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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1386626 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-24 |
確定日 | 2022-01-11 |
事件の表示 | 特願2018−558606「給電装置及び受電端末」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日国際公開、WO2018/123015、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)12月28日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年11月13日付け:拒絶理由通知書 令和2年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 8月27日付け:拒絶査定(原査定) 令和2年11月24日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和3年 9月14日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書 令和3年11月11日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、令和3年11月11日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし13は以下のとおりの発明である。なお、下線は、補正された箇所を示す。 「 【請求項1】 複数のPoE受電端末がイーサネット(登録商標)ケーブルを介して各々接続される複数の接続部と、 前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に電力を各々供給する複数の給電部と、 前記接続部に接続された前記PoE受電端末に制御情報を送信する送信部と、 前記複数の給電部によって給電される総電力を測定する測定部と、 前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量、前記総電力、自装置が給電していない前記給電部の数、及び前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力に基づいて、前記PoE受電端末に供給可能な電力量を計算する計算部と、 前記計算部が計算した前記PoE受電端末に供給可能な電力量に応じた、前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部に送信させる制御指示部と、 を備えるPoE給電装置。 【請求項2】 前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報は、前記PoE受電端末が消費可能な最大電力量が前記PoE受電端末に供給可能な電力以上である場合、当該PoE受電端末に供給可能な電力であり、前記PoE受電端末が消費可能な最大電力量が前記PoE受電端末に供給可能な電力未満の場合、前記PoE受電端末が消費可能な最大電力量であることを特徴とする請求項1に記載のPoE給電装置。 【請求項3】 請求項1に記載のPoE給電装置が接続される接続部と、 前記接続部に接続された前記PoE給電装置から電力を受信する受電部と、 前記接続部に接続された前記PoE給電装置に自端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を送信する送信部と、 前記接続部に接続された前記PoE給電装置から制御情報を受信する受信部と、 前記受信部によって自端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を受信すると、当該自端末が消費可能な電力量の情報に基づき、自端末が消費する電力を制御する電力制御部と、 を備えるPoE受電端末。 【請求項4】 前記複数の給電部は、入力された電力を前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に各々供給することを特徴とする請求項2に記載のPoE給電装置。 【請求項5】 複数のPoE受電端末がイーサネット(登録商標)ケーブルを介して各々接続される複数の接続部と、 前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に電力を各々供給する複数の給電部と、 前記接続部に接続された前記PoE受電端末に制御情報を送信する送信部と、 前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量、自装置が給電していない前記給電部の数、前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力及び自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数に基づいて、前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力を計算する計算部と、 前記計算部が計算した前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量に応じた、前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部に送信させる制御指示部と、 を備えるPoE給電装置。 【請求項6】 前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報は、前記PoE受電端末が消費可能な最大電力量が前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量以上である場合、当該前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量の情報であり、前記PoE受電端末が消費可能な最大電力量が前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量未満の場合、前記PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報であることを特徴とする請求項5に記載のPoE給電装置。 【請求項7】 前記計算部が、前記リクエスト信号を送信した前記PoE受電端末以外の前記複数のPoE受電端末のうち、最大消費電力で動作するPoE受電端末を検出した場合には、前記制御指示部は、前記最大消費電力に応じた、前記最大消費電力で動作するPoE受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部を用いて前記最大消費電力で動作するPoE受電端末に送信させることを特徴とする請求項6に記載のPoE給電装置。 【請求項8】 前記最大消費電力で動作するPoE受電端末が消費可能な電力量の情報は、前記最大消費電力で動作するPoE受電端末の最大消費電力量が前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量以上である場合、前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量であり、前記最大消費電力で動作するPoE受電端末の最大消費電力量が前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量未満の場合、前記最大消費電力で動作するPoE受電端末の最大消費電力量であることを特徴とする請求項7に記載のPoE給電装置。 【請求項9】 請求項5に記載のPoE給電装置が接続される接続部と、 前記接続部に接続された前記PoE給電装置から電力を受信する受電部と、 前記接続部に接続された前記PoE給電装置に自装置が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を送信する送信部と、 前記接続部に接続された前記PoE給電装置から制御情報を受信する受信部と、 前記受信部によって自端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を受信すると、当該自端末が消費可能な電力量の情報に基づき、自端末が消費する電力を制御する電力制御部と、 を備えるPoE受電端末。 【請求項10】 前記受信部が最大消費電力で動作する自端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記PoE給電装置から受信すると、前記電力制御部は、前記最大消費電力で動作する自端末が消費可能な電力量の情報に基づき、自端末が消費する電力を制御することを特徴とする請求項9に記載のPoE受電端末。 【請求項11】 前記複数の給電部は、入力された電力を前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に各々供給することを特徴とする請求項5に記載のPoE給電装置。 【請求項12】 複数のPoE受電端末がイーサネット(登録商標)ケーブルを介して各々接続される複数の接続部と、前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に電力を各々供給する複数の給電部と、前記接続部に接続された前記PoE受電端末に制御情報を送信する送信部と、を備えるPoE給電装置において実行される方法であって、 前記複数の給電部によって給電される総電力を測定し、 前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量、前記総電力、自装置が給電していない前記給電部の数、及び前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力に基づいて、前記PoE受電端末に供給可能な電力量を計算し、 前記計算された前記PoE受電端末に供給可能な電力量に応じた、前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を送信する、方法。 