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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1386542
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-28 
確定日 2022-07-29 
事件の表示 特願2015−256933「光源、光源を含むバックライトユニットおよび液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016−127292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月28日(パリ条約による優先権主張2014年12月29日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年10月23日付け:拒絶理由通知書
令和2年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 4月22日付け:拒絶査定
令和2年 8月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和2年10月30日 :上申書の提出

第2 令和2年8月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年8月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所として、請求人が付したものである。)
「青色光を放出する発光素子と、
前記青色光を緑色光及び赤色光に変換する量子ドット材料、樹脂および散乱剤を含み、
前記発光素子が放出する前記青色光を白色光に変換して放出する光変換層と、
を含み、
前記散乱剤は、前記光変換層の全体重量に対して10重量%以下で含まれており、
下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす光源:
(1)前記白色光は、ピーク波長が518nm〜550nmの間にあり、半値幅は90nm未満である前記緑色光成分と、ピーク波長が620nm以上である領域にあり、半値幅が42nm以上49nm以下である前記赤色光成分とを含む;

(2)前記白色光の色座標において、赤色頂点は0.65<Cx<0.69かつ0.29<Cy<0.33の領域に位置し、緑色頂点は0.17<Cx<0.31かつ0.61<Cy<0.70の領域に位置する。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年1月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「青色光を放出する発光素子と、
前記青色光を緑色光及び赤色光に変換する量子ドット材料、樹脂および散乱剤を含み、
前記発光素子が放出する前記青色光を白色光に変換して放出する光変換層と、
を含み、
前記散乱剤は、前記光変換層の全体重量に対して10重量%以下で含まれており、
下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす光源:
(1)前記白色光は、ピーク波長が518nm〜550nmの間にあり、半値幅は90nm未満である前記緑色光成分と、ピーク波長が620nm以上である領域にあり、半値幅が49nm以下である前記赤色光成分とを含む;
(2)前記白色光の色座標において、赤色頂点は0.65<Cx<0.69かつ0.29<Cy<0.33の領域に位置し、緑色頂点は0.17<Cx<0.31かつ0.61<Cy<0.70の領域に位置する。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「白色光」の「赤色光成分」について、「半値幅が42nm以上」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2011/0241044号明細書(以下「引用文献」という。原査定の「引用文献2」。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「[0013] Provided is a white light emitting diode including a blue LED light source, and a light conversion layer that converts the incident light from the LED light source into white light. A light emitting peak wavelength of the green light emitting semiconductor nanocrystal is about 520 nm or more, a light emitting peak wavelength of the red semiconductor nanocrystal is about 610 nm or more, FWHMs (full width at half maximum) of light emitting peaks of the green and red light emitting semiconductor nanocrystals are about 45 nm or less, and the white light emitting diode has color reproducibility of about 90% or more, and in one embodiment 100% or more, compared to National Television System Committee (”NTSC”) color coordinate of International Commission on Illumination (”CIE”) 1931 coordinates.
(当審仮訳: 青色LED光源を含む白色発光ダイオードが提供され、LED光源からの入射光を白色光に変換する光変換層を備えている。緑色発光半導体ナノ結晶の発光ピーク波長は約520nm以上、赤色発光半導体ナノ結晶の発光ピーク波長は約610nm以上であり、緑色発光半導体ナノ結晶と赤色発光半導体ナノ結晶の発光ピークのFWHM(半値全幅)は約45nm以下である。そして、白色発光ダイオードは、国際照明委員会(”CIE”)1931座標のナショナルテレビジョンシステム委員会(”NTSC”)カラー座標と比較して、約90%以上、一実施形態では100%以上の色再現性を有している。)」
「[0023] FIGS. 1 to 4 are cross-sectional views of embodiments of white light emitting diodes including a light conversion layer of various structures.
(当審仮訳: 図1?図4は、様々な構造の光変換層を含む白色発光ダイオードの実施形態の断面図である。)」
「[0055] …(前略)…. A light emitting peak wavelength and FWHM (full width at half maximum) can be controlled by particle size, composition, or concentration gradient of the semiconductor nanocrystal.
