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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1386520
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2022-07-14 
事件の表示 特願2015−157279号「レンズユニットおよびカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月16日出願公開、特開2017−37137号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月7日の出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
平成31年 3月14日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 9月10日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 元年11月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月 1日付け:令和元年11月18日付け手続補正書でし
た手続補正についての補正却下の決定、
拒絶査定
令和 2年 8月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 7月12日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 9月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月 3日付け:拒絶理由通知書(以下、同書で通知した
拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和 4年 2月 7日 :意見書の提出

第2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、令和元年5月17日付け手続補正書でした補正(以下「本件補正1」という。)、令和2年8月7日付け手続補正書でした補正(以下「本件補正2」という。)及び令和3年9月10日付け手続補正書でした補正(以下「本件補正3」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、とするものである。

第3 当審の判断
1 空気の経路が前記開口部から「前記複数の点の間の前記隙間と対向して複数の前記隙間へ向けて方向付けられるように延びる」との補正事項について
(1)本件補正3の内容
本件補正3は、請求項1において、本件補正3前に「前記座面には、前記レンズに当接して前記レンズの位置を決める基準面と、前記レンズから離れるとともに前記開口部から前記複数の点の間の前記隙間へと向けて空気の移動を可能とする空気の経路とが設けられ」とあったものを、「前記座面には、前記レンズに当接して前記レンズの位置を決める基準面と、前記レンズから離れるとともに前記開口部から前記複数の点の間の前記隙間と対向して複数の前記隙間へ向けて方向付けられるように延びる空気の経路とが設けられ、」と補正する事項(以下「本件補正事項1」という。下線は補正箇所を示す。)を含むものである。

(2)願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の認定
ア 願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初明細書等」という。)には、本件補正事項1に関して、下記の記載がある。
(ア)「【0014】
本発明の前記構成において、前記鏡筒に保持される前記レンズの外周面と、当該レンズの外周面に当接して前記レンズの光軸に交差する方向の位置を決める前記鏡筒の内周面との間に空気の経路となる隙間が形成されていることが好ましい。」

(イ)「 【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の鏡筒を示す正面図であり、(b)は、同、レンズユニットを示す断面図である。
【図2】同、レンズユニットの光軸に直交する断面図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施の形態の鏡筒を示す正面図であり、(b)は、同、レンズユニットを示す断面図である。
【図4】(a)は本発明の第3の実施の形態の鏡筒を示す正面図であり、(b)は、同、レンズユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。・・・
【0028】
図1(a)、(b)に示すように、この実施の形態のレンズユニット1は、円筒状の鏡筒2と、鏡筒2内に配置される複数(例えば、5つ)のレンズ3,4,5,6,7と、2つの絞り部材11,12とを備える。・・・