【請求項13】 複数のPoE受電端末がイーサネット(登録商標)ケーブルを介して各々接続される複数の接続部と、前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に電力を各々供給する複数の給電部と、前記接続部に接続された前記PoE受電端末に制御情報を送信する送信部と、を備えるPoE給電装置において実行される方法であって、 前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量、自装置が給電していない前記給電部の数、前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力及び自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数に基づいて、前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力を計算し、 前記計算された前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量に応じた、前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を送信する、方法。」 なお、本願発明2は、本願発明1を減縮したものであり、本願発明3は、他のサブコンビネーションである本願発明1に関する事項を用いて特定するサブコンビネーションの発明であり、本願発明4は、本願発明2を減縮したものであり、本願発明5は、独立形式の発明であり、本願発明6ないし8及び11は、本願発明5を減縮したものであり、本願発明9は、他のサブコンビネーションである本願発明5に関する事項を用いて特定するサブコンビネーションの発明であり、本願発明10は、本願発明9を減縮したものであり、本願発明12は、本願発明1に対応した方法の発明であり、本願発明13は、本願発明5に対応した方法の発明である。 第3 原査定の概要 令和2年8月27日付けの拒絶査定(原査定)の拒絶の理由は次のとおりである。 本願の請求項1、6ないし9及び20ないし22に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、また、本願の請求項2ないし5及び10ないし19に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2005/022369号 引用文献2:特開2011−78223号公報 なお、原査定においては、以下の拒絶の理由が付記されている。 [付記1]新規事項 令和2年3月12日に提出された手続補正書に係る手続補正は、請求項2及び11に「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」という新規事項を追加するものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 [付記2]実施可能要件 発明の詳細な説明には、請求項2及び11に係る発明において、「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」をどのように使用するのかについて、当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載していないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 [付記3]明確性要件違反 本願の請求項2ないし5及び10ないし20に係る発明において、「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」を「計算」にどのように用いるのか明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第4 当審拒絶理由の概要 令和3年9月14日付けで当審が通知した拒絶理由(当審拒絶理由)の概要は次のとおりである。 [理由1]明確性 本願の請求項1ないし20に係る発明は、以下の(1)、(2)、(4)及び(5)の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 [理由2]サポート要件 本願の請求項1ないし20に係る発明は、以下の(1)及び(3)の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1ないし8及び18ないし20に係る「制御情報」は、複数のPoE受電端末のそれぞれが現在消費している電力を低減させる指示である「電力低減指示」と、必ずしも複数のPoE受電端末のそれぞれが現在消費している電力より小さいとは限らない「前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力量に応じた、前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報」とを含むものであるから、技術的に矛盾した態様を含むとともに、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (2)請求項1に記載の「電力低減指示」が、どの程度の電力を低減する指示であるのか明確ではない。 (3)請求項9の記載において、「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」を用いることは、発明の詳細な説明に記載されていない。 (4)請求項2ないし4、9及び12に記載の「前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力」は、「複数のPoE受電端末」に共通のものであるのか、又は、リクエストを送信した特定の「PoE受電端末」に固有のものであるのか、明確ではない。 (5)前記(4)に関連して、「最小起動電力」の定義が明確ではない。 なお、令和3年9月14日付けの拒絶理由通知書には、<補正にあたっての留意点>として、請求項1ないし8、18ないし20に係る発明は、補正によっては、特開2014−90234号公報(以下、「参考文献」という。)に記載された発明により進歩性を有さないことになる旨、付記されている。 第5 当審拒絶理由についての判断 (1)(2)について、本件補正により、「電力低減指示」について記載された本件補正前の請求項1ないし8及び20は削除され、また、本件補正前の請求項18及び19は、これらに対応する本件補正後の請求項11及び12においては、「電力低減指示」を含まない記載に補正された。 (3)について、本件補正により、本件補正前の請求項9に記載されていた「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」は、本件補正後の請求項1においては削除された。 (4)(5)について、本件補正前の請求項2ないし4は削除され、本件補正後の請求項1及び5に記載の「前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力」は、令和3年11月11日に提出された意見書の(4−3)の項目において、リクエストを送信した特定のPoE受電端末に固有のものでなく、明細書の【0032】に記載された事項と矛盾しない旨の釈明がなされた。 以上より、本願発明1ないし13は、明確であり、また、発明の詳細な説明に記載したものであるから、理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)はいずれも解消した。 なお、令和3年9月14日付けの拒絶理由通知書に付記されていた<補正にあたっての留意点>に関しては、本件補正により、前記<補正にあたっての留意点>が対象としていた請求項が、削除されるか、又は、上記参考文献に記載した技術事項には対応しないものに補正されたため、上記参考文献に記載された発明によって、本願発明1ないし13が進歩性がないということにはならない。 第6 原査定についての判断 1 引用文献1について (1)引用文献1記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は、ホスト装置と複数のデバイスとがシリアル通信を行うためのバスを介して接続され、該ホスト装置のバス給電によって各デバイスを動作させる通信システムに用いられるホスト装置、デバイス、通信システムの制御方法に関する。 [0002] パーソナルコンピュータの分野では、シリアルバスインターフェース規格であるUSB2.0/1.1の規格に準拠したUSB(ユニバーサルシリアルバス)インターフェースを持つ周辺機器(デバイス)が世界標準となりつつあり、今後もその普及の勢いは止まらない状況となっている。USB規格ではポート毎にUSBケーブルを経由して最大50OmA迄の電流を供給する能力を規定しており、各デバイスがケーブル給電により動作できるようになっている。つまり、USBインターフェースによりデータ通信を行う通信システムでは、ホスト機能を持つコンピュータ(ホスト装置)からデバイスにUSBケーブルを介して給電しデバイスを駆動させている。近年ではUSBインターフェースで通信可能なデバイスの普及によって、多くのデバイスがUSBインターフェースを介してホスト装置に接続されるようになってきている。その通信システムにおいて、ホスト装置に接続されるデバイスが多くなり、ホスト装置側の能力(供給可能な電流)を越えた無理な電力消費が各デバイスで行われると、システム全体が動作不安定になってしまうため、それを回避するための技術が必要となっている。」 「[0023] 以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。図1は、第1実施形態におけるホスト装置11の概略的なブロック回路図である。 [0024] ホスト装置(具体的には、パーソナルコンピュータ)11は、MPU12、メモリ13、ホストコントローラ14、電流供給回路15、及び電流監視回路16を含む。ホスト装置11において、MPU12は、メモリ13、ホストコントローラ14、及び電流供給回路15に内部バス17を介して接続され、相互にデータの授受が行われる。ホスト装置11には、USBインターフェースを構成する3つの通信ポートP1〜P3が設けられており、各通信ポートP1〜P3に第1〜第3のデバイス21〜23がUSBケーブルClを介して接続される。各デバイス21〜23は、ホスト装置11からUSBケーブルClを介して給電されて動作するバスパワーデバイスである。 [0025] 制御回路であるMPU12は、メモリ13に格納されたプログラムに従って各種の処理を実行し、ホスト装置11を統括的に制御する。