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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1386628
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-25 
確定日 2022-07-21 
事件の表示 特願2018−209392「石炭焚きボイラで生じる石炭灰の搬送システム、石炭焚きボイラで生じる石炭灰の搬送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日出願公開、特開2019− 51511〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月28日に出願した特願2014−93190号の一部を平成30年11月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月3日 :手続補正書の提出
令和2年2月27日付け:拒絶理由の通知
令和2年4月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年8月18日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和2年11月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年3月31日 :上申書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜5に係る発明は、令和2年11月25日にされた手続補正により補正された請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、令和2年11月25日にされた手続補正は、原査定の対象となった令和2年4月27日にされた手続補正で補正された特許請求項の範囲の請求項1に記載された事項を変更するものではない。

[本願発明]
「石炭焚きボイラ炉底から排出される塊状石炭灰を搬送するための搬送システムであって、
石炭焚きボイラ炉底から排出される塊状石炭灰を破砕する破砕装置と、
前記破砕装置により破砕された粉状石炭灰を空気輸送する空気輸送装置と、を備え、
前記破砕装置は、ボールミルを有することを特徴とする石炭焚きボイラで生じる石炭灰の搬送システム。」

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1、2及び5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1〜3に記載された発明に基いて、請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1〜4に記載された発明に基いて、また、請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1〜5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2005−69512号公報
2.特開2000−290050号公報(周知技術)
3.特開2001−9417号公報(周知技術)
4.特開2000−264440号公報
5.特開2005−111426号公報

