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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1386510
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-27 
確定日 2022-07-13 
事件の表示 特願2018−528972「遠隔制御されるメディアスタジオ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日国際公開、WO2017/096268、平成31年 1月17日国内公表、特表2019−501584〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)12月2日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年12月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 7月31日 :手続補正書の提出
令和 元年 5月16日付け:拒絶理由通知書
同年10月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月16日付け:拒絶査定
同年 7月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月30日 :前置報告書
令和 3年 2月 5日 :上申書の提出
同年 7月16日付け:拒絶理由通知書(当審)
同年10月19日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜17に係る発明は、令和3年10月19日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、各構成の符号(A)〜(B5)は、説明のために当審で付したものであり、以下、「構成A」〜「構成B5」という。

〔本願発明〕
(A)プロセッサとメモリを含むコンピュータ装置を含むシステムであって、
(B)前記プロセッサが
(B1)1つ以上の各入力から受信された複数の個々のメディア情報をデコードすることにより生成された複数のメディア入力情報のうちの複数のメディア入力情報を含むマルチビュー・メディア情報を生成し、前記マルチビュー・メディア情報は同時に視聴されるように配置された前記複数の前記メディア入力情報を結合しており、
(B2)前記コンピュータ装置から離れたオペレータコンソールに、インタラクティブユーザインタフェース内に表示するための前記マルチビュー・メディア情報を送信し、
(B3)前記オペレータコンソールから、前記インタラクティブユーザインタフェースとのユーザインタラクションに対応する2つ以上の命令を受信し、前記2つ以上の命令は、メディア出力情報に含められる、前記マルチビュー・メディア情報中に含まれている前記複数の前記メディア入力情報の少なくとも1つのメディア入力情報を特定する命令を含み、かつ前記少なくとも1つのメディア入力情報上で行うための少なくとも1つのビデオ処理機能を示す命令を含み、
(B4)前記メディア出力情報が、前記少なくとも1つのビデオ処理機能に従ってビデオプロセッサによって選択および処理された前記少なくとも1つのメディア入力情報を含むように、前記2つ以上の命令に従って、前記デコードすることにより生成された前記複数のメディア入力情報から前記メディア出力情報を生成し、
(B5)生成した前記メディア出力情報を前記オペレータコンソールから離れたメディア装置に送信する
(B)ためにプログラムされるように、前記プロセッサによって実行可能な指示を、前記メモリが格納する
(A)システム。

第3 当審による拒絶の理由
当審が令和3年7月16日付けで通知した拒絶の理由のうち、本願発明に係るものは次のとおりである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2009−267999号公報
引用文献2:特開2005−229241号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:欧州特許出願公開第2403236号明細書(周知技術を示す文献)

第4 引用文献
1 引用文献1
(1)記載事項
上記引用文献1には、図面とともに次の記載がある。なお、以降の下線は、説明のために当審において付したものである。

「【0015】
[システム構成]
まず、ライブ配信システム1の全体構成を説明する。
図1は、ライブ配信システム1の構成を模式的に説明する図である。
図1に例示するように、ライブ配信システム1は、動画提供システム10と、少なくとも1つの携帯端末7と、クライアント端末8とを有する。本例では、複数の携帯端末7(7A、7B、・・・)が用意されている。また、中継画像の配信先として、複数のクライアント端末9が用意されている。」

「【0018】
動画提供システム10は、携帯端末7により撮影された動画像を、クライアント端末9に配信するコンピュータシステムである。本例の動画提供システム10は、公衆回線網を介して、複数の携帯端末7と接続しており、インターネット網を介して、編集者のクライアント端末8、及び、視聴者のクライアント端末9と接続している。
本例の動画提供システム10は、ウェブサーバとしての機能を有しており、クライアント端末8のウェブブラウザを介して、動画像に対する編集操作を受け付ける。
また、本例の動画提供システム10は、ストリーミングサーバとしての機能も有しており、クライアント端末8及び9に対して、動画像をストリーミング配信する。
【0019】
図2は、動画提供システム10の機能構成を例示する図である。
図2に例示するように、動画提供システム10は、回線分配部100、編集操作受付部110、入力切替部120、ビデオキャプチャ130、同期部140、画像編集部150、挿入情報格納部160、配置決定部170、配信部180、及び撮影指示部190を有する。」

「【0021】
編集操作受付部110は、編集者のクライアント端末8から、編集操作を受け付ける。本例の編集操作受付部110は、クライアント端末8のウェブブラウザを介して、編集者の編集操作を受け付ける。編集操作としては、映像ソース(すなわち、回線分配部100により受信した動画像信号)の切替え、画像又は音声の調整、及び、テロップなど(挿入情報)の挿入などがある。」

「【0030】
図3は、ライブ配信システム1の全体動作(S10)を例示するシーケンス図である。
また、図4は、編集者のクライアント端末8に表示される編集画面5を例示する図である。
図3に例示するように、ステップ100(S100)において、編集者のクライアント端末8は、動画提供システム10にログインして、撮影開始指示を行う。具体的には、動画提供システム10にログインすると、クライアント端末8のウェブブラウザには、図4に例示する編集画面5が表示される。編集者は、編集画面5の撮影指示ボタン510をクリックすると、撮影指示メッセージの候補が複数表示され、これらの中から、撮影開始を指示するメッセージを選択する。
ステップ102(S102)において、動画提供システム10(回線分配部100)は、予め携帯端末7とテレビ電話回線を確立しており、編集者のクライアント端末8から撮影開始指示を受信すると、動画提供システム10(撮影指示部190)は、テレビ電話回線を介して、各携帯端末7に対して、撮影開始を指示する画像を送信する。」