メモリ13に格納されるプログラムとしては通信プログラムを含み、その通信プログラムによってホストコントローラ14や電流供給回路15が制御される。 [0026] ホストコントローラ14は、USB規格に準拠した通信回路であり、各デバイス21〜23との間の通信を制御する。ホストコントローラ14は、各通信ポートP1〜P3、及びUSBケーブルClを介して第1〜第3のデバイス21〜23に接続されている。ホストコントローラ14にはレジスタ14aが設けられており、該レジスタ14aに各デバイス21〜23から取得した機器情報が格納される。具体的に、ホスト装置11は、各デバイス21〜23が通信ポートP1〜P3に接続されたとき、その接続認識のための処理(デバイス21〜23との間でネゴシエーション)を行い、それにより得られた機器清報(装置名や最大消費電流を含む情報)をホストコントローラ14のレジスタ14aに格納する。 [0027] 電流供給回路15は、レジスタ14aの機器情報に含まれる最大消費電流に応じた電流を、通信ポートP1〜P3及びUSBケーブルClを介して各デバイス21〜23に供給する。第1実施形態では、電流供給回路15と各通信ポートP1〜P3とを結ぶ電流経路の途中にスイッチ回路25が設けられている。 [0028] 電流監視回路16は、通信ポートP1〜P3に流れる電流を検出し、通信ポートPl〜P3を介してデバイス21〜23に所定値以上の過電流(各デバイスの最大消費電流を越えた電流)が流れないように監視する。電流監視回路16は、過電流を検出するとスイッチ回路25をオフして電流供給回路15と通信ポートP1〜P3とを電気的に遮断する。これにより、例えば、デバイス21が故障して過電流が流れたときに、該デバイス21への電流経路が遮断され、過電流が流れ続けることが回避される。その結果、ホスト装置11と各デバイス22, 23とで構成される通信システムの動作が不安定な状態になることが防止される。」 「[0029] 次に、ホスト装置11のMPU12が実行する通信処理のうち新規デバイスの接続を認識するための処理について図2のフローチャートに従い説明する。なお、図2の処理は、ホスト装置11にデバイス21〜23のいずれかが接続されたときに開始される。ここでは、第1及び第2のデバイス21,22がホスト装置11に接続認識されている状態で第3のデバイス23が新たに接続された場合を一例として説明する。 [0030] ホスト装置11の通信ポートP3にデバイス23が接続されると、MPU12は、先ず、ステップ100でバスリセットをした後、続くステップ110に移行して、接続済みデバイス21,22を含む各デバイス21〜23のアドレス設定を行う。アドレス設定の完了後、MPUl2は、ステップ120に移行して、デバイス23の機器情報を取得する。具体的には、MPU12は、ホストコントローラ14を動作させ、新規に接続されたデバイス23に対して要求コマンド(Get Descriptor)を発行し、その応答としてデバイス23から送出される機器情報をホストコントローラ14のレジスタ14aに格納する。機器情報としては、機器名、メーカー、最大消費電流等の情報を含む。 [0031] MPUl2は、ステップ130において、接続済みデバイス21,22と今回接続されたデバイス23の機器情報をレジスタ14aから読み出し、その機器情報に基づいてデバイス23の最大消費電流を供給可能か否かを判定する。ここで、電流供給回路15が供給可能な電流は、プログラムデータとしてメモリ13に予め設定されており、その供給可能な電流とデバイス23の最大消費電流とが比較される。なお、電流供給回路15として汎用的な電源ICを用いる場合には、電流供給回路15の供給可能な電流を測定する電流計測回路を設け、ホスト装置11の初期化処理等で電流測定回路を用いて実測した電流供給回路15の供給電流とデバイス23の最大消費電流とを比較してもよい。 [0032] ステップ130において供給可能であると判定した場合、MPU12はステップ140に移行してホストコントローラ14を動作させ、接続認識をした旨を通知するコマンド(Set Configuration)をデバイス23に発行した後、本処理を終了する。 [0033] 一方、ステップ130において、供給不可能であると判定した場合、MPU12はステップ150に移行して供給電流の配分を変更する。すなわち、MPU12は、電流供給回路15が供給可能な電流の範囲内で、接続済みデバイス21,22と新規のデバイス23とを含む各デバイス21〜23への供給電流の配分を変更する。但し、ステップ150では、供給電流の配分変更を計画するのみで、実際の各デバイスヘの供給電流は現状の電流値を維持する。 [0034] 続く、ステップ160において、MPU12は、ホストコントローラ14を動作させ、供給電流の変更対象となったデバイスにその変更後の電流値を送信する。その後、MPUl2は、ステップ170において、その電流値をデバイスが了承したか否か(動作可能であるか否か)を確認する。 [0035] 具体的には、MPU12は、変更後の電流値を通知するために、消費電流の設定コマンド(Set Descriptor)をホストコントローラ14から発行する。設定コマンドを受信したデバイスは、設定コマンドで指定される電流値が対応可能な電流値であればACKパケットを、対応不可能な電流値であればSTALLパケットを返信する。MPU12はデバイスから返信されてくるACKパケット又はSTALLパケットに基づいて、デバイスが動作可能であるか否かを判定する。 [0036] ここで、変更対象となるデバイスが複数ある場合、ステップ160でそれら全てに消費電流の設定コマンドが発行され、ステップ170において、全てのデバイスからの了承(ACKパケット)が得られたか否かが判断される。 [0037] ステップ170においてデバイスの了承が得られた場合、MPU12はステップ180に移行して、電流供給回路15から各デバイス21〜23に供給する電流値を変更する。ステップ140において、接続認識した旨を通知するコマンド(Set Configuration)をデバイス23に発行した後本処理を終了する。 [0038] ステップ170においてデバイスの了承が得られなかった場合、MPU12はステップ190に移行して、各デバイスヘの供給電流の配分を再変更(再調整)することが可能か否かを判定し、再変更が可能であると判定した場合は、ステップ150に戻り、ステップ150以降の処理を再度実行する。一方、再変更する余地がないと判定した場合は、ステップ200に移行して、新規の接続機器であるデバイス23の認識(Set Configurationの発行)を行うことなく、本処理を終了する。」 「[0039] 次に、新規デバイスの認識処理において、ホスト装置11と各デバイス21〜23との間で行われるネゴシエーションの具体例を図3〜図8に従って説明する。なお、第1実施形態において、ホスト装置11が各デバイス21〜23に供給できる最大の供給電流はlAである。また、各デバイス21〜23の最大消費電流は、第1のデバイス21が5OOmA、第2のデバイス22が300mA、第3のデバイス23が300mAである。さらに、第1のデバイス21が最大消費電流を500mAから300mAまで低減できる機能を持ち、第3のデバイス23が最大消費電流を300mAから250mAまで低減できる機能を持つ。また、第2のデバイス22は、最大消費電流の低減機能を持たず、最大消費電流を300mAから変更することができないものとする。 [0040] 先ず、図3に示すように、第1及び第2のデバイス21,22がホスト装置11に接続認識されており、各々がバス給電によって動作している状態で、第3のデバイス23がプラグインにより新規に接続される。すると、図4に示すように、ホスト装置11は第3のデバイス23に対してプロファイル(機器情報)を要求する要求コマンド(Get Descriptor)を発行する。第3のデバイス23は、その要求コマンドに応答して自身の最大消費電流のパラメータ(MaxPower=300mA)を含む機器情報を通知する。 [0041] ホスト装置11は、300mAの最大消費電流が、自ら供給可能なスペックか否かを判定する。ここで、ホスト装置11は、第1及び第2のデバイス21,22に対して合計で80OmAの電流を既に供給しており、残りの供給可能な能力(スペック)は200mA(=l000-500-300)であるため、第3のデバイス23への最大消費電流(=300mA)を供給することができないと判断する。 [0042] 従来では、ホスト装置11の供給可能なスペックを越えている場合、新規に接続された第3のデバイス23を認識することができない。これに対し、第1実施形態では、ホスト装置11は、供給可能な電流(=lA)を越えないように各デバイス21〜23にスペックダウンを要求して、スペックダウンした消費電流で各デバイス21〜23が動作可能であるか否かを確認する。各デバイス21〜23が動作可能であるときに、該各デバイス21〜23への供給電流の配分を変更して、新規に接続された第3のデバイス23を認識する。 [0043] ホスト装置11から各デバイス21〜23に発行されるスペックダウンの要求コマンド(Set Descriptor)としては、コンフィグレーションディスクリプタ(Configuration Descriptor)の最大消費電流のフィールド(Max Power Field)を用いている。ホスト装置11は最大消費電流のフィールドにターゲットスペックである電流値をアサインして発行している。なお、USB規格において、デバイスの最大消費電流は、コンフィグレーションディスクリプタの8番目のパラメータとして規定されている。 [0044] 第1実施形態において、各デバイス21〜23の最大消費電流の合計はllOOmAであり、第1及び第2のデバイス21,22に加えて、第3のデバイス23を新たに接続する場合、ホスト装置11の供給可能なスペック(lOOOmA)に対してlOOmAの能力が不足する。そのため、ホスト装置11は、各デバイス21〜23への供給電流の配分を調整するためのネゴシエーションを開始する。 [0045] ここで、ホスト装置11は、例えば、不足分の半分にあたる50mAを第1及び第2のデバイス21,22への供給電流から低減することで、lOOmAの不足分を確保しようと試みる。 [0046] 具体的に、ホスト装置11は、図5に示すように、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした250mAで動作可能かどうかを第2のデバイス22に確認する。つまり、ホスト装置11は、コマンド(Set Descriptor)における最大消費電流フィールドに250mAのデータをアサインして第2のデバイス22に送信する。