(ウ)「【0033】
鏡筒2は、その内径が物体側から像側に向かって段階的に小さくなっている。これに対応して、レンズ3〜7は、それらの配置位置が物体側から像側に向かうにつれて、外径が小さくなっている。基本的にレンズ3〜7それぞれの外径と、鏡筒2の各レンズ3〜7が支持される部分それぞれの内径とは略等しくなっている。但し、図2に示すように、鏡筒2の内周面は、円筒状ではなく、例えば、12角形等の多角形となっている。図2では、最も像側のレンズ7の位置での鏡筒2の断面を示しているが、全てのレンズ3〜7および絞り部材11.12の外周面が当接する鏡筒2の内周面は、全て多角形となっている。なお、多角形の角の数は、特に限定されるものではなく、3つ以上ならばよいが、円に近似することが好ましく、例えば、8〜20程度が好ましい、なお、図1(a)(図3(a)、図4(a))においては、鏡筒2を簡略化して図示しており、鏡筒2の内周面を円形として図示しているが、鏡筒2の内周面は、図2に示すように多角形となっている。また、鏡筒2の外周面には、鏡筒2を車載カメラに設置する際に用いられるフランジ部31が鏡筒2の外周面に鍔状に設けられている。
【0034】
このように鏡筒2の内周面が多角形となっていることにより、略円形のレンズ3〜7の外周面と、鏡筒2の内周面とが当接する状態となっていても、レンズ3〜7の外周面と、鏡筒2の内周面との間に隙間(空気の経路)が生じるようになっており、レンズ3〜7同士の間が密閉された状態となるのを防止している。
【0035】
本実施の形態において、レンズ3〜7のうちの最も物体側の車外(鏡筒2外)に露出するレンズ3がガラスレンズで、レンズ4〜7が樹脂レンズとなっている。本実施の形態の樹脂レンズは、図2のレンズ7のように、円形状の外周に、成形時のゲートを切断したゲート切断部7aがあり、上述の円形の外周に対して内側に配置され、外周の形状が円となっていない。これにより、鏡筒2の内周面が多角形ではなく、円形であっても、樹脂のレンズ4〜7にゲート切断部があれば、レンズ4〜7の外周面と、鏡筒2の内周面との間に隙間(空気の経路)があり、レンズ3〜7の間が密閉されるのを防止できる。
・・・
【0036】
最も像側のレンズ7は、その外周部の像側の面が基準面として光軸に直交する面となっている。このレンズ7の基準面は、上述の鏡筒2の像側端部に設けられて、レンズ7の外径より小さな内径の開口部24を有する枠部23の内面側の後述の基準面27を有する座面25に当接するようになっている。
・・・
【0038】
座面25の開口部24の外縁の外側に隣接する部分に円環状の溝28が形成されている。この溝28は、開口部24に開放した状態で、一対の溝26に連通している。また、座面25の外周縁部、すなわち、座面25と鏡筒2の内周面との境界の座面25側に円環状の溝29が設けられ、溝29に一対の溝26が連通している。これにより、最も像側のレンズ7の基準面に座面25の基準面27が当接しても、空気が座面25の内周側の溝28から座面25の径方向に沿った一対の溝26を介して座面25の外周側の溝29に至り、上述のように形成されているレンズ7の外周面と鏡筒2の内周面との隙間から鏡筒2のレンズ7より内側に流入することが可能となっている。これにより鏡筒2の内外で空気の移動が可能になっている。
【0039】
なお、鏡筒2の物体側が最も物体側のレンズ7とOリング30とにより封止された状態なので、空気が鏡筒2内を一方の端部から他方の端部に流れるようなことはないが、温度変化により鏡筒2の内圧と外圧とが異なる状態となった際に、空気が上述の溝6.8.9を流れるとともに、レンズ4〜7の外周面と鏡筒2の内周面との隙間を流れることにより、自然に鏡筒2の内圧と外圧とが略等しくなり、内圧と外圧の差が大きくなりすぎて、鏡筒2を変形させることにより、レンズ3〜7を傾かせたり、配置を変位させたりして、レンズユニット1の性能の低下を招くのを抑制できる。
【0040】
この際には、上述のようにレンズ4〜7の外周面と、鏡筒2の内周面に隙間があるので、各レンズ3〜7同士の間の圧が鏡筒2の外圧より高くなったり、低くなったりするのを防止できる。また、上述の溝26.28.29と、レンズ4〜7の外周面と鏡筒2の内周面との間の隙間により、鏡筒2の像側の端部の開口部24からOリング30の位置まで空気の通り道(経路)が確保されているので、Oリング30の気密検査の際にOリング30の部分に適切な圧をかけて気密検査を行うことが可能となる。したがって、座面25に形成されている溝26,28,29が、空気が流れる経路となっている。」

(エ)「【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。・・・
【0044】
枠部23の内面側の後述の基準面32を有する座面25は、中央に開口部24を備える円環状となるが、当該座面25に枠部23の開口部24から外周部まで一体の凹部33が形成されている。この凹部33は、座面25の中心(開口部24の中心)を中心とする正三角形の3つの頂点部分を切り欠いた形状を有し、この切り欠かれた部分が上述の溝29に連通した状態となっている。また、凹部33は、その底面が略一定の深さに形成されるとともに、中央部に開口部24が配置された状態で、座面25を3分割した状態となっており、座面25の凹部33に三分割された部分にそれぞれレンズ7の基準面に当接する基準面32が設けられている。
・・・
【0046】
以上のことから、最も像側のレンズ7の基準面に座面25の基準面32が当接しても、空気が、座面25の内周側の溝28から凹部33を介して座面25の外周側の溝29に至り、上述のように形成されているレンズ7の外周面と鏡筒2の内周面との隙間から鏡筒2のレンズ7より内側に流入することが可能となっている。これにより第1の実施の形態と同様に座面25に空気が通る経路が確保され、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに。空気の経路を広くして、空気の流れをより円滑にすることができる。」