「【0032】
ステップ108(S108)において、動画提供システム10は、各携帯端末7から受信した動画像信号をそのままストリーミングデータに変換し、変換されたストリーミングデータ(ソースデータ)を編集者のクライアント端末8に配信する。クライアント端末8に配信されるソースデータは、編集画面5(図4)の入力画像領域500に、配置決定部170により決定された配置で配列表示される。
【0033】
ステップ110(S110)において、編集者が所望のタイミングで番組開始を指示すると、編集者のクライアント端末8は、番組開始指示を動画提供システム10に送信する。具体的には、編集画面5の番組開始ボタン512がクリックされると、クライアント端末8は、番組開始指示を動画提供システム10に送信する。
ステップ112(S112)において、動画提供システム10は、編集者のクライアント端末8から番組開始指示を受信すると、視聴者のクライアント端末9に対するストリーミング配信を開始する。
【0034】
ステップ114(S114)において、編集者が所望のタイミングで映像の切替操作を行うと、編集者のクライアント端末8は、映像の切替指示を動画提供システム10に送信する。具体的には、編集画面5(図4)の入力画像領域500の中から、所望の撮影画像を編集者がダブルクリックすると、ダブルクリックされた撮影画像が出力画像領域502に表示される。この出力画像領域502に表示された撮影画像は、確定ボタン506がクリックされた後に、出力データ(すなわち、入力切替部120により選択された動画像信号)となる。
【0035】
ステップ116(S116)において、動画提供システム10(入力切替部120)は、編集者のクライアント端末8から、映像の切替指示を受信すると、受信した切替指示に応じて、映像ソースの切替えを行う。
ステップ118(S118)において、動画提供システム10は、切替後の映像ソースをストリーミングデータ(出力データ)に変換し、視聴者のクライアント端末9に配信する。切替後の出力データは、編集者のクライアント端末8にも配信され、編集画面5(図4)の出力画像領域502に表示される。また、切替後の出力データの配信が開始されると、編集画面5の入力画像領域500において、この出力データに対応する撮影画像が、選択されていない撮影画像とは異なる態様で表示される。」

「【0040】
なお、上記シーケンス図では、編集操作として、映像ソースの切替えと、テロップの挿入とを行う形態を具体例として説明したが、他の編集操作を行うことも可能である。例えば、編集画面5(図4)の入力画像領域500において、各撮影画像上で右クリックすると、解像度調整、色調整及び音量調整などの調整メニューが表示される。編集者は、これらのメニューの中から所望の調整メニューを選択し、調整量を指定することにより、所望のタイミングで、それぞれの映像ソース(動画像データ)に対して、解像度調整、色調整又は音量調整を行うことができる。
また、編集操作(映像ソースの入替え、テロップの挿入、音量調整など)の確定は、確定ボタン506のクリックが条件となっている。したがって、編集者は、確定ボタン506をクリックするまでの間、出力画像領域502において編集結果のプレビューを見ることができ、編集結果が意に沿わない場合などには、戻すボタン508をクリックすることにより、編集操作をキャンセルすることができる。」

「【0042】
図5は、動画提供システム10の動作をより詳細に説明するフローチャートである。なお、本フローチャートでは、説明の便宜上、各ステップが直列に記載されているが、実際には、各ステップの処理が並行して実施されている。
図5に示すように、ステップ200(S200)において、動画提供システム10の回線分配部100は、テレビ電話回線を介して、各携帯端末7から動画像信号(テレビ電話信号)を受信すると、受信した動画像信号をその携帯端末に対応付けて入力切替部120に出力する。なお、動画像信号の受信も、携帯端末7による撮影と並行して実施される。」

「【0045】
ステップ215(S215)において、画像編集部150は、編集操作受付部110により受け付けた編集操作に応じて、同期部140から入力された動画像データのうち、指定された動画像データに対して、指定された編集処理を施し、画像処理が施された動画像データを配信部180に出力する。
なお、編集処理が指示されていない動画像データは、そのまま配信部180に出力される。」

「【図1】



「【図4】



(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の末尾の括弧内に、対応する明細書の記載箇所を示した。また、各構成の符号(a)〜(j)は、説明のために当審で付したものであり、以下、「構成a」〜「構成j」という。

〔引用発明〕
(a)携帯端末7により撮影された動画像を、クライアント端末9に配信するコンピュータシステムである動画提供システム10であって、(【0018】)
(b)公衆回線網を介して、複数の携帯端末7と接続しており、インターネット網を介して、編集者のクライアント端末8、及び、視聴者のクライアント端末9と接続しており、(【0018】)
(c)回線分配部100、編集操作受付部110、入力切替部120、ビデオキャプチャ130、同期部140、画像編集部150、挿入情報格納部160、配置決定部170、配信部180、及び撮影指示部190を有し、(【0019】)
(d)各携帯端末7から受信した動画像信号をそのままストリーミングデータに変換し、変換されたストリーミングデータ(ソースデータ)を編集者のクライアント端末8に配信し、クライアント端末8に配信されるソースデータは、編集画面5(図4)の入力画像領域500に、配置決定部170により決定された配置で配列表示され、(【0032】)
(e)編集画面5の番組開始ボタン512がクリックされ、編集者のクライアント端末8から番組開始指示を受信すると、視聴者のクライアント端末9に対するストリーミング配信を開始し、(【0033】)
(f)編集者が所望のタイミングで映像の切替操作を行うと、編集者のクライアント端末8から映像の切替指示が送信され、具体的には、編集画面5(図4)の入力画像領域500の中から、所望の撮影画像を編集者がダブルクリックすると、ダブルクリックされた撮影画像が出力画像領域502に表示され、この出力画像領域502に表示された撮影画像は、確定ボタン506がクリックされた後に、出力データとなり、(【0034】)
(g)編集者のクライアント端末8から、映像の切替指示を受信すると、受信した切替指示に応じて、映像ソースの切替えを行い、(【0035】)
(h)切替後の映像ソースをストリーミングデータ(出力データ)に変換し、視聴者のクライアント端末9に配信し、(【0035】)
(i)編集画面5(図4)の入力画像領域500において、各撮影画像上で右クリックすると、解像度調整、色調整などの調整メニューが表示され、編集者は、これらのメニューの中から所望の調整メニューを選択し、調整量を指定することにより、所望のタイミングで、それぞれの映像ソース(動画像データ)に対して、解像度調整、色調整などを行うことができ、(【0040】)
(j)画像編集部150は、編集者のクライアント端末8から編集操作受付部110により受け付けた編集操作に応じて、同期部140から入力された動画像データのうち、指定された動画像データに対して、指定された編集処理を施し、画像処理が施された動画像データを配信部180に出力する(【0021】、【0045】)
(a)動画提供システム10。

