベルをON(電圧レベル有り)として、受信信号線の電圧レベルを監視して物理リンク接続状態へ遷移する。この動作により、管理端末1とHUB−A2との間にお互いの物理的なリンク接続が成立する。なお、ネットワークアダプタ13は、監視ソフト11からの本発明による前述の物理リンク制御コマンドを受け取ると、送信信号線の信号電圧レベルをOFF(電圧レベル無し)/ON(電圧レベル有り)とする動作を10秒以内の間(T時間内)に指示された回数(N回)繰り返す。この動作が、本発明による物理的なリンク接続を一定時間内に任意の回数、切断/接続を繰り返す動作となる。
【0015】
HUB−A2、HUB−B4、HUB−Z6は、複数の接続ポート(図1には丸で囲んだ数字で示している)を有し、各ポートの物理リンクの状態を受信データの信号電圧レベルの有無により接続か未接続かを判断し、物理リンクの状態が変化した場合、ハードウェア割り込み信号が発行され、状態の変化を認識することができる。そして、HUB−A2、HUB−B4、HUB−Z6は、本発明による一定時間内に自リンクの物理的な切断/接続が一定回数以上繰り返されることにより、自機器の電源をOFF/ONする機能あるいはハードウェアのリセットを実施する機能を有している、この機能は、前述の物理リンクの状態が変化した場合に発生するハードウェア割り込みの回数をカウンタ回路でカウントし、例えば、10秒間に6回カウントされた場合に、電源回路にハードウェアリセット信号を送出することにより実現される。」

「【0020】
管理端末1は、HUB−A2、HUB−B4、HUB−Z6及び端末Am−Znの状態を前述で説明したようにして一定の時間毎に順次監視する〔(a)〜(d)〕。いま、この監視の(d)で、管理端末1が、HUB−A2に障害が生じ論理的な接続が切断され、正常にデータを送受信できないことを検出したとする。この場合、管理端末1の監視ソフト11は、ネットワークアダプタ13に対し、物理リンク制御コマンド(ハードウェアリセット:T≦10,N=6)を発行する。ここでの制御コマンドの例であるハードウェアリセットのコマンドは、送信信号線のOFF(電圧レベル無し)/ON(電圧レベル有り)を10秒の間に6回繰り返すというものである。このコマンドを受け取ったネットワークアダプタ13は、送信信号線の信号電圧レベルを10秒以内に6回OFF/ONする動作を繰り返す。
【0021】
リンクA3に接続されているHUB−A2は、物理リンクOFFにより物理リンク接続カウンタ及び物理リンクタイマをスタートさせる。そして、HUB−A2は、管理端末1と接続されているポート▲1▼の受信信号線の信号電圧レベルのOFF(電圧レベル無し)/ON(電圧レベル有り)が10秒間に6回繰り返されたことを検出すると、自機器の電源回路にハードウェアリセット信号を送出する。これにより、HUB−A2は、ハードウェアリセットされ障害から復旧する。」

【図1】

【図2】



上記記載から、甲5号証には以下の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「HUBの状態を定期的に監視することによりネットワークシステムの監視を行う管理端末において、
HUBは一定時間内に自リンクの物理的な切断/接続が一定回数以上繰り返されることにより、自機器の電源をOFF/ONする機能あるいはハードウェアのリセットを実施する機能を有しており、
管理端末は、HUBに障害が生じ論理的な接続が切断され、正常にデータを送受信できないことを検出した場合、物理リンク制御コマンドを発行することにより、HUBをハードウェアリセットさせること。」