イ 図1〜3は次のとおりである。
【図1】




【図3】



ウ(ア)図1(a)からは、同心円状の複数の円が見て取れる。そして、これらの複数の円のうち、溝29の境界を画定する小円及び大円からなる2つの円と当該大円よりも径がその次に大きい円との3つの円には、太く描かれる箇所(後記の参考図1Aを参照。以下「図1太線箇所」という。)及び細く描かれる箇所(同じく参考図1Bを参照。以下「図1細線箇所」という。)が、それぞれ12箇所存在するとともに、これらが、いずれも中心角が概ね15度の弧状領域として円周に沿って交互に配置されていることが見て取れる。
さらに、一対の溝26が、いずれも、直線状に構成されているとともに、溝29に係る上記小円における図1細線箇所に接続していることが見て取れる。
【参考図1A】



(イ)図1(b)からは、レンズ7が、同図の下側方向において鏡筒2と接しているとともに、同図の上側方向において、横長の部分を備えつつ、鏡筒2とわずかに離れていることが見て取れる。さらに、レンズ7の基準面(【0036】)は、座面25とわずかに離れていることが見て取れる。

(ウ)図2からは、レンズ7の輪郭線が鏡筒2の輪郭線のうち内側の輪郭線に対して接している箇所(後記の参考図2B参照。以下「図2当接箇所」という。)及び離れている箇所(同じく参考図2A参照。以下「図2離隔箇所」という。)が、それぞれ11箇所及び10箇所存在するとともに、これらが、いずれも中心角が概ね15度の弧状領域として円周(ゲート切断部7a付近にある中心角が概ね45度の弧からなる部分を除く。)に沿って交互に配置されていることが見て取れる。



(エ)図3(a)からは、同心円状の複数の円が見て取れる。そして、これらの複数の円のうち、溝29の境界を画定する小円及び大円からなる2つの円と当該大円よりも径がその次に大きい円との3つの円には、太く描かれる箇所(後記の参考図3Aを参照。以下「図3太線箇所」という。)及び細く描かれる箇所(同じく参考図3Bを参照。以下「図3細線箇所」という。)が、それぞれ12箇所存在するとともに、これらが、いずれも中心角が概ね15度の弧状領域として円周に沿って交互に配置されていることが見て取れる。
さらに、凹部33は、略三角形状であって、その略頂点を構成する各部分が、溝29に係る上記小円における図3細線箇所に接続していることが見て取れる。



(オ)図3(b)からは、レンズ7が、同図の下側方向において鏡筒2と接しているとともに、同図の上側方向において、横長の部分を備えつつ、鏡筒2とわずかに離れていることが見て取れる。さらに、レンズ7の基準面(【0044】)は、座面25とは、同図の上下方向において、上側1/8程度の部分で接していることが見て取れるが、その余の部分は判然としない。

(3)判断
ア 本件補正事項1は、空気の経路が前記開口部から「前記隙間と対向して複数の前記隙間へ向けて方向付けられるように延びる」ことを特定するものであるから、空気の経路が、開口部から隙間へ向けてどのような形状になっているのかを特定するものということができる。そして、「前記隙間」は「前記レンズと当接していない前記複数の点の間の部分」に形成されており、「前記複数の点」は「前記鏡筒の内周面」が「光軸方向から見て前記レンズの外周面と全周にわたって」「当接して」いる「複数の点」(以下、これらの各点を「当接点」という。)であるとされている。
そうすると、本件補正事項1は、空気の経路が、開口部から隙間へ向けてどのような形状になっているのかについて、具体的には、開口部から、複数の当接点の間の部分に存在する複数の隙間へ向けて方向付けられるように延びる形状となっていることを特定するものといえる。