2 引用文献2
(1)記載事項
上記引用文献2には、図面とともに次の記載がある。

「【0021】
図1は本発明における第一実施例における映像処理装置を利用したシステム構成を示した説明図であり、図2は図1における映像処理装置としてのサーバー1を構成する手段を示したブロック図である。以下、図1及び図2に基づき第一実施例における映像処理装置を利用した動画コンテンツ配信システムについて説明する。
【0022】
1は各種の動画情報を記憶,管理及び配信する映像処理装置としてのサーバーであり、2はサーバー1から配信された動画コンテンツを再生する携帯情報端末としての携帯電話である。サーバー1と携帯電話2とは、図示しない携帯電話交換機やプロバイダなどを介してインターネットなどの通信回線網3で相互に接続される。
【0023】
30は例えばCCDカメラなどの撮像手段(図示せず)と、前記撮像手段から出力される撮像信号を所定のデータ形式で撮像データとして生成する撮像データ生成手段(図示せず)と、通信回線網3に接続し撮像データをサーバー1へ送信するための通信手段(図示せず)とを備えたWebカメラであり、例えばゴルフ練習場,歌手のライブ会場などの動画コンテンツとして配信したい映像の撮像場所に設置される。具体的な用途としては、ゴルフ練習場では練習の様子をカメラで録画しスロー再生することにより自分のフォームを確認すること、歌手などのライブ会場ではコンサート,ライブなどの映像を会場にいなくてもリアルタイムで観ることなどが挙げられる。前記撮像データの形式としては、データ容量の縮小化及びデータ送信の高速化から例えばMPEG(Moving Picture Expert Group)4などの国際規格に準拠して圧縮されたものが好ましい。」

「【0025】
サーバー1は、動画コンテンツ21を格納,保管する例えばハードディスクなどの大容量記憶装置を有する記憶管理手段10と、通信回線網3に接続して各種データを送受信するための通信手段11と、各構成手段を有機的に結合し動画コンテンツ21を配信するための一連の制御を行うサーバー制御手段12とから構成されている。」

「【0027】
サーバー制御手段12は、配信要求受付手段12a,動画コンテンツ読出し手段12b,通信制御手段12cの他に、撮像データ受信手段11aで受信した撮像データ41を動画コンテンツ21として記憶管理手段10に格納する撮像データ保存手段12dと、複数のWebカメラ30から受信した複数の撮像データ41を携帯電話2の画面2a上で4画面分割表示(図1の2d,2e)できるよう結合したり、縮小表示(図1の2c,2e)できるよう加工したりといった、動画コンテンツのデータ編集を行う動画コンテンツ編集手段12eとを備えている。またWebカメラ30に、前述したような例えばMPEG4などの国際規格に準拠して圧縮する機能が備わっていない場合には、任意の手段として、撮像データ41を前記国際規格に準拠して圧縮する撮像データ圧縮手段12fを備えてもよい。この撮像データ圧縮手段12fは、撮像データ41を受信する毎に逐次前記国際規格に準拠した所定のデータ形式に圧縮していく。」

「【0037】
このようにすると、サーバー制御手段12がWebカメラ30により撮像された撮像データ41に基づき必要な動画コンテンツ42を生成し、これを直接携帯情報端末としての携帯電話2に直接送信するため、Webカメラ30で撮像した映像をリアルタイムで再生,閲覧することができる。また、携帯電話2からの要求に応じて撮像データ41を編集し、4分割表示などといった複数の映像を同時に閲覧できるように独自の動画コンテンツ42を生成することができる。従って、携帯電話2によりどこでも手軽にリアルタイム映像を閲覧することができるとともに、複数の映像を同時に閲覧することが可能となり、利用者の満足度を向上させることができる。」

「【0040】
さらに、動画コンテンツ42の配信途中でも携帯電話2からの映像の切換え,4画面分割表示,縮小表示などといった表示内容変更要求を配信要求として受け付けるようにしている。
【0041】
このようにすると、利用者は複数のWebカメラ30により撮像した映像の切換え,4画面分割表示,縮小表示といった表示内容を携帯電話2からいつでも変更することができる。上記以外にも、動画コンテンツ21の利用形態に応じて巻き戻し,早送り,一時停止,追い掛け再生(Webカメラ30の映像を録画しながらその録画データを配信)などの機能をサーバー制御手段12の制御シーケンスを変更するだけで追加することが可能であるため、設備を変更することなく利用者の利用形態に応じて柔軟に対応することができる。」

「【図1】



(2)記載技術
上記(1)から、引用文献2には次の技術が記載されていると認められる。

「Webカメラと、動画情報を記憶、管理及び配信する映像処理装置としてのサーバーと、サーバーから配信された動画コンテンツを再生する携帯情報端末としての携帯電話により構成される動画コンテンツ配信システムにおいて、
Webカメラは、CCDカメラなどの撮像手段と、前記撮像手段から出力される撮像信号を所定のデータ形式で撮像データとして生成する撮像データ生成手段と、通信回線網に接続し撮像データをサーバーへ送信するための通信手段とを備え、前記撮像データの形式としては、データ容量の縮小化及びデータ送信の高速化から例えばMPEG(Moving Picture Expert Group)4などの国際規格に準拠して圧縮されたものが好ましく、
サーバーは、サーバー制御手段等から構成され、当該サーバー制御手段は、複数のWebカメラから受信した複数の撮像データを携帯電話の画面上で4画面分割表示(図1の2d,2e)できるよう結合したり、縮小表示(図1の2c,2e)できるよう加工したりといった、動画コンテンツのデータ編集を行う動画コンテンツ編集手段を備えており、
携帯電話からの要求に応じて撮像データを編集し、4分割表示などといった複数の映像を同時に閲覧できるように独自の動画コンテンツを生成することができ、
さらに、動画コンテンツの配信途中でも携帯電話からの映像の切換え,4画面分割表示,縮小表示などといった表示内容変更要求を配信要求として受け付けるようにしており、
利用者は複数のWebカメラにより撮像した映像の切換え,4画面分割表示,縮小表示といった表示内容を携帯電話からいつでも変更することができる技術。」