第4 各引用文献に記載の事項等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2005−69512号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付したもの、以下同様。)。
「【0001】
本発明は、石炭火力発電所の石炭焚きボイラに使用する微粉炭の生産に伴って発生するミルパイライトの有効利用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年通常の石炭焚きボイラは、原料炭をミルにかけて微粉炭化したものをボイラで燃焼させる。原料炭を粉砕するときには、岩石や黄鉄鉱からなるパイライト粒が異物として発生するので、ミルパイライトとして分離して排出し、クリンカに混入して主として埋立地などへ廃棄処理されていた。
【0003】
図2は、従来のミルパイライト処理工程の例を説明するフロー図である。 図2の方法では、ボイラの燃焼室で発生した石炭燃焼灰のうちクリンカは、燃焼室の下に設けられ冷却水を張ったクリンカホッパに落とされ、冷却後、一旦ホッパの底に溜められる。ここから定期的に抜き出してクラッシャで粉砕した後、ジェットパルジョンポンプにより脱水槽にパイプ輸送される。【0004】
一方、石炭バンカーから供給される石炭は、ミルにより粉砕され、微粉炭として燃焼室に投入されるが、ミルによって粉砕されなかったものがミルパイライトホッパに貯められる。ミルパイライトは、ホッパから定期的に抜き出して、ミルパライト中継タンクに供給して、ここでジェットパルジョンポンプによりクリンカと同じ脱水槽に輸送される。
脱水槽では、水と分離した後、槽底からミルパライトとクリンカを一緒に取り出して処分する。
なお、ミルパライトホッパから取り出したミルパライトは、クリンカホッパに投入してクリンカと一緒に処理する場合もある。
【0005】
しかし、ミルパイライトには可燃成分が付着しているので有効利用が難しく、ミルパライトが混入したクリンカは、専ら、トラックやベルトコンベヤで埋立地に搬送して埋立て処分されていた。
【0006】
特許文献1には、縦型ローラミルを使って微粉炭化する時に粉砕されずに分離されたパイライトを、横型ボールミルで微粉砕して、得られたパイライト微粉を微粉炭と一緒に微粉炭焚きボイラに給送して燃焼させ、フライアッシュと一緒に有効利用したり、クリンカと一緒に取り出してコンクリート混和材として活用したりすることが開示されている。
【0007】
横型ボールミルは堅いパイライトも粉砕できるが、原料炭の全量を処理する容量を持つミルは極めて高価になり経済性が悪化する。しかし、原料炭に含まれる少量のパイライトだけを処理する機械ならば比較的経済的であるので、小型の横型ボールミルを導入し、パイライトのみを取り出して微粉炭と同じ程度の大きさに微粉化し、ボイラで燃焼することにより可燃成分を焼却して熱効率を向上させると共に、パイライトの燃焼灰について微粉炭の灰と同じ処分を可能にしたものである。
しかし、この方法はミルパイライトの処理のために横型ボールミルを必要とする。
【0008】
特許文献2には、石炭焚きボイラの下に乾式クリンカコンベヤを設けて、ボイラで発生して落下してくるクリンカを直接受け止めて搬出する方式が開示されている。この方式は、高温のクリンカに耐えられる特殊な構造の乾式コンベヤが開発されたことで可能になったもので、クリンカを水に浸して冷却する必要がないため、クリンカを乾燥状態で取り出すことが可能となる。平衡通風式のボイラではボイラ内は負圧となるが、この負圧により乾式クリンカコンベヤを通して空気を吸入することにより、コンベヤ上の未燃焼物質の燃焼や高温の灰によって空気に伝えられた熱が再びボイラに戻されるので、熱効率が向上する効果がある。
このような、新しい乾式クリンカコンベヤを活用した設備においては、ミルパイライトの処理に新しい工夫が可能となる。また、従来クリンカと混合処理されていたミルパイライトは、クリンカが乾式処理されることにより別途処理する系統を設ける必要があり、経済的でなかった。
【特許文献1】特開2003−001139号公報
【特許文献2】特公平07−056375号公報」
「【0009】
本発明が解決しようとする課題は、石炭焚きボイラにおいて、微粉炭生成時に発生するミルパイライトに含まれる未燃焼成分を燃焼させて熱効率を向上させると共に、ミルパイライトを燃焼灰と一緒に処分することにより有効活用できるようにする方法を提供することである。特に、乾式クリンカコンベヤを設備した石炭焚きボイラにおいて簡単な付属部品を追加することにより、ミルパイライトの輸送、埋立、廃棄等に要する設備を省略し、従来廃棄物として処分されたきたミルパイライトをセメント用原料等として有効利用することを可能とする方法を提供することである。またクリンカと混合処理されていたミルパイライトについても、分離して別途処理する系統を省いて経済的な処理を可能とする方法を提供することである。」
「【0010】
上記課題を解決するため、ボイラ底部に密閉式の乾式クリンカコンベヤが取り付けられボイラから落下するクリンカを搬出するようにした石炭焚ボイラにおける、本発明のミルパイライト有効利用方法は、ミルパイライトを乾式クリンカコンベヤの端部に供給して、ミルパイライト中の可燃成分を乾式クリンカコンベヤ上で燃焼させて、クリンカと一緒に回収して一緒に処理することを特徴とする。
なお、ミルパイライトは乾式クリンカコンベヤに供給する前に粒度を均質化することが好ましい。」
「【0012】