しかし、第2のデバイス22は、動作するために300mAの供給電流を必要とするため、対応不可能である旨をSTALLパケットで応答する。 [0047] 次に、ホスト装置11は、図6に示すように、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした450mAで動作可能かどうかを第1のデバイス21に打診する。このとき、ホスト装置11は、コマンド(Set Descriptor)における最大消費電流フィールドに450mAのデータをアサインして第1のデバイス21に送信する。第1のデバイス21は、300mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、450mAの供給電流での動作を了承する。 [0048] 次いで、ホスト装置11は、図7に示すように、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした250mAで動作可能かどうかを第3のデバイス23に打診する。このとき、ホス卜装置11は、コマンド(Set Descriptor)における最大消費電流フィールドに250mAのデータをアサインして第3のデバイス23に送信する。第3のデバイス23は、250mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、250mAの供給電流での動作を了承する。 [0049] ホスト装置11は、図8に示すように、第1のデバイス21への供給電流を450mAに低減するとともに、第3のデバイス23への供給電流を250mAとする。これにより、第1のデバイス21は、低消費電流モードに動作を切り替え、第3のデバイス23は、低消費電流モードでの動作を開始する。 [0050] このようにして、ホスト装置11は第3のデバイス23を接続認識することができ、全てのデバイス21〜23と通信可能な状態となる。 なお上記では、接続認識済みのデバイス21,22への供給電流を変更して、新規デバイス23の接続認識が可能となる場合について説明した。これに対し、デバイス21,22への供給電流を変更しても、新規に接続したデバイス23の動作可能な供給電流が確保できない場合には、従来と同様にデバイス23を認識することができない。その場合には、第1及び第2のデバイス21,22には、デバイス23の接続前の供給電流がそのまま供給され、ホスト装置11と各デバイス21,22との間の通信は維持される。 [0051] また、図5〜図8を用いて説明した各デバイス21〜23へのネゴシエーションの順序も適宜変更することができる。つまり、上記の具体例では、接続済みデバイス22に対し供給電流の変更を間い合わせるものであるが、先ず、新規のデバイス23に対して供給電流の低減を間い合わせ、デバイス23への供給電流の調整がつかない場合に、接続済みデバイス21,22に供給電流の低減を間い合わせるように構成してもよい。 [0052] もちろん、ホスト装置11が算出した低減電流値の50mAもあくまで一例であって、任意の算出結果に基づいてネゴシエーションを行うことができる。例えば、図6において、最大消費電流をlOOmAだけスペックダウンした400mAで動作可能かどうかを第1のデバイス21に確認してもよい。この場合、第1のデバイス21は、300mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、400mAの供給電流での動作を了承する。第1のデバイス21への供給電流の低減によって、新規のデバイス23への300mAの供給電流が確保できるため、新規のデバイス23の供給電流を低減するためのネゴシエーション(図7参照)は不要となる。」 「図1 」 「図2 」 (2)引用発明 前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 ホスト装置11は、MPU12、メモリ13、ホストコントローラ14、電流供給回路15、及び電流監視回路16を含み、 ホスト装置11には、USBインターフェースを構成する3つの通信ポートP1〜P3が設けられており、各通信ポートP1〜P3に第1〜第3のデバイス21〜23がUSBケーブルClを介して接続され、各デバイス21〜23は、ホスト装置11からUSBケーブルClを介して給電されて動作するバスパワーデバイスであり、 USB規格に準拠した通信回路であり、各デバイス21〜23との間の通信を制御するホストコントローラ14は、各通信ポートP1〜P3、及びUSBケーブルClを介して第1〜第3のデバイス21〜23に接続され、ホストコントローラ14にはレジスタ14aが設けられており、該レジスタ14aに各デバイス21〜23から取得した機器情報が格納され、 電流供給回路15は、レジスタ14aの機器情報に含まれる最大消費電流に応じた電流を、通信ポートP1〜P3及びUSBケーブルClを介して各デバイス21〜23に供給し、電流供給回路15と各通信ポートP1〜P3とを結ぶ電流経路の途中にスイッチ回路25が設けられ、 電流監視回路16は、通信ポートP1〜P3に流れる電流を検出し、通信ポートPl〜P3を介してデバイス21〜23に所定値以上の過電流(各デバイスの最大消費電流を越えた電流)が流れないように監視し、過電流を検出するとスイッチ回路25をオフして電流供給回路15と通信ポートP1〜P3とを電気的に遮断し、 ホスト装置11のMPU12が実行する通信処理のうち新規デバイスの接続を認識するための処理の一例として、第1及び第2のデバイス21,22がホスト装置11に接続認識されている状態で第3のデバイス23が新たに接続された場合、MPU12は、ホストコントローラ14を動作させ、新規に接続されたデバイス23に対して要求コマンド(Get Descriptor)を発行し、その応答としてデバイス23から送出される機器情報をホストコントローラ14のレジスタ14aに格納し、機器情報としては、機器名、メーカー、最大消費電流等の情報を含み、 MPUl2は、接続済みデバイス21,22と今回接続されたデバイス23の機器情報をレジスタ14aから読み出し、その機器情報に基づいてデバイス23の最大消費電流を供給可能か否かを判定し、なお、電流供給回路15の供給可能な電流を測定する電流計測回路を設け、ホスト装置11の初期化処理等で電流測定回路を用いて実測した電流供給回路15の供給電流とデバイス23の最大消費電流とを比較してもよく、 供給不可能であると判定した場合、MPU12は、電流供給回路15が供給可能な電流の範囲内で、接続済みデバイス21,22と新規のデバイス23とを含む各デバイス21〜23への供給電流の配分変更を計画し、 MPU12は、変更後の電流値を通知するために、消費電流の設定コマンド(Set Descriptor)をホストコントローラ14から発行し、設定コマンドを受信したデバイスは、設定コマンドで指定される電流値が対応可能な電流値であればACKパケットを、対応不可能な電流値であればSTALLパケットを返信し、 変更対象となるデバイスが複数ある場合、ステップ160でそれら全てに消費電流の設定コマンドが発行され、全てのデバイスからの了承(ACKパケット)が得られたか否かが判断され、 デバイスの了承が得られた場合、MPU12は、電流供給回路15から各デバイス21〜23に供給する電流値を変更し、接続認識した旨を通知するコマンド(Set Configuration)をデバイス23に発行した後本処理を終了し、 ホスト装置11と各デバイス21〜23との間で行われるネゴシエーションの具体例において、ホスト装置11が各デバイス21〜23に供給できる最大の供給電流はlAであり、また、各デバイス21〜23の最大消費電流は、第1のデバイス21が5OOmA、第2のデバイス22が300mA、第3のデバイス23が300mAであり、さらに、第1のデバイス21が最大消費電流を500mAから300mAまで低減できる機能を持ち、第3のデバイス23が最大消費電流を300mAから250mAまで低減できる機能を持ち、また、第2のデバイス22は、最大消費電流の低減機能を持たず、最大消費電流を300mAから変更することができないものとし、 各デバイス21〜23の最大消費電流の合計はllOOmAであり、第1及び第2のデバイス21,22に加えて、第3のデバイス23を新たに接続する場合、ホスト装置11の供給可能なスペック(lOOOmA)に対してlOOmAの能力が不足し、そのため、ホスト装置11は、各デバイス21〜23への供給電流の配分を調整するためのネゴシエーションを開始し、 ここで、ホスト装置11は、例えば、不足分の半分にあたる50mAを第1及び第2のデバイス21,22への供給電流から低減することで、lOOmAの不足分を確保しようと試み、 ホスト装置11は、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした250mAで動作可能かどうかを第2のデバイス22に確認するが、第2のデバイス22は、動作するために300mAの供給電流を必要とするため、対応不可能である旨をSTALLパケットで応答し、 次に、ホスト装置11は、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした450mAで動作可能かどうかを第1のデバイス21に打診すると、第1のデバイス21は、300mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、450mAの供給電流での動作を了承し、 次いで、ホスト装置11は、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした250mAで動作可能かどうかを第3のデバイス23に打診すると、第3のデバイス23は、250mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、250mAの供給電流での動作を了承し、 ホスト装置11は、第1のデバイス21への供給電流を450mAに低減するとともに、第3のデバイス23への供給電流を250mAとする、 ホスト装置11。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電力制御システムに関し、特に、家庭内の電気機器を電力線で接続した家電機器ネットワーク(PLC:Power Line Communication)等に好ましく適用される技術に関するものである。 