3 引用文献3
(1)記載事項
上記引用文献3には、図面とともに次の記載がある。

「SUMMARY OF THE INVENTION

[0011] Exemplary systems and methods are disclosed for mixing of video streams in a collaborative mobile environment. In an embodiment, method for mobile video mixing includes receiving a plurality of video streams at a mobile device corresponding to one or more cameras capturing an event. The one or more cameras can be operated by one or more camera operators who capture and broadcast video streams from multiple locations at the venue of the event. The event may correspond to a live team-based sports or a public event. The method further includes choosing a group of video streams intended to be previewed at the mobile device. In a successive progression, the group of video streams are combined to generate a combined video streams such that the combined video signal provides a simultaneous preview of the group of video signals when displayed on the display of the mobile device. A user (e.g. video director) can then select a video stream from the simultaneous preview of group of video streams and send a request for a broadcast of the selected video stream.」

(仮訳:
発明の概要
[0011]協調モバイル環境におけるビデオストリームのミキシングについての例示的なシステム及び方法が開示される。一実施形態では、モバイルのビデオミキシング方法は、イベントを撮影する1以上のカメラに対応するモバイルデバイスにおいて複数のビデオストリームを受信することを含む。前記1以上のカメラはイベントの開催地での多数の場所からビデオストリームを捕捉して放送する1以上のカメラオペレータによって操作される。前記イベントはライブのチームベースのスポーツや公共イベントに対応することができる。前記方法は、さらにモバイルデバイスでプレビューされるビデオストリームのグループを選択することを含む。続いて、前記ビデオストリームのグループは、結合ビデオストリームを生成するために結合され、モバイルデバイスのディスプレイに表示されたときに、結合ビデオ信号がビデオ信号のグループの同時プレビューを提供するようになっている。ユーザ(例えはビデオ編集者)は、ビデオストリームのグループの同時プレビューからビデオストリームを選択し、選択されたビデオストリームを放送する要求を送信できる。)

「Exemplary Collaborative mobile environment

[0016] Fig. 1 illustrates a collaborative mobile environment 100 for video mixing according to an embodiment. As shown, the architecture 100 includes a mobile device 102 in wireless communication with a video server 104 via. a 3rd Generation network (3G) 106. The mobile device 102 may be a handheld portable computing device such as, but not limited to, a cellular phone, a personal digital assistant (PDA), a laptop, a notebook PC, and the like, that has wireless communication capabilities and has in-built display supported by advanced video processing capabilities.」

(仮訳:
協調モバイル環境の例

[0016] 図1は、実施形態に係るビデオミキシングのための協調モバイル環境100を示している。図示されているように、アーキテクチャ100は、第3世代ネットワーク(3G)106を介してビデオサーバ104と無線通信するモバイルデバイス102を含む。前記モバイルデバイス102は、限定するものではないが、無線通信機能を有し、高度な映像処理能力を備えた内臓ディスプレイを有する携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップ、ノートブックPC等のハンドヘルド携帯用のコンピューティングデバイスである。)

「[0019] The collaborative mobile environment 100 further includes a group of camera operators 108 in wireless communication with the video server 104. The camera operators 108 have one or more cameras (108a, 108b) to capture and broadcast multiple video streams to the video server 104. Further, the architecture 100 includes a mobile mixing system 110 in wireless communication with the video server 104 via. a hyper text transfer protocol (HTTP) based network 112. In an embodiment, the mobile device 102 communicates with the camera operators 108 and the mobile mixing system 110 via. the 3G network 106.

[0020] As seen in the figure, on one side of the architecture 100, lies the video server 104 that may be regarded as the primary source of video streams interacting through the 3G network 106 with the camera operators 108 and with the mobile mixing system 110 through the HTTP based network 112 respectively. On the other side of the architecture 100 lies, the mobile device 102 that hosts a mobile application (not shown) also referred to as "vision mixer" in this description, which is the main scene coordinator. Vision mixer can be a mobile application (e.g. J2ME, Android, or Flash application) which enables a mobile user (e.g. a video director) to view the live feeds from the video server 104.」

(仮訳:
[0019] 協調モバイル環境100は、さらにビデオサーバ104と無線通信するカメラオペレータ108のグループを含む。前記カメラオペレータ108は、複数のビデオストリームをビデオサーバ104に捕捉して送信するための1以上のカメラ(108a、108b)を有する。さらに、アーキテクチャ100は、ビデオサーバ104とハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTP)ベースのネットワーク112を介して無線通信するモバイルミキシングシステム110を含む。一実施形態では、前記モバイルデバイス102は、3Gネットワーク106を介して前記カメラオペレータ108及びモバイルミキシングシステム110と通信する。

[0020] 図からわかるように、アーキテクチャ100の一方側には、ビデオストリームの一時ソースとみなすことができ、3Gネットワーク106を介してカメラオペレータ108と、またHTTPベースのネットワーク112を介してモバイルミキシングシステム110と、それぞれ相互作用するビデオサーバ104を有する。アーキテクチャ100の他方側には、本明細書において“ビジョンミキサ”とも呼ばれるモバイルアプリケーション(図示せず)を処理するモバイルデバイス102を有し、これは主要なシーンコーディネータである。ビジョンミキサは、モバイルユーザ(例えばビデオ編集者)がビデオサーバ104からのライブ放送を見ることができるモバイルアプリケーション(例えばJ2ME、AndroidやFlashアプリケーション)であってもよい。)

「[0021] In operation, the camera operators 108 start filming and broadcasting one or more video streams (feeds) to the video server 104. The mobile application in the mobile device 102 enables the video director to view the video feeds from the video server 104. It may be appreciated that all modem day mobile devices 102 come with an inbuilt display screen that can be used to display multimedia files, such as, videos, images, etc. The mobile application lets the video director chooses a group of video streams to be combined for an intended preview on the display of the mobile device 102. Upon selection of the group of video streams, the mobile application sends a request to the mobile mixing system 110. In an implementation, the request includes information associated with the group of video streams to be combined. The mobile application can be configured to notify the selected camera operators (corresponding to the group of video streams) to stay "on shot".

[0022] Upon receipt of the request from the mobile application, the mobile mixing system 110 requests and fetches the selected group of video streams from the video server 104. The mobile mixing system 110 combines the group of video streams to generate a combined video signal (stream). Subsequently, the mobile mixing system 110 sends the combined video signal to the video server 104.