イ そこで、出願当初明細書等において、空気の経路が、開口部から複数の隙間へ向けてどのような形状になっていると記載されているのかについて検討する。
(ア)出願当初明細書等には、第1の実施の形態について、「空気が座面25の内周側の溝28から座面25の径方向に沿った一対の溝26を介して座面25の外周側の溝29に至り、」「レンズ7の外周面と鏡筒2の内周面との隙間から鏡筒2のレンズ7より内側に流入すること」(【0038】)及び「溝26.28.29と、レンズ4〜7の外周面と鏡筒2の内周面との間の隙間により、鏡筒2の像側の端部の開口部24からOリング30の位置まで空気の通り道(経路)が確保されていること」(【0040】)が記載されている。また、図1(a)からは、上記(2)ウ(ア)によれば、一対の溝26が、開口部24から図1細線箇所に向けて方向付けられるように延びる形状となっていることが理解できるといえる。
しかしながら、図1細線箇所が何を意味するのかについては、出願当初明細書等には説明がないのであり、上記各記載からは、空気の経路が、開口部と隙間とを連通させるような形状となっていることまでは理解できるとしても、そのことを超えて、空気の経路が、開口部から複数の隙間へ向けて方向付けられるように延びる形状となっていることは読み取れない。

(イ)さらに、出願当初明細書等には、第2の実施の形態について、「最も像側のレンズ7の基準面に座面25の基準面32が当接しても、空気が、座面25の内周側の溝28から凹部33を介して座面25の外周側の溝29に至り、上述のように形成されているレンズ7の外周面と鏡筒2の内周面との隙間から鏡筒2のレンズ7より内側に流入することが可能とな」り、「これにより第1の実施の形態と同様に座面25に空気が通る経路が確保され」ること(【0046】)が記載されている。また、上記(2)ウ(エ)によれば、略三角形状の凹部33が、開口部24が図3細線箇所に向けて方向付けられるように延びる形状となっていることが理解できるといえる。
しかしながら、図3細線箇所が何を意味するかについても、図1細線箇所と同様に、出願当初明細書等には説明がないのであり、上記各記載からは、上記(ア)と同様に、空気の経路が、開口部から複数の隙間へ向けて方向付けられるように延びる形状となっていることは読み取れない。

(ウ)もっとも、図1細線箇所が隙間であるといえるならば、出願当初明細書等には、一対の溝26が開口部から複数の隙間に向けて方向付けられるように延びる形状となっていることが記載されているとみる余地があるので、以下、検討する。
a 上記(ア)で説示したとおり、図1細線箇所が何を意味するのかについては、出願当初明細書等には説明がない。

b しかしながら、以下のとおり、図1細線箇所は、むしろ、図2当接箇所に対応する可能性がある。
(a)まず、図1と図2は、いずれも第1の実施形態を表しているところ、図1(a)は、鏡筒を示す正面図であり、図2は、レンズユニットの光軸に直交する断面図であるとされている(【0026】)から、両図は、光軸方向からみた点で共通している。

(b)次に、上記(2)ウ(ア)によれば、図1細線箇所は、円周に沿って図1太線箇所と交互に配置されているとともに、両箇所は、いずれも中心角が概ね15度の弧状領域として、12箇所ずつ存在している。また、上記(2)ウ(ウ)によれば、図2当接箇所は、ゲート切断部7a付近にある中心角が概ね45度の弧からなる部分を除いて、円周に沿って図2離隔箇所と交互に配置されているとともに、両箇所は、いずれも中心角が概ね15度の弧状領域として、図2当接箇所が11箇所、図2離隔箇所が10箇所存在している。このように、図1細線箇所及び図1太線箇所は、図2当接箇所及び図2離隔箇所とは、いずれも、中心角が概ね15度の弧状領域として、円周に沿って交互に配置されている点で一致している。
ところで、図1細線箇所及び図1太線箇所は、図2当接箇所及び図2離隔箇所とは、個数が異なっているものの、上記(a)のとおり、図1(a)及び図2は、同じ実施形態に係るものであって、光軸方向からみた点で共通することを考慮すれば、後者の箇所の個数は、ゲート切断部付近にある中心角が概ね45度の弧からなる部分の部分が除かれているために、前者の箇所の個数よりも少なくなっていると解するのが相当である。
そうすると、図1細線箇所及び図1太線箇所は、それぞれ、図2当接箇所及び図2離隔箇所の一方並びに他方に対応するとみるのが自然である。