【背景技術】 【0002】 一般に、家庭内の電気機器全体で使用できる電力は、各家庭で契約により定格電力として決められており、定格を超える電流が家庭内に流れた場合、住宅に設けられたブレーカが落ちて停電状態となる。これを回避するためには、家庭内の消費電力状況を測定し、一定量の制限値を設けて、電気機器全ての消費電力が定格電力を超えないように制御することが必要である。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 通常、電気機器の起動時の消費電力は様々であり、制限値の設定が高すぎると、起動時に高電力を必要とする電気機器が起動した場合に、該起動後の全体の消費電力が制限値を通り越して定格をオーバーしてしまう可能性がある。また、制限値の設定が低すぎると、効率的に電力を使用することができないという問題がある。特許文献1による制御方法では、起動時の消費電力が意識されておらず、上記の問題に対応することはできない。 【0006】 また、最近では、テレビやエアコン等の電気機器において省電力機能を備えるものが広くユーザに提供されているが、上記の起動時の消費電力を考慮に入れた全体的な電力管理を行わない状態では、省電力機能のメリットを十分に享受できているとはいえない。 【0007】 そこで、本発明は、運転中の電気機器と未起動の電気機器の消費電力を確保し、確実にブレーカ落ちを防止するとともに、定格電力を最大限活用できるようにすることを目的とする。」 「【0016】 図1は、本発明の実施形態に係る家電機器ネットワークの構成を示した図である。本実施形態の家電機器ネットワーク1は、ブレーカ2、電力センサ3、電力制御装置4、ドライヤ5、照明6、テレビ7、パソコン8、給湯器9、電子レンジ10、エアコン11、PLC12から構成され、各電気機器や各装置等はPLC12を介して接続されている。本実施形態では、ドライヤ5からエアコン11の電気機器がネットワークを構成しているが、もちろんこれに限定されず、その他の電気機器をネットワークに含めてもよい。また、PLC12のほかに、例えばBluetooht等の無線を用いてネットワークを構成してもよい。また、電力線に接続されている機器についてはPLCを利用し、その他の機器については無線を用いてネットワークを構成してもよい。 【0017】 ブレーカ2は、電力センサ3の検出結果(ネットワーク内の全電気機器の消費電力)に応じて電力供給を中断して停電状態とする。電力センサ3は、ネットワーク内の全電気機器の起動や運転を監視し、ネットワーク内の全電気機器の消費電力を検出する。電力制御装置4は、全ての未起動の電気機器が起動するのに必要な電力(以下、起動電力という)を確保するとともに、定格電力から起動電力を除いた電力(以下、消費可能電力という)の範囲内で、運転中の全電機機器の消費電力を制御する。もしネットワークに接続されていない電気機器が存在する場合、定格電力から当該電気機器の消費電力、及び起動電力を除いた電力を消費可能電力としてもよい。 【0018】 本実施形態では、ドライヤ5からエアコン11の各電気機器は2段階でユーザ所望の運転モードに入る仕様とする。すなわち、1段階目では各機器共通の小さい電力量(電力Aとする)で起動し、2段階目で所望の運転モードに必要な電力量(電力Bとする)で運転を行う。電力Aは、機器の起動と起動後の電力制御装置4との通信に必要十分な電力である。各電気機器は、起動後に運転に必要な電力Bを電力制御装置4に通知し、電力制御装置4からの運転許可応答を待って運転を開始する。 【0019】 図2は、本発明の実施形態に係る電力制御装置の機能構成を示した図である。本実施形態の電力制御装置4は、CPU(不図示)がメモリ(不図示)に格納された本実施形態特有のプログラムを読み込んで、起動電力を求めて消費可能電力を設定し、運転中の電機機器の消費電力を調整してネットワーク内の消費電力を制御するための機能部である制御部100を構成する。制御部100は、消費可能電力設定手段110、機器消費電力調整手段120、通信手段130、電力制御情報管理手段140を論理的に有する。なお、これらの各手段を回路で構成する等してハードウェアで実現することも可能である。 【0020】 消費可能電力設定手段110は、電気機器が起動した場合、残りの未起動の電気機器が起動するための起動電力を求め、定格電力から該起動電力を差し引いて消費可能電力を算出して設定する。消費可能電力の設定は、電力制御情報管理手段140が保持する電力制御情報を更新することで行う。機器消費電力調整手段120は、起動した電気機器が開始しようとする運転に必要な消費電力、該機器の運転前における運転中の全電機機器の消費電力、消費可能電力に基づいて、運転中の全電機機器の消費電力の調整を行う。通信手段130は、起動した電気機器や運転中の電気機器との間で通信を行う。電力制御情報管理手段140は、本実施形態での電力制御に用いる電力制御情報を保持し、消費可能電力設定110や機器消費電力調整手段120に電力制御情報を提供するとともに、制御に応じてデータ更新を行う。」 「【0023】 具体的な例を用いて説明する。図4は電力制御情報の一例を示した図であり、図5は、電力制御の説明するための図である。電気機器aをエアコンとし、他の電気機器(運転中)を照明、テレビ、給湯器、電子レンジとする。エアコンの起動前の起動電力は、3(未起動機器台数)×0.5A(電力A)=1.5Aである。エアコン起動後には、2(未起動機器台数)×0.5A(電力A)=1Aが起動電力となる。エアコン起動後の消費可能電力は、20A(定格電力)−1A(起動電力)=19Aである。エアコン起動後の時点で、電力制御情報管理手段140は、この起動電力と消費可能電力を電力制御情報として保持しておく。 【0024】 図3のチャート図に戻る。電気機器aは、起動を通知して起動電力及び消費可能電力が更新された後、ユーザにより選択された運転モードを電力制御装置に通知する(ステップS6、ステップS7)。電力制御装置は、通信手段130が電気機器aの運転モード通知を取得し、機器消費電力調整手段120が電力制御情報を用いて電気機器aの運転に必要な消費電力を確認する(ステップS8)。そして、機器消費電力調整手段120は、電力制御情報の消費可能電力、電気機器aの運転前時点の消費電力(他の電気機器の消費電力)、電気機器aの運転に必要な消費電力をもとに、他の電気機器の消費電力の調整を行う(ステップS9)。 【0025】 現状のままで電気機器aを運転させると消費可能電力を超過する場合、機器消費電力調整手段120は、他の電気機器に対して運転モードの変更を指示する(ステップS10)。他の電気機器は、変更指示を受けて運転モードの変更を行い(ステップS11)、変更完了を電力制御装置に通知する(ステップS12)。電力制御装置は、通信手段130が変更完了通知を取得し、機器消費電力調整手段は電力制御情報管理手段140に変更後の消費電力を用いて電力制御情報の更新を行わせる(ステップS13)。そして、電力制御装置は通信手段130により運転開始を指示し(ステップS14)、電気機器aは電力制御装置からの指示を受けて運転を開始する(ステップS15)。 【0026】 なお、電気機器aの運転前時点の消費電力(他の電気機器の消費電力)と電気機器aの運転に必要な消費電力の合計が消費可能電力を超過しない場合には、他の電気機器の運転モード変更を行わず、そのまま家電機器aに運転開始の指示を出す。つまり、他の電気機器の運転モード変更は、消費可能電力、電気機器aの運転前時点の消費電力(他の電気機器の消費電力)、電気機器aの運転に必要な消費電力に基づいて、必要に応じて行われる。 【0027】 図4で、エアコンの運転モード”中”が選択されたものとする。ここで、エアコン運転前の時点、運転中の電気機器は照明、テレビ、給湯器、電子レンジであり、消費電力はそれぞれ4A、3A、8A、4Aである。エアコン運転前の時点の消費電力は、1A+4A+3A+8A+0.5A(エアコン起動電力)=16.5Aであり、エアコンの運転が行われた場合、1A+4A+3A+8A+4A(エアコン運転電力)=20Aとなり、消費可能電力を超過する。このため、運転機器の消費電力を調整する必要がある。 【0028】 本実施形態では、調整にあたり、電気機器間で優先度を設定しておき、優先度に従って消費電力の調整を行う。図4の例では運転中の電機機器の中で優先度が最も高いのは電子レンジであるため、電子レンジの運転モードを変更して消費電力を調整する。電子レンジの変更後の消費電力は、19A−(1A+4A+3A+4A(エアコンの運転電力))=7Aである。したがって、機器消費電力調整手段120は、電子レンジに対して、運転モードを”中”から”弱”に変更するように指示を出す。そして、電力制御情報管理手段140は、運転モード変更について変更前後の内容(電子レンジの変更前の消費電力と変更後の消費電力)を保持しておく。 【0029】 なお、運転機器の消費電力の調整については、上述した優先度を用いる手法のほか、一律で全ての運転機器の運転モードを変更する手法、最も消費電力の大きいもの(あるいは小さいもの)の運転モードをから順に変更していく手法、最も利用率が良くなるように計算して運転モードを変更する手法等、様々な手法を採用することが可能である。」 「【図1】 」 「【図4】 」 したがって、上記引用文献2には、以下の技術的事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。なお、引用文献2には、「電気機器」と「電機機器」という表記の揺れが認められるので、以下では、「電気機器」で統一することとする。 