[0023] The mobile mixing system 110 also sends a notification to the mobile application hosted in the mobile device 102 so that the mobile user (video director) can update the view on the mobile device 102. The mobile application enables the user to request, fetch the combined video signal (combined stream) from the video server 104 and simultaneously preview the combined video stream on the display screen of the mobile device 102. The user chooses a video stream to be broadcasted from the previewed combined video signal on the display. The mobile application sends a notification to the mobile mixing system with details regarding the selected video stream. Concurrently, the mobile application also notifies the camera operator (e.g. 108a) corresponding to the selected video stream about the "on air" status of the video stream.

[0024] On receipt of the notification, the mobile mixing system 110 fetches the selected video stream and communicates the selected video stream to the video server 104 for broadcast.」

(仮訳:
[0021] 動作時、カメラオペレータ108は、撮影を開始し、1つ以上のビデオストリーム(放送)をビデオサーバ104に送信する。モバイルデバイス102のモバイルアプリケーションは、ビデオ編集者が、ビデオサーバ104からのビデオ放送を見ることを可能にする。最近の全てのモバイルデバイス102は、映像、画像等のマルチメディアファイルを表示可能な表示画面が内蔵されている。前記モバイルアプリケーションは、ビデオ編集者に、モバイルデバイス102の画面でプレビューするために結合されるビデオストリームのグループを選択させる。ビデオストリームのグループが選択されると、前記モバイルアプリケーションは、モバイルミキシングシステム110にリクエストを送信する。一実施形態では、前記リクエストは結合されるビデオストリームのグループに関する情報を含む。前記モバイルアプリケーションは、選択されたカメラオペレータ(前記ビデオストリームのグループに対応)に“撮影継続”を通知するように構成される。

[0022] モバイルミキシングシステム110は、モバイルアプリケーションからのリクエストを受信すると、ビデオサーバ104から前記選択されたビデオストリームのグループをリクエストして取り出す。前記モバイルミキシングシステム110は、前記ビデオストリームのグループを結合し、結合されたビデオ信号(ストリーム)を生成する。そして、前記モバイルミキシングシステム110は、結合されたビデオ信号をビデオサーバ104に送信する。

[0023] 前記モバイルミキシングシステム110は、また、モバイルユーザ(ビデオ編集者)がモバイルデバイス102の表示を更新できるように、モバイルデバイス102のモバイルアプリケーションに通知を送信する。前記モバイルアプリケーションは、前記ユーザに、ビデオサーバ104から結合されたビデオ信号(結合されたストリーム)をリクエストさせて取り込ませ、モバイルデバイス102の表示画面上に結合されたビデオストリームを同時にプレビューさせることを可能にする。前記ユーザは、前記表示画面上でプレビューされた結合済ビデオ信号から放送されるビデオストリームを選択する。前記モバイルアプリケーションは、選択されたビデオストリームに関する詳細を有する前記モバイルミキシングシステムに通知を送信する。並行して、前記モバイルアプリケーションは、また、選択されたビデオストリームに対応するカメラオペレータ(例えば108a)に、当該ビデオストリームが“放送中”の状態であることについて通知する。

[0024] モバイルミキシングシステム110は、前記通知を受信すると、前記選択されたビデオストリームを取り出して、前記選択されたビデオストリームを放送のためにビデオサーバ104に伝える。)





(2)記載技術
上記(1)の[0024]の記載において、「選択されたビデオストリームを放送のためにビデオサーバ104に伝える」ことを行った結果、当該伝えられた選択により取り出されたビデオストリームがビデオサーバから放送されることは明らかな事項といえるから、上記(1)から、引用文献3には次の技術が記載されていると認められる。

「協調モバイル環境におけるビデオストリームのミキシングについてのシステムであって、
第3世代ネットワーク(3G)106を介してビデオサーバ104と無線通信するモバイルデバイス102を含み、
さらにビデオサーバ104と無線通信するカメラオペレータ108のグループを含み、前記カメラオペレータ108は、複数のビデオストリームをビデオサーバ104に捕捉して送信するための1以上のカメラ(108a、108b)を有し、
ビデオサーバ104とハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTP)ベースのネットワーク112を介して無線通信するモバイルミキシングシステム110を含み、
前記モバイルデバイス102は、3Gネットワーク106を介して前記カメラオペレータ108及びモバイルミキシングシステム110と通信するものであり、
一方側には、ビデオストリームの一時ソースとみなすことができ、3Gネットワーク106を介してカメラオペレータ108と、またHTTPベースのネットワーク112を介してモバイルミキシングシステム110と、それぞれ相互作用するビデオサーバ104を有し、
他方側には、本明細書において“ビジョンミキサ”とも呼ばれるモバイルアプリケーション(図示せず)を処理するモバイルデバイス102を有し、これは主要なシーンコーディネータであり、
動作時、カメラオペレータ108は、撮影を開始し、1つ以上のビデオストリーム(放送)をビデオサーバ104に送信し、
モバイルデバイス102のモバイルアプリケーションは、ビデオ編集者が、ビデオサーバ104からのビデオ放送を見ることを可能にし、
前記モバイルアプリケーションは、ビデオ編集者に、モバイルデバイス102の画面でプレビューするために結合されるビデオストリームのグループを選択させ、
ビデオストリームのグループが選択されると、前記モバイルアプリケーションは、モバイルミキシングシステム110にリクエストを送信し、前記リクエストは結合されるビデオストリームのグループに関する情報を含み、
モバイルミキシングシステム110は、モバイルアプリケーションからのリクエストを受信すると、ビデオサーバ104から前記選択されたビデオストリームのグループをリクエストして取り出し、前記ビデオストリームのグループを結合し、結合されたビデオ信号(ストリーム)を生成し、そして、前記モバイルミキシングシステム110は、結合されたビデオ信号をビデオサーバ104に送信し、
前記モバイルミキシングシステム110は、また、モバイルユーザ(ビデオ編集者)がモバイルデバイス102の表示を更新できるように、モバイルデバイス102のモバイルアプリケーションに通知を送信し、
前記モバイルアプリケーションは、前記ユーザに、ビデオサーバ104から結合されたビデオ信号(結合されたストリーム)をリクエストさせて取り込ませ、モバイルデバイス102の表示画面上に結合されたビデオストリームを同時にプレビューさせることを可能にし、前記ユーザは、前記表示画面上でプレビューされた結合済ビデオ信号から放送されるビデオストリームを選択し、前記モバイルアプリケーションは、選択されたビデオストリームに関する詳細を有する前記モバイルミキシングシステムに通知を送信し、
モバイルミキシングシステム110は、前記通知を受信すると、前記選択されたビデオストリームを取り出して、前記選択されたビデオストリームを放送のためにビデオサーバ104に伝え、
当該伝えられた選択により取り出されたビデオストリームがビデオサーバから放送される技術。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