(当審仮訳:半導体ナノ結晶の粒径、組成、または濃度勾配によって、発光ピーク波長とFWHM(半値全幅)を制御することができる。)」
「[0057] In one embodiment, for example, a light conversion layer 12 may include a mixed layer of a plurality of a green light emitting semiconductor nanocrystal 14 and a plurality of a red light emitting semiconductor nanocrystal 16 on a blue LED light source 10, as shown in FIG. 1. Both green light emitting semiconductor nanocrystals 14 and red light emitting semiconductor nanocrystals 16 are directly adjacent to the blue LED light source 10, and each nanocrystal may be considered a discrete and individual member, as illustrated in FIG. 1.
(当審仮訳:一実施形態では、例えば、光変換層12は、図1に示すように、青色LED光源10上に、複数の緑色発光半導体ナノ結晶14と複数の赤色発光半導体ナノ結晶16との混合層を含んでもよい。緑色発光半導体ナノ結晶14及び赤色発光半導体ナノ結晶16は共に青色LED光源10に直接隣接しており、各ナノ結晶は、図1に示すように、離散的で個別の部材とされてもよい。)」
「[0074] …(前略)…. The prepared mixture of the green light emitting semiconductor nanocrystal, the red light emitting semiconductor nanocrystal, and the epoxy resin is coated on a lamp type blue light emitting diode of a cup shape in an amount of about 20 mL, and cured at about 100℃. for about 3 hours to prepare a light conversion layer. …(後略)….
(当審仮訳:調製した緑色発光半導体ナノ結晶、赤色発光半導体ナノ結晶、エポキシ樹脂の混合物を約20mLの量でカップ状のランプ型青色発光ダイオード上に塗布し、約100℃で約3時間硬化させて光変換層を調製する。)」
「[0083] The light emitting spectrum of the LED using the white light emitting semiconductor nanocrystal according to Example 1 is shown in FIG. 6. The light emitting spectrum after color filter transmission is shown in FIG. 7. In FIG. 6, the light emitting peak wavelengths and full width at half maximum (FWHM) of green and red light emitting spectra are respectively about 528 nm (about 28 nm) and about 626 nm (about 36 nm), and in FIG. 7, they are respectively about 522 nm (about 28 nm) and about 620 nm (about 36 nm) after transmission through a color filter of an LCD display, indicating that the light emitting peak wavelength or FWHM is not substantially changed after color filter transmission. FIG. 7 also shows that the ratio of the areas of light emitting spectra of the white emitting diode after each color filter transmission is about 1:0.94:0.84.
(当審仮訳:実施例1に従った白色発光半導体ナノ結晶を用いたLEDの発光スペクトルを図6に示す。また、カラーフィルタ透過後の発光スペクトルを図7に示す。図6では、緑色および赤色の発光スペクトルの発光ピーク波長および半値最大全幅(FWHM)は、それぞれ約528nm(約28nm)および約626nm(約36nm)であり、図7では、液晶ディスプレイのカラーフィルタ透過後の発光ピーク波長およびFWHMは、それぞれ約522nm(約28nm)および約620nm(約36nm)であり、カラーフィルタ透過後の発光ピーク波長またはFWHMが実質的に変化していないことを示している。図7はまた、各カラーフィルタ透過後の白色発光ダイオードの発光スペクトルの面積の比が約1:0.94:0.84であることを示している。)」
「[0087] Using the spectra of the green semiconductor nanocrystal synthesized in Preparation Example 1, the red semiconductor nanocrystal synthesized in Preparation Example 2, and the green and red inorganic phosphor of Comparative Example 3, light emitting intensity is controlled so as to adjust the white color coordinate, and then color coordinates corresponding to red, green, and blue are calculated to obtain relative color reproducibility and relative luminance. The results are described in Table 1. In Table 1, at the bottom of each color coordinate, light emitting intensity for adjusting white color coordinate is described together.
(当審仮訳:実施例1で合成した緑色半導体ナノ結晶、調製例2で合成した赤色半導体ナノ結晶、比較例3の緑色及び赤色無機蛍光体のスペクトルを用いて、白色の色座標を調整するように発光強度を制御し、赤色、緑色、青色に対応する色座標を算出して、相対的な色再現性と相対的な輝度を求めた。その結果を表1に示す。なお、表1において、各色座標の最下段には、白色色座標を調整するための発光強度をまとめて記載している。)」
「[0088] From the above Table 1, it can be seen that the light emitting diode according to Example 1 prepared using green and red semiconductor nanocrystals has superior color reproducibility and relative luminance, compared to Comparative Examples 1 to 3 using green and/or red inorganic phosphor, respectively.