「 家庭内の電気機器を電力線で接続した家電機器ネットワーク1は、ブレーカ2、電力センサ3、電力制御装置4、ドライヤ5、照明6、テレビ7、パソコン8、給湯器9、電子レンジ10、エアコン11、PLC12から構成され、各電気機器や各装置等はPLC(Power Line Communication)12を介して接続され、 各電気機器は2段階でユーザ所望の運転モードに入る仕様とし、すなわち、1段階目では各機器共通の小さい電力量(電力Aとする)で起動し、2段階目で所望の運転モードに必要な電力量(電力Bとする)で運転を行い、電力Aは、機器の起動と起動後の電力制御装置4との通信に必要十分な電力であり、各電気機器は、起動後に運転に必要な電力Bを電力制御装置4に通知し、電力制御装置4からの運転許可応答を待って運転を開始し、 電力制御装置4の制御部100は、消費可能電力設定手段110、機器消費電力調整手段120、通信手段130、電力制御情報管理手段140を論理的に有し、 消費可能電力設定手段110は、電気機器が起動した場合、残りの未起動の電気機器が起動するための起動電力を求め、定格電力から該起動電力を差し引いて消費可能電力を算出して設定し、消費可能電力の設定は、電力制御情報管理手段140が保持する電力制御情報を更新することで行い、機器消費電力調整手段120は、起動した電気機器が開始しようとする運転に必要な消費電力、該機器の運転前における運転中の全電気機器の消費電力、消費可能電力に基づいて、運転中の全電気機器の消費電力の調整を行い、 具体的な例において、電気機器aをエアコンとし、他の電気機器(運転中)を照明、テレビ、給湯器、電子レンジとし、エアコンの起動前の起動電力は、3(未起動機器台数)×0.5A(電力A)=1.5Aであり、エアコン起動後には、2(未起動機器台数)×0.5A(電力A)=1Aが起動電力となり、エアコン起動後の消費可能電力は、20A(定格電力)−1A(起動電力)=19Aであり、 電気機器aは、起動を通知して起動電力及び消費可能電力が更新された後、ユーザにより選択された運転モードを電力制御装置に通知し、 機器消費電力調整手段120が電力制御情報を用いて電気機器aの運転に必要な消費電力を確認し、現状のままで電気機器aを運転させると消費可能電力を超過する場合、他の電気機器に対して運転モードの変更を指示し、他の電気機器は、変更指示を受けて運転モードの変更を行い、 運転機器の消費電力を調整するにあたり、電気機器間で優先度を設定しておき、優先度に従って消費電力の調整を行い、例では運転中の電気機器の中で優先度が最も高いのは電子レンジであるため、電子レンジの運転モードを変更して消費電力を調整し、 運転機器の消費電力の調整については、上述した優先度を用いる手法のほか、一律で全ての運転機器の運転モードを変更する手法、最も消費電力の大きいもの(あるいは小さいもの)の運転モードをから順に変更していく手法、最も利用率が良くなるように計算して運転モードを変更する手法等、様々な手法を採用することが可能である、こと。」 3 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 本願発明1の「PoE受電端末」における「PoE」とは、本願明細書の[0002]の記載及び本願出願日における技術常識を参酌すれば、IEEEにおいて標準化技術として規定されているPower over Ethernet(登録商標)技術であると認められる。また、本願明細書の[0014]の記載「受電端末3は、PoE対応のPDであり」を参酌すると、「PoE受電端末」は、上記「PoE」に対応した受電端末といえる。 一方、引用文献1には上記「PoE」について記載も示唆もないことから、引用発明の「各デバイス21〜23」は、「PoE」に対応したものとはいえない。 よって、引用発明の「ホスト装置11には、USBインターフェースを構成する3つの通信ポートP1〜P3が設けられており、各通信ポートP1〜P3に第1〜第3のデバイス21〜23がUSBケーブルClを介して接続され、各デバイス21〜23は、ホスト装置11からUSBケーブルClを介して給電されて動作するバスパワーデバイス」において、「ホスト装置11からUSBケーブルClを介して給電されて動作するバスパワーデバイス」である「各デバイス21〜23」と、本願発明1の「複数のPoE受電端末」とは、「複数の受電端末」である点で共通する。 また、引用発明の「USBケーブルCl」と本願発明1の「イーサネット(登録商標)ケーブル」とは、「ケーブル」である点において共通する。 また、引用発明において、「第1〜第3のデバイス21〜23」が「USBケーブルCl」を介して各々接続される「通信ポートP1〜P3」は、「複数の接続部」といい得るものである。 よって、引用発明の「通信ポートP1〜P3」と、本願発明1の「複数のPoE受電端末がイーサネット(登録商標)ケーブルを介して各々接続される複数の接続部」とは、「複数の受電端末がケーブルを介して各々接続される複数の接続部」である点において共通する。 イ 引用発明の「電流供給回路15は、レジスタ14aの機器情報に含まれる最大消費電流に応じた電流を、通信ポートP1〜P3及びUSBケーブルClを介して各デバイス21〜23に供給し、電流供給回路15と各通信ポートP1〜P3とを結ぶ電流経路の途中にスイッチ回路25が設けられ」との構成からすれば、「電流供給回路15」と「スイッチ回路25」は協働して各「デバイス21〜23」に電流を各々供給するものであって、電流を供給することは、電力を供給することといい得るものである。 よって、前記アを参酌すれば、引用発明の「電流供給回路15」及び「スイッチ回路25」と、本願発明1の「前記複数の接続部に接続された前記複数のPoE受電端末に電力を各々供給する複数の給電部」とは、「前記複数の接続部に接続された前記複数の受電端末に電力を各々供給する複数の給電部」である点において共通する。 ウ 引用発明の「MPU12は、ホストコントローラ14を動作させ、新規に接続されたデバイス23に対して要求コマンド(Get Descriptor)を発行し、その応答としてデバイス23から送出される機器情報をホストコントローラ14のレジスタ14aに格納し」及び「MPU12は、変更後の電流値を通知するために、消費電流の設定コマンド(Set Descriptor)をホストコントローラ14から発行し、設定コマンドを受信したデバイスは、設定コマンドで指定される電流値が対応可能な電流値であればACKパケットを、対応不可能な電流値であればSTALLパケットを返信し」との構成から、前記アを参酌すれば、「ホストコントローラ14」は、「MPU12」の指示に基づいて、「通信ポートP1〜P3」に接続された「デバイス21〜23」に「要求コマンド」及び「消費電流の設定コマンド」を送信していると認められる。ここで、「要求コマンド」及び「消費電流の設定コマンド」は、「制御情報」といい得るものである。 よって、前記アを参酌すれば、引用発明の「ホストコントローラ14」と、本願発明1の「前記接続部に接続された前記PoE受電端末に制御情報を送信する送信部」とは、「前記接続部に接続された前記受電端末に制御情報を送信する送信部」である点において共通する。 エ 引用発明の「電流監視回路16は、通信ポートP1〜P3に流れる電流を検出し、通信ポートPl〜P3を介してデバイス21〜23に所定値以上の過電流(各デバイスの最大消費電流を越えた電流)が流れないように監視し、過電流を検出するとスイッチ回路25をオフして電流供給回路15と通信ポートP1〜P3とを電気的に遮断し」との構成によれば、「電流監視回路16」は、各「通信ポートP1〜P3」の各々に流れる電流を検出、すなわち測定するものであり、「通信ポートP1〜P3」の各々に流れる電流は、「通信ポートP1〜P3」の各々に接続される「スイッチ回路25」に流れる電流と同一視できるため、各「スイッチ回路25」に流れる電流を測定するものといい得るものである。また、電流を測定することは、電力を測定することといい得るものである。また、電流(電力)を供給することは「給電」といい得るものである。 以上からすると、引用発明の「電流監視回路16」と、本願発明1の「前記複数の給電部によって給電される総電力を測定する測定部」とは、「前記複数の給電部によって給電される電力を測定する測定部」である点において共通する。 (なお、引用発明の「なお、電流供給回路15の供給可能な電流を測定する電流計測回路を設け、ホスト装置11の初期化処理等で電流測定回路を用いて実測した電流供給回路15の供給電流とデバイス23の最大消費電流とを比較してもよく」との構成において、「比較」の対象を考慮すれば、「電流計測回路」は、本願発明1の「自装置が供給可能な最大電力量」を測定するものに相当し、「前記複数の給電部によって給電される総電力」を測定するものとはいえない。) オ 引用発明の「第1及び第2のデバイス21,22がホスト装置11に接続認識されている状態で第3のデバイス23が新たに接続された場合、MPU12は、ホストコントローラ14を動作させ、新規に接続されたデバイス23に対して要求コマンド(Get Descriptor)を発行し、その応答としてデバイス23から送出される機器情報をホストコントローラ14のレジスタ14aに格納し、機器情報としては、機器名、メーカー、最大消費電流等の情報を含み」との構成において、「MPU12」が「ホストコントローラ14」を動作させることにより新規に接続された「デバイス23」に対して発行される「要求コマンド」に対して、「デバイス23」から「最大消費電流」の「機器情報」を含む「応答」を受信しているといえる。また、ここで、「最大消費電流」の「機器情報」は「応答」をした「デバイス23」が「消費可能な最大電力量の情報」といい得るものであり、また、「応答」が信号の形式で送受信されることは自明である。 よって、前記アを参酌すれば、引用発明において、「MPU12」が「デバイス23」から「最大消費電流」の「機器情報」を含む「応答」を受信することと、本願発明1の「前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信する」こととは、「前記受電端末から当該受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含む信号を受信する」ことである点において共通する。 