1 構成A、構成Bについて
引用発明の「動画提供システム10」は、構成d〜構成jの処理を行うコンピュータシステムであり、一般にコンピュータは、プロセッサ及びプロセッサによって実行可能な指示が格納されたメモリを備えるから、本願発明と引用発明は、「プロセッサとメモリを含むコンピュータ装置を含むシステムであって、前記プロセッサが」各種処理を行う「ためにプログラムされるように、前記プロセッサによって実行可能な指示を、前記メモリが格納するシステム」である点で一致する。

2 構成B1について
引用発明の「各携帯端末7から受信した動画像信号」(構成d)は、本願発明の「1つ以上の各入力から受信された複数の個々のメディア情報」に相当する。そして、引用発明の動画提供システム10は、各携帯端末7から受信した動画像信号をそのままストリーミングデータに変換するもの(構成d)であるから、当該「ストリーミングデータ」は、本願発明の「1つ以上の各入力から受信された複数の個々のメディア情報に対応する複数のメディア入力情報のうちの複数のメディア入力情報を含む情報」である点で、本願発明の「1つ以上の各入力から受信された複数の個々のメディア情報をデコードすることにより生成された複数のメディア入力情報のうちの複数のメディア入力情報」と共通し、本願発明と引用発明は、「1つ以上の各入力から受信された複数の個々のメディア情報に対応する複数のメディア入力情報のうちの複数のメディア入力情報を含む情報を生成」するものである点で共通する。
しかしながら、前記複数の個々のメディア情報に対応する複数のメディア入力情報が、本願発明ではメディア情報をデコードすることにより生成されたものであるのに対し、引用発明ではメディア情報をデコードすることにより生成されたものであることが特定されていない点(以下、「相違点1」という。)で、両者は相違する。
また、前記複数のメディア入力情報を含む情報が、本願発明では「同時に視聴されるように配置された前記複数の前記メディア入力情報を結合して」いる「マルチビュー・メディア情報」であるのに対し、引用発明では「各携帯端末7から受信した動画像信号をそのままストリーミングデータに変換し」たものである点(以下、「相違点2」という。)で、両者は相違する。

3 構成B2について
引用発明の「編集者のクライアント端末8」(構成b)は、インターネット網を介して、動画提供システム10と接続されるものであるから、本願発明の「前記コンピュータ装置から離れたオペレータコンソール」に相当する。
また、引用発明の「編集画面5(図4)」(構成d)は、入力画像領域500にストリーミングデータ(ソースデータ)が配列表示されるものであり、かつ編集者により入力画像領域500の中から所望の撮影画像がダブルクリックされると、ダブルクリックされた撮影画像が出力画像領域502に表示される(構成f)というインタラクティブな処理のインターフェースであって、その内側にメディア情報が表示されるものということができるから、本願発明の「インタラクティブユーザインタフェース」に対応する。
そして、引用発明は、上記変換されたストリーミングデータ(ソースデータ)(複数のメディア入力情報を含む情報)を編集者のクライアント端末8(前記コンピュータ装置から離れたオペレータコンソール)に配信し、当該配信されるソースデータは、編集画面5(図4)(インタラクティブユーザインタフェース)の入力画像領域500に配列表示される(構成d)ものであるから、本願発明と引用発明は「前記コンピュータ装置から離れたオペレータコンソールに、インタラクティブユーザインタフェース内に表示するための前記複数のメディア入力情報を含む情報を送信し、」との構成を備えるものである点で共通する。
しかしながら、前記送信される「前記複数のメディア入力情報を含む情報」について、上記2で述べたものと同じ相違点(相違点2)が存在する。

4 構成B3について
引用発明は、「入力画像領域500の中から、所望の撮影画像を編集者がダブルクリックすると、ダブルクリックされた撮影画像が出力画像領域502に表示され、この出力画像領域502に表示された撮影画像は、確定ボタン506がクリックされた後に、出力データとなり」という映像の切替操作を行うと、編集者のクライアント端末8から映像の切替指示が送信され(構成f)、当該映像の切替指示を受信すると、受信した切替指示に応じて、映像ソースの切替えを行い(構成g)、切替後の映像ソースをストリーミングデータ(出力データ)に変換し、視聴者のクライアント端末9に配信する(構成h)ものであり、当該(「所望の撮影画像をダブルクリックすると、ダブルクリックされた撮影画像が出力画像領域502に表示され、この出力画像領域502に表示された撮影画像は、確定ボタン506がクリックされた後に、出力データとなり」という)映像の切替指示は、本願発明の「前記インタラクティブユーザインタフェースとのユーザインタラクションに対応する命令」かつ「メディア出力情報に含められる、前記メディア情報中に含まれている前記複数の前記メディア入力情報の少なくとも1つのメディア入力情報を特定する命令」に相当する。
また、引用発明は、入力画像領域500において、各撮影画像上で右クリックすると、解像度調整、色調整などの調整メニューが表示され、編集者は、これらのメニューの中から所望の調整メニューを選択し、調整量を指定することにより、所望のタイミングで、それぞれの映像ソース(動画像データ)に対して、解像度調整、色調整などを行うことができ(構成i)、画像編集部150は、受け付けた編集操作に応じて、指定された動画像データに対して、指定された編集処理を施す(構成j)ものである。ここで、上記「解像度調整、色調整など」はビデオ処理機能といえるものである。そして、上記編集操作が対象とする入力画像領域500における各撮影画像には、上記切替指示される映像も含まれるから、当該編集操作は、本願発明の「前記インタラクティブユーザインタフェースとのユーザインタラクションに対応する命令」かつ「前記少なくとも1つのメディア入力情報上で行うための少なくとも1つのビデオ処理機能を示す命令」に相当する。
そして、引用発明の動画提供システム10は、前記「映像の切替指示」及び「編集操作」を編集者のクライアント端末8(オペレータコンソール)から受信するもの(構成f、構成j)であるから、本願発明と引用発明は「前記オペレータコンソールから、前記インタラクティブユーザインタフェースとのユーザインタラクションに対応する2つ以上の命令を受信し、前記2つ以上の命令は、メディア出力情報に含められる、前記複数のメディア入力情報を含む情報中に含まれている前記複数の前記メディア入力情報の少なくとも1つのメディア入力情報を特定する命令を含み、かつ前記少なくとも1つのメディア入力情報上で行うための少なくとも1つのビデオ処理機能を示す命令を含み」との構成を備える点で共通する。
しかしながら、「前記複数のメディア入力情報を含む情報」について、上記2で述べたものと同じ相違点(相違点2)が存在する。