(当審仮訳:上記表1から、緑色および赤色の半導体ナノ結晶を用いて作製した実施例1に従った発光ダイオードは、それぞれ緑色および/または赤色の無機蛍光体を用いた比較例1?3に比べて、色再現性および相対輝度に優れていることがわかる。)」
「[0091] Color reproducibility and relative luminance of semiconductor nanocrystal according to light emitting peak wavelength are measured and described in the following Table 2.
(当審仮訳:発光ピーク波長に応じた半導体ナノ結晶の色再現性と相対的な輝度を測定し、下記表2に記載した。)」
「表1


「表2


「図1


(イ)上記記載から、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
表2より、赤色光成分のピーク波長が630nm、緑色光成分のピーク波長が540nmである白色発光ダイオード(以下、「表2の第3LED」という。)の白色光は、白色光の色座標(x,y)において、赤色頂点は(0.671,0.307)であり、緑色頂点は(0.239,0.691)であることが、みてとれる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<引用発明>
「青色LED光源を含む白色発光ダイオードであって、([0013]及び[0023])
LED光源からの入射光を白色光に変換する光変換層を備え、([0013])
光変換層12は、青色LED光源10上に、複数の緑色発光半導体ナノ結晶14と複数の赤色発光半導体ナノ結晶16及びエポキシ樹脂を含み、([0055]、[0057]及び[0074])
緑色発光半導体ナノ結晶と赤色発光半導体ナノ結晶の発光ピークのFWHM(半値全幅)は約45nm以下であり、([0013])
白色光は、赤色光成分のピーク波長が630nm、緑色光成分のピーク波長が540nmであり、白色光の色座標(x,y)において、赤色頂点は(0.671,0.307)であり、緑色頂点は(0.239,0.691)である、(上記(イ)a)
白色発光ダイオード。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを、以下に対比する。
(ア)引用発明の「青色LED光源10」、「光変換層12」及び「白色発光ダイオード」は、それぞれ本件補正発明の「青色光を放出する発光素子」、「光変換層」及び「光源」に相当する。
(イ)引用発明の「光変換層12」は、「LED光源からの入射光を白色光に変換する」層であって、「複数の緑色発光半導体ナノ結晶14と複数の赤色発光半導体ナノ結晶16及びエポキシ樹脂を含」む層である。
よって、引用発明の「光変換層12」は、本件補正発明の「青色光を緑色光及び赤色光に変換する量子ドット材料、樹脂および散乱剤を含み、前記発光素子が放出する前記青色光を白色光に変換して放出する光変換層」と、「青色光を緑色光及び赤色光に変換する量子ドット材料および樹脂を含み」、「前記発光素子が放出する前記青色光を白色光に変換して放出する」点で、一致するといえる。
(ウ)引用発明の「白色発光ダイオード」が発する「白色光」の「色座標(x,y)」において、「赤色頂点は(0.671,0.307)であり、緑色頂点は(0.239,0.691)である」から、本件補正発明の「前記白色光の色座標において、赤色頂点は0.65<Cx<0.69かつ0.29<Cy<0.33の領域に位置し、緑色頂点は0.17<Cx<0.31かつ0.61<Cy<0.70の領域に位置する」との構成を、満たすといえる。
(エ)上記(ウ)より、引用発明は、本件補正発明の「(2)」の要件を満たしているから、本件補正発明の「下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす」との特定を満たすといえる。
イ 上記アより、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「青色光を放出する発光素子と、
前記青色光を緑色光及び赤色光に変換する量子ドット材料および樹脂を含み、前記発光素子が放出する前記青色光を白色光に変換して放出する光変換層と、
を含み、
下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす光源:
(1)前記白色光は、ピーク波長が518nm〜550nmの間にあり、半値幅は90nm未満である前記緑色光成分と、ピーク波長が620nm以上である領域にある前記赤色光成分とを含む;
(2)前記白色光の色座標において、赤色頂点は0.65<Cx<0.69かつ0.29<Cy<0.33の領域に位置し、緑色頂点は0.17<Cx<0.31かつ0.61<Cy<0.70の領域に位置する。」

<相違点>
「光変換層」について、本件補正発明は、「散乱剤を含み」、「前記散乱剤は、前記光変換層の全体重量に対して10重量%以下で含まれて」いるのに対し、引用発明は、「散乱剤」の有無は不明である点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 蛍光体を含む波長変換部材(光変換層)に、波長変換或いは混色化の促進のために「散乱剤」を添加することは、周知技術(例えば、下記周知文献1〜2参照)であり、その添加量は、散乱剤の機能が必要十分に生じ得る程度に設計されるものであるところ、「10重量%以下」との添加量は、通常、添加される程度の量(周知文献1にも例示されている)にすぎないものである。