6 甲6号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0007】
上記課題を解決するため本発明は、隔地より被写体を監視する監視システムであって、被写体を撮像する撮像装置と、該撮像装置を制御し該撮像装置で撮像された映像信号が入力され該映像信号を処理してネットワークへ送信する監視装置と、前記ネットワークを介して前記監視装置を制御し前記監視装置から前記ネットワークを介して受信した前記映像信号を表示する遠隔制御装置とを有し、該遠隔制御装置は、前記映像信号の受信における異常を検出した際に前記監視装置に固有なMACアドレスを含むマジックパケットを生成して前記監視装置へ前記ネットワークを介して送信する第1の制御部を有し、前記監視装置は、前記撮像装置を制御するCPUを含む第2の制御部と、前記映像信号を前記ネットワークへ送信し前記マジックパケットを受信して前記マジックパケットが前記監視装置に固有のMACアドレスを含む場合にはWOL信号を生成して前記CPUをリセットするEthernetコントローラを有することを特徴としている。
【0008】
また本発明は、撮像装置を制御し該撮像装置で撮像された映像信号が入力され該映像信号を処理してネットワークへ送信する監視装置であって、前記撮像装置を制御するCPUを含む制御部と、前記映像信号を前記ネットワークへ送信し前記監視装置に固有のMACアドレスを含むマジックパケットを受信した場合にはWOL信号を生成して前記CPUをリセットするEthernetコントローラを有することを特徴としている。
【0009】
また本発明は、被写体を撮像する撮像部と、該撮像部の動作を制御する第3の制御部と前記撮像部で撮像された映像情報を処理して送信し外部からの情報を受信して処理する第4の制御部を備える監視部と、前記監視部を制御し前記監視部から送信された前記映像情報を受信して表示し前記映像情報の受信における異常を検出した際に前記監視部に固有なMACアドレスを含むマジックパケットを生成して前記監視装置へ送信する第5の制御部を備える遠隔制御部を有する隔地より被写体を監視する監視システムの制御方法であって、前記第4の制御部は、前記マジックパケットを受信する受信ステップと、前記マジックパケットが含む前記MACアドレスが前記監視部固有のMACアドレスであるか否かを判定するMACアドレス判定ステップと、該MACアドレス判定ステップでの判定の結果、前記監視部固有のMACアドレスであると判定された場合にはWOL信号を生成するWOL信号生成ステップと、該WOL信号生成ステップで生成されたWOL信号を用いて前記第3の制御部をリセットするリセットステップを有することを特徴としている。」

上記記載から、甲6号証には以下の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「遠隔制御装置において、異常を検出した装置に固有なMACアドレスを含むマジックパケットを送信することにより、当該装置のCPUをリセットすること。」

7 甲7号証には、図面とともに以下の記載がある。

「【0002】
複数のコンピュータから構成されるデータ送信システムにおいて、重要な課題の1つに障害状況の監視があり、分散システムに対して障害状況を監視する技術がある(特許文献1参照)。この関連する技術では、障害監視サーバが存在し、各コンピュータの中に設けられている監視モジュールから、定期的に監視サーバへハートビートを送信することにより、各コンピュータの障害状況を監視している。」

上記記載から、甲7号証には以下の事項(以下、「甲7記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「定期的に監視サーバへハートビートを送信することにより、各コンピュータの障害状況を監視すること。」

第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)甲1発明との対比、判断
ア 対比
(ア)甲1発明の「PoE受電装置5A,5B,5C」は、本件特許発明1の「接続機器」に相当する。

(イ)甲1発明の「PoE給電装置4A,4B」は、「PoE受電装置5A,5B,5Cへの給電を制御」しているから、上記(ア)を踏まえると、本件特許発明1の「配下に接続された接続機器へのPoE電源制御手段」を備えるといえる。

(ウ)甲1発明において「監視制御装置2」は、「PoE給電装置4A,4B」の中継により「PoE受電装置5A,5B,5C」の「異常が発生した」か否かの監視を行うことは明らかであるから、甲1発明の「PoE給電装置4A,4B」は、本件特許発明1の「通信中継手段」に相当する構成を備えるといえる。

(エ)上記(ア)、(イ)、(ウ)を踏まえると、甲1発明の「PoE給電装置4A,4B」は、本件特許発明1の「PoE給電装置」に相当する。

(オ)甲1発明の「監視制御装置2」は、「PoE給電装置4A,4B」と「ネットワーク3を介して接続されている」から、本件特許発明1の「PoE給電装置と通信を行う通信手段」に相当する構成を備えるといえる。

(カ)甲1発明の「装置稼働状況監視部21」は、上記(ア)、(イ)、(ウ)を踏まえると、本件特許発明1の「監視手段」と、「通信手段を介して」、「接続機器の正常稼働を監視する」点で共通する。

(キ)甲1発明の「監視制御装置2」は、「PoE受電装置5A,5B,又は5Cに異常が発生したとき」に、「該当するPoE受電装置を再起動させることで、その機能の復旧を図る」ものであるから、上記(カ)を踏まえると、本件特許発明1の「前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に相当する構成を備えるといえる。