(c)そこで、図1細線箇所が、図2当接箇所と図2離隔箇所のうち、いずれに対応するのかについて検討する。
図2当接箇所と図2離隔箇所とは、レンズ7の輪郭線が鏡筒2の輪郭線のうち内側の輪郭線に対して接している箇所か離れている箇所かで異なっている。そして、図1(a)と図2とは、前者の方が縮尺が小さいと考えられることから、図2当接箇所及び図2離隔箇所は、縮尺が小さい図1(a)では、それぞれ、細い線及び太い線として描かれる可能性があるといえる。
そうすると、図1細線箇所は、図2当接箇所に対応する可能性がある。そして、図2離隔箇所は、レンズ7の輪郭線が鏡筒2の輪郭線のうち内側の輪郭線に対して離れている箇所である以上、隙間に対応すると解するのが自然であるから、図2当接箇所は、隙間ではない。
よって、図1細線箇所は、隙間であるとはいえず、むしろ、当接点の可能性があるものである。

(d)上記(c)は、次のことからも裏付けられる。
図1(b)からは、上記(2)ウ(イ)のとおり、レンズ7が、同図の下側方向において鏡筒2と接しているとともに、同図の上側方向において、横長の部分を備えつつ、鏡筒2とわずかに離れていること、さらに、レンズ7の基準面が座面25とわずかに離れていることが、見て取れる。
この点、図1(b)は、レンズユニットを示す断面図(【0026】)とされているものの、図1(a)のどの断面に対応するのかが出願当初明細書等には説明されていないことから、図1(b)に、そもそも溝26が表わされているのかが不明である。もっとも、図1(a)と同(b)とは横に並べて表されていることから、図1(a)の開口部24の中心を通る上下方向の直線に沿った断面が、図1(b)に対応しているとみる余地があり、そうだとすれば、上記のレンズ7の基準面が座面25とわずかに離れている箇所が溝26に対応していることになる。この場合、上記のとおり、レンズ7は、図1(b)の下側方向において鏡筒2と接しているのであるから、溝26は、図1(a)の下側の部分においては、当接点に接していることになる。
よって、この点からも、図1細線箇所は、隙間であるとはいえず、むしろ、当接点の可能性があるものである。

(エ)さらに、出願当初明細書等の他の記載を見ても、空気の経路が、開口部から複数の隙間へ向けて方向付けられるように延びる形状となっていることが記載されているとはいえない。

ウ そして、本件補正事項1のように「空気の経路」が、鏡筒の「開口部から、複数の点の間の隙間と対向して複数の隙間へ向けて方向付けられるように延び」ている構成とされることにより、「複数の隙間へ向けて方向づけられるように延び」ていない構成とされることに比べて、より容易に、空気を鏡筒内全体にわたって流入させることができるとともに、鏡筒の物体側の端部が封止された状態で最も物体側のレンズを鏡筒に挿入するときに、「空気の経路」から鏡筒内部の空気を一気に排出することができ、鏡筒内空気圧力が上昇することがないとの新たな技術的意義を有することになるといえる。