そして、引用発明の「光変換層12」は、「複数の緑色発光半導体ナノ結晶14」及び「複数の赤色発光半導体ナノ結晶16」を含む、波長変換を行う層であるから、上記「波長変換或いは混色化の促進」との要請を内包していることは、当業者には明らかである。
したがって、引用発明の「光変換層12」に、光変換層12の全体重量に対して「10重量%以下」の「散乱剤」を添加することは、当業者が容易になし得た事項といえる。
イ 周知技術を示す文献
・周知文献1:特表2010−533976号公報(原査定に引用された「引用文献3」)
「【0114】
ある実施形態において、量子ドットベースの光シートは散乱体をさらに含むことが可能である。ある実施形態において、散乱体はダウンコンバージョン材料に含まれることが可能である。ある実施形態において、散乱体は別個の層に含まれることが可能である。ある実施形態において、ダウンコンバージョン材料を含むフィルムまたは層は機構を含む所定の配列に配置することが可能であり、機構の一部は散乱体を含むが、ダウンコンバージョン材料を含まない。このような実施形態において、ダウンコンバージョン材料を含む機構は、場合により散乱体も含むことが可能である。」
「【0116】
散乱体のサイズおよびサイズ分布の選択は、当業者によってただちに決定可能である。サイズおよびサイズ分布は、散乱粒子および散乱体が分散されるホスト材料の屈折率のミスマッチ、およびレイリー散乱理論に従って散乱される事前に選択した波長とに好ましくは基づいている。散乱粒子の表面は、ホスト材料における分散性および安定性を改善するためにさらに処理され得る。一実施形態において、散乱粒子は、約0.001から約20重量%の範囲内の濃度の、粒径0.2μmのTiO2(DuPontによるR902+)で構成される。ある好ましい実施形態において、散乱体の濃度範囲は0.1から10重量%である。あるさらに好ましい実施形態において、組成物は散乱体(好ましくはTiO2で構成される。)を、約0.1から約5重量%の、最も好ましくは約0.3から約3重量%の範囲内の濃度で含む。」
「【0043】
…(前略)…。ある実施形態において、散乱体は、ホスト材料の重量に基づいて約0.001から約15重量パーセントの範囲内の量でダウンコンバージョン材料にさらに含まれる。ある実施形態において、散乱体は、ホスト材料の重量に基づいて約0.1から2重量パーセントの範囲内の量で含まれる。ある実施形態において、ホスト材料は結合剤を含む。ホスト材料の例は以下に挙げられる。」
・周知文献2:特表2013−544018号公報(原査定に引用された「引用文献4」)
「【0167】
QDフィルムは、図26Aに示されるように、1つのQD蛍光体材料層を有し得る。好ましい実施形態において、QDフィルムは、図26Bに示される層2604aおよび2604b等、2つ以上の層を有するQD蛍光体材料を含む。好ましい実施形態において、QD蛍光体材料は、図26B〜26Gに示されるように、複数の層を含み、QD2613および/または散乱特徴部(例えば、散乱粒子)2640は、複数のQD蛍光体材料層のうち1つ以上のQD蛍光体材料内に分散されてもよい。…(後略)…。」
ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 結論
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
(ア)散乱剤の含有量が増加するに連れて、色座標の面積が大きくなり、かつ、輝度が低下する傾向を見出し、これにより、本件補正発明の散乱剤の含有量を上記のように規定し、広い色領域および高い輝度を実現しており、散乱剤の含有量の規定は、大きな臨界的意義を有していること。(審判請求書第3頁第22行〜第4頁第3行)
(イ)赤色光成分が42nm以上49nm以下の半値幅を有しており、引用文献1、2(当審注:審決中の引用文献は「引用文献2」である。)の赤色光成分よりも比較的大きな半値幅の赤色光成分を用いた場合にも、広い色領域および高い輝度を得ることが可能となること。(審判請求書第4頁第4行〜第11行)
しかしながら、次のとおりであるから、請求人の主張は上記判断を左右するものではない。
上記(ア)について、上記アのとおり、散乱剤の添加は周知技術であり、その含有量も一般的な数値であり、格別のものとはいえず、その効果も、当業者には予想し得る範疇の事項である。
また、本願の表11〜13に開示される散乱剤の含有量は、1〜6重量%であって、10重量%前後のものは記載されていないことから、請求人の主張する「臨界的意義」との主張は、認められるものではない。
上記(イ)について、本件補正発明では、「下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす」と特定しており、半値幅の特定については、必須の構成ではない。
また、請求人は、上申書において、本件補正発明の「下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす」との特定を、「下記(1)および(2)を満たす」と限定した補正案を提示している。