本発明のミルパイライト有効利用方法は、特に乾式クリンカコンベヤを設備して、クリンカの未燃焼成分をコンベヤ上で燃焼させることにより発生した熱量がボイラに戻るようになっている石炭焚きボイラに適用することにより、大きな効果を得ることができる。
ミルパイライトはパイライトに石炭が付着した形態になっていることが多く、有効活用を図ろうとするときに、この可燃成分が存在するため、これが不可能であった。
【0013】
本発明のミルパイライト有効利用方法によると、パイライトに付着した可燃成分を乾式クリンカコンベヤで燃焼させて灰成分のみを残すことができる。パイライトの燃焼熱量はクリンカなどの未燃成分の燃焼熱量と併せて熱風としてボイラ内に供給することができ、熱効率を向上させる効果がある。
一方、可燃成分をすっかり除去した灰成分はクリンカと同じくセメント用原料や舗装材などとして利用することができる。しかも、パイライトの灰は乾式クリンカコンベヤ上でクリンカと混合した状態になっているので、クリンカのために準備されている既設の設備にそのまま搬送して、クリンカと同じ処理を行えばよい。
なお、ミルパイライトを微粉化することにより、乾式クリンカコンベヤ上で効率的に燃焼する。
【0014】
なお、本発明のミルパイライト有効利用装置を用いると、ミルパイライトが乾式クリンカコンベヤに供給され、ここで可燃成分が燃焼するため、若干ではあるが燃焼熱をボイラに回収でき、さらに残余の灰はクリンカと一緒に処理工程に搬送されて、クリンカと共に有効活用することができる。
なお、パイライトクラッシャを通すことにより、粒度が揃って燃焼しやすくなる。
【0015】
以下、実施例を用いて本発明の石炭焚きボイラにおけるミルパイライト有効利用方法および装置を詳細に説明する。
図1は本発明に係る実施例のミルパイライト有効利用装置のフロー図である。
本実施例の対象とする石炭焚きボイラ1は、ボイラの底部にドライホッパ2が設けられ、ドライホッパ2の底に設けられたボトムゲート3の下に、乾式クリンカコンベヤ4が設置されている。
ボトムゲート3は、通常は開いた状態になっているが、乾式クリンカコンベヤ4を長期停止するときなどには全閉にして床を形成し、クリンカをドライホッパ2の内に堆積させて乾式クリンカコンベヤ4に落下しないようにする。」
「【0017】
乾式クリンカコンベヤ4はボイラ1の長径方向に敷設され、ベルト上に落下するクリンカを一方の端に搬送する。乾式クリンカコンベヤ4はボイラ1の長径方向に敷設され、ベルト上に落下するクリンカを一方の端に搬送する。
乾式クリンカコンベヤ4は逆止弁付きの冷却空気取入口を備えており、ボイラ1内が常時負圧に保たれているため取入口より空気が乾式クリンカコンベヤ4内に吸引され、コンベヤ内部の高温のクリンカを冷却する。クリンカを冷却した後の空気はボイラ1に回収されるが、クリンカを冷却した際の熱およびコンベヤ内で未燃分が燃焼した際の熱も同時に回収されるため、従来の湿式クリンカ処理設備に比べて熱効率が向上する。
また、乾式クリンカコンベヤ4の他端には密封コンベヤ8が設けられていて、微粉炭を製造するミル5で発生するパイライトを収容するパイライトホッパ6からパイライトクラッシャ7を介して微粉として供給されるミルパイライトが供給される。
【0018】
乾式クリンカコンベヤ4は通常は連続運転され、降り積もる高熱クリンカはゆっくりと一端側に搬送される。クリンカには数%の未燃分が含まれるが、クリンカがコンベヤ内を搬送される間にこれら未燃分は燃焼して、未燃分含有量が0.5%以下に低下するので、乾式クリンカコンベヤ4で搬出されるクリンカは上質なクリンカとして、たとえばセメント用原料として、あるいは舗装材として有効利用することができる。このような用途に活用できれば、埋立処分をする必要がなく、現今の埋立適地の不足に悩まされることがない。」
「【0020】
上記までがミルパイライトを有効利用するのに必要な形態であるが、これをさらに、例えば1次クラッシャ9、クリンカ冷却コンベヤ10、2次クラッシャ11、真空輸送管12を設けることにより、クリンカおよびミルパイライトをフライアッシュと混合して処理することができるようになり、有効利用範囲を広げることができる。
乾式クリンカコンベヤ4は、コンベヤ上で追加燃焼したクリンカと可燃成分を焼却したミルパイライトの混合物を搬送して、次のクリンカ冷却コンベヤ10に送り込む。クリンカ冷却コンベヤ10では、空気を送り込んでベルト上のクリンカ等を冷却する。
【0021】
乾式クリンカコンベヤ4とクリンカ冷却コンベヤ10の間には、1次クラッシャ9が設けられている。ボイラからはクリンカの大塊が落下する場合にはクリンカの内部まで十分冷却されないため、1次クラッシャ9で適当な大きさまで粉砕した後、クリンカ冷却コンベヤ10で冷却する。
クリンカ冷却コンベヤ10で冷却されたクリンカは、2次クラッシャ11でさらに細かく粉砕した後、真空輸送管12で搬送される。
【0022】
本実施例のミルパイライト有効利用装置を利用して、ミルパイライトをクリンカと一緒に粉砕処理することにより、従来必要とされたミルパイライト用に独立した貯留、輸送、埋立、廃棄などに要する設備を省略することができる。また従来は廃棄物として処理せざるを得なかったミルパイライトをフライアッシュおよびクリンカと一緒にセメント用原料などとして有効利用することができるようになり、その結果として埋立地を新設する必要が無くなる。
さらにまた、ミルパイライトをクリンカと同等の品質にして混合して取り扱えるようにしたことにより、輸送系統が単純化し、貯蔵サイロなども共用できるようになる。」
「【図1】




2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2000−290050号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「【請求項1】 主原料の石炭灰に、発泡剤を混合して粉砕し、該粉砕物をアルカリ金属珪酸塩からなる融点降下剤と湿式混練した後、成型し、ついで乾燥・焼成することを特微とする人工軽量骨材の製造方法。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は人工軽量骨材に関し、具体的には石炭火力発電所や石炭焚きボイラーなどから発生する石炭灰を、特に土木・建築用の人工軽量骨材として再資源化して有効利用するための人工軽量骨材の製造方法およびこの方法により得らた人工軽量骨材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石炭は石油に比べて資源が豊富で単位発熱量当りの価格も安価なことから、国内のエネルギー政策により、特に発電用燃料として大幅な使用量の増加が計画または実施されつつある。その結果、石炭火力発電所や石炭焚きボイラーなどから発生する石炭灰が、石炭使用量にほぼ比例して増加している結果、急増する石炭灰の有効利用法が大きな課題となっている。このような石炭灰の有効利用としては、人工軽量骨材としての利用がその需要量の大きさから大量処理の面で適している。しかしながら、石炭灰はシンターグレート方式で一部が骨材化されているものの、人工骨材としての利用は国内では極めて少ないのが現状である。その原因は、石炭火力発電所や石炭焚きボイラーなどでは、ボイラーの水管やボイラー壁への灰の付着を軽減するために、高融点の灰を発生する石炭を選択して使用していることにある。」
「【0009】まず本発明に使用する主原料としての石炭灰は特に限定されるものでなく、例えばフライアッシュとシンダアッシュの混合物である原粉、JIS A6201に適合するようなフライアッシュ、粗粉、クリンカアッシュを含む全ての石炭灰を用いることができる。また前記石炭灰の粒径にも特に影響されない。」
「【0016】本発明に用いる粉砕方法は、混合した骨材配合原料が平均粒径30μm以下、好ましくは20μm以下まで微粉砕できるものであればいずれの方法でもよく、例えばポットミル、振動ミル、遊星ミルなどのボールミル、衝突式のジェット粉砕機、ターボ粉砕機などが挙げられる。・・・」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001−9417号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石炭火力発電所の微粉炭燃焼ボイラ設備より発生する石炭灰の処理方法に関する、
【0002】
【従来の技術】石炭火力発電所より発生する石炭灰としては、ボイラの下部ホッパに溜まるボトムアッシュ、節炭器や空気予熱器下部ホッパに溜まるシンダアッシュ及び集じん器下部ホッパに溜まるフライアッシュがある、この内シンダアッシュとフライアッシュは通常原粉サイロに溜められる。原粉サイロから払い出しされたシンダアッシュとフライアッシュの原粉は、回転式分級器により細粉と粗粉に分級され、それぞれ細粉サイロ及び粗粉サイロに溜められる。分級器の回転数調整により、細粉サイロに溜まった細粉は、JIS規格内のコンクリート用フライアッシュとなり、有価物として取り引きされる。」
「【0005】本発明に係る石炭火力発電所の石炭灰の処理方法においては、ボールミル又は振動ミルにより、JIS A 6201−1999に規定する粉末度の範囲にはいっていない、即ち、規格外のシンダアッシュ及びフライアッシュを球状粉砕することによって、JIS規格内の粉末度に改質し、付加価値をつけるものである。また、JIS A 6201−1999に規定するコンクリート用フライアッシュの種類は、フライアッシュI種からフライアッシュIV種までの4種類があり、それぞれに粉末度が規定されている。そして、本発明においてはボールミルや振動ミルによって球状粉砕を行っているので、ミル内の空気流速を調整することにより、前記フライアッシュI種からIV種までのいずれのフライアッシュも製造できる点にも特徴がある。次に参考のためJISに規定されている上記4種類のコンクリート用フライアッシュの粉末度を記す。」
「【0008】コンクリート用フライアッシュでは、粒子の形状が球状であることが必要である。その理由はコンクリートを工事現場等で施工する場合において、粒子の形状が球状であれば施工しようとする範囲のすみずみまで隙間なく施工可能であり、コンクリートの仕上り面が完璧となるからである。かかる根拠に基づいて、本発明の石炭灰の粉砕機は、粉砕物が球状になるボールミル又は振動ミルに限定している。なお、ボールミル又は振動ミルは、従来よりあらゆる分野で使用されている粉砕機であり、特殊粉砕機ではない。従って、本文ではボールミル又は振動ミルの粉砕原理の説明は省略するが、その最大特徴は砕料(粉砕される材料、ここでは石炭灰)が粉砕機内で衝突しあいながら流動していることである。このため粉砕された砕料は角(かど)がなくなり球状となり、本発明の粉砕機としては最適である。」
「【表1】



4 引用文献4
本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開昭58−189409号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

「本発明における石炭灰は、代表的にはクリンカー及びフライアツシユとして提供される。クリンカーは、通常例えばボールミルのような粉砕機で微粉砕して用いられる。」(第2頁左下欄第13行〜第16行)

第5 当審の判断
1 引用文献1に記載された発明
(1)上記第4の1より、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。
ア 石炭焚きボイラ1で生じる石炭燃焼灰の搬送システム
引用文献1の「ミルパイライト有効利用装置」は、石炭焚きボイラ1で発生するミルパイライトを燃焼灰と一緒に処分することにより有効活用できるようにする装置に関するものであり、ボイラ底部、すなわち、石炭焚きボイラ1炉底に設置された乾式クリンカコンベヤ4、クリンカ冷却コンベア10及び真空輸送管12を利用するものである。
そうすると、引用文献1には、「石炭焚きボイラ1で生じる石炭燃焼灰の搬送システム」が記載されているといえる。

イ クリンカを搬送するものであること
上記アの「搬送システム」は、石炭焚きボイラ1炉底から排出されるクリンカを搬送するものであることは、明らかである。

ウ クリンカを粉砕するものであること
引用文献1の段落【0020】及び【0021】より、上記アの「搬送システム」で搬送されるクリンカは、1次クラッシャ9で適当な大きさまで粉砕された後、2次クラッシャ11でさらに細かく粉砕され、その後、真空輸送管12で搬送されるものであるといえる。

(2)引用発明
上記第4の1、及び、上記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

[引用発明]
「石炭焚きボイラ1炉底から排出されるクリンカを搬送するための搬送システムであって、
石炭焚きボイラ1炉底から排出されるクリンカは、ミルパイライトとともに、1次クラッシャ9で適当な大きさまで粉砕された後、2次クラッシャ11でさらに細かく粉砕され、その後、真空輸送管12で搬送されるものである、石炭焚きボイラ1で生じる石炭燃焼灰の搬送システム。」

2 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「石炭焚きボイラ1」は、本願発明の「石炭焚きボイラ」に相当し、引用発明の「石炭焚きボイラ1炉底」は、本願発明の「石炭焚きボイラ炉底」に相当する。
引用発明の「クリンカ」は、本願発明の「塊状石炭灰」に相当する。
引用発明の「クリンカは、ミルパイライトとともに、1次クラッシャ9で適当な大きさまで粉砕された後、2次クラッシャ11でさらに細かく粉砕され」ることは、本願発明の「塊状石炭灰を破砕する」ことに相当するから、引用発明の「1次クラッシャ9」及び「2次クラッシャ11」は、本願発明の「破砕装置」に相当する。
引用発明の「真空輸送管12」は、本願発明の「空気輸送装置」に相当し、引用発明の「クリンカは、ミルパイライトとともに、1次クラッシャ9で適当な大きさまで粉砕された後、2次クラッシャ11でさらに細かく粉砕され、その後、真空輸送管12で搬送される」ことは、2次クラッシャ11によって細かく粉砕され粉状になった石炭灰を真空輸送管12で空気輸送することであるから、本願発明の「前記破砕装置により破砕された粉状石炭灰を空気輸送する」ことに相当する。
引用発明は「1次クラッシャ9」及び「2次クラッシャ11」と、「真空輸送管12」とを備えるものといえ、また、引用発明の「石炭燃焼灰」は、本願発明の「石炭灰」に相当するから、引用発明の「1次クラッシャ9」及び「2次クラッシャ11」と、「真空輸送管12」とを備える「石炭燃焼灰の搬送システム」は、本願発明の「破砕装置」と、「空気輸送装置」とを備える「石炭灰の搬送システム」に相当するといえる。
以上のとおりであるから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

[一致点]
「石炭焚きボイラ炉底から排出される塊状石炭灰を搬送するためのシステムであって、
石炭焚きボイラ炉底から排出される塊状石炭灰を破砕する破砕装置と、
前記破砕装置により破砕された粉状石炭灰を空気輸送する空気輸送装置と、を備える石炭焚きボイラで生じる石炭灰の搬送システム。」

[相違点]
破砕装置に関し、本願発明は、「ボールミルを有する」ものであるのに対し、引用発明は、「1次クラッシャ9」と「2次クラッシャ11」とから構成されるものであり、少なくともいずれかがボールミルであるとは特定されていない点。

2 判断
上記相違点について検討する。
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2の段落【0002】の「石炭火力発電所や石炭焚きボイラーなどから発生する石炭灰が、石炭使用量にほぼ比例して増加している結果、急増する石炭灰の有効利用法が大きな課題となっている。このような石炭灰の有効利用としては、人工軽量骨材としての利用がその需要量の大きさから大量処理の面で適している。」との記載、段落【0009】の「本発明に使用する主原料としての石炭灰は特に限定されるものでなく、・・・クリンカアッシュを含む全ての石炭灰を用いることができる。」との記載、及び段落【0016】の「本発明に用いる粉砕方法は、混合した骨材配合原料が平均粒径30μm以下、好ましくは20μm以下まで微粉砕できるものであればいずれの方法でもよく、例えばポットミル、振動ミル、遊星ミルなどのボールミル、衝突式のジェット粉砕機、ターボ粉砕機などが挙げられる。・・・」の記載からすれば、引用文献2には、石炭灰を有効利用した人工軽量骨材に関して、石炭焚きボイラーから発生するクリンカアッシュを主原料とした骨材配合原料を微粉砕する粉砕機として、ボールミルを用いることが記載されているといえる(以下、「引用文献2記載事項」という。)。

イ 引用文献3に記載された事項
引用文献3の段落【0008】の「コンクリート用フライアッシュでは、粒子の形状が球状であることが必要である。その理由はコンクリートを工事現場等で施工する場合において、粒子の形状が球状であれば施工しようとする範囲のすみずみまで隙間なく施工可能であり、コンクリートの仕上り面が完璧となるからである。かかる根拠に基づいて、本発明の石炭灰の粉砕機は、粉砕物が球状になるボールミル又は振動ミルに限定している。」の記載、及び、段落【0005】の「JIS A 6201−1999に規定するコンクリート用フライアッシュ」等から、引用文献3には、JIS規格のコンクリート用フライアッシュの粉砕機として、粉砕物が球状になるボールミルを用いることが記載されているといえる(以下、「引用文献3記載事項」という。)。

ウ 上記ア及びイから認定される周知技術
(ア)塊状石炭灰を「微粉砕」する粉砕機としてボールミルを利用すること
引用文献2記載事項は、石炭灰を有効利用した人工軽量骨材に関するものであり、かつ、クリンカアッシュ、すなわち、塊状石炭灰を主原料とした骨材配合原料を粉砕する装置に関するものである。しかしながら、引用文献2記載事項のボールミルについては、「混合した骨材配合原料が平均粒径30μm以下、好ましくは20μm以下まで微粉砕できるものであればいずれの方法でもよく」(段落【0016】)とされているように、粉砕する原料の平均粒径によって選択されることが予定されているものである。しかも、かかるボールミルの選択に関する事情は、特段の例を示すまでもなく、技術常識であると認められる。
そうすると、引用文献2記載事項から、ボールミルによる微粉砕後の石炭灰の用途等に関わりなく、「石炭焚きボイラーから発生する塊状石炭灰を微粉砕する粉砕機としてボールミルを利用すること」が周知技術であるといえる(以下、「本件周知技術1」という。)。
なお、かかる周知技術の認定については、例えば、引用文献4の「本発明における石炭灰は、代表的にはクリンカー及びフライアツシユとして提供される。クリンカーは、通常例えばボールミルのような粉砕機で微粉砕して用いられる。」のとおり、引用文献4に、塊状石炭灰であるクリンカーを「微粉砕」する粉砕機として、ボールミルを用いることが記載されていることからも裏付けられる。

(イ)セメント用原料たる石炭灰の粉砕機としてボールミルを利用すること
引用文献3記載事項は、JIS規格のコンクリート用フライアッシュに関するものである。しかしながら、引用文献3記載事項のボールミルについては、「コンクリートを工事現場等で施工する場合において、粒子の形状が球状であれば施工しようとする範囲のすみずみまで隙間なく施工可能であり、コンクリートの仕上り面が完璧となるからである。」(段落【0008】)とされているように、粉砕後の石炭灰の粒子形状によって選択されることが予定されているものである。しかも、コンクリート用フライアッシュのJIS規格(段落【0005】及び【表1】参照)によれば、コンクリートに用いるセメント用原料たる石炭灰は、一定の粉末度を満たす「微粉砕」された粒子(上記(ア)参照)であることは、技術常識であると認められる。
そうすると、引用文献3記載事項から、石炭灰の種類に関わりなく、「セメント用原料たる石炭灰の粉砕機としてボールミルを利用すること」が周知技術であるといえる(以下、「本件周知技術2」という。また、本件周知技術1及び2を併せて、単に「本件周知技術」という。)。

エ 本件周知技術を組み合わせる動機付け等について
(ア)引用文献1に示唆があること
a セメント用原料として有効利用されること
引用文献1の段落【0010】の「ボイラ底部に密閉式の乾式クリンカコンベヤが取り付けられボイラから落下するクリンカを搬出するようにした石炭焚ボイラにおける、本発明のミルパイライト有効利用方法は、・・・クリンカと一緒に回収して一緒に処理する」との記載及び段落【0009】の「ミルパイライトを燃焼灰と一緒に処分することにより有効活用できるようにする方法を提供することである。・・・従来廃棄物として処分されたきたミルパイライトをセメント用原料等として有効利用することを可能とする」との記載等からすれば、石炭焚きボイラ炉底から排出される塊状石炭灰であるクリンカをセメント用原料として有効利用することが記載ないし示唆されているといえる。

b 引用発明によりフライアッシュと混合して処理することができること
引用文献1の段落【0020】の「・・・例えば、1次クラッシャ9、クリンカ冷却コンベヤ10、2次クラッシャ11、真空輸送管12を設けることにより、クリンカおよびミルパイライトをフライアッシュと混合して処理することができるようになり、有効利用範囲を広げることができる。」との記載から、引用発明により、少なくとも、2次クラッシャ11によって、フライアッシュと混合処理することができる程度まで、クリンカ及びミルパイライトが「微粉砕」(上記ウ(ア)参照)されることが示唆されているといえる。

c 動機付けのまとめ
上記a及びbによれば、引用発明の1次クラッシャ9及び2次クラッシャ11のうち、少なくとも2次クラッシャ11について、本件周知技術のボールミルを用いることの動機付けがある。

(イ)阻害要因はないこと
a 引用文献1の【0006】及び【0007】の記載について
当該段落には、引用発明の背景技術の一つとして、(a)縦型ローラミルを使って微粉炭化する時に粉砕されずに分離されたパイライトを、横型ボールミルで微粉砕して、得られたパイライト微粉を微粉炭と一緒に微粉炭焚きボイラに給送して燃焼させ、フライアッシュと一緒に有効利用したり、クリンカと一緒に取り出してコンクリート混和材として活用したりすることが記載されており、また、(b)上記(a)の横型ボールミルは、堅いパイライトも粉砕できるが、原料炭の全量を処理する容量を持つミルは極めて高価になり経済性が悪化する旨記載されている。
しかしながら、上記記載は、「原料炭の全量を処理する容量」を持つ「横型ボールミル」についての問題点を指摘したものであって、引用発明にあらゆるボールミルを適用することを否定したものとはいえない。当該段落の記載が存在するとしても、そのことによって、引用発明に本件周知技術のボールミルを用いることが妨げられるとまではいえない。この点は、引用文献1の【課題を解決するための手段】及び【発明の効果】(段落【0010】〜【0014】)等に、ボールミルの利用を排除する旨の記載がないことからも裏付けられる。

オ 相違点に係る本願発明の構成に到達すること
上記ア〜エによれば、引用発明のクリンカを粉砕する破砕装置のうち、少なくとも2次クラッシャ11に、本件周知技術のボールミルを採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。そして、このように構成すれば、引用発明の破砕装置としては、「ボールミルを有する」構成となるため、上記相違点に係る本願発明の構成に到達することができる。

カ 本願発明の効果について
そして、引用発明のクリンカを粉砕する破砕装置として本件周知技術のボールミルを用いれば、粉砕物が球状になることは、当業者であれば容易に認識できる事項であることからすれば、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び本件周知技術の奏する作用効果から、当業者であれば予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

キ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書及び令和3年3月31日付け上申書において、本願発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない旨主張し、その具体的な理由としては、概ね、次の点を主張している。

(ア)引用文献2に記載された発明は、人工軽量骨材の製造方法の発明であり(【請求項1】)、その粉砕方法は、主原料となる石炭灰のほか、発泡剤や結合剤等その他の成分を混合した骨材配合原料を微粉砕するものである(段落【0016】等)。同発明は、本願発明や引用文献1に記載された発明のような、石炭焚きボイラ炉底から排出される塊状石炭灰を破砕する方法としては、処理対象や処理目的が異なる。

(イ)引用文献3に記載された発明は、粒径が比較的小さいシンダアッシュ及びフライアッシュを含む石炭灰をより価値が高い細粉に改質するための処理方法であり(【請求項1】)、本願発明や引用文献1に記載された発明のような、粒径が大きい塊状石炭灰を破砕する方法とは、処理対象や処理目的が異なる。引用文献3の従来技術の説明では、ボトムアッシュ(塊状石炭灰)を例示していながら、引用文献3に記載された発明の内容は、シンダアッシュ及びフライアッシュを例示して説明している。同発明(【請求項1】)では、ボトムアッシュがボールミルでの粉砕対象から除外されていることは明らかである。

(ウ)引用文献1の従来技術として記載されているように(【0006】、【0007】)、ボールミルを用いて多量の石炭灰を処理することは経済性が悪いことは周知である。また、引用文献1に記載された発明は、石炭火力発電所の石炭焚きボイラの技術分野に関するものであり、同技術分野の当業者は、クリンカの最終産物の加工技術に関して通常の知識を有するものではない。してみると、同発明において、ボールミルを採用することは阻害要因が存在するといえる。

(エ)従来の振動ロッドミルで破砕された粉状石炭粉により空気輸送装置の配管が摩耗するという本願発明の課題は、新規のものであって、かかる課題に気付いていない引用文献1〜3をみた当業者が、経済性が悪化する可能性のあるボールミルを採用することは考え難い。また、本願発明の効果は、引用文献1〜3には何ら記載されておらず、当業者が予測できない異質な効果である。

しかしながら、上記(ア)及び(イ)については、引用文献2及び3の請求項に記載された発明に拘泥した主張である。同発明に拘泥することなく、引用文献2及び3に記載された事項から、技術常識を踏まえて、本件周知技術1及び2を認定できることは、上記ア〜ウにおいて説示したとおりである。したがって、上記(ア)及び(イ)の主張を採用することはできない。
また、上記(ウ)及び(エ)の主張を採用することができないのは、上記エ及びカにおいて説示したとおりである。

ク 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び本件周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-05-23 
結審通知日 2022-05-24 
審決日 2022-06-06 
出願番号 P2018-209392
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 平瀬 知明
特許庁審判官 内田 博之
尾崎 和寛
発明の名称 石炭焚きボイラで生じる石炭灰の搬送システム、石炭焚きボイラで生じる石炭灰の搬送方法  
代理人 弁理士法人雄渾  
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