エ このように、出願当初明細書等には、本件補正事項1に係る「前記開口部から前記複数の点の間の前記隙間と対向して複数の前記隙間へ向けて方向付けられるように延びる空気の経路とが設けられ」ていることは明記されておらず、むしろ、空気の経路が、前記開口部から当接点へ向けて方向付けられるように延びることが記載されている可能性があるものである。そして、「前記開口部から前記複数の点の間の前記隙間と対向して複数の前記隙間へ向けて方向付けられるように延びる空気の経路とが設けられ」ている構成にすることにより新たな技術的意義を奏するものである。
よって、本件補正事項1を含む本件補正3は、出願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項とはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、図1太線箇所が当接点を表している旨主張し、その根拠として、図1(a)では、レンズ7と鏡筒2との間の当接点が線の重合部分として示されていることを挙げるようであるところ、請求人がいう「線の重合部分」の意味は判然としないが、「線」が「重合」するためには、「線」が複数本必要であることからみて、「線の重合部分」とは、レンズ7の輪郭線と鏡筒2の内側の輪郭線(上記(2)ウ(ウ))との重合部分であって、これが図1太線箇所として表れているとの主張であると解される。しかしながら、図1太線箇所が何を意味するのかについては、出願当初明細書等には説明がないと言わざるを得ない。
この点、請求人は、図1(a)と図2とを鏡筒のみで比較すれば、図1(a)の太線(図1太線箇所)が図2の太線であるとも主張するところ、請求人がいう「図2の太線」の意味も判然としないが、図2からは、図2離隔箇所が2本の線で構成されている一方、図2当接箇所が1本のより太い線で構成されているようにも見えることから、「図2の太線」とは、図2当接箇所における当該1本のより太い線のことを意味しているものと解される。しかしながら、当該1本のより太い線は、上記(2)ウ(ウ)で認定したとおり、レンズ7の輪郭線が鏡筒2の輪郭線のうち内側の輪郭線に対して接していることにより構成されているから、請求人が主張するように、「鏡筒2のみ、すなわち、レンズ7を考慮せずにみたときは、「図2の太線」との概念自体を観念しがたい。
請求人は図3(a)についても言及するが、これを考慮しても、上記の説示を左右しない。

イ さらに、請求人は、図1(b)では、レンズ7と鏡筒2の底面との間の隙間である空気の経路が当接点間の隙間に連通している旨主張するところ、請求人の主張は判然としないが、上記(2)ウ(イ)において、レンズ7の基準面が座面25とわずかに離れている箇所をもって「空気の経路」に該当するとみるとともに、図1(b)の上側方向において、レンズ7が、横長の部分を備えつつ、鏡筒2とわずかに離れていることをもって、「空気の経路が当接点間の隙間に連通している」に該当するとみるものと解される。
しかしながら、上記(3)イ(ウ)b(d)で説示したとおり、図1(b)に、溝26(空気の経路といえるものである。)が表れているのかが不明であるから、図1(b)を見ても、空気の経路が隙間に連通しているとはいえない。
仮に、図1(b)に溝26が表れているとしても、上記同箇所で説示したとおり、溝26は、図1(a)の下側の部分においては当接点に接している。そして、本件補正事項1は、「前記隙間へ向けて方向付けられる」における「前記隙間」が「複数」であることをも特定している。そうすると、やはり、本件補正事項1に係る技術的事項が、図1(b)に記載されているとはいえない(なお、図2を併せてみると、図1(b)の上側方向におけるレンズ7と鏡筒2とのわずかな間隙は、ゲート切断部7aに由来するものとみる余地があり、このことは、上記(3)イ(ウ)bの説示と整合する。)。
請求人は図3(b)についても言及するところ、仮に、図3(b)と同(a)とが、上記(3)イ(ウ)b(d)で説示した図1(b)と同(a)との関係と同様、つまり、図3(b)が、同(a)の開口部24の中心を通る上下方向の直線に沿った断面に対応しているとしても、レンズ7が、図3(b)の上側方向において、横長の部分を備えつつ、鏡筒2とわずかに離れている箇所(上記(2)ウ(オ))には、凹部33(空気の経路といえるものである。)が存在しないことになるから、なおさら、本件補正事項1に係る技術的事項が、図3(b)に記載されているとはいえない。

ウ 請求人は、図1(a)と同(b)を並べて表示することにより、視覚的にも、観念的にも、空気の経路である溝26が隙間に直接に連通して空気を物体側へと流通させることが明らかである旨主張するが、溝26は、座面25と鏡筒2の内周面との境界の座面25側に設けられた「円環状の溝29」(【0038】)と連通しているから、溝26は、隙間へ向けて方向付けられるように延びる技術的な必然性はなく、当接点へ向けて方向付けられるように延びても差し支えない。
図3(a)と同(b)についても同様である。