そこで、本件補正発明における「(1)及び(2)を満たす」(以下それぞれ構成(1)、構成(2)という。)との特定について、予備的に検討する。
a 上記構成(1)について
(a)引用発明の白色光は、「赤色光成分のピーク波長が630nm、緑色光成分のピーク波長が540nm」であるから、構成(1)の「ピーク波長が518nm〜550nmの間にある前記緑色光成分」及び「ピーク波長が620nm以上である領域にある前記赤色光成分」との特定を満たしている。
(b)引用発明の「緑色発光半導体ナノ結晶」の「発光ピークのFWHM(半値全幅)」は、「約45nm以下」であるから、構成(1)の「半値幅は90nm未満である前記緑色光成分」との特定を満たしている。
(c)引用発明の「赤色発光半導体ナノ結晶」の「発光ピークのFWHM(半値全幅)」は、「約45nm以下」であり、構成(1)の「半値幅が42nm以上49nm以下」の範囲に含まれる値を含むものであるから、引用発明において、「赤色発光半導体ナノ結晶の発光ピークのFWHM(半値全幅)」を、例えば「約45nm」程度として構成することは、当業者であれば容易になし得た事項といえる。
上記(a)〜(c)より、構成(1)を満たすことは、当業者であれば容易になし得たことといえる。
b 上記構成(2)について
上記aのとおり、引用発明において、構成(1)を満たすことは、当業者が容易になし得た事項であるところ、その際に、構成(2)も満たすことについては、以下のとおりである。
引用発明の目的は、[0013]に記載のとおり、「国際照明委員会(”CIE”)1931座標のナショナルテレビジョンシステム委員会(”NTSC”)カラー座標と比較して、約90%以上の色再現性」であり、表2には、発光ピーク波長に応じた半導体ナノ結晶の色座標、色再現性及び相対的な輝度が記載されており、例えば、「表2の第3LED」における色座標について、赤色頂点は(0.671,0.307)であり、緑色頂点は(0.239,0.691)、白色光の相対的な色再現性は「115%」である。
そして、各色の頂点の色座標の値が、色再現性に影響を与えることは技術常識であるところ、色再現性を一定以上とする引用発明の目的からいって、「赤色発光半導体ナノ結晶の発光ピークのFWHM(半値全幅)」を「約45nm以下」とした範囲において、同程度(115%)の色再現性が得られるようにすることが、引用発明において前提となっていることは明らかであるから、半値全幅の値に応じて、色再現性に影響を与える各色の頂点の色座標の値が、大きく変更されることがないようにすることが前提であるといえる。
してみると、引用発明の「赤色発光半導体ナノ結晶の発光ピークのFWHM(半値全幅)」を「約45nm」程度として構成したとしても、「表2の第3LED」における赤色頂点、緑色頂点の色座標の値は、大きく変化しないよう構成されるから、構成(2)に特定される、各色の頂点座標の範囲に概ね含まれるものであるといえ、仮に、含まれないとしても、含まれる程度の座標とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。
c 上記a及びbのとおり、構成(1)及び(2)を満たすことは、当業者が容易になし得たものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年8月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年1月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜27に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び周知技術(引用文献3〜4)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。


2.米国特許出願公開第2011/241044号明細書
3.特表2010−533976号公報(周知技術を示す文献)
4.特表2013−544018号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2〜4は、それぞれ前記第2における引用文献、周知文献1、2であるから、それぞれの文献の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)及び(4)ウに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、赤色光成分の「半値幅」が、「42nm以上49nm以下」との限定事項を「49nm以下」と、その限定事項を一部削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 井上 博之
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-03-12 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-30 
出願番号 P2015-256933
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 吉野 三寛
近藤 幸浩
発明の名称 光源、光源を含むバックライトユニットおよび液晶表示装置  
代理人 八田国際特許業務法人  
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