5 構成B4、構成B5について
引用発明の「視聴者のクライアント端末9」(構成b)は、編集者のクライアント端末8と同様にインターネット網に接続されるものであり、編集者のクライアント端末8から離れていることは、図1(上記第4の1(1))からも明らかであるから、本願発明の「前記オペレータコンソールから離れたメディア装置」に相当する。
そして、引用発明の動画提供システム10は、指定された動画像データに対して、指定された編集処理を施し、画像処理が施された動画像データを配信部180に出力し(構成j)、映像ソースをストリーミングデータ(出力データ)に変換し、視聴者のクライアント端末9に配信する(構成h)ものであるから、本願発明と引用発明は、「前記メディア出力情報が、前記少なくとも1つのビデオ処理機能に従ってビデオプロセッサによって選択および処理された前記少なくとも1つのメディア入力情報を含むように、前記2つ以上の命令に従って、前記複数の個々のメディア情報に対応する前記複数のメディア入力情報から前記メディア出力情報を生成し、」「生成した前記メディア出力情報を前記オペレータコンソールから離れたメディア装置に送信する」ものである点で共通する。
しかしながら、前記複数の個々のメディア情報に対応する前記複数のメディア入力情報について、上記2で述べたものと同じ相違点(相違点1)が存在する。

6 一致点、相違点について
上記1〜5の対比をふまえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
(A)プロセッサとメモリを含むコンピュータ装置を含むシステムであって、
(B)前記プロセッサが
(B1’)1つ以上の各入力から受信された複数の個々のメディア情報に対応する複数のメディア入力情報のうちの複数のメディア入力情報を含む情報を生成し、
(B2’)前記コンピュータ装置から離れたオペレータコンソールに、インタラクティブユーザインタフェース内に表示するための前記複数のメディア入力情報を含む情報を送信し、
(B3’)前記オペレータコンソールから、前記インタラクティブユーザインタフェースとのユーザインタラクションに対応する2つ以上の命令を受信し、前記2つ以上の命令は、メディア出力情報に含められる、前記複数のメディア入力情報を含む情報中に含まれている前記複数の前記メディア入力情報の少なくとも1つのメディア入力情報を特定する命令を含み、かつ前記少なくとも1つのメディア入力情報上で行うための少なくとも1つのビデオ処理機能を示す命令を含み、
(B4’)前記メディア出力情報が、前記少なくとも1つのビデオ処理機能に従ってビデオプロセッサによって選択および処理された前記少なくとも1つのメディア入力情報を含むように、前記2つ以上の命令に従って、前記複数の個々のメディア情報に対応する前記複数のメディア入力情報から前記メディア出力情報を生成し、
(B5)生成した前記メディア出力情報を前記オペレータコンソールから離れたメディア装置に送信する
(B)ためにプログラムされるように、前記プロセッサによって実行可能な指示を、前記メモリが格納する
(A)システム。

〔相違点1〕
前記複数の個々のメディア情報に対応する複数のメディア入力情報が、本願発明ではメディア情報をデコードすることにより生成されたものであるのに対し、引用発明ではメディア情報をデコードすることにより生成されたものであることが特定されていない点。

〔相違点2〕
前記複数のメディア入力情報を含む情報が、本願発明では「同時に視聴されるように配置された前記複数の前記メディア入力情報を結合して」いる「マルチビュー・メディア情報」であるのに対し、引用発明では「各携帯端末7から受信した動画像信号をそのままストリーミングデータに変換し」たものである点。

第6 判断
1 相違点について
上記相違点1及び相違点2について検討する。

引用文献2に記載された技術(上記第4の2)は、サーバーが、複数のWebカメラから受信したMPEG4などの国際規格に準拠して圧縮された複数の撮像データを携帯電話の画面上で4画面分割表示できるよう結合したり、縮小表示できるよう加工したりといった、動画コンテンツのデータ編集を行う動画コンテンツ編集手段を備え、利用者が、複数のWebカメラにより撮像した映像の切換え,4画面分割表示,縮小表示といった表示内容を携帯電話からいつでも変更することができるものである。
また、引用文献3に記載された技術(上記第4の3)は、カメラオペレータ108が撮影したビデオストリーム(放送)をビデオサーバ104に送信し、モバイルユーザ(ビデオ編集者)のモバイルデバイス102におけるモバイルアプリケーションは、前記ユーザに、ビデオサーバ104から結合されたビデオ信号(結合されたストリーム)をリクエストさせて取り込ませ、前記ユーザは、前記表示画面上でプレビューされた結合済ビデオ信号から放送されるビデオストリームを選択し、前記モバイルアプリケーションは、選択されたビデオストリームに関する詳細を有する前記モバイルミキシングシステムに通知を送信し、モバイルミキシングシステム110は、前記通知を受信すると、前記選択されたビデオストリームを取り出して、前記選択されたビデオストリームを放送のためにビデオサーバ104に伝え、当該伝えられた選択により取り出されたビデオストリームがビデオサーバから放送されるものである。
ここで、引用文献3に記載された技術におけるカメラオペレータ108においても、引用文献2に記載された技術と同様に、データ容量の縮小化及びデータ送信の高速化のために撮影データが圧縮されることは明らかである。
そして、上記両技術は、いずれも、サーバーが撮像装置から圧縮された動画像データを受信して結合等の編集を行うものであり、当該結合等の編集処理を行うためには、上記圧縮(エンコード)された動画像データをデコードする必要があるから、撮像装置から受信した動画像データをデコードする構成は、上記両技術において当然に備わっているものと認められる。