(ク)以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段とを備えたPoE給電装置と通信を行なう通信手段と、
前記通信手段を介して前記接続機器の正常稼働を監視する監視手段と、
前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させる接続機器復旧手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。」

[相違点1]
本件特許発明1の「電源制御装置」が「PoE給電装置への電源を制御」するのに対して、甲1発明の「監視制御装置2」ではそのように特定されていない点。

[相違点2]
本件特許発明1の「電源制御装置」が「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えるのに対して、甲1発明の「監視制御装置2」ではそのように特定されていない点。

[相違点3]
本件特許発明1では「監視手段」が「前記接続機器」に加えて「前記PoE給電装置」の「正常稼働を監視する」ものであり、また、本件特許発明1の「電源制御装置」は「前記監視手段によって前記接続機器が正常ではないと判断された場合に、前記接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記監視手段によって前記PoE給電装置が正常ではないと判断された場合に、前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を備えるのに対して、甲1発明では、「監視制御装置2」が「各PoE受電装置5A,5B,5Cの稼働状況」のみを「監視」するものであり、甲1発明の「監視制御装置2」は、単に、「上記PoE受電装置5A,5B,5Cに異常が発生したときは、該当するPoE受電装置を再起動させる」ものである点。

イ 判断
本件特許発明1は「第一電源出力手段」の出力する「PoE給電装置への電源を制御」することにより、「正常ではないと判断された」「PoE給電装置を復旧させる」ものであると解されるため、相違点1−3は互いに関連しているといえるから、相違点1−3について、まとめて検討する。
上記のとおり、甲4号証ないし7号証には、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を備える点は記載されていない。また、この点が出願日前に周知技術であったとも認められない。
そして、本件特許発明1は、相違点1−3に係る構成を有することで、「PoE給電装置200および700、PoE接続機器300、ルータ400の正常稼働を電源制御装置100が監視し、正常稼働していない場合には必要に応じて、電源制御装置100に直接接続されたPoE給電装置200および700、およびルータ400を再起動させ、PoE給電装置200を介してPoE接続機器300を再起動させることができるので、正常稼働率を上昇させることができる(段落【0158】)」という、格別の効果を奏するものである。
そうすると、相違点1−3に係る本件特許発明1の構成は、甲1発明および甲4−7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明および甲4−7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、甲1発明と甲4記載事項とはともに、装置の稼働監視および障害を復旧する技術であることから、甲4記載の技術を甲1発明に適用する動機づけがあり、PoE受電装置だけでなくPoE給電装置も、稼働監視および障害復旧を行うため、甲4記載の技術を適用し、PoE給電装置に電源を供給して、異常が発生している場合に復旧させる構成とすることは、当業者にとって容易である旨、主張している。(特許異議申立書第31頁)

しかしながら、甲4号証には、「接続機器」に相当する記載がないため、「ルータ及びコアスイッチングハブといった主要機器の電源を監視装置から供給し、主要機器のハングアップを検知し、電源再投入により、これらの機器の復旧を試みる機能」を「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて有する点についても当然に記載がない。
さらに、甲1発明の「PoE給電装置」は、その下流側に「PoE受電装置」が複数接続され得るものであり「監視」の中継を行うことから、ハブに相当する機能を有する装置であるといえる。しかしながら、甲4号証には、電源を供給するとともに、ハングアップを検知した場合に電源再投入により復旧を行う主要機器にスイッチングハブ30を含めることは記載されていない。
したがって、甲1発明に甲4記載事項を適用しても、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を有する構成には到達しない。

(イ)特許異議申立人は、甲1発明と甲5記載事項とはともに、装置の稼働監視および障害を復旧する技術であることから、甲5記載の技術を甲1発明に適用する動機づけがあり、PoE受電装置だけでなくPoE給電装置も、稼働監視および障害復旧を行うため、甲5記載の技術を適用し、PoE給電装置に電源を供給して、異常が発生している場合に復旧させる構成とすることは、当業者にとって容易である旨、主張している。(特許異議申立書第32頁)