エ 請求人は、上記(3)イ(ウ)bの説示に対して、図1(a)は鏡筒単体の正面図であり、図2は鏡筒にレンズを組み合わせたレンズユニットの断面図であるので、縮尺により、細線、太線を比較して論じることはできない旨主張するところ、要するに、請求人は、図1(a)と図2とは、レンズの有無で異なった図であるから、図1細線箇所が、レンズに関連した概念である図2当接箇所及び図2離隔箇所のいずれに対応するのかという問題を、縮尺の観点をもって論じることはできないというものと解される。
確かに、出願当初明細書等の【0026】には、図1(a)が「本発明の第1の実施の形態の鏡筒を示す正面図」であると記載されているものの、鏡筒の単体を示しているとまでは明記されていないのであり、かえって、同【0028】には、「図1(a)、(b)に示すように、この実施の形態のレンズユニット1は、円筒状の鏡筒2と、鏡筒2内に配置される複数(例えば、5つ)のレンズ3,4,5,6,7と、2つの絞り部材11,12とを備える。」とも記載されているから、図1(a)には、レンズに関連した構成が表れているとみる余地は否定されないというのが相当である。
また、仮に、図1(a)が請求人が主張するように鏡筒の単体である場合は、図1太線箇所が太線となっている理由をレンズとの関係に見いだすことはできないことになるものの、そうであるならば、図1太線箇所が何を意味するのか、出願当初明細書等に説明がない以上、理解できないということに帰する。

オ よって、請求人の主張はいずれも採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正事項1を含む本件補正3は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

2 「前記開口部と前記隙間とに通じる直線状の溝である」との補正事項について
(1)本件補正1は、請求項3において、補正前の出願当初の請求項4に「前記座面の前記経路が、前記枠部に形成された開口部から前記座面の外周部と前記鏡筒の内周面との境界部分に至る溝である」とあったものを、「前記座面の前記経路が前記開口部と前記隙間とに通じる直線状の溝である」と補正することを含むものである。(以下「本件補正事項2」という。)
また、本件補正2及び本件補正3にも、本件補正事項2がそのまま残されている。

(2)本件補正事項2は、「前記座面の前記経路が前記開口部と前記隙間とに通じる直線状の溝である」と特定するから、図3(a)の三角形の形状を有する凹部33には対応せず、図1(a)の一対の溝26に対応するものであると解される。また、「前記座面の前記経路が前記開口部と前記隙間とに通じる直線状の溝である」から、図1(a)の溝のうち、一対の溝26のみに対応しているのであって、円形の溝28及び29は含まないものと解される。
そして、上記1で検討した理由と同じ理由により、本件補正事項2に係る「前記座面の前記経路が前記開口部と前記隙間とに通じる直線状の溝である」ことは、出願当初明細書等には記載されていない。
よって、本件補正1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
本件補正2及び本件補正3によりなされた補正も同様である。

3 「前記座面の前記経路が、前記開口部から前記隙間へと通じる範囲にわたって設けられる」との補正事項について
(1)本件補正1は、請求項4において、補正前の出願当初の請求項5に「前記座面の前記経路が、前記枠部に形成された開口部から前記座面の外周部と前記鏡筒の内周面との境界部分に至る範囲に設けられる」とあったものを、「前記座面の前記経路が、前記開口部から前記隙間へと通じる範囲にわたって設けられる」と補正することを含むものである。(以下「本件補正事項3」という。)
また、本件補正2及び本件補正3にも、本件補正事項3がそのまま残されている。

(2)本件補正事項3は、「前記座面の前記経路が、前記開口部から前記隙間へと通じる範囲にわたって設けられる」と特定するから、図1(a)の一対の溝26及び図3(a)の三角形の形状を有する凹部33の両方を含むと解される。また、「前記座面の前記経路が、前記開口部から前記隙間へと通じる範囲にわたって設けられる」から、円形の溝28及び29は含まないものと解される。
そして、上記1で検討した理由と同じ理由により、本件補正事項3に係る「前記座面の前記経路が、前記開口部から前記隙間へと通じる範囲にわたって設けられる」ことは、出願当初明細書等には記載されていない。
よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
本件補正2及び本件補正3によりなされた補正も同様である。

第4 むすび
以上のとおり、本件補正1ないし3は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-05-10 
結審通知日 2022-05-17 
審決日 2022-05-30 
出願番号 P2015-157279
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (G02B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
発明の名称 レンズユニットおよびカメラ  
代理人 栗林 三男  
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