カ 引用発明の 「 供給不可能であると判定した場合、MPU12は、電流供給回路15が供給可能な電流の範囲内で、接続済みデバイス21,22と新規のデバイス23とを含む各デバイス21〜23への供給電流の配分変更を計画し、 MPU12は、変更後の電流値を通知するために、消費電流の設定コマンド(Set Descriptor)をホストコントローラ14から発行し、設定コマンドを受信したデバイスは、設定コマンドで指定される電流値が対応可能な電流値であればACKパケットを、対応不可能な電流値であればSTALLパケットを返信し、 変更対象となるデバイスが複数ある場合、ステップ160でそれら全てに消費電流の設定コマンドが発行され、全てのデバイスからの了承(ACKパケット)が得られたか否かが判断され、」、 「各デバイス21〜23の最大消費電流の合計はllOOmAであり、第1及び第2のデバイス21,22に加えて、第3のデバイス23を新たに接続する場合、ホスト装置11の供給可能なスペック(lOOOmA)に対してlOOmAの能力が不足し、そのため、ホスト装置11は、各デバイス21〜23への供給電流の配分を調整するためのネゴシエーションを開始し、 ここで、ホスト装置11は、例えば、不足分の半分にあたる50mAを第1及び第2のデバイス21,22への供給電流から低減することで、lOOmAの不足分を確保しようと試み、 ホスト装置11は、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした250mAで動作可能かどうかを第2のデバイス22に確認するが、第2のデバイス22は、動作するために300mAの供給電流を必要とするため、対応不可能である旨をSTALLパケットで応答し、 次に、ホスト装置11は、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした450mAで動作可能かどうかを第1のデバイス21に打診すると、第1のデバイス21は、300mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、450mAの供給電流での動作を了承し、 次いで、ホスト装置11は、最大消費電流を50mAだけスペックダウンした250mAで動作可能かどうかを第3のデバイス23に打診すると、第3のデバイス23は、250mAまで供給電流を低減されても対応可能であるため、対応可能である旨をACKパケットで応答し、250mAの供給電流での動作を了承し、 ホスト装置11は、第1のデバイス21への供給電流を450mAに低減するとともに、第3のデバイス23への供給電流を250mAとする」との構成、及び、前記オを参酌すれば、「MPU12」は、新規に接続する「デバイス23」から「最大消費電流」の「機器情報」を含む「応答」を受信すると、「電流供給回路15が供給可能な電流」(又は「ホスト装置11の供給可能なスペック」)と、接続済みの「デバイス21、22」及び新規に接続する「デバイス23」の「最大消費電流」とに基づいて、当該「デバイス23」に供給可能な「供給電流」を計算する「計算部」として機能しているといえる。また、「供給電流」は「供給電力」といい得るものである。 よって、前記ア及びオを参酌すれば、引用発明の「MPU12」と、本願発明1の「前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量、前記総電力、自装置が給電していない前記給電部の数、及び前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力に基づいて、前記PoE受電端末に供給可能な電力量を計算する計算部」とは、「前記受電端末から当該受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含む信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量に基づいて、前記受電端末に供給可能な電力量を計算する計算部」である点において共通する。 キ 前記ウ及びカを参酌すれば、引用発明の「MPU12」は、カの認定に加え、「デバイス32」に送信する「消費電流の設定コマンド」を「ホストコントローラ14」に送信指示する「制御指示部」としても機能するものと認められ、また、「消費電流の設定コマンド」は、「デバイス32」が消費可能な電力量の情報を含むものであって、これが「MPU12」によって計算された「デバイス23」に供給可能な「供給電流」に応じたものであることは自明である。 よって、前記ア及びウを参酌すれば、引用発明の「MPU12」と、本願発明1の「前記計算部が計算した前記PoE受電端末に供給可能な電力量に応じた、前記PoE受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部に送信させる制御指示部」とは、「前記計算部が計算した前記受電端末に供給可能な電力量に応じた、前記受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部に送信させる制御指示部」である点において共通する。 ク 前記ア及び本願明細書の[0014]の記載「給電装置2は、PoE対応のPSEであり」からすると、本願発明1の「PoE給電装置」とは、IEEEにおいて標準化技術として規定されているPower over Ethernet(登録商標)技術に対応した給電装置といえる。 一方、引用文献1には上記「PoE」について記載も示唆もないことから、引用発明の「ホスト装置11」は、「PoE」に対応したものとはいえない。 よって、引用発明の「ホスト装置11」と本願発明1の「PoE給電装置」とは、上記アないしキで述べた各部を備える「給電装置」である点において共通する。 (2)一致点、相違点 前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。 [一致点] 「 複数の受電端末がケーブルを介して各々接続される複数の接続部と、 前記複数の接続部に接続された前記複数の受電端末に電力を各々供給する複数の給電部と、 前記接続部に接続された前記受電端末に制御情報を送信する送信部と、 前記複数の給電部によって給電される電力を測定する測定部と、 前記受電端末から当該受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含む信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量に基づいて、前記受電端末に供給可能な電力量を計算する計算部と、 前記計算部が計算した前記受電端末に供給可能な電力量に応じた、前記受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部に送信させる制御指示部と を備える給電装置。」 [相違点] <相違点1> 共通点である「受電端末」及び「給電装置」がそれぞれ、本願発明1においては「PoE受電端末」及び「PoE給電装置」であるのに対し、引用発明の「デバイス21〜23」及び「ホスト装置11」は、こられが、「USB規格に準拠した通信回路」である「ホストコントローラ14」、「USBインターフェース」を構成する「通信ポートP1〜P3」、及び「USBケーブルCl」を介して接続されていること、及び、引用文献1の[0001]及び[0002]において「USBインタフェース」に関する従来技術が挙げられていることからすると、USB規格に対応した端末又は装置であるとはいえるものの、PoEに対応したものとはいえない点。 <相違点2> 前記相違点1に関連し、共通点である「ケーブル」が、本願発明1においては、「イーサネット(登録商標)ケーブル」であるのに対し、引用発明は、「USBケーブルCl」である点。 <相違点3> 「測定部」が、本願発明1では「前記複数の給電部によって給電される総電力」を測定するのに対し、引用発明の「電流監視回路16」は、各「スイッチ回路25」(給電部)を介して給電される電力を測定するにとどまり、これらの「総電力」まで測定しているとはいえない点。 <相違点4> 前記<相違点3>に関連し、「計算部」による計算が、本願発明1では、「自装置が供給可能な最大電力量、前記総電力、自装置が給電していない前記給電部の数、及び前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力」に基づいているのに対し、引用発明では、「前記総電力、自装置が給電していない前記給電部の数、及び前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力」に基づくものではない点。 <相違点5> 消費可能な最大電力量の情報を含む「信号」が、本願発明1では、「リクエスト信号」であるのに対し、引用発明において、「最大消費電流」の「機器情報」を含む「応答」は、「MPU12」が「ホストコントローラ14」を介して「デバイス23」に対して発行する「要求コマンド」に対して送信されるものであることに鑑みれば直ちには「リクエスト信号」とはいえない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて、先に、「総電力」に関して互いに連関する上記相違点3及び相違点4についてまとめて検討する。 引用文献2記載事項を参酌すれば、電力制御装置4が、PLC(Power Line Communication)12を介して接続された複数の電気機器に電力を供給するシステムにおいて、電力制御装置4の消費可能電力設定手段110が、電気機器aが起動した場合、残りの未起動の電気機器が起動するための起動電力を、機器共通の小さい電力量(電力A)と未起動の電気機器の台数とから求め、定格電力から該起動電力を差し引いて消費可能電力を算出すること、電力制御装置4の機器消費電力調整手段120が、起動した電気機器aから通知された運転モードによる運転に必要な消費電力と、電気機器aの運転前における運転中の全電気機器の消費電力と、前記消費可能電力とに基づいて、いずれかの電気機器の運転モードの変更を行うことにより運転中の全電気機器の消費電力の調整を行うことは、本願出願時における周知技術といえる。 しかしながら、引用発明の「ホスト装置11」及び「デバイス21〜23」は、USB規格に対応したものであり、両者の間は、「USBインターフェース」を構成する「通信ポートP1〜P3」及び「USBケーブルCL」を介して接続されたものであるのに対し、引用文献2記載事項の「電力制御装置4」及び各「電気機器」は「PLC(Power Line Communication)12」を介して電力線で接続されたものであり、両者は、使用する通信及び給電の規格等が異なるものであるから、技術分野が共通しているとはいえず、当業者であっても、引用発明に引用文献2記載事項を適用しようとする起因を見出すことは困難である。 加えて、引用文献2記載事項の「各電気機器は、起動後に運転に必要な電力Bを電力制御装置4に通知し」及び「電気機器aは、起動を通知して起動電力及び消費可能電力が更新された後、ユーザにより選択された運転モードを電力制御装置に通知し」との技術事項からすると、引用文献2記載事項においては、電気機器aの運転前における運転中の全電気機器の消費電力は、運転中の又は運転を予定している電機機器から通知された電力B又は電力モードによって計算されるものであり、測定によって得られるものではない。 よって、仮に、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせることができるとしても、上記相違点3に係る本願発明1の「前記複数の給電部によって給電される総電力を測定する測定部」との構成、及び、上記相違点4に係る本願発明1の構成のうち「前記総電力」「に基づいて、前記PoE受電端末に供給可能な電力量を計算する計算部」の構成には到達しない。 