しかしながら、甲5号証には、「管理端末は、HUBに障害が生じ論理的な接続が切断され、正常にデータを送受信できないことを検出した場合、物理リンク制御コマンドを発行することにより、HUBをハードウェアリセットさせること」は記載されているものの、「管理端末」が「HUB」に電源を供給している旨の記載はないから、「HUB」への電源を制御していることについても当然に記載がない。
したがって、甲1発明に甲5記載事項を適用しても、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を有する構成には到達しない。

(ウ)よって、特許異議申立人の主張はいずれも採用できない。

(2)甲2発明との対比、判断
ア 対比
(ア)甲2発明の「PoE対応カメラ300」は、「ルーター100」に「LANケーブル200を介して接続」されているから、本件特許発明1の「配下に接続された接続機器」に相当する。

(イ)甲2発明の「有線LAN通信/電力供給部111」は、「電力供給制御部111b」を有して「PoE対応カメラ300」への給電を制御しているから、上記(ア)を踏まえると、本件特許発明1の「PoE電源制御手段」に相当する。

(ウ)甲2発明の「有線LAN通信/電力供給部111」は、「有線通信制御部111a」を有して、「主制御部101」と「PoE対応カメラ300」との間の通信を中継していることは明らかであるから、本件特許発明1の「接続機器との通信を中継する通信中継手段」にも相当する。

(エ)甲2発明の「ルーター100」は、上記(ア)(イ)(ウ)を踏まえると、本件特許発明1の「PoE給電装置」に相当する。

(オ)以上より、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段とを備えたPoE給電装置。」

[相違点]
本件特許発明1の「電源制御装置」に対応する構成を、甲2発明が有しない点。

イ 判断
上記のとおり、甲2発明は、本件特許発明1の「電源制御装置」に対応する構成を有しない。
そして、甲4号証は、ルータ等の機器に対する監視装置に関するものであるから、甲2発明に甲4記載事項を適用しても、「PoE対応カメラ300の安定運用を実現することができるルーター100」と、「ルーター100に電源を供給し、当該ルーター100のハングアップを検知し、電源再投入により、復旧を試みる監視装置」とを有する構成に到達するに過ぎず、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を有する「電源制御装置」には到達しない。
さらに、上記1(1)ウ(イ)で述べたとおり、甲5号証には、「管理端末」が「HUB」に電源を供給しているか記載がなく、「HUB」への電源を制御しているかについても記載がないから、甲2発明に甲5記載事項を適用しても、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を有する「電源制御装置」には到達しない。
また、甲6号証および甲7号証についても、「電源制御装置」に対応する記載はない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明および甲4−7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、甲2発明と甲4記載事項とは、ともに装置の稼働監視および障害を復旧する技術であることから、甲4記載の技術を甲2発明に適用する動機づけがあり、PoE対応カメラ300だけでなく有線LAN通信/電力供給部111も、稼働監視および障害復旧を行うため、異常が発生している場合に復旧させる構成とすることは、当業者にとって容易である旨、主張している。(特許異議申立書第34頁)
また、当該主張の前提として、特許異議申立人は、甲2発明における「有線LAN通信/電力供給部111」自体が、「PoE給電装置」に相当するとしている。(特許異議申立書第33頁)

しかしながら、甲2発明に甲4記載事項を適用した場合については、上記イで述べたとおりである。
さらに、甲2号証における「有線LAN通信/電力供給部111」を有する機器について、ルーターに限らずPoE給電装置であってもよい旨の記載(段落【0055】)からすれば、甲2発明における「有線LAN通信/電力供給部111」自体が、「PoE給電装置」に相当するとはいえない。

(イ)特許異議申立人は、甲2発明と甲5記載事項とは、ともに装置の稼働監視および障害を復旧する技術であることから、甲5記載の技術を甲2発明に適用する動機づけがあり、PoE対応カメラ300だけでなく有線LAN通信/電力供給部111も、稼働監視および障害復旧を行うため、異常が発生している場合に復旧させる構成とすることは、当業者にとって容易である旨、主張している。(特許異議申立書第35頁)

しかしながら、甲2発明に甲5記載事項を適用した場合については、上記イで述べたとおりである。

(ウ)よって、特許異議申立人の主張はいずれも採用できない。

(2)甲3発明との対比、判断
ア 対比
(ア)甲3発明の「イーサネット受電端末」は、「イーサネット給電装置」と接続されているから、本件特許発明1の「配下に接続された接続機器」に相当する。

(イ)甲3発明の「給電スイッチ部3」は、「イーサネット受電端末」への給電を制御しているから、上記(ア)を踏まえると、本件特許発明1の「PoE電源制御手段」に相当する。

(ウ)甲3発明の「受電端末インタフェース部」は、スイッチングHUBと「イーサネット受電端末」との間のデータ信号を中継しているから、本件特許発明1の「接続機器との通信を中継する通信中継手段」に相当する。

(エ)甲3発明の、「イーサネット給電装置」は、上記(ア)(イ)(ウ)を踏まえると、本件特許発明1の「PoE給電装置」に相当する。

(オ)以上より、本件特許発明1と甲3発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「配下に接続された接続機器へのPoE電源を制御するPoE電源制御手段と、接続された前記接続機器との通信を中継する通信中継手段とを備えたPoE給電装置。」

[相違点]
本件特許発明1の「電源制御装置」に対応する構成を、甲3発明が有しない点。

イ 判断
上記のとおり、甲3発明は、本件特許発明1の「電源制御装置」に対応する構成を有しない。
そして、甲4号証はルータ等の機器に対する監視装置に関するものであるから、甲3発明に甲4記載事項を適用しても、「ハングアップしたイーサネット受電端末15をハングアップから復旧させる、イーサネット給電装置」と、「イーサネット給電装置に電源を供給し、当該イーサネット給電装置のハングアップを検知し、電源再投入により、復旧を試みる監視装置」を有する構成に到達するに過ぎず、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を有する「電源制御装置」には到達しない。
さらに、上記1(1)ウ(イ)で述べたとおり、甲5号証には、「管理端末」が「HUB」に電源を供給しているか記載がなく、「HUB」への電源を制御しているかについても記載がないから、甲3発明に甲5記載事項を適用しても、「PoE給電装置に入力するための電力を出力する第一電源出力手段」を備えて「PoE給電装置への電源を制御」し、「接続機器を復旧させる接続機器復旧手段」に加えて「前記PoE給電装置を復旧させるPoE給電装置復旧手段」を有する「電源制御装置」には到達しない。
また、甲6号証および甲7号証についても、「電源制御装置」に対応する記載はない。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明および甲4−7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、甲3発明と甲4記載事項とは、ともに装置の稼働監視および障害を復旧する技術であることから、甲4記載の技術を甲3発明に適用する動機づけがあり、イーサネット受電端末15だけでなく給電スイッチ部3および受電端末インターフェース部5も、稼働監視および障害復旧を行うため、甲4記載の技術を適用し、異常が発生している場合に復旧させる構成とすることは、当業者にとって容易である旨、主張している。(特許異議申立書第37頁)

しかしながら、甲3発明に甲4記載事項を適用した場合については、上記イで述べたとおりである。

(イ)特許異議申立人は、甲3発明と甲5記載事項とは、ともに装置の稼働監視および障害を復旧する技術であることから、甲5記載の技術を甲3発明に適用する動機づけがあり、イーサネット受電端末15だけでく給電スイッチ部3および受電端末インターフェース部5も、稼働監視および障害復旧を行うため、甲5記載の技術を適用し、異常が発生している場合に復旧させる構成とすることは、当業者にとって容易である旨、主張している。(特許異議申立書第38頁)

しかしながら、甲3発明に甲5記載事項を適用した場合については、上記イで述べたとおりである。

(ウ)よって、特許異議申立人の主張はいずれも採用できない。

2 本件特許発明2ないし11について
本件特許発明2ないし8は、本件特許発明1を減縮した発明である。また、本件特許発明9ないし11は、本件特許発明1に対応する「電源制御方法」の発明、「電源制御プログラム」の発明、「電源制御システム」の発明であり、本件特許発明1とカテゴリ等が相違するに過ぎない発明である。
そうすると、本件特許発明2ないし11は、上記1で検討したように、甲1発明ないし甲3発明のいずれかおよび甲4号証ないし甲7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-29 
出願番号 P2017-202806
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 富澤 哲生
石井 則之
登録日 2021-09-16 
登録番号 6945416
権利者 明京電機株式会社
発明の名称 電源制御装置、制御方法、制御プログラム、および制御システム  
代理人 工藤 一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