以上の技術をふまえれば、撮像装置から受信した1又は複数の動画像を送信するサーバにおいて、複数の動画像を送信する場合に、撮像装置から受信した動画像データをデコードし、当該複数の動画像を結合したデータを生成して送信することは、周知技術といえる。
そして、引用発明は、動画提供システム10が複数の動画像を送信し(構成d)、また、選択された1つの動画像を送信する(構成f)ものであって、上記周知技術は当該引用発明と技術分野及び機能が共通するものである。
よって、引用発明の動画提供システム10において、各携帯端末7から受信した動画像信号を送信する場合に、複数の携帯端末7から受信した動画像信号をデコードし、当該複数の動画像信号を結合したデータを生成すること、すなわち、当該複数のメディア入力情報を「メディア情報をデコードすることにより生成された」ものとすること、及び、当該複数の動画像信号を「同時に視聴されるように配置された前記複数の前記メディア入力情報を結合して」いる「マルチビュー・メディア情報」とすること(相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を備えること)は、当業者が上記周知技術を考慮することで適宜なしうることである。

2 効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到しうるものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

3 意見書の主張について
審判請求人は、令和3年10月19日付けの意見書において、引用文献と本願発明との対比について次の主張を行っている。

「本願発明におけるマルチビュー・メディア情報は、例えば、本願の明細書の段落[0041]、[0070]等に記載されているように、ピクチャー・イン・ピクチャー(PIP)技術等を利用して生成されるものであり、マルチビュー・メディア情報における「前記複数の前記メディア入力情報」は、同時に視聴されるように配置されているものの、個別にメディア入力情報を選択することや、拡大縮小、ミキシング、モーフィングなどの1つ以上の処理機能を行うことができるような状態で結合されています。
これに対し、引用文献2や引用文献3における複数の入力映像を結合したデータは、複数の入力映像が1つの映像として表示されるように結合(合成)したデータであり、本願発明のマルチビュー・メディア情報とは異なると考えます。
また、本願発明のマルチビュー・メディア情報が複数のメディア入力情報を結合したものとしてオペレータコンソールに送信されて表示されるのに対し、引用発明では、複数のストリーミングデータを編集者のクライアント端末8に送信して(端末8のウェブブラウザに表示された)編集画面5の入力画像領域500内に配列表示させています。このため、本願発明のマルチビュー・メディア情報の表示方法と、引用発明のストリーミングデータの表示方法とは異なると考えます。
従いまして、引用発明において入力画像領域500に表示された複数の撮影画像のなかから(ダブルクリック等の操作により)1つの撮影画像を特定する命令は、本願発明のマルチビュー・メディア情報中に含まれている前記複数の前記メディア入力情報の少なくとも1つのメディア入力情報を特定する命令とは異なると考えます。」(以下、「主張1」という。)

「更に、本願の明細書の段落[0031]、[0042]等に記載されているように、(マルチビュー・メディア情報を生成してオペレータコンソール18に送信する)メディアスタジオ12が受信するオペレータコンソール18からの命令は、メディア入力情報の選択に関連した命令と、拡大縮小、ミキシング、モーフィング、合成、オーバーレイの追加などのビデオ処理機能を行うための命令を含むことができます。このため、本願発明のコンピュータ装置(プロセッサ)がオペレータコンソールから受信する命令は、引用発明における切替指示や編集操作に応じた指示とは異なるものと考えます。
このような本願発明と、引用発明との差異をより明確にするために、同日付手続補正書では、補正前の請求項1等における「ビデオ処理命令のセット」を「2つ以上の命令」に補正しました。」(以下、「主張2」という。)

上記主張について検討する。

(主張1について)
本願発明における「マルチビュー・メディア情報」は、「同時に視聴されるように配置された前記複数の前記メディア入力情報を結合し」たもの(構成B1)であり、「前記マルチビュー・メディア情報中に含まれている前記複数の前記メディア入力情報の少なくとも1つのメディア入力情報を特定する命令」及び「前記少なくとも1つのメディア入力情報上で行うための少なくとも1つのビデオ処理機能を示す命令」に従って、選択および処理されるもの(構成B3、構成B4)として特定されているにすぎず、前記主張1の「ピクチャー・イン・ピクチャー(PIP)技術等を利用して生成されるものであり、マルチビュー・メディア情報における「前記複数の前記メディア入力情報」は、同時に視聴されるように配置されているものの、個別にメディア入力情報を選択することや、拡大縮小、ミキシング、モーフィングなどの1つ以上の処理機能を行うことができるような状態で結合され」たものであることは特定されていない。
そして、引用発明において配信される複数の動画像信号を「同時に視聴されるように配置された前記複数の前記メディア入力情報を結合して」いる「マルチビュー・メディア情報」とすることは、上記1で示したとおり、当業者が上記周知技術を考慮することで適宜なしうることである。
また、当該周知技術を引用発明に適用することに伴って、編集者のクライアント端末8における表示方法が複数の前記メディア入力情報を結合したものとなることは明らかである。
さらに、当該周知技術は、複数の動画像が結合したデータが生成された後でも、元々の1の動画像も依然として送信しうる状態で扱われるものであるから、引用発明に当該周知技術を適用したものは、特定された1の動画像をビデオ処理することが可能なものといえる。
以上から、主張1において本願発明と異なるとする各主張は、いずれも採用することができない。

(主張2について)
上記第5の4において示したとおり、引用発明の「映像の切替指示」及び「編集操作」は、本願発明の「メディア入力情報を特定する命令」及び「ビデオ処理機能を示す命令」に相当するものである。

以上のとおり、上記主張1及び主張2は、いずれも採用することができない。

4 まとめ
以上1〜3のとおりであるから、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 清水 正一
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-08 
結審通知日 2022-02-15 
審決日 2022-02-28 
出願番号 P2018-528972
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 樫本 剛
川崎 優
発明の名称 遠隔制御されるメディアスタジオ  
代理人 大菅 義之  
代理人 大菅 義之  
代理人 野村 泰久  
代理人 野村 泰久  

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