したがって、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、相違点3及び4に係る本願発明1の構成を容易に想到することができたとはいえない。 (4)本願発明1についての小括 以上のとおりであるから、相違点1、2及び5について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本願発明2及び4について 本願発明2は、本願発明1を減縮したものであり、本願発明4は、本願発明2を減縮したものであり、いずれも本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本願発明3について 本願発明3は、他のサブコンビネーションである本願発明1に関連する事項を用いて特定するサブコンビネーションの発明であり、他のサブコンビネーションに関する事項が、本願発明3に係るサブコンビネーションの発明の構造、機能等を特定していると把握される。 よって、本願発明3は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 本願発明5について (1)対比 引用発明は、新たに接続する「デバイス23」のみならず、接続済みのデバイスである「デバイス21」及び「デバイス22」に供給する電流を調整する、すなわち、複数の「デバイス21〜23」のそれぞれに供給する電流を調整する場合を含む。 よって、前記3(1)を参酌すれば、引用発明の「MPU12」と、本願発明5の「前記PoE受電端末から当該PoE受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含むリクエスト信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量、自装置が給電していない前記給電部の数、前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力及び自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数に基づいて、前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力を計算する計算部」とは、「前記受電端末から当該受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含む信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量に基づいて、前記受電端末に供給可能な電力量を計算する計算部」である点において共通する。 (2)一致点、相違点 上記3(1)及び前記(1)を参酌すれば、本願発明5と引用発明とは次の点において一致するといえる。 [一致点] 「 複数の受電端末がケーブルを介して各々接続される複数の接続部と、 前記複数の接続部に接続された前記複数の受電端末に電力を各々供給する複数の給電部と、 前記接続部に接続された前記受電端末に制御情報を送信する送信部と、 前記受電端末から当該受電端末が消費可能な最大電力量の情報を含む信号を受信すると、自装置が供給可能な最大電力量に基づいて、前記複数の受電端末のそれぞれに供給可能な電力量を計算する計算部と、 前記計算部が計算した前記受電端末に供給可能な電力量に応じた、前記受電端末が消費可能な電力量の情報を含む前記制御情報を前記送信部に送信させる制御指示部と を備える給電装置。」 また、上記3(1)及び(2)を参酌すれば、本願発明5と引用発明とは、上記相違点1、相違点2及び相違点5に加え、以下の点において相違するといえる。 <相違点4’> 「計算部」による計算が、本願発明5では、「自装置が供給可能な最大電力量、自装置が給電していない前記給電部の数、前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力及び自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」に基づいているのに対し、引用発明では、「自装置が給電していない前記給電部の数、前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力及び自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」に基づくものではない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて、先に相違点4’について検討する。 前記3(3)で述べたように、引用発明と引用文献2記載事項とは、使用する通信及び給電の規格等が異なるものであるから、技術分野が共通しているとはいえず、当業者であっても、引用発明に引用文献2記載事項を適用しようとする起因を見出すことは困難である。 また、引用文献2記載事項は、運転機器の消費電力を調整する手法として、「一律で全ての運転機器の運転モードを変更する」手法を含み、ここでの「すべての運転機器」とは、「自装置が電力を供給しているすべての運転機器」といい得るものであるが、引用文献2記載事項は、運転モードを変更することにより消費電力を調整するものであることを参酌すれば、前記「自装置が電力を供給しているすべての運転機器」の「数」は、当該運転機器の消費電力を計算するにあたり必要がないものである。 そうすると、仮に、引用発明に引用文献2記載事項を適用することができるとしても、相違点4’に係る本願発明1の構成のうち「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数に基づいて、前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力を計算する計算部」との構成には到達しない。 したがって、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、相違点3及び4に係る本願発明5の構成を容易に想到することができたとはいえない。 (4)本願発明5についての小括 以上のとおりであるから、相違点1、2及び5について判断するまでもなく、本願発明5は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 7 本願発明6ないし8及び11について 本願発明6ないし8及び11は、本願発明5を減縮したものであり、本願発明5と同一の構成を備えるものであるから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 8 本願発明9及び10について 本願発明9は、他のサブコンビネーションである本願発明5に関する事項を用いて特定するサブコンビネーションの発明であり、他のサブコンビネーションに関する事項が、本願発明9に係るサブコンビネーションの発明の構造、機能等を特定していると把握される。また、本願発明10は、本願発明9を減縮したものである。 よって、本願発明9及び10は、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 9 本願発明12について 本願発明12は、本願発明1に対応した方法の発明であり、本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。 よって、本願発明12は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 10 本願発明13について 本願発明13は、本願発明5に対応した方法の発明であり、本願発明5の構成に対応する構成を備えるものである。 よって、本願発明13は、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 11 原査定についての判断の小括 上記のとおり、本願発明1ないし13は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 12 付記について 念のため、原査定において付記された拒絶の理由(上記付記1ないし3)について検討する。 (1)付記1及び2について 原査定時の請求項2及び11に対応する請求項は、審判請求時の補正により削除されたため、付記1及び2において指摘された拒絶の理由は解消した。 (2)付記3について 原査定時の請求項2ないし5及び11に対応する請求項は、審判請求時の補正又は本件補正により削除された。また、原査定時の請求項10、12及び13に対応する本件補正後の請求項1ないし3の記載においては「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」との記載は存在しない。 また、原査定時の請求項14ないし20に対応する本件補正後の請求項5ないし11に係る発明において、「自装置が電力を供給しているPoE受電端末の数」は、「自装置が供給可能な最大電力量」、「自装置が給電していない前記給電部の数」及び「前記PoE受電端末の予め定められた最小起動電力」とともに「前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力」を計算する際に使用される情報であることが文言上明確である。また、「計算」の対象が「前記複数のPoE受電端末のそれぞれに供給可能な電力」であることに着目すれば、本願明細書(特に、【0043】、【0044】)の記載及び図面(特に、【図8】)を考慮し、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該各請求項の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。 よって、付記3において指摘された拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし13は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-12-21 |
出願番号 | P2018-558606 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L) P 1 8・ 55- WY (H04L) P 1 8・ 536- WY (H04L) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 林 毅 |
発明の名称 | 給電装置及び受電端末 |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |